JP2018138051A - 細胞の培養方法及びキット - Google Patents
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Abstract
【課題】空気に露出した担体上で細胞を培養する方法及びキットの提供。【解決手段】細胞の培養方法であって、(1)1又は複数のシート状多孔質担体に細胞を担持させる工程、(2)細胞を担持させたシート状多孔質担体に培地を適用し、シート状多孔質担体の孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態として、シート状多孔質担体を培地で湿潤させる工程、(3)培地を収容する培養容器中に、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程、及び(4)培養容器をインキュベータ内に設置して、細胞を培養する工程を含み、ここで培養を通じてシート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態が保たれる、培養方法。【選択図】なし
Description
本発明は、細胞の培養方法及びキットに関する。詳細には、空気に露出した担体を用いた細胞の培養方法及びキットに関する。また、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法に関する。
細胞培養
細胞は生体内では一般に三次元的な集団として存在するが、古典的な平面培養では、細胞が容器に張り付く形で単層状に培養される。培養環境の相違により、細胞の性質も大きく異なることが数多く報告されている。また、液体培養培地中で細胞を培養する浮遊培養については、浮遊培養に適した細胞がある一方、適さない細胞もある。
細胞は生体内では一般に三次元的な集団として存在するが、古典的な平面培養では、細胞が容器に張り付く形で単層状に培養される。培養環境の相違により、細胞の性質も大きく異なることが数多く報告されている。また、液体培養培地中で細胞を培養する浮遊培養については、浮遊培養に適した細胞がある一方、適さない細胞もある。
近年、培養細胞を用いるワクチン、酵素、ホルモン、抗体、サイトカイン等生体内タンパク質等の産生やあるいは再生医療における細胞移植等が注目を集めるに伴い、大量の細胞を効率的かつ簡便に培養する方法論が注目を集めている。細胞培養においては、細胞培養用担体を用いる、用いないに関わらず、また、浮遊細胞であるか付着性細胞であるかに関わらず、嫌気性細菌を除けば、酸素供給は細胞の健全な育成のために重要な課題である。たとえば、付着性細胞をシャーレやプレートあるいはチャンバーを用いて平面培養する場合、培養容器の面積に対して培地量の適正範囲に制限がある。そのため、不必要に多量の培地を使用した場合には、細胞に十分な酸素が供給されず、低酸素による障害が起こるケースや細胞が死に至るケースも生じうる。また、細胞群がスフェロイドを形成する場合、そのサイズが大きくなりすぎると、内部の細胞は酸素不足に陥ることが知られている(非特許文献1)。このような酸素供給課題に対して、マイクロバブルの利用による酸素濃度の向上(特許文献1)やマイクロキャリア培養における均一な酸素供給方法(特許文献2)などの試みがなされている。
細胞培養用担体を気相に露出して培養する方法の試みもなされている。たとえば、中空糸培養における液相/気相露出バイオリアクター(特許文献3)については、細胞が生息する中空糸が回転して気相と液相に交互に露出されるシステムが紹介されている。また、細胞培養を実施する上で、ハンドリング等に優れるシート型担体に関して、全体が気相に露出するシステムも紹介されている(特許文献4)が、具体的な実施の形態は特定されていない。
担体の気相露出が細胞培養時に可能となれば、細胞培養に於ける酸素供給の課題が大きく改善されるため、効率的培養方法の確立に向けては、非常に魅力的な方法論となり得る。しかしながら、既知の細胞培養担体である繊維性素材では乾燥等を免れ得ないため、素材を含めた新規な“気相に担体が露出し得る培養方法”の確立が希求されている。
細胞はその生存形態の特長により、大きくは、浮遊細胞と付着性細胞の2種に大別される。付着性細胞の培養においては、細胞が分裂・増殖する過程において、その細胞が成育している足場に有限の範囲が存在するため、増殖が進めば自ずとその足場での増殖限界に達する事は免れ得ない。これは、標準的なシャーレ等の平面での培養の場合でも、媒体を用いる3次元的な培養でも、共通した真実である。
細胞の増殖を推進する為には、継代は必要不可欠であり、どの用途・方法でも重要な作業であるが、トリプシンやコラゲナーゼ等で細胞を処理して足場より取り外し、細胞懸濁液を経て再度播種する作業は、コンタミネーション等のリスクを伴う作業である上に大きな手間であり、細胞に対するストレスも看過出来ないとの考え方もある。
媒体を利用する培養方法として代表的と言えるマイクロキャリア培養においては、キャリア間での細胞のやり取りが達成されているが、あくまでマイクロキャリア培養の中での扱いであり、マイクロキャリアの持つ形状やサイズの規定性から逃れうる方法ではなく、マイクロキャリアの形態に限定されている。
近年、このマイクロキャリア培養において京都大学・日産化学・ニプロらの発明により、ジェランガムを用いるES及びiPS細胞の大量培養法が発明され、細胞懸濁液を経ずに細胞を継代する方法が見出されている。ここでは、スフェロイドと呼ばれる細胞塊の形成を液中で浮遊させながら行い、このスフェロイドの拡大と小塊化を繰り返す事により、懸濁液を経ずに細胞培養を実現しているが、スフェロイドを形成する細胞に限定され、また、スフェロイドの集合化を防ぐために詳細なタイミング制御が必要であるなど、多くの手間が必要となる為、効率的とは言い難い上に、本質的に、マイクロキャリア培養の持つ、形状的規定性に関しても解決されていない。
一方、一般的な培養方法においては、培養細胞の培養面の一部に取り外し可能なゴム状材料を用いて被覆し、そこに移動した細胞を被覆ごと取り外し、シャーレ等に移送して培養する方法論が知られているが、一時的に移送可能という事実に過ぎず、継続的かつ大量な細胞培養への展開という視点からは課題は取り組まれておらず、解決もされていない。
細胞を大量に培養・増殖させ、用途に合わせて効率良く育てる為には、細胞懸濁液を経ない形で、簡便かつ自動化に向き、更に形状や大きさにとらわれない適応性の高いシステムにより細胞を継代させる事ができることが望ましい。さらに、その方法論を定常的な細胞培養と直結させ得る新規なシステムの構築が希求されている。
ポリイミド多孔質膜
ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称である。芳香族ポリイミドは、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された高分子を意味する。芳香族ポリイミドは芳香族と芳香族とがイミド結合を介して共役構造を持つため、剛直で強固な分子構造を持ち、かつ、イミド結合が強い分子間力を持つために非常に高いレベルの熱的、機械的、化学的性質を有する。
ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称である。芳香族ポリイミドは、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された高分子を意味する。芳香族ポリイミドは芳香族と芳香族とがイミド結合を介して共役構造を持つため、剛直で強固な分子構造を持ち、かつ、イミド結合が強い分子間力を持つために非常に高いレベルの熱的、機械的、化学的性質を有する。
ポリイミド多孔質膜は、本発明前よりフィルター、低誘電率フィルム、燃料電池用電解質膜など、特に電池関係を中心とする用途のために利用されてきた。特許文献8〜10は、特に、気体などの物質透過性に優れ、空孔率の高い、両表面の平滑性が優れ、相対的に強度が高く、高空孔率にもかかわらず、膜厚み方向への圧縮応力に対する耐力に優れるマクロボイドを多数有するポリイミド多孔質膜を記載している。これらはいずれも、アミック酸を経由して作成されたポリイミド多孔質膜である。
黒澤 尋, 生物工学 第91巻、2013年 第11号 646−653
Otsuji et al., Stem Cell Reports, Vol. 2, 734-745, May 6, 2014
本発明は、細胞の培養方法及びキットを提供することを目的とする。詳細には、空気に露出した担体上で細胞を培養する方法及びキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリイミド多孔質膜のようなシート状細胞培養担体が細胞の接着、培養に適していることを見出し、本発明に想到した。本発明者らは、ポリイミド多孔質膜のようなシート状細胞培養担体に細胞を培養し、気相に直接接触させることで、非常に小さな体積で多くの細胞を培養出来る可能性を見出し、適用範囲を検証した。担体を気相に直接接触させることにより、酸素供給の効率が大きく改善することが期待されるが、培地の枯渇による細胞死も想定されるため、各種条件下にてその可能性を検証し、本発明を完成した。さらに、担体が気相に曝露されることで、膜同士の密着性が向上し、細胞がシート間を自由に移動する可能性も見出され、細胞にとって好ましい大きな立体空間が発生することも期待される。
また、本発明者らは、細胞懸濁液を経ない形で、適応性の高いシステムにより細胞を継代させる方法を提供する、という課題の解決のために、鋭意研究に勤めた結果、ポリイミド多孔質膜を用いた細胞培養を利用することで、好ましい結果が得られることを見出し、本発明を想到した。具体的には、ポリイミド多孔質膜を用いた細胞培養では、膜が有する細胞が通過可能な大口径連結孔を活用してこの空間で細胞が安定的に生息する為、膜同士が密着している限り、細胞はある程度自由に膜内のみならず膜間をも移動し得る。この特性を活用し、細胞が成育している媒体(シャーレ、ディッシュ、カルチャープレート、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、ポリイミド多孔質膜及びその他細胞培養媒体)に、細胞の成育していないポリイミド多孔質膜を密着させる事により細胞の移動を惹起し、継続的かつ簡便に細胞培養と継代を継続し得る。
限定されるわけではないが、本発明は好ましくは以下の態様を含む。
[1]
細胞の培養方法であって、
(1)1又は複数のシート状多孔質担体に細胞を担持させる工程、
(2)細胞を担持させたシート状多孔質担体に培地を適用し、シート状多孔質担体の孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態として、シート状多孔質担体を培地で湿潤させる工程、
(3)培地を収容する培養容器中に、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程、及び
(4)培養容器をインキュベータ内に設置して、細胞を培養する工程
を含み、ここで培養を通じてシート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態が保たれる、培養方法。
[2]
工程(4)において、培養容器内に連続的又は間歇的に培地が供給され、ここで培養を通じて培地で湿潤させたシート状多孔質担体の一部または全体が気相に曝露されている、[1]に記載の培養方法。
[3]
工程(4)において、細胞を培養する工程が、酸素を供給する手段で酸素を供給しながら培養する工程である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
工程(3)において、シート状多孔質担体を剛体の上に載置する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
剛体が金属メッシュである、[4]に記載の方法。
[6]
工程(3)において、1又は複数のシート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートが不織布、ガーゼ、及びスポンジからなる群より選択される、[6]に記載の方法。
[8]
培養容器が開放容器である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
培養容器が閉鎖容器である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[10]
工程(3)において、2以上のシート状多孔質担体を上下に積層して配置する、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
工程(3)において、1又は複数のシート状多孔質担体を折り畳んで配置する、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
1又は複数のシート状多孔質担体がポリイミド多孔質膜である、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、[12]に記載の方法。
[14]
ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜である、[13]に記載の方法。
[15]
前記ポリイミド多孔質膜が、2つの異なる表層面とマクロボイド層を有する多層構造のポリイミド多孔質膜である、[13]又は[14]に記載の方法。
[16]
細胞が、物質を発現するように遺伝子工学技術により形質転換されている、[1]〜[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17]
細胞が、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌及び細菌からなる群から選択される、[1]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]
動物細胞が、脊椎動物門に属する動物由来の細胞である、[17]に記載の方法。
[19]
細胞が、CHO細胞、CHO−K1細胞、Vero細胞、及びMDCK細胞からなる群より選択される、[18]に記載の方法。
[20]
ポリイミド多孔質膜を含む、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に使用するためのキット。
[21]
ポリイミド多孔質膜の、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法のための使用。
[22]
細胞を培養している細胞培養媒体にポリイミド多孔質膜を接触させることにより細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
[23]
細胞培養媒体が、シャーレ、ディッシュ、培養プレート、培養フラスコ、マイクロウェルプレート及びグラスボトムディッシュからなる群から選択され、そして、ポリイミド多孔質膜を細胞培養媒体の上面に接触させることを含む、[22]に記載の方法。
[24]
細胞培養媒体が、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、不織布及び中空糸からなる群から選択され、そして、当該細胞培養媒体の上部、下部又はその双方から、単数又は複数のポリイミド多孔質膜を接触させる、ことを含む、[22]に記載の方法。
[25]
細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜を接触させことにより、細胞を第1のポリイミド多孔質膜から第2の多孔質膜へ移動させ、そして、第2のポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
[26]
第1のポリイミド多孔質膜と第2のポリイミド多孔質膜とが接触した状態のまま、膜集合体を気相中に持ち上げることを含む、[25]に記載の方法。
[27]
細胞を培養していない空の第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用し、第1のポリイミド多孔質膜で細胞を培養する工程をさらに含む、[25]又は[26]に記載の方法。
[28]
細胞を培養している細胞培養媒体に空の第1のポリイミド多孔質膜を接触させて、細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させることにより、第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用する。[27]に記載の方法。
[29]
細胞を含む生体試料を、ポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方に接触させることにより、細胞を生体試料からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
[30]
前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、[22]〜[29]のいずれか1項に記載の方法。
[31]
前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜である、[30]に記載の方法。
[32]
前記ポリイミド多孔質膜が、2つの異なる表層面とマクロボイド層を有する多層構造のポリイミド多孔質膜である、[30]又は[31]に記載の方法。
[33]
前記ポリイミド多孔質膜の膜厚が75μm以下である、[32]に記載の方法。
[34]
細胞が移動した2以上のポリイミド多孔質膜を、上下又は左右に細胞培養培地中に積層して細胞を培養する、[22]〜[33]のいずれか1項に記載の方法。
[35]
細胞を培養している細胞培養媒体、細胞を含む生体試料、あるいは、細胞を培養しているポリイミド多孔質膜、から細胞を培養していないポリイミド多孔質膜への細胞の移動を、2回以上繰り返すことを含む、[22]〜[34]のいずれか1項に記載の方法。
[36]
ポリイミド多孔質膜を含む、[22]〜[35]のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット。
[37]
ポリイミド多孔質膜の[22]〜[35]のいずれか1項に記載の方法のための使用。
[1]
細胞の培養方法であって、
(1)1又は複数のシート状多孔質担体に細胞を担持させる工程、
(2)細胞を担持させたシート状多孔質担体に培地を適用し、シート状多孔質担体の孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態として、シート状多孔質担体を培地で湿潤させる工程、
(3)培地を収容する培養容器中に、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程、及び
(4)培養容器をインキュベータ内に設置して、細胞を培養する工程
を含み、ここで培養を通じてシート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態が保たれる、培養方法。
[2]
工程(4)において、培養容器内に連続的又は間歇的に培地が供給され、ここで培養を通じて培地で湿潤させたシート状多孔質担体の一部または全体が気相に曝露されている、[1]に記載の培養方法。
[3]
工程(4)において、細胞を培養する工程が、酸素を供給する手段で酸素を供給しながら培養する工程である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
工程(3)において、シート状多孔質担体を剛体の上に載置する、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
剛体が金属メッシュである、[4]に記載の方法。
[6]
工程(3)において、1又は複数のシート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置する、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートが不織布、ガーゼ、及びスポンジからなる群より選択される、[6]に記載の方法。
[8]
培養容器が開放容器である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]
培養容器が閉鎖容器である、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[10]
工程(3)において、2以上のシート状多孔質担体を上下に積層して配置する、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]
工程(3)において、1又は複数のシート状多孔質担体を折り畳んで配置する、[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
1又は複数のシート状多孔質担体がポリイミド多孔質膜である、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]
ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、[12]に記載の方法。
[14]
ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜である、[13]に記載の方法。
[15]
前記ポリイミド多孔質膜が、2つの異なる表層面とマクロボイド層を有する多層構造のポリイミド多孔質膜である、[13]又は[14]に記載の方法。
[16]
細胞が、物質を発現するように遺伝子工学技術により形質転換されている、[1]〜[15]のいずれか1項に記載の方法。
[17]
細胞が、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌及び細菌からなる群から選択される、[1]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]
動物細胞が、脊椎動物門に属する動物由来の細胞である、[17]に記載の方法。
[19]
細胞が、CHO細胞、CHO−K1細胞、Vero細胞、及びMDCK細胞からなる群より選択される、[18]に記載の方法。
[20]
ポリイミド多孔質膜を含む、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法に使用するためのキット。
[21]
ポリイミド多孔質膜の、[1]〜[19]のいずれかに記載の方法のための使用。
[22]
細胞を培養している細胞培養媒体にポリイミド多孔質膜を接触させることにより細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
[23]
細胞培養媒体が、シャーレ、ディッシュ、培養プレート、培養フラスコ、マイクロウェルプレート及びグラスボトムディッシュからなる群から選択され、そして、ポリイミド多孔質膜を細胞培養媒体の上面に接触させることを含む、[22]に記載の方法。
[24]
細胞培養媒体が、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、不織布及び中空糸からなる群から選択され、そして、当該細胞培養媒体の上部、下部又はその双方から、単数又は複数のポリイミド多孔質膜を接触させる、ことを含む、[22]に記載の方法。
[25]
細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜を接触させことにより、細胞を第1のポリイミド多孔質膜から第2の多孔質膜へ移動させ、そして、第2のポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
[26]
第1のポリイミド多孔質膜と第2のポリイミド多孔質膜とが接触した状態のまま、膜集合体を気相中に持ち上げることを含む、[25]に記載の方法。
[27]
細胞を培養していない空の第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用し、第1のポリイミド多孔質膜で細胞を培養する工程をさらに含む、[25]又は[26]に記載の方法。
[28]
細胞を培養している細胞培養媒体に空の第1のポリイミド多孔質膜を接触させて、細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させることにより、第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用する。[27]に記載の方法。
[29]
細胞を含む生体試料を、ポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方に接触させることにより、細胞を生体試料からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
[30]
前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、[22]〜[29]のいずれか1項に記載の方法。
[31]
前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜である、[30]に記載の方法。
[32]
前記ポリイミド多孔質膜が、2つの異なる表層面とマクロボイド層を有する多層構造のポリイミド多孔質膜である、[30]又は[31]に記載の方法。
[33]
前記ポリイミド多孔質膜の膜厚が75μm以下である、[32]に記載の方法。
[34]
細胞が移動した2以上のポリイミド多孔質膜を、上下又は左右に細胞培養培地中に積層して細胞を培養する、[22]〜[33]のいずれか1項に記載の方法。
[35]
細胞を培養している細胞培養媒体、細胞を含む生体試料、あるいは、細胞を培養しているポリイミド多孔質膜、から細胞を培養していないポリイミド多孔質膜への細胞の移動を、2回以上繰り返すことを含む、[22]〜[34]のいずれか1項に記載の方法。
[36]
ポリイミド多孔質膜を含む、[22]〜[35]のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット。
[37]
ポリイミド多孔質膜の[22]〜[35]のいずれか1項に記載の方法のための使用。
本発明は、ポリイミド多孔質膜のようなシート状多孔質担体を用いて細胞を培養し、その際、シート状多孔質担体内部及び表面の湿潤環境を保ったまま、シート状多孔質担体表面の一部又は全体を気相に露出することにより、細胞への効率的な空気の供給を可能とする。本発明によれば、大きなスケールの細胞培養系であっても、酸素供給のための特別な装置を必要としない。また、本発明では、培地内にシート状多孔質担体が深く沈み込んでいないため、培地交換において、必ずしもシート状多孔質担体を移動させる必要がない。たとえば、シート状多孔質担体の上部又は下部に連続的又は間歇的な培地の流れをつくることにより、培地交換を行うことが可能となる。また、本発明を用いた細胞培養システムには撹拌等の可動部を必要としないため、堅牢性に優れ、安定度の高い細胞培養系も提供できる。
また、本発明の方法によりポリイミド多孔質膜を用いることにより、細胞懸濁液を経ない形で、簡便かつ効率良く細胞を継代させることが可能になった。
さらに本発明によれば、従来付着細胞で継代が必要なコンフルエントな状態になった場合であっても、細胞が播種されていない、及び/又は、細胞が生着するスペースを有したポリイミド多孔質膜を、コンフルエント又はサブコンフルエントになった細胞培養担体に密着させる(例えば、挟持する、積層する等)ことで、従来用いられるトリプシン等を使用することなく、拡大培養が可能となる。
I.細胞の培養方法
本発明は、細胞の培養方法に関する。なお、国際出願番号PCT/JP2014/070407の全内容を、参照により本明細書に援用する。
本発明は、細胞の培養方法に関する。なお、国際出願番号PCT/JP2014/070407の全内容を、参照により本明細書に援用する。
本発明の細胞の培養方法は、細胞をポリイミド多孔質膜のようなシート状多孔質担体に担持させ、培養することを含む。本発明者らは、シート状多孔質担体が細胞の接着、培養に適していることを見出し、本発明に想到した。本発明の方法は、シート状多孔質担体に細胞を適用し、ポリイミド膜の表面又は内部で細胞を培養することを含むことを特徴とするものである。
1.シート状多孔質担体
本発明に用いるシート状多孔質担体は、細胞を保持することのできる孔を有するシート状の担体であればいずれを用いてもよいが、たとえば不織布、ポリマー性多孔質フィルム、ポリイミド多孔質膜等を例示することができる。特にポリイミド多孔質膜を好適に用いることができる。本発明において細胞を担持させるためのポリイミド多孔質膜のようなシート状多孔質担体は、当然、装填する以外の細胞を含まない状態、即ち、滅菌されていることが好ましい。本発明の方法は、好ましくは、ポリイミド多孔質膜のようなシート状多孔質担体を予め滅菌する工程を含む。ポリイミド多孔質膜は、耐熱性に極めて優れており、軽量であり、形・大きさも自由に選択可能であり、滅菌処理が容易である。乾熱滅菌、蒸気滅菌、エタノール等消毒剤による滅菌、紫外線やガンマ線等の電磁波滅菌等任意の滅菌処理が可能である。
本発明に用いるシート状多孔質担体は、細胞を保持することのできる孔を有するシート状の担体であればいずれを用いてもよいが、たとえば不織布、ポリマー性多孔質フィルム、ポリイミド多孔質膜等を例示することができる。特にポリイミド多孔質膜を好適に用いることができる。本発明において細胞を担持させるためのポリイミド多孔質膜のようなシート状多孔質担体は、当然、装填する以外の細胞を含まない状態、即ち、滅菌されていることが好ましい。本発明の方法は、好ましくは、ポリイミド多孔質膜のようなシート状多孔質担体を予め滅菌する工程を含む。ポリイミド多孔質膜は、耐熱性に極めて優れており、軽量であり、形・大きさも自由に選択可能であり、滅菌処理が容易である。乾熱滅菌、蒸気滅菌、エタノール等消毒剤による滅菌、紫外線やガンマ線等の電磁波滅菌等任意の滅菌処理が可能である。
ポリイミドとは、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称であり、通常は、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドを意味する。芳香族ポリイミドは芳香族と芳香族とがイミド結合を介して共役構造を持つため、剛直で強固な分子構造を持ち、かつ、イミド結合が強い分子間力を持つために非常に高いレベルの熱的、機械的、化学的性質を有する。
本発明において用いるポリイミド多孔質膜は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを(主たる成分として)含むポリイミド多孔質膜であり、より好ましくはテトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドからなるポリイミド多孔質膜である。「主たる成分として含む」とは、ポリイミド多孔質膜の構成成分として、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミド以外の成分は、本質的に含まない、あるいは含まれていてもよいが、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドの性質に影響を与えない付加的な成分であることを意味する。
テトラカルボン酸成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜も含まれる。
ポリアミック酸
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを重合して得られる。ポリアミック酸は、熱イミド化又は化学イミド化することにより閉環してポリイミドとすることができるポリイミド前駆体である。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを重合して得られる。ポリアミック酸は、熱イミド化又は化学イミド化することにより閉環してポリイミドとすることができるポリイミド前駆体である。
ポリアミック酸は、アミック酸の一部がイミド化していても、本発明に影響を及ぼさない範囲であればそれを用いることができる。すなわち、ポリアミック酸は、部分的に熱イミド化又は化学イミド化されていてもよい。
ポリアミック酸を熱イミド化する場合は、必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等をポリアミック酸溶液に添加することができる。また、ポリアミック酸を化学イミド化する場合は、必要に応じて、化学イミド化剤、脱水剤、無機微粒子、有機微粒子等の微粒子等をポリアミック酸溶液に添加することができる。ポリアミック酸溶液に前記成分を配合しても、着色前駆体が析出しない条件で行うことが好ましい。
着色前駆体
本発明において着色前駆体とは、250℃以上の熱処理により一部または全部が炭化して着色化物を生成する前駆体を意味する。
本発明において着色前駆体とは、250℃以上の熱処理により一部または全部が炭化して着色化物を生成する前駆体を意味する。
本発明で用いられる着色前駆体としては、ポリアミック酸溶液又はポリイミド溶液に均一に溶解または分散し、250℃以上、好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理、好ましくは空気等の酸素存在下での250℃以上、好ましくは260℃以上、更に好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上の熱処理により熱分解し、炭化して着色化物を生成するものが好ましく、黒色系の着色化物を生成するものがより好ましく、炭素系着色前駆体がより好ましい。
着色前駆体は、加熱していくと一見炭素化物に見えるものになるが、組織的には炭素以外の異元素を含み、層構造、芳香族架橋構造、四面体炭素を含む無秩序構造のものを含む。
炭素系着色前駆体は特に制限されず、例えば、石油タール、石油ピッチ、石炭タール、石炭ピッチ等のタール又はピッチ、コークス、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体、フェロセン化合物(フェロセン及びフェロセン誘導体)等が挙げられる。これらの中では、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体及び/又はフェロセン化合物が好ましく、アクリロニトリルを含むモノマーから得られる重合体としてはポリアクリルニトリルが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、任意のテトラカルボン酸二無水物を用いることができ、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸を用いることも好ましい。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
これらの中でも、特に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。
ジアミンは、任意のジアミンを用いることができる。ジアミンの具体例として、以下のものを挙げることができる。
1)1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン;
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン;
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン;
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。
1)1,4−ジアミノベンゼン(パラフェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのべンゼンジアミン;
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン;
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン;
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物が好ましく、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びパラフェニレンジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。特に、ベンゼンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル及びビス(アミノフェノキシ)フェニルからなる群から選ばれる少なくとも一種のジアミンが好ましい。
ポリイミド多孔質膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、ガラス転移温度が240℃以上であるか、又は300℃以上で明確な転移点がないテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを組み合わせて得られるポリイミドから形成されていることが好ましい。
本発明のポリイミド多孔質膜は、耐熱性、高温下での寸法安定性の観点から、以下の芳香族ポリイミドからなるポリイミド多孔質膜であることが好ましい。
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
(i)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
(ii)テトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド、
及び/又は、
(iii)ビフェニルテトラカルボン酸単位及びピロメリット酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸単位と、ベンゼンジアミン単位、ジアミノジフェニルエーテル単位及びビス(アミノフェノキシ)フェニル単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジアミン単位とからなる芳香族ポリイミド。
限定されるわけではないが、ポリイミド多孔質膜として、少なくとも、2つの表面層(A面及びB面)と、当該2つの表面層の間に挟まれたマクロボイド層とを有する多層構造のポリイミド多孔質膜を、本発明の方法に使用することが可能である。好ましくは、ポリイミド多孔質膜は、前記マクロボイド層が、前記表面層(A面及びB面)に結合した隔壁と、当該隔壁並びに前記表面層(A面及びB面)に囲まれた、膜平面方向の平均孔径が10〜500μmである複数のマクロボイドとを有し、前記のマクロボイド層の隔壁、並びに前記表面層(A面及びB面)はそれぞれ、厚さが0.01〜20μmであり、平均孔径0.01〜100μmの複数の孔を有し、当該細孔同士が連通しても良く、更に前記マクロボイドに連通して部分的あるいは全面的に多層構造を有しており、そして、総膜厚が5〜500μmであり、空孔率が40%以上95%未満である、ポリイミド多孔質膜である。
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜の総膜厚は、限定されるわけではないが、一態様として20〜75μmとしてもよい。膜厚の相違により、細胞の増殖速度、細胞の形態、面内における細胞の飽和度等に相違が観察されうる。
本発明において、2つの異なる表面層(A面及びB面)と、当該2つの表面層の間に挟まれたマクロボイド層とを有するポリイミド多孔質膜が使用される場合、A面に存在する孔の平均孔径は、B面に存在する孔の平均孔径と差があってもよい。好ましくは、A面に存在する孔の平均孔径は、B面に存在する孔の平均孔径よりも小さい。より好ましくは、A面に存在する孔の平均孔径がB面に存在する孔の平均孔径よりも小さく、A面に存在する孔の平均孔径が0.01〜50μm、0.01μm〜40μm、0.01μm〜30μm、0.01μm〜20μm、又は0.01μm〜15μmであり、B面に存在する孔の平均孔径が20μm〜100μm、30μm〜100μm、40μm〜100μm、50μm〜100μm、又は60μm〜100μmである。特に好ましくは、ポリイミド多孔質膜のA面が平均孔径15μm以下の、例えば0.01μm〜15μmの小さい穴を有するメッシュ構造であり、B面が平均孔径20μm以上の、例えば20μm〜100μmの大穴構造である。
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜の総膜厚の測定は、接触式の厚み計で行うことができる。
ポリイミド多孔質膜表面の平均孔径は、多孔質膜表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めることができる。
(式中、Saは孔面積の平均値を意味する。)
ポリイミド多孔質膜表面の平均孔径は、多孔質膜表面の走査型電子顕微鏡写真より、200点以上の開孔部について孔面積を測定し、該孔面積の平均値から下式(1)に従って孔の形状が真円であるとした際の平均直径を計算より求めることができる。
本発明において用いられるポリイミド多孔質膜の空孔率は、所定の大きさに切り取った多孔質フィルムの膜厚及び質量を測定し、目付質量から下式(2)に従って求めることができる。
(式中、Sは多孔質フィルムの面積、dは総膜厚、wは測定した質量、Dはポリイミドの密度をそれぞれ意味する。ポリイミドの密度は1.34g/cm3とする。)
例えば、国際公開 WO2010/038873、特開2011−219585、又は特開2011−219586に記載されているポリイミド多孔質膜も、本発明に使用可能である。
ポリイミド多孔質膜の表面に播種された細胞は、膜の表面及び/又は内部において安定して生育・増殖することが可能である。細胞は膜中の生育・増殖する位置に応じて、種々の異なる形態をとりうる。本発明の一態様において、細胞の種類に応じて、ポリイミド多孔質膜の表面及び内部を移動しながら、形状を変化させながら増殖することもある。
2.シート状多孔質担体における細胞の担持
本明細書において、シート状多孔質担体における細胞の担持とは、シート状多孔質担体の表面、内部、又は表面及び内部の一部又はすべてに細胞が保持されることをいう。細胞をシート状多孔質担体に担持させるための具体的な工程は特に限定されない。本明細書に記載の工程、あるいは、細胞を膜状の担体に適用するのに適した任意の手法を採用することが可能である。限定されるわけではないが、本発明の方法において、シート状多孔質担体としてポリイミド多孔質膜を用いる場合、細胞のポリイミド多孔質膜への適用は、例えば、以下のような態様を含む。
本明細書において、シート状多孔質担体における細胞の担持とは、シート状多孔質担体の表面、内部、又は表面及び内部の一部又はすべてに細胞が保持されることをいう。細胞をシート状多孔質担体に担持させるための具体的な工程は特に限定されない。本明細書に記載の工程、あるいは、細胞を膜状の担体に適用するのに適した任意の手法を採用することが可能である。限定されるわけではないが、本発明の方法において、シート状多孔質担体としてポリイミド多孔質膜を用いる場合、細胞のポリイミド多孔質膜への適用は、例えば、以下のような態様を含む。
(A)細胞を前記ポリイミド多孔質膜の表面に播種する工程を含む、態様;
(B)前記ポリイミド多孔質膜の乾燥した表面に細胞縣濁液を載せ、
放置するか、あるいは前記ポリイミド多孔質膜を移動して液の流出を促進するか、あるいは表面の一部を刺激して、細胞縣濁液を前記膜に吸い込ませ、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様;並びに、
(C)前記ポリイミド多孔質膜の片面又は両面を、細胞培養液又は滅菌された液体で湿潤し、
前記湿潤したポリイミド多孔質膜に細胞縣濁液を装填し、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様。
(B)前記ポリイミド多孔質膜の乾燥した表面に細胞縣濁液を載せ、
放置するか、あるいは前記ポリイミド多孔質膜を移動して液の流出を促進するか、あるいは表面の一部を刺激して、細胞縣濁液を前記膜に吸い込ませ、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様;並びに、
(C)前記ポリイミド多孔質膜の片面又は両面を、細胞培養液又は滅菌された液体で湿潤し、
前記湿潤したポリイミド多孔質膜に細胞縣濁液を装填し、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様。
(A)の態様は、ポリイミド多孔質膜の表面に細胞、細胞塊を直接播種することを含む。あるいは、ポリイミド多孔質膜を細胞縣濁液中に入れて、膜の表面から細胞培養液を浸潤させる態様も含む。
ポリイミド多孔質膜の表面に播種された細胞は、ポリイミド多孔質膜に接着し、多孔の内部に入り込んでいく。好ましくは、特に外部から物理的又は化学的な力を加えなくても、細胞はポリイミド多孔質膜に自発的に接着する。ポリイミド多孔質膜の表面に播種された細胞は、膜の表面及び/又は内部において安定して生育・増殖することが可能である。細胞は生育・増殖する膜の位置に応じて、種々の異なる形態をとりうる。
(B)の態様において、ポリイミド多孔質膜の乾燥した表面に細胞縣濁液を載せる。ポリイミド多孔質膜を放置するか、あるいは前記ポリイミド多孔質膜を移動して液の流出を促進するか、あるいは表面の一部を刺激して、細胞縣濁液を前記膜に吸い込ませることにより、細胞縣濁液が膜中に浸透する。理論に縛られるわけではないが、これはポリイミド多孔質膜の各表面形状等に由来する性質によるものであると考えられる。本態様により、膜の細胞縣濁液が装填された箇所に細胞が吸い込まれて播種される。
あるいは、(C)の態様のように、前記ポリイミド多孔質膜の片面又は両面の部分又は全体を、細胞培養液又は滅菌された液体で湿潤してから、湿潤したポリイミド多孔質膜に細胞縣濁液を装填してもよい。この場合、細胞懸濁液の通過速度は大きく向上する。
例えば、膜の飛散防止を主目的として膜極一部を湿潤させる方法(以後、これを「一点ウェット法」と記載する)を用いることができる。一点ウェット法は、実質上は膜を湿潤させないドライ法((B)の態様)にほぼ近いものである。ただし、湿潤させた小部分については、細胞液の膜透過が迅速になると考えられる。また、ポリイミド多孔質膜の片面又は両面の全体を十分に湿潤させたもの(以後、これを「ウェット膜」と記載する)に細胞懸濁液を装填する方法も用いることができる(以後、これを「ウェット膜法」と記載する)。この場合、ポリイミド多孔質膜の全体において、細胞懸濁液の通過速度が大きく向上する。
(B)及び(C)の態様において、細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる。これにより細胞縣濁液中の細胞の濃度を濃縮する、細胞以外の不要な成分を水分とともに流出させる、などの処理も可能になる。
(A)の態様を「自然播種」(B)及び(C)の態様を「吸込み播種」と呼称する場合がある。
限定されるわけではないが、好ましくは、ポリイミド多孔質膜には生細胞が選択的に留まる。よって、本発明の好ましい態様において、生細胞が前記ポリイミド多孔質膜内に留まり、死細胞は優先的に水分とともに流出する。
態様(C)において用いる滅菌された液体は特に限定されないが、滅菌された緩衝液若しくは滅菌水である。緩衝液は、例えば、(+)及び(-)Dulbecco’s PBS 、(+)及び(-)Hank's Balanced Salt Solution等である。緩衝液の例を以下の表1に示す。
さらに、本発明の方法において、細胞のポリイミド多孔質膜への適用は、浮遊状態にある接着性細胞をポリイミド多孔質膜と縣濁的に共存させることにより細胞を膜に付着させる態様(絡め取り)も含む。例えば、本発明の細胞の培養方法において、細胞をポリイミド多孔質膜に適用するために、細胞培養容器中に、細胞培養培地、細胞及び1又はそれ以上の前記ポリイミド多孔質膜を入れてもよい。細胞培養培地が液体の場合ポリイミド多孔質膜は細胞培養培地中に浮遊した状態である。ポリイミド多孔質膜の性質から、細胞はポリイミド多孔質膜に接着しうる。よって、生来浮遊培養に適さない細胞であっても、ポリイミド多孔質膜は細胞培養培地中に浮遊した状態で培養することが可能である。好ましくは、細胞は、ポリイミド多孔質膜に自発的に接着する。「自発的に接着する」とは、特に外部から物理的又は化学的な力を加えなくても、細胞がポリイミド多孔質膜の表面又は内部に留まることを意味する。
たとえば上述した方法により、シート状多孔質担体に細胞を担持させることができる。
3.シート状多孔質担体の培地による湿潤
本発明の方法は、細胞を担持させたシート状多孔質担体に培地を適用し、シート状多孔質担体の孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態としてシート状多孔質担体を培地で湿潤させる工程を含む。
本発明の方法は、細胞を担持させたシート状多孔質担体に培地を適用し、シート状多孔質担体の孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態としてシート状多孔質担体を培地で湿潤させる工程を含む。
本明細書において、シート状多孔質担体が培地で湿潤された状態とは、シート状多孔質担体の表面及び内部に存在する孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態をいう。
シート状多孔質担体を培地で湿潤させる方法としては、シート状多孔質担体に培地を適用して、シート状多孔質担体の表面及び内部に存在する孔の一部またはすべてに培地が含まれる状態とすることのできる方法であればどんな方法でもよい。たとえば、上述した方法で細胞をシート状多孔質担体に担持させると同時に、シート状多孔質担体を培地で湿潤させることができる。また、培地を含まない溶液を介して細胞をシート状多孔質担体に担持させた後、シート状多孔質担体に培地を適用して、シート状多孔質担体に含まれる液体を培地に置き換えてもよい。また、霧状の培地をシート状多孔質担体へ噴霧することによって適用してもよい。
シート状多孔質担体を培地で湿潤させる方法としては、シート状多孔質担体に培地を適用して、シート状多孔質担体の表面及び内部に存在する孔の一部またはすべてに培地が含まれる状態とすることのできる方法であればどんな方法でもよい。たとえば、上述した方法で細胞をシート状多孔質担体に担持させると同時に、シート状多孔質担体を培地で湿潤させることができる。また、培地を含まない溶液を介して細胞をシート状多孔質担体に担持させた後、シート状多孔質担体に培地を適用して、シート状多孔質担体に含まれる液体を培地に置き換えてもよい。また、霧状の培地をシート状多孔質担体へ噴霧することによって適用してもよい。
4.シート状多孔質担体の気相への曝露(第1態様)
本発明の方法は、培地を収容する培養容器中に、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程を含む。従来、高密度で細胞を培養する場合や、酸素要求度が高い細胞を培養する場合は、酸素消費量が細胞数依存的に増加するため、それに伴って培地中の溶存酸素量が減少してしまい、細胞密度が増加した環境での培養は困難であった。そのため、高密度で細胞培養を行う場合は、培地中の酸素増加させるための制御装置が別途必要であった。しかし、本発明の方法を用いれば、シート状多孔質担体に気相中の酸素を直接供給することが可能であるため、培地に酸素を供給するための特別な装置は必須ではなくなり、培養中の細胞へ酸素をほぼ無限に供給可能となる。また、通常、気相暴露した場合に生じ易い培養媒体の乾燥が、ポリイミド多孔質膜の有する多孔性から生じる堅牢な保湿性により避けられている事も、気相に暴露した培養を可能としている。本発明は、選択によって、培地に酸素を供給する手段(例えば、バブリング等による酸素供給手段、培地攪拌手段など)をさらに有していても良い。また、培養容器内に酸素を供給する手段をさらに有していても良い。
本発明の方法は、培地を収容する培養容器中に、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程を含む。従来、高密度で細胞を培養する場合や、酸素要求度が高い細胞を培養する場合は、酸素消費量が細胞数依存的に増加するため、それに伴って培地中の溶存酸素量が減少してしまい、細胞密度が増加した環境での培養は困難であった。そのため、高密度で細胞培養を行う場合は、培地中の酸素増加させるための制御装置が別途必要であった。しかし、本発明の方法を用いれば、シート状多孔質担体に気相中の酸素を直接供給することが可能であるため、培地に酸素を供給するための特別な装置は必須ではなくなり、培養中の細胞へ酸素をほぼ無限に供給可能となる。また、通常、気相暴露した場合に生じ易い培養媒体の乾燥が、ポリイミド多孔質膜の有する多孔性から生じる堅牢な保湿性により避けられている事も、気相に暴露した培養を可能としている。本発明は、選択によって、培地に酸素を供給する手段(例えば、バブリング等による酸素供給手段、培地攪拌手段など)をさらに有していても良い。また、培養容器内に酸素を供給する手段をさらに有していても良い。
また、本発明の、シート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程により、シート状多孔質担体が重なった部分ではシート状多孔質担体同士が密着し、細胞接着可能な空間はシート状多孔質担体の面積(体積)に比例して増大する一方、該シート状多孔質担体を収容して培養する空間は最小化することが可能となる。従来の液体培地での培養において担体、例えばマイクロキャリアなどの担体を用いる培養の場合、培養する細胞数を増大させるには、担体同士の衝突を防ぐ必要があり、必然的に培地量を増大させなければならず、結果として担体を収容して培養する空間が増大してしまう。それに対して本発明では、シート状多孔質担体を気相に暴露して配置可能であるため、シート状多孔質担体同士が密着し、培養空間を最小化できるという、従来には無い有利な点を有する。当然、積層枚数には、酸素及び栄養の供給性の為に限界が生じるが、シート自体がフレキシブルで立体的な極薄膜という特性を有する為、例えば30段以上の積層で長期培養を実施しても、拡散のみで十分に安定に酸素と栄養を供給し安定した長期細胞培養を達成し得る。同時にポリイミド多孔質膜同士の密着性は気相暴露で非常に良好に向上し、細胞はシート間を自由に行き来する事が可能となって、シートの追加という簡便な方法のみで、接触した空のシートに自由に拡散し増殖する事で、実質的な継代と同様の効果を付与し得る。
本発明の方法に用いることの細胞培養培地(本明細書において、単に培地と記載することがある)は、液体培地、半固形培地、固形培地等のいずれの形態であってもよいが、液体培地を好ましく用いることができる。また、霧状とした液体培地を細胞培養容器中に噴霧することにより、シート状多孔質担体に培地が接触するようにしてもよい。
本発明の培養方法において、2以上のシート状多孔質担体の小片を用いてもよい。シート状多孔質担体を用いない通常培養の場合、容器底面積が細胞培養可能な面積の上限となるが、シート状多孔質担体を用いた細胞培養では、先の持ち込まれたシート状多孔質担体の大表面積の全てが細胞培養可能な面積となる。シート状多孔質担体は細胞培養液を通過させるので、例えば折りたたまれた膜内にも栄養や酸素等の供給が可能となる。
シート状多孔質担体の小片の大きさ、形状は、特に限定されない。形状は、円、楕円形、四角、三角、多角形、ひも状など任意の形をとりうる。
シート状多孔質担体は形状を変化させて用いることができる。シート状多孔質担体を平面状ではなく、立体状に形状を加工して用いてもよい。例えば、シート状多孔質担体を、i)折り畳んで、ii)ロール状に巻き込んで、iii)シートもしくは小片を糸状の構造体で連結させて、あるいは、iv)縄状に結んで、細胞培養容器中の細胞培養培地中で浮遊もしくは固定させてもよい。i)〜iv)のように形状を加工することにより、小片を用いる場合と同様に、一定容量の細胞培養培地中に多くのシート状多孔質担体を入れることができる。さらに、各小片を集合体として取り扱うことができるため、細胞体を集合化して移動させることが可能となり、総合的な応用性が高い。
小片集合体と同様の考え方として、2以上のシート状多孔質担体を、上下又は左右に細胞培養培地中に積層して用いてもよい。積層とは、シート状多孔質担体が一部重なる態様も含む。積層培養により、狭いスペースで高密度に細胞を培養することが可能になる。既に細胞が育成している膜上にさらに膜を積層させて設置して別種細胞との多層系を形成することも可能である。積層するシート状多孔質担体の数は特に限定されない。
培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する方法としては、目的に応じて任意の方法を用いてよい。
たとえば、細胞培養容器内において、細胞を播種した、または細胞を培養しているシート状多孔質担体から培地を除去し、シート状多孔質担体の外部に実質的に培地がなくなった状態とすることができる。この場合、シート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置してもよい。多孔質シートはポリイミド多孔質膜よりも平均孔径の大きいものであればどのようなものを用いてもよいが、たとえば不織布、ガーゼ、及びスポンジ等を好適に用いることができる。ポリイミド多孔質膜よりも平均孔径の大きい多孔質シートをポリイミド多孔質膜上に載置することにより、ポリイミド多孔質膜表面上を流れる培地、特に液体培地の偏流を抑制し、ポリイミド多孔質膜表面上に均一に培地を適用することができるため、さらに培養効率を上げることができる。
たとえば、細胞培養容器内において、細胞を播種した、または細胞を培養しているシート状多孔質担体から培地を除去し、シート状多孔質担体の外部に実質的に培地がなくなった状態とすることができる。この場合、シート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置してもよい。多孔質シートはポリイミド多孔質膜よりも平均孔径の大きいものであればどのようなものを用いてもよいが、たとえば不織布、ガーゼ、及びスポンジ等を好適に用いることができる。ポリイミド多孔質膜よりも平均孔径の大きい多孔質シートをポリイミド多孔質膜上に載置することにより、ポリイミド多孔質膜表面上を流れる培地、特に液体培地の偏流を抑制し、ポリイミド多孔質膜表面上に均一に培地を適用することができるため、さらに培養効率を上げることができる。
また、細胞培養容器内に金属製メッシュのような剛体を設置し、その上に細胞を播種した、または細胞を培養しているシート状多孔質担体を気相に曝露するよう載置することができる。この場合も、シート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置してもよい。
さらに、細胞を播種した、または細胞を培養しているシート状多孔質担体上に、培地を連続的又は間歇的に適用することのできる細胞培養装置を用いて、シート状多孔質担体の一部又は全体が気相に露出する状態とすることができる。この場合も、シート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置してもよい。
本発明の方法において、培養に用いるシステムの形状、規模などは特に限定されない。培養容器としては、開放容器を用いてもよいし、閉鎖容器を用いてもよい。たとえば、細胞培養用のシャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。
本発明の方法における培養は、ポリイミド多孔質膜上に連続的に培地を添加し回収するような連続循環もしくは開放型の装置を用いて、空気中にポリイミド多孔質膜シートを露出させるような型式で実行することも可能である。
本発明において、細胞の培養は、細胞培養容器外に設置された細胞培養培地供給手段から連続的又は間歇的に細胞培養培地が細胞培養容器中に供給される系で行ってもよい。その際、細胞培養培地が細胞培養培地供給手段と細胞培養容器との間を循環する系であることができる。
細胞の培養を、細胞培養容器外に設置された細胞培養培地供給手段から連続的又は間歇的に細胞培養培地が細胞培養容器中に供給される系で行う場合、その系は、細胞培養容器である培養ユニットと細胞培養培地供給手段である培地供給ユニットとを含む細胞培養装置であってよく、ここで
培養ユニットは細胞を担持するための1又は複数のポリイミド多孔質膜を収容する培養ユニットであって、培地供給口および培地排出口を備えた培養ユニットであり、
培地供給ユニットは培地収納容器と、培地供給ラインと、培地供給ラインを介して連続的又は間歇的に培地を送液する送液ポンプとを備え、ここで培地供給ラインの第一の端部は培地収納容器内の培地に接触し、培地供給ラインの第二の端部は培養ユニットの培地供給口を介して培養ユニット内に連通している、培地供給ユニットである
細胞培養装置であってよい。
培養ユニットは細胞を担持するための1又は複数のポリイミド多孔質膜を収容する培養ユニットであって、培地供給口および培地排出口を備えた培養ユニットであり、
培地供給ユニットは培地収納容器と、培地供給ラインと、培地供給ラインを介して連続的又は間歇的に培地を送液する送液ポンプとを備え、ここで培地供給ラインの第一の端部は培地収納容器内の培地に接触し、培地供給ラインの第二の端部は培養ユニットの培地供給口を介して培養ユニット内に連通している、培地供給ユニットである
細胞培養装置であってよい。
また、上記細胞培養装置において、培養ユニットは空気供給口、空気排出口、及び酸素交換膜を備えない培養ユニットであってよく、また、空気供給口及び空気排出口、又は酸素交換膜を備えた培養ユニットであってよい。培養ユニットは空気供給口及び空気排出口、並びに酸素交換膜を備えないものであっても、細胞の培養に必要な酸素等が培地を通じて十分に細胞に供給される。さらに、上記細胞培養装置において、培養ユニットが培地排出ラインをさらに備え、ここで培地排出ラインの第一の端部は培地収納容器に接続し、培地排出ラインの第二の端部は培養ユニットの培地排出口を介して培養ユニット内に連通し、培地が培地供給ユニットと培養ユニットとを循環可能であってよい。
5.細胞の培養
本発明の方法では、上記のように培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置した培養容器をインキュベータ内に設置して、細胞を培養する。
本発明の方法では、上記のように培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置した培養容器をインキュベータ内に設置して、細胞を培養する。
インキュベータは、細胞の培養に適した温度を保つことができるものであればどのようなものを用いてもよい。温度に加え、湿度及びCO2濃度を調整することができるインキュベータを用いてもよい。一般的な動物細胞を用いる場合、5%CO2を細胞培養装置に供給できるインキュベータを用いてよい。
本発明の方法では、細胞の培養を通じて、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露される。また、細胞の培養を通じて、シート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態が保たれる。
培養を通じてシート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態を保つ方法としては、任意の方法を適宜用いることができる。たとえば、培地で湿潤させたシート状多孔質担体を閉鎖容器に収容し、容器内部の湿度を高く保つことができる。この場合、容器内部の湿度は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は99%以上とすることが好ましい。また、上述したように、細胞を播種した、または細胞を培養しているシート状多孔質担体上に、培地を連続的又は間歇的に適用することのできる細胞培養装置を用いることで、培養を通じてシート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態を保つことができる。
6.細胞
本発明の方法に利用し得る細胞の種類は特に限定されず、任意の細胞の増殖に利用可能である。
本発明の方法に利用し得る細胞の種類は特に限定されず、任意の細胞の増殖に利用可能である。
例えば、細胞は、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌及び細菌からなる群から選択される。動物細胞は、脊椎動物門に属する動物由来の細胞と無脊椎動物(脊椎動物門に属する動物以外の動物)由来の細胞とに大別される。本明細書における、動物細胞の由来は特に限定されない。好ましくは、脊椎動物門に属する動物由来の細胞を意味する。脊椎動物門は、無顎上綱と顎口上綱を含み、顎口上綱は、哺乳綱、鳥綱、両生綱、爬虫綱などを含む。好ましくは、一般に、哺乳動物と言われる哺乳綱に属する動物由来の細胞である。哺乳動物は、特に限定されないが、好ましくは、マウス、ラット、ヒト、サル、ブタ、イヌ、ヒツジ、ヤギなどを含む。
本明細書における植物細胞の由来は特に限定されない。コケ植物、シダ植物、種子植物を含む植物の細胞が対象となる。
種子植物細胞が由来する植物は、単子葉植物、双子葉植物のいずれも含まれる。限定されるわけではないが、単子葉植物には、ラン科植物、イネ科植物(イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、ソルガム等)、カヤツリグサ科植物などが含まれる。双子葉植物には、キク亜綱、モクレン亜綱、バラ亜綱など多くの亜綱に属する植物が含まれる。
種子植物細胞が由来する植物は、単子葉植物、双子葉植物のいずれも含まれる。限定されるわけではないが、単子葉植物には、ラン科植物、イネ科植物(イネ、トウモロコシ、オオムギ、コムギ、ソルガム等)、カヤツリグサ科植物などが含まれる。双子葉植物には、キク亜綱、モクレン亜綱、バラ亜綱など多くの亜綱に属する植物が含まれる。
藻類も、細胞由来生物として見なす事が出来る。真正細菌であるシアノバクテリア(藍藻)から、真核生物で単細胞生物であるもの(珪藻、黄緑藻、渦鞭毛藻など)及び多細胞生物である海藻類(紅藻、褐藻、緑藻)などの異なるグループを含む。
本明細書における古細菌及び細菌の種類も特に限定されない。古細菌は、メタン菌・高度好塩菌・好熱好酸菌・超好熱菌等からなる群から構成される。細菌は、例えば、乳酸菌、大腸菌、枯草菌及びシアノバクテリアなどからなる群から選択される。
本発明の方法に利用しうる動物細胞又は植物細胞の種類は、限定されるわけではないが、好ましくは、多能性幹細胞、組織幹細胞、体細胞、及び生殖細胞からなる群から選択される。
本発明において「多能性幹細胞」とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞の総称することを意図する。限定されるわけではないが、多能性幹細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)等を含む。好ましくは、ES細胞又はiPS細胞である。iPS細胞は倫理的な問題もない等の理由により特に好ましい。多能性幹細胞としては公知の任意のものを使用可能であるが、例えば、国際公開WO2009/123349(PCT/JP2009/057041)に記載の多能性幹細胞を使用可能である。
「組織幹細胞」とは、分化可能な細胞系列が特定の組織に限定されているが、多様な細胞種へ分化可能な能力(分化多能性)を有する幹細胞を意味する。例えば骨髄中の造血幹細胞は血球のもととなり、神経幹細胞は神経細胞へと分化する。このほかにも肝臓をつくる肝幹細胞、皮膚組織になる皮膚幹細胞などさまざまな種類がある。好ましくは、組織幹細胞は、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、又は造血幹細胞から選択される。
「体細胞」とは、多細胞生物を構成する細胞のうち生殖細胞以外の細胞のことを言う。有性生殖においては次世代へは受け継がれない。好ましくは、体細胞は、肝細胞、膵細胞、筋細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、皮膚細胞、繊維芽細胞、膵細胞、腎細胞、肺細胞、又は、リンパ球、赤血球、白血球、単球、マクロファージ若しくは巨核球の血球細胞から選択される。
「生殖細胞」は、生殖において遺伝情報を次世代へ伝える役割を持つ細胞を意味する。例えば、有性生殖のための配偶子、即ち卵子、卵細胞、精子、精細胞、無性生殖のための胞子などを含む。
細胞は、肉腫細胞、株化細胞及び形質転換細胞からなる群から選択してもよい。「肉腫」とは、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血液等の非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生する癌で、軟部肉腫、悪性骨腫瘍などを含む。肉腫細胞は、肉腫に由来する細胞である。「株化細胞」とは、長期間にわたって体外で維持され、一定の安定した性質をもつに至り、半永久的な継代培養が可能になった培養細胞を意味する。PC12細胞(ラット副腎髄質由来)、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来)、HEK293細胞(ヒト胎児腎臓由来)、HL−60細胞(ヒト白血球細胞由来)、HeLa細胞(ヒト子宮頸癌由来)、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓上皮細胞由来)、MDCK細胞(イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来)HepG2細胞(ヒト肝癌由来細胞株)などヒトを含む様々な生物種の様々な組織に由来する細胞株が存在する。「形質転換細胞」は、細胞外部から核酸(DNA等)を導入し、遺伝的性質を変化させた細胞を意味する。動物細胞、植物細胞、細菌の形質転換については、各々適した方法が公知である。
II.細胞の培養方法に使用するためのキット
本発明は、シート状多孔質膜、特にポリイミド多孔質膜を含む、細胞の培養方法に使用するためのキットにも関する。
II.細胞の培養方法に使用するためのキット
本発明は、シート状多孔質膜、特にポリイミド多孔質膜を含む、細胞の培養方法に使用するためのキットにも関する。
本発明のキットは、ポリイミド多孔質膜の他に、細胞培養に必要な構成要素を適宜含みうる。例えば、ポリイミド多孔質膜に適用する細胞、細胞培養培地、連続的培地供給装置、連続的培地循環装置、細胞シートを支持する足場もしくはモジュール、細胞培養装置、キットの取り扱い説明書などが含まれる。
限定されるわけではないが、一態様として、透明なパウチ内に滅菌されたポリイミド多孔質膜が単独で又は複数枚保存され、そのままで細胞培養に使用可能な形態を含むパッケージや、あるいは、同パウチ内にポリイミド多孔質膜と共に滅菌液体が封入されており、効率的吸込み播種が可能になっている膜・液体の一体型形態のキットを含む。
III.シート状多孔質膜の細胞の培養方法のための使用
本発明は、シート状多孔質膜、特にポリイミド多孔質膜の、細胞の培養方法のための使用にも関する。
III.シート状多孔質膜の細胞の培養方法のための使用
本発明は、シート状多孔質膜、特にポリイミド多孔質膜の、細胞の培養方法のための使用にも関する。
本発明は、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法、キット、使用に関する。本発明の細胞の継代方法及び培養方法は、媒体(シャーレ、ディッシュ、カルチャープレート、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、ポリイミド多孔質膜及びその他細胞培養媒体)上に生息する細胞に対し細胞の生育していない新規なポリイミド多孔質膜を接触させ、媒体上の細胞を空のポリイミド多孔質膜に移動させる事により、細胞を継代したり培養したりする事を含む。本発明者らは、ポリイミド多孔質膜が細胞の接着、培養に適していることを見出し、本発明を想到した。本発明の方法は、既に細胞が生育している各種媒体にポリイミド多孔質膜を接触させることにより、ポリイミド膜に細胞を移動させ、その表面又は内部で細胞を培養することを含むことを特徴とするものである。このポリイミド多孔質膜により、増殖可能な大空間を細胞は得る為、実質的に細胞の移動は細胞の継代と同等の意義があり、非常に効率的な細胞の増殖を、トリプシン等の処理無く実施出来るため、効率性に加えて、細胞へのダメージが少ない。また、生体組織等、複数の細胞が混合している状態から、接着性及び運動性に優れる細胞を優先的に取り出し得る事も期待される。
IV.細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法(第2態様)
本発明は一態様において、細胞を培養している細胞培養媒体にポリイミド多孔質膜を接触させることにより細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む。細胞が、細胞を培養している細胞培養媒体から、ポリイミド多孔質膜へ移動する。
本発明は一態様において、細胞を培養している細胞培養媒体にポリイミド多孔質膜を接触させることにより細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む。細胞が、細胞を培養している細胞培養媒体から、ポリイミド多孔質膜へ移動する。
1.細胞
本発明の方法に利用し得る細胞の種類は特に限定されず、任意の細胞、例えば、上述の細胞の増殖に利用可能である。
本発明の方法に利用し得る細胞の種類は特に限定されず、任意の細胞、例えば、上述の細胞の増殖に利用可能である。
2.細胞を培養している細胞培養媒体
細胞を培養している細胞培養媒体は、細胞を生育(増殖、分化)できる媒体であれば特に限定されない。限定されるわけではないが、シャーレ、ディッシュ、培養プレート、培養フラスコ、マイクロウェルプレート及びグラスボトムディッシュからなる群から選択さてもよい。この場合細胞の培養面は通常は平面であり、本発明においてポリイミド多孔質膜は細胞培養媒体の上面に接触させる。あるいは、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、不織布及び中空糸からなる群から選択されてもよい。この場合、細胞培養媒体の上部、下部又はその双方から、単数又は複数のポリイミド多孔質膜を接触させる、ことが可能である。
細胞を培養している細胞培養媒体は、細胞を生育(増殖、分化)できる媒体であれば特に限定されない。限定されるわけではないが、シャーレ、ディッシュ、培養プレート、培養フラスコ、マイクロウェルプレート及びグラスボトムディッシュからなる群から選択さてもよい。この場合細胞の培養面は通常は平面であり、本発明においてポリイミド多孔質膜は細胞培養媒体の上面に接触させる。あるいは、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、不織布及び中空糸からなる群から選択されてもよい。この場合、細胞培養媒体の上部、下部又はその双方から、単数又は複数のポリイミド多孔質膜を接触させる、ことが可能である。
なお、後述する第3態様では、細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜自体が「細胞培養媒体」に相当する。
細胞の媒体での培養に関する具体的な工程は特に限定されない。本明細書に記載の工程、あるいは、細胞を膜状の媒体に適用するのに適した任意の手法を採用することが可能である。
細胞の媒体での培養に関する具体的な工程は特に限定されない。本明細書に記載の工程、あるいは、細胞を膜状の媒体に適用するのに適した任意の手法を採用することが可能である。
3.ポリイミド多孔質膜
本発明に用いられるポリイミド多孔質膜は、上述のポリイミド多孔質膜である。
本発明に用いられるポリイミド多孔質膜は、上述のポリイミド多孔質膜である。
非限定的に、本発明において、細胞培養媒体又は細胞を含む試料を、ポリイミド多孔質膜の平均孔径15μm以下の小さい穴を有するメッシュ構造を有する面(A面)に接触させる。
本発明において細胞を装填するポリイミド多孔質膜は、当然、装填する以外の細胞を含まない状態、即ち、滅菌されていることが好ましい。本発明の方法は、好ましくは、ポリイミド多孔質膜を予め滅菌する工程を含む。ポリイミド多孔質膜は、耐熱性に極めて優れており、軽量であり、形・大きさも自由に選択可能であり、滅菌処理が容易である。乾熱滅菌、蒸気滅菌、エタノール等消毒剤による滅菌、紫外線やガンマ線等の電磁波滅菌等任意の滅菌処理が可能である。
ポリイミド多孔質膜の表面に適用された細胞は、膜の表面及び/又は内部において安定して生育・増殖することが可能である。細胞は膜中の生育・増殖する位置に応じて、種々の異なる形態をとりうる。本発明の一態様において、細胞の種類に応じて、ポリイミド多孔質膜の表面及び内部を移動しながら、形状を変化させながら増殖することもある。
4.細胞の細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜への移動
シャーレ、ディッシュ、カルチャープレート、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ及びポリイミド多孔質膜そのものを含む各種媒体上あるいは内部に生育した細胞は、新規な(細胞の生育していない為に、大きな生育可能空間を有する)ポリイミド多孔質膜と接触する事により、従来の棲家である媒体からポリイミド多孔質膜へと移動を開始し、数時間〜数日の接触で、空のポリイミド多孔質膜側へ移住しそこに生着する。この移動は、面同士の接触状況に大きく左右される為、有効な(実質的に空間が排除されている)接触面積を大きくする事で、より効率的な移動が実現される。移動と共に増殖も起こり得る為、本現象は、細胞と継代と同等であると考えられる。
シャーレ、ディッシュ、カルチャープレート、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ及びポリイミド多孔質膜そのものを含む各種媒体上あるいは内部に生育した細胞は、新規な(細胞の生育していない為に、大きな生育可能空間を有する)ポリイミド多孔質膜と接触する事により、従来の棲家である媒体からポリイミド多孔質膜へと移動を開始し、数時間〜数日の接触で、空のポリイミド多孔質膜側へ移住しそこに生着する。この移動は、面同士の接触状況に大きく左右される為、有効な(実質的に空間が排除されている)接触面積を大きくする事で、より効率的な移動が実現される。移動と共に増殖も起こり得る為、本現象は、細胞と継代と同等であると考えられる。
接触をより効率的に実現する為、ポリイミド多孔質膜を固定する為の重りや固定具を利用する事が出来る。また、ポリイミド多孔質膜を気相に押し上げる事で接触面を拡大する方法も採用し得る。接触させたポリイミド多孔質膜を取り外して培養する方法も可能であるが、接触させた状態を維持したままで培養を進める事も可能である。
細胞の培養面が平面の場合、細胞培養媒体が、例えば、シャーレ、ディッシュ、培養プレート、培養フラスコ、マイクロウェルプレート、グラスボトムディッシュなどの場合、ポリイミド多孔質膜を細胞培養媒体の上面に接触させることが可能である。細胞の培養面が三次元(立体)の場合、細胞培養媒体が、例えば、例えば、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、不織布、中空糸などの場合、胞培養媒体の上部、下部又はその双方から、単数又は複数のポリイミド多孔質膜を接触させることが可能である。
5.細胞の培養
本発明の方法は、ポリイミド多孔質膜に細胞を移動した後に、細胞を培養することを含む。
本発明の方法は、ポリイミド多孔質膜に細胞を移動した後に、細胞を培養することを含む。
ポリイミド多孔質膜に細胞を適用し、培養する、ことについては、PCT/JP2014/070407に記載されている。動物細胞、植物細胞、及び細菌の各細胞に適した培養方法が公知であり、当業者は任意の公知の方法を用いてポリイミド多孔質膜に細胞を培養することができる。細胞培養培地も細胞の種類に応じて適宜調製することができる。
動物細胞の細胞培養方法、細胞培養培地は、例えば、ロンザ社の細胞培養培地カタログに記載されている。植物細胞の細胞培養方法、細胞培養培地は、例えば、WAKO社の植物組織培地シリーズ等に記載されている。細菌の細胞培養方法、細胞培養培地は、例えば、BD社の一般細菌用培地カタログに記載されている。
ポリイミド多孔質膜を用いる細胞の培養に関して、マイクロキャリアやセルローススポンジ等、他の浮遊型培養担体と共存させることができる。
細胞培養は、細胞培養における存在形態により培養細胞は接着培養系細胞と浮遊培養系細胞に分類することができる。接着培養系細胞は培養容器に付着し増殖する培養細胞であり、継代には培地交換を行う。浮遊培養系細胞は培地中において浮遊状態で増殖する培養細胞であり、一般的には継代の際には培地交換は行わず、希釈培養を行う。浮遊培養は、浮遊状態、即ち液体中での培養が可能なため、大量培養が可能であり、培養容器表面にのみ生育する付着細胞と比較すると、立体的な培養である為に、単位空間当りの培養可能細胞数は多いという利点がある。
細胞培養は、細胞培養における存在形態により培養細胞は接着培養系細胞と浮遊培養系細胞に分類することができる。接着培養系細胞は培養容器に付着し増殖する培養細胞であり、継代には培地交換を行う。浮遊培養系細胞は培地中において浮遊状態で増殖する培養細胞であり、一般的には継代の際には培地交換は行わず、希釈培養を行う。浮遊培養は、浮遊状態、即ち液体中での培養が可能なため、大量培養が可能であり、培養容器表面にのみ生育する付着細胞と比較すると、立体的な培養である為に、単位空間当りの培養可能細胞数は多いという利点がある。
本発明の方法において、ポリイミド多孔質膜を細胞培養培地中に浮遊した状態で用いる場合、2以上の前記ポリイミド多孔質膜の小片を用いてもよい。ポリイミド多孔質膜はフレキシブルな薄膜であるため、例えばその小片を培養液中に浮遊させて用いることにより、一定容量の細胞培養培地中に多くの表面積を有するポリイミド多孔質膜を持ち込むことが可能となる。通常培養の場合、容器底面積が細胞培養可能な面積の上限となるが、本発明のポリイミド多孔質膜を用いた細胞培養では、先の持ち込まれたポリイミド多孔質膜の大表面積の全てが細胞培養可能な面積となる。ポリイミド多孔質膜は細胞培養液を通過させるので、例えば折りたたまれた膜内にも栄養や酸素等の供給が可能となる。
本発明の方法において、好ましくは、細胞はポリイミド多孔質膜の表面及び内部に生育し増殖する。本発明の方法により、細胞は5日以上、より好ましくは10日以上、さらに好ましくは30日以上増殖し続けることができる。
本発明の方法において、一態様として、培養細胞数が多い場合には、培地の連続添加を行う連続培養装置を使用する事も可能となる。連続的に培地が添加される為、湿潤環境を継続しながら、相互の密着性を保つ事が可能となり、空のポリイミド多孔質膜への移動度や増殖度が向上させる事ができる。
本発明の方法において、一態様として、細胞を培養しているシャーレに、ポリイミド多孔質膜を培養面上部から接触させ、ステンレスメッシュ等を置いて、一定期間そのまま培養を継続する。一定期間後、ポリイミド多孔質膜を接触面から離し、同膜内に移動した細胞を継続して培養する。
V.細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法(第3態様)
本発明は一態様において、細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜を接触させことにより、細胞を第1のポリイミド多孔質膜から第2の多孔質膜へ移動させ、そして、第2のポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。細胞が、細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜へ移動する。
本発明は一態様において、細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜を接触させことにより、細胞を第1のポリイミド多孔質膜から第2の多孔質膜へ移動させ、そして、第2のポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。細胞が、細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜へ移動する。
「細胞」、「ポリイミド多孔質膜」の定義については第1及び第2態様に関して記載したものと同様である。
第1のポリイミド多孔質膜と第2のポリイミド多孔質膜とを接触させる態様についても、特に限定されない。第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から膜を接触させてよい。第1のポリイミド多孔質膜は、細胞が保持された状態で凍結保存されたポリイミド多孔質膜であってもよく、この場合、細胞が生存する任意の方法で融解したポリイミド多孔質膜を使用することができる。これにより、凍結・融解を行っても生存状態を保った細胞を、第2のポリイミド多孔質膜へと取り出すことが可能となり、そのまま継続して培養することが可能となる。
第1のポリイミド多孔質膜と第2のポリイミド多孔質膜とを接触させる態様についても、特に限定されない。第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から膜を接触させてよい。第1のポリイミド多孔質膜は、細胞が保持された状態で凍結保存されたポリイミド多孔質膜であってもよく、この場合、細胞が生存する任意の方法で融解したポリイミド多孔質膜を使用することができる。これにより、凍結・融解を行っても生存状態を保った細胞を、第2のポリイミド多孔質膜へと取り出すことが可能となり、そのまま継続して培養することが可能となる。
例えば、図2に示す様に、細胞の生育したポリイミド多孔質膜と空のポリイミド多孔質膜との複合体全体を培地の中に沈めて、金属メッシュやガラスキューブ等を重りとして用いて接触させる方法も使用可能である。第1のポリイミド多孔質膜と第2のポリイミド多孔質膜とが接触した状態のまま、膜集合体全体を気相中に持ち上げても良い。例えば、図5に示す様に、金属メッシュ等を積層して架台を作り、その上に細胞の生育したポリイミド多孔質膜と空のポリイミド多孔質膜との膜集合対全体を据える事で相互のシート密着性を上げ、細胞のシート間移動と増殖を進める方法も使用可能である。
これらの各態様に於いて、空のポリイミド多孔質膜も、あるいは、細胞の生育したポリイミド多孔質膜も2以上の複数枚数を使用してもよい。例えば、各30枚ずつの集合体同士を積層する事も可能であるし、また、1枚ずつを交互に多数積層する事も可能である。また、一旦複合体として培養したシートを1枚ずつに分離して培養する形態も取り得る。
これらの積層において、ポリイミド多孔質膜そのものが細胞育成の媒体となる為、使用されるポリイミド多孔質膜は、予め十分に湿潤され、空気を含まない状態を形成している事が重要となる。
第3態様において、第2のポリイミド多孔質膜を第1のポリイミド多孔質膜に接触させる前に、細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜を準備する工程、具体的には、細胞を培養していない空の第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用し、第1のポリイミド多孔質膜で細胞を培養する工程をさらに含んでもよい。
細胞を培養していない空の第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用する具体的な工程は特に限定されない。本明細書に記載の工程、あるいは、細胞を膜状の担体に適用するのに適した任意の手法を採用することが可能である。
限定されるわけではないが、上記第2態様でポリイミド多孔質膜に細胞を移動させる方法を用いても良い。具体的には、細胞を培養している細胞培養媒体に空の第1のポリイミド多孔質膜を接触させて、細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させることにより、第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用する。
あるいは、細胞のポリイミド多孔質膜への適用は、例えば、PCT/JP2014/070407に記載されているような、以下のような態様のいずれかを適宜用いても良い。
(A)細胞を前記ポリイミド多孔質膜の表面に播種する工程を含む、態様;
(B)前記ポリイミド多孔質膜の乾燥した表面に細胞縣濁液を載せ、
放置するか、あるいは前記ポリイミド多孔質膜を移動して液の流出を促進するか、あるいは表面の一部を刺激して、細胞縣濁液を前記膜に吸い込ませ、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様;並びに、
(C)前記ポリイミド多孔質膜の片面又は両面を、細胞培養液又は滅菌された液体で湿潤し、
前記湿潤したポリイミド多孔質膜に細胞縣濁液を装填し、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様。
(B)前記ポリイミド多孔質膜の乾燥した表面に細胞縣濁液を載せ、
放置するか、あるいは前記ポリイミド多孔質膜を移動して液の流出を促進するか、あるいは表面の一部を刺激して、細胞縣濁液を前記膜に吸い込ませ、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様;並びに、
(C)前記ポリイミド多孔質膜の片面又は両面を、細胞培養液又は滅菌された液体で湿潤し、
前記湿潤したポリイミド多孔質膜に細胞縣濁液を装填し、そして、
細胞縣濁液中の細胞を前記膜内に留め、水分は流出させる、
工程を含む、態様。
VI.細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法(第4態様)
本発明は一態様において、細胞を含む生体試料を、ポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方に接触させることにより、細胞を生体試料からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む。細胞が、生体試料から直接ポリイミド多孔質膜へ移動する。
本発明は一態様において、細胞を含む生体試料を、ポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方に接触させることにより、細胞を生体試料からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む。細胞が、生体試料から直接ポリイミド多孔質膜へ移動する。
「細胞」、「ポリイミド多孔質膜」の定義については第1態様〜第3態様に関して記載したものと同様である。
「細胞を含む生体試料」とは特に限定されない。例えば、生体から単離された器官、組織等の全体又は一部を含む。非限定的に、肺、皮膚、肝臓等に由来する細胞を含む生体試料が含まれる。
「細胞を含む生体試料」とは特に限定されない。例えば、生体から単離された器官、組織等の全体又は一部を含む。非限定的に、肺、皮膚、肝臓等に由来する細胞を含む生体試料が含まれる。
本態様は、多種多数の細胞が集積して生育している生体試料から、移動性の高い細胞集団をポリイミド多孔質膜へ一気に移動させ培養する方法で、例えば各生体器官の環境再現等、困難な作業を簡便に達成し得る事が期待される。
本態様においても、ポリイミド多孔質膜の生体試料への接触の際には、上面及び下面あるいはその双方から接触させる方法を取り得る。また、ポリイミド多孔質膜に試料を接触させる為に、培地に試料・ポリイミド多孔質膜複合体を沈めて金属メッシュやガラスキューブ等を重りとして使用する方法や気相に持ち上げて試料とポリイミド多孔質膜を接触させる方法の何れも、使用する事が可能である。
本発明において、第1態様〜第4態様のいずれの態様であっても、本発明において、細胞を培養している細胞培養媒体、細胞を含む生体試料、あるいは、細胞を培養しているポリイミド多孔質膜、から細胞を培養していないポリイミド多孔質膜への細胞の移動を、2回以上繰り返すことも可能である。本発明の方法により、従来用いられるようなトリプシン等を用いることなく、簡便な方法で細胞を移動し継代することを可能にする。継代の回数は特に限定されない。
VII.細胞培養装置
本発明はまた、ポリイミド多孔質膜を含む、本発明の方法に使用するための細胞培養装置に関する。本発明の細胞培養装置において、ポリイミド多孔質膜は固定されて用いられてもよく、あるいは細胞培養培地中に浮遊して用いられてもよく、培地中に置かれても、培地から露出しても良い。細胞培養装置において、2以上のポリイミド多孔質膜が、上下又は左右に積層してもよい。積層された集合体や集積体は、培地中に置かれても培地から露出していてもかまわない。
本発明はまた、ポリイミド多孔質膜を含む、本発明の方法に使用するための細胞培養装置に関する。本発明の細胞培養装置において、ポリイミド多孔質膜は固定されて用いられてもよく、あるいは細胞培養培地中に浮遊して用いられてもよく、培地中に置かれても、培地から露出しても良い。細胞培養装置において、2以上のポリイミド多孔質膜が、上下又は左右に積層してもよい。積層された集合体や集積体は、培地中に置かれても培地から露出していてもかまわない。
本発明の細胞培養による細胞培養装置としては、ポリイミド多孔質膜を含むものであれば任意の形態を取ってよく、公知の細胞培養装置を用いることが可能である。培養装置の形状、規模などは特に限定されず、シャーレ、試験管から大型のタンクまで適宜利用可能である。例えば、BD Falcon社製のセルカルチャーディッシュやサーモサイエンティフィック社製のNunc セルファクトリー等が含まれる。なお、本発明においてポリイミド多孔質膜を用いることにより、生来浮遊培養が可能でなかった細胞についても浮遊培養向け装置にて、浮遊培養類似状態での培養を行うことが可能になった。浮遊培養用の装置としては、例えば、コーニング社製のスピナーフラスコや回転培養等が使用可能である。また、同様の機能を実現出来る環境として、VERITAS社のFiberCell(登録商標)Systemの様な中空糸培養も使用する事が可能である。
本発明の培養細胞による細胞培養装置は、メッシュ上の膜に連続的に培地を添加し回収する様な、連続循環もしくは開放型の装置で、空気中にポリイミド多孔質膜を露出させる様な型式で実行する事も可能である。
VIII.細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法に使用するためのキット
本発明はさらに、ポリイミド多孔質膜を含む、本発明の細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法に使用するためのキットに関する。
本発明はさらに、ポリイミド多孔質膜を含む、本発明の細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法に使用するためのキットに関する。
本発明のキットは、ポリイミド多孔質膜の他に、細胞培養に必要な構成要素を適宜含みうる。例えば、ポリイミド多孔質膜に適用する細胞、細胞培養培地、連続的培地供給装置、連続的培地循環装置、ポリイミド多孔質膜を支持する足場もしくはモジュール、細胞培養装置、作業用の滅菌されたシャーレもしくは角型プレート、細胞懸濁液取り扱い用のセルスクレーパー、キットの取り扱い説明書などが含まれる。
限定されるわけではないが、一態様として、透明なパウチ内に滅菌されたポリイミド多孔質膜が単独で又は複数枚保存され、そのままで細胞培養に使用可能な形態を含むパッケージや、あるいは、同パウチ内にポリイミド多孔質膜と共に滅菌液体が封入されており、効率的吸込み播種が可能になっている膜・液体の一体型形態のキットを含む。
IX.使用
本発明はさらに、ポリイミド多孔質膜の上述した本発明の方法のための使用、を含む
本発明はさらに、ポリイミド多孔質膜の上述した本発明の方法のための使用、を含む
以下、本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。以後、特に記述しない場合には、「ポリイミド多孔質膜」は総膜厚25μm、空孔率73%のポリイミド多孔質膜をいうものとする。当該ポリイミド多孔質膜は、2つの異なる表面層(A面及びB面)と、当該2つの表面層の間に挟まれたマクロボイド層とを有した。A面に存在する穴の平均孔径は6μmであり、B面に存在する穴の平均孔径は46μmであった。
なお、以下の実施例で使用されたポリイミド多孔質膜は、テトラカルボン酸成分である3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とジアミン成分である4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とから得られるポリアミック酸溶液と、着色前駆体であるポリアクリルアミドとを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理することにより、調製された。
・ヒト間葉系幹細胞(LONZA社 product code PT−2501)
・HepG2(CET(Cellular ENGINEERING TECHNOLOGIES, INC.)社、HEPG2−500)
・ヒト線維芽細胞(LONZA社 product code CC−2511)
・CHO−K1(パブリックヘルスイングランド cat. 85051005)
・CHO DP−12(ATCC CRL−12445)
・MDCK(パブリックヘルスイングランド cat. 85011435)
・ヒト間葉系幹細胞用培地(LONZA社 product code Pt−3238)
・HepG2用培地(CET(Cellular ENGINEERING TECHNOLOGIES, INC.)社 cat. HEPG2.E. Media−450)
・ヒト線維芽細胞用培地(LONZA社 product code CC−3132)
・CHO−K1用培地(和光純薬工業株式会社 Ham’s F−12 087−08335)
・CHO DP−12用培地(和光純薬工業株式会社 IMDM 098−06465)
・MDCK用培地(和光純薬工業株式会社 E−MEM 051−07615)
・3.5cmシャーレ(Falcon社 cat. 353001)
・Cell Counting Kit8(株式会社同仁化学研究所 CK04)
・ステンレスメッシュ(久宝金属株式会社 60メッシュ E9117)
・2cm×2cmの滅菌された正方形容器(Thermo Fisher Scientific 社 cat. 103)
・Penicillin−Streptomycin−Amphotericin BSuspension(X100)(和光純薬工業株式会社 161−23181)
・顕微鏡名、使用した画像ソフト名
Carl Zeiss 社製 LSM 700 使用ソフト ZEN
・HepG2(CET(Cellular ENGINEERING TECHNOLOGIES, INC.)社、HEPG2−500)
・ヒト線維芽細胞(LONZA社 product code CC−2511)
・CHO−K1(パブリックヘルスイングランド cat. 85051005)
・CHO DP−12(ATCC CRL−12445)
・MDCK(パブリックヘルスイングランド cat. 85011435)
・ヒト間葉系幹細胞用培地(LONZA社 product code Pt−3238)
・HepG2用培地(CET(Cellular ENGINEERING TECHNOLOGIES, INC.)社 cat. HEPG2.E. Media−450)
・ヒト線維芽細胞用培地(LONZA社 product code CC−3132)
・CHO−K1用培地(和光純薬工業株式会社 Ham’s F−12 087−08335)
・CHO DP−12用培地(和光純薬工業株式会社 IMDM 098−06465)
・MDCK用培地(和光純薬工業株式会社 E−MEM 051−07615)
・3.5cmシャーレ(Falcon社 cat. 353001)
・Cell Counting Kit8(株式会社同仁化学研究所 CK04)
・ステンレスメッシュ(久宝金属株式会社 60メッシュ E9117)
・2cm×2cmの滅菌された正方形容器(Thermo Fisher Scientific 社 cat. 103)
・Penicillin−Streptomycin−Amphotericin BSuspension(X100)(和光純薬工業株式会社 161−23181)
・顕微鏡名、使用した画像ソフト名
Carl Zeiss 社製 LSM 700 使用ソフト ZEN
細胞の生息したポリイミド多孔質の気相暴露(1)
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜5枚をメッシュ構造のA面を上にしてそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のヒト間葉系幹細胞をそれぞれ添加し、週2回の割合で培地を交換し、37℃5%CO2インキュベータで58日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて吸光度を測定した。
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜5枚をメッシュ構造のA面を上にしてそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のヒト間葉系幹細胞をそれぞれ添加し、週2回の割合で培地を交換し、37℃5%CO2インキュベータで58日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて吸光度を測定した。
吸光度測定終了後、細胞の生育しているポリイミド多孔質膜から培地を除去し、24時間、インキュベータ内で保存した。その後、再度CCK8を用いて吸光度を測定した所、平均値として1.0倍の吸光度を確認した。
細胞の生息したポリイミド多孔質の気相暴露(2)
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜5枚をメッシュ構造のA面を上にしてそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のHepG2細胞をそれぞれ添加し、31日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて吸光度を測定した。
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜5枚をメッシュ構造のA面を上にしてそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のHepG2細胞をそれぞれ添加し、31日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて吸光度を測定した。
吸光度測定終了後、細胞の生育しているポリイミド多孔質膜から培地を除去し、24時間、インキュベータ内で保存した。その後、再度CCK8を用いて吸光度を測定した所、平均値として1.1倍の吸光度を確認した。
ポリイミド多孔質から空のポリイミド多孔質膜への移動(1)気相継代;その1
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜をメッシュ構造のA面を上にしてそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり5.2×104個のヒト皮膚線維芽細胞をそれぞれ添加し、6日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて6日時点での細胞数を測定した。
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜をメッシュ構造のA面を上にしてそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり5.2×104個のヒト皮膚線維芽細胞をそれぞれ添加し、6日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて6日時点での細胞数を測定した。
この細胞が生育している基盤シートを上下各1枚の空のポリイミド多孔質膜で挟んだ。このとき、上下のポリイミド多孔質膜のA面が基盤シートに接着するように積層した。ステンレスメッシュをシャーレ底部に沈めて、空中にシートの集合体が露出する状態24時間継続した。その後、各シートを単体に分け、2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加えて培養を継続した。分離開始時と5日間後にCCK8を用いて細胞数を計測し、増殖挙動を観察した。各シートに細胞の生着と増殖を確認した。(図1)
ポリイミド多孔質から空のポリイミド多孔質膜への移動(2)液中接触法
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜をメッシュ構造のA面を上にして浸漬させた。1枚の膜あたり5.2×104個のヒト皮膚線維芽細胞を添加し、28日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて経時的に細胞数を測定した。
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜をメッシュ構造のA面を上にして浸漬させた。1枚の膜あたり5.2×104個のヒト皮膚線維芽細胞を添加し、28日間細胞培養を実施し、CCK8を用いて経時的に細胞数を測定した。
この細胞が生育している膜を上下各1枚のポリイミド多孔質膜でメッシュ構造のA面の空のシート側が接触面になる様にして挟み、2cm×2cmのステンレスメッシュと2ミリメートル角のガラス立方体4個を重りにした状態で、14日間培養した。(図2)
その後、重りを外した後で各膜を単体毎に分け、それぞれ2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加えた環境下で培養を継続した。14日間、21日間、28日間、35日間後にCCK8を用いて細胞数を計測し、増殖挙動を観察した。元の上部膜及び下部設置膜共に、培養上限に近い細胞数にまで増殖している事が確認された。(図3)
上記と同様の態様により培養を行った事例おいて、細胞の挙動を蛍光化による可視化にて検証したところ、細胞は、積層された空の膜に対し、時間経過に従い能動的に移動している事を確認した。少なくとも、物理的な剥ぎ取り現象ではない形で細胞の移動が生じていることが検証された。
シャーレ面に生育した細胞からポリイミド多孔質膜への移動
3.5cm径シャーレに2.0×105個のHepG2細胞を播種し、CO2インキュベータ内で、週2回培地交換しながら33日間培養した。
3.5cm径シャーレに2.0×105個のHepG2細胞を播種し、CO2インキュベータ内で、週2回培地交換しながら33日間培養した。
同シャーレ内に、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜をメッシュ構造のA面を下にして培地中に浮遊させた。徐々に培地を除去して、ポリイミド多孔質膜がぎりぎり底面に接触する所で培地の除去を停止した。(図4)そのままの状態を保って、インキュベータ内にシャーレを移動し、24時間培養した。24時間後、徐々に培地を追加し、その後、ポリイミド多孔質膜を移動させてCCK8を用いて、細胞数を計測すると、シート全体で、1.2×106個の細胞が生息していた。
ポリイミド多孔質から空のポリイミド多孔質膜への移動(3)気相継代法
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜9枚にメッシュ構造のA面を上にして培地にそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のCHO−K1細胞をそれぞれ添加し、8日間CO2インキュベータ内で細胞培養を実施し、最大生育量近くの状態となった。8日目の各シートあたりの生存細胞数は、平均値で1.2×107であった。このシートの内5枚を取り出し、それぞれのシートに対し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各1枚ずつのシートで挟み、3段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を5セット用意した。同様に、細胞の生育したシート4枚を取り出し、それぞれのシートに対し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各2枚ずつのシートで挟み、5段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を4セット用意した(図5)。これら合計9セットの3段重ね及び5段重ねの積層体を、培地中に置いたメッシュの上に気相に接する様に置き、培養を継続した。4日間この培養を継続した後、それぞれの積層体を全て1枚毎に独立させ、各ポリイミド多孔質膜の細胞数についてCCK8を用いて測定した。3重積層(図6)及び5重積層(図7)の双方で、積層体内部での細胞の移動と増殖が確認された。気相に接する環境での細胞の好適な増殖・移動が確認された。
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜9枚にメッシュ構造のA面を上にして培地にそれぞれ浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のCHO−K1細胞をそれぞれ添加し、8日間CO2インキュベータ内で細胞培養を実施し、最大生育量近くの状態となった。8日目の各シートあたりの生存細胞数は、平均値で1.2×107であった。このシートの内5枚を取り出し、それぞれのシートに対し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各1枚ずつのシートで挟み、3段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を5セット用意した。同様に、細胞の生育したシート4枚を取り出し、それぞれのシートに対し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各2枚ずつのシートで挟み、5段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を4セット用意した(図5)。これら合計9セットの3段重ね及び5段重ねの積層体を、培地中に置いたメッシュの上に気相に接する様に置き、培養を継続した。4日間この培養を継続した後、それぞれの積層体を全て1枚毎に独立させ、各ポリイミド多孔質膜の細胞数についてCCK8を用いて測定した。3重積層(図6)及び5重積層(図7)の双方で、積層体内部での細胞の移動と増殖が確認された。気相に接する環境での細胞の好適な増殖・移動が確認された。
ポリイミド多孔質から空のポリイミド多孔質膜への移動(4)多段継代
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜5枚にメッシュ構造のA面を上にして培地に浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のCHO細胞を添加し、8日間CO2インキュベータ内で細胞培養を実施し、更に2日間、培地中で5枚を重ねて培養を継続した。培地交換は、培養期間全体を通じて、週2回ペースで実施した。10日目に、細胞の生息していない新規な滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜6枚を用意し、その間に、これまでCHO細胞を培養して来た5枚のシートを交互に重ねて、合計11段のポリイミド多孔質膜積層体を用意した。用意した積層体を、培地中に置いたメッシュの上に気相に接する様に置き、4日間その状態を保持した。その後、得られた11枚の細胞の育成するシートを1枚ずつ独立させてから、それぞれのシートに対し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各1枚ずつのシートで挟み、3段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を11セット用意した。(図8)
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に細胞培養培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜5枚にメッシュ構造のA面を上にして培地に浸漬させた。1枚のシートあたり4×104個のCHO細胞を添加し、8日間CO2インキュベータ内で細胞培養を実施し、更に2日間、培地中で5枚を重ねて培養を継続した。培地交換は、培養期間全体を通じて、週2回ペースで実施した。10日目に、細胞の生息していない新規な滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜6枚を用意し、その間に、これまでCHO細胞を培養して来た5枚のシートを交互に重ねて、合計11段のポリイミド多孔質膜積層体を用意した。用意した積層体を、培地中に置いたメッシュの上に気相に接する様に置き、4日間その状態を保持した。その後、得られた11枚の細胞の育成するシートを1枚ずつ独立させてから、それぞれのシートに対し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各1枚ずつのシートで挟み、3段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を11セット用意した。(図8)
これら11セットの3段重ねの積層体を、培地中に置いたメッシュの上に気相に接する様に置き、培養を継続した。培地交換は、週2回の頻度で適宜実施した。上記同様の気相に接する形態での3段重ねの状態で2週間培養を継続した。最終の3段積層に於いて、中間シートは及び下部シートはこの2週間の培養でほぼ飽和に近い状態となり、平均細胞数はそれぞれ、中間シートでは9.5×106個の、また下段シートでは9.1×106個の細胞が生息していた。また、上層シートでは、1.5×106個の細胞が生息していた。多重の積層に於いても、ポリイミド多孔質膜の表面での接触は、細胞を十分に移動させ、継代・増殖を進める事が確認された。
大量気相暴露培養(1)
本実施例では、CHO−K1細胞を用いて、ポリイミド多孔質膜への播種を行った後、連続培養装置を用いて大量連続培養を実施した。
4cm×10cmの滅菌されたポリイミド多孔質膜10枚を乾熱滅菌し、滅菌された角型シャーレ内に並べる。培地5mlあたり1.1×107個のCHO−K1細胞(そのうち、生細胞は1.1×107個、死細胞は5.0×105個、生細胞率96%)を含む懸濁液を用意し、先に準備したポリイミド多孔質膜上に夫々0.5mlずつ播種する。シート上に置いた懸濁液は、セルスクレーパーにて均一化し、シートを少し動かす事で、液を通過させて細胞をポリイミド多孔質膜に播種した。このシート10枚を同サイズのステンレス製金属メッシュ上に載せ、更に上部にPE/PP混合不織布を載せ、この細胞を含む集合体をプラスチックケース内に接地した。(図9)この際、細胞を含むポリイミド多孔質膜積層体を、約20°傾斜させた。傾斜上部から連続的に培地(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンフォテリシンBを加えたHam’s F−12に10%FBSを添加したもの)を添加し、毎分3mlの流速で150ml量の培地溜から循環させた。ポリイミド多孔質膜は相互に密着して集合体として存在していた。
本実施例では、CHO−K1細胞を用いて、ポリイミド多孔質膜への播種を行った後、連続培養装置を用いて大量連続培養を実施した。
4cm×10cmの滅菌されたポリイミド多孔質膜10枚を乾熱滅菌し、滅菌された角型シャーレ内に並べる。培地5mlあたり1.1×107個のCHO−K1細胞(そのうち、生細胞は1.1×107個、死細胞は5.0×105個、生細胞率96%)を含む懸濁液を用意し、先に準備したポリイミド多孔質膜上に夫々0.5mlずつ播種する。シート上に置いた懸濁液は、セルスクレーパーにて均一化し、シートを少し動かす事で、液を通過させて細胞をポリイミド多孔質膜に播種した。このシート10枚を同サイズのステンレス製金属メッシュ上に載せ、更に上部にPE/PP混合不織布を載せ、この細胞を含む集合体をプラスチックケース内に接地した。(図9)この際、細胞を含むポリイミド多孔質膜積層体を、約20°傾斜させた。傾斜上部から連続的に培地(ペニシリン・ストレプトマイシン・アンフォテリシンBを加えたHam’s F−12に10%FBSを添加したもの)を添加し、毎分3mlの流速で150ml量の培地溜から循環させた。ポリイミド多孔質膜は相互に密着して集合体として存在していた。
3日後、培地溜の液を廃棄後、新規な100mlの培地液を培地溜に添加し、更に2日間培地循環を継続した。播種完了から5日後に培地循環を停止し、CCK8による呈色反応を用いて生育細胞数を調べた。ポリイミド多孔質膜各シートに生息する細胞の総和は、8.9×108個であった。不織布への細胞増殖は1.5×107個で、生息細胞密度は1mlあたり3.8×106個であった。シート毎の細胞生育数を示す。(図10;図中の数字は、シートを上から数えている)細胞の育成したポリイミド多孔質膜を一部切り取ってホルマリン固定し、核(DAPI)、細胞膜(セルマスク)、及びアクチン(ファロイジン)染色を行った後の蛍光顕微鏡写真を図11に示す。
大量気相暴露培養(2)
馴化されたCHO−K1細胞のポリイミド多孔質膜を用いる大量連続培養
4cm×10cm角の正方形のポリイミド多孔質膜10枚を180℃30分で乾熱滅菌し、メッシュ構造のA面を上にして滅菌プレート上に置いた。別途、培地1mlあたり2.4×106個の0.5%FBSに馴化したCHO−K1細胞(そのうち、生細胞は2.3×106個、死細胞は9.0×104個、生細胞率96%)を懸濁した、CHO−K1細胞懸濁液5mlを準備した。細胞懸濁液を0.5mlずつ、上記の滅菌したポリイミド多孔質膜10枚にそれぞれ添加し、セルスクレーパーにて平準化した。数分間放置した後、シートを少し動かして懸濁液を通過させ、その後に、シートと同型の金属メッシュ上に細胞播種を完了したシート10枚を積層した。その後、積層したシート上に不織布を乗せ、培養装置内部に設置し、その上に培地供給ラインを据えて、37℃に設定したタイテック社製強制通気式CO2インキュベータに培養装置全体を移し、培養準備を完了した。
馴化されたCHO−K1細胞のポリイミド多孔質膜を用いる大量連続培養
4cm×10cm角の正方形のポリイミド多孔質膜10枚を180℃30分で乾熱滅菌し、メッシュ構造のA面を上にして滅菌プレート上に置いた。別途、培地1mlあたり2.4×106個の0.5%FBSに馴化したCHO−K1細胞(そのうち、生細胞は2.3×106個、死細胞は9.0×104個、生細胞率96%)を懸濁した、CHO−K1細胞懸濁液5mlを準備した。細胞懸濁液を0.5mlずつ、上記の滅菌したポリイミド多孔質膜10枚にそれぞれ添加し、セルスクレーパーにて平準化した。数分間放置した後、シートを少し動かして懸濁液を通過させ、その後に、シートと同型の金属メッシュ上に細胞播種を完了したシート10枚を積層した。その後、積層したシート上に不織布を乗せ、培養装置内部に設置し、その上に培地供給ラインを据えて、37℃に設定したタイテック社製強制通気式CO2インキュベータに培養装置全体を移し、培養準備を完了した。
0.5%FBSを含むHam培地150mlを毎分1mlのペースで循環させ、連続培養を開始した。3日後に培地を取り外してフレッシュな培地100mlと交換し、同様のペースで培地交換を続けながら更に9日間培養を継続した。
培養開始から12日目に培地循環を終了し、ポリイミド多孔質膜及び不織布を取り外した。取り外したポリイミド多孔質膜を集合体のまま、CCK8にてセルカウントを実施した所、合計で、2.6×108個の細胞を確認した。概算の細胞培養密度としては、1.7×108個/mlであった。細胞の育成したポリイミド多孔質膜を一部切り取ってホルマリン固定し、核(DAPI)、細胞膜(セルマスク)、及びアクチン(ファロイジン)染色を行った後の蛍光顕微鏡写真を図12に示す。馴化細胞を用いても、良好な細胞の増殖が確認された。
培養開始から12日目に培地循環を終了し、ポリイミド多孔質膜及び不織布を取り外した。取り外したポリイミド多孔質膜を集合体のまま、CCK8にてセルカウントを実施した所、合計で、2.6×108個の細胞を確認した。概算の細胞培養密度としては、1.7×108個/mlであった。細胞の育成したポリイミド多孔質膜を一部切り取ってホルマリン固定し、核(DAPI)、細胞膜(セルマスク)、及びアクチン(ファロイジン)染色を行った後の蛍光顕微鏡写真を図12に示す。馴化細胞を用いても、良好な細胞の増殖が確認された。
大量気相暴露培養(3)大量継代
実施例9から引き続き、CHO−K1細胞の付着した4cm×10cm角の長方形のポリイミド多孔質膜10枚を基盤シートとし、滅菌した同サイズのポリイミド多孔質膜10枚のメッシュ構造のA面を全て上にして、基盤シート上面に積層させた。また、同じくポリイミド多孔質膜10枚のメッシュ構造のA面を全て上にして、基盤シート下面に積層させた。その後、積層した30枚のシート上に不織布を乗せ、実施例9で使用した培養装置(図9)内部に設置し、その上に培地供給ラインを据えて、37℃に設定したタイテック社製強制通気式CO2インキュベータに培養装置全体を移し、培養準備を完了した。
実施例9から引き続き、CHO−K1細胞の付着した4cm×10cm角の長方形のポリイミド多孔質膜10枚を基盤シートとし、滅菌した同サイズのポリイミド多孔質膜10枚のメッシュ構造のA面を全て上にして、基盤シート上面に積層させた。また、同じくポリイミド多孔質膜10枚のメッシュ構造のA面を全て上にして、基盤シート下面に積層させた。その後、積層した30枚のシート上に不織布を乗せ、実施例9で使用した培養装置(図9)内部に設置し、その上に培地供給ラインを据えて、37℃に設定したタイテック社製強制通気式CO2インキュベータに培養装置全体を移し、培養準備を完了した。
0.5%FBSを含むHam培地を毎分2mlのペースで循環させて連続培養を開始した。図13右に示すペースで培地交換を続けながら更に76日間以上培養を継続した。図は、培養日数と使用培地量を示す。その時のグルコース消費量と乳酸生成量をLC/MS(Shimadzu LCMS−2020)で測定した。図13にその結果を示す。
ポリイミド多孔質から空のポリイミド多孔質膜への移動(5)気相継代法
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形の40枚のポリイミド多孔質膜のメッシュ構造のA面を上にして培地に浸漬させた。1枚のシートあたり2×104個のMDCK細胞懸濁液をシート上部に添加した後、CO2インキュベータ内で培養した。経時的に細胞の生育状況を観測しながら、61日間細胞培養を継続した。細胞数は8日目に最高値に達して、その後、安定した細胞数を維持した。61日目の各シートあたりの生存細胞数は、平均値で2.5×106であった。
2cm×2cmの滅菌された正方形容器に培地1mlを加え、滅菌した1.4cm角の正方形の40枚のポリイミド多孔質膜のメッシュ構造のA面を上にして培地に浸漬させた。1枚のシートあたり2×104個のMDCK細胞懸濁液をシート上部に添加した後、CO2インキュベータ内で培養した。経時的に細胞の生育状況を観測しながら、61日間細胞培養を継続した。細胞数は8日目に最高値に達して、その後、安定した細胞数を維持した。61日目の各シートあたりの生存細胞数は、平均値で2.5×106であった。
このシートの内1枚を取り出し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各1枚ずつのシートで挟み、3段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を1セット用意した。同様に、細胞の生育したシート1枚を取り出し、新規な同サイズのポリイミド多孔質膜で上下を各2枚ずつのシートで挟み、5段重ねのポリイミド多孔質膜積層体を1セット用意した(図5)。これら合計2セットの3段重ね及び5段重ねの積層体を、培地中に置いたメッシュの上に気相に接する様に置き、CO2インキュベータ内で培養を継続した。3日間後、それぞれの積層体を全て1枚毎に独立させ、各ポリイミド多孔質膜の細胞数についてCCK8を用いて測定した。3重積層及び5重積層の双方で、積層体内部での細胞の移動と増殖が確認され、1週間後に最高値と同等の細胞数となった。気相での接触により、効率的かつ迅速に細胞が継代された事を確認した。(図14)
ポリイミド多孔質から空のポリイミド多孔質膜への移動(6)長期培養後の気相培養
ヒト皮膚線維芽細胞長期培養時の気相継代による増殖確認
直径6cmのシャーレに2mlの培地を加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜のメッシュ構造のA面に1枚のシートあたり4×104個のヒト皮膚線維芽細胞を播種し、1ヶ月培養した。その後、シートを4分の1に切断し、更に培養を継続して合計230日培養した。その後、3.5cmディッシュ中央に、1.4cm角のステンレスメッシュを3枚重ねて設置し、その上に、前記ポリイミド多孔質膜を置き、滅菌した1.4cm角の空のポリイミド多孔質膜2枚で挟んだ。その状態で培地1mlを加えると、培地は、シートと同様の高さとなった。この状態でCO2インキュベータ内に移動させ、1週間に2回の割合で培地交換して細胞培養を継続的に実施した。
ヒト皮膚線維芽細胞長期培養時の気相継代による増殖確認
直径6cmのシャーレに2mlの培地を加え、滅菌した1.4cm角の正方形のポリイミド多孔質膜のメッシュ構造のA面に1枚のシートあたり4×104個のヒト皮膚線維芽細胞を播種し、1ヶ月培養した。その後、シートを4分の1に切断し、更に培養を継続して合計230日培養した。その後、3.5cmディッシュ中央に、1.4cm角のステンレスメッシュを3枚重ねて設置し、その上に、前記ポリイミド多孔質膜を置き、滅菌した1.4cm角の空のポリイミド多孔質膜2枚で挟んだ。その状態で培地1mlを加えると、培地は、シートと同様の高さとなった。この状態でCO2インキュベータ内に移動させ、1週間に2回の割合で培地交換して細胞培養を継続的に実施した。
培養7日後、各シートを1枚ずつに分け、単一のシートとして培養を継続した。7日、10日、16日、21日、28日、42日、56日後にCCK8を用いて細胞数を計測し、元のシートと後から接地させた空のポリイミド多孔質膜について、細胞の増殖挙動をCCK8での染色法を用いて観察した。ヒト皮膚線維芽細胞を長期間培養したポリイミド多孔質膜から、効率的に細胞が空のポリイミド多孔質膜に移動し、継続的に増殖してゆく挙動が観察された。結果を図15に示す。
気相継代を経ずにポリイミド多孔質膜上で長期培養を294日間継続したヒト皮膚線維芽細胞培養シート及び気相継代を230日目に経て同期間培養した基盤シート及び気相培養により継代後56日間培養した上下2枚のシートについて、生息するヒト皮膚線維芽細胞が産生するフィブロネクチンを、ELISA測定にて、シートを培養した培地中へ24時間で放出したフィブロネクチンの量で比較した。培養期間及び気相継代に影響されず、安定なフィブロネクチンの産生を確認した。結果を表2に示す。比較対象として、ポリイミド多孔質膜にて13日間培養したシート2枚から産生されたフィブロネクチン量を併記した。
Claims (37)
- 細胞の培養方法であって、
(1)1又は複数のシート状多孔質担体に細胞を担持させる工程、
(2)細胞を担持させたシート状多孔質担体に培地を適用し、シート状多孔質担体の孔の一部またはすべてに培地が含まれた状態として、シート状多孔質担体を培地で湿潤させる工程、
(3)培地を収容する培養容器中に、培地で湿潤させたシート状多孔質担体表面の一部または全体が気相に曝露されるようシート状多孔質担体を配置する工程、及び
(4)培養容器をインキュベータ内に設置して、細胞を培養する工程
を含み、ここで培養を通じてシート状多孔質担体表面及び内部の湿潤状態が保たれる、培養方法。 - 工程(4)において、培養容器内に連続的又は間歇的に培地が供給され、ここで培養を通じて培地で湿潤させたシート状多孔質担体の一部または全体が気相に曝露されている、請求項1に記載の培養方法。
- 工程(4)において、細胞を培養する工程が、酸素を供給する手段で酸素を供給しながら培養する工程である、請求項1又は2に記載の方法。
- 工程(3)において、シート状多孔質担体を剛体の上に載置する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 剛体が金属メッシュである、請求項4に記載の方法。
- 工程(3)において、1又は複数のシート状多孔質担体の上面の一部又は全部を被覆するように、シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートを載置する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- シート状多孔質担体よりも平均孔径の大きい多孔質シートが不織布、ガーゼ、及びスポンジからなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
- 培養容器が開放容器である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 培養容器が閉鎖容器である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 工程(3)において、2以上のシート状多孔質担体を上下に積層して配置する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 工程(3)において、1又は複数のシート状多孔質担体を折り畳んで配置する、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
- 1又は複数のシート状多孔質担体がポリイミド多孔質膜である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
- ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、請求項12に記載の方法。
- ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜である、請求項13に記載の方法。
- 前記ポリイミド多孔質膜が、2つの異なる表層面とマクロボイド層を有する多層構造のポリイミド多孔質膜である、請求項13又は14に記載の方法。
- 細胞が、物質を発現するように遺伝子工学技術により形質転換されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 細胞が、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌及び細菌からなる群から選択される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
- 動物細胞が、脊椎動物門に属する動物由来の細胞である、請求項17に記載の方法。
- 細胞が、CHO細胞、CHO−K1細胞、Vero細胞、及びMDCK細胞からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
- ポリイミド多孔質膜を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の方法に使用するためのキット。
- ポリイミド多孔質膜の、請求項1〜19のいずれかに記載の方法のための使用。
- 細胞を培養している細胞培養媒体にポリイミド多孔質膜を接触させることにより細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
- 細胞培養媒体が、シャーレ、ディッシュ、培養プレート、培養フラスコ、マイクロウェルプレート及びグラスボトムディッシュからなる群から選択され、そして、ポリイミド多孔質膜を細胞培養媒体の上面に接触させることを含む、請求項22に記載の方法。
- 細胞培養媒体が、マイクロキャリア、シリカ多孔体、セルローススポンジ、不織布及び中空糸からなる群から選択され、そして、当該細胞培養媒体の上部、下部又はその双方から、単数又は複数のポリイミド多孔質膜を接触させる、ことを含む、請求項22に記載の方法。
- 細胞を培養している第1のポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方から、細胞を培養していない第2のポリイミド多孔質膜を接触させことにより、細胞を第1のポリイミド多孔質膜から第2の多孔質膜へ移動させ、そして、第2のポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
- 第1のポリイミド多孔質膜と第2のポリイミド多孔質膜とが接触した状態のまま、膜集合体を気相中に持ち上げることを含む、請求項25に記載の方法。
- 細胞を培養していない空の第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用し、第1のポリイミド多孔質膜で細胞を培養する工程をさらに含む、請求項25又は26に記載の方法。
- 細胞を培養している細胞培養媒体に空の第1のポリイミド多孔質膜を接触させて、細胞を細胞培養媒体からポリイミド多孔質膜に移動させることにより、第1のポリイミド多孔質膜に細胞を適用する。請求項27に記載の方法。
- 細胞を含む生体試料を、ポリイミド多孔質膜の上面、下面あるいはその双方に接触させることにより、細胞を生体試料からポリイミド多孔質膜に移動させ、そして、ポリイミド多孔質膜に移動した細胞を培養する、ことを含む、細胞をポリイミド多孔質膜上に移動させて培養する方法。
- 前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリイミドを含む、ポリイミド多孔質膜である、請求項22〜29のいずれか1項に記載の方法。
- 前記ポリイミド多孔質膜が、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとから得られるポリアミック酸溶液と着色前駆体とを含むポリアミック酸溶液組成物を成形した後、250℃以上で熱処理する事により得られる着色したポリイミド多孔質膜である、請求項30に記載の方法。
- 前記ポリイミド多孔質膜が、2つの異なる表層面とマクロボイド層を有する多層構造のポリイミド多孔質膜である、請求項30又は31に記載の方法。
- 前記ポリイミド多孔質膜の膜厚が75μm以下である、請求項32に記載の方法。
- 細胞が移動した2以上のポリイミド多孔質膜を、上下又は左右に細胞培養培地中に積層して細胞を培養する、請求項22〜33のいずれか1項に記載の方法。
- 細胞を培養している細胞培養媒体、細胞を含む生体試料、あるいは、細胞を培養しているポリイミド多孔質膜、から細胞を培養していないポリイミド多孔質膜への細胞の移動を、2回以上繰り返すことを含む、請求項22〜34のいずれか1項に記載の方法。
- ポリイミド多孔質膜を含む、請求項22〜35のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット。
- ポリイミド多孔質膜の請求項22〜35のいずれか1項に記載の方法のための使用。
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