JP6814027B2 - プレススルーパック包装用蓋材及びプレススルーパック包装体 - Google Patents

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Description

本発明は、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品のプレススルーパック包装体に好適に使用できる、プレススルーパック包装用蓋材及びプレススルーパック包装体に関する。
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるプレススルーパック(本明細書において「PTP」と称する場合がある)包装体が知られている。PTP包装体は、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂等からなるプラスチックシートを、真空成形又は圧空成形することによって、ポケット状の凹部を有する底材として成形し、この凹部に内容物を充填し、その後、凹部以外の部分であるフランジ部をヒートシール性の蓋材でシールすることによって形成される。
PTP包装体は、収納された内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて、蓋材を破ることによって、内容物を取り出すように構成されたものである。従来のPTP包装体の蓋材としては、例えば、蓋材フィルムと、該蓋材フィルムの一方の表面に設けられたヒートシール層、並びに蓋材フィルムの他方の表面(反対面)に設けられた印刷部及びOP(オーバープリント)ニス層とで構成される蓋材が知られている。
蓋材フィルムとしては、現在、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れた、アルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂の延伸フィルム等が用いられている。ヒートシール層を形成するためのヒートシール剤としては、塩化ビニル樹脂系ヒートシール剤(特許文献1参照)、塩化ビニル・ポリエステル樹脂系ヒートシール剤(特許文献2参照)、アクリル変性ポリプロピレン系ヒートシール剤(特許文献3参照)、エチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤(特許文献4参照)等が知られている。また、フィラー含有するヒートシール剤としては、ポリメチルメタクリレート架橋共重合体(架橋PMMA)ビーズやポリスチレン架橋重合体(架橋PS)ビーズを混合したエマルジョン型ヒートシール剤(特許文献5参照)が知られている。
特開2008−174302号公報 特開2005−178829号公報 特開平09−57920号公報 特開2003−192904号公報 特開2012−201839号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたヒートシール剤を使用したPTP包装体用蓋材は、塩化ビニル−ポリエステル樹脂等の樹脂が、塗工前には溶媒であるトルエン、酢酸エチル、MEK等の有機溶剤を大量に含みそれらに溶解しているため、塗工時の乾燥工程において、有機溶剤中毒の観点から大規模な有機溶剤対応の換気設備が必要となったり、乾燥条件によっては巻き取り工程で巻きジワが発生して外観が悪化したり、その後のスリット工程の繰り出し時にブロッキングが発生したりする。また、蓋材フィルムに熱可塑性樹脂の延伸フィルムを用いる場合は、樹脂は一般的に耐薬品性に劣るため、塗工が困難となる場合が多い。ここで「ブロッキング」とは、ロール状に巻き取った蓋材において、蓋材の一方の面と、ロールを一周した後のもう一方の面とが貼り付いてしまい、剥がしにくくなる現象をいう。
また、特許文献1〜3に記載のPTP包装体用蓋材は、PTP包装工程において底材とヒートシールする際のシール温度を高温(一般的には220℃〜260℃程度)とする必要があるために、PTPの内容物(錠剤、食品等)が熱に晒されやすい。このため、特許文献1〜3に記載のPTP包装体用蓋材は、熱のダメージをうけやすい内容物に適用するのが困難であり、内容物と蓋材とのクリアランス(図1におけるクリアランス9を参照)が小さすぎる場合は、内容物に焼け跡がつく場合があった(例えば「錠剤のヤケド」といわれる現象)。そのため、底材の凹部サイズと内容物のサイズが制限されてしまう。
また、高温にてヒートシールされたPTP包装体は、底材の加熱収縮等によりカールしやすく、包装体の外観を損ねる、PTP包装体を重ね合わせたものをピロー包装や外装箱に梱包する際に重ね合わせにくい、梱包の容積が大きくなる、PTP包装体がひっかかってうまく箱に入らない等の問題が生じやすい。
特許文献4に記載されたエチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤は、トルエン、酢酸エチル、MEK等の有機溶剤を全く含んでいない、もしくは極少量しか含んでおらず、低温でのヒートシール性に優れるとしている。しかしながら、ロール状に巻き取った蓋材を、夏場の高温雰囲気下(40℃、50%RH)で保管した後の耐ブロッキング性が十分ではない等の問題がある。
特許文献5に記載されたフィラー含有する接着性樹脂組成物を塗工してなる接着性積層体として、フィラーとして0.25〜1.00質量%の架橋PMMA粒子や架橋PS粒子を含有したエチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤を塗工したOPPフィルムの開示があり、保管後の耐ブロッキング性や低温ヒートシール性に優れるとしている。しかしながら、PTP包装体用蓋材とした場合、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)高湿(90%RH)下で保管した後の耐ブロッキング性に劣る、低温(100〜150℃程度)短時間(1秒未満)でヒートシールしたPTP包装体では、フランジ部分に折り込みシワが入って未接着部分が発生してしまい、PTP包装体の外観と低温ヒートシール性に劣る等の問題がある。
そこで本発明は、蓋材をロール状に巻き取った状態において高温高湿下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性を有し、低温短時間でヒートシールした場合でも減圧下において十分なヒートシール強度を有し(耐圧ヒートシール性)、更には透明性や外観に優れたPTP包装体を得ることができる、PTP包装体用蓋材及びそれを用いたPTP包装体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂、及び/又は特定のガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂を主体とする接着性樹脂と、特定の粒子径を有するフィラーとを含有させたヒートシール剤からなるヒートシール層を有するPTP包装体用蓋材、及びそれを用いたPTP包装体とすることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下のPTP包装体用蓋材、及びそれを用いた包装体を提供するものである。
(1)ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部あり、前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みが3〜20μmであり、前記フィラーの粒子径が、前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分の厚みの1.3〜5.0倍であることを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)上記接着性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする樹脂である、上記(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(3)上記フィラーが、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートの架橋共重合体、及びポリスチレン架橋重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体としてなる有機フィラーである、上記(1)又は(2)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)上記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂からなる、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)接着性樹脂とフィラーとを含むヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部、及び上記プレススルーパック包装体用蓋材のヒートシール層と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、を互いに貼り合わせてなり、前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部であり、上記フランジ部と上記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、上記フランジ部に上記フィラーが食い込んでいる構造を有することを特徴とする、プレススルーパック包装体。
(6)上記プレススルーパック包装体用蓋材が上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の蓋材からなる、上記(5)に記載のプレススルーパック包装体。
(7)上記底材を構成する樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である、上記(5)又は(6)に記載のプレススルーパック包装体。
(8)上記フランジ部と上記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、上記フランジ部に、上記フィラーの粒子径の20〜70%が食い込んでいる構造を有する、上記(5)〜(7)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体。
本発明によれば、蓋材をロール状に巻き取った状態において高温高湿下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性を有し、低温短時間でヒートシールした場合でも減圧下において十分なヒートシール強度を有し(耐圧ヒートシール性)、更には透明性や外観に優れたPTP包装体を得ることができる、PTP包装体用蓋材及びそれを用いたPTP包装体を提供することができる。
本発明に係るPTP包装体用蓋材を備えたPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。 本発明に係るPTP包装体用蓋材の一実施形態を示す断面図である。 本発明に係るPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のPTP包装体用蓋材は、内容物として、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品等を充填するためのPTP包装体に用いられる蓋材である(ここでは、錠剤を充填する場合を例示する。)。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、PTP包装体用蓋材を、単に「蓋材」と称する場合がある。
<PTP包装体用蓋材>
図1に示す本実施形態のPTP包装体10は、底材1と本実施形態のPTP包装体用蓋材8とを備える。底材1は、成型されたポケット状の凹部1aと、蓋材8と貼りあわされるフランジ部1bとを有する。凹部1aには、内容物2が充填されている。蓋材8は、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3を備え、ヒートシール層3はフランジ部1bで底材1と接着している。
蓋材8のうち、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bの表面と蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面を形成している。
また、蓋材フィルム4Aの底材1と反対側の表面F2上には、製品名称ロゴ等の印刷部分5が、着色されたウレタン系樹脂やアクリル系樹脂等のインキにより形成される場合があり、この場合、印刷部分5を保護するための表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)6が表面F2の全面を覆うように形成される(図1参照)。更に、内容物が医薬品である場合には、医療過誤防止を目的に表面F1にも印刷やアルミ等の蒸着処理がなされる場合がある。
ヒートシール層3は、接着性樹脂3bが100質量部に対して、フィラー3aを5質量部超30質量部未満で含んでいる。
本実施形態の蓋材8は、図2に示す様に、フィラーの粒子径(ヒートシール前r1、ヒートシール後r2)を接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みSの1.3〜5.0倍、且つ、前記ヒートシール層厚みSを3〜20μmとすることで、ロール状に巻き取った状態で高温高湿下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性を有し、更には、PTP包装体の印刷部分の印字の読取性に優れた透明性を有する。
本実施形態の蓋材を有する包装体10は、図3に示す様に、内容物2を収容する凹部1a、及びプレススルーパック包装体用蓋材8のヒートシール層3と貼り合わされるフランジ部1bを有する底材1と、を互いに貼り合わせてなり、フランジ部1bとヒートシール層3との貼り合わせ面の少なくとも一部において、フランジ部1bにフィラー3aが食い込んでいる構造をとることで、100〜150℃程度の低温で、0.1〜0.2秒程度の短時間ヒートシールをした場合でも、底材1と蓋材8とが十分なヒートシール強度を有し、ヒートシールされるフランジ部分1bに折り込みシワが入ることのない良好な外観を有する。
また、図1に示す様な内容物2と蓋材8とのクリアランス9が小さい場合であっても、内容物2が高温の熱に晒されにくい、PTP成形機の昇温時間が短い、PTP包装体がカールしにくい、という長所も有する。
(蓋材フィルム)
蓋材フィルム4Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等が挙げられ、廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、延伸フィルムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂が用いられる。
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体及びこれらの混合組成物であり、スチレン系単量体とは、スチレン(例えば、GPPS)、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系単量体の共重合体とは、スチレン成分が50質量%(wt%)以上である、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酸無水物共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(例えば、HIPS)、スチレン−α−メチルスチレン共重合体等が挙げられる。
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。
これらの中でも、より好ましくは、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、及び、これら3種の共重合体のいずれか1種を構成する2種のモノマー成分に更なるモノマー成分であるエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
上記三元共重合樹脂のエステル成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらエステル成分は、例えば押出機での溶融加工時等の、連続して熱が加わるような場合に、樹脂の熱安定性を向上させる点で有効である。
なお、上記スチレン系単量体の共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレン成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として70〜97質量%であることが好ましく、75〜95質量%がより好ましい。スチレン成分が97質量%以下であると、プレススルー性が向上するばかりか、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルムが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレン成分が70質量%以上であると蓋材フィルムを作る際に延伸製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。
上記のうち、スチレン−メタクリル酸共重合体及びこれにエステル成分を含む三元共重合樹脂が押出延伸製膜のしやすさといった点でより好ましい。
本実施形態において好適に用いられる上記スチレン系樹脂に対し、延伸製膜する際の安定性(ネッキングがなく、延伸開始位置が安定しており、実用上問題がない程度に厚さ斑が小さい(一般的にRとして10μm以下))を向上させ、また、その後のPTP包装にいたる種々の工程において、一時停止後の再起動時や包装工程の打ち抜き時等の衝撃に対する耐衝撃性が必要とされる場合がある。これらの特性を改善する目的で、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体、及びスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種を、スチレン系樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として0.5〜80質量%配合するのが好ましい。より好ましい配合量は、1.0〜45質量%であり、更に好ましい配合量は、1.0〜30質量%である。0.5質量%以上配合した場合、延伸の安定性や耐衝撃性が改善され、80質量%以下の場合はプレススルー性、フィルムの腰(スティフネス)が保たれる。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂に無機フィラーを配合してもよい。無機フィラーを配合しなくとも、良好なプレススルー性の発現は可能であるが、PTP包装体の使用者が常に健常者とは限らず、力が弱い高齢者や子供も使用者となり得る点も考慮して、内容物を押し出す際の使用感の好みに応じて、無機フィラーの配合により突刺し強さを低下させ、プレススルー性を調節することが可能である。無機フィラーとしては、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等を使用することができる。
また、蓋材フィルム4Aには、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機フィラーの分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の配合や、印刷や蒸着処理の特性改善を目的としたコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。熱可塑性樹脂に白色の着色剤を配合した蓋材フィルムや白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材フィルムが直接見える部分)が白いために、無地のアルミ箔の蓋材に比べ鏡面反射が起こりにくく、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡もあるため、バーコードが読み取りやすく好ましい。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂のビカット軟化点は、底材とのヒートシール時において蓋材フィルムにシワ等の変形が発生しない安定したヒートシールが可能となる観点から、好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは95℃以上、最も好ましくは110℃以上である。後述するヒートシール剤は、低温ヒートシールに適しているため、蓋材フィルムの材質が耐熱性の低いもの(具体的にはビカット軟化点が80〜150℃又は融点が80〜150℃である材質)であっても、ヒートシール用の蓋材フィルムとして用いることができる。
蓋材フィルム4Aは、延伸フィルムであることが好ましい。蓋材フィルム4Aは、使用に供されるまでの各加工工程でフィルムに強い張力が負荷される場合が多いため、各加工に耐え得る引張り強度が必要となる。熱可塑性樹脂フィルムは延伸配向されることにより延伸方向の引張り強度が大きく向上する一方、突刺し強さの向上は比較的小さい傾向にある。このため、熱可塑性樹脂フィルムを薄くしたり、無機フィラーを添加したりすることで突刺し強度が低下した場合でも、延伸フィルムとすることで、加工に耐え得る引張り強度を付与することができる。
延伸フィルムを製造する方法の代表的な例として、熱可塑性樹脂(必要に応じて無機フィラーを所定の割合で配合した樹脂)を、スクリュー押出機等により溶融混錬し、Tダイによりシート状にした後、ロール延伸又はテンター延伸により一軸延伸する方法、ロール延伸に続いてテンター延伸することにより二軸延伸する方法、インフレーション法により延伸する方法等が挙げられる。この時の延伸倍率は縦及び横の少なくとも一方向で2〜20倍が好ましく、5〜10倍がより好ましい。
蓋材フィルム4Aは、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1〜5Nであることが好ましい。突刺し強さが1N以上であると強度が適度でPTP包装体として使用したときに意図せずに蓋材が破れてしまうことが少ない。突刺し強さが5N以下であるとフィルムが破れやすく適度なプレススルー性が発現する。PTP包装体の使用者が力の弱い高齢者や子供である場合を考慮すると、突刺し強さは1〜3Nであることがより好ましい。なお、突刺し強さは、JIS Z1707に準拠し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力のことをいう。
蓋材フィルム4Aの厚さは、5〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。厚さが5μm以上であるとフィルムの強度が適度で加工工程に耐える引張り強度が発現しやすく、50μm以下であると適度なプレススルー性が発現しやすい。
(ヒートシール層)
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものであり、ヒートシール剤を90質量%以上含むことが好ましい。
ヒートシール剤は、ヒートシール層が熱によって底材と共に溶融し、相互に融着(ヒートシール)し得る接着性樹脂(以下、「樹脂α」と称する場合がある。)を主体としてなる接着性樹脂層3bとフィラー3aとを含み、フィラー3aの含有量が接着性樹脂層3bの100質量部に対して5質量部超30質量部未満である混合物である。
尚、本明細書における主体とする成分とは、最も含有量(含有率)が多い成分を意味し、その含有量は、好ましくは50質量%以上である。
−接着性樹脂−
樹脂αは、熱によって樹脂αが融解し、又は樹脂αが底材1と共に融解し、相互に融着(ヒートシール)し得るものとして、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル・ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、アクリル変性ポリプロピレン、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を単独で用いてもよいが二種以上を併用して使用できる。なかでも、低温シール性に優れるという観点から、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、アクリル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
接着性樹脂層3bとしては、樹脂αに接着性樹脂の性質を損なわない範囲で、添加剤を併用してもよい。この添加剤としては、粘着付与剤、塩素化ポリオレフィン類、スチレン系ブロック共重合体及びその誘導体等が挙げられる。上記粘着付与剤としては、ロジン及びその誘導体、テルペン及びその誘導体、脂肪族系炭化水素樹脂及びその誘導体等が挙げられる。上記塩素化ポリオレフィン類としては、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。上記スチレン系ブロック共重合体及びその誘導体としては、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物及び無水マレイン酸変性物等が挙げられる。
樹脂αとしては、耐圧ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるという観点から、特にアクリル系樹脂を主体とした接着性樹脂が好ましい。
−−アクリル系樹脂−−
アクリル系樹脂とは、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体であっても、これと共重合可能な、エチレン、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の他の単量体との共重合体であってもよい。また、アクリル系樹脂は、上記単独重合体又は上記共重合体の、カルボキシル基(カルボン酸)のアルカリ金属塩、アミン塩、又はアンモニウム塩であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合、上記「他の単量体」としては、エチレン;スチレン、α−メチルスチレン(ビニルトルエン)、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合の具体例としては、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
共重合させる単量体の種類や割合を適宜変更することにより、ガラス転移温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の20%以上を占めることが好ましい。
アクリル系樹脂の好ましいガラス転移温度は、−70℃以上30℃未満、より好ましくは−65℃以上25℃以下、さらに好ましくは−60℃以上0℃以下である。ガラス転移温度が−70℃以上であれば蓋材の耐ブロッキング性に優れ、30℃未満であれば蓋材の耐圧ヒートシール性が良好となる。ここで「耐圧ヒートシール性」とは、低温域(100℃〜150℃)で短時間(0.01〜0.4秒)のヒートシールが可能であること、及び、減圧下におけるヒートシール強度が実用に耐えるほど十分であることをいう。
なお、ガラス転移温度が複数存在する様な混合樹脂のヒートシール剤の場合、質量比率はJIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートの、それぞれのガラス転移ピークの各ベースライン間の距離の比率により求めることができる。また、各ベースラインが平行でない場合は、各ベースラインの延長した直線間にある中間点ガラス転移点を通過する位置での各ベースライン間の距離を用いることができる。
−−ポリエステル系樹脂−−
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。
ポリエステル系樹脂の種類としては、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有しない)飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有する)不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、耐圧低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から、飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
重縮合させる多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、クエン酸等が挙げられる。重縮合させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、1種の多価カルボン酸(例えば、フタル酸等)と、2種の多価アルコール(例えば、エチレングリコールとブタンジオール等)とからなる樹脂等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂の好ましいガラス転移温度は、アクリル系樹脂と同様、−70℃以上30℃未満、より好ましくは−65以上25℃以下、さらに好ましくは−60℃以上0℃以下である。
−−ポリウレタン樹脂−−
ポリウレタン樹脂はポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物であり、ウレタン樹脂エマルションに用いられるポリイソシアネートは、着色防止の観点から脂肪族イソシアネート(無黄変イソシアネート)が選択されることが多く、ポリオールとしては、主にポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系の3種類が挙げられる。
−−エチレン・酢酸ビニル共重合体−−
エチレン・酢酸ビニル共重合体は、ポリビニルアルコール(PVA)、界面活性剤などの乳化剤の存在下で少なくとも酢酸ビニル及びエチレンを共重合することによって得られる。乳化剤の種類や量、共重合モノマー、重合方法などに特に制限はなく、いずれも使用することができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体の融点は、底材とのヒートシール時におけるヒートシール強度、要求される耐圧ヒートシール性、塗工乾燥後のブロッキング性等の観点から、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃であり、更に好ましくは55〜120℃である。40℃以上だと、塗工乾燥後にブロッキングしにくく、200℃以下であると、ヒートシール強度が得られやすい。また、PTPの内容物(錠剤、食品等)が熱のダメージをうけやすい内容物であり100〜150℃程度の低温でのヒートシール性が特に要求される場合は、同上の理由により、好ましくは40〜150℃であり、更に好ましくは45〜90℃である。
−フィラー−
ヒートシール剤は接着性樹脂層3bとフィラー3aを含む混合物であり、接着性樹脂3bの100質量部に対してフィラー3aの配合量は、5質量部超30質量部未満、好ましくは6〜25質量部、より好ましくは8〜20質量部である。フィラー3aの含有量が5質量部以下であると、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下でブロッキングが起こる場合や耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。30質量部以上であると、ヒートシール層と蓋材フィルムとの間の印刷部分の印字がぼやけて読取性、透明性が悪化する場合がある。
上記フィラー3aとしては、炭酸カルシウム、フッ素樹脂、シリコーン、シリカ、ガラスビーズや、チタニア、アルミナ、マグネシア等の金属酸化物等の無機フィラーや、種々の粒状高分子、例えば、ナイロン、PE、ポリスチレン(PS)、PP、ポリエステル、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートの架橋共重合体等)、ウレタンのプラスチック等の有機フィラーを用いることができる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。フィラー3aとしては、ヒートシール剤の塗工液中で沈降分離しにくく、エマルジョンとしての安定性、ヒートシール時の耐熱性、PTP包装体の透明性の観点から、ポリメチルメタクリレート、その架橋重合体、及びポリスチレン架橋重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体としてなる有機フィラーであること、即ち、フィラー3aが有機フィラーであって、フィラー3a全量に対して、ポリメチルメタクリレート、その架橋重合体、及びポリスチレン架橋重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種が50質量%以上含む有機フィラーが好ましい。
上記フィラー3aは、PTP包装体としてヒートシールされる時に、底材1や蓋材フィルム4Aの圧力により潰されることの無い様に、底材1や蓋材フィルム4Aより硬質な材質から選択される。ヒートシール後のフィラー3aの粒子径は、ヒートシール前の粒子径の少なくとも9割程度を保持されることが好ましい。また、ヒートシール強度が増加して、低温でも十分なヒートシール性を発現する観点から、ヒートシール後のPTP包装体は。フィラー3aの少なくとも一部が、好ましくはフィラー3aの粒子径の25〜75%程度が、底材1のフランジ部1bに食い込み、投錨された構造を有することが好ましい。
フィラー3aの粒子径r(ヒートシール前r1及びヒートシール後r2)は、ヒートシール層3のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みSの1.3〜5.0倍であることが好ましく、1.3〜4.0倍であることがより好ましく、2.5〜4.0倍であることが最も好ましい。ヒートシール層3のうち上記ヒートシール層厚みSに対するフィラー3aの粒子径r(r/S)が、1.3倍未満では、ロール状の蓋材の夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下での耐ブロッキング性が悪い場合があり、r/Sが5.0倍を超えるとフィラー3aを介して蓋材8と底材1との間に隙間が出来てしまい、接着が不十分で耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。さらに、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間に印刷層が設けられている場合は、印字がぼやけて読取性、透明性も悪くなる場合がある。r/Sが2.5〜4.0倍の範囲であることにより、ヒートシール後のPTP包装体は、フランジ部1bに折り込みシワが入ることがなく外観が良好となり、また、フィラー3aの一部が底材1のフランジ部1bに食い込んだ投錨効果を有する構造を有することで、低温でも十分なヒートシール強度を有する。
上記フィラーの粒子径(ヒートシール前のフィラーの粒子径r1)は、JIS Z8825に準拠したレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径をいう。
上記ヒートシール層3のヒートシール層厚みSは、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片の切断面を、顕微鏡観察して、フィラーの無い部分を3か所測定した平均厚みをいう。
ヒートシール後のフィラー粒子径r2は、ミクロトームを用いて作製したPTP包装体の薄片の切断面を、顕微鏡観察して、フィラー3aの少なくとも一部がフランジ部1bに食い込んだ投錨構造を構成しているフィラー3aを3か所測定した平均粒子径をいう。r1とr2とを比較することにより、PTP包装体製造時(特に、ヒートシール時)のフィラー3aの潰れを確認することができる。
なお、本実施形態のヒートシール層3には、本発明の効果に影響しない範囲で、ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みSよりも粒子径が小さいフィラー3aが含まれていてもよい。
蓋材フィルム4A上にヒートシール層3を設ける方法の代表的な例として、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工して乾燥させる方法、蓋材フィルム4Aの上にヒートシール性を有する樹脂を押出ラミする方法、蓋材フィルム4Aの上にヒートシール性を有するフィルムをラミネートする方法等が挙げられ、中でも、工程が簡略であり生産性に優れる観点から、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工して乾燥する方法が好ましい。
また、ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
本実施形態では、上記水性エマルジョンをヒートシール剤を構成する接着性樹脂を重合させながら調製してもよく、この場合の水性エマルジョンの調製方法としては、特に限定されないが、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルジョン重合等の重合方法等が挙げられ、特に、平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する観点から、乳化重合が好ましい。
ヒートシール層3の厚みは、ヒートシール性及びPTP包装体の突き破り性の観点から、3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。3μm以上であると、十分なヒートシール性を有し、20μm以下であると、内容物2が蓋材8を突き破りやすくなるので好ましい。
上記ヒートシール剤は、接着性樹脂層3bに、ブロッキング防止剤及び投錨剤(アンカー剤)として、フィラー3aを加えた混合物であり、必要に応じて水やイソプロピルアルコール等の希釈剤を加えて撹拌混合することで塗工液とされる。そして、例えば、図2に示す様に、接着性樹脂3bにフィラー3aを加えることにより、塗布・乾燥後、蓋材フィルム4Aの上に形成されたヒートシール層3の表面に、凸部が形成される。そして、フィラー3aは、それ自体が露出することはなく、その表面及び周囲は、接着性樹脂3bで覆われる。フィラー3aの表面及び周囲が接着性樹脂3bに覆われるので、接着対象の底材1に、フィラー3aが存在しない部分及びフィラー3aが存在する部分が、接着性樹脂3bを介して接着することが可能となる。
一方で、ロール状に巻き取られた保管状態においては、フィラー3aの凸部の影響により、巻き取り時に、蓋材8のヒートシール層3表面と、その反対側の蓋材フィルム4A表面との接触面積が低減するため、ブロッキングを防止できる。
更には、低温でヒートシールした後のPTP包装体の状態においては、底材1と蓋材8のヒートシール層3表面とが面接触して熱融着する時に、フィラー3aの凸部の影響により、両者の接触面積が低減して適度な滑り性を有することと、空気逃しの通り道が形成される作用が発現することにより、ヒートシールされるフランジ部分1bに折り込みシワが入ることのない包装機械適性を有することとなり、良好な外観を示すPTP包装体を得ることができる。
(PTP包装体用蓋材の製造方法)
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、前述のとおり、蓋材フィルム4A上に、接着性樹脂、フィラー等の混合物であるヒートシール剤を適用して、ヒートシール層3を形成することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
塗工法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法が挙げられ、塗工量の調整、操作性、塗工速度等の観点から、グラビアコート法が好ましい。
ヒートシール剤の塗工量としては、PTP包装体のヒートシール強度、及びPTP包装体の突き破り性を高める観点から、3g/m〜20g/m(厚さに換算して3μm〜20μmに相当)であることが好ましく、5g/m〜15g/mであることがより好ましい。
塗工の速度は、好ましくは10m/分〜300m/分であり、より好ましくは、20m/分〜200m/分である。10m/分以上であると、乾燥時の過加熱がなく塗工後に熱シワが生じにくく、生産性が良好である。300m/分以下であると、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、基材フィルム4Aが破断しにくい。
塗工後の乾燥方法は、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル、高速エアキャップ、カウンターフロー)、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線、その他の方法が挙げられ、操作性、塗工速度、塗工後のシワ等の観点から、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル)が好ましく、中でも熱風噴射式(エアフローティング)がより好ましい。
乾燥の温度及び時間としては、ヒートシール剤の種類、希釈溶剤の種類、固形分、液の粘度、塗工速度、乾燥機の種類によっても異なるが、下記の通りとしてよい。
乾燥温度は、好ましくは50℃〜115℃、より好ましくは60℃〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
乾燥時間は、好ましくは1秒〜200秒、より好ましくは2秒〜100秒、更に好ましくは3秒〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
なお、上記製造工程において、蓋材フィルム4Aに対し、グラビア印刷機等を用いて文字やバーコードを印刷することができる。更に、文字やバーコードを印刷した表面に対し、ニス層を設けることもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、単層の延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aを例示したが、2層以上の多層延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aであってもよい。
また、上記実施形態においては、蓋材フィルム4Aの表面F1上にヒートシール層3を直接設けた場合を例示したが、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3との間(F1の位置)や反対側(F2の位置)に他の層を介在させてもよい。
例えば、蓋材フィルム4Aとして熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は、他の層としてアルミニウムの蒸着層を設けることが、バリア性の向上や、近赤外線を利用した異物検査の適性が向上する観点から、好ましい。アルミ蒸着層の厚さは、要求されるバリア性(特に水蒸気透過性)、近赤外線の反射特性、又は両面印刷時の隠蔽性に応じて適宜調整されるが、バリア性の観点からは、好ましくは10nm〜500nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性を向上させる効果は得られない。また、近赤外線の反射特性や両面印刷時の隠蔽性の観点からは、好ましくは10nm〜200nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。
<底材>
本実施形態におけるPTP包装体に用いる底材1としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等を主体とした樹脂組成物)等の周知の合成樹脂からなるシート材が挙げられる。中でも、底材のポケット状凹部への真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さ、機械的強度、透明性、コスト面の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるシート材が特に好ましい。
上記底材1は、底材のポケット状凹部への真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さの観点から、JIS K7191(A法及びB法)に準拠した熱変形温度が50〜110℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
本実施形態のPTP包装体は、上記に限定されない、接着性樹脂とフィラーとを含むヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物2を収容する凹部1a、及び上記プレススルーパック包装体用蓋材8のヒートシール層3と貼り合わされるフランジ部1bを有する底材と、を互いに貼り合わせてなる包装体である。
本実施形態のPTP包装体は、図3に示すように、底材1のフランジ部1bと蓋材8のヒートシール層3との貼り合わせ面の少なくとも一部において、フランジ部1bにフィラー3aが食い込んでいる構造を有する。この構造では、フランジ部1bにおいて、底材1の厚さ方向の内側に、フィラー3aの一部(フィラー3aの一部と、そのフィラー3aの周囲の接着性樹脂3b)が位置している(図3参照)。この構造を有することにより、底材1と蓋材8とのヒートシール強度が向上する。
フィラー3aの底材1のフランジ部1bへの食い込んでいる部分の厚さh(単位:μm)は、3〜25μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。また、フィラー3aの粒子径r2に対する、フィラー3aがフランジ部1bに食い込んでいる部分の厚さh(単位μm)の割合H(h/r2×100)は、20〜70%であることが好ましく、40〜60%であることがより好ましい。尚、フィラー3aが底材1のフランジ部1bに食い込まない部分は、蓋材8の外表面F2を蓋材フィルム4Aに向けて凸状に出っ張る高さとなる。
なお、フィラー3aの底材1のフランジ部1bへの食い込んでいる部分の厚さhは、PTP包装体の切断面の顕微鏡観察により測定することができる。
本実施形態のPTP包装体は、底材1の表面と蓋材8のヒートシール層の表面とを重ね合わせて、ヒートシールすることにより製造することができる。
ヒートシール温度は、例えば、100〜200℃が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、100〜150℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、1秒未満の短時間、例えば、0.01〜0.8秒が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.01〜0.4秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2〜0.6MPaが挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.3〜0.5MPaが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
(1)蓋材フィルム
(i)PS系フィルム:スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリレート共重合体(メチルメタクリルレート含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%、ビカット軟化点=123℃)を90質量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製、耐衝撃ポリスチレン GH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10質量%配合し、インフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=120℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.8Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PP系フィルム:二軸延伸ポリプロピレンフィルム 東洋紡製パイレンフィルム(厚さ25μm)
(2)ヒートシール剤
(i)HS剤−1:アクリル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(BASF製、ジョンクリル(スチレン/アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩の水分散体、不揮発分:35質量%、ガラス転移温度:−5℃))
(ii)HS剤−2:ポリエステル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(東洋紡製バイロナール(フタル酸/エチレングリコール/ブタンジオールの飽和共重合ポリエステル樹脂の水分散体、不揮発分:33質量%、イソプロピルアルコール16質量%、ガラス転移温度:3℃))
(iii)HS剤−X:エチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤(中央理化工業製、アクアテックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体の水分散体、不揮発分:50%、融点:92℃))
(3)フィラー
(i)PMMA:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBX、SSXシリーズ、平均粒子径:8〜30μm)
(ii)PS:ポリスチレン架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーSBXシリーズ、平均粒子径:12μm)
(4)底材
(i)PVC:硬質塩化ビニル単層シート(住友ベークライト製スミライトVSSシリーズ(厚さ250μm)、熱変形温度A法及びB法とも約60〜70℃)
(ii)PP:ポリプロピレン単層シート(住友ベークライト製スミライトNSシリーズ(厚さ300μm)、熱変形温度A法は約90〜100℃、B法は約60〜70℃)
実施例及び比較例において使用した材料の性質の分析方法は、以下の通りである。
[蓋材フィルムのビカット軟化点]
得られた蓋材フィルムについて、JIS K7206に準拠して、試験荷重:50N、昇温速度:50℃/時の条件で、ビカット軟化点(℃)を測定した。
[底材の熱変形温度]
底材について、JIS K7191(A法及びB法)に準拠して、熱プレス成形にて規格寸法に作成した試験片を用いて、熱変形温度(℃)を測定した。
[ヒートシール剤のガラス転移温度、融点]
蓋材からヒートシール層のみを剥離し、このヒートシール層について、JIS K7121に準じたDSC法により、20℃/分の昇温速度で、補外ガラス転移温度を測定し、これをガラス転移温度(℃)とした。又、融解ピーク温度を融点(℃)とした。
[粒子径、ヒートシール層厚み]
ヒートシール前のフィラー粒子径(r1)は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALDシリーズ、セイシン企業製LMS−2000e)を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径(体積変換して得られた粒度分布より算出したd(50)の値)を、ヒートシール前のフィラー粒子径とした。
ヒートシール層の厚み(S)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分を3か所スケール測定した平均値とし、表1の接着性樹脂の厚み(μm)に示した。
PTP包装体のフィラー粒子径(r2)、及び、底材へ食い込んでいる部分の厚さ(食い込み量:h)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール後のPTP包装体の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、フィラーの少なくとも一部が底材のフランジ部に食い込んだ投錨構造を示している部分を3か所測定した平均値とした。
<評価項目>
実施例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
(1)蓋材の耐ブロッキング性
ロール状に巻き取った蓋材を、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する、40℃、90%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、ブロッキング性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていない。非常に実用的である。
△:巻き解いたとき、手に抵抗感があるが、蓋材自体も破れることなく巻き解くことが可能であり、巻き解いた後のフィルム外表面、ヒートシール層の状態も綺麗である。実用上の問題はない。
×:巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまう。実用上不適と判断される。
(2)PTP包装体の耐圧ヒートシール性
底材のポケットサイズは直径10mm、高さ4mmの円形、錠剤のサイズは錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形であった。ヒートシールの条件は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度2.5m/分(60ショット/分、シール時間0.2秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともPVCは130℃、PPは135℃、作業室環境23℃、50%RHである。
作製したPTP包装体について、減圧リーク試験(PTP包装体100ポケットを水中に入れて、−67kPaで5分間保持し、PTPポケット中に水の漏れがないかを確認する)、及び、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子の確認(ヒートシール強度)により、下記基準に基づきヒートシール層と底材との耐圧ヒートシール性を評価した。ヒートシール強度が高いほど、耐圧ヒートシール性が高いと評価した。
○:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。ヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せた。ヒートシール温度が低温(150℃)でも確実に接着し、且つ十分な強度があり、非常に実用的である。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
(3)PTP包装体の外観(フランジ部分の折り込みシワ、蓋材フィルム印字の透明性)
作製したPTP包装体の蓋材フィルムとヒートシール層との間の印刷部分の外観を、フランジ部分のヒートシール時の折り込みシワの有無、PTP包装体に要求される印字の読取性(ヒートシール層の透明性)により評価した。
○:折り込みシワが無い、及び、ヒートシール面の印刷部分の印字を読み取れる。
×:折り込みシワがある、又は、ヒートシール面の印刷部分の印字がぼやけて読み取れない。
[総合判定]
また、総合判定の評価基準は以下のとおりである。
◎:耐ブロッキング性と耐圧ヒートシール性とPTP包装体の外観の全て○である。高度に課題を解決できる。
○:耐ブロッキング性と耐圧ヒートシール性とPTP包装体の外観のいずれか一つが△、他二つが○である。実用上問題はない程度に課題を解決できる。
×:耐ブロッキング性と耐圧ヒートシール性とPTP包装体の外観のいずれかひとつで×がある。課題を解決できない。
[実施例1]
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム(スチレン−メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=230線/インチ、版深度=20μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上に線数=80線/インチ、版深度=130μmの版を用いてヒートシール剤を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、不揮発分が40質量%、粘度が100mPa・s〜1000mPa・sとなるように水で希釈し、HS剤−1中の固形分100質量部に対してフィラーのPMMA(ヒートシール前フィラー粒子径r1=20μm)が8質量部となるよう混合した。
塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間通過する速度で乾燥して、蓋材を得た。得た蓋材は、乾燥直後に直径3インチの紙管にロール状に巻き取った。
このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。
ロール状に巻き取った実施例1の蓋材を、40℃、90%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、上記(1)に記載の方法で、耐ブロッキング性を評価したところ、巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていなかった。
得られた実施例1の蓋材を、スリッター装置を用いて、巾110cm、4丁取りにスリットしたところ、速度70m/分においても途中で破断することなくスリットをすることができた。
底材に厚さ250μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、ヒートシール温度を150℃に設定したPTP成形機(CKD社製FBP−M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、PTP包装体用蓋材を接着して、PTP包装体を得た。
ヒートシールの条件は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度2.5m/分(60ショット/分、シール時間0.2秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともPVCは130℃、PPは135℃、作業室環境23℃、50%RHである。
得られたPTP包装体について、(2)に記載の方法で評価し、底材側から錠剤を親指で押し出すことにより蓋材を押し破って開封する時の様子を観察したところ、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はないレベルであった。減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個と良好であった。
得られたPTP包装体について、(3)に記載の方法で評価したところ、ヒートシールされるフランジ部分の蓋材フィルムの折り込みシワは無く、蓋材表面の印刷部分の印字の読取性は良く、PTP包装体に要求される外観は良好であった。
得られたPTP包装体は、JIS Z8825に準拠したレーザー散乱法によるヒートシール前のフィラーの平均粒子径r1=20μmと、切断面顕微鏡観察によるスケール測定値であるヒートシール層のフィラーがない部分の厚み(平均厚み)S=8μmより、フィラー粒子径/ヒートシール層厚さが2.5倍となり、フィラーの粒子径の半分程度が底材や蓋材に食い込み投錨された構造であった。なお、切断面顕微鏡観察によるスケール測定値である、ヒートシール後フィラー粒子径r2は、ヒートシール前フィラー平均粒子径r1と同じ20μmであった。また、フィラー3aの底材1のフランジ部1bへの食い込んでいる部分の厚さhは12μmであり、フィラー3aの粒子径r2に対する、フィラー3aがフランジ部1bに食い込んでいる部分の厚さh(単位μm)の割合Hは60%であった。
なお、PTP成形機の加熱ロールを立ち上げ(20℃)から所定温度まで昇温するのに要する時間は、一般的なアルミ箔製PTP蓋材の場合の条件(230℃)では21分間もかかるのに対し、本実施例の低温ヒートシール条件(150℃)では13分と非常に短い時間で済み、大変作業効率に優れていた。
また、錠剤の表面(蓋材側)に、サーモラベルスーパーミニ(日油技研工業製)3R−40、3R−80、又は3R−120を貼り(各シールのn数=3)、充填速度1.2m/分にてヒートシールした後に、サーモラベルの変色を確認することにより錠剤の表面温度を測定した。一般的なアルミ箔蓋材フィルムを用いて一般的なヒートシール温度230℃で実施した場合、表面温度が60℃以上(最大で100℃)であったのに対し、本実施例1の蓋材をヒートシール温度150℃で実施した場合は、表面温度は45℃未満であった。このように、低温でのヒートシールは、内容物が受ける熱が少なく好ましいことが確認された。
また、上で成形したPTP包装体を、ヒートシールから1日後に平らな机の上に置き、PTP包装体の端部を指で押さえ、浮き上がった反対側の端部と机との距離を定規で測定することにより、PTP包装体のカールを測定した(n数=5)。上記のヒートシール温度230℃で実施した実施例1のPTP包装体のカールは8mmであったのに対し、ヒートシール温度150℃で実施した本実施例1のPTP包装体のカールは3mmしかなかった。このように、低温でのヒートシールは、カールが起こりにくく好ましいことが確認された。
[実施例2〜5]
実施例2〜5は、表1に記載のヒートシール剤とフィラーを、表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様に、蓋材を作製し、PTP包装体を得た。いずれもフィラー含有量が5重量部超30重量部未満でフィラー粒子径/ヒートシール層厚さが1.3倍から5.0倍の範囲内であることから、40℃、90%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解いたとき、巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていない。非常に実用的であるレベルであった。
一方、実施例2と実施例5のヒートシール剤はエチレン酢酸ビニル共重合体とポリエステル系樹脂のエマルジョン型ヒートシール剤、実施例3はヒートシール層厚さが3μm、実施例4はフィラー粒子径/ヒートシール層厚さが1.3倍であることから、ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、耐圧ヒートシール性に実用上問題はないレベルであった。
実施例1〜5において、蓋材はヒートシール層塗工後の巻きジワは全く無く、耐ブロッキング性に優れ、PTP包装体は、フランジ部分の折り込みシワも無く、耐圧ヒートシール性と印字の読取性に優れ、実用的であった。
このように、特定の粒子径を有する特定のヒートシール剤を用いることにより、耐圧ヒートシール性に優れ、折り込みシワが無く包装機械適性に優れ、PTP包装体のヒートシール層側面の印字の読取性に優れ、且つロール状に巻き取った状態で夏場の高温で高湿の雰囲気下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性を兼ね備えさせることが可能となる。
[比較例1、2]
比較例1、2は、表1に記載のヒートシール剤とフィラーを、表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例1はフィラー含有量1部、比較例2はフィラー含有量30部のヒートシール層を有する蓋材である。表1に示すとおり、比較例1は、フィラー含有量1部と少ないことから、耐ブロッキング性が非常に悪く、ヒートシール剤が反対側面に一部転写してしまい、PTP包装体のフランジ部に折り込みシワも入ることから、PTP包装体の外観、及び、耐圧ヒートシール性も悪い。比較例2は、フィラー含有量が30部と多いことから、耐ブロッキング性は良いが、印字がぼやけて透明性が悪く読み取れない。いずれも実用上不適と判断される。
[比較例3、4]
比較例3、4は、表1に記載のヒートシール剤とフィラーを、表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例3は、フィラー粒子径/ヒートシール層厚さが6.7倍と大きいことから、フィラーを介して蓋材と底材の間に隙間が出来てしまい、接着が不十分で耐圧ヒートシール性が悪くなる上に、印字の輪郭がぼやけて視認性も悪い。比較例4はフィラー粒子径/ヒートシール層厚さが1.2倍とフィラーの粒子径が小さいことから、耐ブロッキング性に劣り、PTP包装体のフランジ部に折り込みシワが入り、PTP包装体の外観、及び、耐圧ヒートシール性が悪い。いずれも実用上不適と判断される。
[比較例5]
比較例5は、表1に記載の蓋材フィルムとヒートシール剤と底材を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例5はフィラー含有量が1部と少ないことから、耐ブロッキング性が悪く、ヒートシール剤が反対側面に一部転写し、PTP包装体のフランジ部にシワもあることから、耐圧ヒートシール性が悪い。又、ヒートシール強度が弱いことに加えて、底材が硬質塩化ビニルシートより熱変形温度(A法)が高くて硬いポリプロピレンであることから、フィラーが底材に十分に食い込まず投錨効果のない構造(フィラーが蓋材フィルム側に押し出され、蓋材厚みやシール層厚みに殆ど変化なく、蓋材側の外表面F2が凸状面となる)となるためである。いずれも実用上不適と判断される。
本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤、カプセル等の医薬品やキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる。
1 底材
1a 底材の凹部
1b 底材のフランジ部
2 内容物(錠剤)
3 ヒートシール層
3a フィラー
3b 接着性樹脂層
4A 蓋材フィルム
5 印刷部分
6 表面保護層
8 蓋材
9 内容物と蓋材のクリアランス
10 包装体
L1 蓋材フィルムの厚み(フランジ部)
L2 底材の厚み(フランジ部)
S ヒートシール層の厚み(フランジ部、接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分)
r1 蓋材のフィラーの粒子径(フィルム厚み方向のフィラーの粒子径、ヒートシール前の粒子径相当)
r2 PTP包装体のフィラーの粒子径(フィルム厚み方向のフィラーの粒子径、ヒートシール後の粒子径相当)
h PTP包装体の底材へのフィラーの食い込み量(厚み)
F1 表面
F2 表面

Claims (8)

  1. ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、
    前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、
    前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部あり、
    前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みが3〜20μmであり、
    前記フィラーの粒子径が、前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分の厚みの1.3〜5.0倍であることを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。
  2. 前記接着性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とした樹脂である、請求項1に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  3. 前記フィラーが、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートの架橋共重合体、及びポリスチレン架橋重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体としてなる有機フィラーである、請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  4. 前記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  5. 接着性樹脂とフィラーとを含むヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材と、
    内容物を収容する凹部、及び前記プレススルーパック包装体用蓋材のヒートシール層と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、
    を互いに貼り合わせてなり、
    前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部であり、
    前記フランジ部と前記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、前記フランジ部に前記フィラーが食い込んでいる構造を有することを特徴とする、プレススルーパック包装体。
  6. 前記プレススルーパック包装体用蓋材が請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋材からなる、請求項5に記載のプレススルーパック包装体。
  7. 前記底材を構成する樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である、請求項5又は6に記載のプレススルーパック包装体。
  8. 前記フランジ部と前記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、前記フランジ部に、前記フィラーの粒子径の20〜70%が食い込んでいる構造を有する、請求項5〜7の何れか1項に記載のプレススルーパック包装体。
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