JP6814027B2 - プレススルーパック包装用蓋材及びプレススルーパック包装体 - Google Patents
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Description
(1)ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部であり、前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みが3〜20μmであり、前記フィラーの粒子径が、前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分の厚みの1.3〜5.0倍であることを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)上記接着性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及びエチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とする樹脂である、上記(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)上記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂からなる、上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)接着性樹脂とフィラーとを含むヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材と、内容物を収容する凹部、及び上記プレススルーパック包装体用蓋材のヒートシール層と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、を互いに貼り合わせてなり、前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部であり、上記フランジ部と上記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、上記フランジ部に上記フィラーが食い込んでいる構造を有することを特徴とする、プレススルーパック包装体。
(7)上記底材を構成する樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である、上記(5)又は(6)に記載のプレススルーパック包装体。
(8)上記フランジ部と上記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、上記フランジ部に、上記フィラーの粒子径の20〜70%が食い込んでいる構造を有する、上記(5)〜(7)のいずれか一つに記載のプレススルーパック包装体。
なお、本明細書において、PTP包装体用蓋材を、単に「蓋材」と称する場合がある。
図1に示す本実施形態のPTP包装体10は、底材1と本実施形態のPTP包装体用蓋材8とを備える。底材1は、成型されたポケット状の凹部1aと、蓋材8と貼りあわされるフランジ部1bとを有する。凹部1aには、内容物2が充填されている。蓋材8は、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3を備え、ヒートシール層3はフランジ部1bで底材1と接着している。
蓋材8のうち、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bの表面と蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面を形成している。
本実施形態の蓋材8は、図2に示す様に、フィラーの粒子径(ヒートシール前r1、ヒートシール後r2)を接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みSの1.3〜5.0倍、且つ、前記ヒートシール層厚みSを3〜20μmとすることで、ロール状に巻き取った状態で高温高湿下での保管にも適応可能な優れた耐ブロッキング性を有し、更には、PTP包装体の印刷部分の印字の読取性に優れた透明性を有する。
また、図1に示す様な内容物2と蓋材8とのクリアランス9が小さい場合であっても、内容物2が高温の熱に晒されにくい、PTP成形機の昇温時間が短い、PTP包装体がカールしにくい、という長所も有する。
蓋材フィルム4Aは、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等が挙げられ、廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、延伸フィルムであることが好ましい。
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。
なお、上記スチレン系単量体の共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
上記のうち、スチレン−メタクリル酸共重合体及びこれにエステル成分を含む三元共重合樹脂が押出延伸製膜のしやすさといった点でより好ましい。
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものであり、ヒートシール剤を90質量%以上含むことが好ましい。
ヒートシール剤は、ヒートシール層が熱によって底材と共に溶融し、相互に融着(ヒートシール)し得る接着性樹脂(以下、「樹脂α」と称する場合がある。)を主体としてなる接着性樹脂層3bとフィラー3aとを含み、フィラー3aの含有量が接着性樹脂層3bの100質量部に対して5質量部超30質量部未満である混合物である。
尚、本明細書における主体とする成分とは、最も含有量(含有率)が多い成分を意味し、その含有量は、好ましくは50質量%以上である。
樹脂αは、熱によって樹脂αが融解し、又は樹脂αが底材1と共に融解し、相互に融着(ヒートシール)し得るものとして、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル・ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、アクリル変性ポリプロピレン、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を単独で用いてもよいが二種以上を併用して使用できる。なかでも、低温シール性に優れるという観点から、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、アクリル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
アクリル系樹脂とは、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体であっても、これと共重合可能な、エチレン、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の他の単量体との共重合体であってもよい。また、アクリル系樹脂は、上記単独重合体又は上記共重合体の、カルボキシル基(カルボン酸)のアルカリ金属塩、アミン塩、又はアンモニウム塩であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合の具体例としては、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
アクリル系樹脂の好ましいガラス転移温度は、−70℃以上30℃未満、より好ましくは−65℃以上25℃以下、さらに好ましくは−60℃以上0℃以下である。ガラス転移温度が−70℃以上であれば蓋材の耐ブロッキング性に優れ、30℃未満であれば蓋材の耐圧ヒートシール性が良好となる。ここで「耐圧ヒートシール性」とは、低温域(100℃〜150℃)で短時間(0.01〜0.4秒)のヒートシールが可能であること、及び、減圧下におけるヒートシール強度が実用に耐えるほど十分であることをいう。
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。
ポリエステル系樹脂の種類としては、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有しない)飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有する)不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、耐圧低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から、飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
ポリウレタン樹脂はポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物であり、ウレタン樹脂エマルションに用いられるポリイソシアネートは、着色防止の観点から脂肪族イソシアネート(無黄変イソシアネート)が選択されることが多く、ポリオールとしては、主にポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系の3種類が挙げられる。
エチレン・酢酸ビニル共重合体は、ポリビニルアルコール(PVA)、界面活性剤などの乳化剤の存在下で少なくとも酢酸ビニル及びエチレンを共重合することによって得られる。乳化剤の種類や量、共重合モノマー、重合方法などに特に制限はなく、いずれも使用することができる。エチレン・酢酸ビニル共重合体の融点は、底材とのヒートシール時におけるヒートシール強度、要求される耐圧ヒートシール性、塗工乾燥後のブロッキング性等の観点から、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃であり、更に好ましくは55〜120℃である。40℃以上だと、塗工乾燥後にブロッキングしにくく、200℃以下であると、ヒートシール強度が得られやすい。また、PTPの内容物(錠剤、食品等)が熱のダメージをうけやすい内容物であり100〜150℃程度の低温でのヒートシール性が特に要求される場合は、同上の理由により、好ましくは40〜150℃であり、更に好ましくは45〜90℃である。
ヒートシール剤は接着性樹脂層3bとフィラー3aを含む混合物であり、接着性樹脂3bの100質量部に対してフィラー3aの配合量は、5質量部超30質量部未満、好ましくは6〜25質量部、より好ましくは8〜20質量部である。フィラー3aの含有量が5質量部以下であると、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下でブロッキングが起こる場合や耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。30質量部以上であると、ヒートシール層と蓋材フィルムとの間の印刷部分の印字がぼやけて読取性、透明性が悪化する場合がある。
上記ヒートシール層3のヒートシール層厚みSは、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片の切断面を、顕微鏡観察して、フィラーの無い部分を3か所測定した平均厚みをいう。
なお、本実施形態のヒートシール層3には、本発明の効果に影響しない範囲で、ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みSよりも粒子径が小さいフィラー3aが含まれていてもよい。
また、ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
ヒートシール層3の厚みは、ヒートシール性及びPTP包装体の突き破り性の観点から、3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。3μm以上であると、十分なヒートシール性を有し、20μm以下であると、内容物2が蓋材8を突き破りやすくなるので好ましい。
更には、低温でヒートシールした後のPTP包装体の状態においては、底材1と蓋材8のヒートシール層3表面とが面接触して熱融着する時に、フィラー3aの凸部の影響により、両者の接触面積が低減して適度な滑り性を有することと、空気逃しの通り道が形成される作用が発現することにより、ヒートシールされるフランジ部分1bに折り込みシワが入ることのない包装機械適性を有することとなり、良好な外観を示すPTP包装体を得ることができる。
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、前述のとおり、蓋材フィルム4A上に、接着性樹脂、フィラー等の混合物であるヒートシール剤を適用して、ヒートシール層3を形成することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
塗工法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法が挙げられ、塗工量の調整、操作性、塗工速度等の観点から、グラビアコート法が好ましい。
ヒートシール剤の塗工量としては、PTP包装体のヒートシール強度、及びPTP包装体の突き破り性を高める観点から、3g/m2〜20g/m2(厚さに換算して3μm〜20μmに相当)であることが好ましく、5g/m2〜15g/m2であることがより好ましい。
塗工後の乾燥方法は、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル、高速エアキャップ、カウンターフロー)、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線、その他の方法が挙げられ、操作性、塗工速度、塗工後のシワ等の観点から、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル)が好ましく、中でも熱風噴射式(エアフローティング)がより好ましい。
乾燥温度は、好ましくは50℃〜115℃、より好ましくは60℃〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
乾燥時間は、好ましくは1秒〜200秒、より好ましくは2秒〜100秒、更に好ましくは3秒〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
なお、上記製造工程において、蓋材フィルム4Aに対し、グラビア印刷機等を用いて文字やバーコードを印刷することができる。更に、文字やバーコードを印刷した表面に対し、ニス層を設けることもできる。
例えば、上記実施形態においては、単層の延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aを例示したが、2層以上の多層延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aであってもよい。
また、上記実施形態においては、蓋材フィルム4Aの表面F1上にヒートシール層3を直接設けた場合を例示したが、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3との間(F1の位置)や反対側(F2の位置)に他の層を介在させてもよい。
本実施形態におけるPTP包装体に用いる底材1としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等を主体とした樹脂組成物)等の周知の合成樹脂からなるシート材が挙げられる。中でも、底材のポケット状凹部への真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さ、機械的強度、透明性、コスト面の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるシート材が特に好ましい。
上記底材1は、底材のポケット状凹部への真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さの観点から、JIS K7191(A法及びB法)に準拠した熱変形温度が50〜110℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
なお、フィラー3aの底材1のフランジ部1bへの食い込んでいる部分の厚さhは、PTP包装体の切断面の顕微鏡観察により測定することができる。
ヒートシール温度は、例えば、100〜200℃が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、100〜150℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、1秒未満の短時間、例えば、0.01〜0.8秒が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.01〜0.4秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2〜0.6MPaが挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.3〜0.5MPaが好ましい。
実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
(1)蓋材フィルム
(i)PS系フィルム:スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリレート共重合体(メチルメタクリルレート含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%、ビカット軟化点=123℃)を90質量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製、耐衝撃ポリスチレン GH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を10質量%配合し、インフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=120℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.8Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PP系フィルム:二軸延伸ポリプロピレンフィルム 東洋紡製パイレンフィルム(厚さ25μm)
(i)HS剤−1:アクリル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(BASF製、ジョンクリル(スチレン/アクリル酸エステル共重合体のアンモニウム塩の水分散体、不揮発分:35質量%、ガラス転移温度:−5℃))
(ii)HS剤−2:ポリエステル系樹脂エマルジョン型ヒートシール剤(東洋紡製バイロナール(フタル酸/エチレングリコール/ブタンジオールの飽和共重合ポリエステル樹脂の水分散体、不揮発分:33質量%、イソプロピルアルコール16質量%、ガラス転移温度:3℃))
(iii)HS剤−X:エチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤(中央理化工業製、アクアテックス(エチレン−酢酸ビニル共重合体の水分散体、不揮発分:50%、融点:92℃))
(i)PMMA:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBX、SSXシリーズ、平均粒子径:8〜30μm)
(ii)PS:ポリスチレン架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーSBXシリーズ、平均粒子径:12μm)
(i)PVC:硬質塩化ビニル単層シート(住友ベークライト製スミライトVSSシリーズ(厚さ250μm)、熱変形温度A法及びB法とも約60〜70℃)
(ii)PP:ポリプロピレン単層シート(住友ベークライト製スミライトNSシリーズ(厚さ300μm)、熱変形温度A法は約90〜100℃、B法は約60〜70℃)
[蓋材フィルムのビカット軟化点]
得られた蓋材フィルムについて、JIS K7206に準拠して、試験荷重:50N、昇温速度:50℃/時の条件で、ビカット軟化点(℃)を測定した。
[底材の熱変形温度]
底材について、JIS K7191(A法及びB法)に準拠して、熱プレス成形にて規格寸法に作成した試験片を用いて、熱変形温度(℃)を測定した。
[ヒートシール剤のガラス転移温度、融点]
蓋材からヒートシール層のみを剥離し、このヒートシール層について、JIS K7121に準じたDSC法により、20℃/分の昇温速度で、補外ガラス転移温度を測定し、これをガラス転移温度(℃)とした。又、融解ピーク温度を融点(℃)とした。
ヒートシール前のフィラー粒子径(r1)は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALDシリーズ、セイシン企業製LMS−2000e)を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径(体積変換して得られた粒度分布より算出したd(50)の値)を、ヒートシール前のフィラー粒子径とした。
ヒートシール層の厚み(S)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分を3か所スケール測定した平均値とし、表1の接着性樹脂の厚み(μm)に示した。
PTP包装体のフィラー粒子径(r2)、及び、底材へ食い込んでいる部分の厚さ(食い込み量:h)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール後のPTP包装体の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、フィラーの少なくとも一部が底材のフランジ部に食い込んだ投錨構造を示している部分を3か所測定した平均値とした。
実施例及び比較例で作製した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目について評価を行った。
(1)蓋材の耐ブロッキング性
ロール状に巻き取った蓋材を、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する、40℃、90%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、ブロッキング性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていない。非常に実用的である。
△:巻き解いたとき、手に抵抗感があるが、蓋材自体も破れることなく巻き解くことが可能であり、巻き解いた後のフィルム外表面、ヒートシール層の状態も綺麗である。実用上の問題はない。
×:巻き解いたとき、手に非常に大きな抵抗感があり、蓋材がすぐに破れてしまう。実用上不適と判断される。
底材のポケットサイズは直径10mm、高さ4mmの円形、錠剤のサイズは錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形であった。ヒートシールの条件は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度2.5m/分(60ショット/分、シール時間0.2秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともPVCは130℃、PPは135℃、作業室環境23℃、50%RHである。
○:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。ヒートシール層と底材が剥がれることなく、綺麗に錠剤が押出せた。ヒートシール温度が低温(150℃)でも確実に接着し、且つ十分な強度があり、非常に実用的である。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。ヒートシール層と底材がごく僅かに剥がれる場合があるが、特に問題なく錠剤を押出すことが可能で、実用上問題はない。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。錠剤を押出す前に、ヒートシール層と底材が剥がれてしまい、ヒートシール強度が不十分である。実用上不適と判断される。
作製したPTP包装体の蓋材フィルムとヒートシール層との間の印刷部分の外観を、フランジ部分のヒートシール時の折り込みシワの有無、PTP包装体に要求される印字の読取性(ヒートシール層の透明性)により評価した。
○:折り込みシワが無い、及び、ヒートシール面の印刷部分の印字を読み取れる。
×:折り込みシワがある、又は、ヒートシール面の印刷部分の印字がぼやけて読み取れない。
また、総合判定の評価基準は以下のとおりである。
◎:耐ブロッキング性と耐圧ヒートシール性とPTP包装体の外観の全て○である。高度に課題を解決できる。
○:耐ブロッキング性と耐圧ヒートシール性とPTP包装体の外観のいずれか一つが△、他二つが○である。実用上問題はない程度に課題を解決できる。
×:耐ブロッキング性と耐圧ヒートシール性とPTP包装体の外観のいずれかひとつで×がある。課題を解決できない。
巾460mm、長さ500mのロール状に巻かれたPS系フィルム(スチレン−メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=230線/インチ、版深度=20μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上に線数=80線/インチ、版深度=130μmの版を用いてヒートシール剤を塗工した。ヒートシール剤は塗工前に、不揮発分が40質量%、粘度が100mPa・s〜1000mPa・sとなるように水で希釈し、HS剤−1中の固形分100質量部に対してフィラーのPMMA(ヒートシール前フィラー粒子径r1=20μm)が8質量部となるよう混合した。
このときの、巻き取られた蓋材の様子は、まったく巻ジワがない綺麗な巻き姿であった。
ロール状に巻き取った実施例1の蓋材を、40℃、90%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解きながら、上記(1)に記載の方法で、耐ブロッキング性を評価したところ、巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていなかった。
底材に厚さ250μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、ヒートシール温度を150℃に設定したPTP成形機(CKD社製FBP−M1)により、凹み部を成形した底材に錠剤を充填し、PTP包装体用蓋材を接着して、PTP包装体を得た。
ヒートシールの条件は、温度150℃、シール圧力0.4MPa、充填速度2.5m/分(60ショット/分、シール時間0.2秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともPVCは130℃、PPは135℃、作業室環境23℃、50%RHである。
得られたPTP包装体について、(3)に記載の方法で評価したところ、ヒートシールされるフランジ部分の蓋材フィルムの折り込みシワは無く、蓋材表面の印刷部分の印字の読取性は良く、PTP包装体に要求される外観は良好であった。
実施例2〜5は、表1に記載のヒートシール剤とフィラーを、表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様に、蓋材を作製し、PTP包装体を得た。いずれもフィラー含有量が5重量部超30重量部未満でフィラー粒子径/ヒートシール層厚さが1.3倍から5.0倍の範囲内であることから、40℃、90%RHの環境下で1週間保管後に、ロールから蓋材を手で引っ張って巻き解いたとき、巻き解いたときの手にかかる抵抗感は小さく、ブロッキングしていない。非常に実用的であるレベルであった。
実施例1〜5において、蓋材はヒートシール層塗工後の巻きジワは全く無く、耐ブロッキング性に優れ、PTP包装体は、フランジ部分の折り込みシワも無く、耐圧ヒートシール性と印字の読取性に優れ、実用的であった。
比較例1、2は、表1に記載のヒートシール剤とフィラーを、表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例1はフィラー含有量1部、比較例2はフィラー含有量30部のヒートシール層を有する蓋材である。表1に示すとおり、比較例1は、フィラー含有量1部と少ないことから、耐ブロッキング性が非常に悪く、ヒートシール剤が反対側面に一部転写してしまい、PTP包装体のフランジ部に折り込みシワも入ることから、PTP包装体の外観、及び、耐圧ヒートシール性も悪い。比較例2は、フィラー含有量が30部と多いことから、耐ブロッキング性は良いが、印字がぼやけて透明性が悪く読み取れない。いずれも実用上不適と判断される。
比較例3、4は、表1に記載のヒートシール剤とフィラーを、表1に記載の割合で用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例3は、フィラー粒子径/ヒートシール層厚さが6.7倍と大きいことから、フィラーを介して蓋材と底材の間に隙間が出来てしまい、接着が不十分で耐圧ヒートシール性が悪くなる上に、印字の輪郭がぼやけて視認性も悪い。比較例4はフィラー粒子径/ヒートシール層厚さが1.2倍とフィラーの粒子径が小さいことから、耐ブロッキング性に劣り、PTP包装体のフランジ部に折り込みシワが入り、PTP包装体の外観、及び、耐圧ヒートシール性が悪い。いずれも実用上不適と判断される。
比較例5は、表1に記載の蓋材フィルムとヒートシール剤と底材を用いた以外は実施例1と同様にて蓋材を作製し、PTP包装体を得たものである。
比較例5はフィラー含有量が1部と少ないことから、耐ブロッキング性が悪く、ヒートシール剤が反対側面に一部転写し、PTP包装体のフランジ部にシワもあることから、耐圧ヒートシール性が悪い。又、ヒートシール強度が弱いことに加えて、底材が硬質塩化ビニルシートより熱変形温度(A法)が高くて硬いポリプロピレンであることから、フィラーが底材に十分に食い込まず投錨効果のない構造(フィラーが蓋材フィルム側に押し出され、蓋材厚みやシール層厚みに殆ど変化なく、蓋材側の外表面F2が凸状面となる)となるためである。いずれも実用上不適と判断される。
1a 底材の凹部
1b 底材のフランジ部
2 内容物(錠剤)
3 ヒートシール層
3a フィラー
3b 接着性樹脂層
4A 蓋材フィルム
5 印刷部分
6 表面保護層
8 蓋材
9 内容物と蓋材のクリアランス
10 包装体
L1 蓋材フィルムの厚み(フランジ部)
L2 底材の厚み(フランジ部)
S ヒートシール層の厚み(フランジ部、接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分)
r1 蓋材のフィラーの粒子径(フィルム厚み方向のフィラーの粒子径、ヒートシール前の粒子径相当)
r2 PTP包装体のフィラーの粒子径(フィルム厚み方向のフィラーの粒子径、ヒートシール後の粒子径相当)
h PTP包装体の底材へのフィラーの食い込み量(厚み)
F1 表面
F2 表面
Claims (8)
- ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、
前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、
前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部であり、
前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分のヒートシール層厚みが3〜20μmであり、
前記フィラーの粒子径が、前記ヒートシール層のうち接着性樹脂層の厚みより大きなフィラーを含まない部分の厚みの1.3〜5.0倍であることを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。 - 前記接着性樹脂が、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とした樹脂である、請求項1に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 前記フィラーが、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートの架橋共重合体、及びポリスチレン架橋重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体としてなる有機フィラーである、請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 前記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
- 接着性樹脂とフィラーとを含むヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材と、
内容物を収容する凹部、及び前記プレススルーパック包装体用蓋材のヒートシール層と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、
を互いに貼り合わせてなり、
前記ヒートシール剤は、接着性樹脂層とフィラーとを含み、前記フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して8〜20質量部であり、
前記フランジ部と前記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、前記フランジ部に前記フィラーが食い込んでいる構造を有することを特徴とする、プレススルーパック包装体。 - 前記プレススルーパック包装体用蓋材が請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋材からなる、請求項5に記載のプレススルーパック包装体。
- 前記底材を構成する樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂である、請求項5又は6に記載のプレススルーパック包装体。
- 前記フランジ部と前記ヒートシール層との貼り合わせ面の少なくとも一部において、前記フランジ部に、前記フィラーの粒子径の20〜70%が食い込んでいる構造を有する、請求項5〜7の何れか1項に記載のプレススルーパック包装体。
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