JP6790400B2 - 卵様焼成凝固食品 - Google Patents
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Description
一方で、動物性食品である卵はコレステロールが含まれているため、健康に関心の高い消費者にはコレステロールを低減した食品が望まれている。また、卵の価格は比較的高く価格相場が安定していないことから、卵焼成凝固食品を製造するメーカーにとっては、該食品中の卵の使用量を減らしたいという卵代替のニーズもある。これらを解決する方法として、例えば下記の方法が開示されている。
特許文献3の方法では卵黄の代わりとなる特殊な大豆素材が必要であり、また卵白が必須の方法である。
特許文献4,5の方法で得られるものは卵焼き等の卵焼成凝固食品そのものであり、大豆粉や大豆蛋白の添加量はごく少量に過ぎない。
(1)少なくとも熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料とし、全原料中の卵の配合率が50重量%以下である液体生地を焼成し、熱凝固させることを特徴とする、卵様焼成凝固食品の製造法、
(2)全原料中の卵の配合率が0重量%である、前記(1)記載の製造法、
(3)大豆クリームの固形分中のタンパク質含量が20重量%以上であり、脂質/タンパク質含量比 が重量基準で0.8以上である、前記(1)又は(2)記載の製造法、
(4)大豆クリームは、大豆と水を原料として脂質が濃縮された画分を取得したものである、前記(1)〜(3)の何れか1項記載の製造法、
(5)該植物タンパク素材が大豆タンパク素材である、前記(1)〜(4)の何れか1項記載の製造法、
(6)大豆クリームの全原料中の配合率が該植物タンパク素材に対して固形分換算で10〜300重量%である、前記(1)〜(5)の何れか1項記載の製造法、
(7)熱凝固促進剤を原料とする、前記(1)〜(6)の何れか1項記載の製造法、
(8)熱凝固促進剤が、メチルセルロース又は/及び凝固剤である、前記(7)記載の製造法、
(9)卵様焼成凝固食品中のコレステロール含量が0重量%である、前記(1)〜(8)の何れか1項記載の製造法、
また本発明によれば、卵の代替原料に起因して卵様焼成凝固食品の風味が損なわれることを防止又は抑制することができる。
また本発明により得られる卵様焼成凝固食品は、焼成後に品温が下がっても硬い食感になりにくくソフトな食感を維持することができる。
また本発明により得られる卵様焼成凝固食品は、通常の卵焼成凝固食品のように焼成の強弱や時間による硬さや焦げ付き等の品質の触れが生じにくく、品質の安定化に寄与することができる。
本発明において卵焼成凝固食品の用語は、一般に卵を主原料とし、卵白と卵黄を均一に混合して全卵液としたものを焼成し熱凝固させて得られる食品であり、例えば卵焼き、だし巻き卵、スクランブルエッグ、オムレツ、伊達巻、炒り卵、卵そぼろ、キュッシュ等をいう。
本発明における卵様焼成凝固食品は、少なくとも全原料中の卵の配合率が50重量%以下であり、上記に挙げた卵焼き等の卵焼成凝固食品と同様の製品形態を有する食品をいう。特に本発明では卵液を焼成して熱凝固させるのと同様に液体生地を焼成し熱凝固させて得られる。
全原料中の卵の配合率はさらに40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0重量%などとすることができ、当業者が目的とする製品の品質やコストに応じて適宜選択できる。特に健康上コレステロールの含量を0重量%としたい場合には、全原料中の卵の配合率は1重量%以下が好ましく、0重量%が最も好ましい。
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、熱凝固性植物タンパク素材を含むことが必須であり、加熱によって凝固する性質を持ち、植物由来のタンパク質を主成分とする食品素材である。該植物タンパク素材はコレステロールを該食品中に導入することなく、液体生地に卵液と同様の熱凝固性を付与する。
また植物タンパク素材中のタンパク質純度は高純度であるほど熱凝固性が高いので好ましく、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上又は90重量%以上などが好ましい。特に好ましい態様の一つは、タンパク質純度が80重量%以上の粉末状の大豆やエンドウ等の豆類タンパク素材であり、典型的には分離大豆タンパク素材である。
本発明の卵様焼成凝固食品の原料としては、熱凝固性植物タンパク素材と共に、大豆クリームを含むことが重要である。該大豆クリームを用いることにより、コレステロールを該食品中に導入することなく、卵黄様のコクを付与し、また熱凝固性植物タンパク素材に起因すると考えられる後味の不快臭やエグ味をマスキングすることができる。
また大豆クリームの別の製法として、大豆粉及び水との分散液、豆腐を磨りつぶしたペーストや豆乳等と、油脂とを必要により乳化剤と共に混合し、均一に乳化して脂質を増量する方法が挙げられる。
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、卵は必須ではなく、全原料中の配合率の50重量%以下である。コストダウンやコレステロール低減等を目的とする場合、該配合率はより低い方が好ましく、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下、又は0重量%などとすることができる。0重量%の場合、コレステロールの含量を0重量%にすることができ、また卵アレルギーの症状を発する人向けの食品としても有用である。卵は典型的には鶏卵であるが、一般に食用に使用される鳥類等の卵であれば特に限定されない。また卵は全卵、卵黄、卵白のいずれを用いてもよい。
○熱凝固促進剤
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、液体生地を焼成する際の熱凝固性を促進させるために、各種熱凝固促進剤を用いることができる。例えば塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコノデルタラクトン(GDL)等の凝固剤や、カードラン、メチルセルロース、LMペクチン等の加熱ゲル化性多糖類などが挙げられる。加熱ゲル化性多糖類とは、加熱昇温によってゲル化する性質を持つ多糖類である。特にメチルセルロースが好ましく、加熱後冷却してゲル化するゼラチンなどとは性質が異なる。なお、LMペクチンの場合、ゲル化には2価陽イオンを併用する必要がある。
これらの熱凝固促進剤を単独又は併用して用いることにより、液体生地の焼成による凝固速度を促進させ、熱凝固したゲルの崩壊を防ぎ、ふわっとした食感を付与することができる。
全原料中の熱凝固促進剤の配合率は、例えば下限を0.05重量%以上、0.1重量%以上、又は0.15重量%以上などとすることができ、上限を2重量%以下、1重量%以下、又は0.6重量%以下などとすることができる。
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、大豆クリームとは別途に油脂を配合することができる。油脂の配合によって生地中でより多くの油脂がエマルジョン化し、生地粘度が上がることにより、焼成時にフライパンへ生地を伸展する際の保形性を向上でき、後に記載の膨張剤の気泡を保持できる効果が得られる。
全原料中の油脂の配合率は、例えば下限を1重量%以上、2重量%以上、又は4重量%以上などとすることができ、上限を20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下などとすることができる。
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、大豆クリームとは別途にデンプンを配合することができる。デンプンを配合することによって焼成時の生地の火抜けが改善され、焼成時間を短縮でき、また食感のネチャつきをより改善できる。デンプンとしては、例えば馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、小麦デンプン、米デンプン、甘薯デンプン、タピオカデンプン等の生デンプンや、リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプン等の各種加工デンプンを用いることができる。
全原料中のデンプンの配合率は、例えば下限を0.1重量%以上、0.2重量%以上、又は0.4重量%以上などとすることができ、上限を15重量%以下、10重量%以下、又は5重量%以下などとすることができる。
本発明の卵様焼成凝固食品の原料として、各種膨張剤を配合することができる。膨張剤を配合することによって焼成後に適度な空気を含んだふっくらとした食感が得られる。膨張剤としては、例えば重曹、重炭安、ベーキングパウダー等を使用できる。
全原料中の膨張剤の配合率は、例えば下限を0.02重量%以上、0.05重量%以上又は0.1重量%以上などとすることができ、上限を3重量%以下とすることができる。
全原料中の呈味剤又は呈味強化剤の配合率は、例えば下限を0.01重量%以上とすることができ、上限を5重量%以下とすることができる。
以下、典型的な製造態様を示す。
本発明の卵様焼成凝固食品は、一般の卵焼成凝固食品と同様の工程で製造できることが特徴である。
例えば、上述した原料を選択し、水と混合して液体生地を調製する。まず、大豆クリームおよび水と熱凝固性植物タンパク素材を混合し、十分に熱凝固性植物タンパク素材を水和させた後に、その他の原料と混合することができる。混合手段は特に限定されず、ミキサーやこれに類する機器、装置を用いればよい。
次に、液体生地を焼成する。具体的には油脂を塗布したフライパン、鉄板等に液体生地を入れ、直火やオーブンで焼成し、液体生地を熱凝固させる。焼成時間は使用する原料によって変動し、適宜所望の凝固状態となるように調整すればよい。本発明の卵様焼成凝固食品は、一般の卵焼成凝固食品と比べて加熱履歴によって硬くなりすぎたり、焦げすぎたりすることが少なく、比較的加熱時間の許容幅を大きくすることができることも特徴である。
また、焼成方法は卵様焼成凝固食品の製品形態により変更すればよく、例えば卵焼きのときは静置して焼成したり、スクランブルエッグのときは攪拌しながら焼成すればよい。
熱凝固させた後は、必要により巻上げ、切断等により所望の製品形態に成形すればよい。その後、流通形態に合わせて、冷蔵や冷凍により保存することができる。本発明の卵様焼成凝固食品は、冷蔵や冷凍により食感の硬さ等の変化が少ないことも特徴である。
表1の配合表に従い、液状原料として大豆クリーム、豆乳、水をジューサーミキサーにて20秒間撹拌した後、分離大豆蛋白(熱凝固性を有する)、大豆粉を加え、さらに30秒間撹拌し、液体生地を得た。この液体生地150部を、あらかじめ菜種油2.5部(配合外)を薄く引いた卵焼き用フライパンを用いて焼成し、室温(20℃)に放冷した。焼成方法は一般的な卵焼きの製法に従いそれぞれ卵焼き様食品を調製した。
各試験区で得られた卵焼き様食品について、社内の嗜好パネラー5名(とか10名とか)に依頼して、焼成後の風味、食感を評価項目として、下記の評価基準にて5点満点で官能評価(相対評価)を行った。
○風味
10点:最も卵様のコクや風味を有し良好
1点:最もエグ味や渋味が強く風味が悪い
○食感
10点:最も卵様のしっとり感・崩壊感があり食感が良好
1点:最もボソボソ感や、ネチャつきを感じ食感が悪い
試験例1で得られた結果から食感をさらに改良するため、表2の配合表に従い、液状原料として大豆クリーム、菜種油、水をジューサーミキサーにて20秒撹拌した後、分離大豆蛋白(熱凝固性を有する)を加え、さらに30秒撹拌した。その後、馬鈴薯デンプン、凝固剤としてのニガリまたはGDLを添加し、30秒撹拌し、液体生地を得た。この液体生地を試験例1と同様に焼成し、それぞれ卵焼き様食品を調製した。
得られた各卵焼き様食品について、試験例1と同様に品質評価を行い、表2に結果をまとめた。なお、本試験例以降における品質評価は相対評価のため、表1の評価記号とは直接関係しない。
さらに膨張剤としてベーキングパウダーを加えた試験区11では、食感がよりふっくらとなり、良好であった。
さらに油脂として菜種油を加えた試験区12では、液体生地により多くの油脂がエマルジョン化することによって、生地粘度が上がり、焼成時にフライパンへ生地を伸展する際の保形性を向上でき、膨張剤の気泡を保持する効果が得られ、より作業上扱いやすい物性となった。
さらに凝固剤を加えた試験区13,14では、食感がより歯切れの良い食感となり、良好であった。また液体生地の焼成による凝固速度が速くなるとともに、熱凝固したゲルが壊れにくくなり、焼成後に生地を丸めていく工程において、生地強度の向上が認められた。特にGDLを用いた試験区14の食感は試験区13よりも蛋白質の変性が弱く、より滑らかな食感であったため、最も高評価であった。
なお、試験区14の卵焼き様食品を冷蔵温度(10℃)と冷凍温度(−20℃)にて1日間保管した後、それぞれ常温(20℃)に戻して食したところ、冷却前の食感と殆ど変わらず良好な食感であった。
表3の配合表に従い、メチルセルロースと水をジューサーミキサー(OSTER社製Osterizer)にて20秒撹拌した後、豆乳クリーム、菜種油を添加し20秒撹拌した。さらに、大豆たん白質を加え、30秒撹拌し、その後、デンプン、GDLを添加し、30秒撹拌し、液体生地を得た。この液体生地100部をあらかじめ菜種油7g(配合外)を薄く引いたフライパンに入れ、中火で加熱し、それぞれスクランブルエッグ様食品を調製した。
各試験区で得られたスクランブルエッグ様食品ついて、風味、食感を評価項目として、試験例1と同様にして品質評価を行い、表3に結果をまとめた。
試験例1の試験区1の配合に馬鈴薯デンプンを1%加えた配合で液体生地を調製した。この液体生地と全卵液とを40:60(試験区16)、および70:30(試験区17)の比率でそれぞれ混合した全卵併用液体生地を得た。
次に、試験例2の試験区15と同様にして液体生地を作成した後、該液体生地と全卵液とを容器内で40:60(試験区18)、および70:30(試験区19)の比率でそれぞれ混合した全卵併用液体生地を得た。
これらの液体生地を試験例3と同様にして焼成し、それぞれスクランブルエッグ様食品を調製した。
各試験区で得られたスクランブルエッグ様食品ついて、風味、食感を評価項目として、試験例1と同様にして品質評価を行い、表4に結果をまとめた。
Claims (9)
- 少なくとも熱凝固性植物タンパク素材および大豆クリームを原料とし、全原料中の卵の配合率が50重量%以下である液体生地を焼成し、熱凝固させることを特徴とする、卵様焼成凝固食品の製造法。
- 全原料中の卵の配合率が0重量%である、請求項1記載の製造法。
- 大豆クリームの固形分中のタンパク質含量が20重量%以上であり、脂質/タンパク質含量比が重量基準で0.8以上である、請求項1又は2記載の製造法。
- 大豆クリームは、大豆と水を原料として脂質が濃縮された画分を取得したものである、請求項1〜3の何れか1項記載の製造法。
- 該植物タンパク素材が大豆タンパク素材である、請求項1〜4の何れか1項記載の製造法。
- 大豆クリームの全原料中の配合率が該植物タンパク素材に対して固形分換算で10〜300重量%である、請求項1〜5の何れか1項記載の製造法。
- 熱凝固促進剤を原料とする、請求項1〜6の何れか1項記載の製造法。
- 熱凝固促進剤が、メチルセルロース又は/及び凝固剤である、請求項7記載の製造法。
- 卵様焼成凝固食品中のコレステロール含量が0重量%である、請求項1〜8の何れか1項記載の製造法。
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