以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、Y,M,C,Kのトナー像を形成するための4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための作像ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態に係るプリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、転写体としての中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサーが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサーとしては、透磁率センサーからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサーは、Kトナー濃度を検知していることになる。
実施形態に係るプリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタのメイン制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。なお、以下、便宜上、トナー濃度センサーからの出力電圧値をトナー濃度検知結果という。また、Vtrefをトナー濃度目標値という。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用の作像ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の作像ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,1M,1C上にY,M,Cトナー像が形成される。作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。なお、主走査方向はレーザー光が光走査する方向であり、感光体の回転軸方向や、後述する中間転写ベルト31の表面移動方向に対して直交する方向と同じ方向である。この主走査方向と同じ方向を第一方向と定義する。
作像ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写バイアスローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、第一ベルトクリーニング装置37なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写バイアスローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に一次転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、一次転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の下方には、二次転写接地ローラ36、光学センサーユニット40、ニップ形成ベルト41、第二ベルトクリーニング装置43などを具備するニップ形成ユニット38が配設されている。無端状のニップ形成ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写接地ローラ36などの複数のローラによって張架された状態で、何れか一つのローラの回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられる。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、二次転写バイアスローラ33に対する掛け回し領域に当接して二次転写ニップを形成している。つまり、転写ユニット30の二次転写バイアスローラ33と、ニップ形成ユニット38の二次転写接地ローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト31及びニップ形成ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たるニップ形成ベルトのおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。ニップ形成ベルト41のループ内に配設された二次転写接地ローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写バイアスローラ33には、二次転写電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写バイアスローラ33と、二次転写接地ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写バイアスローラ33側から二次転写接地ローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。なお、ニップ形成部材として、ニップ形成ベルト41の代わりに、二次転写ローラを用い、これを中間転写ベルト31に直接当接させてもよい。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった二次転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接している第一ベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、第一ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
パーソナルコンピュータやスキャナなどの外部機器から送られてきた画像情報に基づいて作像されるトナー像は、二次転写ニップ内で中間転写ベルト31から記録シートPに二次転写される。これに対し、作像ユニット1Y,M,C,Kの作像能力を測定するために作像される所定のテストトナー像は、二次転写ニップ内で中間転写ベルト31からニップ形成ベルト41に二次転写される。
ニップ形成ユニット38の光学センサーユニット40は、複数の反射型フォトセンサーを具備しており、ニップ形成ベルト41のループ外側で、ニップ形成ベルト41のおもて面に対して所定の間隔を介して対向している。この状態で、ニップ形成ベルト41上に二次転写されたテストトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、複数の反射型フォトセンサーのそれぞれによってトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を検知する。
テストトナー像のトナー付着量を中間転写ベルト31上ではなくてニップ形成ベルト41上で検知するのは、次に説明する理由による。即ち、転写残トナーなどの付着物を無端状のベルト部材から除去する方式としては、ベルト表面に当接させたクリーニングブレードのエッジによって付着物をベルト表面から掻き取る方式が最も良好なクリーニング性を発揮する。ところが、本プリンタのように、中間転写ベルト31として、表面に弾性層を被覆した多層構造のものを用いる構成では、クリーニングブレードをベルト表面に当接させると、ブレードのスティックスリップ現象を頻繁に引き起こしてしまう。このため、ブレードクリーニング方式を採用することが困難である。本プリンタでは、そのような理由から、中間転写ベルト31の表面をクリーニングする第一ベルトクリーニング装置37として、ブラシローラによって付着物をベルト表面から掻き取るものを採用している。かかるブラシローラ方式の第一ベルトクリーニング装置37では、トナー付着密度の比較的低い二次転写残トナーをクリーニングすることは可能であるが、トナー付着密度の比較的高いテストトナー像が運ばれてくると、トナー落ちを引き起こし易い。トナー落ちは、ブラシローラのブラシ内に捕捉したトナーを、再びブラシ内から中間転写ベルト31に吐き出して、ベルト表面から機内や記録シートPなどに落下させてトナーによる機内汚染を引き起こす現象である。そこで、テストトナー像などといったトナー付着密度が比較的高いにもかかわらず、記録シートPに二次転写しないトナー像については、二次転写ニップでニップ形成ベルト41に二次転写した後、第二ベルトクリーニング装置43によってベルト表面から除去する。
ニップ形成ベルト41としては、ポリイミドなどを主成分とする単層無端ベルトからなるものを用いている。かかるニップ形成ベルト41については、ブレードクリーニング方式を採用しても、ブレードのスティックスリップを引き起こすことがない。
第二ベルトクリーニング装置43は、クリーニングブラシローラ43a、ステアリン酸亜鉛塊からなる固形潤滑剤43b、クリーニングブレード43cなどを具備している。クリーニングブラシローラ43aは、固形潤滑剤43bと固形潤滑剤43bとに当接した状態で回転駆動する。その回転に伴って、固形潤滑剤43bから掻き取って得た潤滑剤粉末をニップ形成ベルト41の表面に塗布することで、ニップ形成ベルト41の表面におけるトナー離型性を高める。同時に、ニップ形成ベルト41の表面からトナーなどの付着物を掻き取る。クリーニングブレード43cは、クリーニングブラシローラ43aとの当接位置を通過した後のニップ形成ベルト41の表面に当接しながら、その表面上の付着物を掻き取る。クリーニングブレード43cよりも上流側のクリーニングブラシローラ43aからトナーが吐き出されたとしても、それをクリーニングブレード43cによってベルト表面から良好に除去することができる。
ニップ形成ユニット38の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。この給送カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給送カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、ニップ形成ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によってニップ形成ベルト41から曲率分離する。
なお、ニップ形成部材たるニップ形成ベルト41を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、ニップ形成部材たるニップ形成ローラを中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成である。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つの作像ユニット1(Y,M,C,K)のうち、黒用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を黒用の感光体2K上に形成する。
図3は、中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図4に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凹凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の150[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層31aの厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層31aの厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層31aの層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層31aの厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる凹凸形状を表面に有している。弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子31cを分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130〜220℃であり、より好ましくは140℃〜200℃である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しは、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。また、近年の電子写真方式の画像形成装置に求められるような、凹凸シートへの高いトナー転写性を得るために、弾性層31bの23℃50%RH環境下でのマイクロゴム硬度値を35以下にするように柔軟性を調整することが好ましい。マルテンス硬度、ビッカース硬度など、いわゆる微小硬度での計測は、測定部位のバルク方向の浅い領域、すなわち表面近傍のごく限られた領域の硬度しか測定していなのでベルト全体としての変形性能は評価できない。このため、例えば中間転写ベルト31全体としての変形性能が低い構成のものに、最表面に柔軟な材料を用いた場合、微小硬度値を低くしてしまう。このような中間転写ベルト31は変形性能が低い、すなわち凹凸シートへの追従性が悪いので、結果として近年の画像形成装置に求められる凹凸シートへの転写性能を十分に発揮することができなくなってしまう。よって、中間転写ベルト31全体の変形性能を評価することが可能なマイクロゴム硬度を測定して中間転写ベルト31の柔軟性を評価することが好ましい。
弾性層31bの層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層31bが自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子31cとしては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子31cの粒径が1.0μm未満であると、粒子31cによる転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子31cは一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子31cの電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子31cとしては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子31cを弾性層31bに直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子31c同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子31cの弾性層31bの表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子31cの粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cだけを選択的に弾性層31b表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子31cを弾性層31b表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層31bの弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子31cが分散せしめられた弾性層31bの表面方向において、粒子31が存在している部分と、弾性層31bの表面が露出している部分との投影面積比については、粒子31cが存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図5は、二次転写電源の電気回路の要部を、二次転写バイアスローラ33や二次転写接地ローラ36などともに示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140、電源制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、前述した直流電圧に重畳するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
電源制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティ比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写バイアスローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写バイアスローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のデューティを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写バイアスローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写バイアスローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写バイアスローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティ比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写バイアスローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写バイアスローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写バイアスローラ33に出力(印加)する。二次転写バイアスローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写接地ローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のデューティを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
本プリンタにおいては、Kトナーとして、カーボンブラックを含有するものを用いるようになっている。そして、Kトナー像だけでなく、他色のトナー像も形成するカラープリントモードにおいて、図6に示される特性の二次転写バイアスを転写バイアス部材としての二次転写バイアスローラ33に印加するようになっている。本プリンタでは、二次転写バイアスを中間転写ベルト31のループ内側に存在する二次転写バイアスローラ33に印加するようになっている。かかる構成では、二次転写バイアスをトナーと同極性のマイナス極性の値にしているときに、二次転写ニップ内でトナーをベルト側から記録シート側に静電移動させることになる。
図6において、Vppは、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなる二次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク値である。また、第一ピーク値V1は、二次転写バイアスのピークツウピークにおける二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーを中間転写ベルト31側から記録シート側に向けて移動させる静電気力をより大きく発揮する方のピーク値である。また、第二ピーク値V2は、二次転写バイアスの二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーを中間転写ベルト31側から記録シート側に向けて移動させる静電気力をより大きく発揮する方のピーク値である。
前述のような重畳電圧からなる二次転写バイアスを印加する構成では、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを印加する構成に比べて、二次転写ニップにおけるトナーへの逆電荷(本例ではプラス電荷)の注入量を低減する。これにより、トナーの逆帯電や弱帯電化によるトナー像の二次転写不良の発生を抑えることができる。特に、記録シートPとして、表面コート層を具備するコート紙や普通紙など、表面平滑性の比較的良好なものを用いる場合には、逆帯電の注入に起因するトナーの逆帯電や弱帯電化を引き起こし易くなるので有効である。
記録シートPとして、和紙のような表面凹凸に富むものを用いると、表面の凹部に十分量のトナーを二次転写することができずに、表面凹凸にならった画像濃度ムラを引き起こし易くなる。しかしながら、本プリンタでは、中間転写ベルト31として、表面に弾性層を被覆したものを用いる構成では、記録シートPの表面の凹部にもトナーを良好に二次転写して、前述の画像濃度ムラの発生を抑えることができる。二次転写ニップで弾性層を記録シート表面凹凸にならって柔軟に変形させて、記録シートの表面凹部とベルト表面との密着性を高めることで、表面凹部へのトナーの二次転写性を向上させるからである。
図7は、本プリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。メイン制御部260には、作像ユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット80、定着装置90、転写ユニット30、ニップ形成ユニット38、電源制御部200などが接続されている。
電源制御部200には、一次転写電源220、二次転写転写電源39、帯電電源230、現像電源240などが接続されている。なお、一次転写電源220は、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kのそれぞれに印加される一次転写バイアスを個別に出力するものであり、電源制御部200はそれらの出力のそれぞれを個別に制御することが可能である。また、帯電電源230は、帯電ローラ7Y,7M,7C,7Kのそれぞれに印加される帯電バイアスを個別に出力するものであり、電源制御部200はそれらの出力のそれぞれを個別に制御することが可能である。また、現像電源240は、Y,M,C,K用の現像ロールのそれぞれに印加される現像バイアスを個別に出力するものであり、電源制御部200はそれらの出力のそれぞれを個別に制御することが可能である。
メイン制御部260は、演算処理や各種プログラムを実行するCPU260a、データを記憶するRAM260b、ROM260c、不揮発メモリ260dなどを有している。そして、複数枚の記録シートPに画像を連続的にプリントする連続プリント動作中に、必要に応じてトナー濃度目標値補正処理や、トナー強制消費処理を実施する。
現像装置8Y,8M,8C,8において、連続プリント動作中におけるY,M,C,K画像の平均画像面積率が比較的高くなると、トナーを現像装置内に補給してから現像によって消費するまでの時間であるトナー滞留時間が比較的短くなる。すると、トナーの撹拌時間が不足気味になってトナーの帯電量Q/Mが比較的低くなり、これによってトナー粒子と現像ロールとの静電付着力が比較的弱くなることから、現像性が高くなって画像濃度が高くなり易くなる。逆に、平均画像面積率が比較的低くなると、トナー滞留時間が比較的長くなることから、トナーの撹拌時間が過剰気味になってトナーの帯電量Q/Mが比較的長くなる。これにより、トナー粒子と現像ロールとの静電付着力が比較的強くなることから、現像性が低くなって画像濃度が低くなり易くなる。
このようなトナーの帯電量Q/Mの変動による画像濃度の変動を抑えるために行われるのがトナー濃度目標値補正処理である。トナー濃度目標補正処理は、連続プリント動作中において、10枚の記録シートPにプリントする毎に実施される。メイン制御部260は、10枚プリント毎に、中間転写ベルト31の周方向(副走査方向)におけるシート間領域に、Y,M,C,Kの四つのテストトナー像を第一方向(主走査方向、ベルト幅方向、感光体回転軸線方向)に並べて形成する。なお、副走査方向と同じ方向を第二方向と定義する。
シート間領域は、中間転写ベルト31の周方向(副走査方向)における全域のうち、二次転写ニップで先行する記録シートPが密着せしめられる領域と、後続の記録シートPが密着せしめられる領域との間の領域である。シート間領域にテストトナー像を形成することで、記録シートPをテストトナー像の付着で汚してしまうことを回避することができる。なお、四つのテストトナー像は、何れもベタ画像である。
中間転写ベルト31のシート間領域に形成されたY,M,C,Kのテストトナー像は、二次転写ニップで記録シートPに密着されることなく、中間転写ベルト31からニップ形成ベルト41に二次転写される。その後、ニップ形成ベルト41の無端移動に伴って光学センサーユニット40との対向位置を通過する際に、それぞれ光学センサーユニット40の反射型フォトセンサーによってトナー付着量が検知される。Y,M,C,Kの四つのテストトナー像におけるそれぞれのトナー付着量を同時に検知するために、光学センサーユニット40は、第一方向(主走査方向)に並ぶ四つの反射型フォトセンサーを具備している。
光学センサーユニット40によるテストトナー像のトナー付着量の検知結果を受信したメイン制御部260は、その検知結果と所定の目標付着量(目標画像)との差に基づいて、目標付着量が得られるようにトナー濃度目標値を補正する。このようなトナー濃度目標値の補正を、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に行う。
現像装置8Y,8M,8C,8において、連続プリント動作中におけるY,M,C,K画像の平均画像面積率が比較的低くなってトナー滞留時間が比較的長くなると、過剰な撹拌によって外添剤を埋没させたり離脱させたりした劣化トナー粒子が増加してくる。劣化トナー粒子は画質に悪影響を及ぼすことから、現像装置内から排除することが望ましい。そこで、メイン制御部260は、連続プリント動作中において、1枚プリントを実施する毎に、必要に応じてトナー強制消費処理を実施して劣化トナーの現像装置からの排出を促す。
トナー強制消費処理では、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、1枚プリントにおける現像画像の画像面積率(以下、一枚画像面積率という)を算出し、所定の一枚閾値から一枚画像面積率の算出結果を減算してその結果を必要強制消費量とする。一枚画像面積率が一枚閾値よりも大きかった場合には、必要強制消費量がマイナスの値として算出される。一枚画像面積率が一枚閾値よりも大きい場合には、現像によって比較的多くのトナーが消費されて劣化トナーの排出が促され、その分だけトナーの強制消費の必要性が低くなることから、必要強制消費量がマイナスの値として算出されるのである。これに対し、一枚画像面積率が一枚閾値よりも小さい場合には、現像によって少量のトナーしか消費されずに劣化トナーの蓄積が促され、その分だけトナーの強制消費の必要性が高くなることから、必要強制消費量がプラスの値として算出される。
Y,M,C,Kのそれぞれについて必要強制消費量を算出したら、それぞれをそれまでの必要強制消費量累積値に加算する。そして、加算結果が所定の累積閾値を上回った色が存在したら、その色についてトナーの強制消費の必要があると判定する。必要ありと判定した色が一色でもあった場合には、中間転写ベルト31の次のシート間領域にその色の強制消費トナー像を形成して現像装置からのトナー強制消費を行う。但し、次のシート間領域でトナー濃度目標値補正のためのテストトナー像を形成する必要がある場合には、強制消費トナー像の形成よりも、テストトナー像の形成を優先し、更にその次のシート間領域に強制消費トナー像を形成する。
メイン制御部260は、強制消費トナー像を形成した場合には、その強制消費トナー像の面積に基づいて強制消費トナー量を算出し、算出結果を必要強制消費量累積値から減算する。このような処理を、Y,M,C,Kのそれぞれについて個別に行う。
第二ベルトクリーニング装置43としては、最大で画像面積率=200%の画像のトナーをクリーニングし得るクリーニング性能のものを用いている。その画像面積率は、具体的には、中間転写ベルト31のシート間領域の有効面積に対するシート間領域におけるY,M,C,Kのドット面積(画素面積)の累積の割合である。例えば、前述の有効面積の全域にYベタトナー像を形成する場合、そのYベタトナー像の画像面積率は100[%]である。そのYベタトナー像に対し、前述の有効面積の全域に及ぶMベタトナー像(画像面積率=100%)を重ね合わせたYMベタトナー像の画像面積率は200[%]である。また例えば、前述の有効面積の全域に形成されたドット面積率50[%]のハーフトーンYトナー像の画像面積率は50%である。
特許文献1に記載の画像形成装置とは異なり、強制消費トナー像を二色ずつ重ねる代わりに、Y,M,C,Kの四色重ねの強制消費画像を形成すれば、二色重ねを二つ並べる場合に比べてトナーの強制消費効率を高めることができる。しかしながら、そのためには、ベルト上のトナーをクリーニングするクリーニング装置として、多量のトナーからなる四色重ねの強制消費画像をベルトから良好にクリーニングすることが可能なクリーニング性能の高いものを設ける必要がある。クリーニング装置を設けることの主な理由は、転写残トナーなどといった少量のトナーをクリーニングすることにあり、その理由からすればそれほど高いクリーニング性能は要求されない。にもかかわらず、トナーの強制消費効率を高めるためにクリーニング性能の高いクリーニング装置を設けるとコスト高になってしまう。
特許文献1に記載の画像形成装置では、クリーニング装置のクリーニング性能を考慮して、強制消費トナー像を二色ずつ重ねて単位時間たりのトナークリーニング量をある程度の量に留めていると考えられる。それら二つの二色重ね画像の間に間隔を設けずに、それらを互いに隣接させてより大きな面積で形成すれば、ベルトの単位走行距離あたりにおけるトナーの強制消費量をより多くしてトナーの強制消費効率を高めることが可能である。ところが、間隔を設けないと、各色の強制消費トナー像の形成位置誤差に起因して、三色あるいは四色を重ね合わせた過剰重ね部分を発生させる可能性がある。トナー付着密度の高い過剰重ね部分を発生させると、クリーニング装置に対して局所的に大きな負荷をかけて、クリーニング装置の破損を助長したり、クリーニング不良を発生させたりしてしまう。過剰重ね部分の発生を回避するためには、各色の強制消費トナー像がある程度の形成位置誤差をもって作像されたとしても、隣り合う二色重ね画像の重なりを回避できる程度の間隔を設ける必要がある。特許文献1に記載の画像形成装置では、かかる間隔を設けることでトナーの強制消費効率を低下させてしまっているのである。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図8に示されるように、ドット面積率50%のYハーフトーントナー像701Yに対し、ドット面積率50[%]のMハーフトーントナー像701M、Cハーフトーントナー像701C、及びKハーフトーントナー像701Kを重ね合わせたYMCKトナー像の画像面積率は200[%]である。これは、第二ベルトクリーニング装置43のクリーニング性能の範囲内であるので、そのトナーを第二ベルトクリーニング装置43によって不具合無くクリーニングすることができる。ところが、本発明者らは、図8に示されるYMCKトナー像では、ニップ形成ベルト41に良好に二次転写されず、多量の二次転写残トナーを中間転写ベルト31に付着させて、中間転写ベルト31からのトナー落ちを引き起こし易くなることを実験によって見出した。
中間転写ベルト31上に多量の二次転写残トナーを付着させてしまうのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、例えば50%Yハーフトーントナー像701Yでは、ドットの存在しない空白画素と、ドットの存在する出力画素との割合が半分ずつになる。この50%Yハーフトーントナー像701Yに対し、その空白画素だけにドットを重ねるパターンの50%Mハーフトーントナー像701Mを重ね合わせて二次転写した場合、理論的には、YのドットとMのドットとは重なり合わず、単色のベタ画像のような状態になるはずである。ところが、色間でドットの位置を画素単位で正確に調整することは技術的に困難であり、通常は色間の微妙なドットの位置ズレによってYのドットとMのドットとを重ねてしまう画素を多く発生させる。図8に示されるYMCKトナー像では、Y,M,C,Kの4つのドットを重ねてしまう画素も少なからず発生させる一方で、ドットが形成されない空白画素も少なからず発生させる。すると、画素間でのドナー量のバラツキが非常に大きくなって、二次転写ニップで二次転写電流が均一に流れずに、電流量が不安定になることから、二次転写効率が著しく悪くなっていると考えられる。
図9のように、ドット面積率100[%]のベタトナー像(図ではM)と、ドット面積率50[%]ずつの2つのハーフトーントナー像(図ではCとK)とを重ね合わせた場合にも、中間転写ベルト31からのトナー落ちを引き起こすことがあった。ドット面積率100[%]のベタトナー像が存在することから、空白画素を発生させることはないが、色間のドットの位置誤差により、一つのドットしか存在しない画素と、二つのドットが存在する画素と、三つのドットが存在する画素とを発生させる。図8に示されるYMCKトナー像ほどではないものの、画素間のトナー量のバラツキが大きくなることから、中間転写ベルト31に多くの二次転写残トナーを付着させてしまうのである。
図10に示されるように、ドット面積率100[%]のベタトナー像を二つ(図ではMとK)を重ねたものでは、殆ど全ての画素が、二つのドットを重ねたものになる。各画素のトナー付着量が均一になることから、中間転写ベルト31に二次転写残トナーを付着させる量は僅かである。このため、中間転写ベルト31からのトナー落ちを引き起こすことがない。
一方、Y,M,C,Kの四色のうち、特定の色だけ現像装置内の劣化トナーの滞留量を著しく増加させてしまうことを回避するためには、四色のそれぞれでトナー強制消費の要求が高まった場合に、四色同時にトナー強制消費を実施することが望ましい。そのためには、一つのシート間領域に、Y,M,C,Kの四色の強制消費トナー像を形成する必要があるが、それらを全て重ねてしまうと第二ベルトクリーニング装置43のクリーニング性能を超えたトナー量にしてしまう。
トナー量を第二ベルトクリーニング装置43のクリーニング性能の範囲内にするためには、例えばYとM、CとKといった具合に、二色ずつを重ねた二つの重ね合わせ部をシート間領域に2つ形成する必要がある。但し、各色の強制消費トナー像の微妙な位置誤差により、三色又は四色を重ねてしまう過剰重ね部分を発生させてしまうと、第二ベルトクリーニング装置43に対して局所的に大きな負荷をかけて、クリーニング不良を発生させてしまう。このため、過剰重ね部分の発生を回避するために、二つの強制消費トナー像を重ね合わせた重ね合わせ部を二つ形成し、それらの間にある程度の間隔を設けることが望ましい。しかし、既に説明したように、特許文献1に記載の画像形成装置のように間隔を設けると、トナーの強制消費効率を低下させてしまう。
そこで、本プリンタのメイン制御部260は、四色のそれぞれでトナー強制消費の要求が高まった場合(必要強制消費量累積値が累積閾値を上回った場合)に、図11に示されるような第一方向並列型の強制消費画像を形成する。この強制消費画像は、Y強制消費トナー像703YとM強制消費トナー像703Mとを重ね合わせた第一重ね合わせ部704と、C強制消費トナー像703CとK強制消費トナー像703Kとを重ね合わせた第二重ね合わせ部705とを具備している。第一重ね合わせ部704と第二重ね合わせ部705とは、第一方向(主走査方向、感光体回転軸線方向、ベルト幅方向に沿った方向)に所定の間隔をあけて並んでいる。この第一方向並列型の強制消費画像を、主走査方向並行型の強制消費画像と言い換えることもできる。第一方向並列型の強制消費画像は、前述の間隔が設けられていることで、第一重ね合わせ部704と第二重ね合わせ部705との位置誤差による互いの重なりが回避されている。
間隔を設けている点については、特許文献1に記載の画像形成装置と同様であるが、同画像形成装置と大きく異なっている点は、二つの重ね合わせ部の並んでいる方向である。特許文献1に記載の画像形成装置では、YC重ね合わせ部と、MK重ね合わせ部とを副走査方向(ベルト移動方向)に並べている。間隔の大きさとしては、5[mm]程度にすれば十分であると思われるが、特許文献1に記載の画像形成装置の構成では、5[mm]の間隔を設けると、それによるトナー強制消費量の減少が非常に大きなものになってしまう。これは次に説明する理由による。即ち、一般に、有効画像領域の第一方向(主走査方向)の長さは、ある程度の大きさがある。一般に市販されている画像形成装置は、小型の機種であっても、A4サイズには対応していることから、最小でも、第一方向(主走査方向)の長さは160[mm]程度になる。近年においては、A4サイズに対応する機種が主流であり、かかる機種では、第一方向(主走査方向)の長さが300[mm]程度になる。第一方向(副走査方向)に5[mm]の間隔を設けた場合、小型の機種では800[mm]、一般的な機種では1500[mm]の有効面積を空白にしてしまい、その分だけトナー強制消費量を減少させてしまう。
一方、本プリンタのように、第一重ね合わせ部704と第二重ね合わせ部705とを第一方向に並べた第一方向並列型の強制消費画像では、互いの重ね合わせ部の位置誤差による重なりを回避するために、次のようにすればよい。即ち、第一方向(主走査方向)に5[mm]ほどの間隔を設ければよい。強制消費画像に求められる第二方向(副走査方向)の長さはそれほど大きなものではない。例えば、シート間領域に強制消費画像を形成する場合には、通常のシート間領域は数十[mm]であるので、強制消費画像に必要な第二方向(副走査方向)の長さも数十[mm]程度である。位置誤差によってシート領域にずれ込んでしまうことを回避するためには、ある程度の余白を設ける必要があることから、実質的には20〜30[mm]程度である。よって、本プリンタのように第一重ね合わせ部704と第二重ね合わせ部705とを第一方向に並べた第一方向並列型の強制消費画像では、間隔を設けることによって生じてしまう空白面積は5[mm]×30[mm]=150[mm]程度に留まる。このように、二つの重ね合わせ部を副走査方向に並べる構成に比べて、間隔を設けることによって生じてしまう空白面積を大幅に低減することが可能なので、空白を設けることによるトナー強制消費量の減少を大幅に低減する。これにより、間隔を設けることによるトナーの強制消費効率の低下を抑えることができる。
メイン制御部260は、トナー強制消費処理にて、四色のうち、三色のそれぞれでトナー強制消費の要求が高まった場合には、図12に示されるような変則並列型の強制消費画像を形成する。この強制消費画像は、三色の強制消費トナー像(図では703M,C,K)のうち、二つ(図では703M、K)を中間転写ベルト31上で第一方向(主走査方向)に間隔をあけて並べている。更に、それら強制消費トナー像のそれぞれに対し、第一方向に延在する他の一つの強制消費トナー像(図では703C)を重ねたものである。三色の強制消費トナー像のうち、他の二色の強制消費トナー像のそれぞれに重なっている強制消費トナー像(図では703C)の面積が最も大きくなっている。メイン制御部260は、トナー強制消費の要求が高まった三色のうち、トナーの必要強制消費量累積値の最も大きい色を特定し、その色の強制消費トナー像を他の二色の強制消費トナー像に重なる最大面積のものにする。
以下、図11に示される強制消費トナー像(703Y,M,C,K)のように、第一方向(主走査方向)の長さが比較的短いものを、短形の強制消費トナー像という。これに対し、図12に示されるC強制消費トナー像703Cのように、第一方向(主走査方向)の長さが比較的長いものを、長形の強制消費トナー像という。
トナー強制消費処理にて、四色のうち、二色だけでトナー強制消費の要求が高まった場合には、中間転写ベルト31のシート間領域にそれら二色の強制消費トナー像だけを形成すればよい。強制消費画像として、図10に示されるような、ドット面積率100[%]のベタの強制消費トナー像を二色分重ねたものを形成しても、第二ベルトクリーニング装置43のクリーニング性能を超えるトナー量にすることがない。そこで、メイン制御部260は、二色だけでトナー強制消費の要求が高まった場合には、それら二色の強制消費トナー像として、シート間領域の有効領域の全域に渡るドット面積率100[%]の強制消費トナー像をそれぞれ作像してそれらを重ね合わせる。
また、トナー強制消費処理にて、四色のうち、一色だけでトナー強制消費の要求が高まった場合、メイン制御部260は、その色について、ドット面積率100[%]のベタの強制消費トナー像を作像し、それを強制消費画像とする。なお、四色のうち、何れの色もトナー強制消費の要求が高まらなかった場合、メイン制御部260は次のシート間領域に強制消費画像を形成しない。即ち、トナー強制消費動作を実施しない。
図1は、実施形態に係るプリンタをそのプリンタの正面側から示している。つまり、図1において、図の紙面に直交する方向が本プリンタの前後方向に沿っているとともに、第一方向(主走査方向)に沿っている。そして、第一方向(主走査方向)において、図中の手前側が本プリンタの前側であり、奥側が本プリンタの後側である。また、図の紙面に向かって左右方向が本プリンタの一次転写ニップや二次転写ニップにおける第二方向(副走査方向)である。
図11において、矢印方向は第一方向(主走査方向)を示しており、第一方向に沿った右方向は本プリンタの後方に相当する。また、第一方向に沿った左方向は本プリンタの前方に相当する。同図に示される第一方向並列型では、中間転写ベルト31の第一方向(主走査方向)における後寄りの領域にYMの二色を重ねた第一重ね合わせ部を形成し、第一方向における前寄りの領域にCKの二色を重ねた第二重ね合わせ部を形成している。このような第一方向並列型の強制消費画像を形成する際、Y強制消費トナー像やM強制消費トナー像は、感光体(2Y,2M)の表面上において第一方向(主走査方向)の後寄りの領域だけに形成される。また、C強制消費トナー像やK強制消費トナー像は、感光体(2C,2K)の表面上において第一方向(主走査方向)の前寄りの領域だけに形成される。そして、図示の第一方向並列型の強制消費トナー像を長期間に渡って形成し続けると、YやMでは、感光体の表面における第一方向(主走査方向)の後寄りの領域だけに強制消費トナー像に由来する一次転写残トナーを発生させ続ける。すると、ドラムクリーニング装置(3Y,3M)のクリーニングブレードに対して第一方向(主走査方向)の後寄りの領域だけに比較的多くの一次転写残トナーを到達させ続けることになる。そして、ドラムクリーニング装置のクリーニングブレードの第一方向(主走査方向)における前寄りの領域でブレード捲れを発生させ易くなってしまう。また、CやKでは、同様の理由により、ドラムクリーニング装置(3C,3K)のクリーニングブレードの第一方向(主走査方向)における後寄りの領域でブレード捲れを発生させ易くなってしまう。
そこで、メイン制御部260は、トナー強制消費処理にて、主走査並列型の強制消費画像における第一重ね合わせ部の第一方向(主走査方向)の位置と、第二重ね合わせ部の主走査方向の位置とを経時で入れ替えるための処理を実施する。また、変則並列型の強制消費画像における二つの短形の強制消費トナー像について、一方の第一方向(主走査方向)の位置と他方の第一方向(主走査方向)の位置とを経時で入れ替えるための処理も実施する。
それらの処理について詳述する。メイン制御部260は、主走査配置フラグの値を1と0とで切り替える。図13に示されるように、次に掲げられる四つの条件のうち、何れか一つでも具備された場合に、主走査配置フラグの値を1に設定する。
a.短形のY強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の後寄りの領域に作像した場合。
b.短形のM強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の後寄りの領域に作像した場合。
c.短形のC強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の前寄りの領域に作像した場合。
d.短形のK強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の前寄りの領域に作像した場合。
また、メイン制御部260は、図14に示されるように、次に掲げられる四つの条件のうち、何れか一つでも具備された場合に、主走査配置フラグの値を0に設定する。
e.短形のY強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の前寄りの領域に作像した場合。
f.短形のM強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の前寄りの領域に作像した場合。
g.短形のC強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の後寄りの領域に作像した場合。
h.短形のK強制消費トナー像を第一方向(主走査方向)の後寄りの領域に作像した場合。
なお、本プリンタでは、Y及びMにおける少なくとも一方の短形の強制消費トナー像と、C及びKにおける少なくとも一方の短形の強制消費トナー像とを同時に形成する場合、前者と後者とを必ず第一方向(主走査方向)に並べて形成する。つまり、必ず前者と後者とを第一方向(主走査方向)における互いに逆寄りの領域に形成する。よって、上記a〜dにおける少なくとも何れか一つの条件と、上記e〜hにおける少なくとも何れか一つの条件とを同時に成立させることはない。よって、トナー強制消費処理で第一方向並列型の強制消費画像や変則並列型の強制消費画像を形成した場合、四色における何れの色においても、短形の強制消費トナー像の第一方向(主走査方向)における位置を必ず前回の位置と切り替えることになる。
メイン制御部260は、トナー強制消費処理で第一方向並列型の強制消費画像や変則並列型の強制消費画像を形成する場合には、必ず、短形の強制消費トナー像を主走査配置フラグの設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。これにより、同じ色の短形の強制消費トナー像において、第一方向(主走査方向)の形成位置が前寄りと後寄りとで交互に入れ替えるようになっている。
よって、本プリンタにおいて、トナー強制消費処理で主走査配置フラグを設定する処理は、第一方向並列型の強制消費画像を形成した場合に、次のようなことを行うための処理になっている。即ち、次回のトナー強制消費処理で、主走査並列型の強制消費画像を形成するのか、変則並列型の強制消費画像を形成するのかにかかわらず、今回と次回とで同じ色の強制消費トナー像について、第一方向の位置を今回と次回とで入れ替えるための処理である。
また、本プリンタにおいて、トナー強制消費処理で主走査配置フラグを設定する処理は、変則並列型の強制消費画像を形成した場合に、次のようなことを行うための処理にもなっている。即ち、次回のトナー強制消費処理で、主走査並列型の強制消費画像を形成するのか、変則並列型の強制消費画像を形成するのかにかかわらず、今回と次回とで同じ色の強制消費トナー像について、第一方向の位置を今回と次回とで入れ替えるための処理である。
図15は、連続プリント動作の後半において、Y,M,C,Kの四色のそれぞれでトナー強制消費要求が高めるケースが継続した場合における各シート間領域での画像形成態様の一例を説明するための模式図である。この例では、まず、あるタイミングで一枚プリントを行ったときに四色全てのトナー強制消費要求が高まったことに基づいて、次のシート間領域に、次に説明するような第一方向並列型の強制消費画像を形成している。即ち、第一重ね合わせ部704を第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させつつ、第二重ね合わせ部705を第一方向の前方寄りの領域に位置させた主走査並列型の強制消費画像である。そして、かかる強制消費画像を形成したことに基づいて、主走査配置フラグを0に設定している。この設定の直前まで主走査配置フラグの値は1になっていたのでフラグの切り替えを行ったことになる。次に、一枚プリントを行うと、再び四色全てのトナー強制消費要求が高まっていることから、次のシート間領域にも第一方向並列型の強制消費画像を形成する。このとき、主走査配置フラグが0に設定されていることから、各色の強制消費トナー像を0という設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。つまり、図示のように、先の第一方向並列型の強制消費画像とは逆に、第二重ね合わせ部705を第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させる。加えて、第一重ね合わせ部704を第一方向(主走査方向)の前方寄りの領域に位置させた第一方向並列型の強制消費画像を形成する。
次に主走査配置フラグを0から1に切り替えた後、一枚プリントを行うと、再び四色全てのトナー強制消費要求が高まった。このため、次のシート間領域にも第一方向並列型の強制消費画像を形成したいが、次のシート間領域にはトナー濃度目標値補正処理のためのテストトナー像を形成する必要があった。そこで、メイン制御部260は、トナー強制消費処理(動作)よりもトナー濃度目標値補正処理の実施を優先して、図示のように、次のシート間領域には、強制消費画像を形成せずに、Y,M,C,Kの四つのテストトナー像を形成している。このとき、強制消費画像のための短形の強制消費トナー像を形成していないので、主走査配置フラグの値については、それまで通り1を維持する。
トナー濃度目標値補正処理を終え、更に一枚プリントを終えると、引き続き四色全てのトナー強制消費要求が高まっていることから、次のシート間領域に第一方向並列型の強制消費画像を形成している。このとき、主走査配置フラグが1に設定されていることから、各色の強制消費トナー像を1という設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。つまり、図示のように、先の第一方向並列型の強制消費画像とは逆に、第一重ね合わせ部704を第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させる。加えて、第二重ね合わせ部705を第一方向(主走査方向)の前方寄りの領域に位置させた第一方向並列型の強制消費画像を形成する。そして、かかる強制消費画像を形成したことに基づいて、主走査配置フラグの値を1から0に切り替えている。
次に一枚プリントを終えると、再び四色全てのトナー強制消費要求が高まっている。その一枚プリントが最後のプリントであることから、中間転写ベルト31の表面において、そのプリントに対応するシート領域に続く領域は、シート間領域ではなく、非画像領域である。そこで、この非画像領域に対し、四色全てでトナー強制消費要求を無くすことが可能な第二方向(副走査方向)長さの第一方向並列型の強制消費画像を形成した後、連続プリント動作を停止させている。この第一方向並列型の強制消費画像については、0というフラグ値とは逆の関係になるように形成する。即ち、先に形成した第一方向並列型の強制消費画像とは逆に、第一重ね合わせ部704を第一方向(主走査方向)の前寄りの領域に位置させつつ、第二重ね合わせ部705を第一方向(主走査方向)の後寄りに位置させる。
このように、第一重ね合わせ部704の位置と、第二重ね合わせ部705の位置とを交互に入れ替えることで、各色の感光体において、強制消費トナー像の形成位置を第一方向(主走査方向)の前寄りの位置と後寄りの位置とで交互に入れ替える。これにより、ブレード捲れの発生を抑えることができる。
図16は、連続プリント動作の後半において、Y,M,Kの三色のだけについてトナー強制消費要求が高めるケースが継続した場合における各シート間領域での画像形成態様の一例を説明するための模式図である。この例では、まず、あるタイミングで一枚プリントを行ったときにY,M,Kの三色のトナー強制消費要求が高まったことに基づいて、次のシート間領域に、次に説明するような変則並列型の強制消費画像を形成している。即ち、第一方向において、短形のY強制消費トナー像703Yを後寄り、短形のK強制消費トナー像703Kを前寄りに並べて形成し、それら強制トナー像のそれぞれに対して長形のM強制消費トナー像703Mを重ねた変則並列型の強制消費画像である。三つの強制消費トナー像のうち、M強制消費トナー像703Mを長形としたのは、三色のうち、Mトナーの必要強制消費量累積値が最も大きかったからである。
前述の変則並列型の強制消費画像を形成したメイン制御部260は、主走査配置フラグを0に設定した後に一枚プリントを行うと、同じ三色だけトナー強制消費要求が高まっていることから、次のシート間領域にも変則並列型の強制消費画像を形成している。このとき、主走査配置フラグが0に設定されていることから、Y,Kの強制消費トナー像703Y,Kを0という設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。つまり、図示のように、先の変則並列型の強制消費画像とは逆に、K強制消費トナー像703Kを第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させる。加えて、Y強制消費トナー像703Yを第一方向(主走査方向)の前方寄りの領域に位置させた変則並列型の強制消費画像を形成する。
次に主走査配置フラグを0から1に切り替えた後に一枚プリントを行うと、再び同じ三色だけトナー強制消費要求が高まった。このため、次のシート間領域にも変則並列型の強制消費画像を形成したいが、次のシート間領域にはトナー濃度目標値補正処理のためのテストトナー像を形成する必要があった。そこで、メイン制御部260は、トナー強制消費処理よりもトナー濃度目標値補正処理の実施を優先して、図示のように、次のシート間領域には、強制消費画像を形成せずに、Y,M,C,Kの四つのテストトナー像を形成している。このとき、強制消費画像のための短形の強制消費トナー像を形成していないので、主走査配置フラグの値については、それまで通り1を維持する。
トナー濃度目標値補正処理を終え、更に一枚プリントを終えると、引き続き同じ三色だけトナー強制消費要求が高まっていることから、次のシート間領域に変則並列型の強制消費画像を形成している。このとき、主走査配置フラグが1に設定されていることから、各色の強制消費トナー像を1という設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。つまり、図示のように、先の変則並列型の強制消費画像とは逆に、Y強制消費トナー像703Yを第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させる。加えて、K強制消費トナー像703Kを第一方向(主走査方向)の前方寄りの領域に位置させた変則並列型の強制消費画像を形成する。そして、かかる強制消費画像を形成したことに基づいて、主走査配置フラグの値を1から0に切り替えている。
次に一枚プリントを終えると、再び同じ三色のトナー強制消費要求が高まった。その一枚プリントが最後のプリントであることから、中間転写ベルト31の表面において、そのプリントに対応するシート領域に続く領域は、シート間領域ではなく、非画像領域である。そこで、この非画像領域に対し、三色全てでトナー強制消費要求を無くすことが可能な第二方向(副走査方向)長さの変則並列型の強制消費画像を形成した後、連続プリント動作を停止させている。このとき、フラグ値に従って、K強制消費トナー像703Kを主走査方向の後寄り、Y強制消費トナー像703Yを第一方向(主走査方向)の前寄りに位置させており、これは先に形成した変則並列型の強制消費画像とは逆の位置関係になっている。
このように、変則並列型の強制消費画像に含まれる二つの短形の強制消費トナー像についてそれぞれ、第一方向(主走査方向)の形成位置を前寄りと後寄りとで交互に入れ替える。これにより、各色の感光体において、強制消費トナー像の形成位置を第一方向(主走査方向)の前寄りの位置と後寄りの位置とで交互に入れ替えることで、ブレード捲れの発生を抑えることができる。
図17は、連続プリント動作の後半において、三色だけでトナー強制消費要求が高まったケースや、二色だけでトナー強制消費要求が高まったケースが混在した場合における各シート間領域での画像形成態様の一例を説明するための模式図である。この例では、まず、あるタイミングで一枚プリントを行ったときにY,M,Cの三色のトナー強制消費要求が高まったことに基づいて、次のシート間領域に、次に説明するような変則並列型の強制消費画像を形成している。即ち、第一方向(主走査方向)において、短形のY強制消費トナー像703Yを後寄り、短形のC強制消費トナー像703Cを前寄りに並べて形成している。更に、それら強制トナー像のそれぞれに対して長形のM強制消費トナー像703Mを重ねた変則並列型の強制消費画像である。三つの強制消費トナー像のうち、M強制消費トナー像703Mを長形としたのは、三色のうち、Mトナーの必要強制消費量累積値が最も大きかったからである。
前述の変則並列型の強制消費画像を形成したメイン制御部260は、主走査配置フラグを0に設定した後に一枚プリントを行うと、Y,Mの二色だけトナー強制消費要求が高まった。このため、次のシート間領域に、Y,Mの二色重ね合わせの強制消費画像を形成している。かかる強制消費画像の形成においては、短形の強制消費トナー像を形成しないことから、主走査配置フラグについては、それまで通りの1を維持している。
次に一枚プリントを行うと、Y,M,Cの三色だけトナー強制消費要求が高まった。このため、次のシート間領域には、それら三色による第一方向並列型の強制消費画像を形成したいが、次のシート間領域にはトナー濃度目標値補正処理のためのテストトナー像を形成する必要があった。そこで、メイン制御部260は、トナー強制消費処理よりもトナー濃度目標値補正処理の実施を優先して、図示のように、次のシート間領域には、強制消費画像を形成せずに、Y,M,C,Kの四つのテストトナー像を形成している。このとき、強制消費画像のための短形の強制消費トナー像を形成していないので、主走査配置フラグの値については、それまで通り1を維持する。
トナー濃度目標値補正処理を終え、更に一枚プリントを終えると、Y,M,Cの三色だけトナー強制消費要求が高まったことから、次のシート間領域にY,M,Cの三色による変則並列型の強制消費画像を形成している。このとき、主走査配置フラグが1に設定されていることから、各色の強制消費トナー像を1という設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。つまり、図示のように、先の変則並列型の強制消費画像とは逆に、C強制消費トナー像703Cを第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させる。加えて、Y強制消費トナー像703Yを第一方向(主走査方向)の前方寄りの領域に位置させた変則並列型の強制消費画像を形成する。そして、かかる強制消費画像を形成したことに基づいて、主走査配置フラグの値を1から0に切り替えている。
次に一枚プリントを終えると、Y,Mの二色だけトナー強制消費要求が高まった。その一枚プリントが最後のプリントであることから、中間転写ベルト31の表面において、そのプリントに対応するシート領域に続く領域は、シート間領域ではなく、非画像領域である。そこで、この非画像領域に対し、二色全てでトナー強制消費要求を無くすことが可能な第二方向(副走査方向)長さの二色重ね合わせの強制消費画像を形成した後、連続プリント動作を停止させている。
このように、二つの変則並列型の強制消費画像を連続して形成せずに、それらの間に二色重ね(又は一色)の強制消費画像の形成を挟む場合であっても、次のようにすることで、同じ色の短形の強制消費トナー像の第一方向位置を交互に入れ替えることができる。即ち、二色重ねの強制消費画像や一色だけの強制消費画像を形成したときに主走査配置フラグを切り替えないで同じ値のままにしておくのである。
図18は、連続プリント動作の後半において、三色だけでトナー強制消費要求が高まったケースや、四色全てでトナー強制消費要求が高まったケースが混在した場合における各シート間領域での画像形成態様の一例を説明するための模式図である。この例では、まず、あるタイミングで一枚プリントを行ったときにY,M,Kの三色のトナー強制消費要求が高まったことに基づいて、次のシート間領域に、次に説明するような変則並列型の強制消費画像を形成している。即ち、第一方向(主走査方向)において、短形のY強制消費トナー像703Yを後寄り、短形のK強制消費トナー像703Kを前寄りに並べて形成している。更に、それら強制トナー像のそれぞれに対して長形のM強制消費トナー像703Mを重ねて変則並列型の強制消費画像を形成している。
前述の変則並列型の強制消費画像を形成したメイン制御部260は、主走査配置フラグを0に設定した後に一枚プリントを行うと、四色全てにおいてトナー強制消費要求が高まった。このため、次のシート間領域に、第一方向並列型の強制消費画像を形成している。このとき、主走査配置フラグが0であることから、各色の強制消費トナー像をそのフラグ設定値とは逆の第一方向位置になるように形成している。具体的には、短形のC強制消費トナー像703CやK強制消費トナー像703Kを第一方向(主走査方向)における後寄りの領域に形成している。加えて、短形のY強制消費トナー像703YやM強制消費トナー像703Mを第一方向(主走査方向)における前寄りの領域に形成している。
次に主走査配置フラグを0から1に切り替えてから一枚プリントを行うと、Y,M,Kの三色だけトナー強制消費要求が高まった。このため、次のシート間領域には、それら三色による変則並列型の強制消費画像を形成したいが、次のシート間領域にはトナー濃度目標値補正処理のためのテストトナー像を形成する必要があった。そこで、メイン制御部260は、トナー強制消費処理よりもトナー濃度目標値補正処理の実施を優先して、図示のように、次のシート間領域には、強制消費画像を形成せずに、Y,M,C,Kの四つのテストトナー像を形成している。このとき、強制消費画像のための短形の強制消費トナー像を形成していないので、主走査配置フラグの値については、それまで通り1を維持する。
トナー濃度目標値補正処理を終え、更に一枚プリントを終えると、引き続きY,M,Kの三色だけトナー強制消費要求が高まっていることから、次のシート間領域にY,M,Kの三色による変則並列型の強制消費画像を形成している。このとき、主走査配置フラグが1に設定されていることから、各色の強制消費トナー像を1という設定値とは逆の第一方向位置にするように作像する。つまり、図示のように、先の変則並列型の強制消費画像とは逆に、Y強制消費トナー像703Yを第一方向(主走査方向)の後方寄りの領域に位置させる。加えて、K強制消費トナー像703Kを第一方向(主走査方向)の前方寄りの領域に位置させた変則並列型の強制消費画像を形成する。そして、かかる強制消費画像を形成したことに基づいて、主走査配置フラグの値を1から0に切り替えている。
次に一枚プリントを終えると、四色全てにおいてトナー強制消費要求が高まった。その一枚プリントが最後のプリントであることから、中間転写ベルト31の表面において、そのプリントに対応するシート領域に続く領域は、シート間領域ではなく、非画像領域である。そこで、この非画像領域に対し、四色全てでトナー強制消費要求を無くすことが可能な第二方向(副走査方向)長さの主走査並列型の強制消費画像を形成した後、連続プリント動作を停止させている。
このように、第一方向並列型の強制消費画像の形成と、変則並列型の強制消費画像の形成とを経時で混在させても、次のようにすることで、同じ色の短形の強制消費トナー像における第一方向位置を交互に入れ替えることができる。即ち、短形の強制消費トナー像を形成したことに基づいて、主走査配置フラグを切り替えるのである。
図19は、メイン制御部260によって実施されるトナー強制消費処理の処理フローを示すフローチャートである。メイン制御部260は、トナー強制消費処理を開始すると、まず、Y,M,C,Kの各色について、直前の一枚プリントにおける現像面積に基づいて必要強制消費量を算出する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。そして、Y,M,C,Kの各色について、必要強制消費量の加算によって必要強制消費量α(αY,αM,αC,αK)を更新し、それぞれの更新結果を所定の累積閾値と比較することで、トナー強制消費の必要性について特定する(S2)。次に、トナー強制消費の必要性がある色数について四色であるか否かを判定する(S3)。この判定において、四色であるという判定結果になった場合には(S3でY)、各色の矩形の強制消費トナー像をそれぞれ主走査配置フラグとは逆の配置にした第一方向並列型の強制消費画像を中間転写ベルト31のシート間領域に形成する。この形成のための現像によって四色の全てについて現像装置からトナーを強制消費すると、主走査配置フラグを切り替えた後に(S5)、各色について必要強制消費量累積値αからトナー強制消費量βを減算することで必要強制消費量累積値αを更新する(S6)。その後、一連の処理フローを終了する。
一方、上記S3の判定工程において、四色でないという判定結果になった場合には(S3でN)、次に、トナー強制消費の必要性がある色数について三色であるか否かを判定する(S7)。この判定において、三色であるという判定結果になった場合には(S7でY)、二つの矩形の強制消費トナー像を主走査配置フラグとは逆の配置にした変則並列型の強制消費画像を中間転写ベルト31のシート間領域に形成する(S8)。この形成のための現像によって三色について現像装置からトナーを強制消費すると、主走査配置フラグを切り替えた後に(S9)、三色について必要強制消費量累積値αからトナー強制消費量βを減算することで必要強制消費量累積値αを更新する(S10)。その後、一連の処理フローを終了する。
また、上記S7の判定工程において、三色でないという判定結果になった場合には(S7でN)、次に、トナー強制消費の必要性がある色数について二色であるか否かを判定する(S11)。この判定において、二色であるという判定結果になった場合には(S11でY)、二つの長形の強制消費トナー像を重ね合わせた強制消費画像を中間転写ベルト31のシート間領域に形成する(S12)。この形成のための現像によって二色について現像装置からトナーを強制消費すると、主走査配置フラグを切り替えずに、二色について必要強制消費量累積値αからトナー強制消費量βを減算することで必要強制消費量累積値αを更新する(S13)。その後、一連の処理フローを終了する。
また、上記S11の判定工程において、二色でないという判定結果になった場合には(S11でN)、次に、トナー強制消費の必要性がある色数について一色であるか否かを判定する(S14)。この判定において、一色であるという判定結果になった場合には(S14でY)、一つの長形の強制消費トナー像だけからなる強制消費画像を中間転写ベルト31のシート間領域に形成する(S15)。この形成のための現像によって一色について現像装置からトナーを強制消費すると、主走査配置フラグを切り替えずに、一色について必要強制消費量累積値αからトナー強制消費量βを減算することで必要強制消費量累積値αを更新する(S16)。その後、一連の処理フローを終了する。
また、上記S14の判定工程において、一色でないという判定結果になった場合には(S14でN)、強制消費の必要な色がないことから、強制消費画像を形成することなく(強制消費動作を実施することなく)、一連の処理フローを終了する。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、複数の像担持体(例えば感光体2Y,2M,2C,2K)のそれぞれにトナー像を作像する作像手段(例えば作像ユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット80)と、それら像担持体のそれぞれに作像されたトナー像を転写体に転写する転写手段(例えば転写ユニット30)とを備えるとともに、前記作像手段のトナーを強制消費するために前記複数の像担持体における少なくとも一つに強制消費トナー像を作像してトナーの強制消費を行うトナー強制消費処理にて、前記複数の像担持体のうち、第一像担持体に作像した強制消費トナー像、及び第二像担持体に作像した強制消費トナー像を前記転写体に重ね合わせた第一重ね合わせ部と、第三像担持体に作像した強制消費トナー像、及び第四像担持体に作像した強制消費トナー像を前記転写体に重ね合わせた第二重ね合わせ部とを並べた並列型の強制消費画像を形成する制御手段(例えばメイン制御部260)を備える画像形成装置において、前記トナー強制消費処理にて、前記並列型の強制消費画像として、前記第一重ね合わせ部と前記第二重ね合わせ部とを、前記転写体の表面上における表面移動方向と直交する方向である第一方向に間隔をあけて並べた第一方向並列型の強制消費画像を形成するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成においては、第一方向並列型の強制消費画像の第一重ね合わせ部と第二重ね合わせ部との間に間隙を設けてそれら重ね合わせ部の位置誤差による重なりを回避することで、強制消費画像における過剰重ね部分の発生を回避する。これにより、過剰重ね部分を発生させることによるクリーニング手段の破損やクリーニング不良の発生を回避することができる。
また、態様Aでは、次に説明する理由により、強制消費画像の第一重ね合わせ部と第二重ね合わせ部との間に間隔を設けることによるトナーの強制消費効率の低下を抑えることができる。即ち、転写体上において、互いに異なる画像部の重なりを回避するためには、それら画像部を第二方向に並べているか、第一方向に並べているかにかかわらず、それら画像部の間の間隔を画像部の位置誤差の最大値よりも少しだけ大きくすればよい。このため、その間隔はそれほど大きなものにはならない。一般的な画像形成装置では、5[mm]程度あればよい。しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置のように、二つの画像部を第二方向(副走査方向)に並べるものでは、前述の間隔を第一方向(主走査方向)に沿って設けることになる。この場合、間隔を設けることによってトナーの強制消費効率を大きく低下させてしまう。具体的には、一般に、画像形成装置の有効画像領域における第一方向の長さは、ある程度の大きさがある。小型の機種であっても、A4サイズに対応するためには最小でも第一方向の長さが160[mm]程度必要になる。近年においては、より大きなA3サイズに対応する機種が主流であり、かかる機種では、有効画像領域の第一方向の長さが300[mm]程度にもなる。二つの画像部の重なりを回避するために第二方向に間隔を設けた場合、その間隔と、有効画像領域の第一方向長さとを乗算した面積が空白になる。前述したように、第一方向長さは比較的大きな値であることから、空白面積はある程度大きなものになる。そして、その大きな空白面積に強制消費トナー像のトナーを付着させないことにより、それによる強制消費トナー量の減少量がある程度大きくなってしまう。このため、間隔を設けることによってトナーの強制消費効率を大きく低下させてしまうのである。
これに対し、態様Aのように画像部としての第一重ね合わせ部と第二重ね合わせ部とを第一方向に並べて形成する構成では、それら重ね合わせ部の位置誤差による重なりを回避するための間隔を第一方向に沿って設けることになる。既に述べたように、その間隔はそれほど大きなものにはならない(例えば5mm)。また、例えば一枚プリント毎など、トナー強制消費処理を比較的頻繁に実施するようにすれば、処理一回あたりに必要なトナーの強制消費量はそれほど多くならないので、強制消費画像の面積もそれほど大きなものにはならない。そして、既に説明したように、有効画像領域の第一方向長さはある程度大きくなることから、前述の面積を確保するために必要な第二方向長さはそれほど大きくならない。これらの結果、間隙を設けたことによって生じる空白面積は、5[mm]程度の小さな間隔と、それほど大きくならない前述の第二方向長さをと乗算したものである。これは、間隔を第二方向に設ける構成に比べて小さな値になる。よって、前記構成に比べて、間隔を設けたことによる強制消費トナー量の減少量を低減して、間隔を設けたことによるトナーの強制消費効率の低下を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記第一重ね合わせ部の前記第一方向の位置と前記第二重ね合わせ部の前記第一方向の位置とを経時で入れ替えるための処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、第一重ね合わせ部の第一方向の位置と第二重ね合わせ部の第一方向の位置とを経時で入れ替えない構成に比べて、次のような効果を奏することができる。即ち、複数の像担持体のそれぞれを個別にクリーニングする複数の手段におけるブレード捲れなどといったクリーニング部材の不具合の発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記複数の像担持体のうち、三つの像担持体だけに強制消費トナー像を作像する場合には、それら三つの像担持体のそれぞれに作像する強制消費トナー像のうち、二つを前記転写体上で前記第一方向に間隔をあけて並べ、且つ、それら二つの強制消費トナー像のそれぞれに対し、前記第一方向に延在する他の一つの強制消費トナー像を重ねた変則並列型の強制消費画像を形成するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、他の一つの強制消費トナー像を第一方向に並ぶ二つの強制消費トナー像の一方だけに重ねる構成に比べて、他の一つの強制消費トナー像の面積を大きくして、他の一つの強制消費トナー効率を向上させることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記第一方向並列型の強制消費画像を形成した場合に、次回のトナー強制消費処理で、前記第一方向並列型の強制消費画像を形成するのか、あるいは前記変則並列型の強制消費画像を形成するのかにかかわらず、今回と次回とで同じ像担持体に作像する強制消費トナー像について、前記第一方向の位置を今回と次回とで入れ替えるための処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、次回のトナー強制消費処理で、第一方向並列型の強制消費画像を形成する場合、変則並列型の強制消費画像を形成する場合の何れであっても、同じ像担持体に形成する強制消費トナー像については、今回と次回とで主走査方向の位置を入れ替える。この入れ替えにより、何れの場合であっても、入れ替えない構成に比べて、像担持体をクリーニングする手段におけるクリーニング部材の不具合の発生を確実に抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記変則並列型の強制消費画像を形成した場合に、次回のトナー強制消費処理で、前記第一方向並列型の強制消費画像を形成するのか、あるいは前記変則並列型の強制消費画像を形成するのかにかかわらず、今回と次回とで同じ像担持体に作像する強制消費トナー像について、前記第一方向の位置を今回と次回とで入れ替えるための処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においても、次回のトナー強制消費処理で、第一方向並列型の強制消費画像を形成する場合、変則並列型の強制消費画像を形成する場合の何れであっても、同じ像担持体に形成する強制消費トナー像の第一方向の位置を今回と次回とで入れ替える。この入れ替えにより、何れの場合であっても、入れ替えない構成に比べて、像担持体をクリーニングする手段におけるクリーニング部材の不具合の発生を確実に抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様C〜Eの何れかにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記変則並列型の強制消費画像を形成する場合に、その変則並列型の強制消費画像に含まれる三つの強制消費トナー像のそれぞれを個別に作像する三種類のトナーのうち、強制消費要求の最も高いトナーによって作像する強制消費トナー像を、前記第一方向に延在させて他の二つの強制消費トナー像のそれぞれに重ねるように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、変則並列型の強制消費画像に含まれる三つの強制消費トナー像のうち、強制消費要求の最も高いものの強制消費トナー量を最も多くしてその劣化トナーの排出効率を最も高めることができる。
[態様G]
態様Gは、態様C〜Fの何れかにおいて、前記前記転写体として、弾性材料からなる弾性層を表面に被覆した多層構造の無端状の転写ベルトを用い、前記転写ベルトに当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記転写ニップに転写電流を流すために、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなる転写バイアスを出力する転写電源と、前記転写ニップに記録シートを送り込む送込手段と、前記転写ニップを通過した後の前記転写ベルトの表面をクリーニングする第一クリーニング手段と、前記転写ニップを通過した後の前記ニップ形成部材の表面をクリーニングする第二クリーニング手段とを設け、印刷画像については、前記転写ニップで前記転写ベルト上から記録シート上に転写し、その転写残トナーを前記第一クリーニング手段によって前記転写ベルトからクリーニングする一方で、前記第一方向並列型の強制消費画像や前記変則並列型の強制消費画像については、前記転写ニップで前記転写ベルト上から前記ニップ形成部材上に転写して前記第二クリーニング手段によって前記転写ベルトからクリーニングするようにしたことを特徴とするものである。かかる構成では、多層構造の転写ベルトと重畳電圧からなる転写バイアスとを採用することで、記録シートとして和紙のような表面凹凸に富んだものを用いる場合であっても、その表面凹部にトナーを良好に転写して画像濃度ムラの発生を抑えることができる。また、多層構造の転写ベルトを採用していることに起因して第一クリーニング手段としてブレードクリーニング方式のようなクリーニング性能の高いものを用いることができなくても、第二クリーニング手段によって強制消費画像を良好にクリーニングする。これにより、強制消費画像を形成することによるトナー落ちの発生を抑えることができる。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記複数の像担持体のうち、二つの像担持体だけに強制消費トナー像を作像する場合には、それら二つの像担持体のそれぞれに対し、前記第一方向並列型の強制消費画像に含まれる強制消費トナー像よりも前記主走査方向の長さが大きい強制消費トナー像を作像し、それら強制消費トナー像を前記転写体上に重ね合わせて転写して強制消費画像を形成するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、過剰重ね部分を発生させることなく、二つの強制消費トナー像として、第一方向並列型の強制消費画像に含まれるような短形のものを形成する場合に比べて二つのそれぞれについてトナー強制消費効率を高めることができる。
[態様I]
態様Iは、態様G又はHにおいて、前記トナー強制消費処理にて、前記複数の像担持体のうち、一つの像担持体だけに強制消費トナー像を作像する場合には、その一つの像担持体に対し、前記第一方向並列型の強制消費画像に含まれる強制消費トナー像よりも前記主走査方向の長さが大きい強制消費トナー像を作像し、その強制消費トナー像を前記転写体上に重ね合わせて転写して単層の強制消費画像を形成するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、一つの強制消費トナー像として、第一方向並列型の強制消費画像に含まれるような短形のものを形成する場合に比べてトナー強制消費効率を高めることができる。
[態様J]
態様Jは、態様G〜Iの何れかにおいて、複数の記録シートに対して画像を連続的に形成する連続プリント動作を実施するときに前記トナー強制処理処理を並行して実施し、前記トナー強制消費処理にて、前記第一方向並列型の強制消費画像や前記変則並列型の強制消費画像を前記転写ベルトの表面移動方向における先行する記録シートに密着する領域と後続の記録シートに密着する領域との間のシート間領域に形成するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、トナー強制消費処理を例えば一枚プリント毎などといった高頻度で実施して、強制消費画像の必要面積を比較的小さくすることができる。