JP4089146B2 - スクランブルエッグ様食品の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、スクランブルエッグ状の食品を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
植物性食品を好む人々、コレステロールの摂取を抑制しようとする人々、卵にアレルギーを示す人々等にとって、卵成分の摂取を低減させる課題があり、卵成分を用いない代替品の開発が求められている。
【0003】
卵製品の中でスクランブルエッグは、食感、喉越し、風味、色合い、とりわけ柔らかさ、半生感、とろみ等に特徴のある粒状の製品であるが、大量生産・貯蔵の過程を経てこの食感を得ることは、卵液を用いた場合ですら課題の一つとなる(例えば特開平9−103267、特開平10−304850、10−313826)ほどに達成が容易でない。そして梅焼きや伊達巻きのような水練製品はその一部原料に卵を比較的多量に用いているが、勿論スクランブルエッグとは大きく異なった食感である。
【0004】
当然、卵液を用いずともスクランブルエッグ状の食品を得ることには従来成功していない。わずかに特開平11−221050のように、卵黄を大豆の細胞に置き換えてスクランブルエッグを得ようとする技術はあるが、これとても卵白の使用を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は柔らかく、半生感があるというスクランブルエッグの食感が卵液を用いずとも得られないか種々検討を行う中で、澱粉含有野菜乃至澱粉細胞と大豆蛋白ペーストを混合、加熱することでそのような食感を呈すること、特定の組織状蛋白を採用することで粒状にほぐれる食感が一層増大すること等を見出し、この発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、この発明は、澱粉性野菜乃至澱粉細胞と蛋白ペーストを混合、加熱することを特徴とするスクランブルエッグ様食品の製造法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
澱粉性野菜乃至澱粉細胞としては,ウズラ豆,アズキ豆,金時豆,ソラマメ,エンドウ,ササゲ,インゲンなどの豆類、長芋,さつまいも,馬鈴薯などの芋類、カボチャなどの瓜類、栗などが使用でき、マッシュポテト或いはその乾燥品のような加工を施したものも使用できる。澱粉性野菜乃至澱粉細胞として特にカボチャは、食感のみならず色調,風味もスクランブルエッグのそれによく類似した製品を得ることができ好ましい。これらは通常皮を剥き、瓜類はさらに種子類を除くのがよく、裏漉しして用いてもよい。
【0008】
澱粉性野菜乃至澱粉細胞は,好ましくは焼き,蒸し,煮る等の加熱処理をしたものが,澱粉質を細胞の中に閉じ込めるためか,スクランブルエッグ様の粒様にするのに役立つが,加熱しない澱粉が多く遊離した状態になると,スクランブルエッグよりも固く締まった傾向の食感となる。
【0009】
蛋白ペーストは、大豆蛋白ペーストまたは大豆蛋白ペースト及び鳥獣魚介肉のペーストもしくは落とし身であるのが、スクランブルエッグ様のソフトな食感を得るために好ましい。大豆蛋白ペーストは大豆蛋白に水を加えてペースト状にしたもので好ましくはさらに油脂を含み、大豆蛋白:水:油脂の比率は1:(2.5〜4):(0.5〜2)、最適には1:(3.0〜3.7):(0.6〜1.0)の重量比率がよい。水は少なすぎると油脂を乳化しがたいが、野菜が高水分であれば野菜と混合することにより蛋白ペーストの水分が多少低くても実施は可能である。水分が多すぎると豆腐様の柔らかさが卓越しスクランブルエッグ様の硬さに乏しくなる。
【0010】
蛋白ペーストは、大豆蛋白ペースト単独であるよりは、大豆蛋白ペーストに対し鳥獣魚介肉のペースト又は落とし身をバインダー的に併用する方が、スクランブルエッグ様の柔らかさにするのに役立つ。この場合は、大豆蛋白ペーストと鳥獣魚介肉のペースト又は落とし身の重量比率は1:(0.05〜0.3)が好ましい。
【0011】
鳥獣魚介肉は代表的には、魚肉、家禽肉の摺身(魚肉としてはスケソウダラ、南ダラ、ホキ、グチ、エソ、金目鯛、イトヨリ、鰯、アジ、家禽肉としては、鶏肉、兎肉、などが例示できる)のペーストを用いることができ、摺身の一部または全部はおとしみであってもよい。また必要に応じてゼラチン、卵白、澱粉類(馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉などの澱粉類)などの副資材を添加した練り生地にしてもよく、通常の練り製品と同様に食塩,砂糖,グルタミン酸ソーダー等の調味料、葱,ごま,ニンジン、ゴボウ、キャベツ、海老等の具材等が使用できる。ただし蛋白ペーストを調製後に遊離した澱粉と混合するのは、組織がスクランブルエッグと異なる硬い組織に締まるの傾向にあるので避けるのがよい。
【0012】
澱粉性野菜乃至澱粉細胞と蛋白ペーストの重量割合は(0.07〜0.25):(1.0)が好ましい。前者が少なすぎると固い豆腐様の食感となり、多すぎるとスクランブルエッグの食感としては柔らかすぎ、べたついた食感になる。
【0013】
両者の他に、好ましくは、特定の組織上蛋白即ち、澱粉類または澱粉類とアルカリ土類金属化合物を添加して製造されたものを用いると、スクランブルエッグ様のホグレ感が一層増大する。
【0014】
組織状蛋白自体は、通常、蛋白原料及び水をエクストルーダーに供給し加熱・加圧し、ダイより押し出すことにより造粒組織化したもので、蛋白原料は通常、丸大豆、脱脂大豆, 濃縮大豆蛋白, 分離大豆蛋白等の大豆蛋白が用いられ、落花生, 菜種, 綿実など油糧種子由来の蛋白、小麦, トウモロコシ等穀物由来の蛋白、等、加熱ゲル形成性のある他の蛋白を併用したものでもよい。組織状蛋白の原料中の蛋白質含量は乾物換算で40〜85%、原料中の水分は12〜50%の範囲で通常製造される。エクストルーダーは、一軸エクストルーダーでも二軸以上の複軸エクストルーダーでも用いることができるが、品質の安定性の点から二軸型のものが好ましい。
【0015】
この発明で用いる組織状蛋白は吸水してほぐれた状態で混練物中に存在するのがよいが、用いる適当な水戻し量は、自重の1.5倍量から2.5倍量好ましくは1.7倍量から2.0倍量の水で水戻しするのがよい。
【0016】
この組織状蛋白は澱粉類または澱粉類とアルカリ土類金属化合物を含ませたものがよい。製品をほぐれやすくするのに適した澱粉類の量は、組織状蛋白の原料中に乾物換算で6〜40重量%好ましくは8〜30重量%含むのがよい(少な過ぎるとほぐれにくく、多過ぎると水戻し後に溶けてしまう)。アルカリ土類金属化合物の添加は、緻密な繊維状構造の形成を容易にするためかより少量の組織状蛋白で容易に万遍なく分散させるのが容易である。アルカリ土類金属化合物を用いる場合の適した含量は組織状蛋白の原料中に乾物換算でアルカリ土類金属として0.01〜3重量%好ましくは0.1〜2重量%の範囲がよい。
【0017】
上記澱粉類は、小麦粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉などその由来を問わず、また、それらの化工澱粉でも差し支えない。アルカリ土類金属化合物としては、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが例示される。
【0018】
組織状蛋白の使用量は蛋白ぺーストに対する水戻し品の割合で(1.0):(0.03〜0.1)含まれるのが好ましい。
【0019】
上記原料は、配合、混合、及び要すれば成型をして生地とされ、それらは常法により行なうことができ、カッターと称される混練機であると大豆蛋白ペーストの調製から一貫して使用が良好であるが、ペーストの混合だけなら擂潰機も使用できる。成型は梳き成型、ちぎり成型、加熱容器中での攪拌等、手または機械を用いて生地をばらけさせる成型がよい。
【0020】
上記のようにして得られた練生地は、湯中加熱、又は蒸し加熱により加熱を行なうことができそれにより蛋白ペーストを凝固させ、さらに必要なら包装する。
【0021】
スクランブルエッグ様食品は、そのまま若しくは調理して惣菜とすることができる他、押し寿司、のり巻き、ばら寿司、サンドイッチなどの具材等として幅広く利用できる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を以て本発明を説明する。
【0023】
実施例1
分離大豆蛋白粉末(「フジプロ545」(フジプロテインテクノロジー株式会社販):水:植物油脂が1部:3.5部:0.8部をカッターで約5分間均質化して蛋白ペーストを得た。
【0024】
別途、カボチャの皮を剥き、蒸煮し、種を除き、細切したカボチャ肉を得た。また予め、分離大豆蛋白粉末55部、脱脂大豆25部と小麦澱粉20部、カルシウム量で1部に相当する量の硫酸カルシウムを混合したもの並びに水40部を二軸エクストルーダーに供給して加熱、加圧処理を行い組織状蛋白を調製しておき、これを自重の2倍量の水を用いた水戻し品を得た。
【0025】
上記蛋白ペーストに細切したカボチャ肉、または水戻しした組織状蛋白をねりこみ(約3分間)又は練り込まず、さらに、食塩0.06部、砂糖0.12部、複合調味料0.01部、MSG0.01部を加えた。
【0026】
これを、手でほぐしに掛けた後、90℃の蒸し器中で15分間加熱して、評価に供した。
【0027】
【0028】
即ち、カボチャ肉のないもの(No.3及び4)は、スクランブルエッグ様のほぐれがなく、カボチャ肉使用(No.1及び2)はスクランブルエッグ様の優れた味及び色調にするのに効果があった。また組織状蛋白はカボチャ肉によるほぐれ感等を増大させた。
【0029】
なお別の比較として、澱粉類もアルカリ土類金属化合物も添加していない市販の組織状大豆蛋白を使用する他は上記No1と同様に実施したところ、スクランブルエッグ中に異質の固い粒が感じられるような製品となった。
【0030】
実施例2
サイレントカッター中で、実施例1と同じ配合の大豆蛋白ペースト、カボチャ肉、組織状蛋白、を混練し(1500RPMで合計8分間)、調味料なども加えた後、別途、調製してあった擂り身生地(スケソウ2級擂り身100部、食塩3部、砂糖4部、グルソー0.6部、小麦澱粉10部、延ばし水70部)を加配(混練生地の1/4量、または1/2量)混合し(刃750回転、皿2回転)、手でほぐす成型を行なって、実施例1と同様に蒸し加熱した。
【0031】
擂り身生地の加配により、成型性がより向上し、食感もよりスクランブルエッグ様にしっとりソフトな食感となったが、魚風味については1/4量加配のものが殆どしなかったのに対して、1/2量加配のものはやや魚っぽい風味が感じられた。
【0032】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば卵液を用いずとも、また植物性原料を主に用いて、スクランブルエッグ様の食品を得ることができる。
Claims (7)
- カボチャを蛋白ペーストと(0.07〜0.25):(1.0)の重量割合で混合、加熱することを特徴とするスクランブルエッグ様食品の製造法。
- カボチャが加熱品である請求項1記載の製造法。
- 蛋白ペーストが大豆蛋白ペーストまたは大豆蛋白ペースト及び鳥獣魚介肉のペーストもしくは落とし身である請求項1記載の製造法。
- 大豆蛋白ペーストが大豆蛋白:水:油脂の重量比率が1:(2.5〜4):(0.5〜2)である請求項3記載の製造法。
- 大豆蛋白ペーストと鳥獣魚介肉のペーストもしくは落とし身の重量比率が1:(0〜0.3)である請求項3記載の製造法。
- 混練物中に、澱粉類または澱粉類とアルカリ土類金属化合物を添加して製造された組織状蛋白を含有する請求項1記載の製造法。
- カボチャのペースト:蛋白ペースト:組織状蛋白水戻品の重量比率が、(0.07〜0.25):(1.0):(0.03〜0.1)である請求項6記載の製造法。
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