JP5056535B2 - シュー皮の製造方法及びこれに用いる油中水型乳化物 - Google Patents

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Description

本発明は、シュー皮の製造方法及びこれに用いる油中水型乳化物に関する。
大豆蛋白質は血清コレステロール値の正常化や血清脂質濃度の低減機能等の生理機能を有し、厚生労働省が認可する特定保健用食品の素材として用いられたり、アメリカ食品医薬品局(FDA)において心臓病のリスク低減に効果ある旨のヘルスクレームが認められるなど、健康に係る素材として広く認知され、食生活での大豆蛋白質の摂取のニーズは増加している。
本発明者らは、このような背景に鑑み、従来あまり行われていなかった洋菓子分野への大豆蛋白の用途開発に取り組む中で、シュークリーム、エクレア等のシュー皮に用いることを発想した。
しかし、シュー皮を製造するには、他のパン、菓子に比較して熟練を要し、良好な品質のものを安定的に製造するのは困難といわれている。例えば、シュー生地の配合や捏ね方によっては安定した品質が得られないのである。大豆蛋白を用いた場合もそのままでは十分な品質のものが得られないことがわかった。
良好な品質のシュー皮を得るための研究は古くから行われており、例えば、特許文献1、特許文献2はカゼインナトリウムを用いることを開示しているが、大豆蛋白をシュー皮に用いることの研究は見当たらない。
特公昭46−28812号公報 特開昭51−41472号公報
本発明は、健康イメージの高い大豆蛋白を用いて十分な品質のシュー皮を製造する方法を提供することを目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、酵素により一定程度加水分解した大豆蛋白を用いることにより、ボリューム、歯切れ、口溶け、風味が良好なシュー皮が得られるという知見を得、本発明を完成するに到った。
すなわち本発明は、1)0.22Mトリクロロ酢酸可溶率が12〜30%となるように酵素により加水分解処理した大豆蛋白をシュー生地に含有させることを特徴とするシュー皮の製造方法。2)0.22Mトリクロロ酢酸可溶率が12〜30%となるように酵素により加水分解処理した大豆蛋白を油中水型乳化物に含有させたシュー皮製造用油中水型乳化物。3)1記載の方法によって製造されたシュー皮。を骨子とする。
本発明のシュー皮の製造方法により、ボリューム等品質が良好なシュー皮を製造することができる。また、本発明のシュー皮製造用油中水型乳化物を使用すると、簡便に前記方法を実施することができる。
本発明のシュー皮の製造方法は、0.22Mトリクロロ酢酸可溶率(以下、TCA可溶率という)が12〜30%となるように酵素により加水分解処理した大豆蛋白をシュー生地に含有させる。
大豆蛋白は、全脂大豆粉、豆乳粉末、分離大豆蛋白など大豆蛋白を含有する粉末状の大豆蛋白素材を用いることができ、風味の点から分離大豆蛋白が好ましい。これを、ペプシン等、プロテアーゼ活性のある酵素により、大豆蛋白のTCA可溶率が12〜30%となるように加水分解処理したものをシュー生地に含有させる。
本発明においてTCA可溶率は全蛋白質量に対する0.22Mのトリクロロ酢酸溶液に可溶の蛋白質量の割合をケルダール法により測定し、100を乗じた値(%)とする。
TCA可溶率が30%を超える分解度の高い大豆蛋白素材を使用した場合、独特の苦味が発現しやすく風味的な問題が起こりやすい。また、12%未満では、好ましいシュー皮適性を得ることが困難となる。即ち、ボリューム、歯切れ・口溶けが悪く品質が低下する。より好ましいTCAの範囲は、20〜25%である。
一般にシュー生地は、ミキサーボウル等の容器に水と、マーガリンやサラダ油などといった油脂類を入れ沸騰し、これを縦型ミキサーなどに設置して小麦粉を加えてよく混合し、その後、卵類、膨化剤を加えて混合して調製するといった方法が採用されている。なお、本願においては焼成したものをシュー皮、焼成する前の状態をシュー生地と称する
加水分解処理した大豆蛋白をシュー生地中に含有させるには、製造工程中のいずれかの時点で添加すればよいが、生地中で水和し均一に分散している必要がある。このため、油脂類を加える水に分散/溶解しておくか、マーガリンの水相に含有させておくのがよい。
マーガリンとして、大豆蛋白を分散・溶解させた水相を用いて製造されたマーガリン(油中水型乳化物)を用いることもできる。これにより本発明の製造方法を容易に実施することができる。従って、本発明の第2は、TCA可溶率が12〜30%となるように酵素により加水分解処理した大豆蛋白を油中水型乳化物に含有させたシュー皮製造用油中水型乳化物である。
油中水型乳化物は、油中水型乳化物の代表である通常のマーガリンを製造する方法と同様に実施すればよく、例えば30〜70℃に加温調整した油相と水相とをプロペラ或いはホモミキサー等にて攪拌して乳化した後ボテーター或いはコンビネーター等の従来公知の混捏機を使用して冷却可塑化する。
加水分解処理した大豆蛋白はシュー生地の配合量に対し0.05〜2.0重量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜1.0重量%の範囲で使用するのが良い。0.05%未満では効果に乏しく、逆に2%を超えて使用すると乳化剤を加えてもシュー皮生地の粘度が増加して作業性が低下するため好ましくない。
油中水型乳化物に含有させたものを使用する場合は、加水分解処理した大豆蛋白は油中水型乳化物中の含有量は0.2〜10重量%が好ましく、より好ましくは、1.0〜5.0%とするのが良い。0.2重量%未満では効果に乏しく、逆に5%を超えて使用するとシュー皮生地の粘度が上昇して作業性が低下するため好ましくない。
大豆蛋白特有の風味をマスキングする必要があれば、グルコン酸及び/又はグルコン酸誘導体を生地に添加するのが有効である。グルコン酸及びグルコン酸誘導体はグルコン酸、グルコン酸ナトリウムなどのグルコン酸塩、グルコノラクトン、グルコノデルタラクトンなどが例示できる。グルコン酸及びグルコン酸誘導体はシュー生地配合量に対し0.01〜2重量%の範囲で使用するとよい。2重量%を超えて使用すると乳化剤を加えてもシュー皮生地の粘度が増加して作業性が低下するため好ましくない。油中水型乳化物に含有させたものを使用する場合、グルコン酸及びグルコン酸誘導体は油中水型乳化物中の含有量は0.05〜10重量%が好ましい。10重量%を超えて使用すると酵素分解大豆蛋白の分散性が悪くなり油中水型乳化物を得ることが困難となってくる。
以上のようにして得られた大豆蛋白を含有したシュー生地を一定量絞り出し、これを焼成することにより、シュー皮が製造できる。シュー皮は、ボリューム、歯切れ、口溶け、風味が良好な品質であり、大豆蛋白の健康イメージに優れたものである。
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味する。
(実施例1)
(大豆蛋白の調製)
低変性脱脂大豆10kgに15倍の水を加え、1NのNaOHでpH7.5に調整し、室温で1時間ホモミキサーを用いて攪拌抽出を行った後、遠心分離機(1000g×10分)を用いてオカラ成分を除去し、脱脂豆乳を得た。これに1NのHClを加えて、pH4.5に調整し、蛋白成分を等電点沈殿させ、遠心分離して沈殿物を回収し、分離大豆蛋白カード(以下「カード」と呼ぶ)を得た。本カードのカード固形分は約30重量%であった。固形分12重量%の濃度になるよう加水し、NaOHを用いて溶液pHを7.3に中和を行った。
(加水分解処理)
次いで、この中和蛋白溶液を、プロテアーゼを使用し、各種TCA可溶率になるように反応時間を調整し、蛋白加水分解を行った。なお、上記記載の方法で酵素分解工程を経ないものを試作品1とした。
酵素加水分解後、この溶液を高温瞬間加熱殺菌機を用いて140℃で10秒間加熱処理を行い、噴霧乾燥により分離大豆蛋白「試作品1〜6」を得た。本試作品1〜6のTCA可溶率は次のとおりであった。試作品1(3%)、試作品2(8%)、試作品3(16%)、試作品4(23%)、試作品5(27%)、試作品6(35%)。
(シュー生地の調製)
ミキサー(株式会社愛工舎製作所製、型:KM−600)のボウルに、水450部を入れ、大豆たん白試作品1〜6の10.1部を添加し、よく混合した(試作品3、4、5が実施例で、試作品1、2、6は比較例となる)。次に、カゼインナトリウム7.9部を混合し、マーガリン450部を入れコンロで加温した。沸騰直前にグラニュー糖27部を添加し、沸騰させた。沸騰状態を1分間続けた後、コンロの火を切り直ちに同時に篩った薄力粉240部と強力粉60部を添加した。ボウルをミキサーにかけ、ビーターで低速40秒、中速1.5分ミキシングした。
予めほぐした全卵735部を610部、70部、55部に分けておき、上記の順に添加した。全卵は少しずつ添加し、添加時のミキサー条件は中低速、添加後は高速で1分半行った。なお、70部の全卵には重炭酸アンモニウム4部と重曹1.5部を溶解させておき、ミキサー条件は低速30秒、中高速20秒で行った。全卵添加後、高速で3分ミキシングし、生地を仕上げた。尚、配合を表1に示す。
得られた生地は10分間40℃の湯中にボールを放置し、ビニール製の三角袋(1リッター容)に700g充填した。
(シュー生地の焼成)
4枚の天板に、セパラット紙を敷く。絞り袋の口金は丸型(直径12mm)で1個当たりのデポジット量は28gとした。オーブンの温度は、上火180℃、下火220℃で敷天無28分間焼成した。
(評価方法)
得られたシュー生地及びシュー皮について、生地状態、生地膨張率、風味、口溶け、歯切れを下記の方法、基準にて評価した。これらの結果を表2に纏めた。
(生地状態)
5:生地が絞れる硬さ、生地の保形性が非常に良好
4:生地が絞れる硬さ、生地の保形成が良好
3:生地が絞れる硬さ、生地の保形成が弱い
2:生地を絞るのに若干難しい硬さ
1:生地を絞れないほどの、柔らかい生地
(ボリューム)
焼成後のシューの体積を3DLaser Scanner(ASTEX)を用いて測定した。数値は、10個の平均値(cm3)である。
(風味、口溶け、歯切れ)
パネラー10人による官能で評価した。
5:優れる、4:良好、3:やや劣る、2:劣る、1:かなり劣る
(総合評価)
生地状態、ボリューム、風味、口溶け、歯切れなどを総合的に評価し、◎:優れている、○:良好である △:参考例と比べ見劣りする。×:不良と表記した。
Figure 0005056535
Figure 0005056535
(実施例2)
油中水型乳化物中のカゼインナトリウムの量が1.75%、大豆たん白試作品4(TCA可溶率23%)の量が1.75%となるようにそれぞれを水相に配合した油中水型乳化物を調製し、表3の配合に従って、実施例1の方法に準じてシュー生地を得た。実施例1と同様に評価した。
(実施例3)
実施例2の油中水型乳化物中の大豆蛋白試作品の量を1.5%に変えた以外は、実施例2と同様にして、シュー生地を得、実施例1と同様に評価した。
実施例4
実施例2の油中水型乳化物中の大豆蛋白試作品の量を2.0%に変えた以外は、実施例2と同様にして、シュー生地を得、実施例1と同様に評価した。実施例2〜4の結果を表4に纏めた。
Figure 0005056535
Figure 0005056535
産業上の利用可能性
本発明は、シュークリームの外皮部分であるシュー皮を製造するためのシュー皮の製造方法およびこの製造方法に用いる油中水型乳化物に関する。

Claims (3)

  1. 0.22Mトリクロロ酢酸可溶率が20〜25%となるように酵素により加水分解処理した大豆蛋白をシュー生地に含有させることを特徴とするシュー皮の製造方法。
  2. 0.22Mトリクロロ酢酸可溶率が20〜25%となるように酵素により加水分解処理した大豆蛋白を油中水型乳化物に含有させたシュー皮製造用油中水型乳化物。
  3. 請求項1記載の方法によって製造されたシュー皮。
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