JP6343115B2 - プレススルーパック包装体用蓋材及び包装体 - Google Patents
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Description
(1)蓋材フィルムとヒートシール層とを有し、前記ヒートシール層は、表面の算術平均粗さ(Ra)が20nm以上である、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)前記ヒートシール層は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、アイオノマー、直鎖状低密度ポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂からなる、(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(3)前記ヒートシール層は、エマルジョン型ヒートシール剤からなる、(1)又は(2)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)前記蓋材フィルムは、スチレン系樹脂からなる、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)(1)〜(4)のいずれか1つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部、及び、前記蓋材と貼り合わされるフランジ部を有する底材とを備えるプレススルーパック包装体。
図1に示すPTP包装体10は、底材1と蓋材8とを備え、底材1に成型されたポケット状の凹部1aに錠剤2が充填されている。蓋材8は、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3を備え、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bと蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。
蓋材フィルム4Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等があげられる。廃棄時の易焼却性、ガスバリア性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
図1に示す蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものである。ヒートシール剤としては、ヒートシール層が熱によって底材と共に溶融し、相互に融着(ヒートシール)し得るものであればいずれのものを用いてもよい。
蓋材8は、蓋材フィルム4Aに対し、ヒートシール層3の原料であるヒートシール剤を適用することにより製造することができる。
[蓋材フィルムのビカット軟化点]
ビカット軟化点は、JIS K7206に準拠して測定される値を意味する。試験荷重は50N、昇温速度は50℃/h。
レーザー回折式粒径分布測定装置(セイシン企業製、LMS−2000e)を用いて、得られた水性分散液の平均粒径を測定した。測定条件は、分散媒種:エタノール、屈折率:分散媒1.36であり、体積変換して得られた粒度分布より、d(50)の値を用いて算出した。
B型粘度計を用い測定した。
融点は、ヒートシール剤を120℃で、5時間以上乾燥させ、十分に固化させた試料を、JIS K7121に準じたDSC法により10℃/分の昇温速度で測定した融解の主ピーク温度で表す。
島津製作所社製走査プローブ顕微鏡(SPM−9500J2)を用い、蓋材ヒートシール層表面の凹凸を観察した。観察条件は、ダイナミックモード(位相検出)、カンチレバー:300kHz(42N/m)、走査範囲:20μm、走査速度:0.5kHzで実施した。観察後、JIS B0601に準拠した面粗さ解析(面積:20μm×20μm)を実施し、算出される算術平均粗さ(Ra)を算出した。測定箇所はランダムに5箇所を選んで実施し、Raは5箇所の平均値を使用した。
実施例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
まず巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれた蓋材フィルムの片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥した。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上にヒートシール剤を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるようにイソプロピルアルコールで希釈して用いた。塗工後は、熱風式乾燥機の中を所定の温度と時間通過することで乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。このときの、巻き取られた蓋材の巻きジワの様子を外観検査により評価した。判定基準は以下のとおりである。
△:多少の巻きジワが入る場合があるがほとんど目立たない程度であり、実用上問題はない。
×:巻きジワが大量に発生し、酷い外観である。巻取り張力等を工夫してもまったくシワは解消できず、実用上不適と判断される。
上記で作成した、ロール状に巻き取った蓋材を、23℃、50%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、ブロッキング性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
△:巻き解いたとき、手に多少の抵抗感があるが、蓋材自体も破れることなく巻き解くことが可能であり、巻き解いた後の印刷、OPニス、ヒートシール層の状態も綺麗である。実用上の問題はない。
×:巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまう。実用上不適と判断される。
底材シートに厚さ200μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、PTP成形機(CKD社製FBP−M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、以下に述べる実施例及び比較例で作製したPTP包装体用蓋材を接着して、PTP包装体を得た。このときの底材シートのポケットサイズは直径10mm、高さ4mmの円形であり、錠剤のサイズは錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形であった。ヒートシールの条件は、特に記載のない場合は、温度120℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材シート成形温度130℃、スリット温度130℃、作業室環境22℃、50%RHである。
△:ヒートシール層と底材がごく僅か剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
(i)PS系フィルム−1:スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体(メチルメタクリルレート含量5wt%、メタクリル酸含量10wt%、ビカット軟化点=123℃)を90重量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製耐衝撃ポリスチレンGH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10重量%の割合で配合し、インフレーション法によって延伸し、その後フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施した厚さ20μm、突刺し強さ1.9Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PS系フィルム−2:ポリスチレン(PSジャパン社製ポリスチレン#685、ビカット軟化点=103℃))を90重量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製耐衝撃ポリスチレンGH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10重量%の割合で配合し、インフレーション法によって延伸し、その後フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施した厚さ14μm、突刺し強さ3.2Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(iii)グラシン紙−1:厚さ23μm、突刺し強さ1.6Nのグラシン紙。
(iv)アルミ箔−1:厚さ20μm、突刺し強さ1.4Nのアルミニウム箔。
(i)HS剤−1:エチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤(平均粒径:1.7μm、粘度:270mPa・s、不揮発分:60重量%、融点:67℃)
(ii)HS剤−2:直鎖状低密度ポリエチレン系エマルジョン型ヒートシール剤(平均粒径:1.1μm、粘度:70mPa・s、不揮発分:40重量%、融点:115℃)
(iii)HS剤−3:エチレン・メタクリル酸共重合体系エマルジョン型ヒートシール剤(平均粒径:2.1μm、粘度:350mPa・s、不揮発分:50重量%、融点:98℃)
(iv)HS剤−4:アイオノマー系エマルジョン型ヒートシール剤(平均粒径:4.6μm、粘度:30mPa・s、不揮発分:45重量%、融点:98℃))
(v)HS剤−5:塩化ビニル・ポリエステル樹脂系ヒートシール剤(粘度:100mPa・s、不揮発分:40重量%、融点:110℃、トルエン及びMEKを含有)
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム−1(スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥する。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上に線数=80線/インチ、版深度=140μmの版を用いてHS剤−1(エチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤、平均粒径:1.7μm)を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるようにイソプロピルアルコールで希釈して用いた。塗工後は、65℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間通過する速度で乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。
実施例2、3は、表1に記載の乾燥条件にした以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。実施例2の蓋材の算術平均粗さRaは65nmであり、十分な凹凸構造が確認できた。シール層塗工後の巻きジワやブロッキングはまったくなく、低温ヒートシール強度も優れていた。実施例3の蓋材の算術平均粗さRaは30nmであり、凹凸構造が確認できた。シール層塗工後の巻きジワやブロッキングは多少はあるものの実用上問題のないレベルであり、低温ヒートシール強度も優れていた。このように乾燥条件を変えることにより、表面の凹凸構造を制御することが可能であり、巻きジワやブロッキングのない優れた蓋材を作成することができた。
実施例4〜6は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。実施例4〜6の蓋材の算術平均粗さRaは83〜87nmであり、十分な凹凸構造が確認できた。シール層塗工後の巻きジワやブロッキングはまったくなかった。低温ヒートシール強度は、ヒートシール層と底材がごく僅か剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はないレベルであった。このようにヒートシール剤の種類を変えても、表面に十分な凹凸構造を有し、巻きジワやブロッキングのない優れた蓋材を作成することができた。ヒートシール剤の種類を変えることにより、ヒートシール層の被着体である蓋材フィルムや底材の種類を幅広く選択することが可能となるため、好ましい。
実施例7〜9は、表1に記載の蓋材フィルムを用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。実施例7〜9の蓋材の算術平均粗さRaは86nmであり、十分な凹凸構造が確認できた。シール層塗工後の巻きジワやブロッキングはまったくなく、低温ヒートシール強度も優れていた。このように蓋材フィルムの種類を変えても、表面に十分な凹凸構造を有し、巻きジワやブロッキングのない優れた蓋材を作成することができた。蓋材フィルムの種類を変えることにより、幅広いタイプのPTP包装体を作成することが可能となるため、好ましい。
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム−1(スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥する。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上に押出ラミ法によりエチレン酢酸ビニル共重合体(融点71℃、MFR15g/10分)を厚さ17μmで積層して蓋材を得た。また、押出ラミの際、表面にエンボス状の凹凸のある冷却ロールを用い、エンボス加工を施した。このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。実施例10の蓋材の算術平均粗さRaは414nmであり、十分な凹凸構造が確認できた。またブロッキングはまったくなく、低温ヒートシール強度も優れていた。
比較例1は、表2に記載の乾燥条件を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例2は、表2に記載の乾燥条件を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。蓋材の算術平均粗さRaは7nmであり、乾燥時間が長すぎるために、十分な凹凸構造がなくなってしまったものと考えられる。表1に示すとおり、巻きジワが大量に発生し、酷い外観であり、巻取り張力等を工夫してもまったくシワは解消できず、実用上不適なレベルであった。また、巻き解いたときのブロッキング性は、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまうレベルであった。
比較例3は、表2に記載のヒートシール剤(塩化ビニル・ポリエステル樹脂)を用いた以外は実施例9と同様にて蓋材を作製したものである。塗工後の乾燥が不十分なために、ヒートシール剤が生乾きの状態となり、各種評価をすることができないレベルであった。
比較例4は、比較例3を改良したものであり、表2に記載のとおり乾燥条件を改善して蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。蓋材の算術平均粗さRaは16nmであり、乾燥温度が高いために、十分な凹凸構造がなくなってしまったものと考えられる。表2に示すとおり、巻きジワは多少発生する程度ではあったものの、巻き解いたときのブロッキング性は、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまうレベルであった。なお、破れた蓋材の破片の一部を用い、スポット的に低温ヒートシール強度を評価したところ、錠剤を押出すよりも先にヒートシール層と底材が剥離してしまい、低温ヒートシール強度はまったく不十分なレベルであった。
実施例11は、比較例4を改良したものであり、比較例4と同様の方法でヒートシール剤を塗工及び乾燥した後に、エンボス状の凹凸のあるロールを用い、エンボス加工を施して蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。蓋材の算術平均粗さRaは332nmと凹凸構造が確認でき、またブロッキングは多少はあるものの実用上問題ないレベルであった。
Claims (4)
- 蓋材フィルムとヒートシール層とを有し、
前記蓋材フィルムは、スチレン系樹脂からなり、
前記ヒートシール層は、表面の算術平均粗さ(Ra)が20nm以上であり、
前記ヒートシール層は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩素化ポリプロピレン、アクリル変性ポリプロピレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂(ポリエステルを含む場合を除く。耐ブロッキング剤を含む場合を除く。)からなる、プレススルーパック包装体用蓋材。 - 前記ヒートシール層は、エマルジョン型ヒートシール剤からなる、請求項1に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、
内容物を収容する凹部、及び、前記蓋材と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、
を備えるプレススルーパック包装体。 - 請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材を製造する製造方法であって、
前記蓋材フィルムに前記ヒートシール層の原料であるヒートシール剤を塗工し、50℃〜115℃の乾燥温度で1秒〜200秒間乾燥させる、製造方法。
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