JP6693797B2 - プレススルーパック包装体用蓋材及びその製造方法、並びにプレススルーパック包装体 - Google Patents
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(1)蓋材フィルムの一方の表面にヒートシール層を有し、他方の表面に表面保護層を有する蓋材であり、
前記ヒートシール層は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む樹脂からなり、
前記表面保護層は、融解ピーク温度が50℃以上200℃未満であるアクリル系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂からなる、
ことを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ポリプロピレン及びその部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む樹脂である、(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(3)前記ヒートシール層が、アクリル系樹脂を含む樹脂からなり、
前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体と、エチレン、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の他の単量体との共重合体である、(1)又は(2)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)前記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂からなる、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)(1)〜(4)のいずれか1つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部と蓋材に貼り合わせられるフランジ部とを有する底材とが、互いにヒートシールされていることを特徴とする、プレススルーパック包装体。
(6)ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む樹脂からなるヒートシール層、及び、融解ピーク温度が50℃以上200℃未満であるアクリル系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂からなる表面保護層を、それぞれ蓋材フィルムの両表面に塗工する工程を備えることを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材の製造方法。
(プレススルーパック(PTP)包装体用蓋材)
また、蓋材フィルム4Aの底材1と反対側の表面F2上には、製品名称ロゴ等の印刷部分5が、着色されたウレタン系樹脂やアクリル系樹脂等のインキにより形成される場合があり、この場合、印刷部分5を保護するための表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)6が表面F2の全面を覆うように形成される(図1参照)。更に、内容物が医薬品である場合には、医療過誤防止を目的に表面F1にも印刷やアルミ等の蒸着処理がなされる場合がある。
その一方で、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を主体とした樹脂からなるヒートシール層は、ロール状に巻き取った蓋材を夏場の輸送や高温雰囲気下での保管を想定した場合の耐ブロッキング性が十分でない虞がある。ここで、本実施形態のPTP包装体用蓋材8では、表面保護層6を融解ピーク温度が50℃以上200℃未満であるアクリル系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂を主体とした樹脂とすることにより、蓋材8をヒートシールする際に要求される耐熱性と高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性とを有することができる。
蓋材フィルム4Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等が挙げられ、廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、延伸フィルムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂が用いられる。
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレン成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として70〜97質量%であることが好ましく、75〜95質量%がより好ましい。スチレン成分が97質量%以下であると、プレススルー性が向上するばかりか、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルムが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレン成分が70質量%以上であると蓋材フィルムを作る際に延伸製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。熱可塑性樹脂に白色の着色剤を配合した蓋材フィルムや白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材フィルムが直接見える部分)が白いために、無地のアルミ箔の蓋材に比べ鏡面反射が起こりにくく、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡もあるため、バーコードが読み取りやすく好ましい。
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものであり、好ましくは、ヒートシール剤からなる。
ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を主体とする、具体的には、樹脂中の割合が50質量%以上である樹脂からなる。
なお、融解ピーク温度及びガラス転移温度は、JIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートより求めることができる。ここで、融解ピーク温度の有無は、DSCチャート(DSC曲線)において、曲線がベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るまでの部分(ピークトップ)が有るか無いかにより定めることができる。また、ガラス転移温度が複数存在する様な混合樹脂のヒートシール剤の場合、重量比率はJIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートの、それぞれのガラス転移ピークの各ベースライン間の距離の比率により求めることができる。また、各ベースラインが平行でない場合は、各ベースラインの延長した直線間にある中間点ガラス転移点を通過する位置での各ベースライン間の距離を用いることができる。
アクリル系樹脂とは、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体であっても、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合の具体例としては、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
共重合させる単量体の種類や割合を適宜変更することにより、ガラス転移温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の50%以上を占めることが好ましい。
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。
ポリエステル系樹脂の種類としては、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有しない)飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有する)不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から、飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
重縮合させる多価カルボン酸としては、2価又は3価以上のカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、クエン酸等が挙げられる。重縮合させる多価アルコールとしては、2価又は3価以上のアルコール、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
更には、本実施形態で使用されるヒートシール剤は、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂の他に、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を、50質量%未満の範囲で含んでいてよい。
また、ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
蓋材8を構成する表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)6は、後述するOP剤を原料とするものであり、蓋材フィルム4Aの底材1と反対側の表面F2上に製品名称ロゴ等の印刷部分5がある場合に印刷部の保護用として有用である。
ここで、アクリル系樹脂の好ましい融解ピーク温度は、80〜180℃、より好ましくは100〜150℃である。融解ピーク温度が50℃未満であると蓋材のヒートシール加熱ロール接触時に熱融着等の不良が起こる問題のある場合があり、200℃以上であると蓋材の表面保護層としての塗工造膜性が不十分である場合がある。ここで、「耐熱性」とは、低温域(100〜150℃)でヒートシール時に加熱ロールに接触することで、OPニス層が加熱ロールに融着して剥離しないこと、及び、熱変性や外観の不良の起こらないことをいう。なお、融解ピーク温度は、ガラス転移温度と同様に、JIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートより求めることができる。
OP剤のアクリル系樹脂とは、シール剤のアクリル系樹脂とは異なり、特定の融解ピーク温度を有するものである。少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む共重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体と共重合可能な他の結晶構造を構成できる重合体との共重合体、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
上記「他の結晶構造を構成できる重合体」としては、エチレン、プロピレンなどのビニル系モノマー、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数4以上20以下の脂肪族ジオール、および、セバシン酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸やテレフタル酸やイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などの多価カルボン酸からなるポリエステル部位を有するビニル系重合体、炭素数12以上30以下のアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートを重合させたビニル系重合体等が挙げられる。
また、上記「他の単量体」としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル系モノマー、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系モノマー、ブタジエンやイソプレンなどのジエン系モノマー等が挙げられる。
共重合させる単量体・重合体の種類や割合を適宜変更することにより、融解ピーク温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の50%以上を占めることが好ましい。
OP剤のアクリル系樹脂としては、市販のものを用いることができ、例えば、T&K TOKA社製「アクアパックワニス」等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、不飽和カルボン酸成分(A1)、エチレン系炭化水素成分(A2)、任意選択的に、(メタ)アクリル酸エステル成分(A3)、他の成分を、樹脂骨格中に含む。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中の不飽和カルボン酸成分(A1)の含有量は、通常、0.1〜30質量%としてよい。不飽和カルボン酸は、OPニス層6と蓋材フィルム4Aとの密着性を向上させるため、また、ポリオレフィン樹脂を水性媒体中に微細且つ安定に分散または溶解させる(水性化)ために必要であり、この量は、樹脂の水性化のしやすさや、蓋材フィルムとの密着性等のバランスの点から、0.5〜22質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。(A1)の含有量が30質量%を超えると、耐水性や夏場の高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性が得られにくくなる。(A1)の含有量が0.1質量%未満の場合、OPニス層6と蓋材フィルム4Aとの密着性が低下し、樹脂を水性媒体中に分散し難くなる。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の金属水酸化物でもよいが、塗膜の耐水性の観点から、揮発性の塩基性化合物が好ましい。
揮発性の塩基性化合物の具体例としては、アンモニア又は各種の有機アミン化合物が挙げられ、アンモニア又は常圧下での沸点が250℃以下である有機アミン化合物が好ましい。沸点が250℃を超えると、乾燥により樹脂塗膜から有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が悪化する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げられる。
カルボキシル基の中和度は、水性分散体の分散安定性の点から、30〜100%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましく、70〜100%であることがさらに好ましく、80〜100%であることが特に好ましい。カルボキシル基(酸無水物を含む)の一部が中和されていることでカルボキシラートアニオンが生じ、アニオンの静電気的反発力によって樹脂微粒子間の凝集が抑制される。そのため、水性分散体を安定化させることができる。
なお、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に酸無水物を導入した場合、樹脂の乾燥状態では、カルボキシル基は、隣接するカルボキシル基との間で脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に、塩基性化合物を含有する媒体中では、カルボキシル基の一部又は全部が、開環して、カルボン酸又はその塩の構造をとる場合がある。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のエチレン系炭化水素成分(A2)としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中でも、水性分散体の安定化の観点から、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、蓋材をヒートシールする際に要求される耐熱性の観点から、プロピレンが特に好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中のエチレン系炭化水素成分(A2)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。オレフィン成分の含有量が50質量%未満では、蓋材フィルム4Aの高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性や、耐水性及び耐溶剤性等のポリオレフィン樹脂由来の特性が失われやすくなる。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、各種基材との密着性を向上させる点から、(メタ)アクリル酸エステル成分(A3)を含有してもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸エステル成分(A3)の含有量は、1〜45質量%であることが好ましく、様々な基材との良好な密着性を持たせるために、1〜35質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜25質量%であることが特に好ましく、10〜25質量%であることが最も好ましい。(A3)成分の含有量が1質量%未満では、基材との密着性が低下する恐れがある。一方、(A3)成分の含有量が45質量%を超えても、オレフィン由来の樹脂の性質が失われ、蓋材フィルムの高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性や耐水性、耐溶剤性等が低下する虞がある。
(メタ)アクリル酸を炭素数1〜20のアルコールでエステル化した化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられ、この中で、基材の接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが更に好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜」又は「メタクリル酸〜」を意味する。
また、前述の通り、酸変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、上記成分以外に、他の成分を含有していてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中の他の成分の含有量は、10質量%以下程度としてよい。
他の成分としては、1−オクテン、ノルボルネン類等の炭素数6を超えるアルケンやジエン;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル;(メタ)アクリル酸アミド;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル及び該ビニルエステルを塩基性化合物等でけん化して得られるビニルアルコール;2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸誘導体;置換又は非置換スチレン;一酸化炭素;二酸化硫黄等が挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
本実施形態のプレススルーパック包装体用蓋材8は、前述の通り、ヒートシール層3の原料である前述のヒートシール剤、及び表面保護層6の原料である前述のOP剤を、それぞれ蓋材フィルム4Aの両表面に対して適用することによって、製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤や酸変性ポリオレフィン系樹脂を塗工して乾燥する方法を用いた例について、その詳細を説明する。
乾燥温度は、好ましくは50〜115℃、より好ましくは60〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
乾燥時間は、好ましくは1〜200秒、より好ましくは2〜100秒、更に好ましくは3〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
(1)蓋材フィルム
(i)PS系フィルム−1:スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリレート共重合体(メチルメタクリルレート含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%、ビカット軟化点=123℃)を90質量%、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製、耐衝撃ポリスチレン GH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10質量%配合し、インフレーション法により延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して作製した、(熱可塑性樹脂の)ビカット軟化点=120℃、厚さ30μm、突刺し強さ4.8Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(i)HS剤−1:アクリル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(BASF株式会社製、ジョンクリル、スチレン−アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩の水分散体、不揮発分:43重量%、ガラス転移温度:−4℃)
(ii)HS剤−2:ポリエステル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(東洋紡製、バイロナール、フタル酸/エチレングリコール・ブタンジオールの飽和共重合ポリエステル樹脂の水分散体、不揮発分:33重量%、イソプロピルアルコール16重量%、ガラス転移温度:3℃)
(i)OPニス剤−1:変性ポリプロピレンエマルジョン(ユニチカ株式会社製、アローベースYA−4010、無水マレイン酸/プロピレン/アクリル酸エチル共重合体の水分散体、不揮発分:20重量%、融解ピーク温度:111℃、148℃)
(ii)OPニス剤−2:変性ポリエチレンエマルジョン(ユニチカ株式会社製、アローベースSD−1200、無水マレイン酸/エチレン/アクリル酸エチル共重合体の水分散体、不揮発分:20重量%、融解ピーク温度:83℃、105℃)
(iii)OPニス剤−3:自己乳化型ポリオレフィンエマルジョン(住友精化社製、ザイクセンN、アクリル酸/エチレン共重合体のナトリウム塩の水分散体、不揮発分:20重量%、融解ピーク温度:80℃)
(iv)OPニス剤−4:アクリル系樹脂エマルジョン(株式会社T&K TOKA製、アクアパックワニスCL−1JST、スチレンアクリル樹脂の水分散体、不揮発分:38〜42重量%、融解ピーク温度:107℃、121℃)
(v)OPニス剤−X:ウレタン系樹脂エマルジョン(DICグラフィックス株式会社製、マリーンプラスGメジューム、ウレタン樹脂の水分散体、不揮発分:15〜25重量%、融解ピーク温度:122℃)
(vi)OPニス剤−Y:アクリル系樹脂エマルジョン(DICグラフィックス株式会社製、マリーングロスPEメジューム、アクリル樹脂の水分散体、不揮発分:30〜40重量%、融解ピーク温度:なし)
OPニス剤−Yと同様のアクリル系樹脂エマルジョン(DICグラフィックス株式会社製、マリーングロスPEメジューム、アクリル樹脂の水分散体、不揮発分:10〜20重量%、融解ピーク温度:なし)にカーボンブラック5〜15重量%を配合したインキ。
得られた蓋材フィルムについて、JIS K7206に準拠して、試験荷重:50N、昇温速度:50℃/時の条件で、ビカット軟化点(℃)を測定した。
得られた蓋材フィルムからヒートシール層のみを剥離し、このヒートシール層について、JIS K7121に準じたDSC法により、20℃/分の昇温速度で、融解ピーク温度、及び、補外ガラス転移温度によるガラス転移温度(℃)を測定した。
ロール状に巻き取った蓋材を、40℃、50%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、ブロッキング性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていない。非常に実用的である。
△:巻き解いたとき、手に抵抗感があるが、蓋材自体も破れることなく巻き解くことが可能であり、巻き解いた後の印刷、OPニス、ヒートシール層の状態も綺麗である。実用上の問題はない。
×:巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまう。実用上不適と判断される。
作製したPTP包装体について、減圧リーク試験(シワ無くヒートシールされたPTP包装体10ポケットを水中に入れて、−67kPaで5分間保持し、PTPポケット中に水の漏れがないかを確認する)を行って、ヒートシール強度を確認した。また、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を、下記基準に基づきヒートシール層と底材とのヒートシール強度を評価した。ヒートシール強度が高いほど低温ヒートシール性が高いと判断した。
○:減圧リーク試験の結果、10ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。ヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せた。ヒートシール温度が低温(150℃)でも確実に接着し、且つ十分な強度があり、非常に実用的である。
△:減圧リーク試験の結果、10ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、10ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
上記で作成したPTP包装体のヒートシール層と反対面の蓋材表面の印刷/OPニス面の外観により、PTP包装工程におけるヒートシール時に要求される耐熱性を評価した。
○:ヒートシール後の印刷及びOPニス表面の状態はヒートシール前と変わらない。
△:ヒートシール後の印刷及びOPニス表面の光沢感がヒートシール前より低い。
×:ヒートシール後の印刷及びOPニス表面の一部に熱融解による欠陥がある。
また、総合判定の評価基準は以下の通りである。
◎:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性と耐熱性の全て○である。
○:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性と耐熱性で一つが△で、他二つが○である。
△:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性と耐熱性で一つが○で、他二つが△である。
×:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性のどちらかひとつでも×がある。
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム−1(スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリレート共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷インキにて印刷し、その上にOPニス剤−1(変性ポリプロピレンエマルジョン)を塗工・乾燥した。
次に、その反対側の面に上記と同様の印刷インキにて印刷を行い、その上に線数=80線/インチ、版深度=140μmの版を用いてHS剤−1(スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤)を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるように水で希釈して用いた。塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間通過する速度で乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。
また、錠剤の表面(蓋材側)に、サーモラベルスーパーミニ(日油技研工業製)3R−40、3R−80、又は3R−120を貼り(各シールのn数=3)、充填速度1.2m/分にてヒートシールした後に、サーモラベルの変色を確認することにより錠剤の表面温度を測定した。一般的なアルミ箔蓋材フィルムを用いて一般的なヒートシール温度230℃で実施した場合、表面温度が60℃以上(最大で100℃)であったのに対し、本実施例1の蓋材をヒートシール温度150℃で実施した場合は、表面温度は45℃未満であった。このように、低温でのヒートシールは、内容物が受ける熱が少なく好ましいことが確認された。
実施例2〜5は、表1に記載のヒートシール剤とOPニス剤を用いた以外は、実施例1と同様に、蓋材を作製し、PTP包装体を得た。
ヒートシール層塗工後の巻きジワは全く無く、耐ブロッキング性、低温ヒートシール性、耐熱性に優れ、実用的であった。
このように、OPニス剤として融解ピーク温度を有するアクリル系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることにより、PTP成形機の低温シール性や耐熱性と、ロール状に巻き取った状態で夏場の高温雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性を両立させることが可能となる。
比較例1では、OPニス剤を塗工しないこと以外は、実施例1と同様に、蓋材を作製し、PTP包装体を得た。表1に示す通り、40℃、50%RH、1週間経時後巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまい、耐ブロッキング性は悪かった。また、ヒートシール剤が印刷面側に一部転写したり、印刷がヒートシール剤面側に一部転写したりしており、PTP成形機での低温シール性や耐熱性も悪く、実用上不適と判断された。
比較例2では、表1に記載のヒートシール剤及びOPニス剤を用いた以外は、実施例1と同様に、蓋材を作製した。ウレタン系樹脂からなるOPニス層は、常温常湿でロールがブロッキングしており、スリット装置にてスリットする際にフィルム切れが発生した。また、ウレタン系樹脂からなるOPニス剤自体は耐熱性が良いが、ロールのブロッキングによりヒートシール剤が印刷面側に一部転写していることから、PTP成形機での低温シール性や耐熱性が悪く、実用上不適と判断された。
比較例3では、表1に記載のヒートシール剤及びOPニス剤を用いた以外は、実施例1と同様に、蓋材を作製した。融解ピーク温度を有しないアクリル系樹脂からなるOPニス層は、常温常湿でロールがブロッキングしており、ヒートシール剤が印刷面側に一部転写していることから、PTP成形機での低温シール性が悪く、耐熱性も悪いことから、実用上不適と判断された。
Claims (6)
- 蓋材フィルムの一方の表面にヒートシール層を有し、他方の表面に表面保護層を有する蓋材であり、
前記ヒートシール層は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む樹脂からなり、
前記表面保護層は、融解ピーク温度が50℃以上200℃未満であるアクリル系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂からなる、
ことを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。 - 前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ポリプロピレン及びその部分中和物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む樹脂である、請求項1に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 前記ヒートシール層が、アクリル系樹脂を含む樹脂からなり、
前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体と、エチレン、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の他の単量体との共重合体である、請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。 - 前記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部と蓋材に貼り合わせられるフランジ部とを有する底材とが、互いにヒートシールされていることを特徴とする、プレススルーパック包装体。
- ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂を含む樹脂からなるヒートシール層、及び、融解ピーク温度が50℃以上200℃未満であるアクリル系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂からなる表面保護層を、それぞれ蓋材フィルムの両表面に塗工する工程を備えることを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材の製造方法。
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