JP5879737B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。詳細には、ガラス転移点が異なる2種以上の材料からなる電子輸送層を熱処理して製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(以下、ELDと略記する)がある。ELDとしては、無機エレクトロルミネッセンス素子(以下、無機EL素子ともいう)や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機EL素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
一方、有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能である。更に、有機EL素子は、自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点からも注目されている。
また、有機EL素子は、従来実用に供されてきた主要な光源、例えば、発光ダイオードや冷陰極管と異なり、面光源であることも大きな特徴である。この特性を有効に活用できる用途として、照明用光源や様々なディスプレイのバックライトがある。特に近年、需要の増加が著しい液晶フルカラーディスプレイのバックライトとして用いることも好適である。
これら有機EL素子の製造方法としては、蒸着法、ウェットプロセス等があるが、真空プロセスを必要とせず、連続生産が簡便であるという理由で近年はウェットプロセスにおける製造方法が注目されている。
ウェットプロセスで製造された有機EL素子を前述のような照明用光源、あるいはディスプレイのバックライトとして実用する為の課題として低電圧駆動や発光寿命の向上が挙げられる。
例えば、特許文献1には、有機EL素子に電子注入域を設け、当該電子注入域に電子輸送層化合物と、還元性ドーパントを含有させ、かつ当該電子注入域のガラス転移点を100℃以上にすることで、有機EL素子の駆動電圧の低減及び発光寿命の向上が得られたことが記載されている。
また、例えば、特許文献2には、電子輸送層等の有機層が形成される際または形成された後に、加圧と共に当該有機層を構成する材料のガラス転移点よりも高い温度で加熱することによって、有機EL素子の長寿命化を実現したことが記載されている。
特開平11−354283号公報 特開2009−129567号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載の製造方法によって得られた有機EL素子の駆動電圧及び発光寿命では、まだまだ実用性に乏しく、更なる改善が求められる。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ウェットプロセスで成膜した後、熱処理を行うことにより形成した電子輸送層を含む有機機能層を有する有機EL素子の製造方法において、従来の有機EL素子よりも、さらに低電圧駆動及び発光寿命の長寿命化を実現できる有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板上に、一対の電極と、前記一対の電極の間に少なくとも発光層及びガラス転移点が異なる2種以上の材料からなる電子輸送層を含む有機機能層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記電子輸送層は、前記一対の電極のうちの陽極の上部に形成された前記発光層の前記陽極から遠い側にウェットプロセスで成膜した後、熱処理を行うことにより形成され、かつ、前記2種以上の材料の全質量のうち、前記熱処理の温度よりも低いガラス転移点を有する材料を0.1質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記電子輸送層は、前記2種以上の材料の全質量のうち、前記熱処理の温度よりも低いガラス転移点を有する材料を1質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記熱処理の温度は、前記ウェットプロセスに用いる液媒体の沸点よりも高いことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記熱処理の温度は、前記発光層を構成する材料のガラス転移点のうち最も低いガラス転移点よりも低いことを特徴とする。
本発明によれば、従来よりも低電圧駆動及び発光寿命に優れた有機EL素子の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、ガラス転移電が異なる2種以上の材料からなる電子輸送層を有する有機EL素子の製造方法において、前記電子輸送層は、前記一対の電極のうちの陽極の上部に形成された前記発光層の前記陽極から遠い側にウェットプロセスで成膜した後、熱処理を行うことにより形成され、かつ、前記2種以上の材料の全質量のうち、前記熱処理の温度よりも低いガラス転移点を有する材料を0.1質量%以上、30質量%以下含有することを特徴とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、ガラス転移点(以下、Tgともいう)の異なる2種以上の材料からなる電子輸送層を有する有機EL素子の製造方法において、電子輸送層は、前記一対の電極のうちの陽極の上部に形成された前記発光層の前記陽極から遠い側にウェットプロセスで成膜した後、熱処理を行うことにより形成され、かつ、前記2種以上の材料の全質量のうち、前記熱処理の温度よりも低いガラス転移点を有する材料を0.1質量%以上、30質量%以下含有することにより低電圧駆動及び発光寿命に優れた有機EL素子が製造できることがわかった。
このような現象が起こることを発明者らは以下の様に推測する。
つまり、本発明に係るウェットプロセスで成膜した電子輸送層は、熱処理を行うことにより形成するが、当該電子輸送層を構成する2種以上の材料の全質量のうち、当該熱処理の温度よりも低いTgを有する材料を0.1質量%以上、30質量%以下含有することで、電子輸送層内の低Tg材料(2種以上のうち、熱処理温度より低いTg材料)が、電子輸送層内で流動や、再配列を起こし、使用した液媒体の脱離の促進や、電子輸送層の膜密度の向上が起こるため、と推測する。
一般的に、ウェットプロセスにおける製造の場合、成膜中または成膜後の層に液媒体が残留しやすく、残留した液媒体の影響で有機EL素子性能、特に発光寿命を劣化させる場合がある。成膜中または成膜後に残留する液媒体を除去する為には、成膜を加熱乾燥することが常套である。しかし、従来、この加熱乾燥時の温度は、使用する材料の劣化や成膜の構造変化に伴う性能劣化を起こさない範囲に限定される。とりわけ、材料のTgを越える温度で加熱乾燥すると成膜の構造変化や積層界面における混合を生じやすく、性能劣化を起こしやすいが、本発明に係る製造方法で製造した有機EL素子は、そのようなことを抑制し、低電圧駆動及び発光寿命に優れている。
<ウェットプロセス>
本発明に係る電子輸送層は、ウェットプロセスにより形成される。既知のウェットプロセスの塗布方法としては、ダイコート法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、スプレー法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、本発明においてはダイコート法、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
ウェットプロセスに用いる液媒体は、特に制限されないが、電子輸送層を形成する材料が均一に溶解される溶液でも、材料が固形分として分散される分散液でもよい。分散方法としては、超音波、高剪断力分散やメディア分散等の分散方法により分散することができる。
液媒体としては、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、ジクロロヘキサノン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n− プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、炭酸ジエチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合液媒体等が挙げられる。
これらの液媒体の沸点としては、迅速に液媒体を乾燥させる観点から後述する熱処理の温度未満の沸点が好ましく、当該熱処理の温度にもよるが、具体的には60℃〜200℃が好ましく、更に好ましくは、80℃〜180℃の範囲である。
<電子輸送層>
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味では後述する電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。
本発明に係る電子輸送層はTgの異なる2種以上の材料からなり、かつ当該Tgの異なる2種以上の材料のうち後述する熱処理の温度より低いTgを有する材料を、電子輸送層を構成する全体の材料の0.1質量%以上、30質量%以下、好ましくは1質量%以上、20質量%以下の割合で含有している。この質量%とは、電子輸送層を形成する材料全体の質量%を指し、電子輸送層を形成する材料全体には、後述する電子輸送を形成する材料を溶解または分散する液媒体は含ない。
Tgの測定方法は既知のものを使用でき、例えば、DSC法(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる。
電子輸送層は単層または複数層設けることができる。電子輸送層を複数層設ける場合、上記Tgの異なる2種以上の材料からなる本発明の電子輸送層は、少なくとも1層設ければよく、複数層の全ての層が本発明の電子輸送層である必要はない。
単層の電子輸送層に用いる電子輸送材料、或いは複数層の電子輸送層を設ける場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
電子輸送材料として用いられる化合物として、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
更に上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、後述する発光層の材料として例示するジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。電子輸送層は上記電子輸送材料を2種以上組み合わせて、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、スプレー法、印刷法及びスロット型コータ法等のウェットプロセスにより形成する。
電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。
また、不純物をドープしたn性の高い電子輸送層を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。このようなn性の高い電子輸送層を用いることがより低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
以下、電子輸送層に用いられる電子輸送材料の一例を示す。なお、本発明に係る電子輸送層はこれらの材料に限定されない。
Figure 0005879737
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<熱処理>
本発明に係る熱処理は、ウェットプロセスで電子輸送層が成膜された後に行う。熱処理の方法については、特に限定されるものではないが、例えば、電子輸送層をチャンバー内で加熱し熱処理する方法等がある。
熱処理の温度は、電子輸送層に含有させる材料のTgによるが、例えば、50〜200℃の範囲であり、好ましくは100〜150℃の範囲である。この熱処理の温度とは、熱処理されている後述する基板の表面の温度のことを指す。
なお、この加熱温度は、電子輸送層と隣接する層、例えば、後述する発光層を形成する材料のTg未満の温度で加熱することが好ましい。発光層が複数の材料で形成される場合には、その複数の材料の中でも一番低いTgを有する材料のTg未満の温度にすることが好ましい。
発光層を構成する一番低いTgを有する材料のTg未満の温度で熱処理を行うことで、発光層と当該発光層に隣接する電子輸送層との界面での混合を防ぐことができ、有機EL素子の性能劣化を抑制することが可能である。
熱処理する処理時間に特に限定はないが、好ましくは10秒〜90分、さらに好ましくは10秒〜30分であり、特に好ましくは10秒〜10分の範囲であることである。
熱処理は、電子輸送層が形成された後に行われるが、電子輸送層が形成された後に連続して行われても、間隔をあけ非連続で行われても良い。どちらの場合も、電子輸送層内に残存している液媒体の蒸発が促進され本発明の効果が奏される。熱処理の好ましいタイムングとしては、電子輸送層を成膜した後、かつ後述する電子注入層または陰極が形成される前のタイミングである。
以下、本発明の有機EL素子の各構成要素の詳細について、順次説明する。
《有機EL素子の層構成》
本発明の有機EL素子の有機機能層の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。有機機能層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、発光層、電子阻止層、電子輸送層及び電子注入層等がある。
(i)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
また、発光層と正孔輸送層の間に、後述するホスト化合物からなる中間層を設けても良い。
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層等から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよいが、好ましくは発光層の層内で発光することである。
発光層は、後述する発光ホスト及び発光ドーパントから構成される。
発光層の膜厚は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2nm〜200nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは5nm以上、100nm以下の範囲に調整される。
本発明に係る発光層の形成方法は特に限定されるものではなく、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
以下に発光層に含まれる発光ドーパント(発光ドーパント化合物ともいう)、ホスト化合物について説明する。
(発光ホスト)
本発明において発光ホストとは、発光層に含有される化合物の内でその層中での質量比が20%以上であり、且つ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
発光ホストとしては、公知の発光ホストを単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。発光ホストを複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができるので好ましい。
発光ホストは、従来公知の発光ホストとして用いられる低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でも良い。
複数種併用してもよい公知の発光ホストとしては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ発光の長波長化を防ぎ、なお且つ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましく用いられる。
公知の発光ホストの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
(発光ドーパント)
より発光効率の高い有機EL素子を得る観点から、有機EL素子の発光層には、上記の発光ホストを含有すると同時に、発光ドーパントを含有させる。発光ドーパントとしては、蛍光ドーパント及びリン光ドーパントが挙げられる。
まず、蛍光ドーパントから説明する。
(蛍光ドーパント)
蛍光ドーパントは、蛍光を発する化合物のことであり、具体的に、蛍光ドーパントとしては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
次にリン光ドーパントについて説明する。
(リン光ドーパント)
リン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、リン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は、原理として2種挙げられる。一つはキャリアが輸送される発光ホスト上でキャリアの再結合が起こって発光ホストの励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型。もう一つは、リン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。何れの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーは発光ホストの励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
リン光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。リン光ドーパントとしては、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
次に、本発明の有機EL素子の構成層として用いられる、注入層、阻止層、電子輸送層
等について説明する。
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
正孔注入層は上記の如く陽極と正孔輸送層との間や、陽極と発光層との間に必要に応じて設けることができ、電子注入層は陰極と電子輸送層との間や、陰極と発光層との間に必要に応じて設けることができる。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
また、特開平6−025658号に記載されているフェロセン化合物、特開平10−2
33287号等に記載されているスターバースト型の化合物、特開2000−06805
8号、特開2004−6321号に記載されているトリアリールアミン型の化合物、特開
2002−117979号に記載されている含硫黄環含有化合物、US2002/015
8242、US2006/0251922号、特開2006−49393号等に記載され
ているヘキサアザトリフェニレン化合物等も正孔注入層として挙げられる。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
上記正孔注入層及び電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
また、上記正孔注入層及び電子輸送層を形成する方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、上記の如く有機EL素子の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。阻止層には、正孔阻止層及び電子素子層がある。
正孔阻止層とは広い意味では、前述の電子輸送層に用いられた電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料(電子輸送性材料)からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができるものである。
正孔阻止層としては、例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
また、前述の電子輸送層を構成する材料を必要に応じて、本発明に係わる正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは広い意味では、後述する正孔輸送層に用いられる正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい電子阻止材料(正孔輸送性材料)からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができるものである。
また、後述する正孔輸送層を構成する材料を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
上記正孔阻止層及び電子輸送層の膜厚としては、好ましくは3nm〜100nmであり、更に好ましくは5nm〜30nmである。
また、上記正孔阻止層及び電子輸送層を形成する方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送性材料からなり、広い意味で前述の正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送性材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記したものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高
分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も、正孔輸送性材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)に記載されているような、所謂p型正孔輸送材料を用いることもできる。
正孔輸送層は上記した正孔輸送性材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5nm〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、上記正孔輸送層を形成する方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
また、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送層を用いることもできる。その例として
は、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−
102175号公報の各公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)
等に記載されたものが挙げられる。
《一対の電極》
本発明に係る一対の電極とは、陽極及び陰極である。
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。
また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1000nm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
一方、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。尚、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《基板》
本発明の有機EL素子に用いることのできる基板としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。基板側から光を取り出す場合には、基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板としては、ガラス、石英及び透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面にはバリア膜として、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよい。樹脂フィルムの表面に被膜されるものとしては、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更には、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が、10−5g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等の有機EL素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
不透明な基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
上記したような基板を用いて、本発明の有機EL素子の発光の室温における外部取り出し効率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上である。
ここに、外部取り出し量子効率(%)は下記の士気で表される。
外部取り出し量子効率(%)=有機EL素子外部に発光した光子数/有機EL素子に流した電子数×100である。
《封止》
有機機能層等を外部と封止する封止手段としては、例えば、封止部材と電極、基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
この中でも、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。
更には、ポリマーフィルムは、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−6g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。
また、封止部材を凹状に加工するには、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)の接着剤、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを用いた接着剤及びカチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、接着剤を接着する際に加熱する場合には、有機EL素子が熱処理により劣化することがあるので、室温から80℃までに接着硬化できる接着剤を用いることが好ましい。
また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また別の態様では、有機機能層を挟み基板と対向する側の電極の外側に該電極と有機機能層を被覆し、基板と接する形で無機物及び/または有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。
この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素等の有機EL素子に劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素または窒化珪素等を用いることができる。
更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
《保護膜、保護板》
有機機能層を挟み基板と対向する側の前記封止膜、あるいは前記封止用フィルムの外側に、素子の機械的強度を高めるために保護膜、あるいは保護板を設けてもよい。特に封止が前記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。
保護板として用いることできる材料としては、前記封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量且つ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
《光取り出し》
有機EL素子は空気よりも屈折率の高い(屈折率が1.7〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(米国特許第4,774,435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)等がある。
これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、電極や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明はこれらの手段を組み合わせることにより、更に高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
電極と基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また、更に1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚みは媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。
この方法は回折格子が1次の回折や2次の回折といった所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは、媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは発光
層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。回折格子を導入する位置としては前述の通り、いずれかの層間もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。また、回折格子の配列は正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
《集光シート》
有機EL素子は基板の光取り出し側に、例えば、マイクロレンズアレイ状の構造を設けるように加工し、あるいは所謂集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば、素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、例えば、液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして、例えば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)等を用いることができる。プリズムシートの形状としては、例えば、基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
また、発光素子からの光放射角を制御するために、光拡散板・フィルムを集光シートと併用してもよい。例えば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)等を用いることができる。
《有機EL素子の製造方法》
本発明の有機EL素子の製造方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法を説明する。
まず、適当な基体上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ陽極を作製する。
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層の有機機能層を形成させる。
本発明の有機EL素子の電子輸送層は前述の通り、ウェットプロセスで成膜される。電子輸送層以外の有機機能層の形成方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、スプレー法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、本発明においては有機層の一部もしくは全部について、スピンコート法、インクジェット法、スプレー法、印刷法等の塗布法による成膜が好ましい。
有機機能層をウェットプロセスで成膜する場合、有機機能層を形成する各材料を溶解または分散する液媒体としては、前述の液媒体を用いることができる。
本発明の有機EL素子の製造方法は、電子輸送層を少なくともウェットプロセスで成膜した後、前述の熱処理を行うことで形成することを特徴とするものであり、これらの熱処理は電子輸送層を形成した直後に施しても良いし、上述の他の層を積層した後に施しても良い。好ましくはウェットプロセスで成膜する電子輸送層の形成工程の直後である。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。また、以下の実施例において用いられる化合物の構造を下記に示す。
Figure 0005879737
実施例1
<有機EL素子の作製>
〔有機EL素子101の作製〕
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板(NHテクノグラス製NA45)上に、陽極として透明なITO(インジウムチンオキシド)を100nmの膜厚でパターニングを行い製膜した後、このITO透明陽極を設けた基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した後、UVオゾン洗浄を5分間行った。洗浄後の基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒の条件でスピンコート法により製膜した後、基板表面温度200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの正孔注入層を設けた。
正孔注入層を設けた基板を、窒素雰囲気下、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppmのグローブボックスへ移した。グローブボックス中にて正孔輸送層用塗布液を下記のように調製し、1500rpm、30秒の条件でスピンコート法により製膜した。この基板を、基板表面温度150℃で30分間加熱乾燥し正孔輸送層を設けた。別途用意した基板にて、同条件にて塗布を行い測定したところ、膜厚は20nmであった。
(正孔輸送層用塗布液)
モノクロロベンゼン 100g
ポリ−(N,N′−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)ベンジジン)(ADS254BE:アメリカン・ダイ・ソース社製) 0.5g
次いで、発光層用塗布液を下記のように調製し、2000rpm、30秒の条件でスピンコート法により製膜した。さらに基板表面温度120℃で30分加熱乾燥し発光層を設けた。別途用意した基板にて、同条件にて塗布を行い測定したところ、膜厚は40nmであった。
また、下記発光層を形成する材料のうち、最も低いTgを示したのはHS−11であり、そのTgは132℃であった。Tgの測定は、原子間力顕微鏡にヒーター兼温度検出器のサーマルプローブを組み合わせて、HS−11のTgを測定した。
(発光層用塗布液)
酢酸ブチル 100g
HS−11 1g
D−28 0.11g
Ir−1 0.002g
Ir−14 0.002g
次いで、電子輸送層用塗布液を下記のように調製し、1500rpm、30秒の条件でスピンコート法のより製膜した。さらに基板表面温度120℃で30分加熱乾燥し電子輸送層を設けた。別途用意した基板にて、同条件にて塗布を行い測定したところ、膜厚は30nmであった。
また、上記発光層形成材料と同じように、下記電子輸送層を形成する各材料のTgを測定した。最も低いTgを示したのはET−9であり、そのTgは87℃であった。また、ET−10のTgは147℃であった。
なお、TEPOの沸点は109℃であった。
(電子輸送層用塗布液)
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO) 100g
ET−10 0.94g
ET−9 0.06g
次いで、電子輸送層まで設けた基板を、大気曝露せずに、蒸着機に移動し、4×10−4 Paまで減圧した。尚、フッ化カリウムおよびアルミニウムをそれぞれタンタル製抵抗加熱ボートに入れ、蒸着機に取り付けておいた。
先ず、フッ化カリウムの入った抵抗加熱ボートに通電し加熱し、電子輸送層まで設けられた基板上にフッ化カリウムからなる電子注入層を3nm設けた。続いて、アルミニウムの入った抵抗加熱ボートに通電加熱し、蒸着速度1〜2nm/秒でアルミニウムからなる膜厚100nmの陰極を設けた。
陰極まで設けた基板を、大気曝露させることなく、窒素雰囲気下、JIS B9920に準拠し測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppmのグローブボックスへ移動し、捕水剤である酸化バリウムを添付したガラス製の封止缶にて封止を行い、有機EL素子101を得た。なお、捕水剤である酸化バリウムは、アルドリッチ社製の高純度酸化バリウム粉末を、粘着剤付きのフッ素系半透過膜(ミクロテックスS−NTF8031Q 日東電工製)でガラス製封止缶に貼り付けたものを予め準備して使用した。封止缶と陰極まで設けた基板の接着には紫外線硬化型の接着剤を用い、紫外線を照射することで両者を接着し有機EL素子101素子を作製した。
〔有機EL素子102〜108の作製〕
上記有機EL素子101の作製において、電子輸送層の材料組成を下記表1に記載した材料に変更した以外は同様にして有機EL素子102〜108を作製した。
〔有機EL素子109の作製〕
上記有機EL素子101の作製において、電子輸送層の材料を塗布するために用いる液媒体2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFPO)(沸点109℃)から、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール(OFPT)(沸点141℃)に変更した以外は同様にして有機EL素子109を作製した。
〔有機EL素子110の作製〕
上記有機EL素子101の作製において、熱処理温度を120℃から、90℃に変更した以外は同様にして有機EL素子110を作製した。
〔有機EL素子111〜113の作製〕(比較例)
上記有機EL素子101の作製において、電子輸送層の材料組成を表1に記載した材料
に変更した以外は同様にして有機EL素子111〜113を作製した。
〔有機EL素子115の作製〕(比較例)
上記有機EL素子101の作製において、電子輸送層の形成をウェットプロセスから真空蒸着で形成した以外は同様にして有機EL素子115を作製した。なお、真空蒸着は、市販の真空蒸着装置を用い、発光層まで設けた基板に電子輸送層を形成する材料ET−10及びET−9が所定の割合になるよう膜厚30nm蒸着して電子輸送層を形成した。
〔有機EL素子116の作製〕(比較例)
上記有機EL素子115の作製において、電子輸送層の材料組成を表1に記載した材料に変更した以外は同様にして有機EL素子116を作製した。
<有機EL素子の評価>
〔輝度−電圧特性〕
作製した有機EL素子に対し、印加する電圧を変化させながら輝度を測定し、正面輝度1000cd/mの発光が得られるときの電圧値を内挿により求めた。測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。得られた結果を有機EL素子111の測定値を100としたときの相対値で下記のように評価し表1に表した。なお、電圧の相対値は小さい値の方が、駆動電圧が低く好ましい結果であることを示す。
◎:電圧の相対値が90未満
○:電圧の相対値が90以上、100未満
△:電圧の相対値が100以上、105未満
×:電圧の相対値が105以上
〔発光寿命〕
作製した有機EL素子に対し、正面輝度1000cd/mとなるような電流を与え、連続駆動した。正面輝度が初期の半減値(500cd/m)になるまでに掛かる時間を測定した。得られた結果を有機EL素子111の測定値を100としたときの相対値で下記のように評価し表1に表した。なお、発光寿命の良好なものほど発光寿命が長く、好ましい結果であることを表す。
◎:寿命の相対値が110以上
○:寿命の相対値が105以上、110未満
×:寿命の相対値が95以上、105未満
Figure 0005879737
表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法で作製した有機EL素子101〜110は、駆動電圧及び発光寿命が良好である。特に、熱処理の温度よりも低いガラス転移点を有する材料を1質量%以上、20質量%以下含有して製造された有機EL素子101、102及び106〜108は良好な素子性能を示した。
なお、表1に記載されているTg114℃の材料はET−11であり、Tg140℃の材料は、ET−12である。

Claims (4)

  1. 基板上に、一対の電極と、前記一対の電極の間に少なくとも発光層及びガラス転移点が異なる2種以上の材料からなる電子輸送層を含む有機機能層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
    前記電子輸送層は、前記一対の電極のうちの陽極の上部に形成された前記発光層の前記陽極から遠い側にウェットプロセスで成膜した後、熱処理を行うことにより形成され、かつ、前記2種以上の材料の全質量のうち、前記熱処理の温度よりも低いガラス転移点
    を有する材料を0.1質量%以上30質量%以下含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 前記電子輸送層は、前記2種以上の材料の全質量のうち、前記熱処理の温度よりも低いガラス転移点を有する材料を1質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記熱処理の温度は、前記ウェットプロセスに用いる液媒体の沸点よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 前記熱処理の温度は、前記発光層を構成する材料のガラス転移点のうち最も低いガラス転移点よりも低いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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