以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。このタイヤ2は、リム4に組み込まれている。このタイヤ2の内部には、空気が充填されている。これにより、タイヤ2の内圧が調整されている。
図2には、図1に示されたタイヤ2の断面の左側部分が示されている。図3には、図1に示されたタイヤ2の断面の右側部分が示されている。図2及び3のそれぞれにおいて、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
後述するが、このタイヤ2は、ローカバー(未架橋タイヤ2)をモールド内で加圧及び加熱することにより得られる。このとき、ローカバーはモールドのキャビティ面に押し当てられる。これにより、タイヤ2の外面が得られる。図2及び3に示されたタイヤ2の外面の輪郭は、このキャビティ面の輪郭と一致している。
図2及び3において、符号PEはこのタイヤ2の半径方向外側端を表している。この外側端PEは、赤道とも称される。実線ELは、赤道PEを通る。実線ELは、半径方向に延びる。実線ELは、このタイヤ2の赤道面である。本発明において、赤道面ELはモールドのキャビティ面に基づいて特定される。図2及び3から明らかなように、このタイヤ2の形状は赤道面に対して非対称である。
このタイヤ2は、トレッド6、貫通部8、一対のサイドウォール10、一対のクリンチ12、一対のビード14、カーカス16、ベルト18、一対のエッジバンド20、一対のクッション層22、インナーライナー24、一対のインスレーション26、一対のチェーファー28、一対の支持層30及びバンド32を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車用である。
トレッド6は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド6は、路面と触れるトレッド面34を形成する。トレッド6には、溝36が刻まれている。この溝36により、トレッドパターンが形成されている。トレッド6は、キャップ層38とベース層40とを有している。キャップ層38は、ベース層40の半径方向外側に位置している。キャップ層38は、ベース層40に積層されている。キャップ層38は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層40は、バンド32を覆っている。ベース層40は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層40の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。図2において、符号PT1はタイヤ2の外面における特定の地点を表している。この地点PT1は、トレッド6の一方の軸方向外端(第一端)である。図3において、符号PT2はタイヤ2の外面における特定の地点を表している。この地点PT2は、このトレッド6の他方の軸方向外端(第二端)である。
貫通部8は、導電性の架橋ゴムからなる。貫通部8は、トレッド6を貫通している。貫通部8の一端は、トレッド面34に露出している。貫通部8の他端は、バンド32と接触している。このタイヤ2では、貫通部8は周方向に延在している。
一対のサイドウォール10のうち一方のサイドウォール10a(第一サイドウォール)は、トレッド6の第一端PT1から半径方向略内向きに延びている。他方のサイドウォール10b(第二サイドウォール)は、トレッド6の第二端PT2から半径方向略内向きに延びている。
それぞれのサイドウォール10の半径方向外側部分は、トレッド6と接合されている。このサイドウォール10の半径方向内側部分は、クリンチ12と接合されている。このサイドウォール10は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール10は、カーカス16の損傷を防止する。
一対のクリンチ12のうち一方のクリンチ12a(第一クリンチ)は、第一サイドウォール10aの半径方向略内側に位置している。他方のクリンチ12b(第二クリンチ)は、第二サイドウォール10bの半径方向略内側に位置している。
それぞれのクリンチ12は、軸方向において、ビード14及びカーカス16よりも外側に位置している。このクリンチ12は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ12は、リム4のフランジ42と当接する。
一対のビード14のうち一方のビード14a(第一ビード)は、第一クリンチ12aの軸方向内側に位置している。第一ビード14aは、半径方向において、第一サイドウォール10aよりも内側に位置している。他方のビード14b(第二ビード)は、第二クリンチ12bの軸方向内側に位置している。第二ビード14bは、半径方向において、第二サイドウォール10bよりも内側に位置している。
それぞれのビード14は、内側パート44と外側パート46とを備えている。外側パート46は、軸方向において、内側パート44よりも外側に位置している。
内側パート44は、内側コア48と内側エイペックス50とを備えている。詳細には、内側パート44は内側コア48及び内側エイペックス50から構成されている。内側コア48は、リング状である。図示されていないが、内側コア48は巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。内側エイペックス50は、高硬度な架橋ゴムからなる。内側エイペックス50は、内側コア48を覆い、かつ、この内側コア48から半径方向略外向きに延在している。内側エイペックス50の半径方向外側部分は、先細りな形状を呈している。
外側パート46は、外側コア52と外側エイペックス54とを備えている。詳細には、外側パート46は外側コア52及び外側エイペックス54から構成されている。外側コア52は、リング状である。図示されていないが、外側コア52は巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。外側エイペックス54は、高硬度な架橋ゴムからなる。外側エイペックス54は、外側コア52を覆い、かつ、この外側コア52から半径方向略外向きに延在している。外側エイペックス54の半径方向外側部分は、先細りな形状を呈している。
このタイヤ2では、それぞれのビード14の半径方向内側部分では、内側エイペックス50は外側エイペックス54と接合している。この部分において、内側エイペックス50と外側エイペックス54とは一体的に形成されている。
カーカス16は、カーカスプライ56を備えている。このタイヤ2のカーカス16は、一枚のカーカスプライ56からなる。このカーカス16が2枚以上のカーカスプライ56から形成されてもよい。
カーカスプライ56は、第一ビード14aと第二ビード14bとの間に架け渡されている。カーカスプライ56は、第一サイドウォール10a、トレッド6及び第二サイドウォール10bの内側に沿って延在している。図示されていないが、カーカスプライ56は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面ELに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス16はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。高い剛性を有するカーカス16が得られるとの観点から、このコードのための有機繊維としては、アラミド繊維がより好ましい。
このタイヤ2では、ビード14の内側パート44は軸方向においてカーカスプライ56の内側に位置している。外側パート46は、軸方向において、このカーカスプライ56の外側に位置している。詳細には、カーカスプライ56の端部は内側パート44と外側パート46との間に挟まれている。前述したように、ビード14の半径方向内側部分において、内側エイペックス50と外側エイペックス54とは一体的に形成されている。このタイヤ2では、カーカスプライ56は従来のタイヤのようにビード14の周りにて折り返されていない。本発明においては、端部が内側パート44と外側パート46との間に挟まれたカーカスプライ56から構成されたカーカス16の構造は、「インサート構造」と称される。図示されていないが、ビードの周りにて折り返されたカーカスプライからカーカスが構成されている場合、このカーカスの構造は「折り返し構造」と称される。
ベルト18は、トレッド6の半径方向内側に位置している。ベルト18は、カーカス16と積層されている。ベルト18は、カーカス16を補強する。ベルト18は、内側層58及び外側層60の2層からなる。このベルト18が、3以上の層を備えてもよい。
このタイヤ2では、軸方向において、内側層58の幅は外側層60の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層58及び外側層60のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層58のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層60のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
このタイヤ2では、ベルト18の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。なお、この最大幅は、モールドのキャビティ面の輪郭に基づいて特定される。軸方向におけるこのベルト18の中心において、赤道面ELはこのベルト18と交差している。
それぞれのエッジバンド20は、ベルト18の半径方向外側であって、かつベルト18の端の近傍に位置している。図示されていないが、このエッジバンド20は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド32は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト18の端が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
ぞれぞれのクッション層22は、ベルト18の端の近傍において、カーカス16と積層されている。クッション層22は、軟質な架橋ゴムからなる。クッション層22は、ベルト18の端の応力を吸収する。このクッション層22は、ベルト18のリフティングの抑制に寄与する。
インナーライナー24は、カーカス16の内側に位置している。赤道面の近傍において、インナーライナー24は、カーカス16の内面に接合されている。インナーライナー24は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー24の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー24は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのインスレーション26は、軸方向において、サイドウォール10の内側に位置している。インスレーション26は、支持層30とインナーライナー24とに挟まれている。インスレーション26は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。インスレーション26は、支持層30と堅固に接合し、インナーライナー24とも堅固に接合する。インスレーション26により、サイドウォール10の軸方向内側における、インナーライナー24の剥離が抑制される。
それぞれのチェーファー28は、ビード14の近傍に位置している。タイヤ2がリム4に組み込まれると、チェーファー28はリム4と当接する。この当接により、ビード14の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー28は、クリンチ12と一体である。したがって、チェーファー28の材質はクリンチ12の材質と同じである。チェーファー28が、布とこの布に含浸したゴムとからなってもよい。
一対の支持層30のうち一方の支持層30a(第一支持層)は、第一サイドウォール10aよりも軸方向内側に位置している。他方の支持層30b(第二支持層)は、第二サイドウォール10bよりも軸方向内側に位置している。それぞれの支持層30は、カーカス16よりも軸方向内側に位置している。支持層30は、カーカス16と、インナーライナー24とに挟まれている。この支持層30は、ビード14における内側エイペックス50の半径方向外側に位置している。このタイヤ2では、支持層30はこの内側エイペックス50と積層されている。
このタイヤ2では、支持層30は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層30は、三日月に類似の形状を有する。支持層30は、架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層30が車重を支える。この支持層30により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ2は、ランフラットタイヤとも称されている。このタイヤ2は、サイド補強タイプである。
このタイヤ2では、支持層30の硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ2の内圧が低下した場合、この支持層30が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、支持層30によるサイドウォール10の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
本願において、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度は、図2及び3に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
バンド32は、ベルト18の半径方向外側に位置している。バンド32は、半径方向において、ベルト18とトレッド6との間に位置している。軸方向において、バンド32の幅はベルト18の幅よりも大きい。バンド32は、ベルト18を覆っている。
このタイヤ2では、バンド32は第一本体62と第二本体64とを備えている。図2及び3から明らかなように、軸方向において、第二本体64は第一本体62よりもトレッド6の第二端PT2の側に位置している。第一本体62は、軸方向において、第二本体64よりもトレッド6の第一端PT1の側に位置している。このタイヤ2のバンド32は、第一本体62及び第二本体64で構成されている。
このタイヤ2では、第一本体62の第二端66は、軸方向において、赤道面ELとベルト18の第二端68との間に位置している。この第一本体62は、その第二端66からトレッド6の第一端PT1に向かってベルト18に沿って延在している。第二本体64の第一端70は、軸方向において、赤道面ELとベルト18の第二端68との間に位置している。この第二本体64は、その第一端70からトレッド6の第二端PT2に向かってベルト18に沿って延在している。このタイヤ2では、第一本体62と第二本体64との境界部分は、軸方向において、赤道面ELとベルト18の第二端68との間に位置している。この境界部分において、第一本体62の第二端66が第二本体64の第一端70よりも軸方向外側に位置してもよい。言い換えれば、第二本体64の第一端70が第一本体62の第二端66よりも軸方向内側に位置してもよい。第一本体62と第二本体64との間に隙間が設けられてもよいが、この場合は、バンド32の剛性に特異な部分が形成されないよう、この隙間は調整される。特異な接地面の形成防止の観点から、図3に示されているように、軸方向において、第一本体62の第二端66の位置と第二本体64の第一端70の位置とが一致するように、このバンド32が構成されるのが好ましい。
図4には、図3に示されたバンド32の第一本体62と第二本体64との境界部分が拡大して示されている。この図4において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
このタイヤ2では、第一本体62は第一コード72とトッピングゴム74とからなる。第一コード72は、螺旋状に巻かれている。言い換えれば、第一本体62は螺旋状に巻かれた第一コード72を含んでいる。この第一本体62は、いわゆるジョイントレス構造を有する。第一コード72は、実質的に周方向に延びている。周方向に対する第一コード72の角度は、5°以下、さらには2°以下である。この第一コード72によりベルト18が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。
このタイヤ2では、第一コード72は有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。適度な剛性を有する第一本体62が得られるとの観点から、この第一コード72としては、アラミド繊維からなるコードがより好ましい。この第一本体62は、軽量化及び転がり抵抗の低減に寄与する。
図示されていないが、第一コード72は複数本の原糸を撚り合わせて構成される。第一コード72の剛性及び加工性の観点から、第一コード72を構成する原糸の本数は2本以上が好ましく、3本以下が好ましい。原糸を撚り合わせる回数としては、40回/10cm以上が好ましく、80回/10cm以下が好ましい。さらに第一コード72にアラミド繊維からなるコードを用いる場合には、第一コード72の剛性及び質量の観点から、この原糸の繊度は600dtex以上が好ましく、1700dtex以下が好ましい。この第一本体62における第一コード72の密度としては、40エンズ/5cm以上が好ましく、80エンズ/5cm以下が好ましい。
このタイヤ2では、第二本体64は第二コード76を含んでいる。この第二コード76は螺旋状に巻かれている。言い換えれば、第二本体64は螺旋状に巻かれた第二コード76を含んでいる。この第二本体64は、いわゆるジョイントレス構造を有する。第二コード76は、実質的に周方向に延びている。周方向に対する第二コード76の角度は、5°以下、さらには2°以下である。この第二コード76によりベルト18が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。
このタイヤ2では、第二コード76は炭素繊維からなる。この炭素繊維としては、PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維が例示される。
このタイヤ2では、第二本体64は、第二コード76とマトリクス樹脂78とからなる。第二コード76は炭素繊維からなるので、この第二本体64では、多数の炭素繊維がマトリクス樹脂78に分散している。この第二本体64は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)からなる。マトリクス樹脂78としては、熱硬化型のエポキシ樹脂組成物が例示される。
本発明では、第二本体64のための炭素繊維強化プラスチックに特に制限はない。工業的に使用できる一般的な炭素繊維強化プラスチックをこの第二本体64のために用いることができる。
このタイヤ2は、リム4に装着し内部に空気を充填して使用する。このリム4としては、例えば、二つ割りリムが用いられる。このリム4は、一対のハーフリム80を備えている。それぞれのハーフリム80は、ビードシート82を備えている。このビードシート82には、タイヤ2のビード14の部分が嵌め合わされる。本発明においては、第一ビード14aの部分(第一ビード部84a)が嵌め合わされるビードシート82aは、第一シートと称される。第二ビード14bの部分(第二ビード部84b)が嵌め合わされるビードシート82bは、第二シートと称される。つまり一方のハーフリム80a(第一ハーフリム)は、第一シート82aを備えている。他方のハーフリム80b(第二ハーフリム)は、第二シート82bを備えている。このリム4は、第一シート82aと第二シート82bとを備えている。
このタイヤ2では、第一サイドウォール10aから第一ビード14aに至るまでの部分(第一サイド部86a)は、第二サイドウォール10bから第二ビード14bに至るまでの部分(第二サイド部86b)の長さよりも大きな長さを有している。このため、第一シート82aにおけるリム4のリム径を第一リム径とし、第二シート82bにおけるこのリム4のリム径を第二リム径としたとき、第一リム径は第二リム径よりも小さい。このタイヤ2では、第一サイド部86aが位置する側が小径側であり、第二サイド部86bが位置する側が大径側である。したがってこのタイヤ2では、大径側のリム径の呼び(すなわち、第二リム径の呼びD2)は小径側のリム径の呼び(すなわち、第一リム径の呼びD1)よりも大きい。このタイヤ2は、異径ビードタイプである。なお、本発明において「リム径の呼び」は、JATMA規格における「タイヤの呼び」に含まれる「リム径の呼び」と同義である。
本発明において、タイヤ2が装着されるリム4の形状は、左右のリム径が同じ通常のリム(以下、正規リム)の形状と比べて特異である。このリム4は特殊である。本発明のタイヤ2のために、例えば、リム径の異なる、二つ割りタイプの正規リムを2つ準備し、一方の正規リムのハーフリム80aと、他方の正規リムのハーフリム80bとを組み合わせることで、このリム4を構成することができる。このようにして構成されたリム4は、2つの正規リムを組み合わせて構成しているので、本発明においては、正規リムに準じるリムとして、準正規リムとも称される。さらに本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
以上説明されたタイヤ2は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。
このタイヤ2の製造方法では、中子の外面においてインナーライナー24をはじめとする多数の要素が組み合わされて、ローカバー(未加硫タイヤ2)が得られる。この製造方法では、ローカバーは中子の外面において組み立てられる。
図示されていないが、この製造方法では、バンド32の第一本体62のために、テープ状の第一ストリップが準備される。この第一ストリップは、その幅方向に並列された複数本の第一コード72とトッピングゴム74とを含んでいる。第一本体62は、この第一ストリップを螺旋状に巻回すことにより形成される。さらにこの製造方法では、バンド32の第二本体64のために、テープ状の第二ストリップ(図示されず)が準備される。この第二ストリップは、プリプレグを裁断することにより得られる。このプリプレグでは、未硬化状態にあるマトリクス樹脂78に炭素繊維からなる第二コード76が分散している。第二本体64は、この第二ストリップを螺旋状に巻回すことにより形成される。
この製造方法では、ローカバーは中子とともにモールド(図示されず)に投入される。投入後、モールドは閉じられる。ローカバーの内面は、中子に当接している。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーは、モールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧される。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。このように中子を用いたタイヤ2の製法は、中子工法とも称される。
前述したように、このタイヤ2では、カーカス16、バンド32等の部材には、剛性の観点から、好ましくは、アラミド繊維からなコード(以下、アラミドコード)が採用される。このアラミドコードの採用は、転がり抵抗の低減及びパンク状態での耐久性の向上に寄与する。しかしこのアラミドコードの伸びはかなり小さい。このため、ローカバーを膨らませてその形態を整える工程、すなわちシェーピング工程を含む製造方法では、このアラミドコードを含む部材を備えるタイヤ2の製造は困難である。これに対して、中子方法では、ローカバーを膨らませてその形態を整える必要はない。この中子工法では、ローカバーの形態変化を伴うことなく、タイヤ2の成形が可能である。この中子工法によれば、伸びの小さなアラミドコードを含む部材を採用しても、タイヤ2を安定に製造することができる。この中子方法は、タイヤ2の転がり抵抗の低減及びパンク状態での耐久性の向上に寄与する。
前述したように、このタイヤ2の形状は赤道面ELに対して非対称である。このタイヤ2の形状は、例えば、断面幅の呼びが同じで、偏平比の呼び及びリム径の呼びが異なる2つのタイヤを、それぞれの赤道面において組み合わせることにより、構成することができる。具体的には、例えば、245/45R18の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの形状でその小径側の形状を構成し、245/35R20の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの形状でその大径側の形状を構成することにより、図1−3に示されたタイヤ2の形状を得ることができる。この場合、モールドのキャビティ面には、245/45R18の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの外面と245/35R20の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの外面とが反映される。中子の外面には、245/45R18の「タイヤの呼び」で表されるタイヤ2の内面と245/35R20の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの内面とが反映される。
前述したように、このタイヤ2では、第二サイド部86bは第一サイド部86aよりも短い。この第二サイド部86bは、第二支持層30を有しているにもかかわらず、軽量化に寄与する。この第二サイド部86bは、転がり抵抗の低減にも寄与する。
このタイヤ2のサイド部86には、支持層30が設けられている。このため、このサイド部86は、熱が蓄積する傾向にある。しかし、このタイヤ2では、第二サイド部86bが第一サイド部86aよりも短いので、この第二サイド部86bのボリュームは小さい。この第二サイド部86bには、第二支持層30が設けられているにもかかわらず、熱が蓄積しにくい。この第二サイド部86bは、耐久性に寄与する。この第二サイド部86bが内側に位置するようにこのタイヤ2を車輌に装着することにより、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
図1には、図2及び3に示されたタイヤ2をリム4に組み込み、このタイヤ2の内部に空気を充填した状態が示されている。
タイヤ2の内部に空気を充填すると、タイヤ2は膨張する。前述したように、このタイヤ2のカーカス16は多数のコードを含んでいる。膨張により、それぞれのコードには張力が作用する。膨張状態にあるタイヤ2では、これらのコードに作用する張力は一様である。
図1において、両矢印WRはこのタイヤ2が装着されるリム4のリム幅を表している。一点鎖線CLは、このリム幅WRの中心を通る。この一点鎖線CLは、リム4の幅方向における中心線である。このタイヤ2の製造では、赤道面ELがこの中心線CLと軸方向において概ね一致するようにキャビティ面が整えられたモールドが用いられる。左右のリム径の呼びが同じである従来のタイヤでは、その内部に空気を充填し、タイヤを膨張させると、赤道面ELはこの中心線CLと軸方向において概ね一致する。
図1に示されているように、赤道面ELは中心線CLの左側に位置している。つまり、このタイヤ2は、その大径側が小径側に引っ張られるように膨張している。このため、タイヤ2の赤道面ELは小径側にシフトし、大径側の第二サイド部86bは立ち上がっている。膨張状態のタイヤ2では、その第二サイド部86bにおけるカーカス16は概ね半径方向に沿うように延在している。このカーカス16のプロファイル(カーカスラインとも称される。)は、タイヤ2の支持に効果的に寄与する。横剛性が増加するので、このタイヤ2では、良好な操縦安定性が得られる。このタイヤ2では、パンクによって内圧が低下しても、この第二サイド部86bが車重を支えうる。このタイヤ2では、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。
このタイヤ2では、第一サイド部86aは第二サイド部86bよりも長い。この第一サイド部86aは、撓みに寄与する。縦剛性が適切に維持されるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が得られる。この第一サイド部86aが外側に位置するようにこのタイヤ2を車輌に装着することにより、乗り心地のさらなる向上を図ることができる。
このタイヤ2では、バンド32の第一本体62は有機繊維からなる第一コード72を含んでいる。第二本体64は、炭素繊維強化プラスチックからなる。第一本体62は第二本体64に比して柔軟であり、第二本体64は第一本体62に比して硬質である。柔軟な第一本体62は、トレッド面34の路面への接触を促す。硬質な第二本体64は、第二サイド部86bの動きを効果的に拘束する。この第二本体64は、トレッド面34の路面への接触を適度に抑える。前述したように、大径側が小径側に引っ張られるようにこのタイヤ2は膨張し、このタイヤ2の赤道面ELは小径側にシフトし、第二サイド部86bは立ち上がる。このタイヤ2では、第一本体62は小径側に位置し第二本体64は大径側に位置している。このため、このタイヤ2では、充分な接地面が確保されるとともに、第二サイド部86bによる局所的な接地圧の上昇が抑えられる。
図5には、図1のタイヤ2の接地面の様子が示されている。より詳細には、この図5には、本発明のタイヤ2の接地面の一例として、後述する実施例1のタイヤ2の接地面の様子が示されている。この接地面は、タイヤ2をリム4に組み込み、内圧を230kPaに調整し、5.0kNの縦荷重を付与した状態において確認されている。この図5において、上下方向はタイヤ2の周方向に相当する。左右方向は、このタイヤ2の軸方向に相当する。紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の半径方向に相当する。この接地面の長さは上下方向の長さで表され、接地面の幅は左右方向の長さで表される。なおこの紙面において、左側はタイヤ2の小径側であり、右側はこのタイヤ2の大径側である。
図6には、図1に示されたタイヤ2とは別のタイヤの接地面の様子が示されている。より詳細には、この図6には、後述する比較例6のタイヤの接地面の様子が示されている。この図6の接地面は、図5に示された接地面と同様にして確認されている。この図6に示された接地面が確認されたタイヤでは、バンド全体が、前述された第一本体62のための第一ストリップを螺旋状に巻回すことにより形成されている。したがって、このタイヤのバンドでは、図1−3に示されたバンド32の第二本体64に相当する部分がその第一本体62と同等の構成を有している。
図6に示されているように、バンド全体を有機繊維からなるコードを含むストリップで形成したタイヤでは、大径側の接地面の長さが小径側の接地面の長さよりも長くなる様相を呈している。この接地面の形状は、非対称である。これに対して、図1に示されたタイヤ2の接地面は、図5から明らかなように、接地面の形状は概ね対称である。この接地面の形状は、図6に示された接地面のそれとは相違する。この接地面の形状は歪でない。ここに、第二本体64を炭素繊維強化プラスチックで構成したことによる効果が確認される。
このタイヤ2では、第二本体64は第二サイド部86bの動きを効果的に拘束する。このタイヤ2では、この第二サイド部86bによるこのタイヤ2の接地形状への影響が抑えられる。このタイヤ2では、接地形状が歪になることが防止されるので、耐摩耗性の低下が抑えられる。前述したように、このタイヤ2では、操縦安定性及び乗り心地の向上が達成される。本発明によれば、耐摩耗性の低下を抑えつつ、操縦安定性及び乗り心地の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
図1において、実線BL1は第一ベースラインである。第一ベースラインは、このタイヤ2が装着されるリム4の第一リム径を規定する線に相当する。この第一ベースラインは、軸方向に延びる。実線BL2は、第二ベースラインである。第二ベースラインは、このリム4の第二リム径を規定する線に相当する。この第二ベースラインは、軸方向に延びる。
この図1において、両矢印H1は、第一ベースラインからこのタイヤ2の半径方向外側端までの半径方向高さを表している。この高さH1は、第一ベースラインを基準として得られるこのタイヤ2の断面高さである。両矢印H2は、第二ベースラインからこのタイヤ2の半径方向外側端までの半径方向高さを表している。この高さH2は、第二ベースラインを基準として得られるこのタイヤ2の断面高さである。両矢印Wは、軸方向におけるこのタイヤ2の最大幅を表している。この幅Wは、このタイヤ2の断面幅である。
図2及び3において、両矢印WBはベルト18の第一端88から第二端68までの軸方向長さを表している。この長さWBは、ベルト18の軸方向幅である。図3において、両矢印W2は、第二本体64の第一端70からベルト18の第二端68までの軸方向長さを表している。
本発明では、断面高さH1、断面高さH2、断面幅W、幅WB及び長さW2は、タイヤ2に空気を充填した状態で測定される。測定時には、このタイヤ2には荷重がかけられない。測定時におけるタイヤ2の内圧は、用途及び大きさを考慮して、タイヤ2が依拠する規格において定められた正規内圧を参照して決められる。図1に示されたタイヤ2では、このタイヤ2が乗用車用であるので、タイヤ2の内圧が180kPaとなるように空気が充填された状態で、断面高さH1、断面高さH2、断面幅W、幅WB及び長さW2は測定される。なお本明細書において正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」を意味する。
このタイヤ2では、長さW2の幅WBに対する比は0.2以上0.3以下が好ましい。この比が0.2以上に設定されることにより、第二本体64が第二サイド部86bを効果的に拘束する。このタイヤ2では、歪な形状の接地面の形成が防止され、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この比が0.3以下に設定されることにより、第二本体64によるトレッド面34の柔軟性への影響が効果的に抑えられる。この場合においても、歪な形状の接地面の形成が防止され、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。
このタイヤ2では、耐摩耗性の低下を抑えつつ、転がり抵抗の低減及び操縦安定性の向上を図れるとの観点から、炭素繊維からなる第二コード76の引張弾性率は200GPa以上が好ましく、400GPa以下が好ましい。この第二コード76の引張弾性率は、JIS R7606に準拠して、計測される。
このタイヤ2では、第二本体64の引張弾性率は260GPa以上が好ましく、320GPa以下が好ましい。この引張弾性率が260GPa以上に設定されることにより、第二本体64が第二サイド部86bを効果的に拘束する。このタイヤ2では、歪な形状の接地面の形成が防止され、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。この引張弾性率が320GPa以下に設定されることにより、第二本体64によるトレッド面34の柔軟性への影響が効果的に抑えられる。この場合においても、歪な形状の接地面の形成が防止され、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。なお、本発明においては、第二本体64の引張弾性率は、JIS R7608に準拠じて、計測される。なお、計測のための試験片は、第二本体64の形成のために用いられたプリプレグを用いて形成される。この計測では、試験片の引張方向は炭素繊維の延在方向と一致させられる。
このタイヤ2では、第一本体62の引張弾性率は、10GPa以上が好ましく、30GPa以下が好ましい。引張弾性率が10GPa以上に設定されることにより、第一本体62が適度な剛性を有する。この第一本体62は、ベルト18のリフティングを効果的に抑制する。この引張弾性率が30GPa以下に設定されることにより、第一本体62の剛性が適切に維持される。このタイヤ2では、この第一本体62によるトレッド面34の柔軟性への影響が効果的に抑えられる。このタイヤ2では、歪な形状の接地面の形成が防止されるので、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられる。引張弾性率が10GPa以上30GPa以下にある第一本体62と前述の第二本体64とでバンド32を構成することにより、耐摩耗性の低下を効果的に抑えつつ、転がり抵抗の低減及び操縦安定性のさらなる向上を図ることができる。この第一本体62の引張弾性率は、前述の第二本体64の引張弾性率と同様にして計測される。なお、計測のための試験片は、第一本体62の形成のために用いられた第一ストリップを用いて形成される。
このタイヤ2では、耐摩耗性の低下を効果的に抑えつつ、転がり抵抗の低減及び操縦安定性のさらなる向上を図ることができるとの観点から、第二本体64の引張弾性率の、第一本体62の引張弾性率に対する比は、10以上が好ましく、30以下が好ましい。
前述したように、このタイヤ2は異径ビードタイプである。これにより、膨張状態におけるカーカスラインをコントロールし、操縦安定性の向上が図られている。この観点から、第二リム径の呼びD2と第一リム径の呼びD1との差(D2−D1)は1インチ以上が好ましい。このカーカスラインが維持され、直進安定性及び耐摩耗性の低下が防止されるとの観点から、この差(D2−D1)は3インチ以下が好ましい。
このタイヤ2では、第一サイド部86aは第二サイド部86bよりも長い。長い第一サイド部86aは、撓みに寄与する。縦剛性の増加が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が得られる。長い第一サイド部86aの形成の観点から、第一リム径の呼びD1は20インチ以下が好ましい。長い第一サイド部86aによる操縦安定性への影響が抑えられるとの観点から、この第一リム径の呼びD1は16インチ以上が好ましい。
このタイヤ2では、第二サイド部86bは第一サイド部86aよりも短い。短い第二サイド部86bは縦剛性を効果的に増加させるので、このタイヤ2では、良好な操縦安定性及びランフラット耐久性が得られる。この観点から、第二リム径の呼びD2は17インチ以上が好ましい。短い第二サイド部86bによる耐摩耗性及び乗り心地への影響が抑えられるとの観点から、この第二リム径の呼びD2は23インチ以下が好ましい。
本発明においては、小径側の偏平比(以下、第一偏平比F1)は断面高さH1の断面幅Wに対する比で表される。大径側の偏平比(以下、第二偏平比F2)は、断面高さH2の断面幅Wに対する比で表される。
このタイヤ2では、乗り心地及び操縦安定性の観点から、第一偏平比F1は0.40以上が好ましく、0.70以下が好ましい。さらにカーカスラインによる耐摩耗性への影響が抑えられるとの観点から、この第一偏平比F1は0.45以上がより好ましく、0.65以下がより好ましい。
このタイヤ2では、操縦安定性及びランフラット耐久性の観点から、第二偏平比F2は0.30以上が好ましく、0.60以下が好ましい。さらに耐摩耗性のさらなる向上を図ることができるとの観点から、この第二偏平比F2は0.35以上が好ましく、0.55以下がより好ましい。
四輪自動車に装着されたタイヤ2では、車輌の幅方向内側部分にその外側部分よりも大きな荷重が作用する傾向にある。特に、赤道面が鉛直線に対して傾斜するように車輌に装着されている場合、詳細には、キャンバー角をネガティブキャンバーで設定した場合において、この傾向は顕著である。このタイヤ2では、第一サイド部86aが主に縦剛性に寄与し、第二サイド部86bが主に横剛性に寄与する。乗り心地、操縦安定性及びランフラット耐久性の観点から、第一サイド部86aが車輌の幅方向外側(表側又はS側とも称される。)に位置し、第二サイド部86bがこの車輌の幅方向内側(裏側又はNS側とも称される。)に位置するように、このタイヤ2は四輪自動車に装着されるのが好ましい。この場合、第一サイド部86aはランフラット耐久性への寄与が低い、車輌の幅方向外側に配置されることになるので、薄い第一支持層30aの採用が可能となり、更なる軽量化及び転がり抵抗の更なる低減を図ることができる。場合によっては、第一サイド部86aから第一支持層30aを除くことができ、この場合には、より一層の軽量化及び転がり抵抗の低減を図ることができる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1−3に示されたタイヤを製作した。この実施例1では、下記の表1に示されているように、第一リム径の呼びD1は18インチである。第二リム径の呼びD2は、20インチである。
バンドの第一本体には、アラミド繊維からなるコード(構成=800dtex/2、撚り合わせ回数=60回/10cm)を第一コードとして採用した。このことが、表1の第一本体の欄に「アラミド」として表されている。第一本体における第一コードの密度は、50エンズ/5cmとした。この第一本体は、第一コードとトッピングゴムとからなる第一ストリップ(幅=10mm)を準備し、これを螺旋状に巻回して形成した。第二本体は、炭素繊維強化プラスチックで構成した。このことが、表1の第一本体の欄に「CFRP」として表されている。第二コードとしての炭素繊維の引張強度は5.6GPaであり、引張弾性率は290GPaであった。この第二本体は、プリプレグを裁断して第二ストリップ(幅=10mm)を準備し、これを螺旋状に巻回して形成した。
第一偏平比F1及び第二偏平比F2、並びに、ベルトの第二端から第二本体の第一端までの軸方向長さW2の、ベルトの軸方向幅WBに対する比(W2/WB)は、下記の表1の通りである。なお、断面幅Wは245mmとされた。
この実施例1には、「インサート構造」のカーカスが採用されている。このことが、表の「カーカスの構造」の欄に、「I」で示されている。このカーカスに含まれるコードには、アラミド繊維からなるコードが用いられている。ベルトに含まれるコードには、その材質がスチールとされたコードが用いられている。この実施例1は、中子工法で製作されている。
[比較例1−4]
比較例1−4は、従来のタイヤである。これらのタイヤの形状は、赤道面に対して対称である。断面幅Wは、いずれも245mmである。偏平比F1、第一リム径の呼びD1、偏平比F2及び第二リム径の呼びは、下記の表1の通りである。実施例1の第一本体の形成に用いた第一ストリップを用いて、バンド全体が形成されている。なお、比較例1及び2には、「折り返し構造」のカーカスが採用されている。このことが、表の「カーカスの構造」の欄に、「F」で示されている。比較例3及び4には、実施例1と同じ、「インサート構造」のカーカスが採用されている。
[比較例6]
実施例1の第一本体の形成に用いた第一ストリップを用いてバンド全体を形成した他は実施例1と同様にして、比較例6のタイヤを得た。
[比較例5及び7]
実施例1の第一本体の形成に用いた第一ストリップを用いてバンド全体を形成するとともに、第二リム径の呼びD2を変えて、偏平比F2、及び第二リム径の呼びD2と第一リム径の呼びD1との差(D2−D1)を下記の表1の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例5及び7のタイヤを得た。
[実施例2−4及び比較例8]
第二リム径の呼びD2を変えて偏平比F2及び差(D2−D1)を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−4及び比較例8のタイヤを得た。
[実施例5−7]
比(W2/WB)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5−7のタイヤを得た。
[実施例8−12]
第一リム径の呼びD1及び第二リム径の呼びD2を変えて、偏平比F1、偏平比F2及び差(D2−D1)を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例8−12のタイヤを得た。
[比較例9]
第一本体の第一コードをナイロン繊維からなるコード(構成=1400dtex/2、撚り合わせ回数=60回/10cm)に置き換えるとともに、実施例1の第一本体の形成に用いた第一ストリップを用いて第二本体を形成した他は実施例1と同様にして、比較例9のタイヤを得た。このことが、表5の第一本体の欄に「ナイロン」として、第二本体の欄に「アラミド」として表されている。
[比較例10]
その材質がスチールとされたコード(構成=3×3/0.17mm)とトッピングゴムとからなるストリップ(幅=10mm)を準備し、これを螺旋状に巻回して第二本体を形成した他は実施例1と同様にして、比較例10のタイヤを得た。この比較例10では、第二本体におけるコードの密度は50エンズ/5cmとした。
[実施例13]
第一本体の第一コードをナイロン繊維からなるコード(構成=1400dtex/2、撚り合わせ回数=60回/10cm)に置き換えた他は実施例1と同様にして、実施例13のタイヤを得た。
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機(ドラム径=1.7m、ドラム表面=smooth steel)を用い、下記の測定条件で転がり抵抗係数(RRC)を測定した。なお、リムには、第一リム径の呼びD1を参照して第一ハーフリム(アルミニウム合金製)を選定し、第二リム径の呼びD2を参照して第二ハーフリム(アルミニウム合金製)を選定して、この第一ハーフリム及び第二ハーフリムを組み合わせて構成した、二つ割りリム(準正規リム)を用いた。このリムでは、リム幅は8.5インチに設定された。
内圧:210kPa
荷重:5.3kN
速度:80km/h
温度:20℃
慣らし時間:30分
この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、つまり転がり抵抗係数(RRC)が小さい。
[タイヤの質量]
タイヤ一本の質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、つまり質量が小さい。
[乗り心地及び操縦安定性]
タイヤをリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、市販のハイブリッドタイプの乗用車に装着した。タイヤの小径側が車両の幅方向外側(S側)に位置し、大径側が車両の幅方向内側(NS側)に位置するように、このタイヤは装着された。リムには、転がり抵抗係数の測定で用いた準正規リムが用いられた。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、乗り心地及び操縦安定性を評価させた。この乗用車には、ドライバー以外は乗車していない。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[耐摩耗性]
タイヤをリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、市販のハイブリッドタイプの乗用車に装着した。タイヤの小径側が車両の幅方向外側(S側)に位置し、大径側が車両の幅方向内側(NS側)に位置するように、このタイヤは装着された。リムには、転がり抵抗係数の測定で用いた準正規リムが用いられた。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させた。この乗用車には、ドライバー以外は乗車していない。走行距離が120kmである時点での摩耗量を測定した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、つまり摩耗量が小さい。
[総合性能]
各評価で得られた指数の合計を求めた。この結果が、総合性能として、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい。
表1−5に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。