JP2017039828A - ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】入手性が良く、従来公知のビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂と比較して、溶融粘度が低く、溶剤等に対する相溶性が良好で硬化剤など他の成分と均一に混練しやすいなど、ハンドリングに優れた、高純度なビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の製造方法の提供。【解決手段】以下式(1)で表されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の製造方法を最適化し、該エポキシ樹脂中のエポキシ当量を239g/eq〜300g/eqと調整することにより前記課題が解決可能であることを見出した。【化1】(式中nは0または1以上の整数を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、ビスフェノールフルオレン骨格を有する新規なエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、一般的に、種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となる。その為に、エポキシ樹脂は、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂として液状および固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂があるが、光学レンズや発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子用の封止材料といった分野など、高レベルの耐熱性、透明性が要求される分野では不十分である。そこで、耐熱性、透明性の問題を解決する為に、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、前記文献記載のビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂は、室温で固体であり、その融点が150℃以上となる。また、各種硬化物や溶剤等に対する相溶性が悪いことから、エポキシ樹脂組成物とする際に他の成分と均一に混練しにくく、その為、添加量が制約され、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としての特性が十分に活かせないといった問題がある。
また、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の低融点化や各種硬化物や溶剤等に対する相溶性を改善する為に、ビスキシレノールフルオレンのグリシジルエーテル(特許文献2)、ビスアリルクレゾールフルオレンのグリシジルエーテル(特許文献3)が提案されている。しかしながら、ビスキシレノールフルオレンのグリシジルエーテルは、溶剤に対する溶解性が十分でなく、また、結晶性を有する為、該樹脂の硬化物を形成する条件が非常に難しいといった問題がある。また、ビスアリルクレゾールフルオレンのグリシジルエーテルは、原料であるビスアリルクレゾールフルオレンを簡便な方法で合成できず、その入手性に難があるといった問題がある。
一方、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の一つとしてキサンテン骨格を有するエポキシ樹脂が知られている(非特許文献1、2)。しかしながら、これら文献に記載される製法で製造されるエポキシ樹脂は、不純物の残存量が多く、該エポキシ樹脂をエポキシ樹脂組成物とし、該エポキシ樹脂組成物を硬化させる際に均一に硬化しなかったり、得られた硬化物の耐熱性が低下するといった問題が生じる場合がある。一方、本願発明者らが、前記非特許文献記載の方法で得られたエポキシ樹脂を精製等の方法で純度を高めたところ、150℃における溶融粘度が非常に高くなり、該エポキシ樹脂を硬化剤等と混合しエポキシ樹脂組成物としようとしても、混合作業自身が困難であったり、あるいは使用可能な硬化剤やその添加量が制約されることから、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としての特性を活かした硬化物を作成することが非常に困難であることが判明した。
特開昭63−218725号公報 特開2005−325331号公報 特開2007−204635号公報
Journal of Applied Polymer Science,Vol.27,3289−3312(1982) Vysokomol,soyed.A13:No.1,150−155,1971.
本発明の目的は、入手性が良く、従来公知のビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂と比較して、溶融粘度が低く、溶剤等に対する相溶性が良好で硬化剤など他の成分と均一に混練しやすいなど、ハンドリングに優れた、高純度なビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の製造方法、及び、耐熱性・透明性・高屈折率といったビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の特性が十分に活かされた硬化物及び該硬化物を提供するためのビスフェノールフルオレンエポキシ樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の製造方法によって製造される下記式(1)で表されるエポキシ樹脂は、前記課題が解決可能であることを見出した。具体的には本発明は以下のものを含む。
[1]
下記(i)、(ii)及び(iii)の工程をこの順で含む、下記式(1)
Figure 2017039828
(式中nは0または1以上の整数を表す。)
で表されるエポキシ樹脂の製造方法。
(i)4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩存在下、下記式(2)
Figure 2017039828
で表されるフルオレン系ジオール化合物と、該フルオレン系ジオール化合物1モルに対し5〜25モルのエピハロヒドリンとを反応させ、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体を含む溶液を得る工程。
(ii)前記ハロヒドリンエーテル体を含む溶液を濃縮する工程。
(iii)前記ハロヒドリンエーテル体を含む溶液とアルカリ金属水酸化物とを混合する工程。
[2]
エポキシ当量が239g/eq〜300g/eqである、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
[3]
上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の含有量が10重量%以下である、[2]に記載の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
[4]
全塩素量が1%以下である、[2]または[3]記載のエポキシ樹脂。
[5]
[2]〜[4]に記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物。
[6]
[5]に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
本発明によれば、高屈折、高耐熱性といった特性を有し、しかも、溶融粘度が低く、溶剤等に対する相溶性が高く、硬化剤など他の成分と均一に混練しやすいなど、ハンドリングに優れた、高純度なビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂及びその製造方法、並びに前記特性が十分に活かされた硬化物及び該硬化物を提供するためのエポキシ樹脂組成物が提供可能となる。また、本発明の製造方法によれば、エポキシ樹脂中の全塩素量を低減させることも可能となる。
<上記式(1)で表されるエポキシ樹脂の製造方法>
本発明における上記式(1)で表されるフルオレン骨格とスピロ構造とを併せ持つエポキシ樹脂の製造方法は以下の(i)、(ii)及び(iii)の工程をこの順で含むことを特徴とする。
(i)4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩存在下、下記式(2)
Figure 2017039828
で表されるフルオレン系ジオール化合物と、該フルオレン系ジオール化合物1モルに対し5〜25モルのエピハロヒドリンとを反応させ上記式(2)のハロヒドリンエーテル体を含む溶液を得る工程。(以下、反応工程と称することがある。)
(ii)前記ハロヒドリンエーテル体を含む溶液を濃縮する工程。(以下、濃縮工程と称することがある。)
(iii)前記ハロヒドリンエーテル体を含む溶液とアルカリ金属水酸化物とを混合する工程。(以下、閉環工程と称することもある。)
以下、上記(i)〜(iii)の各工程について詳述する。
反応工程で使用する上記式(2)で表されるフルオレン系ジオール化合物は市販品を用いてもよく、慣用の方法、例えば、特開2006−36648号公報や特開2014−237605号公報の方法を用いて製造したものを用いてもよい。また、前記特許文献記載の方法で得られた上記式(2)で表されるフルオレン系ジオール化合物や、該化合物を含む反応混合物から、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して精製したものを用いてもよい。
反応工程で使用される4級アンモニウム塩として、具体的にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等例示される。また、4級ホスホニウム塩として、アミルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、アリルトリフェニルホスホニウムクロリド等が例示される。これら塩は単独でも、必要に応じ複数種混合して使用しても良い。これら塩は固体のものを用いても良く、水溶液のものを用いてもよい。これら塩の使用量は上記式(2)で表わされるフルオレン系ジオール化合物1モルに対し、通常0.01〜0.50モル、好ましくは0.02〜0.20モルである。使用量が0.01モル以上とすることにより十分な反応速度を得ることができ、使用量を0.50モル以下とすることにより、本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂の着色を低減することが可能となる。
反応工程で使用されるエピハロヒドリンとして具体的には、エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン等が例示され、その使用量は上記一般式(2)で表わされるフルオレン系ジオール化合物1モルに対し5〜25モル、好ましくは8〜23モル使用する。使用量を5モル以上とすることにより、得られる本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ当量を低減させることが可能となり、使用量を25モル以下とすることによってより経済的に本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂が製造可能になると同時に、全塩素量の低減が容易となる。
反応工程は、反応容器に上記式(2)で表わされるフルオレン系ジオール化合物とエピハロヒドリンとを添加し、更に撹拌しながら通常20〜120℃、好ましくは40〜80℃で4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩を添加し、その後、20〜120℃で、好ましくは40〜80℃で1〜48時間反応させることにより、下記式(3):
Figure 2017039828
(式中、nは0または1以上の整数を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
で表されるモノハロヒドリン体、及び下記式(4):
Figure 2017039828
(式中、n及びXの意味は上述の通りである。)
で表されるジハロヒドリン体(本発明においては上記式(3)で表されるモノハロヒドリン体及び上記式(4)で表されるジハロヒドリン体を併せて、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体と称する。)を含む溶液を得ることができる。4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩は一括添加しても良いが、所定の反応温度を維持する為、一定時間、例えば1〜10時間かけて連続、あるいは必要量を分割添加してもよい。さらに、エピハロヒドリンや上記に示す溶媒に溶解させ、一定時間かけて連続滴下、あるいは必要量を分割滴下してもよい。
なお、反応工程においてアルカリ金属水酸化物を使用しても良い。しかし、アルカリ金属水酸化物を使用した場合、上記式(1)のn=1以上のものが増加し、エポキシ当量が高くなる傾向があり、また、得られる上記式(1)で表されるエポキシ樹脂の純度が低下する場合がある為、アルカリ金属水酸化物の使用量は、上記式(2)で表されるフルオレン系ジオール化合物1モルに対し5モル以下、更に好ましくは1モル以下、特に好ましくは0.1モル以下とすることが好ましい。
反応工程終了後、得られたハロヒドリンエーテル体を含む溶液を濃縮する工程を実施する必要がある。濃縮工程を実施せず閉環工程を行った場合、エポキシ当量が高くなるため、エポキシ当量が後述する範囲外となったり、全塩素量が高くなる。また、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体が上記式(1)で表されるエポキシ樹脂中に多量に残存するため、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂組成物を硬化させる際に均一に硬化しなかったり、硬化物が得られないといった問題が生じる場合がある。
濃縮工程は常圧、あるいは減圧下、エピハロヒドリンの沸点以上とし、系外にエピハロヒドリン等を除去することにより実施する。減圧下で濃縮する場合、内温150℃以下、好ましくは140℃以下となる内圧、例えば100mmHg以下、好ましくは30mmHg以下の減圧下で濃縮する。
濃縮工程終了後、閉環工程を実施する。閉環工程では、得られた上記式(2)のハロヒドリンエーテル体を含む溶液とアルカリ金属水酸化物とを混合することにより、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体を閉環し、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂とする。
閉環工程で使用されるアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示され、その使用量は上記式(2)で表されるフルオレン系ジオール化合物1モルに対し通常0.8〜4.0モル、好ましくは1.0〜2.5モルである。使用量を0.8モル以上とすることにより、ハロヒドリンエーテル体の閉環反応が十分に速く進行し、4.0モル以下とすることにより、容積効率を向上させることができる。アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、アルカリ金属水酸化物の水溶液を使用する場合は該水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水を留出させることにより実施する。
閉環工程を実施する際、操作性の観点から溶媒を用いることが好ましい。閉環工程で使用可能な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、非水溶性1級アルコール、非水溶性ケトン溶媒等が例示され、芳香族炭化水素として例えばトルエンやキシレン等が、非水溶性1級アルコールとしては1−ブタノールや1−ペンタノール等が、また非水溶性ケトン溶媒としてはメチルイソブチルケトンやメチルエチルケトン等が例示される。これら溶媒の使用量は、上記式(2)で表されるフルオレン系ジオール化合物100重量部に対し、50〜1000重量部、好ましくは100〜300重量部である。
閉環工程は、濃縮工程実施後の反応液に、必要に応じ使用する溶媒を添加し溶媒と混合させた後、アルカリ金属水酸化物の粉末あるいは水溶液を加えて20〜120℃、好ましくは60℃〜80℃で撹拌することにより実施される。
閉環工程実施後、得られた上記式(1)で表されるエポキシ樹脂をそのままエポキシ樹脂として使用しても良いが、必要に応じ副生したタール分や塩を濾過、又は水洗により除去する操作や、樹脂溶液のpHが8.0〜4.0になるようにリン酸、リン酸ナトリウム、シュウ酸、酢酸、炭酸等を添加して中和する操作、閉環工程で溶媒を使用した場合は、該溶媒を留去する操作、その他吸着処理等の精製を適宜実施しても良い。
<上記式(1)で表されるエポキシ樹脂>
本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂の内、上記式(1)におけるnは0または1以上の整数を表し、nが単一のものを精製により得ることも可能ではあるが、通常は複数のnを有するものが混合した状態でエポキシ樹脂として使用する。しかし、n=1以上である樹脂の割合が多くなるとエポキシ当量が高くなる傾向があり、後述する範囲外となる場合があるので、n=0である樹脂の割合は、後述する条件で分析した液体クロマトグラフから得られる面積百分率値で通常65%以上、好ましくは80%以上である。
中間体であるハロヒドリンエーテル体や少量の加水分解性塩素、α−グリコール等の不純物などが含まれていても良いが、これらの不純物の残存量が多くなると上記式(1)で表されるエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物を硬化させる際に均一に硬化しなかったり、得られた硬化物の熱耐性が低下するといった問題が生じる場合があるため、本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂の純度は80%以上、好ましくは85%以上である。特に、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の残存量が10%以下、好ましくは5%以下である。なお、本発明における純度・残存量は後述する条件で分析された液体クロマトグラフから得られる面積百分率値である。
本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236による方法で測定した値が239〜300g/eqである必要があり、好ましくは239〜280g/eq、さらに好ましくは239〜250g/eqである。エポキシ当量が小さいほど、溶融粘度が低くなり、後述するエポキシ樹脂組成物を製造する際の硬化剤等の配合・脱泡・撹拌等といった作業が実施しやすく、その結果、下記する硬化剤等と混合させ易くなるので、エポキシ樹脂組成物や該組成物を硬化させてなる硬化物を作成しやすい。一方、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂のエポキシ当量が300g/eqより高くなる場合、溶融粘度が高くなる為、前記作業の実施が困難となり、エポキシ樹脂組成物や該組成物を硬化させてなる硬化物が得られない。
本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂は、エポキシ当量が上述した範囲となるためか、150℃における溶融粘度が通常3000mPa・s以下、好ましくは1000mPa・s以下となる。そのため、後述するエポキシ樹脂組成物を製造する際の硬化剤等の配合・脱泡・撹拌等といった作業が実施しやすく、その結果、下記する硬化剤等と混合させ易くなるので、エポキシ樹脂組成物や該組成物を硬化させてなる硬化物を作成しやすいといった特徴を発現する。なお、本発明において150℃における溶融粘度とは、後述する実施例に記載された方法によって測定された値のことを示す。
また、上述した製法で得られる本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂は、全塩素量が通常1%以下、好ましくは0.8%以下となる。特に、本方法によれば、エポキシ当量を所望の範囲とするために大過剰のエピハロヒドリンを使用しているにもかかわらず、公知の方法によって製造される上記式(1)で表されるエポキシ樹脂に比べて、全塩素量を大幅に低減することが可能となる。なお、本発明の全塩素量は、JIS K7243−3:2005による方法で測定された値である。
<上記式(1)で表されるエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物>
以下、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物(以下、本発明のエポキシ樹脂組成物と称することもある。)について詳述する。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられる硬化剤としては、各種フェノール樹脂類や酸無水物類、アミン類、アミド類、イミダゾール類、熱/光カチオン重合開始剤、有機リン化合物、グアニジン誘導体、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。これら硬化剤の具体例として例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、1,12−ジアミノドデカン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]−1,3,5−トリアジン、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、BF3−アミン錯体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
硬化剤の使用量は、本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量である。硬化剤を0.5当量以上1.5当量以下使用することにより硬化を完全とすることができ、その結果、良好な硬化物性を有する硬化物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物中には上記式(1)で表されるエポキシ樹脂及び上述した硬化剤の他、必要に応じて反応希釈剤、硬化促進剤、溶剤や、更に必要に応じて、慣用の添加剤(例えば、ガラス繊維や無機フィラー、難燃剤、サイジング剤やカップリング剤、着色材、安定材、帯電防止材など)などを含んでいても良い。また、他のエポキシ樹脂を併用しても良い。
併用しうる他のエポキシ樹脂としてはビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール系エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などの多官能フェノール系エポキシ樹脂、ナフトール系エポキシ樹脂、本発明以外のフルオレン系エポキシなどが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独又は2種類以上組み合わせてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれていても良い硬化促進剤としては、前述した硬化剤と同様のものが使用可能であり、具体的には2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。硬化促進剤を使用する場合の使用量は、本発明の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂100重量部に対して通常0.2〜5.0重量部用いる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれていても良い反応性希釈剤としては、粘度調整を行うために添加する低粘度なエポキシ化合物であり、特に二官能以上の低粘度エポキシ化合物が好ましい。反応性希釈剤として例えば、ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、4−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテルなどが例示される。これら反応性希釈剤は1種あるいは必要に応じ2種類以上を混合して使用してもよい。上記反応性希釈剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができ、例えば、全エポキシ樹脂組成物中に0〜50重量%含まれるような範囲で使用可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれていても良い溶剤として、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類等が例示される。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
<本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物>
続いて、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物の製造法及び該硬化物について詳述する。
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、例えば、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤並びに必要により併用しうる他のエポキシ樹脂や反応希釈剤、硬化促進剤、溶剤、無機フィラーや難燃剤など必要に応じて配合される添加物等を均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、得られたエポキシ樹脂組成物を、金型に流し込み注型した後、光及び/又は熱により硬化させることによって得られる。例えば、熱により硬化させる場合、硬化温度は、使用する硬化剤や併用する他のエポキシ樹脂によって異なるが、通常25〜250℃の範囲であり、80〜240℃の範囲が好ましく、100〜230℃の範囲がより好ましい。硬化方法としては高温で一気に硬化させることもできるが、段階的に昇温し、硬化反応を進めることが好ましい。具体的には80〜150℃の間で初期硬化を行い、その後、100℃〜230℃の間で後硬化を行う。
本発明でいう「硬化」とは通常、エポキシ樹脂及び硬化剤、必要に応じて配合されるその他成分を混合した後、熱及び/又は光等によりエポキシ樹脂組成物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。進行の程度は完全硬化であっても、半硬化の状態であってよい。なお、エポキシ基と硬化剤との反応率は通常5〜95%である。
本発明のエポキシ樹脂を硬化してなる硬化物は、ガラス転移温度や5%重量減少温度が高いことから耐熱性に優れ、半導体封止材料に要求される硬化物性を示すことから、熱耐性が必要なパワーデバイス、半導体封止材料として好適に用いられる。また、屈折率も高く、光学用途としても好適に用いられる。その他、接着剤、塗料、土木建築用材料等の様々な用途に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、各測定値は、次の方法、測定条件に従った。
1.式(1)で表されるエポキシ樹脂の製造及び評価
〔1〕HPLC純度
次の測定条件でHPLC測定を行ったときの面積百分率値を各成分の残存量、生成量、HPLC純度とした。
・装置:(株)島津製作所製「LC−2010C」
・カラム:(株)住化分析センター社製 「SUMIPAX ODS A−212」
(5μm、6.0mmφ×150mm)
・カラム温度:40℃
・検出波長:UV 254nm
・移動相:水/アセトニトリル
・移動相流量:1.0ml/分
〔2〕エポキシ当量
自動滴定装置(京都電子製 AT−5100)を用いて、JIS K7236による方法で測定した。
〔3〕溶剤溶解性:
各実施例、比較例で得られたエポキシ樹脂、または市販品のビスフェノールフルオレン50重量部と、溶剤50重量部とを混合し、溶解性を確認した。溶解性を確認した溶剤は、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトキシブチルアセテート(MBA)である。また、評価基準は次の通り。
○:室温で溶解する
△:加温すると溶解し、冷却しても結晶が析出しない
×:加温すると溶解するが、冷却すると結晶が析出する、あるいは、加温しても溶解しな
い。
〔4〕溶融粘度
B型粘度計(TOKIMEC INC製、MODEL:BBH)を用いて、ローターHH−1にて、20〜100rpmで150℃に加熱して測定した。
〔5〕屈折率及びアッベ数
アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR−2M」)を用いて、20℃における屈折率(波長:589nm)及び20℃におけるアッベ数(波長:486、589、656nm)を測定した。なお、次のようにして屈折率及びアッベ数を測定した。まず、測定したいエポキシ樹脂をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解して10重量%、20重量%及び30重量%溶液を調製し、各溶液について屈折率及びアッベ数を測定した。次に、得られた3点の測定値から近似曲線を導き、これを100重量%に外挿したときの値をエポキシ樹脂の屈折率及びアッベ数とした。
〔6〕5%重量減少温度
熱重量測定器((株)島津製作所:TGA−50)を用いて、窒素気流下、室温から500℃まで10℃/分で昇温し、測定した。
〔7〕全塩素量
本発明の全塩素量は、JIS K7243−3:2005による方法で測定した。
<実施例1>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた1000mlのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、上記式(2)のフルオレン系ジオール化合物100.00g(0.274mol)、エピクロルヒドリン508.10g(5.492mol)を仕込み、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド9.41g(0.041mol)を添加した。80℃に昇温し、同温度で4時間攪拌した時点で、HPLCにより反応液の分析を行ったところ、原料である上記式(2)のフルオレン系ジオール化合物の残存量は0.1%以下であり、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の生成量は30.4%であった。
続いて、得られた反応液を130℃まで加熱し、10mmHg減圧下で過剰のエピクロルヒドリン等430.50gを留去し濃縮物を得た。その後、80℃まで冷却し、濃縮物にトルエン300.00gを加え70℃まで冷却した後、70℃で24重量%の水酸化ナトリウム水溶液91.5g(0.549mol)を添加し、同温度で6時間攪拌した。撹拌終了後静置し、下層を分液除去した。
その後、酸を加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で洗浄した後、有機層に特製白鷺活性炭を加え、70℃で2時間撹拌を行った後に濾過を行い不溶解分及び活性炭を除去した後、減圧濃縮しトルエンを留去することにより、薄黄色粘調性固体である、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂130.29gを得た。
得られた上記式(1)で表されるエポキシ樹脂をHPLCで分析した所、上記式(1)においてn=0のものが91.7%、上記式(1)においてn=1のものが3.5%含まれており、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体は検出されなかった。また、エポキシ当量は247g/eqであった。溶剤溶解性、150℃溶融粘度、屈折率、アッベ数、5%重量減少温度、全塩素分については表1に示す。
<実施例2>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた200mlのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、上記式(2)のフルオレン系ジオール化合物15.00g(0.041mol)、エピクロルヒドリン23.40g(0.250mol)、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド1.59g(0.004mol)、トルエン15.00gを仕込み80℃まで昇温した後、同温度で24重量%の水酸化ナトリウム水溶液18.80g(0.123mol)を添加し、更に同温度で2時間攪拌した時点で、HPLCにより反応液の分析を行ったところ、原料である上記一般式(2)のフルオレン系ジオール化合物は0.5%以下であり、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の生成量は21.5%であった。
得られた反応液を130℃まで加熱し、50mmHg減圧下で過剰のエピクロルヒドリン等34.3gを留去し、濃縮物を得た。その後、100℃まで冷却し、濃縮物にトルエンを加え60℃まで冷却した後、60℃で24重量%の水酸化ナトリウム水溶液18.80g(0.123mol)を添加し、同温度で4時間攪拌した。撹拌後静置し、下層を分液除去した。
その後、酸を加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で洗浄した後、有機層に特製白鷺活性炭を加え、70℃で2時間撹拌を行った後に濾過を行い不溶解分及び活性炭を除去した後、減圧濃縮しトルエンを留去することにより、薄黄色粘調性固体である、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂17.91gを得た。
得られた上記式(1)で表されるエポキシ樹脂をHPLCで分析した所、上記式(1)においてn=0のものが69.9%、上記式(1)においてn=1のものが15.9%含まれており、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体は検出されなかった。また、エポキシ当量は283g/eqであった。溶剤溶解性、150℃溶融粘度、屈折率、アッベ数、5%重量減少温度、全塩素分については表1に示す。
<比較例1>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた200mlのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、上記式(2)のフルオレン系ジオール化合物15.00g(0.041mol)、エピクロルヒドリン15.60g(0.164mol)、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド1.59g(0.004mol)、トルエン15.00gを仕込み、80℃まで昇温した。昇温後、同温度で24重量%の水酸化ナトリウム水溶液18.80g(0.123mol)を添加し、更に同温度で5時間攪拌した時点で、HPLCにより反応液の分析を行ったところ、原料である上記一般式(2)のフルオレン系ジオール化合物は0.5%以下であり、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の生成量は5.6%であった。
得られた反応液を130℃まで加熱し、20mmHg減圧下で過剰のエピクロルヒドリン等29.2gを留去し、濃縮物を得た。濃縮物を100℃まで冷却後、トルエンを加え60℃まで冷却した後、60℃で24重量%の水酸化ナトリウム水溶液18.80g(0.123mol)を添加し、同温度で2時間攪拌した。撹拌後静置し、下層を分液除去した。
その後、酸を加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で洗浄した後、濾過し、不溶解分を除去した後、減圧濃縮することによりトルエンを留去して、薄黄色粘調性固体である上記式(1)で表されるエポキシ樹脂15.36gを得た。
得られた上記式(1)で表されるエポキシ樹脂をHPLCで分析した所、上記式(1)においてn=0のものが52.4%、上記式(1)においてn=1のものが23.2%含まれており、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体は検出されなかった。また、エポキシ当量は345g/eqであった。溶剤溶解性、150℃溶融粘度、屈折率、アッベ数、5%重量減少温度、全塩素分については表1に示す。
<比較例2>
攪拌器、冷却器及び温度計を備えた500mlのガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、上記式(2)のフルオレン系ジオール化合物50.00g(0.137mol)、エピクロルヒドリン323.70g(3.499mol)を仕込み、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.058g(0.0002mol)を添加した。90℃に昇温し、同温度で16時間攪拌した時点で、HPLCにより反応液の分析を行ったところ、原料である上記一般式(2)のフルオレン系ジオール化合物は0.1%以下であり、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の生成量は84.7%であった。
得られた反応液を濃縮することなく30℃まで冷却し、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液33.00g(0.413mol)を添加し、同温度で32.5時間攪拌した。撹拌終了後、20mmHg減圧下で過剰のエピクロルヒドリン等を留去後、酸を加えて中和した後、水層を分液除去した。次いで、有機層を水で洗浄した後、有機層に特製白鷺活性炭を加え、70℃で2時間撹拌を行った後に濾過を行い不溶解分及び活性炭を除去した後、減圧濃縮しトルエンを留去することにより、薄黄色粘調性固体である、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂48.62gを得た。
得られた上記式(1)で表されるエポキシ樹脂をHPLCで分析した所、上記式(1)においてn=0のものが77.6%、上記式(1)においてn=1のものが1.03%含まれており、更に、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の内、上記式(3)においてX=塩素、n=0のものが17.3%残存していた。また、エポキシ当量は273g/eqであった。溶剤溶解性、150℃溶融粘度、屈折率、アッベ数、5%重量減少温度、全塩素分については表1に示す。
<参考例1>
従来公知のビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂として、以下式(5)
Figure 2017039828
(nは0または1以上の整数である。)
で表わされるビスフェノールフルオレン樹脂(東京化成(株)社製、白色結晶、n=0であるものの割合:97.3%、エポキシ当量:234g/eq)について同様に、溶剤溶解性、150℃溶融粘度、屈折率、アッベ数、5%重量減少温度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2017039828
2.上記式(1)で表されるエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物、及び該エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の製造及び評価
〔1〕ガラス転移温度(Tg)
高分子熱特性測定装置(日立ハイテクサイエンス DMS−6100)を用いて昇温速度2℃/分、周波数10Hzの空気中で測定を行い、tanδのピークからガラス転移温度(Tg)を求めた。
〔2〕屈折率
アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR−2M」)を用いて、23℃における屈折率(波長:589nm)を測定した。
〔3〕5%重量減少温度
熱重量測定器((株)島津製作所 TGA−50)を用いて、窒素気流下、室温から500℃まで10℃/分で昇温し、測定した。
<実施例3>
実施例1で得られた、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂25.00gに、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を17.00g、トリフェニルホスフィンを1.25g加え、ディスパーで撹拌し、減圧下(0.6〜1.0kPa)45℃で脱泡後、高温恒温器((株)楠本化成株式会社 ETAC HT310)を使用し、100℃で2時間、125℃で2時間、150℃で2時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
<実施例4>
実施例2で得られた、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂3.00gに、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を1.78g、トリフェニルホスフィンを0.15g加え、70℃で撹拌した。粘度が高く45℃で脱泡できなかったため、脱泡操作は実施しなかった。高温恒温器((株)楠本化成株式会社 ETAC HT310)を使用し、100℃で2時間、125℃で2時間、150℃で2時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
<実施例5>
実施例1で得られた、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂6.00gに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製 AER260)を24.00g、2−エチル−4−メチルイミダゾールを0.60g加え、ディスパーで撹拌し、減圧下(0.6〜1.0kPa)60℃で脱泡後、高温恒温器((株)楠本化成株式会社 ETAC HT310)を使用し110℃で2時間、140℃で2時間、170℃で2時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
<比較例3>
比較例1で得られた上記式(1)で表されるエポキシ樹脂3.00gに、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を1.46g、トリフェニルホスフィンを0.15g加え、実施例3と同様に硬化物の作成を試みたが、組成物の粘度が高く、脱泡、撹拌が困難であり、試験片を作成することが出来なかった。
<比較例4>
比較例2で得られた、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂5.00gに、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を3.08g、トリフェニルホスフィンを0.25g加え、ディスパーで撹拌し、減圧下(0.6〜1.0kPa)55℃で脱泡後、高温恒温器((株)楠本化成株式会社 ETAC HT310)を使用し、100℃で2時間、125℃で2時間、150℃で2時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
<参考例2>
参考例1で評価を行った、上記式(5)で表されるビスフェノールフルオレン樹脂25.00gに、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を18.00g、トリフェニルホスフィンを1.25g加え、実施例3と同様に硬化物の作成を試みたが、組成物の粘度が高く、脱泡、撹拌が困難であり、試験片を作成することが出来なかった。
<参考例3>
参考例1で評価を行った、上記式(5)で表されるビスフェノールフルオレンエポキシ樹脂12.50gに、希釈剤として1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(エリシスGE−21:CVC Specialty Chemicals 社製)を12.50g加え、更に4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物を23.5g、トリフェニルホスフィンを1.25g加えて、ディスパーで撹拌し、減圧下(0.6〜1.0kPa)45℃で脱泡後、高温恒温器((株)楠本化成株式会社 ETAC HT310)を使用し110℃で2時間、135℃で2時間、150℃で2時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
<参考例4>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ(株)製、AER260)30.00g、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.60g加え、ディスパーで撹拌し、減圧下(0.6〜1.0kPa)45℃で脱泡後、高温恒温器((株)楠本化成株式会社 ETAC HT310)を使用し110℃で2時間、140℃で2時間、170℃で2時間加熱し硬化物を得た。得られた硬化物の物性を表2に示す。
Figure 2017039828

Claims (6)

  1. 下記(i)、(ii)及び(iii)の工程をこの順で含む、下記式(1)
    Figure 2017039828

    (式中nは0または1以上の整数を表す。)
    で表されるエポキシ樹脂の製造方法。
    (i)4級アンモニウム塩及び4級ホスホニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩存在下、下記式(2)
    Figure 2017039828
    で表されるフルオレン系ジオール化合物と、該フルオレン系ジオール化合物1モルに対し5〜25モルのエピハロヒドリンとを反応させ、上記式(2)のハロヒドリンエーテル体を含む溶液を得る工程。
    (ii)前記ハロヒドリンエーテル体を含む溶液を濃縮する工程。
    (iii)前記ハロヒドリンエーテル体を含む溶液とアルカリ金属水酸化物とを混合する工程。
  2. エポキシ当量が239g/eq〜300g/eqである、上記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
  3. 上記式(2)のハロヒドリンエーテル体の含有量が10重量%以下である、請求項2記載の上記式(1)で表されるエポキシ樹脂。
  4. 全塩素量が1%以下である、請求項2または3記載のエポキシ樹脂。
  5. 請求項2〜4いずれか一項に記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
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