JP6315946B2 - プレススルーパック包装体用蓋材及び包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、主に錠剤やカプセル等の医薬品或いはキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる、プレススルーパック(PTP)包装体の蓋材、及び包装体に関する。
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるプレススルーパック(以下PTPという)包装体が知られている。PTP包装体は、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂等からなるプラスチックシートを、真空成形又は圧空成形することによりポケット状の凹部を有する底材として成形し、この凹部に内容物を充填した後、凹部以外のフランジ部をヒートシール性の蓋材でシールすることによって形成される。
PTP包装体は、収納された内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて蓋材を破ることによって内容物を取り出すように構成されたものである。PTP包装体の蓋材は、蓋材フィルムとヒートシール層で構成される。蓋材フィルムは、現在、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れた、アルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂の延伸フィルム等が用いられている。また、ヒートシール層を形成するためのヒートシール剤としては、塩化ビニル樹脂系ヒートシール剤(特許文献1)、塩化ビニル・ポリエステル樹脂系ヒートシール剤(特許文献2)、アクリル変性ポリプロピレン系ヒートシール剤(特許文献3)、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤(特許文献4)等が知られている。
特開2008−174302号公報 特開2005−178829号公報 特開平09−57920号公報 特開2003−192904号公報
しかしながら、特許文献1,2及び3に記載されたヒートシール剤を使用したPTP包装体用蓋材は、塩化ビニル・ポリエステル樹脂等の樹脂が、塗工前には溶媒であるトルエン、酢酸エチル、MEK等の有機溶剤を大量に含みそれらに溶解しているため、塗工時の乾燥工程において有機溶剤中毒の観点から大規模な有機溶剤対応の換気設備が必要となったり、乾燥条件によっては巻き取り工程で巻きジワが発生しやすく外観が悪化したり、その後のスリット工程の繰り出し時にブロッキングが発生したりする。また、蓋材フィルムに熱可塑性樹脂の延伸フィルムを用いる場合は、樹脂は一般的に耐薬品性に劣るため、溶解し塗工が困難となる場合が多い。ここで「ブロッキング」とは、ロール状に巻き取った蓋材において、蓋材の一方の面と、ロールを一周した後のもう一方の面とが貼り付いてしまい、剥がしにくくなる現象をいう。
また、当該PTP包装体用蓋材は、PTP包装工程において底材とヒートシールする際のシール温度を高温(一般的には220℃〜260℃程度)とする必要があるために、PTPの内容物(錠剤、食品等)が熱に晒されやすい。このため、当該PTP包装体用蓋材は熱のダメージをうけやすい内容物に適用するのは困難であったり、内容物と蓋材とのクリアランス(図1におけるクリアランス9を参照。)が小さすぎる場合は内容物に焼け跡がついてしまったりする(例えば、「錠剤のヤケド」といわれる現象)ため、底材の凹部サイズと内容物のサイズが制限されてしまう。また、PTP成形機のヒートシール用加熱ロールを高温で運転する必要があるため、運転開始までの昇温に時間がかかり、更には作業者が高温の加熱ロールに触れて火傷する可能性がある。更に、高温にてヒートシールされたPTP包装体は、底材シートの加熱収縮等によりカールしやすく、外観を損ねる、PTP包装体を重ね合わせたものをピロー包装や外装箱に梱包する際に重ね合わせにくい、梱包の容積が大きくなる、PTP包装体がひっかかってうまく箱に入らない、等の問題が生じやすい。
一方、特許文献4に記載されたエチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤は、トルエン、酢酸エチル、MEK等の有機溶剤を全く含んでいない、もしくはごく少量しか含んでおらず、また100〜150℃程度の低温でのヒートシール性に優れる。しかしながら、耐ブロッキング性が十分ではない等の問題がある。
そこで本発明は、耐ブロッキング性に優れ、且つ低温でのヒートシールが可能で、十分なヒートシール強度を有するプレススルーパック包装体用蓋材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ヒートシール層が、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂と、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂とを含むことで上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下のPTP包装体用蓋材及び包装体を提供する。
(1)蓋材フィルムと、ヒートシール剤を含有するヒートシール層とを有し、ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂と、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂とを含む、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が−20℃以上100℃以下である、上記(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(3)第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との重量比率が、95/5〜5/95である、上記(1)又は(2)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)第1の熱可塑性樹脂又は第2の熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂である、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部、及び、前記蓋材と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、を備えるプレススルーパック包装体。
本発明によれば、耐ブロッキング性に優れ、且つ低温でのヒートシールが可能で、十分なヒートシール強度を有するプレススルーパック包装体用蓋材を提供することができる。
本発明に係る蓋材を備えたPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。 実施例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートである。 比較例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートである。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明のPTP包装体用の蓋材は、内容物として、主に錠剤やカプセル等の医薬品或いはキャンディーやチョコレート等の食品を充填するためのものであるが、ここでは、錠剤を充填する場合を例示する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
<蓋材の概要>
図1に示すPTP包装体10は、底材1と蓋材8とを備え、底材1に成型されたポケット状の凹部1aに錠剤2が充填されている。蓋材8は、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3を備え、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bと蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。
蓋材8のうち、ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面を形成している。ヒートシール層3は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂(低Tg成分)と、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂(高Tg成分)とを含む。また一般的には、蓋材フィルム4Aの底材1と反対側の表面F2上には、製品名称ロゴ等の印刷部分5が形成され、印刷部分5を保護するためのOP(Over Print)ニス層6が表面F2の全面を覆うように形成されている場合が多く、更に、内容物が医薬品である場合には、医療過誤防止を目的に表面F1にも印刷がなされる場合がある。
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、ヒートシール層3に含まれるガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂により、比較的低温で底材1とヒートシールすることができ、内容物2と蓋材8とのクリアランス9が小さい場合であっても、内容物2が高温の熱に晒されにくい、PTP成形機の昇温時間が短い、PTP包装体がカールしにくい、という長所を有する。また、ヒートシール層3に含まれる、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂により、常温でのすべり性が良く、巻きジワが発生しにくく、耐ブロッキング性にも優れる。
<蓋材フィルム>
蓋材フィルム4Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等があげられる。廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなる場合は、延伸フィルムであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂が用いられる。
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体及びこれらの混合組成物であり、スチレン系単量体とは、スチレン(GPPS)、α−メチルスチレン等のアルキルスチレンである。また、共重合体とは、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体類、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体類、スチレン−酸無水物共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、等であり、これらに含まれるスチレン成分が50質量%(wt%)以上含まれる重合体をいう。また、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。これらの中でも、より好ましくは、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、及び、これら3種の共重合樹脂のいずれか1種を構成するモノマー成分に更にエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む熱可塑性樹脂が用いられる。なお、上記共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
上記三元共重合樹脂のエステル成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらエステル成分は、例えば押出機での溶融加工時等の、連続して熱が加わるような場合に、樹脂の熱安定性を向上させる点で有効である。
上記のスチレン系共重合樹脂における各スチレン成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準として70〜97wt%であることが好ましく、75〜95wt%がより好ましい。スチレン成分が97wt%以下であると、プレススルー性が向上するばかりか、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルムが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレン成分が70wt%以上であると蓋材フィルムを作る際に延伸製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。上記のうち、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂及びこれにエステル成分を含む三元共重合樹脂が押出延伸製膜のしやすさといった点でより好ましい。
本実施形態において好適に用いられる上記スチレン系樹脂に対し、延伸製膜する際の安定性(ネッキングがなく、延伸開始位置が安定しており、実用上問題がない程度に厚さ斑が小さい(一般的にRとして10μm以下))を向上させ、またその後のPTP包装にいたる種々の工程において、一時停止後の再起動時や包装工程の打ち抜き時等の衝撃に対する耐衝撃性が必要とされる場合がある。これらの特性を改善する目的で、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合物、及びスチレン−共役ジエン系共重合物の水素添加物から選ばれる少なくとも1種を、スチレン系樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準として0.5〜80wt%配合するのが好ましい。より好ましい配合量は、1.0〜45wt%であり、更に好ましい配合量は、1.0〜30wt%である。0.5wt%以上配合した場合、延伸の安定性や耐衝撃性が改善され、80wt%以下の場合はプレススルー性、フィルムの腰(スティフネス)が保たれる。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂に無機フィラーを配合してもよい。無機フィラーを配合しなくとも、良好なプレススルー性の発現は可能であるが、PTP包装体の使用者が常に健常者とは限らず、また力が弱い高齢者や子供も対象である点も考慮し、内容物を押し出す際の使用感の好みに応じて、無機フィラーの配合により突刺し強さを低下させ、プレススルー性を調節することが可能である。無機フィラーとしては、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、アスベスト、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等を使用することができる。
また、蓋材フィルム4Aには、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機フィラーの分散を補助する金属石鹸、並びに、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を配合してもよい。特に、白色の着色剤は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。熱可塑性樹脂に白色の着色剤を配合した蓋材フィルムを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材フィルムが直接見える部分)が白いために、アルミ箔の蓋材フィルムに比べ鏡面反射が起こりにくく、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡もあるため、バーコードが読み取りやすく好ましい。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂のビカット軟化点は、底材とのヒートシール時において蓋材フィルムにシワ等の変形が発生しない安定したヒートシールが可能となる観点から、好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは95℃以上、最も好ましくは110℃以上である。後述するヒートシール剤は、低温ヒートシールに適しているため、蓋材フィルムの材質が耐熱性が低いもの(具体的にはビカット軟化点が80〜150℃又は融点が80〜150℃である材質)であっても、ヒートシール用の蓋材フィルムとして用いることができる。
蓋材フィルム4Aは、延伸フィルムであることが好ましい。蓋材フィルム4Aは、使用に供されるまでの各加工工程でフィルムに強い張力が負荷される場合が多いため、各加工に耐え得る引張り強度が必要となる。熱可塑性樹脂フィルムは延伸配向されることにより延伸方向の引張り強度が大きく向上する一方、突刺し強さの向上は比較的小さい傾向にある。このため、熱可塑性樹脂フィルムを薄くしたり、無機フィラーを添加したりすることで突刺し強度が低下した場合でも、延伸フィルムとすることで、加工に耐え得る引張り強度を付与することができる。
延伸フィルムを製造する方法の代表的な例として、熱可塑性樹脂(必要に応じて無機フィラーを所定の割合で配合した樹脂)を、スクリュー押出機等により溶融混錬し、Tダイによりシート状にした後、ロール延伸又はテンター延伸により一軸延伸する方法や、ロール延伸に続いてテンター延伸することにより二軸延伸する方法、或いはインフレーション法により延伸する方法が挙げられる。この時の延伸倍率は縦及び横の少なくとも一方向で2〜20倍が好ましく、5〜10倍がより好ましい。
蓋材フィルム4Aは、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1〜5Nであることが好ましい。突刺し強さが1N以上であると強度が適度でPTP包装体として使用したときに意図せずに蓋材が破れてしまうことが少ない。突刺し強さが5N以下であるとフィルムが破れやすく適度なプレススルー性が発現する。PTP包装体の使用者が力が弱い高齢者や子供である場合を考慮すると、突刺し強さは1〜3Nであることがより好ましい。なお、突刺し強さは、JIS Z1707に準拠し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力のことをいう。
蓋材フィルム4Aの厚さは、5〜100μmが好ましく、より好ましくは15〜50μmである。厚さが5μm以上であるとフィルムの強度が適度で加工工程に耐える引張り強度が発現しやすく、100μm以下であると適度なプレススルー性が発現しやすい。
<ヒートシール層>
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものである。ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂(低Tg成分)と、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂(高Tg成分)とを含む。このヒートシール剤は、含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度に対応した、複数のガラス転移点を有する。
ヒートシール剤に含まれる第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂は、どのような形態で存在してもよく、例えば、一つのエマルジョン粒子中にコア/シェル構造、又はミクロドメイン構造等の形態で存在してもよいし、第1の熱可塑性樹脂のエマルジョンと第2の熱可塑性樹脂のエマルジョンとが混ぜ合わされた形態(ブレンド)で存在してもよい。ブレンドの場合、単独の熱可塑性樹脂同士をブレンドしてもよく、単独の熱可塑性樹脂と、コア/シェル構造を形成した熱可塑性樹脂とをブレンドしてもよい。
ここで「低温ヒートシール性」とは、低温域(100℃〜150℃)でヒートシール可能であること、及び、ヒートシール強度が実用に耐えるほど十分であることをいう。
第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とが互いにコア/シェル構造を形成している場合、いずれの樹脂がコア又はシェルを形成していてもよいが、耐ブロッキング性に優れる観点から、第2の熱可塑性樹脂がシェルを形成していることが好ましい。
低Tg成分である第1の熱可塑性樹脂は、蓋材と底材をヒートシールする際に低温でヒートシールできること、またヒートシール強度が十分に強いものにするために重要な成分である。また、通常、低Tg成分が多すぎると、その接着力により、ブロッキングし易くなってしまうが、本実施形態では高Tg成分である第2の熱可塑性樹脂が共存することにより、耐ブロッキング性も良好となる。
第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−70℃以上20℃未満であり、好ましくは−65℃以上0℃以下である。ガラス転移温度が−70℃以上であると蓋材のブロッキング性が問題ない範囲であり、20℃より低いと蓋材の低温ヒートシール性が良好である。第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とがブレンドとして存在する場合は、第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度は特に−60℃以上−20℃以下が好ましい。
また、第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い。第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−20℃以上100℃以下であり、より好ましくは−10℃以上80℃以下であり、更に好ましくは−5℃以上50℃以下である。ガラス転移温度が−20℃以上であると耐ブロッキング性の効果が一層発揮され、100℃以下であると低温ヒートシール性が一層良好となる。
本実施形態のヒートシール剤において、第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度と第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度との差(ΔTg)は、上述のとおり10℃以上である。また、ΔTgは30℃以上80℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、40℃以上65℃以下が更に好ましい。
ガラス転移温度は、ヒートシール剤を100℃で、5時間以上乾燥させ、十分に固化させた試料を、JIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定した補外ガラス転移温度で表す。一例として、後述する実施例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートを図2に示す。図2では、−28℃に低Tg成分である第1の熱可塑性樹脂のピークを、34℃に高Tg成分である第2の熱可塑性樹脂のピークを、それぞれ確認することができる。
ヒートシール剤中の第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との重量比率は、好ましくは、95/5〜5/95であり、より好ましくは90/10〜25/75である。第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂のそれぞれのガラス転移温度によって、比率の更に好ましい範囲が変わる。例えば、第1の熱可塑性樹脂が−30℃以上−20℃以下の場合で第2の熱可塑性樹脂が30℃〜40℃の場合、55/45〜65/35が好ましく、第1の熱可塑性樹脂が−65℃〜−55℃の場合で第2の熱可塑性樹脂が−10℃〜0℃の場合、25/75〜35/65が好ましい。
これらの重量比率において、第1の熱可塑性樹脂の比率が95%以下(第2の熱可塑性樹脂の比率が5%以上)であると耐ブロッキング性が向上し、また第1の熱可塑性樹脂の比率が5%以上(第2の熱可塑性樹脂の比率が95%以下)であると低温ヒートシール性が向上する。なお、第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との重量比率は、上述のJIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートの、それぞれのガラス転移ピークの各ベースライン間の距離の比率により求めることができる。また、各ベースラインが平行でない場合は、各ベースラインの延長した直線間にある中間点ガラス転移点を通過する位置での各ベースライン間の距離を用いることができる。
ヒートシール剤に含まれる第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂の種類としては、ヒートシール層が熱によって底材1と共に溶融し、相互に融着(ヒートシール)し得るものであればいずれのものを用いてもよいが、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル・ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、アクリル変性ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を使用できる。なかでも、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、耐ブロッキング性に優れるという観点から、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、より好ましくはアクリル系樹脂である。これらの樹脂は、単独で用いてもよいが二種以上を併用してもよい。
アクリル系樹脂とは、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体、又は、少なくとも1種のカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体である。アクリル系樹脂は、少なくとも1種のカルボキシル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体であっても、少なくとも1種のカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体であっても、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸単量体、アクリル酸単量体、メタクリル酸エステル単量体及びアクリル酸エステル単量体等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合、上記「他の単量体」としては、エチレン、スチレン、α―メチルスチレン等が挙げられる。アクリル系樹脂が共重合体である場合の具体例としては、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、スチレン・アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
共重合させる単量体の種類や割合を適宜変更することにより、ガラス転移温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の50%以上を占めることが好ましい。
ポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。ポリエステル樹脂の種類としては、飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。重縮合させる多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、クエン酸が挙げられる。重縮合させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリンが挙げられる。
蓋材フィルム上にヒートシール層を設ける方法の代表的な例として、蓋材フィルムにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法、蓋材フィルムの上にヒートシール性を有する樹脂を押出ラミする方法、蓋材フィルムの上にヒートシール性を有するフィルムをラミネートする方法、等が挙げられる。なかでも、工程が簡略であり生産性に優れる観点から、蓋材フィルムにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法が好ましい。またヒートシール剤を塗工し乾燥する方法の場合、ヒートシール剤は、水中にポリマー粒子が分散した水性エマルジョンが、環境面や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から好ましい。
本実施形態におけるエマルジョンを重合することにより製造する方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルジョン重合等の重合方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する方法としては、乳化重合が好ましい。
ヒートシール剤のエマルジョン粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm〜20μm、より好ましくは0.02μm〜10μm、さらに好ましくは0.03μm〜5μmである。平均粒径が0.01μm以上であると、ヒートシール層に含まれる第2の熱可塑性樹脂が表面に凹凸構造を形成して耐ブロッキング性が好ましい程度となり、20μm以下であると、塗工量3g/m〜20g/mで塗工した場合、塗り斑なく均一に塗工することができる。
塗工前のヒートシール剤の液粘度は、塗工性、取扱性の観点から、好ましくは5mPa・s〜3000mPa・sであり、より好ましくは10mPa・s〜500mPa・sである。5mPa・s以上であると、十分な厚さに塗工しやすく、3000mPa・s以下であると、均一な厚さに塗工しやすく、希釈剤との混合性が向上する。
また、塗工する前に、必要に応じて、水やイソプロピルアルコール等の希釈剤を用いて希釈してもよい。このときの粘度は塗工性の観点から、好ましくは10mPa・s〜500mPa・sであり、より好ましくは30mPa・s〜100mPa・sである。10mPa・s以上であると、十分な厚さに塗工しやすく、500mPa・s以下であると、均一な厚さに塗工しやすい。
<蓋材の製造方法>
蓋材8は、前述のとおり、蓋材フィルム4Aに対してヒートシール層3の原料であるヒートシール剤を適用することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
塗工法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法で塗工することができ、塗工量の調整、操作性、塗工速度等の観点から、グラビアコート法が好ましい。
その塗工量としては、1g/m〜20g/m(厚さに換算して約1μm〜約20μmに相当)であると、ヒートシール性、及び突き破り性に優れるので好ましく、更に3g/m〜10g/m位であることがより好ましい。1g/m以上であると、十分なヒートシール性を有し、20g/m以下であれば、内容物が蓋材を突き破りやすくなるので好ましい。
塗工の速度は、好ましくは10m/分〜300m/分であり、より好ましくは、20m/分〜200m/分である。10m/分以上であると、乾燥時の過加熱がなく塗工後に熱シワが生じにくい、生産性が良好である等の観点から好ましく、300m/分以下であると、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、基材フィルムが破断しにくい等の観点から好ましい。
塗工後の乾燥方法は、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル、高速エアキャップ、カウンターフロー)、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線、その他の方法で乾燥することができ、操作性、塗工速度、塗工後のシワ等の観点から、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル)が好ましく、なかでもエアフローティングがより好ましい。
乾燥の温度及び時間は、ヒートシール剤の種類、希釈溶剤の種類、固形分、液の粘度、塗工速度、乾燥機の種類によっても異なるが、乾燥温度は好ましくは50℃〜115℃、より好ましくは60℃〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい等の観点から好ましい。
乾燥時間は好ましくは1秒〜200秒、より好ましくは2秒〜100秒、さらに好ましくは3秒〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい、生産性が向上するという観点から好ましい。
なお、上記製造工程において、蓋材フィルムに対し、グラビア印刷機等を用いて文字やバーコードを印刷することができる。更に、文字やバーコードを印刷した表面に対し、ニス層を設けることもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、単層の延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aを例示したが、蓋材フィルムは2層以上の多層延伸フィルムであってもよい。
また、上記実施形態においては、蓋材フィルム4Aの表面F1上にヒートシール層3を直接設けた場合を例示したが、蓋材フィルムとヒートシール層との間(F1の位置)や反対側(F2の位置)に他の層を介在させてもよい。例えば、蓋材フィルムとして熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は、他の層としてアルミニウムの蒸着層を設けると、バリア性の向上や、近赤外線を利用した異物検査の適性が向上する観点から好ましい。アルミ蒸着層の厚さは要求されるバリア性(特に水蒸気透過性)或いは近赤外線の反射特性、或いは両面印刷時の隠蔽性に合わせて適宜調整されるが、バリア性の観点からは、好ましくは10nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性向上効果は得られない。
また、近赤外線の反射特性や両面印刷時の隠蔽性の観点からは、好ましくは10nm〜200nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。
以下、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<材料の性質の測定方法>
[蓋材フィルムのビカット軟化点]
ビカット軟化点は、JIS K7206に準拠して測定される値を意味する。試験荷重は50N、昇温速度は50℃/h。
[ヒートシール剤のエマルジョン粒子の平均粒径]
レーザー回折式粒径分布測定装置(セイシン企業製、LMS−2000e)を用いて、得られた水性分散液の平均粒径を測定した。測定条件は、分散媒種:エタノール、屈折率:分散媒1.36であり、体積変換して得られた粒度分布より、d(50)の値を用いて算出した。
[ヒートシール剤の粘度]
B型粘度計を用い測定した。
[ヒートシール剤のガラス転移温度]
ガラス転移温度は、蓋材フィルムからヒートシール層のみを剥離し、JIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定した補外ガラス転移温度で表す。
<評価項目>
実施例、参考例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
[蓋材のブロッキング(耐ブロッキング性)]
まず巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれた蓋材フィルムの片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥した。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上にヒートシール剤を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるように水で希釈して用いた。塗工後は、熱風式乾燥機の中を所定の温度と時間通過することで乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。このロール状に巻き取った蓋材を、23℃、50%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、ブロッキング性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:巻き解いたときの手にかかる抵抗感はなく、ブロッキングしていない。非常に実用的である。
△:巻き解いたとき、手に多少の抵抗感があるが、蓋材自体も破れることなく巻き解くことが可能であり、巻き解いた後の印刷、OPニス、ヒートシール層の状態も綺麗である。実用上の問題はない。
×:巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまう。実用上不適と判断される。
[PTP包装体の低温ヒートシール性]
底材シートに厚さ200μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、PTP成形機(CKD社製FBP−M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、以下に述べる実施例、参考例及び比較例で作製したPTP包装体用蓋材を接着して、PTP包装体を得た。このときの底材シートのポケットサイズは直径10mm、高さ4mmの円形であり、錠剤のサイズは錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形であった。ヒートシールの条件は、特に記載のない場合は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材シート成形温度130℃、スリット温度130℃、作業室環境22℃、50%RHである。
上記で作成したPTP包装体を、減圧リーク試験(PTP包装体100ポケットを水中に入れて、−67kPaで5分間保持し、PTPポケット中に水の漏れがないかを確認する)して、ヒートシール強度を確認した。また、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を、下記基準に基づきヒートシール層と底材とのヒートシール強度を評価した。
○:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。ヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せた。ヒートシール温度が低温(150℃)でも確実に接着し、且つ十分な強度があり、非常に実用的である。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
[総合判定]
また、総合判定の評価基準は以下のとおりである。
◎:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性が両方○である。
○:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性のどちらか一方が○で、もう一方が△である。
△:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性が両方△である。
×:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性のどちらかひとつでも×がある。
<PTP包装体の作製>
実施例、参考例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
(1)蓋材フィルム
(i)PS系フィルム−1:スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体(メチルメタクリルレート含量5wt%、メタクリル酸含量10wt%、ビカット軟化点=123℃)を90重量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製耐衝撃ポリスチレンGH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10重量%の割合で配合し、インフレーション法によって延伸し、その後フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施した厚さ20μm、突刺し強さ1.9Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PS系フィルム−2:ポリスチレン(PSジャパン社製ポリスチレン#685、ビカット軟化点=103℃))を90重量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製耐衝撃ポリスチレンGH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10重量%の割合で配合し、インフレーション法によって延伸し、その後フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施した厚さ14μm、突刺し強さ3.2Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(iii)PP系樹脂フィルム−1:ポリプロピレン(住友化学株式会社、ノーブレンH−501、融点=155℃)を85重量%、及び、炭酸カルシウムを15重量%の割合で配合したもの。
(iv)グラシン紙−1:厚さ23μm、突刺し強さ1.6Nのグラシン紙。
(v)アルミ箔−1:厚さ20μm、突刺し強さ1.4Nのアルミニウム箔。
(2)ヒートシール剤
(i)HS剤−1:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.08μm、粘度:80mPa・s、不揮発分:35重量%、ガラス転移温度:−28℃)
(ii)HS剤−2:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.05μm、粘度:150mPa・s、不揮発分:38重量%、ガラス転移温度:34℃)
(iii)HS剤−3:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.07μm、粘度:140mPa・s、不揮発分:38重量%、ガラス転移温度:−60℃)
(iv)HS剤−4:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.08μm、粘度:300mPa・s、不揮発分:40重量%、ガラス転移温度:−2℃)
(v)HS剤−5:ポリエステル系エマルジョン型ヒートシール剤(飽和共重合ポリエステル樹脂のエマルジョンの水分散体、平均粒径:0.16μm、粘度:200mPa・s、不揮発分:33重量%、イソプロピルアルコール16重量%、ガラス転移温度:3℃)
(vi)HS剤−6:ポリエステル系エマルジョン型ヒートシール剤(飽和共重合ポリエステル樹脂のエマルジョンの水分散体、平均粒径:0.10μm、粘度:80mPa・s、不揮発分:50重量%、ガラス転移温度:40℃)
(vii)HS剤−7:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(コア/シェル構造を有する変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.07μm、粘度:500mPa・s、不揮発分:40重量%、ガラス転移温度:−17℃及び43℃、低Tg成分/高Tg成分(重量比率)=60/40)
[実施例1]
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム−1(スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥した。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上に線数=80線/インチ、版深度=140μmの版を用いて、表1に記載のガラス転移温度や低Tg成分/高Tg成分比率を有するHS剤−1及びHS剤−2(低Tg成分であるHS剤−1のエマルジョンと高Tg成分であるHS剤−2のエマルジョンの2液を混ぜ合わせたもの)を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるように水で希釈して用いた。塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間通過する速度で乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。なお、実施例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートを図2に示した。
次にロール状に巻き取った蓋材を、23℃、50%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、耐ブロッキング性を評価したところ、巻き解いたときの手にかかる抵抗感はなく、ブロッキングしていなかった。
得られた蓋材を、スリッター装置を用いて、巾110cm、4丁取りにスリットしたところ、速度70m/分においても途中で破断することなくスリットをすることができた。続いてヒートシール温度を150℃に設定したPTP成形機(CKD社製FBP−M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、上記の各PTP包装体用蓋材を接着して、PTP包装体を得た。
上記で作成したPTP包装体を、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を観察したところ、ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はないレベルであった。減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1個であった。
なお、PTP成形機の加熱ロールを立上(20℃)から所定温度まで昇温するのに要する時間は、一般的なアルミ箔製PTP蓋材の場合の条件(230℃)では21分間もかかるのに対し、本実施例の低温シール条件(150℃)では13分と非常に短い時間で済み、大変作業効率に優れていた。
また、錠剤の表面(蓋材側)に、サーモラベルスーパーミニ(日油技研工業製)3R−40、3R−80、又は3R−120を貼り(各シールのn数=3)、充填速度1.2m/分にてヒートシールした後に、サーモラベルの変色を確認することにより錠剤の表面温度を測定した。一般的なアルミ箔蓋材フィルムを用いて一般的なヒートシール温度230℃で実施した場合、表面温度が60℃以上(最大で100℃)であったのに対し、本実施例1の蓋材をヒートシール温度150℃で実施した場合は、表面温度は45℃未満であった。このように、低温でのヒートシールは、内容物が受ける熱が少なく好ましいことが確認された。
また、上で成形したPTP包装体を、ヒートシールから1日後に平らな机の上に置き、PTP包装体の端部を指で押さえ、浮き上がった反対側の端部と机との距離を定規で測定することにより、PTP包装体のカールを測定した(n数=5)。上記のヒートシール温度230℃で実施した蓋材のカールは8mmであったのに対し、ヒートシール温度150℃で実施した本実施例1の蓋材のカールは3mmしかなかった。このように、低温でのヒートシールは、カールが起こりにくく好ましいことが確認された。
[実施例2,3]
実施例2,3は、表1に記載のガラス転移温度や低Tg成分/高Tg成分比率を有するヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。なお、表1中の「ΔTg」は、低Tg成分と高Tg成分のガラス転移温度の差を意味している。
ヒートシール層塗工後の巻きジワやブロッキングは全くなかった。低温ヒートシール性は、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個であり、またヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せ、非常に実用的であった。
このようにヒートシール剤のガラス転移温度や低Tg成分/高Tg成分比率の設計を変えることにより、低温ヒートシール性や耐ブロッキング性を制御することが可能となり、ヒートシール層の被着体である蓋材フィルムや底材の種類を幅広く選択することが可能となる。
[実施例4,5]
実施例4,5は、表1に記載のヒートシール剤(低Tg成分であるHS剤−5のエマルジョンと高Tg成分であるHS剤−6のエマルジョンの2液を混ぜ合わせて、塗工した。)を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。低Tg成分/高Tg成分比率は、実施例4では70/30とし、実施例5では50/50とした。
実施例5はヒートシール層塗工後の巻きジワやブロッキングは若干あったものの、低温ヒートシール性は、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個であり、またヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せ、非常に実用的であった。また、実施例5は、実施例4よりも高Tg成分の比率を多くしたものであるが、低温ヒートシール性は、ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能であり、シール層塗工後の巻きジワやブロッキングはまったくなかった。
このようにヒートシール剤の低Tg成分/高Tg成分のブレンド比率の設計を変えることにより、低温ヒートシール性や耐ブロッキング性を制御することが可能となり、ヒートシール層の被着体である蓋材フィルムや底材の種類を幅広く選択することが可能となるため、好ましい。
[実施例6]
実施例6は、表1に記載のヒートシール剤(低Tg成分及び高Tg成分であるHS剤−7のエマルジョンと、低Tg成分であるHS剤−5のエマルジョンの2液を混ぜ合わせて、塗工した。)を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
実施例6はヒートシール層塗工後の巻きジワやブロッキングは若干あったものの、低温ヒートシール性は、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個であり、またヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せ、非常に実用的であった。
このように複数の樹脂組成のヒートシール剤を用い、低Tg成分/高Tg成分比率の設計を変えることにより、低温ヒートシール性や耐ブロッキング性を制御することが可能となり、ヒートシール層の被着体である蓋材フィルムや底材の種類を幅広く選択することが可能となるため、好ましい。
[実施例7,8及び参考例9,10]
実施例7,8及び参考例9,10は、表1に記載の蓋材フィルムを用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。ヒートシール層塗工後の巻きジワやブロッキングは全くなく、低温ヒートシール性も優れていた。このように蓋材フィルムの種類を変えても、巻きジワやブロッキングのない優れた蓋材を作成することができた。蓋材フィルムの種類を変えることにより、幅広いタイプのPTP包装体を作成することが可能となる。
[比較例1]
比較例1は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。比較例1の蓋材は、低Tg成分のみからなるヒートシール層を有する蓋材である。表1に示すとおり、巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまい、耐ブロッキング性は悪かった。なお、比較例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートを図3に示した。
[比較例2]
比較例2は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。比較例2の蓋材は、高Tg成分のみからなるヒートシール層を有する蓋材である。巻き解いたときのブロッキング性は問題ないものの、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が100個であり、錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分であった。これは実用上不適と判断される。
[比較例3]
比較例3は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。比較例3の蓋材は、Tgの差が10℃未満のヒートシール剤をブレンドしたヒートシール層を有する蓋材である。巻き解いたときのブロッキング性は問題ないものの、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が100個であり、錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分であった。これは実用上不適と判断される。

本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤、カプセル等の医薬品やキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる。
1…底材、1a…底材の凹部、1b…底材のフランジ部、2…錠剤、3…ヒートシール層、4A…蓋材フィルム、5…印刷部分、6…OPニス層、8…蓋材、9…錠剤と蓋材のクリアランス、10…包装体。

Claims (4)

  1. 熱可塑性樹脂からなる蓋材フィルムと、ヒートシール剤を含有するヒートシール層とを有し、
    前記ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂のエマルジョンと、ガラス転移温度が前記第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂のエマルジョンとからなる、プレススルーパック包装体用蓋材。
  2. 前記第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が−20℃以上100℃以下である、請求項1記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  3. 前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂との重量比率が、95/5〜5/95である、請求項1又は2記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  4. 前記第1の熱可塑性樹脂又は前記第2の熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
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