JP2017160333A - ポリアセタールコポリマー、コポリマーの製造方法、およびポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents

ポリアセタールコポリマー、コポリマーの製造方法、およびポリアセタール樹脂組成物 Download PDF

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義公 近藤
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Abstract

【課題】機械物性、耐久性、熱エージング性、成形性、耐薬品性に優れ、かつ、ホルムアルデヒドの発生量の少なく、リサイクル性に優れるポリアセタールコポリマーを提供する。【解決手段】本発明のポリアセタールコポリマーは、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の特定のオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下である。【選択図】なし

Description

ポリアセタールコポリマー、ポリアセタールコポリマーの製造方法、およびその組成物に関する。
ポリアセタール樹脂は、ホモポリマーとコポリマーとに大別される。ポリアセタールホモポリマーは、結晶化度が高く強靭で、機械的物性、耐クリープや振動疲労などの耐久性や耐衝撃性に優れるが、高温の状態や酸性成分が存在する環境では、分解・劣化を起こすことから、一般的に安定性や成形性に劣る。対して、ポリアセタールコポリマーは、ポリマーの主鎖成分であるオキシメチレン基に、第2のモノマー(コモノマー)を共重合させることで、ホモポリマーに対して、熱安定性、成形性、耐薬品性に優れる。これら優れた性能を有することから、ポリアセタール樹脂は、自動車部品や電気・電子機器および各種機構部品を中心に広範に亘って使用されている。しかし、用途の拡大、多様化に伴い、その品質に対する要求はより高度化する傾向を示している。そこで、これら各種機構部品にポリアセタール樹脂を用いる際は、ポリアセタールホモポリマー、またはポリアセタールコポリマーに対して、酸化防止剤やギ酸・ホルムアルデヒド捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤、可塑剤、摺動剤などの各種添加剤を添加し、目的とする特性を付与している。
しかしながら、これら各種添加剤による特性改良方法は、短期間の使用では充分満足のいく特性を維持することができるが、長期間連続使用する場合は、その特性を維持することが難しい。また、ベースとなるポリアセタール樹脂の熱分解性や機械的物性、耐薬品性が悪い場合は必ずしも満足な結果は得られず、また、多量な添加はコストアップ要因となったり、ポリアセタール樹脂の色調(外観)を損なう怖れがある。
また、ポリアセタール樹脂は、熱分解するとホルムアルデヒドが発生するため、ポリアセタール樹脂のリサイクル時において、その極めて強い刺激臭による作業性の低下や、リサイクル製品が不良になるなど問題があり、特に機械的物性、耐久性、耐衝撃性に優れるポリアセタールホモポリマーは、リサイクル性においてはポリアセタールコポリマーよりも劣るという課題がある。
このような事情のもと、比較的に熱安定性、リサイクル性、成形性、耐薬品性に優れるポリアセタールコポリマーに対して、その機械的物性、耐久性、耐衝撃性を改良するために、様々な改良技術が提案されている。例えば、オキシメチレンモノマー単位100mol当たり0.01〜1.0molのオキシアルキレンコモノマー単位をランダムに導入し、かつ、成形品において結晶化度や平均結晶子径を制御して、高い剛性を有するポリアセタールコポリマー成形品を提供する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ポリアセタールコポリマーにおいて、主成分のポリオキシメチレン単位に対して、共重合成分単位のmol%や重量平均分子量、および特定の不安定末端部の構造・量を規定して、成形時の金型へのパラホルムアルデヒドの付着量を低減し、製品品質のバランス改善を図る方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第3215442号 特開2001−11143号公報
しかしながら、特許文献1に記載の成形品では高い剛性は得られるものの、熱安定性の低下が大きく、機械的性質および熱安定性のバランスの点では未だ満足するものではない。
また、特許文献2で規定の特定不安定末端部の量を低減しても、ポリアセタールコポリマーとしての機械的物性、耐久性、耐衝撃性の改善については言及されておらず、また、特許文献2には得られたポリアセタールコポリマーの重量平均分子量について何ら示されておらず、分子量が発明に対して効果があったかどうかについても示されていない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、ポリアセタールコポリマーにおいて、機械的物性、耐久性、耐衝撃性、耐熱安定性、リサイクル性、成形性、耐薬品性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量の少ないポリアセタールコポリマー、ポリアセタールコポリマーの製造方法、およびポリアセタール樹脂組成物を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、適切な量のオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を特定の範囲とすることにより、上記課題を解決し得ることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下であるポリアセタールコポリマー。
Figure 2017160333
(式(1)中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、mは2以上6以下の整数で、nは1以上の整数で、n=1である単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上である。)
[2]
多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)が14万以上60万以下である、[1]に記載のポリアセタールコポリマー。
[3]
前記一般式(1)においてR1、R2がそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、mが2〜4の整数である、[1]又は[2]に記載のポリアセタールコポリマー。
[4]
シャルピー衝撃強さが7kJ/m2以上、且つ密閉容器でメタノールに60℃750時間浸漬後の重量増加率が2.5%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアセタールコポリマー。
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアセタールコポリマー100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤、および結晶核剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.01質量部以上5質量部以下で含有するポリアセタール樹脂組成物。
[6]
トリオキサン1molに対して、下記一般式(2)〜(6)に記載の環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物からなる群より選ばれる1種以上のコモノマーを0.0001mol以上0.015mol以下の割合で共重合する工程を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
Figure 2017160333
(式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、a、b、x、yは1以上6以下の整数で、Mは1以上6以下の整数で、Nは0以上6以下の整数である。)
[7]
前記共重合する工程が、トリオキサンおよび前記コモノマーの混合物1mol当たりに、分子量調節剤を1×10-5mol〜5×10-2molを原料とし、かつ、トリオキサン1mol当たり1×10-8mol〜5×10-2molのカチオン開始剤を重合触媒として用いて連続塊状重合反応を行う工程である、[6]に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
[8]
前記コモノマーと前記カチオン開始剤と前記分子量調節剤と前記有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得るプレ混合工程をさらに含む、[7]に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
本発明によれば、機械的物性、耐久性、耐衝撃性、耐熱安定性、リサイクル性、成形性、耐薬品性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量の少ないポリアセタールコポリマー、ポリアセタールコポリマーの製造方法、およびポリアセタール樹脂組成物を提供することが可能である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<ポリアセタールコポリマー>
本実施形態のポリアセタールコポリマーは、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下である。
Figure 2017160333
(式(1)中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、mは2以上6以下の整数で、nは1以上の整数で、n=1である単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上である。)
なお、本実施形態において、主成分とは、重合体中に50mol%以上含む成分のことをいい、好ましくは75mol%以上、より好ましくは90mol%以上、特に好ましくは100mol%含む成分のことをいう。
本実施形態のポリアセタールコポリマーにおいて、上記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の含有量は、オキシメチレン単位1mol当たり、0.00033mol以上0.005mol以下であり、0.0005mol以上0.00485mol以下であることがより好ましく、0.00075mol以上0.0047mol以下であることがさらに好ましい。本実施形態のポリアセタールコポリマーは、上記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の含有量が前記範囲内であると、安定性、機械物性、耐熱性、耐熱水性を向上させることができる。
本実施形態において、上記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のポリアセタールコポリマーは、例えば、トリオキサン1molに対して、環状エーテル化合物、および環状ホルマール化合物からなる群より選ばれる1種以上のコモノマーを0.0001mol以上0.015mol以下の割合で共重合して得ることができる。
本実施形態のポリアセタールコポリマーを製造する際の原材料について説明する。
(トリオキサン)
トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状3量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルマリン水溶液を反応させることにより得られる。
このトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸、蟻酸メチル等の連鎖移動させる不純物を含有している場合があるので、例えば蒸留や吸着剤による吸着除去等の方法で、これら不純物を除去精製することが好ましい。
その場合、連鎖移動させる不純物の合計量をトリオキサン1molに対して、1×10-3mol以下とすることが好ましく、より好ましくは0.5×10-3mol以下とする。
不純物の量を上記数値のように低減化することにより、重合反応速度を実用上十分に高めることができ、生成したポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を所望の範囲とすることに好適である。
(環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物)
環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物は、前記トリオキサンと共重合可能な成分であり、例えば、下記一般式(2)〜(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2017160333
(式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよい。a、b、x、yは1以上〜6以下の整数で、mは1以上6以下の整数で、nは0以上6以下の整数である。)
一般式(2)〜(6)で表される環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物の例としては、特に限定されないが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。
特に、前記一般式(2)のR1およびR2が水素であるエチレンオキシド、前記一般式(2)のR1が水素でR2がメチル基であるプロピレンオキシド、前記一般式(4)のR1およびR2が水素でbが1である1,3−ジオキソラン、前記一般式(4)のR1およびR2が水素でbが3である1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。
これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
トリオキサンと一般式(2)〜(6)で表される環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物とを共重合させるときの環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物の仕込み量は、前記トリオキサン1molに対して0.0001mol以上0.015mol以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.0005mol以上0.0135mol以下であり、さらに好ましくは0.001mol以上0.0125molであり、さらにより好ましくは0.002mol以上0.012mol以下である。
環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物の仕込み量を0.0001mol以上0.015mol以下で仕込むことにより、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の割合で、下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含ませることが容易となる。
Figure 2017160333
(式(1)中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、mは2以上6以下の整数で、nは1以上の整数で、n=1である単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上である。)
本実施形態のポリアセタールコポリマーにおけるポイントの1つは、共重合体中のオキシメチレン単位1mol当たりの一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位のn数で表される挿入量やシークエンスである。オキシメチレン単位に対して、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位のうち、n=1である単独のオキシアルキレンとして重合体中に分散させることで、少ないコモノマー量で安定性、機械物性、耐熱性、耐熱水性を向上させることが可能となった。
一般式(1)中、nは1〜100の整数であることが好ましく、nは1〜50の整数であることがより好ましく、nは1〜10の整数であることがさらに好ましい。
また、n=1である単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95〜100mol%であることがより好ましく、97〜100mol%であることがさらに好ましい。
本実施形態において、n=1である単位の割合は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、一般式(1)においてR1、R2はそれぞれ独立して水素またはメチル基であることが好ましく、mは2〜4の整数であることが好ましい。
本実施形態では、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返し部分に着目し、オキシメチレン単位の分子量を大きく、かつ、その分子量分布を一定範囲内とすることにより、ポリアセタールコポリマーでありながら、ポリアセタールホモポリマーの機械的物性の領域に近づけることができることを見出したものである。
即ち、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含む、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる本実施形態のポリアセタールコポリマーが、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下とすることが好ましく、より好ましくは5.5以上10.5以下、さらに好ましくは5.8以上10以下とすることである。
本実施形態のポリアセタールコポリマーは、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を5以上11以下であることで、機械的物性、耐久性、耐衝撃性をポリアセタールホモポリマーと同等の領域に改善することができる。
(重合触媒)
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、アルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、イソポリ酸、ヘテロポリ酸、ルイス酸、プロトン酸、およびそのエステルまたは無水物等のカチオン性触媒が用いられる。
アルキルスルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
パーフルオロアルキルスルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸等、およびこれらの無水物が挙げられる。これらの無水物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸無水物、パーフルオロヘプタンスルホン酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
イソポリ酸またはその酸性塩としては、特に限定されないが、例えば、パラタングステン酸、メタタングステン酸等の如きイソポリタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸等の如きイソポリモリブデン酸、メタポリバナジウム酸、イソポリバナジウム酸等が挙げられる。中でもイソポリタングステン酸が好ましい。
ヘテロポリ酸としては、特に限定されないが、例えば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。これらの中でも、リンタングステン酸が好ましい。
ルイス酸としては、特に限定されないが、例えば、ホウ素、スズ、チタン、リン、ヒ素およびアンチモンのハロゲン化物が挙げられ、具体的には三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、五フッ化リン、五塩化リン、五フッ化アンチモンおよびその錯化合物または塩が挙げられる。
また、プロトン酸、そのエステルまたは無水物としては、特に限定されないが、例えば、パークロル酸、パークロル酸−3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物、酸素原子または硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましく、具体的には、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテルが好ましい。
これらの重合触媒の使用量は、トリオキサン1molに対して、好ましくは1×10-8mol〜5×10-2molの範囲であり、より好ましくは1×10-7mol〜1×10-2molの範囲であり、さらに好ましくは1×10-7mol〜1×10-3molの範囲である。重合触媒の使用量が前記範囲であることで、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含む、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなるポリアセタールコポリマーの多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を所望の範囲内にすることができる。
またポリマー中に残存する触媒によるホルムアルデヒドの発生量の少ないポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある、と予想される。
(分子量調節剤)
分子量調節剤としては、特に限定されないが、カチオン重合の連鎖移動剤として作用する低分子量の化合物が用いられる。具体的には、例えば、アルキル基がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等の低級脂肪族アルキル基である、ホルムアルデヒドのジアルキルアセタールとそのオリゴマー、分子量3000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、およびメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級脂肪族アルコールが好ましく用いられる。
分子量調節剤の純度は、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、更により好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。
さらに、分子量調節剤としてメチラールを使用する場合には、含有されるギ酸メチルが7%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、よりさらに好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1%以下である。
分子量調節剤の使用量は、トリオキサンと前記コモノマーの混合物1mol当たりに、好ましくは1×10-5mol〜5×10-2mol、より好ましくは5×10-4mol〜2×10-2mol、さらに好ましくは1×10-4mol〜1×10-2molである。
分子量調節剤の使用量が前記範囲であることで、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含む、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなるポリアセタールコポリマーの多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を所望の範囲内にすることができる。
次に、本実施形態のポリアセタールコポリマーの分子量測定について説明する。
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC))
本実施形態は、一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含む、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなるポリアセタールコポリマーの絶対分子量による重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、絶対分子量による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)および絶対分子量に対する重量分率における絶対分子量20万以上150万以下の割合の測定に、多角度光散乱検出器(Multi Angle Light Scattering:MALS)と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)を用いる。
高分子の分子量の測定で、現在、最も普及している手法の1つがゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)である。その原理は、高分子が希薄溶液中で形成する大きさと同じ程度の大きさの細孔を有する粒状ゲルを充填したカラムに高分子希薄溶液を注入し、分子量の高い分子、すなわち、希薄溶液中における分子の大きさの大きいものは、ゲル表面の細孔への浸透が少なく、分子量の小さい分子よりも速く充填カラム中を移動する。この高分子のサイズによる細孔への浸透・溶出の速度の違いを利用する機構から、GPCは、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography:SEC)と称される。分子量の算出方法は、分子量既知の標準品を用いて換算する相対分子量が一般的である。通常、GPCで測定可能な分子量は、その検出器の種類・特徴にもよる。検出器としては、例えば示差屈折率検出器(Refractive Index Detector:RI検出器)や紫外吸収検出器(Ultraviolet Absorption Detector:UV検出器)などがある。RI検出器の原理は、高分子試料を溶解させる溶媒と試料の屈折率の差を検出する方法で、ほとんどの高分子において適用可能であり、濃度が比較的正確に得られるという利点から、最も多用されており、得られる情報は前述のように相対分子量、およびその分子量分布である。しかし、感度においては、やや劣ることがある。特に分子量が1万以上についてはdn/dc値(屈折率の濃度増分)は一定ですが、それ以下については分子量依存性が見られる。このような場合、分子量が非常に低い成分については、RI検出器の検出感度に分子量依存性があるため、特に分子量の低い高分子の平均分子量を求める場合や、低分子量成分の含有量を求めるような場合(例えば、分子量1万未満の割合を求める様な場合)は、正しい値が得られないことがある。UV検出器はRI検出器よりも高感度である利点があるが、紫外吸収を持たないポリマーは検出不可能である。得られる情報はRIと同じく相対分子量、およびその分子量分布やUVスペクトルである。このように、相対分子量の情報しか得られない検出器では、知りたい高分子の化学構造と、標準品に用いる試料の化学構造が異なる場合、分子量測定の精度については期待できず、実際を反映していないことがある。また、超高分子量成分の含有比率が大きい試料や、高温下でないと溶解しにくい難溶解性の高分子においては、その前処理等を工夫することで測定を行っているが、高分子鎖が劣化・分解することがあったり、フィルターによるろ過工程において、除外されることで正確な分子量や分子量分布が把握できないことがある。特に、ポリアセタールは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に用いる一般的な溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などに対する溶解性が低く、通常、その溶媒にはヘキサフルオロイソプロパノールを用いて、標準品にはポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いることが多い。しかし、その場合、分子量、および分子量分布は相対的なものであり、本願発明が解決しようとする課題である、機械的物性、耐久性、耐衝撃性、熱安定性に優れ、かつ、成形性、耐薬品性、リサイクル性に優れるものを得るために、結晶性ポリマーであるポリアセタールの結晶形成を好適な条件に制御するうえで、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を制御することが有効であることについては何ら知見がない。
本実施形態で用いる多角度光散乱検出器(MALS)の原理を説明する。高分子鎖に光をあてることより、振動双極子が誘起され、光の波長と同じ光を散乱する。分子のサイズが異なると、角度により散乱強度が異なる。高分子量の分子では散乱する光は非等方散乱となり、散乱する光の強度は、分子量、濃度、および分子の個数に比例する。多角度光散乱検出器(MALS)では、複数の角度から散乱光を検出することにより、標準品を使うことなく、高分子の絶対分子量、および分子サイズを測定するものであり、特に高分子量成分が多いものほど感度に優れるという特徴を有している。
なお、光散乱法で正確な絶対分子量を決定する為には使用する光散乱測定器と同じ波長でのdn/dc値(屈折率の濃度増分)を測定する必要がある。また、光散乱測定では溶媒の屈折率情報も必要である。そのため、示差屈折率検出器(RI検出器)を併用して使用し、処理ソフトにより解析する。
本実施形態のポリアセタールコポリマー、例えば、トリオキサン1molに対して、環状エーテル化合物、又は環状ホルマール化合物から選ばれる1種以上のコモノマーを0.0001mol以上0.015mol以下の割合で共重合して、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーは、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下とすることが好ましい。
ポリアセタールコポリマーの機械的物性、耐久性、耐衝撃性などについて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の制御が有効である理由は定かではないが、結晶性ポリマーであるポリアセタールが結晶を形成するとき、高分子量のポリマー鎖と低分子量のオリゴマー鎖が混在する状態で、互いに絡み合ったコイル状の分子鎖が完全に結晶化することはなく、部分的に結晶化してラメラ構造を形成する結晶領域と非晶領域を形成することが知られている。このとき、隣り合う結晶を連結する分子鎖(所謂、タイ分子)が結晶間の力の伝達を担うため、高分子結晶の力学物性に最も寄与するものと考えられている。多角度光散乱検出器(MALS)により得られる絶対分子量、および絶対分子量による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、このタイ分子の分子量や絡み合い量と密接に関係しており、絶対分子量、および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を一定範囲内とすることで、力学物性を高めることができるのではないかと推定される。
(ポリアセタールコポリマーの絶対分子量について)
本実施形態のポリアセタールコポリマー、例えば、トリオキサン1molに対して、環状エーテル化合物、又は環状ホルマール化合物から選ばれる1種以上のコモノマーを0.0001mol以上0.015mol以下の割合で共重合して、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーは、多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定において、重量平均分子量(Mw)が14万以上60万以下であることが好ましく、より好ましくは17万以上55万以下、さらに好ましくは20万以上50万以下とすることである。
ポリアセタールコポリマーの多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定において、ポリアセタールコポリマーの重量平均分子量(Mw)を14万以上60万以下とすることで、ポリアセタールコポリマーの機械的物性、耐久性、耐衝撃性をポリアセタールホモポリマーと同等の領域に改善することができる。当該重量平均分子量(Mw)を60万以下とすることで、成形性(反り性)に優れるとともに、ポリアセタールコポリマーの生産性を工業的に高いレベルで製造することができる。
絶対分子量測定において、重量平均分子量(Mw)が上記範囲であるポリアセタールコポリマーを得る方法としては、特に限定されないが、例えば、分子量調節剤の使用量をトリオキサンと前記コモノマーの混合物1mol当たりに、好ましくは1×10-5mol〜5×10-2molとすることや、前記重合触媒の使用量を、トリオキサン1molに対して、好ましくは1×10-8mol〜5×10-2molとすることなどが挙げられる。
また、前記ポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定で、絶対分子量に対する重量分率において、絶対分子量20万以上150万以下の割合を、15%以上50%以下とすることが好ましく、より好ましくは17%以上45%以下、さらにより好ましくは20%以上40%以下である。
ポリアセタールコポリマーの多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量20万以上150万以下の割合を15%以上とすることで、ポリアセタールコポリマーの機械物性、耐久性、耐衝撃性をポリアセタールホモポリマーと同等の領域に改善することができる。当該絶対分子量20万以上150万以下の割合を50%以下とすることで、成形性(反り性)に優れるとともに、ポリアセタールコポリマーの生産性を工業的に高いレベルで製造することができる。
ポリアセタールコポリマーの機械物性、耐久性、耐衝撃性をより高いレベルにするという観点から、多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定で、絶対分子量に対する重量分率において、絶対分子量40万以上150万以下の割合は、好ましくは10%以上40%以下、より好ましくは12%以上35%以下、さらにより好ましくは15%以上30%以下である。
絶対分子量40万以上の超高分子量成分を上記範囲で含有させることにより、ポリアセタールコポリマーの機械的物性、耐久性、耐衝撃性を著しく向上させることができる。
(ポリアセタールコポリマーのシャルピー衝撃強さおよび重量増加率について)
本実施形態のポリアセタールコポリマーは、シャルピー衝撃強さが7kJ/m2以上、且つ密閉容器でメタノールに60℃750時間浸漬後の重量増加率が2.5%以下であることが好ましい。当該シャルピー衝撃強さは、7〜30kJ/m2であることがより好ましく、8〜25kJ/m2であることがさらに好ましい。また、当該重量増加率は、0.1〜2.4%であることがより好ましく、0.05〜2.0%であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態において、シャルピー衝撃強さおよび重量増加率は後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(ポリアセタールコポリマー(P1)、及びポリアセタールコポリマー(P2)を得る工程について)
本実施形態のポリアセタールコポリマーとしては、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、上述した特定の量のオキシアルキレン単位を含み、Mw/Mnが特定の範囲であれば特に限定されないが、例えば、下記工程で得られるポリアセタールコポリマー(P1)やポリアセタールコポリマー(P2)が挙げられる。
ポリアセタールコポリマー(P1)を得る方法としては、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。例えば、前記する精製したトリオキサン1molに対して、環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物から選ばれる1種以上のコモノマー、および分子量調節剤をトリオキサンに対して前述の範囲内で処方し、前記する重合触媒いずれか1種以上を好ましい範囲内で使用して重合させることにより、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含む、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下であるポリアセタールコポリマー(P1)を得ることができる。
その重合方法としては、一般には塊状重合で行われ、バッチ式、連続式いずれも可能である。用いられる重合装置としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混錬機、2軸パドル型連続混合機等のセルフクリーニング型押出混錬機が使用され、溶融状態のモノマーが重合機に供給され、重合の進行とともに固体塊状のポリアセタールコポリマーが得られる。
以上の重合で得られたポリアセタールコポリマー(P1)には、用いられた重合触媒が含有される他、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕が存在するため、そのままでは、実用において期待される物性が得られないことがある。そこで、ポリアセタールコポリマー(P1)に対して、失活処理工程、末端処理工程、脱揮乾燥工程のいずれか1つ以上の工程に供することで得られるポリアセタールコポリマー(P2)とすることが好ましい。このようにポリアセタールコポリマー(P1)をポリアセタールコポリマー(P2)とすることで物性・安定性のさらなる向上を図ることができ好ましい。以下、ポリアセタールコポリマー(P1)をポリアセタールコポリマー(P2)とする工程について説明する。
(ポリアセタールコポリマー(P1)に対する失活処理工程)
前記重合反応により得られるポリアセタールコポリマー(P1)には重合触媒が含有される。このようなポリアセタールコポリマー(P1)に含まれる重合触媒の失活処理工程を行うことにより、ポリアセタールコポリマー(P2)を得ることができる。重合触媒の失活処理工程によりポリアセタールコポリマー(P2)を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、重合反応機から出たポリアセタールコポリマー(P1)を、塩基性物質の少なくとも1種を含む水溶液または有機溶液中に投入し、スラリー状態で数分〜数時間、室温〜100℃以下の範囲で連続攪拌する方法が挙げられる。失活剤である塩基性物質としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ストロンチウム、もしくはバリウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩等、また、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。特に、トリエチルアミン等のアミン化合物の水溶液やアミン化合物の水/メタノール混合溶液等が好ましい。
これら塩基性物質は、常温で固体状のものは固体のままで、また、液体状のものは液体のままの状態で添加することも可能であるし、また、水やその他適当な有機溶剤に溶解または分散した状態で添加することも可能である。ポリアセタールコポリマー(P1)を塩基性物質の少なくとも1種を含む水溶液または有機溶液中に投入する場合、塩基性物質は、ポリアセタールコポリマー(P1)に対して0.001質量%以上5質量%以下で添加することが好ましい。また、塩基性物質を水その他適当な有機溶剤に溶解または分散した液状で添加する場合には、塩基性物質溶液はポリアセタールコポリマー(P1)に対してポリアセタールコポリマー(P1)の重量に対して、0.5倍以上10倍以下の重量を添加して失活処理を行うことが好ましい。
また、アンモニアやトリエチルアミン等については、その蒸気をポリアセタールコポリマー(P1)と接触させることにより重合触媒の失活を行うことも可能である。アンモニアやトリエチルアミン等の蒸気を窒素などの不活性ガスと混合して、ポリアセタールコポリマー(P1)と接触させて失活する場合には、不活性ガス中の塩基性物質蒸気の含有量は、体積%で1体積%以上99.5体積%以下が好ましい。
失活処理工程の温度は、ポリアセタールコポリマー(P1)の重合装置出口温度以上融点以下であり、70℃以上150℃以下が好ましい。
この際、ポリアセタールコポリマー(P1)が大きな塊状の場合は、重合後一旦粉砕して処理することが好ましい。その後、遠心分離機でろ過し、窒素下で乾燥することにより、ポリアセタールコポリマー(P2)が得られる。
(ポリアセタールコポリマー(P1)に対する末端処理工程)
前記重合反応により得られるポリアセタールコポリマー(P1)には、熱的に不安定な末端部〔−(OCH2n−OH基〕が存在することがある。このようなポリアセタールコポリマー(P1)の不安定な末端部の処理工程を実施することでも、ポリアセタールコポリマー(P2)を得ることができる。
不安定末端処理工程の方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、下記式(22)で表わされる少なくとも1種の第4級アンモニウム化合物の存在下に、ポリアセタールコポリマー(P1)の融点以上260℃以下の温度で、ポリアセタールコポリマー(P1)を溶融させた状態で熱処理する方法が挙げられる。
[R1R2R3R4N+n-n 式(22)
(式中、R1、R2、R3、およびR4は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基若しくは置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基若しくは置換アルキル基の水素原子が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;または炭素数6〜20のアリール基の水素原子が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基若しくは置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、前記非置換アルキル基または前記置換アルキル基は直鎖状、分岐状、または環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、またはアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。nは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、または炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
本実施形態に用いる第4級アンモニウム化合物は、上記式(22)で表わされる化合物であれば特に制限はされないが、式(22)におけるR1、R2、R3、およびR4が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、この内、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基である化合物がより好ましい。このような第4級アンモニウム化合物は、特に限定されないが、具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸等の水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸等のオキソ酸塩;チオ硫酸等のチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸等のカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH-)、硫酸(HSO4 -、SO4 2-)、炭酸(HCO3 -、CO3 2-)、ホウ酸(B(OH)4 -)、カルボン酸の塩が好ましい。カルボン酸の内、蟻酸、酢酸、プロピオン酸がより好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、公知の不安定末端部の分解促進剤であるアンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用することもできる。
第4級アンモニウム化合物の使用量は、ポリアセタール樹脂と第4級アンモニウム化合物の合計質量に対する下記式(23)で表わされる第4級アンモニウム化合物由来の窒素の量に換算して0.05〜50質量ppmが好ましく、より好ましくは1〜30質量ppmである。
〔第4級アンモニウム化合物の使用量〕=P×14/Q 式(23)
(式中、Pは第4級アンモニウム化合物のポリアセタール樹脂に対する濃度(質量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表わす。)
第4級アンモニウム化合物の使用量を0.05質量ppm以上とすることにより、不安定末端部の分解除去速度が向上する傾向にあり、50質量ppm以下とすることにより、不安定末端処理後のポリアセタールコポリマー(P2)の色調が良くなるという効果も得られうる。
本実施形態に用いるポリアセタールコポリマー(P1)の末端処理工程で熱処理に用いる装置としては、特に限定されないが、例えば、押出機、ニーダー等が好適である。
第4級アンモニウム化合物の添加方法としては、特に限定されないが、例えば、ポリアセタールコポリマー(P1)の重合触媒を失活する失活処理工程において、水溶液として加える方法、重合で生成したポリアセタールコポリマー(P1)に直接吹きかける方法等がある。いずれの添加方法を用いても、ポリアセタールコポリマー(P1)を熱処理する工程で添加されていればよく、押出機の中に注入したり、押出機等を用いてフィラーやピグメントを配合した樹脂ペレットに該第4級アンモニウム化合物を添着し、その後の配合工程で末端処理工程を実施してもよい。
末端処理工程は、重合で得られたポリアセタールコポリマー(P1)中の重合触媒の失活させた後に行なうことも可能であるし、また重合触媒を失活させずに行なうことも可能である。
このようにして得られるポリアセタールコポリマー(P2)は、様々な種類の末端基を有しており、それら末端基の量は例えば特開2001−11143号公報に記載のように、1H−NMR測定により求めることができる。
ポリアセタールコポリマー(P2)中の全末端量に対するホルミル基(−CHO)を有する末端の量の割合は1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下であり、更に好ましくは0.2%以下である。ホルミル基を有する末端の量が1.0%以下であると、より高い寸法精度を有する成形体を得ることができ、また耐久性により優れるポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
(ポリアセタールコポリマー(P1)に対する脱揮乾燥工程)
前記重合反応により得られるポリアセタールコポリマー(P1)を、失活処理工程および/または末端処理工程での処理の有無に関わらず、融点以下の温度、好ましくは100℃以上150℃以下の温度で不活性ガス雰囲気下にて加熱すること、または、加熱した後ポリアセタールコポリマー(P1)を減圧雰囲気下にすることで、揮発成分を脱揮乾燥する工程で処理することによってもポリアセタールコポリマー(P2)を得ることができる。脱揮乾燥工程の温度が100℃より低いと未反応トリオキサンや重合触媒の除去効率が低下し装置が大型化する。脱揮乾燥工程の温度が150℃より高い温度ではポリアセタールコポリマー(P1)中の不安定末端に由来する揮発成分が増加することがある。また、ポリアセタールコポリマー(P1)の融点を超える温度で脱揮乾燥処理を行うと、ポリアセタールコポリマー(P1)が溶融・融着してしまい脱揮乾燥処理が十分行えないことがある。脱揮乾燥工程において、減圧する場合、圧力は0.01kPa以上100kPa以下であることが好ましい。
脱揮乾燥工程の時間は、5分間以上10時間以下が好ましく、より好ましくは10分間以上8時間以下、さらにより好ましくは30分以上6時間以下である。脱揮乾燥工程の時間が短いと未反応モノマーや重合触媒の除去不足となりポリアセタールコポリマー(P2)の成形品位や耐熱エージング性が低下したり、ギ酸抽出量が多すぎることになる。10時間を超えると揮発成分の除去は十分であるが、装置が大型化する。ポリアセタールコポリマー(P1)に対して、脱揮乾燥処理を行うことにより、揮発成分の含有量を極めて低レベルに抑制することができ、ポリアセタールコポリマー(P2)を用いた成形品における成形品の品位や耐熱エージング性を高いレベルにすることができ、好ましい。
(ポリアセタールコポリマー(P1)のMw/Mn比(M1)とポリアセタールコポリマー(P2)のP2のMw/Mn比(M2)の関係について)
ポリアセタールコポリマー(P1)、および前記ポリアセタールコポリマー(P2)に対する、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)において、P1のMw/Mn比(M1)と、P2のMw/Mn比(M2)との差が、0.1以上1.5未満であることが好ましい。
ポリアセタールコポリマー(P1)に対して失活処理工程、末端処理工程、安定剤配合工程、脱揮乾燥工程のいずれか1つ以上に供することで、分子量分布、特に多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定による分子量1万以下の低分子量成分や分子量20万以上の超高分子量成分の含有比率が変化することにより、ポリアセタールコポリマー(P1)のMw/Mn比(M1)とポリアセタールコポリマー(P2)のMw/Mn比(M2)との差が生じる。この分子量分布の比の変化により、高分子量のポリマー鎖と低分子量のオリゴマー鎖とが混在する状態における分子鎖の絡み合いの状態が変化して、高分子の力学特性に影響を与えるものと推定される。そのため、M1とM2との差を0.1以上1.5未満とすることで、ポリアセタールコポリマー(P2)の機械物性や耐衝撃性を高いレベルに維持したまま、安定性を向上させることができる。M1とM2との差が1.5を超えるような場合、ポリアセタールコポリマー(P2)の機械物性や耐衝撃性が低下することがある。0.1以下のときは、ポリアセタールコポリマー(P1)に対する処理が不十分のため、成形品位や耐熱エージング性の向上が見られないことがある。
(ポリアセタールコポリマー(P2)の絶対分子量について)
前記ポリアセタールコポリマー(P2)において、多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定において、重量平均分子量(Mw)が14万以上60万以下であることが好ましい。より好ましくは17万以上55万以下、さらに好ましくは20万以上50万以下とすることである。
ポリアセタールコポリマー(P2)の多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定において、重量平均分子量(Mw)が14万以上60万以下とすることで、ポリアセタールコポリマー(P2)の機械的物性、耐久性、耐衝撃性をポリアセタールホモポリマーと同等の領域に改善することができる。60万以下とすることで、成形性(反り性)に優れるとともに、ポリアセタールコポリマー(P2)の生産性を工業的に高いレベルで製造することができる。
また、前記ポリアセタールコポリマー(P2)において、多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定で、絶対分子量に対する重量分率において、絶対分子量20万以上150万以下の割合を、15%以上50%以下とすることが好ましく、より好ましくは17%以上45%以下、さらにより好ましくは20%以上40%以下である。
ポリアセタールコポリマー(P2)の多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量20万以上150万以下の割合を15%以上とすることで、ポリアセタールコポリマー(P2)の機械物性、耐久性、耐衝撃性をポリアセタールホモポリマーと同等の領域に改善することができる。当該絶対分子量20万以上150万以下の割合を50%以下とすることで、成形性(反り性)に優れるとともに、ポリアセタールコポリマー(P2)の生産性を工業的に高いレベルで製造することができる。
ポリアセタールコポリマー(P2)の機械物性、耐久性、耐衝撃性をより高いレベルにするという観点から、多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定で、絶対分子量に対する重量分率において、絶対分子量40万以上150万以下の割合を、好ましくは10%以上40%以下、より好ましくは12%以上35%以下、さらにより好ましくは15%以上30%以下である。
絶対分子量40万以上の超高分子量成分を上記範囲で含有させることにより、ポリアセタールコポリマー(P2)の機械的物性、耐久性、耐衝撃性を著しく向上させることができる。
(ポリアセタールコポリマーの融点)
本実施形態において、前記ポリアセタールコポリマー(P1)の融点(MP1)と、前記ポリアセタールコポリマー(P2)の融点(MP2)の差が2.5℃以下であることが好ましく、より好ましくは、2.0℃以下であり、さらに好ましくは1.5℃以下である。
通常のポリアセタールコポリマーの融点が160〜165℃であるのに対して、オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.00033mol以上0.005mol以下の一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むことで、ポリアセタールコポリマー(P1)の融点を169℃以上176℃以下の範囲内にするうえで好ましく、ポリアセタールコポリマー(P1)の融点を前記温度とすることで、ポリアセタールコポリマーの機械物性や耐衝撃性を所望の性能とするうえで好適である。
ポリアセタールコポリマーの融点は、主にコモノマーの含有量によって決まり、この融点が主にポリアセタールコポリマーの結晶化速度を支配し、ポリアセタール樹脂組成物を成形した場合に、成形品の結晶化度、すなわち製品の剛性を支配することは一般に良く知られたことである。
しかし、本発明者らは、コモノマー含有量以外に、本実施形態において、前記ポリアセタールコポリマー(P1)の融点(MP1)と、前記ポリアセタールコポリマー(P2)の融点(MP2)との差が、ポリアセタールコポリマーの機械物性や耐衝撃性に影響を与えることを見出した。すなわち、ポリアセタールコポリマー(P1)に対して、失活処理工程、末端処理工程、安定剤配合工程、脱揮乾燥工程のいずれか1つ以上に供することで、分子量分布、特に多角度光散乱検出器を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による絶対分子量測定による分子量1万以下の低分子量成分や分子量20万以上の超高分子量成分の含有比率が変化することにより、ポリアセタールコポリマー(P1)のMw/Mn比(M1)とポリアセタールコポリマー(P2)のMw/Mn比(M2)との差が生じる。この分子量分布の比の変化と結晶化の状態変化がポリアセタールコポリマーの機械物性や耐衝撃性に相関性があり、ポリアセタールコポリマー(P1)のMw/Mn比(M1)とポリアセタールコポリマー(P2)のMw/Mn比(M2)との差が1.5を超えるような場合、および、ポリアセタールコポリマー(P1)の融点(MP1)とポリアセタールコポリマー(P2)の融点(MP2)の差が2.5℃を超えるような場合、ポリアセタールコポリマーの剛性が低下したり、耐衝撃性が悪化するなど成形品の特性が低下することを見出した。そのため、ポリアセタールコポリマー(P1)の融点(MP1)と、ポリアセタールコポリマー(P2)の融点(MP2)の差を上述の範囲内に制御することがポリアセタールコポリマーの成形品の特性を優れたものとするうえで有用である。
(ポリアセタールコポリマー(P2)のMFRサイクルについて)
前記ポリアセタールコポリマー(P2)のMFRサイクルを以下のようにして測定する。前記ポリアセタールコポリマー(P2)のペレットによるMFR(メルトフローレート)測定値(V1)に対して、該ポリアセタールコポリマー(P2)を用いて200℃で短冊状の成形体を成形し、得られた成形体をV型粉砕機で破砕・粉砕後、200℃で、押し出し機で溶融混練して再ペレット化したポリアセタールコポリマー(P2’)のメルトフローレート(MFR(V2))、および、再ペレット化したポリアセタールコポリマー(P2’)を再び前回と同じ条件で短冊状の成形体を成形後、再度、V型粉砕機で破砕・粉砕後に再々ペレット化したポリアセタールコポリマー(P2”)のメルトフローレート(MFR(V3))を測定する。測定したMFR(メルトフローレート)のうち、V2/V1、およびV3/V2より、ポリアセタールコポリマー(P2)をリサイクルしたときのメルトフローレートの変化を定量し、ポリアセタールコポリマーをリサイクルしたときの劣化、すなわち初期状態とリサイクル後のポリマー鎖の切断過程を定量的に評価するMFRサイクルを提案する。V2/V1、およびV3/V2で表されるメルトフローレートの変化が、ポリアセタール樹脂のリサイクル時のポリマー鎖の切断による変化の大きさを示し、値が小さいほど、ポリアセタール樹脂をリサイクルしても、主鎖ポリマーの分解が少なく、劣化しにくいことを示す。本実施形態において、前記ポリアセタールコポリマー(P2)のV2/V1が1.01以上1.5未満であり、V3/V2が1.01以上1.5未満とすることが好ましい。ポリアセタールコポリマー(P2)のMFRサイクルを前記値の範囲内とすることで、熱安定性に優れ、かつ、機械物性、耐久性、耐衝撃性、リサイクル性にも優れるポリアセタールコポリマー(P2)とすることができる。
(ポリアセタールコポリマー(P2)のホルムアルデヒドガス発生速度)
前記ポリアセタールコポリマー(P2)は、230℃で加熱した際の加熱時間90分の間に発生するホルムアルデヒドの発生速度が35質量ppm/分以下であることが好ましい。
該ホルムアルデヒド発生速度の上限は、より好ましくは30質量ppm/分であり、更に好ましくは25質量ppm/分であり、特に好ましく20質量ppm/分である。該ホルムアルデヒド発生速度の好ましい下限は、このホルムアルデヒド発生速度が低い方がより安定であることを示す指標であるため、ゼロであるが、強いて挙げるとすれば0.1質量ppm/分である。
本実施形態において、前記ポリアセタールコポリマー(P2)は、前記ホルムアルデヒド発生速度が前記上限以下であると、ポリアセタールコポリマー(P2)を成形するときにmolドデポジットの発生を抑制し、かつ成形機を長時間停止後に成形再開した際に問題が起きないような高い熱安定性を持たせることができる。
前記方法で得られたポリアセタールコポリマー(P2)の前記ホルムアルデヒド発生速度は、窒素気流下(50NL/hr)において、ポリアセタールコポリマー(P2)を230℃で90分間加熱し、ポリアセタールコポリマー(P2)から発生するホルムアルデヒドガスを水に吸収した後、亜硫酸ソーダ法により滴定することで求めることができる。本測定は、溶融に要する時間も影響するので、測定対象物としてはペレットのような表面積の高いサンプル形状で行う事が好ましい。大きな塊で実施すると、ホルムアルデヒド発生速度が実際よりも小さく測定される可能性がある。本測定に用いるサンプルは、3mm以下のサイズであることが好ましい。サンプルを加熱後90分間に発生するホルムアルデヒドの発生速度を測定するには、サンプルを3mm以下となるよう切断もしくは粉砕することが好ましい。
(ポリアセタールコポリマー(P2)のギ酸抽出量)
前記ポリアセタールコポリマー(P2)は、80℃2時間加熱したときに抽出されるギ酸量が20重量ppm以下であることが好ましい。より好ましくは18重量ppm以下、さらに好ましくは15重量ppm以下である。該ギ酸量の下限は、ギ酸抽出量が少ないほどポリアセタールコポリマーの安定性が高いことを示す指標であるため、ゼロであるが、強いて挙げるとすれば、0.01重量ppmである。
本実施形態において、ポリアセタールコポリマー(P2)は、前記ギ酸抽出量が前記上限以下であると、高い耐熱水性を発揮することができる。
ポリアセタールコポリマー(P2)のギ酸抽出量の測定は、以下の方法にて測定することができる。
前記方法で得られたポリアセタールコポリマー(P2)のペレットを密閉容器に精秤し、純水1mlを追加して、80℃の恒温槽に2時間、静置する。その後、サンプルを室温になるまで冷却後、容器に純水10mlを追加・希釈して、イオンクロマトグラフィー法(測定機機種:ダイオネクス製DX−500(GP40傾斜ポンプ、ED40電気化学検出)、カラム:IonPac ICE−AS1(9mmφ×250mm)、溶離液:1.0mM オクタスルホン酸、溶離液流量:1.0mL/min、資料注入量:50μL、検出器:電気伝導度検出器)で測定する。本測定は、測定対象物の表面積も影響するため、ペレットのような表面積の高いサンプル形状で行う事が好ましい。大きな塊で実施すると、ギ酸抽出量が実際よりも小さく測定される可能性がある。本測定に用いるサンプルは、3mm以下のサイズであることが好ましい。サンプルを3mm以下となるよう切断もしくは粉砕することが好ましい。
<ポリアセタールコポリマーの製造方法>
本実施形態のポリアセタールコポリマーを製造する方法としては、周知の方法を用いることも出来る。例えば、US−A−3027352、US−A−3803094、DE−C−1161421、DE−C−1495228、DE−C−1720358、DE−C−3018898、および特開平7−70267号公報等に記載の方法によって得ることができる。具体的には、カチオン開始剤を重合触媒とし、トリオキサンと、環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物のコモノマーと、分子量調節剤と、有機溶剤とを原料として重合反応器に供給して、連続塊状重合反応によって製造する方法が挙げられる。
本実施形態のポリアセタールコポリマーの製造方法の具体例としては、例えば、トリオキサン1molに対して、上記一般式(2)〜(6)に記載の環状エーテル化合物及び/又は環状ホルマール化合物からなる群より選ばれる1種以上のコモノマーを0.0001mol以上0.015mol以下の割合で共重合する工程を含む方法が挙げられる。
また、本実施形態のポリアセタールコポリマーの製造方法は、前記共重合する工程が、トリオキサンおよび前記コモノマーの混合物1mol当たりに、分子量調節剤を1×10-5mol〜5×10-2molを原料とし、かつ、トリオキサン1mol当たり1×10-8mol〜5×10-2molのカチオン開始剤を重合触媒として用いて連続塊状重合反応を行う工程であることがより好ましい。
しかし、本実施形態のポリアセタールコポリマーを高重合収率で長期間安定して連続生産することができ、かつ少ない重合触媒でも重合収率が維持でき、高い熱安定性を有するポリアセタールコポリマーを製造する方法として、前記コモノマーと前記カチオン開始剤と前記分子量調節剤と前記有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得るプレ混合工程をさらに含むことが好ましい。
すなわち、トリオキサンと、環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物から選ばれる1種以上のコモノマーと、カチオン開始剤と、分子量調節剤と、有機溶剤とを、重合反応機に供給して共重合を行う際、前記環状エーテル化合物、または環状ホルマール化合物から選ばれる1種以上のコモノマーと前記カチオン開始剤と前記分子量調節剤と前記有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得るプレ混合工程と重合反応工程を含む、ポリアセタールコポリマーの製造方法である。
ここで使用する有機溶剤としては、重合反応に関与したり、悪影響を及ぼしたりするものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサンのようなエーテル類等が挙げられ、特にタール状析出物を抑制する観点からn−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素を好適例として挙げることができる。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤の添加量は、トリオキサン1molに対して0.1×10-3〜0.2molの範囲が好ましく、より好ましくは0.2×10-3〜0.5×10-1molの範囲であり、さらに好ましくは0.5×10-3〜0.3×10-1molの範囲である。有機溶剤の添加量が前記範囲内であるとき、重合反応機の供給部におけるスケール発生量を低減化でき、かつ高収率で共重合体が得られる。
(プレ混合工程)
後述する重合反応工程の前段階において、前記環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物と重合触媒と分子量調節剤と有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得ることが好ましい。
このプレ混合工程においては、先ず前記重合触媒と前記有機溶媒とを混合し、次に前記分子量調節剤、最後に前記環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物を混合することが好ましい。このような順序でプレ混合を行うことにより、下記の理由により混合物の急激な粘性上昇を抑制でき、長期安定運転を確実に実施できる。
すなわち、重合触媒と、環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物、または分子量調節剤は反応して粘性が上昇する。しかし、有機溶媒は重合触媒とは全く反応しないため粘性が上昇しない。また、有機溶媒は、重合触媒と、環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物、または分子量調節剤の反応を抑制する効果がある。
よって、先ず前記重合触媒と前記有機溶媒とを混合し、次に分子量調節剤、最後に前記環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物を混合することが好ましい混合順となる。
また、プレ混合工程後から後述する重合反応工程を行う重合反応機へ供給する間に、プレ混合物の均一化を維持するため、十分に混合することが好ましい。
混合方法としては、特に限定されないが、例えば、連続的に配管内で合流させ混合させる方法、連続的に配管内で合流させ、その後スタティックミキサーにて混合させる方法、攪拌機を備えた容器内で混合させる方法等が挙げられ、特に、連続的に配管内で合流させ、その後スタティックミキサーにて混合させる方法が好ましい。
また、プレ混合工程を実施する温度としては、0℃を超えて50℃未満の範囲が好ましい。
前記温度範囲でプレ混合を実施することにより、低コストでの実施が可能になり、かつ粘度の急激な上昇を抑制し、長期安定運転が可能になる。
また、プレ混合工程を実施する時間としては、0.01〜120分間の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜60分間の範囲である。
プレ混合時間を上記範囲内とすることにより、材料が十分に混合され、かつ混合物の急激な粘度上昇が抑制され、長期安定運転が可能になる。
上記プレ混合工程により得られたプレ混合物と前記トリオキサンとを、後述する重合工程を実施する重合反応機へ供給することが好ましい。
トリオキサンとプレ混合物とを重合反応機へ供給する方法としては、特に限定されないが、例えば、トリオキサンにプレ混合物を供給した後重合反応機に供給する方法、トリオキサンとプレ混合物を別々に重合反応機に供給する方法が挙げられる。
なお、後者の方法においては、重合反応機内でプレ混合物をトリオキサンで洗い流す工程を実施することが好ましい。
上述したように、予めプレ混合物を得ておき、当該プレ混合物とトリオキサンを重合反応機へ供給し、その後、後述する重合反応工程を実施することにより、重合反応の均一性が向上し、長期間安定した重合反応を実施することができ、かつスケール発生を抑制できるが、特に重合反応機内でプレ混合物をトリオキサンで洗い流すようにすることにより、重合反応が確実に重合反応機内で行われ、スケールの発生を効果的に抑制できる。
(重合反応工程)
上述のようにしてプレ混合物とトリオキサンとを重合反応機に供給した後、重合反応を行い、ポリアセタールコポリマーを得る。
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、特に限定されないが、例えば、スラリー法、塊状法、メルト法のいずれも採用できる。
また使用する重合反応機の形状(構造)も特に制限されるものではなく、ジャケットに熱媒を通すことのできる2軸のパドル式やスクリュー式の攪拌混合型重合装置がいずれも好適に使用される。
重合反応工程における重合反応機の温度は63〜135℃に保つことが好ましく、より好ましくは70〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは70〜100℃の範囲である。重合反応機内の滞留(反応)時間は0.1〜30分であることが好ましく、より好ましくは0.1〜25分であり、さらに好ましくは0.1〜20分である。
重合反応機の温度および滞留時間が上記範囲内であれば安定した重合反応が継続される傾向にある。
<ポリアセタール樹脂組成物>
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述のポリアセタールコポリマー、例えば、上述のポリアセタールコポリマー(P1)および/またはポリアセタールコポリマー(P2)を含む。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上述のポリアセタールコポリマー、例えば、ポリアセタールコポリマー(P1)および/またはポリアセタールコポリマー(P2)100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤、および結晶核剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.01質量部以上5質量部以下で含有することが好ましい。
前記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の例としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−テトラデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、1,4−ブタンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−t−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N’−ビス−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N’−テトラメチレン−ビス−3−(3’−メチル−5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N’−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオニル]ヒドラジン、N−サリチロイル−N’−サリチリデンヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、N、N’−ビス[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]オキシアミドなどがある。好ましくは、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.01〜1質量部配合することが好ましい。
前記ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体、または化合物のうち、重合体の例としては、特に限定されないが、例えば、ナイロン4−6、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12などのポリアミド樹脂、およびこれらの共重合物、例えば、ナイロン6/6−6/6−10、ナイロン6/6−12などを挙げられる。またアクリルアミドおよびその誘導体、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体やアミノ置換基を有するホルムアルデヒド反応性窒素原子を含む化合物を挙げることができる。アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとの共重合体の例としては、特に限定されないが、例えば、アクリルアミドおよびその誘導体と他のビニルモノマーとを金属アルコラートの存在下で重合して得られたポリ−β−アラニン共重合体を挙げることができる。また、化合物の例としては、特に限定されないが、例えば、アミド化合物、アミノ置換トリアジン化合物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物、アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、尿素、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、イミダゾール化合物、イミド化合物が挙げられる。
アミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジアミドなどの多価カルボン酸アミド、アントラニルアミド、ジシアンジアミドなどが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N’,N’’−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N’,N’’−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、アセトグアナミン(2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ−sym−トリアジン、2−オキシ−4,6−ジアミノ−sym−トリアジン、N,N,N’,N’−テトラシアノエチルベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、トリグアナミン、メラミンシアヌレート、エチレンジメラミンシアヌレート、トリグアナミンシアヌレート、アンメリン、アセトグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンなどのトリアジン誘導体が挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの付加物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、N−メチロールメラミン、N,N’−ジメチロールメラミン、N,N’,N”−トリメチロールメラミンが挙げられる。
アミノ置換トリアジン化合物とホルムアルデヒドとの縮合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。
尿素誘導体の例としては、特に限定されないが、例えば、N−置換尿素、尿素縮合体、エチレン尿素、ヒダントイン化合物、ウレイド化合物が挙げられる。N−置換尿素の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基等の置換基が置換したメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。尿素縮合体の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ビウレア、ビウレット、尿素とホルムアルデヒドとの縮合体等が挙げられる。ヒダントイン化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。ウレイド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。
ヒドラジン誘導体としては、窒素原子間の単結合を有するヒドラジン構造(N−N)を有するものであれば特に限定されず、例えばヒドラジン;ヒドラジン水和物;コハク酸モノヒドラジド、グルタル酸モノヒドラジド、アジピン酸モノヒドラジド、ピメリン酸モノヒドラジド、スペリン酸モノヒドラジド、アゼライン酸モノヒドラジド、セバシン酸モノヒドラジド等のカルボン酸モノヒドラジド;蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スペリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド等の飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボジヒドラジド等の芳香族カルボン酸ジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド;トリマー酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ベンゼントリカルボン酸トリヒドラジド、ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド等のトリヒドラジド;ピロメリット酸テトラヒドラジド、ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド等のテトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラート)と反応させてなるポリヒドラジド等のポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド;ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートおよびそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジン等のN,N−置換ヒドラジンおよび/または上記例示のヒドラジドを過剰に反応させて得られる多官能セミカルバジド;上記ポリイソシアネート化合物とポリエーテルポリオール類またはポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の親水性基を含む活性水素化合物との反応物中のイソシアネート基に、上記のいずれかのジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド;上記多官能セミカルバジドと上記水系多官能セミカルバジドとの混合物;ビスアセチルジヒドラゾン等が挙げられる。
イミダゾール化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
イミド化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スクシンイミド、グルタルイミド、フタルイミドが挙げられる。
これらホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物は1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。上記のホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物の内、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリオキシメチレン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部配合される。
ギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、上記のアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物などが挙げられる。他のギ酸捕捉剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩、またはアルコキシドが挙げられる。具体的には、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、もしくはバリウムなどの水酸化物、上記金属の炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ホウ酸塩、カルボン酸塩、またはアルコキシドが挙げられる。カルボン酸としては、10〜36個の炭素原子を有する飽和または不飽和脂肪族カルボン酸が好ましく、これらのカルボン酸は水酸基で置換されていてもよい。
脂肪族カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、12−ヒドロキシドデカン酸、3−ヒドロキシデカン酸、16−ヒドロキシヘキサデカン酸、10−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、10−ヒドキシ−8−オクタデカン酸、dl−エリスロ−9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸、などが挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のジ脂肪酸カルシウムが好ましく、具体的な例としては、特に限定されないが、例えば、ジミリスチン酸カルシウム、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウム、(ミリスチン酸−パルミチン酸)カルシウム、(ミリスチン酸−ステアリン酸)カルシウム、(パルミチン酸−ステアリン酸)カルシウム、などが挙げられ、特に好ましくは、ジパルミチン酸カルシウム、ジヘプタデシル酸カルシウム、ジステアリン酸カルシウムである。本実施形態においては、上記炭素数12〜22の脂肪酸由来のジ脂肪酸カルシウムからなる群から選ばれる2種以上をポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.01〜0.2質量部配合することが特に有効である。
耐候(光)安定剤は、ベンゾトリアゾール系物質、蓚酸アニリド系物質、およびヒンダードアミン系物質からなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
ベンゾトリアゾール系物質の例としては、特に限定されないが、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。蓚酸アニリド系物質の例としては、2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3’−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリドなどが挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒンダードアミン系物質の例としては、特に限定されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物、などが挙げられる。上記ヒンダードアミン系光安定剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも好ましい耐候(光)剤は、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物である。これらの耐候(光)安定剤は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して0.1〜1質量部配合されることが好ましい。
離型(潤滑)剤としては、特に限定されないが、例えば、アルコール、脂肪酸およびそれらのエステル、ポリオキシアルキレングリコール、平均重合度が10〜500であるオレフィン化合物、シリコーンなどが挙げられる。中でも、炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルが好ましく、特にエチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、エチレングリコールジヘプタデシレートが好ましい。本実施形態においては、これら炭素数12〜22の脂肪酸由来のエチレングリコールジ脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上をポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.01〜0.9質量部配合することが特に有効である。
結晶核剤としては、特に限定されないが、例えば、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化チタン、タルク、マイカ、アルミナ、ホウ酸化合物などが挙げられる。本実施形態においては、これら結晶核剤をポリアセタールコポリマー100質量部に対して、0.001〜0.05質量部配合することが特に有効である。
本実施形態においては、本発明の効果を損なわない範囲で、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に無機フィラー、ガラス繊維、ガラスビーズ、カーボン繊維などに代表される補強剤、導電性カーボンブラック、金属粉末、金属繊維などに代表される導電材、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂、またはこれらの変性物などに代表される熱可塑性樹脂、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、などに代表される熱可塑性エラストマーなどを配合してもよい。これらの成分は、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して1〜40質量部配合されることが好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、などに代表される無機顔料、縮合アゾ系、ペリノン系、フタロシアニン系、モノアゾ系、などに代表される有機顔料などを配合することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に配合できる顔料は0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜1質量部の範囲で使用される。5質量部を超えると熱安定性が低下し、好ましくない。
(ポリアセタール樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する装置としては、特に限定されないが、例えば、一般に実用されている混練機が適用できる。混練機としては、特に限定されないが、例えば、一軸または多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を用いればよい。中でも、減圧装置、およびサイドフィーダー設備を装備することが可能な二軸押出機がより好ましい。溶融混練の方法としては、例えば、各原料成分を押出機のメインスロートから連続的にフィードして溶融混練させる方法;各原料成分を、メインスロートと、押出機のサイドに設けられたサイドフィーダーとに分割して添加して溶融混練させる方法等を挙げることができる。
(成形体)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより成形体を得ることができる。上述の樹脂組成物の成形方法は、特に制限するものではなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
(用途)
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を成形することにより得られる成形体の用途としては、以下に限定されるものではないが、例えば、具体例としては、カム、スライダー、レバー、アーム、クラッチ、フェルトクラッチ、アイドラギアー、プーリー、ローラー、コロ、キーステム、キートップ、シャッター、リール、シャフト、関節、軸、軸受け、およびガイド等に代表される機構部品であって、複写機等の内部部品、カメラ・ビデオ機器の内部部品、光デイスクのドライブの内部部品、自動車用ナビゲーションシステムの内部部品、モバイル型音楽・映像プレーヤーの内部部品、携帯電話・ファクシミリ等の通信機器の内部部品、ハードディスクドライブの内部部品(例えば、ランプ、ラッチ、等)、自動車のウインドウレギュレータ等に代表されるドア廻りの内部部品の他、シートベルト用スリップリング、プレスボタン等に代表されるシートベルト周辺部品、コンビスイッチ部品、スイッチ・クリップ部品、洗面台や排水口の排水栓開閉機構部品、自動販売機の開閉部ロック機構部品・商品排出機構部品・そのほか内部部品、玩具、ファスナー、チェーン、コンベア、バックル、スポーツ用品、家具、楽器、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。これらの中でも特に射出成形歯車、複写機ドラムギア、または画像成形装置内の感光体ドラムのフランジに好適に使用できる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を表す。また、以下の物性測定で得られた評価について、「◎」、「○」、「△」、「×」または「××」、「×××」で評価している項目があるが、特に断りがない限り、「◎」、「○」および「△」であれば、実用上十分な値と判断した。
(1)ポリアセタールコポリマー中の式(1)で示されるオキシアルキレン単位挿入量およびシーケンス
ポリアセタールコポリマー(P1)10gを100mlの3NのHCl水溶液に入れ密封容器中で、120℃×2時間加熱し分解させた。冷却後水溶液中のモノアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールの量をガスクロマトグラフィー(FID)にて測定し、式(1)で示されるオキシアルキレンユニットの量を共重合体のオキシメチレンユニットに対するmol%で表した。式(1)で示されるオキシアルキレンユニットのシーケンスは、モノアルキレングリコールの量がn=1である単位の割合に、ジアルキレングリコールの量がn=2である単位の割合に、トリアルキレングリコールの量がn=3である単位の割合に対応する。
(2)多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Mw/Mn比、および絶対分子量の測定
装置:東ソー製HLC−8220GPC
カラム:SHODEX製GPC HFIP−806M ×2本
溶離液:5mM CF3COONa in HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)
溶離液流量:0.5ml/min
カラム槽温度:40℃
検出器:Wyatt社 多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS II
Wyatt社 示差屈折率検出器 Optilab T−rEX
光散乱法で正確な絶対分子量を決定する為には使用する光散乱測定器と同じ波長でのdn/dc値(屈折率の濃度増分)を測定する必要がある。また、光散乱測定では溶媒の屈折率情報も必要である。そのため、上記の屈折率検出器も併用して使用し、多角度光散乱検出器および屈折率検出器は、屈折率検出器を最も下流となるように流路を直列に接続した。多角度光散乱検出器は波長658nmで測定した。処理ソフとしてSICシステム・インスツルメンツ社製のGPC解析処理ソフト「μ7Data Station」により、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Mw/Mn比、および絶対分子量とその分率を定量した。また、溶媒等に由来するノイズをカットして測定精度を上げるため、絶対分子量500以下の低分子量成分を除いて分子量、Mw/Mn比、および分率を求めた。
(3)ホルムアルデヒドガス発生速度(ppm/min)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対して水を0.5質量部、酸化防止剤として、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を0.3質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行ない、長さ2mm以上4mm以下、直径1mm以上3mm以下のポリアセタールコポリマーのペレットを得た。得られたポリアセタールコポリマーのペレット3gを窒素気流下において、230℃、90分間にポリアセタールコポリマーから発生するホルムアルデヒドガスを水に吸収した後滴定し、測定した。測定した総ホルムアルデヒド量を90分間で割って、1分間当たりの平均のホルムアルデヒドガス発生速度を(ppm/min)を計算した。ホルムアルデヒドガス発生速度が小さい程熱安定性に優れる。
(4)融点(℃)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−8000)を用い、一旦200℃まで10℃/分の速度で昇温し融解させた試料を2分間200℃で保持した後、同様に10℃/分の速度で200℃から100℃まで冷却し、再度2.5℃/分の速度にて昇温する過程で発生する発熱スペクトルのピークの温度を融点とした。
(5)MFR(メルトフローレート:g/10min)
ASTM−D−1238により東洋精機製のMELT INDEXERを用いて190℃、2160gの条件下でMFR(メルトフローレート:g/10min)を測定した。
(6)MFRサイクル試験
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットによるMFR(メルトフローレート)測定値(V1)に対して、該ペレットを用いて、東芝(株)製IS−80A射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力50MPa、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70℃にて、寸法130mm×13mm×3mmの短冊状の成形体を成形した。得られた成形体をV型粉砕機で最大長が20mm以下に破砕後、200℃の押し出し機で溶融混練して再ペレット化したポリアセタールコポリマー(P2’)を含むポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレート(MFR(V2))を測定した。再ペレット化したポリアセタールコポリマー(P2’)を含むポリアセタール樹脂組成物を、再び前回と同じ条件で短冊状の成形体を成形後、再度、V型粉砕機で破砕後・再々ペレット化したポリアセタールコポリマー(P2”)を含むポリアセタール樹脂組成物のメルトフローレート(MFR(V3))を測定した。V2/V1、およびV3/V2より、ポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物をリサイクルしたときのメルトフローレートの変化を評価した。値が小さいほど、ポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物をリサイクルしても、主鎖ポリマーの分解が少なく、劣化しにくいことを示す。
(7)ポリアセタールコポリマー(P2)のギ酸抽出量(重量ppm)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットによるギ酸抽出量の測定は、以下の方法にて行った。
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレット5gを容量100mlの密閉容器に精秤する。これに純水1mlを追加して、80℃の恒温槽に2時間、静置した。その後、サンプルを室温になるまで冷却後、容器に純水10mlを追加・希釈して、イオンクロマトグラフィー法(測定機機種:ダイオネクス製DX−500(GP40傾斜ポンプ、ED40電気化学検出)、カラム:IonPac ICE−AS1(9mmφ×250mm)、溶離液:1.0mM オクタスルホン酸、溶離液流量:1.0mL/min、資料注入量:50μL、検出器:電気伝導度検出器)で測定した。
(8)曲げ弾性率
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、東芝(株)製IS−80A射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力50MPa、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70℃にて成形することによりISO3167:93(JIS K 7139:96)に準拠したダンベル形(A形)試験片試験片を作成し、作成した試験片についてASTM D790にしたがって曲げ弾性率を測定した。
(9)シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS−100GN)で成形することにより、以下に記載の試験法による試験片を作成しシャルピー衝撃強さを評価した。
試験法:ISO179(JIS K7111)
単位:kJ/m2
中央にノッチ(切り込み)を入れた短冊試験片の両端を支持して水平に保ち、ノッチを入れた面の反対側の面に打撃鎚を打ち付けて試験片を破壊した。試験片の破壊に要したエネルギーを求め、試験片の断面積で除して、シャルピー衝撃強さを算出した。
(10)耐繰り返し衝撃性
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS−100GN)を用いて、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃の射出条件で、射出成形することによって、ISO3167:93(JIS K 7139:96)に準拠したダンベル形(A形)試験片を作製した。作製した試験片を、140℃に設定されたギヤーオーブン(エスペック(株)製ギヤーオーブンGPH−201)に吊るし、240時間加熱した。その後、ギヤーオーブンから上記試験片を取り出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で24時間静置した後、試験片を長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの長板状に切削し、長さ方向の中心部にノッチ(先端R=0.25mm、ノッチ幅=8mm、ノッチ深さ=2mm)を形成して耐繰り返し衝撃試験用試験片を得た。得られた試験片を、耐繰り返し衝撃性測定装置(東洋精機製作所製、商品名「AT繰り返し衝撃試験機」)にセットし、160gの重りをセットし、20mmの高さから落下させて試験片に衝突させることにより繰り返し衝撃を与え、試験片が破壊されるまでの衝撃(衝突)回数を測定した。破壊までの衝撃回数が多いほど耐繰り返し衝撃性に優れる。
(11)振動疲労特性
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、試験規格:ASTM−D671B法に基づく試験片を作成し、作成した試験片について曲げ振動疲労を定応力繰り返し疲労試験機(東洋精機製作所製)で評価した。試験条件は23℃湿度50%で、試験速度1,800±4cpm(回/分)で最多振動回数107回で行い、曲げ応力が初期の70%以下になる振動回数で評価した。振動回数が107以上を◎、106以上107未満を○、105以上106未満を△、104以上105未満を×、104未満を××とした。
(12)引張クリープ特性
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、東芝(株)製IS−80A射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力50MPa、射出速度30%、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70℃で成形することにより、寸法110mm×6.5mm×3mmの短冊状の試験片を作成し、この試験片に20MPaの引張応力をかけて80℃の空気中に放置し、試験片が破壊されるまでの時間を測定した。破壊されるまでの時間が長いほど耐クリープ特性に優れる。
(13)靭性(引張伸度)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS−100GN)を、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃の射出条件で用いて、射出成形することによって、ISO準拠の試験片を作製した。作製した試験片について、引張試験機((株)島津製作所製、AG−IS)を、引張速度:50mm/分の条件で用いて、引張伸度を測定した(n=3)。3回の測定の平均値を引張伸度として、得られた引張伸度により靭性の評価とした。
(14)成形品位(変色性)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥したペレット、および上記靭性評価用に成形した試験片を用いて、ハンディーカラーテスター(MINOLTA製CR−200)にてb値(黄度)の測定を行った。ペレットのb値と靱性評価用試験片のb値とを比較してb値の変化量を以下の基準で評価した。変化量が小さいほど、成形品位(変色性)に優れる。
変化量0.5未満を◎、0.5以上1.5未満を○、1.5以上3.0未満を△、3.0以上5.0未満を×、5.0以上を××とした。
(15)耐熱エージング性
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS−100GN)を、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃の射出条件で用いて、射出成形することによって、ISO準拠の試験片を作製した。作製した試験片について、引張試験機((株)島津製作所製、AG−IS)を、引張速度:50mm/分の条件で用いて、引張強度を測定した(n=3)。3回の測定の平均値を引張強度とした。
そして、作製した試験片を、設定温度:140℃のギヤーオーブン(エスペック(株)製ギヤーオーブンGPH−201)内に保持し、一定時間経過毎に試験片を取り出し、温度:23℃、湿度:50%に保たれた恒温室で、24時間静置した。この静置後の試験片の引張強度を、前述と同様に測定した。上記測定を継続的に行い、試験片の引張強度が初期値の80%となるまでの日数を求めた。該日数が長いほど耐熱エージング性が良好であると判定した。
(16)耐熱水エージング性
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS−100GN)を、シリンダー温度:200℃、金型温度:80℃の射出条件で用いて、射出成形することによって、ISO準拠の試験片を作製した。作製した試験片を、120℃高温高圧ジャケット式水槽に浸漬させた。浸漬させた試験片を2日おきに取り出し(水槽中の水は4日おきに入れ替えた)、それぞれの試験片を温度:23℃、湿度:50%に保たれた恒温室で、24時間静置した。この静置後の試験片の引張強度を、引張試験機((株)島津製作所製、AG−IS)を、引張速度:50mm/分の条件で用いて、測定した(n=3)。3回の測定の平均値を測定値とした。
上記測定を継続的に行い、試験片の引張強度が50MPaとなるまでの日数を求めた。該日数が長いほど耐熱水エージング性が良好であると判定した。
(17)成形性−1(耐モールドデポジット性)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、下記条件で特定の形状の成形品を連続成形し、耐molドデポジット性を目視観察にて、以下の基準で評価した。
金型にmolドデポジットが全くない状態を◎、金型にmolドデポジットが僅かに観察されるものを○、金型の1/5未満にmolドデポジットが発生しているものを△、金型の1/5以上1/2未満にmolドデポジットが発生しているものを×、金型の1/2以上にmolドデポジットが発生しているものを××、molドデポジットにより付着により連続成形が不可能となる状態を×××とした。
(成形条件)
東洋機械金属(株)製Ti−30G射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力50MPa、射出速度50%、射出時間10秒、冷却時間5秒、金型温度30℃で35mm×14mm×2mmの成形品を連続的に成形し、2000ショット実施後に評価した。
(18)成形性−2(反り性)
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度200℃に設定された射出成形機(東芝(株)製IS−80A)を用い、金型温度60℃、冷却時間30秒の条件で射出成形して、寸法約150×150×2mmのピンゲート平板(サンプル)を作製した。これを成形後2日、温度23℃、湿度50%RH雰囲気下にてサンプルの調整を行った。この後、反り量の測定を行った。測定は平面上に上記の平板状試験片を置き、3点を固定したときの反り量(高さ)をハイトゲージ(ミツトヨ製、HDM−A)にて測定し、その最大値を反り変形量とした。
(19)耐薬品性
実施例および比較例で得られたポリアセタールコポリマー(P2)のペレットを80℃で3時間乾燥した後、東芝(株)製IS−80A射出成形機を用い、シリンダー温度200℃、射出圧力50MPa、射出時間15秒、冷却時間25秒、金型温度70℃にて成形することにより、寸法130mm×13mm×3mmの短冊状の成形体を作成した。この成形体を、有機溶剤(ガソリン、メタノール濃度15vol%のガソリン、メタノールの3種類を使用)が入ったステンレス製の密閉容器に入れて有機溶剤に浸漬し、60℃で750時間放置した後、試験片の重量増加率(%)を評価した。値が小さい程耐薬品性に優れる。
[実施例1]
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸パドル型連続重合反応機(栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を80℃に調整し、トリオキサンと、コモノマーとして1,3−ジオキソラン(トリオキサン1molに対して0.005mol)と、分子量調節剤としてメチラール(トリオキサンと1,3−ジオキソランの合計のモノマー1molに対して0.7×10-3mol)とを連続的に添加した。さらに、開始剤として、三フッ化ホウ素が、トリオキサン1molに対して1.5×10-5molになるように、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラート1質量%のシクロヘキサン溶液として、連続的に添加して共重合を行い、重合反応機からポリアセタールコポリマー(P1)を得た。得られたポリアセタールコポリマー(P1)の一部を採取、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による解析、および融点を測定した。さらに、得られたポリアセタールコポリマー(P1)をトリエチルアミン水溶液(0.5質量%)中にサンプリングし、常温で1hr攪拌を実施して開始剤の失活処理を行った。その後、遠心分離機でろ過し、窒素下で120℃×3hr乾燥し、乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対してトリエチルアミン水溶液(2質量%)を5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。その後、押出機の後段に設けられたベントから−0.07MPaに脱気してポリアセタールコポリマー(P2)を得た。前記ベントの後段に設けられたサイドフィード口より、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー(P2)100質量部に対して酸化防止剤として、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を0.3質量部、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウムを0.05質量部添加し、溶融混練を行い、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズすることにより、ポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物を得た。得られたポリアセタールコポリマー及びポリアセタール樹脂組成物について上記のとおり各評価を行った。評価結果を表1、および表2に示す。
[実施例2]
熱媒を通すことができるジャケット付きの2軸パドル型連続重合反応機(栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を80℃に調整し、開始剤として三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート、有機溶媒としてシクロヘキサン、分子量調節剤としてメチラール、コモノマーとして1,3−ジオキソランを、温度25℃、混合時間2分にて前記重合反応機で連続的にプレ混合し、プレ混合液を得た。前記プレ混合にはスタティックミキサーを用いた。前記プレ混合液と、トリオキサンとを、別々の配管にて、トリオキサン1molに対して、1,3−ジオキソランが0.0035mol、メチラールが0.6×10-3mol、三フッ化ホウ素が1.3×10-5molとなるように、連続的に重合反応機に供給し共重合を行い、ポリアセタールコポリマー(P1)を得た。得られたポリアセタールコポリマー(P1)の一部を採取、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による解析、および融点を測定した。さらに、得られたポリアセタールコポリマー(P1)を、トリエチルアミン水溶液(0.5質量%)中にサンプリングし、その後常温で1hr攪拌を実施して開始剤の失活処理を行った。その後、遠心分離機でろ過し、窒素下で120℃×3hr乾燥し、乾燥後のポリアセタールコポリマーをベント付き2軸スクリュー式押出機に供給し、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー100質量部に対してトリエチルアミン水溶液(2質量%)を5質量部添加し、押出機設定温度200℃、押出機における滞留時間7分で不安定末端部分の分解除去を行なった。その後、押出機の後段に設けられたベントから−0.07MPaに脱気してポリアセタールコポリマー(P2)を得た。前記ベントの後段に設けられたサイドフィード口より、押出機中の溶融しているポリアセタールコポリマー(P2)100質量部に対して酸化防止剤として、トリエチレングリコール−ビス−〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート〕を0.3質量部、ギ酸捕捉剤としてジステアリン酸カルシウムを0.05質量部添加し、溶融混練を行い、押出機ダイス部よりストランドとして押出し、ペレタイズすることにより、ポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物を得た。得られたポリアセタールコポリマー及びポリアセタール樹脂組成物について上記のとおり各評価を行った。評価結果を表1、および表2に示す。
[実施例3〜5、比較例1〜3]
原料を表1に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にしてポリアセタールコポリマー(P1)およびポリアセタールコポリマー(P2)を含むポリアセタール樹脂組成物を得て上記のとおり各評価を行った。評価結果を表1、および表2に示す。
Figure 2017160333
Figure 2017160333
本発明のポリアセタールコポリマー、およびポリアセタール樹脂組成物は、機械的物性、耐久性、耐衝撃性、熱耐熱安定性、リサイクル性、成形性、耐薬品性に優れ、ホルムアルデヒドの発生量の少ないため、寸法安定性が求められる自動車用途や、高精度、良外観が求められる電機電子用途の分野等で好適に利用できる。

Claims (8)

  1. オキシメチレン単位(−CH2O−)の繰り返しを主成分としてなる重合体中に、オキシメチレン単位1mol当たりに、0.000033mol以上0.005mol以下の下記一般式(1)で表されるオキシアルキレン単位を含むポリアセタールコポリマーにおいて、多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が5以上11以下であるポリアセタールコポリマー。
    Figure 2017160333
    (式(1)中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、mは2以上6以下の整数で、nは1以上の整数で、n=1である単位の割合がオキシアルキレン単位全体の95mol%以上である。)
  2. 多角度光散乱検出器と示差屈折計検出器とを組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による重量平均分子量(Mw)が14万以上60万以下である、請求項1に記載のポリアセタールコポリマー。
  3. 前記一般式(1)においてR1、R2がそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、mが2〜4の整数である、請求項1又は2に記載のポリアセタールコポリマー。
  4. シャルピー衝撃強さが7kJ/m2以上、且つ密閉容器でメタノールに60℃750時間浸漬後の重量増加率が2.5%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタールコポリマー。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタールコポリマー100質量部に対し、酸化防止剤、ホルムアルデヒド反応性窒素を含む重合体または化合物、ギ酸捕捉剤、耐候(光)安定剤、離型(潤滑)剤、および結晶核剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を0.01質量部以上5質量部以下で含有するポリアセタール樹脂組成物。
  6. トリオキサン1molに対して、下記一般式(2)〜(6)に記載の環状エーテル化合物および/または環状ホルマール化合物からなる群より選ばれる1種以上のコモノマーを0.0001mol以上0.015mol以下の割合で共重合する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
    Figure 2017160333
    (式中、R1、R2は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有する有機基、フェニル基、フェニル基を有する有機基から選ばれ、R1、R2は同一でも異なっていてもよく、a、b、x、yは1以上6以下の整数で、Mは1以上6以下の整数で、Nは0以上6以下の整数である。)
  7. 前記共重合する工程が、トリオキサンおよび前記コモノマーの混合物1mol当たりに、分子量調節剤を1×10-5mol〜5×10-2molを原料とし、かつ、トリオキサン1mol当たり1×10-8mol〜5×10-2molのカチオン開始剤を重合触媒として用いて連続塊状重合反応を行う工程である、請求項6に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
  8. 前記コモノマーと前記カチオン開始剤と前記分子量調節剤と前記有機溶剤とを予め混合し、プレ混合物を得るプレ混合工程をさらに含む、請求項7に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
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