JP6617566B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。詳細には、本発明はサイド補強タイプのランフラットタイヤに関する。
高速道路網の発達、そして、車輌の高性能化が進んでいる。車輌は、高速で長時間走行する傾向にある。車輌に装着されるタイヤでは、操縦安定性、乗り心地及び高速耐久性の向上に重点を置いた開発が進められている。
タイヤは、リムに組み込まれる。この組み込みでは、タイヤのビードの部分が、リムに嵌め合わされる。リムにおいて、ビードの部分が嵌め合わされる部分はビードシートと称される。このビードシートにおける外径に基づいて、リムのリム径が表される。
タイヤの形状は通常、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。つまり、一方のサイドウォールからビードに至るまでの部分(以下、第一サイド部)の長さは、他方のサイドウォールからビードに至るまでの部分(以下、第二サイド部)の長さと同等である。このタイヤが装着されるリムにおいては、左右のリム径は同じである。
四輪自動車では、車輌の右側部分とその左側部分とにタイヤは配置される。このため、四輪自動車に用いられるタイヤにおいては、車輌の幅方向において、内側に位置する部分と、外側に位置する部分とで、その構成を変えることがある。非対称のトレッドパターンは、その典型である。
サイド部の長さは、タイヤの撓みに影響する。第一サイド部が第二サイド部よりも長くなるように構成することで、タイヤの左右の撓みをコントロールし、タイヤの性能向上について検討することがある。この検討例が、例えば、特開平06−092104号公報及び特開平05−139109号公報に開示されている。
第一サイド部が第二サイド部よりも長くなるように構成されたタイヤでは、左右のビードの位置が異なる。このタイヤには、左右のリム径が異なるように構成されたリムが用いられる。このタイヤは、異径ビードタイプとも称されている。
近年、サイドウォールの内側に荷重支持層を備えたランフラットタイヤが開発され、普及しつつある。この支持層には、高硬度な架橋ゴムが用いられている。このランフラットタイヤは、サイド補強タイプと称されている。
このタイプのランフラットタイヤでは、パンクによって内圧が低下すると、支持層が車重を支える。ランフラットタイヤでは、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。このランフラットタイヤが装着された車輌には、スペアタイヤの常備は不要である。このランフラットタイヤは、車輌の室内空間の確保に寄与する。このようなタイヤの例が、特開2008−155855公報及び特開2013−071468公報に開示されている。
特開平06−092104号公報 特開平05−139109号公報 特開2008−155855公報 特開2013−071468公報
ランフラットタイヤでは、支持層は硬質である。このタイヤは、この支持層のないノーマルタイヤに比べて乗り心地に劣る。このタイヤはパンク状態でもある程度の距離を走行する必要があるため、この支持層は相当の厚さを有している。このタイヤは、ノーマルタイヤに比べてかなり重い。
車輌に装着されたタイヤでは、この車輌の幅方向において内側に位置する部分には、その外側に位置する部分よりも熱がこもりやすい。熱は、タイヤの耐久性に影響する。ランフラットタイヤには、支持層が設けられているため、このタイヤには熱が蓄積しやすい。このタイヤでは、パンク状態での走行(以下、ランフラット走行)のために設けた支持層が、耐久性に影響する恐れがある。
短いサイド部は、剛性に寄与する。短いサイド部は、小さなボリュームを招来する。小さなボリュームを有するサイド部は軽量化に寄与する上に、このサイド部には熱は蓄積しにくい。そこで、ランフラットタイヤを異径ビードタイプとすれば、タイヤの剛性を適切に維持ししつつ、耐久性の向上が図れる可能性がある。しかし異径ビードタイプのタイヤには、このタイヤに空気を充填したとき、小さなリム径の呼びを有する部分と、大きなリム径の呼びを有する部分とにおいて、インフレート状態に違いが生じ、タイヤの接地形状が歪になりやすいという問題がある。歪な接地形状は、耐摩耗性に影響する。したがって、ランフラットタイヤを異径ビードタイプとした場合、良好な耐摩耗性が得られない恐れがある。
本発明の目的は、耐摩耗性の低下を抑えつつ、操縦安定性及び乗り心地の向上が達成された空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る空気入りタイヤは、リムに装着して使用される。このタイヤは、トレッド、第一サイドウォール、第二サイドウォール、第一ビード、第二ビード、カーカス及び支持層を備えている。上記トレッドは、路面と触れるトレッド面を備えている。上記第一サイドウォールは、上記トレッドの第一端から半径方向略内向きに延びている。上記第二サイドウォールは、このトレッドの第二端から半径方向略内向きに延びている。上記第一ビードは、上記第一サイドウォールよりも半径方向内側に位置している。上記第二ビードは、上記第二サイドウォールよりも半径方向内側に位置している。上記カーカスは、上記第一サイドウォール、上記トレッド及び上記第二サイドウォールの内側に沿って、上記第一ビードと上記第二ビードとの間を架け渡している。上記支持層は、上記第二サイドウォールの側において、上記カーカスの軸方向内側に位置している。上記トレッド面のプロファイルは、このタイヤの赤道面から上記トレッドの第一端に向かって延在する第一円弧と、この赤道面からこのトレッドの第二端に向かって延在する第二円弧とを含んでいる。上記第一円弧と上記第二円弧とは、上記赤道面において接している。上記第一円弧の曲率半径R1は、上記第二円弧の曲率半径R2よりも大きい。上記リムが、上記第一ビードの部分が嵌め合わされる第一シートと、上記第二ビードの部分が嵌め合わされる第二シートとを備えており、上記第一シートにおけるこのリムのリム径を第一リム径とし、上記第二シートにおけるこのリムのリム径を第二リム径としたとき、このタイヤにおける上記第二リム径の呼びは、上記第一リム径の呼びよりも大きい。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記第一円弧の曲率半径R1の上記第二円弧の曲率半径R2に対する比は1.5以上2.5以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記第二リム径の呼びと上記第一リム径の呼びとの差は1インチ以上3インチ以下である。
好ましくは、この空気入りタイヤでは、上記第一リム径の呼びは16インチ以上20インチ以下である。
本発明に係る空気入りタイヤでは、第二リム径の呼びは第一リム径の呼びよりも大きい。言い換えれば、このタイヤでは、第二サイドウォールから第二ビードに至るまでの部分(第二サイド部)は第一サイドウォールから第一ビードに至るまでの部分(第一サイド部)よりも短い。この第二サイド部は、支持層を有しているにもかかわらず、軽量化に寄与する。この第二サイド部には、支持層が設けられているにもかかわらず、熱が蓄積しにくい。この第二サイド部は、耐久性に寄与する。この第二サイド部が内側に位置するようにこのタイヤを車輌に装着することにより、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
このタイヤは、その大径側が小径側に引っ張られるように膨張する。タイヤの赤道面は小径側にシフトし、大径側の第二サイド部は立ち上がる。これにより、この第二サイド部におけるカーカスは概ね半径方向に沿うように延在する。このカーカスのプロファイルは、タイヤの支持に効果的に寄与する。横剛性が増加するので、このタイヤでは、良好な操縦安定性が得られる。このタイヤでは、パンクによって内圧が低下しても、この第二サイド部が車重を十分に支えうる。このタイヤでは、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。
このタイヤでは、第一サイド部は第二サイド部よりも長い。この第一サイド部は、撓みに寄与する。縦剛性が適切に維持されるので、このタイヤでは、良好な乗り心地が得られる。この第一サイド部が外側に位置するようにこのタイヤを車輌に装着することにより、乗り心地のさらなる向上を図ることができる。
しかもこのタイヤでは、トレッド面のプロファイルに含まれる第一円弧及び第二円弧において、小径側の第一円弧の曲率半径R1が大径側の第二円弧の曲率半径R2よりも大きい。このトレッド面のプロファイルは、歪な形状の接地面の形成防止に寄与する。このタイヤでは、耐摩耗性の低下が抑えられる。
本発明によれば、耐摩耗性の低下を抑えつつ、操縦安定性及び乗り心地の向上が達成された空気入りタイヤが得られる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの概略が示された断面図である。 図2は、図1のタイヤの左側部分が示された断面図である。 図3は、図1のタイヤの右側部分が示された断面図である。 図4は、実施例1のタイヤの接地面の様子が示された図である。 図5は、比較例5のタイヤの接地面の様子が示された図である。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1には、空気入りタイヤ2が示されている。図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。このタイヤ2は、リム4に組み込まれている。このタイヤ2の内部には、空気が充填されている。これにより、タイヤ2の内圧が調整されている。
図2には、図1に示されたタイヤ2の断面の左側部分が示されている。図3には、図1に示されたタイヤ2の断面の右側部分が示されている。図2及び3のそれぞれにおいて、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
後述するが、このタイヤ2は、ローカバー(未架橋タイヤ2)をモールド内で加圧及び加熱することにより得られる。このとき、ローカバーはモールドのキャビティ面に押し当てられる。これにより、タイヤ2の外面が得られる。図2及び3に示されたタイヤ2の外面の輪郭は、このキャビティ面の輪郭と一致している。
図2及び3において、符号PEはこのタイヤ2の半径方向外側端を表している。この外側端PEは、赤道とも称される。実線ELは、赤道PEを通る。実線ELは、半径方向に延びる。実線ELは、このタイヤ2の赤道面である。本発明において、赤道面ELはモールドのキャビティ面に基づいて特定される。図2及び3から明らかなように、このタイヤ2の形状は赤道面に対して非対称である。
このタイヤ2は、トレッド6、貫通部8、一対のサイドウォール10、一対のクリンチ12、一対のビード14、カーカス16、ベルト18、一対のエッジバンド20、バンド22、一対のクッション層24、インナーライナー26、一対のインスレーション28、一対のチェーファー30及び一対の支持層32を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車用である。
トレッド6は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド6は、路面と触れるトレッド面34を形成する。トレッド6には、溝36が刻まれている。この溝36により、トレッドパターンが形成されている。トレッド6は、キャップ層38とベース層40とを有している。キャップ層38は、ベース層40の半径方向外側に位置している。キャップ層38は、ベース層40に積層されている。キャップ層38は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層40は、バンド22を覆っている。ベース層40は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層40の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。図2において、符号PT1はタイヤ2の外面における特定の地点を表している。この地点PT1は、トレッド6の一方の軸方向外端(第一端)である。図3において、符号PT2はタイヤ2の外面における特定の地点を表している。この地点PT2は、このトレッド6の他方の軸方向外端(第二端)である。
貫通部8は、導電性の架橋ゴムからなる。貫通部8は、トレッド6を貫通している。貫通部8の一端は、トレッド面34に露出している。貫通部8の他端は、バンド22と接触している。このタイヤ2では、貫通部8は周方向に延在している。
一対のサイドウォール10のうち一方のサイドウォール10a(第一サイドウォール)は、トレッド6の第一端PT1から半径方向略内向きに延びている。他方のサイドウォール10b(第二サイドウォール)は、トレッド6の第二端PT2から半径方向略内向きに延びている。
それぞれのサイドウォール10の半径方向外側部分は、トレッド6と接合されている。このサイドウォール10の半径方向内側部分は、クリンチ12と接合されている。このサイドウォール10は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。このサイドウォール10は、カーカス16の損傷を防止する。
一対のクリンチ12のうち一方のクリンチ12a(第一クリンチ)は、第一サイドウォール10aの半径方向略内側に位置している。他方のクリンチ12b(第二クリンチ)は、第二サイドウォール10bの半径方向略内側に位置している。
それぞれのクリンチ12は、軸方向において、ビード14及びカーカス16よりも外側に位置している。このクリンチ12は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。クリンチ12は、リム4のフランジ42と当接する。
一対のビード14のうち一方のビード14a(第一ビード)は、第一クリンチ12aの軸方向内側に位置している。第一ビード14aは、半径方向において、第一サイドウォール10aよりも内側に位置している。他方のビード14b(第二ビード)は、第二クリンチ12bの軸方向内側に位置している。第二ビード14bは、半径方向において、第二サイドウォール10bよりも内側に位置している。
それぞれのビード14は、内側パート44と外側パート46とを備えている。外側パート46は、軸方向において、内側パート44よりも外側に位置している。
内側パート44は、内側コア48と内側エイペックス50とを備えている。詳細には、内側パート44は内側コア48及び内側エイペックス50から構成されている。内側コア48は、リング状である。図示されていないが、内側コア48は巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。内側エイペックス50は、高硬度な架橋ゴムからなる。内側エイペックス50は、内側コア48を覆い、かつ、この内側コア48から半径方向略外向きに延在している。内側エイペックス50の半径方向外側部分は、先細りな形状を呈している。
外側パート46は、外側コア52と外側エイペックス54とを備えている。詳細には、外側パート46は外側コア52及び外側エイペックス54から構成されている。外側コア52は、リング状である。図示されていないが、外側コア52は巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。外側エイペックス54は、高硬度な架橋ゴムからなる。外側エイペックス54は、外側コア52を覆い、かつ、この外側コア52から半径方向略外向きに延在している。外側エイペックス54の半径方向外側部分は、先細りな形状を呈している。
このタイヤ2では、それぞれのビード14の半径方向内側部分では、内側エイペックス50は外側エイペックス54と接合している。この部分において、内側エイペックス50と外側エイペックス54とは一体的に形成されている。
カーカス16は、カーカスプライ56を備えている。このタイヤ2のカーカス16は、一枚のカーカスプライ56からなる。このカーカス16が2枚以上のカーカスプライ56から形成されてもよい。
カーカスプライ56は、第一ビード14aと第二ビード14bとの間に架け渡されている。カーカスプライ56は、第一サイドウォール10a、トレッド6及び第二サイドウォール10bの内側に沿って延在している。図示されていないが、カーカスプライ56は並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面ELに対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス16はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。高い剛性を有するカーカス16が得られるとの観点から、このコードのための有機繊維としては、アラミド繊維がより好ましい。
このタイヤ2では、ビード14の内側パート44は軸方向においてカーカスプライ56の内側に位置している。外側パート46は、軸方向において、このカーカスプライ56の外側に位置している。詳細には、カーカスプライ56の端部は内側パート44と外側パート46との間に挟まれている。前述したように、ビード14の半径方向内側部分において、内側エイペックス50と外側エイペックス54とは一体的に形成されている。このタイヤ2では、カーカスプライ56は従来のタイヤのようにビード14の周りにて折り返されていない。本発明においては、このようなカーカス16の構造は、「インサート構造」と称される。図示されていないが、ビードの周りにて折り返されたカーカスプライからカーカスが構成されている場合、このカーカスの構造は「折り返し構造」と称される。
ベルト18は、トレッド6の半径方向内側に位置している。ベルト18は、カーカス16と積層されている。ベルト18は、カーカス16を補強する。ベルト18は、内側層58及び外側層60の2層からなる。このベルト18が、3以上の層を備えてもよい。
このタイヤ2では、軸方向において、内側層58の幅は外側層60の幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層58及び外側層60のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層58のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層60のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
このタイヤ2では、ベルト18の軸方向幅は、タイヤ2の最大幅の0.7倍以上が好ましい。なお、この最大幅は、モールドのキャビティ面の輪郭に基づいて特定される。軸方向におけるこのベルト18の中心において、赤道面ELはこのベルト18と交差している。
それぞれのエッジバンド20は、ベルト18の半径方向外側であって、かつベルト18の端の近傍に位置している。図示されていないが、このエッジバンド20は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド22は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト18の端が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
バンド22は、ベルト18の半径方向外側に位置している。バンド22は、半径方向において、ベルト18とトレッド6との間に位置している。軸方向において、バンド22の幅はベルト18の幅よりも大きい。バンド22は、ベルト18を覆っている。図示されていないが、このバンド22は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド22は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト18が拘束されるので、ベルト18のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維として、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。高い剛性を有するバンド22が得られるとの観点から、このコードとしては、アラミド繊維がより好ましい。このバンド22は、軽量化及び転がり抵抗の低減に寄与する。
ぞれぞれのクッション層24は、ベルト18の端の近傍において、カーカス16と積層されている。クッション層24は、軟質な架橋ゴムからなる。クッション層24は、ベルト18の端の応力を吸収する。このクッション層24は、ベルト18のリフティングの抑制に寄与する。
インナーライナー26は、カーカス16の内側に位置している。赤道面の近傍において、インナーライナー26は、カーカス16の内面に接合されている。インナーライナー26は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー26の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー26は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのインスレーション28は、軸方向において、サイドウォール10の内側に位置している。インスレーション28は、支持層32とインナーライナー26とに挟まれている。インスレーション28は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。インスレーション28は、支持層32と堅固に接合し、インナーライナー26とも堅固に接合する。インスレーション28により、サイドウォール10の軸方向内側における、インナーライナー26の剥離が抑制される。
それぞれのチェーファー30は、ビード14の近傍に位置している。タイヤ2がリム4に組み込まれると、チェーファー30はリム4と当接する。この当接により、ビード14の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー30は、クリンチ12と一体である。したがって、チェーファー30の材質はクリンチ12の材質と同じである。チェーファー30が、布とこの布に含浸したゴムとからなってもよい。
一対の支持層32のうち一方の支持層32a(第一支持層)は、第一サイドウォール10aよりも軸方向内側に位置している。他方の支持層32b(第二支持層)は、第二サイドウォール10bよりも軸方向内側に位置している。それぞれの支持層32は、カーカス16よりも軸方向内側に位置している。支持層32は、カーカス16と、インナーライナー26とに挟まれている。この支持層32は、ビード14における内側エイペックス50の半径方向外側に位置している。このタイヤ2では、支持層32はこの内側エイペックス50と積層されている。
このタイヤ2では、支持層32は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層32は、三日月に類似の形状を有する。支持層32は、架橋ゴムからなる。タイヤ2がパンクしたとき、この支持層32が車重を支える。この支持層32により、パンク状態であっても、タイヤ2はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ2は、ランフラットタイヤとも称されている。このタイヤ2は、サイド補強タイプである。
このタイヤ2では、支持層32の硬度は60以上85以下が好ましい。この硬度が60以上に設定されることにより、パンクによってこのタイヤ2の内圧が低下した場合、この支持層32が車重の支持に効果的に寄与しうる。この観点から、この硬度は65以上がより好ましい。この硬度が85以下に設定されることにより、支持層32によるサイドウォール10の部分の撓みへの影響が抑えられる。このタイヤ2では、乗り心地が適切に維持される。この観点から、この硬度は80以下がより好ましい。
本願において、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。より詳細には、硬度は、図2及び3に示された断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
このタイヤ2は、リム4に装着し内部に空気を充填して使用する。このリム4としては、例えば、二つ割りリムが用いられる。このリム4は、一対のハーフリム62を備えている。それぞれのハーフリム62は、ビードシート64を備えている。このビードシート64には、タイヤ2のビード14の部分が嵌め合わされる。本発明においては、第一ビード14aの部分(第一ビード部66a)が嵌め合わされるビードシート64aは、第一シートと称される。第二ビード14bの部分(第二ビード部66b)が嵌め合わされるビードシート64bは、第二シートと称される。つまり一方のハーフリム62a(第一ハーフリム)は、第一シート64aを備えている。他方のハーフリム62b(第二ハーフリム)は、第二シート64bを備えている。このリム4は、第一シート64aと第二シート64bとを備えている。
このタイヤ2では、第一サイドウォール10aから第一ビード14aに至るまでの部分(第一サイド部68a)は、第二サイドウォール10bから第二ビード14bに至るまでの部分(第二サイド部68b)の長さよりも大きな長さを有している。このため、第一シート64aにおけるリム4のリム径を第一リム径とし、第二シート64bにおけるこのリム4のリム径を第二リム径としたとき、第一リム径は第二リム径よりも小さい。このタイヤ2では、第一サイド部68aが位置する側が小径側であり、第二サイド部68bが位置する側が大径側である。したがってこのタイヤ2では、大径側のリム径の呼び(すなわち、第二リム径の呼びD2)は小径側のリム径の呼び(すなわち、第一リム径の呼びD1)よりも大きい。このタイヤ2は、異径ビードタイプである。なお、本発明において「リム径の呼び」は、JATMA規格における「タイヤの呼び」に含まれる「リム径の呼び」と同義である。
本発明において、タイヤ2が装着されるリム4の形状は、左右のリム径が同じ通常のリム(以下、正規リム)の形状と比べて特異である。このリム4は特殊である。本発明のタイヤ2のために、例えば、リム径の異なる、二つ割りタイプの正規リムを2つ準備し、一方の正規リムのハーフリム62aと、他方の正規リムのハーフリム62bとを組み合わせることで、このリム4を構成することができる。このようにして構成されたリム4は、2つの正規リムを組み合わせて構成しているので、本発明においては、正規リムに準じるリムとして、準正規リムとも称される。さらに本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
以上説明されたタイヤ2は、次のようにして製造される。この製造方法では、中子が準備される。図示されていないが、この中子はトロイダル状の外面を備えている。
このタイヤ2の製造方法では、中子の外面においてインナーライナー26をはじめとする多数の要素が組み合わされて、ローカバー(未加硫タイヤ2)が得られる。この製造方法では、ローカバーは中子の外面において組み立てられる。
この製造方法では、ローカバーは中子とともにモールド(図示されず)に投入される。投入後、モールドは閉じられる。ローカバーの内面は、中子に当接している。ローカバーの外面は、モールドのキャビティ面と当接する。ローカバーは、モールドのキャビティ面と中子の外面とに挟まれて加圧される。ローカバーは、モールド内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。このように中子を用いたタイヤ2の製法は、中子工法とも称される。
前述したように、このタイヤ2では、カーカス16、バンド22等の部材には、剛性の観点から、好ましくは、アラミド繊維からなコード(以下、アラミドコード)が採用される。このアラミドコードの採用は、転がり抵抗の低減及びパンク状態での耐久性(ランフラット耐久性とも称される。)の向上に寄与する。しかしこのアラミドコードの伸びはかなり小さい。このため、ローカバーを膨らませてその形態を整える工程、すなわちシェーピング工程を含む製造方法では、このアラミドコードを含む部材を備えるタイヤ2の製造は困難である。これに対して、中子方法では、ローカバーを膨らませてその形態を整える必要はない。この中子工法では、ローカバーの形態変化を伴うことなく、タイヤ2の成形が可能である。この中子工法によれば、伸びの小さなアラミドコードを含む部材を採用しても、タイヤ2を安定に製造することができる。この中子方法は、タイヤ2の転がり抵抗の低減及びパンク状態での耐久性の向上に寄与する。
前述したように、このタイヤ2の形状は赤道面ELに対して非対称である。このタイヤ2の形状は、例えば、断面幅の呼びが同じで、偏平比の呼び及びリム径の呼びが異なる2つのタイヤを、それぞれの赤道面において組み合わせることにより、構成することができる。具体的には、例えば、245/45R18の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの形状でその小径側の形状を構成し、245/35R20の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの形状でその大径側の形状を構成することにより、図1−3に示されたタイヤ2の形状を得ることができる。この場合、モールドのキャビティ面には、245/45R18の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの外面と245/35R20の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの外面とが反映される。中子の外面には、245/45R18の「タイヤの呼び」で表されるタイヤ2の内面と245/35R20の「タイヤの呼び」で表されるタイヤの内面とが反映される。
前述したように、このタイヤ2では、第二サイド部68bは第一サイド部68aよりも短い。この第二サイド部68bは、第二支持層32を有しているにもかかわらず、軽量化に寄与する。この第二サイド部68bは、転がり抵抗の低減にも寄与する。
このタイヤ2のサイド部68には、支持層32が設けられている。このため、このサイド部68は、熱が蓄積する傾向にある。しかし、このタイヤ2では、第二サイド部68bが第一サイド部68aよりも短いので、この第二サイド部68bのボリュームは小さい。この第二サイド部68bには、第二支持層32が設けられているにもかかわらず、熱が蓄積しにくい。この第二サイド部68bは、耐久性に寄与する。この第二サイド部68bが内側に位置するようにこのタイヤ2を車輌に装着することにより、耐久性のさらなる向上を図ることができる。
図1には、図2及び3に示されたタイヤ2をリム4に組み込み、このタイヤ2の内部に空気を充填した状態が示されている。この図1に示されたタイヤ2の外面の輪郭は、空気充填後のものである。この空気充填後の輪郭は、このタイヤ2を準正規リムに組み込み、内圧を180kPaに調整したタイヤ2において確認されている。
タイヤ2の内部に空気を充填すると、タイヤ2は膨張する。前述したように、このタイヤ2のカーカス16は多数のコードを含んでいる。膨張により、それぞれのコードには張力が作用する。膨張状態にあるタイヤ2では、これらのコードに作用する張力は一様である。
図1において、両矢印WRはこのタイヤ2が装着されるリム4のリム幅を表している。一点鎖線CLは、このリム幅WRの中心を通る。この一点鎖線CLは、リム4の幅方向における中心線である。このタイヤ2の製造では、赤道面ELがこの中心線CLと軸方向において概ね一致するようにキャビティ面が整えられたモールドが用いられる。左右のリム径の呼びが同じである従来のタイヤでは、その内部に空気を充填し、タイヤを膨張させると、赤道面ELはこの中心線CLと軸方向において概ね一致する。
図1に示されているように、このタイヤ2では、赤道面ELは中心線CLの左側に位置している。つまり、このタイヤ2は、その大径側が小径側に引っ張られるように膨張している。このため、タイヤ2の赤道面ELは小径側にシフトし、大径側の第二サイド部68bは立ち上がっている。膨張状態のタイヤ2では、その第二サイド部68bにおけるカーカス16は概ね半径方向に沿うように延在している。このカーカス16のプロファイル(カーカスラインとも称される。)は、タイヤ2の支持に効果的に寄与する。横剛性が増加するので、このタイヤ2では、良好な操縦安定性が得られる。このタイヤ2では、パンクによって内圧が低下しても、この第二サイド部68bが車重を支えうる。このタイヤ2では、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。
このタイヤ2では、第一サイド部68aは第二サイド部68bよりも長い。この第一サイド部68aは、撓みに寄与する。縦剛性が適切に維持されるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が得られる。この第一サイド部68aが外側に位置するようにこのタイヤ2を車輌に装着することにより、乗り心地のさらなる向上を図ることができる。
本発明では、特に言及がない限り、このタイヤ2の外面の輪郭を表すプロファイルに関する記載は、モールドのキャビティ面を前提としている。このタイヤ2のように、トレッド面34に溝36が設けられている場合には、この溝36がないとして得られる仮想トレッド面が、本発明のプロファイルの対象である。図示されていないが、このトレッド面34に突起が設けられている場合には、この突起がないとして得られる仮想トレッド面が、本発明のプロファイルの対象である。
このタイヤ2では、トレッド面34のプロファイルは複数の円弧を含んでいる。これらの円弧は、軸方向に並列されている。言い換えれば、このトレッド面34のプロファイルは軸方向に並列された複数の円弧で構成されている。
このタイヤ2では、トレッド面34のプロファイルは第一円弧と第二円弧とを含んでいる。図2及び3において、矢印R1は第一円弧の曲率半径を表している。矢印R2は、第二円弧の曲率半径を有している。この曲率半径R1及びR2は、モールドのキャビティ面において計測される。
このタイヤでは、第一円弧は赤道面ELからトレッド18の第一端PT1に向かって延在している。第二円弧は、赤道面ELからトレッド18の第二端PT2に向かって延在している。
このタイヤでは、第一円弧と第二円弧とは赤道面ELにおいて接している。より詳細には、このタイヤ2では、第一円弧と第二円弧とは赤道PEにおいて接している。このタイヤ2では、第一円弧と第二円弧との境界は特異ではない。このタイヤ2のトレッド面34のプロファイルは滑らかである。このプロファイルは、歪な形状の接地面の形成防止に寄与する。
このタイヤ2では、第一円弧の曲率半径R1は第二円弧の曲率半径R2よりも大きい。言い換えれば、第一円弧は大きな曲率半径R1を有し、第二円弧は小さな曲率半径R2を有している。大きな曲率半径R1は、トレッド面34の路面への接触を促す。小さな曲率半径R2は、トレッド面34の路面への接触を適度に抑える。前述したように、大径側が小径側に引っ張られるようにこのタイヤ2は膨張し、このタイヤ2の赤道面ELは小径側にシフトし、第二サイド部68bは立ち上がる。このタイヤ2では、第一円弧は小径側に位置し第二円弧は大径側に位置している。このため、このタイヤ2では、充分な接地面が確保されるとともに、第二サイド部68bによる局所的な接地圧の上昇が抑えられる。
図4には、図1のタイヤ2の接地面の様子が示されている。より詳細には、この図4には、本発明のタイヤ2の接地面の一例として、後述する実施例1のタイヤ2の接地面の様子が示されている。この接地面は、タイヤ2をリム4に組み込み、内圧を230kPaに調整し、5.0kNの縦荷重を付与した状態において確認されている。この図4において、上下方向はタイヤ2の周方向に相当する。左右方向は、このタイヤ2の軸方向に相当する。紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の半径方向に相当する。この接地面の長さは上下方向の長さで表され、接地面の幅は左右方向の長さで表される。なおこの紙面において、左側はタイヤ2の小径側であり、右側はこのタイヤ2の大径側である。
図5には、図1に示されたタイヤ2とは別のタイヤの接地面の様子が示されている。より詳細には、この図5には、後述する比較例5のタイヤの接地面の様子が示されている。この図5の接地面は、図4に示された接地面と同様にして確認されている。この図5に示された接地面が確認されたタイヤでは、第一円弧の曲率半径R1は450mmであり、第二円弧の曲率半径R2は900mmである。このタイヤでは、トレッド面のプロファイルが、第二円弧の曲率半径R2が第一円弧の曲率半径R1よりも大きくなるように構成されている。
図5に示されているように、トレッド面34のプロファイルが第二円弧の曲率半径R2が第一円弧の曲率半径R1よりも大きくなるように構成されたタイヤでは、大径側の接地面の長さが小径側の接地面の長さよりも長くなる様相を呈している。この接地面の形状は、非対称である。これに対して、図1に示されたタイヤ2の接地面は、図4から明らかなように、接地面の形状は概ね対称である。この接地面の形状は、図5に示された接地面のそれとは相違する。この接地面の形状は歪でない。ここに、第一円弧の曲率半径R1を第二円弧の曲率半径R2よりも大きくしたことによる効果が確認される。
このタイヤ2では、トレッド面34のプロファイルは歪な形状の接地面の形成防止に寄与する。このタイヤ2では、摩耗が抑えられる。言い換えれば、このタイヤ2では、耐摩耗性の低下が抑えられている。前述したように、このタイヤ2では、操縦安定性及び乗り心地の向上が達成される。本発明によれば、耐摩耗性の低下を抑えつつ、操縦安定性及び乗り心地の向上が達成された空気入りタイヤ2が得られる。
歪な形状の接地面の形成が防止され、耐摩耗性の低下が効果的に抑えられるとの観点から、このタイヤ2では、第一円弧の曲率半径R1の第二円弧の曲率半径R2に対する比は1.5以上が好ましく、2.5以下が好ましい。この比は、1.7以上がより好ましく、2.3以下がより好ましい。これにより、接地圧分布の平準化がいっそう進み、良好な耐摩耗性を維持した状態で、転がり抵抗のさらなる低減を図ることができる。
このタイヤ2では、耐摩耗性の低下を抑えつつ、転がり抵抗の低減が図れるとの観点から、第一円弧の曲率半径R1は500mm以上が好ましく、1500mm以下が好ましい。第二円弧の曲率半径R2は、200mm以上が好ましく、1000mm以下が好ましい。
図1において、実線BL1は第一ベースラインである。第一ベースラインは、このタイヤ2が装着されるリム4の第一リム径を規定する線に相当する。この第一ベースラインは、軸方向に延びる。実線BL2は、第二ベースラインである。第二ベースラインは、このリム4の第二リム径を規定する線に相当する。この第二ベースラインは、軸方向に延びる。
この図1において、両矢印H1は、第一ベースラインからこのタイヤ2の半径方向外側端までの半径方向高さを表している。この高さH1は、第一ベースラインを基準として得られるこのタイヤ2の断面高さである。両矢印H2は、第二ベースラインからこのタイヤ2の半径方向外側端までの半径方向高さを表している。この高さH2は、第二ベースラインを基準として得られるこのタイヤ2の断面高さである。両矢印Wは、軸方向におけるこのタイヤ2の最大幅を表している。この幅Wは、このタイヤ2の断面幅である。
本発明では、断面高さH1、断面高さH2及び断面幅Wは、タイヤ2に空気を充填した状態で測定される。測定時には、このタイヤ2には荷重がかけられない。測定時におけるタイヤ2の内圧は、用途及び大きさを考慮して、タイヤ2が依拠する規格において定められた正規内圧を参照して決められる。図1に示されたタイヤ2では、このタイヤ2が乗用車用であるので、タイヤ2の内圧が180kPaとなるように空気が充填された状態で、断面高さH1、断面高さH2及び断面幅Wは測定される。なお本明細書において正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」を意味する。
前述したように、このタイヤ2は異径ビードタイプである。これにより、膨張状態におけるカーカスラインをコントロールし、操縦安定性の向上が図られている。この観点から、第二リム径の呼びD2と第一リム径の呼びD1との差(D2−D1)は1インチ以上が好ましい。このカーカスラインが維持され、操縦安定性及び耐摩耗性の低下が防止されるとの観点から、この差(D2−D1)は3インチ以下が好ましい。
このタイヤ2では、第一サイド部68aは第二サイド部68bよりも長い。長い第一サイド部68aは、撓みに寄与する。縦剛性の増加が抑えられるので、このタイヤ2では、良好な乗り心地が得られる。長い第一サイド部68aの形成の観点から、第一リム径の呼びD1は20インチ以下が好ましい。長い第一サイド部68aによる操縦安定性への影響が抑えられるとの観点から、この第一リム径の呼びD1は16インチ以上が好ましい。
このタイヤ2では、第二サイド部68bは第一サイド部68aよりも短い。短い第二サイド部68bは縦剛性を効果的に増加させるので、このタイヤ2では、良好な操縦安定性及びランフラット耐久性が得られる。この観点から、第二リム径の呼びD2は17インチ以上が好ましい。短い第二サイド部68bによる耐摩耗性及び乗り心地への影響が抑えられるとの観点から、この第二リム径の呼びD2は23インチ以下が好ましい。
本発明においては、小径側の偏平比(以下、第一偏平比F1)は断面高さH1の断面幅Wに対する比で表される。大径側の偏平比(以下、第二偏平比F2)は、断面高さH2の断面幅Wに対する比で表される。
このタイヤ2では、乗り心地及び操縦安定性の観点から、第一偏平比F1は0.40以上が好ましく、0.70以下が好ましい。さらにカーカスラインによる耐摩耗性への影響が抑えられるとの観点から、この第一偏平比F1は0.45以上がより好ましく、0.65以下がより好ましい。
このタイヤ2では、操縦安定性及びランフラット耐久性の観点から、第二偏平比F2は0.30以上が好ましく、0.60以下が好ましい。さらに耐摩耗性のさらなる向上を図ることができるとの観点から、この第二偏平比F2は0.35以上が好ましく、0.55以下がより好ましい。
四輪自動車に装着されたタイヤ2では、車輌の幅方向内側部分にその外側部分よりも大きな荷重が作用する傾向にある。特に、赤道面が鉛直線に対して傾斜するように車輌に装着されている場合、詳細には、キャンバー角をネガティブキャンバーで設定した場合において、この傾向は顕著である。このタイヤ2では、第一サイド部68aが主に縦剛性に寄与し、第二サイド部68bが主に横剛性に寄与する。乗り心地、操縦安定性及びランフラット耐久性の観点から、第一サイド部68aが車輌の幅方向外側(表側又はS側とも称される。)に位置し、第二サイド部68bがこの車輌の幅方向内側(裏側又はNS側とも称される。)に位置するように、このタイヤ2は四輪自動車に装着されるのが好ましい。この場合、第一サイド部68aはランフラット耐久性への寄与が低い、車輌の幅方向外側に配置されることになるので、薄い第一支持層32aの採用が可能となり、さらなる軽量化及び転がり抵抗の更なる低減を図ることができる。場合によっては、第一サイド部68aから第一支持層32aを除くことができ、この場合には、より一層の軽量化及び転がり抵抗の低減を図ることができる。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1−3に示されたタイヤを製作した。この実施例1では、下記の表1に示されているように、第一リム径の呼びD1は18インチである。第二リム径の呼びD2は、20インチである。トレッド面のプロファイルにおいては、第一円弧の曲率半径R1は900mmとされ、第二円弧の曲率半径R2は450mmとされた。第一偏平比F1、第二偏平比F2、曲率半径R1の曲率半径R2に対する比(R1/R2)及び第二リム径の呼びD2と第一リム径の呼びD1との差(D2−D1)は、下記の表1の通りである。なお、このタイヤの断面幅Wは245mmであった。
この実施例1には、「インサート構造」のカーカスが採用されている。このことが、表の「カーカスの構造」の欄に、「I」で示されている。このカーカスに含まれるコードには、アラミド繊維からなるコードが用いられている。ベルトに含まれるコードには、その材質がスチールとされたコードが用いられている。バンドに含まれるコードには、アラミド繊維からなるコードが用いられている。この実施例1は、中子工法で製作されている。
[比較例1−4]
比較例1−4は、従来のタイヤである。これらのタイヤの形状は、赤道面に対して対称である。比較例1−4の諸元は、下記の表1の通りである。なお、比較例1及び2には、「折り返し構造」のカーカスが採用されている。このことが、表の「カーカスの構造」の欄に、「F」で示されている。比較例3及び4には、実施例1と同じ、「インサート構造」のカーカスが採用されている。
[比較例5−9]
曲率半径R1、第二リム径の呼びD2及び曲率半径R2を変えて、偏平比F2、比(R1/R2)及び差(D2−D1)を下記の表2の通りとした他は実施例1と同様にして、比較例5−10のタイヤを得た。
[実施例2−6及び比較例10]
曲率半径R1を変えて、比(R1/R2)を下記の表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−6及び比較例10のタイヤを得た。
[実施例7−9及び比較例11]
第二リム径の呼びD2を変えて、偏平比F2及び差(D2−D1)を下記の表4の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例7−9及び比較例11のタイヤを得た。
[実施例10−16]
第一リム径の呼びD1及び第二リム径の呼びD2を変えて、偏平比F1、偏平比F2及び差(D2−D1)を下記の表5の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例10−16のタイヤを得た。
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機(ドラム径=1.7m、ドラム表面=smooth steel)を用い、下記の測定条件で転がり抵抗係数(RRC)を測定した。なお、リムには、第一リム径の呼びD1を参照して第一ハーフリム(アルミニウム合金製)を選定し、第二リム径の呼びD2を参照して第二ハーフリム(アルミニウム合金製)を選定して、この第一ハーフリム及び第二ハーフリムを組み合わせて構成した、二つ割りリム(準正規リム)を用いた。このリムでは、リム幅は8.5インチに設定された。
内圧:210kPa
荷重:5.3kN
速度:80km/h
温度:20℃
慣らし時間:30分
この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、つまり転がり抵抗係数(RRC)が小さい。
[タイヤの質量]
タイヤ一本の質量を計測した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、つまり質量が小さい。
[乗り心地及び操縦安定性]
タイヤをリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、市販のハイブリッドタイプの乗用車に装着した。タイヤの小径側が車両の幅方向外側(S側)に位置し、大径側が車両の幅方向内側(NS側)に位置するように、このタイヤは装着された。リムには、転がり抵抗係数の測定で用いた準正規リムが用いられた。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させて、乗り心地及び操縦安定性を評価させた。この乗用車には、ドライバー以外は乗車していない。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい。
[耐摩耗性]
タイヤをリムに組み込み、このタイヤに内圧が230kPaとなるように空気を充填した。このタイヤを、市販のハイブリッドタイプの乗用車に装着した。タイヤの小径側が車両の幅方向外側(S側)に位置し、大径側が車両の幅方向内側(NS側)に位置するように、このタイヤは装着された。リムには、転がり抵抗係数の測定で用いた準正規リムが用いられた。ドライバーに、この乗用車をレーシングサーキットで運転させた。この乗用車には、ドライバー以外は乗車していない。走行距離が120kmである時点での摩耗量を測定した。この結果が、比較例1を100とした指数で、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい、つまり摩耗量が小さい。
[総合性能]
各評価で得られた指数の合計を求めた。この結果が、総合性能として、下記の表1−5に示されている。数値が大きいほど好ましい。
Figure 0006617566
Figure 0006617566
Figure 0006617566
Figure 0006617566
Figure 0006617566
表1−5に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
発明者らは、空気充填後の輪郭において、第一円弧に対応する円弧の曲率半径R1p(図1の矢印R1p)及び第二円弧に対応する円弧の曲率半径R2p(図1の矢印R2p)を計測した。上記の表1−5には、この結果も示されている。なお、第一円弧に対応する円弧とこの第二円弧に対応する円弧とは、図1に示されたトレッド面のプロファイルに含まれており、この第一円弧に対応する円弧とこの第二円弧に対応する円弧とは赤道面において接している。
表1−5に示されるように、異径ビードタイプであり、比(R1/R2)が1.5から2.5の範囲にある実施例では、充填後の輪郭から得られる、曲率半径R1pの曲率半径R2pに対する比(R1p/R2p)が0.8から1.5の範囲にあることが確認されている。特に、この比(R1/R2)による効果の把握が容易な、表3の実施例2−5によれば、充填後の比(R1p/R2p)は0.86以上1.14以下である。このことは、本発明のタイヤでは、充填後の輪郭において、赤道面に対する対称性が高まり、歪な形状の接地面の形成が効果的に防止されることを表している。この結果からも、本発明の優位性は明らかである。
以上説明されたタイヤは、種々のタイプの四輪自動車にも適用されうる。
2・・・タイヤ
4・・・リム
6・・・トレッド
10、10a、10b・・・サイドウォール
14、14a、14b・・・ビード
16・・・カーカス
32、32a、32b・・・支持層
34・・・トレッド面
56・・・カーカスプライ
62、62a、62b・・・ハーフリム
64、64a、64b・・・ビードシート
66、66a、66b・・・ビード部
68、68a、68b・・・サイド部

Claims (4)

  1. リムに装着して使用されるタイヤであって、
    トレッド、第一サイドウォール、第二サイドウォール、第一ビード、第二ビード、カーカス及び支持層を備えており、
    上記トレッドが、路面と触れるトレッド面を備えており、
    上記第一サイドウォールが上記トレッドの第一端から半径方向略内向きに延びており、上記第二サイドウォールがこのトレッドの第二端から半径方向略内向きに延びており、
    上記第一ビードが上記第一サイドウォールよりも半径方向内側に位置しており、上記第二ビードが上記第二サイドウォールよりも半径方向内側に位置しており、
    上記カーカスが上記第一サイドウォール、上記トレッド及び上記第二サイドウォールの内側に沿って、上記第一ビードと上記第二ビードとの間を架け渡しており、
    上記支持層が、上記第二サイドウォールの側において、上記カーカスの軸方向内側に位置しており、
    上記トレッド面のプロファイルが、このタイヤの赤道面から上記トレッドの第一端に向かって延在する第一円弧と、この赤道面からこのトレッドの第二端に向かって延在する第二円弧とを含んでおり、
    上記第一円弧と上記第二円弧とが上記赤道面において接しており、
    上記第一円弧の曲率半径R1が上記第二円弧の曲率半径R2よりも大きく、
    上記リムが、上記第一ビードの部分が嵌め合わされる第一シートと、上記第二ビードの部分が嵌め合わされる第二シートとを備えており、
    上記第一シートにおけるこのリムのリム径を第一リム径とし、上記第二シートにおけるこのリムのリム径を第二リム径としたとき、
    このタイヤにおける上記第二リム径の呼びが上記第一リム径の呼びよりも大きい、空気入りタイヤ。
  2. 上記第一円弧の曲率半径R1の上記第二円弧の曲率半径R2に対する比が1.5以上2.5以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 上記第二リム径の呼びと上記第一リム径の呼びとの差が1インチ以上3インチ以下である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 上記第一リム径の呼びが16インチ以上20インチ以下である、請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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