しかし、特許文献1に記載された構成では、2つのブレーキキャリパのそれぞれにスイングアームに固定するためのステー部材が設けられているため、ブレーキキャリパの配設スペースや部品点数が増加しやすいという課題があった。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、常用ブレーキキャリパおよびパーキングブレーキキャリパの配設スペースおよび部品点数を低減することができる車両の後輪ブレーキ装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明は、車両(1)の後輪(WR)と一体回転するブレーキディスク(36,36a)と、前記後輪(WR)を回転自在に軸支するスイングアーム(20)に支持されて前記ブレーキディスク(36)を制動する常用ブレーキキャリパ(50)およびパーキングブレーキキャリパ(90,150)とを有する車両の後輪ブレーキ装置において、前記常用ブレーキキャリパ(50)および前記パーキングブレーキキャリパ(90,150)は、前記スイングアーム(20)に支持されるステー部材(40,100)に固定されており、前記常用ブレーキキャリパ(50)および前記パーキングブレーキキャリパ(90,150)の少なくとも一部が、前記後輪(WR)の車軸(37)より車体前方かつ車体上方の位置に配設されている点に第1の特徴がある。
また、前記常用ブレーキキャリパ(50)に、該常用ブレーキキャリパ(50)を前記ステー部材(40)に固定するための第1ボス(54)が設けられており、前記パーキングブレーキキャリパ(90)に、該パーキングブレーキキャリパ(90)を前記ステー部材(40)に固定するための第3ボス(93)が設けられており、前記第3ボス(93)が前記第1ボス(54)の下方に配設されており、前記第1ボス(54)および前記第3ボス(93)の少なくとも一部が、前記車軸(37)の中心点(O)を通過する同一の直線(L)上に位置する点に第2の特徴がある。
また、前記常用ブレーキキャリパ(50)に、該常用ブレーキキャリパ(50)を前記ステー部材(40)に固定するための第2ボス(55)と、前記ブレーキディスク(36)にブレーキパッド(95)を押圧するためのピストン(57)とが設けられており、前記第2ボス(55)が、前記ピストン(57)を挟んで、前記パーキングブレーキキャリパ(90)の前記第3ボス(93)に対向する位置に設けられており、前記第2ボス(55)を前記ステー部材(40)に固定するための固定部材(55a)を取り外すことで、前記第1ボス(54)部分を揺動中心として、前記常用ブレーキキャリパ(50)が前記パーキングブレーキキャリパ(90)側に揺動可能に構成されている点に第3の特徴がある。
また、前記ステー部材(40)に、前記車軸(37)の車体前方の位置で前記スイングアーム(20)の位置決め突起(20a)に係合する係合部(40d)が設けられており、前記常用ブレーキキャリパ(50)、前記パーキングブレーキキャリパ(90)および前記係合部(40d)が、前記車軸(37)の中心点(O)を基準とした略90度の範囲内に、車体前方側から、前記係合部(40d)、パーキングブレーキキャリパ(90)、常用ブレーキキャリパ(50)の順で配置されている点に第4の特徴がある。
さらに、前記スイングアーム(20)は、前記車両(1)の車体フレーム(3)に対して揺動可能に軸支されており、前記車体フレーム(3)側に、エンジン(17)の燃焼ガスを排出するマフラ(24)が取り付けられており、前記常用ブレーキキャリパ(50)および前記パーキングブレーキキャリパ(90)が、前記スイングアーム(20)の揺動時に、車体側面視で、前記マフラ(24)によって覆われる点に第5の特徴がある。
第1の特徴によれば、前記常用ブレーキキャリパ(50)および前記パーキングブレーキキャリパ(90,150)は、前記スイングアーム(20)に支持されるステー部材(40,100)に固定されており、前記常用ブレーキキャリパ(50)および前記パーキングブレーキキャリパ(90,150)の少なくとも一部が、前記後輪(WR)の車軸(37)より車体前方かつ車体上方の位置に配設されているので、同一のブレーキディスクを制動する2つブレーキキャリパを、車軸の車体前方上方の位置で同一のステー部材に配置することで、ステー部材の小型軽量化を図ると共に、2つのブレーキキャリパの下方をスイングアームで保護することが可能となる。また、例えば、2つのブレーキキャリパをスイングアームの上下に分散配置する構成に比して、レバーやペダル等ブレーキ操作子とブレーキキャリパとを連結する配管やケーブルを短くすることができる。
第2の特徴によれば、前記常用ブレーキキャリパ(50)に、該常用ブレーキキャリパ(50)を前記ステー部材(40)に固定するための第1ボス(54)が設けられており、前記パーキングブレーキキャリパ(90)に、該パーキングブレーキキャリパ(90)を前記ステー部材(40)に固定するための第3ボス(93)が設けられており、前記第3ボス(93)が前記第1ボス(54)の下方に配設されており、前記第1ボス(54)および前記第3ボス(93)の少なくとも一部が、前記車軸(37)の中心点(O)を通過する同一の直線(L)上に位置するので、2つのキャリパによる車体前後方向および上下方向の寸法を低減することができる。詳しくは、後輪車軸の中心点を基準とした円弧を想定した場合に、径方向および周方向において後輪ブレーキ装置全体の小型化を図ることができる。
第3の特徴によれば、前記常用ブレーキキャリパ(50)に、該常用ブレーキキャリパ(50)を前記ステー部材(40)に固定するための第2ボス(55)と、前記ブレーキディスク(36)にブレーキパッド(95)を押圧するためのピストン(57)とが設けられており、前記第2ボス(55)が、前記ピストン(57)を挟んで、前記パーキングブレーキキャリパ(90)の前記第3ボス(93)に対向する位置に設けられており、前記第2ボス(55)を前記ステー部材(40)に固定するための固定部材(55a)を取り外すことで、前記第1ボス(54)部分を揺動中心として、前記常用ブレーキキャリパ(50)が前記パーキングブレーキキャリパ(90)側に揺動可能に構成されているので、常用ブレーキキャリパをステー部材に固定するための2つのボスが、ピストンを挟んで対向する位置に離間して配置されることにより、ステー部材に対しての締結剛性を高めることができる。また、第1ボス部分を中心に常用ブレーキキャリパを揺動させることができるため、常用ブレーキキャリパをステー部材から取り外すことなくブレーキパッドの交換が可能となる。
第4の特徴によれば、前記ステー部材(40)に、前記車軸(37)の車体前方の位置で前記スイングアーム(20)の位置決め突起(20a)に係合する係合部(40d)が設けられており、前記常用ブレーキキャリパ(50)、前記パーキングブレーキキャリパ(90)および前記係合部(40d)が、前記車軸(37)の中心点(O)を基準とした略90度の範囲内に、車体前方側から、前記係合部(40d)、パーキングブレーキキャリパ(90)、常用ブレーキキャリパ(50)の順で配置されているので、円形のブレーキディスクに係る3つの要素を、中心点を基準とした所定範囲内に配置することで、スペースを有効活用した効率のよいレイアウトが実現できる。これにより、ステー部材の小型化を図りつつ、ブレーキディスクの制動時にステー部材に作用する荷重を、ステー部材の全体で受けることが可能となる。
第5の特徴によれば、前記スイングアーム(20)は、前記車両(1)の車体フレーム(3)に対して揺動可能に軸支されており、前記車体フレーム(3)側に、エンジン(17)の燃焼ガスを排出するマフラ(24)が取り付けられており、前記常用ブレーキキャリパ(50)および前記パーキングブレーキキャリパ(90)が、前記スイングアーム(20)の揺動時に、車体側面視で、前記マフラ(24)によって覆われるので、荒地走行等でスイングアームが大きく揺動した際には、2つのブレーキキャリパの側方に路面の段差や石等の障害物が近づくことが考えられるが、マフラによってブレーキキャリパの側方が覆われることで、ブレーキキャリパを保護することが可能となる。これにより、ブレーキキャリパの保護カバーが不要となり、重量およびコストを低減することができる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両の後輪ブレーキ装置を適用した自動二輪車1の右側面図である。自動二輪車1は、動力源としてのエンジン17の駆動力を後輪WRに伝達して走行するデュアルパーパスタイプの鞍乗型車両である。
車体フレームを構成する車体フレーム3の車体前方端部には、不図示のステアリング軸を揺動自在に軸支するヘッドパイプ5が設けられている。前輪WFを回転自在に軸支する左右一対のフロントフォーク13は、ヘッドパイプ5の上下でステアリング軸に固定されたトップブリッジ6およびボトムブリッジ11によって支持されている。トップブリッジ6の上部には操向ハンドル4が固定されている。前輪WFには、ブレーキディスク23およびブレーキキャリパ22からなる前輪ブレーキ装置が設けられている。
エンジン17は車体フレーム3の下部に配設されており、車体フレーム3の後端下部には、後輪WRを回転自在に軸支するスイングアーム20の前端部を揺動自在に軸支するピボット18が配設されている。スイングアーム20は、ピボット18の後方の位置で、リヤクッション44によって車体フレーム3に吊り下げられている。ピボット18の下方には左右一対の足乗せステップ31が取り付けられている。
ホイール部材32の外周部にタイヤ部材を係合してなる後輪WRの車幅方向右側には、ブレーキディスク36、常用ブレーキキャリパ50およびパーキングブレーキキャリパ90からなる後輪ブレーキ装置が配設されている。主に走行中の制動力を発生させる常用ブレーキキャリパ50は、ブレーキペダル38の操作によってマスタシリンダ39に発生した油圧をブレーキホース41によって伝達する油圧式とされる。一方、停車中に後輪WRの回転を禁止するパーキングブレーキキャリパ90は、操向ハンドル4に設けられたパーキングブレーキ操作子43に連結されたブレーキケーブル42の牽引力で作動する機械式とされる。
操向ハンドル4の前方は、ヘッドライト12およびスクリーン8を支持するフロントカウル9で覆われている。フロントフォーク13には、前輪WFの上部を覆うフロントフェンダ14が固定されている。操向ハンドル4とシート29との間には、車体フレーム3に固定される燃料タンク2が配設されている。車体フレーム3の後部には、車体後方上方に延びるシートフレーム45が連結されている。シートフレーム45には、サイドカバー28、グラブバー27および左右一対のタンデムステップ30が固定されている。サイドカバー28の後方には、尾灯装置26およびリヤフェンダ25が配設されている。
エンジン17の燃焼ガスは、車幅方向右側のマフラ24から排出される。マフラ24は、長手方向中央の位置でシートフレーム45に固定されている。マフラ24の上部には、防熱板としてのカバー部材24aが取り付けられている。車体フレーム3のピボット18を中心に揺動自在とされるスイングアーム20は、自動二輪車1を空荷で直立させた空車1G状態において、水平線Hに対して車体下方側に所定の垂れ角(例えば、下方に10度)を有するように構成されている。
図2は、後輪ブレーキ装置の構成を示す拡大図である。また、図3はステー部材40に2つのブレーキキャリパ50,90を固定した状態の拡大図である。鉛直線Vは、図1にも示した水平線Hに対して垂直な線である。所定の厚みを有するアルミ等の金属板からなるステー部材40は、スイングアーム20の車幅方向右側のアームとブレーキディスク36との間に配設されている。ステー部材40は、右側のアームの内側面に形成された位置決め突起20aに対して係合部40dが係合すると共に、フランジ部40aに設けられた貫通孔40bを車軸37が貫通することで、所定の位置に保持される。
常用ブレーキキャリパ50には、ブレーキホース41の端部に接続されるバンジョー51がバンジョーボルト52によって固定されている。ブレーキペダル38の操作に応じてブレーキホース41から油圧が伝達されると、油圧ピストン57が車幅方向内側に摺動してブレーキパッド56をブレーキディスク36に押し付ける。
常用ブレーキキャリパ50は、車体前方側の第1ボス54および車体後方側の第2ボス55によってステー部材40の上部に固定されている。詳しくは、第1ボス54の部分では、第1ボス54を貫通する第1固定部材54aによってステー部材40に対して回転可能に支持され、一方、第2ボス55の部分では、第2ボス55を貫通する第2固定部材55aによってステー部材40に固定されている。常用ブレーキキャリパ50の上端後部には、エア抜き用のブリーダバルブ53が設けられている。
パーキングブレーキキャリパ90は、パーキングブレーキ操作子43に連結されるブレーキケーブル42が、アーム部材91を揺動させることでブレーキパッド95を作動させる機械式とされる。詳しくは、アーム部材91の揺動軸92に多条ねじ部材(図5参照)が接続されており、この多条ねじ部材が回転運動を往復運動に変換することで、ブレーキパッド95をブレーキディスク36に押し付ける構成とされている。パーキングブレーキキャリパ90は、車体後方側に形成された2つの第3ボス93,94を貫通する締結部材93a,94aによってステー部材40に固定されている。
ステー部材40の前側縁部には、ブレーキケーブル42を支持するケーブル支持部40eが設けられており、車軸37が貫通するフランジ部40aの前方には、車速センサの取付ボス40cが設けられている。なお、本実施形態に係るパーキングブレーキキャリパ90は、ブレーキ作動の遊び調整を、パーキングブレーキ操作子43の揺動部分でブレーキケーブル42の引き量を調整することで実行する構造とされている。
本実施形態に係る後輪ブレーキ装置では、常用ブレーキキャリパ50の第1ボス54の下方にパーキングブレーキキャリパ90の2つの第3ボス93,94が位置している。さらに、上側の第3ボス93および第1ボス54が、それぞれブレーキディスク36の中心点O(車軸37の中心点O)を通過する径方向の直線Lと重なる位置に配設されている。
上記したような構成によれば、単一のステー部材40に2つのブレーキキャリパ50,90を固定することで、ステー部材40の小型軽量化を可能となる。また、2つのブレーキキャリパ50,90が、車軸37の車体前方上方の位置に近接配置されることで、後輪ブレーキ装置の車体前後方向の寸法を低減すると共に、2つのブレーキキャリパ50,90の下方をスイングアーム20で保護することが可能となる。
特に、本実施形態では、上側の第3ボス93および第1ボス54が、それぞれ車軸37の中心点Oを通過する径方向の直線Lと重なる位置に配設されていることから、中心点Oを基準とした円弧を想定した場合に、径方向および周方向において後輪ブレーキ装置全体の小型化を図ることができる。また、例えば、2つのブレーキキャリパ50,90をスイングアーム20の上下に分散配置する構成に比して、ブレーキホース41およびブレーキケーブル42の長さを短縮できると共に、両者をスイングアーム等に支持するためのステーも削減できる。
さらに、2つのブレーキキャリパ50,90および係合部40dは、車軸37の中心点Oを基準とした円弧を想定した場合に、単一の円弧C上に重なる位置に配設されている。詳しくは、車体前方側から、係合部40d、パーキングブレーキキャリパ90、常用ブレーキキャリパ50の順で、90度の範囲内、換言すれば、中心角90度の扇形に収まるように配設されている。このように、円形のブレーキディスク36に係る3つの要素を、中心点Oを基準とした円弧Cに対応させて配置することで、スペースを有効活用した効率のよいレイアウトを可能としている。これにより、ステー部材40の小型化を図りつつ、常用ブレーキキャリパ50による制動時にステー部材40に作用する荷重を、ステー部材40の全体で受けることも可能としている。
図4は、常用ブレーキキャリパ50の揺動状態を示す説明図である。前記したように、常用ブレーキキャリパ50は、第1ボス54の部分では、第1ボス54を貫通する第1固定部材54aによってステー部材40に対して回転可能に支持されており、一方、第2ボス55の部分では、第2ボス55を貫通する第2固定部材55aによってステー部材40に固定されている。このため、常用ブレーキキャリパ50は、第2固定部材55aをステー部材40のねじ孔40fから取り外すことで、第1ボス54の部分を中心として車体前方側、すなわち、パーキングブレーキキャリパ90側に揺動させることができる。これにより、1つの固定部材を取り外すだけでブレーキパッド56の着脱が可能となり、メンテナンス性が高められている。
図5は、図3のV−V線断面図である。揺動アーム91の車幅方向内側には、ブレーキケーブル42の端部に固定される円筒部材を保持するための保持部材91aが固定されている。揺動アーム91は、揺動軸92に対してナット80で回転不能に固定されている。揺動軸92の車幅方向内側には、揺動軸92と同軸の多条ねじ体98が固定されており、パーキングブレーキキャリパ90側には、この多条ねじ体98と螺合するめねじ98aが形成されている。なお、多条ねじには、4条ねじ等を適用することができる。揺動アーム91の裏面側には、ねじ部分を保護するダストカバー81が設けられている。
前記したように、揺動アーム91を車体前方側に揺動させると、多条ねじ体98に連結された押圧部材99が車幅方向内側に移動する。押圧部材99の大径部は、オイルシール82およびダストシール83に接することで砂等の侵入を防いでいる。パッド押圧部材99は、ブレーキライニング95aを有するブレーキパッド95に直接固定されている。また、ブレーキディスク36の車幅方向内側に接するブレーキライニング96aも、パーキングブレーキキャリパ90の車幅方向内側にボルト97によって取り付けられる支持部材96に直接固定されている。これは、ブレーキライニングの消耗が少ないパーキングブレーキでは、ブレーキパッドの交換を想定していないためである。
図6は、自動二輪車1の一部拡大側面図である。また、図7は図1のVII−VII線断面図であり、図8は図7の状態からスイングアーム20が大きく揺動した場合の断面図である。本実施形態では、ホイール部材32の車幅方向右側にブレーキディスク36が固定されており、ホイール部材32の車幅方向左側には、エンジン17の駆動力を後輪WRに伝達するドライブチェーン34を巻きかけるドリブンスプロケット35が固定されている。ドライブチェーン34の上方は、スイングアーム20に取り付けられたチェーンカバー33によって覆われている。消音パイプ24bを内蔵するマフラ24の車幅方向内側の壁面は、車体上下方向に指向する平面状とされている。
図6,8では、ジャンプ後の着地等によってスイングアーム20が大きく揺動した状態を示している。本実施形態では、スイングアーム20が大きく揺動した際に、車体側面視において、常用ブレーキキャリパ50およびパーキングブレーキキャリパ90の両方が、マフラ24によって覆われるように構成されている。
これは、特に、荒地走行等でスイングアーム20が大きく揺動した際には、2つのブレーキキャリパ50,90の側方に路面の段差や石等の障害物が近づくことが考えられるところ、マフラ24で覆うことでブレーキキャリパ50,90の側方を保護することを可能としている。これにより、ブレーキキャリパ50,90の保護カバーが不要となり、部品点数およびコストの低減が可能となる。
本実施形態では、パーキングブレーキキャリパ90の後方上方に常用ブレーキキャリパ90が配置されていることから、スイングアーム20が大きく揺動した際に、車体後上がりに指向するマフラ24の下縁によって両ブレーキキャリパ50,90がちょうど覆われることとなり好ましい。
図9は、本発明の第2実施形態に係る後輪ブレーキ装置の説明図である。また、図10は図9のX−X線断面図である。本実施形態では、車軸37が貫通するフランジ部101やスイングアーム20の車幅方向内側面に形成された位置決め突起20aに係合する係合部102を有するステー部材100の上部に、常用ブレーキキャリパ50およびパーキングブレーキキャリパ150を固定することで後輪ブレーキ装置が構成されている。
ここで、本実施形態に係るブレーキディスク36aには、常用ブレーキキャリパ50による制動面の内側に、円環状のブレーキライニング36bが直接取り付けられている。そして、揺動アーム151を揺動させることで作動するパーキングブレーキキャリパ150は、ブレーキディスク36aと同様のステンレス等からなるピストン156をブレーキライニング36bに押し付けることで制動力を発生するように構成されている。
図10を参照して、パーキングブレーキキャリパ150の車体下方側には、ステー部材100に固定するための延出部153が形成されている。揺動アーム151の車幅方向内側には、ブレーキケーブル42の端部に固定される円筒部材を保持するための保持部材151aが取り付けられている。揺動アーム151は、揺動軸152に対してナット159によって回転不能に固定されている。揺動軸152の車幅方向内側には、揺動軸152と同軸の多条ねじ体154が固定されており、パーキングブレーキキャリパ150側には、この多条ねじ体154と螺合するめねじ154aが形成されている。
揺動アーム151を車体前方側に揺動させると、多条ねじ体154に連結された押圧部材155が車幅方向内側に移動する。押圧部材155の端部に設けられたピストン156は、シール部材158に接することで砂等の侵入を防いでいる。また、ブレーキディスク36aの車幅方向内側面にも円環状のブレーキライニング36bが直接取り付けられており、こちら側のブレーキライニング36bは、パーキングブレーキキャリパ150の内側壁部材159に埋設された金属製のピストン157に押し付けられる。
上記したように、本発明に係る後輪ブレーキ装置によれば、後輪WRと一体回転するブレーキディスク36,36aと、後輪を回転自在に軸支するスイングアーム20に支持されてブレーキディスク36,36aを制動する常用ブレーキキャリパ50およびパーキングブレーキキャリパ90,150とを有する車両の後輪ブレーキ装置において、常用ブレーキキャリパ50およびパーキングブレーキキャリパ90,150が、スイングアーム20に支持される単一のステー部材40,100に固定されており、常用ブレーキキャリパ50およびパーキングブレーキキャリパ90,150の少なくとも一部が、後輪WRの車軸37より車体前方かつ車体上方の位置に配設されているので、同一のブレーキディスクを制動する2つブレーキキャリパを、車軸37の車体前方上方の位置で同一のステー部材40,100に配置することで、ステー部材40,100の小型軽量化を図ると共に、2つのブレーキキャリパの下方をスイングアームで保護することが可能となる。
なお、常用ブレーキキャリパおよびパーキングブレーキキャリパの形状や構造、スイングアームの形状や構造、ステー部材の形状、2つのブレーキキャリパの配置関係、第1ボス、第2ボスおよび第3ボスの形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。本発明に係る車両の後輪ブレーキ装置は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三/四輪車等の各種車両等に適用することが可能である。
前記したように、揺動アーム91を車体前方側に揺動させると、多条ねじ体98に連結された押圧部材99が車幅方向内側に移動する。押圧部材99の大径部は、オイルシール82およびダストシール83に接することで砂等の侵入を防いでいる。押圧部材99は、ブレーキライニング95aを有するブレーキパッド95に直接固定されている。また、ブレーキディスク36の車幅方向内側に接するブレーキライニング96aも、パーキングブレーキキャリパ90の車幅方向内側にボルト97によって取り付けられる支持部材96に直接固定されている。これは、ブレーキライニングの消耗が少ないパーキングブレーキでは、ブレーキパッドの交換を想定していないためである。
揺動アーム151を車体前方側に揺動させると、多条ねじ体154に連結された押圧部材155が車幅方向内側に移動する。押圧部材155の端部に設けられたピストン156は、シール部材158に接することで砂等の侵入を防いでいる。また、ブレーキディスク36aの車幅方向内側面にも円環状のブレーキライニング36bが直接取り付けられており、こちら側のブレーキライニング36bは、パーキングブレーキキャリパ150の内側壁部材160に埋設された金属製のピストン157に押し付けられる。