JP4231243B2 - 香味劣化抑制剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、香味成分を含む食品、口腔衛生剤または香料に広く適用することができる特定の天然物由来の香味劣化抑制剤および香味劣化抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲料や食品あるいは歯磨き剤、口臭防止剤のような口腔衛生剤(以下、経口組成物と称する。)は口に入った瞬間にその味と匂いが感じられるので、経口組成物の香味は各種栄養成分と同様に重要な要素である。こうした食品等の香味は製造、流通、保存等の各段階で徐々に劣化していくことはよく知られている。劣化に関係する要因として、熱、光、酸素、さらには水等が挙げられる。そこで、従来、特に酸素による香味の劣化対策として、酸素透過性を低くした合成樹脂製の容器や袋の開発、また、脱酸素条件を組み入れた食品製造工程の導入、さらには酸化防止剤の添加等が施されていたが、他の劣化要因、特に光による劣化の対策はあまり考慮されていなかった。しかし、最近、店頭ディスプレイ時の商品イメージアップのため透明ガラス容器入り食品、半透明プラスチック容器入り食品、透明袋入り食品等の製造・販売が増加しつつある。さらに、それらをコンビニエンスストア等で長時間、蛍光灯下に陳列する販売形態が一般的になってきた。従って、食品などの経口組成物は以前よりもさらに光の影響を受けやすくなり、香味劣化などの結果を招くことになった。そこで、光による香味の劣化に対して特に大きな抑制効果をもち、さらに加熱殺菌工程や加熱保存時の熱による劣化抑制効果をも併せもつような手段を開発することが必要となってきた。光による香味劣化は、香味成分が光照射によって分解され芳香・美味が消失し、また更に分解物が悪臭・異味成分に転化することにより生じる。こうした光による劣化を主に抑制するために、ルチン、モリン又はケルセチンを添加して悪臭・異味物質の発生を防止し保存性の向上を図った乳含有酸性飲料(特公平4−21450号公報)やコーヒー生豆抽出物由来のクロロゲン酸、カフェー酸、フェルラ酸と、ビタミンC、ルチン、ケルセチンとを併用して日光によるフレーバー劣化を防止する方法(特開平4−27374号公報)等が提案されている。しかし、従来技術における天然物由来の劣化抑制剤については、一般的に安全性が高く推奨できるが、その一方で、香味の劣化抑制効果を奏するためにはある程度多量に使用する必要があり、その結果、劣化抑制剤自体が有している味や匂いが食品そのものの味や香りに悪影響を与えるなど実用性に欠ける点があった。 なお、光透過性を抑えた容器や袋を用いる経口組成物の包装手段改良による劣化抑制方法も提案されているが、これもコストと香味劣化抑制効果の両面から考えると十分ではなかった。従って、経口組成物に添加した場合に安全性が高く、経口組成物本来の香味に影響を与えることなく少量の使用で十分な効果を奏し、かつ経済性に優れた香味劣化の抑制手段として、新たな天然物由来の劣化抑制剤が要望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術における問題点を解決し、安全性が高く、しかも経口組成物本来の香味に影響を与えることない香味劣化抑制剤の提供、すなわち、経口組成物の製造、流通、保存等の各段階で主として光、さらに熱や酸素等の影響による香味の劣化を抑制する香味劣化抑制剤、当該抑制剤を所定量添加してなる品質の安定した経口組成物並びに当該抑制剤を所定量添加して香味の劣化を抑制し食品などの品質の安定を図る方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、植物を中心とする多種多様の天然物由来の成分について香味劣化抑制活性を鋭意検討した結果、発酵茶葉の溶媒抽出物を使用することにより、光に対しては顕著に、さらに熱、酸素等による食品などの香味劣化を長期間抑制できることを見い出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、発酵茶葉の溶媒抽出物を含有することを特徴とする香味劣化抑制剤である。この溶媒抽出物は、水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出することにより得られる。本発明はさらに、上記の香味劣化抑制剤を1〜500ppm添加してなる経口組成物である。さらに本発明は、上記香味劣化抑制剤を経口組成物に1〜500ppm添加して香味劣化を抑制する方法である。また本発明は上記香味劣化抑制剤を0.005〜5重量%添加されてなる香料である。さらに本発明は、上記香味劣化抑制剤を香料に0.005〜5重量%添加して劣化を抑制する方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(1) 原材料
本発明に使用する発酵茶葉は、茶(Camellia sinensis var. sinensis又はCamellia sinensis var. assamica)の生葉を萎凋・揉捻後、自らの酸化酵素で完全に発酵させて得られる。発酵茶葉の例として紅茶、紅だん茶の茶葉が挙げられるが、紅茶葉を用いることが好ましい。
【0006】
(2)抽出処理
▲1▼溶媒
抽出処理に使用する溶媒は、水又は極性有機溶媒であり、有機溶媒は含水物であっても良い。
極性有機溶媒としては、アルコール、アセトン、酢酸エチル等が上げられる。中でも人体への安全性と取扱性の観点から水またはエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2〜4の脂肪族アルコールが望ましい。特に水又はエタノール又はこれらの混合物が望ましい。
抽出に用いる溶媒の量は任意に選択できるが、一般には前記原材料1重量部に対し溶媒量2〜100重量部を使用する。
なお、抽出の前処理としてヘキサン等の非極性有機溶媒であらかじめ脱脂処理をし、後の抽出処理時に余分な脂質が抽出されるのを防止することもできる。またこの脱脂処理で結果的に脱臭等の精製ができる場合がある。また脱臭の目的で抽出前に水蒸気蒸留処理を施してもよい。
▲2▼抽出処理方法
抽出処理方法としては、溶媒の種類、量等により種々の方法を採用することができる。例えば前記原材料を溶媒中に入れ、浸漬法又は加熱還流法で抽出することができる。なお浸漬法による場合は加熱条件下、室温又は冷却条件下のいずれであってもよい。
ついで、溶媒に不溶な固形物を除去して抽出液を得るが、固形物除去方法としては遠心分離、濾過、圧搾等の各種の固液分離手段を用いることができる。
得られた抽出液はそのままでも香味劣化抑制剤として使用できるが、例えば水、エタノール、グリセリン、トリエチルシトレート、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等の液体希釈剤で適宜希釈して使用してもよい。またはデキストリン、シュークロース、ペクチン、キチン等を加えることもできる。これらをさらに濃縮してペースト状の抽出エキスとしても、また凍結乾燥又は加熱乾燥などの処理を行い粉末として使用してもよい。
また超臨界抽出による抽出、分画、または脱臭処理したものも使用可能である。
▲3▼精製
上記方法で得られた抽出物は、そのまま経口組成物に配合して香味劣化抑制剤として使用することができるが、さらに、脱色、脱臭等の精製処理をすることができる。精製処理には活性炭や多孔性のスチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる合成樹脂吸着剤などが使用できる。精製用の合成樹脂吸着剤としては例えば三菱化学株式会社製「ダイヤイオンHP−20(商品名)」やオルガノ株式会社製「アンバーライトXAD−2(商品名)」などが使用できる。
【0007】
(3)香味劣化抑制剤の調製
香味劣化抑制剤は、上記のとおり得られた抽出物を原材料として例えば以下のように調製される。
一般的には各種成分を組み合わせて、例えば水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の(混合)溶剤に適当な濃度で溶解させて(具体的には、水/エタノール、水/エタノール/グリセリン、水/グリセリン等の混合溶剤)液剤とする。また、各溶液に賦形剤(デキストリン等)を添加し噴霧乾燥によりパウダー状にすることも可能であり、用途に応じて種々の剤形を採用することができる。
【0008】
(4) 用法
本発明の香味劣化抑制剤は経口組成物の加工段階で適宜添加することができる。添加量は、抑制剤の濃度或いは経口組成物に含有されている香味成分の種類や香味閾値によっても多少異なるが、一般的に飲料や食品あるいは歯磨き剤、口臭防止剤のような口腔衛生剤に対して1〜500ppmの添加量(発酵茶葉抽出物の固形成分として)が適当である。食品及び口腔衛生剤などの本来の香味に影響を及ぼさない閾値の範囲内で添加する観点からは1〜200ppmが好ましく、特に1〜100ppmが好ましい。一方本発明の香味劣化抑制剤を香料に使用する場合は、0.005〜5重量%が適当であり、本来の香味に影響を及ぼさない範囲内で添加する観点からは0.005〜2重量%が好ましく、特に0.01〜1重量%が好ましい。
また他の既知の香味劣化抑制剤を1種類以上併用する場合の混合割合は、特に限定されるものではない。混合した抑制剤の添加量については、使用する抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の製品の種類により異なるが、飲料や食品あるいは歯磨き剤、口臭防止剤のような口腔衛生剤に対して1〜500ppmが適当である。1〜100ppmの範囲が好ましい。一方本発明の香味劣化抑制剤を香料に使用する場合は、0.005〜5重量%が適当であり、本来の香味に影響を及ぼさない範囲内で添加する観点からは0.005〜2重量%が好ましく、特に0.01〜1重量%が好ましい。
また本香味劣化抑制剤と一般に使用されているL−アスコルビン酸、緑茶抽出物、ルチン等の酸化防止剤と併用してもよく、併用する酸化防止剤は特に限定されるものではない。混合した抑制剤の添加量については、使用する抑制剤の成分の純度、あるいは添加対象の製品の種類により異なるが、飲料や食品あるいは歯磨き剤、口臭防止剤のような口腔衛生剤に対しては1〜500ppmが適当である。特に1〜100ppmの範囲が好ましい。一方香料に対しては0.005〜2重量%が適当であり、特に0.01〜1重量%の範囲が好ましい。
【0009】
本発明の香味劣化抑制剤が適用される経口組成物又は香料の例として下記のものが挙げられる。
飲料…コーヒー、紅茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、栄養ドリンクなど。
菓子類…ゼリー、プリン、ババロア、キャンディー、ビスケット、クッキー、チョコレート、ケーキ類など。
フライ食品…即席(フライ)麺類、とうふの油揚(油揚、生上、がんもどき)、揚かまぼこ、てんぷら、フライ、スナック類(ポテトチップス、揚あられ類、かりんとう、ドーナッツ、調理冷凍食品(冷凍コロッケ、エビフライ等)。
油脂及び油脂加工食品及び油脂を原料とする食品…食用油脂(動物性油脂、植物性油脂)、マーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング、ハードバター。
乳、乳製品、乳等を主原料とする製品…乳(生乳、牛乳、加工乳等)、乳製品(クリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエー、チーズ、アイスクリーム類、ヨーグルト、練乳、粉乳、濃縮乳等)、乳等を主原料とする製品。
口腔衛生剤…歯磨き、うがい薬、口中清涼剤、口臭防止剤など。
香料…香料原料(精油、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料)およびそれらを含有する香料組成物。
【0010】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
抽出例を以下のとおり示す。
【0011】
〔抽出例1〕水抽出
紅茶葉50gに、水500gを加え1時間加熱還流して抽出した。
不溶物を濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮、凍結乾燥し褐色の粉末(以下「水抽出物」と呼ぶ)9.0g得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図1に示すとおりである( 測定濃度:20ppm、希釈溶剤:蒸留水)。
λmax:269nm、204nm
b) 溶解性:水に易溶、50重量%エタノール水溶液に可溶、エタノールに不溶。
【0012】
〔抽出例2〕50重量%エタノール水溶液抽出
紅茶葉50gに、50重量%エタノール水溶液500gを加え1時間加熱還流して抽出した。
不溶物を濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮、凍結乾燥し褐色の粉末(以下「50重量%エタノール抽出物」と呼ぶ)15.1g得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図2に示すとおりである( 測定濃度:20ppm、希釈溶剤:50重量%エタノール水溶液)。
λmax: 273nm、207nm
b) 溶解性:水に可溶、50重量%エタノール水溶液に易溶、エタノールに不溶。
【0013】
〔抽出例3〕95重量%エタノール水溶液抽出
紅茶葉50gに、95重量%エタノール水溶液500gを加え1時間加熱還流して抽出した。
不溶物を濾過により除去した後、濾液を減圧濃縮、凍結乾燥し褐色の粉末(以下「95重量%エタノール抽出物」と呼ぶ)10.1g得た。この抽出物の物性は以下の通りであった。
a) 紫外線吸収スペクトルは図3に示すとおりである( 測定濃度:20ppm、希釈溶剤:95重量%エタノール水溶液)。
λmax:273nm、207nm
b) 溶解性:水に不溶、50重量%エタノール水溶液に可溶、エタノールに易溶。
【0014】
試験例において単品試薬として以下のものを使用した。
1)L−アスコルビン酸:
ナカライテスク(株)製のL(+)−アスコルビン酸を使用した。
【0015】
次に、得られた抽出物の香味劣化に対する抑制活性を評価した。
【0016】
〔試験例1〕
砂糖35g、クエン酸0.35g及び特にレモンに特有の香味成分であるシトラール1gを含有する65重量%エタノール水溶液を準備した(全量1000ml)。この溶液を透明ガラス容器に入れ、光安定性試験器(東京理化器械株式会社製「LSR−300型」)にて光照射を行った。照射条件は温度10℃、白色蛍光ランプ40W×12及び360nm近紫外線ランプ40W×3で、4,000ルクスに調整し、近紫外線強度0.3mW/cm2(器内中央)で72時間である。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて光照射後のシトラール含量を測定した。結果を表1に示す。なお、測定条件は次のとおりである。
【0017】
(測定条件)
装 置:日立製作所製「HITACHI D−7000 HPLC システム」
カラム:ナカライテスク社製「コスモシール 5C18、4.6mm×250mm」(カラム温度40℃)
溶離液:A. アセトニトリル、B. 水
グラジエント条件 0分 → 25分
A.アセトニトリル 10% 90%
B.水 90% 10%
流 速:1ml/分間
検出波長:254nm
【0018】
表1におけるシトラール残存率(%)は以下の式にしたがって計算した。
シトラール残存率(%)= C/D×100
ここで、C:光照射後の試料中のシトラール含量
D:光照射前の試料中のシトラール含量
【0019】
【0020】
表1に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、抑制剤を添加したものは光照射によるシトラールの減少を強く抑制した。
【0021】
次に上記抽出で得られた香味劣化抑制剤を各種食品に添加して評価した。
〔試験例2〕(ヨーグルト飲料)
牛乳94g、脱脂粉乳6gを混合後、殺菌(90〜95℃、5分間)した。48℃に冷却した後、スターター(乳酸菌)を接種した。これをガラス容器に入れ、発酵(40℃、4時間、pH4.5)させた。冷却後、5℃にて保存し、これをヨーグルトベースとした。一方、糖液は白糖20g、ペクチン1g、水79gを混合後、90〜95℃、5分間加熱し、ホットパック充填したものを使用した。上記ヨーグルトベース60g、糖液40g、香料0.1gを混合し、これをホモミキサー処理およびホモゲナイザー処理した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれ半透明プラスティック容器に充填した。それぞれ光安定性試験器に入れ、蛍光灯を照射した後(6,000ルクス、10℃、5時間)、習熟した10名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味の変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射のヨーグルト飲料を使用し、香味の変化(劣化)度合いを評価した。その結果は表2のとおりである。なお、表2中の評価の点数は、下記の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「金属臭」、「漬物臭」、「油の劣化臭」を指す。
なお以下の採点基準中の異味、異臭
(採点基準)
異味、異臭が強い :4点
香味が非常に変化した :3点
香味が変化した :2点
香味がやや変化した :1点
香味が変化していない :0点
【0022】
【0023】
表2に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、香味劣化抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0024】
〔試験例3〕(レモン飲料)
グラニュー糖10g、クエン酸0.1g、レモン香料0.1gおよび水にて全量100gに調製した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと各種の香味劣化抑制剤を5ppm添加したものをそれぞれガラス容器に充填し70℃、10分間殺菌した。それらを光安定性試験器にて光照射を行った後(15,000ルクス、10℃、3日間)、習熟した10名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射のレモン飲料を使用し、香味の変化(劣化)度合いを評価した。その結果は表3のとおりである。なお、表3中の評価の点数は、試験例2と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「ビニール臭」、「グリーン臭」を指す。
【0025】
【0026】
表3に示されるように無添加のものに比べ、抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0027】
〔試験例4〕(乳酸菌飲料)
発酵乳原液(全固形分54%、無脂乳固形分4%)を蒸留水で重量比5倍に希釈し、殺菌乳酸菌飲料を調整した。この飲料100gに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を10ppm添加したものをそれぞれガラス容器に充填し70℃、10分間殺菌した。それらを光安定性試験器にて光照射を行った後(15000ルクス、10℃、12時間)、習熟した10名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、対照としては香味劣化抑制剤を添加していない蛍光灯未照射の乳酸菌飲料を使用し、香味の変化(劣化)度合いを評価した。その結果は表4のとおりである。なお、表4中の評価の点数は、試験例2と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「漬物臭」、「金属臭」を指す。
【0028】
【0029】
表4に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0030】
〔試験例5〕(100%オレンジ飲料)
バレンシアオレンジ5倍濃縮果汁40gに蒸留水160gを添加し混合した。これに香味劣化抑制剤を添加しないものと香味劣化抑制剤を20ppm添加したものをそれぞれ缶に詰め、70℃、10分間殺菌した。それぞれ40℃の恒温槽に入れ2週間保管した。習熟した10名のパネルを選んで官能評価を行った。そして、この場合、香味の変化のない対照としては香味劣化抑制剤を添加していない5℃で2週間保管した100%オレンジ飲料を使用し、香味の変化(劣化)度合いを評価した。その結果は表5のとおりである。なお、表5中の評価の点数は、試験例2と同様の基準で採点した各パネルの平均点である。また、採点基準中の異味、異臭とは特に「イモ臭」、「スパイス様の匂い」を指す。
【0031】
【0032】
表5に示されるように無添加およびL−アスコルビン酸添加のものに比べ、抑制剤を添加したものは香味劣化抑制効果が高いことがわかった。
【0033】
〔実施例1〕(口腔洗浄剤)
下記処方量で配合し口腔洗浄剤を作成した。
エタノール 15.0g
グリセリン 10.0g
ポリオキシエチレン 2.0g
サッカリンナトリウム 0.15g
安息香酸ナトリウム 0.05g
香料 0.3g
リン酸二水素ナトリウム 0.1g
着色剤 0.2g
水抽出物の1重量%/50重量%エタノール水溶液 0.1g
精製水 72.1g
【0034】
〔実施例2〕(マーガリン)
ショートニング55g、コーン油15g、30%ベータカロチン液0.1g、レシチン0.2g、乳化剤0.3gを混合し湯せんにて80℃、10分間殺菌した。一方、水27.9g、食塩0.5g、脱脂粉乳1g、紅茶葉の50重量%エタノール抽出物1重量%/50重量%エタノール水溶液0.1gを混ぜ湯せんで85℃まで加熱した。かくして得られたコーン油混合物と脱脂粉乳混合物とをそれぞれ50〜60℃まで冷却した後、混合し、氷水にて冷却しながらディスパーを用いて1,500rpmにて5分間撹拌した。水にて冷却しながらゴムベラで全体をよく練った(10℃まで冷却)。容器に移し一晩冷蔵庫で熟成させマーガリンを完成させた。
【0035】
〔実施例3〕(バニラエキストラクト)
バニラビーンズ10gにエタノール35gと蒸留水65gを添加し、室温暗所で4週間静置抽出した。この溶液をろ過することにより、90gのバニラエキストラクトを得た。このエキストラクト90gに紅茶葉の95重量%エタノール抽出物1重量%/50重量%エタノール水溶液10gを添加し、本発明のバニラエキストラクトを完成した。
【0036】
〔実施例4〕(アップルフレーバー)
以下に示す処方によりアップルフレーバーを作成した。
ギ酸イソアミル 100g
酢酸イソアミル 100g
ヘキサン酸イソアミル 60g
オクタン酸イソアミル 10g
ゲラニオール 10g
エタノール 430g
蒸留水 290g
上記アップルフレーバー100gに紅茶葉の50重量%エタノール抽出物1重量%/50重量%エタノール水溶液2gを添加し、本発明のアップルフレーバーを完成した。
【0037】
〔実施例5〕(グレープフレーバー)
以下に示す処方によりグレープフレーバーを作成した。
イソ吉草酸イソアミル 10g
シンナミルアルコール 5g
酢酸エチル 60g
酪酸エチル 15g
3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル 10g
ヘプタン酸エチル 8g
アントラニル酸メチル 130g
サリチル酸メチル 15g
エタノール 373g
蒸留水 374g
上記グレープフレーバー100gに紅茶葉の水抽出物1重量%/50重量%エタノール水溶液1.0gを添加し、本発明のグレープフレーバーを完成した。
【0038】
【発明の効果】
本発明の香味劣化抑制剤を食品等に添加することにより、光、熱、酸素等の影響を受けやすいものについて香味劣化を抑制することができる。特に光に対しては顕著な劣化抑制効果を示し、長期間香味を保持させることができるので、光照射の影響を受け易い透明ガラス容器、半透明プラスチック容器、或いは透明袋等に充填された食品等に適用すれば、優れた効果が発揮される。また、本発明の劣化抑制剤自体の味・匂いが食品等の本来の香味に影響を及ぼすことがないので幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抽出例1における紅茶葉の水抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。
【図2】抽出例2における紅茶葉の50重量%エタノール抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。
【図3】抽出例3における紅茶葉の95重量%エタノール抽出物の紫外線吸収スペクトル図である。
Claims (7)
- 紅茶葉を水、エタノール又はこれらの混合物で抽出して得られた紅茶抽出物を含有することを特徴とする香味劣化抑制剤。
- 抽出物が50〜95重量%エタノール水溶液で抽出して得られたものである請求項1記載の香味劣化抑制剤。
- 香味劣化が光による劣化である請求項1又は2記載の香味劣化抑制剤。
- 香味劣化が蛍光灯の光照射による劣化である請求項3記載の香味劣化抑制剤。
- 請求項1乃至4のいずれかの項に記載の香味劣化抑制剤を食品または口腔衛生剤に1〜500ppm添加することを特徴とする経口組成物の香味劣化を抑制する方法。
- 請求項1乃至4のいずれかの項に記載の香味劣化抑制剤が0.005〜5重量%添加されてなる香料。
- 請求項1乃至4のいずれかの項に記載の香味劣化抑制剤を香料に0.005〜5重量%添加することを特徴とする香料の劣化を抑制する方法。
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