JP2018177649A - ボルテゾミブを含有する医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボルテゾミブ凍結乾燥製剤に用いることができる、類縁物質の生成抑制と凍結乾燥ケーキの保存安定性に優れ、且つ用時の再溶解時間が短縮された製剤を調製するための医薬組成物を提供することを課題とする。【解決手段】ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含有する医薬組成物が、上記課題を解決できることを見出した。ボルテゾミブのボロン酸は、水酸基及び/又はカルボキシ基を有する二座配位子化合物と複合体を形成する物性であるが、二座配位子化合物としてグルコン酸又はフルクトースを選択し、ボルテゾミブと該二座配位子化合物との複合体を有効成分として含み、製剤的な安定性及び再溶解性を奏功するための特定の糖類との組み合わせによる医薬組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、ボルテゾミブを含有する医薬製剤を調製するための組成物に関する。特に、ボルテゾミブを有効成分とする凍結乾燥製剤であって、類縁物質の生成抑制や凍結乾燥ケーキの形成性において高い保存安定性を有し、且つ用時溶液再構成性に優れた医薬製剤を調製するための医薬組成物に関する。
ボルテゾミブは、化学名(N‐(2‐ピラジンカルボニル)‐L‐フェニルアラニン‐L‐ロイシンボロン酸)とするプロテアソーム阻害作用を有する抗悪性腫瘍剤であり、現在、多発性骨髄腫及びマントル細胞リンパ腫の治療剤として用いられている。臨床に供されているボルテゾミブの医薬製剤は、有効成分であるボルテゾミブと添加剤のD−マンニトールを含む凍結乾燥製剤であって、ボルテゾミブ注射用製剤(ベルケイド(Velcade)(登録商標))として提供されている。該製剤は、静脈内投与と皮下投与で承認がなされており、その投与方法によって溶解液の量が異なる。静脈内投与を行う場合は生理食塩水3mLに、皮下投与を行う場合は生理食塩水1.2mLに溶解して用いられている。
ジペプチド様アルキルボロン酸であるボルテゾミブは、酸化や化学的な分解を受けやすく、不安定な物性であることが知られている。また、ボロン酸自体が脱水的に反応して酸無水物化をして多量体化する物性である。このため、ボルテゾミブを有効成分とする医薬製剤を調製する場合、酸化や分解に対する安定化、酸無水物化による多量体化を抑制するための対策が必要である。
例えば、特許文献1には、ボルテゾミブのボロン酸とマンニトール等の糖類とのボロン酸エステル誘導体を開示しており、これを用いた医薬製剤が教唆されている。これは、ボルテゾミブ及びマンニトールのtert−ブタノール溶液又はtert−ブタノール含水溶液を凍結乾燥することで調製されている。また、特許文献2には、ボルテゾミブとトロメタミンを含む凍結乾燥製剤が記載されている。これは、強いB−N結合を有するボルテゾミブのトロメタミン塩であることが記載されている。特許文献3には、ボルテゾミブ誘導体の凍結乾燥製剤であって、シクロデキストリン及び単糖を有する増量剤と界面活性剤とからなる群から選択される医薬製剤が記載されている。特許文献4には、クエン酸等のα‐ヒドロキシ‐β‐カルボン酸とボルテゾミブとの酸無水物‐エステル誘導体が開示されており、それを医薬製剤にできることが記載されている。特許文献5及び6には、ボルテゾミブとグルコン酸塩との混合物を含む医薬組成物が開示されている。
以上のとおり従来知られているボルテゾミブを有効成分とする医薬製剤は、安定性を考慮して糖類等の添加剤と共に凍結乾燥製剤として調製されている。ボルテゾミブは安定性に問題がある有効成分であることが知られており、保存安定性を担保した医薬製剤とする必要がある。また、凍結乾燥製剤の場合、投与時に溶液状態に再構築する必要があるが再溶解時間の短縮など改善すべき問題が多くある。そのため、保存安定性が優れ、再溶解時間が短く、製剤が望まれている。
国際公開2002/059130号 国際公開2010/089768号 国際公開2010/114982号 国際公開2009/154737号 国際公開2015/025000号 国際公開2016/171446号
本発明は、製剤保存期間中におけるボルテゾミブの分解による類縁物質の生成抑制と凍結乾燥ケーキの保存安定性を達成し、且つ再溶解時間を短縮した凍結乾燥製剤を調製するための医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含有する医薬組成物が、製剤保存期間中のボルテゾミブの分解による類縁物質の生成抑制と凍結乾燥ケーキの保存安定性、並びに再溶解時間を短縮した医薬凍結乾燥製剤を提供できることを見出した。本願は、以下の[1]〜[13]に記載の発明を要旨とする。
[1] ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含有する医薬組成物。
ボルテゾミブのボロン酸は、水酸基及び/又はカルボキシ基を有する二座配位子化合物とエステル結合形成及び/又は酸無水物結合形成して複合体が形成される。本発明は、二座配位子化合物としてグルコン酸又はフルクトースを選択し、ボルテゾミブと該二座配位子化合物との複合体を有効成分として含み、製剤的な安定性及び再溶解性を奏功するための特定の糖類との組み合わせによる医薬組成物に関するものである。
[2] ボルテゾミブ及びグルコン酸及び/又はフルクトースとの複合体が、一般式(1)
Figure 2018177649
[Za及びZbは、グルコン酸又はフルクトース由来の結合残基を示す。]である[1]に記載の医薬組成物。
ボルテゾミブと該二座配位子化合物であるグルコン酸又はフルクトースとの複合体は、ボルテゾミブのボラン酸官能基と、グルコン酸又はフルクトースの水酸基とのエステル結合形成、並びに/若しくはグルコン酸のカルボキシ基との酸無水物結合形成による化学種である。グルコン酸又はフルクトースは、分子内に水酸基を複数個包含することから、単一化学種であることに限定されるものではなく、一般式(1)に係るZa及びZb基がグルコン酸又はフルクトース由来の結合残基である化学種として表されるものである。
[3] ガラス転移点が60℃以上の糖類が二糖類である[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4] 二糖類がラクトース、マルトース、トレハロース、スクロースである[3]に記載の医薬組成物。
本発明によるボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体と併せて用いる特定の糖類は、ボルテゾミブと複合体を形成しない物性の糖類を用いることが好ましく、二糖類であることが好ましい。すなわち、本発明の医薬組成物において、有効成分であるボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体の物性を妨げることが無い特定の糖類を用いることが好ましい。特に、ボルテゾミブとの複合体非形成性の糖類を用いることが好ましい。
[5] 当該医薬組成物に存在するボルテゾミブ相当質量として1質量部に対して、前記糖類が10質量部以上100質量部以下で含む[1]〜[4]の何れか一項に記載の医薬組成物。
本発明の医薬組成物は、ボルテゾミブ由来の化学種を有効成分として含有し、製剤用添加剤として特定の糖類を含有するが、その糖類の含有量は、ボルテゾミブ由来化学種について、ボルテゾミブ換算質量を基準に過剰量用いることが好ましい。
[6] ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から、溶媒を除去することにより調製される医薬組成物。
ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体は、ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩、若しくはフルクトースを含有する水を含む溶液中において平衡反応により調製することができるが、その際に、同時に本発明に係る特定の糖類も存在させて調製した医薬組成物であることが好ましい。すなわち、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体と、前記特定の糖類を物理的に混合して調製するのではなく、これらの構成が一体となった医薬組成物であることが好ましい態様である。
なお、該[6]に係る発明は、製造方法により特定される医薬組成物の発明としている。前述の通りボルテゾミブは水酸基及び/又はカルボキシ基を有する化合物と水溶液中で複合体を形成する物性であり、該複合体形成は水溶液中における平衡反応であって、濃度や温度等により経時的に多様な化学種とその組成を有する組成物の形態をとり得る。したがって、当該医薬組成物を化学構造体や特性等で表すことが困難であり、前記[6]で示される製造方法により特定される医薬組成物として表すことが適当であり、発明の明確性の要件を充足しているものと考える。
[7] ボルテゾミブ又はその誘導体がボルテゾミブとして1質量部に対して、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトースが2質量部以上で20質量部以下である、[6]に記載の医薬組成物。
[8] ボルテゾミブ又はその誘導体が1質量部に対して、前記糖類が10質量部以上100質量部以下で含む[6]又は[7]に記載の医薬組成物。
[9] 前記含水溶液はアルコール溶媒を含まない水溶液である[6]〜[8]の何れか一項に記載の医薬組成物。
[10] 凍結乾燥により溶媒を除去することにより得られる[6]〜[9]の何れか一項に記載の医薬組成物。
[11] ボルテゾミブとフルクトースの複合体。
[12] 一般式(1)
Figure 2018177649
[Za及びZbは、フルクトース由来の結合残基を示す。]であるボルテゾミブとフルクトースの複合体。
本発明は、ボルテゾミブ製剤として製剤安定性を付与できる新規なボルテゾミブ−糖複合体を提供することができる。
[13] [1]〜[10]の何れか一項の医薬組成物、若しくは前記[11]又は[12]に記載のボルテゾミブとフルクトースの複合体を含有する医薬製剤。
本発明は、前記医薬組成物又は前記ボルテゾミブとフルクトースの複合体について、医薬製剤としての用途を提供し、その医薬製剤を提供することができる。
本発明の医薬組成物は、ボルテゾミブの分解に伴う類縁物質の生成と製剤保存期間中の凍結乾燥ケーキの収縮を抑制することができ、保存安定性に優れたボルテゾミブの医薬製剤を提供することができる。また、当該医薬組成物を用いた医薬製剤は、用時に投与用溶液による溶解時間が短縮できており、医療従事者が行う投与調製の業務の負担を減らすことができる。
したがって、ボルテゾミブの効能および安全性を長期に亘って保持するだけでなく医療従事者や患者にとってもメリットが大きい医薬製剤を提供することができる。
本発明は、ボルテゾミブとグルコン酸との複合体又はボルテゾミブとフルクトースとの複合体を有効成分として含み、更にガラス転移点が60℃以上の糖類を含有する医薬組成物である。以下に、その詳細について説明する。
本発明は、ボルテゾミブとグルコン酸の複合体又はボルテゾミブとフルクトースの複合体を有効成分として含有する。ボルテゾミブは、プロテアソーム阻害活性を有する化学名(N‐(2‐ピラジンカルボニル)‐L‐フェニルアラニン‐L‐ロイシンボロン酸)である。当該化合物は、特許第3717934号公報にて開示されるボロン酸誘導体であって、それに記載の方法により入手可能である。ボルテゾミブは、そのボロン酸官能基が水酸基及び/又はカルボキシ基を有する二座配位子化合物とエステル結合形成及び/又は酸無水物結合形成して複合体が形成されることが知られている。すなわち、ボルテゾミブはポリオール化合物である糖類や、カルボキシ基を有するポリオール化合物である糖酸類と複合体形成ができる。本発明において、ボルテゾミブとグルコン酸の複合体又はボルテゾミブとフルクトースの複合体は、糖酸類の1種であるグルコン酸、又は糖類であるフルクトースとのボルテゾミブの複合体を用いることを第1の構成とする。
ボルテゾミブとグルコン酸の複合体、又はボルテゾミブとフルクトースの複合体は、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースを、水を主たる溶剤に溶解した含水溶液を調製し、これから溶剤を除去することにより調製することができる。
ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体を調製するために用いるボルテゾミブは、医薬品用の有効成分として用いることができる品質レベルである事が好ましい。ボルテゾミブは含水溶液中でボルテゾミブを再生することができるボルテゾミブ誘導体であっても良い。例えばボルテゾミブのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、自己脱水縮合体であるボルテゾミブ3量体、ボルテゾミブ−エチレングリコール複合体やボルテゾミブ−グリセリン複合体等の極めて解離しやすいエステル結合型複合体を挙げることができる。
また、当該複合体形成に用いられる二座配位子化合物として、グルコン酸又はフルクトースが用いられる。グルコン酸はその塩であっても良く、例えばグルコン酸マグネシウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸アンモニウム等を挙げることができる。好ましくはグルコン酸ナトリウムである。グルコン酸又はフルクトースは、医薬品用の品質レベルである事が好ましい。
ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体を調製するために用いる水を主たる溶剤は、水のみであっても良く、水と任意に混和する有機溶剤との混合溶剤であっても良い。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、グリセリン、プリピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油等を挙げることができる。
ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体を調製するために用いる水を主たる溶剤には、任意にpH調整剤を含有していても良い。例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、アスコルビン酸、酢酸等の有機酸、といった酸性剤が挙げられる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機酸のアルカリ土類金属塩等といったアルカリ性剤を挙げることができる。また、前記酸性剤及びアルカリ性剤を混合してpH調整した緩衝剤を用いても良い。
ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体は、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースを含有する含水溶液から溶剤を除去することにより調製することができる。溶剤除去方法としては特に限定されるものではないが、減圧溜去や凍結乾燥による方法を用いることができる。凍結乾燥法による溶剤除去方法を用いることが好ましい。したがって、当該溶剤は、凍結乾燥に使用できる水、グリセリン、tert−ブタノールからなる群から選択される水を含む溶剤を選択することが望ましい。
ボルテゾミブ及びグルコン酸又はフルクトースとの複合体は、特に限定されるものではないが下記一般式(1)
Figure 2018177649
[Za及びZbは、グルコン酸又はフルクトース由来の結合残基を示す。]で示される化学構造を有する化学種である。ボルテゾミブと、グルコン酸又はフルクトースは、好ましくは分子比1:1の関係による複合体である。これらの複合体は、NMRや質量分析(MS)による分析により検出することができる。グルコン酸又はフルクトースは、分子内に水酸基を複数個包含することから、当該複合体は単一化学種であることに限定されるものではなく、一般式(1)に係るZa及びZb基がグルコン酸又はフルクトース由来の結合残基である化学種として表されるものである。
特に好ましくは、Za及びZbは、酸素原子を介したグルコン酸の結合残基であってホウ素原子と共に環状構造を形成しており、若しくは酸素原子を介したフルクトースの結合残基であってホウ素原子と共に環状構造を形成している。Za及びZbがグルコン酸由来の結合残基である場合、Za及びZbの何れか一方がカルボキシ基による結合残基であり、もう一方が水酸基による結合残基であっても良く、Za及びZbがそれぞれ水酸基による結合残基であっても良い。Za及びZbがフルクトースの結合残基である場合、Za及びZbがそれぞれ水酸基による結合残基であっても良い。
ボルテゾミブとグルコン酸の複合体とは、ボルテゾミブのボロン酸とグルコン酸の2つの水酸基とのエステル結合形成による複合体及び/又はグルコン酸の水酸基とカルボキシ基によるエステル−酸無水物結合形成した複合体の態様である。ボルテゾミブとグルコン酸の分子比1:1の複合体は、化学式:C2533BNであり、分子量:544.37である。ボルテゾミブとグルコン酸の複合体は、H−NMRにおいて、ロイシンボロン酸部分のメチンプロトンに帰属される3.1ppmのシグナルの検出により特定することができる。また、質量分析において分子比1:1複合体に由来する分子イオンを検出することにより特定することができる。
一方、ボルテゾミブとフルクトースの複合体とは、ボルテゾミブのボロン酸とフルクトースの2つの水酸基とのエステル結合形成による複合体である。ボルテゾミブとフルクトースの分子比1:1の複合体は、化学式:C2533BNであり、分子量:528.37である。ボルテゾミブとフルクトースの複合体は、H−NMRにおいて、ロイシンボロン酸部分のメチンプロトンに帰属される2.9ppmのシグナルの検出により特定することができる。また、質量分析において分子比1:1複合体に由来する分子イオンを検出することにより特定することができる。
ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体の調製において、ボルテゾミブに対してグルコン酸又はフルクトースの適用量は、ボルテゾミブが1質量部に対し、グルコン酸又はフルクトースが1〜30質量部を含有することが好ましい。ボルテゾミブ1質量部に対してグルコン酸又はフルクトースが1質量部より少ない場合、ボルテゾミブとの複合体形成が十分に行われない懸念がある。ボルテゾミブ及びグルコン酸又はフルクトースとの複合体は、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースは、好ましくは分子比1:1による複合体であるが、グルコン酸又はフルクトースは過剰量で用いることが好ましく、ボルテゾミブ1質量部に対してグルコン酸又はフルクトースは2〜20質量部が好ましい。グルコン酸又はフルクトースの適用量は、3〜10質量部であることが更に好ましい。
本発明は医薬組成物として、ガラス転移点(Tg)が60℃以上の糖類を用いる。
ガラス転移点が60℃以上の糖類とは、例えばスクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、マルトトリオース、マルトシルトレハロース、マルトテトラオース、ラフィノース等を挙げることができる。ガラス転移点が高い糖類を用いることで、当該医薬組成物を用いた医薬製剤の保存安定性を確保するために有利である。
好ましくは、二糖類であってスクロース、トレハロース、マルトース、ラクトースである。ボルテゾミブは糖類と糖エステル型複合体を形成することが知られているが、意外なことに二糖類とは水溶液中で複合体を形成しないことが本発明者の検討により明らかとなった。本発明は、熱安定性に優れた糖類であって、尚且つ水溶液中でボルテゾミブと糖エステル型複合体を形成しない糖類を用いることが好ましい。すなわち、有効成分であるボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体の形成を妨げず、当該複合体の製剤安定性を確保することができる特定の糖類を適用することが重要である。より好ましくは、ガラス転移点(Tg)が80℃以上の二糖類であり、トレハロース、マルトース、ラクトースを用いることである。
本発明において、ガラス転移点が60℃以上の糖類の適用量は、本発明の医薬組成物中に含まれるボルテゾミブ相当質量として1質量部に対し、ガラス転移点が60℃以上の糖類が10〜100質量部を含有することが好ましい。前記糖類が10質量部より少ない場合、製剤保存安定性、溶解性において十分な性能が発揮されない虞がある。一方、ガラス転移点が60℃以上の糖類の適用上限は特に限定されるものではないが、医薬品として容認できる適当量の範囲において用いることができ、100質量部程度に設定される。なお、ボルテゾミブ相当質量とは、当該医薬組成物中に含まれるボルテゾミブ及びその自己脱水縮合体、並びにグルコン酸又はフルクトースとの複合体を含めたボルテゾミブ及びその誘導体をボルテゾミブとして換算した質量を指す。好ましくは、ボルテゾミブ相当質量として1質量部に対し、ガラス転移点が60℃以上の糖類を10〜50質量部で用いることである。
本発明の医薬組成物は、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む。該医薬組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、前述の方法で調製したボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体と、ガラス転移点が60℃以上の糖類を混合することで調製することができる。
一方で、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から、溶媒を除去することにより調製することもできる。すなわち、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体形成と同時に、ガラス転移点60℃以上の糖類とを含有する医薬組成物を調製することも可能である。このような調製方法を採用することにより、製剤処方成分を同一溶液として均一に混合することができ、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体とガラス転移点60℃以上の糖類を分子レベルで混合させることができ、本発明の効果を最も奏功できる態様であることから好ましい。
本発明の医薬組成物は、ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から、溶媒を除去することにより調製される医薬組成物を包含する。また、本発明は、ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から、溶媒を除去することによる医薬組成物の製造方法をも包含する。
なお、ボルテゾミブの誘導体とは、前記含水溶液中でボルテゾミブを再生することができる誘導体であって、例えばボルテゾミブのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、自己脱水縮合体であるボルテゾミブ3量体、ボルテゾミブ−エチレングリコール複合体やボルテゾミブ−グリセリン等の極めて解離しやすいエステル結合型複合体を挙げることができる。
前記のボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を溶解させて溶液を調製するための含水溶媒とは、水を主たる成分とする溶剤であって、水のみであっても良く、水と任意に混和する有機溶剤との混合溶剤であっても良い。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、tert−ブタノール、グリセリン、プリピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリソルベート、ポリオキシエチレンヒマシ油等を挙げることができる。この溶剤は、後述するように凍結乾燥法により除去することが望ましいことから、その工程に適用できる溶剤であることが好ましく、水、グリセリン、tert−ブタノールからなる群から選択される水を含む溶剤を選択することが望ましい。グリセリン、tert−ブタノール等のアルコール溶媒を含まず、水のみの溶媒であることが好ましい。
ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩、若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、減圧溜去や凍結乾燥による方法を用いることができる。凍結乾燥法による溶剤除去方法を用いることが好ましい。
以上の方法により、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体、及びガラス転移点が60℃以上の糖類を分子レベルで接触させて十分な相互作用を発揮させることができる本発明の医薬組成物を調製することができる。
なお、この調製方法において、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトースの適用量は、ボルテゾミブが1質量部に対し、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトースが1〜30質量部が好ましい。ボルテゾミブ1質量部に対してグルコン酸又はその塩若しくはフルクトースは2〜20質量部がより好ましく3〜10質量部であることが更に好ましい。
また、ガラス転移点が60℃以上の糖類の適用量は、ボルテゾミブ1質量部に対して、ガラス転移点が60℃以上の糖類が10〜100質量部が好ましく、より好ましくは10〜50質量部である。
前記のボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液には、任意の添加成分としてpH調整剤、等張化剤、賦形剤、溶解補助剤、抗酸化剤等の通常の医薬製剤に用いられる他の添加剤を含有していても良い。これらの他の添加剤は、本発明に係る医薬組成物のボルテゾミブの安定性を維持する範囲において通常の医薬製剤に用いられる添加剤を用いて良く、その適用量も適宜設定されて良い。他の添加剤の含有量は、ボルテゾミブの安定性を考慮して適切な量を適宜設定して用いられるが、有効成分であるボルテゾミブ又はその誘導体1質量部に対し、それぞれ30質量部以下で用いることが好ましい。より好ましくは、ボルテゾミブ1質量部に対し、それぞれ15質量部以下である。
本発明の医薬組成物は、pH調整剤を含むことが好ましい。なお、pH調整剤を含み、有効成分であるボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体の濃度として1.0〜2.5mg/mLとした本発明の医薬組成物水溶液において、pHが4〜7である、医薬組成物であることが好ましい。好ましくは、前記水溶液としてpH4.5〜6.5である医薬組成物である。更に好ましく、pH5.0〜6.0の範囲に調整するのが特に好ましい。
pH調整剤としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸等の無機酸、アスコルビン酸、酢酸等の有機酸、といった酸性剤が挙げられる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機酸のアルカリ土類金属塩等といったアルカリ性剤を挙げることができる。また、前記酸性剤及びアルカリ性剤を混合してpH調整した緩衝剤を用いても良い。
本発明は、ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から、溶媒を除去することによる医薬組成物の製造方法をも包含する。
ボルテゾミブ又はその誘導体の溶解操作として、pH8.0〜14.0の含水溶剤に溶解させ、その後、当該溶液pHを3.0〜7.0に調整することにより溶液調製を行うことが好ましい。含水溶剤及び溶液のpH調整は、前述のpH調整剤を用いて行うことが好ましい。このpH制御による溶液調製操作を用いることにより、アルコール溶媒を用いることなく難溶性のボルテゾミブ及びその誘導体を溶解せることができ、且つ、保存安定性が高い医薬組成物を得ることができる。
本発明の医薬組成物は、それを含む適当な医薬製剤形に調製することにより医薬製剤として提供することができる。ボルテゾミブを有効成分とする医薬品は、注射剤の製剤形で静脈内投与又は皮下投与にて抗腫瘍剤として提供されていることから、本発明の医薬製剤も注射用製剤であることが好ましい。すなわち凍結乾燥製剤若しくは注射液製剤等の製剤型であることが好ましい。
本発明の医薬製剤は、ボルテゾミブを有効成分とする医薬として使用することができる。ボルテゾミブ製剤は、プロテアソーム阻害作用に基づく多発性骨髄腫やマントル細胞リンパ腫といった悪性腫瘍治療剤として用いられていることから、同様に抗腫瘍剤として適用することができる。
以下に、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例について、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)により、分析を行った。LC−MSの測定条件は次の通りである。
機種:島津LCMS−2020
カラム:なし
移動相A:アセトニトリル/ギ酸 (99.9/0.1)
移動相B:水/ギ酸 (99.9/0.1)
流速:0.3mL/分
測定条件:B濃度80%のアイソクラティック
サンプル調製:1バイアルに対し3mLの注射用水で溶解
注入量:5μL
MS:ESI negative
[実施例1]
グルコン酸ナトリウム450mgとラクトース(ガラス転移点(Tg):102℃)1.35gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液に、ボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.1に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.2であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例1に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.75ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び3.11ppmのケミカルシフトにシグナルが観察された。また、LC−MSで分析した結果、ボルテゾミブとグルコン酸の複合体に由来する分子イオン種として[M−H]=543が観察された。
[実施例2]
グルコン酸ナトリウム450mgとマルトース(Tg:90℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液に、ボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.3であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例2に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.76ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び3.10ppmのケミカルシフトにシグナルが観察された。
[実施例3]
グルコン酸ナトリウム450mgとトレハロース(Tg:120℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液に、ボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.1に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.2であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例3に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.74ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び3.11ppmのケミカルシフトにシグナルが観察された。
[実施例4]
フルクトース450mgとラクトース(Tg:102℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液に、ボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.3であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、実施例4に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.72ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び2.91ppmにシグナルが観察された。また、LC−MSで分析した結果、ボルテゾミブとフルクトースの複合体に由来する分子イオン種として[M−H]=527が観察された。
[比較例1]
グルコン酸ナトリウム450mgを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.4に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.5であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例1に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び3.11ppmのケミカルシフトにシグナルが観察された。また、LC−MSで分析した結果、ボルテゾミブとグルコン酸の複合体に由来する分子イオン種として[M−H]=543が観察された。
[比較例2]
ボルテゾミブ90mgを36mLのtert−ブタノールに溶解し、注射用水54mLを加えて混合した後、グルコン酸ナトリウム450mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH4.8に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH4.8であった。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例2に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び3.11ppmのケミカルシフトにシグナルが観察された。また、LC−MSで分析した結果、ボルテゾミブとグルコン酸の複合体に由来する分子イオン種として[M−H]=543が観察された。
[比較例3]
ラクトース1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.2であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例3に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73pmにあるシグナルの積分比の減少は認められず、ボルテゾミブ構造の水素原子に帰属される新たなNMRシグナルは観察されなかった。
[比較例4]
ボルテゾミブ90mgを36mLのtert−ブタノールに溶解し、注射用水54mLを加えて混合した後、D−マンニトール(Tg:13℃)900mgを加えて溶解した。
この溶液を孔径0.22μmのメンブレンフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例4に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.72ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)が低値であること、及び2.67ppmのケミカルシフトにシグナルが観察された。また、LC−MSで分析した結果、ボルテゾミブとマンニトールの複合体に由来すると思われる分子イオン種として[M−H]=529が観察された。
[比較例5]
グルコン酸ナトリウム450mgを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.2に調整し、グリシン1.8gを加えて溶解した後、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.6であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例5に係る凍結乾燥製剤を調製した。
[比較例6]
グルコン酸ナトリウム450mgと塩化ナトリウム1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.0に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.0であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例6に係る凍結乾燥製剤を調製した。
[比較例7]
グルコン酸ナトリウム450mgとグルコース(Tg:38℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.2に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.4であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例7に係る凍結乾燥製剤を調製した。
[比較例8]
グルコン酸ナトリウム450mgとキシリトール(Tg:−20℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.1に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.3であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例8に係る凍結乾燥製剤を調製した。
[比較例9]
グルコン酸ナトリウム450mgとソルビトール(Tg:−4℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.1に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.3であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例9に係る凍結乾燥製剤を調製した。
[比較例10]
グルコン酸ナトリウム450mgとフルクトース(Tg:13℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.1に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.2であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例10に係る凍結乾燥製剤を調製した。
[比較例11]
ラクトース(Tg:102℃)1.8gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液に乳酸27mgを加えた後、0.5M塩酸溶液を用いてpH5.0に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.0であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例11に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.78ppmのシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の低値化が観察され、3.10ppmにシグナルが観察された。また、LC−MSで分析した結果、ボルテゾミブと乳酸の複合体に由来すると思われる分子イオン種である[M−H]=437が観察された。
[比較例12]
スクロース(Tg:65℃)0.9gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.7に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.7であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例12に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73pmにあるシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の減少は認められず、ボルテゾミブ構造の水素原子に帰属される新たなNMRシグナルは観察されなかった。
[比較例13]
トレハロース(Tg:120℃)0.9gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.7に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.7であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例13に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73ppmにあるシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の減少は認められず、ボルテゾミブ構造の水素原子に帰属される新たなNMRシグナルは観察されなかった。
[比較例14]
マルトース(Tg:90℃)0.9gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.6に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.6であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例14に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73ppmにあるシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の減少は認められず、ボルテゾミブ構造の水素原子に帰属される新たなNMRシグナルは観察されなかった。
[比較例15]
ラクトース(Tg:102℃)0.9gを36mLの注射用水に溶解し、0.5M水酸化ナトリウム溶液500μLを加えてpHを約11とした液にボルテゾミブを90mgを加えて溶解した。この水溶液を0.5M塩酸溶液を用いてpH5.4に調整し、注射用水を加えて全量を90mLとした。その溶液はpH5.4であった。
この溶液を、孔径0.22μmのメンブランフィルターを用いて無菌ろ過を行い、バイアルにろ過した液を3mL充填し、凍結乾燥を行い、比較例15に係る凍結乾燥製剤を調製した。
この凍結乾燥製剤をH−NMR(400MHz、DO、TSP)で分析した結果、2.73ppmにあるシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の減少は認められず、ボルテゾミブ構造の水素原子に帰属される新たなNMRシグナルは観察されなかった。
実施例1〜4に係る医薬製剤の1バイアル当たりの各成分組成を表1にまとめた。また、比較例1〜4、比較例5〜10、並びに比較例11〜15に係る医薬製剤の1バイアル当たりの各成分組成を表2〜表4にまとめた。
Figure 2018177649
*1;生理食塩水1.2mLで再溶解した時のpH値。
*2:ボルテゾミブ(ロイシンボロン酸部分のメチンプロトン:2.72〜2.78ppmに帰属されるシグナル)では見られていない新たに出現したシグナルのケミカルシフト値。
Figure 2018177649
*1;生理食塩水1.2mLで再溶解した時のpH値。
*2:ボルテゾミブ(ロイシンボロン酸部分のメチンプロトン:2.72〜2.78ppmに帰属されるシグナル)では見られていない新たに出現したシグナルのケミカルシフト値。
Figure 2018177649
*1;生理食塩水1.2mLで再溶解した時のpH値。
*2:ボルテゾミブ(ロイシンボロン酸部分のメチンプロトン:2.72〜2.78ppmに帰属されるシグナル)では見られていない新たに出現したシグナルのケミカルシフト値。
Figure 2018177649
*1;生理食塩水1.2mLで再溶解した時のpH値。
*2:ボルテゾミブ(ロイシンボロン酸部分のメチンプロトン:2.72〜2.78ppmに帰属されるシグナル)では見られていない新たに出現したシグナルのケミカルシフト値。
[試験例1]H−NMR測定
実施例1〜4及び比較例1〜4、11〜15に関して、H−NMR(400MHz、DO、TSP)を用いてボルテゾミブと添加剤との複合体形成の有無を確認した。各凍結乾燥製剤を重水に溶解したものを分析に使用した。測定結果を、ボルテゾミブに帰属されるシグナル以外の新たなシグナルについて、表1〜4に記載した。
グルコン酸を添加している実施例1〜3、及び比較例1〜2の医薬製剤は、ボルテゾミブのロイシンボロン酸のメチンプロトンに帰属される2.72−2.78ppmに存在するシグナルの積分値が、他のボルテゾミブ構造のシグナル(例えば、芳香環のシグナルを基準とする)の相対的な積分比において減少することが認められ、それに伴い、3.10−3.11ppmのケミカルシフトに新たなシグナルが観察された。これは、ボルテゾミブ−グルコン酸の複合体におけるロイシンボロン酸構造のメチンプロトンに帰属されるシグナルであると考えられる。
フルクトースを用いた実施例4の医薬製剤も同様に、ボルテゾミブに本来存在する2.72−2.78ppmに存在するシグナルの相対的な積分比の減少が認められると伴に、2.91ppmに新たなシグナルが観察された。これは、ボルテゾミブ−フルクトースの複合体におけるロイシンボロン酸構造のメチンプロトンに帰属されるシグナルであると考えられる。
マンニトールを添加している比較例4は、2.72−2.78ppmに存在するシグナルの積分比の減少が認められ、且つ2.72ppmに新たなシグナルが観察された。これは国際公開2002/059130号に開示されるボルテゾミブ−マンニトール複合体のロイシンボロン酸構造のメチンプロトンに帰属されるシグナルであると考えられる。
乳酸を添加している比較例11は2.72−2.78ppmに存在するシグナルの積分比の減少が認められ、新たに3.10ppmにシグナルが観察された。これは、ボルテゾミブ−乳酸の複合体形成を示唆しており、該複合体のロイシンボロン酸のメチンプロトンに帰属されるシグナルであると考えられる。
以上、実施例及び比較例のH−NMR測定の結果をまとめると、グルコン酸やフルクトース、マンニトール、乳酸は水溶液中でボルテゾミブと相互作用して複合体形成をすることが確認できた。比較例11のボルテゾミブと乳酸による複合体は、後述するLC−MS測定で分子比1:1の複合体形成が検出されたことから、ボルテゾミブのボロン酸と乳酸のカルボキシ基及び水酸基との、酸無水物−エステル結合型の複合体であることが示唆される。比較例11のH−NMR測定における新たなシグナルのケミカルシフト値とボルテゾミブ−グルコン酸の複合体である実施例1〜3の新たなシグナルのケミカルシフト値が共に3.1ppmであることから、実施例1〜3に係るボルテゾミブ−グルコン酸の複合体は、主として、ボルテゾミブのボロン酸と、グルコン酸のカルボキシ基及び水酸基との、酸無水物−エステル結合型の複合体であることが示唆される。
一方で、スクロースやトレハロース、マルトース、ラクトースなどの二糖類のみ添加した比較例3及び比較例12〜15は、ボルテゾミブのロイシンボロン酸のメチンプロトンに帰属される2.72−2.78ppmのシグナルの積分値の、他のボルテゾミブ構造のシグナル(例えば、芳香環のシグナルを基準とする)の相対的な積分比の減少変化や、新たなシグナルの出現は観察されなかった。そのため、これら二糖類は水溶液中でボルテゾミブと相互作用して複合体形成をしないことが確認できた。
[試験例2]LC−MS測定
試験例1でボルテゾミブと添加剤の複合体形成を確認できたもののうち、実施例1、4と比較例1〜2、4及び11について、上記LC−MS測定条件で分析を行った。実施例1と比較例1〜2はボルテゾミブとグルコン酸の分子比1:1複合体形成を示す[M−H]=543、実施例4はボルテゾミブとフルクトースの分子比1:1複合体形成を示す[M−H]=527、比較例4はボルテゾミブとマンニトールの分子比1:1複合体形成を示す[M−H]=529が観察された。比較例11はボルテゾミブと乳酸の分子比1:1複合体を示す[M−H]=437が観察された。
[試験例3]保存後製剤の溶解性試験
実施例1〜4及び比較例1〜11の凍結乾燥製剤を、60℃の条件下にて2週間保存した。
その後、それぞれのサンプルに生理食塩水1.2mLをバイアルに加え、凍結乾燥ケーキが液になじむように優しく振り混ぜ、静置し、完全に溶解するまでの時間を測定した。溶解性試験の結果を表5に示す。なお、溶解時間60秒以内とは30〜60秒で完全に溶解したことを示し、120秒以内とは60〜120秒で完全に溶解したことを示し、300秒以上とは完全溶解に至らなかったことを示す。
Figure 2018177649
[試験例3]60℃保存安定性試験(凍結乾燥ケーキ)
実施例1〜4及び比較例1〜11の注射用凍結乾燥製剤を、60℃の条件下にて2週間保存した。
保存後の各製剤について、凍結乾燥ケーキが開始時と比べて収縮しているかどうかと色の変化について観察を行った。結果を表6に示す。
Figure 2018177649
*:収縮とは、凍結乾燥ケーキの形状を保持したまま開始時に比べて体積が半分程度まで収縮しているような状態。
*:崩壊とは、凍結乾燥ケーキの形状が完全に崩れており、バイアル底面に板状に張り付いているような状態。
[試験例4]60℃保存安定性試験(類縁物質)
実施例1〜4及び比較例1〜11の注射用凍結乾燥製剤を、60℃の条件下にて2週間保存した。
保存後の各製剤について、ボルテゾミブ由来の類縁物質をHPLCにて分析した。ボルテゾミブ類縁物質のHPLC分析条件を下に示した。分析結果を表8〜10に示す。
[ボルテゾミブ由来の類縁物質の分析条件]
実施例及び比較例のボルテゾミブ分解由来の類縁物質を、以下の液体クロマトグラフィー(HPLC)条件にて分析した。
カラム:Waters Symmetry Shield RP18 5μm,4.6mm×250mm
カラム温度:35℃
移動相A:水/アセトニトリル/ギ酸混液(715:285:1)
移動相B:メタノール/水/ギ酸混液(800:200:1)
送液量:1.0mL/min.
波長:270nm
移動相の送液:表7に示す条件で送液した。
Figure 2018177649
実施例1〜4及び比較例1〜4の凍結乾燥製剤の60℃保存安定性試験における、各類縁物質含量を表8〜10にまとめた。
Figure 2018177649
Figure 2018177649
Figure 2018177649
*比較例5:保存2週間後の類縁物質分析は、ブロードな未知ピークが出現であり、定量分析が不能。
Figure 2018177649
実施例1〜4は60℃で2週間保存すると類縁物質Aの生成が初期値と比較して0.3%以内であるだけでなく、類縁物質Bの生成が確認されないなど、保存条件下において類縁物質の生成を抑制した。また、60℃保存条件化でも凍結乾燥ケーキは収縮せず、溶解時間も30秒以内と短く、製剤安定性並びに溶解性に優れた物性の医薬製剤であることが明らかとなった。
これに対し、比較例1〜2は国際公開2015/025000号に開示される先行技術の代表製剤例であるが、類縁物質Aと類縁物質Bの増加量が実施例と比較して多く、凍結乾燥ケーキも収縮していた。したがって、ボルテゾミブとグルコン酸のみからなる製剤処方は、製剤安定性及び溶解性において満足できる物性ではないことが示された。比較例3は凍結乾燥ケーキの収縮は認められなかったものの、類縁物質Aの生成が顕著に増加していた。 比較例4は国際公開2002/059130号に記載されている方法で調製した先行技術の代表製剤例として挙げられるものである。本願に係る実施例1〜4の製剤例は、比較例4と比較しても類縁物質Aと類縁物質Bの生成が少ないことが明らかとなった。
比較例5〜6は、ボルテゾミブとグルコン酸に、更に賦形剤として一般的に使用されているグリシンと塩化ナトリウムを添加した処方である。グリシンを使用した処方は凍結乾燥ケーキの崩壊と褐色への変色がおき、凍結乾燥ケーキの熱に対する安定性が良くなかった。塩化ナトリウムを追加した処方は類縁物質Bの生成が見られるなど安定性が良くなかった。
比較例7〜10は、ボルテゾミブとグルコン酸に、更にガラス転移点が低い糖アルコールや単糖類を添加して検討を行ったが、キシリトールやソルビトールを使用したものは、全体的に類縁物質の増加傾向が認められただけでなく、他のものでは確認されていなかった類縁物質Dが観察された。また、凍結乾燥ケーキの形成性も悪く、再溶解時間も5分以上を要した。グルコースやフルクトースなどの単糖を添加して検討を行ったものも類縁物質の増加傾向が認められただけでなく、凍結乾燥ケーキの崩壊や変色も観察された。
比較例11〜15については、NMRを用いて水溶液中での相互作用の有無を確認した。乳酸を用いた比較例11では2.72−2.78ppmのケミカルシフトに存在するシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の低値が観察され、新たに3.10ppmにシグナルが観察された。一方、比較例12〜15では2.72−2.78ppmのケミカルシフトに存在するシグナルの積分比(ボルテゾミブの芳香環を基準とした時)の低値が観察されず、ボルテゾミブとの複合体形成が示唆される新たなシグナルは観察されなかった。したがって、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトースといった糖類は、水溶液中でボルテゾミブと複合体形成はされない糖類であることが明らかとなった。
以上の試験例1〜4の結果から、ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体に、ガラス転移点が60℃以上であって、好ましくは水溶液中でボルテゾミブと複合体を形成しない糖類を賦形剤として選択して、これらを組み合わせた製剤処方による組成物が、ボルテゾミブの分解に伴う類縁物質の生成を抑制できるとともに、製剤保存期間中の凍結乾燥ケーキの収縮や変色を抑制することができた。また、再溶解時間も短縮しており、薬剤師や看護師などの調製業務の負担を減らすことができる。
したがって、本発明の医薬組成物を用いた医薬製剤は、ボルテゾミブの効能および安全性を長期に亘って保持するだけでなく医療従事者や患者にとってもメリットが大きい医薬製剤を提供することができる。

Claims (13)

  1. ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースの複合体、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含有する医薬組成物。
  2. ボルテゾミブとグルコン酸又はフルクトースとの複合体が、一般式(1)
    Figure 2018177649
    [Za及びZbは、グルコン酸又はフルクトース由来の結合残基を示す。]である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. ガラス転移点が60℃以上の糖類が二糖類である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. 二糖類がラクトース、マルトース、トレハロース、スクロースである請求項3に記載の医薬組成物。
  5. 当該医薬組成物に存在するボルテゾミブ相当質量として1質量部に対して、前記糖類を10質量部以上100質量部以下で含む請求項1〜4の何れか一項に記載の医薬組成物。
  6. ボルテゾミブ又はその誘導体、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトース、並びにガラス転移点が60℃以上の糖類を含む含水溶液から、溶媒を除去することにより調製される医薬組成物。
  7. ボルテゾミブ又はその誘導体がボルテゾミブとして1質量部に対して、グルコン酸又はその塩若しくはフルクトースが2質量部以上で20質量部以下である、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. ボルテゾミブ又はその誘導体が1質量部に対して、前記糖類が10質量部以上100質量部以下で含む請求項6又は7に記載の医薬組成物。
  9. 前記含水溶液はアルコール溶媒を含まない水溶液である請求項6〜8の何れか一項に記載の医薬組成物。
  10. 凍結乾燥により溶媒を除去して得られる請求項6〜9の何れか一項に記載の医薬組成物。
  11. ボルテゾミブとフルクトースの複合体。
  12. 一般式(1)
    Figure 2018177649
    [Za及びZbは、フルクトース由来の結合残基を示す。]であるボルテゾミブとフルクトースの複合体。
  13. 請求項1〜10の何れか一項の医薬組成物、若しくは請求項11又は12に記載のボルテゾミブとフルクトースの複合体を含有する医薬製剤。

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