JP2004292778A - 香味劣化抑制剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バンレイシ属果物の果皮の溶媒抽出物からなる香味劣化抑制剤である。この香味劣化抑制剤を経口組成物や香料などに添加することによりこれらの香味劣化、特に光による香味劣化を抑制することができる。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香味成分を含む経口組成物または香料に広く適用することができる特定の天然物由来の香味劣化抑制剤および香味劣化抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食品あるいは口腔衛生剤(以下併せて経口組成物と称する。)は口に入った瞬間にその味と匂いが感じられるので、経口組成物の香味は各種栄養成分と同様に重要な要素である。こうした経口組成物の香味は製造、流通、保存等の各段階で徐々に劣化していくことはよく知られている。劣化に関係する要因として、熱、光、酸素、さらには吸湿等が挙げられる。そこで、従来、特に酸素による香味の劣化対策として、酸素透過性を低くした合成樹脂製の容器や袋の開発、また、脱酸素条件を組み入れた食品製造工程の導入、さらには酸化防止剤の添加等が施されていたが、他の劣化要因、特に光による劣化の対策はあまり考慮されていなかった。しかし、最近、店頭ディスプレイ時の商品イメージアップのため透明ガラス容器入り食品、半透明プラスチック容器入り食品、透明袋入り食品等の製造・販売が増加しつつある。さらに、それらをコンビニエンスストア等で長時間、蛍光灯下に陳列する販売形態が一般的になってきた。従って、食品などの経口組成物は以前よりもさらに光の影響を受けやすくなり、香味劣化などの結果を招くことになった。そこで、製造、流通、保存段階における熱や酸素による香味劣化に対する効果を持つと同時に、光による香味の劣化に対して特に大きな抑制効果をも併せもつような手段を開発することが必要となってきた。光による香味劣化は、香味成分が光照射によって分解され芳香・美味が消失し、また更に分解物が悪臭・異味成分に転化することにより生じる。こうした光による劣化を主に抑制するために、ルチン、モリン又はケルセチンを添加して悪臭・異味物質の発生を防止し保存性の向上を図った乳含有酸性飲料(特許文献1参照)やコーヒー生豆抽出物由来のクロロゲン酸、カフェー酸、フェルラ酸と、ビタミンC、ルチン、ケルセチンとを併用して日光によるフレーバー劣化を防止する方法(特許文献2参照)等が提案されている。しかし、従来技術における天然物由来の劣化抑制剤については、一般的に安全性が高く推奨できるが、その一方で、香味の劣化抑制効果を奏するためにはある程度多量に使用する必要があり、その結果、劣化抑制剤自体が有している味や匂いが食品そのものの味や香りに悪影響を与えるなど実用性に欠ける点があった。 なお、光透過性を抑えた容器や袋を用いる経口組成物の包装手段改良による劣化抑制方法も提案されているが、これもコストと香味劣化抑制効果の両面から考えると十分ではなかった。従って、経口組成物に添加した場合に安全性が高く、経口組成物本来の香味に影響を与えることなく少量の使用で十分な効果を奏し、かつ経済性に優れた香味劣化の抑制手段として、新たな天然物由来の劣化抑制剤が要望されていた。
【0003】
【特許文献1】
特公平4−21450号公報
【特許文献2】
特開平4−27374号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における問題点を解決し、安全性が高く、しかも経口組成物本来の香味に影響を与えることのない香味劣化抑制剤の提供、すなわち、経口組成物の製造、流通、保存等の各段階で主として光、さらに熱や酸素等の影響による香味の劣化を抑制する香味劣化抑制剤、当該香味劣化抑制剤を所定量添加してなる品質の安定した経口組成物並びに当該香味劣化抑制剤を所定量添加して香味の劣化を抑制し経口組成物などの品質の安定を図る方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、植物を中心とする多種多様の天然物由来の成分について香味劣化抑制活性を鋭意検討した結果、バンレイシ属植物の果皮の溶媒抽出物を使用することにより、光に対しては顕著に、さらに熱、酸素等による食品などの香味劣化を長期間抑制できることを見い出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、バンレイシ属植物の果皮の溶媒抽出物を含有することを特徴とする香味劣化抑制剤である。本発明はさらにバンレイシ(Annona)属に属する植物が、バンレイシ(Annona squamosa Linn.)、チェリモヤ(Annona cherimola Mill)、イヌバンレイシ(Annona glabra Linn.)、ホシバンレイシ(Annona Montana Macf.)、トゲバンレイシ(Annona muricata Linn.)またはギュウシンリ(Annona reticulata Linn.)であることを特徴とする。本発明はさらに、上記の香味劣化抑制剤を1〜500ppm添加してなる経口組成物である。さらに本発明は、上記香味劣化抑制剤を経口組成物に1〜500ppm添加して香味劣化を抑制する方法である。また本発明は上記香味劣化抑制剤を0.005〜5重量%添加されてなる香料である。さらに本発明は、上記香味劣化抑制剤を香料に0.005〜5重量%添加して香料の劣化を抑制する方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1) 原材料
本発明に使用する植物の果皮は、バンレイシ(Annona)属植物から選ばれる少なくとも1種の植物の果皮であり、これらは単独で又は組合せて使用することができる。バンレイシ属に属する植物の果皮であれば特に制限なく、いずれの植物の果皮であっても使用できるが、特にバンレイシ(Annona squamosa Linn.)、チェリモヤ(Annona cherimola Mill)、イヌバンレイシ(Annona glabra Linn.)、ホシバンレイシ(Annona Montana Macf.)、トゲバンレイシ(Annona muricata Linn.)、ギュウシンリ(Annona reticulata Linn.)の果皮を用いることが好ましい。これらは中央アメリカ、エジプト、インド、東南アジア諸国で多く栽培されており、その果実は生食の他、飲料やアイスクリーム、ジャム、ゼリー、ママレード、キャンディーなどに加工されて食されている。
バンレイシ属植物の生理活性については報告があり、特開平6−40861号公報及び特開平9−12433号公報には、葉・樹皮・材・枝・果肉・果皮・根または茎からの抽出物が脱毛防止や育毛促進効果を示すことが開示されている。しかし、これらの植物の果皮の溶媒抽出物が香味劣化抑制作用を有することは全く知られていない。
【0007】
(2) 抽出処理
1)抽出溶媒
抽出処理に使用する溶媒は、水又は有機溶媒であり、有機溶媒は含水物であってもよい。有機溶媒としては特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、特に50〜95%エタノールが好ましい。
抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には上記原材料1重量部に対して溶媒量1〜100重量部を使用する。
【0008】
2)抽出処理方法
抽出処理方法としては、溶媒の種類、量等により種々の方法を採用することができる。例えば前記各種バンレイシ属植物の果皮を粉砕したものを溶媒中に入れ、浸漬法又は加熱還流法で抽出することができる。なお浸漬法による場合は加温、室温又は冷却条件下のいずれであってもよい。
ついで、溶媒に不溶な固形物を除去して抽出液を得るが、固形物除去方法としては遠心分離、濾過、圧搾等の各種の固液分離手段を用いることができる。
得られた抽出液はそのままでも香味劣化抑制剤として使用できるが、抽出液を濃縮、乾固して固形物として用いることもでき、さらに抽出液をそのままあるいは溶媒を留去したのち、脱色、脱臭等の精製処理をすることもできる。
また超臨界抽出による抽出、分画、または脱臭処理したものも使用可能である。
【0009】
3)精製
上記方法で得られた抽出物は、そのまま経口組成物に配合することができるが、さらに、脱色、脱臭等の精製処理をすることができる。精製処理には活性炭や多孔性のスチレン−ジビニルベンゼン共重合体からなる合成樹脂吸着剤などが使用できる。精製用の合成樹脂吸着剤としては例えば三菱化学株式会社製「ダイヤイオンHP−20(商品名)」やオルガノ株式会社製「アンバーライトXAD−2(商品名)」などが使用できる。
【0010】
(3)香味劣化抑制剤の製剤化
香味劣化抑制剤は上記のとおり得られた抽出物を原材料として、例えば以下のように製剤化される。
一般的には有機酸、酸化防止剤、pH調整剤及び乳化剤等の各種成分を組み合わせて、水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリエチルシトレート等の(混合)溶剤に適当な濃度で溶解させて(具体的には、水/エタノール、水/エタノール/グリセリン、水/グリセリン等の混合溶剤)液剤とする。またはこれにデキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等を加えることもできる。さらにこれらを濃縮してペースト状の抽出エキスとすることもでき、また、各種成分の溶液に賦形剤(デキストリン等)を添加し噴霧乾燥によりパウダー状にすることも可能であり、用途に応じて種々の剤形を採用することができる。
【0011】
(4)用法
本発明の香味劣化抑制剤は経口組成物の加工段階で適宜添加することができる。添加量は、香味劣化抑制剤の濃度或いは経口組成物に含有されている香味成分の種類や香味閾値によっても多少異なるが、一般的に経口組成物に対して1〜500ppmの添加量(固形成分として)が適当である。経口組成物の本来の香味に影響を及ぼさない閾値の範囲内で添加する観点からは1〜200ppmが好ましく、特に1〜100ppmが好ましい。一方本発明の香味劣化抑制剤を香料に使用する場合は、0.005〜5重量%が適当であり、本来の香味に影響を及ぼさない範囲内で添加する観点からは0.005〜2重量%が好ましく、特に0.01〜1重量%が好ましい。
【0012】
また、本発明の香味劣化抑制剤には、さらに経口組成物に通常使用される天然の酸化防止剤や香味劣化抑制剤、例えば茶抽出物、コーヒー生豆抽出物、エンジュ抽出物、ソバ全草抽出物、アズキ全草抽出物、りんご未熟果抽出物、ぶどう種子抽出物、ローズマリー抽出物、ヤマモモ抽出物、トコフェロール、L−アスコルビン酸、クロロゲン酸、カフェ酸、フェルラ酸、ルチン、モリン、ケルセチン等を本発明の効果を損なわない量で配合することができる。
【0013】
本発明の香味劣化抑制剤が適用される経口組成物又は香料の例として下記の
ものが挙げられる。
飲料…コーヒー、紅茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、栄養ドリンク、酒類(清酒、ビール、発泡酒、ぶどう酒、焼酎、ウィスキー、ブランデー等)など。
菓子類…ゼリー、プリン、ババロア、キャンディー、ビスケット、クッキー、チョコレート、ケーキ類など。
油脂及び油脂加工食品及び油脂を原料とする食品…食用油脂(動物性油脂、植物性油脂)、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング、ハードバター。
その他の油脂含有食品…即席(フライ)麺類、とうふの油揚(油揚、生揚、がんもどき)、揚かまぼこ、総菜類(てんぷら、フライ等)、スナック類(ポテトチップス、揚あられ類、かりんとう、ドーナッツ等)、調理冷凍食品(冷凍コロッケ、エビフライ等)。
乳、乳製品、…乳(生乳、牛乳、加工乳等)、乳製品(クリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエー、チーズ、アイスクリーム類、ヨーグルト、練乳、粉乳、濃縮乳等)。
口腔衛生剤…歯磨き、うがい薬、口中清涼剤、口臭防止剤など。
香料…香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料等)およびそれらを含有する香料組成物。
【0014】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔抽出例1〕
インドネシア産バンレイシ(Annona squamosa Linn.)の果皮を乾燥し、粉砕した後、この粉砕粉末100gに50%(W/W)エタノール1Lを添加し、1時間加熱還流抽出を行った。引き続き冷却後、ろ過して不溶物を除去し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮および乾固して、バンレイシ果皮抽出物を23.3gを得た。
【0015】
〔抽出例2〕
インドネシア産トゲバンレイシ(Annona muricata Linn.)の果皮を乾燥し、粉砕した後、この粉砕粉末100gに50%(W/W)エタノール1Lを添加し、1時間加熱還流抽出を行った。引き続き冷却後、ろ過して不溶物を除去し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮および乾固して、トゲバンレイシ果皮抽出物を33.4gを得た。
【0016】
〔抽出例3〕
インドネシア産ギュウシンリ(Annona reticulata Linn.)の果皮を乾燥し、粉砕した後、この粉砕粉末100gに50%(W/W)エタノール1Lを添加し、1時間加熱還流抽出を行った。引き続き冷却後、ろ過して不溶物を除去し、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮および乾固して、トゲバンレイシ果皮抽出物を36.2gを得た。
【0017】
〔抽出例4〕
活性画分を得るため実施例1の抽出物5gを水に分散させ合成吸着剤(ダイヤイオンHP−20)1000mlを充填したカラムに通導し、水、50%(W/W)エタノール、95%(W/W)エタノール各1000mlにて順次溶出させ、各々の画分を濃縮後凍結乾燥することにより、それぞれ水画分2.6g、50%エタノール画分2.3g、95%エタノール画分0.1gが得られた。
【0018】
次に、得られた抽出物の香味劣化に対する抑制効果を評価した。
【0019】
〔試験例1〕
以下のとおり、食品の酸化試験に用いられる試薬2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(DPPH)を使用して、一般的な酸化条件における本発明の各抽出物と既存の抗酸化剤のトコフェロールとの抗酸化力の比較を行った。
この試験はDPPHラジカルを抗酸化剤によって消去する試験であり、抗酸化作用を受けるとDPPHの紫色が無色に変化するので、紫色の変化を吸光度計で測定しラジカルの消去活性すなわち抗酸化力の指標としたものである。
0.1Mの酢酸緩衝液(pH5.5、2.0ml)に各被検物質の50%エタノール溶液(2.0ml)及び2×10−4MのDPPH(ナカライテスク社製)エタノール溶液(1.0ml)を加えて全量5.0mlとし、30分後に517nmにおける吸光度を測定した。結果は、被検物質無添加のコントロールに対して、吸光度を1/2に減少させるのに必要な被検物濃度(最終溶液)で表した。
【0020】
【0021】
表1に示されるように一般的な酸化条件の下では、本発明の各抽出物はいずれも抗酸化力を有し、特に抽出例4のエタノール溶出画分はトコフェロールとほぼ同等か、それに倍する抗酸化力を示した。
【0022】
〔試験例2〕
0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.5)にレモン特有の香味成分であるシトラールを10ppmとなるように添加し、この溶液に抽出例1〜4で得られた抽出物およびL−アスコルビン酸を100ppm添加したものと何も添加しないものをそれぞれ透明ガラス容器に入れ、光安定性試験器(東京理化器械株式会社製「LSR−300型」)にて光照射を行った。照射条件は温度10℃、白色蛍光ランプ40W×15で、15,000ルクスに調整し、2週間照射した。
照射後、緩衝液をジクロロメタンで抽出し、乾燥、濃縮後、緩衝液中のシトラールの残存量をガスクロマトグラフィー(GC)にて測定した。結果を表2に示す。なお、測定条件は次のとおりである。
測定条件
装 置 :HP5890 SERIES II
カラム :DB−wax (0.25mm i.d. × 30m, film thickness 0.25μm)
Oven temp. : 80℃−210℃, 3℃/min.
Injection : 250℃, Split ratio 100:1
Detector : 250℃, FID
表2におけるシトラール残存率(%)は以下の式にしたがって計算した。
シトラール残存率(%)= C/D×100
ここで、C:光照射後の試料中のシトラール含量
D:光照射前の試料中のシトラール含量
【0023】
【0024】
表に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは光照射によるシトラールの減少を強く抑制した。
【0025】
次に上記抽出で得られた香味劣化抑制剤を各種食品に添加して評価した。
【0026】
〔試験例3〕(ヨーグルト飲料)
牛乳94g、脱脂粉乳6gを混合後、殺菌(90〜95℃、5分間)した。48℃に冷却した後、スターター(乳酸菌)を接種した。これをガラス容器に入れ、発酵(40℃、4時間、pH4.5)させた。冷却後、5℃にて保存し、これをヨーグルトベースとした。一方、糖液は白糖20g、ペクチン1g、水79gを混合後、90〜95℃、5分間加熱し、ホットパック充填したものを使用した。上記ヨーグルトベース60g、糖液40g、香料0.1gを混合し、これをホモミキサー処理およびホモゲナイザー処理した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれ半透明プラスティック容器に充填した。それぞれ光安定性試験器に入れ、蛍光灯を照射した後(6,000ルクス、10℃、5時間)、習熟した10名のパネルにより香味の変化(劣化)度合いについて官能評価を行った。香味の変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射のヨーグルト飲料を使用した。その結果は表2のとおりである。なお、表2中の評価の点数は、下記の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「金属臭」、「漬物臭」、「油の劣化臭」を指す。
(採点基準)
異味、異臭が強い :4点
香味が非常に変化した :3点
香味が変化した :2点
香味がやや変化した :1点
香味が変化していない :0点
【0027】
【0028】
表3に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0029】
〔試験例4〕(レモン風味飲料)
グラニュー糖10g、クエン酸0.1g、レモン香料0.1gおよび水にて全量100gに調製した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと各種の香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれガラス容器に充填し70℃×10分間殺菌した。それらを光安定性試験器にて光照射を行った後(15,000ルクス、10℃、3日間)、習熟した10名のパネルにより香味の変化(劣化)度合いについて官能評価を行った。香味変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射のレモン風味飲料を使用した。その結果は表3のとおりである。なお、表3中の評価の点数は、試験例2と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「ビニール臭」、「グリーン臭」を指す。
【0030】
〔表4〕
【0031】
表4に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0032】
〔試験例5〕(乳酸菌飲料)
発酵乳原液(全固形分54%、無脂乳固形分4%)を蒸留水で重量比5倍に希釈し、殺菌乳酸菌飲料を調整した。この飲料100gに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれガラス容器に充填し70℃、10分間殺菌した。それらを光安定性試験器にて光照射を行った後(15000ルクス、10℃、12時間)、習熟した10名のパネルにより香味の変化(劣化)度合いについて官能評価を行った。香味変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射の乳酸菌飲料を使用した。その結果は表4のとおりである。なお、表4中の評価の点数は、試験例2と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「漬物臭」、「金属臭」を指す。
【0033】
〔表5〕
【0034】
表5に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0035】
〔試験例6〕(100%オレンジ飲料)
バレンシアオレンジ5倍濃縮果汁40gに蒸留水160gを添加し混合した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれ缶に詰め、70℃、10分間殺菌し、40℃の恒温槽に入れ2週間保管した。習熟した10名のパネルにより香味の変化(劣化)度合いについて官能評価を行った。香味の変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない5℃で2週間保管した100%オレンジ飲料を使用した。その結果は表5のとおりである。なお、表5中の評価の点数は、試験例2と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「イモ臭」、「スパイス様のにおい」を指す。
【0036】
〔表6〕
【0037】
表6に示すように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0038】
〔実施例1〕(マーガリン)
ショートニング55g、コーン油15g、30%ベータカロチン液0.1g、レシチン0.2g、乳化剤0.3gを混合し湯せんにて80℃、10分間殺菌した。一方、水27.9g、食塩0.5g、脱脂粉乳1g、バンレイシ果皮抽出物凍結乾燥粉末1重量%/50重量%エタノール水溶液1.0gを混ぜ湯せんで85℃まで加熱した。かくして得られたコーン油混合物と脱脂粉乳混合物とをそれぞれ50〜60℃まで冷却した後、混合し、氷水にて冷却しながらディスパーを用いて1,500rpmにて5分間撹拌した。水にて冷却しながらゴムベラで全体をよく練った(10℃まで冷却)。容器に移し一晩冷蔵庫で熟成させマーガリンを完成させた。得られたマーガリンは習熟したパネルによる評価の結果、異味異臭がなく、マーガリン本来の香味が保持されていた。
【0039】
〔実施例2〕バニラチンキ
バニラビーンズ10gにエタノール35gと蒸留水65gを添加し、室温暗所で4週間静置抽出した。この溶液をろ過することにより、90gのバニラチンキを得た。このチンキ90gにバンレイシ果皮抽出物凍結乾燥粉末0.1重量%/50重量%エタノール水溶液10gを添加し、本発明のバニラチンキを完成した。得られたバニラチンキは習熟したパネルによる評価の結果、異味異臭がなく、バニラ本来の香味が保持されていた。
【0040】
〔実施例3〕グレープフレーバー
以下に示す処方によりグレープフレーバーを作成した。
イソ吉草酸イソアミル 10g
シンナミルアルコール 5g
酢酸エチル 60g
酪酸エチル 15g
3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル 10g
ヘプタン酸エチル 8g
アントラニル酸メチル 130g
サリチル酸メチル 15g
エタノール 373g
蒸留水 374g
上記グレープフレーバー100gにバンレイシ果皮抽出物凍結乾燥粉末1重量%/50重量%エタノール水溶液1.0gを添加し、本発明のグレープフレーバーを完成した。得られたグレープフレーバーは習熟したパネルによる評価の結果、異味異臭がなく、グレープフレーバーの香味が保持されていた。
【0041】
【発明の効果】
本発明の香味劣化抑制剤を食品等の経口組成物に添加することにより、光、熱、酸素等の影響を受けやすいものについて香味劣化を抑制することができる。特に光に対しては顕著な劣化抑制効果を示し、長期間香味を保持させることができるので、光照射の影響を受け易い透明ガラス容器、半透明プラスチック容器、或いは透明袋等に充填された経口組成物に適用すれば、優れた効果が発揮される。また、本発明の香味劣化抑制剤自体の味・匂いが経口組成物の本来の香味に影響を及ぼすことがないので幅広く適用することができる。
Claims (6)
- バンレイシ(Annona)属植物の果皮の溶媒抽出物を1種または2種以上含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
- バンレイシ(Annona)属に属する植物が、バンレイシ(Annona squamosa Linn.)、チェリモヤ(Annona cherimola Mill)、イヌバンレイシ(Annona glabra Linn.)、ホシバンレイシ(Annona Montana Macf.)、トゲバンレイシ(Annona muricata Linn.)またはギュウシンリ(Annona reticulata Linn.)であることを特徴とする請求項1記載の香味劣化抑制剤。
- 請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤が1〜500ppm添加されてなる経口組成物。
- 請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤を経口組成物に1〜500ppm添加することを特徴とする経口組成物の香味劣化抑制方法。
- 請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤が0.005〜5重量%添加されてなる香料。
- 請求項1又は2に記載の香味劣化抑制剤を香料に0.005〜5重量%添加することを特徴とする香料の劣化を抑制する方法。
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