(実施形態1)
本実施形態に係る自動火災報知システム100は、図1に示すように、少なくとも1台の子機1と、1台の親機2とを備えている。
親機2は、一対の電線51,52間に電圧を印加する印加部21を有している。印加部21が一対の電線51,52間に印加する電圧を、以下では「待機電圧」という。
子機1は、送信回路14と、判断部161と、制御部162とを備えている。送信回路14は、待機電圧が印加される一対の電線51,52に電気的に接続され、上記待機電圧からの降圧により一対の電線51,52間の電圧を所定の送信電圧に変化させるように構成されている。
判断部161は、火災の発生を報知する火災報状態、および他装置3(図2参照)を連動させる連動報状態の2状態を含む動作状態を判断するように構成されている。制御部162は、送信回路14を制御し上記送信電圧の電圧値を調節する。
ここで、制御部162は、判断部161の判断結果が上記火災報状態になると、上記送信電圧の電圧値を所定の火災報レベルに調節して火災報を発生する。また、制御部162は、判断部161の判断結果が上記連動報状態になると、送信電圧の電圧値を上記火災報レベルとは異なる所定の連動報レベルに調節して連動報を発生するように構成されている。
すなわち、本実施形態に係る自動火災報知システム100の子機1は、制御部162が、判断部161の判断結果に応じて送信回路14を制御し送信電圧の電圧値を調節することによって、火災報および連動報を発生する。要するに、子機1は、待機電圧からの降圧によって一対の電線51,52間の電圧を変化させており、変化後の一対の電線51,52間の電圧(送信電圧)の大きさ(電圧値)を、火災報レベルと連動報レベルとで切り替える。これにより、子機1は、火災報と連動報とを区別可能な電圧信号を送信する。
そのため、この子機1を用いた自動火災報知システム100においては、火災報用と連動報用とで回線を分けることなく、火災報と連動報とを親機2で区別することができる。したがって、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1によれば、極力簡単な構成で、P型でありながらも他装置3との連動機能を付加できる、という利点がある。
以下、本実施形態に係る自動火災報知システム100について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
<全体構成>
本実施形態では、自動火災報知システム100が集合住宅(マンション)に用いられる場合を例示するが、自動火災報知システム100は、集合住宅に限らず、たとえば商業施設、病院、ホテル、雑居ビル等、様々な建物に適用可能である。
本実施形態の自動火災報知システム100においては、図2に示すように1棟の集合住宅6に対して、1台の親機2と、複数台の子機101,102,103…とが設けられている。なお、複数台の子機101,102,103…の各々を特に区別しないときには単に「子機1」という。
さらに、この自動火災報知システム100では、一対の電線51,52が1〜4階の階(フロア)ごとに配線されている。要するに、2本1組(2線式)の電線51,52は、集合住宅6全体で4組設けられている。
ここでは、各組の電線51,52に対して最大40〜80台の子機1が接続可能である。さらに、1台の親機2には、一対の電線51,52は最大で50〜200回線(50〜200組)接続可能である。したがって、たとえば各組の電線51,52に最大40台の子機1が接続可能で、1台の親機2に最大で50回線の一対の電線51,52が接続可能である場合、子機1は、1台の親機2に対して最大で2000(=40×50)台まで接続可能である。ただし、これらの数値は一例であって、これらの数値に限定する趣旨ではない。
なお、一対の電線51,52の終端(親機2と反対側の端部)においては、一対の電線51,52間が終端抵抗4を介して電気的に接続されている。そのため、親機2は、一対の電線51,52間に流れる電流を監視することで、一対の電線51,52の断線を検知することが可能である。ただし、終端抵抗4は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。
自動火災報知システム100は、基本的には、熱感知器や煙感知器や炎感知器等からなる子機1にて火災の発生を検知し、子機1から受信機である親機2へ火災発生の通知(火災報)がなされるように構成されている。ただし、子機1は、火災の発生を検知する感知器に限らず、発信機などを含んでいてもよい。発信機は、押しボタンスイッチを有し、人が火災を発見した場合に押しボタンスイッチを手動で操作することにより、親機2へ火災発生の通知(火災報)を行う装置である。
また、自動火災報知システム100は、他装置3を連動させるための通知(連動報)を子機1から親機2が受けた際、防排煙設備や非常用放送設備等の他装置3を連動させる連動機能を有している。そのため、自動火災報知システム100は、火災の発生時に、防排煙設備の防火扉を制御したり、非常用放送設備にて音響または音声により火災の発生を報知したりすることが可能である。
他装置3は、たとえば有線接続により親機2との間で通信可能に構成されており、親機2からの指示を受けて自動火災報知システム100と連動するように構成されている。ここでいう他装置3は、防火扉や排煙設備などの防排煙設備、非常用放送設備、外部移報装置、およびスプリンクラーなどの消火設備等、様々な装置を含んでおり、特定の装置(設備)には限定されない。なお、外部移報装置は、自動火災報知システム100が設置されている施設の外部の関係者、消防機関、警備会社等へ通報する装置である。
ところで、一般的な自動火災報知システムには、P型(Proprietary-type)とR型(Record-type)との2種類のシステムが存在する。P型の自動火災報知システムは、子機が一対の電線間を電気的に短絡することで親機に火災発生を通知する。R型の自動火災システムは、伝送線を伝送される伝送信号を用いて、子機が通信により親機に火災発生を通知する。
本実施形態の自動火災報知システム100はP型を基本とする。より具体的には、本実施形態では、P型の自動火災報知システムが設置されていた集合住宅において、既存の配線(電線51,52)をそのまま使用し、受信機(親機2)および子機(子機1)を入れ替えた場合を想定する。なお、本実施形態の自動火災報知システム100は、新規に導入される自動火災報知システムとしても採用可能である。
すなわち、本実施形態の自動火災報知システム100は、P型でありながらも、送信電圧(一対の電線51,52間の電圧)の電圧値を調節可能な子機1を用いることで、一部、R型と同様の機能が付加されている。具体的には、自動火災報知システム100は、発報時、子機1が送信電圧の電圧値を火災報レベルあるいは連動報レベルに調節することで、親機2において火災報と連動報とを区別することが可能である。したがって、自動火災報知システム100は、同一回線で火災報の機能と連動機能とを実現でき、火災報用と連動報用とで別回線を設ける場合に比べて省配線化を図ることができる。
さらに、本実施形態においては、子機1は、送信電圧の電圧値を、第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、伝送データを表す電圧信号を送信するように構成されている。以下では、伝送データを表す電圧信号を伝送信号という。つまり、本実施形態では、子機1は伝送信号を用いた通信が可能であり、親機2に対しデータの伝送が可能である。そのため、自動火災報知システム100は、たとえば発報時、予め割り当てられている識別子(アドレス)を、伝送信号にて子機1が親機2に送信することにより、親機2において、一対の電線51,52の組単位ではなく子機1単位で発報元の特定が可能である。また、自動火災報知システム100は、非発報時(平常時)、親機2−子機1間で伝送信号を用いた通信を行うことにより、親機2−子機1間の通信状況や子機1の動作などについて自動試験を実施することができる。
なお、本実施形態に係る自動火災報知システム100は、伝送信号を用いた通信により親機2−子機1間で様々な情報をやり取りできるので、上述したような子機1単位での発報元の特定や自動試験に限らず、種々の機能を付加することができる。
<親機の構成例>
本実施形態では、親機2は、子機1から火災発生の通知(火災報)、並びに他装置3を連動させるための通知(連動報)を受けるP型受信機である。親機2は、建物(集合住宅6)の管理室に設置される。
親機2は、図1に示すように、印加部21の他、抵抗22と、受信部23と、送信部24と、各種の表示を行う表示部25と、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部26と、各部を制御する処理部27とを有している。
印加部21は、所定の待機電圧を一対の電線51,52に対して常時印加する。ここでは一例として、印加部21が一対の電線51,52間に印加する電圧は直流24Vとするが、この値に限定する趣旨ではない。
抵抗22は、印加部21と一対の電線51,52の少なくとも一方との間に接続されている。図1の例では、抵抗22は、一対の電線51,52のうち一方(高電位側)の電線51と印加部21との間に挿入されている。ただし、この例に限らず、抵抗22は、他方(低電位側)の電線52と印加部21との間に挿入されていてもよいし、一対の電線51,52の両方と印加部21との間にそれぞれ挿入されていてもよい。
また、抵抗22は、抵抗22を流れる電流を電圧降下により抵抗22の両端間の電位差(電圧)に変換する第1の機能と、一対の電線51,52間が短絡したときに一対の電線51,52に流れる電流を制限する第2の機能との2つの機能を有している。要するに、抵抗22は、電流−電圧変換素子として第1の機能と、電流制限素子としての第2の機能とを兼ね備えている。ここでは一例として、抵抗22の抵抗値は400Ωあるいは600Ωとするが、この値に限定する趣旨ではない。
受信部23および送信部24は、いずれも抵抗22と一対の電線51,52との間に電気的に接続されている。
受信部23は、一対の電線51,52間の電圧値を検出することによって、子機1からの電圧信号を受信するように構成されている。つまり、受信部23は、一対の電線51,52間にかかる電圧の大きさ(電圧値)を検出しており、子機1の送信回路14にて一対の電線51,52間の電圧が待機電圧から降圧されて送信電圧に変化したときには、変化後の電圧(送信電圧)の電圧値を検出する。このように、受信部23は、一対の電線51,52間の電圧値を検出することで、子機1で生成された送信電圧の電圧値を読み取って、子機1からの電圧信号(電圧変化)を受信する。これにより、受信部23は、子機1からの火災報や連動報を電圧信号として受信することができる。言い換えれば、受信部23は、子機1で生成された送信電圧の電圧値に応じた電圧信号を、火災報や連動報として受信することになる。
なお、受信部23は、たとえば一対の電線51,52間の電位差を計測することにより、一対の電線51,52間の電圧値を直接的に検出してもよいが、この構成に限らない。他の例として、受信部23は、一対の電線51,52を流れる電流の大きさ(電流値)に基づいて、一対の電線51,52間の電圧値を間接的に検出してもよい。つまり、一対の電線51,52間の電圧値は、印加部21で発生する待機電圧の電圧値から、抵抗22での電圧降下分の電圧値(抵抗22の両端間の電位差)を差し引いた値となる。待機電圧の電圧値および抵抗22の抵抗値はいずれも既知であるので、受信部23は、一対の電線51,52を流れる電流の大きさから、一対の電線51,52間の電圧値を間接的に検出できる。この場合、受信部23は、たとえばシャント抵抗などを用いて一対の電線51,52を流れる電流の大きさを検出する。
送信部24は、子機1に通信信号を送信する。送信部24は、印加部21から抵抗22を通して送信部24に流れ込む電流を変化させることで一対の電線51,52上に生じる電圧信号を、通信信号として子機1に送信する。つまり、一対の電線51,52間の電圧値は、印加部21で発生する待機電圧の電圧値から、抵抗22での電圧降下分の電圧値(抵抗22の両端間の電位差)を差し引いた値となる。そのため、印加部21から抵抗22を通して送信部24に流れ込む電流が変化すると、抵抗22での電圧降下によって、一対の電線51,52上には電圧変化(電圧信号)が生じることになる。この電圧変化(電圧信号)が、親機2からの通信信号として子機1で受信される。
この親機2は、子機1から火災発生の通知(火災報)を受けると、表示部25にて火災の発生場所等の表示を行う。
処理部27は、マイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
また、親機2は、他装置3を連動させるための連動部28をさらに有している。これにより、親機2は、子機1から連動報を受けると、連動部28から他装置3へ指示を出し、他装置3を連動させることができる。
親機2は、上述したように印加部21から一対の電線51,52間に電圧(待機電圧)を印加することにより、一対の電線51,52に接続されている子機1を含め、自動火災報知システム100全体の動作用の電源として機能する。
さらに、親機2は、停電に際しても自動火災報知システム100の動作用の電源を確保できるように、蓄電池を用いた予備電源29をさらに有している。親機2は、図示しない商用電源、自家発電設備等を主電源とする。印加部21は、電力の供給元を、主電源の停電時に主電源から予備電源29に自動的に切り替え、主電源の復旧時には予備電源29から主電源に自動的に切り替える。予備電源29は、省令で定められる基準を満たすように容量等の仕様が決められている。
<子機の構成例>
本実施形態では、子機1は、図1に示すように、ダイオードブリッジ11と、電源回路12と、センサ13と、送信回路14と、受信回路15と、制御回路16と、記憶部17とを有している。
ダイオードブリッジ11は、入力端側に一対の電線51,52が電気的に接続され、出力端側に電源回路12、送信回路14、および受信回路15が電気的に接続されている。電源回路12は、一対の電線51,52上の電力から、子機1の動作用の電力を生成する。センサ13は、火災や煙の発生を検知する。
制御回路16は、送信回路14および受信回路15を制御して、センサ13の出力に応じて送信電圧の電圧値を調節することで送信回路14から電圧信号を送信したり、親機2からの通信信号を受信回路15で受信したりする。ここでは、制御回路16はマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいが、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、電気通信回線を通じて提供されてもよい。
制御回路16は、判断部161および制御部162を含んでいる。つまり、本実施形態では、火災報状態および連動報状態の2状態を含む動作状態を判断する判断部161と、送信回路14を制御し送信電圧の電圧値を調節する制御部162とは一体に構成されている。ただし、この例に限らず、判断部161と制御部162とは別体として構成されていてもよい。
送信回路14は、一対の電線51,52に電気的に接続されている。送信回路14は、一対の電線51,52に印加されている待機電圧からの降圧により、一対の電線51,52間の電圧を所定の送信電圧に変化させるように構成されている。つまり、送信回路14は、一対の電線51,52間の電圧を降圧することによって、一対の電線51,52間の電圧を元の待機電圧から所定の送信電圧に変換する(変化させる)。言い換えれば、送信回路14は、降圧のみ可能な定電圧生成回路であって、所定の電圧(送信電圧)を生成することで、一対の電線51,52間の電圧を送信電圧に制御する。
この送信回路14では、一対の電線51,52間の待機電圧を降圧する機能はあるものの、一対の電線51,52間の待機電圧を昇圧する機能はない。そのため、一対の電線51,52に接続された複数台の子機1が、各々の送信回路14にて同時に送信電圧を生成した場合、一対の電線51,52間の電圧は、複数台の子機1で生成された複数の送信電圧のうちで電圧値が最も低い送信電圧になる。たとえば、一対の電線51,52に接続された2台の子機101,102が、各々の送信回路14にて同時に送信電圧を生成したと仮定する。ここで、子機101の送信回路14で生成される送信電圧の方が、子機102の送信回路14で生成される送信電圧よりも低いと仮定すれば、一対の電線51,52間の電圧は、子機101の送信回路14で生成された送信電圧になる。
また、送信回路14は、上述した送信電圧の電圧値が1つの値に固定されているのではなく、制御部162によって送信電圧の電圧値が調節可能に構成されている。具体的には、送信回路14では、火災報を発生するときに用いる「火災報レベル」と、連動報を発生するときに用いる「連動報レベル」との少なくとも2つの値を含む複数の値に、送信電圧の電圧値が調節可能である。さらに、本実施形態では上述したように、子機1は、送信電圧の電圧値を「第1レベル」と「第2レベル」とで交互に切り替えることにより、伝送データを表す電圧信号(伝送信号)を送信する。そこで、本実施形態では、送信回路14は、送信電圧の電圧値を少なくとも3つの値に調節可能に構成されている。
本実施形態では、送信回路14は、送信電圧の電圧値ごとに個別の定電圧生成回路を用いることで構成されている。具体的には、送信回路14は、図1に示すように、火災報を発生するための火災報回路141と、連動報を発生するための連動報回路142と、伝送信号を送信するための伝送回路143とを有している。つまり、火災報回路141は「火災報レベル」の送信電圧を生成する回路であって、連動報回路142は「連動報レベル」の送信電圧を生成する回路であって、伝送回路143は「第1レベル」または「第2レベル」の送信電圧を生成する回路である。なお、送信回路14は、送信電圧の電圧値ごとに個別の定電圧生成回路を用いる構成に限らず、制御部162によって電圧値の切り替え(調節)が可能な1つの定電圧生成回路で構成されていてもよい。
次に、送信回路14の具体的な回路構成について、図3を参照して説明する。図3では、送信回路14のうち火災報回路141のみを示しているが、残りの連動報回路142および伝送回路143にあっても、火災報回路141と同様の構成が適用される。つまり、送信回路14は、図3に示すような構成の回路が、火災報回路141、連動報回路142、および伝送回路143の3回路分設けられて構成されている。以下では図3を参照して火災報回路141の構成について説明し、連動報回路142および伝送回路143についての詳細な説明は省略する。
火災報回路141は、図3に示すように、定電圧を生成する定電圧生成部1401と、オン・オフを切り替え可能な切替部1402とを有している。火災報回路141は、ダイオードブリッジ11を介して一対の電線51,52に電気的に接続されている。定電圧生成部1401と切替部1402とは、ダイオードブリッジ11の一対の出力端間において電気的に直列に接続されている。これにより、切替部1402がオンであれば、定電圧生成部1401が一対の電線51,52間に電気的に接続され、切替部1402がオフであれば、定電圧生成部1401が一対の電線51,52から電気的に切り離されることになる。そのため、定電圧生成部1401は、切替部1402がオンの場合に、一対の電線51,52に印加されている待機電圧からの降圧により、一対の電線51,52間の電圧を所定の送信電圧に変化させる。
図3の例では、定電圧生成部1401はツェナダイオードZD1で構成され、切替部1402はスイッチング素子Q1と(第1の)抵抗R1と(第2の)抵抗R2とで構成されている。
スイッチング素子Q1は、ここではnpn型のトランジスタからなり、コレクタがツェナダイオードZD1のアノードに電気的に接続されている。ツェナダイオードZD1のカソードは、ダイオードブリッジ11の高電位側の出力端に電気的に接続されている。スイッチング素子Q1のエミッタは、回路グランド(ダイオードブリッジ11の低電位側の出力端)に電気的に接続されている。抵抗R1と抵抗R2とは、制御部162の出力端と回路グランドとの間において電気的に直列に接続されている。さらに、抵抗R1と抵抗R2との接続点は、スイッチング素子Q1のベースに電気的に接続されている。
上記構成により、制御部162の出力が“H”(ハイ)であれば、スイッチング素子Q1がオンし、ツェナダイオードZD1が一対の電線51,52間に電気的に接続される。このとき、一対の電線51,52間に印加されている電圧が、ツェナダイオードZD1の降伏電圧(ツェナ電圧)を上回っていると、ツェナダイオードZD1の両端電圧は、ツェナダイオードZD1の降伏電圧に維持される。これにより、定電圧生成部1401は、一対の電線51,52間に定電圧(ツェナダイオードZD1の降伏電圧)を生成することになる。一方、制御部162の出力が“L”(ロー)であれば、スイッチング素子Q1がオフし、ツェナダイオードZD1が一対の電線51,52から電気的に切り離される。このとき、一対の電線51,52間に印加されている電圧は変化しない。
したがって、制御部162の出力が“H”のときに、火災報回路141は、一対の電線51,52に印加されている待機電圧からの降圧によって、一対の電線51,52間の電圧を所定の送信電圧に変化させる。ここで、送信電圧の大きさ(電圧値)を規定するのは、定電圧生成部1401を構成するツェナダイオードZD1の降伏電圧である。つまり、ツェナダイオードZD1の降伏電圧は、要求される送信電圧の電圧値に応じて選定されることになる。
本実施形態では、送信回路14は、ツェナダイオードZD1の降伏電圧が、火災報回路141、連動報回路142、および伝送回路143のそれぞれにおいて個別に設定されている。そのため、送信回路14は、火災報回路141の切替部1402がオンのときと、連動報回路142の切替部1402がオンのときと、伝送回路143の切替部1402がオンのときとで、送信電圧の電圧値を切り替えることができる。本実施形態では、送信回路14は、このように火災報回路141、連動報回路142、および伝送回路143のいずれを作動させるかによって、送信電圧の電圧値を3段階で切替可能であると仮定する。
なお、図3に示した火災報回路141の構成は一例に過ぎず、火災報回路141の構成は、図3に示した構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、スイッチング素子Q1は、npn型のトランジスタに限らず、pnp型のトランジスタや、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、あるいはリレーなどでもよい。また、切替部1402は、制御部162の出力が“L”のときにオンし、“H”のときにオフする構成であってもよい。また、定電圧生成部1401は、ツェナダイオードZD1以外の定電圧素子を用いて構成されていてもよい。
このように、本実施形態では、送信回路14は、一対の電線51,52間の電圧をドロップさせることによって待機電圧から所定の送信電圧に変化させている。そして、送信回路14は、ドロップさせる電圧の大きさを複数段階で切り替えることによって、一対の電線51,52間の電圧(送信電圧)の大きさ(電圧値)を調節する。ここで、送信回路14でドロップする電圧の大きさ(電圧値)は、待機電圧と送信電圧との差分値に相当する。
ところで、上述した構成の送信回路14によって、一対の電線51,52間の電圧が待機電圧から送信電圧に変化すると、待機電圧と送信電圧との差分に相当する電圧が、親機2の抵抗22の両端間に生じることになる。そのため、親機2の印加部21の出力電圧が待機電圧のままであっても、一対の電線51,52間の電圧は、待機電圧から降圧された送信電圧となり得る。また、このとき、親機2の抵抗22は、送信回路14を流れる電流を制限する電流制限抵抗としても機能する。
受信回路15は、親機2からの通信信号を、一対の電線51,52上の電圧信号(電圧変化)として受信する。つまり、親機2が印加部21から抵抗22を通して送信部24に流れ込む電流を変化させることで一対の電線51,52上には電圧信号が生じるので、受信回路15は、この電圧信号を親機から2の通信信号として受信する。そのため、受信回路15は、一対の電線51,52間の電圧値を検出することによって、親機2からの通信信号を受信するように構成されている。なお、受信回路15は、たとえば一対の電線51,52間の電位差を計測することにより、一対の電線51,52間の電圧値を直接的に検出する。
記憶部17は、子機1に予め割り当てられている識別子(アドレス)を少なくとも記憶する。つまり、複数台の子機101,102,103…には、それぞれ固有の識別子が割り当てられている。各識別子は、複数台の子機101,102,103…の各々の設置場所(たとえば部屋番号)と対応付けられて親機2に登録される。
また、記憶部17には、判断部161が動作状態(火災報状態、連動報状態)を判断するための判断条件が記憶されている。判断条件は、たとえばセンサ13の出力について設定された閾値や、サンプリング回数などである。
判断部161は、センサ13の出力(センサ値)を定期的に読込み、記憶部17内の判断条件に照らすことによって、動作状態を判断する。本実施形態では、一例として、センサ値が第1の閾値を超える状態が所定の第1のサンプリング回数(たとえば3回)連続することが、判断部161が火災報状態と判断するための判断条件であると仮定する。同様に、センサ値が第2の閾値(>第1の閾値)を超える状態が所定の第2のサンプリング回数(たとえば3回)連続することが、判断部161が連動報状態と判断するための判断条件であると仮定する。ただし、判断部161は、火災報状態との判断を経てから連動報状態と判断するように、たとえば火災報状態との判断が確定した時点からセンサ値と第2の閾値との比較を開始する。これらの判断条件は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
本実施形態では、判断部161は、火災報状態と連動報状態とのいずれでもない非発報状態(平常状態)を含む3状態(火災報状態、連動報状態、非発報状態)のうち、現在の動作状態がいずれに当たるのかを判断する。なお、判断部161で判断される動作状態は、3状態に限らず、火災報状態および連動報状態の2状態のみであってもよいし、また、4状態以上であってもよい。
制御部162は、判断部161の判断結果に応じて送信回路14を制御し送信電圧の電圧値を調節する。つまり、制御部162は、上述したように判断部161の判断結果が火災報状態になると、送信電圧の電圧値を所定の火災報レベルに調節して火災報を発生する。また、制御部162は、判断部161の判断結果が連動報状態になると、送信電圧の電圧値を所定の連動報レベルに調節して連動報を発生する。ここで、連動報レベルは、火災報レベルとは異なる値(電圧値)であって、本実施形態では火災報レベルよりも低い電圧値である(火災報レベル>連動報レベル)。
さらに、本実施形態においては、制御部162は、送信電圧の電圧値を、第1レベルと、第2レベルとで交互に切り替えることにより、伝送データを表す伝送信号を送信するように構成されている。ここで、第2レベルは、第1レベルとは異なる値(電圧値)であって、第1レベルよりも低い電圧値である(第1レベル>第2レベル)。伝送データは、上述したように子機1単位で発報元を特定するための情報(識別子)や、自動試験のための情報などである。なお、自動試験の項目としては、たとえば生存確認(キープアライブ)、子機1の自己診断等が含まれている。
ここでは、一例として、第1レベルは火災報レベルと同じ電圧値であって、第2レベルは、火災報レベルよりも低く、連動報レベルよりも高い電圧値である(火災報レベル=第1レベル>第2レベル>連動報レベル)。要するに、子機1は、火災報レベル(=第1レベル)を基準に第1レベルと第2レベルとで送信電圧の電圧値を切り替えるため、火災報状態において伝送信号を送信することが可能である。
この構成により、子機1は、火災が発生して火災報状態と判断すると、送信電圧の電圧値を火災報レベルに調節することにより、火災報を発生する。また、子機1は、連動報状態と判断すると、送信電圧の電圧値を連動報レベルに調節することにより、連動報を発生する。さらに、火災報状態においては、子機1は、送信電圧の電圧値を第1レベル(火災報レベル)と第2レベルとで交互に切り替えることにより、伝送信号を送信する。
なお、本実施形態では、子機1は伝送信号を用いた通信により、少なくとも記憶部17に記憶されている識別子を含むデータを親機2に送信する。そのため、親機2においては、子機1からの火災報を受けたあと、伝送信号の表す伝送データに含まれている識別子から、発報元の子機1を特定することができる。
また、本実施形態では、子機1は、火災報状態だけでなく、非発報状態においても伝送信号を送信可能に構成されている。非発報状態において伝送信号を送信する場合には、第2レベルは火災報レベルよりも高い電圧値であって、第1レベルは、その第2レベルよりもさらに高い電圧値となる(第1レベル>第2レベル>火災報レベル)。この場合、第1レベルは待機電圧と同じ電圧値であることが好ましい。これにより、送信回路14は、第1レベルの送信電圧を生成する必要がなく、第2レベルの送信電圧を生成するだけで、伝送信号を送信することが可能になる。
さらにまた、本実施形態では、子機1は、火災報状態および非発報状態だけでなく、連動報状態においても伝送信号を送信可能に構成されている。連動報状態において伝送信号を送信する場合には、第1レベルは連動報レベルと同じ電圧値であって、第2レベルは連動報レベルよりも低い電圧値となる(連動報レベル=第1レベル>第2レベル)。ただし、一対の電線51,52間の電圧が第2レベルになったときに、一対の電線51,52に接続されている子機1が動作を継続できるよう、この場合の第2レベルは、少なくとも子機1が動作可能な最低電圧以上に設定される。
このように、伝送信号を送信するための第1レベルおよび第2レベルの組み合わせは、火災報状態、非発報状態、および連動報状態のそれぞれについて個別に設定されている。つまり、制御部162は、送信電圧の電圧値を、第1レベルと、第2レベルとで交互に切り替えることにより伝送信号を送信する構成であればよく、第1レベルおよび第2レベルの組み合わせは複数通り設定されている。
また、本実施形態では、子機1は、図4に示すように、一対の電線51,52とダイオードブリッジ11との間に、発報表示用の発光ダイオード18と抵抗R3との直列回路を有している。これにより、一対の電線51,52から子機1に一定値以上の電流が流れ込むと、発光ダイオード18が発光する。子機1は、火災報状態および連動報状態において発光ダイオード18が発光することにより、自身が発報状態にあることを周囲に報知する。なお、図1では発光ダイオード18および抵抗R3の図示は省略されている。
<動作>
以下、本実施形態に係る自動火災報知システム100の動作について、図5および図6を参照して説明する。図5は、制御回路(判断部161および制御部162)16の動作を示すフローチャートである。図6は、横軸を時間軸、縦軸を電圧値として、一対の電線51,52間の電圧を表している。図6では、子機1が送信電圧の電圧値を切り替えることにより、一対の電線51,52間の電圧の電圧値を、待機電圧の電圧値V0からV1,V2,V3,V4,V5の5段階で段階的に引き下げ可能であると仮定する(V0>V1>V2>V3>V4>V5)。
まず、非発報時(平常時)において、親機2は印加部21から一対の電線51,52間に待機電圧を印加している。この状態では、一対の電線51,52間の電圧の電圧値は図5に示すように「V0」となる。
子機1は、判断部161が所定のサンプリング周期で定期的にセンサ値を読込み(図5のS1)、火災報状態か否かを判断する(S2)。火災報状態になければ(S2:No)、子機1は、非発報状態と判断し、判断部161でのセンサ値の読込み(S1)を繰り返し行う。非発報状態(火災報と連動報とのいずれも発生していない状態)においては、子機1は、基本的には待機電圧からの降圧を行わない。そのため、全ての子機1が非発報状態にあれば、一対の電線51,52間の電圧は、基本的には図6に示すように「V0」のままである。図6では、時刻t0〜t2の期間に全ての子機1が非発報状態である例を示している。
さらに、子機1は、非発報状態において、送信電圧の電圧値を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、送信回路14から伝送データを表す伝送信号を送信する機能を有している。ここでいう第1レベル、第2レベルは、いずれも子機1が非発報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベル、第2レベル、つまり「第1レベル>第2レベル>火災報レベル」となる値である。非発報状態において伝送信号を送信する場合には、子機1は、図5における処理S1の前、あるいは処理S1と処理S2との間に、伝送信号の送信処理を行う。
そのため、全ての子機1が非発報状態にあっても、いずれかの子機1が伝送信号を送信することで、図6に示すように一対の電線51,52間の電圧は、二値(第1レベルV0,第2レベルV1)間で交互に切り替わることになる。図6の例では、非発報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルは待機電圧と同値の「V0」であって、第2レベルは「V0」よりも低い値の「V1」である(第1レベル=V0、第2レベル=V1)。図6では、時刻t1〜t2の期間に、いずれかの子機1が伝送信号を送信することで、一対の電線51,52間の電圧値は、「V0」と「V1」とで切り替わる例を示している。
次に、いずれかの子機1において、読込んだセンサ値が所定の判断条件を満たすことにより火災報状態との判断が確定すると(図5のS2:Yes)、制御部162は、送信電圧の電圧値を火災報レベルに調節する(S3)。その後、子機1は、判断部161が所定のサンプリング周期で定期的にセンサ値を読込み(S4)、連動報状態か否かを判断する(S5)。連動報状態になければ(S5:No)、子機1は、送信電圧の電圧値を火災報レベルに維持しつつ(S3)、判断部161でのセンサ値の読込み(S4)を繰り返し行う。図6の例では、火災報レベルは「V2」である(火災報レベル=V2)。そのため、いずれかの子機1において判断結果が非発報状態から火災報状態に移行すると、図6に示すように一対の電線51,52間の電圧値は、「V0」から「V2」に低下する。図6では、時刻t2〜t4の期間にいずれかの子機1が火災報状態である例を示している。
さらに、子機1は、火災報状態において、送信電圧の電圧値を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、送信回路14から伝送データを表す伝送信号を送信する機能を有している。ここでいう第1レベル、第2レベルは、いずれも子機1が火災報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベル、第2レベル、つまり「火災報レベル=第1レベル>第2レベル>連動報レベル」となる値である。火災報状態において伝送信号を送信する場合には、子機1は、図5における処理S4の前、あるいは処理S4と処理S5との間に、伝送信号の送信処理を行う。
そのため、全ての子機1が火災報状態にあっても、いずれかの子機1が伝送信号を送信することで、図6に示すように一対の電線51,52間の電圧は、二値(第1レベルV2,第2レベルV3)間で交互に切り替わることになる。図6の例では、火災報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルは火災報レベルと同値の「V2」であって、第2レベルは「V2」よりも低い値の「V3」である(第1レベル=V2、第2レベル=V3)。図6では、時刻t3〜t4の期間に、いずれかの子機1が伝送信号を送信することで、一対の電線51,52間の電圧値は、「V2」と「V3」とで切り替わる例を示している。
次に、いずれかの子機1において、読込んだセンサ値が所定の判断条件を満たすことにより連動報状態との判断が確定すると(図5のS5:Yes)、制御部162は、送信電圧の電圧値を連動報レベルに調節する(S6)。図6の例では、連動報レベルは「V4」である(連動報レベル=V4)。そのため、いずれかの子機1において判断結果が火災報状態から連動報状態に移行すると、図6に示すように一対の電線51,52間の電圧値は、「V2」から「V4」に低下する。図6では、時刻t4以降の期間にいずれかの子機1が連動報状態である例を示している。
さらに、子機1は、連動報状態において、送信電圧の電圧値を第1レベルと第2レベルとで交互に切り替えることにより、送信回路14から伝送データを表す伝送信号を送信する機能を有している。ここでいう第1レベル、第2レベルは、いずれも子機1が連動報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベル、第2レベル、つまり「連動報レベル=第1レベル>第2レベル」となる値である。火災報状態において伝送信号を送信する場合には、子機1は、図5における処理S6の後に、伝送信号の送信処理を行う。
そのため、全ての子機1が連動報状態にあっても、いずれかの子機1が伝送信号を送信することで、図6に示すように一対の電線51,52間の電圧は、二値(第1レベルV4,第2レベルV5)間で交互に切り替わることになる。図6の例では、火災報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルは連動報レベルと同値の「V4」であって、第2レベルは「V4」よりも低い値の「V5」である(第1レベル=V4、第2レベル=V5)。図6では、時刻t5〜t6の期間に、いずれかの子機1が伝送信号を送信することで、一対の電線51,52間の電圧値は、「V4」と「V5」とで切り替わる例を示している。
なお、本実施形態では一例として、待機電圧の電圧値V0が22〜24〔V〕、非発報状態での第2レベルV1が17〜21〔V〕、火災報レベルV2が14〜16〔V〕、火災報状態での第2レベルV3が11〜13〔V〕であると仮定する。また、連動報レベルV4が8〜10〔V〕、連動報状態での第2レベルV5が5〜7〔V〕であると仮定する。ただし、これらの具体的な数値は実施形態を限定する趣旨ではなく、適宜変更可能である。すなわち、本実施形態では、送信電圧の電圧値は所定の許容範囲内でばらつきが許容されている。親機2においては、一対の電線51,52間の電圧の電圧値が各許容範囲内にあれば、そのときの子機1の動作状態が火災報状態であるか、連動報状態であるかを区別可能である。
また、本実施形態では、非発報状態、火災報状態、および連動報状態のいずれにおいても、子機1が伝送信号を送信可能な構成を例示したが、この構成は一例に過ぎず、伝送信号を送信する機能は子機1に必須の機能ではない。さらに、子機1は、伝送信号を送信する機能を有する場合でも、非発報状態、火災報状態、および連動報状態のうち1つあるいは2つの状態においてのみ伝送信号を送信可能であってもよい。
<効果>
以上説明した本実施形態の自動火災報知システム100の子機1によれば、制御部162が、判断部161の判断結果に応じて送信回路14を制御し送信電圧の電圧値を調節することによって、火災報および連動報を発生する。すなわち、子機1は、待機電圧からの降圧によって一対の電線51,52間の電圧を変化させており、変化後の一対の電線51,52間の電圧(送信電圧)の大きさ(電圧値)を、火災報レベルと連動報レベルとで切り替える。これにより、子機1は、火災報と連動報とを区別可能な電圧信号を送信する。
そのため、この子機1を用いた自動火災報知システム100においては、火災報用と連動報用とで回線を分けることなく、火災報と連動報とを親機2で区別することができる。したがって、本実施形態の自動火災報知システム100の子機1によれば、極力簡単な構成で、P型でありながらも他装置3との連動機能を付加できる、という利点がある。
また、本実施形態のように、上記連動報レベルは上記火災報レベルよりも低い電圧値であることが好ましい。この構成によれば、子機1は、まず火災報状態になると送信電圧の電圧値を低下させて火災報レベルに調節し、連動報状態になると送信電圧の電圧値をさらに低下させて連動報レベルに調節することができる。つまり、子機1は、非発報状態から火災報状態、さらに連動報状態への移行に伴い、送信電圧の電圧値を段階的に下げていくことで火災報、連動報を行うことができる。
また、本実施形態のように、制御部162は、送信電圧の電圧値を、第1レベルと、上記第1レベルよりも低い第2レベルとで交互に切り替えることにより、伝送データを表す伝送信号を送信するように構成されていることが好ましい。この構成によれば、子機1は、上述したように子機1単位で発報元を特定するための情報(識別子)や、自動試験のための情報などを親機2へ送信することができる。
また、この場合に、本実施形態のように、上記第2レベルは上記火災報レベルよりも高い電圧値であることが好ましい。ここでいう第2レベルは、非発報状態において伝送信号を送信する場合の第2レベルである。この構成によれば、非発報状態においては、子機1が伝送信号を送信する場合でも、送信回路14でドロップされる電圧が火災発報状態に比べて小さくなり、一対の電線51,52から子機1に引き込まれる電流も小さくなる。そのため、非発報状態における伝送信号の送信時の子機1での消費電流が抑制される、という利点がある。さらに、一対の電線51,52から子機1に引き込まれる電流が小さくなることで、非発報状態において、伝送信号の送信時に、誤って発報表示用の発光ダイオード18(図4参照)が点灯することが防止される、という利点もある。
また、本実施形態のように、上記第1レベルは上記火災報レベルと同じ電圧値であって、上記第2レベルは、上記火災報レベルよりも低く、上記連動報レベルよりも高い電圧値であることが好ましい。ここでいう第1レベルおよび第2レベルは、火災報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルおよび第2レベルである。この構成によれば、子機1は、伝送信号の送信時、火災報レベル(=第1レベル)を基準に第1レベルと第2レベルとで送信電圧の電圧値を切り替えるため、火災報状態において伝送信号を送信することが可能である。したがって、子機1は、火災報を発生後すぐに、たとえば子機1単位で発報元を特定するための情報(識別子)を親機2へ送信することができる。
また、本実施形態のように、上記第1レベルは上記連動報レベルと同じ電圧値であって、上記第2レベルは上記連動報レベルよりも低い電圧値であることが好ましい。ここでいう第1レベルおよび第2レベルは、連動報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルおよび第2レベルである。この構成によれば、伝送信号の送信時、連動報レベル(=第1レベル)を基準に第1レベルと第2レベルとで送信電圧の電圧値を切り替えるため、連動報状態において伝送信号を送信することが可能である。したがって、子機1は、連動報を発生後すぐに、たとえば子機1単位で発報元を特定するための情報(識別子)を親機2へ送信することができる。
また、本実施形態に係る自動火災報知システム100は、上記いずれかの子機1と、一対の電線51,52間に上記待機電圧を印加する親機2とを備えている。親機2は、一対の電線51,52間の電圧値を検出するように構成されている。この構成によれば、親機2では、子機1で生成された送信電圧の電圧値を読み取って、子機1からの電圧信号(電圧変化)を受信し、子機1からの火災報や連動報を電圧信号として受信することができる。したがって、この自動火災報知システム100によれば、極力簡単な構成で、P型でありながらも他装置3との連動機能を付加できる、という利点がある。
(実施形態2)
本実施形態に係る自動火災報知システム100の子機1は、制御部162の動作期間が伝送期間と報知期間とに時分割されている点で、実施形態1の自動火災報知システム100の子機1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態においては、制御部162は、伝送信号の送信を伝送期間に行い、火災報または連動報の発生を報知期間に行うように構成されている。言い換えれば、制御部162は、伝送期間には火災報や連動報を発生することはなく、報知期間には伝送信号を送信することはない。
具体的に説明すると、本実施形態では、親機2は、定期的に同期信号を発生している。子機1は、親機2からの同期信号を受信すると、同期信号に同期して一定期間だけ動作する。ここで、制御部162の動作期間は、図7に示すように、同期信号を受信する受信期間T1と、伝送期間T2と、報知期間T3とに時分割されている。
そのため、たとえばいずれかの子機1が火災報状態にあるときに、この子機1が伝送信号を送信する期間(伝送期間T2)と、連動報を発生する期間(報知期間T3)とが明確に区別される。したがって、親機2は、子機1からの伝送信号と、火災報や連動報などの発報とを確実に区別することができる。
以上説明した本実施形態の自動火災報知システム100の子機1によれば、制御部162の動作期間が伝送期間と報知期間とに分かれているので、伝送信号と、火災報や連動報などの発報との干渉を回避できる、という利点がある。したがって、火災報レベルや連動報レベルについては、伝送信号との干渉を考慮することなく、比較的自由に値を設定可能になる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態に係る自動火災報知システム100の子機1は、非発報状態において伝送信号を送信する場合の第2レベルが火災報レベルと同じ電圧値である点で、実施形態1の自動火災報知システム100の子機1と相違する。なお、本実施形態における第1レベルおよび第2レベルは、いずれも非発報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルおよび第2レベルを意味する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、子機1は、非発報状態において、送信電圧の電圧値を第1レベルと第2レベル(=火災報レベル)とで交互に切り替えることにより、伝送信号を送信する。この場合、第1レベルは待機電圧と同じ電圧値であることが好ましい。図6の例であれば、非発報状態に伝送信号を送信する期間t1〜t2において、子機1は、送信電圧を「V0」と「V2」とで交互に切り替えることにより、伝送信号を送信することができる。
本実施形態の構成によれば、子機1は、非発報状態において、伝送回路143を用いなくても、火災報回路141を用いることで第2レベルの送信電圧を生成できる。つまり、非発報状態においては、送信回路14は、火災報の発生時と伝送信号の送信時とで、同値(火災報レベル=第2レベル)の送信電圧を生成することになるので、火災報回路141と伝送回路143とを1回路にまとめることができる。その結果、送信回路14の簡略化が可能である。とくに、第1レベルが待機電圧と同じ電圧値であれば、送信回路14は、第1レベルの送信電圧を生成する必要がないので、非発報状態において、1回路(火災報回路141)のみで、火災報の発生と伝送信号の送信とを行うことができる。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。なお、本実施形態で説明した構成は、実施形態2で説明した構成と組み合わせても適用可能である。
(実施形態4)
本実施形態に係る自動火災報知システム100の子機1は、火災報状態において伝送信号を送信する場合の第2レベルが連動報レベルと同じ電圧値である点で、実施形態1の自動火災報知システム100の子機1と相違する。なお、本実施形態における第1レベルおよび第2レベルは、いずれも火災報状態において伝送信号を送信する場合の第1レベルおよび第2レベルを意味する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、本実施形態では、子機1は、火災報状態において、送信電圧の電圧値を第1レベルと第2レベル(=連動報レベル)とで交互に切り替えることにより、伝送信号を送信する。さらに、連動報レベルは火災報レベルよりも低い電圧値であって、第1レベルは火災報レベルと同じ電圧値であることが好ましい。図6の例であれば、火災報状態に伝送信号を送信する期間t3〜t4において、子機1は、送信電圧を「V2」と「V4」とで交互に切り替えることにより、伝送信号を送信することができる。
本実施形態の構成によれば、子機1は、火災報状態において、伝送回路143を用いなくても、連動報回路142を用いることで第2レベルの送信電圧を生成できる。つまり、火災報状態においては、送信回路14は、連動報の発生時と伝送信号の送信時とで、同値(連動報レベル=第2レベル)の送信電圧を生成することになるので、連動報回路142と伝送回路143とを1回路にまとめることができる。その結果、送信回路14の簡略化が可能である。
さらに、第1レベルが火災報レベルと同じ電圧値であれば、子機1は、火災報状態において、伝送回路143を用いなくても、火災報回路141を用いることで第1レベルの送信電圧を生成できる。つまり、送信回路14は、火災報の発生時と伝送信号の送信時とで、同値(火災報レベル=第1レベル)の送信電圧を生成することになるので、第1レベルの送信電圧を生成するための回路が不要になる。その結果、送信回路14は、火災報回路141と連動報回路142とがあれば、伝送回路143がなくても火災報状態において伝送信号の送信が可能になる。送信回路14のさらなる簡略化が可能である。
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。なお、本実施形態で説明した構成は、実施形態2および実施形態3で説明した構成と組み合わせても適用可能である。