JP2017163131A - 積層体およびその製造方法、並びに接着層付樹脂フィルム - Google Patents

積層体およびその製造方法、並びに接着層付樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、硬化時の接着層の寸法安定性、および硬化後接着層の接着強度、耐熱性、屈曲性、電気絶縁性、低誘電率および低誘電正接に優れた積層体を提供する。
【解決手段】 本発明の積層体は、導電性パターン3と、導電性パターン3が担持された絶縁性を示す第一被接合層1と、硬化後接着層4を介して第一被接合層1と対向配置される第二被接合層2とを備え、第二被接合層2は、導電層または絶縁層であり、硬化後接着層4は、カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含有する熱硬化性接着剤の硬化物であり、第一被接合層1および前記絶縁層は、其々独立に、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムおよびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、硬化後接着層を介して接合された積層構造を有する電子部品用の積層体およびその製造方法、並びに接着層付樹脂フィルムに関する。
近年のエレクトロニクス分野の発展による電子機器の小型化、軽量化、高密度化に伴い、FPC(フレキシブルプリント配線板)やFFC(フレキシブルフラットケーブル)をはじめとする積層体の薄型化、多層化、高精細化がますます要求されている。従来のガラスエポキシ等に代表される肉厚のリジッド基板の場合、高度な屈曲性および接着性は求められておらず、また、狭スペース化に伴う絶縁部の高い電気絶縁性、低誘電率および低誘電正接は要求されていなかった。しかし、銅箔等により配線回路部を形成した絶縁性フィルム、カバーレイ層等が積層されたFPCなどの積層体においては、例えば部品実装工程に耐え得る耐熱性、加工性の他に、高度な屈曲性および接着性が求められている。更に、狭スペース化に伴って絶縁部の高い電気絶縁性が求められ、また、伝送特性に有利な低誘電率および低誘電正接を有する材料が求められている。
電子部品用の積層体のための材料の一種である、カバーレイ前駆体や、電子部品用の積層体の一種である、カバーレイ前駆体を用いてなる多層プリント配線板にも、同様の性能が求められ、接着層に関しても種々の提案がなされている。
カバーレイ前駆体とは、ポリイミドフィルム等の耐熱性樹脂フィルムにシート状の接着層を積層してなるものである。表面に導電性回路を有するプリント配線板にカバーレイ前駆体を貼り付け、前記接着層を硬化し、カバーレイ付きプリント配線板を形成する。
カバーレイ前駆体には使用前の形態安定性、使用する際の寸法安定性、導電性回路を有するプリント配線板への付着性、追従性等が求められる。そして、硬化後のカバーレイ付きプリント配線板には、耐熱性、接着強度、屈曲性、絶縁部の電気絶縁性、低誘電率および低誘電正接が求められる。
例えば、特許文献1には、(A)熱可塑性エラストマー、(B)2個の1級アミノ基を有するシロキサンジアミン、(C)不飽和N−置換マレイミド基を有する化合物、および(D)アミノ基、イミド基を有する変性シリコーン化合物を含む、熱硬化性接着剤組成物を接着剤として用いる多層プリント配線板が開示されている。そして、(A)熱可塑性エラストマーとしては、誘電特性の点から、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーが好適である旨が記載されている。また、熱硬化性樹脂であるアミノ基を有する変性シリコーン化合物単独で、もしくは他の熱硬化性樹脂と併用し、耐熱性、接着性、機械強度を向上させることができる旨が記載されている。
特許文献2には、カルボキシル基含有熱可塑性エラストマー、多官能イソシアネート、ポリオレフィンポリオール、および粘着付与剤を含有する接着性組成物が開示されている。
特許文献3には、比誘電率と誘電正接が低く、基材フィルム、導体配線との接着力が高い熱可塑性樹脂組成物を接着層として用いたフレキシブルフラットケーブル等の配線フィルムを提供することを課題として、水酸基含有のポリフェニレンエーテルポリマー(I)と、イソシアナート化合物(II)と、水素添加したスチレン系エラストマー(III)とを含有するか、または前記(I)と前記(II)との反応生成物(IV)および前記(III)を含有する、熱可塑性組成物が開示されている。
特許文献4には、ポリイミドに対し良好な接着強度を有し、且つ良好な高周波特性を有するエラストマー組成物を提供することを課題として、(A)スチレン系熱可塑性エラストマーと(B)エポキシ樹脂と、(C)両末端にスチレン基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーと、(D)液状ゴムとを含有するエラストマー組成物が開示されている。
なお、電子部品用の積層体に関する技術ではないが、特許文献5、6には、電池外装用積層体を形成するための接着剤として、スチレン系エラストマーとイソシアネートを有する化合物を含む接着剤組成物が、特許文献7、8には電池外装用積層体を形成するための接着剤組成物として、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)を用いた接着剤組成物が開示されている。
特開2014−24926号公報 国際公開第2004/041954号 特開2012−41372号公報 特開2015−131866号公報 特開2013−134823号公報 特開2014−185190号公報 特開2015−36385号公報 特開2016−35035号公報
電子部品用の積層体を形成する際、硬化途中の接着剤が接合対象物の間に均一に広がり、接合対象物の表面を十分濡らすことが重要であると共に、硬化途中の接着剤が接合対象物の間からはみ出して積層体全体を汚したり、積層体を製造するための機器を汚さないよう、硬化時の寸法安定性が重要となる。また、前記寸法安定性に加え、硬化後の耐熱性、接着性と低誘電正接の両立が可能な硬化後接着層が求められていた。しかし、硬化時の寸法安定性と硬化後の耐熱性、接着性と低誘電正接は両立が難しく、満足の得られる積層体が得られていなかった。特許文献1に開示される熱硬化性樹脂組成物に含まれるアミノ基を有する変性シリコーン化合物は熱硬化性樹脂であり、前記変性シリコーン化合物単独で、もしくは他の熱硬化性樹脂と併用し、耐熱性、接着性、機械強度を向上させることができる旨が記載されている。しかし、アミノ基とマレイミド化合物との反応生成物は耐熱性が低いという問題がある。また、特許文献2に開示される接着性組成物は、粘着付与剤を必須とするので、電子材料の分野で要求される耐熱性を発現できない。
特許文献3には、熱可塑性樹脂組成物を基材フィルムに塗工し、80℃で2分間乾燥して接着フィルムを得、銅箔等に前記接着フィルムの接着層を置き、100〜140℃程度、例えば120℃で1m/分の条件で積層する旨が記載されている。引用文献3には、水酸基含有のポリフェニレンエーテルポリマー(I)とイソシアナート化合物(II)との反応が示唆される。しかし、前記(I)中の水酸基はフェノール性水酸基であり、フェノール性水酸基とイソシアネート基との反応によるウレタン結合は、アルコール性水酸基とイソシアネート基との反応によるウレタン結合に比して、耐熱性に劣り分解しやすい。従って、熱可塑性樹脂組成物と記載されることからも支持されるように、引用文献3記載の組成物を、前記程度の加熱条件で加熱しても、半田耐熱性を発現できるほど充分な硬化・架橋は期待できない。
特許文献4は、前述の通り、(A)スチレン系熱可塑性エラストマーの利用を開示するが、熱可塑性と記載されることから支持されるように、前記(A)スチレン系エラストマーは熱硬化性の官能基を有しないことは明らかである。従って、特許文献4には、スチレン系エラストマーとしてカルボン酸の無水物基やカルボキシル基を有するものの利用は示唆されていない。さらに、エラストマー組成物で形成されたフィルムが成形性に優れることは期待できるが、半田耐熱性発現は期待できない。
また、特許文献5〜8に記載される接着剤組成物は電池外装材を形成するためのものであり、電池外装材を形成する際の反応条件は60℃程度でのエージングである。このような低温での反応では、充分な架橋構造を形成できないので、プリント配線板のような電子材料の分野で要求される耐熱性を発現できない。
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、硬化時の接着層の寸法安定性、および硬化後接着層の接着強度、耐熱性、屈曲性、電気絶縁性、低誘電率および低誘電正接に優れた積層体およびその製造方法、並びに接着層付樹脂フィルムを提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために鋭意検討の結果、以下の態様において本発明の課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
[1]: 導電性パターンと、前記導電性パターンが担持された絶縁性を示す第一被接合層と、硬化後接着層を介して前記第一被接合層と対向配置される第二被接合層と、を備え、前記第二被接合層は、導電層または絶縁層であり、前記硬化後接着層は、カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含有する熱硬化性接着剤の硬化物であり、前記第一被接合層および前記絶縁層は、其々独立に、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、およびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムである、電子部品用の積層体。
[2]: 前記硬化後接着層の誘電正接が0.005以下である、[1]に記載の積層体。
[3]: 前記熱硬化性接着剤は、シランカップリング剤およびチオール化合物の少なくとも一方を更に含有する、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]: 導電性パターンと、前記導電性パターンが担持された絶縁性を示す第一被接合層と、硬化後接着層を介して前記第一被接合層と対向配置される第二被接合層と、を備え、前記第二被接合層は、導電層または絶縁層である電子部品用の積層体の製造方法であって、
熱硬化性接着剤を用意し、当該熱硬化性接着剤を用いて硬化前接着層を形成する工程Aと、前記硬化前接着層を介して前記第一被接合層と前記第二被接合層を対向配置する工程Bと、工程Bの後、加熱により前記硬化前接着層の硬化物である硬化後接着層を得る工程Cと、を有し、
工程Aは、(i)剥離性シート上に前記熱硬化性接着剤を塗工して剥離性シート付硬化前接着層を形成する工程、および(ii)前記第一被接合層または前記第二被接合層のいずれかの主面に前記熱硬化性接着剤を塗工して硬化前接着層付被接合層を得る工程、のいずれか一方を含み、前記熱硬化性接着剤は、カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含有し、前記第一被接合層および前記絶縁層は、其々独立に、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、およびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムである、電子部品用の積層体の製造方法。
[5]: 前記硬化後接着層の誘電正接が0.005以下である、[4]に記載の積層体の製造方法。
[6]: 前記熱硬化性接着剤は、シランカップリング剤およびチオール化合物の少なくとも一方を更に含有する、[4]または[5]に記載の積層体の製造方法。
[7]: 前記硬化前接着層の硬化温度を120〜240℃とする、[4]〜[6]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[8]: ポリイミドフィルム、液晶ポリマーのフィルム、およびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンのフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムと、カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含む熱硬化性の硬化前接着層と、が積層された接着層付樹脂フィルム。
[9]: 前記硬化前接着層が、シランカップリング剤およびチオール化合物の少なくとも一方を更に含有する、[8]記載の接着層付樹脂フィルム。
本発明によれば、硬化時の接着層の寸法安定性、および硬化後接着層の接着性、耐熱性、屈曲性、電気絶縁性、低誘電率および低誘電正接に優れた積層体およびその製造方法、並びに接着層付樹脂フィルムを提供することができるという優れた効果を奏する。
第1実施形態に係る積層体の模式的断面図である。 第1実施形態に係る硬化前の接着層付樹脂フィルムの模式的断面図である。 第2実施形態に係る積層体の模式的断面図である。 第3実施形態に係る積層体の模式的断面図である。 第4実施形態に係る積層体の模式的断面図である。 第5実施形態に係る積層体の模式的断面図である。 第6実施形態に係る積層体の模式的断面図である。 変形例および実施例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例および実施例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 変形例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。 実施例に係る積層体の模式的断面図である。
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる値である。また、本明細書で特定する数値「A〜B」とは、数値Aと数値Aより大きい値であって、且つ数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲を示す。また、本明細書における「フィルム」とは、JISにおいて定義される「フィルム」のみならず、「シート」も含むものとする。説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。また、同一の要素部材は、異なる実施形態においても同一符号で示す。本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、其々独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
[第1実施形態]
図1に、第1実施形態の積層体の模式的断面図を示す。積層体101は、導電性パターン3が形成された絶縁性の第一被接合層1と、導電層または絶縁層である第二被接合層2が硬化後接着層4を介して接合された積層構造11を有する。同図に示すように、硬化後接着層4の一主面が第一被接合層1と導電性パターン3の露出面を被覆して接合され、且つ硬化後接着層4の他主面が第二被接合層2と接合されている。積層体101には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、第一被接合層1の下層または/および第二被接合層2の上層に、導電性パターンが形成されていてもよい任意の層が更に積層されていてもよい。また、第一被接合層1および第二被接合層2を含む積層体を構成する各層は、必要に応じてビア等が形成され、一部に特性の異なる部位を有していてもよい。なお、第一被接合層1と第二被接合層2の積層順(上層および下層)は任意であり、図1とは逆に第二被接合層が下層側に配置されていてもよい。
導電性パターン3の機能や形状は特に限定されないが、例えば、回路内配線、電極、キャパシタ、グランドパターン、配線ケーブルの配線が挙げられる。導電性パターン3の材料は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、モリブテン、タングステン、ニッケル、ステンレス、鉄、亜鉛、ベリリウム、ジルコニウム、タンタル、マグネシウム、マンガン等の金属およびこれらの合金、或いは炭素ナノチューブ、導電性高分子物質のいずれか1つ以上の導電性物質が挙げられる。
導電性パターン3の形成は公知の方法により形成できる。例えば、第一被接合層1上に設けられた銅箔のような導電性物質を所望の形状にエッチングすることにより形成できる。あるいは、銀粉のような導電性物質を含有する導電性インキを第一被接合層1上に所望のパターンに印刷することにより形成できる。
第二被接合層2は、前述したとおり導電層および絶縁層から選択される層であるが、第1実施形態では第二被接合層2を絶縁層とした場合の一例について説明する。絶縁性を示す第一被接合層1および絶縁層である第二被接合層2は、耐熱性を示す樹脂フィルムであり、其々独立に、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムおよびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選ばれる。即ち、第一被接合層1と第二被接合層2とで、任意のフィルムを選択できる。また、同一種類のフィルムを選択する場合、同一組成のフィルムである必要はなく、用途や目的に応じて用いる樹脂や添加剤の組成を変更できる。
積層体101は、電子部品全般に用いることができる。例えば、第一被接合層1は絶縁性のベースフィルム、導電性パターン3は、グランド配線やチップに電気信号を伝送する配線回路を含む信号配線、電極または/およびグランドパターンであり、第二被接合層2をカバーレイ層としたカバーレイ付きFPCが例示できる。また、第一被接合層1および第二被接合層2を絶縁性フィルムとし、導電性パターン3をケーブル配線としたFFCが挙げられる。
硬化後接着層4は、熱硬化性接着剤の硬化前の接着層(以下、硬化前接着層という)を硬化処理することにより得られる。硬化処理は、通常、加熱工程または加熱圧着工程により行われる。以下、熱硬化性接着剤について詳述する。
(熱硬化性接着剤)
熱硬化性接着剤は、必須成分としてカルボン酸の無水物基(以下、酸無水物基と略すこともある)を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分を含有する。熱硬化性接着剤から硬化前接着層を形成し、硬化処理を行うことにより、熱硬化性接着剤の硬化物である硬化後接着層が得られる。
<カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマー>
本明細書において「エラストマー」とは、加硫処理を行わなくても、常温でゴム弾性を有するポリマーを指す。化学構造的にはABA型のブロックまたは(A−B)n型のマルチブロック構造を有するものが一般的である。また、スチレン系エラストマーとは、ポリスチレンを有するブロック(以下、ポリスチレンブロックともいう)を有する共重合体をいう。
優れた耐熱性を実現するために、ポリスチレン構造を分子中に有しているスチレン系エラストマーを用いる必要がある。具体例としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
なお、これらスチレン系エラストマーにおいて、ポリスチレンブロック以外の部分は、まとめて1つのブロックと捉える。また、ポリスチレンブロック以外の部分のうち、2つ以上のモノマー由来の単位(残基)から形成されるブロックとして、上記の例では、エチレンとプロピレンとからなる共重合体や、エチレンとブチレンとからなる共重合体が例示できる。このようなポリスチレンブロック以外の2つ以上のモノマー由来の単位から形成されるブロックは、ランダム共重合体でもブロック共重合でもよい。
スチレン系エラストマーは、カルボン酸の無水物基を有することが重要である。スチレン系エラストマー中の酸無水物基と後述するポリイソシアネート成分とを反応させることにより、耐熱性に優れるとともに、誘電率や誘電正接を低く抑える機能を担うイミド基を形成できる。
イミド基は、酸無水物基とアミノ基との反応によっても形成できるが、以下の点で好ましくない。酸無水物基とアミノ基との第一段階目の反応、即ち、アミノ基による酸無水物基の開環反応は極めて速いので、熱硬化性接着剤としての可使時間が短くなるという問題がある。
酸無水物基とアミノ基との第二段階目の反応、即ち、アミック酸の閉環によるイミド基の生成反応は、酸無水物基とイソシアネート基との反応によるイミド基生成反応に比して高温加熱を要する。加熱が不充分だと、イミド基の前駆体であるアミック酸が残り、誘電率や誘電正接が高くなる。また、アミック酸が残っていると、カバーレイ付きプリント配線板等の積層体101を半田浴または半田リフロー炉に入れた際に、水の脱離を伴うイミド化反応が爆発的に進行し、発泡を生じたりする。
なお、カルボン酸の無水物基とイソシアネート基とを加熱すると、どのような反応工程を経るか、その詳細はまだ明確ではない。しかし、150〜200℃程度で加熱硬化すると、耐熱性および絶縁性が向上し、誘電率や誘電正接が低くなるとともに、カルボン酸の無水物基とアミノ基との反応(上記第一段階および第二段階)の場合と同様に赤外線吸収スペクトルにおいて1700cm−2付近に新たなピークが観察されることから、イミド基が形成されたものと考察している。
スチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分との硬化物の誘電正接は、周波数5GHz、温度23℃において0.005以下であることが好ましく、0.003以下であることがより好ましく、0.001以下であることが更に好ましく、0.0005以下であることがなお好ましい。誘電正接は低ければ低いほど好ましいが、現実的には0.0001程度まで低くすることが最も好ましい。比誘電率は、周波数5GHz、温度23℃において2.0〜3.0の範囲であることが好ましい。
スチレン系エラストマーへの酸無水物基の導入方法は、スチレン系エラストマーを製造するための原料の1つとして酸無水物基を有するモノマーを他の原料と重合する方法、ポリマー合成後に側鎖に酸無水物基を導入する方法、グラフト化反応させる方法が例示できる。例えば、適量の無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸の無水物を共重合させる方法、スチレン系エラストマーを合成した後に、適量の無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸の無水物と過酸化物を用いてグラフト化反応させる方法が挙げられる。また、酸無水物の代わりに、適量のマレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸を用いることもできる。この場合は、カルボン酸導入後に少なくとも一部が無水物基となるようにする。
酸無水物基を有するスチレン系エラストマーは、エチレン性不飽和カルボン酸の無水物を除く100質量%中に、ポリスチレンブロックが5〜60質量%含まれることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%、更に好ましくは20〜40質量%である。ポリスチレンブロックが5質量%以上であることにより、粘弾性に優れる硬化物が得られ、ポリスチレンブロックが60質量%以下であることにより、溶剤への溶解性が良くなり、熱硬化性接着剤の溶液安定性が優れる。
酸無水物基を有するスチレン系エラストマーの酸無水物基価は、0.1〜40mgCHON/gであることが好ましく、より好ましくは1〜30mgCHON/g、更に好ましくは5〜20mgCHON/gである。酸無水物基価が0.1mgCHON/g以上の酸無水物基を有するスチレン系エラストマーを用いることにより、接着性を向上でき、耐熱性および絶縁性が向上する。酸無水物基価が40mgCHON/g以下の酸無水物基を有するスチレン系エラストマーを用いることにより、高周波電気信号が伝播するプリント配線板に必要な低誘電率を発現できる。
なお、酸無水物基を有するスチレン系エラストマー中の酸無水物基の一部が水やアルコールやアミンなどで開環され、カルボン酸の状態となっているものも、酸無水物基を有するスチレン系エラストマーとして使用できる。酸無水物基の一部が開環し、カルボン酸となっていることによって、後述する導電性回路への接着強度の向上が期待できる。しかし、酸無水物基の全てが開環し、カルボン酸となっているものを用いると、後述するポリイソシアネート成分との反応によりイミド基ではなくアミド基を生成することとなり、誘電正接が大きくなる。
酸無水物と開環しているカルボン酸の割合は、モル比で酸無水物:カルボン酸=100〜50:0〜50であることが好ましく、より好ましくは100〜75:0〜25である、更に好ましくは100〜85:0〜15である。
酸無水物基と開環しているカルボン酸の割合は、以下の方法により求めることができる。即ち、スチレン系エラストマー1gを中和するために要するナトリウムメトキシドの量(mg)を求め、これを全酸価とする。全酸価をナトリウムメトキシドの分子量で除することにより、スチレン系エラストマー1gに含まれるカルボン酸の量:X(mmol)を求める。全酸価にはスチレン系エラストマー1gに含まれている酸無水物基を酸価測定時に開環させたカルボン酸および酸価測定時には既に開環していたカルボン酸の両方が含まれる。
別途、酸無水物基価を、スチレン系エラストマー1gを中和するために要する過塩素酸の量(mmol)を求め、これをナトリウムメトキシドの量(mg)に換算し、酸無水物基価とする。酸無水物基価をナトリウムメトキシドの分子量で除することにより、スチレン系エラストマー1gに含まれる酸無水物基の量:Y(mmol)を求めることができる。
酸無水物基1モルが開環するとカルボン酸2モルとなるので、スチレン系エラストマー1gに含まれており、酸価測定時には既に開環していたカルボン酸の量をZ(mmol)とすると、
Z=X−2Y となる。
つまり、スチレン系エラストマーに含まれる酸無水物と開環しているカルボン酸の割合は、
Y:Z=Y:(X−2Y)となる。
なお、全酸価の基準であるナトリウムメトキシドの分子量と、酸無水物基価の基準である水酸化カリウムの分子量とは値が近い。そこで、全酸価をX’、酸無水物基価をY’、酸価測定時には既に開環していたカルボン酸由来の酸価をZ’とすると、
簡易的には、
Z’=X’−2Y’とすることができ、
スチレン系エラストマーに含まれる酸無水物と開環しているカルボン酸の割合は、
Y’:Z’=Y’:(X’−2Y’)とできる。
酸無水物基を有するスチレン系エラストマーは、質量平均均分子量が5,000〜1,000,000程度のものが好ましく、10,000〜500,000のものがより好ましく、25,000〜200,000のものがより好ましく、25,000〜100,000のものがより好ましい。
酸無水物基を有するスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成社製のタフテックMシリーズや、クレイトンポリマージャパン社製のクレイトンFGシリーズ等が挙げられる。これは単独または2種以上を併用して用いられる。
<ポリイソシアネート成分>
ポリイソシアネート成分は、2個以上のイソシアネートを有すイソシアネート基含有化合物であり、この成分と前述のスチレン系エラストマーとの反応により、耐熱性および絶縁性に優れ、誘電率や誘電正接の低い硬化物を得ることができる。更に、接着性も付与することができる。イソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく、特に限定されない。
1分子中にイソシアネート基を2個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、等の芳香族ジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、
ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート、
3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート[別名:イソホロンジイソシアネート]、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
また、1分子中にイソシアネート基を3個有するイソシアネート基含有化合物としては、具体的には、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン等の芳香族ポリイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられ、前記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の少なくとも一部がブロック化剤によりブロックされているブロック化イソシアネートを用いてもよい。具体例としては、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基を、ε−カプロラクタム、MEK(メチルエチルケトン)オキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックしたもの等が挙げられる。特に、イソシアヌレート環を有し、MEKオキシムやピラゾールでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート三量体の使用は、ポリイミドや銅に対する接着強度を高め、且つ耐熱性に優れるため、非常に好ましい。
酸無水物基を有するスチレン系エラストマー中の酸無水物基1molに対するポリイソシアネート成分のイソシアネート基の含有量は、0.1〜20molの範囲が好ましく、0.5〜10molの範囲がより好ましく、1〜3molの範囲が更に好ましい。スチレン系エラストマー中の酸無水物基に対し、イソシアネート基の含有量を0.1mol以上とすることにより、架橋密度を増加させ、耐熱性、絶縁性、接着性を向上できる。イソシアネート基の含有量を20mol以下とすることにより、新たな極性基の生成を抑制し、誘電正接の悪化を抑制できる。
<シランカップリング剤、チオール化合物>
熱硬化性接着剤には、物性を損なわない範囲で、シランカップリング剤または/およびチオール化合物を含有させることができる。シランカップリング剤または/およびチオール化合物を、例えばスチレン系エラストマーと反応させることにより、耐熱性および絶縁性に優れ、誘電率や誘電正接の低い硬化物を得ることができる。更に、接着性も付与することができる。また、シランカップリング剤、チオール化合物を用いることにより、銅に代表される導電性パターン、導電層および樹脂フィルムに対する接着性を向上できる。また、誘電率や誘電正接を悪化させず、加湿後の半田耐熱性、プリント配線板を折りたたむ際の屈曲性、電気絶縁性も向上できる。
シランカップリング剤としては、N,SもしくはOを有するシランカップリング剤および/またはその加水分解縮合物が挙げられる。例えばビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、1,2−エタンジアミン,N−{3−(トリメトキシシリル)プロピル}−,N−{(エテニルフェニル)メチル}誘導体・塩酸塩、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシランに加え、官能基がアルコキシ基で保護されたシランカップリング剤や、スルフィド・ポリスルフィド系のシランカップリング剤、ポリマー型のアルコキシオリゴマータイプや多官能基タイプシランカップリング剤などを用いることができる。
チオール化合物は、例えば、チオール基と、直鎖または枝分かれの鎖状炭化水素基または環式の炭化水素基とを少なくとも含有する。チオール基を2つ以上含有してもよい。炭化水素基は飽和でもよく、不飽和でもよい。炭化水素基の水素原子の一部が水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシシリル基などで置換されていてもよい。無色のチオール類の一例として、1−プロパンチオール、3−メルカプトプロピオン酸、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、イソブチルメルカプタン、イソアミルメルカプタン、シクロペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、シクロヘキサンチオール、6−ヒドロキシ−1−ヘキサンチオール、6−アミノ−1−ヘキサンチオール塩酸塩、1−ヘプタンチオール、7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール、7−アミド−1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、tert−オクタンチオール、8−ヒドロキシ−1−オクタンチオール、8−アミノ−1−オクタンチオール塩酸塩、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、10−カルボキシ−1−デカンチオール、10−アミド−1−デカンチオール、1−ナフタレンチオール、2−ナフタレンチオール、1−ウンデカンチオール、11−アミノ−1−ウンデカンチオール塩酸塩、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、16−ヒドロキシ−1−ヘキサデカンチオール、16−アミノ−1−ヘキサデカンチオール塩酸塩、1−オクタデカンチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。チオール類は1種または2種以上を併用できる。
熱硬化性接着剤に含まれるシランカップリング剤または/およびチオール化合物の量は、特に限定されないが、酸無水物基を有するスチレン系エラストマーの固形分100質量部に対して、合計で0.01〜50質量部含有することが好ましく、0.1〜25質量部含有することが更に好ましく、1〜15質量部含有することが更に好ましい。
チオール化合物やシランカップリング剤(硫黄原子を含まない)を含むことにより、積層体の硬化前接着層を硬化する際に、寸法安定性の向上、硬化物としての加湿後の耐熱性の向上に加え、接着性と低誘電率の両立、屈曲性と電気絶縁性の両立という二律背反し易い性能をよりバランスよく向上させることができる。
<フィラー>
熱硬化性接着剤には、難燃性の付与、接着剤の流動性制御、硬化物の弾性率向上等の目的で、更にフィラーを添加することができる。フィラーとしては、特に限定されないが、形状としては球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等が挙げられる。
例えば、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ポリエチレン粉末、ポリアクリル酸エステル粉末、エポキシ樹脂粉末、ポリアミド粉末、ポリウレタン粉末、ポリシロキサンン粉末等の他、シリコーン、アクリル、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム等を用いた多層構造のコアシェル等の高分子フィラー;
リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート等の(ポリ)リン酸塩系化合物、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチルエチルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、メチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ポリエチレンホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、ホスホルアミド化合物等のリン系難燃フィラー;
ベンゾグアナミン、メラミン、メラム、メレム、メロン、メラミンシアヌレート、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃フィラー;
シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ガラスフレーク、水和ガラス、チタン酸カルシウム、セピオライト、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等の無機フィラー等が挙げられる。
近年取り沙汰されている環境への影響を配慮すると、リン系難燃フィラーまたは窒素系難燃フィラー等のノンハロゲン系難燃剤を使用することが望ましい。中でも、本実施形態に係る熱硬化性接着剤との併用により、難燃性により効果のあるフィラーとして、ホスファゼン化合物、ホスフィン化合物、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、メラミンシアヌレートまたは水酸化化合物物等が例示できる。また、誘電率や誘電正接を更に低下させる点では、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ホスフィン化合物の使用が好ましく、誘電特性のみならず接着性、屈曲性、電気絶縁性、耐熱性とのバランスに優れた硬化物を得ることができるようになる。フィラーは、単独又は複数を併用して用いられる。
フィラーの平均粒子径は、0.1〜25μmであることが好ましい。0.1μmに近い平均粒子径を示すフィラーを用いた場合、フィラーによる改質効果が得やすく、更に分散性や分散液の安定性が向上しやすい。また、25μmに近い平均粒子径を示すフィラーを用いた場合、硬化物の機械特性が向上しやすくなる。
フィラーの合計の含有量は、酸無水物基を有するスチレン系エラストマー100質量部に対して0.01〜500質量部であることが好ましい。フィラーによる改質効果と、硬化物の機械的特性の点から、フィラー含有量は上記範囲にあることが好ましい。
フィラーの添加方法は、従来公知の方法を制限なく利用できる。例えば、フィラーを含む分散液を用意し、酸無水物基を有するスチレン系エラストマーの重合前、重合途中、または重合後の反応液にフィラーを含む分散液を3本ロールなどにより混錬する方法がある。また、フィラーを良好に分散させ、且つ分散状態を安定化させるために、分散剤または/および増粘剤等を接着シート物性に影響を及ぼさない範囲で用いてもよい。
<その他の成分>
熱硬化性接着剤には、必須成分および上述した任意成分の他に、目的を損なわない範囲で更に、エポキシ基含有化合物、オキセタン基含有化合物、アジリジン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物を加えることができる。また、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオン捕集剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤などを含むことができる。
エポキシ基含有化合物は、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ樹脂、グリジシルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂または環状脂肪族(脂環型)エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α−ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、又はテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等が挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、トリグリシジルメタアミノフェノール、又はテトラグリシジルメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
オキセタン基含有化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド基含有化合物、ベンゾオキサジン化合物、β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物についての例示は省略するが、公知のものを適宜選択して使用できる。
(樹脂フィルム)
樹脂フィルムは、上述した通り、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムおよびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選択される耐熱性を有するフィルムである。樹脂フィルムの厚みは用途に応じて任意に設計できるが、1〜200μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。積層体の絶縁性向上の観点から、樹脂フィルムは厚いことが好ましい。
なお、樹脂フィルムの厚みは、厚い方が薄い場合よりも硬化後の接着強度が大きくなることがある。導電性パターンが担持された第一被接合層と第二被接合層との間に硬化前接着層を挟み、加熱加圧する際、樹脂フィルムの厚い場合には、硬化前接着層が導電性パターンや両被接合層に強固に投錨するのではないかと考えている。
<ポリイミドフィルム>
ポリイミドの構造は特に限定されないが、酸二無水物、ジアミン、中でも芳香族酸二無水物、芳香族ジアミンから合成されるポリイミドを含む組成物からなるフィルムが耐熱性および耐薬品性の観点から好ましい。ポリイミドフィルムの好適な製品としては、東レデュポン社製のカプトンシリーズ、宇部興産社製のユーピレックスシリーズ、荒川化学社製のアピカルシリーズ、低誘電ポリイミド等が挙げられる。
<液晶ポリマーフィルム>
液晶ポリマーフィルムは、電子部品用途に用いる耐熱性を有する材料であればよく特に限定されないが、好ましい構造として、パラヒドロキシ安息香酸などを基本骨格とした全芳香族ポリエステル構造が例示できる。液晶ポリマーのフィルムの製品としては、プライマテック社のBIACシリーズ、STABIAXシリーズ、クラレ社のベクスターシリーズ等が挙げられる。液晶ポリマーフィルムの膜厚は、用途により適宜設計し得るが、好ましくは25〜175μmである。
<ガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルム>
ガラス転移温度(以下、Tgという)が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンのフィルムとは、フィルムを測定したときのガラス転移温度が100〜400℃である脂環式ポリオレフィンを含むフィルムをいう。脂環式ポリオレフィンの物性に影響を与えない範囲で、他の樹脂や添加剤を加えてもよい。脂環式ポリオレフィンの構造は任意に設計可能であるが、好適な例としてシクロヘキサン環または/およびシクロペンタン環を有する樹脂が例示できる。脂環式ポリオレフィンフィルムの好適な製品としては、ポリプラスチックス社のTOPASシリーズ、昭和電工社の耐熱透明フィルムシリーズ、ゼオノアシリーズ(日本ゼオン社製 厚さ100μm)、アートンシリーズ(JSR社製 厚さ100μm)などが挙げられる。フィルムのガラス転移温度を100℃以上とすることにより、耐熱性の優れた積層体が得られる。
ここでTgの測定方法を定義する。本明細書ではTgとして、温度を変化させたときの動的粘弾性測定により測定した貯蔵弾性率曲線の極大値として定義する。具体的には動的粘弾性測定装置(Dynamic Viscoelastic Analyzer)を用い、一定の大きさに切り出した脂環式ポリオレフィンのフィルムの両端を掴んだ状態で引っ張り荷重10Paを与え、10℃/分の条件で昇温し、前記フィルムの変位を計測して貯蔵弾性率を求める。
ところで、従来技術においては耐熱性の問題の他に、以下のような問題もある。例えば、上記特許文献1においては、アミノ基を有するシロキサンジアミンを必須成分とするが、アミノ基は反応性に富むので、熱硬化性樹脂組成物の可使時間が短くなるという問題がある。また、特許文献1の実施例に具体的に記載される芳香環含有のアミノ化合物は溶剤に溶けないので、使いにくいという難点もある。また、上記特許文献4記載の発明では、(B)エポキシ樹脂としては液状のものが好ましいことが記載されており、また、(D)液状ゴムを必須成分とするので、これらの液状成分のブリードが懸念される。
一方、第1実施形態に係る積層体には前記のような懸念がない。また、第1実施形態に係る積層体に用いた硬化後接着層によれば、樹脂中のスチレンブロックの凝集構造により、接着強度を向上させることができる。また、添加剤であるチオール化合物やシランカップリング剤による密着成分によって、より効果的に接着強度を向上させることができる。また、第1実施形態に係る積層体によれば、特に、両立が難しかった硬化後の耐熱性と低誘電正接の両立が可能となり、硬化時の寸法安定性と硬化後の耐熱性、接着性と低誘電正接を兼ね備えることができる。即ち、接着性および耐熱性に優れ、且つ硬化時の接着層の寸法安定性、および硬化後接着層の電気絶縁性、屈折性、低誘電率および低誘電正接に優れた積層体を提供できる。
(積層体の製造方法)
第1実施形態に係る電子部品の積層体の製造方法の一例について説明する。但し、本発明の積層体は、以下の製法に限定されるものではなく、種々の方法により製造できる。
第1実施形態に係る積層体の製造方法は、以下の工程を有する。即ち、熱硬化性接着剤を用意し、当該熱硬化性接着剤を用いて硬化前接着層を形成する工程Aと、硬化前接着層を介して第一被接合層1と第二被接合層2を対向配置する工程Bと、工程Bの後、加熱により硬化前接着層の硬化物である硬化後接着層4を得る工程Cを含む。
工程Aは、熱硬化性接着剤を剥離性シート上に塗工する方法(i)と、第一被接合層または第二被接合層のいずれかに直接塗工する方法(ii)とがある。(i)の場合、剥離性シートの片面に、溶液または分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布し、通常40〜120℃未満で乾燥することにより、いわゆるBステージ状態の剥離性シート付硬化前接着層を形成する。なお、塗膜が得られればよく、乾燥工程は必須ではない。また、Bステージ状態にすることは必須ではなく、未硬化の硬化前接着層を用いてもよい。硬化前接着層の膜厚は、充分な接着性、半田耐熱性を発揮させる為、また取り扱い易さの点から、5〜500μmであることが好ましく、更に好ましくは10〜100μmである。
剥離性シートとしては、剥離処理した各種プラスチックフィルムや紙が例示できる。前記各種プラスチックフィルムの一例として、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルムが挙げられる。塗布方法としては、例えば、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、カーテンコート、バーコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等が挙げられる。
次に、第一被接合層1、第二被接合層2を用意する。第一被接合層1に導電性回路等の導電性パターン3を設ける方法としては、例えば以下の方法がある。まず、接着層を介してまたは介さずにベースフィルムである第一被接合層上に銅箔を設けてなるフレキシブル銅張板を作製する。そして、その銅箔上に感光性エッチングレジスト層を形成し、回路パターン(導電性パターン)を持つマスクフィルムを通して露光させて、露光部のみを硬化させる。次いで未露光部の銅箔をエッチングにより除去した後、残っているレジスト層を剥離するなどして、銅箔から導電性回路を形成する。或いは、ベースフィルム上にスパッタリングやメッキ等の手段で必要な回路のみを設ける方法がある。また、銀や銅の粒子を含有する導電性インキを用い、プリント技術によってベースフィルム上に導電性回路を形成する方法がある。更に、導電性インキを用いて設けた導電層にレーザーを照射し、不要部分を除去して導電性回路を形成する方法も挙げられる。
次いで、工程Bにおいて、例えば第二被接合層2と硬化前接着層が接合するように仮接着する。次いで剥離シートを剥離し、露出した硬化前接着層の他の主面と第一被接合層1とを重ねる。硬化前接着層と先に接合する被接合層は、前記とは逆に第一被接合層1としてもよい。工程Cは、加熱処理または加熱・加圧により硬化前接着層を硬化後接着層に変換し、第一被接合層1と第二被接合層2を硬化後接着層4により接合する。
前記(ii)の場合、導電性パターン3が形成された側の第一被接合層1上または第二被接合層2上のいずれかに、溶液または分散液状態の熱硬化性接着剤を塗布する。そして、通常40〜120℃未満で乾燥することにより、いわゆるBステージ状態または未硬化の硬化前接着層を形成する。好ましい膜厚、条件等は、前記(i)と同様である。
次いで、工程Bにおいて第一被接合層1、硬化前接着層、第二被接合層2の積層構造となるように積層し、工程Cにおいて加熱処理または加熱・加圧処理により硬化前接着層を硬化物である硬化後接着層に変換し、第一被接合層1と第二被接合層2を硬化後接着層4により接合する。工程Cの硬化処理温度は、例えば120℃以上、240℃以下の温度が好ましく、150以上、200℃以下程度の温度で硬化することが好ましい。240℃を超えるような高温で貼り付けて硬化した場合、硬化前接着層が酸化して硬脆くなり、接着強度にも悪影響を及ぼす可能性がある。
上記工程を経て、第一被接合層1と第二被接合層2が硬化後接着層4を介して積層されてなる積層体101が製造される。(ii)において、図2に示すような硬化前接着層付接合層の一例である接着層付樹脂フィルムが好適に得られる。接着層付樹脂フィルム50は、同図に示すように、前述した樹脂フィルム8(即ち、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーのフィルムおよびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンのフィルムからなる群より選ばれるフィルム)と、硬化前接着層5の少なくとも2層により構成される。樹脂フィルムは、使用直前まで、硬化前接着層5の上層に保護層(不図示)を積層しておいてもよい。
ところで、一般に、電池外層用包装材は、Bステージ状態の硬化前接着層を2つの被着体間に挟み、ごく短時間、瞬間的に高温のロール間を通過させた後、40〜80℃程度の大気圧環境下に数日〜2週間程度置き、硬化前接着層の硬化を進行(エージング)させて得られる。しかし、40〜80℃程度では、イミド基の生成は確認できず、プリント配線板に求められる耐熱性を満足できない。
一方、カバーレイ付プリント配線板等の積層体は、一般に加熱しつつ、1〜数MPaの圧力をかけて、カバーレイをプリント配線板の回路面に貼り付けた後、更に同程度の温度、大気圧環境下、窒素雰囲気下または不活性雰囲気下にて硬化前接着層を硬化させて得られる。好適な硬化温度は、120℃以上、240℃以下である。
第1実施形態の方法によれば、例えば、導電性回路を有するプリント配線板(導電性パターン付第一被接合層)の回路面が、硬化後接着層を介してカバーレイ(第二被接合層)で保護されてなる、カバーレイ付プリント配線板が得られる。
[第2実施形態]
次に、第1実施形態とは異なる電子部品用の積層体の一例について説明する。第2実施形態に係る積層体は、以下の点を除き第1実施形態の積層体と同様の構成を有し、同様の製法により得られる。即ち、第2実施形態では、第二被接合層として導電層を用いている点において、絶縁層を用いた第1実施形態と相違している。なお、以降の説明において同一の要素部材は、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
図3に、第2実施形態に係る積層体の模式的断面図を示す。積層体102は、導電性パターン3が形成された絶縁性の第一被接合層1、硬化後接着層4、導電層からなる第二被接合層2aがこの順に積層された積層構造12を有する。導電層は、金属箔、導電性樹脂層、導電性フィラーとバインダー樹脂を含む等方導電層および異方導電層が例示できる。
導電層からなる第二被接合層2aは、第一被接合層1に設けられたグランドパターン等の導電性パターン3と硬化後接着層4に設けられたビア(不図示)を介して電気的に接続されていてもよい。導電層を電磁波シールドシートとして利用したり、放電性シートとして利用できる。
第2実施形態に係る積層体によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る電子部品用の積層体は、以下の点を除き第1実施形態の積層体と同様の構成を有し、同様の製法により得られる。即ち、第3実施形態では、第二被接合層として導電性パターンを有する耐熱性絶縁フィルムを用いている点において、導電性パターンを有しない樹脂フィルムを用いた第1実施形態と相違している。第3実施形態においては、硬化後接着層を層間絶縁膜として利用している。
図4に、第3実施形態に係る電子部品用の積層体の模式的断面図を示す。積層体103は、導電性パターン3が形成された絶縁性の第一被接合層1、硬化後接着層4、導電性パターン3が形成された絶縁性の第二被接合層2bがこの順に積層された積層構造13を有する。硬化後接着層4は、層間絶縁膜として機能し、導電性パターンが少なくとも2層形成されている。図4の例においては、第一被接合層1の導電性パターン3と第二被接合層2bの導電性パターン3とが硬化後接着層4を介して互いに対向配置されている例を示しているが、各導電性パターンの配置や形状は任意である。硬化後接着層4を介して互いに直交する配線が形成されていてもよい。第3実施形態に係る積層体によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態に係る電子部品用の積層体は、以下の点を除き第1実施形態の積層体と同様の構成を有し、同様の製法により得られる。即ち、第4実施形態では、図5に示すように第一被接合層1の導電性パターン3が、硬化後接着層4との接合側主面に形成されている点において、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されていた第1実施形態と相違している。第4実施形態に係る積層体104は、導電性パターン3が、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されている第一被接合層1、硬化後接着層4、第二被接合層2の積層構造14を有する。第4実施形態に係る積層体によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第5実施形態]
第5実施形態に係る電子部品用の積層体は、以下の点を除き第2実施形態の積層体と同様の構成を有し、同様の製法により得られる。即ち、第5実施形態では、図6に示すように第一被接合層の導電性パターン3が、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されている点において、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されていた第2実施形態と相違している。第5実施形態に係る積層体105は、導電性パターン3が、硬化後接着層4との接合側主面に形成されている第一被接合層1、硬化後接着層4、導電層である第二被接合層2aの積層構造15を有する。第5実施形態に係る積層体によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第6実施形態]
第6実施形態に係る電子部品用の積層体は、以下の点を除き第3実施形態の積層体と同様の構成を有し、同様の製法により得られる。即ち、第6実施形態では、図7に示すように第一被接合層1の導電性パターン3が、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されている点において、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されていた第3実施形態と相違している。第6実施形態に係る積層体106は、導電性パターン3が、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されている第一被接合層1、硬化後接着層4、第二被接合層2bの積層構造16を有する。第6実施形態に係る積層体によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
[変形例]
積層体は、以下のような積層単位が更に積層されていてもよい。即ち、図8に示すような導電層7と樹脂フィルム8が硬化後接着層4を介して接合された積層構造17、図9に示すような導電性パターンを有しない樹脂フィルム8、硬化後接着層4および導電性パターンを有しない樹脂フィルム8とをこの順に積層した積層構造18、図10に示すような導電層7、硬化後接着層4および導電層7がこの順で積層された積層構造19が例示できる。各積層構造の導電層、樹脂フィルムの好適な例は、其々第1実施形態で説明したとおりである。図9の2層の樹脂フィルムは、同一種類でも異なる種類のフィルムでもよい。図10の2層の導電層においても同様である。
図11は、積層構造11、17を含む電子部品用の積層体107であり、図12は積層構造11、18を含む積層体108であり、図13は積層構造12,14を含む積層体109であり、図14は積層構造12、17を含む積層体110である。また、図15は積層構造12、18を含む積層体111であり、図16は積層構造11,15を含む積層体112であり、図17は積層構造13、18を含む積層体113である。これらの積層体は、共通に用いられる層がある。図11の例では、真ん中に形成されている層が共通層となっている。つまり、積層構造17の樹脂フィルム8と積層構造11の第一被接合層1は、同一の層により構成されている。係る層は、図中の下層側にある層の符号をまず付し、上層側にある層を括弧内に付す(以下同様)。
図18は積層構造11の第二被接合層2上に電磁波シールドシート9が積層された積層体114である。電磁波シールドシート9は、例えば、異方導電性接着層、金属層、保護絶縁層の積層体からなる。電磁波シールドシート9を積層することにより、FPCやFFCの伝送特性を向上させることができる。
図19は、積層構造11、12が硬化後接着層4を介して接合されている積層体115である。積層体115は、同図に示すように積層構造11、12、17を有している。図20は、積層構造11を有する積層体116である。積層体116は、一つ目の積層構造11の第二被接合層2と2つ目の積層構造の第一被接合層1とが同一層により形成された例である。図21は、積層構造11、13が硬化後接着層4を介して接合された積層体117である。積層体117は、同図に示すように、積層構造11,13、18を有している。
以下に、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における、「部」および「%」は、「質量部」および「質量%」を其々表し、Mwは質量平均分子量を意味する。
<質量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定は東ソ−社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)「HPC−8020」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィ−である。本発明における測定は、カラムに「LF−604」(昭和電工社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、流量0.6mL/min、カラム温度40℃の条件で行い、質量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
<全酸価>
全酸価は、樹脂固形1g中に含まれる酸無水物基およびカルボン酸を中和するために必要なナトリウムメトキシドの量(mg)で表したものである。共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、シクロヘキサノン溶媒100mLを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nのナトリウムメトキシド溶液で滴定する。酸価は次式により求めた(単位:mgCHONa/g)。
酸価(mgCHONa/g)=(5.412×a×F)/S
但し、
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nのナトリウムメトキシド溶液の消費量(mL)
F:0.1Nのナトリウムメトキシド溶液の力価
<酸無水物価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、1,4−ジオキサン溶媒100mLを加えて溶解した。試料中の酸無水物基の量よりも多いオクチルアミン、1,4−ジオキサン、水の混合溶液(質量の混合比は1.49/800/80)を10mL加えて15分攪拌し、酸無水物基と反応させた。その後、過剰のオクチルアミンを0.02M過塩素酸、1,4−ジオキサンの混合溶液で滴定した。また、試料を加えていない、オクチルアミン、1,4−ジオキサン、水の混合溶液(質量の混合比は1.49/800/80)10mLもブランクとして測定を実施した。酸無水物価は次式により求めた(単位:mgCHONa/g)
酸無水物価(mgCHONa/g)=0.02×(B−S)×F×54.12/W
B:ブランクの滴定量(mL)
S:試料の滴定量(mL)
W:試料固形量(g)
F:0.02mol/L過塩素酸の力価
<酸無水物基と開環しているカルボン酸の割合>
酸無水物基:開環しているカルボン酸=酸無水物基価:(全酸価−酸無水物基価×2)
[合成例1]<酸無水物基を有するスチレン系エラストマーの合成例>
ポリマーのブロック比において(以下、同様)スチレン:ブタジエン=15:85(質量%)、質量平均分子量55000のスチレン系エラストマー100gに対して、無水マレイン酸0.49g、ベンゾイルパーオキサイド0.1g、イルガノックス1010(BASFジャパン社製、酸化防止剤)0.6gをドライブレンドし、ベント付き32ミリの二軸押出機を用いて、更に混合し、溶融混錬し、ペレット状サンプルを得た。混合、溶融混練時の二軸押出機の温度は、ホッパー下部40℃、混合ゾーン80℃、反応ゾーン170℃、ダイス180℃とした。
得られたペレット状サンプル100質量部に、アセトン85質量部、ヘプタン85質量部を加え、耐圧反応器中、85℃で2時間加熱攪拌した。同操作終了後、金網でペレットを回収し、これを140℃、0.1Torrで20時間真空乾燥して、酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体を得た。分子量分布は狭く、質量平均分子量は60000、酸無水物価は2.8mgCHONa/gであった。
[合成例2]
使用したスチレン系エラストマーを、スチレン:イソプレン=15:85(質量%)とした以外は合成例1と同様の方法で表1に示すような質量平均分子量および酸無水物基価を有する酸無水物基を有するスチレン−イソプレンブロック共重合体を得た。
[合成例3]
使用したスチレン系エラストマーを、スチレン:[エチレン/ブチレン]=15:85(質量%)とした以外は合成例1と同様の方法で表1に示すような質量平均分子量および酸無水物基価を有する酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を得た。
[合成例4〜7]
使用する無水マレイン酸の量を変え、変性量を変更した以外は合成例3と同様の方法で、表1に示すような質量平均分子量および酸無水物基価を有する酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を得た。
[合成例8〜12]
スチレン:[エチレン/ブチレン]=15:85(質量%)のスチレン系エラストマーの代わりにスチレン:エチレンブチレン=30:70(質量%)のスチレン系エラストマーを用いた以外は、合成例3〜7と同様にして、表1に示すような質量平均分子量および酸無水物基価を有する酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を得た。
[合成例13〜15]
スチレン:[エチレン/ブチレン]=30:70(質量%)、質量平均分子量が60000、90000、120000のスチレン系エラストマーを其々用いた以外は、合成例10と同様にして、表1に示すような質量平均分子量および酸無水物基価を有する酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を得た。なお、表2には合成例10を合成例13として合わせて記載する。
[合成例16〜18]
合成例14で得られた酸無水物基を有するスチレン系エラストマーを40℃、90%の加湿環境下で其々3、6、9時間保管して酸無水物基の一部を開環し、酸無水物基とカルボン酸の量の異なる無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を得た。
[比較合成例1]
合成例14における無水マレイン酸変性前のスチレン系エラストマーを比較合成例1のスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体とした。
[比較合成例2]
合成例14で得られた酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を40℃、90%の加湿環境下で15時間保管して酸無水物基の全てを開環した。
Figure 2017163131
[図1に示す積層体101]
(実施例1)
合成例1で得られた酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体中の酸無水物基1モルに対して、ポリイソシアネート成分として、BI7982(バクセンデン社製、HDIヌレート中のイソシアネート基をジメチルピラゾールでブロックしたブロック化イソシアネート)をイソシアネート基が1モルとなるように添加し、トルエン溶剤で固形分濃度が15%になるよう溶解して熱硬化性接着剤を調整した。
この熱硬化性接着剤を剥離処理されたポリエステルフィルム(剥離性シート)上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように均一に塗工して乾燥し、硬化前接着層を形成した。
別途、樹脂フィルム8として厚さが12.5μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製[カプトン50EN]]を用意した。次いで、図2に示すように、硬化前接着層5上に樹脂フィルム8を重ね、硬化前接着層5の片面が剥離性シート(不図示)で覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム50を得た。後述する方法に従い、寸法安定性、接着性、耐熱性、誘電率および誘電正接を評価した。
硬化前の接着層付樹脂フィルム50から、剥離性シート(不図示)を除去し、硬化前接着層5の面を、ポリイミドフィルム(第一被接合層)上に櫛型の導電性パターンである銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板の前記回路面に重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。後述する方法に従い、電気絶縁性を評価した。
[実施例2〜18]
表2〜3に示すように、合成例1で得られた酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体の代わりに、合成例2〜18で得られた酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
[実施例19〜34]、
表4〜5に示すように、イソシアネート成分の種類を変更した以外は、実施例13と同様にして、硬化前接着層の表面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
[実施例35〜45]
表6に示すように、イソシアネート成分の量を変更した以外は、実施例30と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
[比較例1〜2]
表7に示すように、合成例1で得られた酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体の代わりに、比較合成例1で得られたスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を用い、ポリイソシアネート成分としてデスモジュールXP2565を用いた以外は実施例1と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
なお、比較合成例1のスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体は、酸無水物基を有しないので、合成例13で得られた酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体100部に対して配合した量と同量のイソシアネート成分を配合した。
また、比較合成例2のスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体は、酸無水物基を有しないが、カルボン酸は有するので、カルボン酸の含有量の半分の量に対し、イソシアネート基が当量となるようにイソシアネート成分を配合した。
[比較例3〜5]
表7に示すように、合成例13で得られた酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体の代わりに、旭化成ケミカルズ社製のタフテックH1052、H1237、H1031を用い、ポリイソシアネート成分としてデスモジュールXP2565を用いた以外は実施例1と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
なお、上記スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体は、酸無水物基を有しないので、合成例14の酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対して配合した量と同量のイソシアネート成分を配合した。
[比較例6]
表7に示すように、合成例13で得られた酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体の代わりに、理研ビタミン社製、酸変性ポリプロピレン、REO−070−1を用いた以外は実施例1と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
[比較例7〜9]
表7に示すように、実施例34で用いたイソシアネート成分の代わりに、合成例13の酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対して配合したイソシアネート成分の質量部の、
N−730A:DIC社製、 フェノール型ノボラックエポキシ樹脂、
EX−321: ナガセケムテックス社製、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
エピオールNPG100:日油社製、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、其々配合し、以下同様にして硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
[実施例46〜50]
表8に示すように、実施例41の処方を基準として、硬化温度を120℃、150℃、180℃、200℃、240℃と変化させた以外は、実施例14と同様にして図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。なお、表8には実施例41を実施例47として合わせて記載する。
[実施例51〜81]
表9〜12に示すように、合成例13で得られた酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対し、実施例41の処方を基準とし、各種化合物を更に1質量部ずつ配合し、以下同様にして硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
以下、表2〜11において共通している。
<ポリイソシアネート成分>
BI7982:バクセンデン社製、HDIのヌレート体中のイソシアネート基をジメチルピラゾールでブロックしたブロック化イソシアネート
24A−100:旭化成ケミカル社製、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略す)のビウレット体
TPA−100:旭化成ケミカル社製、HDIのヌレート体
TLA−100:旭化成ケミカル社製、HDIのヌレート体
デスモジュールN3400:住化コべストロウレタン社製、HDIのウレトジオン体
デスモジュールN3900:住化コべストロウレタン社製、HDIのイソイソシアヌレート体
デスモジュールXP2580:住化コべストロウレタン社製、HDIのアロファネート体
デスモジュールH:HDIイソシアネート
デスモジュールI:イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIという)
デスモジュールT−80:トリレンジイソシアネート
デスモジュールXP2730:HDIウレトジオン型イソシアネート
デスモジュールZ4470BA:IPDIのイソシアヌレート体
デスモジュールXP2565:IPDIのアロファネート体
スミジュールBL3175:HDIヌレートをMEKオキシムでブロックしたもの
デスモジュールBL3272MPA:HDIヌレートをε−カプロラクタムでブロックしたもの
デスモジュールBL5375:水添MDIをMEKオキシムでブロックしたもの
17B−60PX:旭化成ケミカル社製、HDIのビウレット体をブロックしたもの。
<各種添加剤化合物>
TS−G:四国化成工業社製、1,3,4,6−テトラキス(2−メルカプトエチル)グリコールウリル
SQ107:荒川化学工業社製、 チオール含有シルセスキオキサン化合物
CABRUS2、CABRUS4: ダイソー社製、ポリスルフィド系シランカップリング剤
KBM−803:信越シリコーン社製、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
ZisnetF:三協化成社製、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン
TEMPIC:SC有機化学社製、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート
PEMP:SC有機化学社製、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
カレンズMTNR1 :昭和電工社製、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H、5H)−トリオン
X−12−1056ES:信越シリコーン社製、トリエトキシシリルチオプロピルトリメトキシシラン
KBE9007 :信越シリコーン社製、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン
KBE−903:信越シリコーン社製、3−アミノプロピルトリエトキシシラン
KBM−903:信越シリコーン社製、3−アミノプロピルトリメトキシシラン
KR−517:エポキシ基を有するメトキシ・エトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
KR−516:エポキシ基を有するメトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
X−41−1805:メルカプト基を有するメトキシ・エトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
X−41−1810:メルカプト基を有するメトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
X−12−972F:アミノ基を有するエトキシ基含有多官能基型シランカップリング剤
X−12−981S:エポキシ基を有するエトキシ基含有多官能基型シランカップリング剤
X−12−984S:エポキシ基を有するエトキシ基含有多官能基型シランカップリング剤
X−12−1154:メルカプト基を有するメトキシ基含有多官能基型シランカップリング剤
X−12−1252:イソシアネート基を有するメトキシ基含有多官能基型シランカップリング剤
ATG:チオグリコール酸アンモニウム
TG−MEA:チオグリコール酸モノエタノールアミン
OTG:チオグリコール酸オクチル
MTG:チオグリコール酸メトキシブチル
BDTG:ブタンジオールビスチオグリコレート
HDTG:ヘキサンジオールビスチオグリコレート
TMTG:トリメチロールプロパントリスチオグリコレート
PETG:ペンタエリストールテトラキスチオグリコレート
実施例および比較例で得られた硬化前の接着層付樹脂フィルムや積層構造11を有する3層からなる積層体101について、寸法安定性、接着性、耐熱性、屈曲性、電気絶縁性、誘電率、誘電正接を以下の方法で評価した。結果を表1〜12に示す。
<評価>
(1)寸法安定性
硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去した、65mm×65mmの大きさの硬化前の接着層付樹脂フィルムの前記硬化前接着層上に、厚さが12.5μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製「カプトン50EN」]を重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、この試験片を180℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。
この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着層の面積の差を測定し、これをはみ出し面積として加工性を評価した。この加工性は、圧着処理時に接着層が熱によって軟化し、回路基板の位置ズレや配線間の接触を引き起こす度合いを評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
A・・・はみ出し面積 ≦ 100mm
B・・・100mm < はみ出し面積 ≦ 200mm
C・・・200mm < はみ出し面積 ≦ 350mm
D・・・350mm < はみ出し面積 ≦ 500mm
E・・・500mm < はみ出し面積
(2)接着性
寸法安定性の評価で作製した試験片を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度300mm/minでTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。この試験は、常温使用時における接着層の接着強度を評価するものであり、結果を次の基準で判断した。
A・・・12N/cm < 接着強度
B・・・8N/cm < 接着強度 ≦ 12N/cm
C・・・5N/cm < 接着強度 ≦ 8N/cm
D・・・3N/cm < 接着強度 ≦ 5N/cm
E・・・接着強度 ≦ 3N/cm
(3)耐熱性
上記(2)と同様に、幅10mm、長さ65mmに切り出した試験片を、23℃相対湿度50%の雰囲気下で24時間以上保管し、その後、各種温度にて溶融半田にポリイミドフィルム面を接触させて1分間浮かべた。その後、試験片の外観を目視で観察し、硬化後接着層の発泡、浮き、剥がれ等の接着異常の有無を評価した。この試験は、半田接触時における硬化後接着層の熱安定性を、外観で評価するものであり、耐熱性の良好なものは、外観が変化しないのに対して、耐熱性の悪いものは、半田処理後に発泡や剥がれが発生する。これらの評価結果を次の基準で判断した。
A・・・270℃でも外観変化全く無し。
B・・・260℃で外観変化全く無し。270℃では発泡が確認される。
C・・・240℃でも外観変化全く無し。260℃では発泡が確認される。
D・・・220℃でも外観変化全く無し。240℃では発泡が確認される。
E・・・220℃にて発泡が観察される。
(4)屈曲性
熱硬化性接着剤を、厚さが12.5μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製「カプトン50EN」]上に、乾燥後の膜厚が30μmになるように均一に塗工して乾燥させ、更に、この試験片を180℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。評価用試験片を、硬化塗膜面を外側にして180度折り曲げ、ひび割れが発生するまでの回数を次の基準で評価した。
A・・・20回屈曲させてもクラック(ひび割れ)が見られない。
B・・・14回屈曲させてもクラックが見られない。20回までにクラック発生。
C・・・8回屈曲させてもクラックが見られない。14回までにクラック発生。
D・・・3回屈曲させてもクラックが見られない。8回までにクラック発生。
E・・・3回屈曲させるまでにクラック発生。
(5)電気絶縁性
積層構造11の導体回路に、温度130℃、相対湿度85%の雰囲気下で直流電圧50Vを連続的に100時間加え、100時間後の導体間の絶縁抵抗値を測定した。評価基準は以下の通りである。
A・・・絶縁抵抗値10Ω以上
B・・・絶縁抵抗値10以上10Ω未満
C・・・絶縁抵抗値10以上10Ω未満
D・・・絶縁抵抗値10以上10Ω未満
E・・・絶縁抵抗値10未満
(6)誘電率
硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムと同様にして、硬化前接着層の両面を剥離性シートで挟んだ両面剥離性シート付き接着性シートを形成した。
次いで、片側の剥離性シートを除去し、180℃の条件で1時間熱硬化させ後、反対側の剥離性シートを除去し、評価用試験片を作製した。この試験片について、エー・イー・ティー社製の誘電率測定装置を用い、空洞共振器法により、測定温度23℃、測定周波数5GHzにおける誘電率および誘電正接を求めた。
A・・・誘電率が2.4以下である。
B・・・誘電率が2.4より大きく2.6以下である。
C・・・誘電率が2.6より大きく2.8以下である。
D・・・誘電率が2.8より大きく3.0以下である。
E・・・誘電率が3.0より大きい
(7)誘電正接
A・・・誘電正接が0.0001より大きく0.0005以下である。
B・・・誘電正接が0.0005より大きく0.001以下である。
C・・・誘電正接が0.001より大きく0.003以下である。
D・・・誘電正接が0.003より大きく0.005以下である。
E・・・誘電正接が0.005より大きい
Figure 2017163131
Figure 2017163131
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Figure 2017163131
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表2の実施例3、4〜7に示すように、スチレン系エラストマー中の酸無水物価をより高くすると、架橋密度の増大により接着力と耐熱性が向上する。一方、誘電特性の点からは、架橋後のイミド基は多過ぎない方が好ましいので、スチレン系エラストマー中の酸無水物価は高過ぎないことが好ましい。
表3の実施例16〜18に示すように、誘電特性の点からは、スチレン系エラストマーとして酸無水物基の開環率の小さいものを用いることが好ましい。一方、耐熱性の点からは、酸無水物基がある程度開環したものを用いることが好ましい。
表7の比較例1、3〜5に示すように、酸無水物基を有しない場合、極性成分が減少するので誘電特性は良好であるものの、接着力と耐熱性は実施例2に比して悪化した。これは官能基が無いことで酸無水物基とイソシアネートとの反応による架橋が形成されないためと考えられる。
また、カルボン酸を有するが、酸無水物基を有しない酸変性ポリプロピレンを用いる比較例6は、骨格が低極性であることから誘電特性は良好である。しかし、スチレン系エラストマーに見られるポリスチレンブロック部の物理的架橋・凝集力が無いため、充分な接着力と耐熱性が得られなかった。
一方、カルボキシル基を有するが、酸無水物基を有しないスチレン系エラストマーを用いる比較例2は、ポリイソシアネート成分との反応により架橋構造が形成されるので接着力と耐熱性は良好となるが、イミド基を生成できず、極性に富むアミド基が生成される結果、誘電特性が不良となる。
比較例7〜9は、ポリイソシアネート成分の代わりにエポキシ基含有化合物を使用する例である。比較例7ではエポキシ基含有化合物の骨格が剛直なために屈曲性が大幅に悪化した。比較例8,9では柔軟な構造のエポキシ基含有化合物を用いているものの、構造自体の極性の影響により誘電特性が不良となる。
表8の実施例46〜50に示すように、硬化温度を変化させた場合には耐熱性と誘電特性のトレードオフの傾向が見られた。硬化温度が低い場合、カルボン酸も酸無水物基も有しないスチレン系エラストマーを用いる比較例1、3〜5に比して、耐熱性は向上するものの、150〜240℃で硬化する場合に比べると低いレベルに留まる。一方、高温で硬化した場合、架橋が充分に形成するために耐熱性は良化傾向であったが、スチレン系エラストマー自体の酸化と考えられる黄変や誘電特性の悪化が見られた。
表9〜表12の実施例51〜81に示すように、シランカップリング剤やチオール化合物を接着層に含んだ場合、誘電特性を悪化することなく、接着力や耐熱性、絶縁性を向上できる。
シランカップリング剤やチオール化合物によって金属への密着力(接着力)が向上するのは以前から知られていた知見であるが、耐熱性と絶縁性向上に関してはエポキシ基などの有機官能基が硬化剤のイソシアネート基と一部反応したためと考えられ、この際には寸法安定性も向上する傾向にある。
また、上記の添加剤を使用した際に見られた現象として、折り曲げ性の向上も見られた。
これは添加剤中の有機官能基が銅表面にある水酸基と反応することで密着力が上がり、空隙(亀裂の起点)が少なくなったためと思われる。
[図18に示す、積層構造11に電磁波シールド層を付けた積層体114]
(実施例82〜91)
表13に示すように、合成例4で得られたスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体を用い、イソシアネート成分の種類を変更した実施例19〜28と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去し、前記硬化前接着層の面を、ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板の前記回路面に重ね、80℃でラミネートし、積層構造11の前駆体を得た。
次いで、接着層付の電磁波シールドシート9の接着層を、第二被接合層2(樹脂フィルム)上に重ね、80℃でラミネートした。
その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図18に示す、積層構造11に電磁波シールドシート9を積層した積層体114を得た。
実施例19〜28の場合と同様にして、積層構造11を有し、電磁波シールド層を付けた積層体114の導体回路に、直流電圧50Vを連続的に100時間加え、100時間後の導体間の絶縁抵抗値を測定し、同じ基準で評価した。
なお、電気絶縁性試験以外は、電磁波シールドシートの積層とは関係のない試験であり、実施例19〜28と同じ結果であるが、表13に合わせて示す。
Figure 2017163131
[図8に示す積層構造17の態様]
(参考例92)
合成例9で得られたスチレン−ブチレンブロック共重合体を用い、イソシアネート成分としてBI7951を用いた実施例9と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去し、硬化前接着層の面を、銅張積層板の銅箔面に重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図8に示す積層構造17を得た。後述する方法に従い性能を評価した。
[図9に示す積層構造18の態様]
(参考例93)
実施例92と同様の前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去し、前記硬化前接着層の面を、厚さ12.5μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製「カプトン50EN」]に重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図9に示す積層構造18を得た。後述する方法に従い性能を評価した。
<評価>
(1)寸法安定性
実施例92の場合、硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去した、65mm×65mmの大きさの接着層付樹脂フィルムの硬化前接着層上に、銅張積層板の銅箔面に重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、この試験片を180℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着層の面積の差を測定し、これをはみ出し面積として加工性を、前述の実施例1〜91と同様の基準で評価した。なお、実施例93の場合の寸法安定性評価は、実施例9と同じ試験であるが、表14に合わせてその結果を示した。
(2)接着性
図8、9の積層構造18、19を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、引っ張り速度300mm/minでTピール剥離試験を行い、接着強度(N/cm)を測定した。評価基準は前述の通りである。
(3)耐熱性
積層構造17、18を幅10mm、長さ65mmに切り出し、前述の実施例1〜91と同様に試験し、同様の基準で評価した。
(4)屈曲性、(6)誘電率、(7)誘電正接
実施例9と同じ試験であるが、表14に合わせてその結果を示した。
Figure 2017163131
[図19に示す積層構造11、12、17を有する積層体115]
(実施例94)
合成例1で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体を用い、ポリイソシアネート成分として、BI7982を用い、実施例1と同様にして、図1に示す積層構造11を得た。
別途、同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板の前記回路面と、銅張積層板の銅箔面とを向い合せ、その間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、図3に示す積層構造12の前駆体を得た。
次いで、積層構造11の回路が設けられている方の樹脂フィルム(第一被接合層)と、積層構造12の前駆体の銅箔(第二被接合層)との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム50(図2参照)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層5を挟み、80℃でラミネートした後、180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図19に示す積層構造11、12、17を有する積層体115を作製した。
(実施例95〜111)
表15〜16に示すように、合成例1で得られた酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体の代わりに、合成例2〜18で得られた酸無水物基を有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を用いた以外は、実施例94と同様にして、図19に示す積層構造11、12、17を有する積層体115を作製した。
[実施例112〜127]、
実施例94で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、表17〜18に示すように、イソシアネート成分の種類を変更した熱硬化性接着剤(実施例19〜34で用いた熱硬化性接着剤)を用いた以外は、実施例94と同様にして図19に示す積層体115を得た。
[実施例128〜138]
実施例94で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、表19に示すように、イソシアネート成分の量を変更した熱硬化性接着剤(実施例35〜45で用いた接着剤)を用いた以外は、実施例94と同様にして図19に示す積層体115を得た。
[比較例10〜18]
実施例94で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、比較例1〜9で用いた熱硬化性接着剤を用いた以外は、実施例94と同様にして図19に示す積層体115を得た。
[実施例139〜143]
表21に示すように、実施例134の処方を基準として、硬化温度を120℃、150℃、180℃、200℃、240℃と変化させた以外は、実施例94と同様にして図19に示す積層体115を得た。なお、表21には実施例133を実施例141として合わせて記載する。
[実施例144〜174]
実施例94で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、表22〜25に示すように、合成例4で得られた酸無水物基を有するスチレンエチレンブチレンブロック共重合体100質量部に対し、実施例134の処方を基準とし、各種化合物を更に1質量部ずつ配合した熱硬化性接着剤(実施例51〜68で用いた接着剤)を用いた以外は、実施例94と同様にして図19に示す積層体115を得た。
<評価>
(1)寸法安定性
80℃で、硬化前接着層を銅張積層板の銅箔面とポリイミドフィルムとの間に挟み、180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、この試験片を180℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着層の面積の差を測定し、これをはみ出し面積として加工性を、前述の実施例1〜91と同様の基準で評価した。
(2)接着性
図19に示す積層構造11,12,17を有する積層体115を幅10mm、長さ65mmに切り出し、23℃相対湿度50%の雰囲気下で、前述の実施例1〜91と同様に試験し、積層構造11と積層構造12との間の強度を求め、同様の基準で評価した。
(3)耐熱性
図19に示す積層構造11、12、17を有する積層体115を幅10mm、長さ65mmに切り出し、前述の実施例1〜91と同様に試験し、同様の基準で評価した。
(4)耐塩酸性
寸法安定性評価で作製したのと同様の積層体(熱硬化性接着剤によって、銅張積層板の銅箔面とポリイミドフィルムと貼り合せたもの)を試験片とし、23℃相対湿度50%の雰囲気下で24時間以上保管後、室温の10%塩酸に1時間浸漬した。
浸漬後の試験片の外観を目視で観察し、硬化後接着層の膨れ、剥がれ等の異常の有無を確認し、異常の無いものは更に1時間浸漬するという試験を繰り返した。
この試験は塩酸に対する硬化後接着層の耐性を外観で評価するものであり、浸漬回数で耐性を評価した。
A・・・4回目以降の浸漬後も外観不良なし。
B・・・3回目の浸漬では外観不良が無いが、4回目の浸漬後には発生。
C・・・2回目の浸漬では外観不良が無いが、3回目の浸漬後には発生。
D・・・1回目の浸漬では外観不良が無いが、2回目の浸漬後には発生。
E・・・1回目の浸漬で外観不良発生。
(5)低反り性
寸法安定性評価で作製したのと同様の積層体(熱硬化性接着剤によって、銅張積層板の銅箔面とポリイミドフィルムと貼り合せたもの)を幅40mm、長さ40mmに切り出し試験片とした。前記試験片を23℃相対湿度50%の雰囲気下で24時間以上保管後、保管後の試験片を、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム社製「HAS−6116」)に一回通した(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J−STD−020Cに準拠)。
その後試験片を平らな机の水平面上に載置し、四隅の平均の高さ(反り量)を測定した。
この試験は高温からそれ以下の温度へ暴露した際に、サンプルの反り性を外観で判断するものであり、低反り性良好なものは、外観が変化しないのに対して、低反り性が悪いものは、試験片の隅が反る。これらの評価結果を次の基準で判断した。
A・・・四隅の高さ平均が0.5mm未満である。
B・・・四隅の高さ平均が0.5mm以上1mm未満である。
C・・・四隅の高さ平均が1mm以上1.5mm未満である。
D・・・四隅の高さ平均が1.5mm以上2mm未満である。
E・・・四隅の高さ平均が2mm以上である。
(6)誘電率、(7)誘電正接
実施例1〜81と同じ試験であるが、表15〜25に合わせてその結果を示した。
Figure 2017163131
Figure 2017163131
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[図20に示す、積層構造11の積層体116]
(実施例175〜184)
実施例19〜28と同様に、合成例4で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体に対し、ポリイソシアネート成分を変化させた熱硬化性接着剤を用い、図1に示す積層構造11を得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板の前記回路面と、図1に示す積層構造11の回路の設けられている方の樹脂フィルムの反対面との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図20に示す積層構造11の単位を2つ有する(但し、両積層構造の共用層を有する)積層体116を作製した。
[図21に示す、積層構造11、13、18を有する積層体117]
(実施例185〜194)
実施例19〜28と同様に、合成例4で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体に対し、ポリイソシアネート成分を変化させた熱硬化性接着剤を用い、図1に示す積層構造11を得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板(第一被接合層、第二被接合層)を2枚用意し、前記回路面同士を向い合せ、その間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、図4に示す積層構造13の前駆体を得た。
次いで、図1に示す積層構造11の回路の設けられている方の樹脂フィルムの反対面と、図4に示す積層構造13の前駆体との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図21に示す、積層構造11、13、18を有する積層体117を得た。
[図22に示す、積層構造11,13、18を有する積層体118]
(実施例195〜204)
実施例19〜28と同様に、合成例4で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体に対し、ポリイソシアネート成分を変化させた熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板の前記回路面と、銅張積層板の銅箔面とを向い合せ、その間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図3に示す積層構造12を得た。
別途、ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板(第一被接合層、第二被接合層)を2枚用意し、前記回路面同士を向い合せ、その間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、図4に示す積層構造13の前駆体を得た。
次いで、図3に示す積層構造12の回路の設けられている方の樹脂フィルムの反対面と、図4に示す積層構造13の前駆体との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図22に示す、積層構造11、13、18の積層構造を有する積層体118を得た。
<評価>
(1)寸法安定性
実施例112〜122と同様に、銅張積層板の銅箔面とポリイミドフィルムとの間に挟まれた圧着処理前と熱硬化後との接着層の面積の差を測定した。結果は実施例112〜122と同じであるが、表26〜28に合わせて示す。
(2)接着性
図20に示す積層構造11を複数有する積層体116においては、両側の樹脂フィルム間の強度を求めた。
図21に示す積層構造11、13、18を有する積層体117においては、積層構造11、13の間の強度を求めた。
図22に示す積層構造12、13、18を有する積層体118においては、積層構造12、18の間の強度を求めた。
その他の条件および評価基準は、実施例1〜91と同様とした。
(3)耐熱性
図20〜22に示す積層体を幅10mm、長さ65mmに切り出し、前述の実施例1〜91と同様に試験し、同様の基準で評価した。
(4)耐塩酸性、(5)低反り性、(6)誘電率、(7)誘電正接
実施例94〜174と同じ試験であるが、表26〜28に合わせてその結果を示した。
Figure 2017163131
Figure 2017163131
Figure 2017163131
[図23に示す、積層構造11を複数有する積層体119]
(実施例205)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図1に示す積層構造11を得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板を2枚用意する。
1枚のプリント配線板の前記回路面と、積層構造11の回路が設けられている方の樹脂フィルムの反対面との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、中間積層体を得た。
次いで、前記中間積層体のまだ硬化していない硬化前接着層に近い方のポリイミドフィルムと、2枚目のプリント配線板の前記回路面との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図23に示す、積層構造11を複数有する積層体119を得た。
[図24に示す、積層構造11、12、17を有する積層体120]
(実施例206)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図1に示す積層構造11を得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板を2枚用意する。
1枚のプリント配線板と積層構造11の回路が設けられている方の樹脂フィルムの反対面との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートすることで中間積層体を得た。
実施例9と同じ熱硬化性接着剤を用い、図3に示す積層構造12を得た。
前記中間積層体の回路が設けられている方の配線板樹脂フィルムの反対面と、積層構造12の銅箔面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートした。この積層体を180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図24に示す、積層構造11,12、17を有する積層体120を得た。
[図25に示す、積層構造11、12、17を有する積層体121]
(実施例207)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図1に示す積層構造11を得た。
実施例9と同じ熱硬化性接着剤を用い、図3に示す積層構造12を得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
積層構造11の回路が設けられている方の配線板樹脂フィルムの反対面と、積層構造12の銅面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートすることで中間積層体を得た。
ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板を1枚用意する。
前記中間積層体における回路が設けられている方の樹脂フィルムの反対面と、用意したプリント配線板の回路面とを向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートした。この積層体を180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図25に示す、積層構造11,12、17を有する積層体121を得た。
[図26に示す、積層構造11、12,17を有する積層体122]
(実施例208)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図1に示す積層構造11を得た。
実施例9と同じ熱硬化性接着剤を用い、図3に示す積層構造12を2つ得た。同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
得られた2つの積層構造12に関し、片方の銅箔面ともう片方の回路付き樹脂フィルムの反対面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートすることで積層構造12を複数有する積層体を得た。
得られた積層構造12を複数有する積層体における銅箔面と、前述積層構造11の回路付き樹脂フィルムの反対面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートした。この積層体を180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図26に示す、積層構造11,12、17を有する積層体122を得た。
[図27に示す、積層構造11、12を有する積層体123]
(実施例209)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図2に示す積層構造12を得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
回路付き樹脂フィルムを2枚用意する。
積層構造12の回路付き樹脂フィルムの反対側の面と、別の回路付き樹脂フィルムの回路面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートすることで中間積層体を得た。
得られた中間積層体の回路付き樹脂フィルムの反対側の面と、別の回路付き樹脂フィルムの回路面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートした。
得られた積層体を180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図27に示す、積層構造11、12を有する積層体123を得た。
[図28に示す、積層構造11、12、17を有する積層体124]
(実施例210)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図3に示す積層構造12を2つ得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
積層構造12の一つにおいて、回路付き樹脂フィルムの反対側の面と、別の回路付き樹脂フィルムの回路面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートすることで中間積層体を得た。
もう一つの積層構造12における銅箔面と、前記の中間積層体の回路付き樹脂フィルムの反対側の面とを向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートした。得られた積層体を180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図28に示す、積層構造11、12,17を有する積層体124を得た。
[図29に示す、積層構造11、12、17を有する積層体125]
(実施例211)
合成例9で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図3に示す積層構造12を2つ得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。次いで、回路付き樹脂フィルムを1枚用意する。前記で得られた積層構造12のうち一つに関して、回路付き樹脂フィルムの反対側の面と、別の回路付き樹脂フィルムの回路面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートすることで中間積層体を得た。
初めに得られた積層構造12の回路付き樹脂フィルムの反対側の面と、前記で得られた中間積層体の銅箔部分を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートした。これを180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図29に示す、積層構造11,12、17を有する積層体125を得た。
[図30に示す、積層構造12、17を有する積層体126]
(実施例212)
合成例9で得られたスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体とポリイソシアネート成分としてBI7951とを含有する熱硬化性接着剤(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)を用い、図3に示す積層構造12を3つ得た。
同じ熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。得られた積層体3つのうち、1つの積層体における回路付き樹脂フィルムの反対側の面と、他の積層構造12の銅箔面を向かい合わせ、その間に前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートして中間積層体を得た。
得られた中間積層体の回路付き樹脂フィルムの反対側の面と更にもう一つの積層構造12における銅箔面を前記の硬化前の接着層付樹脂フィルム(実施例9の熱硬化性接着剤と同じ)の両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層で貼り合わせ、80℃でラミネートした。これを180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った後、更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させることで図30に示す、積層構造12,17を有する積層体126を得た。
<評価>
(1)寸法安定性
実施例112〜122と同様に、銅張積層板の銅箔面とポリイミドフィルムとの間に挟まれた圧着処理前と熱硬化後との接着層の面積の差を測定した。結果は実施例112〜122と同じであるが、表29に合わせて示す。
(2)接着性
図23に示す、積層構造11を複数有する積層体119の場合は、中央にある積層構造11の樹脂フィルムにおける強度を求めた。図24に示す積層体120の場合は、積層構造17の樹脂フィルムにおける強度を求めた。図25に示す積層体121の場合は、積層構造17の樹脂フィルムにおける強度を求めた。図26に示す積層体122の場合は、二箇所ある積層構造17の樹脂フィルム間の強度を求めた。図27に示す積層体123の場合は、中央にある積層構造11の樹脂フィルムにおける強度を求めた。図28、29に示す積層体124,125の場合は、積層構造17の樹脂フィルムにおける強度を求めた。図30に示す積層体126の場合は、二箇所ある積層構造17の樹脂フィルム間の強度を求めた。その他の条件および評価基準は、実施例1〜91と同様とした。
(3)耐熱性
図19〜26に示す複合した態様の積層体を幅10mm、長さ65mmに切り出し、前述の実施例1〜91と同様に試験し、同様の基準で評価した。
(4)耐塩酸性、(5)低反り性、(6)誘電率、(7)誘電正接
実施例94〜174と同じ試験であるが、表29に合わせてその結果を示した。
Figure 2017163131
[図1に示す積層体101]
[実施例213]
実施例10にて樹脂フィルムとして用いたカプトン50ENの代わりに、実施例213では厚さが100μmの脂環式ポリオレフィンフィルム〔日本ゼオン社製〔ゼオノアフィルム〕]を、実施例214では厚さが50μmの液晶ポリマーフィルム〔クラレ社製〔ベクスター〕〕を、それぞれ用いた以外は、実施例10と同様にして、硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得、同様に評価した。
Figure 2017163131
1:第一被接合層(樹脂フィルム)
2:第二被接合層(絶縁層または導電層)
2a:導電層(第二被接合層)
2b:絶縁層(第二被接合層)
3:導電性パターン
4:硬化後接着層
5:硬化前接着層
7:導電層
8:樹脂フィルム
9:電磁波シールドシート
図4に、第3実施形態に係る電子部品用の積層体の模式的断面図を示す。積層体103は、導電性パターン3が形成された絶縁性の第一被接合層1、硬化後接着層4、導電性パターン3が形成された絶縁性の第二被接合層2bがこの順に積層された積層構造13を有する。硬化後接着層4は、層間絶縁膜として機能する。図4の例においては、第一被接合層1の導電性パターン3と第二被接合層2bの導電性パターン3とが硬化後接着層4を介して互いに対向配置されている例を示しているが、各導電性パターンの配置や形状は任意である。硬化後接着層4を介して互いに直交する配線が形成されていてもよい。第3実施形態に係る積層体によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
第4実施形態に係る電子部品用の積層体は、以下の点を除き第1実施形態の積層体と同様の構成を有し、同様の製法により得られる。即ち、第4実施形態では、図5に示すように第一被接合層1の導電性パターン3が、硬化後接着層4との接合側主面に形成されている点において、硬化後接着層4との接合側主面に形成されていた第1実施形態と相違している。第4実施形態に係る積層体104は、導電性パターン3が、硬化後接着層4との非接合側主面に形成されている第一被接合層1、硬化後接着層4、第二被接合層2の積層構造14を有する。第4実施形態に係る積層体によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
[合成例8〜12]
スチレン:[エチレン/ブチレン]=15:85(質量%)のスチレン系エラストマーの代わりにスチレン:エチレンブチレン=30:70(質量%)のスチレン系エラストマーを用いた以外は、合成例3〜7と同様にして、表1に示すような質量平均分子量および酸無水物基価を有する酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体を得た。
[実施例19〜34]、
表4〜5に示すように、イソシアネート成分の種類を変更した以外は、実施例と同様にして、硬化前接着層の表面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルム、および図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。
[実施例46〜50]
表8に示すように、実施例41の処方を基準として、硬化温度を120℃、150℃、180℃、200℃、240℃と変化させた以外は、実施例41と同様にして図1に示す積層構造11を有する積層体101を得た。なお、表8には実施例41を実施例4として合わせて記載する。
[実施例51〜81]
表9〜12に示すように、合成例で得られた酸無水物基を有するスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体100質量部に対し、実施例41の処方を基準とし、各種化合物を更に1質量部ずつ配合し、以下同様にして硬化前接着層の片面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。
Figure 2017163131
表7の比較例1、3〜5に示すように、酸無水物基を有しない場合、極性成分が減少するので誘電特性は良好であるものの、耐熱性は実施例2に比して悪化した。これは官能基が無いことで酸無水物基とイソシアネートとの反応による架橋が形成されないためと考えられる。
また、カルボン酸を有するが、酸無水物基を有しない酸変性ポリプロピレンを用いる比較例6は、骨格が低極性であることから誘電特性は良好である。しかし、スチレン系エラストマーに見られるポリスチレンブロック部の物理的架橋・凝集力が無いため、充分な接着力と耐熱性が得られなかった。
一方、カルボキシル基を有するが、酸無水物基を有しないスチレン系エラストマーを用いる比較例2は、ポリイソシアネート成分との反応により架橋構造が形成されるので接着力と耐熱性は良好となるが、イミド基を生成できず、極性に富むアミド基が生成される結果、誘電特性が不良となる。
[図9に示す積層構造18の態様]
(参考例93)
参考例92と同様の前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去し、前記硬化前接着層の面を、厚さ12.5μmのポリイミドフィルム[東レ・デュポン社製「カプトン50EN」]に重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図9に示す積層構造18を得た。後述する方法に従い性能を評価した。
<評価>
(1)寸法安定性
参考例92の場合、硬化前の接着層付樹脂フィルムから、剥離性シートを除去した、65mm×65mmの大きさの接着層付樹脂フィルムの硬化前接着層上に、銅張積層板の銅箔面に重ね、80℃でラミネートし、続いて180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、この試験片を180℃で1時間熱硬化させ、評価用試験片を作製した。この試験片について、圧着処理前と熱硬化後との接着層の面積の差を測定し、これをはみ出し面積として加工性を、前述の実施例1〜91と同様の基準で評価した。なお、参考例93の場合の寸法安定性評価は、実施例9と同じ試験であるが、表14に合わせてその結果を示した。
[実施例112〜127]、
実施例9で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、表17〜18に示すように、イソシアネート成分の種類を変更した熱硬化性接着剤(実施例19〜34で用いた熱硬化性接着剤)を用いた以外は、実施例9と同様にして図19に示す積層体115を得た。
[実施例128〜138]
実施例9で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、表19に示すように、イソシアネート成分の量を変更した熱硬化性接着剤(実施例35〜45で用いた接着剤)を用いた以外は、実施例9と同様にして図19に示す積層体115を得た。
[比較例10〜18]
実施例9で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、比較例1〜9で用いた熱硬化性接着剤を用いた以外は、実施例9と同様にして図19に示す積層体115を得た。
[実施例139〜143]
表21に示すように、実施例134の処方を基準として、硬化温度を120℃、150℃、180℃、200℃、240℃と変化させた以外は、実施例9と同様にして図19に示す積層体115を得た。なお、表21には実施例13を実施例141として合わせて記載する。
[実施例144〜174]
実施例9で用いた熱硬化性接着剤の代わりに、表22〜25に示すように、合成例4で得られた酸無水物基を有するスチレンエチレンブチレンブロック共重合体100質量部に対し、実施例134の処方を基準とし、各種化合物を更に1質量部ずつ配合した熱硬化性接着剤(実施例51〜68で用いた接着剤)を用いた以外は、実施例9と同様にして図19に示す積層体115を得た。
Figure 2017163131
[図22に示す、積層構造1,13、18を有する積層体118]
(実施例195〜204)
実施例19〜28と同様に、合成例4で得られたスチレン−ブタジエンブロック共重合体に対し、ポリイソシアネート成分を変化させた熱硬化性接着剤を用い、硬化前接着層の両面が剥離性シートで覆われた硬化前の接着層付樹脂フィルムを得た。ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板の前記回路面と、銅張積層板の銅箔面とを向い合せ、その間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図3に示す積層構造12を得た。
別途、ポリイミドフィルム上に櫛型の銅回路パターン(導体パターン幅/スペース幅=50μm/50μm)が形成されたプリント配線板(第一被接合層、第二被接合層)を2枚用意し、前記回路面同士を向い合せ、その間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、図4に示す積層構造13の前駆体を得た。
次いで、図3に示す積層構造12の回路の設けられている方の樹脂フィルムの反対面と、図4に示す積層構造13の前駆体との間に、前記の硬化前の接着層付樹脂フィルムの両面から剥離性シートを除去した硬化前接着層を挟み、80℃でラミネートし、その後180℃、2.0MPaの条件で5分圧着処理を行った。更に、大気圧環境下にて、180℃で1時間熱硬化させ、図22に示す、積層構造12、13、18の積層構造を有する積層体118を得た。

Claims (9)

  1. 導電性パターンと、
    前記導電性パターンが担持された絶縁性を示す第一被接合層と、
    硬化後接着層を介して前記第一被接合層と対向配置される第二被接合層と、を備え、
    前記第二被接合層は、導電層または絶縁層であり、
    前記硬化後接着層は、カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含有する熱硬化性接着剤の硬化物であり、
    前記第一被接合層および前記絶縁層は、其々独立に、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、およびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムである、
    電子部品用の積層体。
  2. 前記硬化後接着層の誘電正接が0.005以下である、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記熱硬化性接着剤は、シランカップリング剤およびチオール化合物の少なくとも一方を更に含有する、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 導電性パターンと、
    前記導電性パターンが担持された絶縁性を示す第一被接合層と、
    硬化後接着層を介して前記第一被接合層と対向配置される第二被接合層と、を備え、
    前記第二被接合層は、導電層または絶縁層である電子部品用の積層体の製造方法であって、
    熱硬化性接着剤を用意し、当該熱硬化性接着剤を用いて硬化前接着層を形成する工程Aと、
    前記硬化前接着層を介して前記第一被接合層と前記第二被接合層を対向配置する工程Bと、
    工程Bの後、加熱により前記硬化前接着層の硬化物である硬化後接着層を得る工程Cと、を有し、
    工程Aは、
    (i)剥離性シート上に前記熱硬化性接着剤を塗工して剥離性シート付硬化前接着層を形成する工程、および
    (ii)前記第一被接合層または前記第二被接合層のいずれかの主面に前記熱硬化性接着剤を塗工して硬化前接着層付被接合層を得る工程、
    のいずれか一方を含み、
    前記熱硬化性接着剤は、カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含有し、
    前記第一被接合層および前記絶縁層は、其々独立に、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、およびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムである、電子部品用の積層体の製造方法。
  5. 前記硬化後接着層の誘電正接が0.005以下である、請求項4に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記熱硬化性接着剤は、シランカップリング剤およびチオール化合物の少なくとも一方を更に含有する、請求項4または5に記載の積層体の製造方法。
  7. 前記硬化前接着層の硬化温度を120〜240℃とする、請求項4〜6のいずれかに記載の積層体の製造方法。
  8. ポリイミドフィルム、液晶ポリマーのフィルム、およびガラス転移温度が100〜400℃の脂環式ポリオレフィンのフィルムからなる群より選ばれる樹脂フィルムと、
    カルボン酸の無水物基を有するスチレン系エラストマーとポリイソシアネート成分とを含む熱硬化性の硬化前接着層と、が積層された接着層付樹脂フィルム。
  9. 前記硬化前接着層が、シランカップリング剤およびチオール化合物の少なくとも一方を更に含有する、請求項8記載の接着層付樹脂フィルム。
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