本発明のトナーにおいては、トナー粒子のシェル部に含まれるポリエステル樹脂Aとシリカ微粒子Aとの相乗効果により、優れた流動性および耐久性が発現する。理由を以下に示す。
凝集性が低く、疎水性の高いシリカ微粒子を用いた場合には、シリカ微粒子の凝集によるトナー流動性の低下と、吸水によるトナー帯電性の低下を抑制することができる。一方で、凝集を抑えたシリカ微粒子は、二次粒子径が小さく、トナー粒子へのシリカ微粒子の埋没が生じやすくなる傾向がある。多数枚画像出力時にトナー粒子へのシリカ微粒子の埋没が生じる場合には、トナーの流動性は低下する。トナーの流動性が低下する詳しいメカニズムはわかっていないが、以下のように推測している。
シリカ微粒子がトナー粒子中に埋没する状況では、シリカ微粒子によるスペーサ効果が減少し、トナー粒子表面が接触帯電する機会は増大すると考えている。シリカ微粒子に覆われた表面に比べて、トナー粒子表面の帯電サイトは不均一である可能性があり、摩擦帯電により局所的な帯電部位が生じることで、トナー間の付着力が増大し、静電凝集が発生し、流動性が低下すると考えている。
本発明において、ポリエステル樹脂Aの誘電正接を適切に制御することで、トナー粒子に適度な電荷漏洩性を付与することで、トナーの局所的な帯電を抑え、トナー間の付着力を低減することができる。それにより、多数枚画像出力時のトナー流動性の低下を抑制できると考えている。そして、シリカ微粒子Aを用いた場合に得られる高い流動性を、多数枚画像出力後など、トナーが強いストレスを受けた後でも維持することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明においてはトナー粒子のシェル層を形成する極性樹脂として、以下詳述するポリエステル樹脂Aを添加する。
シェル層に含有されるポリエステル樹脂Aの25℃10000Hzにおける誘電正接は、0.0070以上0.0140以下である。誘電正接が0.0070以上であることでシェル層が適度な電荷漏洩性をもち、過酷な条件においてもチャージアップすることがなくシリカ微粒子Aを用いた場合の良好な流動性を維持することができる。また、誘電正接が0.0140以下であることで、電荷の過剰漏洩による帯電不良が抑制され、かぶりなどの弊害なく良好な流動性を得ることができる。前記誘電正接は、0.0080以上0.0120以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂Aの誘電正接は、ポリエステル合成時に用いるアルコール成分や酸成分、及びその含有量を適宜調整することで制御できる。例えば、式(1)で示されるイソソルビドユニットやエチレングリコールなどのエーテル構造を有する成分を添加することで、誘電正接を大きくすることができ、その含有量により誘電正接を制御することができる。本発明においては、イソソルビドユニットを有するポリエステル樹脂を用い、その含有量を調整することで、誘電正接を上記範囲内に調整することが好ましい。
イソソルビドユニットの含有量で調節するのが好ましい理由として、以下の作用効果によるものと推定される。
イソソルビドユニットは環状構造中にエーテル結合を有するため、エチレングリコールなどのエーテル結合を有するユニットよりも、1ユニット当たりの誘電正接への影響が大きくなく適度である。そのため、ポリエステル樹脂として、部分的に誘電正接を大きくすることが無く、ポリエステル樹脂Aに適度な誘電正接を付与することができるためであると推定される。
イソソルビドユニットの含有量は、ポリエステル樹脂Aを構成する全モノマーユニットの合計ユニット数を基準として、0.10個数%以上20.00個数%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.00個数%以上15.00個数%以下である。
イソソルビドユニットの含有量が上記範囲であれば、ポリエステル樹脂Aの誘電正接を本発明の範囲に制御することが容易である。また、イソソルビドユニット含有量が多くなるにつれポリエステル樹脂Aのガラス転移温度が上昇する傾向にあるため、シェルであるポリエステル樹脂Aによる定着阻害を低減させる意味でも、上記範囲が好ましい。
本発明のトナーは、コアを主に形成する結着樹脂100.0質量部に対して、前記ポリエステル樹脂Aを1.0質量部以上20.0質量部以下含有する。より好ましくは1.5質量部以上10.0質量部以下含有する。ポリエステル樹脂Aが1.0質量部より少ない場合、シェル層の形成が不十分であるため、ポリエステル樹脂Aによるチャージアップ抑制の効果が十分に得られない。ポリエステル樹脂Aが20.0質量部より多い場合、重合性単量体へ溶解しにくくなり、シェルの形成が不安定となり、耐熱保存性や耐ストレス性などが低下し、長期に使用した際にかぶりや画像濃度安定性などの現像性が低下する場合がある。
ポリエステル樹脂Aの酸価は、0.5mgKOH/g以上25.0mgKOH/g以下であることが好ましく、0.5mgKOH/g以上15.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂Aの酸価が上記の範囲内であれば、良好なシェル層の形成が可能であり、耐熱保存性、現像性をより良好に改善することができる。
ポリエステル樹脂Aの酸価は、樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマー成分比/酸モノマー成分比、分子量を調整することにより制御することができる。
ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、5000以上30000以下であることが好ましく、7000以上20000以下であることがより好ましい。上記範囲内であると、低温定着性と耐熱保存性、現像性の両立がより良くなる。
本発明のポリエステル樹脂Aは、アルコール成分としてイソソルビドを用いることが好ましいが、それ以外のアルコール成分としては下記のものも併用することができる。
二価アルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのようなビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような脂肪族系のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAのようなビスフェノールA類が挙げられる。
三価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂Aを形成するために用いられる酸成分としては下記のものが挙げられる。例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸のような芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸のような炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸などの脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜8)エステルが挙げられる。
それらの中でも特に、ビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、二価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキル(炭素数1〜8)エステルを酸成分として、これらを縮重合して得られるポリエステル樹脂Aを好ましく用いることができる。
また、本発明において、ポリエステル樹脂Aと共に、従来公知のポリエステル樹脂を併用してもよい。
尚、本発明に係るトナー粒子に含有される結着樹脂は、摩擦帯電特性の観点から、スチレンアクリル系樹脂であることが好ましい。
また、本発明に係るトナー粒子は、結着樹脂のほかに、着色剤、ワックス、および荷電制御剤などを必要に応じて含有する。
本発明のトナーの着色剤としては、以下に示すブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの顔料及び必要に応じて染料を用いることができる。
ブラック着色剤としては、公知のブラック着色剤を用いることができる。
例えば、ブラック着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。
また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を混合させて、ブラックに調節したものが挙げられる。
カーボンブラックとしては、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、ランプブラック法等の製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。
本発明に用いるカーボンブラックの一次粒子の平均粒径は14〜80nmであることが好ましく、より好ましくは25〜50nmである。なお、カーボンブラックの一次粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡で拡大した写真を撮影して測定することができる。上記カーボンブラックは単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
イエロー着色剤としては、公知のイエロー着色剤を用いることができる。
顔料系のイエロー着色剤としては、縮合多環系顔料、イソインドリノン化合物,アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Yellow 3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が挙げられる。
染料系のイエロー着色剤としては、C.I.solvent Yellow 33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperse Yellow 42、64、201、211が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、公知のマゼンタ着色剤を用いることができる。
マゼンタ着色剤としては、縮合多環系顔料、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Red 2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.Pigment Violet19 が挙げられる。
シアン着色剤としては、フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物,塩基染料レーキ化合物が用いられる。具体的には、C.I.Pigment Blue 1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明において、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHT透明性、トナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、一種以上のワックスを含有していることが好ましい。トナー中に含まれるワックスは総量で、結着樹脂100質量部に対して、2.5質量部以上25.0質量部以下含有されることが好ましい。また、トナー中に含まれるワックスの総量は、4.0質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、6.0質量部以上18.0質量部以下であることがさらに好ましい。
ワックスとしては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明のトナーは、トナーの帯電性を環境によらず安定に保つために、荷電制御剤を用いてもよい。荷電制御剤としては、公知の正帯電性、負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
本発明のトナーは、前記ポリエステル樹脂Aの他に、シェル層を形成する極性樹脂を用いてもよい。極性樹脂として、以下に一例を挙げるがこれら以外のものでも構わない。
本発明で用いられる極性樹脂は例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。より好ましくは材料の多様性からポリエステル樹脂が望まれる。前記極性樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂Aの前記詳述した効果を得るために、結着樹脂100質量部当たり、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下である。
また、本発明のトナーは低温定着性を向上させることを目的に、結晶性ポリエステルをコアに含有させてもよい。
結晶性ポリエステルとしては、例えば脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重縮合樹脂から構成される以下のものが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
また、本発明においては上記のようなカルボン酸単量体を主成分として用いるが、上記の成分の他に三価以上の多価カルボン酸を用いても良い。
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、及びこれらの酸無水物又は低級アルキルエステル等の誘導体等が挙げられる。
これらは1種単独、又は、2種以上併用してもよい。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコールその他が挙げられる。また、本発明においては上記のようなアルコール単量体が主成分として用いられるが、上記成分の他に、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の二価のアルコール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価のアルコール等を用いても良い。
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種単独、又は、2種以上併用してもよい。
上記脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、下記式(4)が示す直鎖型脱脂肪族ジカルボン酸と下記式(5)の直鎖型脂肪族ジオールから構成されることがより好ましい。
HOOC−(CH2)m−COOH 式(4)
[式中、mは、4〜16の整数を示す]
HO−(CH2)n−OH 式(5)
[式中、nは、4〜16の整数を示す]
直鎖型であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、結晶融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。また、炭素数が4以上であると、融点(Tm)が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性に優れる。また、16以下であると、実用上の材料の入手が容易である。前記炭素数としては14以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステルの融点Tm(C)は、55℃以上90℃以下であることが好ましく、60℃以上85℃以下であることがより好ましい。上記の範囲内であれば、トナー構成材料の分散性の低下を引き起こすことなく、保存性を改善することができる。Tm(C)は、使用する脂肪族ジカルボン酸や脂肪族ジオールの種類、重合度等によって調整することができる。
また、本発明においては、磁性材料を含有せしめて磁性トナーとすることもできる。この場合、磁性材料は着色剤の役割を兼ねることもできる。本発明で使用できる磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等のような酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、あるいはこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金及びその混合物が挙げられる。
さらに、本発明において用いるこれらの磁性体としては、より好ましくは、表面改質された磁性体を用いる。特に、重合法によりトナーを製造する場合には重合阻害のない表面改質剤により疎水化処理を施したものを用いることが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。
さらに、これらの磁性体としては、平均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.1〜1.0μmのものを用いるとよい。磁性体としては、795.8kA/m(10kエスルテッド)印加での磁気特性として、保磁力(HC)が1.6〜24kA/m(20〜300エルステッド)、飽和磁化(σS)が50〜200Am2/kg、残留磁化(σr)が2〜20Am2/kgのものを用いることが好ましい。
続いて、以下に本発明のトナーに用いられるシリカ微粒子Aを具体的に説明する。
本発明に用いられる原体シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式法またはヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラス等から製造される湿式シリカの両方が挙げられる。本発明では表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
また、本発明のシリカ微粒子は原体シリカ微粒子をシリコーンオイルで処理することによって得られたシリカ微粒子である。上記シリカ微粒子がシリコーンオイルによって処理されたシリカ微粒子でない場合、高温・高湿環境下での帯電安定性と高い流動性を両立することが困難である。また、上記シリカ微粒子が、シリコーンオイルによる処理の後、シラン化合物またはシラザン化合物によって更に処理されたシリカ微粒子であることが好ましい。この場合、抽出シリコーンオイル量と疎水化率を本発明の範囲に制御することが容易である。
本発明のシリカ微粒子の処理に用いられるシリコーンオイルとしては特段の制限なく公知のシリコーンオイルを用いることができるが、特にストレートシリコーンが好ましい。
より具体的には、例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。
また、本発明のシリカ原体微粒子の処理に用いられるシリコーンオイルの粘度は30mm2/s以上1200mm2/s以下であることが好ましく、70mm2/s以上800mm2/s以下であることが更に好ましい。本発明のシリカ原体微粒子の処理に用いられるシリコーンオイルの粘度が30mm2/s以上1200mm2/s以下である場合、シリカ微粒子からのオイルの遊離しやすさと遊離オイルによるシリカ微粒子の凝集性が最適となり、トナーの流動性を向上する効果が大きい。また、70mm2/s以上800mm2/s以下である場合には上記効果はさらに向上する。
シリコーンオイル処理の方法は、例えばシリカ微粒子とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサ等の混合機を用いて直接混合しても良いし、原体シリカ微粒子へシリコーンオイルを噴霧しながら撹拌する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、原体シリカ微粒子と混合した後、溶剤を除去して作製しても良い。また、原体シリカ微粒子を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながらアルコール水を添加し、シリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する方法をとってもよい。
本発明のシリカ微粒子の処理に用いられるシランまたはシラザン化合物としては特段の制限なく公知のシラン化合物またはシラザン化合物を用いることができる。
具体的には、ヘキサメチルジシラザン、卜リメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。中でも、処理の均一性およびカップリング結合の確実性の観点から、ヘキサメチルジシラザンを用いることが好ましい。
本発明のシリカ微粒子を得るのに必要なアルコキシシランまたはシラザンの少なくとも一方による処理は、シリカ原体微粒子を撹拌によりクラウド状としたものに気化したアルコキシシランまたはシラザンを反応させる乾式処理または、シリカ原体を溶媒中に分散させ、アルコキシシランまたはシラザンを滴下反応させる湿式法の如き一般に知られた方法で処理することができる。
また、本発明のシリカ微粒子は原体シリカ微粒子をシリコーンオイルによる処理を行った後に解砕処理を行ったものであることが更に好ましい。解砕処理を行うことにより、トナーの流動性がさらに高まる。
また、本発明において添加されるシリカ微粒子は、ヘキサンを用いた抽出シリコーンオイル量が0.020質量%以下であり、より好ましくは、0.005質量%以下である。ヘキサンを用いた抽出シリコーンオイル量が、0.020質量%以下である場合、本発明のその他の要件との相乗効果により多数枚画像出力時の流動性が改善される。また、抽出シリコーンオイル量が0.005質量%以下の場合、上記効果はさらに向上する。抽出シリコーンオイル量が0.020質量%を超える場合、長期使用時の流動性および帯電性に弊害を生じやすい。
なお、上記抽出シリコーンオイル量は、シリカ原体微粒子をシリコーンオイルで処理する際の、処理量、処理温度やシリコーンオイル処理後のシランまたはシラザンによる処理の条件によって適宜制御することが可能である。
本発明に用いられるシリカ微粒子Aは疎水化率が95%以上であり、より好ましくは97%以上である。シリカ微粒子の疎水化率が95%以上である場合、本発明のその他の要件との相乗効果により、高温高湿環境下での帯電安定性が改善される。また、疎水化率が97%以上である場合、上記効果はさらに向上する。シリカ微粒子の疎水化率が95%未満の場合、高温高湿環境下での帯電安定性に弊害を生じやすい。
一般的に、疎水化率を高めるには、表面処理剤の量を増やせばよいが、その場合、上記抽出シリコーンオイル量が増加する傾向にある。上記抽出シリコーンオイル量を抑えた上で、疎水化率を高めるには、前述のようにシリコーンオイルによる処理の後、シランまたはシラザンによって処理することが好ましい。
また、本発明に用いられるシリカ微粒子の一次粒子の個数平均径(D1)は5nm以上30nm以下であり、より好ましくは、5nm以上20nm以下である。シリカ微粒子の一次粒子の個数平均径(D1)が5nm未満の場合、シリカ微粒子の凝集を抑制することが困難である。シリカ微粒子の一次粒子の個数平均径(D1)が30nmより大きい場合、所望の流動性を得ることが難しい。
シリカ微粒子の一次粒子の個数平均径(D1)が5nm以上30nm以下である場合、本発明のその他の要件との相乗効果により流動性が改善される。また、シリカ微粒子の一次粒子の個数平均径(D1)が5nm以上20nm以下である場合、上記効果はより向上する。
シリカ微粒子Aの添加量としては、トナー粒子100質量部に対し、0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましい。添加量が上記範囲内であれば、定着性を損なうことなく、良好な流動性を得る子尾ができる。
本発明のトナーは、シリカ微粒子A以外の外添剤を添加してもよい。シリカ微粒子A以外の外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニアから選ばれる無機微粒子又はその複合酸化物などが使用できる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミナ複合酸化物、シリカチタニア複合酸化物やチタン酸ストロンチウム微粉体等が挙げられる。これらの外添剤としては、表面を疎水化処理して用いることが好ましい。上記疎水化処理の方法としては、有機ケイ素化合物、シリコーンオイル、長鎖脂肪酸等で処理する方法が挙げられる。
上記有機ケイ素化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。これらは一種又は二種以上の混合物で用いられる。
上記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。
さらに、本発明に用いられるトナーには、更に他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末、酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末などの研磨剤、ケーキング防止剤、また、逆極性の有機及び/又は無機微粒子を用いることもできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
トナー粒子に外添剤を外添する方法する混合機としては、三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、ハイブリダイザー(奈良機械社製)が挙げられる。この中でも、外添剤の遊離率を制御することや、外添剤を均一に被覆するためにはノビルタが好ましい。
また、外添後に粗粒子をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、以下のものが挙げられる。ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)を用いて行う。
また、本発明のトナーは、流動性や摩擦帯電性、更には高精細な画像を得るという観点から、重量平均粒径(D4)が4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは5.0μm以上7.5μm以下である。
本発明のトナー粒子は、結着樹脂、必要に応じて着色剤及びワックスを含有するコアに、ポリエステル樹脂Aを含有するシェル層を形成したコアシェル構造のトナー粒子であればよく、公知の粉砕法及び重合法を用いて製造することができる。中でも、懸濁重合法、溶解懸濁重合法などの水系媒体中で造粒する工程を含む製造方法で製造することが、コアシェル構造を形成・制御しやすい点で好ましい。特に、小粒径化が容易で、真球に近く表面の凹凸が少ないコアシェル構造のトナー粒子を得やすい懸濁重合法により製造されるトナー粒子が好ましい。
例えば、懸濁重合法においては、重合性単量体及び極性樹脂に、必要に応じて着色剤、ワックスを添加させ、トナー粒子を製造することができる。この方法により、主に結着樹脂並びに必要に応じて添加された着色剤及びワックスから形成されるコアを極性樹脂から形成されるシェル層で被覆したコアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
以下、トナー粒子の好ましい製造方法である懸濁重合法で製造されるトナー粒子について、詳述する。
懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。重合性単量体、ポリエステル樹脂A、必要に応じて着色剤組成物、ワックス及び重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、前記重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を形成(造粒)する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
本発明に係る結着樹脂は、スチレンアクリル系樹脂であることが好ましく、このような結着樹脂を得るための重合性単量体としては、以下のビニル系重合性単量体を例示することができる。尚、ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体又は多官能性重合性単量体を使用することができる。
単官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート等のアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等のメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン。
多官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル。
単官能性重合性単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて、又は、多官能性重合性単量体と組み合わせて使用することができる。多官能性重合性単量体は架橋剤として使用することも可能である。
上記工程における重合性単量体組成物は、上記着色剤組成物を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、上記着色剤組成物を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、着色剤がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が用いられる。油溶性開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等の顔料分散剤;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等のパーオキサイド系開始剤。
水溶性開始剤としては、以下のものが挙げられる。過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄又は過酸化水素。
また、重合性単量体の重合度を制御する為に、連鎖移動剤、重合禁止剤等を更に添加し用いることも可能である。
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部の範囲である場合である。上記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
さらに、本発明においては、トナー粒子の耐ストレス性を高めると共に、トナー粒子を構成する成分の分子量を制御するために、重合性単量体の重合時に架橋剤を用いることもできる。
架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリルレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独又は混合物として用いられる。
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、重合性単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部の範囲、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
重合性単量体や架橋剤は、単独、又は理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いることが好ましい。理論ガラス転移温度が40℃以上の場合にはトナーの保存安定性や耐ストレス性の面から問題が生じ難く、一方75℃以下の場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において透明性や低温定着性が低下しない。
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。前記分散安定化剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等が挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。
上記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが好ましい。このような範囲となる割合で使用することによって、重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性が向上するからである。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300〜3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させても良い。しかし、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、上記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
懸濁重合法においては、重合性単量体組成物に極性樹脂を添加し、トナー粒子を製造することで、主にコアを形成する結着樹脂及び必要に応じて添加されるワックスなどをポリエステル樹脂Aなどの極性樹脂(シェル)で被覆したコアシェル構造を有するトナーを得ることができる。
そのため、これら重合法によるトナーは、ワックスをトナー内に良好に内包化することにより、比較的多量のワックスを含有しても、トナー表面への露出は少なく、連続プリントにおけるトナー劣化を抑制することができる。
また、本発明のトナーは、一成分及び二成分系現像剤として、いずれの現像方式にも使用できる。たとえば、一成分系現像剤として、磁性体をトナー中に含有せしめた磁性トナーの場合には、現像スリーブ中に内蔵せしめたマグネットを利用し、磁性トナーを搬送及び帯電せしめる方法がある。また、磁性体を含有しない非磁性トナーを用いる場合には、ブレード又はファーブラシを用い、摩擦帯電して現像ローラ上にトナーを付着させる方法がある。
二成分系現像剤として用いる場合、例えば、トナーと混合させる磁性キャリアとしては、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム等より選ばれる元素から、単独又は複合フェライト状態で構成される。この際に使用する磁性キャリアの形状は、球状、扁平、不定形等のものがあり、更に、磁性キャリアの表面状態の微細構造(例えば、表面凹凸性)を適宜に制御したものを用いることもできる。また、表面を樹脂で被覆した樹脂被覆キャリアも好適に用いることができる。使用するキャリアの平均粒径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。また、これらのキャリアとトナーを混合して二成分系現像剤を調製する場合の現像剤中のトナー濃度は、好ましくは2〜15質量%程度である。
本発明のトナーは特段の制限なく、従来公知の画像形成装置に適用して画像形成を行うことができる。中でも、感光体を帯電する帯電工程と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を転写材に転写する転写工程と、転写後の前記感光体の表面に残留する残留トナーを除去するクリーニング工程と、を有する画像形成方法に用いることが好ましい。さらに、本発明のトナーは、トナーを担持して静電潜像を現像するトナー担持体と、前記トナー担持体と当接部を形成するよう配置され、前記トナー担持体に前記トナーを供給する供給部材とを備える現像室と前記トナーが収容された収容部とを有する画像形成装置であって、前記トナー担持体と前記供給部材の回転方向が、各々の表面が前記当接部において同一方向に移動する方向である画像形成装置に用いることがより好ましい。本発明のトナーを上記構成の画像形成装置に用いることで、より長期にわたって安定した性能を発揮することが可能となる。
以下に、本発明に用いることができる上記構成の画像形成装置について図に沿って説明する。
先ず、画像形成装置の全体構成について説明する。
図1は、画像形成装置100の概略断面図である。画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体100Aに接続された画像読み取り装置、或いは、画像形成装置本体100Aに通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置本体100Aに入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。
尚、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、図示矢印A方向(時計方向)に図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。感光体ドラム1の周囲には、感光体ドラム1の表面を均―に帯電する帯電手段としての帯電ローラ2、画像情報に基づきレーザーを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段としてのスキャナユニット(露光装置)3が配置されている。また、感光体ドラム1の周囲には、静電像をトナー像として現像する現像手段としての現像ユニット(現像装置)4、転写後の感光体ドラム1の表面に残ったトナー(転写残トナー)を除去するクリーニング手段としてのクリーニング部材6が配置されている。更に、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト5が配置されている。
なお、現像ユニット4は、現像剤として本発明のトナーを用いる。また、現像ユニット4は、トナー担持体としての現像ローラ(後述)を感光体ドラム1に対して接触させて反転現像を行うものである。即ち、現像ユニット4は、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電像を現像する。
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト5は、全ての感光体ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト5は、複数の支持部材として、駆動ローラ51、二次転写対向ローラ52、従動ローラ53に掛け渡されている。
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ8が並設されている。一次転写ローラ8は、中間転写ベルト5を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト5と感光体ドラム1とが当接する一次転写部N1を形成する。そして、一次転写ローラ8に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
また、中間転写ベルト5の外周面側において二次転写対向ローラ52に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ9が配置されている。二次転写ローラ9は、中間転写ベルト5を介して二次転写対向ローラ52に圧接し、中間転写ベルト5と二次転写ローラ9とが当接する二次転写部N2を形成する。そして、二次転写ローラ9に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性のバイアスが印加される。これによって、中間転写ベルト5上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。
更に説明すれば、画像形成時には、先ず、感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次いで、スキャナユニット3から発された画像情報に応じたレーザー光によって、帯電した感光体ドラム1の表面が走査露光され、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。次いで、感光体ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。感光体ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ8の作用によって中間転写ベルト5上に転写(一次転写)される。
例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1〜第4の画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト5上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。
その後、中間転写ベルト5の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部N2へと搬送される。中間転写ベルト5上の4色トナー像は、記録材12を介して中間転写ベルト5に当接している二次転写ローラ9の作用によって、一括して記録材12上に二次転写される。
トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置10に搬送される。定着装置10において記録材12に熱及び圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。
また、一次転写工程後に感光体ドラム1上に残留した一次転写残トナーは、クリーニング部材6によって除去、回収される。また、二次転写工程後に中間転写ベルト5上に残留した二次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置11によって清掃される。
尚、画像形成装置100は、所望の一つの画像形成部のみを用いて、または、幾つか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
[プロセスカートリッジの構成]
次に、画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。なお、収容しているトナーの種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成及び動作は実質的に同一である。
図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見たプロセスカートリッジ7の概略断面(主断面)図である。図2のプロセスカートリッジ7の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態での姿勢であり、以下でプロセスカートリッジの各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。
プロセスカートリッジ7は、感光体ドラム1等を備えた感光体ユニット13と、現像ローラ17等を備えた現像ユニット4とを一体化して構成される。
感光体ユニット13は、感光体ユニット13内の各種要素を支持する枠体としてのクリーニング枠体14を有する。クリーニング枠体14には、感光体ドラム1が図示しない軸受を介して回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)としての駆動モータの駆動力が感光体ユニット13に伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印A方向(時計方向)に回転駆動される。
また、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、クリーニング部材6、帯電ローラ2が配置されている。クリーニング部材6によって感光体ドラム1の表面から除去された転写残トナーは、クリーニング枠体14内に落下、収容される。
帯電手段である帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部を感光体ドラム1に加圧接触することで従動回転する。
ここで、帯電ローラ2の芯金には、帯電工程として、感光ドラム1に対して所定の直流電圧が印加されており、これにより感光ドラム1の表面には、一様な暗部電位(Vd)が形成される。前述のスキャナユニット3からのレーザー光によって画像データに対応して発光されるレーザー光のスポットパターンは、感光ドラム1を露光し、露光された部位は、キャリア発生層からのキャリアにより表面の電荷が消失し、電位が低下する。この結果、露光部位は所定の明部電位(Vl)、未露光部位は所定の暗部電位(Vd)の静電潜像が、感光ドラム1上に形成される。
一方、現像ユニット4は、トナー80を担持するためのトナー担持体としての現像ローラ17と、現像ローラ17にトナーを供給する供給部材としてのトナー供給ローラ20が配置された現像室、を有している。更に、現像ユニット4は、トナー収容室18を備えている。
また、トナー供給ローラ20は、現像ローラ17との間に当接部Nを形成し、回転している。
トナー収容室18内には、撹拌搬送部材22が設けられている。撹拌搬送部材22は、トナー収容室18内に収容されたトナーを撹拌すると共に、トナー供給ローラ20の上部に向けて図中矢印G方向にトナーを搬送するためのものでもある。
現像ブレード21は現像ローラ17の下方に配置され、現像ローラに対してカウンターで当接しており、トナー供給ローラ20によって供給されたトナーのコート量規制及び電荷付与を行っている。
現像ローラ17と感光体ドラム1とは、対向部において各々の表面が同方向に移動するようにそれぞれ回転する。
トナー供給ローラ20と現像ローラとは、各々の表面が当接部Nの上端から下端に移動する方向に回転している。すなわち、トナー供給ローラ20は図示矢印E方向(時計方向)に、現像ローラ17は矢印D方向に回転している。トナー供給ローラ20は、導電性芯金の外周に発泡体層を形成した弾性スポンジローラである。トナー供給ローラ20と現像ローラ17は所定の侵入量を持って接触している。トナー供給ローラ20と現像ローラ17とは、当接部Nにおいて互いに同方向に周速差を持って回転しており、この動作により、トナー供給ローラ20による現像ローラ17へのトナー供給を行っている。その際、トナー供給ローラと現像ローラとの電位差を調整することにより、現像ローラへのトナー供給量を調整することができる。
以下に、本発明にかかわる各物性の測定方法について記載する。各樹脂サンプルはトナー中から分取することで採取し、分析してもよい。
<ポリエステル樹脂Aの誘電正接>
本発明におけるポリエステル樹脂Aの誘電正接は、以下の操作により求められる。
4284AプレシジョンLCRメーター(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、周波数10000Hzにおける複素誘電率の測定値から誘電正接(tanδ=ε”/ε’)を算出する。
乳鉢で粗粉砕したポリエステル樹脂を0.3〜0.7g秤量し、350Kgf/cm2の荷重を2分間かけて成型し、直径25mm、厚さ1mm以下の円盤状の測定試料にする。この測定試料を直径25mmの誘電率測定治具(電極)を装着したARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)を用い、25℃で、350gの荷重をかけた状態で1000Hz〜100000Hzの周波数範囲で測定する。同様の測定を3回行い、各測定の10000Hzにおける測定値の平均値を算出することにより誘電正接の値を得る。
<ポリエステルAの酸価>
ポリエステル樹脂Aの酸価は、以下の操作により求められる。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂Aの酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定した。具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂Aの試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<ポリエステル樹脂Aの重量平均分子量>
本発明におけるポリエステル樹脂Aの重量平均分子量は、以下の操作により求められる。
ポリエステル樹脂0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解後、135℃において24時間振とう機で振とうを行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用い、下記の条件にて分析を行う。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min
試料濃度 :約0.3%
注入量 :300μl
検出器 :示差屈折率検出器 Shodex RI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
<シリカ微粒子Aの抽出シリコーンオイル量>
本発明におけるシリカ微粒子Aの抽出シリコーンオイル量は下記の通り測定する。シリカ微粒子1.0gを50mlのスクリュー管に秤量し、ノルマルヘキサン20mlを加える。その後、ホモジナイザー(TAITEC社製VP−050)にて強度20で10分間抽出する。得られた抽出液を遠心分離器にて分離し上澄みを得る。得られた上澄み10gをエバポレーターにて乾固し、残留物をシリコーンオイルとして、上澄み中のシリコーンオイル濃度から抽出シリコーンオイル量を求める。
<シリカ微粒子Aの疎水化率>
本発明におけるシリカ微粒子Aの疎水化率は下記の通り測定する。シリカ微粒子1gを分液ロート(200ml)に計りとり、これに純水100mlを加えて栓をし、ターブラーミキサーで10分間振とう後、10分間静置する。その後、下層の20〜30mLをロートから抜き取った後に、下層の混合液を10mm石英セルに分取し、純水をブランクとして比色計にかけ、その500nmの通過率を疎水化率とする。
<原体シリカ微粒子のBET法による比表面積>
原体シリカ微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明におけるBET比表面積とする。
尚、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、シリカ微粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)とシリカ微粒子の窒素吸着量Va(モル・g−1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g−1)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、シリカ微粒子の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g−1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて上記の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、上記で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、シリカ微粒子のBET比表面積S(m2・g−1)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10−18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル−1)である。)
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gのシリカ微粒子を入れる。
シリカ微粒子を入れた前記試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚、真空脱気の際には、シリカ微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差からシリカ微粒子の正確な質量を算出する。尚、この際に、試料セル内のシリカ微粒子が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、シリカ微粒子が入った前記の試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、前記装置の分析ポートに試料セルをセットする。尚、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入してシリカ微粒子に窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより前記した吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。尚、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、前記したようにシリカ微粒子のBET比表面積を算出する。
<シリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均径(D1)>
本発明におけるシリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均径(D1)は、下記の通り測定する。トナー粒子100質量部に対してシリカ微粒子を1質量部添加し、FE−SEM S−4800(日立製作所製)により、10万倍の倍率で、トナー粒子表面の写真を撮影する。その拡大写真を用いて100個以上のシリカ微粒子の粒径を測定し、算術平均からシリカ微粒子Aの一次粒子の個数平均径(D1)を求める。尚、シリカ微粒子の粒径は、形状が球形の場合はその絶対最大長を、長径と短径を有する場合は長径を、粒径としてカウントする。
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<トナーの円形度の測定方法>
本発明におけるトナーの円形度はフロー式粒子像測定装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)を用い、校正作業時の測定・解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、対物レンズとして「UPlanApro」(倍率10倍、開口数0.40)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
以下、発明を実施例により具体的に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。実施例中及び比較例中の部及び%は特に断りがない場合、全て質量基準である。
以下に樹脂及びトナーの製造方法について記載する。
<ポリエステル樹脂1の製造>
原材料モノマーを表1に示した仕込み比率で混合した混合物100質量部と触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.55質量部を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した6リットルの四つ口フラスコに投入した。そして、窒素雰囲気下、200℃で6時間かけて反応させた。更に、210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加して、40kPaの減圧下にて反応を行い、重量平均分子量(Mw)が12000になるまで反応を続けて、ポリエステル樹脂1を得た。
なお、表中のイソソルビドとは、下記式(3)の構造を持つ化合物である。
ポリエステル樹脂1の組成分析を行い、各モノマーに由来するユニットの比率を求めた。ポリエステル樹脂1におけるユニットの比率、酸価を表1に示す。
ポリエステル樹脂1の組成分析は1−NMRにより行った。具体的な測定条件は下記の通りである。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl3)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて測定試料を調製する。当該測定試料を用いて上記条件にて測定した。
<ポリエステル樹脂2〜12、19、20の製造>
酸成分とアルコール成分の仕込み量を表1のように変更することを除いて、ポリエステル樹脂1の製造と同様にして、ポリエステル樹脂2〜12、19、20を製造した。ポリエステル樹脂2〜12、19、20の物性を表1に示す。
<ポリエステル樹脂13〜18の製造>
ポリエステル樹脂1の製造において、反応時間を調整し、重量平均分子量(Mw)を変えた以外は同様に行い、ポリエステル樹脂13〜18を製造した。ポリエステル樹脂13〜18の物性を表1に示す。
TPA:テレフタル酸
TMA:トリメリット酸
BPA(PO):ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物
EG:エチレングリコール
<荷電制御樹脂1の製造>
還流管、撹拌機、温度計、窒素導入管、滴下装置及び減圧装置を備えた加圧可能な反応容器に、溶媒としてメタノール250質量部、2−ブタノン150質量部及び2−プロパノール100質量部を添加し、モノマーとしてスチレン77質量部、2−エチルヘキシルアクリレート15質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸8質量部を添加して、撹拌しながら還流温度まで加熱した。重合開始剤であるt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下し、5時間撹拌を継続した。更に、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部を2−ブタノン20質量部で希釈した溶液を30分かけて滴下して、5時間撹拌して重合を終了した。温度を維持したまま脱イオン水を500質量部添加し、有機層と水層の界面が乱れないように毎分80〜100回転で2時間撹拌した。30分静置し分層した後に、水層を廃棄し有機層に無水硫酸ナトリウムを添加し、脱水した。次に、重合溶媒を減圧留去した後に得られた重合体を、150メッシュのスクリーンを装着したカッターミルを用いて100μm以下に粗粉砕した。得られた硫黄原子を有する荷電制御樹脂1は、Tg=58℃、Mp=13,000、Mw=30,000であった。
<トナー粒子1の製造>
スチレン単量体100質量部に対して、C.I.Pigment Blue15:3を16.5質量部、ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミ化合物〔ボントロンE88(オリエント化学工業社製)〕を3.0質量部用意した。これらを、アトライタ(三井鉱山社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズ(140質量部)を用いて200rpmにて25℃で180分間撹拌を行い、マスターバッチ分散液1を調製した。
一方、イオン交換水710質量部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してリン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を得た。
・マスターバッチ分散液1 40.0質量部
・スチレン単量体 49.5質量部
・n−ブチルアクリレート単量体 16.5質量部
・炭化水素系ワックス 9.0質量部
(フィッシャートロプシュワックス、最大吸熱ピークのピーク温度=78℃、Mw=750)
・荷電制御樹脂1 0.3質量部
・ポリエステル樹脂1 4.0質量部
上記材料を65℃に加温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、5,000rpmにて均一に溶解し分散した。これに、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの70%トルエン溶液7.1質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12,000rpmで10分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度67℃に昇温し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が90%に達したところで、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して水系分散媒体のpHを9に調整した。更に昇温速度40℃/hで80℃に昇温し4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下で補給用トナー粒子の残存モノマーを留去した。水系媒体を冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、6時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解した。トナー粒子を濾別し水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥した。得られた乾燥品を多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で、超微粉及び粗粉を同時に分級除去して、シアン色のトナー粒子1を得た。
<トナー粒子2〜26の製造>
トナー粒子1の製造において、ポリエステル樹脂1をポリエステル樹脂2〜20に変更し、前記ポリエステル樹脂の添加量を表2に記載の量にした以外は同様にして、トナー粒子2〜26を得た。
<シリカ微粒子1の製造>
第一処理工程として、フュームドシリカ(商品名AEROSIL380S、BET法による比表面積380m2/g、一次粒子の個数平均径7nm、日本アエロジル株式会社製)100質量部に対し、10.0質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度=100mm2/s)を噴霧し、30分間撹拌を続けた。その後、撹拌しながら温度を300℃まで昇温させてさらに2時間撹拌することによって、ジメチルシリコーンオイルをフュームドシリカ表面に焼き付け、反応を終了した。
第二処理工程として、第一処理工程によって生成したシリカ微粒子に対し、30.0質量部のヘキサメチルジシラザン(以下、HMDSとも言う)を内部に噴霧し、シリカの流動化状態でシラン化合物処理を行った。この反応を60分間継続した後、反応を終了した。反応終了後、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕を行い、シリカ微粒子1を得た。得られたシリカ微粒子1の物性を表3に示す。
<シリカ微粒子2〜10の製造>
シリカ微粒子1の製造例において、原体シリカ微粒子および製造条件を適宜変更することで、表3に示す物性を有するシリカ微粒子2〜10を得た。
<トナー1の製造>
100質量部のトナー粒子1に対し、1.0質量部のシリカ微粒子1と0.2質量部の酸化チタン微粒子JMT−150AO(テイカ株式会社製)を三井ヘンシェルミキサFM10C(三井三池化工機株式会社製)で3400rpmの条件で10分間乾式混合して、トナー1を得た。得られたトナー1の物性を表4に示す。
<トナー2〜35の製造>
トナー1の製造において、トナー粒子、シリカ微粒子Aの種類およびシリカ微粒子Aの添加量を表3に記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、トナー2〜35を得た。なお、シリカ微粒子Aの添加量については、シリカ微粒子Aの粒径を考慮して調整した。得られたトナー2〜35の物性を表4に示す。
<実施例1>
トナー1に対して、下記の評価を行った。得られた評価結果を表5に示す。
以下に本発明の評価方法及び評価基準を具体的に説明する。
画像の評価を行う評価機として、市販のレーザープリンターであるLBP−7700C(キヤノン製)の改造機及びプロセスカートリッジであるトナーカートリッジ323(シアン)(キヤノン製)の改造カートリッジを用いた。
この改造機としては、本体内部のモータを変更することにより、プロセススピードが、280mm/secとなるように改造した装置を用いた。改造カートリッジはカートリッジ内部のギアを変更・追加することにより、トナー供給ローラがトナー担持ローラとの当接部において各々の表面が同一の方向に移動するように改造を行った。なお、トナー供給ローラのトナー担持ローラ基準での周速は160%となるよう調整を行った。また、カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、トナー1を100g充填した。
上記評価機を用いて、耐久試験を行うことによりトナーを評価した。
(1)低温低湿環境下でのドラム上カブリ
低温低湿環境下(15℃/10%RH)において、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m2、以下、特に断らない限り本用紙を使用しているものとする)に印字率0.5%の画像を2枚毎に2秒の間欠時間をおいて1万枚出力した。初期および1万枚出力後のカートリッジにおいて、ドラム上カブリをテーピングして採取し評価した。
カブリは反射濃度計(TOKYO DENSHOKU(株)製、REFLECTOMETER MODEL TC−6DS)を用いて測定した。テープ部の白地部反射濃度最悪値をDs、テーピング部の紙の反射濃度平均値をDrとした時の(Ds−Dr)をカブリ濃度(%)とした。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。評価は以下の通りの評価基準を用いて行った。本評価法において、トナーの流動性が低下した場合、現像ローラ上のトナーのコート量が増大し、現像ブレードによる規制不良が生じ、ドラム上カブリ値が増加することが知られている。
・評価基準
A:カブリ濃度0.5%未満
B:カブリ濃度0.5%以上2.0%未満
C:カブリ濃度2.0%以上4.0%未満
D:カブリ濃度4.0%以上
(2)低温低湿環境下でのベタ追従性
低温低湿環境下でのベタ追従性を以下の方法で評価した。低温低湿環境下(15℃/10%RH)において、上記キヤノンカラーレーザーコピア用紙に印字率0.5%の画像を2枚毎に2秒の間欠時間をおいて1万枚出力した。初期および1万枚出力後のカートリッジにおいて、全ベタ画像をサンプル画像として3枚連続で出力した。得られた全ベタ画像の3枚目に対して、ベタ追従性の評価を目視評価にて行った。上記評価項目はトナーの流動性が高いほど良好な結果が得られることが知られている。
・評価基準
A:画像濃度にムラがなく均一である
B:画像濃度にややムラがある
C:画像濃度にムラがあるが、使用上問題とならないレベル
D:画像濃度にムラがあり、均一なベタ画像になっていないレベル
(3)高温高湿環境下でのドラム上カブリ
高温高湿環境下(30℃/80%RH)において、キヤノンカラーレーザーコピア用紙(A4:81.4g/m2、今後は特に断らない限り本用紙を使用しているものとする)に印字率0.5%の画像を2枚毎に2秒の間欠時間をおいて5千枚出力後、3日間放置した。初期および5千枚出力後のカートリッジにおいて、ドラム上カブリをテーピングして採取し評価した。なお、5千枚出力後においては、ドラムユニットを新品のものに交換し、評価を行った。カブリは反射濃度計(TOKYO DENSHOKU(株)製、REFLECTOMETER MODEL TC−6DS)を用いて測定した。テープ部の白地部反射濃度最悪値をDs、テーピング部の紙の反射濃度平均値をDrとした時の(Ds−Dr)をカブリ濃度(%)とした。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。評価は以下の通りの評価基準を用いて行った。本評価法において、耐久性(帯電安定性)に劣るトナーを評価した場合、ドラム上カブリ値が増加することが知られている。
・評価基準
A:カブリ濃度0.5%未満
B:カブリ濃度0.5%以上2.0%未満
C:カブリ濃度2.0%以上4.0%未満
D:カブリ濃度4.0%以上
<実施例2〜28、比較例1〜7>
トナー2〜35を用いる以外は実施例1と同様にして、同様の評価を行った。評価結果を表5に示す。