JP2021164437A - 食品用風味改良剤およびそれを用いた食品の風味改良方法 - Google Patents

食品用風味改良剤およびそれを用いた食品の風味改良方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 低アレルゲンまたはアレルゲンフリーの状態で食品の風味の改良を行うことができる食品用風味改良剤およびそれを用いた食品の風味改良方法を提供すること。【解決手段】 本発明の食品用風味改良剤は、エンドウタンパク質分解物を含有する。このエンドウタンパク質分解物は、0.1重量%の濃度を有する水溶液に調製した際に、該水溶液の表面張力が20℃で60mN/m以下である成分から構成されている。本発明の食品用風味改良剤は、これを加えない場合と比較して食品の味質や香気などを変更することができる。【選択図】 なし

Description

本発明は、食品用風味改良剤およびそれを用いた食品の風味改良方法に関する。
飲食店、食料品店、スーパーマーケットまたは百貨店のバックヤード、食品加工工場棟現場にて調理または製造される食品について、その品質を改良するための様々な対応が行われている。例えば、食品の風味(例えば、味質や香気を包含する)を改良して、消費者の購買意欲を高めるために、小麦タンパク質分解物や大豆タンパク質分解物のような植物由来のタンパク質分解物がこれらの食品の原材料に添加されて使用されることがある。
しかし、小麦および大豆は、食品に用いる場合、アレルギー物質(アレルゲン)としての表示が義務付けられているか、または当該表示が推奨されているような原材料である。ここで、小麦および大豆の分解物(例えば上記タンパク質分解物)もまた、摂取によりアレルギー症状を引き起こす懸念があり、同様の表示が義務化または推奨されている。
こうした食品におけるアレルギー物質の表示は、消費者にとっては極めて有用な情報である。その一方で、アレルギー体質の者にとっては当該食品自体の購入や摂取は敬遠される。このことから、アレルギー物質としての煩雑な表示を行う必要がなく、かつアレルギー体質の有無に関わらず、より多くの消費者が広く購入かつ摂取可能な食品として、当該食品の風味を一層高めることが所望されている。
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、低アレルゲンまたはアレルゲンフリーの状態で食品の風味の改良を行うことができる食品用風味改良剤およびそれを用いた食品の風味改良方法を提供することにある。
本発明は、エンドウタンパク質分解物を含有する食品用風味改良剤であって、
該エンドウタンパク質分解物が、0.1重量%の濃度を有する水溶液に調製した際に、該水溶液の表面張力が20℃で60mN/m以下である成分から構成されている、食品用風味改良剤である。
1つの実施形態では、上記成分は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が、1,000〜70,000の分子量範囲内のうち、12,000以下に分子量分布のピークを有するものである。
1つの実施形態では、上記成分は、エンドウタンパク質をエンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質分解酵素で処理したものである。
本発明はまた、食品用風味改良剤の製造方法であって、
エンドウタンパク質を含む懸濁液を調製する工程、
該懸濁液にタンパク質分解酵素を作用させる工程、
を包含し、
該タンパク質分解酵素がエンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素である、方法である。
1つの実施形態では、上記タンパク質分解酵素を作用させる工程は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が1,000〜70,000の分子量範囲内のうち、12,000以下に分子量分布のピークを有する成分を生じるまで行われる。
本発明はまた、食品原材料と上記食品用風味改良剤とを含有する、食品である。
本発明はまた、食品の風味を改良するための方法であって、上記食品用品質改良剤を食品原材料に添加する工程を含む、方法である。
本発明によれば、アレルギー物質としての表示が求められる原材料を用いることなく、食品の風味を改良することができる。これにより、当該風味が改良された食品を低アレルゲンまたはアレルゲンフリーの製品として、アレルギー体質であるか否かに関わらず、より広範な消費者に向けて提供することができる。
実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物と比較例1〜3の植物由来タンパク質分解物、比較例4の界面活性剤について、0.1重量%水溶液における表面張力を測定した結果を示すグラフである。 実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物についての、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のクロマトグラムを示す。 比較例1で得られた大豆タンパク質分解物についての、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーにより得られたクロマトグラムを示す。 比較例5、比較例6および実施例2で得られた麺つゆの官能評価結果を示すレーダーチャートである。 比較例7、比較例8および実施例3で得られたゴマ塩ふりかけの官能評価結果を示すレーダーチャートである。 比較例9、比較例10および実施例4で得られた生クリームの官能評価結果を示すレーダーチャートである。 比較例11、比較例12および実施例5で得られたラクトアイスの官能評価結果を示すレーダーチャートである。
(食品用風味改良剤)
本発明の食品用風味改良剤は、エンドウタンパク質分解物を含有する。
ここで、本明細書中に用いられる用語「食品」とは、生命維持または嗜好のためのヒトが経口摂取することのできる食べ物のうち、(1)固形のもの;(2)半固形の食べ物であって摂取にあたり必要に応じて咀嚼が行われるもの;(3)液体または半固体であって、それ自体が単独で摂取されるものではなく、これら固形の食べ物または半固形の食べ物と一緒に摂取されるもの;ならびに(4)それらの組み合わせ;を指して言う。例えば、「(2)半固形の食べ物であって摂取にあたり必要に応じて咀嚼が行われるもの」の例としては、ゼリー(菓子)、プリン、ババロア、パンナコッタなどが挙げられる。「(3)液体または半固体であって、それ自体が単独で摂取されるものではなく、これら固形の食べ物または半固形の食べ物と一緒に摂取されるもの」の例としては、麺つゆ、たれ、醤油、ソース、ポン酢、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング、バター、マーガリン、ジャム、コンデンスミルクなどが挙げられる。
また、本明細書で用いられる用語「食品用風味改良剤」とは、食品の風味を改変または向上させるために、食品を構成する他の原材料(以降、食品原材料ということがある)と配合(食品原材料への混合や付与を包含する)して使用される製剤を指して言う。本発明の食品用風味改良剤は、ヒトが摂取した際に口腔および鼻腔を通じて触覚、味覚および/または嗅覚により知覚することができる食品の風味を(当該改良剤を含有しない場合と比較して)改変または向上させるために使用することができる。より具体的には、本発明の食品用風味改良剤は、例えば、当該改良剤を含有するまたは含有しない同一の食品との対比において、呈味、臭気などの主に口腔および/または鼻腔内の味覚および/または嗅覚を通じて感知することができる食品の風味(例えば味質や香気)を改変または向上させるために使用され得る。
エンドウタンパク質分解物は、エンドウ(Pisum Sativum L.)に由来する成分、具体的にはエンドウ豆に特に豊富に含まれるエンドウタンパク質に由来する成分から構成されている。このような成分は、例えばエンドウタンパク質の加水分解物を含有する。
一般に、エンドウタンパク質は、エンドウ豆自体(例えば、その粉砕物や粉末を包含する)の形態、またはエンドウ豆から抽出されたエキスの形態、または当該エキスから単離されたタンパク質の形態で存在する。
本発明の食品用風味改良剤に含まれるエンドウタンパク質分解物(エンドウタンパク質の加水分解物)は、アミノ酸および/またはその改変物を主成分として含有する成分(物質)から構成されている。このような成分は、例えば、1種またはそれ以上のアミノ酸またはその改変物が重合したペプチドである。本発明において、エンドウタンパク質分解物は、種々の分子量(重量平均分子量)を有するペプチドを含むことができる。当該エンドウタンパク質分解物は、例えば、一群の種々の分子量の分解物(例えば、ペプチド群)から構成されている。
上記エンドウタンパク質分解物は、その構成成分によって食品の中で所定の界面活性作用を提供することができ、それにより得られる食品の風味を改良することができる。こうした界面活性作用の程度は、当該エンドウタンパク質分解物の水溶液を調製し、その表面張力の測定することにより把握することができる。
本発明において、エンドウタンパク質分解物は、0.1重量%の濃度を有する水溶液に調製した際に、当該水溶液が20℃で60mN/m以下、好ましくは45mN/m以上60mN/m以下、より好ましくは50mN/m以上60mN/m以下である表面張力を有する成分から構成されている。ここで、上記水溶液を調製する際に使用する水は特に限定されないが、例えば、蒸留水が挙げられる。水溶液の表面張力が60mN/mを上回る場合、そのような表面張力を有する成分で構成されるエンドウタンパク質分解物は、両親媒性分子でなくなり、界面活性作用がなくなるため、食品原材料との親和性に影響を及ぼし、それにより食品に対して所望の風味改良の効果を奏することが難しい。
さらに、本発明においては、エンドウタンパク質分解物を構成する成分は、例えば、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が、好ましくは1,000〜70,000の分子量範囲内、より好ましくは1,200〜68,000の分子量範囲内に分子量分布のピークを有する。後述するような様々な食品の風味改良剤として良好に機能することができるという理由から、エンドウタンパク質分解物を構成する成分はまた、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が、1,000〜70,000の分子量範囲内のうち、好ましくは12,000以下、より好ましくは11,000以下、さらにより好ましくは10,000以下に分子量分布のピークを有する。こうした分子量分布の測定にあたり採用され得るHPLCの測定条件は、例えば以下の通りである:
カラム:Superdex75 10/300GL
溶離液:0.05M Na−Pi(pH6.4)(0.15M NaCl含有)
温度:室温
流速:0.5ml/分
検出:UV214nm
注入:100μl
試料:0.1mg/ml。
エンドウタンパク質分解物は、例えば、上記ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーで観察されるピーク全面積に対して、分子量1,355〜35,000の範囲のピーク面積が好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の割合で含有される。エンドウタンパク質分解物は、例えば、上記ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーで観察されるピーク全面積に対して、分子量1,355〜12,000の範囲のピーク面積が好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上の割合で含有される。ピーク面積の算定は、例えば、「Image J」(米国国立衛生研究所(NIH)で開発されたオープンソースでパブリックドメインの画像処理ソフトウェア)を用いて行われ得る。エンドウタンパク質分解物は、上記ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーにおいて、分子量1,355未満のペプチドまたはアミノ酸をさらに含むものであってもよい。このような分子量分布を有する成分から構成されていることにより、エンドウタンパク質分解物はそれ自体が界面活性作用を示すことができ、食品原材料に対する風味改良をより効果的に行うことができる。
上記エンドウタンパク質分解物を構成する成分は、エンドウタンパク質を所定の酵素で処理したものである。このような酵素の例としては、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)、ペプチド分解酵素(ペプチダーゼ)などが挙げられる。さらに、食品の風味を効率よく改良することができるという理由から、エンドウタンパク質分解物を構成する成分は、上記エンドウ豆のようなエンドウの植物体をタンパク質分解酵素で処理したものであることが好ましい。タンパク質分解酵素の例としては、エンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼ、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。タンパク質分解酵素としては、細菌由来プロテアーゼ、カビ由来プロテアーゼ、パパイン、ブロメライン、トリプシン等が挙げられ、バチルス(Bacillus)属菌、アスペルギルス(Aspergillus)属菌由来のプロテアーゼが好ましい。
エンドウタンパク質をタンパク質分解酵素で処理する場合、例えば以下のようにして行われる。
まず、タンパク質分解酵素が良好に作用するために、エンドウタンパク質を含む懸濁液が調製される。この懸濁液は、例えば、適切な大きさに粉砕されたエンドウ豆の粉砕粒子、またはエンドウ豆から適切な溶媒を用いて予め抽出かつ単離されたエンドウタンパク質の粉末を、所定量の水(例えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、および水道水、ならびにそれらの組み合わせ)と合わせることにより調製される。
次いで、この懸濁液に上記タンパク質分解酵素を添加することにより、当該懸濁液にタンパク質分解酵素が作用させられる。タンパク質分解酵素として、例えば、エンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼの両方が用いられる場合、懸濁液に添加される各プロテアーゼの順序は特に限定されない。例えば懸濁液に対して、エンド型プロテアーゼが添加された後にエキソ型プロテアーゼが添加されてもよい。あるいは、懸濁液に対して、エキソ型プロテアーゼが添加された後にエンド型プロテアーゼが添加されてもよい。あるいは、懸濁液に対して、エンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼの混合物(予め混合したもの)が一緒に添加されてもよい。
懸濁液へのタンパク質分解酵素の作用は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が好ましくは1,000〜70,000の分子量範囲内、より好ましくは1,200〜68,000の分子量範囲内に分子量分布のピークを有する成分を生じるまで行われる。特に様々な食品の風味改良剤として良好に機能することができるという理由から、上記懸濁液へのタンパク質分解酵素の作用は、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が、1,000〜70,000の分子量範囲内のうち、好ましくは12,000以下、より好ましくは11,000以下、さらにより好ましくは10,000以下に分子量分布のピークを有する成分を生じるまで行われる。
あるいは、上記懸濁液へのタンパク質分解酵素の作用にあたり、酵素処理の条件(例えば、使用酵素の種類および加水分解のための酵素処理時間、処理温度、処理pH)は当業者によって任意に設定され得る。酵素処理のために設定され得る温度は例えば40℃〜70℃であり、酵素処理のために設定され得る時間は例えば1時間〜6時間である。処理pHは使用酵素の種類に依存するが、例えば4.5〜7.5である。
本発明の食品用風味改良剤は、固形剤または液剤の剤形で調製され得、必要に応じて、製剤化助剤および賦形剤などの食品添加製剤の製造上許容され得る他の成分をさらに含有してもよい。固形剤は、好ましくは粉末剤である。例えば、上記エンドウタンパク質分解物を、水またはエタノール水溶液などの適切な媒体を用いて液状の形態に調製した後、例えばスプレードライによって粉末化したものであってもよい。本発明の食品用風味改良剤における上記他の成分の含有量は特に限定されず、上記エンドウタンパク質分解物が有する食品への風味改良効果を阻害しない程度の適切な量が当業者によって適宜選択され得る。
(食品)
本発明の食品は、食品原材料および上記食品用風味改良剤を含有する。
ここで、本明細書で用いられる用語「食品原材料」とは、食品を構成し得る原材料全般を包含し、例えば、素材、原料などを包含して言う。食品原材料は、例えば、生鮮食品(例えば、野菜、果実)のようにそれ自体が単独でもヒトにより摂取され得るもの、ならびに小麦粉、精米のようにそれ自体では通常ヒトにより摂取されることはないものの、調理または加工を通じて摂取可能となるもののいずれをも包含する。
食品に含まれる上記食品用風味改良剤の含有量は、共存する食品原材料の種類、食品に求められる風味の内容とその改変または改良の程度などによって変動するため、必ずしも限定されないが、例えば食品原材料100重量部(混合等が行われる前の最初の重量)に対して、例えば0.001重量部〜10重量部、好ましくは0.01重量部〜5重量部である。食品原材料に対して食品用風味改良剤が上記範囲内で含有されていることにより、得られる食品は、当該食品用風味改良剤を含有しないものと比較して効果的に風味の改良効果を発揮し得る。
本発明の食品において、食品用風味改良剤は、得られる食品全体に対して略均質の風味の改良を行うために食品原材料と例えば略均一となるように混合されていてもよい。混合の方法については、例えば、共存する食品原材料の種類、食品の製造手順などの要因に依存するが、混和、混捏、練り込む、まぶす、溶解、予め調製した水溶液の添加等の任意の操作を通じて行われる。より具体的には、混合は、例えば、ミキサーを用いる撹拌またはホイッパーを用いるホイップ(撹拌して泡立て)によって行われてもよく、あるいはへらなどを用いた撹拌によって行われてもよい。この混合を行う際の温度は、使用する食品原材料の種類に応じて、室温、加熱下、冷却下のいずれかが選択され得る。
本発明の食品は、例えば、その製造過程に撹拌を含む食品であり、さらに加熱を通じて製造される食品(本明細書中では、「加熱食品」ともいう)であってもよい。「加熱」とは、材料に熱が加わる任意の方法、例えば、フライ(油調)、焼成、煮るなどの調理による加熱を包含する。
本発明の食品としては、菓子類(例えば、洋菓子、和菓子、中華菓子、氷菓子など)、パン類、フライ食品類、水産練り製品、畜肉加工品、米飯加工品、麺類、乳製品・チーズ製品、スープ類、麺つゆ、香辛料系製品(例えば、唐辛子系食品、カレー系食品)、調味料(例えば、わさび、おろししょうが、からし、生にんにく))、ソース類なども挙げられる。あるいは、本発明の食品は、製造された食品またはその生地などが冷凍または半冷凍の状態であってもよく、そのような冷凍または半冷凍食品も包含する。具体的な例としては、フライ食品に用いられるバッターミックス、および例えば、アメリカンドックミックス粉、ホットケーキミックス粉などの食品ミックス粉もまた挙げられる。例えば、フライ食品のためのバッター、またはアメリカンドックミックス粉を用いたバッターの調製の際には、その原材料の撹拌混合がなされ得る。例えば、ホットケーキミックス粉を用いて生地を調製する際に、その材料の撹拌混合がなされ得る。
本発明の食品は、食品用風味改良剤を含有しない同一種類の食品と比較して、例えば、食品の味質(例えば、甘味、塩味、酸味、苦味、辛味、旨味)、香気などの風味を改良し得る。具体的には、例えば、味質および/または香気の強弱や、味質および/または香気の持続性が変動し得る。
このように、上記食品用風味改良剤は、食品の風味を改良するために食品原材料に添加して使用され得る点で有用である。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1:エンドウタンパク質分解物粉末および各種画分の調製)
水道水に分散させたエンドウタンパク質粉末をプロペラミキサーにセットして撹拌しながら、ウォーターバスで加温して、エンドウタンパク質の懸濁液を得た。液温が50℃に達した際にこの懸濁液に塩酸を添加してpH5.3〜5.5に調整した。次いで、懸濁液中のエンドウタンパク質粉末に対して、エンド型プロテアーゼ(バチルス属菌由来プロテアーゼ)を1重量%の濃度となるように投入し、かつエンド型+エキソ型プロテアーゼ(アスペルギルス属由来プロテアーゼ)を0.1重量%の濃度となるように投入して、50℃にて3時間作用させた。その後、液温を90℃まで昇温し、90℃で15分間プロペラミキサーで撹拌することにより酵素を失活させた。失活後、液温を50℃まで冷却し、活性炭を投入し、生じたタンパク質分解物を精製した。精製後、珪藻土を用いて濾過して水溶性部分を回収した。回収したろ液を濃縮した後、90℃で15分間加熱殺菌し、スプレードライにより粉末化して、エンドウタンパク質分解物の粉末を得た。
(検討例1:表面張力測定)
下記試験区の各サンプルについて、蒸留水を用いて0.1重量%水溶液を調製した。この水溶液の表面張力を自動表面張力計(協和界面科学株式会社製DY−300)にて20℃で3回ずつ測定し、それらの平均値を算出した。なお、ブランクには蒸留水のみを用いた。
(試験区)
・実施例1:エンドウタンパク質分解物 0.1重量%水溶液
・比較例1:大豆タンパク質分解物 0.1重量%水溶液
・比較例2:小麦タンパク質分解物 0.1重量%水溶液
・比較例3:とうもろこしタンパク質分解物 0.1重量%水溶液
・比較例4:ショ糖脂肪酸エステル(構成脂肪酸:ステアリン酸70重量%+パルミチン酸30重量%、モノエステル体含量70重量%、HLB15の界面活性剤) 0.1重量%水溶液
ここで、比較例1、2および3の大豆タンパク質分解物、小麦タンパク質分解物およびとうもろこしタンパク質分解物として、天然調味料として上市されている低分子量(分子量6,500以下)の植物性タンパク質分解物品を用いた。
表面張力の測定結果を以下の表1および図1に示す。
Figure 2021164437
表1および図1に示されるように、実施例1のエンドウタンパク質分解物粉末を含む水溶液は、比較例4の界面活性剤を用いた場合と同様に、比較例1〜3の他の植物性タンパク質分解物を用いた場合よりも表面張力が低下していたことを確認した。これに対し、比較例1〜3の結果はブランクのものと数値に大差が見られなかった。このことから、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物は比較例4の界面活性剤と同等の表面張力低下作用を有することが確認できた。
(検討例2:分子量分布)
実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物について、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Waters社製(型番)2695 Separation Modul)により、分子量分布(重量平均分子量(Mw)基準)を測定した。分子量(Mw)マーカーとして、ウシ血清アルブミン(BSA)(分子量66,338)、オボアルブミン(分子量45,000)、β−ラクトグロブリン(分子量35,000)、ミオグロビン(分子量17,000)、シトクロームC(分子量12,000)、アプロチニン(分子量6,511)、ビタミンB12(分子量1,355)の7種類を使用した。HPLCの測定条件は、カラム:Superdex75 10/300GL(GEヘルスケア社製)、溶離液:0.05M Na−Pi(pH6.4)(0.15M NaClを含有)、温度:室温、流速:0.5ml/分、検出:UV214nm、注入:100μl、試料:0.1mg/mlであった。
なお、比較例1の大豆タンパク質分解物粉末についても、同様に分子量分布(重量平均分子量(Mw)基準)を測定した。
図2は、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物について、上記HPLCにより得られたクロマトグラムを示す。クロマトグラムより、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物については、分子量分布において分子量1,355〜分子量35,000の範囲の分布が見られた。実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物では、NIHのImage Jによれば、上記HPLCのクロマトグラフィーで観察されるピーク全面積に対して、分子量1,355〜35,000の範囲のピーク面積が93%の割合で含まれていた。
図3は、比較例1の大豆タンパク質分解物粉末について、上記HPLCにより得られたクロマトグラムを示す。クロマトグラムより、比較例1の大豆タンパク質分解物粉末については、分子量分布において分子量1,355〜分子量6,511の範囲の分布が見られた。また、クロマトグラムより、比較例1の大豆タンパク質分解物粉末では、より小さな分子量(分子量1,355未満)の分子量分布も見られた。
(検討例3:食品における風味向上効果)
実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を配合した種々の食品の効果を調べた。
具体的には、まず、以下の(3−1)〜(3−4)のようにして作製した食品(配合後の麺つゆ、ゴマ塩ふりかけ、生クリームおよびラクトアイス)うち、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物または比較例1の大豆タンパク質分解物のいずれをも添加しなかったもの(比較例5、7、9および11)をコントロールに設定した。次いで、各食品のコントロールをパネラー10名が実際に喫食し、「基本五味」(甘味、塩味、酸味、苦味およびうま味)、「風味の広がり」ならびに「乳風味」のそれぞれについて感じた結果(評価得点)を4.0点にすることにした。その後、他の実施例および比較例の食品を喫食し、JIS Z 9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定による比率尺度を用いる7段階尺度(表2)からそれぞれの評価得点を決定し、各パネラーによる評価点数の平均点(小数点以下は四捨五入した)を算出した。
Figure 2021164437
(3−1:麺つゆにおける風味向上確認試験)
下記表3の配合にて麺つゆを調製し、官能評価を行った。「基本五味」と「風味の広がり」を指標とし、比較例5の結果が4点であったとみなして表2の評価基準をもとに評価した。評価結果を表4および図4に示す。
Figure 2021164437
Figure 2021164437
表4および図4に示されるように、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加することにより(実施例2)、甘味や塩味、うま味、風味の広がりが向上し、麺つゆの風味向上を確認することができた。特に、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加すると(実施例2)、塩味や風味の広がりが特に向上することを確認することができた。
(3−2:ゴマ塩ふりかけにおける風味向上確認試験)
下記表5の配合にてゴマ塩ふりかけを調製し、官能評価を行った。「基本五味」と「風味の広がり」を指標とし、比較例7の結果が4点であったとみなして表2の評価基準をもとに評価した。評価結果を表6および図5に示す。
Figure 2021164437
Figure 2021164437
表6および図5に示されるように、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加することにより(実施例3)、塩味や風味の広がりが向上し、ゴマ塩ふりかけの風味向上効果が確認できた。特に、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加すると(実施例3)、塩味や風味の広がりが特に向上することを確認することができた。
(3−3:生クリームにおける風味向上確認試験)
下記表7の配合の市販生クリーム(純乳脂35%)にグラニュー糖を加え、ハンドミキサーで6分間泡立てた。ホイップしたクリームのタンパク質分解物を添加、混合した後、官能評価を行った。「基本五味」と「乳風味」を指標とし、比較例9の結果が4点であったとみなして表2の評価基準をもとに評価した。評価結果を表8および図6に示す。
Figure 2021164437
Figure 2021164437
表8および図6に示されるように、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加することにより(実施例4)、甘味や乳風味が向上し、生クリームの風味向上効果を確認することができた。特に、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加すると(実施例4)、甘味や乳風味が特に向上することを確認することができた。
(3−4:ラクトアイスにおける風味向上確認試験)
下記表9の配合の市販のラクトアイスを5℃にてスパーテルで混ぜられる程度まで溶解し、タンパク質分解物を添加、混合した。混合後、プラスチックカップに充填して−35℃にて3時間冷凍した。凍らせた試料について官能評価を行い、「基本五味」と「乳風味」を指標とし、比較例11の結果が4点であったとみなして表2の評価基準をもとに評価した。評価結果を表10および図7に示す。
Figure 2021164437
Figure 2021164437
表10および図7に示されるように、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加することにより(実施例5)、甘味や乳風味が向上し、ラクトアイスの風味向上効果を確認することができた。特に、実施例1で得られたエンドウタンパク質分解物を添加すると(実施例5)、甘味や乳風味が特に向上することを確認することができた。
本発明は、例えば、食品添加剤および食品の製造分野、ならびに食品加工分野において有用である。

Claims (7)

  1. エンドウタンパク質分解物を含有する食品用風味改良剤であって、
    該エンドウタンパク質分解物が、0.1重量%の濃度を有する水溶液に調製した際に、該水溶液の表面張力が20℃で60mN/m以下である成分から構成されている、食品用風味改良剤。
  2. 前記成分が、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が、1,000〜70,000の分子量範囲内のうち、12,000以下に分子量分布のピークを有するものである、請求項1に記載の食品用風味改良剤。
  3. 前記成分が、エンドウタンパク質をエンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質分解酵素で処理したものである、請求項1または2に記載の食品用風味改良剤。
  4. 食品用風味改良剤の製造方法であって、
    エンドウタンパク質を含む懸濁液を調製する工程、
    該懸濁液にタンパク質分解酵素を作用させる工程、
    を包含し、
    該タンパク質分解酵素がエンド型プロテアーゼおよびエキソ型プロテアーゼからなる群から選択される少なくとも1つの酵素である、方法。
  5. 前記タンパク質分解酵素を作用させる工程が、ゲル濾過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーによる重量平均分子量基準の分子量分布測定により得られるクロマトグラム曲線が1,000〜70,000の分子量範囲内のうち、12,000以下に分子量分布のピークを有する成分を生じるまで行われる、請求項4に記載の方法。
  6. 食品原材料と請求項1から3のいずれかに記載の食品用風味改良剤とを含有する、食品。
  7. 食品の風味を改良するための方法であって、請求項1から3のいずれかに記載の食品用品質改良剤を食品原材料に添加する工程を含む、方法。
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