JP5895699B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が挙げられる。
無機EL素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
有機EL素子は、1μm程度の有機膜で構成されており、低電圧駆動が可能なため、次世代平面ディスプレイや照明として期待されている。また、その商品用途としての機能から「高効率・高輝度・長寿命」のすべてを満足させる有機EL素子が求められている。
たとえば、有機EL素子の構成として、陽極上に発光色の異なる複数の有機発光材料が並列配置され、白色発光を得る有機ELパネルについて開示されているが(特許文献1参照)、当該構成では、有機発光材料間に非発光領域が形成されているため、光取り出し効率を低下させる要因となっている。
そこで、「高効率・高輝度・長寿命」のすべてを満足させる有機EL素子として、直列接続したマルチユニット構造を有する有機EL素子が研究・開発されている。このマルチユニット構造の有機EL素子においては、青色、緑色、赤色を発光する材料をすべてリン光発光材料で構成したり、青色を発光する材料のみ蛍光発光材料とし、緑色、赤色を発光する材料をリン光発光材料で構成する等のさまざまな検討がなされている。
しかしながら、照明として色温度3000K程度の電球色から7000Kのいわゆる昼白色まで各種色温度の白色を高輝度かつ長寿命な有機EL素子についての報告は未だなされていないのが現状である。
一方で、色調整を行う有機EL素子として、陽極と陰極との間に、複数の発光層を有し、該発光層間に輸送層が配置された有機EL素子についての技術が開示されている(特許文献2参照)。当該特許文献では、発光させる層を適宜変更して色調整を行っている。
特開2002−164170号公報 特開2006−005012号公報
上記したように、発光色を分けるマルチユニット構造の有機EL素子において、与える電荷に対して、理想的に励起発光するエネルギーのバランスをすべての色温度領域で調整することは難しく、発光ドーパントのドープ量や膜厚等で色調整をする必要がある。しかしながら、ドープ量や膜厚等での色調整は、素子性能を低下させ、またバリエーションを揃えることが難しいという問題を抱えている。
したがって、本発明の主な目的は、マルチユニット構造の特徴である高輝度かつ長寿命を保持しつつ、色温度がプロセスで簡便に調整可能な有機EL素子を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
陽極と陰極との間に、少なくとも2つの発光ユニットと、該発光ユニット間に配置されているコネクタ層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陰極側に位置する発光ユニットが、発光画素の面内方向において、前記陽極側に位置する発光ユニットと発光色が同じである領域と、発光色が異なる領域とに区画されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
また、本発明の他の態様によれば、
陽極と陰極との間に、少なくとも2つの発光ユニットと、該発光ユニット間に配置されているコネクタ層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記陰極側に位置する発光ユニットが、発光画素の面内方向において、前記陽極側に位置する発光ユニットと発光色が異なる領域と、発光ユニットが存在しない領域とに区画され
前記陽極側に位置する発光ユニットが、少なくとも蛍光発光層を含み、
前記陰極側に位置する発光ユニットが、少なくともリン光発光層を含み、
前記発光色が異なる領域が、同一膜厚で設けられており、
前記発光色が異なる領域と前記発光ユニットが存在しない領域との面積比を変化させることにより、色温度を調整可能とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
本発明によれば、マルチユニット構造の特徴である高輝度かつ長寿命を保持しつつ、色温度が調整可能な有機EL素子を提供することができる。
有機EL素子の概略構成の一例を示す斜視図である。 有機EL素子の概略構成の一例を示す断面図である。 発光ユニットの概略構成の一例を示す平面図である。 発光ユニットの概略構成の一例を示す平面図である。 発光ユニットの概略構成の一例を示す平面図である。 有機EL素子の概略構成の一例を示す断面図である。 図2の有機EL素子の変形例の概略構成の一例を示す断面図である。 変形例における発光ユニットの概略構成の一例を示す平面図である。 変形例における発光ユニットの概略構成の一例を示す平面図である。 変形例における発光ユニットの概略構成の一例を示す平面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《有機EL素子の層構成》
本発明における有機EL素子は、少なくとも2つの発光ユニットを有し、その発光ユニット間にコネクタ層が配置された構成をしている。
以下、その一例として、2つの発光ユニットを有する有機EL素子について説明するが、特にこれに限定されるものではない。
図1に示すとおり、有機EL素子1は支持基板2上に、陽極4、発光ユニット6、コネクタ層8、発光ユニット10、陰極12が順次積層され、構成されている。基板2の陽極4側とは反対側には、光取出しフィルム14が形成されている。
発光ユニット6は、少なくとも1層の発光層を含む、有機化合物層16aから構成されている。
発光ユニット10は、少なくとも1層の発光層を含む、有機化合物層16b,18とから構成されている。
有機化合物層16aと有機化合物層16bは、同一の発光色を有し、有機化合物層18は、有機化合物層16a,16bとは異なる発光色を有する。
たとえば、有機化合物層16a,16bに青色、有機化合物層18に緑色、赤色を発光させる。それらの発光を光取出しフィルム14において散乱させることで、白色発光させることが可能となる。
有機化合物層16b,18は、図2に示すとおり、陰極12とコネクタ層8との間に形成され、左右方向Aに沿って交互に並列配置されている。
有機化合物層16b,18は、平面視において、ストライプ状に形成され、交互に並列配置されている。詳しくは、図3に示すとおり、線状の有機化合物層16b,18が左右方向Aに沿って、交互に配列されている。
有機化合物層16b,18の左右方向Aの幅(面積比)は、適宜変更可能となっており、たとえば、有機化合物層16bの幅を大きくした場合には、有機化合物層18の幅を小さくし、反対に、有機化合物層16bの幅を小さくした場合には、有機化合物層18の幅を大きくする。
有機化合物層16bと有機化合物層18との間には、隙間が形成されていないことが好ましい。
また、有機化合物層16b,18の他の形状として、有機化合物層16bを窓状(矩形状)に複数形成し、その有機化合物層16bを囲むように有機化合物層18を形成してもよい。詳しくは、図4に示すように、点状の有機化合物層16bを左右方向Aおよび前後方向Bに沿って、整列配置させてもよい。
有機化合物層16bの形状としては、特に窓状には限定されず、その他の形状(円状等)としてもよい。
有機化合物層16bと有機化合物層18との面積比は、適宜変更可能となっている。
また、有機化合物層16b,18を市松状に形成してもよい。詳しくは、図5に示すように、有機化合物層16b,18を、左右方向Aおよび前後方向Bに沿って、互い違いとなるように整列配置してもよい。
また、本実施形態においては、有機EL素子1の構成として、図6に示すように、陽極4側に発光ユニット10、陰極12側に発光ユニット6が積層された構成としてもよい。
《有機化合物層の層構成》
次に、本発明の有機化合物層16a,16b,18の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
また、有機化合物層16a,16b,18の層構成は、同一の構成としてもよいし、異なる層構成としてもよい。
(i)(陽極側)/発光層/電子輸送層/(陰極側)
(ii)(陽極側)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(陰極側)
(iii)(陽極側)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/(陰極側)
(iv)(陽極側)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極側)
(v)(陽極側)/電子注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/(陰極側)
《発光層》
本発明にかかる発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子および正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明にかかる発光層は、本発明で規定する要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。
発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、5〜200nmの範囲に調整することが好ましく、さらに好ましくは10〜150nmの範囲に調整される。また、本発明の構成で規定される構成において個々の発光層の膜厚としては、5〜200nmの範囲に調整することが好ましく、さらに好ましくは10〜150nmの範囲に調整することである。
発光層を形成する方法としては、後述する発光ドーパントやホスト化合物を、たとえば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
発光層を構成する層は、本発明で規定する要件を満たす構成を有していれば何層でもよく、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。
各発光層に含有されるリン光発光性または蛍光発光性発光ドーパントは、発光層内においてその膜厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよいが、濃度分布を有していてもよい。
蛍光発光層は、好ましくは青色の蛍光発光ドーパントを含む青色蛍光発光層である。
当該青色蛍光発光層の青領域の発光とは、その発光極大波長が430nm〜480nmにあるものをいう。
リン光発光層は、好ましくは緑色と赤色とのリン光発光ドーパントを含むリン光発光層で構成されるが、緑色と赤色との発光層を個別に設けた2層構成としてもよい。
(1)ホスト化合物
次に、発光層に含まれるホスト化合物(発光ホスト化合物ともいう)について説明する。
本発明の有機EL素子1のリン光発光層に含まれるリン光ホスト化合物とは、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物であることが好ましく、さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満の化合物である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での質量比が20質量%以上であることが好ましい。
リン光ホスト化合物としては、ホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。
本発明に用いられるリン光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
また、本発明に用いるリン光ホスト化合物は、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
リン光ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
従来公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。たとえば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
本発明においては、複数の発光層を有する場合には、ホスト化合物は発光層ごとに異なっていてもよいが、同一の化合物であることが優れた駆動寿命特性が得られることから好ましい。
また、リン光ホスト化合物は、その最低励起3重項エネルギー(T1)が、2.2eVより大きいことがより高い発光効率を得られることから好ましい。本発明でいう最低励起3重項エネルギーとは、ホスト化合物を溶媒に溶解し、液体窒素温度において観測したリン光発光スペクトルの最低振動バンド間遷移に対応する発光バンドのピークエネルギーを言う。
本発明においては、ガラス転移点が90℃以上の化合物が好ましく、さらには130℃以上の化合物が優れた駆動寿命特性を得られることから好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明の有機EL素子1においては、ホスト材料はキャリアの輸送を担うため、キャリア輸送能を有する材料が好ましい。キャリア輸送能を表す物性としてキャリア移動度が用いられるが、有機材料のキャリア移動度は、一般的に電界強度に依存性が見られる。電界強度依存性の高い材料は、正孔と電子注入・輸送バランスを崩しやすい為、中間層材料、ホスト材料は、移動度の電界強度依存性の少ない材料を用いることが好ましい。
なお、上記リン光ホスト化合物は、蛍光発光ドーパントに対するホスト化合物としても適宜用いることができる。
(2)発光ドーパント
次いで、本発明にかかる発光ドーパントについて説明する。
(2.1)蛍光発光ドーパント(蛍光性ドーパント、蛍光発光体等ともいう)
本発明にかかる発光性材料として用いられる蛍光発光ドーパントとしては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
また、従来公知のドーパントも本発明に用いることができ、たとえば、国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、同2001−181616号公報、同2002−280179号公報、同2001−181617号公報、同2002−280180号公報、同2001−247859号公報、同2002−299060号公報、同2001−313178号公報、同2002−302671号公報、同2001−345183号公報、同2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、同2002−50484号公報、同2002−332292号公報、同2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、同2002−338588号公報、同2002−170684号公報、同2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、同2002−100476号公報、同2002−173674号公報、同2002−359082号公報、同2002−175884号公報、同2002−363552号公報、同2002−184582号公報、同2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、同2002−226495号公報、同2002−234894号公報、同2002−235076号公報、同2002−241751号公報、同2001−319779号公報、同2001−319780号公報、同2002−62824号公報、同2002−100474号公報、同2002−203679号公報、同2002−343572号公報、同2002−203678号公報等が挙げられる。
(2.2)リン光発光ドーパント
本発明にかかるリン光発光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、たとえば、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明にかかるリン光発光体は、任意の溶媒のいずれかにおいても、上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光ドーパントの発光の原理としては、下記の2タイプが挙げられる。
一つのタイプは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリア(電子、正孔)が結合し、ホスト化合物の励起状態が生成し、この励起エネルギーをリン光発光ドーパントに移動させることでリン光発光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型である。
もう一つのタイプは、リン光発光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光発光ドーパント上でキャリアの再結合が生じ、リン光発光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型である。
いずれの場合においても、リン光発光ドーパントの励起状態のエネルギーは、ホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが高い発光効率を得る上で好ましい。
リン光発光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明にかかるリン光発光ドーパントとしては、好ましくは元素の周期表で8族〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は必要に応じて設けることができ、陽極4(コネクタ層8)と発光層または正孔輸送層の間、および陰極12(コネクタ層8)と電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機化合物層間に設ける層のことで、たとえば、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
正孔注入層としては、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。また、特表2003−519432号公報に記載される材料を使用することも好ましい。
電子注入層としては、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
注入層はごく薄い膜であることが望ましく、使用する素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、有機化合物薄膜の基本構成層の他に必要に応じて設けられるものである。たとえば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。
本発明の有機EL素子1に設ける正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
本発明にかかる正孔阻止層、電子輸送層の膜厚としては、好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
たとえば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、さらには、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、たとえば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)、特表2003−519432号公報に記載されているような、いわゆるp型半導体的性質を有するとされる正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、たとえば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。正孔輸送層の膜厚については、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
《電子輸送層》
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層も電子輸送層に含まれる。
電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
たとえば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、たとえば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、たとえば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の公知の薄膜形成法により製膜して形成することができる。
電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。
電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、不純物をドープしたn型半導体的性質を有するとされる電子輸送材料を用いることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)などに記載されたものが挙げられる。
本発明においては、このようなn型半導体的性質を有するとされる電子輸送材料を用いることもより低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
《コネクタ層》
本発明において、コネクタ層8は電界中において、複数の発光ユニットを、直列に電気的に連結する有機化合物層との界面を持つ層である。
コネクタ層8は半導体以上の導電性を有することが望ましいが、それに限定されるものではない。
本発明においてコネクタ層8は少なくとも一層以上から形成されるが、好ましくは二層以上からなり、p型半導体層、n型半導体層の一方もしくは両方を含むことが特に好ましい。また、外部電界により、層内部で正孔、電子を発生・輸送することができるバイポーラー層としてもよい。また、通常の電極材料として使用可能な金属、金属酸化物、およびその合金などが好適に使用できる。
コネクタ層8を構成する材料としては、有機化合物、無機化合物を単独もしくは複数種混合して使用することが出来る。
有機化合物としては、ナノカーボン材料、有機半導体材料(有機アクセプター、有機ドナー)として機能する有機金属錯体化合物、有機塩、芳香族炭化水素化合物、およびその誘導体、複素芳香族炭化水素化合物、およびその誘導体等があげられる。
無機化合物としては、金属、もしくは無機酸化物、無機塩等が挙げられる。
使用可能な金属として、アルミニウム、銀、亜鉛、ニオブ、ジルコニウム、錫、タンタル、バナジウム、モリブデン、レニウム、タングステン、水銀、ガリウム、インジウム、カドミウム、ホウ素、ハフニウム、ランタン、チタンなどが好ましい。また、アルカリ金属やアルカリ土類金属も使用することができ、具体的には、カルシウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどが好ましく使用できる。
これらの金属とアルカリ金属またはアルカリ土類金属の合金や、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物も使用することができる。
また、低分子量材料、高分子量材料、あるいは高分子重合体中に架橋基(重合成反応基)を有していてもよい。架橋基を利用して、塗布・成膜後に、熱・光・電磁波等々の刺激により多次元架橋を行い、層を不溶化することができる。
本発明におけるコネクタ層8の光透過率は、発光層から放出される光に対して高い透過率を有することが望ましい。十分に光を取り出し、十分な輝度を得るためには、波長550nmでの透過率が50%以上であることが望ましく、さらに好ましくは80%以上である。
コネクタ層8の膜厚としては、0.1〜100nmであることが好ましい。
コネクタ層8の形成方法としては、薄膜形成ができる方法であれば特に限定されず、たとえば、蒸着法、スパッタリング、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法)等が挙げられる。中でも、下層へのダメージが少なく、かつピンホールの無い均質な膜が得られやすい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、スロット型コータ法が特に好ましい。
《陽極》
陽極4としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。
このような電極物質の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極4はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式など湿式製膜法を用いることもできる。
この陽極4より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極4としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
《陰極》
一方、陰極12としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。
このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、たとえば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウムおよび銀等が好適である。
陰極12はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極12としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子1の陽極4または陰極12のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極12に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極4の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極4と陰極12の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《支持基板》
本発明の支持基板2としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明であっても不透明であってもよい。支持基板2側から光を取り出す場合には、支持基板2は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板2としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板2は、有機EL素子1にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)或いはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が、0.01g/(m・24h・atm)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1992に準拠した方法で測定された酸素透過度が、10−3g/(m・24h)以下、水蒸気透過度が、10−3g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましく、水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10−5g/(m・24h)以下であることが、さらに好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、たとえば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好ましい。
不透明な支持基板2としては、たとえば、アルミ、ステンレス等の金属板・フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子1の作製方法の一例として、陽極/発光ユニット/コネクタ層/発光ユニット/陰極からなる有機EL素子1の作製法について説明する。発光ユニットの構成としては、(陽極側)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/(陰極側)とする。
まず、適当な支持基板2上に所望の電極物質、たとえば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極4を作製する。
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の有機化合物薄膜からなる発光ユニット6を形成する。
この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、スロット型コータ法が特に好ましい。
さらに層毎に異なる製膜法を適用してもよい。
製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10−6〜10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
次に、発光ユニット6上にコネクタ層8を形成する。
コネクタ層8の形成方法としては、上述のように、電荷発生層や中間電極いずれにおいても、薄膜形成ができる方法であれば特に限定されず、たとえば、蒸着法、スパッタリング、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法)等が挙げられる。
次に、コネクタ層8上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の有機化合物薄膜からなる発光ユニット10を形成する。
発光ユニット10(有機化合物層16b,18)の形成方法としては、薄膜形成は前述の既知の方法を用いて形成すればよい。パターニング方法としては、たとえば、蒸着法ならばシャドーマスクを用いた方法、転写法等、ウェットプロセスならば、印刷パターンによるパターニング等で作製することができる。
また、有機化合物層16b,18は、それぞれの各層全てを所望の形状(たとえば、ストライプ状)で順次形成してもよいし、発光層以外の層(正孔輸送層等)を一括で形成した後、発光層のみをパターニングして形成してもよいが、生産性向上の観点から、発光層のみをパターニングする方が特に好ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を、1μm以下好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、たとえば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極12を設けることにより所望の有機EL素子1が得られる。
この有機EL素子1の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極12まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
その後、有機EL素子1を封止・保護してもよい。
たとえば、陽極4および陰極12の一部または全部を露出させた状態で有機EL素子1を熱硬化性樹脂で被覆してこれを加熱硬化させ、有機EL素子1を封止する。
その後、有機EL素子1の封止体とそこから露出した有機EL素子1の陽極4および陰極12の一部または全部を、保護部材で被覆し、保護部材の重複部分を所定温度で加熱圧着する。2枚の保護部材を重ね合わせて有機EL素子1の封止体などを被覆しその側縁部同士を加熱圧着してもよいし、1枚の保護部材を折り畳んで有機EL素子1の封止体などを被覆しその側縁部(特に開放端)同士を加熱圧着してもよい。
以上の処理により、有機EL素子1を封止・保護した有機ELモジュールが製造される。
《光取り出し》
有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15%から20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、たとえば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(たとえば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(たとえば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(たとえば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(たとえば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(たとえば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などが挙げられる。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子1と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、さらに高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、たとえば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。またさらに1.35以下であることが好ましい。
また、低屈折率媒質の厚みは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面または、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間、もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である有機発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
本発明の有機EL素子1は、支持基板2の光取出し側に、たとえばマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは、後述する集光シートと組み合わせたりすることにより、特定方向、たとえば素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付く、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、たとえば液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとしてたとえば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。プリズムシートの形状としては、たとえば基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
また、本発明にかかる光取出しフィルム14は、光放射角を制御するためだけでなく、面方向の領域で、異なる発光色を散乱させて白色発光を得る。光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。たとえば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
以上の本実施形態によれば、本発明の有機EL素子1は、少なくとも2つの発光ユニット6,10が積層された構成を有しているから、マルチフォトン構造を有する有機EL素子同様に、素子性能を向上させることができる。
また、発光ユニット10を構成する有機化合物層16bと有機化合物層18との面積比は、発光ユニット10の作製において、マスクの開口率を変化させるだけで制御可能であるから、発光ドーパントのドープ量や膜厚等を変更することなく、容易に色調整をすることができる。
さらに、従来のマルチフォトン構造の有機EL素子では、発光ドーパントのドープ量や膜厚等を変更して色調整を行っており、これが素子性能を低下させる原因となっていたが、本発明の有機EL素子1では、発光ドーパントのドープ量や膜厚等の変化を伴うことなく色調整が可能であるから、素子性能を保持しつつ、色調整が可能となる。
なお、発光ユニット10の構成は、図7のような構成としてもよい(変形例参照)。
[変形例]
発光ユニット10(有機化合物層18)は、図7に示すとおり、櫛状に形成されている。すなわち、発光ユニット10は、コネクタ層8上に、有機化合物層が形成されていない領域を隔てて、所定の間隔で形成されている。
コネクタ層8は、発光ユニット10と発光ユニット6との間に形成されている。
陰極12は、発光ユニット10上およびコネクタ層8が形成されていない領域で、かつコネクタ層8と同一平面に形成されている。
有機化合物層18は、平面視において、ストライプ状に形成されている。詳しくは、図8に示すとおり、線状の有機化合物層18と発光ユニット(有機化合物層)が形成されていない領域とが、左右方向Aに沿って、交互に並列配置されている。
また、有機化合物層18を窓状(矩形状)に複数形成してもよい。詳しくは、図9に示すように、点状の有機化合物層18を左右方向Aおよび前後方向Bに沿って、整列配置させてもよい。
また、有機化合物層18を市松状に形成してもよい。詳しくは、図10に示すように、有機化合物層18と発光ユニット(有機化合物層)が形成されていない領域とを、左右方向Aおよび前後方向Bに沿って、互い違いとなるように整列配置してもよい。
コネクタ層8および発光ユニット10(18)の作製方法としては、薄膜形成はそれぞれ前述の既知の方法を用いて形成すればよい。パターニング方法としては、たとえば、蒸着法ならばシャドーマスクを用いた方法、転写法等、ウェットプロセスならば、印刷パターンによるパターニング等で作製することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《サンプルの作製》
(1)有機EL素子101の作製
厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を110nmの厚さで成膜してパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
洗浄後に、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量、充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空度1×10−4Paまで減圧した後、HAT−CNを厚さ20nmになるように蒸着し、正孔注入層を設けた。
Figure 0005895699
次いで、化合物1(ガラス転移点(Tg)=140℃)を厚さ50nmになるよう蒸着し正孔輸送層を形成した。
Figure 0005895699
次いで、化合物2(Tg=189℃)が95vol%、化合物3が5vol%となるように蒸着し、青色を呈する厚さ30nmの蛍光発光層を形成した。
Figure 0005895699
Figure 0005895699
次いで、ET−100が86vol%、LiFが14vol%となるように蒸着し、厚さ20nmの電子輸送層を形成し、発光ユニット(陽極側)を作製した。
Figure 0005895699
次いで、ET−100が98vol%、Liが2vol%となるように蒸着し、厚さ10nmの薄膜を作製した。次いでAgを厚さ10nmで成膜し、コネクタ層を形成した。
次いで、上記と同様にして、正孔注入層、正孔輸送層を形成した。
次いで、化合物4(Tg=143℃)が79vol%、化合物5が20vol%、化合物6が1vol%となるように蒸着し、緑色と赤色を呈する厚さ30nmのリン光発光層を形成した。
Figure 0005895699
Figure 0005895699
Figure 0005895699
次いで、上記同様に電子輸送層を形成し、発光ユニット(陰極側)を作製した。
さらに、アルミニウム150nmを蒸着して陰極を形成した。
次いで、上記素子の非発光面をガラスケースで覆い、ガラスケースと有機EL素子が作製されたガラス基板とが接触するガラスケース側の周囲にシール剤としてエポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラクストラックLC0629B)を適用し、これを上記陰極側に重ねて前記透明支持基板と密着させ、ガラスケース側からUV光を照射して硬化・封止し、有機EL素子101を作製した。
なお、ガラスケースでの封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。
(2)有機EL素子102〜104の作製
有機EL素子101の作成において、蛍光発光層とリン光発光層の膜厚を表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、有機EL素子102〜104を作製した。
(3)有機EL素子105の作製
厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を110nmの厚さで成膜してパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
洗浄後に、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量、充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空度1×10−4Paまで減圧した後、HAT−CNを厚さ20nmになるように蒸着し、正孔注入層を設けた。
次いで、化合物1(ガラス転移点(Tg)=140℃)を厚さ50nmになるよう蒸着し正孔輸送層を形成した。
次いで、化合物2(Tg=189℃)が95vol%、化合物3が5vol%となるように蒸着し、青色を呈する厚さ10nmの蛍光発光層を形成した。
次いで、化合物4(Tg=143℃)が90vol%、化合物5が10vol%となるように蒸着し、緑色を呈する厚さ5nmのリン光発光層を形成した。
次いで、化合物4(Tg=143℃)が87vol%、化合物5が10vol%、化合物6が3vol%となるように蒸着し、赤色を呈する厚さ10nmのリン光発光層を形成した。
次いで、ET−100が86vol%、LiFが14vol%となるように蒸着し、厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
さらに、アルミニウム150nmを蒸着して陰極を形成した。
次いで、有機EL素子101と同様に封止して、有機EL素子105を作製した。
(4)有機EL素子106の作製
厚さ0.7mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を110nmの厚さで成膜してパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
洗浄後に、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量、充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空度1×10−4Paまで減圧した後、HAT−CNを厚さ20nmになるように蒸着し、正孔注入層を設けた。
次いで、化合物1(ガラス転移点(Tg)=140℃)を厚さ50nmになるよう蒸着し正孔輸送層を形成した。
次いで、化合物2(Tg=189℃)が95vol%、化合物3が5vol%となるように蒸着し、青色を呈する厚さ30nmの蛍光発光層を形成した。
次いで、ET−100が86vol%、LiFが14vol%となるように蒸着し、厚さ20nmの電子輸送層を形成し、発光ユニット(陽極側)を作製した。
次いで、ET−100が98vol%、Liが2vol%となるように蒸着し、厚さ10nmの薄膜を作製した。次いでAgを厚さ10nmで成膜し、コネクタ層を形成した。
次いで、ストライプ状にパターニングされたシャドーマスクを蒸着元と基板ホルダーの間に、基板ホルダーに接するように配置した。
次いで、上記と同様にして、正孔注入層、正孔輸送層を形成した。
次いで、化合物4(Tg=143℃)が79vol%、化合物5が20vol%、化合物6が1vol%となるように蒸着し、緑色と赤色を呈する厚さ30nmのリン光発光層を形成した。
次いで、シャドーマスクを蒸着装置から取出し、蒸着した領域以外がパターニングされたシャドーマスクを上記同様に蒸着元と基板ホルダーの間に配置した。
次いで、化合物2(Tg=189℃)が95vol%、化合物3が5vol%となるように蒸着し、青色を呈する厚さ30nmの蛍光発光層を形成した。
シャドーマスクを蒸着装置から取出し、上記同様に、電子輸送層を形成した。
その上に、アルミニウム150nmを蒸着して陰極を形成した。
次いで、有機EL素子101と同様に封止して、有機EL素子106を作製した。
(5)有機EL素子107〜110の作製
有機EL素子106の作製において、発光ユニット(陰極側)の蛍光発光層、リン光発光層の形状と面積比とを表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、有機EL素子107〜110を作製した。
(6)有機EL素子111の作製
有機EL素子106の発光ユニット(陰極側)の作製において、リン光発光層およびコネクタ層をマスクを介して、窓状にパターン形成した後、蛍光発光層を形成せず、また陰極をリン光発光層上およびコネクタ層と同一平面上に形成した以外は同様にして、有機EL素子111を作製した。
なお、有機EL素子111において、面積比とは平面視におけるリン光発光層を含む有機化合物層と有機化合物層の形成されてない領域との面積比を表している。
(7)有機EL素子112〜115の作製
有機EL素子111の作製において、リン光発光層の形状と面積比とを表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、有機EL素子112〜115を作製した。
《有機EL素子の評価》
有機EL素子101〜115に対し、下記の各評価を行った。
(1)相関色温度の測定
各サンプルの相関色温度の測定は、たとえば、大田登「色彩工学第2版」(東京電機大学出版局)等を参考にすることができる。具体的には、各サンプルを室温(約23〜25℃の範囲内)で、2.5mA/cmの定電流密度条件下による点灯を行い、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各サンプルの発光スペクトルを測定し、得られたスペクトルをCIE1931表色系で定められた原刺激[X],[Y],[Z]から三刺激値X,Y,Zを用いて色度座標u,vに変換を行う。得られた色度座標u,vをCIE1960uv色度図上に示された黒体軌跡および等色温度線と照らし合わせることで色温度を決定することができる。
評価結果を表1に示す。
なお、各有機EL素子の相関色温度は、得られた値の100の位を四捨五入した値で表した。
(2)発光効率および駆動電圧の測定
各サンプルに対し、室温(約23〜25℃の範囲内)で、2.5mA/cmの定電流密度条件下による点灯を行い、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、各サンプルの発光輝度を測定し、当該電流値における駆動電圧および発光効率(外部取り出し効率)を求めた。
評価結果を表1に示す。
なお、駆動電圧および発光効率は有機EL素子101の発光効率および駆動電圧を100とする相対値で表した。
(3)連続駆動輝度寿命の測定
上記方法にて測定した輝度5000cd/mを与える駆動条件にて室温にて連続駆動を行い、輝度が30%減少するまでの時間を発光寿命として求めた。
評価結果を表1に示す。
なお、発光寿命は有機EL素子101の発光寿命を100とする相対値で表した。
表1中、「蛍光B」は青色を呈する蛍光発光層、「リン光G」,「リン光R」はそれぞれ緑色を呈するリン光発光層、赤色を呈するリン光発光層、「リン光GR」は緑色と赤色とを呈するリン光発光層を表している。
Figure 0005895699
(4)まとめ
表1からわかるように、本発明の有機EL素子106〜115は、比較例の有機EL素子101〜105と比較して、発光効率、駆動電圧および発光寿命において、優れていることが明らかである。
以上から、陰極側に位置する発光ユニットを、発光画素の面内方向において、陽極側に位置する発光ユニットと発光色が異なる領域と、陽極側に位置する発光ユニットと発光色が同じまたは発光ユニットが存在しない領域と、に区画することが有用であることがわかる。
1 有機EL素子
2 支持基板
4 陽極
6,10 発光ユニット
8 コネクタ層
12 陰極
14 光取出しフィルム
16a,16b,18 有機化合物層
A 左右方向
B 前後方向

Claims (10)

  1. 陽極と陰極との間に、少なくとも2つの発光ユニットと、該発光ユニット間に配置されているコネクタ層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記陰極側に位置する発光ユニットが、発光画素の面内方向において、前記陽極側に位置する発光ユニットと発光色が同じである領域と、発光色が異なる領域とに区画されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が同じである領域と前記発光色が異なる領域とが、平面視において、ストライプ状に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が同じである領域が、平面視において、窓状に複数形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が同じである領域と前記発光色が異なる領域とが、平面視において、市松状に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が異なる領域と前記発光色が同じである領域との面積比が、5:5〜7:3の範囲であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 陽極と陰極との間に、少なくとも2つの発光ユニットと、該発光ユニット間に配置されているコネクタ層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記陰極側に位置する発光ユニットが、発光画素の面内方向において、前記陽極側に位置する発光ユニットと発光色が異なる領域と、発光ユニットが存在しない領域とに区画され
    前記陽極側に位置する発光ユニットが、少なくとも蛍光発光層を含み、
    前記陰極側に位置する発光ユニットが、少なくともリン光発光層を含み、
    前記発光色が異なる領域が、同一膜厚で設けられており、
    前記発光色が異なる領域と前記発光ユニットが存在しない領域との面積比を変化させることにより、色温度を調整可能とすることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が異なる領域と前記発光ユニットが存在しない領域とが、平面視において、ストライプ状に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が異なる領域が、平面視において、窓状に複数形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が異なる領域と前記発光ユニットが存在しない領域とが、平面視において、市松状に形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 請求項6〜9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記発光色が異なる領域と前記発光ユニットが存在しない領域との面積比が、5:5〜3:7の範囲であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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