JP2017226608A - 自己組織化し得る多環式芳香族化合物およびそれを用いた有機el素子 - Google Patents

自己組織化し得る多環式芳香族化合物およびそれを用いた有機el素子 Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性に優れた有機EL素子を提供する。【解決手段】有機EL素子を構成する複数層の少なくとも一層の材料として、自己組織化した多環式芳香族化合物を用いることで、熱によるモルフォロジー変化を抑制し、駆動電圧や発光効率の変化が少ない耐久性に優れた有機EL素子を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、携帯機器、カーオーディオの薄型画面として使用され始め、薄型テレビ用途や次世代照明としても期待される有機電界発光素子(有機EL素子)に関する。
この有機EL素子は、例えば陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極から構成される素子である。正孔輸送層とは陽極より注入された正孔を発光層に輸送する機能を有し、一方の電子輸送層は陰極より注入された電子を発光層に輸送する機能を有する。これらの輸送層を発光層と両電極の間に挿入することにより、発光効率、耐久性が向上することが知られており、各層に適した有機化合物の研究が盛んに行われている。
例えば、素子寿命を長くする安定な電子輸送層を形成するものとして、分子内にピリジン環のようなヘテロ芳香族基を有するアントラセン誘導体が報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)が、自己組織形成能を利用するものではない。
分子の自己組織化を利用し、種々の効果を期待した開発は報告されている。有機EL素子のウェットプロセスに自己組織化を利用したケースとして、水素結合により円盤状に自己組織化した材料を用いて発光偏光させたり(特許文献5)、シラノール基またはチオール基を利用してアルキル基を電極表面に共有結合させることにより自己組織化させて密着性を高め、ダークスポットの減少を図ったり(特許文献6)、シラン化合物を利用して電極上で自己組織化させることによりインクジェット法における有機極薄膜パターンの表面の撥液性を改善したり(特許文献7、特許文献8)、有機EL素子の各層を順に積層するように収容させる微細空孔構造を自己組織化により作製したりする(特許文献9)などの例がある。
有機EL素子以外でウェットプロセスの自己組織化を利用した例としては、芳香族環の平面性を利用したπ−πスタッキングと親水性置換基・疎水性置換基の両親媒性の特性を活かしてナノサイズの構造体を形成する光電導性材料の開発がある(特許文献10)。
また、ドライプロセスで作製する有機EL素子のアモルファス性有機膜の安定化を図るために、素子作製中の基板または作製後の素子を加熱する方法が開発されている(特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14)。
また、アントラセンオリゴマーにアルキル置換基を導入することによって有機トランジスタ材料のホール移動度を高めた例(特許文献15)はあるが、平面連続性の高いオリゴアントラセン骨格にアルキル基を直接置換させることによってπ−πスタッキングを阻害しない構造になっており、分子のHOMOおよびLUMOの準位を調節するために分子内の芳香族環の平面連続性を制限する必要性がある有機EL素子には直ちには応用できない技術である。
同様にして芳香族環に直接アルキル基を導入した有機トランジスタ材料の例として、アルキルヘキサベンゾコロネンが報告されており、適当な位置に配置したアルキル基は、電荷移動度を向上させるとの報告がなされている(特許文献16)。一方で、クリセンに直接アルキル基を導入しても、芳香族環の置換基を導入した場合に比べてキャリア移動度を上げることは達成できていない(特許文献17)。有機トランジスタに用いられる材料の芳香族環平面の望ましい配向方向は基板に対し垂直であるため、アルキル基によるそのような自己組織化の効果は、基板に垂直方向に電荷を移動させる有機EL材料にとっては望ましくない。したがって、有機トランジスタにおける自己組織化の技術が、芳香族環同士が近接しにくい有機EL材料のような場合においても同様に、電荷移動に効果的に機能することは到底予測できない。
中国特許出願公開第102790184号明細書 特開2009−173642公報 特開2003−146951公報 特開2005−170911号公報 特開2003−277741公報 特開2006−210125公報 特開2007−134348公報 特開2003−092181公報 特開2007−109524号公報 特開2011−102271号公報 特開平5−182764号公報 特開平10−284248号公報 特開平11−40352号公報 特開2000−311784号公報 特開2004−107257号公報 特開2006−100592公報 特開2010−118415号公報
上述のように有機EL素子における従来の発光材料、正孔輸送材料や電子輸送材料は、長時間の通電による素子からの発熱による結晶化などのモルフォロジーの変化により、素子寿命が短くなったり、電子輸送材料として用いた際には、その材料自身の発光が混在して色純度が低下したり、また、結晶化を抑制するためにアモルファス性を高めた材料は、駆動電圧に問題があった。本発明は、熱によるモルフォロジー変化を少なくし、駆動電圧や発光効率の変化を抑制することが可能な有機EL材料を提供することを課題としている。
本発明者らは、特定の芳香族基、ヘテロ芳香族基および長鎖アルキル基を適切に結合させ、適度に対称性のある多環式芳香族化合物が耐アニール性を有する自己組織化材料であることを見出し、さらに該化合物を電子輸送材料として用いることで上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。
[1] 下記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物。
(一般式(1)中、
Ar、ArおよびArはそれぞれ独立して炭素数10〜20の2価の芳香族基であり、Ar、ArおよびArにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよく、
Ar、ArおよびArの炭素数の合計は30〜38であり、
PyおよびPyは、それぞれ独立して、2,5−ピリジンジイル、2,5−ピラジンジイル、2,5−ピリミジンジイルまたは2,5−ピリダジンジイルであり、PyおよびPyにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよく、
Arと結合するPyおよびPyの間の結合軸が成す角度は120〜240度であり、
およびRはそれぞれ独立してヘキシル基またはヘプチル基であり、当該ヘキシル基またはヘプチル基における任意のメチレン基(−CH−)は−O−または−S−で置き換わっていてもよい。)
[2] Arはナフタレンジイルまたはアントラセンジイルであり、Arにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよい、上記[1]に記載の多環式芳香族化合物。
[3] ArおよびArはナフタレンジイルであり、ArおよびArにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよい、上記[1]または[2]に記載の多環式芳香族化合物。
[4] PyおよびPyは2,5−ピリジンジイルであり、PyおよびPyにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよい、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物。
[5] Ar、ArおよびArの炭素数の合計は30〜34である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物。
[6] RおよびRはヘキシル基である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物。
[7] 下記式(1−1)または式(1−2)で表される、上記[1]に記載の多環式芳香族化合物。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物を含有する電子輸送材料。
[9] 陽極および陰極からなる一対の電極と、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物が自己組織化した化合物を含有する有機層を有する、有機電界発光素子。
[10] 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層と、前記陰極と該発光層との間に配置され、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物が自己組織化した化合物を含有する電子輸送層および/または電子注入層とを有する、有機電界発光素子。
[11] 前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、さらに、キノリノール系金属錯体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ボラン誘導体およびベンゾイミダゾール誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、上記[10]に記載する有機電界発光素子。
[12] 前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、上記[10]または[11]に記載する有機電界発光素子。
[13] 上記[9]〜[12]のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた表示装置。
[14] 上記[9]〜[12]のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた照明装置。
[15] 陽極および陰極からなる一対の電極と、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の多環式芳香族化合物が自己組織化した化合物を含有する有機層とを有する有機電界発光素子の製造方法であって、
前記多環式芳香族化合物を含有する有機材料を0.01〜20.0nm/秒で蒸着することにより、自己組織化した多環式芳香族化合物を含有する有機層を形成する、有機電界発光素子の製造方法。
本発明に係る多環式芳香族化合物は蒸着により自己組織化させることができ、これにより耐アニール性が向上する。この自己組織化した多環式芳香族化合物で有機EL素子の各層を形成することにより、熱によるモルフォロジー変化を少なくし、駆動中の電圧および発光効率の変化を抑制することが可能となる。
本発明者らは、本発明に係る多環式芳香族化合物が、蒸着時の分子と基板または成膜された基板上の分子との衝突により、自己組織化するものと考えている。自己組織化とは、ランダムな状態にある分子が上述するような蒸着により、熱力学的に安定な秩序構造を形成することと定義される。このような秩序化にはアルキル基同士の分子間力および芳香族環同士(特に構造対称性を持たせた場合)の分子間力が影響しているものと考えており、この結果、多環式芳香族化合物の結晶化を抑制しながら分子に配向性を持たせることができているものと考えている。分子を秩序化させるために必要なエネルギーは、蒸着時の運動エネルギーを持った分子と基板または基板上に成膜された分子との衝突エネルギー、基板からの熱エネルギーを利用することができる。
特にアルキル基同士の相互作用により自己組織化することによって、多環式芳香族化合物中の芳香族環の分子内平面連続性が増加することなく分子間の芳香族環同士が近接することにより分子間相互作用の安定化エネルギーが増大すると考えている。また安定な構造へ秩序化した有機層は、長時間通電により発熱した素子の熱エネルギー程度では分子間相互作用の安定化エネルギーを上回ることができず、従ってモルフォロジーが影響を受けないため、有機EL素子の長寿命化に寄与するものと考えている。
本実施形態に係る有機電界発光素子を示す概略断面図である。
1.一般式(1)で表される多環式芳香族化合物
本願発明は、下記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物である。
一般式(1)中、
Ar、ArおよびArはそれぞれ独立して炭素数10〜20の2価の芳香族基であり、Ar、ArおよびArにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよく、
Ar、ArおよびArの炭素数の合計は30〜38であり、
PyおよびPyは、それぞれ独立して、2,5−ピリジンジイル、2,5−ピラジンジイル、2,5−ピリミジンジイルまたは2,5−ピリダジンジイルであり、PyおよびPyにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよく、
Arと結合するPyおよびPyの間の結合軸が成す角度は120〜240度であり、
およびRはそれぞれ独立してヘキシル基またはヘプチル基であり、当該ヘキシル基またはヘプチル基における任意のメチレン基(−CH−)は−O−または−S−で置き換わっていてもよい。
<Ar、ArおよびArについて>
Ar、ArおよびArは、炭素数10〜20の2価の芳香族基であり、脂肪族環が縮合していてもよいが構造全体として平面性が高いか、または平面的であることが必要である。二環以上からなる場合には全て芳香族環が縮合してできた構造が好ましく、これにより縮環式芳香族基の平面性をより高めることができるため、分子間力がより高まって耐アニール性をより向上させることができる。一方で、一部に脂肪族環が縮合した構造の場合は、発光効率を高めることができる場合もあるため、Ar、ArおよびArの全体構造はこれらのバランスを考慮して設計することが好ましく、Ar、Ar、およびArの炭素数の合計は、30〜38であり、30〜34がより好ましい。
2価の芳香族基の炭素数は10〜20であるが、好ましくは炭素数10〜18、より好ましくは炭素数10〜16、さらに好ましくは炭素数10〜14である。
2価の芳香族基としては、ナフタレンジイル、テトラヒドロナフタレンジイル、アズレンジイル、アセナフテンジイル、アセナフチレンジイル、アントラセンジイル、ジヒドロアントラセンジイル、テトラヒドロアントラセンジイル、フェナンスレンジイル、フルオレンジイル、ジヒドロフェナンスレンジイル、フルオランテンジイル、クリセンジイル、ピレンジイル、ベンゾフルオレンジイル、トリフェニレンジイル、ナフタセンジイル、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ベンゾ[c]フェナントレンが好ましく、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナンスレンジイル、フルオレンジイル、ジヒドロフェナンスレンジイルがより好ましい。
ナフタレンジイルは、1,4−、1,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジイルが好ましく、1,4−、2,6−または2,7−ナフタレンジイルが特に好ましい。メチル基が置換する場合には、置換基数は1〜6個が好ましく、1〜2個がより好ましく、2個が特に好ましい。メチル基で置換された形態としては、隣接するヘテロ芳香環との二面角を大きくする位置にメチル基が置換する場合が好ましく、1−メチルナフタレン−2,6−ジイル、3−メチルナフタレン−2,6−ジイル、1,3−ジメチルナフタレン−2,6−ジイル、2−メチルナフタレン−1,4−ジイル、2,8−ジメチルナフタレン−1,4−ジイルなどが好ましい。
アントラセンジイルは、1,4−、1,5−、2,6−、2,7−または9,10−アントラセンジイルが好ましく、2,6−または9,10−アントラセンジイルが特に好ましい。メチル基が置換する場合には、置換基数は1〜4個が好ましく、1〜2個がより好ましく、2個が特に好ましい。メチル基で置換された形態としては、隣接するヘテロ芳香環との二面角を大きくする位置にメチル基が置換する場合が好ましく、1−メチル−9,10−アントラセンジイル、1,4−ジメチル−9,10−アントラセンジイル、1,5−ジメチル−9,10−アントラセンジイル、1,8−ジメチル−9,10−アントラセンジイルなどが好ましい。
フェナンスレンジイルは、2,6−、2,7−または3,9−フェナンスレンジイルが好ましく、2,7−フェナンスレンジイルが特に好ましい。メチル基が置換する場合には、置換基数は1〜4個が好ましく、1〜2個がより好ましく、2個が特に好ましく、メチル基で置換された形態としては、1,8−ジメチル−2,7−フェナンスレンジイル、3,6−ジメチル−2,7−フェナンスレンジイルが好ましい。
フルオレンジイルは、2,7−フルオレンジイルが好ましく、メチル基が置換する場合には、置換基数は1〜4個が好ましく、1〜2個がより好ましく、2個が特に好ましく、2個のメチル基で置換された形態としては9,9−ジメチルフルオレン−2,7−ジイルが好ましく、4個のメチル基で置換された形態としては1,8,9,9−テトラメチルフルオレン−2,7−ジイル、3,6,9,9−テトラメチルフルオレン−2,7−ジイルが好ましい。
ジヒドロフェナンスレンジイルは、9,10−ジヒドロフェナンスレン−2,7−ジイルが好ましい。メチル基が置換する場合には、置換基数は1〜4個が好ましく、1〜2個がより好ましく、2個が特に好ましく、2個のメチル基で置換された形態としては、1,8−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナンスレン、3,6−ジメチル−9,10−ジヒドロフェナンスレンが好ましい。
分子構造は対称性が高いほうが好ましく、ArおよびArは同じ芳香族基が同じ置換位置で結合した場合がより好ましく、同時に2,6−ナフタレンジイルである場合が特に好ましい。
<式(1)中のPyおよびPyについて>
式(1)中のPyおよびPyとしては、それぞれ独立して、2,5−ピリジンジイル、2,5−ピラジンジイル、2,5−ピリミジンジイル、または2,5−ピリダジンジイルであり、2,5−ピリジンジイルが特に好ましい。また少なくとも1つのメチル基で置換されていてもよく、メチル基が置換した形態としては、3−メチル−2,5−ピリジンジイル、4−メチル−2,5−ピリジンジイル、6−メチル−2,5−ピリジンジイル、3,4−ジメチル−2,5−ピリジンジイル、3,6−ジメチル−2,5−ピリジンジイル、4,6−ジメチル−2,5−ピリジンジイル、または3,4,6−トリメチル−2,5−ピリジンジイルが好ましい。
<ArとPyおよびPyとの結合軸が成す角度>
Arと結合するPyおよびPyの間の結合軸が成す角度は120〜240度であり、好ましくは140〜220度であり、より好ましくは160〜200度であり、特に好ましくは180度である。2つの結合軸が成す角度を120〜240度にすると、分子配向の乱れが減り、熱によるモルフォロジー変化の減少が期待できる。
<RおよびRについて>
およびRは、ヘキシル基またはヘプチル基であり、直鎖が好ましく、同じ基であることがより好ましい。
およびRにおける任意のメチレン基(−CH−)は−O−または−S−で置き換わっていてもよく、置き換わった結果形成される基としては、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオが好ましい。
<自己組織化と多環式芳香族化合物の構造>
本発明の多環式芳香族化合物は、分子の適切な位置に、適切な数の、適切な鎖長の、直鎖のアルキル基を配置し、分子の適切な位置に、適切な数の、適切な大きさの芳香族基を対称的に配置し、また複数のヘテロ原子を対称的に配置することによって安定性の高い自己組織化が可能となる。アルキル基または芳香族基(以下、ここではヘテロ原子を含有するヘテロ芳香族基を含む)が配置される適切な位置や数とは、分子のアルキル基または芳香族環部分同士の相互作用が有効に働く距離に自己組織化させるのに適した位置や数であり、多環式芳香族化合物の構造に応じて異なる。不適切な位置に置換したアルキル基または芳香族基、必要以上の数のアルキル基または芳香族基は、アルキル基同士または芳香族環同士の相互作用の方向を制限したり、アルキル基同士または芳香族環同士の相互作用を弱めてしまったり、不均衡な相互作用により組織化の安定性が低下する要因となる。また、アルキル基の適切な鎖長とは、アルキル基が短すぎる場合には自己組織化が起こりにくく、アルキル基が長すぎる場合はアルキル基の折りたたみにより自己組織化の効果が薄れ、すなわち分子の芳香族環部分同士の相互作用が弱くなるため、これらの間の鎖長が適切な鎖長である。適切な大きさの芳香族基も安定な自己組織化のために不可欠であり、組織化後に加えられる熱エネルギーに耐える必要がある。大きな芳香族基の数が多くなると分子間相互作用が大きくなりすぎ、昇華エネルギーが熱分解エネルギーを超えて蒸着時に材料の分解を引き起こすことになる。芳香族基を分子内で適度に対称的に配置することは熱によって変化しにくい安定な組織を形成させることに重要であり、ヘテロ原子を分子内で対称的に配置させることは分子の双極子モーメントを小さくし、誘電分極による駆動電圧上昇の抑制に寄与する。
<自己組織化と蒸着条件>
自己組織化を行わせるために必要なエネルギーは、蒸着時の分子の衝突または素子作製中に加えられる熱エネルギーにより賄われる。分子の衝突とは、蒸着源から飛び出た分子が基板または基板上に成膜された分子と衝突することである。飛行分子の運動エネルギーが衝突によって熱エネルギーに変換され、放熱分を差し引いた熱エネルギーが自己組織化に用いられる。従って、成膜速度が速いほど、熱が貯えられ、自己組織化が促進される。また材料分子の炭素数が多いほど昇華潜熱が大きくなり、蒸着源から飛び出た分子の熱エネルギーも大きくなるため、自己組織化が促進される。但し、昇華潜熱は分子の熱分解エネルギーを超えてはならず、材料分子の炭素数には上限がある。成膜速度は、材料分子の構造やアルキル鎖長などによっても異なり、特に限定されることはないが、0.01nm/秒〜20.0nm/秒である。成膜速度を好ましくは0.2nm/秒以上、より好ましくは0.5nm/秒以上、さらに好ましくは1nm/秒以上とすることで自己組織化の程度を高めることができる。
アルキル基、芳香族基およびヘテロ芳香族基の数や配置などが不適切で自己組織化の程度が不十分となった場合には素子作製後に加熱することによっても自己組織化の程度を高めることができる場合もあるが、これはすなわち素子の駆動中に生ずる熱エネルギーが大きくなった時にモルフォロジーの変化が可能なことを意味するため、駆動中の電圧上昇や発光効率の低下を引き起こす場合もあるので、上述した蒸着時の自己組織化の程度を高めておくことが好ましい。
一般式(1)で表される多環式芳香族化合物の具体例を以下に示すが、以下に例示した式(1−1)〜式(1−336)で表される化合物に限定されるものではない。
2.一般式(1)で表される化合物の合成方法
一般式(1)で表される多環式芳香族化合物は、公知の方法によりハロゲン化アリール(またはアリールトリフラート)とアリールボロン酸(またはアリール金属化合物やボロン酸エステル)を出発原料として、鈴木・宮浦カップリング、熊田・玉尾・コリューカップリング、根岸カップリング、薗頭・萩原カップリング、ハロゲン化反応、脱保護反応、トリフラート化反応、またはホウ酸化反応などを適宜組み合わせて合成することができる。
以下にArを9,10−アントラセンジイル基に、ArおよびArを2,6−ナフタレンジイル基に、RおよびRをヘキシル基にした化合物について代表的な合成方法を示したが、他の基についても同様に説明できる。また、各工程においてハロゲン化アリールとアリールボロン酸を置き換えて実施することが可能であり、カップリング反応における脱離基を他のハロゲンやトリフラートに変えて実施することも可能である。保護基を他の保護基に変えて行うことや、保護基を使用しないことも選択できる。ボロン酸エステルのアルコール側を他のアルコールに変えて行うことも可能である。
カップリング反応で用いられるパラジウム触媒の具体例としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):Pd(PPh、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド:PdCl(PPh、酢酸パラジウム(II):Pd(OAc)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0):Pd(dba)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)クロロホルム錯体:Pd(dba)・CHCl、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0):Pd(dba)、ビス(トリt−ブチルホスフィノ)パラジウム(0):Pd(t−BuP)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II):Pd(dppf)Cl、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン錯体(1:1):Pd(dppf)Cl・CHCl、PdCl{P(t−Bu)−(p−NMe−Ph)}:(A−taPhos)PdCl、パラジウム ビス(ジベンジリデン)、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド、PdCl[P(t−Bu)−(p−NMe−Ph)]:(A−taPhos)PdCl(Pd−132:商標;ジョンソン・マッセイ社製)があげられる。
また、カップリング反応を促進させるため、場合によりこれらのパラジウム化合物にホスフィン化合物を加えてもよい。そのホスフィン化合物の具体例としては、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1−(N,N−ジメチルアミノメチル)−2−(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、1−(N,N−ジブチルアミノメチル)−2−(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、1−(メトキシメチル)−2−(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジt−ブチルホスフィノ)フェロセン、2,2’−ビス(ジt−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−メトキシ−2’−(ジt−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルまたは2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニルがあげられる。
カップリング反応で用いられる塩基の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ペントキシド、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸三カリウムまたはフッ化カリウムがあげられる。
カップリング反応で用いられる溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、アニソール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、水、メタノール、エタノール、プロパノールまたはt−ブチルアルコールがあげられる。これらの溶媒は適宜選択でき、単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。
芳香族環やヘテロ芳香族環の臭素化剤としてはN−ブロモスクシンイミドまたは臭素が用いられる。臭素化反応の溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素またはこれらの混合溶媒が用いられる。
芳香族環やヘテロ芳香族環上の水酸基の保護基としてはアルキルエーテル、ベンジルエーテル、シリルエーテルまたはエステルを適宜用いることができる。アルキルエーテルのアルキル基としては直鎖でも分枝鎖でもよく炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチルまたはエチルがより好ましい。但し、基質の溶解性を上げるためにはオクチル、デシルまたはドデシルが好ましい場合もある。
脱保護剤は、用いた保護基に適したものを適宜使用することができる。アルキルエーテルの脱保護剤としては、ピリジン塩酸塩、三臭化ホウ素、デカンチオール/カリウムt−ブトキシド、ヨウ化アルミニウム、プロトン酸/イオン性液体、ヨードトリメチルシラン、塩化リチウム/ジメチルホルムアミドなどを使用することができる。
次工程が有機金属試薬を用いる反応の場合は、保護基を使用せず、水酸基に応じた量の有機金属試薬を目的の反応に必要な量に加えて使用することも可能である。また次工程が鈴木・宮浦カップリングの場合は水酸基を保護しなくてもよいが、基質の溶解性を上げる目的で保護基を使用することもできる。
また、本発明の多環式芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素で置換されているものも含まれるが、このような誘導体は所望の箇所が重水素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
3.有機電界発光素子
本発明に係る多環式芳香族化合物は、例えば、有機電界発光素子の材料として用いることができる。以下に、本実施形態に係る有機EL素子について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
<有機電界発光素子の構造>
図1に示された有機電界発光素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機電界発光素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機電界発光素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
<有機電界発光素子における基板>
基板101は、有機電界発光素子100の支持体となるものであり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、例えば、0.2mm以上あればよい。厚さの上限値としては、例えば、2mm以下、好ましくは1mm以下である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
<有機電界発光素子における陽極>
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たすものである。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および/または正孔輸送層104が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機電界発光素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
透明電極の抵抗は、発光素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、発光素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば、300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、例えば100〜5Ω/□、好ましくは50〜5Ω/□の低抵抗品を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
<有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たすものである。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たすものである。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層、混合するか、正孔注入・輸送材料と高分子結着剤の混合物により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物を使用することができる。また、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機電界発光素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミン、N,N4’−ジフェニル−N,N4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、N,N,N4’,N4’−テトラ[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されるものではない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6−テトラフルオロテトラシアノ−1,4−ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo, Appl.Phys.Lett., 73(22), 3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pheiffer,T.Fritz,K.Leo, Appl.Phys.Lett., 73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)または特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
<有機電界発光素子における発光層>
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光するものである。発光層105を形成する材料としては、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物であるのが好ましい。本発明では、発光層用の材料として、上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物を用いることができる。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の50〜99.999重量%であり、より好ましくは80〜99.95重量%であり、さらに好ましくは90〜99.9重量%である。上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物はホスト材料としても使用することもできる。
ドーパント材料の使用量はドーパント材料の種類によって異なり、そのドーパント材料の特性に合わせて決めればよい。ドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全体の0.001〜50重量%であり、より好ましくは0.05〜20重量%であり、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物はドーパント材料としても使用することもできる
上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物と併用することができるホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体などが挙げられる。
また、上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物と併用することができるドーパント材料としては、特に限定されるものではなく、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1−245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2−247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2−メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2−トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7−ジアルキルアミノクマリン誘導体、7−ピペリジノクマリン誘導体、7−ヒドロキシクマリン誘導体、7−メトキシクマリン誘導体、7−アセトキシクマリン誘導体、3−ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3−ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアンスラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5−チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
発色光ごとに例示すると、青〜青緑色ドーパント材料としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデン、クリセンなどの芳香族炭化水素化合物やその誘導体、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどの芳香族複素環化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などがあげられる。
また、緑〜黄色ドーパント材料としては、クマリン誘導体、フタルイミド誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、アクリドン誘導体、キナクリドン誘導体およびルブレンなどのナフタセン誘導体などがあげられ、さらに上記青〜青緑色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
さらに、橙〜赤色ドーパント材料としては、ビス(ジイソプロピルフェニル)ペリレンテトラカルボン酸イミドなどのナフタルイミド誘導体、ペリノン誘導体、アセチルアセトンやベンゾイルアセトンとフェナントロリンなどを配位子とするEu錯体などの希土類錯体、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランやその類縁体、マグネシウムフタロシアニン、アルミニウムクロロフタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体、ローダミン化合物、デアザフラビン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、フェノキサジン誘導体、オキサジン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、フェノキサゾン誘導体およびチアジアゾロピレン誘導体などあげられ、さらに上記青〜青緑色および緑〜黄色ドーパント材料として例示した化合物に、アリール、ヘテロアリール、アリールビニル、アミノ、シアノなど長波長化を可能とする置換基を導入した化合物も好適な例としてあげられる。
その他、ドーパントとしては、化学工業2004年6月号13頁、および、それにあげられた参考文献などに記載された化合物などの中から適宜選択して用いることができる。
上述するドーパント材料の中でも、特にスチルベン構造を有するアミン、ペリレン誘導体、ボラン誘導体、芳香族アミン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体またはピレン誘導体が好ましい。
スチルベン構造を有するアミンは、例えば、下記式で表される。
当該式中、Ar11は炭素数6〜30のアリールに由来するm価の基であり、Ar12およびAr13は、それぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであるが、Ar11〜Ar13の少なくとも1つはスチルベン構造を有し、Ar11〜Ar13は、アリール、ヘテロアリール、トリアルキル置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、mは1〜4の整数である。
スチルベン構造を有するアミンは、下記式で表されるジアミノスチルベンがより好ましい。
当該式中、Ar12およびAr13は、それぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar12およびAr13は、アリール、ヘテロアリール、トリアルキル置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよい。
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、スチルベニル、ジスチリルフェニル、ジスチリルビフェニリル、ジスチリルフルオレニルなどが挙げられる。
スチルベン構造を有するアミンの具体例は、N,N,N’,N’−テトラ(4−ビフェニリル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’−テトラ(1−ナフチル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N’−ジ(2−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノスチルベン、N,N’−ジ(9−フェナントリル)−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ビス[4”−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−ビフェニル、1,4−ビス[4’−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−ベンゼン、2,7−ビス[4’−ビス(ジフェニルアミノ)スチリル]−9,9−ジメチルフルオレン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−ビフェニル、4,4’−ビス(9−フェニル−3−カルバゾビニレン)−ビフェニルなどが挙げられる。
また、特開2003-347056号公報、および特開2001-307884号公報などに記載されたスチルベン構造を有するアミンを用いてもよい。
ペリレン誘導体としては、例えば、3,10−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ペリレン、3,10−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ペリレン、3,10−ジフェニルペリレン、3,4−ジフェニルペリレン、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン、3,4,9,10−テトラフェニルペリレン、3−(1’−ピレニル)−8,11−ジ(t−ブチル)ペリレン、3−(9’−アントリル)−8,11−ジ(t−ブチル)ペリレン、3,3’−ビス(8,11−ジ(t−ブチル)ペリレニル)などがあげられる。
また、特開平11-97178号公報、特開2000-133457号公報、特開2000-26324号公報、特開2001-267079号公報、特開2001-267078号公報、特開2001-267076号公報、特開2000-34234号公報、特開2001-267075号公報、および特開2001-217077号公報などに記載されたペリレン誘導体を用いてもよい。
ボラン誘導体としては、例えば、1,8−ジフェニル−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−フェニル−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、4−(9’−アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、4−(10’−フェニル−9’−アントリル)ジメシチルボリルナフタレン、9−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−(4’−ビフェニリル)−10−(ジメシチルボリル)アントラセン、9−(4’−(N−カルバゾリル)フェニル)−10−(ジメシチルボリル)アントラセンなどがあげられる。
また、国際公開第2000/40586号パンフレットなどに記載されたボラン誘導体を用いてもよい。
芳香族アミン誘導体は、例えば、下記式で表される。
当該式中、Ar14は炭素数6〜30のアリールに由来するn価の基であり、Ar15およびAr16はそれぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar14〜Ar16は、アリール、ヘテロアリール、トリアルキル置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは1〜4の整数である。
特に、Ar14がアントラセン、クリセン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはピレンに由来する2価の基であり、Ar15およびAr16がそれぞれ独立して炭素数6〜30のアリールであり、Ar14〜Ar16は、アリール、ヘテロアリール、トリアルキル置換シリル(アリールおよび/またはアルキルでトリ置換されたシリル)またはシアノで置換されていてもよく、そして、nは2である、芳香族アミン誘導体がより好ましい。
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、ナフチル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニル、ペンタセニルなどが挙げられる。
芳香族アミン誘導体としては、クリセン系としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルクリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(ナフタレン−2−イル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)クリセン−6,12−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)クリセン−6,12−ジアミンなどが挙げられる。
また、ピレン系としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)ピレン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(3,4−ジメチルフェニル)−3,8−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N,N,N−テトラフェニルピレン−1,8−ジアミン、N,N’−ビス(ビフェニル−4−イル)−N,N’−ジフェニルピレン−1,8−ジアミン、N,N−ジフェニル−N,N−ビス−(4−トリメチルシラニル−フェニル)−1H,8H−ピレン−1,6−ジアミンなどが挙げられる。
また、アントラセン系としては、例えば、N,N,N,N−テトラフェニルアントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(m−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N,N’,N’−テトラ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジ−t−ブチル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジシクロヘキシル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ジ(p−トリル)アントラセン−9,10−ジアミン、2,6−ジシクロヘキシル−N,N’−ビス(4−イソプロピルフェニル)−N,N’−ビス(4−t−ブチルフェニル)アントラセン−9,10−ジアミン、9,10−ビス(4−ジフェニルアミノ−フェニル)アントラセン、9,10−ビス(4−ジ(1−ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、9,10−ビス(4−ジ(2−ナフチルアミノ)フェニル)アントラセン、10−ジ−p−トリルアミノ−9−(4−ジ−p−トリルアミノ−1−ナフチル)アントラセン、10−ジフェニルアミノ−9−(4−ジフェニルアミノ−1−ナフチル)アントラセン、10−ジフェニルアミノ−9−(6−ジフェニルアミノ−2−ナフチル)アントラセンなどが挙げられる。
また、他には、[4−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)ナフタレン−1−イル]−ジフェニルアミン、[6−(4−ジフェニルアミノ−フェニル)ナフタレン−2−イル]−ジフェニルアミン、4,4’−ビス[4−ジフェニルアミノナフタレン−1−イル]ビフェニル、4,4’−ビス[6−ジフェニルアミノナフタレン−2−イル]ビフェニル、4,4”−ビス[4−ジフェニルアミノナフタレン−1−イル]−p−テルフェニル、4,4”−ビス[6−ジフェニルアミノナフタレン−2−イル]−p−テルフェニルなどがあげられる。
また、特開2006-156888号公報などに記載された芳香族アミン誘導体を用いてもよい。
クマリン誘導体としては、クマリン−6、クマリン−334などがあげられる。
また、特開2004-43646号公報、特開2001-76876号公報、および特開平6-298758号公報などに記載されたクマリン誘導体を用いてもよい。
ピラン誘導体としては、下記のDCM、DCJTBなどがあげられる。
また、特開2005-126399号公報、特開2005-097283号公報、特開2002-234892号公報、特開2001-220577号公報、特開2001-081090号公報、および特開2001-052869号公報などに記載されたピラン誘導体を用いてもよい。
<有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層>
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たすものである。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たすものである。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、上記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物を使用することができる。また、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機電界発光素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、カルバゾール誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3−ビス[(4−t−ブチルフェニル)1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N−フェニルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−テルピリジニル))ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、リンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、キノリノール系金属錯体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体またはボラン誘導体が好ましい。
キノリノール系金属錯体は、下記一般式(E−1)で表される化合物である。
式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、フッ素、アルキル、アラルキル、アルケニル、シアノ、アルコキシまたはアリールであり、MはLi、Al、Ga、BeまたはZnであり、nは1〜3の整数である。
キノリノール系金属錯体の具体例としては、8−キノリノールリチウム、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−t−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウムなどがあげられる。
ビピリジン誘導体は、下記一般式(E−2)で表される化合物である。
式中、Gは単なる結合手またはn価の連結基を表し、nは2〜8の整数である。また、ピリジン−ピリジンまたはピリジン−Gの結合に用いられない炭素は、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシアノで置換されていてもよい。
一般式(E−2)のGとしては、例えば、以下の構造式のものがあげられる。なお、下記構造式中のRは、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニリルまたはテルフェニリルである。
ピリジン誘導体の具体例としては、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジメシチルシロール、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−5−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール、2,5−ビス(2,2’−ピリジン−5−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジメシチルシロール、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−6−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−5−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−6−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−5−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,3’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,2’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,4’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,4’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(3,4’−ピリジン−6−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(3,4’−ピリジン−5−イル)−2−フェニルアントラセン、3,4−ジフェニル−2,5−ジ(2,2’−ピリジン−6−イル)チオフェン、3,4−ジフェニル−2,5−ジ(2,3’−ピリジン−5−イル)チオフェン、6’6”−ジ(2−ピリジル)2,2’:4’,4”:2”,2”’−クアテルピリジンなどがあげられる。
フェナントロリン誘導体は、下記一般式(E−3−1)または(E−3−2)で表される化合物である。
式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素、アルキル(メチル、エチル、イソプロピル、ヒドロキシエチル、メトキシメチル、トリフルオロメチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジルなど)、アルキルオキシ(メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、ブトキシなど)、アリールオキシ(フェノキシ、1−ナフチルオキシ、4−トリルオキシなど)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、アリール(フェニル、ナフチル、p−トリル、p−クロロフェニルなど)、アルキルチオ(メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオなど)、アリールチオ(フェニルチオなど)、シアノ、ニトロ、複素環(ピロール、ピロリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾオキサゾリルなど)などが挙げられ、好ましくはアルキルまたはハロゲンであり、より好ましくは、メチル、エチル、イソプロピルまたはフッ素であり、隣接する基は互いに結合して縮合環を形成してもよく、Gは単なる結合手またはn価の連結基を表し、nは2〜8の整数である。また、一般式(E−3−2)のGとしては、例えば、ビピリジン誘導体の欄で説明したものと同じものがあげられる。また、上記式(E−3−2)においてはR〜Rのいずれかの位置でGと結合する。
フェナントロリン誘導体の具体例としては、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9’−ジフルオロ−ビ(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロインや1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどがあげられる。
特に、フェナントロリン誘導体を電子輸送層、電子注入層に用いた場合について説明する。長時間にわたって安定な発光を得るには、熱的安定性や薄膜形成性に優れた材料が望まれ、フェナントロリン誘導体の中でも、置換基自身が三次元的立体構造を有するか、フェナントロリン骨格とのまたは隣接置換基との立体反発により三次元的立体構造を有するもの、または複数のフェナントロリン骨格を連結したものが好ましい。さらに、複数のフェナントロリン骨格を連結する場合、連結ユニット中に共役結合、置換または無置換の芳香族炭化水素、置換または無置換の芳香複素環を含んでいる化合物がより好ましい。
ボラン誘導体は、下記一般式(E−4)で表される化合物であり、詳細には特開2007-27587号公報に開示されている。
式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよいアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数16以下のアリール、置換されているボリル、または置換されていてもよいカルバゾリルであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
上記一般式(E−4)で表される化合物の中でも、下記一般式(E−4−1)で表される化合物、さらに下記一般式(E−4−1−1)〜(E−4−1−4)で表される化合物が好ましい。具体例としては、9−[4−(4−ジメシチルボリルナフタレン−1−イル)フェニル]カルバゾール、9−[4−(4−ジメシチルボリルナフタレン−1−イル)ナフタレン−1−イル]カルバゾールなどがあげられる。
式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、nはそれぞれ独立して0〜3の整数であり、そして、mはそれぞれ独立して0〜4の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
各式中、R31〜R34は、それぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかであり、そして、R35およびR36は、それぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかである。
上記一般式(E−4)で表される化合物の中でも、下記一般式(E−4−2)で表される化合物、さらに下記一般式(E−4−2−1)で表される化合物が好ましい。
式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよい炭素数20以下のアリーレンであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
式中、R31〜R34は、それぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかであり、そして、R35およびR36は、それぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかである。
上記一般式(E−4)で表される化合物の中でも、下記一般式(E−4−3)で表される化合物、さらに下記一般式(E−4−3−1)または(E−4−3−2)で表される化合物が好ましい。
式中、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されているシリル、置換されていてもよい窒素含有複素環、またはシアノの少なくとも一つであり、R13〜R16は、それぞれ独立して、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Xは、置換されていてもよい炭素数10以下のアリーレンであり、Yは、置換されていてもよい炭素数14以下のアリールであり、そして、nはそれぞれ独立して0〜3の整数である。また、「置換されていてもよい」または「置換されている」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリールまたはアルキルなどが挙げられる。
各式中、R31〜R34は、それぞれ独立して、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかであり、そして、R35およびR36は、それぞれ独立して、水素、メチル、イソプロピルまたはフェニルのいずれかである。
ベンゾイミダゾール誘導体は、下記一般式(E−5)で表される化合物である。
式中、Ar11〜Ar13はそれぞれ独立に水素または置換されてもよい炭素数6〜30のアリールである。「置換されていてもよい」場合の置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシアノなどが挙げられる。特に、Ar11が、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシアノで置換されてもよいアントリルであるベンゾイミダゾール誘導体が好ましい。
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フルオレン−9−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、フルオランテン−1−イル、フルオランテン−2−イル、フルオランテン−3−イル、フルオランテン−7−イル、フルオランテン−8−イル、トリフェニレン−1−イル、トリフェニレン−2−イル、ピレン−1−イル、ピレン−2−イル、ピレン−4−イル、クリセン−1−イル、クリセン−2−イル、クリセン−3−イル、クリセン−4−イル、クリセン−5−イル、クリセン−6−イル、ナフタセン−1−イル、ナフタセン−2−イル、ナフタセン−5−イル、ペリレン−1−イル、ペリレン−2−イル、ペリレン−3−イル、ペンタセン−1−イル、ペンタセン−2−イル、ペンタセン−5−イル、ペンタセン−6−イルである。
ベンゾイミダゾール誘導体の具体例は、1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールである。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有するものであれば、様々なものが用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0〜2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら二種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
<有機電界発光素子における陰極>
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様のものを用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム−リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されるものではない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
<各層で用いてもよい結着剤>
以上の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層に用いられる材料は単独で各層を形成することができるが、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能である。
<有機電界発光素子の作製方法>
有機電界発光素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、蒸着用ルツボの加熱温度+50〜+400℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚2nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
次に、有機電界発光素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機電界発光素子の作製法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機電界発光素子が得られる。なお、上述の有機電界発光素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機電界発光素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機電界発光素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<有機電界発光素子の応用例>
また、本発明は、有機電界発光素子を備えた表示装置または有機電界発光素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機電界発光素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスとは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式のものが蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
<実施例で用いた化合物の中間体の合成>
[中間体1]
2−ブロモ−6−メトキシナフタレン(24.0g)、[1,1’−(ビスジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロニッケル(II)(1.38g)、およびシクロペンチルメチルエーテル(125ml)の混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、1Mヘキシルマグネシウムブロマイドのテトラヒドロフラン溶液(150ml)を内温が40℃を超えないようにゆっくりと滴下後、4時間撹拌した。氷水で冷却後、水をゆっくり滴下、次いで3M塩酸を滴下して中和し、トルエンを加えて分液して、水層をトルエンで抽出した。合わせたトルエン層を水洗後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥剤を濾過後、濾液を減圧下に濃縮して、中間体1の2−ヘキシル−6−メトキシナフタレン(24.5g)を得た。
[中間体2]
中間体1(24.5g)、ピリジン塩酸塩(58.4g)、およびN−メチル−2−ピロリドン(100ml)の混合物を窒素雰囲気下に200℃のオイルバスで加熱して、生成するピリジンを留去しながら1時間撹拌した。冷却後、水とトルエンを加えて分液し、水層をトルエンで抽出した。合わせたトルエン層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下に濃縮して、中間体2の6−ヘキシルナフタレン−2−オール(23.1g)を得た。
[中間体3]
中間体2(23.1g)とピリジンの混合物を氷冷下で攪拌し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(42.5g)を内温が10℃を超えないように滴下した。室温で30分間攪拌後、冷却し、水とトルエンを加えて分液して、水層をトルエンで抽出した。合わせたトルエン層を水洗し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を減圧下に濃縮して、中間体3の6−ヘキシルナフタレン−2−イル トリフルオロメタンスルホナート(33.0g)を得た。
[中間体4]
中間体3(33.0g)、ビスピナコラトジボロン(27.9g)、酢酸カリウム(27.0g)、炭酸カリウム(3.16g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(2.01g)、およびシクロペンチルメチルエーテル(330ml)の混合物を窒素雰囲気下で80℃から100℃まで昇温しながら3時間加熱撹拌した。反応混合物をシリカゲルショートカラム(PSQ−100B(150ml)、溶媒:トルエン)を通した。流出液を減圧下に濃縮して得た残渣をヘプタンで洗浄後、真空乾燥して、中間体4の2−(6−ヘキシルナフタレン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(31.0g)を得た。
[中間体5]
中間体4(31.0g)、2,5−ジブロモピリジン(21.7g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(3.17g)、炭酸カリウム(25.3g)、トルエン(310ml)、t−ブチルアルコール(124ml)、および水(25ml)の混合物を窒素雰囲気下に還流温度で3時間攪拌した。冷却後、分液し、有機層を濃縮した残渣をシクロペンチルメチルエーテルに溶解し、不溶物を濾過して除去し、濾液を濃縮して、中間体5の5−ブロモ−2−(6−ヘキシルナフタレン−2−イル)ピリジン(33g)を得た。
[中間体6]
中間体5(33g)、ビスピナコラトジボロン(30.2g)、酢酸カリウム(18.0g)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(4.02g)、シクロペンチルメチルエーテル(330ml)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)の混合物を窒素雰囲気下、100℃で3時間加熱撹拌した。反応混合物をシリカゲルショートカラム(PSQ−100B(150ml)、溶媒:トルエン)を通した。流出液を減圧下に濃縮して得た残渣をメタノール、次いでヘプタンで洗浄後、真空乾燥して、中間体6の2−(6−ヘキシルナフタレン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン(8.3g)を得た。
<実施例で用いた化合物の合成>
[合成例1] (化合物(1−1)の合成)
中間体6(3.2g)、9,10−ジブロモアントラセン(1.1g)、炭酸カリウム(1.8g)、[[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]ジ−t−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.12g)、トルエン(11ml)、t−ブチルアルコール(4.4ml)、および水(0.9ml)の混合物を窒素雰囲気下、還流温度で1.5時間加熱撹拌した。反応混合物を冷却し、水を加えて、固体を濾取した後、水、メタノール、次いで酢酸エチルで洗浄した。真空乾燥後、3倍のトルエンを加えて加熱還流後、冷却して、析出物を濾取し、真空乾燥した。1×10−3Pa以下の真空下で昇華精製し、化合物(1−1)の9,10−ビス(6−(6−ヘキシルナフタレン−2−イル)ピリジン−3−イル)アントラセン(0.86g)を得た。
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(CDCl):δ=0.91(t,6H,J=7.1Hz),1.34−1.43(m,12H),1.73−1.79(m,4H),2.83(t,4H,J=7.6Hz),7.41−7.46(m,6H),7.70(s,2H),7.81−7.83(m,4H),7.94−7.98(m,6H),8.17−8.19(m,2H),8.31(dd,2H,J=8.5Hz,1.8Hz),8.66(s,2H),8.88−8.90(m,2H).
[合成例2] (化合物(1−2)の合成)
中間体6(3.7g)、1,4−ジブロモナフタレン(1.1g)、炭酸カリウム(2.1g)、[[4−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル]ジ−t−ブチルホスフィン]ジクロロパラジウム(0.14g)、トルエン(11ml)、t−ブチルアルコール(4.4ml)、および水(0.9ml)の混合物を窒素雰囲気下、還流温度で1.5時間加熱撹拌した。反応混合物を冷却し、水とヘプタンを加えて、析出物を濾取した後、水、次いでメタノールで洗浄した。真空乾燥後、1×10−3Pa以下の真空下で昇華精製し、化合物(1−2)の1,4−ビス(6−(6−ヘキシルナフタレン−2−イル)ピリジン−3−イル)ナフタレン(0.07g)を得た。
NMRスペクトルにより得られた化合物の構造を確認した。
H−NMR(CDCl):δ=0.90(t,6H,J=6.9Hz),1.33−1.41(m,12H),1.71−1.77(m,4H),2.81(t,4H,J=7.6Hz),7.40(d,2H,J=8.4Hz),7.54−7.56(m,2H),7.60(s,2H),7.68(s,2H),7.91−8.06(m,10H),8.22−8.24(m,2H),8.58(s,2H),8.94(d,2H,J=1.5Hz).
<有機EL素子の評価>
実施例1および実施例2に係る有機EL素子を作製し、それぞれ電流密度10mA/cm印加時の駆動電圧(V)および外部量子効率(%)を測定した後、定電流駆動したときの輝度保持時間を測定した。また、アニール処理した後の有機EL素子についても、電流密度10mA/cm印加時の駆動電圧(V)を測定した。以下、実施例について詳細に説明する。
なお、発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示したものが内部量子効率である。一方、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出されるものが外部量子効率であり、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたり、または反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
外部量子効率の測定方法は次の通りである。KEITHLEY製2400型汎用ソースメータを用いて、電流密度が10mA/cmになる電圧を印加して素子を発光させた。TOPCON社製分光放射輝度計SR−3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定した。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とした。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。
作製した実施例1および実施例2に係る素子における、各層の材料構成を下記表1に示す。
表1において、「HI−1」はN,N4’−ジフェニル−N,N4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、「HI−2」は1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン−2,3,6,7,10,11−ヘキサカルボニトリル、「HT」はN−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−9,9−ジメチル−N−(4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、「BH」は9−フェニル−10−(4−フェニルナフタレン−1−イル)アントラセン、「BD」は7,7−ジメチル−N,N−ジフェニル−N,N−ビス(4−(トリメチルシリル)フェニル)−7H−ベンゾ[c]フルオレン−5,9−ジアミンである。キノリノールリチウム(Liq)と共に以下に化学構造を示す。
<実施例1:化合物(1−1)を電子輸送材料に用いた素子>
スパッタリングにより180nmの厚さに製膜したITOを150nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI−1を入れたモリブデン製蒸着用ボート、HI−2を入れたモリブデン製蒸着用ボート、HTを入れたモリブデン製蒸着用ボート、BHを入れたモリブデン製蒸着用ボート、BDを入れたモリブデン製蒸着用ボート、化合物(1−1)を入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liqを入れたモリブデン製蒸着用ボート、マグネシウムを入れたモリブデン製蒸着用ボートおよび銀を入れたモリブデン製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10−4Pa以下まで減圧し、まず、HI−1が入った蒸着用ボートを加熱して膜厚40nmになるように蒸着して1層目の正孔注入層を形成し、さらにHI−2が入った蒸着用ボートを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して2層目の正孔注入層を形成し、次いで、HTが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚25nmになるように蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、BHが入った蒸着用ボートとBDの入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚20nmになるように蒸着して発光層を形成した。BHとBDの重量比がおよそ95対5になるように蒸着速度を調節した。次に、化合物(1−1)の入った蒸着用ボートを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した。各層の蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。
その後、Liqが入った蒸着用ボートを加熱して膜厚1nmになるように0.01〜0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着した。次いで、マグネシウムの入ったボートと銀の入ったボートを同時に加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成した。この時、マグネシウムと銀の原子数比が10対1となるように蒸着速度を調節し、蒸着速度が0.01〜2nm/秒になるようにして有機EL素子を得た。
また上記で得られた有機EL素子を100℃に設定した恒温槽中で20分保管することで、有機EL素子のアニール処理を行った。その後、恒温槽から有機EL素子を取り出し、室温に下がるまで自然冷却を行った。
アニール処理前の有機EL素子について、ITO電極を陽極、Liq/(マグネシウム+銀)電極を陰極として、電流密度10mA/cm印可時の特性を測定すると、駆動電圧は3.75V、外部量子効率は5.9%であった。電流密度10mA/cmを印可し、定電流駆動試験を実施した結果、初期輝度の90%以上の輝度を保持する時間は107時間であった。また、90%輝度寿命後の駆動電圧は3.98V、外部量子効率は4.9%であった。
アニール処理を行った有機EL素子について、ITO電極を陽極、Liq/(マグネシウム+銀)電極を陰極として、電流密度10mA/cm印可時の特性を測定すると、駆動電圧は3.49V、外部量子効率は5.8%であった。電流密度10mA/cmを印可し、定電流駆動試験を実施した結果、初期輝度の90%以上の輝度を保持する時間は173時間であった。また、90%輝度寿命後の駆動電圧は3.94V、外部量子効率は4.9%であった。
アニール処理を行った素子の駆動電圧(3.49V)は、アニール処理前(3.75V)と比較して0.26V低下してさらに安定した。
<実施例2:化合物(1−1)をLiqと混合して電子輸送材料に用いた素子>
化合物(1−1)の入った蒸着用ボートとLiqの入った蒸着用ボートを同時に加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層を形成した以外は実施例1に準じた方法で有機EL素子を得た。なお、化合物(1−1)とLiqの重量比がおよそ1:1になるように蒸着速度を調節した。
また上記で得られた有機EL素子を100℃に設定した恒温槽中で20分保管することで、有機EL素子のアニール処理を行った。その後、恒温槽から有機EL素子を取り出し、室温に下がるまで自然冷却を行った。
アニール処理前の有機EL素子について、ITO電極を陽極、Liq/(マグネシウム+銀)電極を陰極として、電流密度10mA/cm印可時の特性を測定すると、駆動電圧は3.96V、外部量子効率は6.7%であった。電流密度10mA/cmを印可し、定電流駆動試験を実施した結果、初期輝度の90%以上の輝度を保持する時間は108時間であった。また、90%輝度寿命後の駆動電圧は4.03V、外部量子効率は5.3%であった。
アニール処理を行った有機EL素子について、ITO電極を陽極、Liq/(マグネシウム+銀)電極を陰極として、電流密度10mA/cm印可時の特性を測定すると、駆動電圧は3.19V、外部量子効率は5.4%であった。電流密度10mA/cmを印可し、定電流駆動試験を実施した結果、初期輝度の90%の輝度を保持する時間は500時間以上であった。また、500時間後の駆動電圧は3.86V、外部量子効率は5.3%であった。
アニール処理を行った素子の駆動電圧(3.19V)は、アニール処理前(3.96V)と比較して0.77V低下してさらに安定した。
以上の結果を表2にまとめた。
本発明の一般式(1)で表される多環式芳香族化合物を用いた有機EL素子は、発熱によるモルフォロジー変化を受けにくいため、アニール処理有無の双方において、長時間駆動前後の電圧の変化が小さい。このため、長期間で温度変化の大きい環境での継続使用が想定される有機EL素子として有用である。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (15)

  1. 下記一般式(1)で表される多環式芳香族化合物。
    (一般式(1)中、
    Ar、ArおよびArはそれぞれ独立して炭素数10〜20の2価の芳香族基であり、Ar、ArおよびArにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよく、
    Ar、ArおよびArの炭素数の合計は30〜38であり、
    PyおよびPyは、それぞれ独立して、2,5−ピリジンジイル、2,5−ピラジンジイル、2,5−ピリミジンジイルまたは2,5−ピリダジンジイルであり、PyおよびPyにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよく、
    Arと結合するPyおよびPyの間の結合軸が成す角度は120〜240度であり、
    およびRはそれぞれ独立してヘキシル基またはヘプチル基であり、当該ヘキシル基またはヘプチル基における任意のメチレン基(−CH−)は−O−または−S−で置き換わっていてもよい。)
  2. Arはナフタレンジイルまたはアントラセンジイルであり、Arにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよい、請求項1に記載の多環式芳香族化合物。
  3. ArおよびArはナフタレンジイルであり、ArおよびArにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよい、請求項1または2に記載の多環式芳香族化合物。
  4. PyおよびPyは2,5−ピリジンジイルであり、PyおよびPyにおける少なくとも1つの水素はメチル基で置換されていてもよい、請求項1〜3のいずれかに記載の多環式芳香族化合物。
  5. Ar、ArおよびArの炭素数の合計は30〜34である、請求項1〜4のいずれかに記載の多環式芳香族化合物。
  6. およびRはヘキシル基である、請求項1〜5のいずれかに記載の多環式芳香族化合物。
  7. 下記式(1−1)または式(1−2)で表される、請求項1に記載の多環式芳香族化合物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の多環式芳香族化合物を含有する電子輸送材料。
  9. 陽極および陰極からなる一対の電極と、請求項1〜7のいずれかに記載の多環式芳香族化合物が自己組織化した化合物を含有する有機層を有する、有機電界発光素子。
  10. 陽極および陰極からなる一対の電極と、該一対の電極間に配置される発光層と、前記陰極と該発光層との間に配置され、請求項1〜7のいずれかに記載の多環式芳香族化合物が自己組織化した化合物を含有する電子輸送層および/または電子注入層とを有する、有機電界発光素子。
  11. 前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、さらに、キノリノール系金属錯体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ボラン誘導体およびベンゾイミダゾール誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項10に記載する有機電界発光素子。
  12. 前記電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つは、さらに、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項10または11に記載する有機電界発光素子。
  13. 請求項9〜12のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた表示装置。
  14. 請求項9〜12のいずれかに記載する有機電界発光素子を備えた照明装置。
  15. 陽極および陰極からなる一対の電極と、請求項1〜7のいずれかに記載の多環式芳香族化合物が自己組織化した化合物を含有する有機層とを有する有機電界発光素子の製造方法であって、
    前記多環式芳香族化合物を含有する有機材料を0.01〜20.0nm/秒で蒸着することにより、自己組織化した多環式芳香族化合物を含有する有機層を形成する、有機電界発光素子の製造方法。
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