(実施形態1)
本実施形態の自動火災報知システムA1について図を参照して説明する。
自動火災報知システムA1は、図1に示すように、複数の子機B1〜B16(本実施形態では16台)と、1台の親機14とを備え、子機B1〜B16と親機14とは各々、一対の電線51,52に電気的に接続されている。なお、複数の子機B1〜B16が接続される一対の電線51,52の各々は、1本の電線で構成されてもよいし、電気的に接続された複数本の電線で構成されてもよい。例えば子機B2は、送り配線により子機B1を介して印加部11と電気的に接続されていてもよい。
以下の説明では、16台の子機B1〜B16の各々を区別しないで説明する場合には「子機1」として説明する。
子機1は例えば、熱感知器、煙感知器、炎感知器などの装置からなり、火災発生を検知した場合に火災発生を報知する信号(火災報)を一対の電線51,52に送信する。なお、子機1は、火災の発生を検知する感知器に限らず、発信機でもよい。ここで言う発信機は押しボタンスイッチを有し、例えば火災を発見した人が押しボタンスイッチを押すことにより一対の電線51,52に火災報を送信する装置である。
親機14(例えば受信機)は、一対の電線51,52に送信された信号を受信し、その信号が火災報の場合に火災発生の報知を行う。親機14は、例えば自動火災報知システムA1が設置された建物の管理室などに配置される。
以下の説明では、集合住宅(例えばマンション)に用いられる自動火災報知システムA1について説明するが、自動火災報知システムA1は、集合住宅に限らず、例えば商業施設、病院、ホテル、雑居ビルなどの適宜の建物で使用できる。
自動火災報知システムA1は、図1に示すように、1棟の集合住宅60に対して、複数の子機1(本実施形態では16台)と、1台の親機14とを備えている。
本実施形態の自動火災報知システムA1では、集合住宅60の1〜4階の各階(フロア)に(2本で1組の)一対の電線51,52が配線されている。つまり本実施形態の自動火災報知システムA1は、一対の電線51,52を4組備えている。
本実施形態の自動火災報知システムA1には、各組の一対の電線51,52に対して最大で40〜80台の子機1が接続可能である。さらに、1台の親機14には、一対の電線51,52は最大で50〜200回線(50〜200組)接続可能である。例えば各組の一対の電線51,52に最大で40台の子機1が接続可能で、1台の親機14に最大で50回線の一対の電線51,52が接続可能である場合、子機1は、1台の親機14に対して最大で2000(=40×50)台まで接続可能である。なお、これらの数値は一例であって、これらの数値に限定する趣旨ではない。
一対の電線51,52には各々、親機14が接続されている端部と反対側の端部に終端抵抗80が接続されている。親機14は、一対の電線51,52間に流れる電流の電流値を計測することで、一対の電線51,52の断線を検知することが可能である。なお、終端抵抗80は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。
親機14には、他装置70が電気的に接続されていて、火災信号および連動信号を択一的に選択して送信する。親機14は、子機1から火災報を受信すると、他装置70に火災信号を送信する。また親機14は、他装置70を連動させるための通知(連動報)を子機1から受信すると、他装置70に連動信号を送信する。他装置70は例えば、防火扉や排煙設備などの防排煙設備、非常用放送設備、外部移報装置、およびスプリンクラーなどの消火設備である。外部移報装置とは例えば、自動火災報知システムA1が設置された施設の外部の関係者、消防機関、警備会社などへ通報する装置である。他装置70は、親機14からの火災信号および連動信号に応じて動作するように構成されている。そのため、他装置70は、火災信号の受信時に非常用放送設備にて音響または音声により火災の発生を報知し、連動信号の受信時に防排煙設備や防火扉を動作させることができる。なお、他装置70の動作は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
ところで、自動火災報知システムとして、P型(Proprietary-type)の自動火災報知システムが知られている。P型の自動火災報知システムは、子機が一対の電線を電気的に短絡することで親機に火災発生を通知する。
本実施形態の自動火災報知システムA1では、従来のP型の自動火災報知システムで使用する配線(2本1組の電線からなる一対の電線)と同様の配線が使用される。そのため、従来のP型の自動火災報知システムが使用されている集合住宅などに本実施形態の自動火災報知システムA1を導入する際に、一対の電線を新たに敷設することなく、従来の一対の電線を利用可能である。従来のP型の自動火災報知システムの親機を親機14に交換し、従来のP型の自動火災報知システムの子機を子機1に交換することで自動火災報知システムA1を実現することも可能である。
親機14は、時分割方式の通信用信号を一対の電線51,52に周期的に送信する。
通信用信号は、1フレームごとに時間軸方向において複数の区間に分かれた形式の電圧波形からなる。通信用信号は、同期帯と、送信帯と、返信帯の3つの区間(期間)からなる時分割信号である。返信帯は、さらに16個のタイムスロット(区間)に分割されていて、16台の子機B1〜B16の各々に割り当てられる。
親機14は、一対の電線51,52の電圧を周期的に変化させることで、同期帯において同期パルスを周期的に送信する。親機14は、周期的に同期パルスを送信し、連続する2回の同期パルスの間に、送信帯と、16個のタイムスロットとを設定する。親機14は、送信帯において、子機1に対して要求データを送信する。
子機1は、同期パルスを受信すると、16個のタイムスロットのうち固有の識別情報に基づいて定まるタイムスロットで、要求データに応じた応答信号を送信する。
次に、親機14および子機1の構成について図2を参照して説明する。なお、図2では、1台の子機1が一対の電線51,52を介して1台の親機14に接続されている状態を示し、他の複数の子機1および他の一対の電線51,52の図示を省略している。
親機14と子機1とは各々、所望のデータを含む信号を伝送信号として一対の電線51,52に送信する機能を有する。伝送信号は、親機14の印加部11から子機1に供給される電圧に重畳して送信される。なお、親機14と子機1とが伝送信号を送受信する機能は必須の構成ではなく、省略することも可能である。
親機14と子機1とは各々、一対の電線51,52に電気的に接続されて一対の電線51,52に信号を送信する。一対の電線51,52に送信される信号は例えば、一対の電線51,52間の電圧の変化や電流の変化に基づく信号である。本実施形態では、親機14と子機1とは各々、一対の電線51,52に流れる電流の電流値を変化させて一対の電線51,52に信号を送信するが、一対の電線51,52間の電圧を変化させて一対の電線51,52に信号を送信してもよい。
親機14は、印加部11と、(親機側)電圧検出部12と、識別部13とを備える。本実施形態の親機14はさらに、一対の電線51,52に信号を送信する送信部147と、(親機側)制御部141と、表示部143と、操作部144と、連動部142と、予備電源146とを備えている。
印加部11は、一対の電線51,52間に24Vの直流電圧を印加する。印加部11は、一対の電線51,52に接続されている子機1に動作用の電力を供給する。なお、印加部11が一対の電線51,52に印加する電圧は24Vの直流電圧に限定される趣旨ではない。
一対の電線51,52のうち高電位側の電線(本実施形態では電線51)と印加部11との間には抵抗145が接続されている。抵抗145は、一対の電線51,52に送信された電流信号を電圧信号に変換する第1の機能と、一対の電線51,52間が短絡したときに一対の電線51,52を流れる電流を制限する第2の機能との2つの機能を有している。つまり抵抗145は、電流−電圧変換素子として第1の機能と、電流制限素子としての第2の機能とを兼ね備えている。ここでは一例として、抵抗145の抵抗値は400Ωあるいは600Ωとするが、この値に限定する趣旨ではない。
電圧検出部12は、一対の電線51,52間の電圧値V5を検出する。電圧検出部12は、電圧値V5を、識別部13に入力可能な範囲の電圧レベルに変換して、識別部13に出力する。電圧検出部12の動作は、制御部141によって制御される。
識別部13は、子機1から一対の電線51,52に送信された信号を、電圧検出部12の検出結果に基づいて識別する。識別部13は、電圧検出部12からの信号に基づいて、一対の電線51,52に送信された信号が火災報か、連動報か、伝送信号かを識別する。具体的に言うと、連動報が送信されている場合の電圧値V5は、火災報が送信されている場合の電圧値V5よりも低くなる。識別部13は、電圧値V5に基づいて、子機1から送信された信号が、連動報か伝送信号かを識別する。なお、一対の電線51,52に送信される信号の詳細な説明は後述する。
送信部147および電圧検出部12は、抵抗145の低電位側に接続されている電線51と電線52との間に電気的に接続されている。
送信部147は、一対の電線51,52間の電圧値V5を変化させて、一対の電線51,52に信号を送信する。具体的に言うと、送信部147は、印加部11から抵抗145に流れる電流を引き込む機能と、その電流の引き込みを停止する機能とを有する。子機1が一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと抵抗145を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧が変化する。送信部147の動作は、送信制御部148によって制御される。
送信制御部148は、送信部147に一対の電線51,52間の電圧を変化させて所望のデータを含む信号を送信させる。親機14の識別部13は、電圧検出部12の検出結果に基づいて、一対の電線51,52に送信された伝送信号に含まれるデータを受信する。
制御部141は、送信部147と電気的に接続されて送信部147を制御する。制御部141は、例えばマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。本実施形態の制御部141は、メモリに記憶された通信制御用のプログラムを実行することにより、識別部13を実現している。なお、制御部141が実行するプログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネットのような電気通信回線を通して提供されてもよい。
連動部142は、他装置70(図1参照)を連動させる信号を出力する。連動部142の動作は、制御部141にて制御される。例えば識別部13が火災報を識別すると、制御部141は、火災報に応じて連動部142から他装置70に火災信号を出力させる。識別部13が連動報を識別すると、制御部141は、連動報に応じて連動部142から他装置70に連動信号を出力させる。
予備電源146は、例えば蓄電池などで構成されている。予備電源146は、停電時でも一定の時間、自動火災報知システムA1を動作させる容量の電力を有するように構成されている。親機14は、通常は商用電源や自家発電設備などから供給される電力で動作するが、停電時には予備電源146の電力で動作するように構成されている。
表示部143は、例えばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどを備えている。表示部143の動作は制御部141によって制御される。制御部141は、一対の電線51,52から受信した信号の内容に応じて表示部143の表示内容を変えさせる。表示部143は例えば、火災の発生、火災の発生階(フロア)などを表示する。
操作部144は、例えば押しボタンスイッチや、タッチパネル方式のディスプレイを備えている。操作部144で操作された内容に応じて、制御部141は、あらかじめ定められた制御動作を行う。操作部144は例えば、火災報知動作の停止、子機の異常検知動作の停止などを制御部141に行わせるように構成されている。
上記の他にも、親機14は、警報音発生部を有していてもよい。警報音発生部は例えば、スピーカーなどの音を発生させる装置を備えている。警報音発生部の動作は、例えば制御部141により制御され、一対の電線51,52から受信したデータの内容に応じて、警報音を鳴らしたり音声案内を再生したりする。
次に、子機1の構成について図2、図3、図4を参照して説明する。
子機1は、送信回路101と、電圧検出部3と、制御部4とを備える。本実施形態の子機1はさらに、受信部107と、伝送送信回路23と、記憶部103と、報知部104と、ダイオードブリッジ106と、検知部120と、電源回路105とを備える。
伝送送信回路23は、例えば印加部11から供給される電圧に伝送信号を重畳して送信する。伝送信号は、例えばベースバンド伝送方式の信号である。
電圧検出部3は、一対の電線51,52間の電圧値V5を検出する。電圧検出部3は、電圧値V5に応じて変化する電圧レベルの信号を制御部4に出力する。
記憶部103は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)で構成されている。記憶部103は、電圧値V5に対する閾値(後述する基準電圧値V1)を記憶する。また、記憶部103は、制御部4の要求に応じて閾値の情報を出力する。なお、記憶部103はROM(Read-Only Memory)などの書き換えできない記録媒体で構成されていてもよい。
記憶部103は、固有の識別情報(例えばアドレス)を記憶する。固有の識別情報とは、複数ある子機1の各々を識別するための情報であり、重複しない情報である。
また、記憶部103には、制御部4が動作状態(火災を報知する火災報状態、火災の報知に加えて他装置70を連動させる連動報状態)を判断するための判断条件が記憶されている。判断条件は、たとえば検知部120の出力について設定された閾値や、サンプリング回数などである。
ダイオードブリッジ106は、一対の電線51,52が電気的に接続される一対の入力端子と、一対の出力端子とを備える。ダイオードブリッジ106の出力端子には、電源回路105、送信回路101、電圧検出部3が各々、電気的に接続されている。
電源回路105は、一対の電線51,52から供給される電力で充電されるコンデンサを有する。電源回路105は、送信回路101、電圧検出部3、制御部4、記憶部103、検知部120の各機能を実現させるために必要な出力を供給する。電源回路105は、一対の電線51,52を流れる電流が増加し一対の電線51,52間の電圧が低下した際に、コンデンサに蓄えた電力を、子機1の各回路に供給する。なお、電源回路105は、一対の電線51,52間の電圧が変動しても子機1が電力不足にならないように構成されていればよく、コンデンサを有していない適宜の構成であってもよい。
検知部120は、例えば煙の濃度の変化、温度の変化、一酸化炭素などのガス濃度の変化を検出するセンサで構成される。本実施形態の検知部120は、煙の発生や煙の濃度の変化を検出する煙検出部121と、温度の変化を検出する熱検出部122とを有する。検知部120は、煙検出部121および熱検出部122の検出結果に基づいて火災の発生を検知すると、制御部4に検知信号を送信する。煙検出部121および熱検出部122の動作は、制御部4によって制御される。
報知部104は、例えばブザーやLEDなどを有し、周囲に火災の発生を報知するように構成されている。報知部104の動作は制御部4によって制御される。
受信部107は、親機14の送信部147から送信された伝送信号を受信して受信結果を制御部4に出力する。
送信回路101は、一対の電線51,52に電気的に接続される。送信回路101は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで信号を送信する。送信回路101は、一対の電線51,52からの電流の引き込み量を変えることにより、一対の電線51,52を流れる電流を変化させて信号を送信する。
送信回路101は、(第1)送信回路21を有する。本実施形態の送信回路101はさらに(第2)送信回路22を有する。送信回路21は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで火災報(火災の発生を報知する信号)を送信する。送信回路22は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで連動報(他装置70を連動させる信号)を送信する。送信回路21,22はそれぞれ、一対の電線51,52に流れる電流を引き込む機能と、電流の引き込みを停止する機能とを有する。なお、送信回路21,22の詳細な構成については後述する。
制御部4は、送信回路101を制御する。制御部4は、例えばマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。なお、プログラムは、予めメモリに書き込まれていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネットのような電気通信回線を通して提供されてもよい。
制御部4は、送信回路21,22と、伝送送信回路23と、受信部107と、電圧検出部3と、検知部120と、記憶部103と、報知部104とに各々電気的に接続されている。制御部4は、送信回路21,22,23と、受信部107と、電圧検出部3と、検知部120と、報知部104との動作を個別に制御する。なお、制御部4の詳細な動作については後述する。
制御部4は、図3に示すように、送信回路21,22と、伝送送信回路23と、報知部104と、電圧検出部3と、煙検出部121と、熱検出部122との動作を個別に制御する。なお、本実施形態では、1個の制御部4が、送信回路21,22と、伝送送信回路23と、報知部104と、電圧検出部3と、煙検出部121と、熱検出部122との動作を制御しているが、制御部4の数を1個に限定する趣旨ではない。複数の制御部により、送信回路21,22と、伝送送信回路23と、報知部104と、電圧検出部3と、煙検出部121と、熱検出部122とが個別に制御されていてもよい。そして制御部4が、その複数の制御部の各々を制御するように構成されていてもよい。
制御部4は、信号を出力するGPO端子41〜43,49,402と、信号が入力されるGPI端子401と、信号の入力と出力とを切り替えて使用するGPIO端子45,48と、アナログ信号が入力されるアナログ入力端子44,46,47とを有する。
制御部4は、GPI端子401に入力された受信部107の受信結果から、受信結果に含まれるデータを取得する。
制御部4は、GPO端子49から制御信号を出力して、電圧検出部3の動作を制御する。
制御部4は、GPO端子41から制御信号を出力して、送信回路21の信号送信動作を制御する。制御部4は、GPO端子42から制御信号を出力して、送信回路22の信号送信動作を制御する。
制御部4は、GPO端子402から制御信号を出力して、伝送送信回路23の信号送信動作を制御する。
制御部4は、GPO端子43から制御信号を出力して、報知部104の報知動作を制御する。
アナログ入力端子44には、電圧検出部3の検出結果が電圧信号として入力される。
アナログ入力端子47には、煙検出部121の検知値が入力される。例えば、煙の濃度に応じて変化する電圧信号が入力される。
アナログ入力端子46には、熱検出部122の検知値が入力される。例えば、熱検出部122の周囲の温度に応じて変化する電圧信号が入力される。
制御部4は、GPIO端子48を介して煙検出部121から煙の濃度に関する情報を取得する。記憶部103が書き換え可能な記録媒体で構成されている場合に、制御部4は、煙検出部121から取得した情報を、GPIO端子45から記憶部103に出力する。制御部4は、煙検出部121から取得した情報や、記憶部103から取得した情報に基づいて、例えば煙検出部121に火災の発生を検知させる閾値を変更する信号をGPIO端子48から出力する。なお、制御部4は、煙検出部121について、火災の発生を検知させる閾値を変更するように構成されていなくてもよい。
制御部4は、検知部120の検出値(煙検出部121および熱検出部122の各々の検出値)を定期的に読込み、記憶部103内の判断条件に照らすことによって、火災の発生状態を判断する。例えば、制御部4は、火災報状態と、連動報状態と、火災報状態でもなく連動報状態でもない非発報状態(平常状態)との3状態から、現在の状態を判断する。本実施形態では、判断条件の一例として、検出値が第1の閾値を超える状態が所定の第1のサンプリング回数(たとえば3回)連続した場合に、制御部4が火災報状態と判断する。制御部4は、火災報状態と判断すると、送信回路21から火災報を送信させる。
制御部4は、火災報状態と判断した時点から連動報状態であるか否かを判断する。検知部120の検出値が第2の閾値(>第1の閾値)を超える状態が所定の第2のサンプリング回数(たとえば3回)連続した場合に、制御部4が連動報状態と判断する。制御部4は、連動報状態と判断すると、送信回路22から連動報を送信させる。
なお、上記した制御部4の判断動作(検知部120の検出値に対して定めた判断条件)は一例に過ぎず、適宜変更可能である。また、制御部4で判断される状態は、3状態(火災報状態、連動報状態、平常状態)に限らず、火災報状態および連動報状態の2状態のみであってもよいし、また、4状態以上であってもよい。
ここで、送信回路21,22の詳細な構成について図4を参照して説明する。
送信回路21は、図4に示すように、スイッチング素子81と、抵抗202と、LED203とを備えている。
LED203は、発光時に子機1の外部に光を放射するように配置される。
スイッチング素子81はnpn型のトランジスタからなる。スイッチング素子81のコレクタ端子は、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子に電気的に接続されている。スイッチング素子81のエミッタ端子は、抵抗202の一端が電気的に接続されている。抵抗202の他端にはLED203のアノード端子が接続されている。LED203のカソード端子は、回路グランド(ダイオードブリッジ106の低電位側の出力端子)に電気的に接続されている。スイッチング素子81のベース端子は、制御部4に電気的に接続されている。送信回路21は、制御部4からベース端子に入力される制御信号に応じて、一対の電線51,52から抵抗202およびLED203に流す電流の電流値を変化させる。すなわち送信回路21は、制御部4からの制御信号に応じて、一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を変化させて火災報を送信する。
送信回路21は一対の電線51,52を流れる電流を引き込んで、電圧値V5を火災報レベルの電圧値にする。火災報レベルの電圧値は、複数の子機1の何れも信号を送信していない状態における一対の電線51,52間の電圧値よりも低い基準電圧値V1と、基準電圧値V1よりもさらに低い電圧値V2との間の電圧値である。つまり、火災報レベルの電圧値とは、一対の電線51,52間の電圧値V5が、基準電圧値V1未満かつ電圧値V2以上となる電圧値である。以下、電圧値V5が火災報レベルの電圧値になることを、「火災報が送信される」と表記する。本実施形態の送信回路21は、火災報の送信後は、制御部4が火災報の送信を停止させるか、または制御部4がリセットされるまで、電圧値V5を火災報レベルの電圧値に維持する。
送信回路21は、火災報の送信状態になると、親機14によって制御部4がリセットされるか、または制御部4が火災報の送信を停止する動作を行うまで、火災報の送信状態を維持する。
送信回路21が一対の電線51,52から電流を引き込むと(つまり信号を送信すると)、LED203が発光し、子機1の外部に光を放射する。例えば子機1が、送信回路21を動作させて火災報を一対の電線51,52に送信する場合、複数ある子機1のうちどの子機1が火災報を送信しているかを目視で判断することができる。
送信回路22は、スイッチング素子82と、抵抗212とを備えている。スイッチング素子82はnpn型のトランジスタからなる。スイッチング素子82のコレクタ端子は、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子に電気的に接続されている。スイッチング素子82のエミッタ端子は、抵抗212の一端が電気的に接続されている。抵抗202の他端は回路グランドに電気的に接続されている。スイッチング素子82のベース端子は、制御部4に電気的に接続されている。送信回路22は、制御部4からベース端子に入力される制御信号に応じて、一対の電線51,52から抵抗212に流す電流の電流値を変化させる。
本実施形態の抵抗212は、送信回路21の抵抗202よりも抵抗値が小さく定められている。そのため、送信回路22は、制御部4からの制御信号に応じて、送信回路21よりも多くの電流を一対の電線51,52から引き込むことになり、電圧値V5は、火災報の送信時の電圧値よりも低くなる。つまり送信回路22は、電圧値V5を、火災報レベルの電圧値よりも低い連動報レベルの電圧値にして、連動報を送信する。連動報レベルの電圧値とは、一対の電線51,52間の電圧値が、電圧値V2未満となる電圧値である。以下、電圧値V5が連動報レベルの電圧値になることを、「連動報が送信される」と表記する。本実施形態の送信回路22は、連動報の送信後は、制御部4が連動報の送信を停止させるか、または制御部4がリセットされるまで、電圧値V5を連動報レベルの電圧値に維持する。
送信回路21および送信回路22の動作状態は、個別に制御部4に制御される。つまり制御部4は、火災報のみの送信と、連動報のみの送信とを択一的に選択することができる。また制御部4は、火災報の送信後に連動報を送信させることも可能である。
なお、伝送送信回路23は、送信回路22と同様の構成であるため説明を省略する。
ここで、スイッチング素子81,82は、例えばサイリスタのような自己保持型のスイッチング素子でもよい。自己保持型のスイッチング素子は、オンになると、制御部4から信号が入力されなくても一対の電線51,52に流れる電流の引き込み状態を維持することができる。例えば、制御部4が動作を停止しても、自己保持型のスイッチング素子は電流の引き込み状態を維持するので、火災報や連動報の送信状態が維持される。
また、スイッチング素子81,82は、npn型のトランジスタに限定されず、一対の電線51,52から電流を引き込む量を制御部4によって制御される適宜の半導体素子でよい。スイッチング素子81,82は、例えばpnp型のトランジスタや、電界効果トランジスタでもよい。
電圧検出部3は、図5に示すように、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子と電気的に接続され、電圧値V5を検出する。また電圧検出部3は、制御部4のアナログ入力端子44と、制御部4のGPO端子49とに電気的に接続される。電圧検出部3は、GPO端子49からハイレベルの電圧信号が入力されると電圧値V5の検出動作を行い、検出結果をアナログ入力端子44に出力する。
電圧検出部3は、npn型のトランジスタからなるスイッチング素子33と、pnp型のトランジスタからなるスイッチング素子35と、抵抗31,32,34,36,37と、コンデンサ38を有している。スイッチング素子35のエミッタ端子は、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子と接続される。スイッチング素子35のベース端子は、抵抗34を介してスイッチング素子33のコレクタ端子に接続される。
スイッチング素子33のベース端子は、抵抗31を介してGPO端子49に接続される。スイッチング素子33のエミッタ端子は回路グランド(ダイオードブリッジ106の低電位側の出力端子)に電気的に接続されている。スイッチング素子33のベース端子は、抵抗32を介して、回路グランドに電気的に接続されている。スイッチング素子35のコレクタ端子には、抵抗36,37の直列回路を介して回路グランドに接続されている。抵抗36と抵抗37との接続点にはアナログ入力端子44が接続されている。また、抵抗36と抵抗37との接続点にはコンデンサ38の一端が接続されていて、コンデンサ38の他端は回路グランドに接続されている。
なお、スイッチング素子33,35は、npn型やpnp型のトランジスタの他にも、電界効果トランジスタなどの適宜のスイッチング素子でもよい。
GPO端子49から抵抗31にハイレベルの電圧信号が印加されると、抵抗32の両端間の電圧がスイッチング素子33のベース端子に印加され、スイッチング素子33,35がオンになる。
スイッチング素子35のエミッタ−コレクタ間が導通状態になると、一対の電線51,52間の電圧が抵抗36,37に印加され、アナログ入力端子44には抵抗37の両端間の電圧が入力される。つまりアナログ入力端子44には、電圧値V5の増減に応じて増減する電圧が入力される。
コンデンサ38は、アナログ入力端子44に交流成分からなるノイズが入力されることを抑制するために設けられている。他にも、例えばアナログ入力端子44に入力される電圧の上限値を定めるために、ツェナーダイードをコンデンサ38と並列に接続してもよい。例えば、ツェナーダイオードのアノード端子を回路グランドに接続し、ツェナーダイオードのカソード端子をアナログ入力端子44に接続することにより、アナログ入力端子44に過電圧が入力されることを抑制できる。
次に、制御部4が、電圧値V5に基づいて送信回路21,22を制御する動作について、図6、図7、図8を参照して説明する。
制御部4は、電圧検出部3の検出結果に基づいて、第1状態と第2状態とを択一的に選択する。第1状態では、制御部4は、検知部120の検知結果に応じて送信回路21に火災報を送信させる。第2状態では、制御部4は、検知部120の検知結果に関わらず、送信回路21に火災報を送信させない。なお、本実施形態では、制御部4は、第1状態および第2状態の何れであっても、検知部120の検知結果に応じて送信回路22に連動報を送信させる。言い換えると、本実施形態の制御部4は、電圧検出部3の検出結果に基づいて火災報を送信するか否かを制御する。
ここで、本実施形態の制御部4の動作の効果を説明するために、第2状態を選択しない制御部4を有する2台の子機B1,B2がそれぞれ、火災報を送信する例を比較例1として説明する。また、第2状態を選択しない制御部4を有する2台の子機B1,B2が、ほぼ同時に火災報を送信する例を比較例2として説明する。
比較例1では、図6に示すように、子機B1が、区間t1で火災報を送信し、子機B2が区間t2で火災報を送信する。区間t1とは、子機B1に割り当てられたタイムスロットであり、子機B1が信号の送信を開始する区間である。区間t2とは、子機B2に割り当てられたタイムスロットであり、子機B2が信号の送信を開始する区間である。区間t2は区間t1の次のタイムスロットである。なお、タイムスロットは子機1の台数分だけ用意されている(本実施形態では16区間)が、区間t2以降の図示を省略する。
全ての子機1が一対の電線51,52に信号を送信していない区間を区間t0とする。このときの電圧値V5は、基準電圧値V1よりも高い電圧値となっている。
子機B1が火災の発生を検知し、区間t1で火災報を送信する。子機B1の送信回路21が電流を引き込むことで、電圧値V5は、電圧値V2以上かつ基準電圧値V1未満となる。親機14の電圧検出部12が電圧値V5を検出し、識別部13が受信信号を火災報として識別すると、親機14は火災の発生を報知する動作を行う。このとき、子機B1は、区間t1が過ぎても火災報を送信し続ける。
次に、子機B2が火災の発生を検出し、区間t2で火災報を送信したとする。子機B2の送信回路21が一対の電線51,52から電流を引き込む。区間t2において、一対の電線51,52を流れる電流は区間t1よりもさらに増加するため、電圧値V5は区間t1の電圧値からさらに低下し、電圧値V5が電圧値V2を下回る可能性がある。もし電圧値V5が電圧値V2を下回った場合、親機14の識別部13が受信信号を連動報として識別する。つまり、2台の子機B1,B2が火災報を送信することにより、親機14は、火災報を連動報として識別する(誤検出する)可能性がある。
比較例2では、図7に示すように、子機B1が、区間t1で火災報を送信し、子機B2が区間t2で火災報を送信する。比較例1との違いは、区間t1と区間t2とが重なった区間t3が発生している点である。区間t3は、例えば制御部4に同期タイミングを与える素子の経年劣化などにより、各タイムスロットの開始タイミングと終了タイミングとがずれた場合に発生する。なお、区間t0,t1,t2については比較例1と同様であるため、説明を省略する。
子機B1が火災の発生を検知し、区間t1で火災報を送信する。電圧値V5は、電圧値V2以上かつ基準電圧値V1未満となる。
区間t2は、区間t1の終了タイミングよりも早いタイミングで開始している。区間t2の開始タイミングから区間t1の終了タイミングの間の区間t3において、子機B2が火災報を送信すると、電圧値V5は電圧値V2を下回る可能性がある。つまり、2台の子機B1,B2が区間t3で火災報を送信することにより、区間t3で連動報が送信された状態とほぼ等しい状態となる。そのため、親機14の識別部13は、受信信号を連動報と識別する可能性がある。
次に、本実施形態の子機B1,B2の動作について、図8を参照して説明する。なお、区間t0,t1,t2については比較例1と同様であるため、説明を省略する。
子機B1は、区間t1になると、電圧検出部3で電圧値V5を検出する。電圧値V5は、基準電圧値V1よりも高い。子機B1の制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V1以上であると判断すると、第1状態を選択し、送信回路21に火災報を送信させる。そのため電圧値V5は、区間t1の終了タイミングでは電圧値V2以上かつ基準電圧値V1未満となる。
子機B2の制御部4は、区間t2において、送信回路21,22に信号を送信させる直前に、電圧検出部3で電圧値V5を検出する。区間t2において、電圧値V5は基準電圧値V1未満である。子機B2の制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V1未満であると判断し、第2状態を選択する。つまり制御部4は、送信回路21,22に火災報も連動報も送信させない。そのため電圧値V5は、区間t2では電圧値V2未満となることが抑制される。ゆえに、親機14の識別部13は、受信信号を火災報として識別する。言い換えると、子機B1が送信した火災報が、連動報として親機14に誤検出されにくくなる。
以上説明したように、本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1は、送信回路101と、電圧検出部3と、制御部4とを備える。送信回路101は、電圧が印加される一対の電線51,52に電気的に接続され、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで信号(本実施形態では火災報)を送信する。電圧検出部3は、一対の電線51,52間の電圧値V5を検出する。制御部4は、送信回路101を制御する。制御部4は、送信回路101に信号(火災報)を送信させる第1状態と、送信回路101に信号(火災報)を送信させない第2状態とを、電圧検出部3の検出結果に基づいて択一的に選択する。
上記構成によれば、送信回路101が信号(火災報)を送信する動作を行うと、一対の電線51,52間の電圧値V5が低下する。制御部4は、電圧値V5を確認してから送信回路101に信号を送信させるので、複数の子機1が同時に信号を送信する動作が起こりにくくなる。つまり、制御部4は、自動火災報知システムの複数の子機1が同時に一対の電線51,52間の電圧を低下させることを抑制する。また、本実施形態の制御部4は、電圧値V5を確認してから火災報を送信させるので、複数の子機1が同時に火災報を送信する動作が起こりにくくなり、火災報が連動報として誤送信されることを抑制する。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1において、制御部4は、電圧検出部3の検出結果が基準電圧値V1未満であれば第2状態を選択することも好ましい。
上記構成によれば、制御部4は、電圧検出部3の検出結果が基準電圧値V1未満であれば信号(火災報)を送信させない。そのため複数の子機1が同時に信号を送信することが抑制され、電圧値V5が極端に低下することが抑制される。
また、本実施形態の子機1の制御部4は、他の子機1が火災報を送信して電圧値V5が火災報レベルの電圧値になっていると火災報を送信させないので、電圧値V5が連動報レベルの電圧値になりにくい。つまり制御部4は、火災報が連動報として誤送信されることを抑制する。
本実施形態の自動火災報知システムA1の親機14は、上記の子機1と共に用いられる。親機14は、印加部11と、親機側電圧検出部12と、識別部13とを備える。印加部11は、一対の電線51,52に電圧を印加する。親機側電圧検出部12は、一対の電線51,52間の電圧値V5を検出する。識別部13は、子機1から一対の電線51,52に送信された信号(本実施形態では火災報、連動報、伝送信号)を、親機側電圧検出部12の検出結果に基づいて識別する。
上記構成によれば、複数の子機1が同時に一対の電線51,52間の電圧を低下させることが抑制されているので、親機14は、子機1が送信した信号を、一対の電線51,52間の電圧値V5に基づいて正しく識別することができる。本実施形態では、複数の子機1が同時に火災報を送信することが抑制され、火災報の送信時の電圧値V5が連動報レベルの電圧値になりにくいので、親機14は、火災報を連動報として誤って識別しにくい。
本実施形態の自動火災報知システムA1は、上記した子機1と、一対の電線51,52に電気的に接続される親機14とを備える。親機14は、印加部11と、親機側電圧検出部12と、識別部13とを有する。印加部11は、一対の電線51,52に電圧を印加する。親機側電圧検出部12は、一対の電線51,52間の電圧値V5を検出する。識別部13は、子機1から一対の電線51,52に送信された信号(火災報、連動報)を、親機側電圧検出部12の検出結果に基づいて識別する。
上記構成によれば、自動火災報知システムA1は、上記した子機1と、上記した親機14とを備えているので、複数の子機1が同時に一対の電線51,52間の電圧を低下させることを抑制できる。
なお、本実施形態の送信回路101は、送信回路22を有しているが、送信回路22は必ずしも備えていなくてもよい。その場合であっても、複数の子機1が同時に火災報を送信しないので、一対の電線51,52間の電圧値V5が火災報レベルの電圧値よりも低下しにくくなり、子機1の動作が不安定になることを回避できる。
(実施形態2)
上記した実施形態1の制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V1以上であるか否かを判断して火災報を送信するか否かを判断する。本実施形態の子機1の制御部4では、火災報を送信するか否かを判断する基準として、電圧値V2を基準電圧値に設定する点が、実施形態1の制御部4と異なる。以下、実施形態1の基準電圧値V1を電圧値V1と表記し、実施形態1の電圧値V2を基準電圧値V2と表記して説明する。なお、実施形態1と同様の構成について同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の子機1はさらに判断部7を備える。判断部7は、図9に示すように、制御部4によって実現されている。判断部7は、送信回路21,22が信号(火災報および連動報)を送信していない場合の電圧値V5に基づいて、送信回路21が信号(火災報)を送信したときの電圧値V5が基準電圧値V2未満になるか否かを判断する。なお、判断部7は、制御部4で実現されることに限定されず、制御部4とは別のマイコンなどで実現されてもよい。
判断部7は、予測電圧値V6を求める。予測電圧値V6とは、火災報を送信した場合に一対の電線51,52間の電圧値を予測した値である。例えば、火災報を送信する場合に一対の電線51,52から引き込む電流値と、抵抗145とに基づいて、電圧値V5から降下する電圧幅(降下電圧の大きさ)を予測することができる。したがって、判断部7は、火災報を送信する前に、火災報を送信したときの電圧値V5を予測電圧値V6として予測する。なお、予測電圧値V6は、演算によって求める他にも、例えば、電圧値V5と予測電圧値V6との関係に基づいてあらかじめ計算した演算結果を情報テーブルとして用意し、その情報テーブルを参照して予測電圧値V6を求めてもよい。
制御部4は、判断部7の予測結果に基づいて、火災報を送信するか否かを判断する。具体的に言うと、制御部4は、図10に示すように、電圧値V1と基準電圧値V2とに基づいて、火災報を送信するか否かを判断する。
制御部4は、電圧検出部3から電圧値V5を取得する(S1)。
制御部4は、電圧値V5が電圧値V1以上か否かを判断する(S2)。電圧値V5が電圧値V1以上であると判断部7が判断すると(S2:Yes)、制御部4は、判断部7に予測電圧値V6を求めさせる(S3)。
制御部4は、判断部7の判断結果において、予測電圧値V6が基準電圧値V2以上になると判断すると(S4:Yes)、第1状態を選択する(S5)。制御部4は、送信回路21から火災報を送信させる(S6)。
制御部4は、電圧値V5が電圧値V1未満の場合(S2:No)、または予測電圧値V6が基準電圧値V2未満の場合(S4:No)、第2状態を選択する(S7)。つまり制御部4は火災報を送信しない(S8)。
ここで、子機B1,B2の動作について図11を参照して説明する。なお、子機B1,B2と区間t0,t1,t2との関係は、図8と同様であるため、説明を省略する。
子機B1が区間t1で火災報を送信している状態で、子機B2が区間t2で火災報を送信すべきか否かを制御部4が判断する。子機B2の判断部7は、電圧値V5が火災報レベルの電圧値になっている状態で、さらに電流を引き込んだ場合の予測電圧値V6(一点鎖線)を求める。判断部の予想結果において、予測電圧値V6が基準電圧値V2未満となる場合、子機B2の制御部4は、火災報を送信させない。そのため、電圧値V5は火災報レベルの電圧値として維持され、連動報レベルの電圧値になることが抑制される。つまり、一対の電線51,52に送信されている火災報が、連動報として誤送信されにくくなる。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1は、判断部7をさらに備え、以下のように構成されることも好ましい。判断部7は、送信回路21が信号を送信していない場合の電圧検出部3の検出結果に基づいて、送信回路21が信号(本実施形態では火災報)を送信したときに一対の電線51,52間の電圧値V5が基準電圧値V2未満になるか否かを判断する。判断部7の判断結果において、送信回路21が信号(火災報)を送信したときの一対の電線51,52間の電圧値V5(本実施形態では予測電圧値V6)が基準電圧値V2未満になる場合、制御部4は、第2状態を選択する。
上記構成によれば、制御部4は、送信回路101が信号を送信していない状態(つまり信号を送信する前の状態)で、仮に信号を送信したときの電圧値V5を予測する。そして、信号を送信したときの電圧値V5が電圧値V2未満になると予想した場合は、信号を送信しない。そのため、電圧値V5が、基準電圧値V2未満になることが抑制される。ゆえに、一対の電線51,52に送信されている火災報が、連動報として誤送信されにくくなる。
なお、本実施形態の判断部7は、実施形態1の制御部4で実現されてもよい。
また、本実施形態では、判断部7が、予測電圧値V6を求めているが、制御部4が予測電圧値V6を求めてもよい。その場合、子機1は判断部7を省略することができる。
上記した制御部4の動作を、実施形態1の制御部4に適用してもよい。つまり、実施形態1の制御部4が予測電圧値V6に基づいて第1状態または第2状態を選択してもよい。
ところで、本実施形態において、基準電圧値に、電圧値V2よりもさらに低い電圧値V3を設定してもよい。例えば、制御部4がリセットされる電圧値(下限電圧値)よりもわずかに高い電圧値V3を基準電圧値に設定する。この場合、子機1は、例えば子機1の素子の経年劣化などにより、信号の送信時に電圧値V5が下限電圧値まで低下して、制御部4がリセットされることを抑制できる。例えば、送信回路22が連動報を送信する前に、判断部7の判断結果が、連動報送信後の予測電圧値V6が電圧値V3未満である場合、制御部4は、連動報を送信しない。この動作により、電圧値V5が下限電圧値まで低下しにくくなり、制御部4がリセットされにくくなるので、火災報の送信が維持される。
(実施形態3)
上記した実施形態1の子機1の制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V1以上であるか否かを判断して火災報を送信するか否かを判断する。本実施形態の子機1の制御部4では、火災報を送信するか否かを判断する基準として、電圧値V2を基準電圧値に設定する点が、実施形態1の制御部4と異なる。以下、実施形態1の基準電圧値V1を電圧値V1と表記し、実施形態1の電圧値V2を基準電圧値V2と表記して説明する。なお、実施形態1と同様の構成について同一の符号を付し、説明を省略する。
制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V2以上であれば、火災報を送信する。制御部4は、火災報を送信した後の電圧値V5が基準電圧値V2未満であれば、火災報の送信を停止する。
ここで、子機B1,B2の動作について図12を参照して説明する。なお、子機B1,B2と区間t0,t1,t2との関係は、図8と同様であるため、説明を省略する。
子機B1が区間t1で火災報を送信している状態で、子機B2が区間t2で火災報を送信すべきか否かを制御部4が判断する。子機B2の制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V2以上であると判断し、火災報を送信する。このとき、電圧値V5は、基準電圧値V2未満となる。子機B2の制御部4は、火災報を送信した後で、電圧検出部3に電圧値V5を検出させる。このときの電圧値V5が基準電圧値V2未満となっていると、子機B2の制御部4は、火災報の送信を停止する。そのため電圧値V5は基準電圧値V2以上になる。
制御部4が火災報を送信した後に電圧値V5を検出して火災報の送信を停止させるまでの時間t4は、親機14の識別部13が信号の識別に要する時間よりも短くなるように定められている。そのため、電圧値V5が時間t4だけ連動報レベルの電圧値になっても、親機14が連動報を受信しにくくなっている。なお、時間t4は、識別部13が信号の識別に要する時間よりも短く定められることに限定されず、識別部13が火災報を連動報と誤って識別しないように定められていればよい。例えば、識別部13は、連動報レベルの電圧値を複数回だけ識別できたときに受信信号を連動報と識別する場合には、時間t4を適宜の長さに定めてもよい。
制御部4のこの動作により、例えば所定の台数まで子機1が同時に火災報を発報できるように火災報レベルの電圧値が定められている場合、火災報を発報している子機1が所定の台数に達した後には、他の子機1が火災報を送信しないようにできる。
以上説明したように、本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1において、制御部4は、以下のように構成されていることも好ましい。制御部4は、電圧検出部3の検出結果が基準電圧値V2以上であれば第1状態を選択する。制御部4は、第1状態を選択した後の電圧検出部3の検出結果が基準電圧値V2未満であれば、第2状態を選択する。
上記構成によれば、制御部4は、電圧値V5が基準電圧値V2以上である場合に信号(本実施形態では火災報)を送信し、信号を送信した後の電圧値V5が基準電圧値V2未満になっている場合には信号の送信を停止する。そのため、電圧値V5が火災報の送信によって基準電圧値V2未満になり続けることが抑制される。
本実施形態の制御部4および親機14は、実施形態1,2にも適用可能である。本実施形態の制御部4を実施形態1に適用すると、例えば子機1を構成する素子の経年劣化などにより、火災報を送信した際に連動報レベルの電圧値になった場合に、制御部4は元の電圧値に戻す。この場合、連動報レベルの電圧値になっている時間は、親機14の識別部13が信号の識別に要する時間よりも短いので、親機14が連動報を誤って識別することが抑制される。また、制御部4を実施形態2に適用することもできる。例えば判断部7の予測電圧値V6が、火災報の送信後の電圧値V5よりも高い場合が考えられる。つまり、ノイズなどの影響により判断部7の判断結果に誤差が生じると、予測電圧値V6が、実際に火災報を送信した場合の電圧値V5よりも高く予測され、制御部4が火災報を送信する場合である。この場合、火災報の送信後の電圧値V5が基準電圧値V2未満になるが、制御部4は火災報の送信後の電圧値V5に基づいて、火災報の送信を停止することにより、電圧値V5を火災報レベルの電圧値に戻すことができる。
なお、実施形態1〜実施形態3において、基準電圧値は、電圧値V1,V2に限定される趣旨ではない。基準電圧値は、火災報レベルの電圧値や連動報レベルの電圧値の閾値の他にも、例えば、その閾値にマージンを考慮した適宜の値でもよい。他にも、基準電圧値は、例えば電圧値V5を適宜の電圧値の範囲に制限するように定められてもよい。
(実施形態4)
本実施形態の子機1は、実施形態1の子機1に対して、送信回路101を含む複数の回路をさらに備える。複数の回路は、受信部107の回路と、送信回路101(送信回路21,22)と、伝送送信回路23と、報知部104の回路と、電圧検出部3の回路と、煙検出部121の回路と、熱検出部122の回路を含む。なお、実施形態1と同様の構成について同一の符号を付して説明を省略する。
一対の電線51,52には、複数の子機1が電気的に接続されているため、複数の子機1の各々が電力の消費を抑えることにより、電圧値V5の低下を抑制できる。子機1の制御部4は、複数の回路のうち所望の回路の動作を停止させて、一対の電線51,52から供給される電力の消費を抑えることにより、電圧値V5の低下を抑制する。
例えば、連動報が送信されている状態や、火災報と伝送信号とが送信されている状態では、電圧値V5は低下しやすくなり、制御部4の下限電圧値に近づく可能性がある。その状態で、例えば一対の電線51,52にノイズなどが加わると、電圧値V5が下限電圧値を下回り、制御部4がリセットされる可能性がある。そこで、複数の回路のうち所望の回路の動作を停止させて、電圧値V5の低下を抑制することにより、電圧値V5をできるだけ高めることで、制御部4の予期せぬリセットが起こりにくくなる。
制御部4は、複数の回路の各々の動作状態に応じて変化する一対の電線51,52間の電圧値V5からなる回線電圧値情報を有する。回線電圧値情報とは、複数の回路の各々が動作状態になっている場合の電圧値V5を示す情報である。回線電圧値情報には、例えば、複数の回路が全て動作状態にある場合の電圧値V5や、複数の回路のうち電圧検出部3のみが停止状態になった場合の電圧値V5の情報などが含まれている。制御部4は、所望の電圧値よりも電圧値V5が低下している場合、複数の回路のうちどの回路の動作を停止状態にすれば電圧値V5の低下を抑制できるかを、回線電圧値情報に基づいて周期的に選択する。
制御部4は、例えば、あらかじめ割り当てられた周期的なタイムスロットでのみ、複数の回路の全てを動作させ、そのタイムスロットが過ぎると複数の回路の全ての動作を停止させる。また、制御部4は、タイマを動作させて次のタイムスロットの区間の開始タイミングを計測する。そして、タイマからの割り込み信号が入力されるまで、消費電力を抑えた状態で動作する。以下、消費電力を抑えた状態で動作するモードをスリープモードと表記する。
ここで、制御部4がスリープモードになった場合の送信回路21,22の動作について説明する。
本実施形態の送信回路21,22は自己保持型のスイッチング素子81,82を有している。スイッチング素子81,82は、例えばサイリスタで構成されている。制御部4は、スイッチング素子81,82をオンにすることで一対の電線51,52に流れる電流を引き込む。スイッチング素子81,82が電流を引き込んでいる状態で、制御部4がスリープモードになっても、スイッチング素子81,82はオンになっている。そのため、火災報や連動報が送信された状態で制御部4がスリープモードになっても、火災報や連動報の送信が途切れにくくなっている。
なお、制御部4が送信回路21,22を停止させた状態とは、火災報や連動報の停止を意味せず、サイリスタのゲート端子への電流供給を停止させることを意味する。つまり、送信回路21,22が自己保持型のスイッチング素子を有する場合には、スイッチング素子への電流または電圧の供給を停止するだけであり、スイッチング素子のオン状態は保たれる。なお、スイッチング素子が、例えばゲートターンオフサイリスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタのようにオフ状態に切り替え可能なスイッチング素子であれば、制御部4は、送信回路21,22の停止と同時に火災報や連動報を停止させてもよい。
制御部4は、複数の回路の全てを動作または停止させる他にも、各々の回路を個別に動作または停止させてもよい。制御部4が動作または停止させる回路は、マイコンのメモリや記憶部103にあらかじめ記憶されていてもよいし、電圧値V5と回線電圧値情報とに基づいて選択されてもよい。また制御部4が動作または停止させる回路は、プログラムなどの演算結果と電圧値V5と回線電圧値情報とに基づいて選択されてもよい。
また制御部4は、複数の回路の動作を停止させて電圧値V5の低下を抑制する他にも、信号を送信するために必要な送信電力に基づいて、信号を送信するか否かを判断することにより電圧値V5の低下を抑制する。
制御部4は、電圧値V5と、信号を送信するために必要な送信電力とに基づいて、第1状態と第2状態とを択一的に選択する。送信電力とは、信号を送信している状態で、子機1が動作するために必要な一対の電線51,52間の電圧値と、信号を送信している状態で、一対の電線51,52から引き込む電流の電流値とに基づいて定まる電力である。例えば、火災報の送信に必要な送信電力は、火災報の送信時の電圧値V5と、一対の電線51,52から引き込む電流の電流値によってあらかじめ定まっている。また、火災報の他にも、連動報や、伝送信号の送信時に必要な送信電力はあらかじめ定まっている。
そこで制御部4は、所望の信号を送信する前の電圧値V5と、信号の送信に必要な送信電力から定まる電圧の降下量とに基づいて、信号を送信するか否かを判断してもよい。例えば制御部4は、火災報を送信する前に電圧値V5を電圧検出部3から取得し、電圧値V5から所定の電圧だけ降下した際に電圧値V2未満にならないと判断すると、火災報を送信する。同様に、制御部4は、連動報を送信する前の電圧値V5と、連動報を送信した際の電圧の降下量とに基づいて、連動報を送信するか否かを判断する。この制御部4の動作により、信号の送信による電圧値V5の低下が抑制される。
また制御部4は、伝送送信回路23から伝送信号を送信させる。伝送信号を送信する場合に、制御部4は、伝送信号のデューティ比に基づいて送信電力を求め、伝送信号を送信するか否かを判断する。区間の長さが一定のタイムスロットにおいて、デューティ比の大小に応じて、電圧値V5の低下量が変動する。例えば、あるタイムスロットで、子機1がデューティ比の大きい伝送信号を送信したとする。この場合、デューティ比の小さい伝送信号の送信時に比べて、電圧値V5が低下した状態が長くなるため、子機1の電源回路105に供給される電力が低下する。
このタイムスロットの次の区間の子機1も、送信電力の大きい信号を送信すると、電圧値V5が低下し続ける。このように、タイムスロットが連続する子機1がそれぞれ、送信電力の大きい伝送信号(電圧値V5を低下させる時間が長い伝送信号)を送信すると、電源回路105に供給される電力が不足する可能性がある。電源回路105が制御部4に十分な電力を供給できなくなると、制御部4がリセットされる可能性がある。
そこで、制御部4は、電圧値V5と、送信する伝送信号の送信電力とに基づいて、割り当てられたタイムスロットで伝送信号を送信すべきか否かを判断する。例えば制御部4は、電圧値V5が特定の電圧値を下回る場合は、送信出力が所定値を上回る伝送信号を送信しない。制御部4のこの動作により、子機1の伝送信号の送信による電圧値V5の低下が抑制され、電圧値V5の低下による制御部4のリセットがかかりにくくなる。
以上説明したように、本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1において、制御部4は、電圧検出部3の検出結果と、信号を送信するために必要な送信電力とに基づいて、第1状態と第2状態とを択一的に選択することも好ましい。
上記構成によれば、制御部4は、電圧値V5と送信電力に応じて信号を送信すべきか否かを判断する。送信電力が大きい信号が、一対の電線51,52に送信され続けると、電圧値V5は低下しやすくなる。制御部4は、電圧値V5と送信電力とに応じて信号を送信するか否かを判断するので、信号の送信による電圧値V5の低下が抑制される。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1において、送信回路21,22は自己保持型のスイッチング素子81,82を有し、スイッチング素子81,82をオンにすることで一対の電線51,52に流れる電流を引き込むことも好ましい。
上記構成によれば、送信回路21,22は自己保持型のスイッチング素子81,82を有しているので、スイッチング素子81,82が電流を引き込んでいる状態で、制御部4がスリープモードになっても、スイッチング素子81,82はオンになっている。そのため、火災報や連動報が送信された状態で制御部4がスリープモードになっても、火災報や連動報の送信が途切れにくい。
本実施形態の自動火災報知システムA1の子機1は、送信回路21,22を含む複数の回路をさらに備え、以下のように構成されていることも好ましい。制御部4は、複数の回路の各々の動作状態に応じて変化する一対の電線51,52間の電圧値V5からなる回線電圧値情報を有する。制御部4は、電圧検出部3の検出結果と、回線電圧値情報とに基づいて、複数の回路を個別に動作状態から停止状態にする。
上記構成によれば、制御部4は、電圧値V5と回線電圧値情報とに基づいて、適宜の回路を停止状態にすることができる。そのため、子機1の消費電力が抑制され、電圧値V5の低下が抑制される。
なお、制御部4は複数の回路を個別に動作状態から停止状態にする他にも、逆に停止状態から動作状態にするように構成されていてもよい。その場合、制御部4は、回路全体のリセット動作なしに停止状態の回路を個別に動作状態に復帰させることができる。
なお、本実施形態の制御部4と、スイッチング素子81,82とは、実施形態1〜実施形態3にも適用可能である。
上述の実施形態1〜実施形態4において、制御部4は、伝送送信回路23に信号を送信させる第1状態と、伝送送信回路23に信号を送信させない第2状態とを、電圧検出部3の検出結果に基づいて択一的に選択してもよい。この場合、送信回路は、送信回路101と伝送送信回路23とで構成される。制御部4は、複数の子機1が同時に伝送送信回路23から伝送信号を送信することによる一対の電線51,52間の電圧低下を抑制する。また制御部4は、火災報が送信されている状態で伝送信号が送信されて一対の電線51,52間の電圧値V5が連動報レベルの電圧値になることを抑制する。さらに制御部4は、電圧値V5を確認してから伝送信号を送信させるので、複数の子機1が同時に伝送信号を送信する動作が起こりにくくなる。そのため、複数の子機1からの伝送信号の送信によって一対の電線51,52間の電圧値V5が連動報レベルの電圧値になることが抑制される。