JP6315946B2 - プレススルーパック包装体用蓋材及び包装体 - Google Patents
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Description
(1)蓋材フィルムと、ヒートシール剤を含有するヒートシール層とを有し、ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂と、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂とを含む、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が−20℃以上100℃以下である、上記(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(3)第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂との重量比率が、95/5〜5/95である、上記(1)又は(2)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)第1の熱可塑性樹脂又は第2の熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂である、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部、及び、前記蓋材と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、を備えるプレススルーパック包装体。
図1に示すPTP包装体10は、底材1と蓋材8とを備え、底材1に成型されたポケット状の凹部1aに錠剤2が充填されている。蓋材8は、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3を備え、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bと蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。
蓋材フィルム4Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等があげられる。廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものである。ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂(低Tg成分)と、ガラス転移温度が第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂(高Tg成分)とを含む。このヒートシール剤は、含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度に対応した、複数のガラス転移点を有する。
蓋材8は、前述のとおり、蓋材フィルム4Aに対してヒートシール層3の原料であるヒートシール剤を適用することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
[蓋材フィルムのビカット軟化点]
ビカット軟化点は、JIS K7206に準拠して測定される値を意味する。試験荷重は50N、昇温速度は50℃/h。
レーザー回折式粒径分布測定装置(セイシン企業製、LMS−2000e)を用いて、得られた水性分散液の平均粒径を測定した。測定条件は、分散媒種:エタノール、屈折率:分散媒1.36であり、体積変換して得られた粒度分布より、d(50)の値を用いて算出した。
B型粘度計を用い測定した。
ガラス転移温度は、蓋材フィルムからヒートシール層のみを剥離し、JIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定した補外ガラス転移温度で表す。
実施例、参考例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
まず巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれた蓋材フィルムの片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥した。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上にヒートシール剤を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるように水で希釈して用いた。塗工後は、熱風式乾燥機の中を所定の温度と時間通過することで乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。このロール状に巻き取った蓋材を、23℃、50%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、ブロッキング性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
△:巻き解いたとき、手に多少の抵抗感があるが、蓋材自体も破れることなく巻き解くことが可能であり、巻き解いた後の印刷、OPニス、ヒートシール層の状態も綺麗である。実用上の問題はない。
×:巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまう。実用上不適と判断される。
底材シートに厚さ200μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、PTP成形機(CKD社製FBP−M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、以下に述べる実施例、参考例及び比較例で作製したPTP包装体用蓋材を接着して、PTP包装体を得た。このときの底材シートのポケットサイズは直径10mm、高さ4mmの円形であり、錠剤のサイズは錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形であった。ヒートシールの条件は、特に記載のない場合は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材シート成形温度130℃、スリット温度130℃、作業室環境22℃、50%RHである。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
また、総合判定の評価基準は以下のとおりである。
◎:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性が両方○である。
○:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性のどちらか一方が○で、もう一方が△である。
△:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性が両方△である。
×:耐ブロッキング性と低温ヒートシール性のどちらかひとつでも×がある。
実施例、参考例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
(i)PS系フィルム−1:スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体(メチルメタクリルレート含量5wt%、メタクリル酸含量10wt%、ビカット軟化点=123℃)を90重量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製耐衝撃ポリスチレンGH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10重量%の割合で配合し、インフレーション法によって延伸し、その後フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施した厚さ20μm、突刺し強さ1.9Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PS系フィルム−2:ポリスチレン(PSジャパン社製ポリスチレン#685、ビカット軟化点=103℃))を90重量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製耐衝撃ポリスチレンGH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10重量%の割合で配合し、インフレーション法によって延伸し、その後フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施した厚さ14μm、突刺し強さ3.2Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(iii)PP系樹脂フィルム−1:ポリプロピレン(住友化学株式会社、ノーブレンH−501、融点=155℃)を85重量%、及び、炭酸カルシウムを15重量%の割合で配合したもの。
(iv)グラシン紙−1:厚さ23μm、突刺し強さ1.6Nのグラシン紙。
(v)アルミ箔−1:厚さ20μm、突刺し強さ1.4Nのアルミニウム箔。
(i)HS剤−1:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.08μm、粘度:80mPa・s、不揮発分:35重量%、ガラス転移温度:−28℃)
(ii)HS剤−2:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.05μm、粘度:150mPa・s、不揮発分:38重量%、ガラス転移温度:34℃)
(iii)HS剤−3:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.07μm、粘度:140mPa・s、不揮発分:38重量%、ガラス転移温度:−60℃)
(iv)HS剤−4:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.08μm、粘度:300mPa・s、不揮発分:40重量%、ガラス転移温度:−2℃)
(v)HS剤−5:ポリエステル系エマルジョン型ヒートシール剤(飽和共重合ポリエステル樹脂のエマルジョンの水分散体、平均粒径:0.16μm、粘度:200mPa・s、不揮発分:33重量%、イソプロピルアルコール16重量%、ガラス転移温度:3℃)
(vi)HS剤−6:ポリエステル系エマルジョン型ヒートシール剤(飽和共重合ポリエステル樹脂のエマルジョンの水分散体、平均粒径:0.10μm、粘度:80mPa・s、不揮発分:50重量%、ガラス転移温度:40℃)
(vii)HS剤−7:スチレン−アクリル系エマルジョン型ヒートシール剤(コア/シェル構造を有する変性スチレン−アクリル系樹脂のアンモニウム塩の水分散体、平均粒径:0.07μm、粘度:500mPa・s、不揮発分:40重量%、ガラス転移温度:−17℃及び43℃、低Tg成分/高Tg成分(重量比率)=60/40)
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム−1(スチレン・メチルメタクリレート・メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=175線/インチ、版深度=24μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上にOPニスを塗工・乾燥した。次に、その反対側の面に上記と同様の印刷を行い、その上に線数=80線/インチ、版深度=140μmの版を用いて、表1に記載のガラス転移温度や低Tg成分/高Tg成分比率を有するHS剤−1及びHS剤−2(低Tg成分であるHS剤−1のエマルジョンと高Tg成分であるHS剤−2のエマルジョンの2液を混ぜ合わせたもの)を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、ヒートシール剤の不揮発分が40重量%、粘度が30mPa・s〜100mPa・sとなるように水で希釈して用いた。塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間通過する速度で乾燥し、直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。なお、実施例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートを図2に示した。
実施例2,3は、表1に記載のガラス転移温度や低Tg成分/高Tg成分比率を有するヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。なお、表1中の「ΔTg」は、低Tg成分と高Tg成分のガラス転移温度の差を意味している。
実施例4,5は、表1に記載のヒートシール剤(低Tg成分であるHS剤−5のエマルジョンと高Tg成分であるHS剤−6のエマルジョンの2液を混ぜ合わせて、塗工した。)を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。低Tg成分/高Tg成分比率は、実施例4では70/30とし、実施例5では50/50とした。
実施例6は、表1に記載のヒートシール剤(低Tg成分及び高Tg成分であるHS剤−7のエマルジョンと、低Tg成分であるHS剤−5のエマルジョンの2液を混ぜ合わせて、塗工した。)を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
実施例7,8及び参考例9,10は、表1に記載の蓋材フィルムを用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。ヒートシール層塗工後の巻きジワやブロッキングは全くなく、低温ヒートシール性も優れていた。このように蓋材フィルムの種類を変えても、巻きジワやブロッキングのない優れた蓋材を作成することができた。蓋材フィルムの種類を変えることにより、幅広いタイプのPTP包装体を作成することが可能となる。
比較例1は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。比較例1の蓋材は、低Tg成分のみからなるヒートシール層を有する蓋材である。表1に示すとおり、巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまい、耐ブロッキング性は悪かった。なお、比較例1で用いたヒートシール剤のDSC測定チャートを図3に示した。
比較例2は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。比較例2の蓋材は、高Tg成分のみからなるヒートシール層を有する蓋材である。巻き解いたときのブロッキング性は問題ないものの、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が100個であり、錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分であった。これは実用上不適と判断される。
比較例3は、表1に記載のヒートシール剤を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。比較例3の蓋材は、Tgの差が10℃未満のヒートシール剤をブレンドしたヒートシール層を有する蓋材である。巻き解いたときのブロッキング性は問題ないものの、減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が100個であり、錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分であった。これは実用上不適と判断される。
Claims (4)
- 熱可塑性樹脂からなる蓋材フィルムと、ヒートシール剤を含有するヒートシール層とを有し、
前記ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上20℃未満である第1の熱可塑性樹脂のエマルジョンと、ガラス転移温度が前記第1の熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも10℃以上高い第2の熱可塑性樹脂のエマルジョンとからなる、プレススルーパック包装体用蓋材。 - 前記第2の熱可塑性樹脂のガラス転移温度が−20℃以上100℃以下である、請求項1記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 前記第1の熱可塑性樹脂と前記第2の熱可塑性樹脂との重量比率が、95/5〜5/95である、請求項1又は2記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 前記第1の熱可塑性樹脂又は前記第2の熱可塑性樹脂が、アクリル系樹脂又はポリエステル系樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
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