本実施形態では、火災の発生を感知して親機に通知する自動火災報知システムの火災感知器、及びそれを用いた自動火災報知システムに関して説明する。
火災の発生を報知する自動火災報知システムA1について図1、図2を参照して説明する。
以下の説明では、集合住宅60(例えばマンション)に用いられる自動火災報知システムA1について説明するが、自動火災報知システムA1は、集合住宅に限らず、例えば商業施設、病院、ホテル、雑居ビルなどの適宜の建物で使用できる。
自動火災報知システムA1は、図1に示すように、16台の火災感知器B1〜B16と、1台の親機14とを備える。自動火災報知システムA1では、火災感知器B1〜B16と親機14とは各々、一対の電線51,52に電気的に接続されている。以下の説明では、16台の火災感知器B1〜B16の各々を区別しないで説明する場合には「火災感知器1」として説明する。
自動火災報知システムA1の火災感知器1は例えば、熱感知器、煙感知器、炎感知器などであり、火災発生を検知した場合、一対の電線51,52間の電圧を変化させて火災発生を報知する信号(以下、火災報と呼ぶ。)を送信する。火災感知器1は、親機14に他装置70を連動させるための通知(以下、連動報と呼ぶ。)を送信する。なお、火災感知器1が火災報又は連動報を送信(送出)する構成については後述する。
親機14(例えば受信機)は、火災感知器1から送信された信号を受信し、その信号が火災報の場合に、親機14に電気的に接続されている警報器を動作させて集合住宅60の住人などに火災発生を報知する。
親機14には、他装置70が電気的に接続されている。親機14は、連動報を火災感知器1から受信すると、他装置70に制御用の信号を送信する。
他装置70は例えば、防排煙設備、非常用放送設備、外部移報装置、及びスプリンクラーなどの消火設備である。防排煙設備は、防火扉や排煙設備などである。他装置70は、親機14からの制御用の信号に応じて動作する。外部移報装置は例えば、自動火災報知システムA1が設置された集合住宅60の外部(例えば消防機関、警備会社など)へ通報する装置である。なお、他装置70の動作は一例に過ぎず、適宜変更可能である。
自動火災報知システムA1は、1棟の集合住宅60に対して、16台の火災感知器1と、1台の親機14とを備えている。集合住宅60には、一対の電線51,52が4組設けられている。親機14には4組の一対の電線51,52が接続されている。1組の一対の電線51,52には複数(4台)の火災感知器1が電気的に接続されている。親機14と複数(16台)の火災感知器1とは各々、一対の電線51,52に電気的に接続されて一対の電線51,52に信号を送出する。本実施形態では、親機14と火災感知器1とは各々、一対の電線51,52に流れる電流を引き込むことにより一対の電線51,52間の電圧V5を変化させて火災報又は連動報を送信する。
親機14と各火災感知器1とは、親機14が各火災感知器1に送信する同期信号に基づいて同期し、時分割通信方式の通信を行う。親機14は、通信用信号を一対の電線51,52に周期的に送信する。通信用信号は、1フレームごとに時間軸方向において複数の区間に分かれた形式の電圧信号からなる。通信用信号は、同期帯と、送信帯と、返信帯の3つの区間(期間)からなる時分割信号である。返信帯は、さらに16個のタイムスロット(区間)に分割されている。16個のタイムスロットは、それぞれ16台の火災感知器B1〜B16に割り当てられる。
親機14は、同期帯において同期パルスを周期的に送信する。親機14は、2回の同期パルスの間に、送信帯と、16個のタイムスロットとを設定する。親機14は、送信帯において、火災感知器1に対して要求データを送信する。
火災感知器1は、同期パルスを受信すると、16個のタイムスロットのうち固有の識別情報に基づいて定まるタイムスロットで、親機14からの要求データに応じた応答信号を送信する。固有の識別情報とは、複数ある火災感知器1の各々を親機14が識別するための情報である。
親機14及び火災感知器1の構成について図2を参照して説明する。なお、図2では、1台の火災感知器1が一対の電線51,52を介して1台の親機14に接続されている状態を示し、他の火災感知器1及び他の一対の電線51,52の図示を省略している。
まず、親機14の構成について説明する。親機14は、印加部11と、親機側検出部12と、識別部13とを備える。本実施形態の親機14はさらに、一対の電線51,52に信号を送信する親機側送信部147と、親機側制御部141と、表示部143と、操作部144と、連動部142と、予備電源146とを備えている。
印加部11は、一対の電線51,52間に直流電圧(例えば24V)を印加する。また印加部11は、一対の電線51,52に接続されている火災感知器1に動作用の電力も供給している。
一対の電線51,52のうち高電位側の電線(本実施形態では電線51)と印加部11との間には抵抗145が接続されている。抵抗145は、一対の電線51,52に送信された電流信号を電圧信号に変換する第1の機能と、一対の電線51,52間が短絡したときに一対の電線51,52を流れる電流を制限する第2の機能との2つの機能を有している。つまり抵抗145は、電流−電圧変換素子として第1の機能と、電流制限素子としての第2の機能とを兼ね備えている。
親機側検出部12は、一対の電線51,52に流れる電流を検出する。親機側検出部12は、一対の電線51,52に流れる電流を、識別部13に入力可能な範囲の電圧レベルに変換して、識別部13に出力する。親機側検出部12の動作は、親機側制御部141によって制御される。
親機側制御部141は、例えばマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されたプログラムを実行することにより識別部13と送信制御部148とを実現している。親機側制御部141は、親機側送信部147と電気的に接続されて親機側送信部147を制御する。
親機側送信部147及び親機側検出部12は、抵抗145の低電位側に接続されている電線51と電線52との間に電気的に接続されている。親機側送信部147は、一対の電線51,52間の電圧V5を変化させて、一対の電線51,52に信号を送信する。具体的に言うと、親機側送信部147は、印加部11から抵抗145に流れる電流を引き込む機能と、その電流の引き込みを停止する機能とを有する。火災感知器1が一対の電線51,52を流れる電流を引き込むと抵抗145を流れる電流の電流値が変化し、一対の電線51,52間の電圧が変化する。親機側送信部147の動作は、送信制御部148によって制御される。
送信制御部148は、親機側送信部147に一対の電線51,52間の電圧を変化させて所望のデータを含む信号を送信させる。親機14の識別部13は、親機側検出部12の検出結果に基づいて、一対の電線51,52に送信された伝送信号に含まれるデータを受信する。
識別部13は、火災感知器1から一対の電線51,52に送出された信号を、親機側検出部12の検出結果に基づいて識別する。識別部13は、親機側検出部12からの信号に基づいて、一対の電線51,52に信号が送出されているか否かを判断し、信号が送出されている場合には、電圧V5に基づいて、その信号が火災報か連動報かを識別する。
連動部142は、他装置70(図1参照)を連動させる信号を出力する。連動部142の動作は、親機側制御部141にて制御される。例えば識別部13が火災報を識別すると、親機側制御部141は、火災報に応じて連動部142から他装置70に火災信号を出力させる。識別部13が連動報を識別すると、親機側制御部141は、連動報に応じて連動部142から他装置70に連動信号を出力させる。
予備電源146は、例えば蓄電池などで構成されている。予備電源146は、停電時でも一定の時間、自動火災報知システムA1を動作させる容量の電力を有するように構成されている。親機14は、通常は商用電源や自家発電設備などから供給される電力で動作するが、停電時には予備電源146の電力で動作するように構成されている。
表示部143は、例えばLED(Light Emitting Diode)や液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどを備えている。表示部143の動作は親機側制御部141によって制御される。親機側制御部141は、一対の電線51,52から受信した信号の内容に応じて表示部143の表示内容を変えさせる。表示部143は例えば、火災の発生、火災の発生階(フロア)などを表示する。
操作部144は、例えば押しボタンスイッチや、タッチパネル方式のディスプレイを備えている。操作部144で操作された内容に応じて、親機側制御部141は、あらかじめ定められた制御動作を行う。操作部144は例えば、火災報知動作の停止、火災感知器の異常検知動作の停止などを親機側制御部141に行わせるように構成されている。
次に、火災感知器1の構成について図2、図3、図4を参照して説明する。
火災感知器1は、図2に示すように、送信部101と、電圧検出部3と、制御部4とを備える。本実施形態の火災感知器1はさらに、検知部120と、記憶部103と、電源回路105と、報知部104と、受信部107と、伝送送信回路23と、ダイオードブリッジ106とを備える。
ダイオードブリッジ106は、一対の電線51,52が電気的に接続される一対の入力端子と、一対の出力端子とを備える。ダイオードブリッジ106の出力端子には、電源回路105、送信部101、電圧検出部3が各々、電気的に接続されている。なお、検知部120と、記憶部103と、電源回路105と、報知部104と、受信部107と、伝送送信回路23とについては後述する。
電圧検出部3は、一対の電線51,52間の電圧V5を検出する。電圧検出部3は、電圧V5に応じた信号を制御部4に出力する。
記憶部103は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)で構成されている。記憶部103は、第1の閾値と、第1の閾値よりも大きい第2の閾値と、第1のサンプリング回数(例えば3回)と、第2のサンプリング回数(例えば3回)とを記憶している。なお、制御部4が、第1の閾値と、第2の閾値と、第1のサンプリング回数と、第2のサンプリング回数とを用いて火災報又は連動報を送信(送出)させるか否かを判断する動作については後述する。
記憶部103は、第1基準電圧V3の電圧値と、第1基準電圧V3の電圧値よりも低い第2基準電圧V2の電圧値と、固有の識別情報とを記憶している。第1基準電圧V3と、第2基準電圧V2とはそれぞれ、制御部4が送信部101から火災報又は連動報を送信させるか否かを判断するために用いられる。
検知部120は、煙の濃度の変化と、温度の変化とを検出する。検知部120は、煙の濃度の変化と、温度の変化とに基づいて火災の発生を検知すると、制御部4に検知信号を送信する。
送信部101は、一対の電線51,52に電気的に接続される。送信部101は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで火災報を送信(送出)する。送信部101は、一対の電線51,52からの電流の引き込み量を、火災報の送信(送出)時の電流の引き込み量よりも多くすることにより連動報を送信(送出)する。
より詳細には、送信部101は、(第1)送信回路21と、(第2)送信回路22とを有する。送信回路21は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで火災報を送信する。送信回路22は、一対の電線51,52間を導通状態にして一対の電線51,52間の抵抗値を小さくすることより連動報を送信する。言い換えると、送信回路22は、一対の電線51,52に流れる電流を、火災報の送信時よりも多く引き込んで連動報を送信する。送信回路21,22はそれぞれ、一対の電線51,52に流れる電流を引き込む機能と、電流の引き込みを停止する機能とを有する。
送信回路21は、図3に示すように、スイッチング素子81と、抵抗202と、LED203とを備えている。なお、LED203については後述する。
スイッチング素子81はnpn型のトランジスタからなる。スイッチング素子81のコレクタ端子は、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子に電気的に接続されている。スイッチング素子81のエミッタ端子は、抵抗202の一端が電気的に接続されている。抵抗202の他端にはLED203のアノード端子が接続されている。LED203のカソード端子は、回路グランド(ダイオードブリッジ106の低電位側の出力端子)に電気的に接続されている。スイッチング素子81のベース端子は、制御部4に電気的に接続されている。送信回路21は、制御部4からベース端子に入力される制御信号に応じて、一対の電線51,52から抵抗202及びLED203に流す電流の電流値を変化させる。すなわち送信回路21は、制御部4からの制御信号に応じて、一対の電線51,52を流れる電流の引き込み量を変化させて火災報を送信する。
送信回路21は、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2以上第1基準電圧V3以下の電圧にすることにより火災報を送出する。
本実施形態の送信回路21は、火災報を送信すると、親機14によって制御部4がリセットされるか、又は制御部4が火災報の送信を停止する動作を行うまで、火災報の送信状態を維持する。一例として、親機14は、一対の電線51,52間の電圧V5を制御部4の動作下限電圧未満にし、その後、一対の電線51,52間の電圧V5を制御部4の動作下限電圧以上にすることにより、制御部4をリセットする。リセットされた制御部4は、火災報及び連動報の送信(送出)を停止する。
送信回路22は、スイッチング素子82と、抵抗212とを備えている。スイッチング素子82はnpn型のトランジスタからなる。スイッチング素子82のコレクタ端子は、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子に電気的に接続されている。スイッチング素子82のエミッタ端子は、抵抗212の一端が電気的に接続されている。抵抗202の他端は回路グランドに電気的に接続されている。スイッチング素子82のベース端子は、制御部4に電気的に接続されている。送信回路22は、制御部4からベース端子に入力される制御信号に応じて、一対の電線51,52から抵抗212に流す電流の電流値を変化させる。
送信回路22は、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2未満の電圧にして連動報を送出する。より詳細には、送信回路22は、スイッチング素子82がオン状態になることにより、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2未満の電圧にして連動報を送出する。抵抗212は、送信回路21の抵抗202よりも抵抗値が小さい。スイッチング素子82がオン状態になると、スイッチング素子82がオン状態になる前よりも一対の電線51,52間の抵抗値が小さくなる。そのため、連動報が送出されている状態の一対の電線51,52間の抵抗値は、火災報が送出されている状態の一対の電線51,52間の抵抗値よりも小さくなる。したがって、送信回路22が連動報を送出した状態で、送信回路22は送信回路21よりも多くの電流を一対の電線51,52から引き込む。送信回路22が連動報を送信した状態で、一対の電線51,52に流れる電流を「連動報レベルの電流」と呼ぶ。「連動報レベルの電流」とは、一対の電線51,52が短絡した際に流れる電流よりもわずかに小さい電流である。
送信回路21及び送信回路22はそれぞれ、制御部4に制御される。つまり制御部4は、送信回路21から火災報を送信させる場合と、送信回路21と送信回路22との両方に電流を引き込ませて連動報を送信させる場合とを択一的に選択する。なお、制御部4は、一例として、送信回路21から火災報を送信させた後に、送信回路22から連動報を送信させることもできる。
電圧検出部3は、ダイオードブリッジ106の高電位側の出力端子と電気的に接続され、電圧V5を検出する。電圧検出部3は、電圧V5の電圧レベルに応じた信号を制御部4に出力する。
制御部4は、送信部101を制御する。制御部4は、例えばマイクロコンピュータで構成され、マイクロコンピュータが有するメモリに記憶されたプログラムを実行することにより所望の機能を実現する。
制御部4は、送信回路21,22と、電圧検出部3とに各々電気的に接続されている。また制御部4は、検知部120と、記憶部103と、受信部107と、伝送送信回路23と、報知部104とに各々電気的に接続されている。制御部4は、送信回路21,22と、電圧検出部3と、検知部120と、受信部107と、伝送送信回路23と、報知部104との動作を個別に制御する。
伝送送信回路23は、例えば印加部11から供給される電圧に伝送信号を重畳して送信する。伝送信号は、例えばベースバンド伝送方式の信号である。
記憶部103はROM(Read-Only Memory)などの書き換えできない記録媒体で構成されていてもよい。また、記憶部103は、制御部4の要求に応じて閾値の情報を出力してもよい。
電源回路105は、一対の電線51,52から供給される電力で充電されるコンデンサを有する。電源回路105は、送信部101、電圧検出部3、制御部4、記憶部103、検知部120の各機能を実現させるために必要な出力を供給する。電源回路105は、一対の電線51,52を流れる電流が増加して一対の電線51,52間の電圧が低下した際に、コンデンサに蓄えた電力を、火災感知器1の各回路に供給する。
報知部104は、例えばブザーやLEDなどを有し、周囲に火災の発生を報知するように構成されている。報知部104の動作は制御部4によって制御される。
受信部107は、親機14の親機側送信部147から送信された伝送信号を受信して受信結果を制御部4に出力する。
LED203は、発光時に火災感知器1の外部に光を放射するように配置される。送信回路21が一対の電線51,52から電流を引き込むと、LED203が発光し、火災感知器1の外部に光を放射する。例えばLED203の発光状態から、複数の火災感知器1のうちのどの火災感知器1が火災報を送信(送出)しているかを目視で確認することができる。
本実施形態の送信回路22は、連動報の送信後は、制御部4が連動報の送信を停止させるか、又は制御部4がリセットされるまで、電圧V5を連動報レベルの電圧に維持する。
以下、制御部4の判断動作について、図4を参照して説明する。
制御部4は、検知部120の検出値を検知部120から読み込む(S1)。制御部4は、検知部120の検出値が第1の閾値を超えるか否かを判断する(S2)。制御部4は、検知部120の検出値が第1の閾値を超えない場合(S2:No)、S1に戻る。すなわち制御部4は、検知部120の検出値が第1の閾値以下の場合、検知部120の検出値を検知部120から読み込む動作を繰り返す。
制御部4は、検知部120の検出値が第1の閾値を超える場合(S2:Yes)、検知部120の検出値が「第1の条件」を満たすか否かを判断する(S3)。「第1の条件」とは、検知部120の検出値が、連続して第1の閾値を超え、かつその回数が第1のサンプリング回数(3回)に達することである。したがって、本実施形態において、第1の条件が満たされる状態とは、検知部120の検出値が第1の閾値を超える回数が、連続して3回続いた状態である。制御部4は、検知部120の検出値が第1の条件を満たさない場合(S3:No)、S1に戻る。
制御部4は、検知部120の検出値が第1の条件を満たす場合(S3:Yes)、検知部120の検出値が「第2の条件」を満たすか否かを判断する(S4)。「第2の条件」とは、検知部120の検出値が、連続して第2の閾値を超え、かつその回数が第2のサンプリング回数(3回)に達することである。したがって、本実施形態において、第2の条件が満たされる状態とは、検知部120の検出値が第2の閾値を超える回数が、連続して3回続いた状態である。制御部4は、検知部120の検出値が第2の条件を満たさない場合(S4:No)、S5で火災報を送信(送出)すべきか否かを判断する。
制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5が第1基準電圧V3を超えている場合(S5:Yes)、火災報を送信部101から送信させる(S6)。一対の電線51,52間の電圧V5が第1基準電圧V3以下である場合(S5:No)、制御部4は、火災報を送信部101から送信させない(S8)。すなわち制御部4は、第1の条件が満たされ、かつ第2の条件が満たされない場合に、火災報を送信すべきか否かを判断する。
制御部4は、検知部120の検出値が第2の条件を満たす場合(S4:Yes)、連動報を送信部101から送信させる(S7)。すなわち制御部4は、第2の条件が満たされた場合に、連動報を送信すべきか否かを判断する。
次に、1組の一対の電線51,52に接続されている火災感知器B1〜B4のうち、火災感知器B1,B2について説明する。以下では、火災感知器B1,B2のそれぞれの制御部4が、それぞれの送信部101を制御して一対の電線51,52間の電圧V5を変化させる様子について、図5〜図8を参照して説明する。
区間T1は、火災感知器B1に割り当てられたタイムスロットである。区間T2は、火災感知器B2に割り当てられたタイムスロットである。区間T2は区間T1の次のタイムスロットである。2台の火災感知器B1,B2は、それぞれに割り当てられた区間T1,T2(タイムスロット)で火災報又は連動報を送信する。タイムスロットは火災感知器1の台数分(本実施形態では16区間)用意されている。以下の説明ででは、区間T0,T1,T2の順に区間T0〜T2が定められている。区間T0とは、全ての火災感知器1が一対の電線51,52に信号を送信していない区間である。このときの電圧V5は、第1基準電圧V3よりも高い電圧となっている。なお、区間T0は、説明のために便宜上定めた区間であり、省略可能である。
図5は、火災感知器B1,B2のそれぞれの制御部4が、それぞれの検知部120の検出値について第1の条件のみを満たしていると判断した場合における一対の電線51,52間の電圧V5の変化を示している。
火災感知器B1の制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5を読み込む。区間T0における一対の電線51,52間の電圧V5は、第1基準電圧V3より高い電圧であるため、火災感知器B1の制御部4は、区間T1で火災報を送信部101から送信させる。したがって、火災感知器B1の送信部101は、区間T1で一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2以上第1基準電圧V3以下にする。
火災感知器B2の制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5を読み込む。区間T1における一対の電線51,52間の電圧V5は、第2基準電圧V2以上第1基準電圧V3以下であるため、火災感知器B2の制御部4は、区間T2では火災報を送信部101から送信させない。そのため、区間T2では火災感知器B2の送信部101は、一対の電線51,52から電流を引き込む動作をしない。したがって、区間T2では一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2以上第1基準電圧V3以下に維持されている。すなわち、一対の電線51,52に火災報が送出された状態となっている。
仮に複数の火災感知器B1〜B4が一対の電線51,52に火災報を送出すると、複数の火災感知器B1〜B4が一対の電線51,52から電流を引き込むことになる。その結果、一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満になる可能性がある。すなわち、火災報が送出されているにも関わらず、一対の電線51,52間の電圧V5は第2基準電圧V2未満になる可能性がある。その場合、親機14は、親機側検出部12の検出結果に基づいて、連動報が一対の電線51,52に送出されたと誤認識する可能性がある。
一方、本実施形態では、複数の火災感知器1のうちの1台の火災感知器1が火災報を送信している場合、火災報を送信している火災感知器1と同じ1組の一対の電線51,52に接続されている他の火災感知器1は火災報を一対の電線51,52に送出しない。言い換えると、1組の一対の電線51,52に接続されている複数の火災感知器1の制御部4がそれぞれ第1の条件を満たす場合でも、1組の一対の電線51,52に接続されている1台の火災感知器1のみが火災報を送信(送出)する。そのため親機14は、1組の一対の電線51,52に送出された火災報を連動報として誤認識しにくくなる。
なお、火災感知器B3〜B16についても、それぞれの火災感知器B3〜B16に割り当てられた区間(タイムスロット)で同様に動作するため、火災感知器B3〜B16についての説明を省略する。以下、図6〜図8についても火災感知器B1,B2について説明し、火災感知器B3〜B16についての説明を省略する。
図6では、火災感知器B1の制御部4が検知部120の検出値について第1の条件のみを満たしていると判断し、かつ火災感知器B2の制御部4が検知部120の検出値について第2の条件を満たしていると判断した場合について説明する。なお、火災感知器B1の制御部4が送信部101から火災報を送出させるまでの動作は、図5で説明した動作と同様である。
火災感知器B2の制御部4は、検知部120の検出値について第2の条件を満たしていると判断すると、送信部101から連動報を送信させる。送信部101は、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2未満に低下させる。1組の一対の電線51,52に接続されている複数の火災感知器1のうちの1台が火災報を送出していても、1組の一対の電線51,52のうち他の火災感知器1が連動報を送出すれば、一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満となる。そのため、親機14は、1組の一対の電線51,52に連動報が送出されたことを認識できる。
ところで、火災の状況の変化が急激である場合、火災感知器B1は、火災報を送出せずに連動報を送出する状況がある。他にも例えば、火災感知器B1が検知している領域の火災が進行するなどして、火災報を送出している火災感知器B1が連動報を送出する状況がある。このような状況で、火災感知器B2の制御部4が、検知部120の検出値について第1の条件のみを満たすと判断した場合について、図7を参照して説明する。
火災感知器B1の制御部4は、区間T1で連動報を送信部101から送出させる。火災感知器B1の送信部101は、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2未満にする。
火災感知器B2の制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5を読み込む。区間T1における一対の電線51,52間の電圧V5は、第2基準電圧V2未満であるため、火災感知器B2の制御部4は、区間T2では火災報を送信部101から送信させない。言い換えると、区間T2では火災感知器B2の送信部101は、一対の電線51,52から電流を引き込む動作をしない。そのため、区間T2では一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満に維持されている。
仮に火災感知器B2が一対の電線51,52に火災報を送出したとすると、火災感知器B2の送信部101が一対の電線51,52から電流を引き込む可能性がある。その結果、一対の電線51,52間の電圧V5の電圧値は、図7に示すように、連動報が送出される電圧レベルからさらに低下して電圧値V1となる可能性がある。一対の電線51,52間の電圧V5が低下するにつれて、電圧V5は火災感知器1の動作下限電圧に近づく。その状態で、例えば大きなノイズが一対の電線51,52に加わった場合、火災感知器1の動作が不安定になりやすくなる可能性や、火災報又は連動報の送出動作がリセットされやすくなる可能性がある。しかしながら、火災感知器B1〜B4の制御部4は、火災感知器B1〜B4のうちの1台が連動報を送出している場合には火災報を送出しないので、一対の電線51,52間の電圧V5が、連動報が送出される電圧レベルからさらに低下することが抑制される。
次に、火災感知器B1,B2のそれぞれの制御部4が、それぞれの検知部120の検出値について第2の条件を満たすと判断した場合について図8を参照して説明する。
区間T1では、火災感知器B1の制御部4が送信部101から連動報を送出させるので、一対の電線51,52間の電圧V5は第2基準電圧V2未満となる。火災感知器B2の制御部4は、検知部120の検出値について第2の条件を満たすと判断し、送信部101から連動報を送信させる。つまり、連動報を送出している火災感知器B1の送信回路22と、連動報を送出している火災感知器B2の送信回路22とは、一対の電線51,52間に電気的に並列に接続されている。火災感知器B1が連動報を送出している状態で、一対の電線51,52には「連動報レベルの電流」が流れていて、さらに火災感知器B2が連動報を送出しても、「連動報レベルの電流」がわずかに増加する程度である。そのため、火災感知器B1と火災感知器B2とがそれぞれ一対の電線51,52に連動報を送出しても、一対の電線51,52間の電圧V5はほとんど低下しない。同様に、複数の火災感知器1の送信部101から連動報が同時に送信(送出)された場合でも、一対の電線51,52間の電圧V5はほとんど低下しない。したがって、複数の火災感知器1から連動報が送信(送出)された場合であっても、親機14は、一対の電線51,52に連動報が送出されたことを認識できる。
以上説明したように、本実施形態の自動火災報知システムA1の火災感知器1(火災感知器B1〜B16)は、送信部101と、電圧検出部3と、制御部4と、を備える。送信部101は、電圧が印加される一対の電線51,52に電気的に接続され、火災報及び連動報を送信する。電圧検出部3は、一対の電線51,52間の電圧V5を検出する。制御部4は、送信部101を制御する。送信部101は、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2以上第1基準電圧V3以下にして火災報を送信する。送信部101は、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2未満にして連動報を送信する。制御部4は、電圧検出部3の検出結果に基づいて、一対の電線51,52間の電圧V5が第1基準電圧V3以下であれば送信部101から火災報を送信させない。
上記構成によれば、一対の電線51,52間の電圧V5が第1基準電圧V3以下である場合、制御部4は、一対の電線51,52に流れる電流を送信部101に引き込ませることを抑制する。一対の電線51,52間の電圧V5が第1基準電圧V3以下である場合とは、一対の電線51,52に火災報が送信(送出)されている場合である。したがって、制御部4は、一対の電線51,52に火災報が送信(送出)されている場合に、送信部101から火災報を送信(送出)させることを抑制する。そのため、複数の火災報が一対の電線51,52に送出されることによって一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満になることが抑制される。したがって、1台の火災感知器1の送信部101から火災報が送出されると、一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2以上第1基準電圧V3以下になるので、親機14は、一対の電線51,52に火災報が送信(送出)されたことを認識できる。言い換えると、親機14が火災報を誤認識することを抑制可能な自動火災報知システムA1の火災感知器1を提供することができる。
制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5が第1基準電圧V3以下であっても送信部101から連動報を送信させることが好ましい。
上記構成によれば、一対の電線51,52に火災報が送信(送出)されていても、制御部4は、送信部101から連動報を送信(送出)させることができる。送信部101は、一対の電線51,52間の電圧V5を、第2基準電圧V2未満にして連動報を送信(送出)する。そのため、一対の電線51,52に火災報が送信されている状態で連動報を送信しても、送信部101は、一対の電線51,52間の電圧V5を第2基準電圧V2未満にすることができる。したがって、一対の電線51,52に火災報が送信(送出)されている状態で連動報が送信(送出)された場合でも、親機14は、連動報を認識することができる。
送信部101は、一対の電線51,52間の抵抗値を小さくすることより連動報を送信する。制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満であっても送信部101から連動報を送信させることが好ましい。
上記構成によれば、一対の電線51,52に連動報が送信(送出)されていても、制御部4は、送信部101から連動報を送信(送出)させる。送信部101は、一対の電線51,52間の抵抗値を小さくすることより連動報を送信する。一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満である状態で、送信部101が一対の電線51,52間の抵抗値を小さくしても、一対の電線51,52間の電圧V5は、連動報が送信(送出)される電圧レベルからほとんど低下しない。そのため、親機14は、連動報を認識することができる。
本実施形態の自動火災報知システムA1は、上記した火災感知器1を複数備え、一対の電線51,52に電気的に接続される親機14をさらに備える。親機14は、印加部11と、親機側検出部12と、識別部13とを有する。印加部11は、一対の電線51,52に電圧を印加する。親機側検出部12は、一対の電線51,52に流れる電流を検出する。識別部13は、火災感知器1から送信された火災報及び連動報を、親機側検出部12の検出結果に基づいて識別する。
上記構成によれば、複数の火災感知器1が一対の電線51,52に接続されていても、親機14が火災報を誤認識することを抑制可能な自動火災報知システムA1を実現することができる。
スイッチング素子81,82は、例えばサイリスタのような自己保持型のスイッチング素子でもよい。例えば、自己保持型のスイッチング素子81,82がそれぞれオン状態になると、制御部4から信号が入力されなくても送信部101は一対の電線51,52に流れる電流の引き込み状態を維持することができる。例えば、制御部4が動作を停止しても、オン状態の自己保持型のスイッチング素子81,82によって送信部101は電流の引き込み状態を維持するので、火災報又は連動報の送信状態が維持される。
したがって、送信部101は、自己保持型のスイッチング素子82を有し、スイッチング素子82がオン状態になることにより一対の電線51,52間を導通状態にして連動報を送信するように構成されていてもよい。
上記構成によれば、送信部101は、自己保持型のスイッチング素子82がオン状態になることにより一対の電線51,52間を導通状態にして電圧V5を第2基準電圧V2未満にする。自己保持型のスイッチング素子82がオン状態になっている間は、制御部4が自己保持型のスイッチング素子82をオフ状態にするか、又は制御部4がリセットされない限り、送信部101は連動報を送出し続けることができる。例えば、送信部101が連動報を送信(送出)した後に制御部4が動作を停止しても、送信部101は連動報を送信し続けることができる。
なお、制御部4は、一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満である場合に、送信部101から連動報を送信させないように構成されていてもよい。
上記構成によれば、一対の電線51,52間の電圧V5が第2基準電圧V2未満である場合、制御部4は、送信部101から連動報を送信(送出)させない。したがって、1台の火災感知器1のみが連動報を送信(送出)した状態となり、複数の連動報が送出されることが抑制される。複数の連動報が送出される場合と比べて、連動報が送信(送出)されている状態における一対の電線51,52間の電圧V5が低下しにくくなる。
本実施形態の送信部101は、「連動報レベルの電流」を一対の電線51,52に流して連動報を送信しているが、一対の電線51,52から所定の電流を引き込んで連動報を送信するように構成されていてもよい。言い換えると、送信部101は、一対の電線51,52から「連動報レベルの電流」よりも小さい「所定の電流」を引き込むことで連動報を送信(送出)するように構成されてもよい。
なお、本実施形態の送信部101は、送信回路21と送信回路22との両方に電流の引き込み動作を行わせることにより連動報を送出しているが、この動作に限定されない。一例として、送信部101は、送信回路21に電流を引き込ませることなく、送信回路22のみで連動報を送出してもよい。
本実施形態の自動火災報知システムA1では、従来のP型の自動火災報知システムで使用する配線と同様の配線が使用される。そのため、従来のP型の自動火災報知システムが使用されている集合住宅などに本実施形態の自動火災報知システムA1を導入する際に、一対の電線を新たに敷設することなく、従来の一対の電線を利用可能である。従来のP型の自動火災報知システムの親機を親機14に交換し、従来のP型の自動火災報知システムの火災感知器を火災感知器1に交換することで自動火災報知システムA1を実現することも可能である。
親機14と火災感知器1とは各々、所望のデータを含む信号を伝送信号として一対の電線51,52に送信する機能を有する。伝送信号は、親機14の印加部11から火災感知器1に供給される電圧に重畳して送信される。なお、親機14と火災感知器1とが伝送信号を送受信する機能は必須の構成ではなく、省略することも可能である。
本実施形態では、親機側検出部12は、一対の電線51,52に流れる電流を検出しているが、この構成に限定されない。例えば親機側検出部12は、一対の電線51,52間の電圧V5を検出するように構成されていてもよい。その場合、親機側検出部12は、一対の電線51,52間の電圧V5を、識別部13に入力可能な範囲の電圧レベルに変換して、識別部13に出力するように構成されていればよい。
本実施形態では、親機14と火災感知器1とは各々、一対の電線51,52に流れる電流を引き込んで一対の電線51,52に火災報を送信するが、一対の電線51,52間の電圧を変化させて火災報及び連動報を送信してもよい。
一対の電線51,52には各々、親機14が接続されている端部と反対側の端部に終端抵抗80(図1参照)が接続されている。親機14は、一対の電線51,52間に流れる電流の電流値を計測することで、一対の電線51,52の断線を検知することが可能である。なお、終端抵抗80は必須の構成ではなく、省略されていてもよい。
親機14は、警報音発生部を有していてもよい。警報音発生部は例えば、スピーカなどの音を発生させる装置を備えている。警報音発生部の動作は、例えば親機側制御部141により制御され、一対の電線51,52から受信したデータの内容に応じて、警報音を鳴らしたり音声案内を再生したりする。
親機14の識別部13は、一対の電線51,52に送信された信号が火災報か、連動報かを識別することに加えて、伝送信号であるか否かを識別するように構成されていてもよい。
本実施形態では、1個の制御部4が、送信回路21,22と、伝送送信回路23と、報知部104と、電圧検出部3と、検知部120との動作を制御しているが、制御部4の数を1個に限定する趣旨ではない。複数の制御部により、送信回路21,22と、伝送送信回路23と、報知部104と、電圧検出部3と、検知部120とが個別に制御されていてもよい。そして制御部4が、その複数の制御部の各々を制御するように構成されていてもよい。
スイッチング素子81,82は、npn型のトランジスタに限定されず、一対の電線51,52からの電流の引き込み量を制御部4によって制御される適宜の半導体素子でよい。スイッチング素子81,82は、例えばpnp型のトランジスタや、電界効果トランジスタでもよい。
電源回路105は、一対の電線51,52間の電圧が変動しても火災感知器1が電力不足にならないように構成されていればよく、コンデンサを有していない適宜の構成であってもよい。
なお、親機側制御部141及び火災感知器1の制御部4がそれぞれ実行するプログラムは、それぞれのマイクロコンピュータのメモリに予め書き込まれていてもよい。他にも例えば、それぞれのプログラムは、メモリカードのような記録媒体に記憶されて提供されてもよいし、インターネットのような電気通信回線を通して提供されてもよい。