JP2017222375A - プレススルーパック包装体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、蓋材表面が平滑であるために、蓋材うえの印刷部分の内容を容易に判別でき、印刷部分の読み取り性精度が高いPTP包装体を簡便に提供することを目的とする。【解決手段】凹部を有する底材と熱可塑性樹脂を含む基材層を有する蓋材とを備えるプレススルーパック包装体であり、蓋材の底材側の表面を形成するヒートシール層の表面の算術平均粗さ(Ra1)が1〜20μmであり、かつ、蓋材の底材側の表面とは反対側の表面が平滑である、ことを特徴とする、プレススルーパック包装体、並びに、プレススルーパック包装体の製造方法。【選択図】図2
Description
本発明は、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品のプレススルーパック包装体に好適に使用できる、プレススルーパック包装体に関する。
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるプレススルーパック(本明細書において「PTP」と称する場合がある)包装体が知られている。PTP包装体は、ポリ塩化ビニル系樹脂シートやポリプロピレン系樹脂シートに代表されるプラスチックシートを、真空成形又は圧空成形することによって、ポケット状の凹部を有するPTP底材として成形し、この凹部に内容物を充填し、その後、凹部以外の部分であるフランジ部をヒートシール性の蓋材でシールすることによって形成される。
底材と蓋材をヒートシールする際、一般的には加熱板の金型表面には蓋材と底材を均一かつ強固にシールさせる目的で、ダイヤモンド状の格子線やドット状の凹凸が彫刻されている。したがって、通常PTP包装体の蓋材表面(底材と接着する接着面の反対側)には金型由来の凹凸のパターンが転写される事となる。
近年、薬剤の情報管理等を目的に、蓋材の表面にバーコードが記載されるようになっている。更に、記載すべき情報が多くなり、細かい文字を印刷する必要性も増えており、これらの状況から蓋材の視認性は極めて重要となってきている。しかし、上述の通り成形後の蓋材には金型由来の凹凸のパターンが転写されており、この凹凸によって視認性が低下する他、光の乱反射によりバーコードの読み取りに悪影響を与える恐れがあるため、成形後の蓋材の平滑性を向上させることが強く求められている。
また、蓋材には、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れたアルミ箔にヒートシール性が付与された蓋材が一般に用いられている。
また、蓋材には、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れたアルミ箔にヒートシール性が付与された蓋材が一般に用いられている。
しかし、アルミ箔を蓋材に用いたPTP包材は、焼却処理をする場合、通常の焼却温度ではアルミ箔が燃え残ってしまうという問題が生じる。アルミ箔が燃え残らないようにする為には高温で焼却する必要があるが、一方で高温での焼却は焼却炉を痛めるという問題が生じてしまう。また、底材と蓋材は強固に接着されているため、それぞれを分離し分別回収することは現実的に困難である。
そのため、PTP包材の蓋材は、底材と同程度の易焼却性を持ち、分別せずに回収可能な素材で形成されていることが要求されている。
そのため、PTP包材の蓋材は、底材と同程度の易焼却性を持ち、分別せずに回収可能な素材で形成されていることが要求されている。
これまでに、易焼却かつ底材と分別せずに回収可能とすることを目的に、熱可塑性樹脂を基材に用いた蓋材(本明細書において「プラスチック蓋材」と称する場合がある)を用いたPTP包材が何例か示されている。
しかしながら、プラスチック蓋材を用いたPTP包材のうち、蓋材表面を平滑にできた例はこれまでに示されていない。
例えば、特許文献1には積層プラスチックフィルムからなるプラスチック蓋材が示されているが、表面の平滑性に関する記述はない。
特許文献2では成形時のシール金型上に緩衝材を設置し、溝のないフラットな加熱板を使用することによって、PTP包装体のアルミ箔面を平滑にできる方法が記されている。
しかしながら、特許文献2ではプラスチック蓋材を用いたPTP包材については記載されておらず、更にシール金型上に樹脂製の緩衝材を設置する必要があり、金型の形状に応じた緩衝材を内容物の形状に応じて都度作成する必要があるため汎用性に乏しく、また緩衝材の耐久性にも問題がある。
例えば、特許文献1には積層プラスチックフィルムからなるプラスチック蓋材が示されているが、表面の平滑性に関する記述はない。
特許文献2では成形時のシール金型上に緩衝材を設置し、溝のないフラットな加熱板を使用することによって、PTP包装体のアルミ箔面を平滑にできる方法が記されている。
しかしながら、特許文献2ではプラスチック蓋材を用いたPTP包材については記載されておらず、更にシール金型上に樹脂製の緩衝材を設置する必要があり、金型の形状に応じた緩衝材を内容物の形状に応じて都度作成する必要があるため汎用性に乏しく、また緩衝材の耐久性にも問題がある。
そこで、本発明は、蓋材表面が平滑であるために、蓋材上の印刷部分の内容を容易に判別でき、印刷部分の読み取り性が高いPTP包装体を簡便に提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、蓋材のヒートシール層の底材と接着する側の表面の算術平均粗さ(Ra)が1〜20μmになるようにヒートシール層に凹凸をつけることで、蓋材と底材とをヒートシールにより接着させる際に、金型表面に模様の彫刻の無い加熱ロールを用いた場合であっても、蓋材と底材との間に存在する空気がヒートシール層の凹凸から排出できるようになるため、蓋材と底材との間に空気溜まりが生じるのを抑制しつつ、蓋材表面を平滑にすることができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下のPTP包装体を提供するものである。
[1]凹部を有する底材と熱可塑性樹脂を含む基材層を有する蓋材とを備えるプレススルーパック包装体であり、前記蓋材の前記底材側の表面を形成するヒートシール層の表面の算術平均粗さ(Ra1)が1〜20μmであり、かつ、前記蓋材の前記底材側の表面とは反対側の表面が平滑である、ことを特徴とする、プレススルーパック包装体。
[2]前記底材と前記蓋材との間に生じた空気溜まりの最大径が0〜5mmである、[1]に記載のプレススルーパック包装体。
[3]包装体全体のカールによるシートの浮きが、5.0mm以下である、[1]又は[2]に記載のプレススルーパック包装体。
[4]前記底材が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のプレススルーパック包装体。
[5]前記蓋材が、スチレン系樹脂を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のプレススルーパック包装体。
[6]シール用金型に、平滑な表面を有するヒートシールロールを用いて、前記底材及び前記蓋材を熱で接着する工程を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のプレススルーパック包装体の製造方法。
[1]凹部を有する底材と熱可塑性樹脂を含む基材層を有する蓋材とを備えるプレススルーパック包装体であり、前記蓋材の前記底材側の表面を形成するヒートシール層の表面の算術平均粗さ(Ra1)が1〜20μmであり、かつ、前記蓋材の前記底材側の表面とは反対側の表面が平滑である、ことを特徴とする、プレススルーパック包装体。
[2]前記底材と前記蓋材との間に生じた空気溜まりの最大径が0〜5mmである、[1]に記載のプレススルーパック包装体。
[3]包装体全体のカールによるシートの浮きが、5.0mm以下である、[1]又は[2]に記載のプレススルーパック包装体。
[4]前記底材が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のプレススルーパック包装体。
[5]前記蓋材が、スチレン系樹脂を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のプレススルーパック包装体。
[6]シール用金型に、平滑な表面を有するヒートシールロールを用いて、前記底材及び前記蓋材を熱で接着する工程を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載のプレススルーパック包装体の製造方法。
本発明によれば、蓋材表面が平滑であるために、蓋材上の印刷部分の内容を容易に判別でき、印刷部分の読み取り性が高いPTP包装体を簡便に提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のPTP包装体は、内容物として、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品等を充填するためのものである(ここでは、錠剤を充填する場合を例示する。)。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、PTP包装体用蓋材を、単に「蓋材」と称する場合がある。
なお、本明細書において、PTP包装体用蓋材を、単に「蓋材」と称する場合がある。
(PTP包装体)
図1に示す本実施形態のPTP包装体10は、底材1とPTP包装体用蓋材8とを備える。
底材1は、成型されたポケット状の凹部1aと、蓋材8と貼り合わせられるフランジ部1bとを有しており、凹部1aには、内容物2が充填されている。
蓋材8は、基材層(以下、「蓋材フィルム」ともいう)4Aとヒートシール層3とを備え、ヒートシール層3はフランジ部1bで底材1と接着している。
詳細には、蓋材8のうちのヒートシール層3が、底材1のフランジ部1bの表面と蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面、言い換えると、底材1側の表面を形成している。
図1に示す本実施形態のPTP包装体10は、底材1とPTP包装体用蓋材8とを備える。
底材1は、成型されたポケット状の凹部1aと、蓋材8と貼り合わせられるフランジ部1bとを有しており、凹部1aには、内容物2が充填されている。
蓋材8は、基材層(以下、「蓋材フィルム」ともいう)4Aとヒートシール層3とを備え、ヒートシール層3はフランジ部1bで底材1と接着している。
詳細には、蓋材8のうちのヒートシール層3が、底材1のフランジ部1bの表面と蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面、言い換えると、底材1側の表面を形成している。
また、蓋材フィルム4Aの底材1側の表面F1とは反対側の表面F2は平滑な面であり、F2上には、製品名称ロゴ等の印刷部分5が、着色されたウレタン系樹脂やアクリル系樹脂等のインキにより形成される場合があり、この場合、印刷部分5を保護するための表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)6が表面F2の全面を覆うように形成される(図1参照)。更に、内容物2が医薬品である場合には、医療過誤防止を目的に表面F1にも印刷やアルミ等の蒸着処理がなされる場合がある。
蓋材フィルム4Aのヒートシール層3は、接着性樹脂3bに対して、フィラー3aを含んでいてもよい。
後述するように、本実施形態のPTP包装体10の蓋材8は、ヒートシール層3の表面の算術平均粗さRa1が、1〜20μmであり、金型表面に模様の彫刻の無い加熱ロールを用いて底材1と蓋材8とをヒートシールした際に、蓋材8と底材1の間に内包されている空気を排出する空隙を有している。
本実施形態の包装体10は、図1に示すように、内容物2を収容する凹部1a、及びプレススルーパック包装体用蓋材8のヒートシール層3と貼り合わされるフランジ部1bを有する底材1と、蓋材8とが互いに貼り合わせられたものであり、蓋材8の表面が平滑であり、良好な視認性を有する。
本実施形態の包装体10は、図1に示すように、内容物2を収容する凹部1a、及びプレススルーパック包装体用蓋材8のヒートシール層3と貼り合わされるフランジ部1bを有する底材1と、蓋材8とが互いに貼り合わせられたものであり、蓋材8の表面が平滑であり、良好な視認性を有する。
<蓋材>
前述の通り、蓋材8は、基材層としての蓋材フィルム4Aとヒートシール層3とを備え、必要に応じて、印刷部分5や表面保護層(OPニス層)6を更に含む。
前述の通り、蓋材8は、基材層としての蓋材フィルム4Aとヒートシール層3とを備え、必要に応じて、印刷部分5や表面保護層(OPニス層)6を更に含む。
−蓋材表面の平滑性−
PTP包装体10の蓋材8の底材1とは反対の表面8aは、印刷された印字やバーコードの視認性・判別性の観点から、平滑であることが望ましく、JIS B 0601に準拠して測定される表面粗さ(Ra2)が、5.0μm以下であることが望ましく、より望ましくは3.0μm以下、最も望ましくは2.0μm以下である。
PTP包装体10の蓋材8の底材1とは反対の表面8aは、印刷された印字やバーコードの視認性・判別性の観点から、平滑であることが望ましく、JIS B 0601に準拠して測定される表面粗さ(Ra2)が、5.0μm以下であることが望ましく、より望ましくは3.0μm以下、最も望ましくは2.0μm以下である。
−蓋材フィルム−
蓋材フィルム(基材層)4Aは、内容物2を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂を含むフィルム等が挙げられ、廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂を含むフィルムが好ましく、熱可塑性樹脂からなるフィルムが更に好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、延伸フィルムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂が用いられる。
蓋材フィルム(基材層)4Aは、内容物2を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂を含むフィルム等が挙げられ、廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂を含むフィルムが好ましく、熱可塑性樹脂からなるフィルムが更に好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、延伸フィルムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂が用いられる。
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体及びこれらの混合組成物であり、スチレン系単量体とは、スチレン(例えば、GPPS)、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系単量体の共重合体とは、スチレン成分が50質量%(wt%)以上である、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酸無水物共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(例えば、HIPS)、スチレン−α−メチルスチレン共重合体等が挙げられる。
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。
これらの中でも、より好ましくは、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、及び、これら3種の共重合体のいずれか1種を構成する2種のモノマー成分に更なるモノマー成分であるエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
上記三元共重合樹脂のエステル成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらエステル成分は、例えば押出機での溶融加工時等の、連続して熱が加わるような場合に、樹脂の熱安定性を向上させる点で有効である。
なお、上記スチレン系単量体の共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレン成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として70〜97質量%であることが好ましく、75〜95質量%がより好ましい。スチレン成分が97質量%以下であると、プレススルー性が向上するばかりか、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体10の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルム4Aが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレン成分が70質量%以上であると蓋材フィルム4Aを作る際に延伸製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレン成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として70〜97質量%であることが好ましく、75〜95質量%がより好ましい。スチレン成分が97質量%以下であると、プレススルー性が向上するばかりか、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体10の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルム4Aが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレン成分が70質量%以上であると蓋材フィルム4Aを作る際に延伸製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。
上記のうち、スチレン−メタクリル酸共重合体及びこれにエステル成分を含む三元共重合樹脂が押出延伸製膜のしやすさといった点でより好ましい。
本実施形態において好適に用いられる上記スチレン系樹脂に対し、延伸製膜する際の安定性(ネッキングがなく、延伸開始位置が安定しており、実用上問題がない程度に厚さ斑が小さい(一般的にRとして10μm以下))を向上させ、また、その後のPTP包装にいたる種々の工程において、一時停止後の再起動時や包装工程の打ち抜き時等の衝撃に対する耐衝撃性が必要とされる場合がある。これらの特性を改善する目的で、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体、及びスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種を、スチレン系樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として0.5〜80質量%配合するのが好ましい。より好ましい配合量は、1.0〜45質量%であり、更に好ましい配合量は、1.0〜30質量%である。0.5質量%以上配合した場合、延伸の安定性や耐衝撃性が改善され、80質量%以下の場合はプレススルー性、フィルムの腰(スティフネス)が保たれる。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂にフィラー3a、特に無機フィラーを配合してもよい。無機フィラーを配合しなくとも、良好なプレススルー性の発現は可能であるが、PTP包装体10の使用者が常に健常者とは限らず、力が弱い高齢者や子供も使用者となり得る点も考慮して、内容物2を押し出す際の使用感の好みに応じて、無機フィラーの配合により突刺し強さを低下させ、プレススルー性を調節することが可能である。無機フィラーとしては、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等を使用することができる。
また、蓋材フィルム4Aには、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機フィラーの分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の配合や、印刷や蒸着処理の特性改善を目的としたコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。熱可塑性樹脂に白色の着色剤を配合した蓋材フィルム4Aや白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材フィルム4Aが直接見える部分)が白いために、無地のアルミ箔の蓋材に比べ鏡面反射が起こりにくく、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡もあるため、バーコードが読み取りやすく好ましい。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。熱可塑性樹脂に白色の着色剤を配合した蓋材フィルム4Aや白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材フィルム4Aが直接見える部分)が白いために、無地のアルミ箔の蓋材に比べ鏡面反射が起こりにくく、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡もあるため、バーコードが読み取りやすく好ましい。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂のビカット軟化点は、底材1とのヒートシール時において蓋材フィルム4Aにシワ等の変形が発生しない安定したヒートシールが可能となる観点から、好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは95℃以上、最も好ましくは110℃以上である。後述するヒートシール剤は、低温ヒートシールに適しているため、蓋材フィルム4Aの材質が耐熱性の低いもの(具体的にはビカット軟化点が80〜150℃又は融点が80〜150℃である材質)であっても、ヒートシール用の蓋材フィルム4Aとして用いることができる。
蓋材フィルム4Aは、延伸フィルムであることが好ましい。蓋材フィルム4Aは、使用に供されるまでの各加工工程でフィルムに強い張力が負荷される場合が多いため、各加工に耐え得る引張り強度が必要となる。熱可塑性樹脂フィルムは延伸配向されることにより延伸方向の引張り強度が大きく向上する一方、突刺し強さの向上は比較的小さい傾向にある。このため、熱可塑性樹脂フィルムを薄くしたり、無機フィラーを添加したりすることで突刺し強度が低下した場合でも、延伸フィルムとすることで、加工に耐え得る引張り強度を付与することができる。
延伸フィルムを製造する方法の代表的な例として、熱可塑性樹脂(必要に応じて無機フィラーを所定の割合で配合した樹脂)を、スクリュー押出機等により溶融混錬し、Tダイによりシート状にした後、ロール延伸又はテンター延伸により一軸延伸する方法、ロール延伸に続いてテンター延伸することにより二軸延伸する方法、インフレーション法により延伸する方法等が挙げられる。この時の延伸倍率は縦及び横の少なくとも一方向で2〜20倍が好ましく、5〜10倍がより好ましい。
蓋材フィルム4Aは、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1〜5Nであることが好ましい。突刺し強さが1N以上であると、強度が適度でPTP包装体10として使用したときに意図せずに蓋材8が破れてしまうことが少ない。突刺し強さが5N以下であると、フィルムが破れやすく適度なプレススルー性が発現する。PTP包装体10の使用者が力の弱い高齢者や子供である場合を考慮すると、突刺し強さは1〜3Nであることがより好ましい。
なお、突刺し強さは、JIS Z1707に準拠し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力のことをいう。
なお、突刺し強さは、JIS Z1707に準拠し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力のことをいう。
蓋材フィルム4Aの厚さL1は、5〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。厚さが5μm以上であると、フィルムの強度が適度で加工工程に耐える引張り強度が発現しやすく、50μm以下であると、適度なプレススルー性が発現しやすい。
−ヒートシール層−
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものであり、ヒートシール剤のみからなることが好ましい。
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものであり、ヒートシール剤のみからなることが好ましい。
ヒートシール層3の表面の算術平均粗さ(Ra1)は1〜20μmであり、1.5〜15μmであることが好ましく、2〜10μmであることがより好ましい。なお、本実施形態では、ヒートシール層3の少なくとも一方の表面の算術平均粗さRa1が上記範囲を満たしていればよい。
Raが1μm未満であると、加熱ロールの金型表面に模様の彫刻の無い加熱ロールを用いて成形を行うと、蓋材8と底材1の間に存在する空気が排出できず、成形後のPTP包装体10に空気溜まりを生じてしまう。Raが20μmを超えると、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間の印刷部分5の印刷印字の輪郭がぼやけて視認性、透明性が悪化する場合や、蓋材8と底材1の間に隙間が出来て接着が不十分となる。
Raが1μm未満であると、加熱ロールの金型表面に模様の彫刻の無い加熱ロールを用いて成形を行うと、蓋材8と底材1の間に存在する空気が排出できず、成形後のPTP包装体10に空気溜まりを生じてしまう。Raが20μmを超えると、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間の印刷部分5の印刷印字の輪郭がぼやけて視認性、透明性が悪化する場合や、蓋材8と底材1の間に隙間が出来て接着が不十分となる。
ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、及びガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂α」と称する場合がある。)を主体としてなる接着性樹脂3bとフィラー3aとを含むことが好ましく、フィラー3aの含有量が接着性樹脂3bの100質量部に対して1質量部超15質量部以下である混合物であることが好ましい。上記接着性樹脂3b中の樹脂αの割合は、具体的には、50質量%以上であることが好ましい。
−−接着性樹脂−−
樹脂αは、熱によって樹脂αが融解し、又は樹脂αが底材1と共に融解し、相互に融着(ヒートシール)し得るものとして、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、又はガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂を、単独で用いてもよいが、二種以上を併用してもよい。
樹脂αは、熱によって樹脂αが融解し、又は樹脂αが底材1と共に融解し、相互に融着(ヒートシール)し得るものとして、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、又はガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂を、単独で用いてもよいが、二種以上を併用してもよい。
接着性樹脂3bとしては、接着性樹脂3bの性質を損なわない範囲で、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル・ポリエステル樹脂等の添加剤を、50質量%未満の範囲で併用してもよい。
上記樹脂αの好ましいガラス転移温度は、−65〜25℃、より好ましくは−60〜0℃である。ガラス転移温度が−65℃未満であると、蓋材8のブロッキング性に問題のある場合があり、25℃以上であると、蓋材8の耐圧低温ヒートシール性が不十分となる場合がある。ここで「耐圧低温ヒートシール性」とは、低温域(100〜150℃)で短時間(0.1〜0.2秒)のヒートシールが可能であること、及び、減圧下におけるヒートシール強度が実用に耐えるほど十分であることをいう。
なお、ガラス転移温度が複数存在する様な混合樹脂のヒートシール剤の場合、質量比率はJIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートの、それぞれのガラス転移ピークの各ベースライン間の距離の比率により求めることができる。また、各ベースラインが平行でない場合は、各ベースラインの延長した直線間にある中間点ガラス転移点を通過する位置での各ベースライン間の距離を用いることができる。
なお、ガラス転移温度が複数存在する様な混合樹脂のヒートシール剤の場合、質量比率はJIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートの、それぞれのガラス転移ピークの各ベースライン間の距離の比率により求めることができる。また、各ベースラインが平行でない場合は、各ベースラインの延長した直線間にある中間点ガラス転移点を通過する位置での各ベースライン間の距離を用いることができる。
樹脂αとしては、耐圧低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるという観点から、アクリル系樹脂を主体とした接着性樹脂3bが好ましい。
−−−アクリル系樹脂−−−
アクリル系樹脂とは、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体であっても、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。また、アクリル系樹脂は、上記単独重合体又は上記共重合体の、カルボキシル基(カルボン酸)のアルカリ金属塩、アミン塩、又はアンモニウム塩であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合、上記「他の単量体」としては、エチレン;スチレン、α−メチルスチレン(ビニルトルエン)、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;等が挙げられる。
アクリル系樹脂とは、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体であっても、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。また、アクリル系樹脂は、上記単独重合体又は上記共重合体の、カルボキシル基(カルボン酸)のアルカリ金属塩、アミン塩、又はアンモニウム塩であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合、上記「他の単量体」としては、エチレン;スチレン、α−メチルスチレン(ビニルトルエン)、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合の具体例としては、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
共重合させる単量体の種類や割合を適宜変更することにより、ガラス転移温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の20%以上を占めることが好ましい。
共重合させる単量体の種類や割合を適宜変更することにより、ガラス転移温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の20%以上を占めることが好ましい。
−−−ポリエステル系樹脂−−−
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。
ポリエステル系樹脂の種類としては、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有しない)飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有する)不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、耐圧低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から、飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
重縮合させる多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、クエン酸等が挙げられる。重縮合させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、1種の多価カルボン酸(例えば、フタル酸等)と、2種の多価アルコール(例えば、エチレングリコールとブタンジオール等)とからなる樹脂等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。
ポリエステル系樹脂の種類としては、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有しない)飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有する)不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、耐圧低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から、飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
重縮合させる多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、クエン酸等が挙げられる。重縮合させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、1種の多価カルボン酸(例えば、フタル酸等)と、2種の多価アルコール(例えば、エチレングリコールとブタンジオール等)とからなる樹脂等が挙げられる。
−−フィラー−−
ヒートシール剤は、接着性樹脂3bとフィラー3aを含む混合物であることが好ましく、接着性樹脂3bの100質量部に対してフィラー3aの配合量は、1質量部超15質量部以下、好ましくは2〜15質量部、更に好ましくは3〜15質量部、最も好ましくは5〜15質量部である。フィラー3aの含有量が1質量部以下であると、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下でブロッキングが起こる場合や耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。15質量部を超えると、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間の印刷部分5の印刷印字の輪郭がぼやけて視認性、透明性が悪化する場合や、蓋材8と底材1の間に隙間が出来て接着が不十分となる場合がある。
ヒートシール剤は、接着性樹脂3bとフィラー3aを含む混合物であることが好ましく、接着性樹脂3bの100質量部に対してフィラー3aの配合量は、1質量部超15質量部以下、好ましくは2〜15質量部、更に好ましくは3〜15質量部、最も好ましくは5〜15質量部である。フィラー3aの含有量が1質量部以下であると、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下でブロッキングが起こる場合や耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。15質量部を超えると、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間の印刷部分5の印刷印字の輪郭がぼやけて視認性、透明性が悪化する場合や、蓋材8と底材1の間に隙間が出来て接着が不十分となる場合がある。
上記フィラー3aとしては、炭酸カルシウム、フッ素樹脂、シリコーン、シリカ、ガラスビーズ、タルクや、チタニア、アルミナ、マグネシア等の金属酸化物等の無機フィラーや、種々の粒状高分子、例えば、ナイロン、PE、ポリスチレン(PS)、PP、ポリエステル、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートの架橋共重合体等)、ウレタンのプラスチック等の有機フィラーを用いることができる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
フィラー3aの粒子径r(ヒートシール前の粒子径)は、ヒートシール層3のうちフィラー3aを含まない部分の厚みSの1.3〜5.0倍であることが好ましく、1.3〜4.0倍であることがより好ましく、2.5〜4.0倍であることが最も好ましい。ヒートシール層3のうちフィラー3aを含まない部分の厚みSに対するフィラー3aの粒子径r(r/S)が、1.3倍未満であると、ロール状の蓋材8の夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下での耐ブロッキング性が悪い場合があり、r/Sが5.0倍を超えると、フィラー3aを介して蓋材8と底材1との間に隙間が出来てしまい、接着が不十分で耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。更に、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間に印刷層が設けられている場合は、印字の輪郭がぼやけて視認性も悪くなる場合がある。
なお、本実施形態のヒートシール層3には、本発明の効果に影響しない範囲で、ヒートシール層3のうちフィラー3aを含まない部分の厚さよりも、粒子径が小さいフィラー3aが含まれていてもよい。
蓋材フィルム4A上にヒートシール層3を設ける方法の代表的な例として、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工して乾燥させる方法、蓋材フィルム4Aの上にヒートシール性を有する樹脂を押出ラミする方法、蓋材フィルム4Aの上にヒートシール性を有するフィルムをラミネートする方法等が挙げられ、中でも、工程が簡略であり生産性に優れる観点から、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工して乾燥する方法が好ましい。
また、ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
また、ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
本実施形態では、上記水性エマルジョンをヒートシール剤を構成する接着性樹脂3bを重合させながら調製してもよく、この場合の水性エマルジョンの調製方法としては、特に限定されないが、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルジョン重合等の重合方法等が挙げられ、特に、平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する観点から、乳化重合が好ましい。
ヒートシール層3の厚みSは、ヒートシール性及びPTP包装体10の突き破り性の観点から、3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。3μm以上であると、十分なヒートシール性を有し、20μm以下であると、内容物2が蓋材8を突き破りやすくなるので好ましい。
上記ヒートシール剤は、接着性樹脂3bに、ブロッキング防止剤及び投錨剤(アンカー剤)として、フィラー3aを加えた混合物であり、必要に応じて水やイソプロピルアルコール等の希釈剤を加えて撹拌混合することで塗工液とされる。そして、例えば、図2に示すように、接着性樹脂3bにフィラー3aを加えることにより、塗布・乾燥後、蓋材フィルム4Aの上に形成されたヒートシール層3の表面に、凸部が形成される。そして、フィラー3aは、それ自体が露出することはなく、その表面及び周囲は、接着性樹脂3bで覆われる。フィラー3aの表面及び周囲が接着性樹脂3bに覆われるので、接着対象の底材1に、フィラー3aが存在しない部分及びフィラー3aが存在する部分が、接着性樹脂3bを介して接着することが可能となる。
一方で、ロール状に巻き取られた保管状態においては、フィラー3aの凸部の影響により、巻き取り時に、蓋材8のヒートシール層3表面と、その反対側の蓋材フィルム4A表面との接触面積が低減するため、ブロッキングを防止できる。
更には、低温でヒートシールした後のPTP包装体10の状態においては、底材1と蓋材8のヒートシール層3表面とが面接触して熱融着する時に、フィラー3aの凸部の影響により、両者の接触面積が低減して適度な滑り性を有することと、空気逃しの通り道が形成される作用が発現することにより、ヒートシールされるフランジ部1bに折り込みシワが入ることのない包装機械適性を有することとなり、良好な外観を示すPTP包装体10を得ることができる。
(PTP包装体用蓋材の製造方法)
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、前述の通り、蓋材フィルム4A上に、接着性樹脂3b、フィラー3a等の混合物であるヒートシール剤を適用して、ヒートシール層3を形成することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、前述の通り、蓋材フィルム4A上に、接着性樹脂3b、フィラー3a等の混合物であるヒートシール剤を適用して、ヒートシール層3を形成することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
塗工法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法が挙げられ、塗工量の調整、操作性、塗工速度等の観点から、グラビアコート法が好ましい。
ヒートシール剤の塗工量としては、ヒートシール性を高める観点から、3〜20g/m2(厚さに換算して3〜20μmに相当)であることが好ましく、5〜15g/m2であることがより好ましい。
塗工の速度は、好ましくは10〜300m/分であり、より好ましくは、20〜200m/分である。10m/分以上であると、乾燥時の過加熱がなく塗工後に熱シワが生じにくく、生産性が良好である。300m/分以下であると、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、基材フィルム4Aが破断しにくい。
塗工後の乾燥方法は、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル、高速エアキャップ、カウンターフロー)、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線、その他の方法が挙げられ、操作性、塗工速度、塗工後のシワ等の観点から、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル)が好ましく、中でも熱風噴射式(エアフローティング)がより好ましい。
乾燥の温度及び時間としては、ヒートシール剤の種類、希釈溶剤の種類、固形分、液の粘度、塗工速度、乾燥機の種類によっても異なるが、下記の通りとしてよい。
乾燥温度は、好ましくは50〜115℃、より好ましくは60〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
乾燥時間は、好ましくは1秒〜200秒、より好ましくは2秒〜100秒、更に好ましくは3秒〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
乾燥温度は、好ましくは50〜115℃、より好ましくは60〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
乾燥時間は、好ましくは1秒〜200秒、より好ましくは2秒〜100秒、更に好ましくは3秒〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
なお、上記製造工程において、蓋材フィルム4Aに対し、グラビア印刷機等を用いて文字やバーコードを印刷することができる。更に、文字やバーコードを印刷した表面に対し、ニス層を設けることもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、単層の延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aを例示したが、2層以上の多層延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aであってもよい。
また、上記実施形態においては、蓋材フィルム4Aの表面F1上にヒートシール層3を直接設けた場合を例示したが、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3との間(F1の位置)や反対側(F2の位置)に他の層を介在させてもよい。
例えば、蓋材フィルム4Aとして熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は、他の層としてアルミニウムの蒸着層を設けることが、バリア性の向上や、近赤外線を利用した異物検査の適性が向上する観点から、好ましい。アルミ蒸着層の厚さは、要求されるバリア性(特に水蒸気透過性)、近赤外線の反射特性、又は両面印刷時の隠蔽性に応じて適宜調整されるが、バリア性の観点からは、好ましくは10〜500nmであり、より好ましくは20〜100nmである。500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性を向上させる効果は得られない。また、近赤外線の反射特性や両面印刷時の隠蔽性の観点からは、好ましくは10〜200nmであり、より好ましくは20〜100nmである。
<底材>
本実施形態におけるPTP包装体10に用いる底材1としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル等の周知の合成樹脂を含む、好適にはこれらの合成樹脂からなるシート材が挙げられる。中でも、底材1のポケット状の凹部1aへの真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さ、機械的強度、透明性、コスト面の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるシート材が特に好ましい。
本実施形態におけるPTP包装体10に用いる底材1としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル等の周知の合成樹脂を含む、好適にはこれらの合成樹脂からなるシート材が挙げられる。中でも、底材1のポケット状の凹部1aへの真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さ、機械的強度、透明性、コスト面の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるシート材が特に好ましい。
上記底材1は、底材1のポケット状の凹部1aへの真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さの観点から、JIS K7191(A法及びB法)に準拠した熱変形温度が50〜110℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
底材1の形状としては、特に限定されないが、凹部1aの底面部分及び開口部分の形状が、矩形(正方形、長方形、三角形等)、円形(円、楕円等)であってよく、矩形は角が丸みを帯びていてもよい。
また、ヒートシール後に成形機で打ち抜かれたサンプルの底材1のサイズとしては、凹部1aの深さが、1〜15mmであってよく、好ましくは2〜10mmであり、また、特に、凹部1aの開口部分及び底面部分の形状が円形である場合、開口部分の直径は、それぞれ10〜150mmであってよく、好ましくは20〜100mmであり、底面部分の直径は、それぞれ開口部分の直径より10〜20%小さくてよい。
また、ヒートシール後に成形機で打ち抜かれたサンプルの底材1のサイズとしては、凹部1aの深さが、1〜15mmであってよく、好ましくは2〜10mmであり、また、特に、凹部1aの開口部分及び底面部分の形状が円形である場合、開口部分の直径は、それぞれ10〜150mmであってよく、好ましくは20〜100mmであり、底面部分の直径は、それぞれ開口部分の直径より10〜20%小さくてよい。
また、フランジ部1bは、特に限定されないが、凹部1aの深さ方向に直交する方向に延びるように設けられていてよい。
フランジ部1bの平均幅としては、2〜100mmであってよく、好ましくは4〜50mmである。
フランジ部1bの平均幅としては、2〜100mmであってよく、好ましくは4〜50mmである。
底材1の厚さL2としては、特に限定されないが、100〜500μmであってよく、好ましくは150〜300μmである。
蓋材8と底材1のフランジ部1bとはヒートシールにより接着されるところ、この蓋材8と底材1のフランジ部1bとのシール部分には、接着されていない未シール部分、いわゆる「空気溜まり」、が存在する。この空気溜まりは、凹部(ポケット部)1aから空気がリークするのを抑止する観点、及び、蓋材8の表面の美観の観点から、その平均径が小さいことが望ましい。
本実施形態では、空気溜まりの最大径は、PTP包装体10のフランジ部1bをデジタルマイクロスコープを用いて観察し、空気溜まり部分とシール部位とを色調の差より二値化することで算出できる。
空気溜まりの最大径は、ポケット部1aと外部の導通を抑止する観点から、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、特に好ましくは2mm以下である。
本実施形態では、空気溜まりの最大径は、PTP包装体10のフランジ部1bをデジタルマイクロスコープを用いて観察し、空気溜まり部分とシール部位とを色調の差より二値化することで算出できる。
空気溜まりの最大径は、ポケット部1aと外部の導通を抑止する観点から、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、特に好ましくは2mm以下である。
本実施形態のPTP包装体10は、蓋材8と底材1をヒートシールした際に、主に各材の熱収縮率の差により蓋材8側、もしくは底材1側に湾曲する。PTP包装体10はヒートシール後にコンベアによる分配工程や、完成したPTP包装体10を箱に自動的に梱包する箱詰め工程を経て出荷されるが、湾曲したPTP包装体10は機械でうまく運べなかったり、箱に入らなかったりするなど、後工程における適性を欠いてしまう。これらの適性の観点からカールの度合いは低いことが望ましい。
このカールの度合いは、作成したPTP包装体10を、ヒートシールから1日後に、蓋材8側を下にして平らな机の上に置き、PTP包装体10の蓋材8の一端部を指で押さえ、浮き上がった蓋材8の別の端部と机との最大距離を定規で測定することによって評価することができる。より具体的には、凹部1aの開口部分及び底面部分の形状が円形であるPTP包装体10の場合、PTP包装体10を机の上に置いた後、PTP包装体10のフランジ部1bの一端部を指で押さえたときに浮き上がった当該端部と開口部分を挟んで対向するもう一つのフランジ部1bの端部と机との最大距離を定規で測定することによって評価する。
上記カールの度合いを示す距離は、望ましくは5.0mm以下であり、より望ましくは4.0mm以下であり、最も好ましくは3.0mmである。
このカールの度合いは、作成したPTP包装体10を、ヒートシールから1日後に、蓋材8側を下にして平らな机の上に置き、PTP包装体10の蓋材8の一端部を指で押さえ、浮き上がった蓋材8の別の端部と机との最大距離を定規で測定することによって評価することができる。より具体的には、凹部1aの開口部分及び底面部分の形状が円形であるPTP包装体10の場合、PTP包装体10を机の上に置いた後、PTP包装体10のフランジ部1bの一端部を指で押さえたときに浮き上がった当該端部と開口部分を挟んで対向するもう一つのフランジ部1bの端部と机との最大距離を定規で測定することによって評価する。
上記カールの度合いを示す距離は、望ましくは5.0mm以下であり、より望ましくは4.0mm以下であり、最も好ましくは3.0mmである。
(PTP包装体の製造方法)
本実施形態のPTP包装体10は、底材1の表面と蓋材8のヒートシール層3の表面とを重ね合わせて、ヒートシールすることにより製造することができる。
ヒートシール温度は、例えば、100〜200℃が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、100〜150℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、例えば、0.05〜0.4秒が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.05〜0.2秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2〜0.6MPaが挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.3〜0.5MPaが好ましい。
本実施形態のPTP包装体10は、底材1の表面と蓋材8のヒートシール層3の表面とを重ね合わせて、ヒートシールすることにより製造することができる。
ヒートシール温度は、例えば、100〜200℃が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、100〜150℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、例えば、0.05〜0.4秒が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.05〜0.2秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2〜0.6MPaが挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.3〜0.5MPaが好ましい。
本実施形態におけるPTP包装体10の成形に用いる成形機としては、例えば、蓋材8と底材1をヒートシールロールとシール下ロールで挟み込んでヒートシールを行うロールシール成形機や、上下に平板の加熱金型を有し蓋材8と底材1を金型で挟み込み成形するフラットシール成形機が挙げられる。
本実施形態では、中でも、生産効率が高く、汎用性に優れたロールシール成形機を用いて、PTP包装体10を成形する方法を用いることが望ましい。
PTP包装体10に用いるロールシール成形機には、蓋材8側から加熱を行う加熱シールロールと、それと対となる下シールロールとが配置されており、ここで、加熱シールロールの表面は、彫刻等が施されていない、平滑表面であることが望ましい。この平滑な表面を持つ加熱シールロールを用いることで、蓋材8表面にロールの模様が転写されず、表面の凹凸が抑制された平滑な蓋材8表面を有するPTP包装体10を製造することが可能となる。
本実施形態では、中でも、生産効率が高く、汎用性に優れたロールシール成形機を用いて、PTP包装体10を成形する方法を用いることが望ましい。
PTP包装体10に用いるロールシール成形機には、蓋材8側から加熱を行う加熱シールロールと、それと対となる下シールロールとが配置されており、ここで、加熱シールロールの表面は、彫刻等が施されていない、平滑表面であることが望ましい。この平滑な表面を持つ加熱シールロールを用いることで、蓋材8表面にロールの模様が転写されず、表面の凹凸が抑制された平滑な蓋材8表面を有するPTP包装体10を製造することが可能となる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
(1)蓋材フィルム
(i)PS系フィルム1:スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリル酸エステル共重合体(メチルメタクリル酸エステル含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%、ビカット軟化点=123℃)を90質量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製、耐衝撃ポリスチレン GH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を樹脂成分の合計100質量%に対して10質量%配合し、インフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=120℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.8Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PS系フィルム2:汎用ポリスチレン(PSJ社製、汎用ポリスチレン G9504、ビカット軟化点=103℃)をインフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=103℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.2Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(i)PS系フィルム1:スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリル酸エステル共重合体(メチルメタクリル酸エステル含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%、ビカット軟化点=123℃)を90質量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製、耐衝撃ポリスチレン GH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を樹脂成分の合計100質量%に対して10質量%配合し、インフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=120℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.8Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PS系フィルム2:汎用ポリスチレン(PSJ社製、汎用ポリスチレン G9504、ビカット軟化点=103℃)をインフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=103℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.2Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(2)ヒートシール剤
(i)HS剤−1:アクリル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(BASF製、ジョンクリル(スチレン−アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩の水分散体、不揮発分:35質量%、ガラス転移温度:−5℃))
(i)HS剤−1:アクリル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(BASF製、ジョンクリル(スチレン−アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩の水分散体、不揮発分:35質量%、ガラス転移温度:−5℃))
(3)フィラー
(i)PMMA1:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:8μm)
(ii)PMMA2:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:20μm)
(iii)PMMA3:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:30μm)
(iv)PMMA4:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:40μm)
(v)PS1:ポリスチレン架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーSBXシリーズ、平均粒子径:12μm)
(vi)シリカ:非晶シリカ(富士シリシア製、サイリシアシリーズ、平均粒子径:14μm)
(vii)ガラスビーズ(ユニオン製SPLシリーズ、平均粒子径:100μm)
(viii)タルク(平均粒子径:1μm)
(i)PMMA1:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:8μm)
(ii)PMMA2:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:20μm)
(iii)PMMA3:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:30μm)
(iv)PMMA4:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径:40μm)
(v)PS1:ポリスチレン架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーSBXシリーズ、平均粒子径:12μm)
(vi)シリカ:非晶シリカ(富士シリシア製、サイリシアシリーズ、平均粒子径:14μm)
(vii)ガラスビーズ(ユニオン製SPLシリーズ、平均粒子径:100μm)
(viii)タルク(平均粒子径:1μm)
(4)底材
(i)PVC:硬質塩化ビニル単層シート(住友ベークライト製スミライトVSSシリーズ(厚さ250μm)、熱変形温度A法及びB法とも約60〜70℃)。深さ:4mm、開口部分の直径10mm、底面部分の直径8mmのサイズの凹部を有し、深さ方向に直交する方向に延びる平均幅10mmのフランジ部を有する底材に成形した。
(i)PVC:硬質塩化ビニル単層シート(住友ベークライト製スミライトVSSシリーズ(厚さ250μm)、熱変形温度A法及びB法とも約60〜70℃)。深さ:4mm、開口部分の直径10mm、底面部分の直径8mmのサイズの凹部を有し、深さ方向に直交する方向に延びる平均幅10mmのフランジ部を有する底材に成形した。
実施例及び比較例において使用した材料の性質の分析方法は、以下の通りである。
[フィラー粒子径]
ヒートシール前のフィラー粒子径(r)は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALDシリーズ、セイシン企業製LMS−2000e)を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径(体積変換して得られた粒度分布より算出したd(50)の値)を、ヒートシール前のフィラー粒子径とした。
ヒートシール前のフィラー粒子径(r)は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALDシリーズ、セイシン企業製LMS−2000e)を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径(体積変換して得られた粒度分布より算出したd(50)の値)を、ヒートシール前のフィラー粒子径とした。
[ヒートシール層厚み]
ヒートシール層のフィラーを含まない部分の厚み(S)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、フィラーの無い部分を3か所スケール測定した平均値とし、表1の接着性樹脂の厚み(μm)に示した。
ヒートシール層のフィラーを含まない部分の厚み(S)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、フィラーの無い部分を3か所スケール測定した平均値とし、表1の接着性樹脂の厚み(μm)に示した。
[ヒートシール層の表面の算術平均粗さ]
ヒートシール層の表面の算術平均粗さ(Ra1)を、JIS B 0601に準拠して、レーザー顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、3か所について測定し、測定値の平均値を用いて評価した。
ヒートシール層の表面の算術平均粗さ(Ra1)を、JIS B 0601に準拠して、レーザー顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、3か所について測定し、測定値の平均値を用いて評価した。
なお、上記S、上記Ra1の測定を行ったサンプルとしては、包装体の底材の凹部(PVCのポケット部)を覆っている蓋材の未シール部分から切り出したものを用いた。
<評価項目>
実施例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
実施例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
(1)空気溜まり
ヒートシール後の包装体について、底材側からデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−5000)を用いてヒートシール面を観察し、空気溜まりとシール部位とを色調差より二値化することによって、空気溜まりの最大径(mm)を測定しつつそれを評価した。判定基準は以下の通りである。
<判定基準>
○:フランジ部位全体において、未シール部分は確認されない。
△:フランジ部位の所々に未シール部位があるが、そのサイズは直径5mm以下である。実用上の問題はない。
×:フランジ部位に未シール部位があり、そのサイズは5mm超であり、ポケット部と外部が導通してしまっている。実用上不適と判断される。
ヒートシール後の包装体について、底材側からデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−5000)を用いてヒートシール面を観察し、空気溜まりとシール部位とを色調差より二値化することによって、空気溜まりの最大径(mm)を測定しつつそれを評価した。判定基準は以下の通りである。
<判定基準>
○:フランジ部位全体において、未シール部分は確認されない。
△:フランジ部位の所々に未シール部位があるが、そのサイズは直径5mm以下である。実用上の問題はない。
×:フランジ部位に未シール部位があり、そのサイズは5mm超であり、ポケット部と外部が導通してしまっている。実用上不適と判断される。
(2)PTP包装体の低温ヒートシール性
底材の凹部(ポケット)のサイズは、前述の通りであり、内容物である錠剤は、円柱状形状を備え、サイズは、錠径8.6mm、錠高3.8mmであった。
ヒートシールの条件は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともに、PVCは130℃、PPは135℃、作業室環境23℃、50%RHとした。
作製したPTP包装体について、減圧リーク試験(PTP包装体100ポケットを水中に入れて、−67kPaで5分間保持し、PTPポケット中に水の漏れがないかを確認する)を行って、ヒートシール強度を確認した。また、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を、下記基準に基づきヒートシール層と底材との低温ヒートシール強度を評価した。ヒートシール強度が高いほど、低温ヒートシール性が高いと評価した。
<判定基準>
○:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。ヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せた。ヒートシール温度が低温(120℃以下)でも確実に接着し、且つ十分な強度があり、非常に実用的である。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
底材の凹部(ポケット)のサイズは、前述の通りであり、内容物である錠剤は、円柱状形状を備え、サイズは、錠径8.6mm、錠高3.8mmであった。
ヒートシールの条件は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともに、PVCは130℃、PPは135℃、作業室環境23℃、50%RHとした。
作製したPTP包装体について、減圧リーク試験(PTP包装体100ポケットを水中に入れて、−67kPaで5分間保持し、PTPポケット中に水の漏れがないかを確認する)を行って、ヒートシール強度を確認した。また、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を、下記基準に基づきヒートシール層と底材との低温ヒートシール強度を評価した。ヒートシール強度が高いほど、低温ヒートシール性が高いと評価した。
<判定基準>
○:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。ヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せた。ヒートシール温度が低温(120℃以下)でも確実に接着し、且つ十分な強度があり、非常に実用的である。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
(3)PTP包装体の蓋材の表面の平滑性(蓋材の表面の算術平均粗さ)
作製したPTP包装体の蓋材フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra2)を、JIS B 0601に準拠して、レーザー顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、3か所測定し、測定値の平均値(μm)を用いて評価した。
<判定基準>
○:Ra2の値が2μm以下である。
△:Ra2の値が2μm超5μm以下である。
×:Ra2の値が5μm超である。
作製したPTP包装体の蓋材フィルムの表面の算術平均粗さ(Ra2)を、JIS B 0601に準拠して、レーザー顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、3か所測定し、測定値の平均値(μm)を用いて評価した。
<判定基準>
○:Ra2の値が2μm以下である。
△:Ra2の値が2μm超5μm以下である。
×:Ra2の値が5μm超である。
(4)PTP包装体の印刷部分の視認性(バーコード読み取り性)
作製したPTP包装体の蓋材フィルムの印刷部分を、バーコードリーダー(キーエンス製)を用いた読み取りを10回実施し、読み取り成功率(%)により印刷部分の視認性(バーコード読み取り性)を評価した。
<判定基準>
○:バーコード読み取り成功率が100%である。
△:バーコード読み取り成功率が70%超100%未満である。
×:バーコード読み取り成功率が70%以下である。
作製したPTP包装体の蓋材フィルムの印刷部分を、バーコードリーダー(キーエンス製)を用いた読み取りを10回実施し、読み取り成功率(%)により印刷部分の視認性(バーコード読み取り性)を評価した。
<判定基準>
○:バーコード読み取り成功率が100%である。
△:バーコード読み取り成功率が70%超100%未満である。
×:バーコード読み取り成功率が70%以下である。
(5)PTP包装体のカール性
作製したPTP包装体を、ヒートシールから1日後に、平らな机の上に置いた。そして、PTP包装体の短辺のフランジ部の一端部を指で押さえたときに浮き上がった当該短辺と開口部分を挟んで対向するもう一つの短辺のフランジ部の端部と机との最大距離を定規で測定することにより、PTP包装体のカール性を評価した(n数=5)。
<判定基準>
○:机との距離が3mm未満であり、ほとんどカールしていない。
△:机との距離が3mm〜5mmであり、ややカールしている。
×:机との距離が5mm超であり、カールしている。
作製したPTP包装体を、ヒートシールから1日後に、平らな机の上に置いた。そして、PTP包装体の短辺のフランジ部の一端部を指で押さえたときに浮き上がった当該短辺と開口部分を挟んで対向するもう一つの短辺のフランジ部の端部と机との最大距離を定規で測定することにより、PTP包装体のカール性を評価した(n数=5)。
<判定基準>
○:机との距離が3mm未満であり、ほとんどカールしていない。
△:机との距離が3mm〜5mmであり、ややカールしている。
×:机との距離が5mm超であり、カールしている。
[実施例1]
PS系フィルム1(スチレン−メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=230線/インチ、版深度=20μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字、及び、縦幅6mm、横幅22mmの大きさのバーコードを印刷し、その上に、線数=80線/インチ、版深度=130μmの版を用いて、ヒートシール剤(HS−1)を塗工した。
ヒートシール剤は、塗工前に、不揮発分が40質量%、粘度が100mPa・s〜1000mPa・sとなるように水で希釈し、HS剤−1中の固形分100質量部に対してフィラーのPMMA1(ヒートシール前のフィラー粒子径r=8μm)が6質量部となるよう混合した。
塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間乾燥して、蓋材を得た。
底材に厚さ250μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、PTP成形機(CKD社製、FBP−M1)により、凹部を成形した底材に錠剤を充填し、ヒートシールにより底材とPTP包装体用蓋材とを接着して、PTP包装体を得た。その際に用いた加熱ロールは、表面にダイス等の彫刻による凹凸が無い鏡面ロールを使用した。
ヒートシール条件は、温度120℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度とも130℃、作業室環境23℃、50%RHとした。
PS系フィルム1(スチレン−メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=230線/インチ、版深度=20μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字、及び、縦幅6mm、横幅22mmの大きさのバーコードを印刷し、その上に、線数=80線/インチ、版深度=130μmの版を用いて、ヒートシール剤(HS−1)を塗工した。
ヒートシール剤は、塗工前に、不揮発分が40質量%、粘度が100mPa・s〜1000mPa・sとなるように水で希釈し、HS剤−1中の固形分100質量部に対してフィラーのPMMA1(ヒートシール前のフィラー粒子径r=8μm)が6質量部となるよう混合した。
塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間乾燥して、蓋材を得た。
底材に厚さ250μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、PTP成形機(CKD社製、FBP−M1)により、凹部を成形した底材に錠剤を充填し、ヒートシールにより底材とPTP包装体用蓋材とを接着して、PTP包装体を得た。その際に用いた加熱ロールは、表面にダイス等の彫刻による凹凸が無い鏡面ロールを使用した。
ヒートシール条件は、温度120℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度とも130℃、作業室環境23℃、50%RHとした。
得られたPTP包装体から、蓋材フィルムのポケット部のシールされていない部分について剃刀でくり抜き、そのシール層側の表面の平均粗さを測定したところ、平均粗さ(Ra1)は2.8μmであった。
得られたPTP包装体について、(1)に記載の方法で評価したところ、空気溜まりは観察されず、良好な外観を有していた。
得られたPTP包装体について、(2)に記載の方法で評価し、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を観察したところ、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はないレベルであった。減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個と良好であった。
得られたPTP包装体について、(3)に記載の方法で評価したところ、蓋材表面の平均粗さは0.7μmであり、平滑性に優れていた。
得られたPTP包装体について、(4)に記載の方法で評価したところ、バーコードの読み取りは10回中10回成功し、視認性に優れていた。
得られたPTP包装体について、(5)に記載の方法で評価したところ、机との距離は3mmとカールが少なく、カール抑止性に優れていた。
得られたPTP包装体について、(2)に記載の方法で評価し、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を観察したところ、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はないレベルであった。減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個と良好であった。
得られたPTP包装体について、(3)に記載の方法で評価したところ、蓋材表面の平均粗さは0.7μmであり、平滑性に優れていた。
得られたPTP包装体について、(4)に記載の方法で評価したところ、バーコードの読み取りは10回中10回成功し、視認性に優れていた。
得られたPTP包装体について、(5)に記載の方法で評価したところ、机との距離は3mmとカールが少なく、カール抑止性に優れていた。
[実施例2〜7]
実施例2〜7は、表1に記載の基材層とフィラーを用いた以外は配合比等も実施例1と同様にして蓋材を作製し、PTP包装体を得た。詳細な条件を表1に示す。
実施例2は、PMMA粒子が20μmのものを用いたが、全ての評価項目で良好であり、実用上優れた結果が得られた。
実施例3は、PMMA粒子が30μmのものを用いたが、バーコード読み取りが10回中9回成功であったが実用上に問題なく、その他評価においては良好であり、実用上は良好な結果が得られた。
実施例4は、フィラーにPS1を用いたが、全ての評価項目で良好であり、実用上優れた結果が得られた。
実施例5は、PMMA粒子が40μmのものを用いた。Ra1が15.6μmとなり、リークテストにおいて、100ポケット中水が漏れたポケット数が2ポケット存在したほか、Ra2が2.4μmとなりバーコード読み取りが10回中8回成功であった。いずれも実用上に問題なく、その他評価においては良好であり、実用上は良好な結果が得られた。
実施例6は、フィラーに無機粒子のシリカを用いており、シール後のシール面を観察すると最大で直径1mm程度の空気溜が発生していたが、実用上問題ないレベルであり、その他の結果も良好であった。
実施例7は、基材層フィルムにPS系フィルム2を、フィラーにPMMA2を用いており、リークテストにおいて、100ポケット中水が漏れたポケット数が1ポケット存在したが、実用上問題ないレベルであり、その他の結果も良好であった。
実施例1〜7において、包装後の蓋材の表面は平滑でありバーコード読み取り性に優れ、リークテストを十分クリアするだけでなくカール抑止性に優れ、実用的であった。
このように、特定の表面粗さを持つヒートシール層を有するプラスチック蓋材を用いることにより、金型表面に模様の彫刻の無い加熱ロールを用いてヒートシールしても空気溜まりが発生せず、蓋材表面が平滑なPTP包装体が得られることがわかる。
実施例2〜7は、表1に記載の基材層とフィラーを用いた以外は配合比等も実施例1と同様にして蓋材を作製し、PTP包装体を得た。詳細な条件を表1に示す。
実施例2は、PMMA粒子が20μmのものを用いたが、全ての評価項目で良好であり、実用上優れた結果が得られた。
実施例3は、PMMA粒子が30μmのものを用いたが、バーコード読み取りが10回中9回成功であったが実用上に問題なく、その他評価においては良好であり、実用上は良好な結果が得られた。
実施例4は、フィラーにPS1を用いたが、全ての評価項目で良好であり、実用上優れた結果が得られた。
実施例5は、PMMA粒子が40μmのものを用いた。Ra1が15.6μmとなり、リークテストにおいて、100ポケット中水が漏れたポケット数が2ポケット存在したほか、Ra2が2.4μmとなりバーコード読み取りが10回中8回成功であった。いずれも実用上に問題なく、その他評価においては良好であり、実用上は良好な結果が得られた。
実施例6は、フィラーに無機粒子のシリカを用いており、シール後のシール面を観察すると最大で直径1mm程度の空気溜が発生していたが、実用上問題ないレベルであり、その他の結果も良好であった。
実施例7は、基材層フィルムにPS系フィルム2を、フィラーにPMMA2を用いており、リークテストにおいて、100ポケット中水が漏れたポケット数が1ポケット存在したが、実用上問題ないレベルであり、その他の結果も良好であった。
実施例1〜7において、包装後の蓋材の表面は平滑でありバーコード読み取り性に優れ、リークテストを十分クリアするだけでなくカール抑止性に優れ、実用的であった。
このように、特定の表面粗さを持つヒートシール層を有するプラスチック蓋材を用いることにより、金型表面に模様の彫刻の無い加熱ロールを用いてヒートシールしても空気溜まりが発生せず、蓋材表面が平滑なPTP包装体が得られることがわかる。
[比較例1]
比較例1は、表1に記載の通りヒートシール剤にフィラーを含有させない以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。詳細な条件を表1に示す。
比較例1は、蓋材のシール層側の表面の平均粗さ(Ra1)が0.2μmであり、表面粗さが小さい為、蓋材と底材の間にある空気が十分に排出されず、直径10mmを超える大きな空気溜が発生し、空気溜が発生した箇所から空気がリークした。そのためリークテスト結果は100ポケット中、水が漏れたポケット数が93ポケットと非常に悪く、いずれも実用上不適と判断される。
比較例1は、表1に記載の通りヒートシール剤にフィラーを含有させない以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。詳細な条件を表1に示す。
比較例1は、蓋材のシール層側の表面の平均粗さ(Ra1)が0.2μmであり、表面粗さが小さい為、蓋材と底材の間にある空気が十分に排出されず、直径10mmを超える大きな空気溜が発生し、空気溜が発生した箇所から空気がリークした。そのためリークテスト結果は100ポケット中、水が漏れたポケット数が93ポケットと非常に悪く、いずれも実用上不適と判断される。
[比較例2]
比較例2は、フィラーに粒子径が1μmのタルクを用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。詳細な条件を表1に示す。
比較例2は、フィラーの径がシール層厚みに比べて小さいため、蓋材のシール層側の表面の平均粗さが0.5μmと不十分であり、蓋材と底材の間にある空気が十分に排出されず、直径6mmを超える空気溜まりが発生し、空気溜まりが発生した箇所から一部空気がリークし、リークテスト結果は100ポケット中、水が漏れたポケット数が40ポケットであったため実用上不適と判断される。
比較例2は、フィラーに粒子径が1μmのタルクを用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。詳細な条件を表1に示す。
比較例2は、フィラーの径がシール層厚みに比べて小さいため、蓋材のシール層側の表面の平均粗さが0.5μmと不十分であり、蓋材と底材の間にある空気が十分に排出されず、直径6mmを超える空気溜まりが発生し、空気溜まりが発生した箇所から一部空気がリークし、リークテスト結果は100ポケット中、水が漏れたポケット数が40ポケットであったため実用上不適と判断される。
[比較例3]
比較例3は、表1に記載のフィラーを実施例1と同様にしてヒートシール剤に混合し、基材層フィルムの上に滴下後スピンコーターを用いて塗布し、乾燥させて蓋材を作製した。得られた蓋材を実施例1と同様にして成形し、PTP包装体を得た。詳細な条件を表1に示す。
比較例3の蓋材のシール層側の表面の平均粗さ(Ra1)は26μmと表面粗さの値が大きく蓋材と底材の間隙が広いため、シール層が底材表面に十分に到達せず部分的に未シール部が発生した。そのためリークテスト結果は100ポケット中、水が漏れたポケット数が91ポケットと非常に悪く、また蓋材表面も未シール部分による凹凸が生じた。外観上からも不良と判断し、カール、バーコード読み取り性については実施しなかったが、実用上不適と判断される。
比較例3は、表1に記載のフィラーを実施例1と同様にしてヒートシール剤に混合し、基材層フィルムの上に滴下後スピンコーターを用いて塗布し、乾燥させて蓋材を作製した。得られた蓋材を実施例1と同様にして成形し、PTP包装体を得た。詳細な条件を表1に示す。
比較例3の蓋材のシール層側の表面の平均粗さ(Ra1)は26μmと表面粗さの値が大きく蓋材と底材の間隙が広いため、シール層が底材表面に十分に到達せず部分的に未シール部が発生した。そのためリークテスト結果は100ポケット中、水が漏れたポケット数が91ポケットと非常に悪く、また蓋材表面も未シール部分による凹凸が生じた。外観上からも不良と判断し、カール、バーコード読み取り性については実施しなかったが、実用上不適と判断される。
[比較例4、5]
比較例4、5は、フィラーを添加しなかった以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、金型表面にダイス目を彫刻したヒートシールロールでヒートシールを行い、PTP包装体を得たものである。詳細な条件を表1に示す。
比較例4は、空気溜まりは見られなかったが、シールの接着性が弱くリークテストで100個中90個にリークが発生した。また、金型の凹凸が転写されたことにより蓋材表面のRa2は6.3と凹凸が大きく、バーコードによる読み取り性も10回中5回と不良であった。
比較例5は、ヒートシール温度を150℃と高温にすることで、リークテスト結果は100個中リークしたポケットはなく良好であったが、比較例3と同様にRa2は5.6と表面の凹凸が大きくバーコードによる読み取り性は10回中7回と不良であり、また、高温での成形によりカール性が机より12mm離れ不良となった。いずれも実用上不適と判断される。
比較例4、5は、フィラーを添加しなかった以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、金型表面にダイス目を彫刻したヒートシールロールでヒートシールを行い、PTP包装体を得たものである。詳細な条件を表1に示す。
比較例4は、空気溜まりは見られなかったが、シールの接着性が弱くリークテストで100個中90個にリークが発生した。また、金型の凹凸が転写されたことにより蓋材表面のRa2は6.3と凹凸が大きく、バーコードによる読み取り性も10回中5回と不良であった。
比較例5は、ヒートシール温度を150℃と高温にすることで、リークテスト結果は100個中リークしたポケットはなく良好であったが、比較例3と同様にRa2は5.6と表面の凹凸が大きくバーコードによる読み取り性は10回中7回と不良であり、また、高温での成形によりカール性が机より12mm離れ不良となった。いずれも実用上不適と判断される。
本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤、カプセル等の医薬品やキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる。
1 底材
1a 底材の凹部
1b 底材のフランジ部
2 内容物(錠剤)
3 ヒートシール層
3a フィラー
3b 接着性樹脂
4A 蓋材フィルム(基材層)
5 印刷部分
6 表面保護層
8 蓋材
8a 表面
10 包装体
L1 蓋材フィルムの厚さ
L2 底材の厚さ
S ヒートシール層の厚み(フランジ部)
r 蓋材のフィラーの粒子径(フィルム厚み方向のフィラーの粒子径)
F1 表面
F2 表面
1a 底材の凹部
1b 底材のフランジ部
2 内容物(錠剤)
3 ヒートシール層
3a フィラー
3b 接着性樹脂
4A 蓋材フィルム(基材層)
5 印刷部分
6 表面保護層
8 蓋材
8a 表面
10 包装体
L1 蓋材フィルムの厚さ
L2 底材の厚さ
S ヒートシール層の厚み(フランジ部)
r 蓋材のフィラーの粒子径(フィルム厚み方向のフィラーの粒子径)
F1 表面
F2 表面
Claims (6)
- 凹部を有する底材と熱可塑性樹脂を含む基材層を有する蓋材とを備えるプレススルーパック包装体であり、
前記蓋材の前記底材側の表面を形成するヒートシール層の表面の算術平均粗さ(Ra1)が1〜20μmであり、かつ、前記蓋材の前記底材側の表面とは反対側の表面が平滑である、
ことを特徴とする、プレススルーパック包装体。 - 前記底材と前記蓋材との間に生じた空気溜まりの最大径が0〜5mmである、請求項1に記載のプレススルーパック包装体。
- 包装体全体のカールによるシートの浮きが、5.0mm以下である、請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体。
- 前記底材が、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体。
- 前記蓋材が、スチレン系樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体。
- シール用金型に、平滑な表面を有するヒートシールロールを用いて、前記底材及び前記蓋材を熱で接着する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体の製造方法。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
JP2016117927A JP2017222375A (ja) | 2016-06-14 | 2016-06-14 | プレススルーパック包装体 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016117927A JP2017222375A (ja) | 2016-06-14 | 2016-06-14 | プレススルーパック包装体 |
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---|---|
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-
2016
- 2016-06-14 JP JP2016117927A patent/JP2017222375A/ja active Pending
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