JP4801907B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(以下、必要により「有機EL」と称する)素子用透明電極、有機EL素子及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ダークスポットが大幅に減少し、耐久性に優れた有機EL素子用透明電極、有機EL素子及びその製造方法に関する。
有機EL素子は、電子輸送性材料及び/または正孔輸送性材料との間で起こる電荷結合あるいは電荷分離機能を利用することによって、発光、光電変換、増幅といった機能を得ることができる。
従来、特許文献1には、重合性官能基を有する正孔輸送材料によって構成される第1の層と、重合性官能基を有する電子輸送材料によって構成される第2の層とを隣接して設けた有機EL素子及びその製造方法が開示されている。
この特許文献1の発明は、第1の層と第2の層界面において、共有結合が形成され、かかる共有結合は化学的結合なので、単なる物理吸着よりも安定であり、また、密着性が高く、欠陥が少なく、均質である効果がある。
そして、重合性官能基を有する正孔輸送材料と、重合性官能基を有する電子輸送材料とをそれぞれ用いているので、エネルギー照射をしながら正孔輸送材料と電子輸送材料を順次蒸着して設けた場合には、薄膜形成と重合とが同時に進行し、EL素子の膜厚方向(電荷の移動方向)に連続してなる重合鎖が形成され、より電荷移動が効率的に行われる利点がある。
特開2004−103401号公報 特開2004−158530号公報 電極に凹凸を設ける技術
特許文献1の技術では、有機EL素子における電極と機能層間の密着性に改良すべき余地が残されており、本発明者は、ダークスポットが大幅に減少し、耐久性に優れた有機EL素子用透明電極、有機EL素子及びその製造方法の開発をすべく鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
そこで、本発明は、ダークスポットが大幅に減少し、耐久性に優れた有機EL素子用透明電極、有機EL素子及びその製造方法を提供することを課題とする。
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかになる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
基板上の透明電極において、該透明電極上に脂肪族アゾ基を含む化合物からなる層が自己組織化した状態で設けられており、前記透明電極の表面を構成する原子と前記脂肪族アゾ基を含む化合物からなる層を構成する分子とが共有結合を形成していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極。
(請求項
前記透明電極の表面を構成する原子と前記脂肪族アゾ基を含む化合物からなる層を構成する分子との共有結合が、シラノール基又はチオール基によることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極。
(請求項
前記請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項
陽極と陰極からなる両電極の間に、少なくとも正孔輸送機能、発光ホスト機能及び電子輸送機能を各機能別に又は合目的的に組み合わせて層構成してなる機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
該陽極または該陰極が、請求項1又は2記載の透明電極からなることを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項
陽極と陰極からなる両電極の間に、少なくとも正孔輸送機能、発光ホスト機能及び電子輸送機能を各機能別に又は合目的的に組み合わせて層構成してなる機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
透明電極を構成する金属または金属酸化物の層と、該金属または金属酸化物の層に接する接合層からなり、
該接合層が脂肪族アゾ基を含む化合物からなる自己組織化した状態の層であり、
前記機能層は、前記接合層に重合性官能基を有する芳香族化合物を堆積させながら、または堆積させた後に、エネルギー照射して形成してなる請求項3記載のことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項
前記脂肪族アゾ基を含む化合物が、シラノール基又はチオール基を含むことを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項
前記発光ホスト機能を有する機能層に、りん光性化合物を含むことを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
(請求項
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、基板上の電極の表面を洗浄する工程、電極表面に有機化合物を自己組織化して共有結合させる工程、電極表面に共有結合している有機化合物に脂肪族アゾ基を含む化合物を化学結合させる工程を少なくとも含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
(請求項9)
電極表面に共有結合している有機化合物に脂肪族アゾ基を含む化合物を化学結合させる工程の後に、該脂肪族アゾ基を含む化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
(請求項10)
前記脂肪族アゾ基を含む化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する際にあるいは形成した後に、エネルギー照射を行う工程を含むことを特徴とする請求項9記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
(請求項11)
前記脂肪族アゾ基を含む化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程が、電子線照射しながら該重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明によると、ダークスポットが大幅に減少し、耐久性に優れた有機EL素子用透明電極、有機EL素子及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
〔有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極〕
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極は、基板上の透明電極において、該透明電極上に重合開始機能を有する官能基又は化学構造を含む化合物からなる層が自己組織化した状態で設けられており、該透明電極の表面を構成する原子と該層を構成する分子とが共有結合を形成していることを特徴とする。
基板としては、透明のものであれば特に制限はなく、例えばガラス、石英、光透過性プラスチックフィルムなどを挙げることができる。
光透過性プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。また、これらのプラスチックフィルムに光学的透明性を失わない範囲で、有機あるいは無機のフィラーを含有させてもよい。
有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極は、導電性透明材料であれば、陰極と陽極のいずれでも良い、好ましくは陽極である。
陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはインジウムチンオキシド(ITO)、Auなどの金属、CuI、SnO、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
本発明において、電極の表面粗さRmaxは、超薄膜の有機EL素子としての機能を発揮させる上では、0.1〜100nmの範囲であることが好ましい。
本発明において、重合開始機能を有する官能基又は化学構造は、脂肪族アゾ基、アミノ基、過酸化物又は過酸エステルであることが好ましい。
脂肪族アゾ基としては、式R−N=N−R′で表される基であり、式中、R、R′としては、鎖状又は環状の脂肪族基を表し、これらの脂肪族基は、メチル、エチル、プロピルなどのアルキル基、メトキシ、エトキシなどのアルコシキ基、シアノ基、カルバモイル基などの置換基によって置換されていてもよい。R、R′は同一でも異なっていてもよい。
本発明において、脂肪族アゾ基を含む化合物としては、以下の化合物を例示できる。
(水溶性アゾ重合開始剤)
(1)2,2'-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]disulfate dihydrate
10時間半減期温度:46℃
(2)2,2'-Azobis[N-(2-carboxyethyl)-2-methylpropionamidine]hydrate
10時間半減期温度:57℃
(3)2,2'-Azobis{2-[1-(2-hydroxyethyl)-2-imidazolin-2-yl]propane}dihydrochloride
10時間半減期温度:60℃
(4)2,2'-Azobis(1-imino-1-pyrrolidino-2-ethylpropane)dihydrochloride
10時間半減期温度:67℃
(5)2,2'-Azobis[2-methyl-N-(2-hydroxyethyl)propionamide]
10時間半減期温度:87℃
(6)2,2'-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride
10時間半減期温度:44℃
(7)2,2'-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride
10時間半減期温度:56℃
(8)2,2'-Azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]
10時間半減期温度:61℃
(9)2,2'-Azobis{2-methyl-N-[1,1-bis(hydroxymethyl)-2-hydroxyethl]propionamide}
10時間半減期温度:80℃
(油溶性アゾ重合開始剤)
(1)2,2'-Azobis(4-methoxy-2.4-dimethyl valeronitrile)
10時間半減期温度:30℃
(2)Dimethyl 2,2'-azobis(2-methylpropionate)
10時間半減期温度:66℃
(3)1,1'-Azobis(cyclohexane-1-carbonitrile)
10時間半減期温度:88℃
(4)1,[(cyano-1-methylethyl)azo]formamide
10時間半減期温度:104℃
(5)2,2'-Azobis(N-cyclohexyl-2-methylpropionamide)
10時間半減期温度:111℃
(6)2,2'-Azobis(2.4-dimethyl valeronitrile)
10時間半減期温度:51℃
(7)2,2'-Azobis(2-methylbutyronitrile)
10時間半減期温度:67℃
(8)2,2'-Azobis[N-(2-propenyl)-2-methylpropionamide]
10時間半減期温度:96℃
(9)2,2'-Azobis(N-butyl-2-methylpropionamide)
10時間半減期温度:110℃
(高分子アゾ重合開始剤)
(1)ポリジメチルシロキサンユニット含有高分子アゾ重合開始剤
(2)ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤
なお、上記の重合開始剤は、和光純薬社製のアゾ系重合開始剤の中から入手できる。
アミノ基の例としては、R1−NH−R2、R1−N(R2)−R3、−NH2が挙げられる。ここで、R、R、Rは、置換または無置換の脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素である。
過酸化物としては、有機過酸化物が好ましく用いられ、例えば以下の化合構造のものを例示できる。
Figure 0004801907
過酸エステルとしては、例えばパーオキシエステル(R−OC(=O)−OR’) 、ジアルキルパーオキザリルエステル(RO−OC(=O)C(=O)O−OR)、過シュウ酸ジtブチルなどが挙げられる。
本発明において、重合開始機能を有する官能基又は化学構造を含む化合物は、10時間分解半減期温度が、30℃以上120℃以下のものが好ましく用いられる。
本発明において、10時間分解半減期温度というのは、半減期が10時間となる温度をいう。分解速度定数kの温度依存性は、アレニウスの式k=Aexp(−ΔE/RT)によって表される。式において、A:頻度因子、ΔE:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度である。従って、10時間分解半減期温度が低い方が反応活性に優れるので、上記範囲では30℃に近い化合物を選択使用することは好ましいことである。
また、30℃を下回ると電極に重合開始剤を導入する工程もしくは導入した後の基板および電極の保存や運搬の取扱いにおいて、温度管理などの面で特別に注意を要したり、重合開始機能や品質が劣化したりするので、好ましくない。
本発明において、透明電極上に重合開始機能を有する官能基又は化学構造を含む化合物からなる層は、自己組織化した状態で設けられている。
本発明において、「自己組織化」とは、透明電極の表面を構成する原子と重合開始機能を有する官能基又は化学構造を含む化合物からなる層を構成する分子とが化学的に結合されていて、自発的選択的に形成された秩序のある構造を有していることである。
また本発明においては、該透明電極の表面を構成する原子と該層を構成する分子と共有結合を形成していることを特徴としている。従って、強固な結合が形成され、透明電極表面と、該層の密着性に優れ、有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した場合に、ダークスポットが大幅に減少し、耐久性に優れる効果を発揮する。
以下に、自己組織化層の形成と、重合開始機能の付与の実現手段を例示的に説明する。
(自己組織化層の形成)
洗浄済みのITOパターン付きのガラス基板を、例えばトリメトキシアミノプロピルシランの5%トルエン溶液に常温で15時間、浸潤し、基板表面のシラノール処理を行う。
Figure 0004801907
ガラス基板を引き上げ、トルエンで洗浄して未反応のトリメトキシアミノプロピルシランを除去した後、無水コハク酸の5%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に40℃、数時間浸して、基板表面にカルボキシル基を導入し、自己組織化した化合物層を形成する。
Figure 0004801907
このガラス基板をエタノールで十分洗浄し、余分の無水コハク酸を除去した後、清浄な窒素雰囲気下で乾燥する。
この基板を、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドと、ペンタフロロフェノールとを、それぞれ2%、5%含むエタノール混合溶液中に常温で含浸させて、カルボキシル基をペンタフロロフェニルエステルとする。
この基板をエタノールで十分洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させる。
Figure 0004801907
(重合開始機能の付与)
上記のようにして得られた基板を、例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(商品名VAZO56、デュポン社製)の3%メタノール溶液に、常温、数十分、浸して、自己組織化層の表面に重合開始機能を有するアゾ基を導入する。
Figure 0004801907
以上の例は、透明電極の表面を構成する原子と該層を構成する分子との共有結合が、シラノール基によって形成された例であるが、これに限定されず、チオール基によって形成することも好ましい。
チオール基による共有結合の形成例を以下に例示する。
(電極として金(Au)を用いてカルボキシル基の導入)
Figure 0004801907
(カルボキシル基をペンタフロロフェニルエステルに置換)
Figure 0004801907
(自己組織化層の表面に重合開始機能を有するアゾ基を導入)
Figure 0004801907
以上のように形成された本発明の有機EL素子用透明電極は、自己組織化層に重合開始機能が付与されているので、その自己組織化層の上に、重合可能な機能層を積層する過程であるいは積層した後、エネルギーを付与すればラジカル反応等を生起し、互いに化学結合された強固な層を形成できる。
〔有機EL素子〕
次に、本発明の有機EL素子について説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい態様を図1に基づいて説明する。
図1において、1は基板、2は透明電極からなる陽極であり、透明電極を構成する金属または金属酸化物の層(以下、必要により「透明電極層」という)である。3は前記透明電極に接する接合層であり、4は機能層であり、5は陰極である。
機能層4は、少なくとも正孔輸送機能、発光ホスト機能及び電子輸送機能を各機能別に、又は合目的的に(目的に応じて)組み合わせて層構成してなるものである。従って、機能層は単層でもよいし、複数の層によって構成されてもよい。
本発明において、陽極又は陰極の何れか一方は、前述の透明電極であり、好ましいのは陽極が透明電極によって構成されることである。陰極は反射性に優れた材質で形成し、陽極側から収率に優れた発光を得るためである。以下の説明は、陽極に透明電極を使用した例である。
基板1及び透明電極層2に関しては、前述の有機EL素子用透明電極において詳細に説明したので、その説明を援用する。
本発明の有機EL素子は、透明電極層2と接合層3の間、接合層3と機能層4の間で、共有結合を形成していること、即ち、3つの層を構成する各原子または分子が各層の界面で層間をまたいで共有結合を形成していることを特徴とする。
透明電極層2と接合層3の間、接合層3と機能層4の間の共有結合態様としては以下の態様が挙げられる。
(第1の態様)
この態様は、透明電極層2と該自己組織化した状態の接合層3との界面において各々の層を構成する分子間で共有結合を形成している例である。
接合層3は自己組織化した状態の層であり、重合開始機能を有する官能基を含む分子量2000以下の化合物を主成分として含有する。
接合層3に関しては、前述の有機EL素子用透明電極において詳述した自己組織化層を使用できる。従って、特に断らない限り、前述の説明を援用する。
重合開始機能は、脂肪族アゾ基、アミノ基、過酸化物又は過酸エステルで与えられることが好ましく、重合開始機能を有する官能基を含む分子量2000以下の化合物としては、前述の有機EL素子用透明電極において例示した重合開始機能を有する官能基又は化学構造を有する脂肪族アゾ基含有化合物、過酸化物、過酸エステルの中で、分子量が2000以下の化合物を挙げることができる。また接合層の構成成分である重合開始機能を有する官能基を含む分子量2000以下の化合物は、10時間分解半減期温度が、30℃以上120℃以下のものが好ましく用いられる。さらに又、上記の態様において、重合開始機能を有する官能基を含む分子量2000以下の化合物は、シラノール基又はチオール基を含むことが好ましい。
次に、機能層4は重合性芳香族化合物を堆積させた層である。
本発明の重合性芳香族化合物は、接合層との重合性を示す化合物であり、機能層内において、正孔輸送機能及び又は発光ホスト機能を発揮しえる化合物であることが好ましい。
重合性芳香族化合物としては、以下に示す化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0004801907
Figure 0004801907
Figure 0004801907
Figure 0004801907
Figure 0004801907
Figure 0004801907
Figure 0004801907
この態様において、接合層3に機能層4を堆積させる手段は特に限定されないが、接合層の重合開始機能を発現させる上で、何らかのエネルギー照射手段が必要であり、例えば紫外線、電子、イオン、熱、ラジカルビームまたは放射線の照射などの手段を単独で、あるいは組み合わせて用いることが好ましい。
以下に、自己組織化層上に、9H−カルバゾール−9−エチルアクリレート(CEA)を重合した例を説明する。なお、以下の例は、ITO電極にシラノール基を介して導入した例と、金電極にチオール基を介して導入した例を示す。
Figure 0004801907
Figure 0004801907
(第2の態様)
この態様は、透明電極層2と該自己組織化した状態の層である接合層3との界面において各々の層を構成する分子間で共有結合を形成し、且つ該自己組織化した状態の層である接合層3と重合性官能基を有する芳香族化合物を堆積させた層である機能層4との界面において、各々の層を構成する分子間で共有結合を形成している例である。
この態様での接合層3は重合開始機能を有する官能基を含む分子量2000以下の化合物からなる自己組織化した状態の層にエネルギー照射した後の残基を含む層である。
ここでいう「残基」とは、電極表面上に化学結合した分子量2000以下の化合物が重合開始機能を発揮した後に生成したラジカル種、もしくは該ラジカル種を基点として重合した後の重合ユニット手前までの一価の連結基のことをさす。
また、ここでいう分子量とはひとかたまりの電極の金属元素は含めない。また分子量は電極表面に化学結合させる化合物が電極金属と連結する元素までのみの構造から算出する。
エネルギー照射した後の残基としては、アゾ基から窒素分子が脱離した後のアルキルカーボンラジカル、過酸エステルから二酸化炭素が脱離した後のアルキルカーボンラジカル、アルコキシラジカル、カルボキシラジカル、過酸化物が開裂した後のアルコキシラジカル、ペルオキシラジカルなどが挙げられる。この場合の残基は当然のことながら電極に化学結合していることが好ましい。
機能層4は重合性官能基を有する芳香族化合物を堆積させた層である。
重合性官能基を有する芳香族化合物としては、上記の重合性芳香族化合物を例示できる。
この態様において、接合層3に機能層4を堆積させる手段は特に限定されないが、接合層の重合開始機能を発現させる上で、何らかのエネルギー照射手段が必要であり、例えば紫外線、電子線、イオン化、熱、ラジカルビームまたは放射線の照射などの手段を単独であるいは組み合わせて用いることが好ましい。
中でも好ましいのは、重合性官能基を有する芳香族化合物を堆積させた層である機能層4が、重合性官能基を有する芳香族化合物を電子線照射しながら堆積させた層であることである。この第2の態様は機能層4を堆積させる前に接合層3の重合開始機能を活性化させることができるので、接合層3と機能層4との界面、又は界面近傍での化学結合の形成に有効である。実際には上記の操作は真空チャンバーで行なわれることが多いので、重合開始機能発現後の低分子ラジカル成分、すなわち基板に化学結合していない側の分解生成物が真空中に揮散することによって、接合層3による機能層4の構成分子と電極とを化学的に連結させる効果が大きい。
反面、接合層3の重合開始機能を活性化させた後、速やかに機能層4を形成しないと、せっかく活性化させた接合層3の重合開始機能が失活する。すなわち生成ラジカル同士で停止反応、不均化反応などを起こして、機能層4の重合性官能基との反応が進行しないことがあるので注意を要する。
(第3の態様)
この態様は、透明電極層2と該自己組織化した状態の層である接合層3との界面において各々の層を構成する分子間で共有結合を形成しており、さらに該自己組織化した状態の層である接合層3と機能層4との界面において各々の層を構成する分子間で共有結合を形成している例である。
機能層4は重合性芳香族化合物を堆積させた層である。
接合層3は重合開始機能を有する官能基を含む分子量2000以下の化合物からなる自己組織化した状態の層である。
この態様では、接合層3に対して重合性官能基を有する芳香族化合物を堆積させながら、または堆積させた後に、エネルギー照射して、機能層4を形成している。
エネルギー照射手段は、紫外線、電子、イオン、熱、ラジカルビームまたは放射線の照射であることが好ましく、中でも電子線照射が好ましい。この第3の態様では接合層3の重合開始機能の活性化が機能層4の形成中もしくは形成後となるため、接合層3の重合開始機能発現後の低分子ラジカル成分すなわち、基板に化学結合していない側の分解生成物が真空中に揮散しにくい点が第2の態様に対して欠点となるが、エネルギー照射工程が1段階で済むことは製造工程上、多大な長所となる。すなわち大量生産の場合は蒸着チャンバー内の汚染を避けるため、材料種が異なるごとに、すなわち層ごとに異なる蒸着チャンバーを用いるので、エネルギー照射工程が重合性材料の蒸着後に集中していることが望ましい。
(層構成例)
次に、本発明の有機EL素子の層構成について具体的に説明する。
本発明において、前記機能層を機能別に分離した層構成の例を以下に示すが、これらに限定されるわけではない。この層構成では、機能層を中心に説明するため接合層は省略した。
(I)陽極/正孔輸送層(HTL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/陰極
(II)陽極/正孔注入層(HTL1)/正孔輸送層(HTL2)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/陰極
(III)陽極/正孔注入層(HTL1)/正孔輸送層(HTL2)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)/陰極
(IV)陽極/正孔輸送層(HTL)/発光層(EML)/陰極
(V)陽極/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/陰極
(VI)陽極/陽極バッファー層/発光層(EML)/陰極バッファー層/陰極
(VII)陽極/陽極バッファー層/正孔注入層(HTL1)/正孔輸送層(HTL2)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)/陰極バッファー層/陰極
〔電極〕
陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としてはインジウムチンオキシド(ITO)、Auなどの金属、CuI、SnO、ZnOなどの導電性透明材料が挙げられる。
本発明において、電極の表面粗さRmaxは、超薄膜の有機EL素子としての機能を発揮させる上では、0.1〜100nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜50nmの範囲である。電極の表面粗さは、例えば、日本ビーコ社のオプティカルプロファイラー(WYKO NTシリーズ)を用いて測定することができる。有機EL素子では超薄膜の機能膜を電極表面に形成し、光収率を如何に向上させるかが重要な課題であり、従って、特開2004−158530号公報に記載のような電極に凹凸を設ける技術は本質的に有機EL素子には適さない。
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属などが挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化などに対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物などが好適である。上記陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリングなどの方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極の何れか一方が、透明または半透明であれば発光効率が向上するので好都合である。
(機能層)
以下に、各機能層の構成について説明する。
〔発光層〕
本発明において、機能層の中でも、発光ホスト機能を有する層には、発光性化合物を含み、発光性化合物としては、蛍光性化合物および燐光性化合物が挙げられる。
有機EL素子の発光としては、含有する蛍光性化合物または燐光性化合物に由来する発光が得られる。
蛍光性化合物としてはレーザー色素に用いられる量子収率の高い化合物が好ましい。
また、近年、プリンストン大学から励起三重項からの燐光発光を用いる有機EL素子の報告がなされ(M.A.Baldo et al.,nature、395巻、151〜154頁(1998年))、励起一重項からの蛍光発光を用いる有機EL素子に比べて、原理的に発光効率が最大4倍となり注目されている。
本発明においても、燐光性化合物を含有することが発光効率の点で好ましい。
蛍光性化合物として好ましいのは、溶液状態で蛍光量子収率が高いものである。ここで、蛍光量子収率は10%以上、特に30%以上が好ましい。具体的な蛍光性化合物は、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
ここでの蛍光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの362頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定することが出来る。
本発明において好ましく用いられる燐光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、燐光量子収率が、25℃において0.001以上の化合物であり、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.1以上の化合物である。
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に用いられる燐光性化合物は、任意の溶媒の何れかにおいて上記燐光量子収率が達成されれば良い。
本発明で用いられる燐光性化合物としては、好ましくは元素の周期律表でVIII属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくは、イリジウム化合物、オスミウム化合物、又は白金化合物(白金錯体系化合物)であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
以下に、本発明で用いられる燐光性化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
なお含有する蛍光性化合物および燐光性化合物は、重合性官能基を有していてもいなくてもよい。
Figure 0004801907
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上記発光層は、電子輸送層から注入されてくる電子と正孔輸送層から注入されてくる正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の内部であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層に使用される材料(以下、「発光材料」という)は、蛍光または燐光を発する有機化合物または錯体であることが好ましく、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
このような発光材料は、主に有機化合物であり、所望の色調により、例えば、Macromol.Synth.,125巻,17〜25頁に記載の化合物等を用いることができる。
発光材料は、発光ホスト機能の他に、正孔輸送機能や電子輸送機能を併せもっていても良く、正孔輸送材料や電子輸送材料の殆どが、発光材料としても使用できる。
発光材料は、p−ポリフェニレンビニレンやポリフルオレンのような高分子材料でも良く、さらに前記発光材料を高分子鎖に導入した、または前記発光材料を高分子の主鎖とした高分子材料を使用してもよい。
ここで、発光層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により薄膜を形成することが出来るが、本発明では、特に蒸着法が好ましい。
発光層の膜厚については、特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、5nm〜5μmの範囲に膜厚調整することが好ましい。
〔正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層〕
本発明に用いられる、正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する。
この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層の間に介在させることにより、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入され、その上、発光層に陰極、電子注入層、または電子輸送層より注入された電子は、発光層と正孔注入層もしくは正孔輸送層の界面に存在する電子の障壁により、発光層内の界面に累積され発光効率が向上するなど発光性能の優れた素子となる。
−正孔注入材料、正孔輸送材料−
この正孔注入層、正孔輸送層の材料(以下、「正孔注入材料」、「正孔輸送材料」という)については、前記の陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有する性質を有するものであれば特に制限はなく、従来、光導伝性材料において、正孔の電荷注入・輸送材料として慣用されているものや、EL素子の正孔注入層、正孔輸送層に使用される公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。
上記正孔注入材料、正孔輸送材料は、正孔の注入もしくは輸送、電子の障壁性の何れかを有するものであり、有機物、無機物の何れであってもよい。
この正孔注入材料、正孔輸送材料としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどが挙げられる。
正孔注入材料、正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
上記芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更に、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
または、p型−Si、p型−SiCなどの無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
この正孔注入層、正孔輸送層は、上記正孔注入材料、正孔輸送材料を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
正孔注入層、正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、5nm〜5μm程度での範囲に調整することが好ましい。
この正孔注入層、正孔輸送層は、上記材料の一種または二種以上からなる一層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
−電子輸送材料−
電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
この電子輸送層に用いられる材料(以下、「電子輸送材料」という)の例としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、有機金属錯体などが挙げられる。
更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
更に、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)など、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーまたはメタルフタロシアニン、更には、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基などで置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。
また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiCなどの無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
この電子輸送層は、上記化合物を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法などの公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
電子輸送層の膜厚は特に制限はないが、5nm〜5μmの範囲に調整することが好ましい。
この電子輸送層は、これらの電子輸送材料一種または二種以上からなる一層構造であってもよいし、或いは、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
また、本発明においては、上記の蛍光性化合物は発光層のみに限定することはなく、発光層に隣接した正孔輸送層、または電子輸送層に前記燐光性化合物のホスト化合物となる蛍光性化合物と同じ領域に蛍光極大波長を有する蛍光性化合物を少なくとも1種含有させてもよく、それにより更にEL素子の発光効率を高めることができる。
これらの正孔輸送層や電子輸送層に含有される蛍光性化合物としては、発光層に含有されるものと同様に蛍光極大波長が350nm〜440nm、更に好ましくは390nm〜410nmの範囲にある蛍光性化合物が用いられる。
〔バッファー層〕
上記の層構成で示したように、陽極と発光層または正孔注入層の間、及び、陰極と発光層または電子注入層との間にはバッファー層(電極界面層)を存在させてもよい。
バッファー層とは、駆動電圧低下や発光効率向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(第123頁〜第166頁)に詳細に記載されており、陽極バッファー層と陰極バッファー層とがある。
陽極バッファー層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウム、酸化リチウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記バッファー層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1〜100nmの範囲が好ましい。
〔その他の機能層〕
更に上記基本構成層(機能層)の他に、必要に応じてその他の機能を有する層を積層してもよく、例えば特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層などのような機能層を有していても良い。
〔有機EL素子の製造方法〕
次に、有機EL素子の製造方法について説明する。
本発明の有機EL素子の製造方法は、基板上の電極の表面を洗浄する工程、電極表面に有機化合物を自己組織化して共有結合させる工程、電極表面に共有結合している有機化合物に重合開始機能を有する化合物を化学結合させる工程を少なくとも含む。
以下に、基板上の電極の表面を洗浄する工程について説明する。
最初に、ガラス基板上に、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極を蒸着やスパッタリングなどの方法により、所定厚みとなるように形成する。
次いで、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、或いはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状の例えばシャドーマスクを介してパターンを形成してもよい。
例えばスパッタリング法を採用する場合、ITOがスパッタされない部分を、シャドーマスクを用いて同時に形成し、通電時の電極の形状をガラス基板上に作成することが好ましい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、または、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
このITOパターン付きのガラス基板を、純水、5%界面活性剤水溶液、アンモニア性過酸化水素水、イソプロピルアルコールで逐次洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させる。
次に電極表面に有機化合物を自己組織化して共有結合させる工程については、前述の透明電極の自己組織化層の製法を援用し、ここではその説明を省略する。
次に、電極表面に共有結合している有機化合物に重合開始機能を有する化合物を化学結合させる工程は、前述の透明電極の重合開始機能の導入の説明を援用し、ここではその説明を省略する。この工程では、重合開始機能を有する化合物にエネルギー照射を行う工程を含むことが好ましい。
電極表面との共有結合は、シラノール結合又はチオール結合によって形成され、重合開始機能が脂肪族アゾ基の分解によって発現されることが好ましい。
また、本発明の有機EL素子の製造方法の好ましい態様としては、前記の電極表面に共有結合している有機化合物に重合開始機能を有する化合物を化学結合させる工程が、該重合開始機能を有する化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程を含むことである。重合性官能基を有する化合物の層を形成する際には、電子線照射しながら該重合性官能基を有する化合物の層を形成する方法を採用することが好ましい。
〔表示装置〕
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用しても良いし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用しても良い。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでも良い。また異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例によって何ら限定されない。
実施例1
《ITOの成膜と基板の洗浄》
市販の0.7mm厚みのガラス基板上に、酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極をスパッタにより100nmの厚みとなるように形成した。このときITOがスパッタされない部分をシャドーマスクを用いて同時に形成し、通電時の電極の形状をガラス基板上に作成した。
このITOパターン付きのガラス基板を純水、5%界面活性剤水溶液、アンモニア性過酸化水素水、イソプロピルアルコールで逐次洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させた。
《自己組織化膜の導入》
洗浄済みのITOパターン付きのガラス基板をトリメトキシアミノプロピルシランの5%トルエン溶液に常温で15時間浸潤し、基板表面のシラノール処理を行った。
ガラス基板を引き上げ、トルエンで洗浄して未反応のトリメトキシアミノプロピルシランを除去した後、無水コハク酸の5%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に40℃、5時間浸して、基板表面にカルボキシル基を導入し、自己組織化した化合物層を形成した。
このガラス基板をエタノールで十分洗浄し、余分の無水コハク酸を除去した後、清浄な窒素雰囲気下で乾燥した。
この基板を1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドとペンタフロロフェノールとをそれぞれ2%、5%含むエタノール混合溶液中に常温で含浸させて、カルボキシル基をペンタフロロフェニルエステルとした。この基板をエタノールで十分洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させた。
《重合開始機能の付与》
得られた基板を2,2’アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(商品名VAZO56、デュポン社製)の3%メタノール溶液に常温、30分、浸して、自己組織化膜の表面に重合開始機能を有するアゾ基を導入した。
基板をメタノールで洗浄後、清浄な窒素雰囲気下で乾燥し、乾燥した冷暗所に保存し、本発明の電極付きガラス基板(基板1)として使用した。
《比較用の電極の作成》
市販の0.7mm厚みのガラス基板上に、酸化インジウムスズ(ITO)の透明電極をスパッタにより100nmの厚みとなるように形成した。このときITOがスパッタされない部分をシャドーマスクを用いて同時に形成し、通電時の電極の形状をガラス基板上に作成した。このITOパターン付きのガラス基板を純水、5%界面活性剤水溶液、アンモニア性過酸化水素水、イソプロピルアルコールで逐次洗浄し、清浄な窒素雰囲気下で乾燥させた。これを基板2とする。
《本発明の有機EL素子の作製》
正孔輸送材料として、9H−カルバゾール−9−プロピルアクリレート(CPA)を用い、るつぼ温度210℃、照射電子電流5mA、照射電子エネルギー50eVの条件にて、室温に保ったアルミニウム表面上に成膜を行い、高分子薄膜を形成した。膜成長速度は毎分6nmであり、形成した高分子の平均分子量は約50000であった。
次に、本発明の電極を有するITO電極付きガラス基板(基板1)上に、前述と同様の操作により正孔輸送材料CPAを成膜し、次いで電子輸送材料Alq3を各50nmの厚さになるように成膜し、その上にLiFを0.5nm、およびAlを150nm蒸着して積層型素子を形成した。
この素子を窒素雰囲気下でステンレス製封止缶と紫外線硬化性接着剤を用いて貼り合わせた。なお封止缶と素子の間には酸化バリウムを脱水剤として入れた。この素子にITO側を正、Al側を負として13Vの電圧を印加すると、ピーク波長500nmの緑色の発光が観察された。この素子をOLED1−1とする。
(比較例1)
《比較用有機EL素子の作製》
基板2上(ITO透明電極を有する洗浄済みガラス基板)に、正孔輸送層としてα−NPDを50nmの膜厚となるよう定法に従い蒸着成膜した後に、電子輸送材料としてAlq3を50nm膜厚で蒸着成膜し、次いで、LiFを0.5nmおよびAlを150nm膜厚で蒸着して陰極を形成して、有機EL素子を作製した。
この素子を窒素雰囲気下でステンレス製封止缶と紫外線硬化性接着剤を用いて貼り合わせた。なお封止缶と素子の間には酸化バリウムを脱水剤として入れた。
このようにして作製した有機EL素子をOLED2−2とした。
(実施例2)
《本発明の有機EL素子の作製》
実施例1の電極付きガラス基板(基板1)を用いて、4×10−5Pa以下の圧力下で正孔輸送材料α−NPDおよび電子輸送材料Alq3をそれぞれ50nmずつ積層し、その上にLiFを0.5nm、およびAlを150nm蒸着して積層型素子を形成した。実施例1と同様に封止を施し、素子OLED1−2を得た。
(実施例3)
《本発明の有機EL素子の作製》
実施例1の電極付きガラス基板(基板1)を用いて、4×10−5Pa以下の圧力下に維持し、紫外光を電極付きガラス基板に40mW、10秒間、照射して自己組織化膜中にラジカルを生成させたのち、実施例1と同様に9H−カルバゾール−9−プロピルアクリレート(CPA)を用い、るつぼ温度210℃、照射電子電流5mA、照射電子エネルギー50eVの条件で50nmの厚みとなるように蒸着した。
さらに、Alq3を50nm蒸着してから、その上にLiFを0.5nm、およびAlを150nm蒸着して積層型素子を形成した。実施例1と同様な方法で封止を施し、素子OLED3−1を作製した。
(比較例2)
実施例1において、基板1の代わりに基板2を用いた他は、実施例1とまったく同様にして、積層型素子を形成し、素子OLED2−1を作製した。
Figure 0004801907
《有機EL素子の評価》
得られた有機EL素子を、以下のようにして評価を行い、結果を表1に示す。
(発光輝度)
有機EL素子OLED1−1では、初期駆動電圧4Vで電流が流れ始め、緑色の発光を示した。
有機EL素子OLED1−1の温度23℃、10V直流電圧を印加した時の発光輝度(cd/m)、発光効率(1m/W)を測定した。
発光輝度、発光効率は有機EL素子OLED1−1を100とした時の相対値で表した。発光輝度については、CS−1000(ミノルタ製)を用いて測定した。
(耐久性)
10mA/cmの一定電流で駆動したときに、初期輝度が元の半分に低下するのに要した時間である半減寿命時間を指標として表した。
半減寿命時間は有機EL素子OLED1−1を100とした時の相対値で表した。
また、10mA/cmの一定電流で20時間駆動させた後に、2mm×2mm四方の範囲での目視で確認できる非発光点(ダークスポット)の数を測定した。
Figure 0004801907
表1から明らかなように、本発明の電極を用いた有機EL素子では、ダークスポットが大幅に減少し、特に重合性化合物を積層することで寿命も向上することが明らかになった。
(実施例4〜6)
《本発明の電極基板を用いたりん光有機EL素子》
実施例1の本発明の基板1を用いて、4×10−5Pa以下の圧力下で、正孔輸送層40nm、発光層30nm、正孔阻止層10nm、電子輸送層30nm、電子注入層0.5nm、陰極150nmをこの順に蒸着して有機EL素子を作製した。発光層はホストとドーパントの共蒸着で行った。層構成と化合物名を表2に示す。実施例1と同様に封止を行い、素子OLED1−4〜1−6を作製した。
(比較例3)
実施例1の基板2を用いて、実施例4〜6と同様に蒸着および封止を行った素子を試作した。
Figure 0004801907
Figure 0004801907
OLED1−4〜1−6、OLED2−3についても実施例1と同じ評価方法で評価を行った。表3に有機EL素子の評価結果を示す。半減寿命と発光輝度OLED2−3を100としたときの相対値で示す。
Figure 0004801907
表3の結果から明らかなように、りん光発光有機EL素子においても本発明の有機EL素子は寿命に優れ、ダークスポットの発生が抑えられた耐久性の高い素子であることがわかった。
本発明の有機ELの一例を示す概略断面図
符号の説明
1:基板
2:陽極
3:接合層
4:機能層
5:陰極

Claims (11)

  1. 基板上の透明電極において、該透明電極上に脂肪族アゾ基を含む化合物からなる層が自己組織化した状態で設けられており、前記透明電極の表面を構成する原子と前記脂肪族アゾ基を含む化合物からなる層を構成する分子とが共有結合を形成していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極。
  2. 前記透明電極の表面を構成する原子と前記脂肪族アゾ基を含む化合物からなる層を構成する分子との共有結合が、シラノール基又はチオール基によることを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極。
  3. 前記請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用透明電極を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 陽極と陰極からなる両電極の間に、少なくとも正孔輸送機能、発光ホスト機能及び電子輸送機能を各機能別に又は合目的的に組み合わせて層構成してなる機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    該陽極または該陰極が、請求項1又は2記載の透明電極からなることを特徴とする請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 陽極と陰極からなる両電極の間に、少なくとも正孔輸送機能、発光ホスト機能及び電子輸送機能を各機能別に又は合目的的に組み合わせて層構成してなる機能層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    透明電極を構成する金属または金属酸化物の層と、該金属または金属酸化物の層に接する接合層からなり、
    該接合層が脂肪族アゾ基を含む化合物からなる自己組織化した状態の層であり、
    前記機能層は、前記接合層に重合性官能基を有する芳香族化合物を堆積させながら、または堆積させた後に、エネルギー照射して形成してなる請求項3記載のことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 前記脂肪族アゾ基を含む化合物が、シラノール基又はチオール基を含むことを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 前記発光ホスト機能を有する機能層に、りん光性化合物を含むことを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、基板上の電極の表面を洗浄する工程、電極表面に有機化合物を自己組織化して共有結合させる工程、電極表面に共有結合している有機化合物に脂肪族アゾ基を含む化合物を化学結合させる工程を少なくとも含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  9. 電極表面に共有結合している有機化合物に脂肪族アゾ基を含む化合物を化学結合させる工程の後に、該脂肪族アゾ基を含む化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項8記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  10. 前記脂肪族アゾ基を含む化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する際にあるいは形成した後に、エネルギー照射を行う工程を含むことを特徴とする請求項9記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  11. 前記脂肪族アゾ基を含む化合物の層上に、重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程が、電子線照射しながら該重合性官能基を有する化合物の層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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