以下、本開示に係る固体撮像素子の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。実質的に同一の構成に対して同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。本開示は以下の実施の形態に限定されない。また、本開示の複数の実施の形態を組合せることも可能である。また、本開示は、以下の実施の形態において、P型とN型とを逆転させた構造を排除するものではない。
(実施の形態1)
まず、図1及び図2を参照しながら、実施の形態1に係る固体撮像素子の構造を説明する。なお、本明細書において、「平面視」とは、図1に示す第1主面S1及び第2主面S2の法線方向から見ることを指す。
図1は、トランジスタTR1がPチャネルの場合の固体撮像素子が備える画素アレイ(ここでは、画素1及び画素2)の断面図である。図2は、図1の第1主面S1を第2主面S2の方へ見たときの平面図である。図2においては、位置関係の理解の向上のため、トランジスタTR1のゲート電極40も併せて図示している。図3は、図1のAA’線上において、P+型半導体領域10に固定電位Vpdを印加したときのポテンシャル勾配を示した図である。なお、本実施の形態において、単に「トランジスタ」と記載した場合は、MOS型トランジスタ(MOSFET)を意味する。ただし、本実施の形態に係る固体撮像素子の画素回路を構成するトランジスタは、MOS型トランジスタに限られず、ジャンクション型トランジスタ(JFET)、バイポーラトランジスタ、又は、これらの混在であってもよい。
図1に示されるように、本実施の形態に係る固体撮像素子は、第1画素(画素1)及び第1画素(画素1)に隣接する第2画素(画素2)を含む画素アレイを備える。画素アレイは、第1主面S1及び第1主面S1の反対側であって光が入射する第2主面S2を有する第1導電型(ここでは、P型)の基板11と、第1主面S1上に配置された配線層17とを備える。基板11は、主要な構成要素として、(1)第1画素(画素1)及び第2画素(画素2)のそれぞれについて形成され、基板11の内部(ここでは、第1主面S1)に配置され、第1主面S1から第2主面S2の方向に伸び、且つ、第1導電型(P型)と異なる第2導電型(N型)の第1の半導体領域(N型半導体領域12)と、(2)第1画素(画素1)及び第2画素(画素2)のそれぞれについて形成され、基板11の内部であって第2主面S2と第1の半導体領域(N型半導体領域12)との間に配置され、第1の半導体領域(N型半導体領域12)と接続され、且つ、第2導電型(N型)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)と、(3)基板11の内部であって第2主面S2と第1画素(画素1)及び第2画素(画素2)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)との間に配置され、第1導電型(P型)の第3の半導体領域(P型半導体領域14)と、(4)基板11の内部であって、かつ、第1画素(画素1)の第1の半導体領域(N型半導体領域12)と第2画素(画素2)の第1の半導体領域(N型半導体領域12)との間であって、第1主面S1に配置された第1のウェル領域(N型ウェル15)と、(5)第1のウェル領域(N型ウェル15)内に配置された画素回路(TR1等)と、(6)基板11の内部であって第1画素(画素1)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)と第2画素(画素2)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)との間に配置された画素間分離領域32とを備える。
基板11において、第2主面S2に形成されたP+型半導体領域10とP型半導体領域14とで挟まれた領域(p−型半導体領域)、P型半導体領域14及びN型半導体領域13によって光電変換部PDが形成され、特に、P+型半導体領域10へのバイアス電圧(光電変換部PDへの逆バイアス電圧)に依存して、P型半導体領域14とN型半導体領域13とでアバランシェ増倍領域(AM)が形成され得る。つまり、P型半導体領域14とN型半導体領域13とでAPDが形成され得る。
より詳しくは、基板11は、例えば、P型のシリコン基板である。基板11の第1主面S1上には、配線層17が配置されている。基板11の第2主面S2から、光が入射する。
基板11の第2主面S2側の表面には、P+型半導体領域10が形成されている。P+型半導体領域10には、光電変換部PDへのバイアスが逆バイアスとなるように固定電位Vpdが印加されている。第2主面S2上の結晶欠陥で発生する暗電流を抑制するため、P+型半導体領域10は不純物濃度を1018cm−3以上にし、電圧印加時にも空乏化していないことが望ましい。また、P+型半導体領域10の厚さを薄くすることで短波長の光に対しての感度を向上させることが可能となる。可視光の中でもシリコン基板に対しての進入長が短い青色の波長の光を検出するためには、P+型半導体領域10は第2主面S2から0.5μm以下の厚さで形成することが望ましい。赤外光の検出を目的とする場合は、P+型半導体領域10は0.5μm以上で形成してもよく、逆に、紫外光の検出を目的とする場合は受光部(光が入射する領域)に形成せず、固定電位Vpdを印加するための電極の周囲にのみ形成してもよい。第2主面S2から入射した光は、光電変換部PDにて光電変換され、信号電荷である電子正孔対が発生する。発生した信号電荷のうち電子は電位勾配に沿って第1主面S1側に流れ、N型半導体領域13を経由してN型半導体領域12に移動する。
ここで、固定電位Vpdがブレークダウン電圧以上に設定された場合(以下、この場合をアバランシェ増倍駆動という)は、光電変換された電荷は、P型半導体領域14とN型半導体領域13とで形成されるアバランシェ増倍領域AMにてアバランシェ増倍される。これにより、電子がN型半導体領域12に到達する前に多数の信号電子を発生させることができ、通常はノイズに埋もれて検出できないような微弱な光でも検出が可能となる。本実施形態に係るVpdは、P型半導体領域14とN型半導体領域13とに対して逆バイアスとなる極性で、10V〜100V程度である。
光電変換部PDを厚く形成することで、第2主面S2から入射した光を光電変換できる確率が増加する。可視光の波長帯域に対しての感度を確保するため、P+型半導体領域10とP型半導体領域14の間は2μm以上の厚さであることが望ましい。また、P+型半導体領域10とP型半導体領域14との間の不純物濃度は基板11と同程度の1016cm−3以下の低い不純物濃度(p−)で設計する。つまり、P型半導体領域14と第2主面S2との間の不純物濃度は、P型半導体領域14の不純物濃度よりも低い。これにより、光電変換部PDにおいて発生した電子が再結合する確率を下げ、N型半導体領域12まで電子が到達する確率を上げることができる。
光を検出して発生した電子を、第1主面S1に配置され、かつ、各画素において略垂直に形成されたN型半導体領域12に集めるために、基板11内で水平(第1主面及び第2主面に平行な方向)にN型半導体領域13を伸張している。P型半導体領域14は、N型半導体領域13とP+型半導体領域10との間に形成されている。
N型半導体領域13は、N型ウェル15との導通を防ぐため、第1主面S1から1.5μm以上離れた深さで形成することが望ましい。
P型半導体領域14およびN型半導体領域13の不純物濃度はアバランシェ増倍を発生させるため、5×1016cm−3以上、かつ、1018cm−3以下であることが望ましい。P型半導体領域14およびN型半導体領域13の間の距離は不純物濃度のピーク位置で0.5μm以上離すことで、不純物の拡散による不純物濃度の相殺を防ぎ、アバランシェ増倍を起こすのに十分な不純物濃度を確保することが可能である。
N型半導体領域13およびN型半導体領域12において、図3に示すように、トランジスタTR1のドレインに印加されるドレイン電位Vddに対して、P+型半導体領域10に固定電位Vpdを印加した状態でN型半導体領域13とN型半導体領域12の間にポテンシャル障壁が発生していないことが望ましい。これにより光検出後の信号電荷が撮像における複数フレームに渡って基板内部に残ることを防ぎ、残像を抑制できる。また、N型半導体領域12およびN型半導体領域13は1016cm−3以上の不純物濃度で形成し、特にN型半導体領域12は深さ方向に応じて不純物濃度を変えて、第1主面S1側の不純物濃度を高めにすることで信号電荷である電子が基板表面に蓄積しやすくなり、信号の読み出しが容易になる。
ここで、アバランシェ増倍領域を有する光電変換部PDと画素回路とを同一基板上に形成するためには、N型ウェル15をN型半導体領域12及びN型半導体領域13と離間した領域に形成し、その内部にPチャネルのトランジスタTR1を形成すればよい。Nチャネルではなく、Pチャネルのトランジスタを用いることで、P+型半導体領域10に高電圧を印加した場合でも、PチャネルのトランジスタTR1のウェル領域であるN型ウェル15の電圧が変動しにくく、トランジスタTR1を有する画素回路の駆動に支障がでにくい。また、第1主面S1におけるP型半導体領域内には、画素回路が無いため、固定電圧を印加する必要はない。
N型半導体領域13は、N型ウェル15と電気的に分離できる深さに形成される必要がある。また、N型ウェル15はN型半導体領域12とも電気的に分離される必要があり、双方の間にはP型半導体領域やShallow Trench Isolation(STI)等を形成してもよい。
トランジスタTR1は、N型半導体領域12に流れ込んだ信号電荷を読み出すための、画素回路の一部を構成する。トランジスタTR1のゲート電極40や拡散領域(ソース領域及びドレイン領域)41は、コンタクトプラグ20を介して配線21と接続されている。
以上の構成により、本実施の形態に係る固体撮像素子では、APD及び画素回路が一つの基板11内に埋め込んで形成され、かつ、画素回路が光電変換部PDの下方に形成されているので、高い開口率を維持しながらも、同一基板内にAPDと画素回路とを構成する固体撮像素子を実現できる。
さらに、N型半導体領域13は、P+型半導体領域10に対してブレークダウン未満の電圧を印加した場合(以下、このような電圧印加を「ノーマル駆動」と記載)でも、隣接画素との電気的分離を確保するため、隣接画素内のN型半導体領域13どうしの間は、P型半導体領域若しくは不純物濃度が低濃度のN型半導体領域で形成された画素間分離領域32で分離されており、電子に対するポテンシャル障壁を設ける構造となっている。この構成により、ブレークダウンを起こさない電圧条件で撮像を行えるようになり、通常の日中程度の明るさでも、混色を抑制した画像を取得できる。よって、暗いエリアと明るいエリアが混在したシーンを撮像する際、アバランシェ増倍駆動で撮像後、通常の増倍しないノーマル駆動で撮像して、両画像を加算するような画像処理により、広ダイナミックレンジの鮮明な画像を取得できる。このように、本実施の形態に係る固体撮像素子では、基板11の内部であって第1画素(画素1)のN型半導体領域13と第2画素(画素2)のN型半導体領域13との間には、画素間分離領域32が配置されるので、画素で発生した信号電荷が隣接画素に漏れこむクロストークが抑制される。
なお、以上のように構成される本実施の形態に係る固体撮像素子は、例えば、次のような工程によって製造される。基本的に、図1に示された固体撮像素子の上下を反転した状態で、下層から上層に向けて製造される。まず、P+型半導体領域10とその上にp−型半導体領域が形成された基板を準備する。その基板上に、イオン注入法によってP型半導体領域14を形成する。そして、P型半導体領域14の上に、イオン注入法によってN型半導体領域13を画素部に全面的に形成した後に、フォトリソグラフィによるパターンニングとP型不純物を用いたイオン注入法等によってN型半導体領域の一部を打ち返すことで、N型半導体領域13及び画素間分離領域32を形成する。続いて、フォトリソグラフィによるパターンニング、及びイオン注入法等によってN型半導体領域12及びN型ウェル15を形成し、さらに、N型ウェル15においてフォトリソグラフィによるパターンニングとイオン注入法等によって拡散領域41(ソース、ドレイン)を形成する。配線層17については、以上の工程を終えた基板11の上に絶縁層を形成し、フォトリソグラフィによるパターンニング、エッチング及びスパッタリング法等によって、絶縁層、ゲート電極40、コンタクトプラグ20及び配線21を形成する。
P型半導体領域14、N型半導体領域13の双方、若しくは少なくとも一方については、半導体基板11をエピタキシャル成長で形成する途中で不純物濃度を変更することで作製してもよい。この方法であれば、アバランシェ増倍領域AMにおける結晶欠陥がイオン注入法で作成した場合に対して少なくなり、ノイズを低減することが可能である。
次に、図4、図5を用いて、上述した実施の形態1にかかる画素1を利用した画素アレイおよび画素アレイ外の画素終端部(画素アレイ終端部)3の構成例について説明する。
図4は3x3の画素アレイと画素終端部3を含む平面図を示している。簡易的に、画素アレイ内にはN型半導体領域12とN型半導体領域13のみ図示している。画素終端部3では、第4の半導体領域の一例であるN型半導体領域18を第1主面S1に接するように配置し、画素アレイを囲む構造としている。
図5は、図4におけるD−D’線での断面図を示す。N型半導体領域18に固定電圧(例えば、3.3V)を印加することで、第1主面S1上の画素アレイ外で発生する表面欠陥起因のリーク電流が画素アレイ内に流れ込むことを抑制できる。
N型半導体領域18は、P型半導体領域14との間でアバランシェ増倍を発生させないよう、N型半導体領域13よりも第1主面S1側に近い領域に形成するか、若しくは、N型半導体領域18とP型半導体領域14との間の電界強度が画素アレイ内よりも低くなるような電圧を印加しておく。本実施の形態では、N型半導体領域18とP型半導体領域14との間の電界強度が画素アレイ内よりも低くなるように、N型半導体領域18と基板11におけるN型半導体領域18と接する領域とによって形成されるPN接合における不純物濃度の勾配が、N型半導体領域18とP型半導体領域14とによって形成されるPN接合における不純物濃度の勾配よりも小さくなるように、N型半導体領域18が形成されている。これにより、画素終端部3で不要な電力の消費を抑えることができる。なお、図5に示すようにP型半導体領域14を画素アレイ内にのみ形成する(画素終端部3には形成しない)ことでP型半導体領域14とN型半導体領域18との間に形成される電界の強度を弱めてもよい。
(実施の形態2)
次に、図6を参照しながら、実施の形態2に係る固体撮像素子の構造を説明する。図6は、実施の形態2にかかる固体撮像素子において、トランジスタTR1がNチャネルの場合の断面図である。図7は、図6の第1主面S1を第2主面S2の方へ見たときの平面図である。図7においては、位置関係の理解の向上のため、トランジスタのゲート電極40も併せて図示している。
この場合、N型ウェル15内にP型ウェル22を形成する必要がある。P型ウェル22は、トランジスタTR1を形成するための第1のウェル領域の別の一例である。アバランシェ増倍駆動時においても、NチャネルのトランジスタTR1を駆動する電圧を決めるためにはP型ウェル22の電位は固定しなければならない。そのためには、固定電位Vpdを印加しているP+型半導体領域10とP型ウェル22を電気的に分離することが必要となるため、N型半導体領域13が十分な厚さ、または十分な不純物濃度を持つことが必要となる。たとえば、N型半導体領域13の厚さは0.5μm以上、不純物濃度は1017cm−3以上である。P型ウェル22は、このようなN型半導体領域13及び画素間分離領域32によって、P+型半導体領域10及びP型半導体領域14と電気的に分離されている。
ここで、N型半導体領域13は、混色を抑制するために隣接する画素間で電気的に分離されている必要がある。そこで、本実施の形態では、N型半導体領域13は、隣接画素間で離して形成している。しかしながら、画素間の混色を防ぐために隣接するN型半導体領域13間の距離を離せば離すほど、P+型半導体領域10とP型ウェル22の電気的分離が困難となるため、デバイスを実現するための設計マージンが狭いという課題が想定される。
そこで、本実施の形態では、N型ウェル15とP型ウェル22とに接するように第2のウェル領域の一例であるN型ウェル16が配置されている。N型ウェル16は、P型ウェル22とN型半導体領域13との間に、N型半導体領域13と電気的に分離されて、配置されている。N型半導体領域13とN型ウェル16との間、及び、N型半導体領域12とN型ウェル16との間のP型半導体領域を空乏化させることで、P型ウェル22とP+型半導体領域10との間のPチャネル(p−型半導体領域)に、電子に対するポテンシャル障壁が形成され、P型ウェル22を固定電位Vpdから電気的に分離することができる。
また、高輝度被写体を撮像した場合や、飽和電子数を超える増倍率で撮像を行う場合を想定すると、画素1のN型半導体領域12に過剰に蓄積された電荷がN型半導体領域13を通じて隣接する画素2のN型半導体領域12へ流入し、ブルーミングが発生することが懸念される。そこで、過剰な電荷をN型ウェル16に排出することによって、ブルーミングを低減することが可能である。
そのためにも、隣接するN型半導体領域13間の画素間分離領域32の、電子に対するポテンシャル障壁は、N型半導体領域12とN型ウェル16との間のP型半導体領域の、電子に対するポテンシャル障壁よりも高くなるように、画素間分離領域32の不純物濃度と、N型半導体領域12とN型ウェル16及びP型ウェル22との間のP型半導体領域の不純物濃度とが設計されている。
図6に示すように、画素間分離領域32の不純物濃度が、N型半導体領域12とN型ウェル16との間のP型半導体領域の不純物濃度と同程度の場合、画素間分離領域32が、負バイアスである固定電位Vpdを印加している第2主面S2側に近い位置に配置されているため、画素間分離領域32の、電子に対するポテンシャル障壁は、N型半導体領域12とN型ウェル16との間のP型半導体領域の、電子に対するポテンシャル障壁よりも高く形成される。
また、画素境界で光電変換した電荷を一部吸収することで混色の抑制も可能となるため、第2主面S2側において混色抑制のための遮光膜形成を省略できる。画素境界で検出した信号電荷を吸収する範囲は、N型ウェル16の不純物濃度、幅、印加する逆バイアス電圧により調整することが可能である。
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係る固体撮像素子の断面図である。図9は、図8の第1主面S1を第2主面S2の方へ見たときの平面図である。図9においては、位置関係の理解の向上のため、トランジスタのゲート電極40も併せて図示している。図10は、図8のAA’線での断面を第2主面S2の方へ見たときの平面図である。図11は、図8のBB’線での断面を第2主面S2の方へ見たときの平面図である。図12は、図8のCC’線上において、P+型半導体領域10に固定電位Vpdを印加したときのポテンシャル勾配を示した図である。図8〜図12において、実施の形態1と同様の要素については同一の符号を付している。また、以下では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
画素1のN型半導体領域13と、画素1に隣接する画素2のN型半導体領域13との間には、画素1のN型半導体領域13および画素2のN型半導体領域13の不純物濃度よりも低い(n−型半導体領域)、あるいは、P型半導体領域によって画素間分離領域32が形成されている。これにより、P型半導体領域14とN型半導体領域13との間の電界強度よりも、P型半導体領域14と画素の境界に配置した画素間分離領域32との間の電界強度が低く、画素境界での光電変換で生じる混色成分の信号増倍を抑制することができる。
また、N型ウェル16とN型半導体領域13との間に、電気的分離を強化するためにP型不純物の注入によりP型半導体領域31が形成されている。さらに、N型半導体領域12において、図11に示す第2主面S2側の幅w1は、図10に示す第1主面S1側の幅w2より広い。つまり、N型半導体領域12は、第1主面S1側での第1主面S1に平行な面での断面(AA’線での断面)における面積よりも、第2主面S2側での第1主面S1に平行な面での断面(BB’線での断面)における面積が大きい。このような構成により、光電変換部PDにおける光電変換により発生した電子はN型半導体領域12に集まりやすくなり、固体撮像素子の感度の向上が可能である。
また、本実施の形態では、図8及び図9に示されるように、基板11の内部における第1主面S1に接する箇所に第1のウェル領域の別の一例であるP型ウェル30が形成され、P型ウェル30の内部にN型ウェル15が形成されている。P型ウェル30にはNチャネルのトランジスタ(TR2など)が形成され、N型ウェル15にはPチャネルのトランジスタ(TR1など)が形成されている。高電圧を印加するP+型半導体領域10とP型ウェル30とを電気的に分離するため、N型ウェル16には、N型ウェル15を介して逆バイアスが印加される。これにより、P型半導体領域31を空乏化させることができるため、P+型半導体領域10と、P型ウェル30とが、P型半導体領域を通じて導通することを防ぐことができる。
N型半導体領域13は、N型ウェル16との導通を防ぐため、第1主面S1から2μm以上離れた深さで形成することが望ましい。また、過剰な光電変換や、過剰な増倍により光信号が飽和した場合に、信号電荷がN型半導体領域12からN型ウェル16に流れるようにするため、N型半導体領域12とN型ウェル16との間のP型半導体領域の不純物濃度がその他の周囲の分離部よりも低くなっている。
N型半導体領域12の第1主面S1側の表面には、第1主面S1との間に、P+型半導体領域(表面不活性領域)33が形成されている。この構成により、結晶欠陥が基板11内部よりも多い第1主面S1から離れた(深い)領域に、N型半導体領域12が埋め込まれることになるため、基板表面(第1主面S1)に多数存在する結晶欠陥に起因するリーク電流を低減することができる。これにより、アバランシェ増倍を行わないノーマル駆動においても、画質が向上するため、広いダイナミックレンジを確保することが可能となる。
N型半導体領域13およびN型半導体領域12において、図3に示すように固定電位VpdをP+型半導体領域10に印加した状態でN型半導体領域13とN型半導体領域12との間にポテンシャル障壁が発生していないことが望ましい。これにより光検出後の信号電荷が複数フレームに渡って基板内部に残ることを防ぎ、残像を抑制できる。また、N型半導体領域12およびN型半導体領域13は1016cm−3以上で形成し、特にN型半導体領域12は深さ方向に応じて不純物濃度を変えて、第1主面S1側の不純物濃度を高めにすることで信号電荷である電子が基板表面(第1主面S1)に蓄積しやすくなり、信号の読み出しが容易になる。
また、図8のCC’線を含む領域における第1主面S1の最表面はP+型半導体領域33で覆われているため、ポテンシャルはP型ウェル30と同じ0Vとなる。後述する転送トランジスタTR3をONにしたときに蓄積した信号電荷を転送トランジスタTR3のドレイン側に流すため、リセット時のN型半導体領域12は空乏化しており、図12に示されるように、ポテンシャルのピーク位置は転送トランジスタTR3のドレインに印加している電圧Vddよりも負側となる。
また、本実施の形態では、図8に示されるように、N型半導体領域12に蓄積された電荷を転送するため、N型チャネルの転送トランジスタTR3を配置している。この転送トランジスタTR3は、N型半導体領域12をソース領域とするMOS型トランジスタの一例である。また、転送した電荷の量に応じた信号を検出するため増幅トランジスタTR2も例示している。
配置するトランジスタの導電型はNチャネルのみでも良いが、N型ウェル16に接してN型ウェル15も形成することで、N型ウェル15内にPチャネルのトランジスタTR1も形成できるため、回路設計の自由度をあげることができる。
また、図示していないが、N型ウェル16を設けずに混色を抑制することも可能である。この場合、画素間のポテンシャル障壁を形成しつつも、P+型半導体領域10とP型ウェル30を電気的に分離するために、画素間分離領域32の分離幅や不純物濃度の最適化が必要となる。この場合、N型半導体領域13を画素全面に渡りイオン注入法やエピタキシャル成長法を用いて形成した後、画素間のN型半導体領域を打ち返すようにP型不純物の注入を行って画素間分離領域32を形成することで不純物濃度の最適化を試みてもよい。
本実施の形態では、図8に示すように、画素回路が形成される第1主面S1と反対側の第2主面S2側に光電変換部PDを形成することで、平面視において隣接するフォトダイオードの境界にも画素回路を配置することが可能となっている。この構成により、微細化時に課題となる画素回路を配置できる面積が一般的なイメージセンサよりも広くなり、回路設計の自由度をあげることができる。
次に、図13と図14を用いて、上述した実施の形態2および実施の形態3にかかる画素1を利用した画素アレイおよび画素アレイ外の画素終端部3の構成例について説明する。
画素アレイ及び画素終端部3を備える固体撮像素子においては、画素終端部3でのアバランシェ増倍を抑制することと、画素終端部3においてもP+型半導体領域10とP型ウェル22との電気的分離能を画素アレイ内と同等に形成することが必要である。
図13は、3x3の画素アレイおよび画素終端部3の平面図を示している。簡易的に、画素アレイ内はN型半導体領域12とN型半導体領域13のみ図示している。画素終端部3では、N型半導体領域18を第1主面S1に接するように配置し、画素アレイを囲む構造としている。N型半導体領域18に固定電圧を印加することで、第1主面S1上で発生するリーク電流が画素アレイ内に流れ込むことを抑制できる。さらに、図14に示すように、画素終端部3においても、第5の半導体領域の一例であるN型半導体領域13’が、N型半導体領域18に接続されるように配置されている。以降、画素終端部3におけるN型半導体領域13をN型半導体領域13’と記載する。
図13に示されるように、画素1と画素2との間のN型半導体領域13の分離幅(間隔)d1は、画素1のN型半導体領域13とN型半導体領域13と’の分離幅(間隔)d2と同一、または、分離幅d2との差分(分離幅d1と分離幅d2との差分)が1μm以下(ただし、分離幅d1は、分離幅d2より大きくても小さくても良い)となるように形成することが望ましい。これにより、画素終端部3においても、P+型半導体領域10とP型ウェル22の電気的分離能を画素アレイ内部と同等に強化することが可能である。
上記のように、本実施形態においては、P+型半導体領域10とP型ウェル30とを電気的に分離するために、画素回路の周囲を取り囲むN型半導体領域18、及び、画素回路よりも第2主面S2側を覆うN型半導体領域13やN型半導体領域13’のN型半導体領域を形成することが望ましい。
N型半導体領域18よりも画素アレイ側で、N型半導体領域13’上の領域の寸法幅d3の長さは、N型半導体領域18に電圧を印加したときに、N型半導体領域13’とN型ウェル16との間のP型チャネル(p−型半導体領域)を閉じることができる寸法で、任意に設計可能である。これは、寸法幅d3の長さによる、P+型半導体領域10とP型ウェル22との電気的分離能への影響が、軽微なためである。
図14は、図13におけるD−D’線での断面図を示す。本構成例では画素アレイ内と比較して、画素終端部3では、画素におけるP型半導体領域14と同じ深さにP型半導体領域19が形成されている。
P型半導体領域19の不純物濃度は、P型半導体領域14の不純物濃度よりも低い。これにより、画素終端部3でのアバランシェ増倍を抑制することができ、不要な消費電力を抑制すると共に、画素終端部3でアバランシェ増倍した電荷が画素アレイ内に流れ込むことを抑制できる。P型半導体領域19は、P型半導体領域14を基板全面に形成した後に、N型不純物の注入を行うことでP型半導体領域14の不純物濃度を低濃度化して作製してもよい。P型半導体領域19は画素アレイのうち、光検出を目的としない領域(オプティカルブラック領域)まで形成してもよい。これにより、平面視においてP型半導体領域19と重なる画素アレイではアバランシェ増倍を抑制できるため、アバランシェ増倍駆動時にもオプティカルブラック領域として利用することができる。
画素終端部3でのアバランシェ増倍を抑制するためには、画素終端部3におけるN型半導体領域13’の不純物濃度を画素アレイ内のN型半導体領域13よりも低濃度化するか、若しくはN型半導体領域18の不純物濃度を、N型半導体領域12よりも低濃度化すればよい。この場合、低濃度化の度合いに応じて、P+型半導体領域10とP型ウェル22との電気的分離能を確保するために、N型ウェル16とN型半導体領域13’との平面視における重なり幅を広げたり、N型半導体領域18の幅(あるいは、平面視における面積)をN型半導体領域12よりも広くしたりすることが必要である。
なお、画素アレイの最外周の画素におけるN型半導体領域13とN型半導体領域13’とを電気的に分離するための画素間分離領域の一例である画素終端部分離領域32aは、空乏化され、電子に対するポテンシャル障壁が形成されている。
図15は、図13、図14で示した画素終端部3の変形例(画素終端部3’)を示す図である。本変形例では、画素終端部3’はN型ウェル15’を第1主面S1に接するように配置し、画素アレイを囲む構造としている。また、画素アレイの外周において、N型半導体領域13が画素アレイ外周に向けて幅広く形成されている。
図16は、図15におけるE−E’線での断面図を示す。画素終端部3’のN型ウェル15’は、N型ウェル16と電気的に接続するように配置されている。このとき、N型半導体領域13は、N型ウェル16とP型半導体領域14との間に配置されており、N型半導体領域13よりもN型ウェル16の方が、P型半導体領域14から離れて配置されているため、画素終端部3’の電界強度が画素アレイ内部よりも弱まり、画素終端部3’におけるアバランシェ増倍を抑制することができる。また、画素アレイ外でN型半導体領域13とN型ウェル16の平面視における重なり幅が画素アレイ内よりも広くなり、P+型半導体領域10とP型ウェル22との電気的分離能を強化している。
(実施の形態4)
図18は、実施の形態4に係る固体撮像素子の断面図である。図19は3x3の画素アレイを含む平面図を示している。簡易的に、画素アレイ内にはN型半導体領域12、N型半導体領域13およびP+型半導体領域14aのみ図示している。
以下では、実施の形態1と同様の要素については同一の符号を付している。また、以下では実施の形態1との相違点を主に説明する。
画素1のP型半導体領域14と、画素1に隣接する画素2のP型半導体領域14との間には、画素1のP型半導体領域14および画素2のP型半導体領域14の不純物濃度よりも高い不純物濃度をもつP型の第6の半導体領域(P+型半導体領域14a)が形成されている。
これにより、画素境界における、電界強度を均一化し、電界強度が、アバランシェブレークダウンが生じる閾値電界を超える領域を拡大し、アバランシェ増倍可能な領域を増やすことができる。
なお、図18では、P型の第6の半導体領域(P+型半導体領域14a)の幅は、画素間分離領域の幅と一致させて示しているが、P+半導体領域14aの幅は、これにより限定されるものではなく、画素間分離領域32を除く画素の全域でブレークダウンが生じる閾値電界を超えるように調整することが好ましい。
なお、画素終端部3では、第6の半導体領域(P+型半導体領域14a)は配置せず、画素アレイを囲む構造とすることが好ましい。これは画素終端部においてブレークダウンが発生することを抑制するためである。
次に、図20A、図20B、図21を用いて、実施の形態4に係る固体撮像素子での電界強度のプロファイルについて説明する。
図20A、図20Bは、図19、および実施の形態1の3x3の画素アレイにおけるそれぞれFF’線、GG’線でのアバランシェブレークダウンを生じる電界強度のプロファイルを示している。実線は、図19(実施の形態4)に対応し、破線は、実施の形態1に対応する。図20Aおよび図20Bにおいて、横軸は、それぞれの切断線における位置を示す。横軸の位置(i)、(ii)、(iii)、(iv)は、図19における位置(i)、(ii)、(iii)、(iv)に対応する。縦軸は、電界強度(a.u.)を示す。
図20Aに示すとおり、実施の形態1では、N型半導体領域12を配置した位置(iv)で電界強度が最も大きく、位置(iv)からの距離に依存して電界強度が低下し、位置(iii)で最低となる。
一方、実施の形態4では、位置(iii)の画素分離領域の上方にP型半導体領域14aが形成されているため、その近傍で電界強度が急峻に立ち上がる。位置(iii)から離れると電界強度が弱まるので、位置(iii)と位置(iv)の間で電界強度の比較的弱い領域が生じる。つまり、実施の形態4では、位置(iii)の近傍での、電界強度の急峻な立ち上がりにより、実施の形態1と対比して、ブレークダウン閾値電圧を超える領域が位置(iii)により近い位置でも生じるようになる。
また、図20Bに示すとおり、実施の形態1では、N型半導体領域12を配置した位置(iv)で電界強度が最も大きく、位置(iv)からの距離に依存して電界強度が低下する。一方、実施の形態4では、位置(iii)の画素分離領域の上方にP型半導体領域14aが形成されているため、画素間分離領域32の近傍で電界強度が高くなる。つまり、図20A同様、アバランシェブレークダウンが起こる領域を広げることができる。
図21は、それぞれ実施の形態1および実施の形態4の任意の画素におけるアバランシェブレークダウンを生じうる範囲(つまり、図20Aおよび図20Bにおいてブレークダウン電圧の閾値よりも電界強度が大きくなる領域)を示した図である。実施の形態1では、N型半導体領域12からの距離に依存して電界強度が低下するため、アバランシェブレークダウンが発生する領域は例えば略円形で、特にG−G’断面方向でブレークダウンを起こさない領域が広く生じるが、実施の形態4では、図20A、図20Bに示したとおり、P+半導体領域14aの近傍で電界が強くなるため、ブレークダウンが発生する領域が、略円形からP+半導体領域14aに近づく方向に、増倍領域の面積を拡大する効果がある。
次に、図17を用いて、上述した第1〜第4の実施形態のいずれかに係る画素1を利用した固体撮像素子の回路例について説明する。
固体撮像素子100は、画素アレイ102、垂直走査回路103、水平走査回路104、読み出し回路105、バッファアンプ(増幅回路)111を含む。画素アレイ102には第1〜第3の実施形態のいずれかに係る画素が行列状に並べられている。
各画素1は光電変換部PD、転送トランジスタ106、リセットトランジスタ107、浮遊拡散領域108、増幅トランジスタ109、選択トランジスタ110を含む回路で構成される。転送トランジスタ106は、実施の形態1及び2に係るトランジスタTR1、又は、実施の形態3に係る転送トランジスタTR3に相当し、増幅トランジスタ109は、実施の形態3に係る増幅トランジスタTR2に相当する。光電変換部PDで検出した信号電荷は転送トランジスタ106を通じて浮遊拡散領域108に転送され、垂直走査回路103および水平走査回路104で順次選択された画素で検出された信号電荷の量に対応する信号が増幅トランジスタ109を介して読み出し回路105に伝送される。各画素1で得られた信号は読み出し回路105からバッファアンプ111を経て信号処理回路(図示せず)に出力され、信号処理回路(図示せず)でホワイトバランス等の信号処理が施された後にディスプレイ(図示せず)やメモリ(図示せず)に転送され、画像化することが可能となる。
固体撮像素子100には外部電源101からアバランシェ増倍駆動時の電圧Va(例えば、−20V)、またはノーマル駆動時の電圧Vn(例えば、−10V)を切り替えながら、固定電位Vpdとして、印加可能である。撮像する対象の明るさに応じて電圧を切り替えることで、極めて暗い照度から一般的なカメラで撮像できる照度までの撮像に対応可能である。また、フレームごとに印加電圧をVaとVnとを切り替えて撮像し、画像を合成することで、ダイナミックレンジの広い動画撮像も可能となる。
なお、図17に示される固体撮像素子の回路例では、画素アレイに、周辺回路(垂直走査回路103、水平走査回路104、読み出し回路105、バッファアンプ111)が付加されていたが、本開示に係る固体撮像素子は、必ずしも周辺回路が含まれなくてもよい。また、画素1を構成する画素回路は、4個のトランジスタ(転送トランジスタ106、リセットトランジスタ107、増幅トランジスタ109、選択トランジスタ110)と1個の浮遊拡散領域108とで構成されたが、本開示に係る画素回路は、このような構成に限られず、もっと多い個数又は少ない個数のトランジスタで構成されてもよい。
以上のように、本開示に係る固体撮像素子は、第1画素(画素1)及び第1画素(画素1)に隣接する第2画素(画素2)を含む画素アレイを備える固体撮像素子であって、画素アレイは、第1主面S1及び第1主面S1の反対側であって光が入射する第2主面S2を有する第1導電型(P型)の基板11と、第1主面S1上に配置された配線層17とを備える。基板11は、(1)第1画素(画素1)及び第2画素(画素2)のそれぞれについて形成され、基板11の内部に配置され、第1主面S1から第2主面S2の方向に伸び、且つ、第1導電型(P型)と異なる第2導電型(N型)の第1の半導体領域(N型半導体領域12)と、(2)第1画素(画素1)及び第2画素(画素2)のそれぞれについて形成され、基板11の内部であって第2主面S2と第1の半導体領域(N型半導体領域12)との間に配置され、第1の半導体領域(N型半導体領域12)と接続され、且つ、第2導電型(N型)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)と、(3)基板11の内部であって第2主面S2と第1画素(画素1)及び第2画素(画素2)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)との間に配置され、第1導電型(P型)の第3の半導体領域(P型半導体領域14)と、(4)基板11の内部であって、かつ、第1画素(画素1)の第1の半導体領域(N型半導体領域12)と第2画素(画素2)の第1の半導体領域(N型半導体領域12)との間であって、第1主面S1に配置された第1のウェル領域(N型ウェル15、P型ウェル22、P型ウェル30)と、(5)第1のウェル領域(N型ウェル15、P型ウェル22、P型ウェル30)内に配置された画素回路(TR1等)と、(6)基板11の内部であって第1画素(画素1)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)と第2画素(画素2)の第2の半導体領域(N型半導体領域13)との間に配置された画素間分離領域32とを備える。第2の半導体領域(N型半導体領域13)と第3の半導体領域(P型半導体領域14)とは、アバランシェ増倍領域AMを形成する。
これにより、アバランシェ増倍領域AMと画素回路とが一つの基板11内に埋め込んで形成され、かつ、画素回路がアバランシェ増倍領域AMの下方に形成されるので、高い開口率を維持しながらも、同一基板内にAPDと画素回路を構成する固体撮像素子が実現される。そして、第1画素(画素1)のN型半導体領域13と第2画素(画素2)のN型半導体領域13との間には画素間分離領域32が配置されるので、画素で発生した信号電荷が隣接画素に漏れこむクロストークが抑制される。よって、高い開口率を満たしながらも、APDと画素回路とを同一半導体基板に作製した固体撮像素子であって、微細化しやすく、かつ、クロストークも抑制できる固体撮像素子が実現される。
ここで、固体撮像素子は、さらに、基板11の内部であって第1画素(画素1)の第3の半導体領域(P型半導体領域14)と第2画素(画素2)の第3の半導体領域(P型半導体領域14)との間に配置された第1導電型(P型)の第6の半導体領域(P+型半導体領域14a)を備える。このとき、例えば、第6の半導体領域(P+型半導体領域14a)の不純物濃度は、第3の半導体領域(P型半導体領域14)の不純物濃度よりも高い。
これにより、電界強度がブレークダウンの閾値電界よりも大きくなる領域が拡大し、より広い範囲で改善され、アバランシェ増倍に有効な領域の面積率が改善する。
また、第1のウェル領域(P型ウェル22又はP型ウェル30)は、第1導電型(P型)であり、画素間分離領域32によって、第3の半導体領域(P型半導体領域14)と電気的に分離されている。
これにより、第1のウェル領域(P型ウェル22又はP型ウェル30)は第1導電型(P型)であるので、第1のウェル領域内にNチャネルのトランジスタを形成できる。
また、第1のウェル領域(P型ウェル22又はP型ウェル30)と、第2の半導体領域(N型半導体領域13)との間に配置され、第2の半導体領域(N型半導体領域13)と電気的に分離された、第2導電型(N型)の第2のウェル領域(N型ウェル16)をさらに備える。
これにより、第2の半導体領域(N型半導体領域13)と第2のウェル領域(N型ウェル16)との間、及び、第1の半導体領域(N型半導体領域12)と第2のウェル領域(N型ウェル16)との間のP型半導体領域を空乏化させることで、第1のウェル領域(P型ウェル22又はP型ウェル30)とP+型半導体領域10との間に、電子に対するポテンシャル障壁が形成され、第1のウェル領域(P型ウェル22又はP型ウェル30)を固定電位Vpdから電気的に分離することができる。
また、画素間分離領域32における電子に対するポテンシャル障壁は、第1の半導体領域(N型半導体領域12)と第2のウェル領域(N型ウェル16)との間の第1導電型(P型)の領域における電子に対するポテンシャル障壁よりも高い。
これにより、高輝度被写体を撮像した場合や、飽和電子数を超える増倍率で撮像を行う場合等において、画素1の第1の半導体領域(N型半導体領域12)に過剰に蓄積された電荷が第2のウェル領域(N型ウェル16)に排出されるので、そのような電荷が第2の半導体領域(N型半導体領域13)を通じて隣接する画素2の第1の半導体領域(N型半導体領域12)へ流入することによるブルーミングの発生が低減される。
また、第1の半導体領域(N型半導体領域12)と第1主面S1との間に配置された第2導電型(N型)の表面不活性領域(P+型半導体領域33)をさらに備え、画素回路は、第1の半導体領域(N型半導体領域12)をソース領域とするMOS型トランジスタ(TR3)を有する。
これにより、結晶欠陥が基板11内部よりも多い第1主面S1から離れた(深い)領域に、ソース領域となるN型半導体領域12が埋め込まれることになるため、基板表面(第1主面S1)に多数存在する結晶欠陥に起因するリーク電流が低減され、その結果、アバランシェ増倍を行わないノーマル駆動においても、画質が向上し、広いダイナミックレンジが確保される。
また、画素間分離領域32は、第1導電型(P型)、又は、第2の半導体領域(N型半導体領域13)の不純物濃度よりも低濃度の第2導電型(N型)である。
これにより、画素間分離領域32には電子に対するポテンシャル障壁が設けられるので、ブレークダウンを起こさない電圧条件で撮像(ノーマル駆動)を行えるようになり、通常の日中程度の明るさでも、混色を抑制した画像を取得できる。よって、暗いエリアと明るいエリアが混在したシーンを撮像する際、アバランシェ増倍駆動で撮像後、通常の増倍しないノーマル駆動で撮像して、両画像を加算するような画像処理により、広ダイナミックレンジの鮮明な画像を取得できる。
また、第1の半導体領域(N型半導体領域12)は、第1主面S1側での第1主面S1に平行な面での断面における面積よりも、第2主面S2側での第1主面S1に平行な面での断面における面積が大きい。
これにより、光電変換部PDにおける光電変換により発生した電子は第1の半導体領域(N型半導体領域12)に集まりやすくなり、固体撮像素子の感度が向上される。
また、第3の半導体領域(P型半導体領域14)と第2主面S2との間の領域における不純物濃度(p−)は、第3の半導体領域(P型半導体領域14)の不純物濃度(p)よりも低い。
これにより、光電変換部PDにおいて発生した電子が再結合する確率を下げ、第1の半導体領域(N型半導体領域12)まで電子が到達する確率を上げることができ、第2主面S2から入射した光を光電変換できる確率が増加する。
また、基板11の内部であって、画素アレイを囲み、第1主面S1に接する第2導電型(N型)の第4の半導体領域(N型半導体領域18)をさらに備え、第4の半導体領域(N型半導体領域18)と基板11における第4の半導体領域(N型半導体領域18)と接する領域とによって形成されるPN接合における不純物濃度の勾配は、第2の半導体領域(N型半導体領域13)と第3の半導体領域(P型半導体領域14)とによって形成されるPN接合における不純物濃度の勾配よりも小さい。
これにより、第4の半導体領域(N型半導体領域18)に固定電圧を印加することで、第1主面S1上の画素アレイ外で発生する表面欠陥起因のリーク電流が画素アレイ内に流れ込むことを抑制できる。そして、第4の半導体領域(N型半導体領域18)と第3の半導体領域(P型半導体領域14)との間の電界強度が画素アレイ内よりも低くなるので、第4の半導体領域(N型半導体領域18)と第3の半導体領域(P型半導体領域14)との間でアバランシェ増倍が発生することが抑制され、画素終端部3で不要な電力が消費されることが抑制される。
また、第4の半導体領域(N型半導体領域18)に電気的に接続される第5の半導体領域(N型半導体領域13’)と、画素アレイの最外周の画素(画素1)における第2の半導体領域(N型半導体領域13)と第5の半導体領域(N型半導体領域13’)とを電気的に分離するための画素終端部分離領域32aとをさらに備え、画素終端部分離領域32aは空乏化している。
これにより、画素終端部分離領域32aに電子に対するポテンシャル障壁が形成されるので、画素終端部3でのアバランシェ増倍が抑制され、不要な消費電力が抑制されると共に、画素終端部3でアバランシェ増倍した電荷が画素アレイ内に流れ込む不具合も抑制される。
(その他の実施の形態)
以上、本開示の実施の形態及び変形例に係る固体撮像素子について説明したが、本開示は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された数字に制限されない。
また、上記で示した各構成要素の材料は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示は例示された材料に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
更に、本開示の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく範囲内の変更を施した各種変形例も本開示に含まれる。