本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、図1,図2に示すように、コンデンサ121,122,123と、電流調整部124とを備えている。コンデンサ121,122,123は、一対の電線51,52から流れ込む電流により充電される。電流調整部124は、一対の電線51,52とコンデンサ121,122,123との間に電気的に接続され、電流の上限値を調整する。また、子機1は、コンデンサ121,122,123から供給される電力を受けて動作する回路A1を備えている。本実施形態の子機1では、回路A1は、たとえばセンサ13、発光素子131、処理部16、記憶部17である。
そして、電流調整部124は、回路A1が起動するまでの少なくとも一部の起動期間T1において、上限値(第2上限値UL2)を通常時よりも大きくする(図5参照)。ここで、「通常時」とは、回路A1の起動が完了した後の時間を意味する。
また、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、一対の電線51,52に電気的に接続される複数の子機1のうちの1つであるのが好ましい。この場合、複数の子機1は、それぞれ電流を引き込むことで親機2に信号を送信するように構成されている。そして、起動期間T1における上限値は、複数の子機1の起動期間T1における上限値の和が、信号を送信するときの電流値を超えないような値であるのが好ましい。
また、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、図1に示すように、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出する電圧検出部18をさらに備えるのが好ましい。そして、電流調整部124は、電圧検出部18の検出結果に応じて、起動期間T1を定めるのが好ましい。
また、起動期間T1は、電圧検出部18で検出された電圧の電圧値が所定の閾値V1を超えている間であるのが好ましい(図6参照)。
また、電流調整部124は、第1経路P1と、第2経路P2とを択一的に選択するように構成されているのが好ましい(図7B,図7C参照)。第1経路P1は、電流を制限する制限素子(抵抗R2、可変抵抗VR1)を介して一対の電線51,52とコンデンサ121,122,123とを電気的に接続する。第2経路P2は、制限素子(抵抗R2、可変抵抗VR1)の両端間をバイパスして一対の電線51,52とコンデンサ121,122,123とを電気的に接続する。そして、電流調整部124は、起動期間T1において第2経路P2を選択するのが好ましい。
また、本実施形態の自動火災報知システム100の親機2は、図2に示すように、上記の子機1と共に一対の電線51,52に電気的に接続されている。親機2は、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出する検出部(受信部23)を備えているのが好ましい。そして、検出部(受信部23)は、電源が投入されてから一定の期間が経過するまでは動作しないのが好ましい。
つまり、本実施形態の自動火災報知システム100は、上記の子機1と、子機1と共に一対の電線51,52に電気的に接続される親機2とを備えているのが好ましい。
以下、本実施形態に係る自動火災報知システム100、子機1、および親機2について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
<全体構成>
以下では、本実施形態の自動火災報知システム100が集合住宅(マンション)に用いられる場合を例示する。もちろん、本実施形態の自動火災報知システム100は、集合住宅に限らず、たとえば商業施設、病院、ホテル、雑居ビル等、様々な建物に用いられてもよい。
本実施形態の自動火災報知システム100においては、図3に示すように1棟の集合住宅6に対して、1台の親機2と、複数台の子機101,102,103…とが設けられている。なお、複数台の子機101,102,103…の各々を特に区別しないときには単に「子機1」という。
さらに、この自動火災報知システム100では、一対の電線51,52が1〜4階の階(フロア)ごとに配線されている。要するに、2本1組(2線式)の電線51,52は、集合住宅6全体で4組設けられている。
ここでは、各組の電線51,52に対して最大40〜80台の子機1が接続可能である。さらに、1台の親機2には、一対の電線51,52は最大で50〜200回線(50〜200組)接続可能である。したがって、たとえば各組の電線51,52に最大40台の子機1が接続可能で、1台の親機2に最大で50回線の一対の電線51,52が接続可能である場合、子機1は、1台の親機2に対して最大で2000(=40×50)台まで接続可能である。ただし、これらの数値は一例であって、これらの数値に限定する趣旨ではない。
なお、一対の電線51,52の終端(親機2と反対側の端部)においては、一対の電線51,52間が終端抵抗4を介して電気的に接続されている。そのため、親機2は、一対の電線51,52間に流れる電流を監視することで、一対の電線51,52の断線を検知
することが可能である。ただし、終端抵抗4は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。
自動火災報知システム100は、基本的には、熱感知器や煙感知器や炎感知器等からなる子機1にて火災の発生を検知し、子機1から受信機である親機2へ火災発生の通知(火災報)がなされるように構成されている。ただし、子機1は、火災の発生を検知する感知器に限らず、発信機などを含んでいてもよい。発信機は、押しボタンスイッチを有し、人が火災を発見した場合に押しボタンスイッチを手動で操作することにより、親機2へ火災発生の通知(火災報)を行う装置である。
また、自動火災報知システム100は、他装置3を連動させるための通知(連動報)を子機1から親機2が受けた際、防排煙設備や非常用放送設備等の他装置3を連動させる連動機能を有している。そのため、自動火災報知システム100は、火災の発生時に、防排煙設備の防火扉を制御したり、非常用放送設備にて音響または音声により火災の発生を報知したりすることが可能である。
他装置3は、たとえば有線接続により親機2との間で通信可能に構成されており、親機2からの指示を受けて自動火災報知システム100と連動するように構成されている。ここでいう他装置3は、防火扉や排煙設備などの防排煙設備、非常用放送設備、外部移報装置、およびスプリンクラーなどの消火設備等、様々な装置を含んでおり、特定の装置(設備)には限定されない。なお、外部移報装置は、自動火災報知システム100が設置されている施設の外部の関係者、消防機関、警備会社等へ通報する装置である。
ここで、本実施形態の自動火災報知システム100では、子機1は、一対の電線51,52を流れる電流(ひいては、一対の電線51,52間の電圧)を火災報レベルまたは連動報レベルに調節することができる。したがって、本実施形態の自動火災報知システム100では、親機2は、火災報と連動報とを区別することができる。また、子機1は、一対の電線51,52を流れる電流(ひいては、一対の電線51,52間の電圧)を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、信号を送信することができる。また、親機2は、子機1と同様に、信号を送信することができる。
次に、親機2および子機1の構成について図1,2を用いて説明する。なお、図2は、1台の子機1が一対の電線51,52を介して1台の親機2に電気的に接続されている状態を示している。したがって、図2では、他の複数の子機1および他の一対の電線51,52の図示は省略されている。
<親機の構成例>
親機2は、子機1から火災発生の通知(火災報)、並びに他装置3を連動させるための通知(連動報)を受けるP型受信機である。親機2は、建物(集合住宅6)の管理室に設置される。
親機2は、図2に示すように、印加部21の他、抵抗22と、受信部23と、送信部24と、各種の表示を行う表示部25と、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部26と、各部を制御する処理部27とを有している。
印加部21は、所定の電圧を一対の電線51,52に対して印加する。ここでは一例として、印加部21が一対の電線51,52間に印加する電圧は直流24Vとするが、この値に限定する趣旨ではない。
抵抗22は、印加部21と一対の電線51,52の少なくとも一方との間に接続されている。図1の例では、抵抗22は、一対の電線51,52のうち一方(高電位側)の電線51と印加部21との間に挿入されている。ただし、この例に限らず、抵抗22は、他方(低電位側)の電線52と印加部21との間に挿入されていてもよいし、一対の電線51,52の両方と印加部21との間にそれぞれ挿入されていてもよい。
また、抵抗22は、抵抗22を流れる電流を電圧降下により抵抗22の両端間の電位差(電圧)に変換する第1の機能と、一対の電線51,52間が短絡したときに一対の電線51,52に流れる電流を制限する第2の機能との2つの機能を有している。要するに、抵抗22は、電流−電圧変換素子としての第1の機能と、電流制限素子としての第2の機能とを兼ね備えている。ここでは一例として、抵抗22の抵抗値は470Ωとするが、この値に限定する趣旨ではない。
受信部23は、抵抗22と一対の電線51,52との間に電気的に接続されている。受信部23は、一対の電線51,52間の電圧に基づいて、子機1から送信される信号を受信する。具体的には、子機1が後述するように一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと、抵抗22を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧が変化する。受信部23は、この一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出することにより、子機1から送信される信号を受信する。言い換えれば、受信部23は、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出する検出部である。
送信部24は、抵抗22と一対の電線51,52との間に電気的に接続されている。送信部24は、一対の電線51,52を流れる電流を変化させることで、信号を子機1に送信する。具体的には、送信部24が印加部21から抵抗22に流れる電流を引き込むと、一対の電線51,52間の電圧が変化する。つまり、送信部24は、印加部21から抵抗22に流れる電流の引き込みにより、一対の電線51,52間の電圧を変化させることで、信号を子機1に送信する。
表示部25は、たとえばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ等を備えている。表示部25は、処理部27に制御されることで、子機1から受信した信号に含まれるデータに応じた内容を表示する。表示部25は、たとえば火災の発生や、火災の発生した階(フロア)を表示する。また、表示部25は、火災を検知した子機1の固有の識別情報(たとえば、アドレス)を取得できる場合は、当該子機1の設置場所を表示することも可能である。
処理部27は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
また、親機2は、他装置3を連動させるための連動部28をさらに有している。これにより、親機2は、子機1から連動報を受けると、連動部28から他装置3へ指示を出し、他装置3を連動させることができる。
親機2は、上述したように印加部21から一対の電線51,52間に電圧を印加することにより、一対の電線51,52に接続されている子機1を含め、自動火災報知システム100全体の動作用の電源として機能する。
さらに、親機2は、停電に際しても自動火災報知システム100の動作用の電源を確保できるように、蓄電池を用いた予備電源29をさらに有している。親機2は、商用電源、自家発電設備等を主電源とする。印加部21は、電力の供給元を、主電源の停電時に主電源から予備電源29に自動的に切り替え、主電源の復旧時には予備電源29から主電源に自動的に切り替える。予備電源29は、省令で定められる基準を満たすように容量等の仕様が決められている。
<子機の構成例>
子機1は、図1,2に示すように、ダイオードブリッジ(Diode Bridge:DB)11と、電源回路12と、センサ13と、発光素子131と、送信回路14と、受信回路15と、処理部16と、記憶部17と、電圧検出部18とを有している。
ダイオードブリッジ11は、入力端に一対の電線51,52が電気的に接続され、出力端に電源回路12、送信回路14、受信回路15が電気的に接続されている。
電源回路12は、図1に示すように、コンデンサ121,122,123と、電流調整部124と、低損失レギュレータ(Low Drop-Out regulator:LDO)125とを備えている。
コンデンサ121,122,123は、たとえばセラミックコンデンサや電解コンデンサからなり、一対の電線51,52から流れ込む電流により充電される。電流調整部124は、一対の電線51,52とコンデンサ121,122,123との間に電気的に接続され、一対の電線51,52を流れる電流の上限値を調整する。低損失レギュレータ125は、入力端に電流調整部124の出力端およびコンデンサ121が電気的に接続され、出力端にコンデンサ122,123が電気的に接続されている。低損失レギュレータ125は、入力端に入力される電圧と、出力端から出力される電圧との差が小さくなるように動作する。
ここで、電流調整部124の具体的な回路の一例について説明する。電流調整部124は、図4に示すように、抵抗R1,R2,R3と、半導体素子Q1,Q2と、スイッチ素子S1とを備えている。半導体素子Q1,Q2は、いずれもnpn型のバイポーラトランジスタである。もちろん、半導体素子Q1,Q2は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)等の他の半導体素子で構成されていてもよい。スイッチ素子S1は、たとえばバイポーラトランジスタやMOSFETなどの半導体素子で構成されており、処理部16の制御によりオン/オフが切り替えられる。もちろん、スイッチ素子S1は、他の構成であってもよく、たとえば電磁リレーであってもよい。
半導体素子Q1のコレクタは、高電位側の電線51に電気的に接続されている。半導体素子Q1のベースは、半導体素子Q2のコレクタに電気的に接続されている。半導体素子Q1のエミッタは、半導体素子Q2のベースおよび抵抗R2の第1端に電気的に接続されている。抵抗R1は、半導体素子Q1のコレクタとベースとの間に電気的に接続されている。半導体素子Q2のエミッタは、抵抗R2の第2端に電気的に接続されている。抵抗R3およびスイッチ素子S1は、直列に電気的に接続されている。そして、抵抗R3およびスイッチ素子S1の直列回路は、抵抗R2に並列に電気的に接続されている。
また、電流調整部124のうち、抵抗R2,R3およびスイッチ素子S1は、切替部126を構成している。切替部126は、処理部16の制御によりスイッチ素子S1のオン/オフが切り替えられるように構成されている。
以下、電流調整部124の動作の一例について説明する。ここでは、スイッチ素子S1がオフであると仮定する。電流調整部124の入力端に一対の電線51,52間の電圧が印加されると、半導体素子Q1のベース−エミッタ間に電圧が印加される。すると、半導体素子Q1がオンに切り替わり、切替部126(ここでは、抵抗R2)を介して電流が流れる。抵抗R2に流れる電流の電流値が、所定の電流値よりも大きくなると、半導体素子Q2のベース−エミッタ間電圧が閾値(飽和電圧)よりも大きくなることで、半導体素子Q2がオンに切り替わる。すると、半導体素子Q1のベース−エミッタ間電圧が低下して閾値(飽和電圧)を下回ることにより、半導体素子Q1がオフに切り替わる。
つまり、半導体素子Q1,Q2が交互にオン/オフを繰り返すことにより、電流調整部124の出力電流は、ほぼ一定になる。そして、電流調整部124の出力電流の上限値は、半導体素子Q2のベース−エミッタ間電圧を、切替部126のインピーダンス(ここでは、抵抗R2の抵抗値)で除した値にほぼ一致する電流値となるように制限される。言い換えれば、電流調整部124は、一対の電線51,52から流れ込む電流を調整する。
電源回路12のコンデンサ121,122,123は、図1に示すように、回路A1に電力を供給する。回路A1は、たとえばセンサ13、発光素子131、処理部16、記憶部17である。たとえば、コンデンサ122は、処理部16に電力を供給する。また、コンデンサ123は、たとえばセンサ13および発光素子131に電力を供給する。電源回路12は、一対の電線51,52を流れる電流が増加して一対の電線51,52間の電圧が低下した際に、コンデンサ121,122,123に蓄えた電力を供給する。なお、電源回路12は、一対の電線51,52間の電圧が変動しても子機1が電力不足にならないように構成されていればよい。
センサ13は、たとえば煙の濃度の変化、温度の変化、一酸化炭素等のガス濃度の変化を検出することで、火災や煙の発生を検知する。センサ13には、たとえばLEDなどの発光素子131が電気的に接続されている。発光素子131は、一対の電線51,52から電流を引き込むことでセンサ13が動作する際に、発光する。したがって、利用者は、センサ13が動作しているか否かを目視で判断することができる。
送信回路14は、一対の電線51,52に電気的に接続されている。送信回路14は、一対の電線51,52を流れる電流を変化させることで、信号を親機2に送信する。具体的には、送信回路14が一対の電線51,52に流れる電流を引き込むと、一対の電線51,52間の電圧が変化する。つまり、送信回路14は、一対の電線51,52に流れる電流の引き込みにより、一対の電線51,52間の電圧を変化させることで、信号を親機2に送信する。
受信回路15は、一対の電線51,52間の電圧の変化に基づいて、親機2から送信される信号を受信する。具体的には、親機2が一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと、抵抗22を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧が変化する。受信回路15は、この一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出することにより、親機2から送信される信号を受信する。
なお、送信回路14および受信回路15は、図2に示すように、ダイオードブリッジ11と電源回路12との間において、一対の電線51,52に電気的に接続されている。言い換えれば、送信回路14および受信回路15は、一対の電線51,52における電流調整部124の入力側に電気的に接続されている。したがって、送信回路14および受信回路15は、電流調整部124による電流の調整の影響を受けない。
処理部16は、送信回路14および受信回路15を制御する。処理部16は、センサ13の出力に応じて電流の引き込み量を調節することで送信回路14から親機2に信号を送信させたり、親機2からの信号を受信回路15で受信させたりする。ここでは、処理部16はマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
処理部16は、センサ13の出力(センサ値)を定期的に読み込み、センサ13の出力が第1閾値を超えると、火災と判断する。そして、処理部16は、送信回路14を制御して一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を調節することにより、一対の電線51,52間の電圧を火災報レベルに変化させる。これにより、処理部16は、火災報を親機2に通知する。
また、処理部16は、センサ13の出力が第2閾値(>第1閾値)を超えると、他装置3を連動させると判断する。そして、処理部16は、送信回路14を制御して一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を調節することにより、一対の電線51,52間の電圧を連動報レベル(<火災報レベル)に変化させる。これにより、処理部16は、連動報を親機2に通知する。
また、処理部16は、送信回路14を制御して、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、親機2に信号を送信する。信号には、たとえば子機1単位で発報元を特定するための情報(識別情報)や、自動試験のための情報などが含まれる。なお、自動試験の項目としては、たとえば生存確認(キープアライブ)、子機1の自己診断等が含まれている。
記憶部17は、子機1に予め割り当てられている識別情報(たとえば、アドレス)を少なくとも記憶する。つまり、複数台の子機101,102,103…には、それぞれ固有の識別情報が割り当てられている。各識別情報は、複数台の子機101,102,103…の各々の設置場所(たとえば部屋番号)と対応付けられて親機2に登録される。
電圧検出部18は、一対の電線51,52に電気的に接続されている。電圧検出部18は、たとえば複数の抵抗からなる分圧回路で構成されている。電圧検出部18は、一対の電線51,52間の電圧を分圧することにより、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出する。電圧検出部18の検出結果は、処理部16に入力される。
<一対の電線に表れる特性のずれ>
ここで、たとえば本実施形態の自動火災報知システム100において、複数台の子機1が、それぞれランダムにセンサ13を動作させていると仮定する。この場合、偶然に複数台の子機1が同時にセンサ13を動作させると、1台の子機1が一対の電線51,52を流れる電流を引き込む場合と比較して、より大きい電流を引き込むことになる。すると、一対の電線51,52間の電圧の電圧値は、1台の子機1が一対の電線51,52を流れる電流を引き込む場合と比較して、大きく低下する可能性があった。そして、この場合、子機1が火災報を誤って通知する、すなわち誤報などの予期せぬ動作を行う可能性があった。
そこで、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1は、電流調整部124を備えることで、一対の電線51,52から流れ込む電流を制限している。したがって、仮に複数台の子機1のセンサ13が同時に動作した場合でも、電流調整部124により一対の電線51,52から引き込む電流が制限され、一対の電線51,52間の電圧が大きく低下し難い。その結果、子機1は、誤報などの予期せぬ動作を行う可能性が低くなっている。
<回路の起動について>
ところで、本実施形態の子機1では、コンデンサ121,122,123の充電が完了することで回路A1が起動するが、一対の電線51,52から流れ込む電流を電流調整部124によって調整する場合、以下の問題が生じ得る。すなわち、電流調整部124により、単に一対の電線51,52から流れ込む電流を制限した場合、コンデンサ121,122,123に流れる電流も制限されてしまう。このため、コンデンサ121,122,123の充電が遅くなり、結果として回路A1の起動が遅くなるという問題が生じ得る。
そこで、本実施形態の子機1では、回路A1が起動するまでの少なくとも一部の起動期間T1において、一対の電線51,52から流れ込む電流の上限値を通常時よりも大きくするように電流調整部124を構成することで、上記の問題を解決している。
電流調整部124は、既に述べたように、切替部126を有している(図4参照)。そして、電流調整部124は、切替部126が制御されることにより、一対の電線51,52から流れ込む電流の上限値を調整するように構成されている。具体的には、電流調整部124は、スイッチ素子S1がオフのとき、上限値が第1上限値UL1となる。また、電流調整部124は、スイッチ素子S1がオンのとき、上限値が第2上限値UL2となる。
ここで、第1上限値UL1は、半導体素子Q2のベース−エミッタ間電圧を抵抗R2の抵抗値で除した値である。また、第2上限値UL2は、半導体素子Q2のベース−エミッタ間電圧を抵抗R2,R3の合成抵抗の抵抗値で除した値である。そして、抵抗R2,R3の合成抵抗の抵抗値は、抵抗R2の抵抗値よりも小さくなる。したがって、第2上限値UL2は、第1上限値UL1よりも大きい(図5参照)。
<動作例>
以下、電流調整部124の動作例について図5を用いて説明する。図5は、横軸を時間軸、縦軸を電流として、一対の電線51,52から電流調整部124に流れ込む電流を表している。また、図5の時刻t0は、親機2を一対の電線51,52に接続した状態で、親機2の電源を投入した時刻を表している。
図5に示すように、電流調整部124の上限値は、親機2の電源を投入する時点では第2上限値UL2である。この構成は、スイッチ素子S1をノーマリーオン型のスイッチとすることで実現できる。そして、電流調整部124は、時刻t1になるまで、すなわち起動期間T1が経過するまでは、上限値を第2上限値UL2に維持する。これにより、上限値が第1上限値UL1である場合と比較して、コンデンサ121,122,123に流れる電流が大きくなる。したがって、上限値が第1上限値UL1である場合と比較して、コンデンサ121,122,123の充電が完了するまでの時間が短くなる。
そして、電流調整部124のスイッチ素子S1は、起動期間T1が経過すると、処理部16の制御によりオフに切り替えられる。これにより、電流調整部124の上限値は、通常時の第1上限値UL1となる。したがって、起動期間T1の経過後においては、電流調整部124は、一対の電線51,52から流れ込む電流を制限する。
なお、起動期間T1の途中で処理部16が起動する場合、起動期間T1の終了時点を以下のように決定してもよい。すなわち、処理部16は、起動すると内蔵のタイマにより計時を開始する。そして、処理部16がタイマにより所定の時間を計時した時点を、起動期間T1の終了時点とする。この場合、所定の時間は、コンデンサ121,122,123の静電容量など、設計に応じて適宜設定されてもよい。
<効果>
上述のように、電流調整部124は、起動期間T1において、一対の電線51,52から流れ込む電流の上限値を通常時よりも大きくするように構成されている。このため、単に一対の電線51,52から流れ込む電流を制限した場合と比較して、コンデンサ121,122,123の充電が完了するまでの時間を短くすることができ、結果として回路A1の起動を早めることができる。本実施形態の自動火災報知システム100の子機1と共に用いられる親機2、および自動火災報知システム100も、上記と同様の効果を奏することができる。
とくに、本実施形態の親機2は、以下の構成を有している。すなわち、親機2は、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を検出する検出部(ここでは、受信部23)を備えている。そして、検出部(受信部23)は、電源が投入されてから一定の期間(たとえば、起動期間T1)が経過するまでは動作しないように構成されている。つまり、電流調整部124の上限値を通常時よりも大きくしている期間において、複数台の子機1が同時に一対の電線51,52から電流を引き込む可能性がある。この場合、本実施形態の親機2は、一対の電線51,52に表れる特性のずれとして検出しないので、好ましい。なお、当該構成を採用するか否かは任意である。
ところで、第1上限値UL1は、同じ回線(一対の電線51,52)に接続されている全ての子機1の第1上限値UL1の和が、信号を送信する(ここでは、火災報を通知する)ときの電流値を超えないような値であるのが好ましい。つまり、通常時における上限値は、複数の子機1の通常時における上限値の和が、信号を送信するときの電流値を超えないような値であるのが好ましい。このように第1上限値UL1を設定すれば、仮に同じ回線(一対の電線51,52)に接続されている全ての子機1のセンサ13が同時に動作した場合でも、一対の電線51,52間の電圧の電圧値が火災報レベルよりも低下することがない。
ここで、一対の電線51,52間の電圧は、親機2の電源を投入してから時間の経過に伴って、親機2の印加部21が印加する電圧まで上昇する。そして、親機2の印加部21は、電源の投入時から一定期間が経過するまでは、通常時よりも高い電圧を一対の電線51,52に対して印加する。したがって、一対の電線51,52間の電圧は、たとえば図6に示すように推移する。そこで、本実施形態の子機1において、電流調整部124は、電圧検出部18の検出結果に応じて、起動期間T1を定めるように構成されていてもよい。
たとえば図6に示すように、起動期間T1は、電圧検出部18で検出した一対の電線51,52間の電圧の電圧値が所定の閾値V1を超えている期間であってもよい。具体的には、電流調整部124の上限値は、一対の電線51,52間の電圧の電圧値が所定の閾値V1を上回るまでは第1上限値UL1である。この構成は、スイッチ素子S1をノーマリーオフ型のスイッチとすることで実現できる。そして、時刻t2において一対の電線51,52間の電圧の電圧値が所定の閾値V1を上回ると、電流調整部124の上限値は、スイッチ素子S1がオンに切り替えられることにより、第2上限値UL2となる。その後、時刻t3において一対の電線51,52間の電圧の電圧値が所定の閾値V1を下回ると、電流調整部124の上限値は、スイッチ素子S1がオフに切り替えられることにより、第1上限値UL1となる。この場合、起動期間T1は、時刻t2から時刻t3までの期間となる。
その他、起動期間T1は、電圧検出部18で検出した一対の電線51,52間の電圧の電圧値が所定の閾値V1を下回るまでの期間であってもよい。具体的には、電流調整部124の上限値は、親機2の電源を投入する時点では第2上限値UL2である。この構成は、スイッチ素子S1をノーマリーオン型のスイッチとすることで実現できる。その後、時刻t3において一対の電線51,52間の電圧の電圧値が所定の閾値V1を下回ると、電流調整部124の上限値は、スイッチ素子S1がオフに切り替えられることにより、第1上限値UL1となる。この場合、起動期間T1は、時刻t0から時刻t3までの期間となる。
また、切替部126の構成は、図4に示す構成に限定されず、他の構成であってもよい。たとえば図7Aに示すように、切替部126は、抵抗R2,R3およびスイッチ素子S1の代わりに、可変抵抗VR1で構成されていてもよい。可変抵抗VR1は、処理部16の制御により、抵抗値を切り替えることのできる素子であればよい。たとえば可変抵抗VR1の抵抗値が2値に切り替え可能であれば、電流調整部124は、可変抵抗VR1の抵抗値を2値のうち大きい方の値とすることで、上限値を第1上限値UL1とする。また、電流調整部124は、可変抵抗VR1の抵抗値を2値のうち小さい方の値とすることで、上限値を第2上限値UL2とする。
また、切替部126は、図7Bに示すように、抵抗R2およびスイッチ素子S1の並列回路で構成されていてもよい。つまり、電流調整部124は、第1経路P1と第2経路P2とを択一的に選択するように構成されていてもよい。第1経路P1は、抵抗R2を含む経路であり、電流を制限する制限素子(抵抗R2)を介して一対の電線51,52とコンデンサ121,122,123とを電気的に接続する。第2経路P2は、スイッチ素子S1を含む経路であり、制限素子(抵抗R2)の両端間をバイパスして一対の電線51,52とコンデンサ121,122,123とを電気的に接続する。
そして、電流調整部124は、起動期間T1において第2経路P2を選択するように構成されていてもよい。具体的には、電流調整部124は、起動期間T1において、処理部16の制御によりスイッチ素子S1をオンに切り替えられることで、第2経路P2を選択する。
この構成では、第1上限値UL1が抵抗R2などの制限素子により制限されないことから、一対の電線51,52から流れ込む電流の制限をさらに緩めることができる。したがって、この構成では、第1上限値UL1が制限素子により制限される場合と比較して、コンデンサ121,122,123の充電が完了するまでの時間をより短くすることができ、結果として回路A1の起動をより早めることができる。
その他、切替部126は、図7Cに示すように、可変抵抗VR1およびスイッチ素子S1の並列回路で構成されていてもよい。この構成では、制限素子(可変抵抗VR1)を含む経路が第1経路P1、スイッチ素子S1を含む経路が第2経路となる。
ところで、本実施形態の子機1では、親機2から一対の電線51,52に対して電圧が印加される場合を想定しているが、アドレス設定器から一対の電線51,52に対して電圧が印加される場合もある。ここで、アドレス設定器は、一対の電線51,52に接続されている複数台の子機1の各々にアドレスを設定する際に用いられる。そして、アドレス設定器を一対の電線51,52に接続した状態で、アドレス設定器の電源を投入する場合にも、アドレス設定器から一対の電線51,52に対して電圧が印加される。この場合にも、本実施形態の子機1は、親機2から電圧が印加される場合と同様に、コンデンサ121,122,123の充電が完了するまでの時間を短くすることができ、結果として回路A1の起動を早めることができる。