JP2018057409A - 食品用品質改良剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】起泡性が向上された小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤を提供すること。
【解決手段】小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤が開示され、該小麦たん白分解物は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による重量平均分子量(Mw)基準の分子量分布測定により得られる1,355〜66,338の分子量範囲内のクロマトグラム曲線において、分子量17,000を境界とした高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)が、0.25〜0.5である。このような食品用品質改良剤を用いて、例えば、撹拌を通じて製造される食品の食感、外観などの品質を改良することができる。
【選択図】なし
【解決手段】小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤が開示され、該小麦たん白分解物は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による重量平均分子量(Mw)基準の分子量分布測定により得られる1,355〜66,338の分子量範囲内のクロマトグラム曲線において、分子量17,000を境界とした高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)が、0.25〜0.5である。このような食品用品質改良剤を用いて、例えば、撹拌を通じて製造される食品の食感、外観などの品質を改良することができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、食品用品質改良剤に関する。
食品の品質改良のために、小麦たん白分解物が食品に添加され得る。例えば、特許文献1には、油調済冷凍フライ食品の風味、食感などの品質の改良のため、水溶性窒素指数が50以上でありかつトリクロル酢酸可溶率が20%以下の程度に加水分解された小麦たん白粉末を用いて調製されるバッターを、当該フライ食品の材料に添加することが記載されている。
本発明は、起泡性が向上された小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤を提供することを目的とする。
本発明は、小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤であって、該小麦たん白分解物が、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による重量平均分子量(Mw)基準の分子量分布測定により得られた1,355〜66,338の分子量範囲内のクロマトグラム曲線において、分子量17,000を境界とした高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)が、0.25〜0.5である、食品用品質改良剤を提供する。
本発明はさらに、上記食品用品質改良剤を含む、食品を提供する。
1つの実施形態では、上記食品は、バッターミックスまたは食品ミックス粉である。
本発明はさらに、食品の製造方法を提供し、この工程は、上記食品用品質改良剤を該食品の材料と撹拌混合する工程を含む。
本発明によれば、起泡性が向上された小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤が提供される。本発明の食品用品質改良剤を用いて、例えば、撹拌を通じて製造される食品の食感、外観などの品質を改良することができる。
本発明に用いられる小麦たん白分解物は、小麦たん白を加水分解して得られるものであり、起泡性を有する。「起泡性」は、泡立ちやすさおよび泡の消えにくさを包含し、起泡性の向上とは、起泡量の増大および気泡の安定化(泡が消えにくくなる)を包含していう。この「小麦たん白分解物」は、下述する特定の分子量分布(重量平均分子量(Mw)の分布曲線)を有するように、一群の種々の分子量の分解物(例えば、ペプチド群)からなる。
本発明に用いられる小麦たん白分解物の分子量分布は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による重量平均分子量(Mw)基準の分子量分布測定により得られたクロマトグラムにおいて決定され得る。HPLCの測定条件は、例えば、カラム:Superdex75 10/300GL、溶離液:0.05M Na−Pi(pH6.4)(0.15M NaClを含有)、温度:室温、流速:0.5ml/分、検出:UV214nm、注入:100μl、試料:0.1mg/mlが用いられる。
分子量分布の決定は、得られたクロマトグラム(チャート)から、分子量マーカーたん白との対比に基づき高分子量領域と低分子量領域とを決定することにより、行われ得る。用いる分子量マーカーの最小分子量と最大分子量との間(分子量が1,355〜66,338)の範囲内のクロマトグラム曲線を観察し、分子量17,000を境界にして高分子量領域(A)と低分子量領域(B)とを決定し、各領域の面積を求める(言い換えれば、分子量(Mw)17,000〜66,338のクロマトグラム曲線の積算値(A)および分子量(Mw)1,355〜17,000のクロマトグラム曲線の積算値(B)を求める)。分子量マーカーは、分子量17,000および最小分子量と最大分子量とが測定可能なマーカーたん白が用いられ得る。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)(分子量66,338)、ミオグロビン(分子量17,000)、ビタミンB12(分子量1,355)が使用され得る。オボアルブミン(分子量45,000)、β−ラクトグロブリン(分子量35,000)、シトクロームC(分子量12,000)、アプロチニン(分子量6,511)などの1,355〜66,338の分子量範囲内の分子量を有する分子量マーカーをさらに用いてもよい。
高分子量領域(A)および低分子量領域(B)はいずれも、所定の分子量範囲に相当するクロマトグラム上の2つの垂線と、当該分子量範囲内のクロマトグラム曲線と、ベースラインとで囲まれた領域で表される。
ベースラインは、例えば、図1(a)を用いて説明すると、移動相のみが流動する状態(例えば、ほぼリニアな状態を示す)からピークの立ち上がりが最初に観察される時点(変曲点p)と、測定時間(例えば、横軸(保持時間軸)最大値の60分間)内に表されるクロマトグラム曲線の極小値のうち最も低い値を示す点(点q)とを通る直線から表される。なお、この点qは、クロマトグラム曲線に含まれる1つまたはそれ以上の極小値の中から選択される点で、得られたクロマトグラム曲線自体の最小値とは必ずしも一致するとは限らない点について留意すべきである。立ち上がりの観察は、クロマトグラムを形成する縦軸に表されるデータ値(紫外線(UV)検出の場合、UV吸収値)がゼロ近似(例えば、ゼロまたはゼロ付近の負の値)の停滞または減少傾向から増加傾向に転じた時点を、例えば検出器(例えば、UV検出器)によって検知することによってなされ、変曲点としてクロマトグラム曲線に表され得る。例えば、点pおよび点qが検出器によって自動で検知され、この検知された点を連結したベースラインが作成され得るか、あるいは、クロマトグラム曲線に基づいて点qを設定し、検出器で検出された点pと連結したベースラインを作成し得る。
高分子量領域(A)は、例えば、図1(b)を用いて説明すると、以下のように決定される。まず、クロマトグラムにおいて、境界分子量17,000のマーカー位置にて保持時間軸(横軸)に対して付した垂線(境界分子量マーカー垂線)とクロマトグラム曲線またはベースライン(破線にて示す)との各交点10および12、そして最大分子量66,338のマーカー位置にて保持時間軸(横軸)に対して付した垂線(最大分子量マーカー垂線)とクロマトグラム曲線またはベースラインとの各交点20および22を設定する。次いで、交点10と交点12との間の垂線14と、交点12と交点22との間のベースライン50と、交点20と交点22との間の垂線24と、交点10と20との間のクロマトグラム曲線40とで囲まれた領域(図1(b)中の点線部の領域「A」)を「高分子量領域」として決定する。同様に、低分子量領域(B)は、例えば、図1(b)を用いて説明すると、以下のように決定される。クロマトグラムにおいて、上記境界分子量マーカー垂線上の交点10および12に加えて、最小分子量1,355のマーカー位置にて保持時間軸(横軸)に対して付した垂線(最小分子量マーカー垂線)とクロマトグラム曲線またはベースラインとの各交点30および32を設定する。次いで、交点10と交点12との間の垂線14と、交点12と交点32との間のベースライン52と、交点30と32との間の垂線34と、交点10と30との間のクロマトグラム曲線42とで囲まれた領域(図1(b)中の斜線部の領域「B」)を「低分子量領域」として決定する。
面積の算定は、当業者が通常用いる解析ソフトを用いて行われ得る。このような解析ソフトとしては、例えば、ImageJ(米国国立衛生研究所(NIH)で開発されたオープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェア)が挙げられる。
本発明に用いられる小麦たん白分解物は、上記クロマトグラムにおける高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(「A/B」)が、0.25〜0.5である。高分子/低分子比(A/B)は、好ましくは、0.3〜0.5であり、より好ましくは、0.34〜0.5である。上記面積比(A/B)が上記範囲内にあることにより、小麦たん白分解物が向上された起泡性を有し、そのような向上した起泡性に基づき、食品の品質改良が良好なものとなり得る。
本発明に用いられる小麦たん白分解物は、小麦たん白を加水分解することによって調製され得る。このような加水分解の方法としては、例えば、酸処理、強アルカリ処理または酵素処理が挙げられる。酵素処理が好ましい。酵素としては、例えば、たん白分解酵素(プロテアーゼ)、ペプチド分解酵素(ペプチダーゼ)などが挙げられる。例えば、エンド型プロテアーゼが用いられる。予め加水分解された小麦たん白(小麦たん白分解物)をさらに加水分解して調製してもよい。小麦たん白分解物は、上記分子量分布を有するように、酵素処理の条件(例えば、使用酵素の種類および加水分解のための酵素処理時間)が設定され得る。本発明に用いられる小麦たん白分解物の調製のため、例えば、小麦たん白を、エンド型プロテアーゼで1時間〜3時間加水分解処理することが行われ得る。また、多数種の小麦たん白分解物(例えば、種々の分子量の小麦たん白分解物)を組み合わせることによって、上記分子量分布を有するような小麦たん白分解物を調製してもよい。
本発明に用いられる小麦たん白分解物は、液状または粉末状のいずれでもよいが、好ましくは粉末状である。
本発明の食品用品質改良剤は、上述した特定の分子量分布を有する小麦たん白分解物を含む。本発明の食品用品質改良剤は、固形剤または液剤の剤形で調製され得、必要に応じて、製剤化助剤および賦形剤などの食品添加製剤の製造上許容され得る成分をさらに含有してもよい。固形剤は、好ましくは粉末剤である。例えば、小麦たん白分解物を液状で調製した後、例えばスプレードライによって粉末化し得る。
本発明の食品用品質改良剤は、食品の製造に際して、その食品の材料に添加されて混合され得る。食品用品質改良剤は、食品の材料と均一に混合されることが好ましい。このような混合は、食品の種類に依存するが、例えば、ミキサーを用いる撹拌またはホイッパーを用いるホイップ(撹拌して泡立て)によってなされ得るか、あるいはへらなどを用いた撹拌によってなされ得る。撹拌は、その食品の種類に依存するが、室温、加熱下、冷却下のいずれでもよい。撹拌、ホイップなどは、起泡性の向上に関与し得る。
本発明の食品用品質改良剤を用いて製造される食品は、例えば、その製造過程に撹拌を含む食品であり、さらに加熱を通じて製造される食品(本明細書中では、「加熱食品」ともいう)あってもよい。「加熱」とは、材料に熱が加わる任意の方法、例えば、フライ(油調)、焼成、煮るなどの調理による加熱を包含する。
本発明は、上記食品用品質改良剤を含む食品を提供する。本発明はさらに、食品の製造方法を提供し、この方法は、上記食品用品質改良剤を当該食品の材料と撹拌混合する工程を含む。
本発明の食品としては、菓子類(例えば、洋菓子、和菓子、中華菓子など)、パン類、フライ食品類、水産練り製品などが挙げられ、これらの食品は、その製造過程に撹拌および必要に応じて加熱を含み、そして製造された食品またはその生地などが冷凍または半冷凍の状態であってもよく、そのような冷凍または半冷凍食品も包含する。本発明の食品としては、例えば、フライ食品に用いられるバッターミックス、および例えば、アメリカンドックミックス粉、ホットケーキミックス粉などの食品ミックス粉もまた挙げられる。例えば、フライ食品のためのバッター、またはアメリカンドックミックス粉を用いたバッターの調製の際には、その材料の撹拌混合がなされ得る。例えば、ホットケーキミックス粉を用いて生地を調製する際に、その材料の撹拌混合がなされ得る。
本発明の食品用品質改良剤は、その有効成分である小麦たん白分解物が、例えば、粉製品の食品または粉を材料として製造される食品の場合、粉の重量100重量部に対して、例えば0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部で添加される。卵白を主成分とする食品(例えばメレンゲ)の場合、卵白の重量100重量部に対して、例えば0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部で添加される。糖(例えば、水飴、上白糖、グラニュー糖、黒糖、きび砂糖、てんさい糖、三温糖、中ザラ糖など)を主成分とする食品(例えば、キャラメル)の場合、煮詰め後の重量100重量部に対して、例えば0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部で添加される。さらに、他の食品の場合、本発明の食品用品質改良剤は、その有効成分である小麦たん白分解物が、食品材料の総重量に対して例えば0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部で、その食品の材料に添加される。本発明の食品用品質改良剤は、上記範囲内で、その起泡性を食品中でよりよく向上させ得る。
本発明の食品用品質改良剤を含む食品は、このような起泡性の向上を通じて、食感、外観などが、当該食品用品質改良剤を含まない食品に比べて改良されたものとなり得る。食品の種類に依存するが、例えば、食感面では、サクサク感、ふんわり感、口溶け、ソフト感、滑らかさなどの向上、外観面では、ボリュームの増大、油または水との分離に起因する現象(離水、油の滲み出しなど)の抑制が見られ得る。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<調製例1:小麦たん白分解物粉末の調製>
水に分散させた小麦たん白をプロペラミキサーにセットして撹拌しながら、ウォーターバスで加温した。液温が50℃に達したとき、エンド型プロテアーゼ(対小麦たん白0.1%量)を投入し、50℃にて1時間分解した。分解後、遠心分離にて上澄みを回収し、上澄み液をpH5.0にpH調整した。pH調整後、液温を70℃まで昇温し、70℃にて30分間プロペラミキサーで攪拌しながら酵素を失活させた。失活後、液温を50℃まで冷却してから活性炭を投入し、精製した。精製終了後、珪藻土濾過し、水溶性部分を回収した。回収後、80℃で30分間加熱殺菌してから、スプレードライにより粉末化した。得られた粉末を、調製例1の小麦たん白分解物粉末とした。
水に分散させた小麦たん白をプロペラミキサーにセットして撹拌しながら、ウォーターバスで加温した。液温が50℃に達したとき、エンド型プロテアーゼ(対小麦たん白0.1%量)を投入し、50℃にて1時間分解した。分解後、遠心分離にて上澄みを回収し、上澄み液をpH5.0にpH調整した。pH調整後、液温を70℃まで昇温し、70℃にて30分間プロペラミキサーで攪拌しながら酵素を失活させた。失活後、液温を50℃まで冷却してから活性炭を投入し、精製した。精製終了後、珪藻土濾過し、水溶性部分を回収した。回収後、80℃で30分間加熱殺菌してから、スプレードライにより粉末化した。得られた粉末を、調製例1の小麦たん白分解物粉末とした。
小麦たん白分解物粉末について、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、分子量分布(重量平均分子量(Mw)基準)を測定した。分子量(MW)マーカーとして、ウシ血清アルブミン(BSA)(分子量66,338)、オボアルブミン(分子量45,000)、β−ラクトグロブリン(分子量35,000)、ミオグロビン(分子量17,000)、シトクロームC(分子量12,000)、アプロチニン(分子量6,511)、ビタミンB12(分子量1,355)の7種類を使用した。
HPLCの測定条件は、カラム:Superdex75 10/300GL(GEヘルスケア社製)、溶離液:0.05M Na−Pi(pH6.4)(0.15M NaClを含有)、温度:室温、流速:0.5ml/分、検出:UV214nm、注入:100μl、試料:0.1mg/mlとした。
クロマトグラムのチャートから、分子量17,000を境界にして高分子量領域(「A」:分子量(Mw)17,000〜66,338)と低分子量領域(「B」:分子量(Mw)1,355〜17,000)とを決定し、ImageJ解析ソフトを用いて各領域の面積を求め、高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)を算出した(小数点第4位以下を四捨五入して小数点第3位までで求めた)。
図1は、調製例1の小麦たん白分解物粉末について、上記HPLCにより得られたクロマトグラム(a)を示す。クロマトグラムのベースラインを、ピークの立ち上がりが最初に観察された時点(変曲点p)と、横軸(保持時間軸)最大値の60分間内に表されるクロマトグラム曲線の極小値のうち最も低い値を示す点(点q)とを通る直線として作成した。図1(b)に示すように、クロマトグラムにおいて、境界分子量17,000のマーカー位置にて保持時間軸(横軸)に対して付した垂線(境界分子量マーカー垂線)とクロマトグラム曲線またはベースライン(破線にて示す)との各交点10および12、そして最大分子量66,338のマーカー位置にて保持時間軸(横軸)に対して付した垂線(最大分子量マーカー垂線)とクロマトグラム曲線またはベースラインとの各交点20および22を設定し、次いで、交点10と交点12との間の垂線14と、交点12と交点22との間のベースライン50と、交点20と22との間の垂線24と、交点10と20との間のクロマトグラム曲線40とで囲まれた領域(点線部の領域「A」)を「高分子量領域」として決定した。同様に、クロマトグラムにおいて、上記境界分子量マーカー垂線上の交点10および12に加えて、最小分子量1,355のマーカー位置にて保持時間軸(横軸)に対して付した垂線(最小分子量マーカー垂線)とクロマトグラム曲線またはベースラインとの各交点30および32を設定し、次いで、交点10と交点12との間の垂線14と、交点12と交点32との間のベースライン52と、交点30と32との間の垂線34と、交点10と30との間のクロマトグラム曲線42とで囲まれた領域(斜線部の領域「B」)を「低分子量領域」として決定した。
なお、比較のために比較例1および2の小麦たん白分解物粉末を入手し、同様に分子量分布を測定し、高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)を算出した。図2および図3はそれぞれ比較例1および2の小麦たん白分解物粉末のクロマトグラムを示す(図2は(a))。図2および3においても、図1の場合と同様にしてベースラインを作成した。図2では、図1の場合と同様にして高分子量領域(図2(b)中の点線部の領域「A」)および低分子量領域(図2(b)中の斜線部の領域「B」)を決定した。図3では、分子量17,000以上では、ピークは検出限界以下のもの以外は見られず、高分子量領域を決定することができなかった。
図1に示されるように、調製例1の小麦たん白分解物粉末は、1,355〜66,338の分子量範囲の中にピークを有し、面積比(A/B)は0.341であった。図2に示されるように、比較例1の小麦たん白分解物粉末は、1,355〜66,338の分子量範囲の中にピークを有したが、面積比(A/B)は0.226であった。図3に示されるように、比較例2の小麦たん白分解物粉末は、1,355〜66,338の分子量範囲ののうち低分子量領域にのみピークを有し、上記の通り高分子量領域を決定することができなかったため、面積比(A/B)を求めることができなかった。
<検討例1:起泡の評価>
炭酸水を以下の表1に示す配合にて作製した。ビーカーに水飴と水道水を計量し、水飴を溶解した後、素材添加区は小麦たん白分解物を添加、混合した。混合後、炭酸飲料用500ml容ペットボトルに溶液を150g計量し、5℃のインキュベーターで1時間冷却した。冷却後、インキュベーターから取り出し、ドライアイスを3g入れてから20秒静置した後、蓋をしっかり閉め、5℃のインキュベーターで1晩保管した。
炭酸水を以下の表1に示す配合にて作製した。ビーカーに水飴と水道水を計量し、水飴を溶解した後、素材添加区は小麦たん白分解物を添加、混合した。混合後、炭酸飲料用500ml容ペットボトルに溶液を150g計量し、5℃のインキュベーターで1時間冷却した。冷却後、インキュベーターから取り出し、ドライアイスを3g入れてから20秒静置した後、蓋をしっかり閉め、5℃のインキュベーターで1晩保管した。
作製した炭酸水を100ml容ビーカーに50g計量した。計量後、1分間静置した後、200ml容メスシリンダーの上部にセットした漏斗から15秒かけて注ぎ入れ、注ぎ終えた直後および3分後の起泡量(ml)を測定した。この結果を表2および図4に示す。同時に、注ぎ終えた直後から泡が消えるまでの泡保持時間を測定した。この結果を表3および図5に示す。
表2に示す起泡量に基づき注ぎ終えた直後の無添加区の起泡量を容積基準にて100%として換算すると、各添加区の起泡量(容積基準)は、調製例1では159%、比較例1では147%、比較例2では103%であった。このように、調製例1は、無添加区と比較して容積が1.5倍以上の起泡量であり、比較的起泡量の高い比較例1と対比してもなお起泡量が高かった。3分後では、無添加区および比較例2においては起泡が見られなかったのに対し、調製例1および比較例1で起泡が続いていた(表2および図4)。表2に示す3分後の起泡量に基づき比較例1の起泡量を容積基準にて100%として換算すると、調製例1の起泡量(容積基準)は130%であった。このように、調製例1の小麦たん白分解物粉末を炭酸水に添加した場合に、注ぎ終えた直後および3分後の起泡量はともに高かった。比較例2の小麦たん白分解物粉末では、注ぎ終えた直後および3分後の起泡量ともに無添加の場合とほぼ変化がなかった。比較例1の小麦たん白分解物粉末では、注ぎ終えた直後および3分後の起泡量とも無添加に比較して向上していたが、調製例1に比較すると劣るものであった。表3および図5に示されるように、泡保持時間に関して、調製例1の小麦たん白分解物粉末は、比較例1および2に比べて長い時間、泡を安定して保持した。
このように、調製例1の小麦たん白分解物粉末では、起泡量が増大し、かつ気泡安定性も向上しており、向上した起泡性を示したことが観察された。
以下、調製例1の小麦たん白分解物粉末を用いて、種々の食品に対する品質改良効果を試験した。
<検討例2:メレンゲ菓子における品質改良効果確認試験>
以下の表4に示す配合の原料を、家庭用ハンドミキサーを用いて、比重が0.17g/mlになるまでホイップし、メレンゲを作製した。このメレンゲを絞り袋に入れて4gずつ天板に絞り出し、オーブンを用いて100℃で90分間焼成してメレンゲ菓子を得た。得られたメレンゲ菓子を室温で一晩保管した後、外観(ボリューム)および食感(サクサク感、口溶け)について官能評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例3の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表5に示す。
以下の表4に示す配合の原料を、家庭用ハンドミキサーを用いて、比重が0.17g/mlになるまでホイップし、メレンゲを作製した。このメレンゲを絞り袋に入れて4gずつ天板に絞り出し、オーブンを用いて100℃で90分間焼成してメレンゲ菓子を得た。得られたメレンゲ菓子を室温で一晩保管した後、外観(ボリューム)および食感(サクサク感、口溶け)について官能評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例3の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表5に示す。
表5から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末によるメレンゲの高い品質改良効果が認められた。
<検討例3:ホットケーキミックス粉における品質改良効果確認試験>
以下の表6に示す配合の原料を、万能ミキサーを用いて撹拌混合し、生地を作製した。この生地を50gずつホットプレートに流し入れ、160℃にて3分焼成後、生地を裏返して2分焼成し、ホットケーキを得た。得られたホットケーキを室温で一晩保管したものについて、外観(ボリューム)および食感(ふんわり感、口溶け)の官能評価を行った。
なお、評価は、パネラー10名によって、比較例4の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表7に示す。
以下の表6に示す配合の原料を、万能ミキサーを用いて撹拌混合し、生地を作製した。この生地を50gずつホットプレートに流し入れ、160℃にて3分焼成後、生地を裏返して2分焼成し、ホットケーキを得た。得られたホットケーキを室温で一晩保管したものについて、外観(ボリューム)および食感(ふんわり感、口溶け)の官能評価を行った。
なお、評価は、パネラー10名によって、比較例4の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表7に示す。
表7から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末をホットケーキミックス粉に添加することでの高い品質改良効果が認められた。
<検討例4:アメリカンドックミックス粉における品質改良効果確認試験>
以下の表8に示す配合の原料を用い、ハンドミキサーで均一に撹拌混合してバッターを調製した。このバッターに串刺しソーセージを浸漬し、串刺しソーセージを衣付けした後、180℃で3分間油調してから−35℃で急速凍結して冷凍アメリカンドックを作製した。この冷凍アメリカンドックを家庭用電子レンジでレンジアップしたものを試食し、食感(衣のソフト感、口溶け)について官能評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例5の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表9に示す。
以下の表8に示す配合の原料を用い、ハンドミキサーで均一に撹拌混合してバッターを調製した。このバッターに串刺しソーセージを浸漬し、串刺しソーセージを衣付けした後、180℃で3分間油調してから−35℃で急速凍結して冷凍アメリカンドックを作製した。この冷凍アメリカンドックを家庭用電子レンジでレンジアップしたものを試食し、食感(衣のソフト感、口溶け)について官能評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例5の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表9に示す。
表9から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末をアメリカンドックミックス粉に添加することでの品質改良効果が認められた。
<検討例5:フライ用バッターにおける食感改良効果確認試験>
以下の表10に示す配合の原料を用い、家庭用ハンドミキサーで均一に撹拌混合してバッターを調製した。次いで蒸煮して潰したジャガイモに食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウムを混合し、成形して冷凍庫で凍結したポテトコロッケの具(40g/個)をホイップしたバッターに浸した後、パン粉を衣付けした。175℃で5分間油調した後、−30℃で急速凍結してそれぞれ冷凍コロッケを作製した。この冷凍コロッケを家庭用電子レンジでレンジアップしたものを試食し、食感(衣のサクミ、衣の硬さ)について評価した。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例6の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表11に示す。
以下の表10に示す配合の原料を用い、家庭用ハンドミキサーで均一に撹拌混合してバッターを調製した。次いで蒸煮して潰したジャガイモに食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウムを混合し、成形して冷凍庫で凍結したポテトコロッケの具(40g/個)をホイップしたバッターに浸した後、パン粉を衣付けした。175℃で5分間油調した後、−30℃で急速凍結してそれぞれ冷凍コロッケを作製した。この冷凍コロッケを家庭用電子レンジでレンジアップしたものを試食し、食感(衣のサクミ、衣の硬さ)について評価した。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例6の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表11に示す。
表11から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末をフライ用バッターに添加することでの高い品質改良効果が認められた。
<検討例6:ソフトクッキーにおける食感改良効果確認試験>
以下の表12に示す配合の原料を万能ミキサーにて撹拌混合し、生地を作製した。この生地を20gずつに成型し、オーブンを用いて170℃にて15分焼成し、ソフトクッキーを得た。得られたソフトクッキーを室温で一晩保管したものを試食し、食感(サクサク感、口溶け)について官能評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例7の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表13に示す。
以下の表12に示す配合の原料を万能ミキサーにて撹拌混合し、生地を作製した。この生地を20gずつに成型し、オーブンを用いて170℃にて15分焼成し、ソフトクッキーを得た。得られたソフトクッキーを室温で一晩保管したものを試食し、食感(サクサク感、口溶け)について官能評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例7の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表13に示す。
表13から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末をソフトクッキーに添加することでの高い食感改良効果が認められた。
<検討例7:カスタードクリームにおける食感改良効果確認試験>
表14に示す配合の原料を用い、ホイッパーで撹拌混合した後、加熱して練り上げ、カスタードクリームを調製した。得られたカスタードクリームを5℃で一晩もしくは5日間保管し、外観(離水の有無)について目視で評価した。また、食感(滑らかさ、口溶け)について官能評価を行った。なお、官能評価は、パネラー10名によって、比較例8の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表15に示す。
表14に示す配合の原料を用い、ホイッパーで撹拌混合した後、加熱して練り上げ、カスタードクリームを調製した。得られたカスタードクリームを5℃で一晩もしくは5日間保管し、外観(離水の有無)について目視で評価した。また、食感(滑らかさ、口溶け)について官能評価を行った。なお、官能評価は、パネラー10名によって、比較例8の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表15に示す。
表15から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末をカスタードクリームに添加することでの高い食感改良効果が認められた。
<検討例8:キャラメルにおける品質改良効果確認試験>
表16に示す配合の原料を用い、加熱しながら最終水分量が7%になるまで練り上げた後、型枠に流し込み、冷却してから切り分け、キャラメルを調製した。得られたキャラメルを常温で一晩もしくは20日間保管し、食感(滑らかさ、口溶け)について官能評価を行った。また、40℃のインキュベーターで7日間保管したものについて、外観(油の滲み出し:滲み出しが少ないほど良好である)の評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例9の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表17に示す。
表16に示す配合の原料を用い、加熱しながら最終水分量が7%になるまで練り上げた後、型枠に流し込み、冷却してから切り分け、キャラメルを調製した。得られたキャラメルを常温で一晩もしくは20日間保管し、食感(滑らかさ、口溶け)について官能評価を行った。また、40℃のインキュベーターで7日間保管したものについて、外観(油の滲み出し:滲み出しが少ないほど良好である)の評価を行った。なお、評価は、パネラー10名によって、比較例9の各評価項目をそれぞれ5点として、これらに対する1〜10の10段階の相対評価で行い(点数が高いほど良好であることを示す)、そしてパネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出して比較した。この結果を表17に示す。
表17から明らかなように、調製例1の小麦たん白分解物粉末をキャラメルに添加することで高い品質改良効果が認められた。
本発明は、例えば、食品添加剤および食品の製造分野、ならびに食品加工分野において有用である。
10,12,20,22,30,32 交点
14,24,34 垂線
40,42 クロマトグラム曲線
50,52 ベースライン
14,24,34 垂線
40,42 クロマトグラム曲線
50,52 ベースライン
Claims (4)
- 小麦たん白分解物を含む食品用品質改良剤であって、該小麦たん白分解物が、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による重量平均分子量(Mw)基準の分子量分布測定により得られる1,355〜66,338の分子量範囲内のクロマトグラム曲線において、分子量17,000を境界とした高分子量領域(A)の低分子量領域(B)に対する面積比(A/B)が、0.25〜0.5である、食品用品質改良剤。
- 請求項1に記載の食品用品質改良剤を含む、食品。
- 前記食品が、バッターミックスまたは食品ミックス粉である、請求項2に記載の食品。
- 食品の製造方法であって、請求項1に記載の食品用品質改良剤を該食品の材料と撹拌混合する工程を含む、方法。
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