JPWO2020066844A1 - 食肉用組成物、食肉加工食品の製造方法、および、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法 - Google Patents

食肉用組成物、食肉加工食品の製造方法、および、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法 Download PDF

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Abstract

成分(A):油脂加工澱粉および成分(B):炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤を食肉に適用し、生地を調製する工程と、生地を加熱する工程と、を含む、食肉加工食品の製造方法であって、成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、食肉加工食品の製造方法が提供される。

Description

本発明は、食肉用組成物、食肉加工食品の製造方法、および、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法に関する。
従来より、食肉加工品の品質を改善する技術として、リン酸塩を入れることによって肉の水分を保つことができ、肉の弾力が高まり、軟らかい食感になることが知られている。
また、食肉加工食品の品質を改善しようとするその他の技術として、特許文献1および2に記載のものがある。
特許文献1(特開2007−6724号公報)には、食肉が単独で、または他の食品素材と共に封入されたレトルトパウチ食品において、レトルト殺菌された後の食肉の食感低下を抑制するため原料肉に対して添加される食肉用品質改良剤を提供することを目的とする技術として、油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉と、平均粒子径が0.05〜50μmである粉末状のカードランを含む食肉用品質改良剤について記載されている。また、同文献には、かかる改良剤をピックル液に分散させて使用する方法が記載されている。
特許文献2(特開2009−112269号公報)には、油脂およびグリセリン有機酸脂肪酸エステルを含有する油脂加工澱粉を用いる魚介類の処理方法について記載されており、かかる処理方法により処理された魚介類は、加熱調理による歩留まりの低下が改善され、また、加熱調理後の食感に優れるとされている。また、同文献には、油脂加工澱粉を魚介類に用いうる方法として、油脂加工澱粉を粉末のまま魚介類に添加する方法が例示されている。
特開2007−6724号公報 特開2009−112269号公報
ここで、前述のリン酸塩については、近年健康への好ましくない影響が懸念されており、食品メーカーもリン酸塩使用を避ける傾向がある。しかしながら、リン酸塩を配合しない場合、上記特許文献に記載の技術では、食肉加工食品に歯を入れてから咀嚼中にわたっての好ましい食感および風味のバランスに優れた食肉加工食品を得るという点で改善の余地があることが本発明者らの検討により明らかになった。
本発明によれば、以下の食肉加工食品の製造方法、食肉用組成物、および、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法が提供される。
[1] 以下の成分(A)および(B)を食肉に適用し、生地を調製する工程と、
前記生地を加熱する工程と、
を含む、食肉加工食品の製造方法であって、
前記成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、食肉加工食品の製造方法。
(A)油脂加工澱粉
(B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
[2] 前記生地中の前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で、0.7以上45以下である、[1]に記載の製造方法。
[3] 生地を調製する前記工程が、ミンチ状およびペースト状から選択される1または2の形状の前記食肉、前記成分(A)および前記成分(B)を混練する工程を含む、[1]または[2]に記載の食肉加工食品の製造方法。
[4] 生地を調製する前記工程において、前記成分(A)の添加量が、前記食肉100質量部に対し、0.5質量部以上25質量部以下となるように前記成分(A)を適用する、[1]乃至[3]いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
[5] 生地を調製する前記工程において、さらに成分(C):α化澱粉を、前記成分(C)の添加量に対する前記成分(A)の添加量が、質量比で3以上30以下となるように、前記食肉に適用する、[1]乃至[4]いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
[6] 生地を調製する前記工程において、前記生地の10質量%水分散液の、25℃におけるpHが6.8以上8.6以下である、[1]乃至[5]いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
[7] 前記食肉加工食品が、チキンナゲット、ハンバーグ、ソーセージおよびすり身フライからなる群から選択される、[1]乃至[6]いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
[8] 以下の成分(A)および(B):
(A)油脂加工澱粉、
(B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
を含む、粉体状の食肉用組成物であって、
前記成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、食肉用組成物。
[9] リン酸塩を実質的に含まない、[8]に記載の食肉用組成物。
[10] 前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で、0.7以上45以下である、[8]または[9]に記載の食肉用組成物。
[11] 前記成分(A)が、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉である、[8]乃至[10]いずれか1項に記載の食肉用組成物。
[12] 前記成分(B)が、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムからなる群から選択される1以上である、[8]乃至[11]いずれか1項に記載の食肉用組成物。
[13] 成分(C):α化澱粉をさらに含む、[8]乃至[12]いずれか1項に記載の食肉用組成物。
[14] 前記成分(C)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で、3以上30以下である、[13]に記載の食肉用組成物。
[15] 当該食肉用組成物中、前記成分(A)を25質量%以上97質量%以下含む、[8]乃至[14]いずれか1項に記載の食肉用組成物。
[16] 前記食肉が、鶏肉、豚肉、牛肉、魚すり身からなる群から選択される1または2以上である、[8]乃至[15]いずれか1項に記載の食肉用組成物。
[17] 以下の成分(A)および(B):
(A)油脂加工澱粉、
(B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
を食肉に含有させることを含む、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法であって、
前記成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、前記方法。
以上説明したように本発明によれば、リン酸塩を配合しない場合においても、食肉加工食品に歯を入れてから咀嚼中にわたっての好ましい食感および風味のバランスに優れる食肉加工食品を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(食肉用組成物)
本実施形態において、食肉用組成物は、以下の成分(A)および(B)を含む粉末状の組成物である。
(A)油脂加工澱粉
(B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
そして、成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である。
また、食肉用組成物は、リン酸塩を実質的に含まないことが好ましい。ここで、リン酸塩を実質的に含まないとは、食肉用組成物の調製時にリン酸塩が意図的に配合されていないことをいう。このとき、食肉用組成物中のリン酸塩の含有量は、食肉用組成物全体に対して好ましくは0.01質量%以下である。
(成分(A))
成分(A)は、油脂加工澱粉である。油脂加工澱粉とは、原料澱粉に食用油脂および食用油脂類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を添加した後、混合、加熱する操作を備えた工程を経て生産される澱粉質素材である。
成分(A)の原料澱粉に制限はなく、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、エンドウ豆澱粉およびこれらの化工澱粉、たとえばアセチル化;エーテル化;リン酸架橋化、アジピン酸架橋化などの架橋化を、単独もしくは組み合わせたものなどが挙げられる。
また、成分(A)は、硬さ、弾力性、噛み応えを好ましいものとする観点から、油脂加工タピオカ澱粉、油脂加工コーンスターチおよび油脂加工ワキシーコーンスターチからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。なお、上記油脂加工タピオカ澱粉、油脂加工コーンスターチおよび油脂加工ワキシーコーンスターチの原料であるタピオカ澱粉、コーンスターチおよびワキシーコーンスターチは、化工澱粉であってもよい。
成分(A)は、硬さ、弾力性、噛み応えを好ましいものとする観点から、より好ましくは油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉である。
また、成分(A)の原料である食用油脂として、大豆油、ハイリノールサフラワー油等のサフラワー油、コーン油、ナタネ油、エゴマ油、アマニ油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、オリーブ油、コメ油、パーム油、ヤシ油、ゴマ油、椿油、茶油、カラシ油、カポック油、カヤ油、クルミ油、ケシ油などが挙げられる。
また、食用油脂として、ヨウ素価が100以上の油脂を用いることがより好ましく、さらに140以上の油脂を用いることが好ましい。このようなヨウ素価の高い油脂は加熱による酸化を受けやすく、澱粉の改質効果が高く、食肉加工食品等の食品の食感改良効果が期待できる。ヨウ素価が140以上の油脂として、具体的には、ハイリノールサフラワー油、アマニ油などが挙げられ、より好ましくはハイリノールサフラワー油である。
また、食用油脂類縁物質として、モノグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル;有機酸脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリソルベート;リン脂質などが挙げられるが、硬さ、弾力性、噛み応えを好ましいものとする観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、ジグリセリンモノオレイン酸エステルがより好ましい。
ここで、油脂加工澱粉調製時の食用油脂または食用油脂類縁物質の配合量は、澱粉の改質効果をより確実に得る観点から、100質量部の原料澱粉に対して、食用油脂および食用油脂類縁物質の合計でたとえば0.005質量部以上とし、0.008質量部以上が好ましく、より好ましくは0.02質量部以上とする。また、100質量部の原料澱粉に対しての食用油脂または食用油脂類縁物質の配合量は、食感改良効果の観点から、食用油脂および食用油脂類縁物質の合計でたとえば2質量部以下とし、1.5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.8質量部以下とする。
また、油脂加工澱粉の製造に用いる澱粉と食用油脂の組み合わせは、硬さ、弾力性、噛み応えが好ましい食肉加工食品を得るとともに、食肉加工食品の歩留まりを向上させる観点から、好ましくは架橋タピオカ澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチおよびワキシーコーンスターチからなる群から選ばれる1種または2種以上と、ヨウ素価が100以上の油脂との組み合わせであり、より好ましくは架橋タピオカ澱粉とハイリノールサフラワー油の組み合わせである。
次に、成分(A)の製造方法を説明する。
成分(A)の油脂加工澱粉の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む:
原料澱粉に、食用油脂および食用油脂類縁物質からなる群から選択される1種または2種以上を配合して混合物を調製する工程、ならびに
混合物を調製する工程で得られた混合物を加熱処理する工程。
ここで、混合物を調製する工程において、油脂加工澱粉の酸化臭を抑制する観点から、混合物がpH調整剤を含む構成としてもよい。
pH調整剤は、食品に利用可能なpH調整剤であればよく、原料澱粉および食用油脂の種類に応じて選択することができるが、水への溶解性や、最終製品への味などの影響から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;およびリン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム等のリン酸塩;およびクエン酸3ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸2ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、フマル酸1ナトリウム等の上記以外の有機酸塩等が好ましく、これらの1種以上を配合するのが好ましい。さらに好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を1種以上用いる。
また、油脂加工澱粉の酸化臭をさらに効果的に抑制する観点からは、pH調整剤として、1質量%水溶液の25℃におけるpHが6.5以上であるものを用いることが好ましく、上記pHはより好ましくは8.0以上、さらに好ましくは10以上である。
油脂加工澱粉調製時のpH調整剤の添加量は、成分(A)の酸化臭を抑制する観点から、澱粉100質量部に対して、たとえば0.005質量部以上であり、好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.03質量部以上である。また、食肉加工食品にえぐみが生じることを抑制する観点から、pH調整剤の添加量は、澱粉100質量部に対してたとえば2質量部以下であり、好ましくは1.5質量部以下、さらに好ましくは1.2質量部以下、よりいっそう好ましくは1質量部以下である。
また、pH調整剤の添加量は、混合物のpHがたとえば6.5〜10.9程度、好ましくは6.5〜10.5程度となるように調整することができる。
混合物のpHは、前述の混合物を調製する工程にて得られた混合物の10質量%濃度の澱粉スラリーを調製して、ガラス電極法により測定したpH値である。
pH調整剤は、好ましくは澱粉と油脂を混合するときに、添加する。pH調整剤の添加方法に制限はなく、塩をそのままの形で添加してもよいが、好ましくは、事前に塩類に対して、1〜10倍量程度の水でpH調整剤を溶解させた後、得られた塩溶液を添加する。さらに好ましくは、100質量部の原料澱粉に対して0.1質量部以上10質量部以下の水にpH調整剤を溶解した後、添加することが好ましい。pH調整剤を事前に水溶液とすることにより、加熱による澱粉の損傷をさらに安定的に抑制できる。
なお、混合物を調製する工程におけるpH調整剤の添加順序に制限はなく、原料澱粉と食用油脂または食用油脂類縁物質を混合した後にpH調整剤を添加してもよいし、原料澱粉とpH調整剤を添加した後、食用油脂または食用油脂類縁物質を加えてもよい。好ましくは、作業性の点から、原料澱粉と食用油脂または食用油脂類縁物質を混合した後にpH調整剤を添加するのがよい。
次に、混合物を加熱処理する工程について説明する。
混合物を加熱処理する工程において、混合物を調製する工程で得られた混合物を加熱することにより、油脂加工澱粉が得られる。
加熱処理については、たとえば150℃以上の高温で加熱、焙焼すると澱粉粒の損傷により、澱粉の粘度が低下し、澱粉本来の保水性が失われる懸念がある。すると、食肉加工食品に加えたときに歩留まりの減少などが生じるおそれがある。そのため、加熱処理は、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃未満の低温でおこない、より好ましくは40〜110℃程度の低温で加熱処理する。こうすることにより、澱粉の損傷を押さえ、食肉改良効果がより高くなる。なお、加熱温度の下限に制限はないが、加熱期間を適度に短縮して生産性を向上させる観点から、たとえば40℃以上とする。
加熱処理する期間は、澱粉の状態および加熱温度に応じて適宜設定され、たとえば0.5時間以上25日以下、好ましくは5時間以上20日以下であり、より好ましくは6時間以上18日以下である。
以上により成分(A)を得ることができる。
成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpH(ガラス電極法による測定値を指す。以下、単に「成分(A)のpH」ともよぶ。)は、硬さ、弾力性、噛み応えを好ましいものとする観点から、4.0以上であり、好ましくは4.5以上、より好ましくは5.0以上、さらに好ましくは5.5以上、さらにより好ましくは6.0以上である。
また、同様の観点から、成分(A)のpHは、12.0以下であり、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下、さらに好ましくは9.5以下である。
食肉用組成物中の成分(A)の含有量は、異風味を抑制する観点から、食肉用組成物全体に対して、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。
また、繊維感を向上させる観点から、食肉用組成物中の成分(A)の含有量は、食肉用組成物全体に対して、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下であり、さらにより好ましくは85質量%以下である。
(成分(B))
成分(B)は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1以上のアルカリ剤である。
繊維感の向上および異風味を抑制する観点から、成分(B)は、好ましくは炭酸水素ナトリウム(重曹)および炭酸水素カリウムからなる群から選択される1以上である。ただし、油脂加工澱粉を製造する際のpH調整剤としての炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸カリウムは、成分(B)には含まれない。
食肉用組成物中の成分(B)の含有量は、食肉加工食品の弾力および噛み応えを向上する観点から、食肉用組成物全体に対して、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上である。
また、食肉加工食品の食感と食味のバランスを高める観点から、食肉用組成物中の成分(B)の含有量は、食肉用組成物全体に対して、たとえば75質量%以下であってもよく、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは26質量%以下であり、さらに好ましくは19質量%以下であり、さらにより好ましくは13質量%以下である。
また、食肉用組成物中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量、すなわち、((A)/(B))は、異風味の抑制および繊維感の向上の観点から、質量比で、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.2以上である。
また、弾力性と噛み応え向上の観点から、上記質量比((A)/(B))は、好ましくは45以下であり、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは16以下である。
(その他の成分)
食肉用組成物は、成分(A)および(B)以外の成分を含んでもよい。
たとえば、食肉用組成物が、以下の成分(C)をさらに含んでもよい。
成分(C):α化澱粉
成分(C)は、成分(A)以外の澱粉である。ここで、α化澱粉とはα化処理された澱粉であり、α化処理の方法としては、たとえばジェットクッカー処理、ドラムドライヤー処理、エクストルーダー処理等が挙げられる。なお、成分(C)のα化澱粉には、部分的にα化された澱粉も含まれる。
食肉用組成物がさらに成分(C)を含む構成とすることにより、食肉加工食品の製造時の作業性を向上させることができる。たとえば、食肉用組成物がさらに成分(C)を含む構成とすることにより、ミンチ状やペースト状の食肉を用いて製造される食肉加工食品の成形性を向上させることも可能となる。
成分(C)のアミロース含量は、弾力性や噛み応え、繊維感を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、また、100質量%以下である。
また、成分(C)のα化度の指標としては、冷水膨潤度を用いることができる。冷水膨潤度の測定方法については実施例の項で後述する。
成分(C)の冷水膨潤度は、食肉加工食品のしっとり感を向上する観点および食肉加工食品の製造歩留まりを向上させる観点から、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上である。
また、同様の観点から、成分(C)の冷水膨潤度は、好ましくは40以下であり、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは15以下である。
成分(C)の具体例としては、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉類;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1または2以上を原料澱粉とするα化澱粉が挙げられる。弾力性や噛み応え、繊維感の向上の観点から、成分(C)は、好ましくはα化ハイアミロースコーンスターチである。
食肉用組成物が成分(C)を含むとき、食肉用組成物中の成分(C)の含有量に対する成分(A)の含有量すなわち((A)/(C))は、質量比で、食肉加工食品のしっとり感を向上する観点から、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。
また、同様の観点から、上記質量比((A)/(C))は、好ましくは30以下であり、より好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下、さらにより好ましくは13以下である。
また、食肉用組成物は、成分(A)〜(C)以外の粉体状の成分を含んでもよい。かかる成分の具体例として、成分(A)および(B)以外の澱粉;
塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム等の調味料;
ナツメグ、こしょう、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー、ターメリックパウダー等のスパイス類;
亜硝酸ナトリウム等の発色剤;
ソルビン酸ナトリウムやグリシン、酢酸Na等の保存料;
アスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤;
コチニール色素などの着色料;
カゼインナトリウム等の乳化安定剤;
キサンタンガムやローカストビーンガム、グアーガム等の増粘剤;
貝殻焼成カルシウム、卵殻カルシウム、炭酸カルシウム等の栄養強化剤が挙げられる。
(食肉)
本実施形態において、食肉用組成物が適用される食肉の具体例として、牛、豚、羊、山羊等の哺乳動物の肉;
鶏、アヒル、七面鳥、ガチョウ、鴨等の家禽類に代表される鳥類の肉;
ワニ等の爬虫類;
カエル等の両生類;ならびに
魚、エビ等の魚介類の肉等が挙げられる。これらは1種で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
食肉用組成物を適用した際の食味および食感の好ましさを向上する観点から、食肉は、好ましくは鶏肉、豚肉、牛肉、魚すり身からなる群から選択される。
また、同様の観点から、食肉加工食品の原料である食肉は、好ましくは挽肉、すり身等のミンチ状あるいはペースト状である。
(食肉加工食品)
本実施形態において、食肉加工食品は、上述した本実施形態における食肉用組成物を用いて得られる。
食肉加工食品の具体例として、チキンナゲット等のナゲット類;
ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、つくね等の畜肉練り物類;
魚すり身フライ、魚肉ソーセージ等の魚介練り物類が挙げられる。
食肉用組成物を適用した際の食味および食感の好ましさを向上する観点から、食肉加工食品は、好ましくはチキンナゲット、ハンバーグ、ソーセージおよびすり身フライからなる群から選択される。
(食肉加工食品の製造方法)
本実施形態において、食肉加工食品の製造方法は、たとえば、上述した成分(A)および(B)を食肉に適用する工程を含む。さらに具体的には、食肉加工食品の製造方法は、成分(A)および(B)を食肉に適用し、生地を調製する工程と、かかる生地を加熱する工程と、を含む。
食肉加工食品の食感を好ましくする観点から、好ましくは、生地を調製する上記工程が、ミンチ状またはペースト状から選択される1または2の形状の食肉、成分(A)および成分(B)を混練する工程を含む。
本実施形態の製造方法において、生地中の成分(B)の含有量に対する成分(A)の含有量の質量比((A)/(B))は、異風味の抑制および繊維感の向上の観点から、質量比で、好ましくは0.7以上であり、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.2以上である。
また、上記質量比((A)/(B))は、繊維感の向上の観点から、好ましくは45以下であり、より好ましくは25以下、さらに好ましくは20以下、さらにより好ましくは16以下である。
また、生地を調製する上記工程において、食肉100質量部に対する成分(A)の添加量は、食肉加工食品の硬さ、弾力性、しっとり感の向上の観点から、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.2質量部以上、さらにまた好ましくは3.0質量部以上、さらにより好ましくは4.5質量部以上である。
また、繊維感の向上の観点から、食肉100質量部に対する成分(A)の添加量は、好ましくは25質量部以下であり、より好ましくは18質量部以下である。
また、生地を調製する上記工程において、さらに成分(C):α化澱粉を食肉に適用してもよい。
このとき、成分(C)の添加量については、好ましくは、質量比((A)/(C))が食肉用組成物について前述した範囲となる量とし、具体的には((A)/(C))が3以上30以下となるように食肉に適用する。
生地を調製する上記工程において、成分(A)および(B)を独立して食肉に適用してもよいし、成分(A)および(B)を含む前述の食肉用組成物を準備してこれを食肉に適用してもよい。また、成分(A)および(B)ならびに適宜(C)を独立して食肉に適用するとき、成分(A)〜(C)の合計((A)+(B)+(C)))に対する各成分の添加量を、たとえば前述した食肉用組成物に対する各成分の添加量に準じて設定してもよい。
また、生地を調製する上記工程において、食肉加工食品の生地全体に対する食肉用組成物の添加量は、食肉加工食品の硬さ、弾力性、しっとり感の向上の観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上であり、さらに好ましくは1.1質量%以上であり、さらにより好ましくは1.5質量%以上である。
また、繊維感の向上の観点から、食肉加工食品の生地全体に対する食肉用組成物の添加量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、成分(A)および(B)ならびに適宜(C)を独立して食肉に適用するとき、生地全体に対する成分(A)〜(C)の合計量を、たとえば上述の生地全体に対する食肉用組成物の添加量に準じて設定してもよい。
また、生地を調製する上記工程において、生地の10質量%水分散液の、25℃におけるpHは、食肉加工食品の硬さ、弾力性、しっとり感の向上の観点から、好ましくは6.8以上であり、より好ましくは6.9以上、より好ましくは7.0以上である。
また、食肉加工食品の異風味を抑制する観点から、生地の10質量%水分散液の、25℃におけるpHは、好ましくは8.6以下であり、より好ましくは8.3以下、さらに好ましくは8.0以下である。
本実施形態の食肉加工食品においては、食肉に成分(A)および(B)が適用されているため、リン酸塩を配合しない場合においても、食肉加工食品に歯を入れてから咀嚼中にわたっての好ましい食感および風味のバランスに優れるものである。また、本実施形態によれば、たとえば、製造時の作業性に優れる食肉加工食品を得ることも可能となる。
また、本実施形態における食肉用組成物は、上述した特定の成分(A)および(B)を含むため、食肉に好適に用いられ、食肉加工食品に歯を入れてから咀嚼中にわたっての好ましい食感および風味のバランスに優れる食肉加工食品を得ることができる。たとえば、本実施形態によれば、食肉加工食品の最初に歯が入るときの好ましい硬さおよび弾力感、咀嚼中の噛み応えと肉塊の崩れやすさ、ならびに、咀嚼中の好ましい繊維感とパサつかないしっとり感のバランスに優れるとともに、異風味が抑制された食肉加工食品を得ることも可能となる。
ここで、食肉加工食品の最初に歯が入るときの硬さおよび弾力感、咀嚼中の噛み応えと肉塊の崩れやすさ、ならびに、咀嚼中の繊維感のことを、本明細書における歯ごたえともいう。
(食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法)
また、本実施形態において、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法は、上述の成分(A)および(B)を食肉に含有させることを含む。
成分(A)および(B)を食肉に含有させる方法に制限はないが、食肉加工食品の食感や食味のばらつきを抑制する観点から、好ましくは成分(A)および(B)を食肉中に含浸させる方法であり、たとえば、ミンチ状やペースト状の食肉と成分(A)および(B)とを混練する方法とすることができる。
ここで、成分(A)および(B)を、これらを含む組成物として配合してもよいし、成分(A)および(B)を別々に配合してもよい。また、成分(A)および(B)を組成物として粉体のまま配合してもよく、水やスープ、出汁等の液体に溶解し配合してもよい。あるいは成分(A)および(B)のうち一方を粉体のまま配合し、他方を液体として配合することもできる。
また、前記歯ごたえとは、好ましくは咀嚼中の噛み応えと肉塊の崩れやすさである。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
以下の例において、断りのない場合、「%」とは、「質量%」である。また、断りのない場合、「部」とは、「質量部」である。
(原材料)
原材料として、主に以下のものを使用した。
ゼラチン:クックゼラチン、森永製菓社製
粉状大豆タンパク:フジプロFR、不二製油社製
還元水あめ:マービー、HプラスBライフサイエンス社製
α化ハイアミロースコーンスターチ:ジェルコールAH−F、株式会社J−オイルミル
ズ製、アミロース含量50%、冷水膨潤度6.5
リン酸架橋タピオカ澱粉1:アクトボディーTP−1、株式会社J−オイルミルズ製
リン酸架橋タピオカ澱粉2:TP−2、株式会社J−オイルミルズ製
リン酸架橋タピオカ澱粉3:TP−4W、株式会社J−オイルミルズ製
油脂加工澱粉1:製造例1で得られた油脂加工澱粉
油脂加工澱粉2:製造例2で得られた油脂加工澱粉
油脂加工澱粉3:製造例3で得られた油脂加工澱粉
(製造例1)
100質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉1に、ハイリノールサフラワー油(ヨウ素価145、株式会社サミット製油製)0.1質量部、ジグリセリンモノオレイン酸エステル0.05質量部、および、炭酸ナトリウム10質量部に対して水30質量部を加えて炭酸ナトリウムを完全に溶解させた25%炭酸ナトリウム水溶液0.4質量部(炭酸ナトリウム当量として0.1質量部)を加え、混合機(スーパーミキサー、株式会社カワタ製)で3000rpm、3分間均一に混合し、混合物(水分14.8%)を得た。この混合物を棚段式乾燥機にて、70℃10日間加熱し、油脂加工澱粉1を得た。
なお、本例および以下の製造例に記載の油脂加工澱粉の製造においては、混合機として上記スーパーミキサーを用いた。
(製造例2)
100質量部のリン酸架橋タピオカ澱粉(リン酸架橋タピオカ澱粉2およびリン酸架橋タピオカ澱粉3の1:1の混合物)に、脱脂大豆粉1.7質量部、および、ハイリノールサフラワー油(ヨウ素価145、サミット製油社製)0.2質量部を加え、混合機で3000rpm、3分間均一に混合し、混合物(水分14.8%)を得た。この混合物を棚段式乾燥機にて、70℃10日間加熱し、油脂加工澱粉(油脂加工澱粉2)を得た。
(製造例3)
本例では、特許文献2の「油脂加工澱粉(試作品A)の作成」(段落0030)に準じて油脂加工澱粉を製造した。
ハイリノールサフラワー油(ヨウ素価145、サミット製油社製)7.5gとグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(理研ビタミン社製、ポエムW−10)7.5gとからなる油脂組成物を60℃に加温・溶解した。タピオカ架橋澱粉「アクトボディーTP−1」(株式会社J−オイルミルズ製)の水分を12.5%に調湿したもの100質量部に対して上記油脂組成物0.5質量部を添加し、混合機で3000rpm、10分間均一に混合した。得られた混合物を、密閉タンクに詰めて、60℃にて14日間加熱処理し、油脂加工澱粉(油脂加工澱粉3)を得た。
製造例1〜3で得られた各油脂加工澱粉のpHを表1に示す。ここで、油脂加工澱粉のpHは以下の方法で測定した。
(pH)
各油脂加工澱粉について、10質量%の水分散液を調製し、25℃における各水分散液のpHを測定した。
Figure 2020066844
(冷水膨潤度の測定方法)
「澱粉・関連糖質実験法」、279−280頁、1986年、学会出版センターに記載
される方法で冷水膨潤度を測定した。具体的には以下の方法で測定した。
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、電磁水分計:型番MX50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1g精秤し、遠心管にとり、メチルアルコール1mLに含浸させ、ガラス棒で撹拌しながら、25℃の蒸留水を加え正確に50mLとした。ときどき振盪し、25℃で20分間放置した。遠心分離機(日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)にて25℃で30分間、4000rpmで遠心分離し、上清を傾斜して、秤量瓶にとった。秤量瓶にとった上清を蒸発乾固させ、さらに110℃にて3時間減圧乾燥し、秤量し上清乾燥質量を求めた。さらに沈澱部質量を求め、次式で溶解度を算出後、冷水膨潤度を算出した。
溶解度(S)db%=上清乾燥質量(mg)/1000×100
冷水膨潤度=沈澱部質量(mg)/(1000×(100−S)/100)
(実施例1〜4、比較例1、2、対照例1および2)
本例では、チキンナゲットの作製および評価をおこなった。材料の配合を表3に示す。また、表3および後述の表4〜表6に記載の例のうち、食肉用組成物を事前に調製した例(表3の実施例4)については、「(A)+(B)+(C)」すなわち成分(A)〜(C)の配合量の合計は、食肉用組成物の配合量である。
(チキンナゲットの製造方法)
1.肉処理・塩積
表3に記載の材料のうち、1の材料を予め混合した。まず、ゼラチンを常温の水に膨潤させた。その間に、肉、グルタミン酸Naおよび塩をよく練り合わせ冷蔵した。ゼラチンが膨潤した後、すみやかに肉と混合した。
2.粉混合
表3に記載の材料のうち、2の材料を予め混合した。
3.塩類の調製
表3に記載の材料のうち、5の材料のトリポリリン酸塩または炭酸水素ナトリウムを予め5の材料の水に溶解し、水溶液を得た。
4.ミキシング(エマルジョン化)
表3に記載の材料のうち、上記1.および2.の混合物、ならびに、上記3.で得られた水溶液と表3に記載の3、4、5のうち上記3.の水溶液以外の原料、および6のすべての材料を順にミキサー内へ投入し、20秒間×2回ミキシングした。ただし、実施例4のみ、5および6の粉体材料のみを予め混合した食肉用組成物を得た上で、上記1.及び2.の混合物、ならびに、5の材料の水と表3に記載の3、4、のすべての材料を順にミキサー内へ投入し、20秒間×2回ミキシングした。
5.成型
ミキシング後の混合物を1個あたり3cm×4cm程度の四角形、厚み1cm程度で約20gとなるよう成型した。
この段階で、油ちょう前生地のpHを測定した。すなわち、生地の余り5gを蒸留水で10倍希釈してスラリー状にして、pHメーターにて25℃でpHを測定した。
6.冷凍
成型後のナゲットを−20℃冷凍で一晩静置した。
7.バッター付け
バッター粉として、ジューシー唐揚げ粉(ダイショー社製)およびKPS−200(J−オイルミルズ社製)を質量比で50:50の割合で混合した。混合した粉に対して等倍量の水を加水したものをバッター液とした。
得られたバッター液を冷凍後のナゲットに付着させた。この時、バッター付着後の肉重量を測定した。
8.油ちょう
7.で得られたナゲットを170〜175℃にて4.5分間油ちょうし、各例のチキンナゲットを得た。油ちょう後のナゲット重量を測定した。
また、油ちょう後のナゲットを常温で30分程静置して粗熱を取った後、冷凍した(−20℃、1晩)。
その後、電子レンジ(1400W)で30秒間解凍し、解凍後のナゲットの食感を官能評価した。評価結果を表3に示す。
(調理歩留まりの算出)
上記7.および8.で得られたバッター付着後の肉重量と油ちょう後のナゲット重量から、以下の計算式で調理歩留りを算出した。
調理歩留り(%)=(油ちょう後のナゲット重量/バッター付着後ナゲット重量)×100
各例の算出値を表3に示す。
(官能評価)
各例で得られたチキンナゲットの硬さ(最初に歯が入るときの硬さ)、弾力性(最初に歯が入るときの弾力感)、噛み応え(咀嚼中の噛み応え、肉塊の崩れ易さ)、繊維感(肉本来の繊維感があるか)、味・風味(異風味の有無)およびしっとり感を3人の専門パネラーが評価した。各評価項目について、3名の合議で採点し、3点以上を合格とした。各項目の評点を表2に示す。また、各例の評価結果を表3に示す。
Figure 2020066844
Figure 2020066844
表3に示したように、成分(A)、成分(B)を含む実施例1のナゲットは、硬さ、弾力性、噛み応え、繊維感、味・風味およびしっとり感に優れていた。
また、実施例2〜4のように、成分(C)としてα化ハイアミロースコーンスターチを含む場合、しっとり感がさらに向上した。
また、実施例4のように、粉体成分を予め混合し食肉用組成物を得、それを粉体のまま添加・混合してナゲットを作製しても、実施例3のように水に溶解後添加した場合と同評価のナゲットが得られた。
(実施例5〜7、対照例3)
本例では、表4に記載の材料を使用した以外は、上述の(チキンナゲットの製造方法)に従い、チキンナゲットの作製および、同じ評価基準での評価をおこなった。
Figure 2020066844
表4に示したように、成分(B)として炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸ナトリウムから選ばれる1以上を使用したナゲットは、硬さ、弾力性、噛み応え、繊維感、味・風味、およびしっとり感に優れていた。
また、実施例1、5および6より、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムを混合して加えた場合も、良好な食感のナゲットが得られたが、成分(A)および成分(B)の添加量が同じである場合には、炭酸水素ナトリウム単独の方が味・風味およびしっとり感の点でより優れていた。
また、実施例1および5〜7より、((A)/(B))については、37.0の時、10.0の場合と比較して繊維感、しっとり感が向上した。
(実施例8〜12、比較例4)
本例では、表5に記載の材料を使用した以外は、上述の(チキンナゲットの製造方法)に従い、チキンナゲットの作製および、同じ評価基準での評価をおこなった。
Figure 2020066844
表5に示したように、成分(A)、成分(B)、成分(C)の量が所定の範囲内のナゲットは、硬さ、弾力性、噛み応え、繊維感、味・風味およびしっとり感に優れていた。
生地中の成分(A)の添加量については、硬さおよび弾力性については、0.93質量%以上で良好であり、2.31質量%以上でより良好であり、3.7質量%以上でさらに良好であった。噛み応えについては0.93質量%以上で良好であり、3.7質量%以上でさらに良好であった。
成分(B)については、成分(A)の配合量が同じ実施例3、8および9で比較した場合、弾力性については0.15質量%以上で良好であり、0.25質量%以上でさらに良好であり、0.75質量%以上でさらにより良好であった。一方、味・風味については成分(B)の含有量が、0.75質量%以下で良好であり、0.25質量%以下でさらに良好であり、0.15質量%の時、さらにより良好であった。しっとり感については、0.25質量%以上で良好であった。
生地中の成分(C)の配合量については、0.07質量%の場合と比較して、0.19質量%以上含む場合、しっとり感がさらに増すことがわかった。硬さや弾力については0.19質量%と比較して、0.3質量%以上含む場合、より優れていた。
((A)/((A)+(B)+(C)))については、46.3質量%以上90.9質量%以下のとき、繊維感が良好であり、71.4質量%以上87.2質量%以下のとき、より良好であった。一方、味・風味については46.3質量%以上で良好であり、71.1質量%以上でより良好であり、74.1質量%以上でさらに良好であり、87.2質量%以上でさらにより良好であった。
((A)/肉100質量部)の数値では、硬さとしっとり感については1.5以上で良好であり、3.7でさらに良好であり、5.9でさらにより良好であった。
(実施例13〜14、比較例5〜6、対照例4)
本例では、フィッシュボールの作製および評価をおこなった。
(フィッシュボールの製造方法)
表6の配合に従って、以下の手順でフィッシュボールを作製し、官能評価を行った。
1.下準備
冷凍すり身(冷凍助宗すり身KA、アメリカンシーフーズ社製)を半解凍した後、包丁で5mm角のサイコロ状にカットした。
2.原料混合
カットしたすり身を量り取り、フードプロセッサーにて細かくすり身状になるまでミキシングした。
次に、氷冷した水を、表6に記載量の半量加えてミキシング(10秒×2回)した。
次いで、食塩を加えてミキシング(15秒×4回)した。
そして、残りの水、および、その他の原材料を添加してミキシング(15秒×4回)した。
3.脱気
以上により得られた各例のすり身をビニール袋に入れて脱気した。
4.油ちょう
ビニール袋の端を切り、各例のすり身を18gずつ絞り出し、170℃にて5分間油ちょうした。
(評価)
各例の評価結果を表6にあわせて示す。
Figure 2020066844
表6に示したように、成分(A)のpHが所定の範囲内のフィッシュボールは、硬さ、弾力性、噛み応え、味・風味およびしっとり感食感に優れていた。
硬さ、弾力性、噛み応えに関しては、成分(A)のpHが5.8以上で優れており、9.0の時さらに優れていた。一方、pHが3.5の油脂加工澱粉3を使用したフィッシュボールは、硬さ、弾力性、噛み応えの点で劣るものであった。
(実施例15)
本例では、ソーセージの作製および評価をおこなった。
(ソーセージの製造方法)
表7の配合に従って、以下の手順でソーセージを作製し、官能評価を行った。
1.下処理
豚赤身肉(6mm挽き)ミンチを準備し、亜硝酸ナトリウム、食塩と予めよく混練しておき、4℃で1時間静置しておいた。
2.食肉用組成物の調製
表7に記載の原材料のうち、乾燥卵白(キューピータマゴ社製)、スパイスミックス(胡椒、ナツメグ、生姜、ガーリック(すべてGABAN社製)を表7の配合で予め混合したもの)、(B)炭酸水素ナトリウム、(A)油脂加工澱粉1および(C)α化ハイアミロースコーンスターチを混合し、粉体状の食肉用組成物を調製した。
3.原料混合
ハンドミキサーへ氷水半量を投入し、1.の下処理した肉、上記2.で調製した食肉用組成物、還元水あめ、豚脂身を順に投入した後、20秒間混練した。その後、残りの氷水半量を投入し、30秒間混合した。
4.ケーシング
ハンドスタッファーを用いて、混合後のミキシング後の肉をコラーゲンケーシング(ニッピケーシング、ニッピコラーゲン工業株式会社製)に長さが8cm程度になるよう詰めた。
5.乾燥
コンベクションオーブンの乾熱送風モードにて、50℃30分間乾燥させた。
6.ボイル調理
70℃温浴にて30分間加熱調理を行った。
7.冷却
流水にて10分間冷却し、官能評価を行った。
Figure 2020066844
実施例15で得られたソーセージは、適度なしっとり感と弾力性、硬さ、噛み応えがあった。また、適度な繊維感があり、味・風味についても違和感がなく良好であった。
この出願は、2018年9月28日に出願された日本出願特願2018−185953号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。

Claims (17)

  1. 以下の成分(A)および(B)を食肉に適用し、生地を調製する工程と、
    前記生地を加熱する工程と、
    を含む、食肉加工食品の製造方法であって、
    前記成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、食肉加工食品の製造方法。
    (A)油脂加工澱粉
    (B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
  2. 前記生地中の前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で、0.7以上45以下である、請求項1に記載の食肉加工食品の製造方法。
  3. 生地を調製する前記工程が、ミンチ状およびペースト状から選択される1または2の形状の前記食肉、前記成分(A)および前記成分(B)を混練する工程を含む、請求項1または2に記載の食肉加工食品の製造方法。
  4. 生地を調製する前記工程において、前記成分(A)の添加量が、前記食肉100質量部に対し、0.5質量部以上25質量部以下となるように前記成分(A)を適用する、請求項1乃至3いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
  5. 生地を調製する前記工程において、さらに成分(C):α化澱粉を、前記成分(C)の添加量に対する前記成分(A)の添加量が、質量比で3以上30以下となるように、前記食肉に適用する、請求項1乃至4いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
  6. 生地を調製する前記工程において、前記生地の10質量%水分散液の、25℃におけるpHが6.8以上8.6以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
  7. 前記食肉加工食品が、チキンナゲット、ハンバーグ、ソーセージおよびすり身フライからなる群から選択される、請求項1乃至6いずれか1項に記載の食肉加工食品の製造方法。
  8. 以下の成分(A)および(B):
    (A)油脂加工澱粉、
    (B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
    を含む、粉体状の食肉用組成物であって、
    前記成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、食肉用組成物。
  9. リン酸塩を実質的に含まない、請求項8に記載の食肉用組成物。
  10. 前記成分(B)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で、0.7以上45以下である、請求項8または9に記載の食肉用組成物。
  11. 前記成分(A)が、油脂加工リン酸架橋タピオカ澱粉である、請求項8乃至10いずれか1項に記載の食肉用組成物。
  12. 前記成分(B)が、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムからなる群から選択される1以上である、請求項8乃至11いずれか1項に記載の食肉用組成物。
  13. 成分(C):α化澱粉をさらに含む、請求項8乃至12いずれか1項に記載の食肉用組成物。
  14. 前記成分(C)の含有量に対する前記成分(A)の含有量が、質量比で、3以上30以下である、請求項13に記載の食肉用組成物。
  15. 当該食肉用組成物中、前記成分(A)を25質量%以上97質量%以下含む、請求項8乃至14いずれか1項に記載の食肉用組成物。
  16. 前記食肉が、鶏肉、豚肉、牛肉、魚すり身からなる群から選択される1または2以上である、請求項8乃至15いずれか1項に記載の食肉用組成物。
  17. 以下の成分(A)および(B):
    (A)油脂加工澱粉、
    (B)炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群から選択される1または2以上のアルカリ剤
    を食肉に含有させることを含む、食肉加工食品の歯ごたえを向上させる方法であって、
    前記成分(A)の10質量%の水分散液の25℃におけるpHが4.0以上12.0以下である、前記方法。
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