[00234] 本明細書で用いる場合、「ビームデリバリシステム」という言葉は、放射源が生成したビームをリソグラフィ装置等のツールに提供するために用いられる光学要素のいずれかの組み合わせを指すために使用可能である。
[00235] 図1は、放射源SO、ビーム分割装置20、及び複数のツールを備えたリソグラフィシステムLSを示す。図1では、20のツールLA1〜LA20が設けられている。ツールの各々は放射ビームを受光するいずれかのツールとすればよい。ツールLA1〜LA20は本明細書において一般にリソグラフィ装置と称するが、ツールはそのように限定されないことは認められよう。例えばツールは、リソグラフィ装置、マスク検査装置、空間像測定システム(AIMS:Arial Image Measurement System)を含み得る。
[00236] 放射源SOは、少なくとも1つの自由電子レーザを備え、極端紫外線(EUV)放射ビームB(これをメインビームと称することがある)を発生するように構成されている。メイン放射ビームBは、ビーム分割装置20によって、複数の放射ビームB1〜B20(これらを分岐ビームと称することがある)に分割され、その各々がリソグラフィ装置LA1〜LA20の異なるものに送出される。分岐放射ビームB1〜B20はメイン放射ビームBから直列に分割され、各分岐放射ビームは直前の分岐放射ビームの下流でメイン放射ビームBから分岐することができる。ビーム分割装置は例えば一連のミラー(図示せず)を含み、それらは各々、メイン放射ビームBの一部を分岐放射ビームB1〜B20へと分割するように構成することができる。
[00237] 図1において、分岐放射ビームB1〜B20は、メイン放射ビームBの伝搬方向に対してほぼ垂直な方向に伝搬するようにメイン放射ビームBから分割されるものとして図示されている。しかしながらいくつかの実施形態では、分岐放射ビームB1〜B20は、各分岐放射ビームB1〜B20の伝搬方向とメイン放射ビームの伝搬方向との角度が実質的に90度未満となるようにメイン放射ビームBから分割されることも可能である。これにより、メイン放射ビームBが直角よりも小さい入射角でビーム分割装置のミラーに入射するようにミラーを配置することが可能となる。これによってミラーが吸収する放射量が低減し、従って、ミラーから反射されて分岐放射ビームB1〜B20を介してリソグラフィ装置LA1〜LA20に与えられる放射量が増大するという利点が得られる。更に、1つ以上の分岐放射ビームを、(図2に示すような)イルミネータの入口に対してある角度で送出することが望ましい場合がある。これによって、分岐放射ビームをイルミネータへ供給する際に使用するミラー数を減らすことができ、従ってパワー損失の低減/伝送の増大が可能となる。
[00238] 以下の説明から明らかとなるように、図1において分岐ビームB1〜B20は直接メイン放射ビームBから発するものとして示すが、メイン放射ビームBを1つ以上のサブビームに分割し、次いでサブビームの1つ以上を更に少なくとも1回以上分割して分岐放射ビームB1〜B20を生成してもよいことは認められよう。
[00239] リソグラフィ装置LA1〜LA20は全て同一の垂直レベル上に位置決めすることができる。リソグラフィ装置LA1〜LA20を位置決めする垂直レベルは、ビーム分割装置20が位置決めされると共にメインビームBが放射源SOから受光される垂直レベルとほぼ同じ垂直レベルとすることができる。あるいは、ビーム分割装置20は分岐放射ビームB1〜B20の少なくともいくつかを、リソグラフィ装置LA1〜LA20の少なくともいくつかが位置決めされた1つ以上の異なる垂直レベルに送出することも可能である。例えば、メイン放射ビームBは地下室又は1階の垂直レベルでビーム分割装置によって受光することができる。ビーム分割装置20は少なくともいくつかの分岐放射ビームB1〜B20を、ビーム分割装置よりも上方に位置決めされてリソグラフィ装置LA1〜LA20の少なくともいくつかが位置決めされた垂直レベルへと送出することができる。リソグラフィ装置LA1〜LA20は多数の垂直レベルに位置決めすることができるので、これらのリソグラフィ装置LA1〜LA20によって受光するために、ビーム分割装置20は分岐放射ビームB1〜B20を異なる垂直レベルへと送出することができる。
[00240] 放射源SO、ビーム分割装置20、及びリソグラフィ装置LA1〜LA20は全て、外部環境から隔離可能であるように構築及び配置することができる。放射源SO、ビーム分割装置20、及びリソグラフィ装置LA1〜LA20の少なくとも一部において真空を与えて、EUV放射の吸収を最小限に抑えることができる。リソグラフィシステムLSの異なる部分に、異なる圧力(すなわち大気圧より低い異なる圧力に保持する)、及び異なるガス組成(SO及びビーム分割装置20内の異なる位置に対して異なるガス混合物を供給する)の真空を与えることも可能である。
[00241] 図2は、図1に示したリソグラフィシステムLSのリソグラフィ装置LA1の概略図である。リソグラフィ装置LA1は、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備えている。照明システムILは、リソグラフィ装置LA1によって受光される分岐放射ビームB1がパターニングデバイスMAに入射する前にこれを調節するように構成されている。投影システムPSは、分岐放射ビームB1(この時点でマスクMAによりパターンが与えられている)を基板W上に投影するように構成されている。基板Wは予め形成されたパターンを含むことができる。この場合リソグラフィ装置は、パターンが与えられた放射ビームB1を、基板W上に予め形成されたパターンと位置合わせする。
[00242] リソグラフィ装置LA1により受光される分岐放射ビームB1は、ビーム分割装置20から照明システムILの閉鎖構造の開口8を通って照明システムIL内に入る。任意選択的に、分岐放射ビームB1は、開口8において又はその近傍で中間焦点を形成するように集束させてもよい。
[00243] 照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含むことができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、放射ビームB1に所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームB1は照明システムILから出て、支持構造MTが保持するパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは放射ビームを反射し、これにパターンを与えて、パターン付与されたビームB1’を形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むこともある。照明システムILは、例えば個別に移動可能なミラーのアレイを含むことができる。個別に移動可能なミラーは、例えば直径1mm未満であり得る。個別に移動可能なミラーは、例えば微小電気機械システム(MEMS)デバイスとすればよい。
[00244] パターン付与された放射ビームB11は、パターニングデバイスMAから反射した後、投影システムPSに入る。投影システムPSは、放射ビームB11を基板テーブルWTが保持する基板Wに投影するように構成された複数のミラー13、14を備えている。投影システムPSは放射ビームに縮小率を適用して、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する像を形成することができる。例えば縮小率4を適用可能である。図2において投影システムPSは2つのミラー13、14を有するが、投影システムはいかなる数のミラーも含むことができる(例えば6個のミラー)。
[00245] いくつかの実施形態において、リソグラフィシステムLSは1つ以上のマスク検査装置(図示せず)を含む場合がある。マスク検査装置は、ビーム分割装置20から分岐放射ビームB1〜B20を受光し、この分岐放射ビームをマスクMAに送出するように構成された光学部品(例えばミラー)を含むことができる。マスク検査装置は更に、マスクから反射した放射を集めてマスクの像を画像センサに形成するように構成された光学部品(例えばミラー)も含み得る。画像センサで受光された像を用いて、マスクMAの1つ以上の特性を判定することができる。マスク検査装置は、例えば図2に示すリソグラフィ装置LA1と同様のものとし、基板テーブルWTの代わりに画像センサを用いればよい。
[00246] いくつかの実施形態において、リソグラフィシステムLSは、マスクMAの1つ以上の特性を測定するために使用可能である1つ以上の空間像測定システム(AIMS)を含むことがある。AIMSは、例えばビーム分割装置20から分岐放射ビームB1〜B20を受光し、この分岐放射ビームB1〜B20を用いてマスクMAの1つ以上の特性を判定するように構成することができる。
[00247] 放射源SOは、EUV放射ビームを生成するように動作可能である自由電子レーザFELを備えている。任意選択的に、放射源SOは、以下の例示的な実施形態を参照して説明するように2つ以上の自由電子レーザFELを備えてもよい。しかしながら他の実施形態では、放射源SOは放射を発生させる他の手段を備え得ることは認められよう。例えば放射源SOは1つ以上の「レーザ生成プラズマ(LPP)」源を備えることができる。実際、いくつかの実施形態において放射源SOは、適切な高パワーの放射ビームを提供するように動作可能ないかなる手段でも利用し得ることは理解されよう。
[00248] 自由電子レーザは、バンチ化相対論的電子ビームを生成するように動作可能な電子源と、この相対論的電子バンチが送出される周期磁場と、を備えている。周期磁場はアンジュレータにより生成され、これによって電子は中心軸を中心とした振動経路をとる。この磁場によって生じた加速の結果、電子は概ね中心軸方向に電磁放射を自発的に放射する。相対論的電子はアンジュレータ内の放射と相互作用する。特定の条件下で、この相互作用によって電子はバンチ化して、アンジュレータ内の放射の波長で変調されたマイクロバンチ(microbunch)となり、中心軸に沿った放射のコヒーレントな放出が誘導される。
[00249] 図3は自由電子レーザFELの概略図であり、これは電子源21、線形加速器22、ステアリングユニット23、及びアンジュレータ24を備えている。電子源21は代替的に入射器と呼ぶことがあり、アンジュレータ24は代替的にウィグラー(wiggler)と呼ぶことがある。
[00250] 電子源21は電子ビームEを生成するように動作可能である。電子源21は、例えばフォトカソード又は熱イオンカソードと加速電場とを備えることができる。電子ビームE内はバンチ化電子ビームEであり、一連の電子バンチから成る。ビームE内の電子は線形加速器22によって更に加速される。一例において線形加速器22は、共通軸に沿って軸方向に離間した複数の無線周波数空洞と、共通軸に沿って電磁場を制御して電子バンチが通過する際に各電子バンチを加速するように動作可能である1つ以上の無線周波数電力源と、を備えることができる。空洞は超伝導無線周波数空洞とすればよい。有利な点として、これによって、比較的大きい電磁場を高いデューティサイクルで印加すること、ビームアパーチャが大きくなるので航跡場(wakefield)による損失を低減させること、(空洞の壁を通って放散するのとは対照的に)ビームに伝達される無線周波数エネルギ部分を増大させること、が可能となる。あるいは、空洞は従来どおり伝導性とすることも可能であり(すなわち超伝導ではない)、例えば銅から形成すればよい。
[00251] いくつかの加速ステップを経て、ビームEの最終エネルギに到達することができる。例えばビームEは、ビーム輸送要素(ベンド、ドリフト空間等)により分離された複数の線形加速器モジュールを通るように送出することができる。この代わりに又はこれに加えて、ビームEは同一の線形加速器モジュールを繰り返し通るように送出することも可能であり、この場合、ビームEのエネルギの利得及び/又は損失は反復の数に対応する。他のタイプの線形加速器も使用可能である。例えば、レーザ航跡場加速器又は逆自由電子レーザ加速器を用いることができる。
[00252] 線形加速器22から出た相対論的電子ビームEはステアリングユニット23に入射する。ステアリングユニット23は、相対論的電子ビームEを線形加速器22からアンジュレータ24に向けるように電子ビームEの軌道を変えるように動作可能である。ステアリングユニット23は例えば、ステアリングユニット23内に磁場を発生させるように構成された1つ以上の電磁石及び/又は永久磁石を含むことができる。この磁場は電子ビームEに力を加え、これが電子ビームEの軌道を変えるように作用する。線形加速器22から出る際の電子ビームEの軌道は、電子をアンジュレータ24へと向けるように、ステアリングユニット23によって変更される。
[00253] ステアリングユニット23が1つ以上の電磁石及び/又は永久磁石を含む実施形態では、磁石は、磁気双極子、磁気四極子、磁気六極子、及び/又は電子ビームEに力を加えるように構成された他のいずれかの種類の多極磁場機構の1つ以上を形成するように配置すればよい。ステアリングユニット23は、これに加えて又はこの代わりに1つ以上の帯電プレートを備えることも可能であり、これはステアリングユニット23内に電場を生成して電子ビームEに力を加えるように構成することができる。概して、ステアリングユニット23は、電子ビームEに力を加えてその軌道を変えるように動作可能であればいかなる装置も含み得る。
[00254] ステアリングユニット23は相対論的電子ビームEをアンジュレータ24に送出する。アンジュレータ24は相対論的電子を周期経路に沿って導くように動作可能であり、これによって電子ビームEはアンジュレータ24内の放射と相互作用し、放射のコヒーレントな放出が誘導される。一般にアンジュレータ24は、周期磁場を生成するように動作可能な複数の磁石を含み、この周期磁場により電子ビームEは周期経路を進む。この結果、電子は概ねアンジュレータ24の中心軸の方向に電磁放射を放出する。アンジュレータ24は複数のセクション(図示せず)を含み、各セクションが周期磁石構造を備えることができる。アンジュレータ24は更に、例えば1つ以上の隣接セクション対の間の四重極磁石等、電子ビームEを再集束させる(refocus)ための機構を備えることができる。電子ビームEを再集束するための機構は電子バンチのサイズを縮小することができ、これによってアンジュレータ24内の電子と放射との結合を向上させて、放射の放出の誘導を増大させることができる。
[00255] 電子は、アンジュレータ24を通過する際にアンジュレータ24内で電磁放射の電場と相互作用し、放射とエネルギを交換する。一般に、条件が以下で与える共振条件に近くない限り、電子と放射との間で交換されるエネルギ量は高速で振動する。
ここで、λemは放射の波長であり、λuはアンジュレータ周期であり、γは電子のローレンツ因子であり、Kはアンジュレータパラメータである。Aはアンジュレータ24の幾何学的形状に依存する。ヘリカルアンジュレータ(helical undulator)ではA=1であり、平面アンジュレータ(planar undulator)ではA=2である。円偏光でないが楕円偏光の光を生成するヘリカルアンジュレータでは、Aは1から2までの範囲内となる。実際には、各電子バンチはある幅のエネルギを有するが、この幅は(電子ビームEを低いエミッタンスで生成することによって)できる限り最小限に抑えることができる。アンジュレータパラメータKは典型的に約1であり、以下によって与えられる。
ここで、q及びmはそれぞれ電子の電荷及び質量であり、Boは周期磁場の振幅であり、cは光の速度である。
[00256] 共振波長λemは、アンジュレータ24を通過する電子が自発的に放射する第1高調波波長に等しい。自由電子レーザFELは、SASE(self−amplified spontaneous emission:自己増幅自発放出)モードで動作することができる。SASEモードの動作では、電子ビームEがアンジュレータ24に入射する前にその電子バンチのエネルギ幅が小さいことが必要であり得る。あるいは、自由電子レーザFELは、アンジュレータ24内の誘導放出により増幅可能なシード放射源を備えることができる。自由電子レーザFELは再循環増幅器自由電子レーザ(RAFEL:recirculating amplifier free electron laser)として動作可能であり、この場合、自由電子レーザFELが発生する放射の一部を用いて更に放射の発生をシードする(seed)。
[00257] アンジュレータ24を通過する電子によって放射振幅を増大させることができる。すなわち、自由電子レーザFELは非ゼロの利得を有することができる。共振条件を満たす場合、又は条件が共振に近いがわずかに外れている場合に、最大の利得が達成され得る。
[00258] アンジュレータ24に入射する際に共振条件を満たす電子は、放射を放出(又は吸収)する際にエネルギを喪失(又は獲得)するので、共振条件は満たされなくなる。従っていくつかの実施形態では、アンジュレータ24をテーパ化することができる。すなわち、電子バンチにアンジュレータ24を通過させる際にこれを共振又は共振近傍に維持するため、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuは、アンジュレータ24の長さに沿って変化し得る。アンジュレータ24内での電子と放射との相互作用は電子バンチ内である幅のエネルギを生成することに留意すべきである。アンジュレータ24のテーパ化は、共振又は共振近傍にある電子数を最大化するように構成することができる。例えば電子バンチは、ピークエネルギでピークに達するエネルギ分布を有することができ、テーパ化は、電子にアンジュレータ24を通過させる際に共振又は共振近傍にこのピークエネルギの電子を維持するように構成することができる。有利な点として、アンジュレータのテーパ化は、変換効率を大幅に上昇させる可能性がある。テーパ化アンジュレータの使用により、変換効率(すなわち放射ビームB内の放射に変換される電子ビームEのエネルギ部分)を2倍超上昇させることが可能である。アンジュレータのテーパ化を達成するには、アンジュレータパラメータKをその長さに沿って低減させればよい。これを達成するには、アンジュレータ周期λu及び/又はアンジュレータ軸に沿った磁場強度B0を電子バンチエネルギに合致させて、それらが共振条件又はその近傍となることを保証すればよい。このように共振条件を満たすことで、放出される放射の帯域幅が拡大する。
[00259] 電磁放射は、アンジュレータ24から出た後、放射ビームB’として放出される。放射ビームB’はEUV放射を含み、ビーム分割装置20(図1に示す)に与えられてリソグラフィ装置LA1〜LA20に提供される分岐放射ビームB1〜20を形成する放射ビームBの全部又は一部を形成することができる。
[00260] 図3に示す自由電子レーザの実施形態では、アンジュレータ24から出た電子ビームE’は第2のステアリングユニット25に入射する。第2のステアリングユニット25は、アンジュレータ24から出た電子ビームE’の軌道を変更して、電子ビームE’を再び線形加速器22に送出する。第2のステアリングユニット25はステアリングユニット23と同様のものとすればよく、例えば1つ以上の電磁石及び/又は永久磁石を含むことができる。第2のステアリングユニット25は、アンジュレータ24から出た放射ビームB’の軌道には影響を与えない。従って、ステアリングユニット25は放射ビームB’から電子ビームE’の軌道を切り離す。いくつかの実施形態では、電子ビームE’の軌道を、第2のステアリングユニット25に達する前に、(例えば1つ以上の磁石を用いて)放射ビームB’の軌道から切り離してもよい。
[00261] 第2のステアリングユニット25は、電子ビームE’がアンジュレータ24から出た後にこれを線形加速器22に送出する。アンジュレータ24を通過した電子バンチは、線形加速器22における加速フィールド(例えば無線周波数フィールド)に対して約180度の位相差で線形加速器22に入射し得る。電子バンチと線形加速器22における加速フィールドとの位相差のため、電子はこのフィールドにより減速される。減速する電子E’はエネルギの一部を線形加速器22のフィールドに戻し、これによって、電子源21から到着する電子ビームEを加速させるフィールドの強度が増大する。従ってこの機構は、(線形加速器により電子バンチが加速された時に)線形加速器22において電子バンチに与えられたエネルギの一部を回収し、電子源21から到着する後続の電子バンチを加速する。このような機構はエネルギ回収LINACとして既知であり得る。
[00262] 線形加速器22により減速された電子E’は、ビームダンプ26によって吸収される。ステアリングユニット23は、線形加速器22により減速された電子ビームE’の軌道を、線形加速器22により加速された電子ビームEの軌道から切り離すように動作可能であり得る。これによって、減速された電子ビームE’をビームダンプ26で吸収すると共に、加速された電子ビームEをアンジュレータ24に送出することができる。
[00263] 自由電子レーザFELは、電子源21から入来するビームEの軌道とステアリングユニット25から入来するビームE’の軌道とを実質的に重複させるビームマージ(merging)ユニット(図示せず)を備えることができる。このマージが可能であるのは、加速器22による加速の前にビームEのエネルギがビームE’のエネルギよりも著しく小さいという事実のためである。実質的に一定の磁場を発生させることによって、加速した電子ビームEの軌道を減速した電子ビームE’の軌道から切り離すことができる。加速した電子ビームEと減速した電子ビームE’とのエネルギ差により、2つの電子ビームの軌道を一定の磁場によって異なる量だけ変えることができる。従って、2つの電子ビームの軌道は相互に切り離される。
[00264] あるいは、ステアリングユニット23は例えば、加速した電子ビームE及び減速した電子ビームE’を形成する電子バンチと実質的に一定の位相関係を有する周期磁場を発生させるように動作可能であり得る。例えば加速した電子ビームEからの電子バンチがステアリングユニット23に入射する時、ステアリングユニット23はこの電子をアンジュレータ24に送出するように作用する磁場を発生させることができる。減速した電子ビームE’からの電子バンチがステアリングユニット23に入射する時、ステアリングユニット23はこの電子をビームダンプ26に送出するように作用する磁場を発生させることができる。あるいは、減速した電子ビームE’からの電子バンチがステアリングユニット23に入射する時、ステアリングユニット23は、この電子がステアリングユニット23から外れてビームダンプ26に向かうように、磁場をほとんど又は全く発生させないことも可能である。
[00265] あるいは、自由電子レーザFELは、ステアリングユニット23とは別個のビーム分割ユニット(図示せず)を備え、これを、ステアリングユニット23の上流の減速した電子ビームE’の軌道から加速した電子ビームEの軌道を切り離すように構成することができる。ビーム分割ユニットは例えば、加速した電子ビームE及び減速した電子ビームE’を形成する電子バンチと実質的に一定の位相関係を有する周期磁場を発生させるように動作可能であり得る。
[00266] ビームダンプ26は、例えば大量の水、又は高エネルギ電子衝突による放射性同位元素の発生について高い閾値を有する材料を含み得る。例えばビームダンプ26は、約15MeVの放射性同位元素発生の閾値を有するアルミニウムを含む場合がある。原子ビームE’がビームダンプ26に入射する前にこれを線形加速器22内で減速させることで、電子がビームダンプ26により吸収される時に有するエネルギ量を低減させる。これは、誘導放射のレベルを低下させ、ビームダンプ26で生成される二次粒子を減少させる。これによって、ビームダンプ26から放射性廃棄物を除去及び処分する必要性が解消されるか又は少なくとも低減される。放射性廃棄物を除去するためには自由電子レーザFELを周期的にシャットダウンする必要があり、放射性廃棄物を処分することは高コストであると共に深刻な環境への影響を伴う恐れがあるので、これは有利である。
[00267] 線形加速器22は、減速器として動作している場合、電子E’のエネルギを閾値エネルギ未満に低減させるように動作可能であり得る。この閾値エネルギ未満の電子は、ビームダンプ26において著しいレベルの放射能を誘導しない可能性がある。
[00268] いくつかの実施形態では、線形加速器22とは別個の減速器(図示せず)を用いて、アンジュレータ24を通過した電子ビームE’を減速させることができる。電子ビームE’は、線形加速器22によって減速することに加えて、又は線形加速器22によって減速する代わりに、この減速器によって減速することができる。例えば、電子ビームE’が線形加速器22によって減速する前に、第2のステアリングユニット25がこの電子ビームE’を減速器に通過させることができる。これに加えて又はこの代わりに、電子ビームE’は、線形加速器22により減速した後であってビームダンプ26により吸収される前に減速器を通過することも可能である。あるいは、電子ビームE’は、アンジュレータ24から出た後に線形加速器22を通過せずに、1つ以上の減速器によって減速し、その後ビームダンプ26によって吸収することができる。
[00269] 任意選択的に、自由電子レーザFELは1つ以上のバンチ圧縮器を備えてもよい。バンチ圧縮器は線形加速器22の下流又は上流に配置することができる。バンチ圧縮器は、電子ビームE、E’内の電子をバンチ化し、電子ビームE、E’内の既存の電子バンチを空間的に圧縮又は伸張するように構成されている。圧縮を用いると、高いピーク電流を与えることによってアンジュレータ24での変換効率を増大させることができる。バンチの伸張を用いると、低いピーク電流でバンチの輸送を可能とすることができる。
[00270] あるタイプのバンチ圧縮器は、電子ビームEを横断する方向に向いた放射場(radiation field)を含む。電子ビームE内の電子は放射と相互作用して、近傍の他の電子とバンチ化する。別のタイプのバンチ圧縮器は磁気シケイン(magnetic chicane)を含む。この場合、電子がシケインを通過する際の経路の長さはそのエネルギに依存する。このタイプのバンチ圧縮器を用いると、電位が例えば無線周波数で振動する複数の導体によって、線形加速器22で加速された電子バンチを圧縮することができる。
[00271] アンジュレータ24に入射する電子バンチは、密に(tightly)バンチ化されること、従って加速器内の他の位置におけるよりも高いピーク電流を有することが望ましい場合がある。このため、電子バンチがアンジュレータ24内に入る前に1つ以上のバンチ圧縮器を用いてこれを圧縮することが望ましい場合がある。従って、ステアリングユニット23とアンジュレータ24との間に別個のバンチ圧縮器(図示せず)を配置することができる。この代わりに又はこれに加えて、ステアリングユニット23自体が電子ビームE内の電子をバンチ化するように作用することも可能である。線形加速器22によって加速された電子バンチは、バンチの長さに沿った平均エネルギ勾配である相関エネルギ幅を有し得る。例えば電子バンチ内の一部の電子は電子バンチの平均エネルギより高いエネルギを有することがあり、バンチ内の一部の電子は平均エネルギより低いエネルギを有することがある。ステアリングユニット23による電子軌道の変化は、電子のエネルギに依存し得る(例えば軌道が磁場によって変えられる場合)。従って、異なるエネルギの電子は、ステアリングユニット23によって異なる量だけ軌道が変えられ、これが軌道の相違となり、これを制御することで電子バンチの圧縮が可能となる。
[00272] 図3に示す自由電子レーザFELは建造物31内に収容されている。建造物31は、自由電子レーザFELの動作中に自由電子レーザFELで発生される放射を実質的に透過しない壁を備えることができる。例えば建造物31は、厚いコンクリート製の壁(例えば約4メートルの厚さ)を備え得る。建造物31の壁は更に、例えば鉛、及び/又は中性子及び/又は他の種類の放射線を吸収するように構成された他の材料のような放射遮蔽材料を備えることができる。放射遮蔽は、電子及びガンマ光子を阻止するための高密度かつ重元素含有量の大きい材料(例えば高いZ値を有する材料)と、中性子を阻止するための軽元素含有量の大きい材料(例えば水素又はホウ素等の低いZ値を有する材料)と、の双方を含み得る。建造物31の壁に放射吸収材料を備えると、建造物31の壁の厚さを低減することができる利点が得られる。しかしながら、壁に放射吸収材料を加えると建造物31の構築コストが増大する可能性がある。放射を吸収するために建造物31の壁に追加し得る比較的安価な材料は、例えば土又は砂の層とすればよい。
[00273] 放射遮蔽特性を有する建造物31の壁を設けることに加えて、建造物31は、自由電子レーザFELが発生した放射が建造物31の下方の地下水を汚染するのを防ぐように構成することも可能である。例えば建造物31の基礎及び/又は土台は、放射遮蔽材料を設けるか、又は充分に厚くすることで放射による建造物31の下方の地下水の汚染を防ぐことができる。一実施形態では、建造物31を少なくとも部分的に地下に位置付けることができる。そのような実施形態では、地下水は建造物31の下方にあると共に建造物31の外側部分を取り囲み得る。従って、放射が建造物31を取り囲む地下水を汚染するのを防ぐために、建造物31の外側の周りに放射遮蔽を設ければよい。
[00274] 建造物31の外側の放射遮蔽に加えて又はその代わりに、建造物31の内部にも放射遮蔽を設けることも可能である。例えば建造物31の内部で、大量の放射を放出する自由電子レーザFELの部分に近い位置に放射遮蔽を設けることができる。
[00275] 図3には特定のレイアウトを有するFELを示すが、FELは他の配置を有し得ることは認められよう。例えば他の実施形態では、加速器22及びアンジュレータ24を一列に配置することができる。他の実施形態では、アンジュレータから出る電子ビームを加速器に戻さない場合がある。従って一般的に、FELはいずれかの適切な配置にすればよいことは理解されよう。
[00276] 放射源SOは単一の自由電子レーザFELを備えることができる。自由電子レーザFELはEUV放射ビームをビーム分割装置20に供給することができ、これが分岐放射ビームをリソグラフィ装置LA1〜LA20に与える。放射源SOは、自由電子レーザFELから出力された放射ビームBをリソグラフィシステムLSのビーム分割装置20に送出するように構成された専用光学コンポーネントを含む光学システムを備えることができる。EUV放射は概ねあらゆる物質によって充分に吸収されるので、損失を最小限に抑えるように、一般的には(透過性コンポーネントでなく)反射性光学コンポーネントが用いられる。光学システムの専用光学コンポーネントは、自由電子レーザFELにより生成された放射ビームの特性を、ツール(例えばリソグラフィ装置LA1〜LA20の照明システムIL及び/又はマスク検査装置)が受光するのに適切となるように適合させることができる。
[00277] あるいは、放射源SOは複数の自由電子レーザ(例えば2つの自由電子レーザ)を備え、これらの各々がEUV放射ビームB’、B’’を光学システムに与えることも可能である。光学システムは、放射源SOの一部を形成すると見なすことができ、又は放射源SOとは別個であると見なすことも可能である。光学システムは、複数の自由電子レーザの各々から放射ビームを受光し、これらの放射ビームを結合して1つの複合放射ビームとする。分岐放射ビームB1〜B20をリソグラフィ装置LA1〜LA20に与えるため、この複合放射ビームはビーム分割装置20に与えられる。
[00278] 図4は、第1の自由電子レーザFEL’及び第2の自由電子レーザFEL’’を備えた放射源SOを含むリソグラフィシステムLSの概略図である。第1の自由電子レーザFEL’は第1のEUV放射ビームB’を出力し、第2の自由電子レーザFEL’’は第2のEUV放射ビームB’’を出力する。第1の自由電子レーザFEL’は第1の建造物31’内に収容されている。第2の自由電子レーザFEL’’は第2の建造物31’’内に収容されている。
[00279] 第1及び第2の放射ビームB’、B’’は光学システム40によって受光される。光学システム40は、第1の放射ビームB’及び第2の放射ビームB’’を受光してメイン放射ビームBを出力するように構成された複数の光学要素(例えばミラー)を備えている。第1及び第2の自由電子レーザが双方とも動作している時、メイン放射ビームBは、第1及び第2の放射ビームB’、B’’の双方からの放射を含む複合放射ビームである。複合放射ビームBはビーム分割装置20に与えられ、これは分岐放射ビームB1〜B20をリソグラフィ装置LA1〜LA20に与える。
[00280] 図4に示す、2つの自由電子レーザが放射ビームB’、B’’を与えてメイン放射ビームBを形成するように配置された機構では、放射を連続的にリソグラフィ装置LA1〜LA20に与えながら自由電子レーザの一方をオフにすることも可能である。例えば、自由電子レーザの一方を修理するため又は保守を行うために、この自由電子レーザを動作から外すことができる。この場合、他方の自由電子レーザは、光学システム40が受光する放射ビームを与え続けることができる。自由電子レーザの一方のみが放射を光学システム40に与える場合、光学システム40は、光学システム40に放射を与えている自由電子レーザからの放射を含むメイン放射ビームBを形成するように動作可能である。このため、自由電子レーザの一方が動作から外された場合であってもリソグラフィ装置LA1〜LA20の連続動作を行うことができる。
[00281] 図5は、本発明の一実施形態に従った光学システム40の実施形態の概略図である。これは、自由電子レーザFEL’、FEL’’の各々から放射ビームB’、B’’を受光して出力放射ビームBを出力するように配置されている。光学システム40が出力する放射ビームBは、ビーム分割装置20(図1を参照のこと)によって受光される。
[00282] 光学システム40は4つの光学要素を備えている。すなわち、自由電子レーザFEL’に関連付けられた第1及び第2の光学要素50、51と、自由電子レーザFEL’’に関連付けられた第1及び第2の光学要素52、53である。光学要素50、51、52、53は、自由電子レーザFEL’、FEL’’からの放射ビームB’、B’’の断面の大きさ及び形状を変えるように構成されている。
[00283] 具体的には、第1の光学要素50、52は凸面鏡であり、自由電子レーザFEL’、FEL’’からの放射ビームB’、B’’の断面積を拡大するように作用する。図5において第1の光学要素50、52はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、これらはこの面及びz方向の双方において凸形とすることができる。第1の光学要素50、52は凸形であるので、EUV放射ビームB’、B’’の発散を増大させ、これによって下流のミラーに対する熱負荷を低減させる。従って第1の光学要素50は、第1の自由電子レーザFEL’から受光した放射ビームB’の断面積を拡大するように構成された発散光学要素である。第1の光学要素52は、第2の自由電子レーザFELから受光した放射ビームB’’の断面積を拡大するように構成された発散光学要素である。これによって下流のミラーは、あまり冷却を行わない、低スペック(low specification)の、従って複雑でない安価なものとすることができる。これに加えて又はこの代わりに、これは下流のミラーを近垂直入射とすることができる。実際には、以下で説明するように、放射源SOが出力する放射ビームBは、ビームBの経路に直列に配置された複数の連続した静的エッジ形成ミラーによって分割することができる。(例えば第1の光学要素50、52として凸面鏡を用いることで)ビームBのサイズを拡大すると、そのような静的ミラーをビームB経路内に位置付ける際に要求される精度を低くすることができる。従ってこれは、分割装置20による出力ビームBのいっそう正確な分割を可能とする。
[00284] 第2の光学要素51、53は凹形で、第1の光学要素と相補的な形状にして、第2の光学要素51、53から出るビームの発散を実質的にゼロとする。従って、第2の光学要素51、53の下流ではビームは実質的にコリメートされている。この場合も、図5において第2の光学要素51、53はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、これらは実際にはこの面及びz方向の双方において凹形である。あるいは、ミラー50、51、52、53のいずれかは双曲放物面の形状であり、正及び負の曲率を有することができる。あるいは、ミラー50から53は平坦であり、単独で用いてビームのずれ及び傾斜を制御することも可能である。更に、ミラー50、52の背後に放射吸収器を設けて、制動放射のためにビームB’及びB’’と共に伝搬するアンジュレータ24で発したガンマ光子及び中性子を阻止することも可能である。この場合も、例えば高密度で高いZ値の材料を低密度で低いZ値の材料と組み合わせることで、放射遮蔽を設けることができる。
[00285] ビーム分割装置20により受光される出力ビームBは、自由電子レーザFEL’、FEL’’が出力するものとは異なる形状及び/又は強度分布を有することが好ましい場合がある。例えば、ビーム分割装置20内の連続したエッジ形成抽出ミラーには、円形ビームよりも矩形の形状の方が好ましいことがある。従って光学要素50、51、52、53は、放射ビームB’、B’’の断面積を拡大することに加えて、放射ビームB’、B’’の断面形状を変えるように作用することができる。具体的には、光学要素50、51、52、53はアスティグマティック又は非球面として、第2の光学要素51、53から出る放射ビームB’、B’’が、自由電子レーザFEL’、FEL’’により生成された放射ビームB’、B’’よりも矩形の形状であることを保証するような形状とすればよい。例えばこれらの光学要素は、第2の光学要素51、53から出るビームB’、B’’が概ね矩形であるが丸めた角を有するような形状とすることができるが、他の形状も可能である。このような矩形形状の2つの寸法は、例えばx−y面とz方向のような2つの垂直方向における光学要素の曲率半径に関連付けることができる。有利な点として、これにより、リソグラフィ装置LA1〜LA20への入射前に出力放射ビームBを分岐放射ビームB1〜B20(図1を参照のこと)に分割するために用いるミラーを、同一のものとするか又は少なくとも極めて類似したものとすることができる。これは製造上の観点から特に有益である。
[00286] 光学要素40から出るビームの断面形状に加えて、光学システム40は、ビームB’及びB’’の強度プロファイルに対して放射ビームBの断面の強度プロファイルを変えるように動作可能であり得る。例えば、強度プロファイルをガウス分布からもっと平坦な「トップハット(top hat)」プロファイルに変更することができる。このような変更は、ビーム分割装置20によるビームBの部分のいっそう直接的な抽出を可能とする。これについては以下で詳述する。自由電子レーザFEL’、FEL’’が双方ともオンである場合、光学システム40はそれらの放射ビームB’、B’’を結合して複合放射ビームBを形成するように動作可能である。この実施形態においてこれを達成するには、第1の自由電子レーザFEL’の第1及び第2の光学要素50、51を、第2の自由電子レーザFEL’’の光学要素52、53からx方向にずらして、第2の光学要素51、53から出るビームB’、B’’が相互に隣接すると共に相互に平行になるようにする。具体的には、第1の自由電子レーザFEL’の第1及び第2の光学要素50、51を、第2の自由電子レーザFEL’’の光学要素52、53の「下流」(レーザビームB’、B’’の伝搬方向に対して)に配置する。
[00287] このような配置において、光学システム40は2つの放射ビームB’、B’’を結合して複合放射ビームを形成するように動作可能である。この複合ビームは、光学システム40が出力する出力放射ビームBである。
[00288] 図5は例示に過ぎず、光学システム40は図5に示すようなもの以外にも実施可能であることは認められよう。
[00289] 自由電子レーザの実施形態について線形加速器22を備えるものとして上述したが、線形加速器22は、自由電子レーザの電子を加速させるために使用可能な粒子加速器の種類の一例に過ぎないことは認められよう。線形加速器22は、異なるエネルギを有する電子を同一の軌道に沿って加速させることができるので、特に有利であり得る。しかしながら、自由電子レーザの代替的な実施形態では、他の種類の粒子加速器を用いて電子を相対論的エネルギまで加速させることができる。
[00290] 電子ビームが第1の経路に沿って実質的に第1の方向に、更に第2の経路に沿って実質的に第2の方向に伝搬し、第1の経路及び第2の経路が相互に垂直方向に分離している自由電子レーザの実施形態について説明した。第1及び第2の経路が実質的に相互に平行であると共に実質的に水平方向に平行である実施形態について説明し図示したが、他の配置を用いることも可能である。例えばいくつかの実施形態では、第1の経路及び/又は第2の経路を水平方向に対して非ゼロの角度で配置しながら、相互に垂直方向に分離したままとすることができる。いくつかの実施形態では、第1及び第2の経路が水平方向に対して異なる角度を形成し、従って相互に非ゼロの角度で配置することができる。
[00291] 放射源SOの実施形態について2つの自由電子レーザFELを備えるものとして説明し図示したが、放射源はいかなる数の自由電子レーザFELも備え得ることは認められよう。例えば放射源は、単一の自由電子レーザFELを備えるか、又は3より大きい数の自由電子レーザFELを備えることも可能である。
[00292] 放射源SOの実施形態について光学システム40を備えるものとして説明し図示したが、放射源SOのいくつかの実施形態は光学系40を含まない場合があることは認められよう。例えば自由電子レーザは、放射ビームB’を最初に光学システム40に送出することなく、リソグラフィシステムLSのビーム分割装置20に直接与えることができる。
[00293] 上述のように、放射源SOが生成する放射ビームBは、リソグラフィ装置及びマスク検査装置等の複数のツールに与えるために複数の分岐放射ビームに分割することができる。ここで、放射ビームBを分岐放射ビームに分割するのに適した、複数の静的ミラーを用いるビーム分割機構について説明する。静的とは、正常動作中にミラーが動かないこと、換言するとミラーが動いている間は分割が行われないことであると理解される。従って、各静的ミラーに入射するメイン放射ビームの相対的な割合は、正常動作中は実質的に一定のままである。以下で説明するミラーは静的であるが、それらを調整可能とすることで、例えばこれらのミラーとメイン放射ビームBとの重複の調整及び/又は分岐放射ビームBの位置合わせを行うことができる(例えばリソグラフィシステムの設置、又は既存のリソグラフィシステムに対する新しいツールの設置の際)。
[00294] 図6は、放射ビームBを分割して2つ以上の分岐放射ビームを与えるのに適したビーム分割装置54の概略図である。この機構54において、放射ビームBは分割要素55に送出される。分割要素55は、放射ビームBの第1の部分を反射するように配置された第1の反射面56と、放射ビームBの第2の部分を反射するように配置された第2の反射面57と、を有する。第1の反射面56及び第2の反射面57が合流して形成するエッジ58は、放射ビームBの経路内に配置されている。分割要素55は2つの静的ミラーを与えると見なすことができる。分割要素55は例えば三角プリズムとして形成することができるが、いかなる構成も使用可能であることは理解されよう。
[00295] 第1の反射面56に入射するビームBの第1の部分の反射は第1の分岐ビームB1を与え、第2の反射面57からの放射ビームBの第2の部分の反射は第2の分岐ビームB2を与える。
[00296] 分岐放射ビームB1、B2は、更に分割することなく、例えばリソグラフィ装置又はマスク検査装置等のツールに送出することができる。あるいは、分岐放射ビームB1、B2の一方又は双方を、例えば別のエッジ形成分割要素のような別の分割手段に与えることも可能である。この可能性は、分岐放射ビームB2の経路内に配置された破線で示す別のエッジ形成分割要素59によって図示している。図6には示さないが、分割要素59を用いて分岐放射ビームB2を分割することで得られた分岐放射ビームを更に別の分割要素に与えてもよいことは認められよう。
[00297] 第1の面56と第2の面57との角度αは、プリズムのナイフエッジ(面56及び57の交点)とビームBとの角度α1(図示せず)と共に、第1及び第2の面56、57に対する放射ビームの部分の入射角度を決定する。角度α及び/又はα1は、放射ビームBが面56、57の各々に対してかすめ入射角となるように充分に小さくして、EUV放射の吸収を低減すると共に反射率を上昇させることができる。例えば角度α及び/又はα1は10度以下とすればよい。
[00298] また、分割要素55による吸収の低減は、分割要素55内での加熱、従って熱応力を低減するため、具体的には小さい断面積を有し得るエッジ58の加熱を低減するために望ましい。分割要素55の加熱を更に低減するため、分割要素55を能動冷却手段(図示せず)によって冷却することも可能である。例えば、分割要素55内に液体冷却剤を循環させて熱を逃がすことができる。例えば、反射面56、57の反対側に及びエッジ58に沿ってチャネルを設けてもよい。他の冷却手段も代替的に使用可能である。
[00299] 分割要素55は、いずれかの適切な材料から作製することができる。例えば分割要素55は銅から作製することができる。分割要素55を銅から作製することは、銅の高い熱伝導率を考慮すると有利であり得る。反射率を上昇させるため、所望の放射波長において高い反射率を有する材料を分割要素55の反射面56、57上に配置することができる。例えば、波長が13.5nmの放射に対して高いかすめ入射反射率を有するモリブデン(Mo)又はルテニウム(Ru)を使用可能である。他の波長を有する放射に対して他の高いかすめ入射反射率を得るため、Nb、Zr、Ca、Eu、Pd、Ru、Rh、Te、La、Be、B、C、Ti、Sc、Au、及びPtのような他の材料のコーティングを用いてもよい。
[00300] 分岐放射ビームB1、B2に与えられる放射量を変えるために、分割要素55のエッジ58と放射ビームBの下部エッジとの間の距離dを制御することができる。図6では、分岐放射ビームB1、B2間の比がほぼ50:50であるように、エッジ58は放射ビームBの中心点にあるものとして示されている。しかしながら、距離dを縮小することにより、分岐放射ビームB1に寄与する放射ビームBの量が増大すると共に、分岐放射ビームB2に寄与する放射ビームBの量が低減する。距離dを拡大すると、これとは反対の効果が得られる。
[00301] 図6では反射面56、57を実質的に平面状として示すが、分岐放射ビームB1、B2の発散を増大させるためにこれらを湾曲させることも可能である。例えば、面56、57の各々を凹形又は凸形とすることができる。この代わりに又はこれに加えて、分岐放射ビームB1、B2の経路内に配した光学部品を設けて、特定のツール又は別の分割機構に与えるために分岐放射ビームを調節することも可能である。
[00302] 有利な点として、分割要素55は、小さい距離内で分岐放射ビームB1、B2間に大きい分離度を与える。例えば、角度αが10度であると、放射ビームBに対する分岐放射ビームB1、B2の10度の偏向角が得られることは認められよう。
[00303] 図7は、放射ビームBを複数の分岐放射ビームに分割するための代替的な機構を概略的に示す。図7の例示的な機構において、ビーム分割装置60は、放射源SO(図示せず)から放射ビームBを受光してこれを複数の分岐放射ビームに分割するように動作可能である。図7には3つの分岐放射ビームB1〜B3を示すが、図7の一般的な機構を用いてもっと多数又はもっと少数の分岐放射ビームを生成可能であることは容易に認められよう。
[00304] ビーム分割装置60は、かすめ入射ミラーである凸面鏡61を含む。ビーム分割装置60により受光される放射ビームBは凸面鏡61に入射し、これはメイン放射ビームBの発散を増大させるように作用する。凸面鏡61は、発散光学要素(すなわち放射ビームの発散を生じるように作用する光学要素)の一例である。放射ビームBの経路に1つ以上の追加の発散光学要素を設けてもよい。
[00305] ビーム分割装置60は更に3つのミラー62a〜cを備え、これらの各々はメイン放射ビームBの経路内に配置されている。ミラー62a〜cの各々は部分的に放射ビームBを横切って延出し、交差するメイン放射ビームの部分を反射する。ミラー62a〜cの各々は、メイン放射ビームBの各部分B1〜B3を異なる分岐光路に沿って偏向させる。
[00306] 分岐放射ビームB1〜B3の1つ以上を、リソグラフィ装置又はマスク検査装置等の各ツールに送出することができる。これに加えて又はこの代わりに、分岐放射ビームB1〜B3の各々を更に別の分岐放射ビームに分割するため、分岐放射ビームの1つ以上を別の分割手段に送出することも可能である。
[00307] 図7に第1のミラー62aの正面図を示して、そのミラーとメイン放射ビームBとの交差を概略的に図示する。第1のミラー62aはメイン放射ビームBの均質なエリア63と交差し、メイン放射ビームBのこのエリアを反射する。このため、第1の分岐放射ビームB1は円盤から切り取った断片の断面形状を有する。
[00308] 上述のように、ミラー62a〜cは静的であるが、それらを調整可能マウント上に設けることで、例えばミラー62a〜cとメイン放射ビームBとの重複の調整及び/又は分岐放射ビームB1〜B3の位置合わせを行ってもよい。
[00309] 上述した分割要素55と同様に、ミラー62a〜cはいずれかの適切な方法で作製することができ、例えば金属から形成可能である。ミラー62a〜cはかすめ入射ミラーとすることができる。上述のように、かすめ入射ミラーからの反射ではEUV放射の損失が比較的小さい(例えば約10%の損失)ので、かすめ入射ミラーの使用は有利である。また、例えば金属又はコーティングされたSiであり得るかすめ入射ミラーから、ビーム分割装置の他の光学部品を形成することも可能である。
[00310] 凸面鏡61は、ミラー62a〜cの各々の位置におけるメイン放射ビームBの断面積を拡大する。このような光学部品を本明細書では発散光学部品と呼ぶことができる。同様の発散光学部品を、上述のビーム分割要素55等の本明細書に記載する他のビーム分割装置と、更に図8、図9、図10を参照して以下で説明するビーム分割装置と、組み合わせて使用可能であることは理解されよう。
[00311] メイン放射ビームBは1つ以上の自由電子レーザから与えられるので、発散が比較的小さく、従って分割装置60において小さい直径を有し得る(放射ビームBを生成する自由電子レーザからの分割装置の距離に依存する)。メイン放射ビームBの寸法が小さくなればなるほど、ビームBの所望の割合をメイン放射ビームBから分流させることを保証するためにミラー62a〜cを高い精度で配置しなければならない。
[00312] 凸面鏡61は、メイン放射ビームBの寸法を拡大して、メイン放射ビームBの所望の割合を分岐光路B1〜B3の各々に沿って分流させるようにミラー62a〜cを精度高く位置決めすることを容易にする。更に、メインビームBの発散を増大させることで、ミラー62a〜cのような凸面鏡61の下流にある光学要素に入射する放射の強度が低下する。これにより、メインビームBによって生じるミラー上への熱の集中が軽減される。メイン放射ビームBの熱量が大きく、ミラーの能動冷却が必要となる場合があるので、これは有利である。凸面鏡61の上流ではメイン放射ビームBの寸法は比較的小さい。従って、凸面鏡61に能動冷却を備えることがある。能動冷却は、例えば水等の液体のような冷却流体を供給することにより達成可能である。
[00313] ミラー62a〜cは部分的にのみメイン放射ビームBを横切って延出するので、分岐光路に沿って伝搬する放射ビームは非標準的なビームプロファイルを有し得る。例えば図7を参照すると、第1の分岐放射ビームB1は概ね円の弓形の断面形状63を有する。このビーム形状は、リソグラフィ装置を用いてマスクMAから基板Wにパターンを投影する場合に望ましくないことがある。分岐放射ビームの経路内に光学部品を配置し、分岐光学ビームのビーム形状を変更して所望のビーム形状を与えるように構成することができる。
[00314] 例えば図2を参照すると、リソグラフィ装置の照明システムILは、ビーム形状を変更して所望のビーム形状を与えるように構成することができる。これを達成するには、例えばミラー(例えばフィールドファセットミラー10)のアレイを用いてビームを複数のサブビームに分離し、各サブビームが分岐放射ビームB1のエリア63の異なる部分であるようにすればよい。フィールドファセットミラーは複数のサブビームをミラー上の同一位置に送出して、サブビームを相互に重ねて入射させる。このようにサブビームは結合される。異なるサブビームの異なるエッジフィーチャは相互に重複し、これにより取り除かれて、より有用な断面形状を有するビームを形成する。断面形状はフィールドファセットミラーのファセット形状と合致することができる。このため、分岐放射ビームB1の最初の望ましくない形状は除去されて、所望の放射ビーム形状に置き換えられる。
[00315] 一般に、所望のビーム形状を得るためにいずれかの適切な光学部品を使用可能である。これは、入射ビームを複数のサブビームに分離し、次いでこれらを相互に重ねて入射させるように送出することを含み得る。
[00316] 図6の機構に比べると、図7の機構は特に小さい断面積の部分(図6の分割要素55のエッジ58等)を含まない。このため、図7のミラー62a〜62cの方が、放射ビームBから吸収される熱に耐えることができる。
[00317] 図8を参照すると、代替的なビーム分割装置70が示されている。ビーム分割装置70は一連の静的ミラー71a〜bを備え、その各々は、複数のアパーチャ72が設けられ、メイン放射ビームB全体を横切って延出する。第3の(かつ最終の)静的ミラー71cはアパーチャを備えていない。第1のミラー71aの反射エリアに入射するメインビームBの部分は、第1の分岐放射ビームB1として分岐光路に沿って送出される。第1のミラー71aのアパーチャ72に入射するメインビームBの部分は、アパーチャを通過し、偏向されない。第2のミラー71bは、メイン放射ビームBの一部を第2の分岐放射ビームB2として第2の分岐光路に沿って反射すると共に、メインビームの一部を偏向させずにミラー71bのアパーチャ72を通過させる。第3のミラー71cは、メイン放射ビームBの残り部分を第3の分岐放射ビームB3として第3の分岐光路に沿って反射する。
[00318] 図8の実施形態が形成する分岐放射ビームB1〜B3は、内部に多数の穴(hole)を有し、従ってリソグラフィ装置によるパターン投影に適さない場合がある。図7に関連付けて先に説明したように、分岐放射ビームの経路に、分岐放射ビームを変更して所望の分岐放射ビーム形状を得るための光学部品を配置することができる。これは、分岐放射ビームを複数のサブビームに分離し、次いでこれらを相互に重ねて入射させるように送出することを含み得る。
[00319] 図8には3つのミラー71a〜71cのみを示すが、このような機構において追加の(又はもっと少ない)ミラーを設けてもよいことは認められよう。図8ではミラー71a〜71cの反射面を実質的に平面状として示すが、分岐放射ビームの発散を増大させるためにミラー71a〜71cの1つ以上を湾曲させることも可能である。
[00320] 図9は、メイン放射ビームBを複数の分岐放射ビームに分割するためのビーム分割装置80を側面図で示す。機構80では、放射ビームBの経路に3つの静的ミラー81、82、83が配置されている。各ミラー81、82、83は、放射ビームBの伝搬経路に対してある角度に配置されて、放射ビームBの一部を各分岐光路に沿って反射する。第1のミラー81は、放射ビームBの一部を反射するように配置された外側リング形状反射部81aを有するリングミラーである。リング形状反射面81aはアパーチャ81bを画定し、放射ビームBの残り部分はこれを通過して第2のミラー82の方向に進む。第1のミラー81による反射はリング形状の分岐放射ビームB1を与える。図9において分岐放射B1は、第1のミラー81の上方で分岐放射ビームB1の長手方向軸に沿って見た断面で示されている。
[00321] 第2のミラー82も、放射ビームBの第2の部分を反射して第2の分岐放射ビームB2を与えるように配置された反射性の外側リング82aを有するリングミラーである。外側リング82aは、アパーチャ81bより小さいアパーチャ82bを画定する。放射ビームBの第3の部分は、第2のミラー82のアパーチャ82bを通過して第3のミラー83の方向に進む。図9の図では、第3のミラーは中実のミラーであり、放射ビームBの残り部分を反射して第3の分岐放射ビームB3を与えるように配置された連続反射面83a(すなわちアパーチャなし)を有する。しかしながら、放射ビームBの経路に、徐々に小さくなるアパーチャを有する追加のリングミラーを設けてもよいことはもちろん認められよう。
[00322] 上述のように、他のビーム分割装置に関しても、ミラー81、82、83は金属等のいずれかの適切な材料から作製することができる。
[00323] 図6、図7、及び図8に関連付けて上述した例と同様に、機構80が生成する分岐放射ビームを、リソグラフィツール又はマスク検査装置等のツールに与えることができる。この代わりに又はこれに加えて、分岐放射ビームの1つ以上を別の分割装置に与えて追加の分岐放射ビームを与えることも可能である。
[00324] 図9に示すタイプのリングミラーは、アパーチャの周りに充分な材料を与えて、放射ビームBが入射するミラー部分から熱を逃がすように作製すると好都合であり得る。
[00325] これに加えて、図9の機構は、放射ビームBの位置のばらつき又はビームBの強度分布のばらつきがあっても各分岐放射ビームB1〜B3の強度があまり変動しないようになっている。すなわち、リングミラー81、82の各々で、リング形状反射面のある部分で受光される放射の強度の低下は、このリング形状反射面の異なる部分で受光される放射の強度の上昇によって概ね補償される。従って、装置80が生成する分岐放射ビームB1、B2、B3の強度分布は、放射源SO内の1つ以上のFELの動作によって生じるメイン放射ビームBの位置ずれに対してほぼ変化しない。
[00326] これより、ミラーの反射面を複数グループの面に分けるための溝を備えたミラーによって分割装置が提供される実施形態について記載する。特定グループ内の各面は、他のグループ内の面とは異なる特定の向きを有する。一般に、ミラーの面はマイクロスケール又はマクロスケールであり得る。例えばミラーの面及び面間のピッチは、マイクロメータのオーダー(マイクロスケール)又はもっと大きいオーダー(マクロスケール、例えばミリメートルのオーダー)であり得る。いずれの場合でも、ミラーに入射した放射はミラーの各面から反射されて、複数の反射部分又は「サブビーム」を生じる。
[00327] また、双方の場合において、面から反射される放射は回折される。すなわち、ミラーの面との相互作用によってサブビームの各々は広がる(発散する)。サブビームの発散量は面のサイズ及びピッチに依存し、マイクロスケールのミラーの方がサブビームの発散は大きい。マイクロスケールのミラー及びマクロスケールのミラーの双方を本明細書では格子と呼ぶ。マイクロスケール及びマクロスケールの双方の格子では、格子が複数の反射面を備えるので、格子は複数の静的ミラーを与えると見なすことができる。
[00328] 以下で更に詳しく述べるように、マイクロスケールの格子及びマクロスケールの格子は双方とも、単一の入射放射ビームから複数の分岐放射ビームを与える分割装置として使用可能である。しかしながら、それぞれの場合で分割を行う方法は異なることがある。マクロスケールの格子では、サブビームを異なる方向に反射させることが、入射放射ビームを複数の分岐放射ビームに分割する中心的なプロセスであり得る(例えば、各反射方向で異なる分岐ビームを与えることができる)。マクロスケールの格子からサブビームを回折させることは、遠距離場で(例えばイルミネータの入口で)同一方向に進むサブビーム間の小さい重複を引き起こすには充分であり得る。この重複は、各分岐放射ビームの強度プロファイルを平滑化させることができる。
[00329] 回折がもっと大きいマイクロスケールの格子では、多数の面からのサブビームは著しく重複し、遠距離場で干渉パターンを生じる。干渉パターン内の各最大値が各分岐放射ビームを与えることができる。例えば、0次、1次、及び−1次のビームの回折を生じる格子を用いて3つの分岐放射ビームを与えることができる。
[00330] 図10を参照すると、メイン放射ビームBの経路にミラー90が設けられている。図10Aはミラー90の側面図を示し、図10Bは上面図を示し、図10Cはミラー90の断面を示す。しかしながら、図10の図は概略的なものに過ぎないことは理解されよう。
[00331] ミラー90はかすめ入射ミラーとすればよい。ミラー90は反射面91を備えている。規則的に離間した複数の溝92が、反射面91を横切るように放射ビームBの伝搬方向とほぼ垂直な方向に延出して、格子を提供する。溝92は、例えばエッチング、スタンピング、又は電鋳等のいずれかの適切なプロセスによって形成すればよい。溝92は反射面91を複数グループの反射面に分ける。各グループ内の面はほぼ平行であるが、他の各グループの面に対して異なる角度である。従って、各グループの面は放射ビームBの部分を各方向に反射するように作用する。このように、各面は各静的ミラーであると見なすことができ、複数の面は複数の静的ミラーを提供する。
[00332] 図10cを参照すると、図10Bの線A−Aに沿った断面でミラー90が示されている。この例示的な配置では、ミラー90の溝92は、3つのグループの面のうち少なくとも2つで放射ビームBに対して実質的なかすめ入射角を与えるような非対称形であることがわかる。すなわち、断面で見た場合、各溝92の右側面は各溝92の左側面とは異なる長さ及び向きである。
[00333] 溝92は複数のリッジ95を形成し、反射面91を3つのグループの反射面に分ける。各リッジ95の上面は第1グループの面S1を形成し、各リッジ95の左側面は第2グループの面S2を形成し、各リッジ95の右側面は第3グループの面S3を形成する。ミラー90は各グループ内にいずれかの適切な数の反射面を含むことができ、1つの例示的な実施形態では各グループ内に1000のオーダーの反射面を備え得る。
[00334] 巨視的な溝の場合、第1グループS1の面に入射する放射ビームBの各部分は第1の方向に送出され、第2グループS2の面に入射する放射ビームBの各部分は第2の方向に送出され、第3グループS3の面に入射する放射ビームBの各部分は第3の方向に送出される。顕微鏡的な溝の場合、全てのグループS1、S2、S3の面上、又は全てのグループS1、S2、S3の面間のエッジ上での放射ビームBの回折がいくつかの分岐を生成する。これは例えば、分岐間でほぼ均一なパワー分布を有する2つ又は3つの分岐であり得る。
[00335] 図10Aを参照すると、部分P1、P4は第1グループS1の面から反射され、部分P3は第2グループS2の面から反射され、部分P2、P5は第3グループS3の面から反射されると見なすことができる。しかしながら、分岐放射ビームの部分の図示は概略的なものに過ぎないことは認められよう。上述のように、分岐放射ビームを生成する反射部分P1〜P5間の相互作用は格子のスケールによって異なる。格子90がマクロスケールの格子である場合、単一グループの面からの放射のみが各分岐放射ビームに寄与する。このため、マクロスケールの格子では、部分P1及びP4は(S1面から反射した他のサブビームと共に)1つの分岐放射ビームを形成し、部分P3は(S2面から反射した他のサブビームと共に)第2の分岐放射ビームを形成し、部分P2及びP5は(S3面から反射した他のサブビームと共に)第3の分岐放射ビームを形成する。
[00336] 格子がマイクロスケールの格子である場合、格子90から反射される放射の全てのサブビームの回折によって複数の分岐放射ビームが発生するので、異なるグループの面から反射されるサブビームが最終的な干渉パターンに寄与し、従って各分岐放射ビームに寄与するようになっている。
[00337] 図10の例示的な実施形態では、溝92は放射ビームBの伝搬方向に概ね垂直に延出する。図11に示す代替的な実施形態では、放射ビームBの伝搬方向に概ね平行に延出して3つのグループの反射面の格子を与える溝101を有するミラー100が提供される。各グループの面は放射ビームBの部分を異なる各方向に反射する。
[00338] 図11Aはミラー100を上面図で概略的に示し、図11Bは図11Aに示す線A−Aに沿ったミラー100の断面を概略的に示す。図11Bを参照すると、溝101が複数の並列なリッジ102を形成することがわかる。各リッジ102の上面は第1グループの面S1を形成し、各リッジ102の左側面は第2グループの面S2を形成し、各リッジ102の右側面は第3グループの面S3を形成する。ミラー100は各グループ内にいずれかの適切な数の反射面を含むことができ、1つの例示的な実施形態では各グループ内に1000のオーダーの反射面を備え得る。
[00339] 上述のように、マクロスケールの格子では、各分岐放射ビームは複数のサブビームを含み、各サブビームは単一グループ内の異なる面から反射された放射ビームBの部分を含む。所与のグループの面内の各面は実質的に平行であるので、各サブビームは、少なくともミラー90、100の近接場において実質的に平行である。このため、近接場(ミラー90、100上又はその極めて近傍)では、各分岐放射ビームのパワー分布の形状は放射ビームBのものと同様である。ただし異なるのは、各分岐放射ビームのパワー分布全体に、他グループの面の位置に対応した複数の帯状部分があり、ここではパワーが実質的にゼロであることである。
[00340] これを、放射ビームBの強度分布103を示す図12Aに図示する。近接場(すなわちミラー90、100上又はその極めて近傍)における分岐放射ビームB1の強度分布は、強度分布103の複数の陰影付きサブセクションによって示されている。すなわち、強度分布103の陰影付きセクションの各々は、単一の面グループに属するミラー90、100の面に入射する放射ビームBの部分に対応する。例えば図12AでB1と表示された陰影付きサブセクションの各々は、ミラー90、100のS1面から反射された放射の各部分に対応し得る。陰影付きサブセクション間の間隙は、異なるグループの面に入射する放射ビームBの部分を表す。
[00341] 分岐放射ビームB1、B2、B3の非ゼロ発散(ある程度は回折により生じる)のため、各分岐放射ビームの複数のサブビームは遠距離場において重複し、結合されて、図12Bに示すような放射ビームBとほぼ同様の形状のパワー分布を形成する。遠距離場は、例えば図2に示すリソグラフィツールLA1のようなリソグラフィツールへの入口であり得る。分岐放射ビームの強度分布がほぼ均質となる距離は、特定のミラーに配置された特定の溝パターンに応じて変動することは認められよう。しかしながら、いくつかの実施形態では、遠距離場は例えばミラーから約50メートル離れている場合がある。
[00342] マイクロスケールの格子の場合、格子の面から反射されるサブビーム間の干渉の結果として、遠距離場において放射ビームBとほぼ同じ強度分布を有する分岐放射ビームが得られる。
[00343] ミラー90、100は、例えばシリコンウェーハの結晶面に沿った異方性エッチングによってシリコンから形成することができる。再び図11Bを参照し、ミラー100がシリコンから形成されていると仮定すると、例えば上面S1は(100)結晶面に沿って形成し、面S2、S3は(111)及び(−111)結晶面に沿って形成することができる。この場合、溝の底部の角度は約70.5度(又は約110度の補角)であり、溝101及びリッジ102は<01−1>方向に沿って延出する。入来放射ビームBの方向は、<01−1>方向に対して小さい(かすめ入射)角度に配置することができる。面上の<hkl>方向に応じて様々なレイアウトが可能であることは認められよう。
[00344] 上面S1が(100)結晶面に沿って形成され、面S2、S3が(111)及び(−111)結晶面に沿って形成されている格子は、3つの分岐放射ビームを形成する。これらの分岐放射ビームの強度比は、格子のピッチに対するS1面の幅の比に依存すると共に、ビームBの格子への入射角、及びビームBの入射面に対して溝が形成する角度に依存する(これは、ビームBに平行な溝では0度、ビームBに垂直な溝では90度、又は他のいずれかの角度であり得る)。パワーの等しい分岐放射ビームを提供することが望ましい場合がある。この場合は、ビームBの特定の入射角に格子を適合させように上記のパラメータを最適化すればよい。
[00345] 下の表1に、実現可能なマイクロ格子構成の追加の例を与え、各回折次数におけるエネルギ百分率を示す。
[00346] 表1において、結晶方位の欄は、格子の上面の結晶方位を示す(例えば図11BのグループS1の面)。1mm当たりのラインは、格子の1mm当たりの溝数を示す。第1の角度θ及び第2の角度φは、入来放射ビームに対する格子の方位を示す。角度θ及びφは図11Cに示されている。図11Cにおいて、格子100の上面はx−y面を画定し、溝101の各々はy方向に沿って延出する。ライン105は、x−z面上への入射放射ビームBの正射影を表す。角度φは正射影105とz軸との角度である。換言すると、入射放射ビームBはy軸と共に面106を画定する。角度φは、面106がz軸と形成する角度である。角度θは、入射放射ビームBとその正射影105との角度である。
[00347] 「デューティサイクル」欄は、「平坦」である(すなわち非エッチングの)格子の上面の百分率を示す。例えばデューティサイク欄における40%という値は、格子の表面の40%はエッチングされていないが上面の60%はエッチングされて溝が形成されていることを示す。
[00348] ミラー90、100に、より反射性の(吸収性の低い)材料のコーティングを設けてもよい(EUV放射のため)。例えばミラーに、ルテニウム(Ru)又はモリブデン(Mo)のコーティングを設けることができる。これは、例えば約50nmの厚さとすることができる。
[00349] ミラー(ミラー90、100、及び他の分割装置を参照して上述したミラー等)にシリコンを用いることの利点は、約123Kでの動作によって動作中の熱膨張を抑制し得ることである。この温度において、シリコンの熱伝導率は600W/m/K以上のオーダーであり、これは室温における熱伝導率の4倍であり、銅(Cu)の熱伝導率よりも約50%優れている。従って、ミラー90、100の膨張が小さくミラー90、100が設計上の構造寸法を維持する範囲内にミラー90、100の温度を保ちながら、比較的大きい熱負荷にも耐えることができる。
[00350] 有利な点として、図10及び図11を参照して説明したもの等のミラーを用いることで得られる分岐放射ビームは、ほぼ等しいパワーを有すると共に、分割前の放射ビームBの強度分布とほぼ同様の遠距離場での(例えばリソグラフィツールにおける)強度分布を有することができる。
[00351] 更に、ミラー90、100等の格子を用いた放射ビームBの分割は、最初に専用の拡大光学部品を用いて放射ビームBを拡大することも、最初に放射ビームBの強度分布をフラットトップ(flat−top)強度分布に形成することもなく実行可能である。一般に、そのような拡大/フラットトップ形成光学部品をFELの出口から相当な距離(例えば50メートル)に配置する必要があり、この場合はポインティング及び発散の不安定性に対して極めて耐性が低い。ポインティング及び発散の不安定性のために、放射ビームBは拡大/フラットトップ形成光学部品に対して位置がずれて、拡大したビームの歪みを生じる可能性がある。分割前の放射ビームBのこのような歪みは、各分岐放射ビーム内のパワーのばらつきを引き起こし、このため、例えば各リソグラフィ装置又はマスク検査ツールに与えられるパワーのばらつきを引き起こす恐れがある。
[00352] 更に、フラットトップ形成光学部品からフラットトップ強度分布を一貫して達成することが難しい場合がある。放射ビームBのパワー分布は概ねガウス分布であり得るが、パワー分布は厳密にはガウス分布でなく、動作中に変動し得るFELのパラメータ及び設定値の結果として大幅に変動する可能性がある。また、放射ビームBの軌道の角度(ビームポインティング)が時間と共に変動して、フラットトップ形成光学部品により発生されるフラットトップ強度プロファイルの著しい逸脱を招くことがある。
[00353] 拡大光学部品を用いてビームを拡大する(所望の場合)前に、放射ビームBのずれに対して変化しない分割格子を設けることによって、分割前の放射ビームの拡大又はフラットトップ強度分布を与えるための強度分布の調節に伴う不利点を回避することができる。実際、上述のように、本明細書に記載した種類の格子を用いて放射ビームBを分割するプロセスでは、ビームBの大きさを変えたコピーを得ることができ、ポインティングエラー及び放射ビームBの強度プロファイル形状の影響を受けない。
[00354] 格子(又は、複数の場合は格子の1つ以上)は、ビーム拡大及び/又はフラットトップ形成光学部品の前(上流)に位置決めすることができるが、格子(又は1つ以上の格子)を1つ以上の平面鏡の後(下流)に位置決めすることも可能である。1つ以上の平面鏡による放射ビームBの反射を用いて、格子を制動放射から保護することができると共に、曲面鏡による反射の結果として生じ得るビームの角度又は位置のばらつきの増幅を回避することが可能となる。
[00355] ミラー90、100の各々は放射ビームを3つの分岐放射ビームに分割するための格子を提供するが、放射ビームを異なる数の分岐放射ビームに分割する格子も提供可能であることは認められよう。一般に、放射ビームを2つ以上の分岐放射ビームに分割する格子を提供することができる。
[00356] 上述のように、ミラー90、100をかすめ入射角に配置することが望ましい場合がある。しかしながらいくつかの実施形態において、図11に示すもの等の構成は使用可能な入射角を制限することがある。具体的には、ミラー100に対する放射ビームBのいくつかの入射角において、面S3又はS4から反射される放射部分は少なくとも部分的に、隣接リッジの対向するS2面又はS3面に入射し得る。従って、いくつかの入射角では、放射ビームBを所望の数の分岐放射ビームに精度高く分割することが難しい場合がある。
[00357] 図13は、代替的な実施形態の、反射格子を提供するミラー110を示す。ミラー100と同様に、ミラー110は複数のリッジ111を備え、リッジ111は3つのグループの面フィーチャを与える。すなわち、第1グループの面フィーチャS1、第2グループの面フィーチャS2、及び第3グループの面フィーチャS3である。しかしながら図13の実施形態では、各リッジのS2面は、各面の最も近い点における距離fだけ隣接リッジのS3面から離れている。距離fは、S2面又はS3面から反射された放射が次に隣接リッジのS2面又はS3面に入射しないことを保証するように選択することができる。
[00358] ミラー110を作製するには、例えばシリコンの上層をエッチングしてリッジ111を設けるために用いられるエッチングプロセスに対してエッチ耐性のある材料のベース部112を設ければよい。例えば、ベース部は二酸化シリコン(SiO2)又は窒化シリコン(Si3N4)から作製することができる。このためリッジ111間に任意の距離fが与えられることは認められよう。
[00359] 再反射を防ぐための代替的な実施形態では、例えばシリコン格子の(110)面及び(111)面に沿ったエッチングによってリッジを形成することができる。
[00360] 上述のことから、反射格子を提供するミラーを複数の適切な方法のいずれかで製造可能であることは明らかである。一実施形態では、概ね原子的に平坦な表面を有するリッジを設けるため、複数のエッチャントを用いてシリコンウェーハを処理することによって格子を生成することができる。例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及びフッ化アンモニウム(NH4F)等のエッチャントを使用可能である。
[00361] エッチングしたミラー上にコーティングを堆積して、かすめ入射反射を増大させると共に、所望の波長を有する放射(例えばEUV放射)の吸収を低減することができる。例えば、13.5nmの波長を有する放射に対して高いかすめ入射反射率を有するモリブデン(Mo)又はルテニウム(Ru)を使用可能である。他の放射波長では他のコーティングを選択すればよい。しかしながら一般的には、電子密度が充分に高い透過性材料によって良好なかすめ入射反射が達成される。重元素金属はそのような材料の例である。更に、EUV放射誘導プラズマの発生等、ビーム分割装置内に存在し得る条件への耐性を得るように材料を選択することも可能である。
[00362] いくつかの実施形態では、Mo及びRuの混合物等のアモルファス金属(又は金属ガラス)をエッチング層に堆積して反射コーティングを設けることができる。金属ガラスのアモルファス構造を用いると、所望の波長に対して高い反射率を有する平滑な表面を与えることができる。
[00363] ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、ニッケル(Nt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等の他のいずれかの適切な材料も使用可能であることは認められよう。エッチング表面の異なる部分に異なるコーティング材料又は組成を塗布することができる。例えば図11及び図13を参照すると、S1、S2、及びS3面に異なるコーティングを塗布することができる。エッチング表面の異なる部分に異なるコーティングを塗布することで、予想される面の熱膨張を補償することができる。
[00364] 反射コーティングを設ける場合、この反射コーティングに更に別のコーティングを塗布してもよい。例えば、存在し得る条件に対する反射コーティングの安定性及び耐性を増大させるために、酸化物、窒化物、炭化物等を塗布することができる。
[00365] 反射コーティングを設ける場合、エッチングした材料(例えばSi)と反射コーティングとの間に1つ以上のインタフェース層を設けることで、表面の粗さを低減すると共に熱伝導率を上昇させることができる。例えばグラフェンのインタフェース層を設けることができる。
[00366] 図10から図13には示していないが、ミラーの反対側(すなわち放射ビームBを受光しない側)に冷却チャネルを設けることも可能である。そのような冷却チャネルは、水等の液体冷却剤又は2相の液体/気体冷却剤を受容するように配置することができる。また、熱伝導を増大させるため、冷却チャネルの1つ以上に例えばグラフェン等のコーティングを塗布してもよい。
[00367] エッチング表面がシリコンであり得ることを述べたが、他の材料も使用可能であることは理解されよう。異方性エッチングを行って格子を提供することができる他の材料の例には、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、シリコン−ゲルマニウム(SiGe)、リン化インジウム(InP)、及びヒ化インジウム(InAs)が含まれる。しかしながら一般的には、適切な材料であればいずれも使用可能である。
[00368] 上述のように適切な格子を製造することができる。次いで、例えば金属ガラスにおける熱可塑性成形等のプロセスを用いて又はスタンピングによって格子をコピーすればよい。
[00369] 上述した放射ビームを分割するための機構の1つ以上を、放射ビームを分割するための他の機構と組み合わせて用いることも可能である。例えば一実施形態では、放射源から与えられた放射ビームBを、図10から図13を参照して説明した種類の格子を与えるミラーを用いて、最初に例えば3つの分岐放射ビームに分割することができる。3つの分岐放射ビームの各々を、図7を参照して説明したもの等の各エッジ形成ミラーに与えて、各分岐放射ビームを2つの別の分岐放射ビームに分割し、これによって6つの分岐放射ビームを与えることができる。6つの分岐放射ビームを、リソグラフィ装置、マスク検査装置、又は他のもの等の各ツールに送出することができる。より一般的に言えば、所望の数の分岐放射ビームを与えるために、本明細書で説明したようなビーム分割装置のいずれかの機構及び組み合わせを用いて、放射源SOにより与えられた放射ビームを分割することができる。
[00370] 一般的に、提供することができる格子では、溝は放射ビームBに対していかなる角度にも配置されることは認められよう。更に、上述の例が示す格子では、各溝は隣接する各溝を平行移動させたコピーであるが、他の溝構造も提供可能である。例えば図14に代替的な溝構造を断面で示す。図14に示す双方の例において、各溝は隣接する溝とは異なるが、この場合も周期的である。更に、溝構造が周期的でなく、溝の繰り返しパターンが存在しない場合もある。一般に、図14に示すもの等の構造を用いると、例えば4つ以上の分岐放射ビームを与えること、又は吸収を調節して格子の熱膨張を補償することが可能となる。例えば、放射ビームBは概ね放射状の強度プロファイルを有する(中央部分の強度が高く、外側部分の強度が低い)ので、ミラーが反射面全体で一定の吸収係数を有する場合、放射ビームBからのエネルギ放散は放射ビーム内の位置に依存し得る。このため、ミラーの異なる部分の温度は、それらに放射ビームBのどの部分が入射するかに応じて異なる量だけ上昇するので、ミラー全体では熱膨張のばらつきが生じる。
[00371] 熱膨張を補償するため、ミラーの外側エッジに吸収材料を設けることで、ミラーに沿った温度勾配を低減させ、更にミラーから反射される分岐放射ビームにおける勾配を低減させることができ、これは像形成の目的のために有益であり得る。例えば特定のミラーの幾何学的形状では、強度プロファイルが例えば2〜3シグマで「クリッピングされた(切り取られた)(clipped)」放射ビームが得られることがある。この場合、反射された放射ビームでは「パワーあり」と「パワーなし」との間にシャープな遷移がある。ミラーの外側エッジに吸収材料を設けることで、そのような遷移を平滑化することができる。
[00372] 図15は、メイン放射ビームBを複数の分岐放射ビームに分割するのに適した別の実施形態のビーム分割装置200を概略的に示す。
[00373] ビーム分割装置200は、放射源SOからメイン放射ビームBを受光し、複数の放射ビームB1〜B8を出力するように構成されている。ビーム分割装置200は8つの抽出光学部品201〜208を備えている(明確さのため、図15にはその中の抽出光学部品201、202、及び208のみを図示する)。メイン放射ビームBを20の分岐放射ビームに分割することを示した図1を参照すると、ビーム分割装置200がこれより多いか又は少ない抽出光学部品を備え得ること、及びビーム分割装置200がビーム分割装置20の一部であり得ることは認められよう。
[00374] 各抽出光学部品201〜208は、部分的にメイン放射ビームBの軌道210を横切るように延在しており、メイン放射ビームBの一部を反射して、これを関連付けられた分岐光路211〜218に沿って送出することで、分岐放射ビームB1〜B20を形成するように構成されている。
[00375] 各抽出光学部品201〜208は複数の部分を含む。具体的には、図示する例では、これらの部分は複数のミラーの形態をとる。以下で、図16a、図16b、及び図17を参照して、1つの抽出光学部品201について更に詳しく説明する。
[00376] 抽出光学部品201は6つのミラー201a〜201fを備えている。各ミラー201a〜201fはくさび形状かすめ入射ミラーであり、メイン放射ビームBの一部を反射するように配置された反射面が設けられている。各ミラー201a〜201fの反射面が、メイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上に投影されて、方形エリア211a〜211f(図17)を形成する。ミラー201a〜201fの各々により反射されたメイン放射ビームBの部分をサブビーム221a〜221fと称することがある。従って抽出光学部品201は、メイン放射ビームBの断面に分布する複数の別々の均質な方形エリア(エリア211a〜211fに対応する)を反射するように配置されている。
[00377] メイン放射ビームBのエッジは、図16a、図16bでは2つの平行な矢印Eによって、図17では円Eによって表されている。この状況で用いる場合、メイン放射ビームBのエッジは、強度が予め設定された閾値未満に低下するポイントとして規定することができる。予め設定された閾値は、例えば最大強度の一定の割合とすればよい。図17は、メイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上への抽出光学部品201の投影を示す。
[00378] 図16aは、図17のラインD−Dに沿ったメイン放射ビームBの側断面図である。従って、図16aにはミラー201a〜201cのみが示されている。図16bは、図17のラインF−Fに沿ったメイン放射ビームBの側断面図である。従って、図16bにはミラー201d〜201fのみが示されている。
[00379] 各ミラー201a〜201fに、例えば水又は二酸化炭素(CO2)等の冷却流体の供給のような能動冷却機構(図示せず)を設けることができる。ミラー201a〜201fは、例えば銅のように良好な熱の伝導体である材料から形成し、例えばルテニウム(Ru)等の反射率を最大化すると共に吸収を最小限に抑えるコーティングを有することができる。
[00380] 一般に、各ミラー201a〜201fの表面は、メイン放射ビームBの軌道210に対して異なる角度に傾斜させることができる。各ミラー201a〜201fの表面は、メイン放射ビームBの軌道210に対して約10度の角度に傾斜させてもよい。
[00381] ビーム分割装置200は更に、抽出光学部品201〜208の各々に関連付けた1つ以上の分岐ミラーを備えている。具体的には、ビーム分割装置は、抽出光学部品201に関連付けた第1の分岐ミラー231aを備えている。抽出されたサブビーム221a〜221fは第1の分岐ミラー231aに入射する。複数のミラー201a〜201f及び/又は第1の分岐ミラー231aの向きは、第1の分岐ミラー231aからの反射後に、抽出されたサブビーム221a〜221fが結合されて単一の複合分岐放射ビームBaを形成するようなものである。
[00382] この実施形態では、第1の抽出ミラー231aはマルチファセットミラーであり、6つのファセット(図示せず)を備え、各ファセットが平面鏡である。複数のミラー201a〜201fの各々により反射されたメイン放射ビームBの部分は、第1の抽出ミラー231aの異なるファセットに入射する。ファセットは、抽出されたサブビーム221a〜221fの異なる経路を考慮に入れた異なる角度に配置されて、第1の分岐ミラー231aからの反射後に、抽出されたサブビーム221a〜221fが全てほぼ同じ方向に伝搬して単一の複合分岐放射ビームB1を形成することを保証する。
[00383] 代替的な実施形態では、第1の抽出ミラー231aはマルチファセットミラーではない。第1の分岐ミラー231aからの反射後に、抽出されたサブビーム221a〜221fが単一の複合分岐放射ビームB1を形成することを保証するため、複数のミラー201a〜201fをメイン放射ビームBの伝搬方向に沿った異なる位置に配置することができる。複数のミラー201a〜201fの位置及び角度は、抽出されたサブビーム221a〜221fが全てほぼ同じ方向に伝搬するように構成される。例えば図16aを参照すると、そのような実施形態では、ミラー201aはミラー201bに対して右側に変位させ、ミラー201cはミラー201bに対して左側に変位させることができる。これらの変位を適切に選択することで、これらのミラー201a〜201cからの抽出されたサブビーム221a〜221fはほぼ同じ方向に伝搬することができる。
[00384] 一実施形態では、図19に示すように、複数のミラー201a〜201fの向きは、抽出されたサブビーム221a〜221fが複合分岐放射ビームB1内で隣接するようになっている。好ましくは、複数のミラー201a〜201fの向きは、抽出されたサブビーム221a〜221fがほぼ重複せずに各隣接サブビーム221a〜221f間の間隙240が最小限となるように選択される。そのような実施形態では、各分岐放射ビームB1〜B20を更に調節するためにリップルプレート(図示せず)を設けることができる。リップルプレートは、概ね平坦な反射面を備え、平均垂線方向を有し、この平均垂線方向に対してランダムな局所変動がある。これは、分岐放射ビームB1〜B20の強度分布を平滑化するように作用し、抽出されたサブビーム221a〜221f間の重複又は間隙240の影響を低減する。サブビーム221a〜221f間の重複及び/又は間隙240の大きさは、例えば複合分岐放射ビームBaの大きさの1%未満とすることができる。これに加えて又はこの代わりに、サブビーム221a〜221f間の重複及び/又は間隙240の大きさは、リップッルプレートの不鮮明化効果(smearing effect)と同じオーダーか又はそれより小さくすることができる。リップルプレートの不鮮明化効果は、例えば約1mm未満、又は約10μm未満であり得る。
[00385] あるいは、別の実施形態では、複数のミラー201a〜201fの向きは、抽出されたサブビーム221a〜221fが複合分岐放射ビームB1内でほぼ完全に重複するようになっている。このため、複合分岐放射ビームB1はエリア211a〜211fとほぼ同様の大きさのエリアを備えている。
[00386] 各分岐光路211〜218は、分岐放射ビームB1〜B8がその対応するリソグラフィ装置LA1〜LA8の照明システムIL内に入る前に、これらの光路に沿って伝搬する分岐放射ビームB1〜B8の強度を調整するための機構(図示せず)を備えることができる。分岐放射ビームB1〜B8の強度を調整するための機構は粗調整機構及び微調整機構を含み得る。粗調整機構は10倍までの強度調整を行うように動作可能であり、微調整機構は約10%の強度調整を行うように動作可能であり得る。
[00387] 分岐放射ビームB1〜B8は、所望の方向又は必要な方向のようないずれかの方向に伝搬することができる。各分岐放射ビームB1〜B8の方向は、関連付けられた抽出光学部品201〜208及び分岐ミラーの向きに依存する。図16a及び図16bには1つのみの分岐ミラー231aを示す。しかしながら、複数の分岐ミラーを設けることも可能である。一実施形態では、分岐放射ビームB1〜B8はメイン放射ビームBにほぼ垂直な方向に伝搬する。例えば、放射源SOが生成するメイン放射ビームBはほぼ水平方向に伝搬し、分岐放射ビームB1〜B8はほぼ垂直方向に伝搬することができる。そのような機構によって、リソグラフィシステムLS内の複数のリソグラフィ装置LA1〜LA8を異なる垂直位置に配置することが可能となる。例えば、リソグラフィシステムLS内の複数のリソグラフィ装置LA1〜LA8は、同一建造物の異なるフロア上にある場合がある。分岐放射ビームB1〜B8の伝送及び偏光は、メイン放射ビームBからの放射を90度回転させるために用いられるミラーの数に依存する。用いるミラー数が多くなればなるほど、放射と各ミラー表面との間の角度が小さくなり得る。放射ビームとこれが入射するミラー表面との間の角度が小さくなると、伝送は増大し、放射ビームの偏光に対する反射の影響は低減する。従って、メインビームBからの放射を90度回転させるために用いられるミラーの数が多くなればなるほど、伝送は増大し、放射ビームの偏光に対するミラーの影響は小さくなる。しかしながら、各追加ミラーによってリソグラフィシステムLSのコスト及び複雑さは増大する。一実施形態では、各分岐光路211〜218は、例えば2つから8つの分岐ミラーを備え得る。
[00388] ミラー201a〜201fの各々が受光するパワーPは、以下によって与えられる。
ここで、IB(y,z)はメイン放射ビームBの強度プロファイルであり、面積分が実行されるエリアAは、そのミラーの反射面をメイン放射ビームBの伝搬に垂直な面(図16a、図16b、及び図17のy−z面)上に投影することによって形成される方形エリア211a〜211fである。
[00389] ミラー201a〜201fはほぼ静的であり得る。しかしながら、メイン放射ビームBがその伝搬に垂直な面(図16a、図16b、及び図17のy−z面)内で動くと、複数のミラー201a〜201fの各々が受光するパワーは次のいずれかの場合に変化する。すなわち、(a)強度分布IB(y,z)が不均一である場合、又は(b)メイン放射ビームBが動いたのでミラー201a〜201fの1つ以上の反射面全体を照明しなくなった場合である。y−z面内でメイン放射ビームBが動くと、図17の円Eは方形エリア211a〜211fに対して移動する。例えば、y−z面内のメイン放射ビームBの位置が矢印Aで示す方向にずれると、円Eは円E’へと位置がずれ、メイン放射ビームBの中心B*はB*’へとずれる。
[00390] メイン放射ビームBの強度プロファイルはガウス分布に近く、図17の円Eはガウス分布強度プロファイルの3シグマ幅を示すことができる。そのような実施形態では、y−z面内でメイン放射ビームBがずれると、複数のミラー201a〜201fの各々が受け取るパワーが変化する。複数のミラー201a〜201fのいくつかが受け取るパワーは大きくなり、複数のミラー201a〜201fのいくつかが受け取るパワーは小さくなる。従って、ミラー201a〜201fのいくつかが受け取るパワーの増大は、他のミラーが受け取るパワーの低減を少なくとも部分的に相殺する。有利な点として、そのような機構により生成される放射ビームB1〜B8は、例えば各抽出光学部品が単一の矩形ミラーを含む機構に比べて、放射源SOが生成したメイン放射ビームBのポインティングのばらつきによる影響を受けにくい。
[00391] 方形エリア211a〜211fは、メイン放射ビームBの断面全体に分布させることで、メイン放射ビームBが動いた場合にミラー201a〜201fのいくつかが受け取るパワーの増大と他のミラーが受け取るパワーの低減との間の相殺を最大化する。すなわち、方形エリア211a〜211fの分布は、メイン放射ビームBのポインティングのばらつきに対する分岐放射ビームB1〜B8のパワーの感度を最小限に抑えるように選択される。これを達成するため、メイン放射ビームBの強度プロファイルはガウス分に近いので、方形エリア211a〜211fはメイン放射ビームBの中心B*の周りに概ね均一に分散させる。そのような配置では、メイン放射ビームBの伝搬に垂直な面内でその位置が変化すると、メイン放射ビームBのy−z面内での動きの方向とは無関係に、ミラー201a〜201fの少なくとも第1のものが受け取るパワーは増大し、複数のミラー201a〜201fの少なくとも第2のものが受け取るパワーは低減する。
[00392] 抽出光学部品201におけるミラー数を増やすことによって、メイン放射ビームBの中心B*の周りに方形エリア211a〜211fをいっそう均一に分散させることが可能となる。これによって相殺が更に良好に行われ、従っていっそう安定した分岐放射ビームB1が得られる。しかしながら、これはビーム分割装置200のコスト及び複雑さを増大させる。
[00393] 他の抽出光学部品202〜208は、上述の抽出光学部品201とほぼ同じであり得るが、そのミラーの反射面をメイン放射ビームBの伝搬に垂直な面上に投影することで形成されるエリアの空間分布が異なる場合がある。
[00394] 例えば、第2の抽出光学部品202も6つのくさび形状かすめ入射ミラーを備えることができる。第2の抽出光学部品202の6つのミラーの各々の反射面をメイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上に投影すると、各方形エリア251a〜251fが構成される。図18は、メイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上での方形エリア251a〜251fの分布を示す。図18には、第1の抽出光学部品201のミラー201a〜201fの反射面の投影を表す方形エリア211a〜211fも黒で示して、メイン放射ビームBのこれらの部分がすでに第1の抽出光学部品201により抽出されていることを表している。
[00395] 各抽出光学部品201〜208におけるミラーは実質的に同一のものとすることができ、これはミラーを製造するために特に有利である。複数の抽出光学部品201〜208における複数のミラーの形状及び位置決めは、メイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上へのそれらの投影がメイン放射ビームBの断面エリアとほぼ一致し、重複がなく間隙が最小限となるようにすればよい。
[00396] 上述の実施形態では、各抽出光学部品201〜208は複数のミラーを備え、各ミラーは抽出光学部品201〜208の一部を形成する。しかしながら代替的な実施形態では、各抽出光学部品は複数の異なる部分を含む単一のミラーを備え、それらの部分は、メイン放射ビームの伝搬方向に垂直な面内でのその位置が変化した場合に複数の部分の少なくとも第1のものが受け取るパワーが増大すると共に複数の部分の少なくとも第2のものが受け取るパワーが低減するような形状とすればよい。例えば各抽出光学部品は、メイン放射ビームBと同軸の概ね環状のミラーを備え得る。
[00397] 上述の実施形態では、ガウス分布に近い強度プロファイルを有するメイン放射ビームBの特定の例について検討した。しかしながら本発明の実施形態は、異なる強度プロファイルを有するメイン放射ビームBと共に用いるように適合することができる。強度分布がその中心について回転対称である(すなわち単に中心からの距離の関数である)場合、各抽出光学部品201〜208の複数の部分をその中心の周りに均一に配置することができる。強度分布がその中心に対して回転対称でない場合、各抽出光学部品201〜208の複数の部分の異なる分布を用いることができる。
[00398] 上述の実施形態では、各抽出光学部品201〜208は6つのミラーを備えている。しかしながら、この代わりに他の数のミラーも使用可能である。異なる抽出光学部品201〜208に異なる数のミラーを設けてもよい。
[00399] 好ましくは、メイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上への全てのミラーの投影は、メイン放射ビームBの断面エリアとほぼ一致し、重複がなく間隙が最小限である。上述の実施形態において、これは、メイン放射ビームBの伝搬方向に垂直な面上への投影が方形エリアとなるような形状及び向きのミラーを用いることで達成される。しかしながら他の実施形態では、これらのエリアが異なる形状を有してもよい。例えばミラーは、エリアが三角形、矩形、又は六角形となるような形状であり得る。
[00400] 正常動作中に動かない1つ以上の静的ミラーを備えたビーム分割装置によってメイン放射ビームBを分割可能であることを上述した。すなわち上述の実施形態では、メイン放射ビームBの分割はビーム分割装置のミラーの動きによって達成されるのではない。次に、他の手段によって分割を達成する実施形態について説明する。
[00401] 図20及び図21を参照すると、ビーム分割装置300が示されている。このビーム分割装置は、図1に示すビーム分割光学部品35とすることができ、又はその一部を形成することができる。
[00402] ビーム分割装置300は、概ねディスク形状の本体301と、前記本体301を回転軸302を中心に回転させるように動作可能な機構(図示せず)と、を備えている。例えばディスク形状の本体301は、回転軸302に沿って延在するシャフトを備え得る。シャフトは、例えば2つの軸受のような1つ以上の軸受によって支持することができる。軸受は、例えば転がり軸受又は空気静圧軸受のような受動軸受とすればよい。あるいは、軸受は例えば磁気軸受のような能動軸受とすることも可能である。シャフトは、モータ又はエンジンのようないずれかの適切な機構により回転駆動することができる。
[00403] 回転軸302に沿った又は回転軸302に平行な方向を、軸方向と呼ぶことができる。回転軸302に対して又は回転軸302から延出し、前記回転軸302に垂直な方向を、半径方向と呼ぶことができる。
[00404] ビーム分割装置300は更に、複数の半径方向に延出するスポーク303を備えている。スポーク303の各々は、2つの半径方向に延出する側壁304と、軸方向に面する上面305と、半径方向に面する端壁306とを備えている。従って、各スポークの上面305の形状は環状の扇形である。各スポークの上面305は反射性材料から形成されている。スポーク303は各間隙307によって相互に分離している。このため、複数のスポーク303の軸方向に面する上面305は複数の個別反射要素を形成する。各スポーク303は大きさ及び形状がほぼ同じであり、各間隙307は大きさ及び形状がほぼ同じである。従って、複数のスポーク303の軸方向に面する上面305は、個別反射要素の周期的なアレイを形成する。半径方向の所与のポイントにおける周期的なアレイのピッチは、1つの軸方向に面する上面305及び1つの間隙307の角度範囲によって与えられる。
[00405] ビーム分割装置300は、放射ビームBinを受光するように配置されたビームスポット領域308を備えている。ビームスポット領域308は、本体301の軸方向に面する表面上に配置され、この表面はスポーク303の軸方向上面305から形成されている。
[00406] 放射ビームBinは自由電子レーザFELによって生成することができる。例えば放射ビームBinは、メイン放射ビームBであるか又は分岐放射ビームであり得る。自由電子レーザのアンジュレータにより出力される放射ビームは、例えば約100μmの直径と約100マイクロラジアンの発散を有し得る。更に、自由電子レーザが約10のリソグラフィ装置に放射を与える場合、アンジュレータにより出力される放射ビームは数十キロワットのオーダーのパワーを有し得る。従って熱的な理由のために、ビーム分割装置300はアンジュレータ24から数十〜数百メートルのオーダーの距離だけ分離させることがある。例えばビーム分割装置300において、放射ビームBinは約5mmの直径を有し得る。この場合も熱的な理由のため、放射ビームBinは小さいかすめ入射角でビームスポット領域308に接近することができる。これによってビームスポット領域の広いエリアにパワーが広がり、更に、スポーク303の軸方向上面305の反射率を上げることができる。例えば、かすめ入射角は約1.4度とすればよい。この角度では、直径5mmの入来放射ビームBinは、長軸及び短軸が約210mm及び5mmである楕円形状のビームスポット領域308に広がる。
[00407] 図22を参照すると、入来放射ビームBinは本体301の軸方向に面する表面の一方側の上を通り、回転軸302の上を通り、ビームスポット領域308に接近する。放射ビームBinがビームスポット領域308に入射する際、その伝搬方向は概ね(局所的)半径方向(すなわち回転軸302に垂直)であり、軸方向(すなわち回転軸302に平行)の成分は小さい。この軸方向成分の大きさは、放射ビームBinのかすめ入射角によって決定される。
[00408] 本体301が回転軸302を中心に回転すると、(スポーク303の上面305によって形成される)複数の反射要素がビームスポット領域308を通過して移動するように、周期的なアレイが動く。放射ビームの第1の部分はスポーク303の上面305に入射し、これによって反射されて第1の分岐放射ビームB1を形成する。放射ビームの第2の部分は反射要素間の間隙307を通過して第2の分岐放射ビームB2を形成する。従って、ビーム分割装置300は入来放射ビームBinを、出射する第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2に分割することができる。本記載において、ビーム分割装置300は分岐放射ビームB1、B2を生成するものとして説明するが、これは例示に過ぎない。ビーム分割装置300を用いて、例えば分岐放射ビームB1〜B20の他のものを提供することも可能である。
[00409] 一般に、複数のスポーク303の上面305がビームスポット領域308を通過して移動すると、異なる時点で反射又は透過される入来放射の量が増大又は低減するので、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の強度は時間と共に変動する。強度のこの変動は周期的な振動である。反射要素がほぼ等しい反射性を有する場合、振動の周波数は周期的なアレイの速度及びピッチによって決定される。これは、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の各々が与える放射線量を時間と共に変動させる。この線量の変動は、整数の振動周期に等しい時間期間で平均化される。従って、所与の露光時間中に第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2が与える放射線量が一定のままであることを保証するためには、露光時間は整数の振動周期に等しくなければならない。実際、この基準を満たすことは可能でない場合がある。露光時間が整数の振動周期に等しくない場合、所与の露光時間中に第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2が与える放射線量は時間と共に周期的に変動する。露光時間中に生じる(非整数の)振動周期が増大すると、露光時間中に受け取る平均線量に対するこの線量変動の振幅の比が低下する。従って、所与の露光時間期間においていっそう安定した線量を達成できるように、振動周波数はできる限り高いことが望ましい場合がある。
[00410] 第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2を、図1に示すリソグラフィシステムLSのリソグラフィ装置LA1〜LA20の1つ以上に供給することができる。このような機構では、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の強度の振動周波数を充分に高くして、リソグラフィ装置LA1〜LA8の典型的な露光時間において安定した線量を達成可能であることが望ましい場合がある。この露光時間は1msのオーダーとすることができ、従って強度の振動周波数は1kHzより大きいことが望ましい場合がある。先に説明したように、強度の振動周波数を充分に高くして、露光時間中にいくつかの振動周期を発生させることが望ましい場合がある。例えば強度の振動周波数を約16kHz以上とし、結果として露光時間中に16以上の振動周期を生じるか、又は周波数を約30kHz以上とし、結果として露光時間中に30以上の振動周期を生じることができる。
[00411] 第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の強度の振動周波数は、本体301の回転周波数を、本体301上に配置された周期的なアレイの周期数(すなわち本体301上に配置されたスポーク303の数)で乗算することによって与えられる。例えば本体301上に300のスポーク303(及び300の間隙307)が配置され、本体301が160Hzの周波数で回転する場合、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の強度の振動周波数は16kHzである。
[00412] 周期的なアレイは複数の個別反射要素を含むので、スポーク303の各々を更に小型にして更に密接させることも可能である。これは周期的なアレイのピッチを縮小し、従って、周期的なアレイの所与の速度について第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の強度が振動する周波数が増大する。有利な点として、これによって、周期的なアレイの所与の速度において更に短い時間期間で安定した線量を達成することができる。あるいは、これによって、周期的なアレイの更に低い速度において同様の時間期間で安定した線量を達成することができる。
[00413] 反射要素がビームスポット領域を通過して移動する機構の利点は、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の相対強度(整数の振動周期での時間平均)が、少なくとも周期的なアレイの動きの方向において、入来放射ビームBinの方向及び位置の影響を比較的受けにくいことである。これは、静的ミラーを用いて2つ以上の分岐放射ビームを提供し、入来放射ビームBin及び静的ミラーの相対的な動きの結果として分岐放射ビームの相対強度が大幅に変化し得るビーム分割機構とは対照的である。このことは、入来放射ビームBinの直径が小さい場合に特に当てはまるが、これは一般に、上述のように約100μmの直径及び約100マイクロラジアンの発散を有し得る自由電子レーザが生成した放射ビームについて言えることである。
[00414] 複数のスポーク303及び間隙307は各々、ビーム分割装置300の本体301のエッジまで延出している。従って各間隙307は、1対の隣接スポーク303のそれぞれからの2つの半径方向に延出する側壁304と、軸方向に面する下面309と、半径方向に面する壁310と、から画定される。従って、上方(軸方向)から見た場合の各間隙307の形状は環状の扇形である。各間隙307はビーム分割装置300の本体301のエッジまで延出しているので、間隙307は一方側(半径方向外側)で開放している。入来放射ビームBinは、概ね半径増大方向にビームスポット領域308へ及びビームスポット領域308から伝搬する。例えば、ビームスポット領域308内の間隙307では、放射ビームBinは概ね半径方向に面する壁310から間隙307の開放側へと伝搬する。有利な点として、そのような機構では、許容可能かすめ入射角の範囲は本体301の厚さによって限定されない。
[00415] これは、例えば全ての側で閉じている本体301のアパーチャの形態の間隙のように、間隙307が本体301のエッジまで延出していない機構とは対照的である。このような機構では、許容可能かすめ入射角の範囲は、放射ビームの伝搬方向における間隙の大きさ及び本体の厚さの双方によって限定される。本体の厚さは、可能なかすめ入射角に下限を設定する。
[00416] 複数の間隙307の各々は本体301のエッジまで延出しているので、ビーム分割装置300では入来放射ビームBinがいっそう小さいかすめ入射角で接近することができる。これは、熱的な理由及び反射率の双方のために有益である。
[00417] スポーク303及び間隙307はほぼ同じサイズとすることができる。そのような機構では、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2はほぼ同じ強度を有する。あるいは、スポーク303及び間隙307は異なるサイズを有し得る。間隙307に対するスポーク303のサイズの比を変えることで、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の強度の比を変えることができる。
[00418] 周期的なアレイのピッチは、入来放射ビームBinの直径より小さいか、これと等しいか、又はこれより大きい場合がある。放射ビームのゼロでない部分が、スポーク303の半径方向に延出する側壁304に入射し、これによって反射される。入来放射ビームのこの部分は第1又は第2の放射分岐ビームB1、B2の一部を形成せず、従って失われる。ビーム分割装置300の本体301の半径が充分に大きくて個々のスポーク303が実質的に平行であるならば、このように失われる放射部分は小さい。
[00419] 図23及び図24に、スポーク303の半径方向に延出する側壁304からの反射によって生じる損失を解消するか又は少なくとも軽減するように構成されたビーム分割装置の2つの代替的な実施形態を示す。
[00420] 図23を参照すると、代替的なビーム分割装置350が示されている。ビーム分割装置350が図20から図22のビーム分割装置300と異なる点は、複数のスポーク353が半径増大方向で内側に向かって(すなわち回転軸352から離れる方向に)テーパ状を有することである。結果として、間隙357は半径増大方向で外側に向かってテーパ状である。従って、スポーク253の側壁354は純粋な半径方向に延出していない。他の全ての面で、ビーム分割装置350はビーム分割装置300と概ね同様とすることができる。スポーク253のテーパ化が充分な量であると、スポーク353の側壁354からの反射で失われる放射部分は無視できる量まで低減される可能性があり、例えばゼロとなり得る。
[00421] スポーク353のテーパ化は、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2の断面内に強度勾配を生じさせる。このような強度勾配がリソグラフィ装置LA1〜LA20の性能に及ぼす影響は、各リソグラフィ装置LA1〜LA20の照明システムIL内のファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11(図2を参照のこと)により実行される混合によって限定することができる。このような強度勾配がリソグラフィ装置LA1〜LA20の性能に及ぼす影響は、強度勾配の方向がリソグラフィ装置LA1〜LA20のスキャン方向である場合に最小となる。
[00422] 図24を参照すると、代替的なビーム分割装置400が示されている。ビーム分割装置400は、概ねディスク形状の本体401と、前記本体401を回転軸402を中心に回転させるように動作可能な機構(図示せず)と、を備えている。ビーム分割装置400が図20から図22のビーム分割装置300と異なる点は、複数のスポーク403が、スポーク403の軸方向に面する上面405から離れる軸方向で内側に向かってテーパ状であり、各スポークにアンダーカットを与えることである。従って、スポーク403の側壁404は純粋な半径方向に延出していない。他の全ての面において、ビーム分割装置400はビーム分割装置300と概ね同様とすることができる。テーパ化が充分な量であると、スポーク403の側壁からの反射で失われる放射部分は無視できる量まで低減することができる。
[00423] 有利な点として、ビーム分割装置300と比べて、ビーム分割装置400は、分岐放射ビームB1、B2に強度勾配を生じることなく、スポーク403の側壁からの反射により生じ得る損失を解消するか又は少なくとも軽減する。
[00424] 図25及び図26に、別の実施形態のビーム分割装置500を示す。ビーム分割装置500は更に、各間隙507によって相互に分離された複数のスポーク503を備えている。ビーム分割装置500が図20から図22のビーム分割装置300と異なる点は、複数のスポーク503の各々は概ね半径方向に延出している(すなわちそれらは半径方向内側及び半径方向外側のポイント間に延出している)が、純粋な半径方向には延出していないことである。複数のスポーク503の各々の側壁は、半径方向に対して斜角510の方向に延出している。各スポーク503の上面505の形状は概ね矩形であり得る。あるいは、各スポーク503の上面505は半径増大方向で外側に向かってテーパ状とすることも可能である。
[00425] 他の全ての面で、ビーム分割装置500はビーム分割装置300と概ね同様とすることができる。
[00426] 図25及び図26の実施形態において、入来放射ビームBinはビームスポット領域508に接近する際に回転軸502を通過しない。図25に最も明らかに見られるように、放射ビームBinの伝搬方向は、ビームスポット領域508内にあるスポーク503の軸方向に面する上面505の延出方向と概ね整合される。従って放射ビーム方向は半径方向に対して斜角である。
[00427] 有利な点として、入来放射ビームが回転軸502を通過しないので、ビーム分割装置の本体501を軸方向の対向する両側で回転のために支持することができる。これによって、例えばシャフトは放射ビームBinを遮ることなく本体の軸方向上面から外れて延出することができる。これによって、例えばシャフトを本体の各側で軸受によって支持することができ、単一側の軸取り付けで行うよりも容易かつ安定した実施が可能となる。
[00428] ビーム分割装置300、350、400、500の上述の実施形態の特徴を組み合わせることも可能である。例えば図25及び図26の実施形態500に、図23の実施形態350に関連付けて説明したようなテーパ状を設けるか、又は図24の実施形態400に関連付けて説明したようなテーパ状を設けることができる。
[00429] 図27及び図28を参照すると、代替的な実施形態のリソグラフィシステムLS2が示されている。リソグラフィシステムLS2は2つの放射源551、552を備えている。各放射源551、552は、例えば自由電子レーザを含み得る。放射源551、552の各々に、対応するビームデリバリシステムBDS1、BDS2が設けられている。各ビームデリバリシステムBDS1、BDS2は、その対応する放射源551、552から放射ビームBin 1、Bin 2を受光して、これを複数のリソグラフィ装置LA1〜LA10、LA11〜LA20に分配するように構成されている。各ビームデリバリシステムBDS1、BDS2はビーム拡大光学部品及びビーム分割光学部品を備えることができる。
[00430] 2つの放射源551、552は、それらの出力放射ビームBin 1、Bin 2が放射源551、552とビームデリバリシステムBDS1、BDS2との間で交点553において交差するように配置されている。
[00431] リソグラフィシステムLS2は更に、2つのビーム分割装置554、555を備えている。ビーム分割装置554、555の各々は、実質的に上述したようなビーム分割装置300、350、400、500を含み得る。各ビーム分割装置554、555は、非作動位置と展開位置との間で移動可能である。非作動位置に配された場合、各ビーム分割装置554、555は交点520の近くに配置されるが放射ビームBin 1、Bin 2の経路から外れている。各展開位置に配された場合、各ビーム分割装置554、555は放射ビームBin 1、Bin 2の経路内で交点520に配置される。リソグラフィシステムLS2は、2つの放射ビームBin 1、Bin 2を充分な精度で方向操作するように動作可能な追加の光学部品を備える場合があり、これによって、いずれかのビーム分割装置554、555が展開位置に配された場合に2つの放射ビームBin 1、Bin 2の一方をそのビームスポット領域に入射させることができる。
[00432] 図27を参照すると、リソグラフィシステムLS2は、双方のビーム分割装置がそれぞれの非作動位置にあるものとして図示されている。このような構成を、双方の放射源551、552が動作している場合のリソグラフィシステムLS2のデフォルト構成とすることができる。各放射源551、552は放射ビームBin 1、Bin 2を放出し、これは対応するビームデリバリシステムBDS1、BDS2によって受光される。
[00433] 図28を参照すると、リソグラフィシステムLS2は、ビーム分割装置554が展開位置にあり、ビーム分割装置555が非作動位置にあるものとして図示されている。リソグラフィシステムLS2のこのような構成は、放射源552が動作しなくなった場合(計画的なシャットダウンの一部として、又は放射源552が故障している場合)に使用可能である。放射源551のみが放射ビームBin 1を放出し、これは対応するビーム分割装置554によって受光される。
[00434] 上述した通り、図20から図26を参照すると、放射ビームBin 1の第1の部分はビーム分割装置554の複数のスポークの上面に入射し、これによって反射されて第1の分岐放射ビームB1を形成する。ビーム分割装置554のビームスポット領域は交点553と概ね一致している。第1の放射ビームBin 1のかすめ入射角は、第1の分岐放射ビームB1の伝搬が、リソグラフィシステムLS2が図27に示す構成にある場合の放射源552からの放射ビームBin 2とほぼ同じ光路に沿うようになっている。従って、第1の分岐放射ビームB1は第2のビームデリバリシステムBDS2によって受光される。
[00435] 放射ビームの第2の部分は、ビーム分割装置554のスポーク間の間隙を通過して、第2の分岐放射ビームB2を形成する。従って、第2の分岐放射ビームB2は第1のビームデリバリシステムBDS1によって受光される。
[00436] 同様に、放射源551が動作していない場合、第1のビーム分割装置554は非作動位置に配され、第2のビーム分割装置555は展開位置に配されて、放射源552が出力する放射ビームBin 2を2つのビームデリバリシステムBDS1、BDS2間に分割することができる。
[00437] 従って、リソグラフィシステムLS2が提供するシステムにおいては、2つの放射源551、552が並行して動作することができ、各々がビームデリバリシステムBDS1、BDS2を介して異なる組のリソグラフィ装置に放射を与える。放射源551、552の一方が動作していない場合、ビーム分割装置554、555を用いて、他方の放射源が出力する放射ビームを2つの分岐放射ビームB1、B2に分割して、各ビームデリバリシステムBDS1、BDS2に対し、動作中の放射源からの放射ビームの例えば約50%を供給することができる。
[00438] 有利な点として、ビームデリバリシステムBDS1、BDS2によって受光される分岐放射ビームB1、B2は、合計強度以外に、放射源551、552によって出力される放射ビームBin 1、Bin 2と同様のビームパラメータ(断面、発散、位置)を有する。例えば放射源551、552の一方からの入力放射ビームが円形の断面を有する場合、ビーム分割装置554、555により出力される分岐放射ビームも円形の断面を有する。これに対して、動作していない放射源を補償するために別の放射源の出力を分割する他の解決策は、異なる(例えば楕円の)断面形状を有する分岐放射ビームを生成する可能性がある。従ってそのような他の解決策では、分岐放射ビームを元の放射ビームの形状に戻すために追加の補正ミラーを必要とする場合がある。
[00439] 動作していない放射源を補償するための他の解決策よりも優れたリソグラフィシステムLS2の別の利点は、放射損失が小さいことである。動作中の放射源に関連付けられたビームデリバリシステム(及びそれによって対応されるリソグラフィ装置)は、元の放射ビームの50%を受光することができる。動作していない放射源に関連付けられたビームデリバリシステム(及びそれによって対応されるリソグラフィ装置)は、元の放射ビームのうち、50%に回転ビーム分割装置の反射率を乗算して求められる割合を受光することができる。回転ビーム分割装置の反射率は約98%である可能性があり、従って動作していない自由電子レーザが対応するリソグラフィ装置は元の放射ビームの約49%を受光することができる。これに対して他の分割の解決策では、元の放射ビームのうち、50%に複数の(少なくとも3つの)追加ミラーの反射率を乗算して求められる割合が得られる。追加ミラーの反射率は約98%である可能性があり、従ってそのような代替的な解決策では、全てのリソグラフィ装置が受光できるのは元の放射ビームのせいぜい約47%である。
[00440] 代替的な実施形態では、リソグラフィシステムLS2は、いずれかの放射源551、552に対応するために向きを変更できるように構成された1つだけの回転ビーム分割装置を備えてもよい。
[00441] 代替的な実施形態では、2つの放射源551、552により出力される2つの放射ビームBin 1、Bin 2は交点で交差しない。このような実施形態では、放射源551、552の一方のみが動作している場合、追加の光学要素を用いて、動作中の放射源が出力した放射ビームをビーム分割装置554、555の方へ導くことができる。
[00442] 上述の回転ビーム分割装置300、350、400、500、550に冷却システムを設けてもよい。図29及び図30に、2つの代替的な冷却システムを概略的に示す。
[00443] 図29を参照すると、ビーム分割装置300の回転本体301が静的冷却デバイス600によって冷却される機構が示されている。熱は、回転本体301と静的冷却デバイス600との間で主に放射によって伝達される。静的冷却デバイス600は回転本体301の周りに搭載されている。例えば、回転本体301の下部は軸方向に延出する環状突起603を備えることができ、これを冷却本体600の環状溝内に受容することができる。
[00444] 本体301及び静的冷却デバイス600の対向表面に高放射率材料のコーティング601、602を設けて、本体301による放射及び静的冷却デバイス600による放出された放射の吸収を促進する。回転本体301と静的冷却デバイス600との間に狭い間隙610が設けられている。間隙610に水素等の気体を充填することで、熱伝導による本体301の追加の冷却を与えることができる。静的冷却デバイス600に、例えば水等の流体流を受容するためのチャネルを設けて、冷却デバイス600から熱を逃がすことも可能である。
[00445] 有利な点として、図29に示す機構は、回転水継手(water coupling)を用いることなく回転本体の水冷を可能とする。これは、水漏れの危険を回避するか又は少なくとも大幅に低減する。
[00446] 図30を参照すると、ビーム分割装置300の回転本体301が静的冷却デバイス650によって冷却される機構が示されている。熱は、回転本体301と静的冷却デバイスとの間の液体金属層によって伝達される。
[00447] ビーム分割装置300は、本体301から回転軸302に沿って軸方向に延出するシャフト370を備えている。静的冷却デバイス650はシャフト370に隣接して搭載されている。シャフト370と静的冷却デバイス650との間に狭い間隙651が設けられている。間隙651には、毛管力によって所定位置に保持された液体金属層652が充填されている。この金属は、比較的低い温度で溶解する可融合金を含むことができる。例えば金属は、75.5重量%のガリウム及び24.5重量%のインジウムを含有し得るガリウム及びインジウムの合金を含むことができる。このような合金は15.7℃の融点を有する。静的冷却デバイス650に、例えば水等の流体流を受容するためのチャネル653を設けて、冷却デバイス650から熱を逃がす。
[00448] 代替的な実施形態では、静的冷却デバイス650は、複数のスポーク303の軸方向上面305により形成された反射面に対して軸方向に面すると共に対向している回転本体301の下面に隣接させて搭載することができる。本体301と静的冷却デバイス650との間に狭い間隙651を設け、前記間隙に液体金属層を配置すればよい。
[00449] 有利な点として、図30に示す機構は、回転水継手を用いることなく回転本体の水冷を可能とする。これは、水漏れの危険を回避するか又は少なくとも大幅に低減する。熱を伝達するための液体金属層の使用は、超高真空条件及びシャフト370の高い角速度と両立できるロバストな技法である。
[00450] あるいは、上述の回転ビーム分割装置300、350、400、500に他のいずれかの適切な冷却システムを設けてもよい。例えば冷却システムは1つ以上の空気軸受を備えることができ、この場合、ビーム分割装置の(回転)シャフトは(静的)軸受筒の穴に受容され、シャフトと軸受筒との間に薄い加圧ガス膜を設ける。熱は、ビーム分割装置の本体から離れる方向にシャフトに沿って流れ、シャフトから軸受筒に伝達させることができる。これは、例えば寸法が約10μmである小さい気体充填間隙が高い熱伝導性を有するからである。軸受筒を水冷して静的冷却デバイスを形成することも可能である。
[00451] 実質的に上述したような複数のビーム分割装置300、350、400、500を組み合わせて、入来放射ビームを3つ以上の出射分岐放射ビームに分割するように動作可能であるビーム分割装置を形成することができる。これについて以下で説明する。
[00452] 図31を参照すると、入来放射ビームを3つ以上の出射分岐放射ビームに分割するように動作可能なビーム分割装置700は、複数の回転ビーム分割装置701、702、703を備えている。回転ビーム分割装置701、702、703の各々は、実質的に上述したようなビーム分割装置300、350、400、500を備え得る。
[00453] この実施形態において、ビーム分割装置700は、入来放射ビームBinを受光して2つの分岐放射ビームB1’、B2’を出力するように構成された一次回転ビーム分割装置701を備えている。ビーム分割装置700は更に、2つの二次回転ビーム分割装置702、703を備えている。第1の二次回転ビーム分割装置702は、一次回転ビーム分割装置701が生成した第1の分岐放射ビームB1’を受光して2つの分岐放射ビームB1、B2を出力するように構成されている。第2の二次回転ビーム分割装置703は、一次回転ビーム分割装置701が生成した第2の分岐放射ビームB2’を受光して2つの分岐放射ビームB3、B4を出力するように配置されている。
[00454] 個々のビーム分割装置701、702、703の各々のスポーク及び間隙は、ほぼ同じ大きさとすることができる。あるいは、スポーク及び間隙は所望のように異なる大きさとしてもよい。
[00455] 先に説明したように、一般に、一次回転ビーム分割装置701の複数のスポークの上面がビームスポット領域308を通過して移動すると、異なる時点で反射又は透過される入来放射の量が増大又は低減するので、第1及び第2の分岐放射ビームB1’、B2’の強度は時間と共に変動する。二次回転ビーム分割装置702、703は、一次回転ビーム分割装置701とほぼ同じ大きさとすることができ、ほぼ同じ速度で回転することができる。このような実施形態では、分岐放射ビームB1、B2、B3、B4の相対強度は、二次回転ビーム分割装置702、703及び一次回転ビーム分割装置701の回転の相対位相に依存する。従って、二次回転ビーム分割装置702、703及び一次回転ビーム分割装置701の回転の相対位相を調整することによって、分岐放射ビームB1、B2、B3、B4の相対強度を調整することができる。従って、ビーム分割装置700はある程度の柔軟性を有し、分岐放射ビームB1、B2、B3、B4の各々に向けられる入来放射ビームBinの部分を変えるように動作可能である。
[00456] 代替的な実施形態では、個々のビーム分割装置の追加レベルを設けることで、ビーム分割装置700のツリー状構造を拡張可能である。例えば、4つの三次ビーム分割装置を設けて、入来放射ビームBinを8つの放射ビームに分割するように動作可能なビーム分割装置を提供することにより、ビーム分割装置700のツリー状構造を拡張することができる。
[00457] 図32を参照すると、入来放射ビームを3つ以上の出射分岐放射ビームに分割するように動作可能なビーム分割装置750である。ビーム分割装置750は、線形アレイに配置された複数の回転ビーム分割装置751、752、753を備えている。回転ビーム分割装置751、752、753の各々は、実質的に上述のようなビーム分割装置300、350、400、500を備えることができる。
[00458] この実施形態では、各回転ビーム分割装置751、752、753は、入来放射ビームを受光して第1及び第2の分岐放射ビームを出力するように構成されている。第1の分岐放射ビームは、例えば、図1に示すものと同様のリソグラフィシステムのリソグラフィ装置の1つの照明システムILに向けて送出することができる。最後のビーム分割装置753は例外であるが、第2の分岐放射ビームはアレイ内の次のビーム分割装置に向けて送出される。
[00459] 従って、第1の回転ビーム分割装置751は、入来放射ビームBinを受光して第1及び第2の分岐放射ビームB1、Bin’を出力するように構成されている。第2の分岐放射ビームBin’は、第2の回転ビーム分割装置752に向けて送出される。第2の回転ビーム分割装置752は放射ビームBin’を受光し、第1及び第2の分岐放射ビームB2、Bin’’を出力する。第2の分岐放射ビームBin’’ビームは第3のビーム分割装置753に向けて送出される。第3の回転ビーム分割装置753はこの放射ビームBin’を受光し、第1及び第2の分岐放射ビームB3、B4を出力する。分岐放射ビームB1、B2、B3、及びB4は各々、例えば図1に示すものと同様のリソグラフィシステム内のそれぞれ異なるリソグラフィ装置の照明システムILに向けて送出することができる。
[00460] 上述のビーム分割装置700と同様に、分岐放射ビームB1、B2、B3、B4の相対強度は、二次回転ビーム分割装置751、752、及び753の各々の回転間の相対位相に依存する。従って、回転ビーム分割装置751、752、753の回転の相対位相を調整することによって、分岐放射ビームB1、B2、B3、B4の相対強度を調整することができる。従って、ビーム分割装置750はある程度の柔軟性を有し、分岐放射ビームB1、B2、B3、B4の各々に向けられる入来放射ビームBinの部分を変えるように動作可能である。
[00461] ビーム分割装置750によって出力される分岐放射ビームB1、B2、B3、B4がほぼ同じ強度を有することを保証するため、一般に、各ビーム分割装置751、752、753のスポーク及び間隙は異なる大きさを有し得る。例えば、ビーム分割装置750によって出力される分岐放射ビームB1、B2、B3、B4がほぼ同じ強度を有することを保証するため、いくつかの実施形態では、スポークに対する間隙の大きさの比は、第1のビーム分割装置751では3:1、第2のビーム分割装置752では2:1、第3のビーム分割装置753では1:1とすることができる。これらの比は、回転ビーム分割装置751、752、753の回転の相対位相に依存する。
[00462] 線形アレイにおいて、所望の通りにいかなる数の個別ビーム分割装置を設けてもよいことは認められよう。
[00463] 図33を参照すると、代替的なビーム分割装置800が示されている。ビーム分割装置800は、図1に示したビーム分割装置20とすることができ、又はその一部を形成することができる。ビーム分割装置300、350、400、500と同様に、ビーム分割装置800は、概ねディスク形状の本体801と、前記本体801を回転軸805を中心に回転させるように動作可能な機構(図示せず)と、を備えている。ビーム分割装置800が図20から図26のビーム分割装置300、350、400、500と異なる点は、ビーム分割装置800の本体801の軸方向に面する表面が半径方向において階段状であることである。これにより、軸方向に面する反射面を複数の表面802a〜802gに分割する。中央反射面802aは概ね円形であり、残りの表面802b〜802gは複数の同心環の形態である。
[00464] 複数の表面802a〜802gの各々は、各間隙307(図示せず)により相互に分離された複数の概ね半径方向に延出するスポーク(図示せず)を備えている。各表面上の複数の概ね半径方向に延出するスポーク及び間隙は、ビーム分割装置300、350、400、500のいずれか1つのスポークとほぼ同様のものとすればよい。
[00465] 他の全ての面で、ビーム分割装置800はビーム分割装置300、350、400、500のいずれか1つと概ね同様のものとすることができる。
[00466] 複数の反射面802a〜802fの各々は、放射ビームBin又はその一部を受光するように配置されたビームスポット領域を備えている。入来放射ビームは中央反射面802aに入射し、この反射面は第1及び第2の分岐放射ビームを形成して出力する。第1の分岐放射ビームB1は中央反射面802a上のスポークによって反射される。第2の分岐放射ビームは中央反射面802a上の間隙を通過し、第2の反射面802bに向かって送出される。各反射面802b〜802fは、直前の各反射面の間隙を通過した放射ビームBinの一部を受光し、第1及び第2の分岐放射ビームを出力する。第1の分岐放射ビームB2〜B7は、反射面のスポークが反射した放射の一部を含む。第2の分岐放射ビームは、次の反射面に向けて送出される。反射面802a〜802fの全ての間隙を通過した放射の一部は、最終的な分岐放射ビームB8を形成し、これはかすめ入射ミラー803によって以降の光学部品へと送出することができる。
[00467] 従って、ビーム分割装置800により、入来放射ビームBinを複数の(例えば8つの)出射分岐放射ビームB1〜B8に分割することができる。
[00468] 図34及び図35を参照すると、代替的なビーム分割装置850が示されている。ビーム分割装置850は、概ねディスク形状の本体851と、前記本体851を回転軸852を中心に回転させるように動作可能な機構(図示せず)と、を備えている。例えばディスク形状の本体851は、回転軸852に沿って延在するシャフトを備え得る。シャフトは、例えば2つの軸受のような1つ以上の軸受によって支持することができる。シャフトは、モータ又はエンジンのようないずれかの適切な機構により回転駆動することができる。
[00469] ビーム分割装置850は更に、複数の半径方向に延出するスポーク853を備えている。各スポーク853は、2つの半径方向に延出する側壁854と、2つの軸方向に面する壁855と、半径方向に面する表面856と、を備えている。従って、各スポークの半径方向に面する表面856の形状は概ね矩形である。各スポークの半径方向に面する表面856は反射性材料から形成されている。スポーク853は複数の間隙857によって相互に分離している。このため、複数のスポーク853の半径方向に面する表面856は複数の個別反射要素を形成する。各スポーク853は大きさ及び形状がほぼ同じであり、各間隙857は大きさ及び形状がほぼ同じである。従って、複数のスポーク853の半径方向に面する表面856は、個別反射要素の周期的なアレイを形成する。所与の半径方向のポイントにおける周期的なアレイのピッチは、1つの半径方向に面する表面856及び1つの間隙857の角度範囲によって与えられる。
[00470] ビーム分割装置850は、放射ビームBinを受光するように配置されたビームスポット領域858を備えている。ビームスポット領域858は、本体851の半径方向に面する表面上に配置され、この表面はスポーク853の半径方向に面する表面856から形成されている。
[00471] 本体851が回転軸852を中心として回転すると、(スポーク853の半径方向に面する表面856によって形成される)複数の反射要素がビームスポット領域858を通過して移動するように、周期的なアレイが動く。放射ビームの第1の部分は、スポーク853の半径方向に面する表面856に入射し、これによって反射されて第1の分岐放射ビームB1を形成する。放射ビームの第2の部分は、反射要素間の間隙857を通過して第2の分岐放射ビームB2を形成する。便宜上、図35ではスポーク853及び間隙857は本体851の円周の一部のみに延出している。しかしながら実際には、スポーク853及び間隙857は本体851の円周全体に延出している。
[00472] 従ってビーム分割装置850は、入来放射ビームBinを出射する第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2に分割することができる代替的な機構を提供する。
[00473] この実施形態850の利点は、ビームスポット領域858が本体851の半径方向に面する表面上に配置されているので、反射要素の各々が環状の扇形でなくほぼ矩形の形状であるということである。これによって入来放射ビームは、より小さいかすめ入射角で接近することが容易になる。より小さいかすめ入射角を与えるためには、本体851の(軸方向の)厚さのみを増大すればよい。これは、上述の実施形態300、350、400、500において、より小さいかすめ入射角に対応するために本体の半径を増大する必要があるのとは対照的である。更に、かすめ入射角が小さくなっても、スポーク853が形成する反射要素は矩形のままである。
[00474] 別の利点は、入来放射ビームBinが回転軸852と交差せず、その近傍を通過することもないことである。この結果、軸受及びアクチュエータを本体851の両側に配置することができ、対称的でバランスのとれた設計が可能となる。
[00475] スポーク853は、半径増大方向で外側に向かってテーパ状とすることも可能である。これは、図24のビーム分割装置300が採用するものと同様のアンダーカットを与える。このような実施形態では、側壁854は純粋な半径方向に延出していない。充分な半径方向のテーパ化を行うことで、側壁854に入射する放射部分を低減又は排除することができる。
[00476] スポーク853の半径方向に面する表面856は平坦であり得る。あるいは、スポーク853の半径方向に面する表面856は湾曲させ、例えばディスク形状の本体851に従う湾曲を有してもよい。
[00477] スポーク853間の間隙857に傾斜部859を設け、この傾斜部859の表面が入来放射ビームBinにほぼ平行であるように配置することができる。有利な点として、このような傾斜部859により、入来放射ビームBinと干渉することなくビーム分割装置850の剛性及び熱伝導率が増大する。
[00478] (反射した)第1の分岐放射ビームB1のビームは軸方向に沿ってアスティグマティックに発散し、(透過した)第2の分岐放射ビームB2は歪んでいない。これは、第1の分岐放射ビームB1を受光する光学要素に対する熱負荷を低減させることができる。
[00479] 図36を参照すると、2つの放射源901、902を備えたリソグラフィシステムLS3の一部が示されている。リソグラフィシステムLS3は更に、実質的に図34及び図35に示して上述したような2つのビーム分割装置903、904を備えている。
[00480] 放射源901が出力する放射ビームBin、1は、第1のビーム分割装置903のビームスポット領域によって受光される。この放射ビームBin、1の第1の部分は、スポークの半径方向に面する表面に入射し、これにより反射されて第1の分岐放射ビームB1を形成する。放射ビームBin、1の第2の部分は、反射要素間の間隙を通過して第2の分岐放射ビームB2を形成する。放射源902が出力する放射ビームBin、2は、第2のビーム分割装置904のビームスポット領域によって受光される。この放射ビームBin、2の第1の部分は、スポークの半径方向に面する表面に入射し、これにより反射されて第1の分岐放射ビームB3を形成する。放射ビームBin、2の第2の部分は、反射要素間の間隙を通過して第2の分岐放射ビームB4を形成する。
[00481] 2つのビーム分割装置903、904は、それらの回転軸がほぼ平行であり、かつそれらのビームスポット領域が空間的に近接するように配置されている。このような配置によって、各々が平行かつ極めて近接した別個の自由電子レーザからの2つのサブビームを含む2つの複合ビームを生成することができる。一方の複合ビームは分岐放射ビームB1及びB4を含み、他方の複合ビームは分岐放射ビームB2及びB3を含む。図36の機構LS3が有利である理由は、一方の放射源901、902が動作していない場合に、放射源901、902が出力する放射ビームBin、1、Bin、2の経路の内外に光学コンポーネントを移動させる必要がないことである。この機構LS3によって、(a)放射源901、902が双方とも動作している場合、及び(b)放射源901、902の一方のみが動作している場合に、同一の光学部品を用いることが可能となる。この特徴を充分に利用するため、リソグラフィシステムLS3は、反射された分岐放射ビームB1及びB3に生じた発散を補正するように配置された、各複合放射ビームの光路のための可動光学要素を備え得る。放射源901、902が双方とも動作している場合、これらの光学要素を対応する放射ビームの経路外へ移動させることができる。放射源901、902の一方のみが動作している場合、これらの光学要素を対応する複合放射ビームの経路内に移動させることができる。これにより、放射源901、902が双方とも動作しているか否かにはかかわらず、これらの光学要素の下流にある全ての光学要素がほぼ同じとなり得る。
[00482] ディスク形状の本体上に反射要素の周期的アレイが設けられ、この本体が軸を中心に回転することで周期的アレイにビームスポット領域を通過させるように構成されたビーム分割装置の実施形態について説明した。しかしながら、代替的な実施形態は、本体上に設けられた反射要素の周期的アレイを備え、この本体が経路(例えば線形経路)に沿って交互の方向に移動することで周期的アレイにビームスポット領域を通過させるように構成することも可能である。
[00483] 反射要素の周期的アレイを備え、これらの反射要素が全てほぼ同じ方向に放射を送出することで第1の分岐放射ビームを形成し、反射要素間の間隙を通過した放射により第2の分岐放射ビームを形成するビーム分割装置の実施形態について説明した。代替的な実施形態では、反射要素の周期的アレイは、放射を複数の異なる方向に送出することで複数の分岐放射ビームを形成するように配置された反射要素を備えることができる。いくつかの実施形態では、反射要素の周期的アレイは反射要素間に間隙を含まない場合がある。
[00484] 放射源SO1、SO2の実施形態について、1つの自由電子レーザFELを備えるものとして説明し図示したが、放射源はいかなる数の自由電子レーザFELも備え得ることは認められよう。例えば放射源は2つ以上の自由電子レーザFELを備えることができる。あるいは、放射源SO1、SO2は自由電子レーザを備えず、例えばレーザ生成プラズマ(LPP)又は放電生成プラズマ(DPP)放射源を備えることも可能である。
[00485] 自由電子レーザは、LPP又はDPP源よりも小さい帯域幅の放射ビームを生成する。このような小さい帯域幅により、パターニングデバイスMAにおいてスペックル(干渉による空間強度変動)が生じることがあり、これは望ましくない。上述のような回転ビーム分割装置を用いると、パターニングデバイスMAにおけるスペックルパターンは時間と共に変動し、パターニングデバイスMAの照明の均一性を向上させるように平均化される傾向がある。
[00486] 上述のビーム分割装置の実施形態のいずれか1つの特徴を、適宜、上述のビーム分割装置の実施形態の他のいずれかと組み合わせることも可能である。例えば、ビーム分割装置850のスポーク853間の間隙857に設けられた傾斜部859について、傾斜部859の表面が入来放射ビームBinとほぼ平行に配置されることを説明した。このような傾斜部は、ビーム分割装置300、350、400、500の他の実施形態のいずれにおいても提供することができる。有利な点として、このような傾斜部は、入来放射ビームと干渉することなくビーム分割装置の剛性及び熱伝導率を増大させる。
[00487] ビーム分割装置300、350、400、500、800、850の上述の実施形態のいずれにおいても、スポークの反射面を湾曲させることで、例えばビームデリバリシステムにおける他の光学コンポーネントが誘発するエネルギの相違又は形状の変化を補償することができる。
[00488] 一般に、「かすめ入射角」という言葉は、入来放射ビームの伝搬方向とこれが入射する反射面との間の角度を指すことは認められよう。これは入射角の余角である。すなわち、かすめ入射角及び入射角の和は直角である。
[00489] 図37から図40は、図3及び図4のアンジュレータ24の異なる例示的な構成を示す。それぞれの場合において、記載するアンジュレータ機構から発した放射ビームBは図3を参照して上述したようなものであることは理解されよう。
[00490] 図37に、一実施形態においてアンジュレータ24を実施するために使用可能なアンジュレータ1030を概略的に示す。アンジュレータ1030は、バンチ化電子ビームEが伝送される複数のアンジュレータモジュール1031、1032、1033を備えている。電子ビームEがアンジュレータ1030を通過する際のエンベロープを一点鎖線で示す。図37には3つのみのモジュール1031、1032、1033を示すが、もっと多いか又は少ないモジュールを提供可能であることは理解されよう。アンジュレータモジュール1031、1032、1033はいずれかの適切な方法で実施可能であるが、上述のように周期磁場を生成する複数の磁石を備えるのが一般的である。各アンジュレータモジュール1031、1032、1033について、アンジュレータモジュールの中心軸の周りの体積部分を、「有効磁場領域(good field region)」(図示せず)と見なすことができる。有効磁場領域は中心軸の周りの一定の体積であり、この領域内では、特定ポイントにおける磁場の大きさ及び方向が、アンジュレータの軸上の最も近いポイントにおける値と実質的に等しい。有効磁場領域内で伝搬する電子バンチは、式(1)の共振条件を満たし、従って放射を増幅する。更に、有効磁場領域内で伝搬する電子ビームEは、補償されない磁場による著しい予測外の分裂(disruption)を経験しないはずである。
[00491] 光子バンチP1、P2、P3が、各アンジュレータモジュール1031、1032、1033の先頭の電子バンチEと概ね重複して図示されている。光子バンチは、図の左から右の方向に、アンジュレータ1030の長手方向軸に沿って増大することがわかる。光誘導(optical guiding)として一般に知られる現象のため、光子バンチP1、P2、P3は各アンジュレータモジュール1031、1032、1033内の電子ビームEに概ね追従する。光誘導は2つの効果の結果である。第1の効果は電子ビームE内の光屈折の結果である。電子ビームの屈折率の実部は電子ビーム中心の近傍で又はこの中心で最大となるので、電子ビームは光ファイバと同じように光を導く。第2の効果は光増幅である。これは、電流密度が最大となる場所(これは電子ビームEの中心の近傍又はこの中心である)でFELの利得が最高となるからである。
[00492] アンジュレータモジュール間(ドリフト空間として知られる)では、光子及び電子は切り離される(すなわちそれらは相互作用しない)。
[00493] バンチ化電子ビームEは有限エミッタンスを有するので、再集束されない限り直径が増大する。このため、アンジュレータ1030は更に2つの再集束要素1034、1035を備え、これらは各々、異なる隣接モジュール対(モジュール1031、1032と1032、1033)の間に位置決めされている。追加のモジュールを設ける場合、各モジュール間に再集束要素を提供することができる。再集束要素1034、1035は、例えば四重極磁石を含み得る。
[00494] アンジュレータ1030は更に、2つの異なる軸方向位置でアンジュレータ1030内の電子ビームEの理想的な位置からの逸脱を測定するように適合された2つのビーム位置モニタ(BPM)1036、1037を備えている。図37に示すエンベロープは均一な経路をとっているが、実際には電子ビームEはこの経路から逸脱してエンベロープが歪むことがある。この歪みをBPM1036、1037により検出することができる。BPM1036、1037は、当業者に容易に認められるように、多数の方法のいずれかで実施可能である。
[00495] アンジュレータ内の電子ビームEの軌道の逸脱は、放射ビームBの軌道に同様の逸脱を引き起こす。この逸脱の結果、放射ビームBは、ビームエクスパンダ内又はビーム分割装置20内の光学部品のような下流の光学部品の最適部分又は許容可能部分に到達しないか又は入射しないことがある。しかしながら、放射ビームBの軌道の歪みはそのアンジュレータ内で対処可能であり、更にアンジュレータの最終モジュールにおいて対処可能であることが認識されている。
[00496] アンジュレータ1030は更に、モジュール1032とBPM1036との間に位置決めされた2つの電子ビームステアリングユニット1038a、1038bを備えている。電子ビームステアリングユニット1038a、1038bは、水平(z)及び垂直(y)方向の双方で電子ビームEを導くように配置されている。BPM1036、1037は、これらBPM1036、1037の各々から電子ビームEの位置を示す信号を受信するように構成された制御ユニット1039に接続されている。制御ユニット1039は、電子ビームEの軌道が所望の軌道から逸脱している量を明らかにし、電子ビームEが所望の軌道にほぼ追従するようにこれを方向操作するためビームステアリングユニット1038a、1038bを制御するように構成されている。
[00497] アンジュレータ24の出口とその直後の下流の光学部品(これは例えばビームエクスパンダ、又はビーム分割装置20内の光学部品であり得る)との間の距離のため、リソグラフィシステムLSは、放射ビームBの平行移動(すなわち放射ビームBの伝搬方向とアンジュレータ24の長手方向軸との間のオフセット)よりも、放射ビームBの傾斜(すなわち放射ビームBの伝搬方向とアンジュレータ24の長手方向軸との角度)の変化に対して、より影響を受けやすい。図37に示す機構1030は、放射ビームBの傾斜の補正が最も効果的であるアンジュレータ24の出口において、この傾斜を補正することができるシステムを提供する。
[00498] このようにアンジュレータ1030は、電子ビームE、従って放射ビームBを理想的な伝搬軸と整合させることができる機構を提供する。この代わりに又はこれに加えて、リソグラフィシステムLSは放射ビームBの平行移動よりも放射ビームBの傾斜に影響を受けやすいので、理想的な伝搬軸から外れた放射ビームBの平行移動量が公差内である場合、アンジュレータ1030を用いて、放射ビームBの所望の伝搬軸に平行な電子ビームEを生成することができる。このようにして、放射ビームBを下流の光学要素によって適正に処理することが可能となる。一実施形態では、放射ビームBの検出された平行移動に応じて下流の光学要素自体を平行移動させることができる。
[00499] アンジュレータ1030内に示すコンポーネントの位置及び数は例示に過ぎないことは認められよう。例えば、3つ以上のBPMを設けてもよく、もっと多いか又は少ない数のステアリングユニットを設けてもよい。代替的な実施形態では、ステアリングユニット1038a、1038b及びBPM1036、1037はアンジュレータ1030内で異なる位置決めを行ってもよい。しかしながら、ステアリングユニットをアンジュレータ1030の出力の比較的近くに配置することで、電子ビームE、従って放射ビームBに対して変位又は不安定性のその他の原因が及ぼす影響を軽減させると有利であることが明らかになっている。
[00500] 図38は、例えば図3又は図4のアンジュレータ24を提供するために使用可能である代替的なアンジュレータ1040を示す。アンジュレータ1040は複数のモジュール1041、1042、1043を備えている。図38には3つのみのモジュールを示すが、もっと多いか又は少ないモジュールを提供可能であることは理解されよう。アンジュレータ1040は更に、モジュール1041、1042と1042、1043間に位置決めされた2つの再集束要素1044、1045を備え、これらは図37の再集束モジュール1032、1033と同様に実施することができる。アンジュレータ1040は更に、放射ビームB内の強度分布を測定するように構成されたEUV強度分布センサ1046を備えている。強度分布センサ1046は、当業者に容易に明らかであるようないずれかの適切な方法で実施可能である。
[00501] 強度分布センサ1046は、垂直に(y方向に)分離した2つの部分1046a、1046bを備えるものとして図示している。このため、例えば部分1046aがEUVパワーの増大を検出し、部分1046bが同時にEUVパワーの低減を検出した場合、ビームがy方向でセンサ1046aの方へずれたと判定することができる。強度分布センサ1046は他の部分を含み得ることは認められよう。例えば強度分布センサ1046はz方向に分離した部分を含むことがあり、x方向に分離した部分を含むことがある。更に、強度分布センサは2つ以上の方向に分離した部分を含むことも可能である。アンジュレータ1040は更に、モジュール1042と再集束要素1045との間に位置決めされた2つの電子ビームステアリングユニット1047、1048を備えている。電子ビームステアリングユニット1047、1048は、水平(z)及び垂直(y)方向の双方でアンジュレータ内の電子ビームEを導くように配置されている。
[00502] 強度分布センサ1046は、制御ユニット1049に接続され、放射ビームB内の強度分布を示す信号を制御ユニット1049に送信するように構成されている。制御ユニット1049は、強度分布センサ1046から受信した指示を処理すると共に、放射ビームB内の強度分布を所望の強度分布と比較するように構成されている。強度分布センサ1046により示される強度分布が所望の強度分布から逸脱している場合、制御ユニット1049は、放射ビームBの強度分布が所望の強度分布に近付くように電子ビームE、従って放射ビームBを方向操作するため、制御信号をビームステアリングユニット1047、1048に送信する。
[00503] このようにして、放射ビームBの中心を、下流の光学部品のビーム許容中心(又はスイートスポット)の中心位置に向けて送出することができる。
[00504] 1つ以上の強度分布センサ1046をアンジュレータ1040の一部として示しているが、一実施形態では、これを下流の光学部品の入口及び/又は出口に配置することも可能である。しかしながら、強度分布センサ1046は放射ビームBの経路に沿ったいかなる位置に配置してもよい。
[00505] 上述のように、電子ビームEがアンジュレータ24内を通過する経路は、正弦波形状かつ平面状であって電子が周期的に中心軸を横断するか、又はらせん状であって電子が中心軸を中心に回転する場合がある。一般に、らせん状の経路では、アンジュレータ24内の電子ビームEの傾斜は1/10pを超えてはならない。ここで、pはピアスパラメータである。一実施形態では、ピアスパラメータは約0.1%であり、ステアリングユニット1038a、1038b、又は1047、1048により実行される方向操作の量が100マイクロラジアン未満であり得ることが示される。
[00506] 相対論的電子ビームの曲げは、式(4)によって記述される。
ここで、rは曲げ半径であり、eは電子の電荷であり、Bは磁場であり、wはビームのエネルギである。これから、磁場強度B(単位はテスラ)及び曲げ半径r(単位はメートル)の積が、電子ビームEのエネルギw(単位はMeV)を300で除算することで近似的に与えられることがわかる(すなわちB*p(T*m)≒E(MeV)/300)。ステアリングユニットが長さ約0.1mのステアリング磁石を備える実施形態では、約2*10−4Tの磁場によって10マイクロラジアンの曲げ角を達成可能であり、2mTの磁場によって約100マイクロラジアンの曲げ角を達成可能である。このため、100マイクロラジアン未満の曲げの電子ビームEの方向操作は、ステアリングユニット1038a、1038b及び1047、1048内で迅速に確立され得る比較的小さい磁場によって達成可能である。
[00507] 図37及び図38の機構に示す機構の特徴を組み合わせてもよいことは認められよう。図39は、アンジュレータ24を提供するために使用可能でありモジュール1051、1052、1053、及び再集束要素1054、1055を備えたアンジュレータ1050を示す。アンジュレータ1050は更に、図37の機構のBPM1036、1037と同等のBPM1056、1057を備えている。アンジュレータ1050は更に、図38の機構における強度分布センサ1046と同等の強度分布センサ1058(部分1058a、1058bを有する)を備えている。アンジュレータ1050は更に、制御ユニット1061から命令を受信するように構成されたビームステアリングユニット1059、1060を備えている。アンジュレータ1050において、制御ユニット1061は、BPM1056、1057から電子ビームEの軌道を示す信号を受信すると共に、強度分布センサ1058から放射ビームB内のEUV放射分布を示す信号を受信するように構成されている。このため制御ユニット1061は、電子ビームEの軌道及び/又は放射ビームBの強度分布の双方における逸脱に応じて、電子ビームEを(ステアリングユニット1059、1060を用いて)方向操作することができる。
[00508] 図40は、代替的な実施形態においてアンジュレータ24を実施するために使用可能なアンジュレータ1070を示す。明確さのため、図40には電子ビームエンベロープを示していない。アンジュレータ1070は、3つのモジュール1071、1072、1073、及び2つの再集束要素1074、1075を備えている。モジュール1073は平面モジュールである。すなわち、モジュール1073内で電子ビームEの電子がとる経路は正弦波形状かつ平面状であって、らせん状ではない。モジュール1071、1072は、ヘリカル又は平面モジュールとすればよい。アンジュレータ1070は更に、モジュール1073の前に配置された第1のステアリングユニット1076と、モジュール1073の後に配置された第2のステアリングユニット1077と、を備えている。制御ユニット1078は、第1及び第2のステアリングユニット1076、1077の双方と通信状態にある。
[00509] 制御ユニット1077は、第1のステアリングユニット1076に命令を与えて、電子ビームEの軌道を能動的にかつ周期的に変更し、これによって放射ビームBを遠距離場に再分配するように構成されている。具体的には、ステアリングユニット1076は、周期的に偏向角だけ電子ビームEを偏向させるように制御することができる。従ってアンジュレータ1070は、放射ビームBを空間的に分離した異なる軌道に沿って順次送出して、別個のEUV放射ビームB1、B2、B3をリソグラフィ装置LA1〜LA2のそれぞれ異なるものに与えることができる。図40には3つのみの放射ビームB1、B2、B3を示すが、これより多いか又は少ない放射ビームを提供可能であることは認められよう。例えば、各リソグラフィ装置LA1〜LA20にそれぞれ放射ビームを与えることができる。
[00510] このような実施形態では、ビーム分割装置20は必要ない場合があり、又は簡略化される場合がある。例えば、各リソグラフィ装置にそれぞれ別個の放射ビームを与えるように電子ビームEを偏向させることによって、多数のリソグラフィ装置に与えるために単一の放射ビームを分割する必要がなくなる。あるいは、2つ以上の放射ビームが与えられるが、各リソグラフィ装置について別個の放射ビームを与えるわけではない場合、各リソグラフィ装置に与えるために各放射ビームをビーム分割装置によってもっと少数のビームに分割する必要がある。
[00511] 多数の放射ビームがアンジュレータ1070によって与えられる場合、各放射ビームに、それぞれのビームエクスパンダ又はビームスプリッタ等、下流の光学部品をそれぞれ設けることができる。
[00512] この代わりに又はこれに加えて、制御ユニット1078によってステアリングユニット1076は、ほぼ一定の角速度で所定の角度だけ電子ビームEを周期的に掃引することができる。例示的な実施形態では、電子ビームEは、10マイクロラジアン、100マイクロラジアン、又は1000マイクロラジアンの角度で掃引することができるが、電子ビームEは他の角度で掃引してもよいことは認められよう。
[00513] 実質的にフラットトップの強度分布(トップハット強度分布としても知られる)を有する放射ビームを生成することが望ましい場合がある。これは、FELの下流にある光学部品を調節することで達成可能である。しかしながら、電子ビームEを掃引することによって、得られる放射ビームBの強度プロファイルは、多数の放出パルスで平均化した場合に遠距離場では実質的にフラットトップの強度分布を含み、非掃引ビームに比べて発散が増大し得る。従って、電子ビームEをある角度で掃引することで生成される放射ビームBは、フラットトップ条件を与えるような光学部品の調節により調節を行う必要がなくなる場合がある。更に、下流の拡大光学部品によって放射ビームBの更なる拡大を実行可能であるが、いずれかの必要な拡大は低減する。
[00514] 第2のステアリングユニット1077は、モジュール1073の後に配置されて、第1のステアリングユニット1076により変更された電子ビームEをステアリングユニット25及びダンプ26の方へ向け直す。ステアリングユニット1076及びステアリングユニット1077は双方とも、モジュール1073内の磁力線に垂直な面内で電子ビームEを方向操作する。
[00515] ステアリングユニット1076はアンジュレータ1070の最終モジュール1073の前に配置されているが、他の実施形態では、ステアリングユニット1076はアンジュレータ1070の最後のモジュールでないモジュール(例えばモジュール1072)の前に配置してもよい。しかしながら好適な実施形態では、ステアリングユニット1076はアンジュレータの最後の部分内に配置する。例えばステアリングユニットは、アンジュレータ1070の入口よりもアンジュレータ1070の出口に近いモジュールの前に配置することができる。
[00516] また、図39の実施形態を図37から図38の実施形態と組み合わせてもよいことは認められよう。例えば図39の機構にBPMを設けて、電子ビームが正確な角度範囲にわたって掃引されるのを保証することができる。同様に、1つ以上の強度分布モジュールを設けて、アンジュレータ1070と同様に構成されたアンジュレータによって与えられる単一の(経時的に平均化された)放射ビーム又は多数の放射ビームの強度分布を監視することができる。
[00517] 図41は、本発明の一実施形態に従ったリソグラフィシステムLS4を示す。リソグラフィシステムLS4は、放射源SO1及び2つのリソグラフィ装置LA1〜LA2を備えている。放射源SO1は、2つの極端紫外線(EUV)放射ビームB1〜B2を発生させるように構成されている。この実施形態では、放射源SO1が発生するEUV放射ビームB1〜B2の各々は、光学部品1116によってリソグラフィ装置LA1〜LA2のそれぞれ異なるものに送出される。光学部品1116は、放射ビームB1〜B2の断面積を拡大するように構成されたビーム拡大光学部品を備えることができる。
[00518] 図42は、本発明の別の例示的な実施形態に従ったリソグラフィシステムLS5を示す。リソグラフィシステムLS5は、放射源SO2及び4つのリソグラフィ装置LA1〜LA4を備えている。放射源SO2は、2つのEUV放射ビームB’、B’’を発生させるように構成されている。この実施形態では、放射源SO2が発生するEUV放射ビームB’、B’’の各々は2つの分岐放射ビームに分割される。リソグラフィシステムLS5は、放射源SO2が発生する放射ビームB’〜B’’の経路に、ビーム拡大光学部品1117a、1117b及びビーム分割装置1118a、1118bをそれぞれ備えている。図41、図42のリソグラフィ装置LA1〜LA4は、図2を参照して上述したものと概ね同様とすればよい。
[00519] ビーム拡大光学部品1117a、1117bは、放射ビームB’、B’’の断面積を拡大するように構成されている。有利な点として、これにより、ビーム拡大光学部品1117a、1117bの下流の光学コンポーネント(ミラー等)に対する熱負荷が軽減する。これによってビーム拡大光学部品の下流のミラーは、低スペックで、あまり冷却を行わない、従って安価なものとすることができる。これに加えて又はこの代わりに、これは下流のミラーを近垂直入射とすることができる。いったんビーム拡大光学部品1117a、1117bによって拡大されたら、放射ビームB’はビーム分割装置1118aによって2つの分岐放射ビームB1、B2に分割され、放射ビームB’’はビーム分割装置1118bによって2つの分岐放射ビームB3、B4に分割される。各ビーム分割装置1118a、1118bは上述したような1つ以上のビーム分割装置を含み得る。ビーム拡大光学部品は、全ての実施形態に設けるわけでない場合がある。具体的には、特定のビーム分割装置では必要ないことがある。
[00520] 図41、図42の放射源SO1、SO2は、複数のEUV放射ビームを発生するように構成され、自由電子レーザを含む。図3、図4を参照して上述したように、自由電子レーザは、バンチ化相対論的電子ビームを生成するように動作可能な電子源及び加速器と、この相対論的電子バンチが送出される周期磁場と、を備えている。周期磁場はアンジュレータにより生成され、これによって電子は中心軸を中心とした振動経路をとる。磁気構造によって生じた加速の結果、電子は概ね中心軸方向に電磁放射を自発的に放射する。相対論的電子はアンジュレータ内の放射と相互作用する。特定の条件下で、この相互作用によって電子はバンチ化して、アンジュレータ内の放射の波長で変調されたマイクロバンチとなり、中心軸に沿った放射のコヒーレントな放出が誘導される。
[00521] 上述のように、電子がとる経路は、正弦波形状かつ平面状であって電子が周期的に中心軸を横断するか、又はらせん状であって電子が中心軸を中心に回転する場合がある。振動経路のタイプは、自由電子レーザが放出する放射の偏光に影響を及ぼし得る。例えば、電子をらせん状経路に沿って伝搬させる自由電子レーザは楕円偏光放射を放出することができ、これは一部のリソグラフィ装置による基板Wの露光には好ましい場合がある。
[00522] 図43を参照すると、4つのアンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134を備えたアンジュレータ24の例示的な実施形態が図示されている。アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134は直列に配置されて、電子ビームEが、モジュール1131から始まってモジュール1134で終わるように各アンジュレータモジュールを順番に通過するようになっている。アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134の各々は入口及び出口を備える。各モジュール1131、1132、1133、1134は更に周期磁石構造1131a、1132a、1133a、1134aを備え、これらは周期磁場を生成するように動作可能であると共に、電子源21及び線形加速器22が生成した相対論的電子ビームEを、そのモジュール1131、1132、1133、1134の入口と出口との間で周期経路に沿って導くように配置されている。この結果、各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134内で、電子は概ねそのモジュールを通る周期経路の中心軸の方向に電磁放射を放射する。
[00523] 図43に示すアンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134はヘリカルモジュールである(すなわち、電子ビームEは各アンジュレータモジュール内を通るらせん状経路を進む)。本発明の代替的な実施形態では、アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134の一部又は全部を平面モジュールとしてもよく、アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134の一部又は全部をヘリカルモジュールとしてもよい。
[00524] 電子は、各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134を通過する際に放射の電場と相互作用し、放射とエネルギを交換する。一般に、条件が上記の式(1)のような共振条件に近くない限り、電子と放射との間で交換されるエネルギ量は高速で振動する。
[00525] 各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134の中心軸の周りの領域を「有効磁場領域」と見なすことができる。有効磁場領域は、中心軸の周りの一定の体積であり、アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134の中心軸に沿った所与の位置では、この体積内の磁場の大きさ及び方向が実質的に一定である。有効磁場領域内で伝搬する電子バンチは、式(1)の共振条件を満たすことができ、従って放射を増幅する。更に、有効磁場領域内で伝搬する電子ビームEは、補償されない磁場による著しい予測外の分裂を経験しないはずである。
[00526] 各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134は、ある範囲の許容可能な初期軌道を有し得る。この範囲の許容可能な初期軌道内の初期軌道でアンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134に入射する電子は、式(1)の共振条件を満たすことができ、そのアンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134内で放射と相互作用してコヒーレント放射の放出を誘導する。これに対して、他の軌道でアンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134に入射する電子は、コヒーレント放射の顕著な放出を誘導しない場合がある。
[00527] 例えば、一般的にヘリカルアンジュレータモジュールでは、電子ビームEはアンジュレータモジュールの中心軸と実質的に位置合わせしなければならない。電子ビームEとアンジュレータモジュールの中心軸との間の傾斜又は角度は概ね1/10pを超えてはならない(pはピアスパラメータである)。そうでない場合、アンジュレータモジュールの変換効率(すなわち、そのモジュール内で放射に変換される電子ビームEのエネルギ部分)は、所望の量未満に低下し得る(又はほとんどゼロまで低下し得る)。一実施形態では、EUVヘリカルアンジュレータモジュールのピアスパラメータは約0.001である場合があり、これは、アンジュレータモジュールの中心軸に対する電子ビームEの傾斜が100マイクロラジアン未満でなければならないことを示している。
[00528] 平面アンジュレータモジュールでは、もっと広い範囲の初期軌道が許容可能であり得る。電子ビームEが平面アンジュレータモジュールの磁場に対してほぼ垂直のままであり、平面アンジュレータモジュールの有効磁場領域内に留まるならば、コヒーレントな放射の放出を誘導することができる。
[00529] 電子ビームEの電子が各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134間のドリフト空間を移動する際は、電子は周期経路をとらない。従ってこのドリフト空間では、電子は空間的に放射と重複するが、放射と大きなエネルギを交換しないので、効果的に放射から切り離される。
[00530] バンチ化電子ビームEは有限エミッタンスを有するので、再集束されない限り直径が増大する。このため、アンジュレータ24は更に、1つ以上の隣接モジュール1131、1132、1133、1134の対の間に電子ビームEを再集束するための機構を備えている。図43を参照すると、アンジュレータ24は3つの四重極磁石1161、1162、1163を備えている。すなわち、第1及び第2のアンジュレータモジュール1131、1132間の第1の四重極磁石1161と、第2及び第3のアンジュレータモジュール1132、1133間の第2の四重極磁石1162と、第3及び第4のアンジュレータモジュール1133、1134間の第3の四重極磁石1163と、である。四重極磁石1161、1162、1163は電子バンチのサイズを縮小し、電子ビームEをアンジュレータ24の有効磁場領域内に維持する。これによって次段のアンジュレータモジュール内の電子と放射との結合が向上し、放射の放出の誘導が増大する。
[00531] アンジュレータ24に入射する際に共振条件を満たす電子は、放射を放出(又は吸収)する際にエネルギを喪失(又は獲得)するので、共振条件は満たされなくなる。従っていくつかの実施形態では、アンジュレータ24をテーパ化することができる。すなわち、電子バンチにアンジュレータ24を通過させる際にこれを共振又は共振近傍に維持するため、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuは、アンジュレータ24の長さに沿って変化し得る。テーパ化を達成するには、各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134内で及び/又はモジュールごとに、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuを変化させればよい。
[00532] 上述のように、アンジュレータ24内での電子と放射との相互作用は電子バンチ内である幅のエネルギを生成する。アンジュレータ24のテーパ化は、共振又は共振近傍にある電子数を最大化するように構成することができる。例えば電子バンチは、ピークエネルギでピークに達するエネルギ分布を有することができ、テーパ化は、電子にアンジュレータ24を通過させる際に共振又は共振近傍にこのピークエネルギの電子を維持するように構成することができる。有利な点として、アンジュレータ24のテーパ化は、変換効率を大幅に増大させる可能性がある。例えば、テーパ化アンジュレータ24の使用により、変換効率を2倍超上昇させることが可能である。アンジュレータ24のテーパ化を達成するには、アンジュレータパラメータKをその長さに沿って低減させればよい。これを達成するには、アンジュレータ周期λu及び/又はアンジュレータ軸に沿った磁場強度B0を電子バンチエネルギに合致させて、それらが共振条件又はその近傍となることを保証すればよい。このように共振条件を満たすことで、放出される放射の帯域幅が拡大する。
[00533] アンジュレータ24は複数のセクションを備え、各セクションは1つ以上のアンジュレータモジュールを備えている。図43を参照すると、アンジュレータ24は2つのアンジュレータセクション1151、1152を備えている。第1のアンジュレータセクション1151は3つのアンジュレータモジュール1131、1132、1133を備え、第2のアンジュレータセクション1152は1つのアンジュレータモジュール1134を備えている。電子ビームEは複数の離間した電子バンチを含み、これらは左側からアンジュレータ24に入射して左から右へと移動する。電子ビームは、アンジュレータ24内の金属パイプを構成するビームラインパイプ1153を通過する。電子ビームラインパイプ1153は、約5mmから5cmの直径を有し得る。いくつかの実施形態では、電子ビームラインパイプ1153は約10mmから20mmの直径を有し得る。平面アンジュレータでは、電子ビームラインパイプ1153は矩形の断面を有し、短い方の寸法は磁場の方向で約10mmから20mmとすることができる。
[00534] 第1の電子バンチ1154は、第1のアンジュレータセクション1151に入射するものとして示されている。第2の電子バンチ1155は、第1のアンジュレータセクション1151の端部に示されている。(上述のような)第1の3つのアンジュレータモジュール1131、1132、1133内での電子ビームと放射の相互作用の結果、第2の電子バンチはマイクロバンチ化を生じ、関連した光子バンチ1156を伴っている。第1のアンジュレータセクション1151から出る光子バンチ1156は、パルス放射ビームB1を形成する。
[00535] 光子バンチ1156は、概ね電子バンチ1155と重複しているものとして示され、第1のアンジュレータセクションの中心軸1157に沿って(図43の左から右に向かって)増大している。光誘導として一般に知られる現象のため、光子バンチは各アンジュレータセクション1151、1152内の各電子バンチに概ね追従する。光誘導は2つの効果の結果である。第1の効果はアンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134内の光増幅によるものである。これは、電流密度が最大となる場所(これは電子バンチの中心の近傍又はこの中心にある)で自由電子レーザFELの利得が最高となるからである。この第1の効果は、各アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134内の光誘導を促進するだけである。第2の効果は電子ビームE内の光屈折の結果である。電子ビームの屈折率の実部は電子バンチ中心の近傍で又はこの中心で最大となるので、電子ビームEは光ファイバと同じように光を導く。
[00536] アンジュレータ24は更に、1つ以上の隣接アンジュレータセクション対間に配置されたステアリングユニットを備えている。図43を参照すると、アンジュレータ24は、第1及び第2のアンジュレータセクション1151、1152間に配置されたステアリングユニット1158を備えている。ステアリングユニット1158は、第1のアンジュレータセクション1151から出射した放射ビームB1が伝搬する第1のアンジュレータセクション1151の軸1157に対して角度1159だけ電子ビームを曲げる。ステアリングユニット1158の後に第3の電子バンチ1160が示されている。放射ビームB1は第1のアンジュレータモジュール1151の軸1157に沿って伝搬し続け、電子バンチ1160は放射ビームB1に対して分離距離hだけずれる。この距離は、ステアリングユニット1158の曲げ角1159及び長さLに依存する。
[00537] ステアリングユニット1158は、第1のアンジュレータセクション1151から出射した電子ビームEの軌道を変更して、電子ビームEが第2のアンジュレータセクション1152への入射時に第1のアンジュレータセクション1151を出射した放射ビームB1から少なくとも部分的に分離されるように構成されている。従って、電子ビームEは第2のアンジュレータセクション1152内で周期経路をとるが、第1のアンジュレータセクション1151から出射した放射ビームB1の少なくとも一部は、第2のアンジュレータセクション1152を伝搬する電子ビームEと空間的に重複しない。この結果、電子ビームEは第2のアンジュレータセクション1152を伝搬する間に放射ビームB1のこの部分と相互作用しない。電子ビームEは、第2のアンジュレータセクション1152を伝搬する際に放射ビームB1から効果的に部分的に切り離される。
[00538] 分離距離hは、電子バンチ1160が光子バンチ1150から完全に切り離されるようにしてもよく、又は電子バンチ1160が光子バンチ1150と部分的に重複するようにしてもよい。各電子バンチを以前に発生させた光子バンチから切り離すことは、比較的小さい曲げ角と曲げフィールド長で可能である。これは、電子バンチ及び光子バンチが双方とも約100μm以下の直径を有するからである。例えば切り離しは、約100マイクロラジアンの曲げ角と約1mの曲げフィールド長で達成可能である。
[00539] ステアリングユニット1158において電子ビームEを曲げる角度1159は、第1のアンジュレータセクション1151から出射したEUV放射ビームB1の発散よりも大きい場合がある。第1のアンジュレータセクション1151から出射したEUV放射ビームB1の発散は、例えば約100マイクロラジアンであり得る。このような実施形態では、遠距離場において、自由電子レーザFELは、重複しない複数の(この例では2つの)EUV放射ビームを生成し、これらを調節して個別に用いることができる。
[00540] この代わりに又はこれに加えて、ステアリングユニット1158において電子ビームEを曲げる角度1159は、EUV放射ビームB1の発散よりも小さい場合がある。このような実施形態では、EUV放射ビームは遠距離場において少なくとも部分的に重複し、従って所望の強度分布を与えるために使用可能である。
[00541] ステアリングユニット1158は、FELプロセス中に電子バンチ内で生じるエネルギ幅による収差を低減させるように配置した磁石を含むことができる。これらは、より高次の磁石を備え得る(例えば六極子、八極子)。
[00542] ステアリングユニット1158並びに第1及び第2のアンジュレータセクション1151、1152は、電子ビームが第2のアンジュレータセクション1152の入口に入射する際に初期軌道が第2のアンジュレータセクション1152の第1のアンジュレータモジュール1134の許容可能軌道範囲内となるように配置されている。従って、電子ビームEは第2のアンジュレータセクション1152内で放射と相互作用して、コヒーレントな放射の放出を誘導する(第2の放射ビームB2を生成する)。図43に示す実施形態では、アンジュレータモジュール1131、1132、1133、1134はヘリカルモジュールである。従って、電子ビームEが第2のアンジュレータセクション1152の入口に入射する際に初期軌道が第2のアンジュレータセクション1152内の第1のアンジュレータモジュール1134の許容可能軌道範囲内となることを保証するため、第1及び第2のアンジュレータセクション1151、1152は、それらの中心軸が整合しないように配置される。これによって電子ビームEは、ステアリングユニット1158によって角度1159だけ曲げられたにもかかわらず、第2のアンジュレータセクション1152の有効磁場領域内に収まることができる。また、電子ビームEと第2のアンジュレータセクション1152の中心軸との整合を向上させるために、第2のアンジュレータセクション1152を、第1のアンジュレータモジュール1151の中心軸1157の方向に(図43の右側に)ずらすことができる。
[00543] ステアリングユニット1158において電子ビームEを曲げる角度1159は、充分に小さくすることで、そのような機構で得られる全ての放射ビームを電子ビームラインパイプ1153内に収めることができる。
[00544] 電子ビームラインパイプ1153は、電子ビームEがアンジュレータ24内で通る経路にほぼ沿いつつ、電子ビームEから効果的に切り離された放射ビームB1の部分のための充分な空間を確保することを可能とする。有利な点として、これによって電子ビームEはビームラインパイプ1153のほぼ中心にとどまるので、航跡場による損失が最小限に抑えられる。あるいは、ビームラインパイプ1153を第1のアンジュレータセクション1151の軸1157と整合することも可能である。
[00545] 2つの放射ビームB1、B2は、アンジュレータ24から出た後、自由電子レーザFELによって放出され、リソグラフィシステムLS4、LS5のリソグラフィ装置に供給することができる。2つの放射ビームB1、B2はEUV放射を含む。
[00546] 任意選択的に、2つの放射ビームB1、B2の一方(又はその一部)を、例えば第1の電子セクション1151のようなアンジュレータセクションの一方の入口に導いてもよい。これは、第1のアンジュレータセクション1151内で誘導放出により増幅されるシード放射源として機能することができる。このように用いられる放射ビームは、例えば数百ワット未満のような低いパワーを有し得る。このため、アンジュレータ24の出力の近傍に配置したミラーを用いて放射ビームを導くことができる。
[00547] 上述の実施形態24は2つのアンジュレータセクション1151、1152及び単一のステアリングユニット1158を備えているが、この代わりに他の数のアンジュレータセクション及びステアリングユニットを用いてもよい。これによって、3つ以上の放射ビームをアンジュレータ24によって出力することが可能となる。
[00548] 図44を参照すると、3つのアンジュレータセクション1251、1252、1253を備えたアンジュレータ1224の代替的な実施形態が示されている。説明を容易にするため、図43に示すいくつかの特徴は図44に示していない。第1のアンジュレータセクション1251は2つのアンジュレータモジュール1231、1232を備え、第2のアンジュレータセクション1252は1つのアンジュレータモジュール1233を備え、第3のアンジュレータモジュール1253は1つのアンジュレータモジュール1234を備えている。電子ビームEは複数の離間した電子バンチを含み、これらは左側からアンジュレータ1224に入射して左から右へと移動する。電子ビームEは、アンジュレータ1224内の金属パイプを構成するビームラインパイプ1214を通過する。電子ビームEは、ビームラインパイプ1214の中心に沿って延在する軌道1210に追従する。
[00549] 電子ビームEは、第1のアンジュレータセクション1251を伝搬する際にアンジュレータモジュール1231、1232内の放射と相互作用し、放射ビームB1を発生させる。
[00550] ステアリングユニット1241は、第1のアンジュレータセクション1251から出射した電子ビームEの軌道を変更して、電子ビームEが第2のアンジュレータセクション1252への入射時に第1のアンジュレータセクション1251から出射した放射ビームB1から少なくとも部分的に切り離されるように構成されている。この結果、電子ビームEは、第2のアンジュレータセクション1252又は第3のアンジュレータセクション1253を伝搬する際に、第1のアンジュレータセクション1251から出射した放射ビームB1の少なくとも一部と相互作用しない。第1のアンジュレータセクション1251から出射した放射ビームB1は自由電子レーザによって出力される。
[00551] ステアリングユニット1241及び第1のアンジュレータセクション1251、1252は、電子ビームEが第2のアンジュレータセクション1252の入口に入射する際に初期軌道が第2のアンジュレータセクション1252の第1のアンジュレータモジュール1233の許容可能軌道範囲内となるように配置されている。従って、電子ビームEは第2のアンジュレータセクション1252内で放射と相互作用して、放射のコヒーレントな放出を誘導する(放射ビームB2を生成する)。前述の実施形態と同様、これは、第1及び第2のアンジュレータセクション1251、1252の中心軸が整合しないように配置することによって達成される。
[00552] ステアリングユニット1242は、第2のアンジュレータセクション1252から出射した電子ビームEの軌道を変更して、電子ビームEが第3のアンジュレータセクション1253への入射時に第2のアンジュレータセクション1252を出射した放射ビームB2から少なくとも部分的に切り離されるように配置されている。この結果、電子ビームEは、第3のアンジュレータセクション1253を伝搬する際に、第2のアンジュレータセクション1252から出射した放射ビームB2の少なくとも一部と相互作用しない。第2のアンジュレータセクション1252から出射した放射ビームB2は自由電子レーザによって出力される。
[00553] ステアリングユニット1241、1242は、電子ビームEの軌道を変えて、電子ビームE及び放射ビームB1、B2、B3の各々が電子ビームラインパイプ1214内に収容されてその壁に当たらないように構成されている。有利な点として、これは放射損失と電子ビームラインパイプ1214の加熱を回避する。アンジュレータセクション1251、1252、1253が平面アンジュレータである実施形態では、ステアリングユニット1241、1242は、電子ビームEの軌道がほぼ1つの(アンジュレータ1224が発生する磁場にほぼ垂直な)面内に存在するように配置することができる。有利な点として、これによってビームラインパイプ1214を前記面に垂直な方向で小さく維持し、このためアンジュレータ1224における磁石間の分離も小さくすることができる。アンジュレータセクション1251、1252、1253がヘリカルアンジュレータである実施形態では、ステアリングユニット1241、1242は、各アンジュレータセクション1251、1252、1253内の電子ビームEの方向がほぼ円錐上に存在するように配置することができる。有利な点として、これは、ビームラインパイプ1214の直径を小さく維持しながら、電子ビームE及び発生した全ての放射ビームを収容することができる。
[00554] ステアリングユニット1242並びに第2及び第3のアンジュレータセクション1252、1253は、電子ビームEが第3のアンジュレータセクション1253の入口に入射する際に初期軌道が第3のアンジュレータセクション1253の第1のアンジュレータモジュール1234の許容可能軌道範囲内となるように配置されている。従って、電子ビームEは第3のアンジュレータセクション1253内で放射と相互作用して、放射のコヒーレントな放出を誘導する(放射ビームB3を生成する)。
[00555] 図43及び図44を参照して上述したものに対する代替的な実施形態では、各アンジュレータセクションはいかなる数のアンジュレータモジュールを含んでもよく、一般には異なるアンジュレータセクションが異なる数のアンジュレータモジュールを備えることができる。いくつかの実施形態では、第1のアンジュレータセクションは、以降のアンジュレータモジュールよりも多くのアンジュレータモジュールを備えることができる。
[00556] 図45は、レーザ放射のパワーを、従来のアンジュレータ(すなわち単一のアンジュレータセクションを含むアンジュレータ)内を進む距離Lの関数としてグラフで示す。単一の電子バンチ1400がアンジュレータに入射し、自由電子レーザプロセスが低パワー領域1450でノイズから開始する。電子バンチがアンジュレータ内を進んでいくと自由電子レーザプロセスは電子バンチのマイクロバンチ化へと進行し、レーザパワーが増大する。指数関数的な成長モード1451の間、電子1401は適度にマイクロバンチ化した状態1401である。マイクロバンチ化は、電子バンチが充分にマイクロバンチ化した状態1402となって放射パワーが飽和1452に達するまで増大する。
[00557] アンジュレータの各アンジュレータモジュール内で、各バンチの相対論的電子がその対応する光子バンチと相互作用すると、放射パワーが変化する。ドリフト空間(アンジュレータモジュール間の領域)内で、電子は周期経路をとらず、従って放射から切り離される。従って、これらの領域内では放射パワーはほぼ一定のままである。これは図45において領域1460で示されている。
[00558] マイクロバンチ化が充分に進展したアンジュレータの一部において、各電子バンチから放射の大部分が抽出される(1462)。
[00559] 本発明の実施形態では、光子及び関連した電子バンチは、2つの隣接したアンジュレータセクション間で、例えばこれらのアンジュレータセクション間のドリフト空間において電子ビームEを偏向させることによって分離されるか又は部分的に分離される。電子ビームEの関連した光子ビームからのこの切り離し又は部分的な切り離しが、マイクロバンチ化が充分に又はほぼ充分に進展した時に行われるならば、次のアンジュレータセクションでレージングが迅速に開始する。次のアンジュレータセクションにおける放射パワーの増大(図45においてグラフ1470で示す)は、自由電子レーザプロセスがノイズから開始する第1のアンジュレータセクションにおけるよりも短い距離にわたって発生する。電子バンチに関連した光子が部分的にのみ取り除かれる場合には、次のアンジュレータセクションにおける放射パワーの増大はもっと短い距離内で(図45においてグラフ1471で示す)発生し得る。
[00560] 図46を参照すると、グラフ1480、1481、1482は、本発明の一実施形態によるアンジュレータを用いて放出された各光子ビームB1、B2、B3のパワーを、アンジュレータ内を進む距離Lの関数として示す。3つの光子ビームB1、B2、B3は、(例えば図44における実施形態のような)3つのアンジュレータセクションを備えたアンジュレータを用いて放出される。グラフ1480は、第1のアンジュレータセクションで生成される第1のEUV放射ビームB1のパワーを示す。グラフ1481は、電子ビームEの第1の曲げの後に第2のアンジュレータセクションで生成される第2のEUV放射ビームB2のパワーを示す。グラフ1482は、電子ビームEの第2の曲げの後に第3のアンジュレータセクションで生成される第3のEUV放射ビームB3のパワーを示す。この例では、電子ビームEの各曲げの後、直前のアンジュレータセクションからの放射ビームのパワーの一部が新たなビームのシードとなってレージングが再開する(1485、1486)。すなわち、第1の放射ビームB1の一部は第2の放射ビームB2のシードとなり、曲線1481の初期値1485を設定する。第2の放射ビームB2の一部は第3の放射ビームB3のシードとなり、曲線1482の初期値1486を設定する。
[00561] 図46に示すように、概して、本発明の一実施形態によるアンジュレータが生成する複数の放射ビームの各々は異なるパワーを有し得る。各放射ビームのパワーは、その放射ビームの光子が電子ビームEから分離された後に大きく変化しない。これは、各放射ビームの極めて小さい部分だけが次のアンジュレータセクションのシードに用いられるからである。異なるパワーの放射を用いて、電子ビームEの各曲げの後に、EUVビームにおけるレージングをシード及び/又は再開することができる。
[00562] 代替的な実施形態では、各アンジュレータセクションの後、そのアンジュレータセクションで発生させた放射ビームから電子ビームEを完全に分離して、次のアンジュレータセクションでは放射ビームのどの部分も電子ビームEと相互作用しないようにする。このような実施形態では、新しい各アンジュレータセクションにおけるレージングはノイズから開始し得る。しかしながら、マイクロバンチは引き続き存在しているので、コヒーレントな放射の増大は最初のアンジュレータセクションにおけるよりも極めて高速であり得る。
[00563] アンジュレータ24のテーパ化の量(すなわちどのようにアンジュレータパラメータKがアンジュレータ24の長さに沿って変動するか)、電子ビームの集束(格子設計としても知られる)、及び個々のアンジュレータモジュールごとの磁石の長さ及び/又は数は、自由電子レーザFELの性能を調整するために調節可能なアンジュレータ24のパラメータである。例えばテーパ化及び集束は、自由電子レーザFELにより出力される放射ビームのいくつか又は各々が単一のリソグラフィ装置及び/又は別のEUV消費デバイスへの供給のために充分なパワーを有するように選択することができる。これに加えて又はこの代わりに、それらの選択は、1つのアンジュレータセクションから出射する予めマイクロバンチ化された電子ビームが、リソグラフィ装置ツール又は次のアンジュレータセクションにおける一定数のアンジュレータモジュール内でEUVを消費する他のデバイスを駆動するために充分なパワーの光子ビームを生成するように行うことができる。1つのアンジュレータセクションから出射するこれらの予めマイクロバンチ化された電子ビームは、そのセクションから出射する放射ビームの一部によって部分的にシードすることができる。好ましくは、予めマイクロバンチ化された電子ビームは、リソグラフィ装置ツール又は1つもしくは数個のアンジュレータモジュール内でEUVを消費する他のデバイスを駆動するために充分なパワーの光子ビームを生成することができる。
[00564] 図43、図44を参照して説明した例示的な実施形態は、2つ又は3つのアンジュレータセクション及び放射ビームを用いるアンジュレータに関連するが、代替的な実施形態はもっと多くのアンジュレータセクション及び放射ビームを備えることも可能である。
[00565] いくつかの実施形態では、ステアリングユニットに加えて、各アンジュレータセクション対の間のドリフト空間が、シード光子バンチ及び電子バンチの最適な適合を与えるように構成された位相調整ユニットを含むことができる。位相調整ユニットは、例えばフィールド制御のK値を用いる小型アンジュレータモジュールを備え得る。そのような位相調整器を用いて、個別の放射ビームの1つのパワーを制御することができる。
[00566] いずれかのアンジュレータセクション内のアンジュレータモジュールのK値は個別に調整可能であり、及び/又は各アンジュレータモジュール内の磁石は個別に調整可能であり得る。これによって、複数の放射ビームの各々のパワーに対する制御が得られる。
[00567] ステアリングユニットは電子ビームシフト要素を備えることができる。これは、電子ビームEをその伝搬方向にほぼ垂直な方向に数百μmまでシフトさせるように動作可能であり得る。電子ビームシフト要素は調整可能とすることができる。そのような機構によって、電子ビームと放射ビームとの重複及び放射ビーム間の分離角度を別個に制御する。電子ビームシフト要素は1対の双極子磁石を含み得る。
[00568] 電子ビームEは、ステアリングユニットによって曲げられる前に横方向に拡張することができ、その後で横方向に圧縮して元の寸法に戻すことができる。これは、例えばコヒーレントシンクロトロン放射による電子ビームEのバンチエミッタンスの劣化を軽減することができる。従ってそのような実施形態では、各アンジュレータセクション対間のドリフト空間は、ビームエクスパンダ、ステアリングユニット、及びビーム圧縮器を備え得る。あるいは、当業者には認められるであろうが、電子ビームEは、電子ビームの最大局所寸法に平行な方向に曲げることも可能である。
[00569] 図47は、放射源SO3、本発明の一実施形態による第1の光学要素1520、ビームデリバリシステム1519、及び8つのリソグラフィ装置LA1〜LA8を備えた例示的なリソグラフィシステムLS6を示す。放射源SO3は、極端紫外線(EUV)放射ビームB(これをメインビームと称することがある)を発生するように構成されている。もっと多いか又は少ない数のリソグラフィ装置を提供し得ることは認められよう。
[00570] ビームデリバリシステム1519はビーム分割光学部品を備えている。ビーム分割光学部品は、メイン放射ビームBを複数の放射ビームBa〜Bh(これらを分岐ビームと称することがある)に分割し、その各々がリソグラフィ装置LA1〜LA8の異なるものに送出される。
[00571] ビームデリバリシステム1519は更にビーム拡大光学部品を備えることができる。ビーム拡大光学部品は、放射ビームBの断面積を拡大するように構成することができる。これにより、ビーム拡大光学部品の下流のミラーに対する熱負荷が軽減する。これによってビーム拡大光学部品の下流のミラーは、低スペックで、あまり冷却を行わない、従って安価なものとすることができる。これに加えて又はこの代わりに、これは下流のミラーを近垂直入射とすることができる。
[00572] ビーム拡大光学部品をビーム分割光学部品の上流に配置して、メイン放射ビームBがビーム分割光学部品の前にビーム拡大光学部品を通過できるようにする。代替的な実施形態では、ビーム分割光学部品をビーム拡大光学部品の上流に配置することができる。このような実施形態では、各分岐放射ビームBa〜Bhに別々のビーム拡大光学部品を設けることができる。代替的な実施形態では、ビームデリバリシステム1519はビーム拡大光学部品を備えない場合がある。
[00573] 放射源SO3、第1の光学要素1520、ビームデリバリシステム1519、及びリソグラフィ装置LA1〜LA8は全て、外部環境から隔離可能であるように構築及び配置することができる。放射源SO3、第1の光学要素1520、ビームデリバリシステム1519、及びリソグラフィ装置LA1〜LA8の少なくとも一部において真空を与えて、EUV放射の吸収を最小限に抑えることができる。リソグラフィシステムLS6の異なる部分に異なる圧力の真空を与える(すなわち大気圧より低い異なる圧力に保持する)ことも可能である。
[00574] リソグラフィ装置LA1〜LA8は概ね図2を参照して上述したようなものとすればよい。
[00575] 以下の検討は、自由電子レーザを備えた放射源、具体的には自由電子レーザによって発生される放射に関する。自由電子レーザは本発明に必須でないことは認められよう。本発明の実施形態は他の高パワー放射源を組み込んでもよい。
[00576] 図47を参照すると、自由電子レーザ(FEL)のアンジュレータ24は、メイン放射ビームBに加えて、例えばガンマ放射線及び中性子等の電離放射線Rを放出する。この追加の電離放射線Rは健康上有害なものであり、アクチュエータ及びモータの磁石のように影響を受けやすい材料に損傷を与える恐れがあるので、望ましくない。
[00577] 従って、リソグラフィシステムLS6には、EUV放射ビームBの一部を偏向させて反射放射ビームB’を形成すると共に追加の電離放射線Rの吸収又は透過するように配置された反射性の第1の光学要素1520が設けられている。自由電子レーザは、電離放射線を収容するように配置されたバンカ内に配置することができ、第1の光学要素1520もこのバンカ内に配置することができる。このため、EUV放射ビームBは、アンジュレータ24の軸と整合されていないバンカ内のアパーチャを介してビームデリバリシステム1519の方へ送出することができる。追加の電離放射線Rは吸収されるか、又は概ねアンジュレータ24の軸方向に伝搬し続けてバンカによって収容される。
[00578] 自由電子レーザFELにより出力された放射ビームBは、ほぼ円形の断面及びガウス分布に近い強度プロファイルを有することができる。EUV自由電子レーザにより生成された放射ビームBは典型的に比較的小さいエテンデュを有する。具体的には、自由電子レーザFELにより生成されたEUV放射ビームBは、レーザ生成プラズマ(LPP)源又は放電生成プラズマ(DPP)源(これらは双方とも当技術分野において既知である)によって発生されるEUV放射ビームよりも著しく小さいエテンデュを有する。例えば放射ビームBは、例えば100マイクロラジアン未満のような500マイクロラジアン未満の発散を有し得る。放射ビームBは、アンジュレータ24からの出射時に例えば約50μmから100μmの直径を有し得る。
[00579] 8つのEUVリソグラフィ装置LA1〜LA8の高いスループットをサポートするため、自由電子レーザFELの出力パワーは、例えば約30kWのように数十キロワットのオーダーとすることができる。このようなパワーでは、自由電子レーザにより生成される放射ビームBの初期直径は極めて小さいので、放射ビームBのパワー密度はかなり高い。更に、自由電子レーザにより生成される放射ビームBの発散は極めて小さいので、距離が遠くなるにつれて放射ビームBのパワー密度は極めてゆっくり低下する。
[00580] 従って、第1の光学要素1520は自由電子レーザFELを収容したバンカ内に配置されるが、熱的な理由のためにアンジュレータ24からは比較的距離が離れている。例えば、第1の光学要素はアンジュレータ24の出口から約1520m離して配置することができる。初期直径が約1550μmで発散が約50マイクロラジアンの放射ビームの場合、アンジュレータから1520mの距離における放射ビームの直径は約2mmである。第1の光学要素1520に対する熱負荷を低減するには、放射ビームBが第1の光学要素1520に入射する際に、例えば約2度のかすめ入射角のような小さいかすめ入射角となるように構成すればよい。これによって、広いビームスポットエリアに放射が広がり、更に第1の光学要素1520の反射率が上昇する。30kWのパワーの放射ビームBの場合、ビームエネルギの5%が第1の光学要素1520によって吸収されると仮定すると、第1の光学要素1520は約1500Wの熱負荷を受ける。1520mの距離で、かすめ入射角が小さい場合、この熱負荷を第1の光学要素1520の表面の約1cm2のエリアに広げることができる。例えば、ビーム直径が2mmの円形放射ビームが2度のかすめ入射角で第1の光学要素1520に入射すると、熱負荷は第1の光学要素1520の表面の0.9cm2の楕円エリアに広がる。
[00581] 図48は、リソグラフィシステムLS6の第1の光学要素1520を形成することができる光学要素1550を示す。光学要素1550は、概ねディスク形状の本体1560と、自由電子レーザFELからの放射ビームBを受光してビームスポット領域1580を形成するために本体1560上に設けられた反射面1570と、を備えている。光学要素1550は、放射ビームBが例えば約2度のかすめ入射角のように小さいかすめ入射角で反射面1570に入射するように構成されている。従って、ビームスポット領域1580は細長い楕円形状である。
[00582] 光学要素1550は更に、回転軸1590を中心として本体1560を回転させるように動作可能な移動機構(図示せず)を備えている。例えばディスク形状の本体1560は、回転軸1590に沿って延在するシャフトを備え得る。シャフトは、例えば2つの軸受のような1つ以上の軸受によって支持することができる。シャフトは、モータ又はエンジンのようないずれかの適切な機構により回転駆動することができる。
[00583] 回転軸1590に沿った又はこれに平行な方向を、軸方向と呼ぶことができる。回転軸1590に対して又はこれから延出し前記回転軸1590に垂直な方向を、半径方向と呼ぶことができる。
[00584] 反射面1570は、本体1560の軸方向に面する表面に配置されている。移動機構が回転軸1590を中心として本体1560を回転させると、反射面1570は回転し、ビームスポット領域1580を反射面1570上で移動させる。ビームスポット領域1580は反射面1570上で周期経路、具体的には円形経路に追従する。従って、本体1560が回転すると、ビームスポット領域1580は反射面1570の環状領域をたどる。
[00585] いくつかの実施形態では、ビームBを拡大するために反射面1570を湾曲させることも可能である。例えば反射面は球の一部又はトーラスの一部を形成することができる。以下の実施形態では、放射ビームから本体1560への熱伝達から反射面1570の湾曲が生じ得ることを記載する。そのような熱伝達で生じる湾曲は、反射面1570がそのような熱伝達なしで湾曲している場合の追加の湾曲であり得る。
[00586] 一般に、2次元表面は異なる方向において異なる湾曲を有し得る。以下において、「ある表面上の所与のポイントでの、所与の方向におけるその表面の湾曲」は、前記表面と、そのポイントにおける表面の法線ベクトル及び前記所与の方向におけるベクトルを含む面との交点が形成する曲線の湾曲を意味することは認められよう。
[00587] 放射ビームBのパワーの一部は光学要素1550により吸収されて、反射面1570を加熱する。移動機構は反射面1570を移動させてビームスポット領域1580が反射面1570上で動くように動作可能であるので、光学要素1550により吸収されるパワーは広いエリアに広がり、熱負荷の密度を低下させる。これによって光学要素1550は、更に高いパワー密度の放射ビームを受光することが可能となる。これは、同一又は同様の寸法の静的光学要素とは対照的である。
[00588] 光学要素1550は、放射ビームBのエネルギの一部を吸収して、概ね反射面1570から軸方向に遠ざかって延在する温度勾配を生じる。熱は、反射面1570から軸方向に遠ざかって本体1560内へ、この温度勾配を伝っていく。軸方向の温度勾配の結果、本体1560の異なる部分が異なる膨張を生じ、これによって反射面1570が歪んで、半径方向に湾曲した凸形となる。
[00589] 本体の2つの対向表面が距離d(本体の厚さ)だけ離れている場合、これらの表面の一方に均一にQワットの熱負荷が加わると、エッジ効果を無視するならば、2つの表面間の温度差ΔTは以下によって与えられる。
[00590] ここで、Aは熱が加わるエリアであり、λは本体の熱伝導率である。本体1560は例えば、熱伝導率が約1560Wm−1K−1であるシリコンから形成することができる。30kWのパワーの放射ビームBでは、ビームエネルギの5%が第1の光学要素1550により吸収されると仮定すると、第1の光学要素1550は約1550Wの熱負荷を受ける。入来放射ビームBの直径が2mmであり、かすめ入射角が2度である場合、ビームスポット領域1580は、短軸の長さが2mm超で長軸の長さが約58mmの楕円形である。従って、楕円の長軸が半径方向に延出している場合、熱負荷は、半径方向の長さが約58mmである反射面1570の環状領域の周りに広がる。この環状領域の内半径が80mmである場合、熱負荷が加わるエリアは約0.04m2である。本体1560の軸方向の厚さが1520mmである場合、0.04m2のエリアにおける1500Wの熱負荷により、本体1560の2つの対向する軸方向に面する表面での温度差は約5Kとなる。
[00591] 本体の2つの対向表面が距離d(本体の厚さ)だけ離れている場合、これらの表面の一方が均一に加熱されて2つの表面間に温度ΔTが生じると、加熱された表面は凸形となり、その曲率半径Rは以下によって与えられる。
[00592] ここで、αは本体の熱膨張係数である。シリコンの熱膨張係数は2.5x10−6K−1である。従って、(上述の例示的な寸法を用い、5Kの温度差を仮定した)反射面1570の曲率半径は約1600mである。従って反射面1570は、(放射ビームBの入射面における)焦点距離fがf=bR/2で与えられる円柱レンズのように機能する。ここでRは曲率半径であり、bは放射ビームBのかすめ入射角(単位はラジアン)である。曲率半径が1600mであり、かすめ入射角が0.035ラジアン(2度と同等)である場合、焦点距離は約28mである。
[00593] 上記の計算では、簡略化のため、放射ビームからの熱負荷が反射面1570の固定(環状)エリアで均一に広がると仮定していることに留意すべきである。しかしながら一般には、熱負荷は固定エリアにおいてばらつきがある可能性がある。固定エリアの所与の部分における熱負荷は、放射ビームBの強度分布、かすめ入射角、及び本体1560の回転時に反射面1570上でビームスポット領域1580がたどる経路に依存する。従って一般には、軸方向の温度勾配に加えて、反射面1570の面内、半径方向、反射面1570の固定エリア内に温度勾配がある。この結果、反射面1570は、反射面1570の固定エリア内の異なる半径方向位置において異なる変形を生じる。すなわち、反射面1570上の所与の位置における半径方向の局所的な曲率半径は、その所与の位置の半径方向位置の関数である。このため、反射面1570は円柱レンズとして機能しなくなり、反射面1570の異なる部分は概ね異なる焦点距離を有する。
[00594] 放射ビームBの熱負荷の結果として生じる反射面1570の湾曲は、特に反射面1570の曲率半径が入射する熱負荷に依存するために、問題となり得る。
[00595] 従って、光学要素1550は更に、反射面1570の湾曲を変えるための歪み機構を備えることができる。歪み機構は、反射面1570の湾曲を変えることで、放射ビームBが引き起こす反射面1570の湾曲を少なくとも部分的に補正するように構成することができる。
[00596] ビームスポット領域1580が充分に迅速に動くならば、このビームスポット領域は反射面1570上で周期経路をとるので、周期経路に沿った方向に放射ビームBによって生じる反射面1570の湾曲は無視できる程度である。すなわち、所与の半径方向位置では、固定エリアの周囲で強度は同一である。引き起こされる最大の湾曲の方向は、周期経路に垂直な方向すなわち半径方向である。このような湾曲は、歪み機構を用いて補正することが簡単である。
[00597] 図49に示すように、いくつかの実施形態において、入来放射ビームBは、本体1560の反射面1570の一方側の上を通り、回転軸1590を通過して、ビームスポット領域1580に接近する。放射ビームBがビームスポット領域1580に入射する際、その伝搬方向は概ね(局所的)半径方向(すなわち回転軸1590に垂直)であり、軸方向(すなわち回転軸1590に平行)の成分は小さい。この軸方向成分の大きさは、放射ビームBのかすめ入射角によって決定される。有利な点として、このような実施形態では、熱負荷が加わる反射面1570の環状領域1581(図49にはこの一部のみを示す)の半径方向の長さが最大化される。これは、ビームスポット領域1580の長軸の長さ(放射ビームBの直径及びかすめ入射角に依存する)によって与えられるからである。
[00598] 代替的な実施形態では、放射ビームBは、形成するビームスポット領域1580が回転軸1590に対して異なる向きを有するように反射面に接近することができる(すなわち、ビームスポット領域の長軸が半径方向に全く延出しないか、又は全体が半径方向に延出するわけではない)。例えば、再び図49を参照すると、入来放射ビームBが回転軸1590の上を通らず、放射ビームBがビームスポット領域1580’に入射する際にその伝搬方向が概ね(局所的)接線方向(すなわち回転軸1590及び半径方向の双方に対して垂直)であり、軸方向(すなわち回転軸1590に平行)の成分が小さい、という場合がある。このような実施形態では、熱負荷が加わる反射面1570の環状領域1581’(図49にはこの一部のみを示す)の半径方向の長さは、放射ビームBの直径によって与えられる。従って、このような実施形態は、ビームスポット領域の長軸が半径方向に延出するものよりも熱の広がりが小さい。
[00599] 熱膨張のため、反射面1570には環状リッジが生じる。このリッジは、ビームスポット領域1580よりもビームスポット領域1580’の方が急峻なものとなる。ビームスポット領域の長軸が接線方向に延出する実施形態では、ビームスポット領域1580’は概ね環状リッジと整合している。従って、ビームスポット領域1580’の長軸に沿った反射面1570の高さのばらつきは少ない。反射した放射ビームB’は、ビームスポット領域の短軸に沿う方向よりも、ビームスポット領域の長軸に沿う方向の高さのばらつきに対してわずかに影響を受けやすいことがある。更に、入来放射ビームBは回転軸1590を通過しないので、光学要素1550の本体1560を軸方向の対向する両側で回転のために支持することができる。これによって、例えばシャフトは放射ビームBを遮ることなく本体1560の反射面1570から外れて延出することができる。これによって、例えばシャフトを本体1560の各側で軸受によって支持することができ、単一側の軸取り付けで行うよりも容易かつ安定した実施が可能となる。
[00600] 歪み機構は、反射面1570の半径方向の湾曲を変えるように動作可能であり得る。例えば歪み機構は、本体の半径方向外側エッジに概ね軸方向の力を加えるように動作可能であり得る。歪み機構には様々な異なる実施形態が可能である。これより、図50から図55を参照して歪み機構のいくつかの例について説明する。
[00601] 図50は、図48及び図49の第1の光学要素1550を形成し得る光学要素1600を示す。光学要素1550のものと同一の光学要素1600のフィーチャは共通の標示で示し、以下で詳細な説明は行わない。
[00602] シャフト1611は、本体1560から回転軸1590に沿って軸方向に延出する。シャフトは、例えば2つの軸受のように、1つ以上の軸受(図示せず)によって支持されている。移動機構は、シャフト1611を回転駆動するように動作可能なモータ1620を備えている。
[00603] 光学要素1600には、概ねディスク形状の本体1560から軸方向に遠ざかって延出する複数の質量(mass)1630を備えた歪み機構1601が設けられている。複数の質量1630の各々は概ね球形である。代替的な実施形態では、複数の質量は別の形状を有してもよい。複数の質量1630は本体1560の円周に均一に分散している。
[00604] この歪み機構1601は、以下で説明するように反射面1570の湾曲を変えるのに適している。本体1560の回転により、複数の質量1630に半径方向外向きの遠心力が作用する。遠心力は、本体1560の半径方向外側エッジに作用するモーメントを発生させ、反射面1570の半径方向の湾曲を変化させる。本体1560の半径方向外側エッジに加わる曲げモーメントは、本体1560の回転率の二乗に比例する。従って、回転率を変更することで、反射面1570の歪みレベルを制御することが可能となる。例えば、放射ビームBによって加わる熱負荷に応じて回転率を変動させることができる。
[00605] 半径が約150mmのディスクでは、反射面1570における約0.04m2の面積の環状領域で1500Wの熱負荷を受ける。この場合、約0.05Nmのトルクを用いて充分な曲げモーメントを与え、熱負荷が引き起こす変形を実質的に補正することができる。これは例えば、本体から軸方向に約5cmだけ変位させた約1kgの全質量を用いて、4ラジアン/秒又は0.65Hzの回転速度によって達成可能である。
[00606] 複数の質量1630の各々は、軸方向に延出する壁部1632を介してディスク形状の本体1560に接続されている。隣接した質量1630の対に設けられた軸方向に延出する壁部1632は、壁部1634によって接続されている。各壁部1634は弓形である。代替的な実施形態では、隣接した質量1630の対に設けられた軸方向に延出する壁部1632は、別の形状を有する壁部1634によって接続することができる。例えばいくつかの実施形態では、壁部はフォーク状の弓形壁部とすることができる。隣接した質量1630の対間の壁部1634は、本体1560の円周全体にモーメントを分散させる。壁部1634の形状は、本体1560の円周全体でのモーメントのほぼ均一な分散を保証するように最適化することができる。
[00607] 第1の光学要素1600が採用する歪み機構1601は、反射面1570の湾曲を変えるためのシンプルな機構を提供する。湾曲の量は、本体1560の回転速度を変えることで調整可能である。
[00608] 第1の光学要素1600は更に、以下で説明するような冷却機構を備えてもよい。一例としての冷却機構は、本体1560の反射面1570とは反対側の軸方向に面する表面に隣接して配置された静的冷却デバイス1640を備えている。回転本体1560と静的冷却デバイス1640との間に狭い間隙が設けられている。間隙には、毛管力によって所定位置に保持された液体金属層1642が充填されている。この金属は、比較的低い温度で溶解する可融合金を含むことができる。例えば金属は、75.5重量%のガリウム及び24.5重量%のインジウムを含有し得るガリウム及びインジウムの合金を含むことができる。このような合金は15.7℃の融点を有する。静的冷却デバイス1640に、例えば水等の流体流を受容するためのチャネル1644を設けて、冷却デバイス1640から熱を逃がす。
[00609] このような冷却機構は、回転水継手を用いることなく回転本体1560の水冷を可能とする。これは、水漏れの危険を回避するか又は少なくとも大幅に低減する。熱を伝達するための液体金属層の使用は、(EUV放射ビームBに必要であるような)超高真空条件及び本体1560の高い角速度と両立できるロバストな技法である。
[00610] 他の実施形態では、回転本体1560と静的冷却デバイス1640との間で放射によって熱を伝えることができる。例えば、本体1560及び静的冷却デバイス1640の対向表面に高放射率材料のコーティングを設けて、本体1560による放射と、狭い間隙を介した静的冷却デバイス1640による放出された放射の吸収とを促進することができる。間隙に水素等の気体を充填することで、更に熱伝導による本体1560の冷却も与えることができる。
[00611] 図50Aは、図48及び図49の第1の光学要素1550を形成し得る代替的な光学要素1650を示す。図50Aの機構では、冷却及び形状補正の機能を組み合わせる。光学要素1650において、回転本体1560は筐体1651内に設けられている。回転本体1560の反射面1570は筐体1651の上面を形成して、筐体内で回転本体1560の下に空隙を形成するようになっている。
[00612] 筐体1651の空隙内の回転本体1560の下に、少なくとも1つのノズル1652が設けられている。ノズル1652は、パイプ1653によって冷却剤流体(図示せず)の供給部に接続され、回転本体1560の裏側に冷却剤流体をスプレーするように配置されている。冷却剤流体は、回転本体の裏側に接触すると、筐体内で蒸発する。例えば1kWの冷却力を達成するには、0.5mL/sの液体水を蒸発させればよい。
[00613] 蒸発した冷却剤蒸気は、回転本体1560と筐体1651との界面にあるポンプ式非接触シール1654を用いて、ビームデリバリシステムの真空から隔離される。ポンプ1655はポンピングチャネル内に気体を注入して、冷却剤蒸気が逃げるのを防止する。図50Aにはポンピングチャネルを1つだけ示すが、シール1654は複数のポンピング段を含むことも可能である。
[00614] 出口1656によって冷却剤蒸気を筐体1651から逃がすことができる。調整可能バルブ1657により空隙内の圧力が調節可能となる。例えば水蒸気の場合、室温におけるその圧力(約2.5kPa)は回転本体上に力を発生させ、これは、熱負荷による変形の方向の反対方向に回転本体1560を曲げる傾向がある。バルブ1657を調節することで、回転本体1560が「ニュートラルな」形状となるように空隙内の圧力を調整することができる。圧力センサ1658を設けて空隙内の圧力を監視することができる。
[00615] 一実施形態では、入ってくる熱負荷の空間的なばらつきを補正するため、回転本体1560上の半径方向位置によって冷却力が異なるように、ノズル(又は複数のノズル)1652は回転本体1560の裏側に冷却剤の流れを発生させる。更に、回転本体1560上の半径方向位置に沿って冷却を変化させることで、熱変形の形状を更に自由に調整することが可能となる。
[00616] 一実施形態では、少なくとも一部の冷却剤は蒸発せず、回転本体の裏側から滴下する。この場合、回転本体1560に加わる熱負荷が大きいほど、多くの冷却剤が蒸発し、空隙内の圧力が高くなり、結果として回転本体1560に大きな力がかかる。このように、圧力の形状補正効果を自己適合性とすることで、いっそう大きな熱負荷に適応することができる。
[00617] 図51は、歪み機構1601を組み込んだ代替的な光学要素1700を示す。第1の光学要素1550、1600のものと同一の光学要素1700の機構は共通の標示で示し、以下で詳細な説明は行わない。
[00618] 光学要素1700が図50の光学要素1600と異なる点は、軸方向の厚さが半径方向で変化する概ねディスク形状の本体1710を備えることである。反射面1570は概ね平坦なままであり、軸方向の厚さの変化は、本体1710の反射面1570とは反対側の軸方向に面する背面の形状を変更することで達成される。更に、光学要素1700は、本体1710の軸方向に面する背面に対して概ね相補的な形状を有する静的冷却デバイス1740を備えている。
[00619] 回転軸1590を含む面内での本体1710の断面形状は、放射ビームBから最大の熱負荷を受ける半径方向位置で反射面1570の最大の逆曲げ(counter−bending)が生じるようになっている。例えば上述のように、自由電子レーザFELが出力する放射ビームBは、ほぼ円形の断面及びガウス分布に近い強度プロファイルを有し得る。小さいかすめ入射角で入射する場合、そのような円形断面ビームは細長い楕円形のビームスポット領域1580を生成する。ガウス分布に近い強度プロファイルのため、楕円ビームスポット領域1580の中心は最大の熱負荷を受け、ビームスポット領域1580のエッジは最小の熱負荷を受ける。
[00620] ガウス分布に近い放射ビームBからの例示的な熱負荷を矢印1750で示す。このような熱負荷では、本体1710の軸方向の厚さは、ビームスポット領域1580の中心に対応する半径方向位置で最小であり、ビームスポット領域1580のエッジに対応する半径方向位置で最大である。
[00621] このような構成においては、この実施形態で質量1630に作用する遠心力によって与えられる単一の概ね軸方向の力を加えることで、歪み機構1601は異なる半径方向位置で異なる湾曲を生じることができる。
[00622] 図52から図54を参照して、図48及び図49の光学要素1550を形成し得る光学要素1800について説明する。光学要素1550、1600、1700のものと同一の光学要素1800の機構は共通の標示で示し、以下で詳細な説明は行わない。
[00623] 光学要素1800には、概ねディスク形状の本体1560から軸方向に遠ざかって延出する複数の部材1810を備えた歪み機構1801が設けられている。複数の部材1810の各々は磁性材料から形成され、強磁性板の形態とすることができる。複数の部材1810の各々は、外部磁場が存在する場合のみ磁化される軟磁性材料から形成することも可能である。このような軟磁性材料は、例えば永久磁石よりも好ましいことがある。これは、永久磁石の方が自由電子レーザFELから放出される放射線Rの影響を受けやすい場合があるからである。複数の部材1810は本体1560の円周に均一に分散している。歪み機構は更に、2つの電気コイル1812、1814を備えている。電気コイル1812、1814は固定され、同軸であり、各々がほぼ同じ軸方向位置で回転軸1590を中心としたリングを形成する。第1の電気コイル1812は複数の部材1810よりも半径方向内側に配置され、第2の電気コイル1814は複数の部材1810よりも半径方向外側に配置されている。コイル1812、1814の各々は多重撚線導体で構成することができる。
[00624] 第1及び第2のコイル1812、1814の周りで、電流が反対方向に流れる。図53に示すように、2つのコイル1812、1814は複数の部材1810の近傍に磁場1816を発生させ、それらに概ね軸方向の力を加える。次いで、この概ね軸方向の力は本体1560の半径方向外側のエッジに伝わる。
[00625] 従って、本体1560の半径方向外側エッジに加えられた概ね軸方向の力は電磁的に発生する。この概ね軸方向の力はディスク上に曲げモーメントを発生させ、反射面1570の湾曲を変化させる。局所的な曲げモーメントは半径方向の距離によって異なるので、本体1560の軸方向の厚さは一様でない場合がある(図52には示していない)。例えば軸方向の厚さは、回転軸1590の近くで最大であり、本体1560のエッジに向かって薄くなるようにテーパ化することができる。
[00626] 図54を参照すると、2つのコイル1812、1814は半径方向に距離Dだけ離れている。複数の部材1810の各々は、2つのコイル1812、1814の中間の半径方向位置に配置されている。この半径方向位置における磁場は、2つのコイル1812、1814からの軸方向距離yの関数として、以下によって与えられる。
[00627] ここで、Iは2つのコイルを流れる電流であり、Nは各コイルにおける巻線数であり、μ0は真空の透磁率であり、yは2つのコイルからの軸方向距離であり、Dは2つのコイルの半径方向分離距離である。ここで、D及びYが各電流ループの直径よりも著しく小さいと仮定する。最大磁場勾配はy=D/2で生じる。
[00628] このような構成は、反射面1570の湾曲を変えるためのシンプルな機構を提供する。生じる湾曲の量は、2つの電気コイル1812、1814を流れる電流を変えることで調整可能である。
[00629] 図55は、図48及び図49の光学要素1550を形成し得る光学要素1900を示す。第1の光学要素1550、1600、1700、1800のものと同一の光学要素1900の機構は共通の標示で示し、以下で詳細な説明は行わない。
[00630] 第1の光学要素1900は、以下で説明する内部冷却システム501を備えている。内部冷却システム501は、水等の冷却流体の流れのために、入口1982aと出口1982bとの間に延在する1つ以上のチャネル1982を備えている。1つ以上のチャネル1982は少なくとも部分的に、反射面1570が配置された概ねディスク形状の本体1910内に配置されている。入口1982a及び出口1982bは、2つの軸受1912、1913によって回転するように支持されたシャフト1911上に配置されている。チャネル1982は、シャフト1911を介して本体1910に対して及び本体1910から軸方向に延出している。
[00631] 内部冷却システム501は更に、シャフト1911に隣接した固定冷却剤供給部1984を備えている。固定冷却剤供給部1984には入口1986及び出口1988が設けられている。冷却水は入口1986を通って固定冷却剤供給部1984に入る。シャフト1911が回転すると、入口1986は内部チャネル1982の入口1982aと周期的に位置合わせされて、冷却水がチャネル1982に入って回転本体1910の方へ移動することを可能とする。加熱された水は本体1910からシャフト1911を通って戻る。シャフト1911が回転すると、出口1988は内部チャネル1982の出口1982bと周期的に位置合わせされて、加熱された水がチャネル1982から出口1988に入ることを可能とする。代替的な実施形態では、固定冷却剤供給部1984及び/又はシャフト1911には、入口1982a及び入口1986に対応した軸方向位置において第1の円周方向に延出する溝を設け、出口1982b及び出口1988に対応した軸方向位置において第2の円周方向に延出する溝を設けることができる。第1の円周方向に延出する溝によって、入口1982aは入口1986と連続的に流体連通することができ、第2の円周方向に延出する溝によって、出口1982bは出口1988と連続的に流体連通することができる。これは、内部冷却システム501の効率を上げることができる。
[00632] 光学要素1900は壁1990上に搭載され、本体1910が壁1990の一方側に配置されると共にシャフト1911が壁1990のアパーチャを貫通して反対側まで延出するようになっている。壁には真空シール1992を設けて、壁1990の2つの側を異なる圧力に維持することを可能とする。例えば、本体1910が配置された壁の側を、EUV放射ビームBによって必要とされるような高い真空に維持し、反対側を大気圧とすることができる。
[00633] 光学要素1900の内部冷却システムは、反射面1570の極めて近くで冷却を行うので、反射面1570の熱変形を最小限に抑えることができる。その結果として、反射面1570の熱変形を補正するのに必要な逆曲げの量を著しく低減することができる。
[00634] 第1の光学要素1900には歪み機構が設けられている。これは、ビームスポット領域1580の近傍で、本体1910の反射面1570とは反対側の軸方向に面する表面に熱負荷を与えるように配置された加熱要素1960を備えている。
[00635] 与えられる熱負荷は、放射ビームBがビームスポット領域1580に与える熱負荷とほぼ同様とすることができる。このような機構は、本体1910における軸方向の温度勾配を効果的に低減させ、従って、この軸方向の温度勾配のために生じる半径方向の反射面の湾曲を低減させる(上記の数式(5)及び(6)を参照のこと)。
[00636] あるいは、加えられる熱負荷は、放射ビームBがビームスポット領域1580に加える熱負荷に対して概ね相補的とすることも可能である。第1の熱負荷が比較的低い領域において第2の熱負荷が比較的高い場合、又はその逆において、第2の熱負荷は第1の熱負荷に対して概ね相補的であることは理解されよう。例えば、放射ビームBがビームスポット領域1580に加える熱負荷がガウス分布に近い場合、加熱要素1960によって加えられる熱負荷は、ビームスポット領域1580のエッジで大きく、ビームスポット領域1580の中心に向かって小さくすることができる。このような機構は、放射ビームBが反射面1570の異なる部分に加える熱負荷のばらつきをいっそう良好に補正することができる。
[00637] 図56は、リソグラフィシステムLS6の第1の光学要素1520を形成し得る光学要素2000を示す。光学要素2000は、概ねディスク形状の本体2010と、自由電子レーザFELからの放射ビームBを受光してビームスポット領域2030を形成するために本体2010上に設けられた反射面2020と、を備えている。
[00638] 第1の光学要素2000は、放射ビームBが例えば約2度(約0.035ラジアン)のかすめ入射角のように小さいかすめ入射角で反射面2020に入射するように構成されている。従って、ビームスポット領域2030は細長い楕円形状である。例えば、入来放射ビームBの直径が2mmであり、かすめ入射角が2度である場合、ビームスポット領域2030は、短軸の長さが2mmで長軸の長さが約58mmの楕円形である。
[00639] 第1の光学要素2000は更に、回転軸2040を中心に本体2010を回転させるように動作可能な移動機構を備えている。移動機構は、本体2010から回転軸2040に沿って延出するシャフト2011と、回転軸2040を中心にシャフト2011を回転させるように構成されたアクチュエータ2090と、を備え得る。シャフト2011は、例えば2つの軸受等、1つ以上の軸受(図示せず)によって支持することができる。2つの軸受を備える実施形態では、本体2010の反対側に軸受を設けることができる。アクチュエータ2090は、モータ又はエンジンのようないずれかの適切な機構を備え得る。
[00640] 反射面2020は、本体2010の半径方向に面する表面上に配置されている。移動機構が回転軸2040を中心として本体2010を回転させると、反射面2020が回転し、反射面2020上でビームスポット領域2030を動かす。ビームスポット領域2030は反射面2020上で、本体2010の円周に延在する周期経路をたどる。
[00641] 放射ビームBのパワーの一部は第1の光学要素2000により吸収されて、反射面2020を加熱する。移動機構は反射面2020を移動させてビームスポット領域2030が反射面2020上で動くように動作可能であるので、光学要素2000により吸収されるパワーは広いエリアに広がり、熱負荷の密度を低下させる。有利な点として、これによって第1の光学要素2000は、更に高いパワー密度の放射ビームを受光することが可能となる。これは、同一又は同様の寸法の静的光学要素とは対照的である。
[00642] 反射面2020は、接線方向に湾曲した本体2010の半径方向に面する表面上に配置されている。従って、放射ビームの入射面に垂直な方向において、第1の光学要素2000は放射ビームの発散を増大させて、反射された放射ビームB’が入来放射ビームBよりも大きく発散するようにする。放射ビームの入射面に垂直な方向において、反射面2020は、f=R(2/b)で与えられる焦点距離fを有する。ここで、Rは本体2010の半径であり、bは半径ビームBのかすめ入射角(単位はラジアン)である。本体2010は、半径が約0.25m、円周が約1.6mであり得る。本体2010の半径が約0.25mであり、かすめ入射角が0.035ラジアンの場合、反射面2020の焦点距離は3.6mである。この湾曲は、放射ビームBの方向に垂直な接線方向のものである。放射ビームの形状及び発散の変化は、ビームデリバリシステム1519内のミラーを用いて比較的容易に補正することができる。例えばビームデリバリシステム1519は、反射されたビームBを、例えば固定の寸法と限られた発散で円形に整形するように配置された1つ以上の凹面円筒鏡を備えることができる。
[00643] 概ねディスク形状の本体は均質でない場合がある。図57は、図56の光学要素2000を形成し得る光学要素2100を示す。光学要素2000のものと同一の光学要素2100の機構は共通の標示で示し、以下で詳細な説明は行わない。
[00644] 光学要素2100は、第1の本体部2112及び第2の本体部2113を備えている。第1及び第2の本体部2112、2113は概ねディスク形状の本体2110を形成する。第1の本体部2112は、第2の本体部2113の半径方向内側にある。第1の本体部2112の軸方向の厚さは第2の本体部2113の軸方向の厚さよりも小さいので、概ねディスク形状の本体2110の断面が階段状となり、本体2110の各軸方向に面する表面に概ね円形の止まり穴2114、2115が形成されるようになっている。
[00645] 光学要素2100には反射面2020が設けられ、第2の本体部2113の半径方向に面する表面上に配置されている。
[00646] 光学要素2100は更に、以下で説明するような冷却機構2101を備えている。冷却機構2101は、2つの概ねリング形状の冷却デバイス2170、2171を備え、これらの各々は、本体2110の各軸方向に面する表面上に形成された概ね円形の止まり穴2114、2115のそれぞれ異なるものに配置されている。各冷却デバイスは、第2の本体部2113の内側の半径方向に面する表面に隣接した外側の半径方向に面する表面と、第1の本体部2112の軸方向に面する表面に隣接した軸方向に面する表面と、を有する。回転本体2110と各静的冷却デバイス2170、2171との間に狭い間隙が設けられている。間隙には、毛管力によって所定位置に保持された液体金属層2172が充填されている。この金属は、比較的低い温度で溶解する可融合金を含むことができる。例えば金属は、75.5重量%のガリウム及び24.5重量%のインジウムを含有し得るガリウム及びインジウムの合金を含むことができる。このような合金は15.7℃の融点を有する。静的冷却デバイス2170、2171に、例えば水等の流体流を受容するためのチャネル2174を設けて、冷却デバイス2170、2171から熱を逃がす。
[00647] このような冷却機構によって、回転水継手を用いることなく回転本体2110の水冷を可能とする。これは、水漏れの危険を回避するか又は少なくとも大幅に低減する。熱を伝達するための液体金属層の使用は、超高真空条件及び本体2110の高い角速度と両立できる既知の技法である。
[00648] 代替的な実施形態では、回転本体2110と静的冷却デバイス2170、2171との間で主に放射によって熱を伝えることができる。例えば、本体2110及び静的冷却デバイス2170、2171の対向表面に高放射率材料のコーティングを設けて、本体2110による放射と、狭い間隙を介した静的冷却デバイス2170、2171による放出された放射の吸収とを促進することができる。間隙に水素等の気体を充填することで、更に対流による本体2110の冷却も与えることができる。
[00649] 光学要素2100は、放射ビームBのエネルギの一部を吸収して、概ね反射面2020から半径方向に遠ざかって延在する温度勾配を生じる。熱は、反射面2020から半径方向内側に本体2110内へ、この温度勾配を伝っていく。半径方向の温度勾配の結果、本体2110の半径方向の異なる部分が異なる膨張を生じ、これによって反射面2020が歪んで、反射面2020の軸方向の湾曲が変化する。
[00650] 本体の2つの対向表面が距離d(本体の厚さ)だけ離れている場合、これらの表面の一方にQワットの熱負荷が加わると、エッジ効果を無視するならば、2つの表面間の温度差ΔTは数式(5)によって与えられる。入来放射ビームBの直径が2mmであり、かすめ入射角が2度である場合、ビームスポット領域2030は、短軸の長さが2mmで長軸の長さが約58mmの楕円形である。従って熱負荷は、幅が約58mmで円周が約1.6mの反射面2020の帯状部分、すなわち約0.09m2のエリアに広がる。
[00651] 本体の2つの対向表面が距離d(本体の厚さ)だけ離れている場合、これらの表面の一方が加熱されて2つの表面間に温度ΔTが生じると、加熱された表面は凸形となり、曲率半径Rは数式(6)によって与えられる。軸方向の湾曲によって生じる焦点距離は、例えば3.6mのような最小焦点距離よりも大きくなければならないことが望ましい場合がある。この軸方向に引き起こされる湾曲は、放射ビームの入射面内にあることに留意すべきである。放射ビームBの入射面において、焦点距離はf=Rb/2で与えられる。ここで、Rは曲率半径であり、bはかすめ入射角(単位はラジアン)である。0.035ラジアンのかすめ入射角では、3.6mの最小焦点距離は、206mの最小許容曲率半径に対応する。ディスクの軸方向の寸法が58mmである場合、これは、2μmの反射面2020のエッジの最大許容変形に対応する。
[00652] これは、例えば熱膨張係数が4x10−6K−1である炭化ケイ素(SiC)等の材料から形成された本体2110において達成可能である。例えば、第2の本体部2113がSiCから形成され、(半径方向の)厚さが10mmであり、第2の本体部2113の半径方向の温度差が約10Kである場合、曲率半径は約1620mである。
[00653] 上記の計算では、簡略化のため、放射ビームからの熱負荷が反射面2020の固定エリアで均一に広がると仮定していることに留意すべきである。しかしながら一般には、熱負荷は固定エリアにおいてばらつきがある可能性がある。固定エリアの所与の部分における熱負荷は、放射ビームの強度分布、かすめ入射角、及び本体2110の回転時に反射面2020上でビームスポット領域2030がたどる経路に依存する。従って一般には、半径方向の温度勾配に加えて、軸方向に温度勾配がある。この結果、反射面2020は、反射面2020の異なる軸方向位置において異なる変形を生じる。すなわち、反射面2020上の所与の位置における軸方向の局所的な曲率半径は、その位置の軸方向位置の関数である。このため、反射面2020は軸方向に一定の湾曲を有する円柱レンズとして機能しない。軸方向における反射面2020上の所与の位置の曲率半径は、その位置の軸方向位置に依存する。従って軸方向では、反射面2020の異なる部分は概ね異なる焦点距離を有し、反射面2020は円柱レンズとして機能しない。熱によって引き起こされる反射面2020のこの湾曲は、ほぼ不変のままである接線方向の反射面2020の固有の湾曲に対して垂直である。熱によって引き起こされる湾曲では、反射面2020の曲率半径が軸方向で変動し、この湾曲を補正することは難しい。従って、光学要素2100の本体2110を、放射ビームBによって生じる反射面2020の温度のばらつきを少なくとも部分的に低減するような形状とすることができる。
[00654] 反射面2020の温度が一定である場合、反射面2020の軸方向における曲率半径のばらつきを解消することができる。従って、光学要素2100の本体2110を、放射ビームBによって生じる反射面2020の温度のばらつきを少なくとも部分的に低減するような形状とすることができる。例えば本体2110の形状は、熱が反射面2020から離れる方向に伝わる際の経路の熱抵抗が、反射面2020上の異なる軸方向位置では異なるようにすることができる。
[00655] 例えば、本体2110を半径方向内側にテーパ状として、反射面2020の下方に狭窄部を形成することができる。これについて以下で説明する。
[00656] 図58及び図59を参照すると、本体2110の2つの異なる幾何学的形状について熱マップ2200、2250が示されている。各マップ2200、2250は、本体2110の温度のばらつきを、軸方向(左から右)及び半径方向(下から上)の双方について示している。各マップ2200、2250の上部エッジ2201、2251は光学要素2100の反射面2020に相当し、各マップ2200、2250の下部エッジ2202、2252は光学要素2100の回転軸2040に相当する。各マップ2200、2250上に、2つの冷却デバイス2170、2171の位置を概略的に示す。
[00657] マップ2200、2250は、反射面2020に1500Wの熱負荷を与える2シグマのガウス分布に近い強度分布を有する放射ビームBに基づいて計算されている。各マップ2200、2250上に、一定の温度を示す複数のライン2210、2260がそれぞれ示されている。隣接した2本のライン2210、2260間の間隔は0.5Kの温度差に相当する。温度は、各マップ2200、2250の上部エッジ2201、2251において最も高い。材料はアルミニウム又はシリコンのいずれかであり、熱伝導率は約150Wm−1K−1である。本体2110の軸方向の面からの冷却は5000Wm−2K−1のレートであり、本体2110の円周は1.5mである。
[00658] 図58のマップ2200は、軸方向の厚さが均一である本体2010に対応する。図59のマップ2250は、軸方向の厚さが半径と共に変動する本体2010に対応する。具体的には、反射面2020から半径方向内側に移動すると、本体の軸方向の厚さは最初に小さくなって狭窄部2270を形成し、次いで大きくなって反射面2020の軸方向の厚さに戻る。反射面2020の温度のばらつきは、軸方向の厚さが均一である本体では1.1Kであり、狭窄部2270を有する本体では0.2Kである。従って、狭窄部2270を設けることによって反射面2020上での軸方向の温度勾配が軽減し、この結果、反射面2020における曲率半径のばらつきが低減する。
[00659] 上述の様々な実施形態を組み合わせてもよいことは認められよう。例えば、第1の光学要素1520は、歪み機構1601(質量を用いる)及び歪み機構301(磁気を用いる)を組み合わせた歪み機構を備えることができる。
[00660] 図47から図59を参照して説明した例示的な実施形態は1つの自由電子レーザFELを含む放射源SO3を備えているが、放射源はいかなる数の自由電子レーザFELを備えてもよいことは認められよう。例えば放射源は2つ以上の自由電子レーザFELを備え得る。あるいは、放射源SO3は自由電子レーザを含まず、例えばレーザ生成プラズマ(LPP)又は放電生成プラズマ(DPP)放射源を備えることも可能である。
[00661] 上述した熱負荷及び熱負荷を加えるエリアは一例に過ぎないこと、本発明は上述の値に限定されないことは理解されよう。例えば、放射源により出力される放射ビームはいかなるパワーを有してもよく、いずれかの入射角で反射光学要素に入射すればよい。ビームスポット領域は反射面のどんな大きさのエリアも追従することができ、反射面はいかなる反射率も有し得る。
[00662] 上述の第1の光学要素1520の実施形態は、中心回転軸を中心として回転するように構成された概ねディスク形状の本体を備えているが、ビームスポット領域が反射面上で移動して周期経路をとるような反射面の動きは、他の方法でも達成可能である。
[00663] 「軸方向」という言葉は、回転軸に沿った又は平行な方向であることは認められよう。「半径方向」という言葉は、回転軸を通り抜けると共に前記回転軸に垂直な方向であることは認められよう。「接線方向」という言葉は、軸方向及び半径方向に垂直な方向であることは認められよう。
[00664] 「軸方向に面する表面」という言葉は、法線が概ね軸方向である概ね平坦な表面であることは認められよう。「半径方向に面する表面」という言葉は、法線が概ね半径方向である概ね湾曲した表面であることは認められよう。
[00665] 「ある表面上の所与のポイントでの、軸方向におけるその表面の湾曲」は、前記表面と、そのポイントにおける表面の法線ベクトル及び軸方向におけるベクトルを含む面との交点が形成する曲線の湾曲を意味することは認められよう。これを、「その表面の軸方向の湾曲」と呼ぶことも可能である。同様に、「ある表面上での所与のポイントでの、半径方向におけるその表面の湾曲」は、前記表面と、そのポイントにおける表面の法線ベクトル及び半径方向におけるベクトルを含む面との交点が形成する曲線の湾曲を意味することは認められよう。これを、「その表面の半径方向の湾曲」と呼ぶことも可能である。
[00666] 上述のような様々な光学要素を備えた光学システム40を用いて放射ビームB’、B’をビーム分割装置20に送出し、ここから放射ビームをリソグラフィ装置の1つ以上に提供可能であることは、上述の様々な実施形態の特徴である。代替的な実施形態では、例えば他のビームデリバリシステム機構のような他の光学システム機構を提供することができる。この場合は、放射ビームをFEL源からビームスプリッタに又は直接リソグラフィ装置に送出するため、及び/又は放射ビームを整形するために、光学要素の機構を用いる。
[00667] 一般に、充分に高圧の水素(例えば約1Paの水素圧力)、又はヘリウム、もしくは場合によってはアルゴン、酸素、もしくは窒素等の他の適切な気体が存在する環境に光学システムの光学要素を維持して、光学要素における炭素の蓄積を防止又は低減することが重要である。水素は炭素と反応して炭素の堆積を防止又は低減させることができる。しかしながら、FEL源の電子ビームラインは、例えば約10−8Paのような超高真空で動作しなければならない。従って、FEL源と光学システムとは、これらの間で真空の増大(圧力の低下)を可能とするように分離させなければならないことがわかっている。
[00668] 例えば図1から図5のシステムにおいて、FEL源と光学システム40との間に更に別の装置を設けて、FEL源と光学システムとの間に適切な圧力変化量を与えることができる。図60に、一実施形態に従ったそのような更に別の装置2300の一例を示す。
[00669] 装置2300は、セクション2306、2308、2310、2312、2314に分割された長い管(この場合、約50m長)を備える。これらのセクションは、アパーチャ2316、2318、2320、2322を有する壁によって分離され、これらのアパーチャを、FEL源のアンジュレータによって放出された放射ビームが通過することができる。装置2300は、FEL源からの放射ビームを受光するための入力アパーチャ2302と、放射ビームを出力するための出力アパーチャ2304と、を含み、入力アパーチャ2302及び出力アパーチャ2304は、チャンバとも称するセクション2306、2308、2310、2312、2314によって分離されている。放射ビームの直径は通常、アンジュレータから遠ざかって進むにつれて拡大し、例えばアンジュレータからの出射時には約100ミクロンの直径を有し、約50m後には5mm直径に発散し得る。従って、図60の実施形態において、チャンバ間のアパーチャ2316、2318、2320、2322は、アンジュレータから離れるにつれて拡大する。図60の実施形態には5つのセクション又はチャンバ2306、2308、2310、2312、2314が設けられているが、代替的な実施形態では、入力アパーチャと出力アパーチャとの間で所望の圧力変化量を与えるために、いかなる適切な数、大きさ、及び配置のセクション又はチャンバも設けることができる。
[00670] 各チャンバ2306、2308、2310、2312、2314はそれぞれポンピングポートを含み、各チャンバには、チャンバのポンピングポートを介してチャンバをポンピングするための真空ポンプ2324、2326、2328、2330、2332を備えることができる。図60の装置において、チャンバ2308、2310、2312、2314をポンピングするためのポンプ2326、2328、2330、2332はターボ分子ポンプである。チャンバ2306はFEL源に隣接し、この場合、チャンバ2306をポンピングするためにゲッターポンプ2324を用いる。代替的な実施形態では、達成しなければならない圧力に応じて、いずれかの適切な機構及び種類の真空ポンプを用いて異なるチャンバをポンピングすることができる。
[00671] 1x10−3Pa未満の圧力では、水素分子の平均自由行程は>10mとなる。室温での水素の熱運動速度は約vm=1.8km/sである。これが意味するのは、図60の装置の場合、EUVビームとほぼ平行に進む水素分子はポンピングされずに結局はアンジュレータに到達する可能性があるということである。図61にこれを示す。図61は図60の装置の一部を示し、分子「3」が、FEL源のアンジュレータ内に弾道的に(ballistically)進み得ることがわかる。明確さのため、図61にはポンプ2326のみを示す。
[00672] チャンバ内の圧力が低下すると(図60の場合、右から左に動く)、分子間の衝突数が減り、分子の弾道挙動がいっそう顕著になり得る。
[00673] 図60の装置の場合、出力アパーチャ2304における圧力が約1Paであるので、チャンバ2326内の圧力はほぼ1x10−3Paに達し得る。チャンバ2308と2310との間のアパーチャ2318の面積をA2=4mm2とし、入力アパーチャの面積をA1=1cm2とすると、アパーチャ2318から入力アパーチャ2302への弾道気体スループット(例えばPam3/sで表す)は、以下のように考えることができる。
[00674] アパーチャ2318と入力アパーチャ2302との間の長さを30mとすると(入力アパーチャ2302と出力アパーチャ2304との間の全距離が約50mであるのと比較して)、FEL源のアンジュレータにおいて約10−8Paの圧力が維持されるならば、入力アパーチャ2302に対する弾道気体スループットは許容可能であり得る。
[00675] しかしながら、アパーチャ2318及び他のチャンバ内アパーチャの面積を拡大することが望ましい場合がある。また、装置2300の長さ、従って距離Lを大幅に縮小することが望ましい場合がある。EUVビームは発散を有し、アンジュレータ24において0.1mm直径で開始して、50mの距離では例えば5mmに拡大する。しかしながら、ステアリングユニット25(図3、図4に示す)が存在するため、入力アパーチャを、例えばアンジュレータから10mの距離に配置することが好都合である場合があり、この距離ではEUVビームの直径は約1mmである。マージンを含めると、直径2mm(3mm2の面積)のアパーチャを用いる可能性がある。FELのいくつかの実施形態では、EUVビームの発散又はアンジュレータからの距離がもっと大きいために、アパーチャサイズの拡大が必要となり得る。装置2300を建造物31’、31’’内又は他の遮蔽されたエリア内に保持することが望ましい場合があり、装置2300の長さの縮小は構築サイズの縮小において著しい影響を及ぼし得る。しかしながら、アパーチャ面積の拡大及び装置2300の長さの縮小は、FEL源に対する弾道気体スループットを増大させることが予想される。更に、中間チャンバ2310内の実際の圧力は、実際には制御して精密に予想することが難しい。チャンバ2310内の圧力が例えば約1x10−4Paであるならば、約1x10−2Paの圧力を有し得る次のチャンバ2312からFEL源への著しい弾道気体輸送があるはずである。FEL源に対する弾道気体輸送の増大は、FEL源のアンジュレータにおいて許容できないほど高い気体圧力を生じる恐れがある。
[00676] 図62は、一実施形態に従った装置2300の一部の概略図である。図62の実施形態では、装置2300のチャンバ2308において、放射ビーム経路の周りに、リング形状のアノード2340a、2340b、2340c、2340d、及びカソード2342a、2342b、2342c、2342dの対の形態で電子源が設けられている。カソード及びアノードは熱イオン放出装置の一部を形成する。この装置は、カソードを加熱して熱イオン放出によって電子を放出するための加熱コンポーネント(図示せず)と、アノード及びカソード間に適切な電位差を印加すると共にカソードが動作時に放出する電子の量及びエネルギを制御するためのパワー及び制御装置(図示せず)と、を含む。
[00677] 図62の実施形態において、カソードはLaB6又はCeB6から形成され、例えばElectron Microscopy Sciences(RTM)が販売するようなものであり、高電流密度及び中〜高真空条件に適したものである。しかしながら代替的な実施形態では、カソード及びアノードにいかなる適切な材料を用いてもよい。
[00678] 明確さのため、図62には装置2300のポンプ、ポンピングポート、及びその他のチャンバは示していない。
[00679] また、1対の磁石2350、2352も設けられている。これらは、イオン化気体原子又は分子の軌道を変更するため、アパーチャ2316の近くのチャンバ2308の領域に磁場を与えるように動作可能である。
[00680] 装置2300の動作において、FEL源が動作状態で入力アパーチャ2302と出力アパーチャ2304との間の装置2300を通過する放射ビームを生成している間に、様々なポンプ2324、2326、2328、2330、2332を動作させて、チャンバ2306、2308、2310、2312、2314内に真空を維持する。この場合、放射ビームは4nmから25nmの波長を有する。
[00681] 同時に、電子源を動作させて、カソード2342a、2342b、2342c、2342dとアノード2340a、2340b、2340c、2340dとの間でチャンバを通る電子流を与える。
[00682] カソード2342a、2342b、2342c、2342dが放出する電子の少なくとも一部は、チャンバ2308内に存在する水素(又は他の原子又は分子)と相互作用してこれをイオン化する。磁石2350、2352が印加する磁場によってイオンは方向を変え、チャンバ2308の壁に当たるか又はチャンバ2308と2306との間のアパーチャに当たり、これが弾道軌道を壊すと共に、例えばチャンバ2308のポンプ2326又はチャンバ2306のポンプ2324のような正規の真空ポンプを用いたポンピングを可能とする。このため、電子源を用いた原子又は分子のイオン化と磁場を用いて、イオン化の後に気体原子又は分子の軌道を変更して、気体原子又は分子のポンピングを可能とすると共に、気体原子又は分子の入力アパーチャ2302への、結果としてアンジュレータへの弾道輸送を低減することができる。磁石2350、2352が印加する磁場の強度は、チャンバの大きさ及びその他の動作パラメータに基づいて選択して、イオン化気体原子又は分子のほとんど又は全てがチャンバの壁又はアパーチャと衝突することを保証することができる。例えばv=1.8km/sの水素イオンの曲率半径Rは、B=0.1Tの印加磁場ではR=mv/(Be)=0.2mmであり、B=0.1mTの印加磁場(概ね地球磁場)では2300mmである。従って、いくつかの実施形態では、イオン化気体原子又は分子の弾道軌道を妨害するために外部磁場を印加せず、代わりに背景磁場(例えば地球磁場)を用いて弾道軌道を妨害し、チャンバの壁又はアパーチャとの衝突を引き起こす。
[00683] 図62の実施形態のいくつかの変形、又はカソード及びアノード構成を用いる他の実施形態では、チャンバの中心における電子密度を上昇させるため、更にこれによって電子と気体原子又は分子との衝突の確率を上げるために、チャンバの壁をカソードよりも低い電位に設定する。
[00684] 図61の実施形態では、1対の磁石2350、2352を用いて、イオン化原子又は分子、この場合はイオン化水素分子の軌道を変更する。代替的な実施形態では、磁場でなく電場を用いてイオン化原子又は分子の軌道を変更することができる。電場を印加するためにいかなる適切な機構も使用可能である。例えば、チャンバ2308、チャンバ2306の壁、又はチャンバ2308、2306間のアパーチャの壁、又はチャンバもしくはアパーチャ内もしくはそれらの近傍に位置決めされた装置の別のコンポーネントに、適切な電位を印加して、イオン化原子又は分子を引き付けるか又は反発させることができる。
[00685] 図62の実施形態において、電子源は、所望のエネルギ又はエネルギ範囲の電子を与えるように動作する。電子のイオン化相互作用断面積はエネルギに依存するので、電子エネルギを適切に制御することで、水素分子(又は他の原子又は分子)のイオン化が生じる確率を上昇させることができる。電子と水素分子との衝突の相互作用断面積の変動については、「Cross Sections and Related Data for Electron Collisions with Hydrogen Molecules and Molecular Ions」(H. Tawara等、J. Phys. Chem. Ref. Data、Vol. 19、No. 3、1990年)に記載されている。適切な電子エネルギは、例えばこの論文の図2のグラフに基づいて、この論文に与えられたデータから選択することができる。この論文によれば、水素分子のイオン化のための衝突断面積は、100eVの電子エネルギではσ=1x10−20m2である。弾道水素分子が電子と相互作用する経路長がXである場合、電流密度は以下を満足させなければならない。
[00686] 図62の実施形態のいくつかの動作モードにおいては、水素分子を入力アパーチャ2302へと導く弾道軌道を有する水素分子が存在する可能性の最も高いチャンバ領域を電子が通過する際に、電子(衝突していない場合、又は衝突するまでの間)が所望の運動エネルギ値を有するように、電子源を制御する。これは例えば20eVから2400eVの間であり、任意選択的に60eVから100eVの間であり、更に任意選択的に約80eVである。例えば、電子がチャンバ2308の中心を通過する際に所望の運動エネルギ値を有するように、電子源を制御することができる。
[00687] 電子源を形成するため、アノード及びカソードのいずれかの適切な構成を設けることができる。例えば図62の実施形態の変形において、各アノード及びカソード対は、カソードの近くに位置付けられた、例えばメッシュ又はグリッドの形態の別のアノード(図62には示していない)を含む。これは加速アノードとして機能し、所望の運動エネルギ又は運動エネルギ範囲を有するように電子を加速する。各対の他のアノード2340a、2340b、2340c、2340dは、チャンバ2308を通過した後に電子を集める収集電極として機能する。別のアノードの使用は、いくつかの構成では、別のアノードからアノードへ進行する際の電子の運動エネルギのばらつきを低減することができ、いくつかの構成では、その進行中の運動エネルギを所望の範囲内に維持することができる。例えばいずれかの既知の熱イオン、熱陰極、電界放出、又は他の技法に基づいて、他のいずれかの適切な電子源構成も使用可能である。
[00688] チャンバ内での1つ以上の電子と水素分子との衝突の確率を上げるため、いくつかの実施形態では、入力アパーチャ2302に到達する弾道軌道を有する水素分子が存在する可能性の最も高いチャンバの少なくとも一部を電子が通過する際の経路長を延長するための措置を講じる。例えばいくつかの実施形態では、印加電場又は磁場を用いて、チャンバ内での電子の軌道を変更する。そのような1つの実施形態に従った電子源及び磁場構成を図63に概略的に示す。
[00689] 図63は、例えばチャンバ2308のような装置2300のチャンバの一部の断面図であり、リング形状カソード2342aの1つと、これに関連付けられたリング形状アノード2340aの1つと、を示す。カソード2342a及びアノード2340aの双方は、FEL源からの放射ビームを通過可能とするようにチャンバ2308のアパーチャ2316、2318と整合されたアパーチャを含むことがわかる。この実施形態では、カソード機構の一部として、有孔板又はメッシュの形態の別の加速アノード2360が設けられている。マグネットコイル機構2362も設けられている。これを動作時に用いて、カソード2342aからの電子が通過するチャンバ部分に磁場を印加する。この場合のマグネットコイル機構が備えるマグネットコイルの面は、FEL源からの放射ビームの経路に対して垂直である。マグネットコイル機構2362が印加する磁場によって、電子はカソード機構とアノード2340aとの間で少なくとも部分的にらせん状の経路を進む。これは、1つの電極について図63に概略的に示されている。これによって電流密度が上昇し、電子と水素分子との衝突の可能性が高くなる。
[00690] 代替的な実施形態では、カソードが放出する電子の軌道を変更するために、他のいずれかの適切なアノード及びカソード構成並びに磁場又は電場を与えて、いずれかの所望の経路をとるように電子の軌道を変更することができる。そのような代替的な実施形態の1つを図64に概略的に示す。これは、例えばチャンバ2308のような装置2300のチャンバの一部の断面図であり、平面カソード2370とこれに関連付けられた平面アノード2372を上下に位置合わせして示し、更に、FEL源によって与えられる放射ビームが進む経路を示す。この場合、設けられるマグネットコイル機構(図64には示していない)は、平面カソード2370とアノード2372との間に磁場を印加し、これによってカソード2372からアノード2370に進む電子は少なくとも部分的にらせん状の経路を進む。
[00691] 図65に、更に別の代替的な実施形態を概略的に示す。これは、例えばチャンバ2308のような装置2300のチャンバの一部の断面図であり、FEL源からの放射ビームを通過可能とするようにチャンバ2308のアパーチャ2318、2320と整合されたアパーチャを含むリング形状カソード2380と、アノード2384と、を示す。この実施形態では、カソード機構の一部として、有孔板又はメッシュの形態の別の加速アノード2382が設けられている。アノード2384は、カソードに垂直に配置されてチャンバ2310の壁に沿って位置合わせされた平面アノードである。この場合、磁気コイル機構(図示せず)は放射ビーム経路に垂直な磁場を印加し、電子がアノード2382へ進行する際に少なくとも部分的にらせん状の経路をたどらせる。
[00692] 図63から図65の実施形態では、電磁石の形態の磁場源を用いて電子の軌道を変更することができ、この磁場源は、イオン化水素分子又は他の気体原子又は分子の軌道を変更するために用いる磁石2350、2352とは別のものある。代替的な実施形態では、例えば単一のマグネットコイル機構のような単一の磁石を用いて、電子の軌道の変更とイオン化水素分子の軌道の変更の双方を行うことができる。他の実施形態では、イオン化気体原子又は分子の軌道を変更するために追加の磁場源を動作させず、イオン化気体原子又は分子の軌道を必要な程度だけ変更するためには背景磁場(例えば地球磁場)で充分である。
[00693] 図62から図65の実施形態では、電子及びイオン化原子又は分子(具体的にはイオン化水素分子)の双方の軌道を変更するための磁場の使用について記載した。代替的な実施形態では、磁場の代わりに又は磁場と共に電場を用いて、電子及びイオン化原子又は分子の一方又は双方の軌道を変更することができる。そのような実施形態における電場は、例えばいずれかの適切な電場源のようないずれかの適切なコンポーネントを用いて与えることができる。いくつかの実施形態では、電場を与えるには、適切な電位をチャンバの1つの壁に、又はチャンバ間の通路に、又はチャンバもしくはチャンバ間のアパーチャの1つ以上の内部もしくは近傍に配置された装置の他の何らかのコンポーネントに印加すればよい。
[00694] 図62から図65に関連付けて説明した実施形態は、カソード及びアノード機構を用いて熱イオン放出によって電子を発生させる。代替的な実施形態では、水素又は他の原子又は分子をイオン化するための電子又は他の粒子又は放射を発生させるために他のいずれかの適切な機構を使用可能である。例えば一実施形態では、ネオン、アルゴン、クリプトン、又はキセノン等の比較的重い希ガスをチャンバに注入する。EUVについてのキセノンの吸収断面積は水素の約500倍であり、EUV放射の存在のために永久的にイオン化された状態となる。更に、EUVイオン化により88eVの電子が生成され、これは水素ガスのイオン化のために最適なエネルギに近い。一実施形態では、デュオプラズマトロン等のイオン源を用いて、約100eVのイオンエネルギで光子ビームを発生させる。これらの光子は、例えば0.1テスラの磁場でトラップすることができ、多数の水素原子をイオン化するのに充分なエネルギを有する。
[00695] 図66は、代替的な実施形態に従ってチャンバ2308及び2310内で水素又は他の原子又は分子をイオン化するための電子ビームを発生させるための機構を示す。この場合、コリメートされた電子ビームを生成するためのカソードを含む電子銃機構2400がチャンバ2308内に設けられ、これは、コリメートされた電子ビームをチャンバ2308内のアノード2402に送出して、チャンバ2308、チャンバ2310、又はそれらの間のアパーチャ内の水素又は他の原子又は分子をイオン化するように構成されている。
[00696] 図67は、更に別の代替的な実施形態に従ってチャンバ2308内の水素又は他の原子又は分子をイオン化するための電子ビームを発生させるための代替的な機構を示す。この場合、曲げ磁石2410、2412、2414、2416と線形加速器(LINAC)2418の機構が、適切なエネルギの再循環電子ビームを与えて、チャンバ2308内の水素又は他の原子又は分子をイオン化するように構成されている。
[00697] 図62から図67に関連付けて説明した実施形態では、アノードもしくはカソード機構、又は、水素もしくは例えば酸素、アルゴン、もしくは窒素のような他の原子又は分子をイオン化するための電子を生成するための他の機構は、装置2300に設けられている。装置2300は、入力アパーチャ2302と出力アパーチャ2304との間の長さが約50mであるものとして説明している。しかしながら、イオン化電子を用いて入力アパーチャ2302への水素分子の弾道進行を低減することで、いくつかの実施形態では、FELレーザのアンジュレータ及びビームデリバリシステムにおいて動作時の所望の圧力レベル(例えばアンジュレータで約10−8Pa、ビームデリバリシステム又は他の光学システムで約1Pa)を維持しながら、装置2300の長さを縮小することができる。例えば図62から図67の実施形態の変形において、入力アパーチャ2302と出力アパーチャ2304との距離は約10mから20mまで縮小される。
[00698] 図68に、長さを縮小した別の実施形態を概略的に示す。この場合、入力アパーチャと出力アパーチャとの間の装置の長さは約10mまで縮小されている。この実施形態では、図62の実施形態又は他の実施形態のアノード及びカソード機構と、これに関連付けられた磁場源又は電場源(実施形態のいくつかの変形では省略される)は、チャンバ2306’に位置付けられている。チャンバ2306’は長さが約7mであり、チャンバ2308’は長さが約1mであり、チャンバ2310’は長さが約2mである。
[00699] 図68の実施形態では、ポンプ2324、2326、及び2328は約100リットル/秒でポンピングする。アパーチャ2302、2316、2318は各々、長さが50mmで直径が3mmであり、アパーチャ2304は長さが5mmで直径が3mmであり、チャンバ2306’、2308’、及び2310’は直径が100mmである。この構成では、チャンバ2310’は圧力が1x10−2Paであり、水素分子の平均自由行程が1mであると予想できる。チャンバ2310’の長さ(2m)により、アパーチャ2318を通過する分子はあまり多くビーム化されない(例えばアパーチャ2302に向かう弾道軌道を有しない)。チャンバ2308’、2306’は、圧力がそれぞれ1x10−5Pa及び1x10−8Paであり、アパーチャ2318からアパーチャ2302に向かうビーミング効果は考慮されない。イオン化機器がなければ、アンジュレータ内部(例えば5mから10mm直径のパイプ)では、〜5x10−8Paとなるはずである。もしもポンプ2328及びアパーチャ2304の寸法設定に失敗し、チャンバ2310’内部の圧力が大幅に低くなれば(例えば1x10−3Pa)、数式(8)のp1は、1x10−2Pa(チャンバ2310’から)でなく、1Pa(上流圧力)となる。これは、2310内に分子ビームを破壊するのに充分な気体衝突が存在しないからである。この結果、アンジュレータに向かう分子ビームの流れは100倍超となり、圧力も100倍超となる。このため、装置の寸法、ポンプ容量、及びその他の装置パラメータの正しい選択が重要であり得ることが理解できる。場合によっては、パラメータの変動に対するアンジュレータ内の動作圧力の許容差及び感度は、装置の長さを拡大することによって向上させることができる。
[00700] 図60の実施形態に従って装置2300に5つのチャンバ2306、2308、2310、2312、2314を設けるが、代替的な実施形態では、いずれかの適切な数のチャンバ及び真空ポンプを設けて、装置の入力及び出力において所望の圧力を得ることができ、いくつかの変形又は実施形態では、水素又は他の原子又は分子をイオン化するために電子又は他の粒子又は放射を用いることで、設けるチャンバ数を減らすことができる。
[00701] 放射源が自由電子放射源を含む実施形態について説明したが、代替的な実施形態では、所望の波長の放射を与えるためにいかなる適切な放射源も用いることができる。例えばいくつかの実施形態では、放射源はシンクロトロン放射源を含む。
[00702] 水素分子のイオン化に関連付けて実施形態を説明したが、これらの実施形態を用いて、場合によっては存在し得る他の気体原子又は分子、例えば酸素、アルゴン、又は窒素をイオン化し除去することも可能である。それに応じて、電子エネルギ又は他のイオン化粒子又は放射を選択すればよい。
[00703] いずれかの適切な大きさの電場又は磁場を用いて、電子もしくは他の荷電粒子の軌道、又はイオン化気体原子もしくは分子の軌道を変更することができる。適切な大きさの場の選択は、例えばコンポーネントの特定の大きさ、材料、及び/又は配置、及び/又は特定の実施形態における所望の動作パラメータに基づいて行えばよい。
[00704] 図69は例示的なリソグラフィシステムLS7を示す。リソグラフィシステムLS7は、図1のリソグラフィシステムLSと同様であり、本発明の一実施形態に従ったビーム分割装置20を含む。リソグラフィシステムLS7は更に、放射源SO4と、複数のリソグラフィ装置LAa〜LAnとを備えている。例えば20のリソグラフィ装置があり得る。
[00705] 放射源SO4が自由電子レーザを含む場合、放射源SO4は比較的高パワーの放射を出力することができる。例えば自由電子レーザ源SO4は、それぞれ約1kWの分岐放射ビームB1〜B20を与える放射ビームBを出力することができる。いくつかのリソグラフィ装置では、リソグラフィ装置で受光される放射量を低減することが望ましい場合がある。例えば、リソグラフィ装置の基板は、約5mJ/cm2の放射線量を必要とするレジスト層を含み得る。そのリソグラフィ装置において高パワーの分岐放射ビームを受光すると、確実にレジストに適切な放射線量を与えることが困難である場合がある。基板の一部で受光される放射線量を低減させるための1つの方法は、基板に入射する放射に対して基板を動かすことである(スキャニング)。しかしながら、基板で所望の放射線量を得るため充分に高いスキャン速度を達成することは難しい場合がある。
[00706] 本発明の実施形態において、分岐放射ビームB1〜B20はそれぞれ減衰器2515a〜2515nを介して送出される。各減衰器2515a〜2515nは、分岐放射ビームB1〜B20が対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnの照明システムILに入射する前に各分岐放射ビームB1〜B20の強度を調整するように構成されている。
[00707] 図70a、図70bを参照すると、減衰器2515aによって与えることができる第1の減衰装置2519の一例が示されている。分岐レーザビームB1は一点鎖線により示されている。減衰器2515aは第1のミラー2520及び第2のミラー2521を備えている。第2のミラー2521は、図示のy方向において第1のミラー2520から距離2hだけ離れている。第2のミラー2521は、減衰器2515aに入った分岐放射ビームB1が第1のミラー2520の反射面に入射しその反射面によって第2のミラー2521の反射面の方へ反射されるように配置されている。第2のミラー2521は、分岐放射ビームB1をリソグラフィ装置LAa(図70には示していない)の方へ送出するような角度に配されている。
[00708] 第1のミラー2520はアーム2520’を介して第1の枢軸点2522に接続され、第2のミラーはアーム2521’を介して第2の枢軸点2523に接続されている。第1の調整手段(図示せず)が第1の枢軸点2522を中心に回転するように設けられ、第2の調整手段(図示せず)が第2の枢軸点2523を中心に第2のミラー2521を回転させるように設けられている。第1及び第2の調整手段は、当業者に容易に認められるような適切な形態とすればよい。例えば調整手段は、枢軸点2522、2523に配置されアーム2520’、2521’に接続された適切なモータを含み得る。
[00709] 枢軸点2522、2523を中心としたミラー2520、2521の回転により、分岐放射ビームB1に対するミラー2520、2521の入射角αを調整することができる。ミラー2520、2521が同一の入射角αに配置されると、ミラー2520、2521で反射された後の分岐放射ビームB1はミラー2520、2521で反射される前と同じ方向に伝搬することは認められよう。
[00710] ミラー2520、2521は、一般にかすめ(又は斜め(glancing))入射反射と称されるものによって分岐放射ビームB1を反射するように配置されている。図70aでは、ミラー2520、2521は最大入射角αでの配置が示され、分岐放射ビームはミラー2520の下部(y方向に対して)及びミラー2521の上部(y方向に対して)に入射する。いくつかの実施形態では、角度αの最大値は例えば約10度の角度であり得る。
[00711] 図70bでは、ミラー2520、2521は最小入射角αでの配置が示され、分岐放射ビームB1はミラー2520の上部及びミラー2521の下部に入射する。角度αの最小値は例えば約1度の角度αであり得る。従って、図示する例においてミラー2520、2521は1度から10度の入射角の間で各枢軸点2522、2523を中心に回転可能である。他の実施形態では、これよりも大きいか又は小さい角度範囲を可能とするようにミラー2520、2521の構成及び/又はサイズが異なる場合があることは認められよう。例えば枢軸点2522、2523は、ミラー2520、2521の有用角度範囲を拡大又は縮小するように選択することができる。更に、ミラー2520、2521の各々は固定の枢軸点を中心に回転する構成が図示されているが、これは例示に過ぎない。ミラー2520、2521の入射角は、当業者に容易に認められるような他のいずれかの適切な調整手段を用いて調整可能であることは認められよう。一実施形態では、ミラー2520、2521は双方とも同一の枢軸点を中心に回転するように構成することができる。枢軸点2522、2523の位置を適切に選択することで、入来分岐放射ビームB1に対する出射分岐放射ビームB1の変位(すなわち図70a、図70bの実施形態では2h)は、所定の比較的小さい範囲内の角度α(図70a、図70bに示す)では実質的に一定とすることができる。しかしながら角度αの角度範囲がこれより大きい場合、入来分岐放射ビームBに対する出射分岐放射ビームBの変位を実質的に一定とするために、ミラー2520、2521の少なくとも一方又は双方に、ミラー2520、2521の一方又は双方をy方向に平行移動させるのに適した平行移動手段を備えることができる。
[00712] ミラー2520、2521の各々の反射率は、ミラー2520、2521と分岐放射ビームB1との間の入射角αの関数である。例えば2度の入射角αでは、ミラー2520、2521の各々で、入射放射の約98%(ミラーが完璧に平坦な表面を有するルテニウム(Ru)コーティングを有するという理論上の場合)を反射することができる。すなわち2度の角度では、ミラー2520、2521の一方が反射する放射は、そのミラーに入射した放射強度に比べて2%低減する。このため、ミラー2520、2521の双方が2度の角度αに配置されている場合、分岐放射ビームB1の強度はミラー2520、2521による反射で約4%低減する。
[00713] 10度の入射角(上述の例で用いられる最大角度)では、ミラー2520、2521の各々で入射放射の約90%を反射することができる。すなわち、入射角が10度である場合、反射される放射の強度は入射した放射よりも約10%低い。このため、ミラー2520、2521の双方が10度の入射角αに配置されている場合、分岐放射B1の強度はミラー2520、2521による反射で約20%低減する。
[00714] 上述の説明から、角度αを1度から10度の間で調整することにより、リソグラフィ装置LAaで受光される分岐放射ビームB1の強度は2%から20%の間で変動し得ることが認められよう。
[00715] いくつかの実施形態では、ミラー2520、2521の入射角を1KHzまでの周波数で調整することができ、これによって分岐レーザビームB1の減衰のための迅速な調整機構を提供する。第1及び第2の調整手段をコントローラ2525に接続することができる。コントローラ2525は、リソグラフィ装置LAaで受光される分岐放射ビームB1の所望の強度を示す命令を受信するように構成可能である。このような命令の受信に応じてコントローラは、ミラー2520、2521の入射角αを調整するように調整手段を制御することで、分岐放射ビームB1の所望の減衰を達成し、これによってリソグラフィ装置LAaにおける所望の強度を達成するように構成することができる。
[00716] コントローラ2525は、リソグラフィ装置LAaにおける強度を所定値に又は所定範囲内に維持するために、リソグラフィ装置LAaで受光した分岐放射ビームB1の強度を検出すると共に分岐放射ビームB1の減衰を調整するように構成されたフィードバック制御ループの一部とすることができる。
[00717] 他の実施形態では、ミラー2520、2521の各々の入射角は相互に独立して調整可能である。この結果として分岐放射ビームB1の伝搬方向が変化するが、これは、例えばミラー2520、2521の入射角を離散ステップ(discrete step)でのみ調整可能な実施形態において、可能な減衰値数が増えるという点で有益である。
[00718] 上述の実施形態は減衰器2515aを参照して説明したが、減衰器2515b〜2515nについても同様に実施可能であることは認められよう。
[00719] 図71を参照すると、減衰器2515aを備えることができる第1の減衰装置2519の代替的な実施形態が示されている。図71の実施形態では、第1の減衰装置2519は4つのミラー2530、2531、2532、2533を備えている。ミラー2530、2531は、図70a、70bを参照して上述したミラー2520、2521と同様に構成されている。具体的には、第1のミラー2530には、このミラー2530がアーム2530’を介して接続する第1の枢軸点2534を中心としてミラー2530を回転させるように構成された第1の調整手段が設けられている。第2のミラー2531には、このミラー2531がアーム2531’を介して接続する第2の枢軸点2535を中心としてミラー2531を回転させるように構成された第2の調整手段が設けられている。
[00720] ミラー2532、2533は、ミラー2530、2531と同様に構成されているが、第1のミラー2530及び第2のミラー2531の構成を、分岐放射ビームB1の伝搬方向に垂直な軸に沿って「ミラーリング」したものと見なすことができる。具体的には、第3のミラー2532は、y方向において第2のミラー2531と同じ位置に配置され、第2のミラー2531から反射した放射を受光するように配置されている。第3のミラーには、第3の枢軸点2536を中心としてミラー2532を回転させるように構成された第3の調整手段が設けられている。第3のミラー2532は、受光した放射を、第2のミラー2532からy方向に2hの距離だけ離れた第4のミラー2533の方へ反射させるように配置されている(すなわち第4のミラー2533はy方向において第1のミラー2530と同じ位置にある)。第4のミラー2533には、第4の枢軸点2537を中心としてミラー2533を回転させるように構成された第4の調整手段が設けられている。第4のミラー2533は、放射をリソグラフィ装置LAa(図71には図示していない)へ送出するように配置されている。
[00721] 第1から第4のミラー2530〜2533の各々の入射角αが同一である場合、分岐放射ビームB1は、減衰器2515aへの入射時と同じ方向にかつy方向の同じ位置で減衰器2515aから出射する。更に、各々が1度から10度の範囲で入射角を調整するように動作可能な4つのミラーを用いることで、減衰器2515aの可能な減衰範囲は、(図70の構成における)2%から20%の範囲から、4%から40%まで拡大する(すなわち、可能な透過範囲は減衰器2515aに入射する放射の96%から60%まで)。最小減衰が大きくても許容可能である場合、図71の実施形態で達成可能な大きい方の減衰範囲が有利であり得ることは認められよう。
[00722] 更に、図71の実施形態を用いて、分岐放射ビームB1の偏光に対する影響を低減しつつ、図70の実施形態が提供し得るものと同一又は同様の減衰範囲を与えることができる。すなわち、特定の減衰を達成するために必要な入射角αが小さくなるので、所与の減衰について、分岐放射ビームB1のP偏光成分及びS偏光成分に対する4つのミラー2530から2533の組み合わせ効果は、2つのミラー2520、2521の組み合わせ効果よりも小さい。これは、20%又はこれに近い減衰(すなわち各ミラー2520、2521の入射角αが10度に近い)について特に当てはまる。
[00723] いくつかの実施形態では、分岐放射ビームB1が減衰器2515aに入射する前の概ね円形の偏光をできる限り維持することが望ましいことがある。この場合、約1度から5度までの角度調整範囲で約2%から20%までの減衰範囲を達成し得る。従ってこの実施形態は、分岐放射ビームB1の偏光に対する影響を低減するために特に有益であり得る。
[00724] 更に、図71の構成では、ミラー2530から2533の1つ以上の平行移動補正を行うための平行移動手段は必要ない。出射ビームは、全てのαの値について入来ビームと同じ角度及び位置を有する(角度αが4つのミラー全てで等しい場合)。換言すると、ミラー2530、2531によって生じる距離2hのいかなる変化もミラー2532、2533によって「反転」されるので、分岐放射ビームB1が入射時と同じ位置で減衰器2515aから出射することを保証するためにy方向のミラー平行移動は必要ない。
[00725] 図71は、2つのミラーのセットを2つ示すと考えることができる。すなわち、第1のセットはミラー2530、2531を含み、第2のセットはミラー2532、2533を含む。他の実施形態では、追加のミラー又は追加のミラーセットを設けることで、可能な減衰範囲を更に拡大するか、又は分岐放射ビームB1の偏光の変化を低減させることが可能であることは認められよう。
[00726] 上述の第1の減衰装置に加えて、減衰器2515a〜2515nの1つ以上の内部に第2の減衰装置を設けることも可能である。第2の減衰装置は固定の減衰を与えることができる。あるいは、第2の減衰装置は、もっと低速で及び/又はもっと高域の可能減衰値で調整可能な調整可能減衰装置を与えることも可能である。
[00727] 図72aは、図3及び図4を参照して上述したような第1の減衰装置と組み合わせて又はその代わりに設けることができる第2の減衰装置2540の例を概略的に示す。本明細書において「第1の」及び「第2の」減衰装置と称するが、これは順序を示唆するものではないことは理解されよう。実際、これらを組み合わせて設ける場合、分岐放射ビームB1は、第1又は第2の減衰装置のいずれか一方を通過した後に他方を通過することができる。
[00728] 第1又は第2の減衰装置の一方が他方よりも大きな減衰を与える場合(例えば第2の減衰装置が減衰率10を与える場合)、例えば制御ループのため、第2の減衰装置を、放射強度を監視するセンサの後段(分岐放射ビームB1の伝搬方向に対して)に配置することが望ましい場合がある。
[00729] 減衰装置2540は、チャンバ2542を画定する筐体2541を備えている。筐体2541は、いかなる形状のチャンバ2542も画定することができる。例えば筐体2541は概ね管状とすることができる。チャンバ2542は、第1の端部で第1のウィンドウ2543によって閉鎖され、この反対側の第2の端部で第2のウィンドウ2544によって閉鎖されている。チャンバ2542内に制御された量のガスを流入可能とするために入口2545が設けられている。チャンバ2542内から制御されたガス流を排出可能とするためにバルブ2546も設けることができる。チャンバ2542内の圧力を監視するために圧力モニタ2547が設けられている。圧力モニタ2547はいかなる形態の圧力モニタであってもよい。固定の封入されたガス媒体でなくガス流を供給することで、ガスによって吸収したエネルギを除去することができる。このように除去されるエネルギ量は、減衰装置2540が大きい減衰率(10等の減衰率)を与える場合には相当なものとなり得る。
[00730] 入口2545によってチャンバ2542内にEUV吸収ガスを導入することができる。チャンバ2542内に導入される特定のガスは、所望のEUV吸収レベルに応じて選択可能であることは認められよう。しかしながら一例として、水素、ヘリウム、及び/又はアルゴン等のガスが適切であり得る。ウィンドウ2543、2544は、EUV放射に高い透過率を与えるように構築すると共に、他の波長の電磁放射には高い吸収率を与えるように構築することができる。例えばこれらのウィンドウは、一般にスペクトル純度フィルタと称されるものを含むことができ、これはEUV波長外の放射を遮るがEUV放射の透過を可能とする。このようなスペクトル純度フィルタは、当業者に認められるいずれかの適切な方法で構築可能である。例えばウィンドウ2543、2544は、モリブデン(Mo)及びケイ化ジルコニウム(ZrSi)から構築すればよい。Mo/ZrSiスタックの一面又は両面にモリブデンシリサイド(MoSi)を被せてもよい。代替的な例では、ウィンドウ2543、2544はポリシリコン(pSi)から形成可能である。ポリシリコンフィルムの一面又は両面に窒化シリコン(SiN)層を被せてもよい。例えばグラフェン等の他の材料も、ウィンドウ2543、2544に用いるのに適切であり得る。ウィンドウ2543、2544の厚さは、チャンバ2542内の所望の最大圧力に応じて選択すればよい。所望の最大圧力は所望の減衰に応じて選択すればよい。
[00731] 分岐放射ビームB1は、第1のウィンドウ2543を通って第2の減衰装置2540に入射し、チャンバ2542内の流体との相互作用によって減衰した後、第2のウィンドウ2544を通って減衰装置2540から出射する。チャンバ2542を通過することによる分岐放射ビームB1の減衰は、チャンバ2542内のガスの種類、量、及び圧力を変えることで変動させることができる。
[00732] 圧力センサ、ガス入口、及びガスバルブは、コントローラ2525(図3、図4)等のコントローラ、又は別個のコントローラと連通させることができる。コントローラは、ガス入口2545及びガスバルブ2546を制御することでチャンバ2542内の所望の圧力を達成するように動作可能である。チャンバ2542内の所望の圧力は、第2の減衰装置によって分岐放射ビームB1の所望の減衰が達成されるように選択することができる。この代わりに又はこれに加えて、チャンバ2542内の所望の圧力は、チャンバ2542内の圧力を所定の安全範囲内に維持するように選択してもよい。
[00733] 図72bに、第2の減衰装置の代替的な実施形態を示す。同様のコンポーネントには同様の番号を付す。図72aの例示的な実施形態では、ウィンドウ2543、2544の双方が長さに沿って分岐放射ビームB1の伝搬方向に対して垂直である。このため、分岐放射ビームB1がチャンバ2542に入射する位置とは無関係に、チャンバ2542を通る分岐放射ビームB1の経路は同一の長さである。図72bに示す代替的な例では、ウィンドウ2543、2544は分岐放射ビームB1の伝搬方向に対して相互に角度が付いている。このため、分岐放射ビームB1がある位置からチャンバ2542に入射する場合、分岐放射ビームB1が(図72のy方向で)もっと低い別の位置からチャンバ2542に入射する場合に比べて、短い距離でチャンバ2542を通り抜ける。従って、分岐放射ビームB1がチャンバ2542内に入射する位置を変えることによって分岐放射ビームの減衰を変動させることができる。更に、この構成を用いて光ビームの断面で強度勾配を発生させることも可能である。このような強度勾配を用いて、照明フィールドにおける強度のばらつきを補正してもよい。
[00734] 一般に、図72a、図72bの第2の減衰装置を用いて分岐放射ビームB1の減衰を変動させ得る範囲は、図70a、図70b、及び図71の第1の減衰装置によって達成可能な減衰調整範囲よりも大きい。しかしながら、減衰を調整可能な速度は第1の減衰装置のものよりも遅い。例えば、減衰を低減させるため、チャンバ2542からガスを抜くことができる。しかしながらこれは、例えばミラー2530から2533を調整するために必要な時間に比べて著しく長い時間を要し得る。
[00735] 図73を参照すると、更に別の代替的な実施形態が示されている。この場合、分岐放射ビームB1の経路に近垂直入射角で配置したEUV反射膜2550によって第2の減衰装置を提供する。膜2550は、上述のウィンドウ2543、2544と同様に構築することができる。膜2550は、使用する構成及び材料に応じていずれかの適切な寸法とすればよい。
[00736] 分岐放射ビームB1は、第1の減衰装置2519から出射して膜2550に入射する。膜2550は、分岐放射ビームB1の部分2551を減衰器2515aの壁に配置された放射ダンプ2552の方へ反射させる分岐放射ビームB1の入射角を生成するような向きに配置されている。分岐放射ビームB1の部分2553は膜2550を透過する。反射されない分岐放射ビームB1の部分は膜2550によって吸収されることは認められよう。分岐放射ビームB1と膜2550の入射角を近垂直入射角として、前段の光学要素(すなわち図73の減衰装置2519)の方への反射放射を実質的に回避することができる。
[00737] 図73において、反射膜2550は減衰器2515a内の減衰装置2519の後段(分岐放射ビームB1の伝搬方向に対して)に配置されている。しかしながら他の実施形態では、減衰器2515a内の減衰装置の順序は異なるものにしてもよい。更に、膜2550等の複数の膜を連続的に設けることで、分岐放射ビームB1の減衰を更に増大可能であることも認められよう。
[00738] 更に、減衰器は第1及び第2の減衰装置を備え得ることを記載したが、減衰器は更に別の減衰装置を備える場合があることは認められよう。例えば図73の実施形態を他の実施形態と組み合わせて、図3又は図4の減衰装置、図72a、図72bの減衰装置、及び膜2550等の膜を含む減衰装置を有する減衰器を提供することができる。他の構成も可能である。
[00739] 各分岐放射ビームに対してそれぞれ減衰器2515a〜2515nを設けることを記載したが、他の実施形態では、分岐放射ビームの1つのみ又はいくつかに対して減衰器を設け得ることは認められよう。更に、複数の分岐放射ビームに単一の減衰器を設けることも可能である。すなわち、減衰器2515a〜2515nはビーム分割装置20の外側に配置して図示しているが、他の実施形態では、本明細書で説明したような減衰器をビーム分割装置20内に配置することで複数の分岐放射ビームを減衰することができる。例えば、分岐放射ビームBb〜B20の全てを共に減衰させるために、第1の分岐放射ビームB1の分岐直後に減衰器を設けてもよい。実際には、本明細書における教示の当業者に認められるように、減衰器のいかなる組み合わせ又は構成も提供可能である。
[00740] 更に一般的には、概略的に説明したような減衰器15は、リソグラフィシステム内で基板よりも前段の他の場所に位置付けることも可能であることは、本明細書における教示から容易に認められよう。例えば図2を参照すると、イルミネータIL内に減衰器を位置付けることができる。
[00741] これより図74を参照して放射源SO5の代替的な実施形態について説明する。これは、自由電子レーザFEL(例えば実質的に図3を参照して説明したものとすればよい)、光学システム2630、及びセンサ装置2631を備えている。光学システム2630は、第1の光学要素2632、第2の光学要素2633、コントローラ2630a、第1のアクチュエータ2632a、及び第2のアクチュエータ2633aを備えている。第1及び第2のアクチュエータ2632a、2633aは、それぞれコントローラ2630aからの受信信号S1、S2に応じて第1及び第2の光学要素2632、2633を動かすように動作可能である。光学システム2630は、自由電子レーザFELから放射ビームB’を受信し、第1及び第2の可動光学要素2632、2633を用いてビームB’の断面積を拡大するように構成されている(例えばビームが円形断面を有する場合はビームの直径を拡大し、又は、ビームが矩形断面を有する場合はビームの高さ及び幅を拡大する)。この拡大されたビームBは、光学システム2630により出力され、ビーム分割装置20(図1)により受光される。
[00742] センサ装置2631は、ビームBの伝搬方向に沿って離間した2つのセンサセット2631a、2631bを備えている。各センサセット2631a、2631bは、ビームBの外縁の周りに配置されたセンサを含み、所望の位置から放射ビームが逸脱するとビームのエッジが1つ以上のセンサに重なるようになっている。例えば、光学システム2630により出力される放射ビームBが円形である場合、y−z面内で放射ビームBの直径とほぼ一致する直径を有する円の円周の周りに検知要素を配置すればよい。センサ装置の他のいずれかの適切な形態も使用可能である。
[00743] センサ装置2631は2つの出力信号Sa、Sbを与え、これらは各々、ビームが異なる距離だけ伝搬した後のビーム位置を示す。コントローラSは、信号Sa、Sbを処理してビームBの伝搬方向を明らかにするように構成されている。コントローラはビームBの位置も明らかにすることができる。コントローラ2630aは、センサ装置2631からの信号Sに応じてアクチュエータ2632a、2633aを用いて1つ以上の可動光学要素2632、2633を動かし、自由電子レーザFELにより生成されるビームB’の方向の変化を補償するように動作可能である。コントローラ2630a並びに第1及び第2のアクチュエータ2632a、2633aは、光学システム2630の調整機構を形成する。また、光学要素2632、2633を用いて、自由電子レーザFELにより生成されるビームB’の位置の変化を補償することも可能である。
[00744] この状況で用いる場合、ビームBのエッジは、強度が予め設定された閾値未満に低下するポイントとして規定することができる。予め設定された閾値は、例えば最大強度の一定の割合とすればよい。
[00745] 各センサセット2631a、2631bの各センサは、これに入射する放射の量を示す信号を出力することができる。これらの信号の各々は、別個に又は組み合わせ信号Sa、Sbとしてコントローラ2630aに送信することができる。
[00746] 複数のセンサの各々に入射する放射の量を解析することにより、放射ビームBの位置を明らかにすることができる。例えば放射ビームが円形である実施形態では、2つの直径方向に対向した検知要素に入射する放射の量に差がある場合、放射ビームBの中心は、より多くの放射を受光する検知要素の方に近い。いったんこのように各センサセット2631a、2631bについて放射ビームの位置が明らかになったら、放射ビームの方向を明らかにすることができる。これが放射ビームBの所望の方向とは異なる場合、コントローラ2630aは、第1及び第2の光学要素2632、2633を動かしてこれを補正するように動作可能である。
[00747] センサ装置2631のセンサセット2631a、2631bを可動としてもよい。これによって、放射ビームBの形状及び/又は強度プロファイルの変化を考慮に入れることができる。
[00748] 第1及び第2の光学要素2632、2633の各々はミラーを含み、能動冷却機構を設けることができる。例えば各ミラーに、例えば水又は二酸化炭素(CO2)等の冷却流体を供給することができる。しかしながら、損傷を受けることなく光学要素が吸収及び放散することができるパワー密度には限りがある。
[00749] 自由電子レーザFELの所与の出力パワーについて、自由電子レーザFELの下流にある第1の光学要素2632が受けるパワー密度は、(i)放射ビームB’が自由電子レーザFELのアンジュレータ24から出射する際の初期サイズ及び発散と、(ii)アンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離と、に依存する。自由電子レーザFELと第1の光学要素2632との間の距離が広がると、第1の光学要素2632が受けるパワー密度は低下する。
[00750] EUV自由電子レーザが生成する放射ビームは通常、比較的小さいエテンデュを有する。具体的には、自由電子レーザFELが与えるEUV放射ビームB’は、レーザ生成プラズマ(LPP)源又は放電生成プラズマ(DPP)源(双方とも当技術分野において既知である)により発生されるEUV放射ビームよりも著しく小さいエテンデュを有する。例えば、自由電子レーザFELが生成する放射ビームB’は、例えば100マイクロラジアンのような500マイクロラジアン未満の発散を有する可能性があり、例えば約50μmの直径を有し得る。自由電子レーザFELが生成する放射ビームB’は、例えば約50μmの直径を有し得る。
[00751] 1つ以上のEUVリソグラフィ装置の高いスループットをサポートするため、自由電子レーザFELの出力パワーは数十キロワットのオーダーであり得る。このようなパワーにおいて、自由電子レーザFELが生成する放射ビームB’の初期直径は極めて小さいので、パワー密度はかなり大きい。例えば出力パワーが30kWであり初期ビーム直径が50μmである自由電子レーザの初期パワー密度は、約1.5x1013W/m2である。約10%の吸収率を仮定するとしても(これはかすめ入射ミラーではあり得る)、このパワー密度は大きすぎるので、損傷を受けずに第1の光学要素2632が実際に対応することはできない。
[00752] 本発明の実施形態では、第1の光学要素2632は凸面かすめ入射ミラーである。好ましくは、第1の光学要素2632は、例えば銅のような良好な熱の伝導体である材料から形成され、例えばルテニウム(Ru)のような反射率を最大化し吸収を最小限に抑えるコーティングを備えている。凸面かすめ入射ミラーは、例えば球面、アスティグマティック、又は非球面等のいずれかの適切な形状を有し得る。放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度は小さい。これは2つの利点を与える。すなわち、(a)第1の光学要素2632上でのビームスポットサイズを拡大してパワー密度を低下させること、及び(b)吸収係数を低下させて、第1の光学要素2632により吸収されて放散しなければならない入射パワーの割合を低減させること、である。放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度は好ましくは約10度未満である。これは、この角度が10度超に拡大すると第1の光学要素2632の反射率が著しく低下するからである。第1の光学要素2632は凸形であるので、その曲率半径は、放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度の下限を設定する。好ましくは、この角度は0.5度から10度の範囲内であり、より好ましくは1度から5度の範囲内であり、最も好ましくは1度から3度の範囲内である。
[00753] 円形のビームB’では、第1の光学要素2632はかすめ入射ミラーであるので、第1の光学要素2632上のビームスポットサイズは楕円形である。第1の光学要素2632の湾曲を無視すると、楕円形の短軸の長さはビームB’の直径dであり、長軸の長さは、ビームB’の直径dの、放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度αのサインに対する比、すなわちd/sin(α)である。
[00754] 再び第1の光学要素2632の湾曲を無視すると、第1の光学要素2632がかすめ入射ミラーである場合の円形ビームB’について、第1の光学要素2632によって吸収されるパワー密度PDは以下により与えられる。
ここで、αは放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度であり、fα(α)は第1の光学要素2632によって吸収されるパワーの割合であり(これはαに依存する)、PD0は、ビームB’のパワーの、その断面積に対する比(すなわちビームの初期パワー密度)である。
[00755] 一例において、放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度αは2.5度である。この角度では、入射パワーの約8%が第1の光学要素2632によって吸収され得る。スポットサイズの拡大及び吸収係数の低下を考慮に入れると、上述のように出力パワーが30kWであり初期ビーム直径が50μmである自由電子レーザの例では、第1の光学要素2632によって吸収されるパワー密度は5.3x1010W/m2まで低減する。しかしながら、このパワー密度はまだ大きすぎるので、損傷を受けずに第1の光学要素2632が実際に対応することはできない。
[00756] 放射ビームB’が伝搬すると、そのサイズは拡大する。2つのポイント間でのサイズ拡大は、2つのポイント間の距離と発散の2分の1のタンジェントとの積に比例する。第1の光学要素2632の湾曲を無視すると、第1の光学要素2632に垂直入射する円形ビームB’では、第1の光学要素2632によって吸収されるパワー密度Pdは以下により与えられる。
ここで、fαは第1の光学要素2632によって吸収されるパワーの割合であり、d1は初期ビーム直径であり、θはビームB’の発散であり、lはアンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離であり、Pdiは、ビームB’のパワーの、その初期断面積に対する比(すなわちビームの初期パワー密度)である。
[00757] 自由電子レーザFELが生成する放射ビームB’の発散は極めて小さいので、ビームのサイズを著しく拡大するためには(第1の光学要素2632により吸収されるパワー密度の大幅な低下に対応する)、ビームは相当な距離を進まなければならない。例えば、第1の光学要素2632上でのパワー密度が充分に低いのでその表面コーティングが損傷を受けずに済むためには、アンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離を数十メートルのオーダーとする必要があり得る。アンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離が約10mでは小さすぎる場合があり、100mでは不必要に大きい可能性がある。アンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離は、例えば30mから80mの範囲内とすることができ、例えば約50mとすればよい。第1の光学要素の損傷が回避されるアンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離は、(ビームのパワー密度に依存することに加えて)表面コーティング及び第1の光学要素の基板の材料特性と、第1の光学要素の冷却に用いる冷却システムの有効性とに依存する。
[00758] 上記のように、出力パワーが30kW、初期ビーム直径が50μm、放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との角度αが2.5度、発散が100マイクロラジアン、アンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離が50mである自由電子レーザFELの例では、第1の光学要素2632上のパワー密度を約4.4x108W/m2まで低下させることができる。充分な冷却を行うと、第1の光学要素2632に損傷を与えることなくそのようなパワー密度を第1の光学要素2632によって吸収及び放散することができる。
[00759] 一般に、所与の初期ビーム直径、パワー、及び発散において、第1の光学要素2632が吸収するパワー密度PDは、以下を変更することで変動させることができる。(i)放射ビームB’と第1の光学要素2632の表面との間の角度α、及び/又は(ii)アンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離lである。角度αの許容可能値の範囲は距離lに依存し、その逆も同様である。また、角度αの許容可能値の範囲は第1の光学要素2632の曲率半径によって制約を受ける場合がある(これによって、第1の光学要素が放射ビームB’から離れる方向に湾曲して放射ビームの一部が第1の光学要素に入射しなくなる可能性を回避する)。
[00760] 自由電子レーザFELのアンジュレータ24と第1の光学要素2632との間の距離が数十メートルのオーダーである場合、第1の光学要素2632上のビームスポットの位置付けは、アンジュレータ24から出射する放射ビームB’の初期方向に大きく依存する。この方向の極めて小さな変動が、第1の光学要素2632におけるスポットを大幅に移動させる可能性がある。距離lが充分に大きいので、放射源SO5のコンポーネント及び/又はそれらが収容されている建造物の小さい相対的な機械的移動が、第1の光学要素2632上のスポットの大きな変位を招きかねない。コントローラ2630a並びに第1及び第2のアクチュエータ2632a、2633aは、光学システム2630のための調整機構を形成する。
[00761] 光学システム2630の調整機構(コントローラ2630a並びに第1及び第2のアクチュエータ2632a、2633aにより提供される)及びセンサ装置2631は、アクティブフィードバックループを与える。これによって、第1の光学要素2632が損傷しないようにアンジュレータ24から充分遠くに配置しながら、光学システム2630によって出力されるビームBの方向及び位置が安定したままであることを保証する。従って、有利な点として、自由電子レーザFEL及びこのアクティブフィードバックループの組み合わせにより、リソグラフィに高パワーEUV放射ビームを利用することが可能となる。
[00762] 第1の光学要素2632は凸形であるので、EUV放射ビームの発散を増大させて、光路の下流のミラーに対する熱負荷を低減させる。これによって下流のミラーは、低スペックで、あまり冷却を行わない、従って安価なものとすることができる。これに加えて又はこの代わりに、これは下流のミラーを近垂直入射とすることができる。
[00763] 図74を参照すると、基準の軸セット50に対して、アンジュレータ24の軸はx方向にある。放射ビームB’は概ねx方向に伝搬する。第1及び第2の光学要素2632、2633の各々は、y方向及びz方向に線形移動するように動作可能であり、x軸及びz軸を中心に回転するように動作可能である。この自由さによって光学システム2630は、x方向からの放射ビームの伝搬方向の逸脱を補正することができる。
[00764] 例えば、いわゆるビームポインティングエラーが発生することがある。この場合、放射ビームB’はx方向に伝搬せずにx方向に対してわずかな角度で伝搬する。ポインティングエラーは例えば、放射ビームB’の方向がy方向の成分を含むようなものであり得る。これは、第1及び第2の光学要素2632、2633をz方向を中心に回転させることで補正可能である。第1の光学要素2632の回転を用いて放射ビームB’が第2の光学要素2633の中心に入射するように方向付けることができ、第2の光学要素の回転を用いて放射ビームB’が光学システム2630からの出射時にx方向に伝搬することを保証することができる。
[00765] 同様に、放射ビームの方向がz方向の成分を含むポインティングエラーは、第1及び第2の光学要素2632、2633をx方向を中心に回転させることで補正可能である。放射ビームがy方向及びz方向の成分を含むポインティングエラーは、第1及び第2の光学要素2632、2633をx方向及びz方向の双方に回転させることで補正可能である。
[00766] 第1の光学要素2632はy方向及びz方向に平行移動可能であり得る。y方向及びz方向の平行移動を用いて、放射ビームB’が第1の光学要素の中心又はその近傍に入射することを保証することができる。放射ビームB’が逸脱して第1の光学要素2632の中心に入射しなくなった場合、放射ビームB’が第1の光学要素の中心又はその近傍にくるまで、第1の光学要素をy方向及び/又はz方向に平行移動させればよい。第1の光学要素2632上の放射ビームB’の位置は、例えばカメラ又は他の何らかのセンサ(図示せず)によって監視することができる。
[00767] ビームポインティングエラーを補正するために、第2の光学要素2633のy方向及びz方向の平行移動は必要でない場合がある。しかしながら第2の光学要素2633は、他のエラーを補正することを考慮してy方向及びz方向に平行移動可能とすることができる。第2の光学要素2633の平行移動は、例えば放射ビームの断面形状の補正又は変更を行うために用いることがある(例えば光学要素2632、2633が非球面又は他の複雑な形状を有する場合)。
[00768] 図75は、第1の光学要素2632及びこれに関連付けられたアクチュエータ2632aを更に詳しく概略的に示す。アクチュエータ2632aは、第1の光学要素2632とアクチュエータのベース2635との間に接続された3つのアクチュエータ要素を含む。各アクチュエータ要素は、光学要素の角に、又は角に隣接して位置付けられている(3つのアクチュエータ要素は三角形の3つの角の形態に配置されている)。図75には、2つのアクチュエータ要素2634a、2634bを概略的に示す。アクチュエータ要素2634a、2634bは、例えば圧電アクチュエータとすることができ、又は他のいずれかの適切な形態のアクチュエータとしてもよい。各アクチュエータ要素2634a、2634bは、(双方向の矢印に示すように)第1の光学要素の角をy方向に動かすように個別に動作可能である。これによって、第1の光学要素を所望のようにz軸又はx軸を中心として回転させることができる。全てのアクチュエータ要素を一緒に動作させると、第1の光学要素2632はy方向に平行移動する。別個のアクチュエータ要素を用いて第1の光学要素2632をz方向に平行移動させることも可能である。この別個のアクチュエータ要素を用いて、例えばベース2635をz方向に平行移動させ、これによって第1の光学要素2632をz方向に移動させることができる。同様に、別個のアクチュエータ要素を用いてx方向に平行移動させることも可能である。この別個のアクチュエータ要素を用いて、例えばベース2635をx方向に平行移動させ、これによって第1の光学要素2632をx方向に移動させることができる。
[00769] アクチュエータ2634a、2634bの上記の説明は、それらが第1の光学要素2632の角にあるか又は角に隣接していることを示すが、第1の光学要素が角を有することは必須ではない(例えばこれは楕円形であり得る)。一般に、三角形の3つの角にアクチュエータ要素を配置すると、(第1の光学要素の形状とは無関係に)第1の光学要素の容易に制御可能な回転及び平行移動が可能となる。しかしながら、いかなる適切な配置のアクチュエータ要素も用いることができる。例えば、6つのアクチュエータ要素を、対にしてベース上に搭載し、これとは異なる対にして光学要素上に搭載する配置を用いることも可能である(このタイプの配置はスチュアートプラットフォーム(Stuart platform)又は六脚型(Hexapod)と称される)。
[00770] 第1の光学要素2632とベース2635との間に、長さが変化し得る1つ以上の蛇腹が延出して、第1の光学要素2632からベースに熱を伝達するように機能することができる。熱の伝達は、高い熱伝導率を有する蛇腹内の固定材料によって容易にすることができる。これに加えて又はこの代わりに、1つ以上の可撓性パイプが蛇腹を介して取り付けプレートとの間で冷却流体を送受することができる。これに加えて又はこの代わりに、高温側で液体が蒸発し低温側で蒸気が凝結する可撓性ヒートパイプを用いて、光学要素から離れる方向に熱を伝達することができる。
[00771] 第2の光学要素2633のアクチュエータ要素2633aは、第1の光学要素2632のアクチュエータ2632aと同様の構成を有し得る。一実施形態では、z方向の平行移動を行うために用いる別個のアクチュエータを省略する場合がある。
[00772] コントローラ2630aは、放射ビームBの位置及び/又は方向が所望の方向と異なるか否かを判定し、異なる場合は、放射ビームBを所望の方向に戻すためには第1及び第2の光学要素2632、2633がどのように動く必要があるか判定するように動作可能であり得る。次いでコントローラ2630aは、それに応じて第1及び第2の光学要素2632、2633を動かすために、この情報を2つのアクチュエータ2632a、2633aのための2つの信号S1、S2に変換することができる。コントローラ2630aは、上述の機能を実施可能であるプロセッサ(図示せず)を備え得る。プロセッサは、センサ装置2631からの所与の入力信号Sa、Sbに応じて第1及び第2の光学要素2632、2633をどのように動かさなければならないかをリアルタイムで計算することができる。これに加えて又はこの代わりに、プロセッサは、メモリ(図示せず)に記憶することができる参照テーブル等からこの情報にアクセスしてもよい。
[00773] 第2の光学要素2633は、出射ビームの発散がほぼゼロであるような凹形を有する。第2の光学要素2633の形状は、第1の光学要素2632の形状とほぼ一致し、例えば球面、アスティグマティック、又は非球面とすることができる。従って、第2の光学要素2633の下流ではビームは実質的にコリメートされている。有利な点として、これによって、分岐放射ビームB1〜B3(図1を参照のこと)がリソグラフィ装置LA1、LA2又はマスク検査装置MIAに入射する前にこれらを調節する他の光学要素を、同一のものとするか又は少なくとも極めて類似したものとすることができる。これは製造上の観点から有益である。
[00774] ビーム分割装置20が受光するビームは、アンジュレータ24が出力するものとは異なる形状及び/又は強度分布を有することが好ましい場合がある。例えば、ビーム分割装置20内の連続したナイフエッジ抽出ミラーには、円形ビームよりも矩形の形状の方が好ましいことがある。放射の形状及び/又は強度分布は、例えば非球面の光学面を有する第1及び第2の光学要素を用いることで光学システム2630によって変更することができる。異なるビームB形状では、センサ装置2631の検知要素の配列がビームBの形状とほぼ一致するように検知要素の異なる配置を用いればよいことは認められよう。
[00775] 放射源SO5の上述の実施形態は1つの自由電子レーザFELを備えているが、本発明の一実施形態による放射源は2つ以上の自由電子レーザを備えることも可能である。
[00776] 図76を参照すると、本発明に従った放射源SO6の第2の実施形態は、2つの自由電子レーザFELa、FELb、光学システム2660、及びセンサ装置(図の複雑さを抑えるために図示していない)を備えている。自由電子レーザFELa、FELbの各々は、EUV放射B’,B’’のビームを生成するように動作可能であり、放射源SO5の第1の実施形態に関連付けて上述した自由電子レーザFELとほぼ同じとすることができる。このような構成は冗長性を与えて、自由電子レーザFELa、FELbの一方が修理中又は保守を受けている間に他方が動作することを可能とする。このため、自由電子レーザFELa、FELbの一方は常に使用に供することができる。
[00777] 光学システム2660は4つの可動光学要素を備えている。すなわち、自由電子レーザの第1のものFELaに関連付けられた第1及び第2の光学要素2662a、2663aと、自由電子レーザの第2のものFELbに関連付けられた第1及び第2の光学要素2662b、2663bである。光学システムは更に、コントローラ2660aと、可動光学要素2662a、2662b、2663a、2663bの各々のためのアクチュエータ2664、2665、2666、2667と、を備えている。4つのアクチュエータ2664、2665、2666、2667の各々は、コントローラ2660aからの受信信号S1、S2、S3、S4に応じて可動光学要素2662a、2662b、2663a、2663bの1つを動かすように動作可能である。
[00778] 第1の光学要素2662a、2662bの各々は、放射源SO5の第1の実施形態に関連付けて上述した自由電子レーザFELについて第1の光学要素2632が行ったのとほぼ同じ機能を、各自由電子レーザFELa、FELbについて実行する。第1の光学要素2662a、2662bの双方は、各自由電子レーザFELa、FELbから受光した放射ビームB’、B’’をほぼ同じ位置に送出するように配置されている。
[00779] 光学システム2660は、自由電子レーザFELa、FELbの一方から放射ビームB’、B’’を選択的に受信し、その自由電子レーザFELa、FELbに関連付けられた第1及び第2の光学要素を用いて、ビームB’の断面積を拡大し、直径が大きくなったビームBを生成するように構成されている。光学システム2660により出力されるこの拡大したビームBは、ビーム分割装置20によって受光される。
[00780] 第1の実施形態SO5と同様に、センサ装置(図示せず)は、光学システム2660により出力されたビームBの位置及び方向を明らかにし、それを示す信号Sをコントローラ2660aに送信するように動作可能である。コントローラ2660aは、信号Sに応じて動作中の自由電子レーザFELa、FELbに対応した第1及び第2の光学要素を動かし、その自由電子レーザFELa、FELbにより生成されるビームB’,B’’の方向の変化を補償するように動作可能である。コントローラ2660a及び4つのアクチュエータ2664、2665、2666、2667は、光学システム2660の調整機構を形成する。
[00781] 第1の実施形態SO5の第2の光学要素を2633に関連付けて上述した機能性に加えて、第2の光学要素2663a、2663bの各々は、矢印Aによって示すように、y方向で更に大きい距離にわたって移動するように動作可能である。これは、関連付けられた自由電子レーザFELa、FELbから関連付けられた第1の光学要素を介して放射を受光するように配置された使用中の位置と、放射経路の外に引き込まれた格納位置と、の間での移動である。使用の際、例えば図76のFELbのような自由電子レーザの一方をオンに切り換え、他方の自由電子レーザをオフに切り換える(例えば保守を実行可能とするため)。オンに切り換えた自由電子レーザFELbに関連付けられた第2の光学要素2663bは使用中の位置に配され、他方の第2の光学要素は格納位置にある。
[00782] 有利な点として、このような構成によって、どちらの自由電子レーザFELa、FELbが動作中であるかとは無関係に、光学システム2660が出力する放射ビームBをほぼ同じ位置及び方向とすることができる。
[00783] 2つの第2の光学要素2663a、2663bを使用中の位置と格納位置との間で適宜移動させるため、制御機構(図示せず)を設けることができる。
[00784] 図76の基準の軸セット2670に対して、光学システム2660が出力する放射ビームBは概ねx方向である。出力放射ビームB’、B’’が伝搬する2つの自由電子レーザFELa、FELbの各々の軸は、x軸に対して小さい角度βに配されている。これによって、2つの自由電子レーザFELa、FELb間の物理的な分離を、2つの第1の光学要素間のものより大きくすることができる。これは有利な点である。なぜなら、例えばシステム安定性のため、2つの第1の光学要素2662a、2662bは例えば約1メートルの離間距離のように比較的近くにあると好ましい場合があるが、自由電子レーザFELa、FELbは極めて大型の装置であり、必然的に著しく大きい距離だけ分離する必要があり得るからである。2つの自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ間の距離Δは以下によって与えられる。
ここで、lは自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータと第1の光学要素2662a、2662bとの間の距離であり、αは放射ビームB’と第1の光学要素2662a、2662bの表面との角度であり、kは第1の光学要素2662a、2662bと第2の光学要素2663a、2663bとの間の距離である。l及びkが充分に大きい場合、以下となる。
[00785] 図77を参照すると、放射源SO7は、2つの自由電子レーザFELa、FELb及び光学システム2730を備えている。
[00786] 自由電子レーザFELa、FELbの各々は、EUV放射ビームBa’、Bb’を生成するように選択的に動作可能である。すなわち、自由電子レーザFELa、FELbの各々は、EUV放射ビームを生成するオン状態と生成しないオフ状態との間でスイッチング可能である。自由電子レーザFELa、FELbの各々は、オン状態に置かれた場合にオンであると言うことができ、オフ状態に置かれた場合にオフであると言うことができる。
[00787] 自由電子レーザFELa、FELbが出力するEUV放射ビームBa’、Bb’の各々は、ほぼ円形の断面とガウス分布強度プロファイルを有することができる。上述のように、EUV自由電子レーザが生成する放射ビームは通常、比較的小さいエテンデュを有する。例えば、自由電子レーザFELa、FELbが生成する放射ビームBa’、Bb’は、例えば100マイクロラジアンのような500マイクロラジアン未満の発散を有する可能性があり、各アンジュレータ24から出射する際に例えば約50μmの直径を有し得る。
[00788] 再び図77を参照すると、光学システム2730は、自由電子レーザFELa、FELbの各々からの放射ビームBa’、Bb’を受光して出力放射ビームBを出力するように構成されている。光学システム2730が出力する放射ビームBは、ビーム分割装置20(図1を参照のこと)によって受光される。
[00789] 光学システム2730は4つの光学要素を備えている。すなわち、自由電子レーザの第1のものFELaに関連付けられた第1及び第2の光学要素2732、2734と、自由電子レーザの第2のものFELbに関連付けられた第1及び第2の光学要素2736、2738である。光学要素2732、2734、2736、2738は、自由電子レーザFELa、FELbからの放射ビームBa’、Bb’の断面の大きさ及び形状を変更するように構成されている。
[00790] 具体的には、第1の光学要素2732、2736は凸面鏡であり、自由電子レーザFELa、FELbからの放射ビームBa’、Bb’の断面積を拡大するように作用する。図77、図79、及び図80において第1の光学要素2732、2736はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、これらは実際にはこの面及びz方向の双方において凸形である。第1の光学要素2732、2736は凸形であるので、EUV放射ビームBa’、Bb’の発散を増大させ、これによって下流のミラーに対する熱負荷を低減させる。第1の光学要素2732は、第1の自由電子レーザFELaから受光した放射ビームBa’の断面積を拡大するように構成された発散光学要素と呼ぶことができる。第1の光学要素2736は、第2の自由電子レーザFELbから受光した放射ビームBb’の断面積を拡大するように構成された発散光学要素と呼ぶことができる。これによって下流のミラーは、低スペックで、あまり冷却を行わない、従って安価なものとすることができる。これに加えて又はこの代わりに、これは下流のミラーを近垂直入射とすることができる。実際には、放射源SO7が出力する放射ビームBは、ビームBの経路に直列に配置された複数の連続した静的ナイフエッジミラーによって分割することができる。(例えば第1の光学要素2732、2736として凸面鏡を用いることで)ビームBのサイズを拡大すると、そのようなミラーをビームB経路内に位置付ける際に要求される精度を低くすることができる。従ってこれは、分割装置20による出力ビームBのいっそう正確な分割を可能とする。
[00791] 第2の光学要素2734、2738は凹形で、第1の光学要素と相補的な形状にして、第2の光学要素2734、2738から出るビームの発散を実質的にゼロとする。第2の光学要素2734は、第1の自由電子レーザFELaから受光した放射ビームBa’の断面積を第1の光学要素2732によって拡大した後にその発散をほぼゼロに低減するように構成された収束光学要素と称することができる。第2の光学要素2738は、第2の自由電子レーザFELbから受光した放射ビームBb’の断面積を第1の光学要素2736によって拡大した後にその発散をほぼゼロに低減するように構成された収束光学要素と称することができる。従って、第2の光学要素2734、2738の下流ではビームは実質的にコリメートされている。この場合も、図77、図79、及び図80において第2の光学要素2734、2738はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、これらは実際にはこの面及びz方向の双方において凹形である。
[00792] ビーム分割装置20により受光される出力ビームBは、自由電子レーザFELa、FELbが出力するものとは異なる形状及び/又は強度分布を有することが好ましい場合がある。例えば、ビーム分割装置20内の連続したナイフエッジ抽出ミラーには、円形ビームよりも矩形の形状の方が好ましいことがある。従って光学要素2732、2734、2736、2738は、放射ビームBa’、Bb’の断面積を拡大することに加えて、放射ビームBa’、Bb’の断面形状を変えるように作用することができる。具体的には、光学要素2732、2734、2736、2738はアスティグマティック又は非球面として、第2の光学要素2734、2738から出る放射ビームBa、Bbが、自由電子レーザFELa、FELbにより生成された放射ビームBa’、Bb’よりも矩形の形状であることを保証するような形状とすればよい。例えばこれらの光学要素は、第2の光学要素2734、2738から出るビームBa、Bbが概ね矩形であるが丸めた角を有するような形状とすることができるが、他の形状も可能である。このような矩形形状の2つの寸法は、例えばx−y面とz方向のような2つの垂直方向における光学要素の曲率半径に関連付けることができる。有利な点として、これにより、リソグラフィ装置への入射前に出力放射ビームBを分岐放射ビームに分割するために用いるミラーを、同一のものとするか又は少なくとも極めて類似したものとすることができる。これは製造上の観点から特に有益である。
[00793] 本例では、8つのリソグラフィ装置LA1〜LA8に8つの分岐放射ビームBa〜B8を与えることを記載している。図1に示すように、追加のリソグラフィ装置を設けてもよいことは認められよう。
[00794] 自由電子レーザFELa、FELbの双方がオンである場合、光学システム2730はそれらの放射ビームBa’、Bb’を結合して複合放射ビームを形成するように動作可能である。この実施形態では、これを達成するために、第1の自由電子レーザFELaの第1及び第2の光学要素2732、2734を、第2の自由電子レーザFELbのもの2736、2738からx方向にずらして、第2の光学要素2734、2738から出るビームBa、Bbが相互に隣接すると共に相互に平行となるようにする。具体的には、第1の自由電子レーザFELaの第1及び第2の光学要素2732、2734は、第2の自由電子レーザFELbのもの2736、2738の「下流」(レーザビームBa’、Bb’の伝搬方向に対して)に配置されている。
[00795] このような構成では、光学システム2730は2つの放射ビームBa’、Bb’を結合して複合放射ビームを形成するように動作可能であり、2つの自由電子レーザFELa、FELbを有する放射源SO7を提供する。放射源SO7は、自由電子レーザFELa、FELbの一方がオフである場合に出力放射ビームを生成し続けることができる。これによって、例えば自由電子レーザFELa、FELbの一方に修理又は保守を行うことが可能となる。しかしながら有利な点として、本発明の実施形態は、自由電子レーザFELa、FELbの双方を必要に応じて又は所望のように同時に動作させることも可能である。このため、自由電子レーザFELa、FELbの双方が動作状態である場合、それらは双方ともリソグラフィシステムLS等のリソグラフィシステムに対して放射を生成している可能性がある。
[00796] 複合ビームは、光学システム2730によって出力される出力放射ビームBである。図78に、光学システム2730によって出力される複合放射ビームBの断面プロファイルを示す。複合放射ビームBのエッジは、強度が予め設定された閾値未満に低下するポイントとして規定される。図78は出力ビームの8つの部分2820も示し、これらは、8つのほぼ同一の連続したナイフエッジ抽出ミラー(図示せず)を用いてビーム分割装置20によって生成され得る8つの分岐放射ビームBa〜B8に対応する。図78Aは、各分岐放射ビームBa〜B8が2つの放射ビームBa’、Bb’の各々からの放射の一部を含む実施形態を示し、図78Bは、各分岐放射ビームBa〜B8が2つの放射ビームBa’、Bb’の一方又は他方からの放射だけを含む実施形態を示す。
[00797] 自由電子レーザFELa、FELbの各々は、それらがオフになる定例の及び/又は不定期のダウンタイムを有し得る。自由電子レーザの一方、例えば第1のものFELaがオフである場合、図78A及び図78Bにそれぞれ示す2つの異なる実施形態ではリソグラフィ装置LA1〜LA20に対する影響が異なる。
[00798] 図78Aに示す実施形態の場合、リソグラフィ装置LA1〜LA20の全てがいくらかの放射を受光するが、双方の自由電子レーザFELa、FELbがオンである場合に受光するはずの放射の半分だけである。分岐放射ビームBa〜B8をリソグラフィ装置LA1〜LA20のイルミネータILに送出する光学部品を変更しない限り、このような実施形態では、ファセットフィールドミラーデバイス10(図2)の半分のみが照明される。こういった条件のもとでは、以下のいずれかが当てはまる場合がある。(a)ファセットフィールドミラーデバイス10のミラーの全てが完全に照明されるか又は全く照明されない。又は、(b)ファセットフィールドミラーデバイス10のミラーの少なくとも一部が部分的にのみ照明される。ファセットフィールドミラーデバイス10のミラーの各々が完全に照明されるか又は全く照明されない場合、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11の適切な構成によって、リソグラフィ装置LA1〜LA20のイルミネータILがマスクMAを照明するのに適切な照明パターンを生成するように配置することができる。これは、照明されたミラーがイルミネータILの瞳面上にほぼ均一に分散するようにミラーを方向付けることによって達成される。この結果、性能が損なわれる。しかしながら、ファセットフィールドミラーデバイス10のミラーの一部が部分的にのみ照明される場合、これらの条件の結果としてマスクMAのフィールドに著しい非均一性(傾斜)が生じ得る。これは、どのミラーも部分的に照明されることがないようにファセットフィールドミラーデバイス10を適切に再設計することによって回避可能であるが、これはいささか非現実的である。更に、ミラーのいくつかが部分的に照明されることの影響は、ミラーの総数を増やすことによって軽減可能である(例えばMEMSデバイスを用いること、及び例えば100,000超のミラーを用いることで)。
[00799] 図78Bに示す実施形態の場合、リソグラフィ装置LA1〜LA20の半分は、自由電子レーザFELa、FELbの双方がオンである場合と同じ量の放射を受光するが、残りの半分は放射を全く受光しない。
[00800] (a)ファセットフィールドミラーデバイス10の半分しか照明しないこと、及び/又は(b)リソグラフィ装置LA1〜LA20の半分にしか放射を与えないこと、という問題に対処するため、光学システム2730は、第2の光学要素2734、2738から出る放射Ba、Bbのビームの断面プロファイル(大きさ及び/又は形状)を変動させるように調整可能かつ動作可能である。この目的のため、光学システム2730は更に、コントローラ2744と、光学要素2732、2734、2736、2738の各々のためのアクチュエータ2752、2754、2756、2758と、を備えている。4つのアクチュエータ2752、2754、2756、2758の各々は、コントローラ2744からの受信信号(図示せず)に応じて、光学要素2732、2734、2736、2738の1つを動かすように動作可能である。
[00801] 具体的には、2つの自由電子レーザFELa、FELbの一方がオフである場合、光学システム2730は、他方の自由電子レーザFELa、FELbに対応した第2の光学要素2734、2738から出射する放射ビームBa、Bbが、双方の自由電子レーザFELa、FELbがオンである場合に結合放射ビームBが有するはずのものと概ね同じサイズ、形状、位置を有するように調整するように動作可能であり得る。あるいは、光学システム2730は、オンである自由電子レーザFELa、FELbに対応した第2の光学要素2734、2738から出射する放射ビームBa、Bbが、双方のリソグラフィ装置がオンである場合の結合放射ビームBのサイズ、形状、及び位置に少なくとも近いように調整するように動作可能であり得る。この結果、各リソグラフィ装置LA1〜LA20が受光する分岐放射ビームBa〜B8は、そのファセットフィールドミラーデバイス10のほぼ全てを照明するが、そのパワーは、双方の自由電子レーザFELa、FELbがオンである場合に受光されるものの半分である。有利な点として、これは、ビーム分割装置及びリソグラフィ装置LA1〜LA20を変更する必要がないこと、リソグラフィシステムSL内の全てのリソグラフィ装置LA1〜LA20は著しい性能の損失なく動作を継続可能であることを意味する。誤解を避けるため、この文脈において言及される性能とは、例えばリソグラフィ装置LA1〜LA20によって基板Wに与えられる像の品質を意味する。当業者には認められるであろうが、自由電子レーザFELa、FELbの一方のみが動作している場合、各リソグラフィ装置LA1〜LA20が利用可能な放射のパワーは低減する(等しいパワーの2つの自由電子レーザFELa、FELbでは半分になる)。従って、一方のみの自由電子レーザFELa、FELbが動作している場合、各リソグラフィ装置LA1〜LA20の動作速度は低下するが(例えば2分の1に)、品質は大きな影響を受けない。
[00802] 図79及び図80を参照すると、これを達成するため、光学システム2730は、第1の光学要素2732、2736の発散をx−y面内の方向に(すなわちz方向に垂直に)変動させると共に、第2の自由電子レーザFELbの第2の光学要素2738をy方向に移動させるように動作可能である。第1の光学要素2732、2736の各々は、曲率半径が異なる2つの対向表面を備えている。例えば図81を参照すると、第1の自由電子レーザFELaに対応した第1の光学要素2732は、第1の(2732a)及び第2の(2732b)対向表面を備えている。アクチュエータ2752は、軸2792を中心として第1の光学要素2732をz方向に回転させるように動作可能である。第1の光学要素2732の発散を変動させるには、軸2792を中心としてこれをz方向に180度回転させて、対向表面2732a、2732bのそれぞれ異なるものを放射ビームBa’の経路内に配置する。双方の自由電子レーザFELa、FELbがオンである場合、第1の自由電子レーザFELaからの放射ビームBa’は第1の表面2732aに入射する。第1の自由電子レーザFELaのみがオンである場合は、第1の光学要素2732を回転させることで、第1の表面2732aの曲率半径の半分を有する(従って2倍の発散を生成する)第2の表面2732bに放射ビームBa’を入射させる。同様に、第2の自由電子レーザFELbに対応した第1の光学要素2736は2つの対向表面2736a、2736bを備え、アクチュエータ2756は軸2796を中心にこれをz方向に回転させてその発散を変動させるように動作可能である。
[00803] 代替的な一例の実施形態では、各自由電子レーザFELa、FELbに、曲率半径が異なる2つ以上の第1の光学要素を設けることができる。第1の光学要素の1つを放射ビームBa’、Bb’の経路外に移動させ、異なる曲率半径を有する別のものに置き換えることで、第1の光学要素2732、2736の発散を変動させることができる。
[00804] 再び図79を参照すると、第1の自由電子レーザFELaがオンであり第2の自由電子レーザFELbがオフである構成が示されている。第1の自由電子レーザFELaのための第1の光学要素2732はその軸2792を中心に180度回転して、第2の表面2732bが放射ビームBa’の経路内に配置されている。更に、第2の光学要素2734はy方向に(矢印Cで示すように)上昇している。第2の表面2732bに入射した場合、第1の自由電子レーザFELaからの放射ビームBa’は、第1の表面2732aに入射する場合に比べて第2の光学要素2734の2倍の面積を照明する。第2の光学要素2734の発散は同じであるがビームは2倍の面積に広がるので、第2の光学要素2734から出射する放射ビームBaは発散がほぼゼロである。
[00805] 図80を参照すると、第2の自由電子レーザFELbがオンであり第1の自由電子レーザFELaがオフである構成が示されている。第2の自由電子レーザFELbのための第1の光学要素2736はその軸2796を中心に180度回転して、第2の表面2736bが放射ビームBb’の経路内に配置されている。更に、第1の自由電子レーザFELaに対応した第2の光要素2734はy方向に(矢印Dで示すように)上昇している。第2の自由電子レーザFELbからの放射ビームBb’は、第1の光学要素2736の第1の表面2736aが放射ビームBb’の経路内にある場合に比べて第2の光学要素2738の2倍の面積を照明する。第2の光学要素2738の発散は同じであるがビームは2倍の面積に広がるので、第2の光学要素2738から出射する放射ビームBbは発散がほぼゼロである。
[00806] 図82に、第1の自由電子レーザFELaのみがオンである場合に放射源SO7が生成するビームプロファイルを示す。第2の自由電子レーザFELbのみである場合に放射源SO7が生成するビームプロファイルは、図82に示すものとほぼ同一である。
[00807] 放射源SO7は、2つの自由電子レーザFELa、FELbがオン又はオフのどちらであるかを判定するように動作可能な1つ以上のセンサ(図示せず)を備えることができる。そのようなセンサは、2つの自由電子レーザFELa、FELbの状態を示す信号をコントローラ2744に送信することができる。これに加えて又はこの代わりに、放射源SO7は、ユーザが(例えば計画的なダウンタイムの場合に)2つの自由電子レーザFELa、FELbの状態を手作業で入力できるユーザインタフェースを備えてもよい。
[00808] 図77、図79、及び図80の基準の軸セット2770に対して、光学システム2730が出力する出力放射ビームBは概ねx方向に伝搬する。出力放射ビームBa’、Bb’が伝搬する2つの自由電子レーザFELa、FELbの各々の軸は、x軸に対して小さい角度βに配されている。これによって、2つの自由電子レーザFELa、FELb間の物理的な分離を、2つの第1の光学要素2732、2736間のものより大きくすることができる。これは有利な点である。なぜなら、例えばシステム安定性のため、2つの第1の光学要素2732、2736は例えば約1メートルの離間距離のように比較的近くにあると好ましい場合があるが、自由電子レーザFELa、FELbは極めて大型の装置であり、必然的に著しく大きい距離だけ分離する必要があり得るからである。
[00809] 放射源SO7は更にセンサ装置2740を備えている。センサ装置2740は、出力ビームBの伝搬方向に沿って離間した2つのセンサセット2741、2742を備えている。各センサセット2741、2742は、出力ビームBの外縁の周りに配置されたセンサを含み、所望の位置から放射ビームが逸脱するとビームのエッジが1つ以上のセンサに重なるようになっている。例えば、y−z面内で放射ビームBの強度分布とほぼ一致する領域の外縁の周囲に検知要素を分散させることができる。例えば、図78又は図82に示すビームプロファイルの形状を画定するラインの周りに検知要素を分散させればよい。センサ装置の他のいずれかの適切な形態も使用可能である。
[00810] センサ装置2740は2つの出力信号Sa、Sbを与え、各信号は出力ビームBが異なる距離だけ伝搬した後のビーム位置を示す。コントローラ2744は、信号Sa、Sbを処理して出力ビームBの伝搬方向を明らかにするように構成されている。コントローラはビームBの位置も明らかにすることができる。コントローラ2744は、センサ装置2740からの信号Sa、Sbに応じてアクチュエータ2752、2754、2756、2758を用いて光学要素2732、2734、2736、2738を動かし、自由電子レーザFELa、FELbにより生成されるビームBa’、Bb’の方向の変化を補償するように動作可能である。コントローラ2744並びに4つのアクチュエータ2752、2754、2756、2758は、光学システム2730の調整機構を形成する。また、光学要素2732、2734、2736、2738を用いて、自由電子レーザFELa、FELbにより生成されるビームBa’、Bb’の位置の変化を補償することも可能である。
[00811] この状況で用いる場合、出力ビームBのエッジは、強度が予め設定された閾値未満に低下するポイントとして規定することができる。予め設定された閾値は、例えば最大強度の一定の割合とすればよい。
[00812] 各センサセット2741、2742の各センサは、これに入射する放射の量を示す信号を出力することができる。これらの信号の各々は、別個に又は組み合わせ信号Sa、Sbとしてコントローラ2744に送信することができる。
[00813] 複数のセンサの各々に入射する放射の量を解析することにより、出力放射ビームBの位置を明らかにすることができる。例えば、y−z面内で出力放射ビームBの強度分布とほぼ一致する領域の外縁の周囲に検知要素を分散させた実施形態では、2つの直径方向に対向した検知要素に入射する放射の量に差がある場合、出力放射ビームBの中心は、より多くの放射を受光する検知要素の方に近い。いったんこのように各センサセット2741、2742について放射ビームの位置が明らかになったら、放射ビームの方向を明らかにすることができる。これが出力放射ビームBの所望の方向とは異なる場合、コントローラ2744は、光学要素2732、2734、2736、2738を動かしてこれを補正するように動作可能である。
[00814] センサ装置2740のセンサセット2741、2742を可動としてもよい。これによって、出力ビーム形状B及び/又は強度プロファイルの変化を考慮に入れることができる。例えば、センサセットを可動として、双方の自由電子レーザFELa、FELbがオンである場合は図78に示すビームプロファイルに従ってそれらを分散させ、自由電子レーザFELa、FELbの一方のみがオンである場合は図82に示すビームプロファイルに従ってそれらを分散させることができる。
[00815] 放射ビームBa’、Bb’は、EUV放射をリソグラフィ装置LA1〜LA20に供給する。光学システム2730は、自由電子レーザFELa、FELbからの放射をリソグラフィ装置LA1〜LA20に送出する専用の光学コンポーネントセットの第1の部分を形成する。
[00816] 光学要素2732、2734、2736、2738の各々はミラーを含み、能動冷却機構を設けることができる。例えば各ミラーに、例えば水又は二酸化炭素(CO2)等の冷却流体を供給することができる。しかしながら、損傷を受けることなく光学要素が吸収及び放散することができるパワー密度には限りがある。
[00817] 自由電子レーザFELa、FELbの所与の出力パワーについて、対応する自由電子レーザFELa、FELbの下流にある第1の光学要素2732、2736が受けるパワー密度は、(i)放射ビームBa’、Bb’がその自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ24から出射する際の初期サイズ及び発散と、(ii)その自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ24と対応する第1の光学要素2732、2736との間の距離と、に依存する。第1の光学要素2732、2736と対応する自由電子レーザFELa、FELbとの間の距離が広がると、その第1の光学要素2732、2736が受けるパワー密度は低下する。
[00818] 本発明の実施形態では、第1の光学要素2732、2736はかすめ入射ミラーである。好ましくは、第1の光学要素2732、2736は、例えば銅のような良好な熱の伝導体である材料から形成され、例えばルテニウム(Ru)のような反射率を最大化し吸収を最小限に抑えるコーティングを備えている。各自由電子レーザFELa、FELbが出力する放射ビームBa’、Bb’とこれに対応する第1の光学要素2732、2736の表面との角度αは小さい。これは2つの利点を与える。すなわち、(a)第1の光学要素2732、2736上でのビームスポットサイズを拡大してパワー密度を低下させること、及び(b)吸収係数を低下させて、第1の光学要素2732、2736により吸収されて放散しなければならない入射パワーの割合を低減させること、である。各放射ビームBa’、Bb’とこれに対応する第1の光学要素2732、2736の表面との角度αは、好ましくは約10度未満である。これは、この角度が10度超に拡大すると第1の光学要素2732、2736の反射率が著しく低下するからである。第1の光学要素2732、2736は凸形であるので、その曲率半径は、放射ビームBa’、Bb’と対応する第1の光学要素2732、2736の表面との角度の下限を設定する。好ましくは、角度αは0.5度から10度の範囲内であり、より好ましくは1度から5度の範囲内であり、最も好ましくは1度から3度の範囲内である。
[00819] 放射ビームBa’、Bb’が伝搬すると、そのサイズは拡大する。2つのポイント間でのサイズ拡大は、2つのポイント間の距離と発散の2分の1のタンジェントとの積に比例する。
[00820] 自由電子レーザFELa、FELbが生成する放射ビームBa’、Bb’の発散は極めて小さいので、ビームのサイズを著しく拡大するためには(第1の光学要素2732、2736により吸収されるパワー密度の大幅な低下に対応する)、ビームは相当な距離を進まなければならない。例えば、第1の光学要素2732、2736上でのパワー密度が充分に低いのでその表面コーティングが損傷を受けずに済むためには、各自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ24と対応する第1の光学要素2732、2736との間の距離を数メートルのオーダーとする必要があり得る。各アンジュレータ24と対応する第1の光学要素2732、2736との間の距離が約10mでは小さすぎる場合があり、100mでは不必要に大きい可能性がある。この距離は、例えば30mから80mの範囲内とすることができ、例えば約50mとすればよい。一般に、第1の光学要素の損傷が回避される各自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ24と対応する第1の光学要素2732、2736との間の距離は、(ビームのパワー密度に依存することに加えて)表面コーティング及び第1の光学要素の基板の材料特性と、第1の光学要素の冷却に用いる冷却システムの有効性とに依存する。
[00821] 一般に、所与の初期ビーム直径、パワー、及び発散において、第1の光学要素2732、2736が吸収するパワー密度は、以下を変更することで変動させることができる。(i)第1の光学要素2732、2736の表面とこれに入射する放射ビームBa’、Bb’との間の角度α、及び/又は(ii)その第1の光学要素2732、2736と対応するアンジュレータ24との間の距離Lである。角度αの許容可能値の範囲は距離Lに依存し、その逆も同様である。また、角度の許容可能値の範囲は第1の光学要素2732、2736の曲率半径によって制約を受ける場合がある(これによって、第1の光学要素が放射ビームBa’、Bb’から離れる方向に湾曲して放射ビームの一部が第1の光学要素に入射しなくなる可能性を回避する)。
[00822] 各自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ24と対応する第1の光学要素2732、2736との間の距離Lが数十メートルのオーダーである場合、第1の光学要素2732、2736上のビームスポットの位置付けは、そのアンジュレータ24から出射する放射ビームBa’、Bb’の初期方向に大きく依存する。この方向の極めて小さな変動が、第1の光学要素2732、2736におけるスポットを大幅に移動させる可能性がある。距離Lが充分に大きいので、放射源SO7のコンポーネント及び/又はそれらが収容されている建造物の小さい相対的な機械的移動が、第1の光学要素2732、2736上のスポットの大きな変位を招きかねない。
[00823] コントローラ2744及び4つのアクチュエータ2752、2754、2756、2758は、アクティブフィードバックループを与える。これによって、第1の光学要素2732、2736の各々が損傷しないように対応する自由電子レーザFELa、FELbのアンジュレータ24から充分遠くに配置しながら、光学システム2730によって出力される出力ビームBの方向及び位置が安定したままであることを保証する。従って、有利な点として、自由電子レーザ(極めて小さいエテンデュを有する)及びこのアクティブフィードバックループの組み合わせにより、リソグラフィに高パワーEUV放射ビームを利用することができる。具体的には、これによって、複数の(例えば8つの)リソグラフィ装置に対応できる充分に大きいパワーの出力放射ビームを有する放射源SO7が可能となる。
[00824] 図77、図79、及び図80を参照すると、基準の軸セット2770に対して、自由電子レーザFELa、FELbの軸は公称でx−y面内に、x軸に対して小さい角度βで配置されている。出力放射ビームBは概ねx方向に伝搬する。光学要素2732、2734、2736、2738の各々は、y方向及びz方向に線形移動するように動作可能であり、x軸及びz軸を中心に回転するように動作可能である。この自由さによって光学システム2730は、公称方向からの放射ビームBa’、Bb’の伝搬方向の逸脱を補正することができる。
[00825] 例えば、いわゆるビームポインティングエラーが発生することがある。この場合、放射ビームBa’、Bb’はx方向に対して角度βで伝搬せずにわずかに異なる角度で伝搬する。ポインティングエラーは例えば、放射ビームBa’、Bb’の方向ベクトルがx−y面内にあるがx軸と異なる角度を生成するようなものであり得る。これは、第1の光学要素2732、2736及び第2の光学要素2734、2738をz方向を中心に回転させることで補正可能である。第1の光学要素2732、2736の回転を用いて放射ビームBa’、Bb’が第2の光学要素2734、2738に入射するように方向付けることができ、第2の光学要素2734、2738の回転を用いて出力放射ビームBが光学システム2730からの出射時にx方向に伝搬することを保証することができる。
[00826] 同様に、放射ビームBa’、Bb’の方向がz方向の成分を含むポインティングエラーは、第1の光学要素2732、2736及び第2の光学要素2734、2738をx方向を中心に回転させることで補正可能である。放射ビームBa’、Bb’がy方向及びz方向の成分を含むポインティングエラーは、第1の光学要素2732、2736及び第2の光学要素2734、2738をx方向及びz方向の双方に回転させることで補正可能である。
[00827] 第1の光学要素2732、2736はy方向及びz方向に平行移動可能であり得る。y方向及びz方向の平行移動を用いて、放射ビームBa’、Bb’が第1の光学要素の中心又はその近傍に入射することを保証することができる。放射ビームBa’、Bb’が逸脱して第1の光学要素2732、2736の中心に入射しなくなった場合、放射ビームBa’、Bb’が第1の光学要素2732、2736の中心又はその近傍にくるまで、第1の光学要素をy方向及び/又はz方向に平行移動させればよい。第1の光学要素2732、2736上の放射ビームBa’、Bb’の位置は、例えばカメラ又は他の何らかのセンサ(図示せず)によって監視することができる。
[00828] ビームポインティングエラーを補正するために、第2の光学要素の2734、2738のy方向及びz方向の平行移動は必要でない場合がある。しかしながら第2の光学要素2734、2738は、他のエラーを補正することを考慮してy方向及びz方向に平行移動可能とすることができる。第2の光学要素2734、2738平行移動は、例えば放射ビームの断面形状の補正又は変更を行うために用いることがある(例えば光学要素が非球面又は他の複雑な形状を有する場合)。
[00829] コントローラ2744は、出力放射ビームBの位置及び/又は方向が所望の方向と異なるか否かを判定し、異なる場合は、出力放射ビームBを所望の方向に戻すためには光学要素2732、2734、2736、2738がどのように動く必要があるか判定するように動作可能であり得る。次いでコントローラ2744は、それに応じて光学要素2732、2734、2736、2738を動かすために、この情報をアクチュエータ62、64、66、68のための2つの信号に変換することができる。コントローラ2744は、上述の機能を実施可能であるプロセッサ(図示せず)を備え得る。プロセッサは、センサ装置2740からの所与の入力信号Sa、Sbに応じて光学要素2732、2734、2736、2738をどのように動かさなければならないかをリアルタイムで計算することができる。これに加えて又はこの代わりに、プロセッサは、メモリ(図示せず)に記憶することができる参照等からこの情報にアクセスしてもよい。
[00830] 第1の実施形態(図77、図79、及び図80)の光学システム2730の光学レイアウトは、2つの自由電子レーザFELa、FELbに関して対称的でない。このことが、異なる自由電子レーザFELa、FELbから発する放射でわずかに異なる光学特性を生じる可能性がある。図83及び図84を参照して、別の実施形態の放射源SO8について説明する。2つの実施形態において同様のコンポーネントは共通の標示で示す。
[00831] 放射源SO8は、2つの自由電子レーザFELa、FELb及び光学システム2780を備えている。光学システム2780は2つの第1の光学要素2732、2736を備え、これらは光学システム2730のものと同等であるが、x方向において概ね同じ位置に配置されている。光学システム2760は更に単一の第2の光学要素2782を備えている。第2の光学要素2782は概ねくさび形であり、2つの反射面2782a、2782bを備えている。反射面の第1のもの2782aは第1の自由電子レーザFELaの第2の光学要素として機能し、反射面の第2のもの2782bは第2の自由電子レーザFELbの第2の光学要素として機能する。反射面は双方とも凹形であり、第1の光学要素2732、2736と一致するアスティグマティック又は非球面の形状を有することができる。
[00832] 第1の実施形態SOと同様に、双方の自由電子レーザFELa、FELbがオンである場合、光学システム2780は放射ビームBa’、Bb’の大きさを拡大し、それらの形状を変更し、結合放射ビームBを出力するように機能する。しかしながら図85に示すように、第1の実施形態SOとは異なり、この実施形態SO8の光学システム2780が出力する結合ビームBは、2つの自由電子レーザFELa、FELbからの寄与分を分離する間隙2784を有する。
[00833] 第2の光学要素2782はくさび形であるが、第1及び第2の反射面2782a、2782bの交点2782cのポイントまでテーパ化することはできない。第2の光学要素2782は、交点2782cにおいて少なくとも最小の厚さをもたせ、第2の光学要素2782の熱伝導性で放射ビームBa’、Bb’からの吸収放射パワーを放散させることができる。結合放射ビームBの強度分布内の間隙2784の最小サイズは、交点2782cにおける第2の光学要素2782の最小必要厚によって決定される。
[00834] 原則として、この間隙2784はビーム分割装置20内のビーム抽出光学要素に対して何の問題も引き起こさず、ビーム抽出光学要素は、各リソグラフィ装置LA1〜LA20のファセットフィールドミラーデバイス10のほぼ全体が照明されるように設計し位置決めすることができる。例えば図85Bを参照すると、ビーム抽出光学要素は、領域2820に示すように、間隙2784が分岐放射ビームBa〜B8のいずれにも影響を与えないように配置することができる。
[00835] いくつかの実施形態では、第1の実施形態SOと同様に、第1の光学要素2732、2736は、軸2792、2796を中心としてz方向に回転してそれらの発散を変更するように動作可能である。これは第1の実施形態SOに関連付けて上述した通りである。このような実施形態では、第2の光学要素2782の表面2782a、2782bは、自由電子レーザFELa、FELbの一方からの単一の放射ビームを受けるのに充分なサイズである(図84を参照のこと)。光学システム2780が出力する放射ビームBの形状は図82に示す通りである。一方の自由電子レーザFELa、FELbのみがオンである場合、光学システム2780が出力する放射ビームBは間隙2784を含まず、y方向に沿ってどちらかの方向にずれることに留意すべきである。従って、自由電子レーザFELa、FELbのうち1つの使用と2つの使用とでスイッチングを行う場合は、ビーム分割装置20を変更しなければならない。ただし、間隙2784が無視できるほど小さい場合、及び、出力放射ビームBの中心が必ず破線2786となるように第2の光学要素2782をy方向に移動可能である場合を除く。
[00836] 放射源SO8の実施形態は、所望のように又は適宜、放射源SOの第1の実施形態のいずれか又は全ての両立可能な特徴を組み込むことができる。例えば、図83及び図84には示さないが、放射源SO8は更にセンサ装置を備えることができ、光学システム2780は更に、コントローラと、光学要素2732、2736、2782の各々のためのアクチュエータと、を備え得る。アクチュエータの各々は、光学要素2732、2736、2782の1つを動かして、2つの自由電子レーザFELa、FELbにより生成される放射ビームの方向の変化を補償することができる。
[00837] 図86は、m個の放射源SOa〜SOm、ビームデリバリシステムBDS3、及びn個のリソグラフィ装置LA1’〜LAn’を備えたリソグラフィシステムLS8を示す。放射源SOa〜SOmの各々は、極端紫外線(EUV)放射ビームBS1〜BSm(これらをメインビームと称することがある)を生成するように選択的に動作可能である。すなわち、放射源SOa〜SOmの各々は、メイン放射ビームを生成するオン状態と生成しないオフ状態との間でスイッチング可能である。放射源SOa〜SOmの各々は、オン状態に置かれた場合にオンであると言うことができ、オフ状態に置かれた場合にオフであると言うことができる。ビームデリバリシステムBDS3は、放射源SOa〜SOmの各々が生成したメイン放射ビームBS1〜BSmを受光し、各メイン放射ビームの一部を各リソグラフィ装置LA1’〜LAn’に送出するように構成されている。これについて以下で説明する。
[00838] ビームデリバリシステムBDS3はビーム分割光学部品を備えている。ビーム分割光学部品は、各メイン放射ビームBS1〜BSmをn個の別個の放射ビーム(これらを分岐ビームと称することがある)に分割する。それらは各々、n個のリソグラフィ装置LA1’〜LAn’の異なるものに送出される。例えば、第1の放射源により出力されたメイン放射ビームBS1はn個の分岐放射ビームBS1、L1〜BS1、Lnに分割され、第2の放射源により出力されたメイン放射ビームBS2はn個の分岐放射ビームBS2、L1〜BS2、Lnに分割され、m番目の放射源により出力された放射ビームBSmはn個の分岐放射ビームBSm、L1〜BSm、Lnに分割される。以下では、分岐放射ビームBSi、Ljと称する分岐放射ビームは、i番目の放射源により出力されてj番目のリソグラフィ装置に送出される放射の部分を指すことは理解されよう。
[00839] ビームデリバリシステムBDS3はm個のビーム分割光学部品を備え、これらは、メイン放射ビームBS1〜BSmの各々に対して前記m個のビーム分割光学部品のそれぞれ異なるものが設けられるように構成することができる。m個のビーム分割光学部品の各々により出力される分岐放射ビームをリソグラフィ装置に導くように、ビーム誘導光学部品を構成することができる。任意選択として、そのような実施形態では、ビーム結合光学部品を設けて、m個のビーム分割光学部品により出力される分岐放射ビームを結合してn個の複合放射ビームとして、その各々を異なるリソグラフィ装置LA1’〜LAn’へ送出してもよい。例えば、m個のメイン放射ビームBS1〜BSmの各々からの単一の分岐放射ビームを結合して各複合放射ビームを得ることができる。例えばビーム結合光学部品は、第1のリソグラフィ装置LA1’に送出される分岐放射ビームBS2、L1、BS2、L1、...、BSm、L1から成る複合放射ビームを形成するように構成可能である。このような構成では、所与の複合放射ビーム内の全ての分岐放射ビームが単一セットのビーム誘導光学部品を共有し得るので、ビーム誘導光学部品の複雑さを軽減することができる。各複合放射ビームは例えば、複数のほぼ平行に密接した分岐放射ビーム(すなわち空間的な重複がない)を含むことができる。
[00840] あるいは、ビームデリバリシステムBDS3は、m個の放射源SOa〜SOmが出力したm個のメイン放射ビームを結合して単一の複合放射ビームとするように構成されたビーム結合光学部品を備えることも可能である。そのような実施形態では、この単一の複合放射ビームをn個の複合放射ビームに分割するように単一セットのビーム分割光学部品を構成することができ、それらの複合放射ビームの各々を異なるリソグラフィ装置LA1’〜LA20’に送出する。
[00841] ビームデリバリシステムBDS3は更に、ビーム拡大光学部品及び/又はビーム整形光学部品を備えることができる。ビーム拡大光学部品は、メイン放射ビームBS1〜BSm又はこれらから形成された分岐放射ビームの1つ以上の断面積を拡大するように構成することができる。これにより、ビーム拡大光学部品の下流のミラーに対する熱負荷のパワー密度が低下する。これによってビーム拡大光学部品の下流のミラーは、低スペックで、あまり冷却を行わない、従って安価なものとすることができる。更に、このようなミラーでのパワー密度低下のため、熱膨張による光学面の変形が小さくなる。これに加えて又はこの代わりに、下流ミラーでの熱負荷のパワー密度の低下によって、これらのミラーは、メイン放射ビームBS1〜BSm又はこれらから形成された分岐放射ビームを、より大きなかすめ入射角で受光することができる。例えばこれらのミラーは、例えば2度でなく5度のかすめ入射角で放射を受光し得る。ビーム整形光学部品は、メイン放射ビームBS1〜BSm又はこれらから形成された分岐放射ビームの1つ以上の断面形状及び/又は強度プロファイルを変更するように構成することができる。
[00842] 代替的な実施形態では、ビームデリバリシステムBDS3がビーム拡大光学部品又はビーム整形光学部品を含まない場合がある。
[00843] いくつかの実施形態では、ビームデリバリシステムBDS3は、メイン放射ビームBS1〜BSm又はこれらから形成された分岐放射ビームの1つ以上の断面積を縮小するように構成されたビーム縮小光学部品を備えることができる。上述のように、ビーム拡大光学部品は、ビームデリバリシステムBDS3内のミラーが受ける熱負荷のパワー密度を低下させることができ、これが望まれる場合がある。しかしながら、ビーム拡大光学部品によって前記ミラーのサイズが拡大し、これは望ましくない場合がある。ビーム拡大光学部品及びビーム縮小光学部品を用いると、所望のビームサイズを得ることが可能となる。これは、光学収差が所与の閾値レベル未満となる最小ビーム断面であり得る。
[00844] 放射源SOa〜SOm、ビームデリバリシステムBDS3、及びリソグラフィ装置LA1’〜LA’は全て、外部環境から隔離可能であるように構築及び配置することができる。放射源SOa〜SOm、ビームデリバリシステムBDS3、及びリソグラフィ装置LA1’〜LAn’の少なくとも一部において真空を与えて、EUV放射の吸収を最小限に抑えることができる。リソグラフィシステムLS8の異なる部分に異なる圧力の真空を与える(すなわち大気圧より低い異なる圧力に保持する)ことも可能である。リソグラフィシステムLS8の異なる部分を、例えば水素分圧を除いて超高真空(UHV)条件下に維持してもよい。水素分圧は、例えば1Pa未満のように、10Paより大幅に低いものとすればよい。
[00845] 図87はリソグラフィ装置LA’を示す。これは、集束ユニットFU、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備えている。リソグラフィ装置LA1’〜LAn’の各々は、以下で説明するような図87のリソグラフィ装置LA’とほぼ同一とすることができる。
[00846] 照明システムILは、照明システムILの閉鎖構造の開口3008を通った放射ビームCBaを受光するように構成されている。開口3008は、例えば数ミリメートルのオーダーの直径を有することができる。照明システムILの第1の光学要素はファセットフィールドミラーデバイス3010を備え、非ゼロの開口数を有する。例えばファセットフィールドミラーデバイス3010は、約0.22の開口数を有し、開口3008に又はこの近傍に焦点を有することができる。従って、ファセットフィールドミラーデバイス3010が放射によって充分に照明されるように、集束ユニットFUは放射ビームCBaを開口3008に又はこの近傍に集束させるように構成されている。
[00847] 明確さのため図87には示さないが、リソグラフィ装置LA’は、複数のほぼ平行に隣接した放射サブビームから成る複合放射ビームCBaを受光するように構成されている。例えば図86の第1のリソグラフィ装置は、分岐放射ビームBS2、L1、BS2、L1、...、BSm、L1から成る複合放射ビームを受光するように構成されている。更に、これも明確さのため図87には示さないが、集束ユニットFUは複数の集束光学部品を備え、その各々が、リソグラフィ装置LA’により受光される放射サブビームのそれぞれ異なるものを受光するように配置されている。以下で更に説明するように、複数の集束光学部品は、リソグラフィ装置LA’により受光される放射サブビームの各々を異なる中間焦点に集束させるように構成されている。異なる中間焦点は、ファセットフィールドミラーデバイス3010の光軸周辺に近接して配置されるので、異なる放射サブビームの各々からの放射がファセットフィールドミラーデバイス3010で部分的に重複し、ファセットフィールドミラーデバイス3010が各放射サブビームによって完全に照明されるようになっている。明確さのため、図87には単一の中間焦点3006のみを示している。
[00848] 照明システムILは、リソグラフィ装置LA1’によって受光される放射ビームCBaがパターニングデバイスMAに入射する前にこれを調節するように構成されている。この目的のため、照明システムILの第2の光学要素はファセット瞳ミラーデバイス3011を備えている。ファセットフィールドミラーデバイス3010及びファセット瞳ミラーデバイス3011は共に、放射ビームCBaに所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームCBaは照明システムILから出て、支持構造MTが保持するパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは放射ビームを反射し、これにパターンを与えて、パターン付与されたビームCBa’を形成する。代替的な実施形態では、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス3010及びファセット瞳ミラーデバイス3011に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むこともある。照明システムILは、例えば個別に移動可能なミラーのアレイ(又は行列)を含むことができる。個別に移動可能なミラーは、例えば直径1mm未満であり得る。個別に移動可能なミラーは、例えば微小電気機械システム(MEMS)デバイスとすればよい。
[00849] パターン付与された放射ビームCBa’は、パターニングデバイスMA’から反射した後、投影システムPS’に入る。投影システムPS’は、パターン付与された放射ビームCBa’を基板テーブルWT’が保持する基板W’に投影するように構成されている。この目的のため、投影システムPS’は、パターン付与された放射ビームCBa’を基板W’上に投影するように構成された複数のミラー3013、3014を備えている。投影システムPS’はパターン付与された放射ビームCBa’に縮小率を適用して、パターニングデバイスMA’上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する像を形成することができる。例えば縮小率4を適用可能である。投影システムPS’は、パターン付与された放射ビームCBa’に、2つの相互に垂直な方向(x方向及びy方向と呼ぶことがある)で異なる縮小率を適用することも可能である。図87において投影システムPS’は2つのミラーを有するが、投影システムはいかなる数のミラーも含むことができる(例えば6個のミラー)。基板W’は以前に形成されたパターンを含むことがある。この場合、リソグラフィ装置LA’は基板W’上の以前形成されたパターンとパターン付与された放射ビームCBa’とを位置合わせする。
[00850] 放射源SOa〜SOmの各々はEUV放射ビームBS1〜BSmを発生させるように構成されている。これらのm個のEUV放射ビームBS1〜BSmの結合パワーは、リソグラフィ装置LA1’〜LAn’の各々に供給されるのに充分なものである。放射源の各々は自由電子レーザを備えることができる。あるいは、放射源は他のいずれかの方法で実施可能であり、例えばレーザ生成プラズマ(LPP)放射源を備えてもよい。
[00851] 以下の検討は自由電子レーザによって発生する放射に関するが、自由電子レーザが本発明に必須でないことは認められよう。本発明の実施形態は、比較的小さいエテンデュを有する他の高パワー放射源を組み込んでもよい。
[00852] 自由電子レーザにより出力された放射ビームBは、ほぼ円形の断面及びガウス分布に近い強度プロファイルを有することができる。EUV自由電子レーザにより生成された放射ビームBは典型的に比較的小さいエテンデュを有する。具体的には、自由電子レーザFELにより生成されたEUV放射ビームBは、レーザ生成プラズマ(LPP)源又は放電生成プラズマ(DPP)源(これらは双方とも当技術分野において既知である)によって発生されるEUV放射ビームよりも著しく小さいエテンデュを有する。例えば放射ビームBは、例えば100マイクロラジアン未満のような500マイクロラジアン未満の発散を有し得る。放射ビームBは、アンジュレータ24からの出射時にビームウェストにおいて例えば約50μmから100μmの直径を有し得る。
[00853] 自由空間(すなわち屈折率が1)では、光学システムの無限小面素(infinitesimal surface element)dSにおける放射ビームのエテンデュは、面dSの面積、面素を横断する(又はその面素から放出される)放射に対する立体角dΩ、及び面素の法線とそのポイントを横断する放射の方向との角度のコサインの積によって与えられる。一般に、拡張表面Sにおける放射ビームのエテンデュは、各面素を横断する(又は各表面要素から放出される)放射に対する立体角についての積分(光が一定の角度範囲で面上の各ポイントを横断し得るという事実を考慮するため)、及び、面についての積分(全てのそのような面要素からの寄与分を合計するため)によって与えられる。自由電子レーザにより生成されるような充分にコリメートされた放射ビームを生成するように動作可能な光源では、光源のエテンデュは、光源の面積と、光の放出先の立体角との積によって見積もることができる。更に、そのような光源では、光の放出先の立体角は、(小さい角度近似を用いて)Πθ2によって与えられる。θは光源の発散の2分の1である。従って、そのような光源のエテンデュは、G=ΠAθ2によって与えられる。Aは光源の面積である。これにより、ビームウェスト直径が50μmであり全発散が100マイクロラジアンである自由電子レーザのエテンデュは、約1.5x10−11mm2であることがわかる。
[00854] 放射ビームが光学システムを伝搬する際、そのエテンデュは低下することができない。放射ビームが、自由空間における完璧な光学システムすなわち完璧な反射及び屈折を有する光学システムを伝搬する際、そのエテンデュは一定のままである。しかしながら、放射ビームが、例えば散乱及び/又は回折によって放射を拡大させる光学システムを伝搬すると、そのエテンデュは増大する。光学システムにおける光学要素(例えばミラー及びレンズ)の品質が高くなればなるほど、エテンデュの増大は小さくなる。
[00855] 上記のことを踏まえて、m個の放射源SOa〜SOmが自由電子レーザを備える実施形態では、メイン放射ビームBS1〜BSmの各々は極めて小さいエテンデュを有し、更に、このエテンデュは、放射が各光源からリソグラフィ装置LA1’〜LAn’まで伝搬する際に一定のままであるか又は比較的少量だけ増大する。この結果、各リソグラフィ装置LA1’〜LAn’の第1の光学要素(例えば図87に示すファセットフィールドミラーデバイス3010)に投影される放射のエテンデュも極めて小さい。従って、各自由電子レーザにより形成される中間焦点の直径は比較的小さい。
[00856] 上述のように、各リソグラフィ装置LA1’〜LAn’の照明システムIL’の第1の光学要素は、約0.22であり得る非ゼロの開口数を有する。すなわち、第1の光学要素の焦点(開口3008に又はその近傍にある)における立体角は、各自由電子レーザの放射の放出先の立体角よりも著しく大きい。放射のエテンデュがほぼ一定のままである場合、これが意味するのは、各自由電子レーザにより形成される中間焦点の直径が、各メイン放射ビームBS1〜BSmのビームウェスト直径の(すでに小さい)直径よりも大幅に小さいということである。
[00857] 本発明の実施形態は、充分に小さいエテンデュの放射源SOa〜SOmを高品質のビームデリバリシステムBDS3と組み合わせると、各リソグラフィ装置LA1’〜LAn’において充分に小さい中間焦点が形成されて、2つ以上のそのような中間焦点を密接配置できるという事実を利用している。これらの中間焦点をファセットフィールドミラーデバイス3010の光軸周辺に近接して配置することにより、所与のリソグラフィ装置が受光した異なる分岐放射ビームの各々からの放射はファセットフィールドミラーデバイス3010で部分的に重複して、ファセットフィールドミラーデバイス3010を各分岐放射ビームによって完全に照明することが可能となる。
[00858] 本明細書では本発明の実施形態について特に自由電子レーザを参照して説明しているが、放射源SOa〜SOmは、充分に小さいエテンデュを有する他のいずれかのタイプの放射源を備えてもよいことは認められよう。
[00859] これより、2つの放射源SOa、SOb(すなわちm=2)を備えた図86のリソグラフィシステムLS8の一実施形態と共に用いられる、リソグラフィ装置LA1’〜LAn’の集束ユニットFU及びビームデリバリシステムBDS3の様々な実施形態について説明する。
[00860] 図88は、リソグラフィ装置LA1’〜LAn’の各々の集束ユニットFUを形成し得る集束ユニット3300の概略的なレイアウトを示す。
[00861] 集束ユニット3300は2つの集束要素3310、3320を備え、その各々は入力放射ビームを受光してこれを中間焦点で集束させるように配置されている。具体的には、各集束要素3310、3320は、概ね平行な放射ビームを受光してこれを焦点で集束させるように配置された2つの湾曲かすめ入射ミラーを用いるウォルター集光器(Wolter collector)を備えている。集束要素3310、3320が受光する放射ビームは、例えば2つの放射源SOa、SObの各々からの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liを含むことができる。
[00862] 各集束要素3310、3320はタイプIIIのウォルター集光器を備えることができる。図90はタイプIIIのウォルター集光器3400の断面図を示す。この集光器は、内側の凸面放物面鏡3410と、外側の凹面楕円鏡3420と、を備えている。概ね平行な入力放射ビームが放物面鏡3410に入射すると、これは楕円鏡3420の方へ反射され、楕円鏡3420によって反射され、集光器3400の焦点3430で集束する。放射ビームは、放物面鏡3410から離れる方向に伝搬する時、楕円鏡3420の第1の焦点と一致する放物面鏡3410の焦点3432から発するように見える。このため、楕円鏡3420からの反射後、集光器3400の焦点3430は楕円鏡3420の第2の焦点と一致する。このような配置により、反射かすめ入射光学部品を用いてEUV又はX線放射を集束させることができる。
[00863] 2つの集束要素3310、3320は、相互に隣接し、集束ユニット3300の中心軸3330について対称的に配置されている。集束要素3310、3320の各々には、かすめ入射ステアリングミラー3311、3321がそれぞれ設けられている。かすめ入射ステアリングミラー3311、3321は、分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liが集束要素3310、3320に接近する際にそれぞれの方向を制御するように配置されている。各集束要素3310、3320及びこれに関連付けられたかすめ入射ステアリングミラー3311、3321を集束光学部品と呼ぶことができる。
[00864] ステアリングミラー3311は、中心軸3330の一方側にあって中心軸3330に対して概ね平行である概ね平行な分岐放射ビームBS1、Liを受光するように配置されている。ステアリングミラー3311は、放射ビームBS1、Liが集束要素3310に接近する際にその方向を変更する。図89に最も明らかに見られるように、集束要素3310は、集束ユニット3300の焦点面3340に位置する中間焦点3312で分岐放射ビームBS1、Liを集束させる。中間焦点3312は、中心軸3330の一方側に配置され、(焦点面3340において)距離xだけ離れている。
[00865] 同様に、ステアリングミラー3321は、中心軸3330の分岐放射ビームBS1、Liとは反対側にあって中心軸3330に対して概ね平行である概ね平行な分岐放射ビームBS2、Liを受光するように配置されている。ステアリングミラー3321は、放射ビームBS2、Liが集束要素3320に接近する際にその方向を変更する。図89に最も明らかに見られるように、集束ユニット3320は、集束ユニット3300の焦点面3340に位置する中間焦点3322で分岐放射ビームBS2、Liを集束させる。中間焦点3322は、中心軸3330の中間焦点3312とは反対側に配置され、中心軸3330から(焦点面3340において)距離xだけ離れている。
[00866] 焦点面3340の2つの集束要素3310、3320とは反対側で、2つの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liは発散する。それらの発散は、入来分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの直径と各集束要素3310、3320内のミラーの湾曲によって決定する。集束ユニット3300の焦点面3340の近傍では、2つの発散分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liは空間的に別々のままである。しかしながら図88に見られるように、集束ユニット3300の焦点面3340から充分に大きい距離だけ離れると、例えば面3350内で、2つのビームが部分的に重複する。面3350の重複領域3352は、2つの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの双方からの放射を受光する。面3350の第1のエッジ領域3354は分岐放射ビームBS1、Liからの放射のみを受光し、面3350の第2のエッジ領域3356は分岐放射ビームBS2、Liからの放射のみを受光する。中心軸3330からの各中間焦点3312、3322の焦点面3340での距離xを縮小することで、面3350の重複領域3352のサイズを拡大することができる。
[00867] かすめ入射ステアリングミラー3311、3321は、分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liがそれぞれ集束要素3310、3320に接近する際にそれらの方向を制御して、面3350内での2つの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの重複を最大化するように構成することができる。これに加えて又はこの代わりに、かすめ入射ステアリングミラー3311、3321及び2つの集束要素3310、3320は、分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liが集束要素3310、3320から出射する際に、確実に各ビームの方向が中心軸3330に概ね整合するように構成することができる。そのような構成は、2つの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの各々が面3350に接近する角度の差を最小限に抑える。結果として、これにより、パターニングデバイスMA’に入射する放射ビームCBaの強度プロファイルのずれを最小限に抑える。
[00868] 使用の際、集束ユニット3300は、例えばリソグラフィシステムLS8のi番目のリソグラフィ装置LAiのようなリソグラフィ装置の照明システムIL’の閉鎖構造の開口3008に近接配置される。集束ユニット3300は、その中心軸3330がリソグラフィ装置LAiの第1の光学要素(例えばファセットフィールドミラーデバイス3010)の光軸と概ね整合するように配置される。更に、集束ユニット3300は、リソグラフィ装置LAiの第1の光学要素の焦点が集束ユニット3300の焦点面3340内に又はその近傍にあるように配置される。このような配置により、集束ユニット3300は2つの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liを、開口3008で又はその近傍で2つの中間焦点3312、3322に集束させることができる。ファセットフィールドミラーデバイス3010は2つの分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの重複内に配置される。例えばファセットフィールドミラーデバイス3010は、図88に示す面3350の重複領域3352内に配置することができる。従って、ファセットフィールドミラーデバイス3010のフィールドのほぼ全体が双方の分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liによって照明される。「ファセットフィールドミラーデバイス3010のフィールド全体」は、リソグラフィ装置LAiが放射ビームに付与するパターンとは無関係に、基板W’上に投影されるファセットフィールドミラーデバイス3010の部分の全てを含むことは認められよう。すなわち、ファセットフィールドミラーデバイス3010のそれらの部分が放射を受光し、放射ビームにパターンが付与されない場合、その放射はリソグラフィ装置LAiを介して基板W’へと伝搬する。
[00869] いくつかの実施形態では、集束ユニット3300は、リソグラフィ装置LAiの第1の光学要素の焦点が集束ユニット3300の焦点面3340の近傍にあるが焦点面3340内には存在しないように配置することも可能である。分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liのこのような脱焦は、面3340における光スポットのサイズを拡大させる。ファセットフィールドミラーデバイス3010は、これらの光スポットの像をファセット瞳ミラーデバイス3011の各ミラー上に形成するように配置されている。従って、リソグラフィ装置LAiの第1の光学要素の焦点が集束ユニット3300の焦点面3340の近傍にあるが焦点面3340内には存在しないような配置は、ファセット瞳ミラーデバイス3011のミラー上に像形成されるビームスポットのサイズを拡大する。これは、ファセット瞳ミラーデバイス3011のミラー(同様に、瞳面に位置するいずれかの下流ミラー)に対する熱負荷のパワー密度を低減させるので、有益である。
[00870] このような構成では、第1及び第2のエッジ領域3354、3356によって受光される放射はファセットフィールドミラーデバイス3010を照明せず、従って廃棄される。中心軸3330からの中間焦点3312、3322の各々の焦点面3340での距離xを縮小することで、このように廃棄される放射部分を減らすことができる。ビームウェスト直径が50μmであり全発散が100マイクロラジアンである自由電子レーザでは、中間焦点3312、3322を中心軸3330の充分に近くに配置することで、第1及び第2のエッジ領域3354、3356により受光されるために廃棄される放射が、リソグラフィ装置LAiで受光される放射のうち極めて小さい割合であることを保証することができる。例えば、2つの中間焦点3312、3322の各々と中心軸との間の距離xは約3mmとすることができ、ファセットフィールドミラーデバイス3010の面における分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの各々の半径は約225mmとすることができる。このような構成では、重複領域3352の大きさに対する第1及び第2のエッジ領域3354、3356の各々の大きさの比は約0.017であることがわかる。従って、分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liがトップハット強度分布を有する実施形態では、放射の1.7%が廃棄される。分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liがガウス分布に近い強度分布を有する実施形態では、第1及び第2のエッジ領域3354、3356における分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの強度は比較的低い。ガウス分布に近い放射ビームでは、2シグマの半径における強度は中心における強度の13.5%である。このため、分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liがガウス分布に近い強度分布を有し、第1及び第2のエッジ領域3354、3356が分岐放射ビームBS1、Li、BS2、Liの中心から約2シグマである実施形態では、放射の約1.7%x13.5%=0.23%のみが廃棄される。
[00871] 複数(この場合は2つ)の集束要素3310、3320を備え、その各々が異なる放射ビームを受光してこれをリソグラフィ装置LAiの第1の光学要素(例えばファセットフィールドミラーデバイス3010)に投影するように構成されている集束ユニット3300を用いると、入力放射ビームの数に比較的影響を受けにくい機構が得られる。例えば2つの放射源SOa、SObの一方が動作していない場合、各リソグラフィ装置LA1’〜LAn’のファセットフィールドミラーデバイス3010は、他方の放射源からの分岐放射ビームによってほぼ完全に照明され続ける。リソグラフィ装置が動作を継続するために、ビームデリバリシステムBDS3に(例えば動作中の放射源からの放射が進む光路を変更するために)、又はリソグラフィ装置LA1’〜LAn’に(例えばファセットフィールドミラーデバイス3010及びファセット瞳ミラーデバイス3011の構成を調整するために)能動的な調整を行う必要はない。各リソグラフィ装置によって受光される放射のパワーは低減する(例えばm個の同一の放射源SOa〜SOmの1つが動作していない場合、m/(m−1))が、その他の点では、リソグラフィシステムLS8は影響を受けないままである。
[00872] 図91は、2つの放射源SOa、SOb(すなわちm=2)を備えた図86のリソグラフィシステムLSの一実施形態であるリソグラフィシステムLS9を示す。リソグラフィシステムLS9は、ビーム結合光学部品3500及びビーム分割光学部品3550を含むビームデリバリシステムBDS4を備えている。ビーム結合光学部品3500は、2つの放射源SOa、SObが出力した2つのメイン放射ビームBS1、BS2を受光して単一の複合放射ビームBoutを出力するように構成されている。ビーム分割光学部品3550は、ビーム結合光学部品3500が出力した単一の複合放射ビームBoutを受光し、これをn個の複合放射ビームに分割するように構成されている。複合放射ビームの各々は異なるリソグラフィ装置LA1’〜LA20’へ送出される。
[00873] 図92は、図91のリソグラフィシステムLS9の一部を形成し得るビーム結合光学部品3500の概略的なレイアウトを示す。ビーム結合光学部品3500は、(放射源SOa、SObの各々から)メイン放射ビームBS1、BS2を受光し、出力放射ビームBoutを出力するように構成されている。
[00874] ビーム結合光学部品3500は4つの光学要素を備えている。すなわち、放射源の第1のものSOaに関連付けられた第1及び第2の光学要素3532、3534と、放射源の第2のものSObに関連付けられた第1及び第2の光学要素3536、3538である。光学要素3532、3534、3536、3538は、放射源SOa、SObからのメイン放射ビームBS1、BS2の断面の大きさ及び形状を変更するように構成されている。
[00875] 具体的には、第1の光学要素3532、3536は凸面鏡であり、メイン放射ビームBS1、BS2の断面積を拡大するように機能する。第1の光学要素3532、3536を発散光学要素と呼ぶことができる。図92では第1の光学要素3532、3536はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、これらは実際にはこの面において凸形である。第1の光学要素3532、3536は凸形であるので、メイン放射ビームBS1、BS2の発散を増大させ、これによって下流のミラーに対する熱負荷を低減させる。放射ビームBoutは、ビームBoutの経路に直列に配置された複数の連続した静的ナイフエッジミラーを備え得るビーム分割光学部品3550によって複数の複合分岐放射ビームに分割される。第1の光学要素3532、3536を用いてビームBoutのサイズを拡大すると、このようなナイフエッジミラーを放射ビームBoutの経路路内に位置付ける際に要求される精度を低くすることができる。従ってこれは、分割光学部品3550による出力ビームBoutのいっそう正確な分割を可能とする。
[00876] 第2の光学要素3534、3538は凹形で、第1の光学要素と相補的な形状にして、第2の光学要素3534、3538から出るビームの発散を実質的にゼロとする(すなわち平行なビームとする)。第2の光学要素3534、3538を収束光学要素と呼ぶことができる。従って、第2の光学要素3534、3538の下流では、ビームは実質的にコリメートされている。この場合も、図92では第2の光学要素3534、3538はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、これらは実際にはこの面において凹形である。
[00877] このような機構3500は、2つのメイン放射ビームBS1、BS2をy方向に拡大する。ビームをz方向にも拡大するため、z方向に湾曲した別のミラー対(第1のものは凸形で第2のものは凹形)を用いることができる。従って、メイン放射ビームBS1、BS2をy方向及びz方向の双方に拡大するために合計で8個のミラーを用いることができる。
[00878] ビーム分割光学部品3550により受光される出力ビームBoutは、放射源SOa、SObが出力するものとは異なる形状及び/又は強度分布を有することが好ましい場合がある。例えば、ビーム分割光学部品3550が複数の連続したナイフエッジ形成抽出ミラーを用いる実施形態では、例えばガウス分布に近い強度プロファイルを有する円形ビーム(放射源SOa、SObによって出力される場合がある)よりも、概ねトップハットの強度プロファイルを有する矩形の形状の方が好ましいことがある。従って光学要素3532、3534、3536、3538は、放射ビームBS1、BS2の断面積を拡大することに加えて、放射ビームBS1、BS2の断面形状を変更するように作用する。具体的には、光学要素3532、3534、3536、3538はアスティグマティック又は非球面として、第2の光学要素3534、3538から出る放射ビームBS1、BS2が、放射源SOa、SObにより生成された放射ビームBS1、BS2よりも矩形の形状であることを保証するような形状とする。例えばこれらの光学要素は、第2の光学要素3534、3538から出るビームBS1、BS2が概ね矩形であるような形状とすればよいが、他の形状も可能である。このような矩形形状の2つの寸法は、例えばx−y面とz方向のような2つの垂直方向における光学要素の曲率半径に関連付けることができる。このような概ね矩形の形状によって、出力放射ビームBoutを分岐放射ビームに分割するために用いるミラーを、同一のものとするか又は少なくとも極めて類似したものとすることができる。これは製造上の観点から特に有益である。
[00879] 放射源SOa、SObが双方ともオンである場合、ビーム結合光学部品3500は、2つのメイン放射ビームBS1、BS2を結合して複合放射ビームBoutを形成するように動作可能である。すなわち、第2の光学要素3534、3538から出るビームBS1、BS2は相互に隣接していると共に相互に平行である。ビーム結合光学部品3500によって、各リソグラフィ装置LA1’〜LA20’に送出される分岐放射ビームの全てが、単一の光学部品セット(例えばビーム分割光学部品3550内の単一の静的ナイフエッジミラー及びいずれかの追加の誘導光学部品)を共用することができる。
[00880] 図91の放射源SOa、SObの各々は、それらがオフになる定例の及び/又は不定期のダウンタイムを有し得る。放射源SOa、SObの一方がオフである場合も、リソグラフィ装置LA1’〜LAn’は全ていくらかの放射を受光するが、双方の放射源がオンである場合に受光するはずの放射の半分だけである(2つの放射源の出力がほぼ同じであると仮定した場合)。
[00881] 図93に、光学システム3500により出力される複合放射ビームBoutの断面プロファイルを示す。複合放射ビームBoutのエッジは、その強度が予め設定された閾値未満に低下するポイントとして規定される。図93は出力ビームBoutの8つの部分3120も示す。これらは、8つのほぼ同一の連続したナイフエッジ抽出ミラー(図示せず)を用いてビーム分割光学部品3550により生成される8つの分岐放射ビームに対応している。これは、8つのリソグラフィ装置LA11’〜LA8(すなわちn=8)を備えたリソグラフィシステムLS9の実施形態に対応する。各部分3120は、2つの放射ビームBS1、BS2の各々からの放射の一部を含む。
[00882] 図94は、2つの放射源SOa、SOb(すなわちm=2)を備えた図86のリソグラフィシステムLSの一実施形態である別のリソグラフィシステムLS10を示す。リソグラフィシステムLS10は、2つのビーム分割光学部品3610、3620を含む代替的なビームデリバリシステムBDS5を備えている。ビーム分割光学部品3610は、放射源SOaが出力したメイン放射ビームBS1を受光し、これをn個の複合放射ビームBS2、L1〜BS1,nに分割するように構成されている。これらのビームの各々は異なるリソグラフィ装置LA1’〜LAn’へ送出される。ビーム分割光学部品3620は、放射源SObが出力したメイン放射ビームBS2を受光し、これをn個の複合放射ビームBS2、L1〜BS2、Lnに分割するように構成されている。これらのビームの各々は異なるリソグラフィ装置LA1’〜LAn’へ送出される。
[00883] ビームデリバリシステムBDS3、BDS4、BDS5内の光学部品の一部又は全ては、1つ以上の軸を中心とした回転、又は1つ以上の方向での平行移動を行うように動作可能であり得る。この目的のため、これらには、コントローラから受信した信号に応じて制御可能なアクチュエータを設けることができる。これにより、放射源SOa〜SOmが出力したメイン放射ビームBS1〜BSmの方向のばらつきを補正するように、ビームデリバリシステムBDS3を調整することができる。ビームデリバリシステムは更に、ビームデリバリシステムBDS3内での1つ以上の放射ビームの位置を示す信号をコントローラに出力するように動作可能な1つ以上のセンサ装置を備えることができる。従って、センサ装置及びコントローラは、放射源SOa〜SOmが出力したメイン放射ビームBS1〜BSmの方向のばらつきを補正するためのフィードバックループの一部を形成することができる。
[00884] 上述のように、1つ以上の放射源によって生成された放射ビームを送出するビームデリバリシステムは概して、複数のミラーを含む複数の光学部品を備える。放射源が概ねガウス分布断面の放射ビームを与える自由電子レーザ(FEL)を備えた実施形態では、ビームデリバリシステム内の光学部品によって放射ビーム直径がクリッピングされる(切り取られる)場合がある。例えば特定のミラーの幾何学的形状では、強度プロファイルが例えば2〜3又は4シグマで「クリッピングされた」放射ビームが得られることがある。この場合、反射された放射ビームでは「パワー」と「パワーなし」との間にシャープな遷移がある。このような「シャープなクリッピング」は、放射ビームの伝搬時にビームプロファイルに影響を及ぼす干渉作用を引き起こし得る。例えば回折効果によって、放射ビームの断面上に著しい強度振動を引き起こすことがある。
[00885] この強度振動を低減させるための1つの選択肢は、もっと大きい直径で放射ビームをクリッピングするミラーを用いることである。例えば放射ビームは、4シグマでなく6シグマでクリッピングされ得る。しかしながら、これを行うには、放射ビームの中心で同一のピークパワー密度を達成するためにビームデリバリシステム内のミラーを著しく大型化する必要がある。
[00886] 「ハードクリッピング」の効果を低減する代替的な方法は、放射ビームの「ソフトクリッピング」を与えることである。ソフトクリッピングを行うと、放射ビームはシャープに遷移せずに徐々にクリッピングされる。一実施形態では、ビームデリバリシステム内の1つ以上のミラーの外側エッジにEUV放射吸収材料が設けられる。放射吸収材料は、放射吸収材料の最も内側の部分からミラーの外側エッジにかけて、最大反射率から最小反射率へと徐々に遷移するように構成することができる。例えば放射吸収材料は、内側部分から外側部分へ向かって厚くなるように、厚さを変化させて堆積することができる。あるいは、ミラーの異なる部分に、異なる放射吸収特性を有する異なる材料又は材料組成を適用してもよい。
[00887] 放射吸収材料の厚さは、放射吸収材料によって生じ得る波面ずれ(wave−front shift)を低減させるように選択すればよい。具体的には、放射吸収材料の厚さtabについて、波面ずれは以下によって与えられる。
ここで、aはラジアン単位のかすめ角である。例えばいくつかの実施形態では、aは約0.035ラジアンの値を有し得る。
[00888] 放射吸収材料がEUV放射を吸収する結果、熱負荷が増大する。ミラーのエッジでの熱負荷増大が引き起こす温度勾配によってミラーが変形するのを抑えるため、いくつかの実施形態では、ミラーの外側エッジ(放射吸収材料が配置されている)をミラーの内側部分から断熱する。図71は、上述のビームデリバリシステムの1つ以上のコンポーネントにおいて使用可能なミラー3800の断面を概略的に示す。ミラー3800は、放射源から与えられる放射ビームの経路に位置決めされた反射面3801を備えている。放射源は上述のようないずれかの放射源とすればよい。
[00889] ミラー3800は更に、ミラー3800のエッジに塗布された放射吸収材料3802を含む。この放射吸収コーティングは、ミラー3800のエッジに近くなるにつれて厚さが増すように塗布されている。放射吸収コーティングは、いずれかの適切な材料から作製すればよい。一例として放射コーティングは、アルミニウム、金、ニッケル、又はレニウムとすることができる。アルミニウムの屈折率はEUV放射について真空のものとほぼ同様であり、従ってかすめ入射角において反射がほとんどなく、なおかつEUV放射を吸収するので、アルミニウムが特に有用である。
[00890] ミラー3800は、反射面3801を含む上部3803と下部3804とを備えている。上部3803及び下部3804は各々、断熱間隙3805を形成するように共働する溝を備えている。断熱間隙3805は真空とするか、又は気体を充填することができる。断熱間隙3805はミラー3800のエッジ部分を断熱して、放射吸収材料3802によるEUV放射の吸収が引き起こす局所的な熱負荷がミラー3800の中央部を介した温度勾配を生成しない(又はこの温度勾配を低減させる)ように機能する。
[00891] ミラー3800は更に、冷却流体を送出するための冷却チャネル3806を備えている。
[00892] 図72にミラー3900の代替的な例を概略的に示す。ミラー3900は、放射ビームの経路に配置された反射面3901を備えている。反射面3901上に、複数のスポット3902の形態の放射吸収材料が、異なる表面積密度で堆積されている。すなわち、ミラー3900の外側エッジに近付くにつれて、スポット3902が反射面3901を覆う部分が大きくなる。好ましくは、スポットを充分に小さくすることで、スポット3901のエッジからの回折が充分に広がって放射ビームの伝搬に負の影響を与えないように、又は他の負の結果を生じないようにする。例えばスポットは約0.25mmの直径を有し得る。
[00893] 更に別の実施形態では、スポット3901を吸収性でなく反射性とし、メイン放射ビームとは異なる方向に入来放射を反射するように構成してもよい。例えば各スポットは、反射面内に適切なくぼみを切削し、これらのくぼみをルテニウム等の反射コーティングで被覆することで設ければよい。
[00894] 上述のことから、ビームデリバリシステムが複数のミラーを有し得ることは認められよう(例えば2つの放射源からの放射ビームを結合する構成、多数のツールに与えるために放射ビームを分割する構成等)。一実施形態では、複数の後続ミラーで放射ビームのソフトクリッピングを行うことで、放射ビームの所望のクリッピングを達成する。これは、単一のミラーのソフトクリッピング手段に加わる熱負荷を低減させるという利点を有し得る。例えば1つの例示的な実施形態では、第1のミラーが4つのうち第1の2つのエッジに沿ってソフトクリッピング手段を与え、後続の(例えば次の)ミラーが4つのうち第2の2つのエッジに沿ってソフトクリッピング手段を与えることができる。このため、これら2つのミラーを合わせると全てのエッジに沿ってソフトクリッピング手段が与えられる。熱負荷を拡散することに加えて、後続ミラーの異なるエッジ上にソフトクリッピング手段を設けることで、放射ビームの直径が変動する場合又は前もって知られていない場合に、「ソフトアパーチャ」の直径を変動させることができる。
[00895] リソグラフィ装置LS11の様々な実施形態を参照して上述したように、リソグラフィ装置(例えばリソグラフィ装置LA1)に分岐放射ビームBを与える。分岐放射ビームB1は、少なくとも1つの自由電子レーザFELを含む放射源SOから放出されるメイン放射ビームBから形成される。リソグラフィシステムLS11のいくつかの実施形態では、リソグラフィ装置LA1に、所望の偏光状態を有する分岐放射ビームB1を与えることが有利である。例えば、リソグラフィ装置に円偏光された分岐放射ビームを与えることが望ましい場合がある。
[00896] 一般に、リソグラフィ装置LA1により受光される分岐放射ビームB1の偏光は、分岐放射ビームB1の一部を形成する出力を与える1つ以上の自由電子レーザから放出される放射の偏光と、1つ以上の自由電子レーザFEL及びリソグラフィ装置LA1間の放射の光路に沿って生じる偏光のなんらかの変化と、に依存する。
[00897] 自由電子レーザFELから放出される放射は通常、リソグラフィ装置LA1によって受光される前に反射要素(例えばミラー)で何度か反射される。自由電子レーザからの放射が反射要素で反射されると、放射の偏光が変わることがある。従って、リソグラフィ装置LA1が受光する分岐放射ビームB1の偏光は、自由電子レーザFELから放出された放射の偏光とは異なる場合がある。
[00898] 自由電子レーザFELから放出される放射の偏光は、自由電子レーザFELの一部を形成するアンジュレータ24の幾何学的形状に依存する。具体的には、自由電子レーザFELから放出される放射の偏光は、アンジュレータ24における係数A(式1に表す)に依存する。いくつかの実施形態では、アンジュレータ24はヘリカルアンジュレータである。アンジュレータ24がヘリカルアンジュレータである場合、係数Aは1にほぼ等しく、アンジュレータは円偏光の放射を放出し得る。上述のように、リソグラフィ装置LA1に円偏光の分岐放射ビームB1を与えることが望ましい場合がある。しかしながら、自由電子レーザFELが円偏光放射を放出する実施形態では、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの分岐放射ビームB1の光路に沿って反射要素により放射の偏光が変化すると、リソグラフィ装置LA1に与えられる分岐放射ビームB1は円偏光でなくなる可能性がある。例えば、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの光路に沿って分岐放射ビームB1の偏光が変化すると、分岐放射ビームB1はリソグラフィ装置LA1に与えられる時に楕円偏光となっている可能性がある。
[00899] 従って、リソグラフィ装置LA1に与えられる分岐放射ビームB1がほぼ円偏光であるようにリソグラフィシステムLS11を構成することが望ましい場合がある。
[00900] 図97A及び図97Bは、リソグラフィシステムLS11’’の一実施形態の一部の概略図である。リソグラフィシステムLS11’’は、自由電子レーザFELを含む放射源SOと、ビームデリバリシステムBDSと、リソグラフィ装置LA1と、を備えている。図97A及び図97Bの図では、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1まで伝搬する単一の分岐放射ビームB1を形成する放射の光路を示している。しかしながら、リソグラフィシステムLS11’’は、図97A及び図97Bに示すよりも更に多くのリソグラフィ装置を含むことがあり、更に多くの分岐放射ビームを生成する場合があることは認められよう。例えば、放射源SOから放出されるメイン放射ビームBの部分を分割して他の分岐放射ビームを形成し、これらを他の光路(図示せず)から他のリソグラフィ装置(図示せず)に送出してもよい。
[00901] 図97A及び図97Bは各々、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの分岐放射ビームB1の同一の光路を示している。図97A及び図97Bでは一貫したデカルト座標系を用い、各図において標示した軸で示す。図97Aはy−z面内に投影したリソグラフィシステムLS11’’の部分を示し、図97Bはx−y面に投影したリソグラフィシステムLS11’’の部分を示す。
[00902] 分岐放射ビームB1は、自由電子レーザFELから4つの反射要素M1〜M4及び屈曲光学部品(bending optics)4005を介してリソグラフィ装置LA1まで送出される。図97Aから図97Bに示す実施形態では、屈曲光学部品4005は4つの反射要素4005a〜4005dを備えている。従って分岐放射ビームB1は、リソグラフィ装置LA1で受光される前に8回反射される。他の実施形態では、分岐放射ビームは、自由電子レーザFELとリソグラフィ装置LA1との間の光路において8回より少ないか又は多い回数だけ反射することも可能である。
[00903] 偏光された放射が反射要素で反射される場合、これはp偏光成分及びs偏光成分から形成されると考えることができる。p偏光成分は、入射面に平行な偏光方向を有する放射ビームの成分であり、s偏光成分は、入射面に垂直な偏光方向を有する放射ビームの成分である。入射面は、反射要素に入射する放射ビーム及び反射要素から反射される放射ビームの双方が位置する面である。
[00904] 図97A〜図97Bに示す実施形態では、自由電子レーザFELは平面アンジュレータを含む。平面アンジュレータでは、係数Aはほぼ2に等しく、直線偏光放射が放出される。平面アンジュレータから放出される放射の直線偏光の向きは、アンジュレータにおいて周期磁場を発生させるアンジュレータ磁石4003の向きに依存する。図97Bで最もよく見られるように、アンジュレータ磁石4003は、x軸と偏光角αpを形成する偏光面4004内に位置する。自由電子レーザFELから放出される放射ビームBの直線偏光の面が偏光面4004である。従って、放射ビームBの直線偏光はx軸と偏光角αpを形成する。実際には、自由電子レーザFELは、図97A及び図97Bに示すよりも多くの磁石4003を含み得る。
[00905] 放射ビームBは最初に第1の反射要素M1に入射する。第1の反射要素M1は、この第1の反射要素における入射面がx軸と角度β1を形成するような向きに配されている。図97Bから、偏光面4004と第1の反射要素M1における入射面との角度はαp+β1であることが最もよくわかる。偏光面4004と第1の反射要素M1における入射面との角度αp+β1は約45度とすることができる。図97A及び図97Bに示す実施形態では、偏光角αpは約15度であり、角度β1は約30度である。従って角度αp+β1は約45度である。偏光面4004と第1の反射要素M1における入射面との角度αp+β1が45度であるので、第1の反射要素M1に入射するs偏光成分及びp偏光成分は同じ大きさを有する。第1の反射要素M1に入射する放射は直線偏光であるので、s偏光及びp偏光成分は相互に同相である。
[00906] 反射要素における反射中に、s偏光成分とp偏光成分との位相差が変わることがある。反射要素での反射中に起こるs偏光成分とp偏光成分との位相差の変化を、位相遅れ(phase retardance)εと呼ぶことができる。反射要素での反射中に起こる位相遅れεは、反射要素の複素屈折率と、反射要素及び入射放射の相対的な向きとに依存する。図98は、反射要素4011における放射ビーム反射の一例の概略図である。入射放射ビームBiは反射要素4011に入射し、この結果として反射放射ビームBrが反射要素4011から反射される。入射放射ビームBiは、放射要素4011の表面とかすめ角Ωを形成する。また、図98には、入射放射ビームBi及び反射放射ビームBrの双方が位置する入射面4013も示されている。s偏光成分及びp偏光成分は、それぞれ入射面4013に対して垂直及び平行なものとして図示されている。
[00907] 図99は、反射要素4011において生じるs偏光成分とp偏光成分との間の位相遅れε(単位は度)を、反射要素4011に入射する放射のかすめ角Ωの関数として表すグラフである。図99において位相遅れεは4021と標示する実線で示す。図99には、反射要素4021での吸収による放射の損失も百分率で示している。p偏光成分の吸収損失を4023と標示した破線で示す。s偏光成分の吸収損失を4025と標示した点線で示す。図99の値は、0.87〜0.017iの複素屈折率を有する反射要素4011について算出した。この複素屈折率の値は、かすめ入射角でEUV放射を反射するように構成されたミラーの代表的なものである。一実施形態において、反射要素は、ルテニウムでコーティングしたEUV放射の反射向けに構成したミラーとすることができる。約13.5nmの波長におけるこのようなミラーの屈折率は、図99に示す計算のために用いた通り、約0.87〜0.171iである。
[00908] 代替的な実施形態では、反射要素をルテニウム以外の材料でコーティングしてもよい。例えば、反射要素をモリブデンでコーティングすることができる。モリブデンでコーティングした反射要素は、図99に示すものと同様の位相遅れを生じ得る。代替的な実施形態では、反射要素を、白金、オスミウム、イリジウム、金、ジルコニウム、ニオブ、又はニッケルでコーティングすることも可能である。しかしながら、白金、オスミウム、イリジウム、金、ジルコニウム、ニオブ、又はニッケルでコーティングした反射要素が生じる位相遅れは、図99に示す位相遅れよりも小さい場合がある。
[00909] 図99から、s偏光成分及び偏光成分の双方の吸収損失は、かすめ角Ωが大きくなると共に増大することがわかる。従って、状況によっては、かすめ角Ωが比較的小さくなるように反射要素を配置することが有利である。また、図99から、比較的小さいかすめ角Ω(例えば約10度未満のかすめ角)では、位相遅れεはかすめ角Ωにほぼ比例することがわかる。図99に示す例では、10度未満のかすめ角において、位相遅れεはほぼ0.92Ωに等しい(単位は度)。
[00910] 再び図97A及び図97Bを参照すると、直線偏光放射ビームBは、s偏光成分及びp偏光成分が同じ大きさを有するように第1の反射要素M1に入射する。図98及び図99を参照して上述したように、第1の反射要素M1からの反射はs偏光成分とp偏光成分との間に位相シフトを引き起こす。例えば第1の反射要素M1における反射は、s偏光成分とp偏光成分との間に、第1の反射要素M1におけるかすめ角Ωとほぼ等しい位相差を生じることがある。第1の反射要素M1から反射される放射は、相互に同相でない垂直の直線偏光成分を有するので、反射された放射はもはや直線偏光でない。第1の反射要素M1から反射された放射は楕円偏光である。
[00911] 楕円偏光は、放射の電場ベクトルの軌跡が楕円であることによって特徴付けられる。図100は、放射ビームのいくつかの異なる偏光状態の図である。図100の水平軸及び垂直軸は、放射ビームの伝搬方向に対して垂直に延出する方向を表す。図100に描かれている形状は、異なる偏光状態における放射ビームの電場ベクトルの軌跡の形状を表す。例えば図100に示す点線4030は、電場ベクトルが1つの平面に限定される直線偏光状態を表す。点線4032及び破線4034は、電場ベクトルの軌跡が楕円である2つの楕円偏光状態を表す。実線4036は、電場ベクトルの軌跡が円である円偏光状態を表す。
[00912] 偏光状態は、以下で与えられる偏光コントラストCによって定量化することができる。
ここで、Imaxは放射ビームの中心軸を中心とした異なる角度における電場ベクトルの最大強度であり、Iminは放射ビームの中心軸を中心とした異なる角度における電場ベクトルの最小強度である。すなわち、放射ビームが理想的な偏光子に入射し、この理想的な偏光子が360度回転するならば、Imax及びIminは、その回転中に偏光子が透過させるはずの放射の最大強度及び最小の強度である。図100に、楕円偏光状態4032について電場ベクトルの最大強度Imax及び電場ベクトルの最小強度Iminを示す。
[00913] 図100に示す直線偏光状態4030では、Imin=0であり、従って偏光コントラストCは1である。図100に示す円偏光状態4036では、Imin=Imaxであり、従って偏光コントラストCは0である。上述のように、直線偏光状態は、s偏光成分とp偏光成分との間に位相遅れがない場合に生じる。円偏光状態は、s偏光成分とp偏光成分との間の位相遅れεが90度である場合に生じる。楕円偏光状態は、s偏光成分とp偏光成分との間の遅れεが1より大きい場合に生じる。図100に示す楕円偏光状態4032は、s偏光成分とp偏光成分との間の位相遅れεが45度である場合に生じる。図100に示す楕円偏光状態4034は、s偏光成分とp偏光成分との間の位相遅れεが75度である場合に生じる。
[00914] 一般に、偏光放射ビームのs偏光成分及びp偏光成分の大きさが等しい場合、偏光コントラストCは式16によってs偏光成分とp偏光成分との間の位相遅れεに関連付けられる。
[00915] 再び図97A及び図97Bを参照すると、第1の反射要素M1から反射される放射は楕円偏光であり、このため偏光コントラストCは1未満である。従って、第1の反射要素M1は、第1の反射要素M1から反射される放射の偏光コントラストCを低減させるように機能する。
[00916] 第1の反射要素M1から反射された放射は第2の反射要素M2に入射する。第2の反射要素M2は、(第1の反射要素に入射する放射と同様に)第2の反射要素M2における入射面がx軸と角度β1を形成するような向きに配されている。従って、第2の反射要素M2における入射面は第1の反射要素M1における入射面と同じ面内にある。第1及び第2の反射要素M1、M2における入射面のこの対応は、第1の反射要素M1におけるs偏光成分及びp偏光成分が第2の反射要素M2におけるs偏光成分及びp偏光成分に相当することを意味する。従って、第2の反射要素M2に入射するs偏光成分及びp偏光成分は、第1の反射要素M1でs偏光成分とp偏光成分との間に生じた位相差に等しい位相差を有する。
[00917] 第2の反射要素M2における放射の反射中、s偏光成分とp偏光成分との間には更に位相遅れεが生じる。第2の反射要素M2おいて生じる位相遅れεは、放射が第2の反射要素M2に入射するかすめ角Ωに依存する。第2の反射要素M2の複素屈折率は、第2の反射要素M2で生じる位相遅れεが第2の反射要素M2におけるかすめ角Ωにほぼ等しいようにするすることができる。第2の反射要素M2におけるs偏光成分及びp偏光成分は第1の反射要素M1におけるs偏光成分及びp偏光成分に対応するので、第2の反射要素M2で生じる位相遅れεはs偏光成分とp偏光成分との間の位相差を更に増大させる。従って第2の反射要素M2は、反射する放射の偏光コントラストCを更に低減させるように機能する。
[00918] 第2の反射要素M2から反射される放射は第3の反射要素M3に入射する。第3の反射要素M3は、第3の反射要素M3における入射面がx軸と角度β2を形成するような向きに配されている。図97A〜図97Bに示す実施形態では、第3の反射要素M3における入射面は、第1の反射要素M1における入射面に垂直であると共に、第2の反射要素M2における入射面に垂直である。従って、角度β1及びβ2の和は約90度である。上述のように、角度β1は約30度であり、角度αpは約15度である。従って角度β2は約60度であり、第3の反射要素M3における入射面と偏光角αpとの角度β2−αpは約45度である。
[00919] 第3の反射要素M3における入射面は第1及び第2の反射要素M1、M2における入射面に垂直であるので、第3の反射要素M3におけるs偏光成分及びp偏光成分は、第1及び第2の反射要素M1、M2におけるs偏光成分及びp偏光成分と入れ替わる。すなわち、第3の反射要素M3におけるs偏光成分は第1及び第2の反射要素M1、M2におけるp偏光成分に対応し、第3の反射要素M3におけるp偏光成分は第1及び第2の反射要素M1、M2におけるs偏光成分に対応する。このため、第3の反射要素M3において生じる位相遅れεは、第1及び第2の反射要素M1、M2において生じる位相遅れεと反対方向に作用する。従って、第3の反射要素M3における反射は、第1及び第2の反射要素M1、M2において生じたs偏光成分とp偏光成分との間の位相差を低減させるように機能する。従って第3の反射要素M3における反射は、反射する放射の偏光コントラストCを増大させるように機能する。
[00920] 第3の反射要素M3から反射される放射は第4の反射要素M4に入射する。第4の反射要素M4は、第4の反射要素M4における入射面が第3の反射要素M3における入射面と同じ面内にあるような向きに配されている。従って、第4の反射要素M4における入射面はx軸と角度β2を形成する。第4の反射要素M4における入射面が第3の反射要素M3における入射面と同じ面内にあるので、第3の反射要素M3におけるs偏光成分及びp偏光成分は第4の反射要素M4におけるs偏光成分及びp偏光成分に相当する。従って、第4の反射要素M4において生じる位相遅れεは、第3の反射要素M3におけるものと同じ方向に作用し、第1及び第2の反射要素M1、M2におけるものとは反対方向に作用する。
[00921] 図97A及び図97Bの実施形態では、第1及び第2の反射要素M1、M2におけるかすめ角Ωの和は、第3及び第4の反射要素M3、M4におけるかすめ角Ωの和とほぼ等しい。上述したように、小さいかすめ角Ωにおける反射では、反射中に生じる位相遅れεは、かすめ角Ωにほぼ比例する。従って、第1及び第2の反射要素M1、M2において生じる全位相遅れεは、第3及び第4の反射要素M3、M4において生じる全位相遅れεとほぼ等しく、反対方向のものである。すなわち、第1及び第2の反射要素M1、M2における反射は放射の偏光コントラストCを低減させるように機能し、第3及び第4の反射要素M3、M4における反射は、放射の偏光コントラストCをほぼ等しい量だけ増大させるように機能する。従って、第4の反射要素M4から反射される放射の偏光は、第1の反射要素M1に入射する放射の偏光とほぼ同じである。
[00922] 第4の反射要素M4から反射される放射は屈曲光学部品4005に入射する。屈曲光学部品4005は4つの反射要素4005a〜4005dを備え、これらは共に分岐放射ビームB1を屈曲させてリソグラフィ装置LA1に送出するように機能する。屈曲光学部品4005を形成する反射要素4005a〜4005dの各々におけるかすめ角Ωの和は約45度であり、これによって分岐放射ビームB1は屈曲光学部品4005により約90度の角度だけ曲げられる。
[00923] 図97Bから、屈曲光学部品4005を形成する反射要素4005a〜4005dの各々における入射面はx軸と角度β2を形成し、第3及び第4の反射要素M3、M4における入射面と同じ面内にあることがわかる。従って、屈曲光学部品4005を形成する反射要素4005a〜4005dにおけるs偏光成分及びp偏光成分は、第3及び第4の反射要素M3及びM4におけるs偏光成分及びp偏光に相当する。従って、各反射要素4005a〜4005dにおける各反射は、第3及び第4の反射要素M3及びM4における反射により引き起こされる位相遅れεと同じ方向に作用する位相遅れεを生じる。反射要素4005a〜4005dの各々における反射により引き起こされる位相遅れεは、例えば、放射が各反射要素4005a〜4005dに入射するかすめ角Ωにほぼ等しい場合がある。屈曲光学部品4005を形成する反射要素4005a〜4005dの各々におけるかすめ角Ωの和は約45度であるので、屈曲光学部品により引き起こされる位相遅れεは約45度であり得る。従って、屈曲光学部品4005から出力されてリソグラフィ装置LA1に与えられる分岐放射ビームB1は、相互に位相が約45度外れた垂直偏光成分を有する。従って屈曲光学部品4005は、分岐放射ビームB1の偏光コントラストCを低減させるように機能し、結果として楕円偏光放射をリソグラフィ装置LA1に与える。
[00924] 上述のように、自由電子レーザFELは、偏光コントラストCが約1である直線偏光放射を放出する。自由電子レーザFELから放出される放射の少なくとも一部は第1及び第2の反射要素M1、M2によって反射されて位相遅れεを生じ、これは、それらの反射要素により反射される放射の偏光コントラストCを低減させるように機能する。第1及び第2の反射要素M1、M2から反射される放射は、第3及び第4の反射要素M3、M4に入射して位相遅れεを生じ、これは、それらの反射要素により反射される放射の偏光コントラストCを増大させるように機能する。第1及び第2の反射要素M1、M2による反射から生じる偏光コントラストCの低減は、第3及び第4の反射要素M3、M4による反射から生じる偏光コントラストCの増大とほぼ等しいので、第4の反射要素M4から反射される放射はほぼ直線偏光となり、約1の偏光コントラストCを有するようになる。屈曲光学部品4005は、約45度の位相遅れεを生じ、これにより反射される放射の偏光コントラストCを低減させるように機能する。第1、第2、第3、及び第4の反射要素M1、M2、M3、M4並びに屈曲光学部品4005は共に、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1に放射を送出するビームデリバリシステムBDSを形成する。ビームデリバリシステムBDSを形成する反射要素は、リソグラフィ装置LA1に与えられる分岐放射ビームB1の偏光コントラストCが自由電子レーザFELから放出される放射ビームBの偏光コントラストCよりも小さくなるように、放射の偏光状態を変える。
[00925] 図97Aから図97Bに示す実施形態では、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの光路上で放射を反射する反射要素は、これらの反射要素における入射面がx軸とβ1又はβ2のいずれかの角度を形成するように配置されている。第1及び第2の反射要素M1、M2を含む第1グループの反射要素は、この第1グループの反射要素における入射面がx軸と角度β1を形成するように配置されている。第3及び第4の反射要素M3、M4を含む第2グループの反射要素と屈曲光学部品4005を形成する反射要素4005a〜dとは、この第2グループの反射要素における入射面がx軸と角度β2を形成するように配置されている。偏光面4004はx軸に対して(偏光角αpで)配置されて、各反射要素における入射面間の角度が約45度であるようになっている。第1グループの反射要素は、各反射要素における入射面が偏光面4004に対して+45の角度であるような向きに配され、第2グループの反射要素は、各反射要素における入射面が偏光面4004に対して−45の角度であるような向きに配される。
[00926] 入射面が偏光面4004に対して+45度又は−45度の角度を形成するような各反射要素の配置は、各反射要素に入射するs偏光成分及びp偏光成分sが各反射要素においてほぼ同じ大きさを有することを意味する。上述したように、第1グループの反射要素は第1の方向に位相遅れεを生じ、第2グループの反射要素は第2の反対の方向に位相遅れを生じる。自由電子レーザFELからリソグラフィ装置までの放射の光路上において各反射要素での反射の結果として生じる全位相遅れεは、第1グループの反射要素での反射によって生じる位相遅れεと、第2グループの反射要素での反射によって生じる位相遅れεとの差に等しい。
[00927] 図97A及び図97Bを参照して上述した例では、第1グループの反射要素における位相遅れεと第2グループの反射要素における位相遅れεとの差は約45度である。自由電子レーザFELから放出される放射は直線偏光であるので、結果としてリソグラフィ装置LA1には楕円偏光放射が与えられる。いくつかの用途では、ほぼ円偏光の分岐放射ビームB1をリソグラフィ装置LA1に与えることが望ましい。これを達成するには、例えば、第2グループの反射要素内の反射要素の数を増やすことで、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置へ送出される放射が、偏光面4004に対して約−45度に配置された入射面を有する反射要素によって反射される回数を増やせばよい。偏光面4004に対して約−45度に配置された入射面を有する反射要素によって放射が反射される回数を増やすと、放射の光路に沿って生じる全位相遅れεが増大する。例えば、偏光面4004に対して約−45度に配置された入射面を有する反射要素によって放射が反射される回数を増やして、放射の光路に沿って生じる全位相遅れεを90度に近付けることができる。このような実施形態では、リソグラフィ装置Lにより受光される放射はほぼ円偏光である。
[00928] これに加えて又はこの代わりに、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの放射の光路に沿って生じる全位相遅れεは、第2グループの反射要素を形成する反射要素におけるかすめ角Ωを大きくすることによって増大可能である。図99を参照して説明したように、小さいかすめ角では、位相遅れεはかすめ角Ωにほぼ比例する。従って、ある反射要素におけるかすめ角Ωを大きくすると、その反射要素で生じる位相遅れεが増大する。しかしながら、図99から、かすめ角の拡大と共に位相遅れεが増大するのは限られた範囲のかすめ角(例えば約20度未満のかすめ角)においてだけであり、この限られた範囲を超えてかすめ角Ωを拡大すると位相遅れεの低減を引き起こすことがわかる。従って、かすめ角Ωを拡大させることで得られる位相遅れεの増大量には限界があり得る。更に図99から、かすめ角Ωの拡大と共に反射要素における放射の吸収率が上昇することもわかる。従って、位相遅れεを増大させる目的でかすめ角Ωを拡大すると反射要素における放射の吸収が増大し、このため、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの放射の光路に沿って、吸収されて失われる放射量が増大する。
[00929] 図97Aから図97Bに示す自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの放射の光路は、一連の反射要素からの反射によって生じる偏光の変化を理解するのに役立てるために一例として提示するに過ぎない。実際には、リソグラフィシステムLS11は、図97A及び図97Bに示すよりも多いか又は少ない反射要素を含むことがあり、これらの反射要素は図97A及び図97Bに示すものとは異なる向きに配される場合がある。例えば、この記載全体を通して説明し図面に示した反射要素及び反射要素の構成のいかなるものも、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置までの放射の光路の一部を形成し得る。
[00930] 一般に、複数の反射要素を備えたビームデリバリシステムは、自由電子レーザから放射を受光し、その放射の少なくとも一部をリソグラフィ装置に送出するように構成されている。反射要素は、反射要素からの反射の結果として生じる放射の偏光の変化が偏光コントラストCを低減させるように作用し、リソグラフィ装置LA1により受光される放射の偏光コントラストCが自由電子レーザFELから放出される放射の偏光コントラストCよりも小さくなるように構成されている。いくつかの実施形態では、自由電子レーザFELから放出される放射の偏光、及びビームデリバリシステムの反射要素からの反射の結果生じる偏光の変化によって、リソグラフィ装置に与えられる分岐放射ビームB1がほぼ円偏光となるように、反射要素を構成することができる。
[00931] ビームデリバリシステムを形成する反射要素の1つ以上は、この1つ以上の反射要素から反射される放射の偏光コントラストCを増大させるように作用し得るが、ビームデリバリシステムの正味の効果(net effect)は、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置LA1までの経路上で放射の偏光コントラストCを低減させることであることは認められよう。
[00932] いくつかの実施形態では、自由電子レーザFELは、偏光面4004内に偏光が位置する直線偏光放射を放出する。自由電子レーザFELが放出する放射の少なくとも一部をリソグラフィ装置LA1に送出するように構成されたビームデリバリシステムは、第1グループの反射要素及び第2グループの反射要素を備えることができる。第1グループの反射要素は各々、各反射要素における放射の反射が、偏光面4004と約+45度の角度を形成する入射面を規定するような向きに配されている。第2グループの反射要素は各々、各反射要素における放射の反射が、偏光面4004と約−45度の角度を形成する入射面を規定するような向きに配されている。第1グループの反射要素を形成する反射要素における放射の反射によって、第1の方向に作用する位相遅れεが生じる。第2グループの反射要素を形成する反射要素における放射の反射によって、第2の方向に作用する位相遅れεが生じる。ビームデリバリシステムにより生じる全位相遅れεは、第1グループの反射要素で発生する位相遅れεと第2グループの反射要素で発生する位相遅れεとの差に等しい。第1グループの反射要素及び第2グループの反射要素は、ビームデリバリシステムで生じる全位相遅れεによって所望の偏光を有する分岐放射ビームB1が得られるような向きに配することができる。例えば、ビームデリバリシステムで生じる全位相遅れεを約90度として、円偏光の分岐放射ビームB1を得ることができる。
[00933] 他の実施形態では、ビームデリバリシステムによって生じる全位相遅れεは90度未満である。例えば、ビームデリバリシステムによって生じる全位相遅れεは、リソグラフィ装置LA1に楕円偏光放射が提供されるようなものとすることができる。リソグラフィ装置LA1に与えられる楕円偏光放射は、比較的低い偏光コントラストCを有する場合があり、自由電子レーザFELから放出される放射よりも低い偏光コントラストCを有する。
[00934] 上述の実施形態では、ビームデリバリシステムの反射要素における放射の反射は、自由電子レーザFELとリソグラフィ装置LA1との間の光路上で放射の偏光コントラストCを低減させる。これによって例えば、自由電子レーザFELから放出される直線偏光放射ビームから、ほぼ円偏光又は楕円偏光である分岐放射ビームB1を形成することができる。従って、リソグラフィシステムLS11内の1つ以上のリソグラフィ装置に円偏光又は楕円偏光の放射が与えられるリソグラフィ装置LS11のための放射源SOの一部として、直線偏光放射を放出する平面アンジュレータを有する自由電子レーザFELを用いることができる。
[00935] リソグラフィ装置LS11のための放射源SOにおいて平面アンジュレータを有する自由電子レーザFELを用いることは、例えばヘリカルアンジュレータを有する自由電子レーザFELの使用に比べて有利であり得る。ヘリカルアンジュレータの設計は通常、平面アンジュレータの設計よりも複雑である。例えばヘリカルアンジュレータでは、電子ビームが伝搬するビームパイプの円周の大部分の周囲に磁石を位置付けることがある。これによって、アンジュレータの他のコンポーネントを位置付けできる空間が制限される場合がある。例えばアンジュレータは、ビームパイプ内の真空を維持するための真空ポンプ及び/又はアンジュレータ内の熱的な条件を維持するように構成されたコンポーネントのようなコンポーネントを含み得る。従って、ヘリカルアンジュレータにおけるコンポーネントの位置付けは技術上の重要な課題となることがある。ヘリカルアンジュレータに比べて、平面アンジュレータにおける磁石は、例えば図97Bに示すような単一の偏光面4003に位置付けることができる。これによってビームパイプの残りの円周部分の周囲の空間が確保され、ここにアンジュレータの他のコンポーネントを位置付けることができる。これに加えて又はこの代わりに、アンジュレータにおける磁石の位置付け及び間隔確保は、平面アンジュレータよりもヘリカルアンジュレータにおいて極めて重要である及び/又は問題となる可能性が高い。従って、ヘリカルアンジュレータに比べ、平面アンジュレータの設計及びセットアップは簡略化することができる。従って、反射要素が自由電子レーザからリソグラフィ装置までの光路上で放射の偏光コントラストCを低減させるように構成されたビームデリバリシステムは、円偏光又は楕円偏光の放射をリソグラフィ装置に与えながら平面アンジュレータの使用を可能とするという点で、特に有利であり得る。
[00936] リソグラフィシステムLS11の様々な実施形態を参照して上述したように、リソグラフィ装置LA1により受光される分岐放射ビームB1は、自由電子レーザからリソグラフィ装置LA1までの光路上で反射要素において数回反射されることがあり、図97A〜図97Cに図示する実施形態に示すものよりも反射回数が多い場合もある。これより、リソグラフィシステムLS11の一実施形態において、自由電子レーザとリソグラフィ装置との間で放射が伝搬することができる例示的な光路について、一例としてのみ説明する。
[00937] 一実施形態において、自由電子レーザFELは、偏光面4004において直線偏光であるメイン放射ビームBを放出する。メイン放射ビームBは最初に分離ミラー(例えば図47に示す反射性の第1の光学要素1520)に入射する。これは、自由電子レーザFELから放出され得るガンマ放射線及び/又は中性子からメイン放射ビームBを分離するように構成されている。メイン放射ビームBは、約2度のかすめ角Ωで分離ミラーに入射する。
[00938] 分離ミラーから反射されたメイン放射ビームBは、メイン放射ビームBを複数の分岐放射ビームに分割するように構成された2つの反射格子(例えば図10に示すミラー90、図11に示すミラー100、及び/又は図13に示すミラー110)に入射する。反射格子は、偏光面に平行な向き又は偏光面に垂直な向きに配されて、格子に入射する放射がp偏光成分又はs偏光成分のどちらか一方からのみ構成されるようになっている。このような反射格子の向きにより、格子において生じる位相遅れεをほぼ皆無にすることができる。反射格子の代替的な向きも使用可能であるが、偏光面に垂直又は平行な向きにすると、反射格子から反射される放射の偏光に対する格子の影響を軽減することができる。従って、このような構成はビームデリバリシステムの設計を簡略化することができる。
[00939] 格子から反射された分岐放射ビームは2つの整形ミラーに入射する。整形ミラーの一方は凹形を有し、整形ミラーの他方は凸形を有する。これらの整形ミラーは、格子から反射される分岐放射ビームの断面形状を変更するように構成されている。例えば、格子から受光される分岐放射ビームは楕円の断面を有し得る。整形ミラーは分岐放射ビームの断面形状を変えて、整形ミラーからの反射後に分岐放射ビームの断面をほぼ円形とすることができる。整形ミラーは例えば、図74に示す第1の光学要素2632及び第2の光学要素2633と同様とすればよい。図74において第1の光学要素2632及び第2の光学要素2633は、メイン放射ビームBを分岐放射ビームに分割する前にメイン放射ビームBを整形するものとして示すが、同様の光学要素を用いて、メイン放射ビームから分岐放射ビームを分割した後にこれを整形してもよいことは認められよう。分岐放射ビームは約3度のかすめ角Ωで整形ミラーの各々に入射することができる。代替的な実施形態では、整形ミラーを、(2方向で湾曲した凹面鏡又は凸面鏡とは対照的に)単一方向でのみ湾曲した円筒形状とすることも可能である。そのような実施形態では、分岐放射ビームを4つの整形ミラーで反射させる場合がある。しかしながら、分岐放射ビームを4つの整形ミラーで反射させると、分岐放射ビームを2つの整形ミラーで反射させる場合よりも吸収による放射の損失が大きくなることがある。更に、分岐放射ビームを4つの整形ミラーで反射させると整形ミラーにおける全位相遅れεはゼロに等しくなり得るが、分岐放射ビームを2つの整形ミラーで反射させると整形ミラーにおける全位相遅れεはゼロより大きくなり得る。
[00940] 整形ミラーから反射された分岐放射ビームは2つのステアリングミラーに入射する。ステアリングミラーは、これらから反射される分岐放射ビームの位置及び方向を制御するように動作可能である。ステアリングミラーは、例えば図88に示すかすめ入射ステアリングミラー3311と同様とすればよい。分岐放射ビームは、約3度のかすめ角Ωでステアリングミラーの各々に入射することができる。
[00941] ステアリングミラーから反射された分岐放射ビームは屈曲光学部品(例えば図97A〜図97Cに示す屈曲光学部品4005)に入射する。屈曲光学部品は、分岐放射ビームを約90度屈曲させるように構成された複数の反射要素を備えている。分岐放射ビームが屈曲光学部品の反射要素の各々に入射するかすめ角Ωは、屈曲光学部品を形成する反射要素の数に依存する。例えば、屈曲光学部品を形成する反射要素の数が減ると、分岐放射ビームを90度曲げるために各反射要素が分岐放射ビームを偏向させる角度が大きくなる。
[00942] 図99を参照して上述したように、反射中に生じる放射の吸収損失は、かすめ角Ωの拡大と共に増大する。従って、各反射要素における放射の吸収損失を低減させるために、各反射要素におけるかすめ角Ωを小さくすることが有利であり得る。しかしながら、各反射要素におけるかすめ角Ωを小さくすると、分岐放射ビームを90度曲げるために必要な反射要素の数が増える。
[00943] 屈曲光学部品は分岐放射ビームを90度曲げるので、屈曲光学部品の各反射要素におけるかすめ角Ωの和は約45度である。
[00944] 屈曲光学部品から反射された分岐放射ビームは2つの可変減衰ミラーに入射する。例えば分岐放射は、図70aに示す減衰装置2519の第1のミラー2520及び第2のミラー2521に入射することができる。可変減衰ミラーは、分岐放射ビームを制御可能に減衰するように構成され、分岐放射ビームの強度を制御することを可能とする。分岐放射ビームは、約5度のかすめ角Ωで可変減衰ミラーの各々に入射することができる。
[00945] 可変減衰ミラーから反射された分岐放射ビームはウォルター集光器(例えば図88及び図89に示すウォルター集光器3310又は3320)に入射する。分岐放射ビームはウォルター集光器で2回反射される。各反射におけるかすめ角Ωの和は約14度であり得る。ウォルター集光器から出力された放射はリソグラフィ装置に与えられる。
[00946] 上述した自由電子レーザFELからリソグラフィ装置までの放射の例示的な光路中、放射の各反射におけるかすめ角Ωの和は約72度である。図99を参照して上述したように、小さいかすめ角度Ωでの反射中に生じる位相遅れεは、かすめ角Ωにほぼ等しいことがある。一実施形態において、放射の光路に沿った反射要素の各々の向きは、各反射要素における入射面が偏光面4004と約45度の角度を形成するような向きに配することができる。この実施形態では、自由電子レーザFELからリソグラフィ装置までの放射の光路に沿って生じる位相遅れεは約72度であり、リソグラフィ装置で受光される放射は楕円偏光である。自由電子レーザFELから放出される放射は直線偏光である(従って偏光コントラストCは1である)ので、リソグラフィ装置までの光路に沿った放射の反射は、放射の偏光コントラストCを低減させるように作用する。リソグラフィ装置に与えられる分岐放射ビームの偏光コントラストCは約0.3である。
[00947] いくつかの実施形態では、コントラスト閾値未満の偏光コントラストCを有する分岐放射ビームをリソグラフィ装置に与えることが望ましい場合がある。例えば、約0.1未満の偏光コントラストCを有する分岐放射ビームをリソグラフィ装置に与えることが望ましい場合がある。約0.1未満の偏光コントラストCは、位相遅れεが約84度から96度の間である放射ビームに対応する。他の実施形態では、コントラスト閾値は0.1よりも大きいか又は小さい場合がある。
[00948] 上述した実施形態では、リソグラフィ装置に与えられる分岐放射ビームの偏光コントラストCは約0.3である。上述したように、いくつかの用途では、偏光コントラストCが0.3未満の分岐放射ビームを与えることが望ましい場合がある。例えば、偏光コントラストCが0.1未満である分岐放射ビームを与えることが望ましい場合がある。分岐放射ビームの偏光コントラストCを更に低減させるため、分岐放射ビームを反射させる反射要素の数を増やし、このような追加の反射要素を、分岐放射ビームの位相遅れを増大させるように構成すればよい。これに加えて又はこの代わりに、反射要素の1つ以上において生じる位相遅れを増大させるため、1つ以上の反射要素におけるかすめ角Ωを拡大することも可能である。しかしながら、分岐放射ビームを反射させる反射要素の数を増やすこと、及び/又は反射要素の1つ以上におけるかすめ角Ωを拡大することにより、反射要素で吸収される放射量が増大する可能性がある。更に、分岐放射ビームを反射させる反射要素の数及び/又は向きを変更すると、分岐放射ビームが送出される位置及び/又は分岐放射ビームの伝搬方向が変わることがある。従って、反射要素の数及び/又は向きを変える際には、分岐放射ビームを受光するようにリソグラフィ装置の位置及び/又は向きを変える必要があり得る。複数のリソグラフィ装置を備えるリソグラフィシステムでは、リソグラフィ装置の位置及び/又は数を変えることは問題となる場合があることは認められよう。
[00949] 代替的な実施形態では、リソグラフィ装置に与えられる分岐放射ビームの偏光は、自由電子レーザFELから出力されるメイン放射ビームの偏光を制御することによって制御可能である。例えば自由電子レーザFELは、楕円偏光で位相遅れが約18度のメイン放射ビームを出力する場合がある。上述したように、反射要素における放射ビームの反射は72度の位相遅れを引き起こす。従って、自由電子レーザから出力されるメイン放射ビームの位相遅れと、反射要素での反射により生じる位相遅れとを合わせることで、約90度の位相遅れを有するほぼ円偏光の分岐放射ビームが得られる。
[00950] 一般に、複数の反射要素を備えたビームデリバリシステムは、このビームデリバリシステムによって生じる偏光の変化の観点から特徴付けることができる。ビームデリバリシステムによって生じる偏光の変化を用いると、ビームデリバリシステムに入力された場合に結果として所望の偏光状態を有する分岐放射ビームがビームデリバリシステムから出力されることになる偏光状態を明らかにすることができる。
[00951] 図101はリソグラフィ装置LS11の概略図である。自由電子レーザFELはメイン放射ビームBを放出する。ビームデリバリシステムBDSは、自由電子レーザFELからのメイン放射ビームBを受光し、分岐放射ビームB1をリソグラフィ装置LA1に送出する。分岐放射ビームB1は、自由電子レーザFELから放出された放射ビームBの少なくとも一部を含む。実際には、リソグラフィシステムLS11は複数のリソグラフィ装置を備えることがあり、ビームデリバリシステムBDSは、メイン放射ビームBを複数の分岐放射ビームに分割してそれらを複数のリソグラフィ装置に送出するように構成することができる。しかしながら、以下で検討する目的のため、単一のリソグラフィ装置LA1への単一の分岐放射ビームB1の経路のみについて考える。
[00952] いくつかの実施形態では、リソグラフィシステムLS11は複数の自由電子レーザFELを備え、これらの出力を結合してメイン放射ビームBを形成することができる。しかしながら、以下で検討する目的のため、単一の自由電子レーザFELのみについて考える。
[00953] 放射ビームの偏光状態は、ジョーンズベクトルJによって記述することができる。ジョーンズベクトルJは、放射ビームの電場ベクトルの垂直成分の相対振幅及び相対位相を記述する2成分複素ベクトルである。例えばz方向に伝搬する放射ビームでは、ジョーンズベクトルJはこの放射ビームの電場ベクトルのx成分及びy成分の相対振幅及び相対位相を記述することができる。自由電子レーザFELから放出されてビームデリバリシステムBDSに入力されるメイン放射ビームBの偏光は、入力ジョーンズベクトルJinによって特徴付けることができる。ビームデリバリシステムBDSによって生じる分岐放射ビームB1の偏光の(メイン放射ビームBに対する)変化は、ジョーンズ行列Mによって特徴付けることができる。ビームデリバリシステムBDSから出力される分岐放射ビームB1の偏光は、出力ジョーンズ行列Joutによって特徴付けることができる。出力ジョーンズ行列Joutは式16によって与えられる。
[00954] 分岐放射ビームB1の偏光状態を制御するため、ジョーンズ行列Mを明らかにすることができる。図102Aは、メイン放射ビームB及び分岐放射ビームB1の偏光状態を表している。メイン放射ビームBは右回り円偏光状態を有する。ビームデリバリシステムは、これを伝搬する放射の偏光を変化させて、図102Aに示すような向きの左回り楕円偏光状態を有する分岐放射ビームB1を与える。この例では、ビームデリバリシステムBDSを伝搬する放射の偏光コントラストCがビームデリバリシステムBDSにより増大するという望ましくない点がある。
[00955] ビームデリバリシステムによって生じる偏光の変化を用いて、ビームデリバリシステムBDSのジョーンズ行列Mを明らかにすることができる。次いで、ビームデリバリシステムBDSの明らかになったジョーンズ行列Mを用いて、所望の偏光状態を有する分岐放射ビームB1が得られるメイン放射ビームBの偏光状態を明らかにすることができる。例えば、右回りの円偏光状態を有する分岐放射ビームB1を与えることが望ましい場合がある。右回りの円偏光状態を有する分岐放射ビームB1が得られるメイン放射ビームBのジョーンズベクトルJinは、以下から求められる。
ここで、M−1はビームデリバリシステムBDSのジョーンズ行列Mの逆行列であり、Joutは所望の偏光状態を有する分岐放射ビームのジョーンズベクトルである。式17で求められるジョーンズベクトルJinによって記述されるように、自由電子レーザFELから放出されるメイン放射ビームBの偏光状態を制御して、所望の偏光状態を有する分岐放射ビームB1がビームデリバリシステムBDSから出力されるようにすることができる。
[00956] 図102Aに示した例では、メイン放射ビームBの右回りの円偏光状態を分岐放射ビームB1の左回りの楕円偏光状態に変化させた。分岐放射ビームB1の所望の偏光状態は、例えば右回りの円偏光状態である場合もある。図102AのビームデリバリシステムBDSのジョーンズ行列Mを明らかにすることで、このビームデリバリシステムBDSに特定の向きの左回りの楕円偏光状態を有するメイン放射ビームBを入力すると、所望の右回りの円偏光状態を有する分岐放射ビームB1が得られることがわかった。図102Bは、特定の向きの左回りの楕円偏光状態を有するメイン放射をビームデリバリシステムBDSに入力することによって右回りの円偏光状態を有する分岐放射ビームB1を得た場合の、メイン放射ビームB及び分岐放射ビームB1の偏光状態を表す。図102Bに示す例では、ビームデリバリシステムBDSを伝搬する放射の偏光コントラストCがビームデリバリシステムBDSによって低減するという利点がある。
[00957] 図102Bに示すような自由電子レーザFELのアンジュレータを平面アンジュレータセクションとヘリカルアンジュレータセクションの組み合わせから形成することで、この自由電子レーザFELから楕円偏光状態を出力することができる。図103は、楕円偏光状態を有するメイン放射ビームBを与えるために使用可能なアンジュレータ24の概略図である。アンジュレータ24は、電子ビームBが伝搬する複数のアンジュレータセクション4024a〜4024dを備えている。アンジュレータセクション4024a〜4024dの少なくとも1つはヘリカルアンジュレータセクションであり、アンジュレータセクション4024a〜4024dの少なくとも1つは平面アンジュレータセクションである。
[00958] 一実施形態において、第1、第2、及び第3のアンジュレータセクション4024a〜4024cは、円偏光放射が放出されるヘリカルアンジュレータセクションである。第4のアンジュレータセクション4024dは、直線偏光放射が放出される平面アンジュレータセクションである。第1、第2、及び第3のアンジュレータセクション4024a〜4024cから放出される円偏光放射は、平面アンジュレータセクション4024dを通過する。円偏光放射の一部は平面アンジュレータセクション4024d内の電子により吸収され、直線偏光放射として再放出され得る。ヘリカルアンジュレータセクション4024a〜4024cと平面アンジュレータセクション4024dの組み合わせにより、アンジュレータ24から楕円偏光の放射ビームBが放出される。
[00959] 平面アンジュレータセクション4024dは、偏光面(図103には示していない)内に位置する磁石を含む。平面アンジュレータセクション4024dの偏光面は、放射ビームの楕円偏光の向きを決定する。具体的には、放射ビームBの電場ベクトルの軌跡である楕円の長軸は、平面アンジュレータセクション4024dの偏光面と整合している。
[00960] アンジュレータ24から放出される放射ビームBの偏光コントラストCは、ヘリカルアンジュレータセクション及び平面アンジュレータセクションにおける放射の相対利得に依存する。典型的に、アンジュレータセクションにおける放射利得は、アンジュレータセクション長が長くなると増大する。従って、放射ビームBの偏光コントラストCは、平面アンジュレータセクション及びヘリカルアンジュレータセクションの相対的な長さを制御することで制御可能である。例えば、平面アンジュレータセクション4024dの長さに対するヘリカルアンジュレータセクション4024a〜4024cの合計長を長くすると、アンジュレータ24から放出される放射ビームBの偏光コントラストCが低減する。ヘリカルアンジュレータセクション4024a〜4024cの合計長に対する平面アンジュレータセクション4024dの長さを長くすると、アンジュレータ24から放出される放射ビームBの偏光コントラストCが増大する。
[00961] アンジュレータ24の代替的な実施形態は、図103に示すアンジュレータ24よりも多いか又は少ない数のヘリカルアンジュレータセクション及び/又は平面アンジュレータセクションを含み得る。
[00962] 図101に示すリソグラフィシステムLS11について、単一のリソグラフィ装置LA1に与えられる単一の分岐放射ビームB1の状況で説明した。しかしながら、ビームデリバリシステムBDSはメイン放射ビームBを複数のリソグラフィ装置に送出される複数の分岐放射ビームに分割し得ることは認められよう。いくつかの実施形態では、ほぼ同じ偏光状態を有する分岐放射ビームを複数のリソグラフィ装置に与えることが望ましい場合がある。従って、そのような実施形態では、ビームデリバリシステムBDSは各分岐放射ビームの偏光状態をほぼ同じように変化させるように構成することが望ましい。すなわち、各分岐放射ビームのジョーンズ行列Mはほぼ同じである。これによって、第1の偏光状態を有する単一のメイン放射ビームBを、複数のリソグラフィ装置に与えられると共に各々が第2の偏光状態を有する複数の分岐放射ビームに分割することが可能となる。一般に、第2の偏光状態の偏光コントラストCは、第1の偏光状態の偏光コントラストCより小さい。
[00963] メイン放射ビームBが単一の自由電子レーザFELから放出されるリソグラフィシステムLS11の実施形態について説明した。他の実施形態では、メイン放射ビームBは、複数の自由電子レーザFELから放出され、結合されてメイン放射ビームBを形成する放射を含み得る。例えば光学システム40(例えば図4及び図5に示した光学システム40)は、複数の自由電子レーザFELから受光される複数の放射ビームを結合してメイン放射ビームBを形成することができる。そのような実施形態では、ビームデリバリシステムBDSに与えられるメイン放射ビームBの偏光状態は、各自由電子レーザFELから放出される放射の偏光状態と、放射をメイン放射ビームBに結合する間に起こり得る放射の偏光の変化とに依存する。
[00964] 上述したように、リソグラフィ装置LA1に与えられる分岐放射ビームB1の偏光状態は、メイン放射ビームBの偏光状態と、放射がビームデリバリシステムBDSを伝搬する際の偏光状態の変化とに依存する。所望の偏光状態を有する分岐放射ビームをリソグラフィ装置に与えるようにリソグラフィシステムLS11を設計するため、リソグラフィシステムLS11の様々な実施形態を参照して上述した原理を使用可能であることは認められよう。
[00965] 図104は、リソグラフィシステムLS11を構成する第1の方法のフローチャートである。ステップ1において、分岐放射ビームB1の所望の偏光状態を確定する。例えば、円偏光の分岐放射ビームB1を与えることが望ましいと確定されることがある。
[00966] ステップ2において、放射源から出力されるメイン放射ビームBの偏光状態を確定する。放射源は少なくとも1つの自由電子レーザFELを備えている。例えば放射源は、放射ビームBを放出する単一の自由電子レーザを備え得る。あるいは放射源は複数の自由電子レーザを備え、それらの出力を結合してメイン放射ビームBが形成することも可能である。メイン放射ビームBは例えば直線偏光であり得る。あるいは、メイン放射ビームBは楕円偏光である場合もある。
[00967] ステップ3において、分岐放射ビームB1の所望の偏光状態が得られるメイン放射ビームBの偏光状態の変化を確定する。例えば、メイン放射ビームBに適用された場合に所望の位相遅れを有する分岐放射ビームB1が得られる位相遅れを確定することができる。
[00968] ステップ4において、メイン放射ビームの放射の少なくとも一部を送出して分岐放射ビームB1を形成するビームデリバリシステムBDSを、ステップ3で確定した偏光の変化を生成するように構成する。例えば、ビームデリバリシステムBDSの反射要素は、メイン放射ビームBの偏光面に対して約+45度の角度の向きに配された入射面を有する第1グループの反射要素と、偏光面に対して約−45度の角度の向きに配された入射面を有する第2グループの反射要素と、を備え、各反射要素においてs偏光成分とp偏光成分がほぼ同じ振幅となるようにすることができる。各反射要素におけるかすめ角Ωによって、ビームデリバリシステムBDSを通る放射の光路に沿って生じる正味の位相遅れがステップ3で確定した位相遅れとなるように、第1及び第2グループの反射要素の向きを決定すればよい。
[00969] 従って、リソグラフィシステムLS11を構成する第1の方法では、ビームデリバリシステムBDSが、所望の偏光を有する分岐放射ビームB1を与えるようにメイン放射ビームBの偏光状態を変化させるように構成される。
[00970] 図105は、リソグラフィシステムLS11を構成する第2の方法のフローチャートである。この場合、メイン放射ビームを与える放射源を構成して、メイン放射ビームの偏光状態がビームデリバリシステムによって変更されると所望の偏光を有する分岐放射ビームB1が得られるようにする。
[00971] ステップ5において、分岐放射ビームB1の所望の偏光状態を確定する。例えば、円偏光の分岐放射ビームB1を与えることが望ましいと確定されることがある。
[00972] ステップ6において、ビームデリバリシステムBDSによって生じる偏光の変化を確定する。例えば、ビームデリバリシステムBDSによって生じる位相遅れを確定することができる。これに加えて又はこの代わりに、ビームデリバリシステムBDSによって生じる偏光の変化を記述するジョーンズ行列Mを確定することも可能である。ビームデリバリシステムBDSによって生じる偏光の変化は、例えばビームデリバリシステムBDSの各反射要素によって生じる偏光の変化を計算することで理論的に確定することができる。これに加えて又はこの代わりに、ビームデリバリシステムBDSによって生じる偏光の変化を実験的に確定することも可能である。例えば、既知の偏光の放射ビームをビームデリバリシステムBDSに入力し、ビームデリバリシステムBDSから出力される放射ビームの偏光を測定することができる。ビームデリバリシステムBDSによって生じる偏光の変化を確定するため、入力ビームと出力ビームの偏光を比較すればよい。
[00973] ステップ7において、ステップ6で確定した偏光の変化と組み合わせた場合にステップ5で確定した所望の偏光を有する分岐放射ビームB1が得られる入力偏光状態を確定する。例えば、式17に従って入力ジョーンズベクトルJinを確定するため、ステップ6で確定したビームデリバリシステムのジョーンズ行列Mの逆行列を求めて、ステップ5で確定した所望の偏光状態に対応する出力ジョーンズベクトルJoutと組み合わせて乗算すればよい。
[00974] ステップ8において、ステップ7で確定した入力偏光状態を有するメイン放射ビームBを放出するように放射源を構成する。放射源は少なくとも1つの自由電子レーザFELを備えている。少なくとも1つの自由電子レーザFELは複数のアンジュレータセクションを備え、これらが共に、確定された入力偏光状態を有する放射ビームを出力する。例えば、確定された入力偏光状態が楕円偏光状態である場合、自由電子レーザFELがこの確定された楕円偏光状態を放出するように1つ以上のヘリカルアンジュレータセクションを1つ以上の平面アンジュレータセクションと組み合わせればよい。
[00975] 一実施形態では、リソグラフィシステムLS11を構成する第1の方法をリソグラフィシステムLS11を構成する第2の方法と組み合わせることも可能である。すなわち、所望の偏光状態を有する分岐放射ビームB1を与えるために、放射源及びビームデリバリシステムBDSの双方を構成してもよい。
[00976] 分岐放射ビームB1をリソグラフィ装置LA1に与える実施形態について上述したが、分岐放射ビームB1はいかなるツールに与えることも可能である。例えば分岐放射ビームは、リソグラフィ装置、マスク検査装置、又は別の形態のリソグラフィツールを備え得るいずれかのリソグラフィツールに与えることができる。従って、分岐放射ビームをリソグラフィ装置に与えることに関連付けて上述した方法及び装置のいずれも、分岐放射ビームをいずれかのツール(例えばリソグラフィ装置)に与えるために同様に用いることができる。
[00977] 1つの例示的な実施形態に関連付けて上述した特徴を、別の例示的な実施形態に関連付けて記載した特徴と組み合わせてもよいことは認められよう。例えば、多数のリソグラフィシステムLS〜LS11について説明したが、1つのリソグラフィシステムのコンポーネントを他のリソグラフィシステムと共に使用することは、そのような組み合わせが明示的に記載されていなくても可能であることは認められよう。例えば、いくつかのリソグラフィシステムは1つのビームデリバリシステムBDS〜BDS5を備えているが、各リソグラフィシステムと共に他のビームデリバリシステムを使用可能であることは認められよう。更に一般的には、特定の例示的な実施形態において記載したコンポーネント及び機構を他の例示的な実施形態において使用可能であることは認められよう。
[00978] また、リソグラフィシステムの実施形態は、1つ以上のマスク検査装置MIA及び/又は1つ以上の空間像測定システム(AIMS)を含むことができる。いくつかの実施形態では、リソグラフィシステムは、ある程度の冗長性を織り込むために2つのマスク検査装置を備え得る。これは、一方のマスク検査装置が修理又は保守の最中である時に他方のマスク検査装置の使用を可能とする。このため、一方のマスク検査装置は常に使用に供することができる。マスク検査装置は、リソグラフィ装置よりも低パワーの放射ビームを用いることができる。更に、本明細書に記載したタイプの自由電子レーザを用いて発生させた放射は、リソグラフィ又はリソグラフィ関連の用途以外の用途に使用可能であることは認められよう。
[00979] 「相対論的電子」という言葉は、粒子加速器による加速を通じて得られる相対論的エネルギを有する電子を意味するものと解釈するべきである。電子は、その運動エネルギが静止質量エネルギ(511keV)以上に相当する場合に相対論的エネルギを有すると見なすことができる。実際には、自由電子レーザの一部を形成する粒子加速器は、静止質量エネルギよりはるかに大きいエネルギに電子を加速させることができる。例えば粒子加速器は、10MeV以上、100MeV以上、1GeV以上のエネルギに電子を加速させ得る。
[00980] EUV放射ビームを出力する自由電子レーザの状況において本発明の実施形態を説明した。しかしながら自由電子レーザは、いかなる波長の放射も出力するように構成可能である。従って、本発明のいくつかの実施形態は、EUV放射ビームでない放射ビームを出力する自由電子を含み得る。
[00981] 「EUV放射」という言葉は、例えば13〜14nmの範囲内のように、4〜20nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると考えることができる。EUV放射は、6.7nm又は6.8nm等、例えば4〜10nmの範囲内のように、10nm未満の波長を有することができる。
[00982] 本明細書に記載したリソグラフィ装置はICの製造において使用可能である。あるいは、本明細書に記載したリソグラフィ装置は他の用途を有する場合もある。考えられる他の用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
[00983] 本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実施可能であることは認められよう。上記の記載は限定でなく例示を意図したものである。従って、以下に述べる特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明に変更を行い得ることが当業者には明らかであろう。