以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタの一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を作像するための4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kを備えている。そして、それら4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kを、後述する像担持ベルトとしての中間転写ベルト61に対してその無端移動方向に沿って並べたいわゆるタンデム型の構成になっている。
このプリンタは、給紙路30、転写前搬送路31、手差し給紙路32、手差しトレイ33、レジストローラ対34、搬送ベルトユニット35、定着装置40、搬送切替装置50、排紙路51、排紙ローラ対52、排紙トレイ53等も備えている。更には、2つの光書込ユニット1YM、1CK、一次転写ユニット60、二次転写ユニット78、第1給紙カセット101、第2給紙カセット102等も備えている。
作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、潜像担持体たるドラム状の感光体3Y,3M,3C,3Kを有している。また、第1給紙カセット101,第2給紙カセット102は、それぞれ内部に記録シートPの束を収容している。そして、給送ローラ101a,102aの回転駆動により、シート束における一番上の記録シートPを給紙路30に向けて送り出す。
プリンタ筺体における側面には、手差しトレイ33が筺体に対して開閉可能に配設されており、筺体に対して開いた状態でトレイ上面にシート束が手差しされる。手差しされたシート束における一番上の記録シートPは、手差しトレイ33の送出ローラによって給紙路30に向けて送り出される。
2つの光書込ユニット1YM,1CKは、それぞれ、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有している。そして、プリンタ外部のスキャナによって読み取られた画像情報や、パーソナルコンピュータから送られてくる画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動して、作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの感光体3Y,3M,3C,3Kを光走査する。具体的には、作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの感光体3Y,3M,3C,3Kは、駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる。光書込ユニット1YMは、駆動中の感光体3Y,3Mに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体3Y,3Mには、Y,M画像情報に基づいた静電潜像が形成される。また、光書込ユニット1CKは、駆動中の感光体3C,3Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向せしめながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体3C,3Kには、C,K画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ、潜像担持体たる感光体3Y,3M,3C,3Kと、その周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持した状態で、それらがプリンタ筐体に対して一体的に着脱されるものである。それら作像ユニットは、互いに使用するトナーの色が異なる点の他は同様の構成になっている。Y用の作像ユニット2Yを例にすると、これは、感光体3Yの他、これの表面に形成された静電潜像をYトナー像に現像するための現像装置4Yを有している。また、回転駆動される感光体3Yの表面に対して一様帯電処理を施す帯電装置5Yや、後述するY用の一次転写ニップを通過した後の感光体3Y表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置6Yなども有している。
感光体3Yは、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものである。ドラム状のものに代えて、無端ベルト状のものを用いてもよい。
現像装置4Yは、非磁性パイプからなる回転可能な現像スリーブと、これの中空内にスリーブと連れ回らないように配設されたマグネットローラとを具備している。そして、マグネットローラの発する磁力によって現像スリーブの表面に担持した磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に現像剤という)により、感光体3Y上の静電潜像を現像する。この際、現像スリーブに印加される現像バイアスと、感光体3Y上の静電潜像との電位差により、現像スリーブ上で静電潜像に対向するYトナーに対して現像ポテンシャルを作用させる。これに対し、現像バイアスと、感光体3Yの地肌部との電位差により、現像スリーブ上で感光体3Yの地肌部に対向するYトナーに対して地肌ポテンシャルを作用させる。それらのポテンシャルにより、現像スリーブ上のYトナーを感光体3Yの静電潜像と地肌部とのうち、静電潜像だけに選択的に付着させて、静電潜像を現像する。
現像装置4Yに対しては、Yトナー補給装置により、Yトナーボトル103Y内のYトナーが適宜補給される。現像装置4Y内にはトナー濃度検知手段としてのトナー濃度センサーが設けられている。トナー濃度センサーは磁性体であるキャリアに起因する現像剤の透磁率を検出するものである。後述するメイン制御部は、このトナー濃度センサーからの出力値と、トナー濃度目標値であるセンサーからの出力目標値との比較に基づいて、Yトナー補給装置の駆動を制御することで、現像剤のトナー濃度を一定範囲内(例えば4wt%〜9wt%)にしている。現像装置4M,4C,4Kついても、同様のトナー補給制御を行う。
ドラムクリーニング装置6Yは、感光体3Yに当接させたポリウレタンゴム製のクリーニングブレードによって感光体3Yの表面から転写残トナーを掻き取る方式のものである。かかる方式のものに代えて、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、ドラムクリーニング装置6Yは、クリーニングブレードに加えて、回転自在なファーブラシも感光体3Yに当接させている。このファーブラシは、固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体3Y表面に塗布する役割も兼ねている。
感光体3Yの上方には、除電ランプが配設されており、この除電ランプも作像ユニット2Yの一部になっている。除電ランプは、ドラムクリーニング装置6Yを通過した後の感光体3Y表面を光照射によって除電する。除電された感光体3Yの表面は、帯電装置5Yによって一様に帯電せしめられた後、上述した光書込ユニット1YMによる光走査が施される。なお、帯電装置5Yは、電源から帯電バイアスの供給を受けながら回転駆動するものである。かかる方式のものに代えて、感光体3Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ方式のものを採用してもよい。
Y用の作像ユニット2Yについて説明したが、M,C,K用の作像ユニット2M,2C,2Kも、Y用の作像ユニット2Yと同様の構成になっている。
4つの作像ユニット2Y,2M,2C,2Kの下方には、一次転写ユニット60が配設されている。この一次転写ユニット60は、複数のローラによって張架している像担持体たる中間転写ベルト61を、感光体3Y,3M,3C,3Kに当接させながら、何れか1つのローラの回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体3Y,3M,3C,3Kと中間転写ベルト61とが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。
Y,M,C,K用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ62Y,62M,62C,62Kによって中間転写ベルト61を感光体3Y,3M,3C,3Kに向けて押圧している。これら一次転写ローラ62Y,62M,62C,62Kには、それぞれ一次転写電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の一次転写ニップには、感光体3Y,3M,3C,3K上のトナー像を中間転写ベルト61に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト61のおもて面には、Yトナー像,Mトナー像,Cトナー像,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト61のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
中間転写ベルト61の図中下方には、二次転写ユニット78が配設されている。この二次転写ユニット78は、無端状の二次転写ベルト77、接地従動ローラ72、駆動ローラ、二次ベルトクリーニング装置76、トナー付着量検知センサー64などを有している。二次転写ベルト77は、そのループ内側に配設された接地従動ローラ72と、駆動ローラとによってテンション張架されながら、駆動ローラの回転駆動に伴って図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。
二次転写ユニット78の二次転写ベルト77は、自らの接地従動ローラ72に対する掛け回し箇所を、一次転写ユニット60の中間転写ベルト61における二次転写バイアスローラ68に対する掛け回し箇所に当接させて二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト61のループ内側の二次転写バイアスローラ68には後述する二次転写電源から出力される二次転写バイアスが印加されるのに対し、二次転写ベルト77のループ内側の接地従動ローラ72は接地されている。これにより、二次転写ニップ内に二次転写電界が形成される。
二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対34が配設されており、ローラ間に挟み込んだ記録シートPを中間転写ベルト61上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト61上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって記録シートPに一括二次転写され、記録シートPの白色と相まってフルカラー画像となる。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト61のおもて面には、二次転写残トナーが付着している。この二次転写残トナーは、一次転写ユニット60の一次ベルトクリーニング装置75によって中間転写ベルト61の表面から除去される。
二次転写ニップを通過した記録シートPは、中間転写ベルト61や二次転写ベルト77から離間して、搬送ベルトユニット35に受け渡される。この搬送ベルトユニット35は、無端状の搬送ベルト36を駆動ローラ37と従動ローラ38とによって張架しながら、駆動ローラ37の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめる。そして、二次転写ニップから受け渡された記録シートPをベルト上部張架面に保持しながら、ベルトの無端移動に伴って搬送して定着装置40に受け渡す。
定着装置40内に送られた記録シートPは、無端状の定着ベルトと加圧ローラとの当接による定着ニップに挟み込まれる。そして、加圧や加熱などの作用により、その表面にトナー像が定着せしめられる。
二次転写ニップで第1面にトナー像が転写され、且つ定着装置40でその第1面にトナー像が定着せしめられた記録シートPは、搬送切替装置50に向けて送り出される。本プリンタにおいては、搬送切替装置50、再送路54、スイッチバック路55、スイッチバック後搬送路56等により、再送手段が構成されている。搬送切替装置50は、定着装置40から受け取った記録シートPのその後の搬送先を、排紙路51と、再送路54とで切り替える。
具体的には、記録シートPの第1面だけに対して画像を形成する片面モードのプリントジョブの実行時には、搬送先を排紙路51に設定する。これにより、第1面だけに画像が形成された記録シートPを、排紙路51経由で排紙ローラ対52に送って、機外の排紙トレイ53上に排紙する。また、記録シートPの両面に対してそれぞれ画像を形成する両面モードのプリントジョブの実行時において、両面にそれぞれ画像が定着された記録シートPを定着装置40から受け取ったときにも、搬送先を排紙路51に設定する。これにより、両面に画像が形成された記録シートPを、機外の排紙トレイ53上に排紙する。
一方、両面モードのプリントジョブの実行時において、第1面だけに画像が定着された記録シートPを定着装置40から受け取ったときには、搬送先を再送路54に設定する。再送路54には、スイッチバック路55が繋がっており、再送路54に送られた記録シートPはこのスイッチバック路55に進入する。そして、記録シートPの搬送方向の全領域がスイッチバック路55に進入すると、記録シートPの搬送方向が逆転されて、記録シートPがスイッチバックする。スイッチバック路55には、再送路54の他に、スイッチバック後搬送路56が繋がっており、スイッチバックした記録シートPは、このスイッチバック後搬送路56に進入する。このとき、記録シートPの上下が反転する。そして、上下反転した記録シートPは、スイッチバック後搬送路56と、上述した給紙路30とを経由して、二次転写ニップに再送される。二次転写ニップで第2面にもトナー像が転写された記録シートPは、定着装置40を経由して第2面にトナー像が定着せしめられた後、搬送切替装置50と、排紙路51と排紙ローラ対52とを経由して、排紙トレイ53上に排紙される。
中間転写ベルト61は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層と、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層とを具備する多層構造の無端ベルトからなる。弾性層には、粒子が分散せしめられていて、それらの粒子が自らの一部を弾性層の表面から突出させた状態でベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子により、複数の凹凸がベルト面に形成されている。
基層の材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層の前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト61として好適に装備されるシームレスベルトの基層に含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の150[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層の厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層の厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層の厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層の層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層の厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト61の弾性層は、上述したように、分散せしめられた複数の粒子による凹凸形状を表面に有している。弾性層を形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、和紙のような表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子を分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層を構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層に用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130℃〜220℃であり、より好ましくは140℃〜200℃である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しは、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層の抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。また、近年の電子写真方式の画像形成装置に求められるような、凹凸シートへの高いトナー転写性を得るために、弾性層の23℃50%RH環境下でのマイクロゴム硬度値を35以下にするように柔軟性を調整することが好ましい。マルテンス硬度、ビッカース硬度など、いわゆる微小硬度での計測は、測定部位のバルク方向の浅い領域、すなわち表面近傍のごく限られた領域の硬度しか測定していなのでベルト全体としての変形性能は評価できない。このため、例えば中間転写ベルト61全体としての変形性能が低い構成のものに、最表面に柔軟な材料を用いた場合、微小硬度値を低くしてしまう。このような中間転写ベルト61は変形性能が低い、すなわち凹凸シートへの追従性が悪いので、結果として近年の画像形成装置に求められる凹凸シートへの転写性能を十分に発揮することができなくなってしまう。よって、中間転写ベルト61全体の変形性能を評価することが可能なマイクロゴム硬度を測定して中間転写ベルト61の柔軟性を評価することが好ましい。
弾性層の層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートPの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層が自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層の弾性材料に分散せしめる粒子としては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子の樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子としては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子の粒径が1.0μm未満であると、粒子による転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト61のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子は一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子の電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子としては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子を弾性層に直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子における弾性層の表面方向の断面径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子の粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子だけを選択的に弾性層表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子を弾性層の表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層の弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子が分散せしめられた弾性層の表面方向において、粒子が存在している部分と、弾性層の表面が露出している部分との投影面積比については、粒子が存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト61として、弾性層に粒子を分散させていないものを用いることも可能である。
図2は、二次転写電源210の電気回路の要部を、二次転写バイアスローラ68、中間転写ベルト61、二次転写ベルト77、及び接地従動ローラ72ともに示すブロック図である。二次転写電源210は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140、電源制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト61の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シートP側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、前述した直流電圧に重畳するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242、電気接続部243などを具備している。
電源制御部200は、直流電源110及び交流電源140からの出力を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティ比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写バイアスローラ68とがハーネス249によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス249を介して二次転写裏面ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス248によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス248を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のデューティを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写バイアスローラ68に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず二次転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティ比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち電気接続部243と二次転写バイアスローラ68とがハーネス249で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス249を介して二次転写バイアスローラ68に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス249を介して二次転写バイアスローラ68に出力(印加)する。二次転写バイアスローラ68に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、中間転写ベルト61、二次転写ベルト77、及び接地従動ローラ72を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のデューティを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
本プリンタにおいては、Kトナーとして、カーボンブラックを含有するものを用いるようになっている。そして、Kトナー像だけでなく、他色のトナー像も形成するカラープリントモードにおいて、直流電圧に交流電圧を重畳した二次転写バイアスを転写バイアス部材としての二次転写バイアスローラ68に印加するようになっている。かかる構成では、二次転写バイアスをトナーと同極性のマイナス極性の値にしているときに、二次転写ニップ内でトナーをベルト側から記録シート側に静電移動させることになる。
本プリンタのように、中間転写ベルト61として、多層構造であって表面に弾性層を具備するものを用い、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを採用した構成では、次のようなメリットがある。即ち、記録シートPとして和紙のように表面の凹凸に富んだものを用いても、表面の凹部に中間転写ベルト61上のトナーを良好に二次転写することができる。
本プリンタにおいては、画像品質の安定化を図るために、所定のタイミングで条件決定処理を実施する。条件決定処理では、感光体3Yに複数のYベタテストトナー像からなるYテストパターン像を作像する。また、感光体3M,3C,3Kにも、同様にしてMテストパターン像,Cテストパターン像,Kテストパターン像を作像する。そして、それらのテストパターン像における各ベタテストトナー像のトナー付着量を、光学センサーからなるトナー付着量センサーによって検知し、その検知結果に基づいて現像バイアスなどのトナー像形成条件を新たに決定する。なお、ベタとは、空白ドットの存在しない面積階調率100%の画像のことを意味する。
トナー付着量を検知する方法としては、感光体1上のテストトナー像のトナー付着量を検知する方法や、中間転写ベルト61に一次転写したテストトナー像のトナー付着量を検知する方法などがある。感光体1上のテストトナー像のトナー付着量を検知する方法では、各色の作像ユニットにそれぞれトナー付着量センサーを設ける必要があることから、コスト高になる。これに対し、中間転写ベルト61上のテストトナー像のトナー付着量を検知する方法では、複数色のトナー像のトナー付着量検知を共通のトナー付着量センサーで兼用することが可能であることから、低コスト化を実現することができる。しかしながら、本プリンタのように、中間転写ベルト61として、基層の上に弾性層を被覆したものを用いる構成では、後者の方法によってトナー付着量を高精度に検知することが困難になる。中間転写ベルト61のおもて面の色調が暗い色になるからである。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
本プリンタでは、弾性層を設けていない二次転写ベルト77として、明るい色調のものを用い、中間転写ベルト61から二次転写ベルト77に二次転写したテストトナー像のトナー付着量を検知するようになっている。そのために、光学センサーからなるトナー付着量センサー64を二次転写ユニット78に設け、それによって二次転写ベルト77上のテストトナー像のトナー付着量を検知させるようにしている。
かかる構成では、中間転写ベルト61上のテストトナー像のトナー付着量を検知する構成に比べて、テストトナー像のトナー付着量を精度良く検知するので、トナー付着量の検知誤差に起因する画像濃度の不安定化を抑えることができる。
図3は、トナー付着量センサー64を示す構成図である。トナー付着量センサー64は、発光素子64aと、二次転写ベルト77やベルト上のトナー像の表面で正反射した正反射光を受光する正反射受光素子64bと、前記表面で拡散反射した拡散反射光を受光する拡散反射受光素子64cとを具備している。また、光を透過させるためのガラスキャップや、ケーシング等も具備している。
発光ダイオード(LED)等からなる発光素子64aは、二次転写ベルト77上に向けて光を発射する。その光(赤外光)は、ガラスキャップを透過した後、二次転写ベルト77の表面やベルト上のトナー像の表面で反射する。反射光は、トナー付着量センサー64のガラスキャップを再透過して、正反射光受光素子64bや拡散反射受光素子64cに受光される。
発光素子64aとして、発光ダイオードからなるものに代えて、レーザー発光素子からなるものを用いてもよい。正反射受光素子64bは、反射光のうちの正反射光を受光し、受光量に応じた電圧を出力する。また、拡散反射光受光素子64cは、反射光のうち、拡散反射光を受光し、受光量に応じた電圧を出力する。本プリンタは、発光素子64aとして、950[nm]のピーク波長の光を発するGaAs赤外発光ダイオードを用いている。また、2つの受光素子として、ピーク受光感度が800[nm]であるSiフォトトランジスタなどを用いている。フォトダイオードや増幅回路等からなる受光素子を用いてもよい。発光のピーク波長や、ピーク受光感度については、前述した値と異なっていても構わない。
トナー付着量検知センサー64と、二次転写ベルト77のベルト表面との間には、5[mm]程度の距離(検出距離)が設けられている。トナー付着量センサー64の2つの受光素子からの出力はそれぞれ、A/Dコンバーターによってデジタルデータに変換された後、後述するメイン制御部に入力される。このように、トナー付着量検知センサー64は、二次転写ベルト77に二次転写されたトナー像の光学特性を検知する光学センサーである。
図4は、本プリンタの電気回路の要部を示すブロック図である。メイン制御部260には、作像ユニット2Y,2M,2C,2K、光書込ユニット1YM,1CK、搬送ベルトユニット35、定着装置40、搬送切替装置50、一次転写ユニット60、トナー付着量センサー64、二次転写ユニット78などが接続されている。また、電源制御部200、環境センサー250なども接続されている。なお、作像ユニット2Y,2M,2C,2Kは、感光体3Y,3M,3C,3Kの表面電位を個別に検知する表面電位センサーを具備している。
電源制御部200には、一次転写電源220、二次転写転写電源210、帯電電源230、現像電源240などが接続されている。なお、一次転写電源220は、一次転写ローラ62Y,62M,62C,62Kのそれぞれに印加される一次転写バイアスを個別に出力するものであり、電源制御部200はそれらの出力のそれぞれを個別に制御することが可能である。また、帯電電源230は、帯電装置5Y,5M,5C,5Kのそれぞれに印加される帯電バイアスを個別に出力するものであり、電源制御部200はそれらの出力のそれぞれを個別に制御することが可能である。また、現像電源240は、Y,M,C,K用の現像スリーブのそれぞれに印加される現像バイアスを個別に出力するものであり、電源制御部200はそれらの出力のそれぞれを個別に制御することが可能である。
メイン制御部260は、演算処理や各種プログラムを実行するCPU260a、データを記憶するRAM260b、ROM260c、不揮発メモリー260dなどを有している。そして、図示しない主電源の投入時や、所定時間経過した後の待機時、所定枚数以上のプリントを出力したあとの待機時など、所定のタイミングで、条件決定処理を実施する。具体的には、所定のタイミングが到来すると、感光体3Y,3M,3C,3Kを回転させながら一様に帯電せしめる。この帯電については、帯電バイアスとして通常のプリント時における一様な値(例えば−700V)とは異なり、その絶対値を大きくしていく。そして、光書込ユニット1YMによるレーザー光の走査により、感光体3Y、3Mのそれぞれに、互いに電位の異なる複数のテストトナー像用の静電潜像を形成する。また、光書込ユニット1CKによるレーザー光の走査により、感光体3C、3Kのそれぞれに、互いに電位の異なる複数のベタテストトナー像用の静電潜像をそれぞれ形成する。そして、それらの静電潜像の電位を表面電位センサーによって検知して、結果をROM260aに順次格納していく。次いで、それらの静電潜像を現像装置4Y,4M,4C,4Kによって現像して、感光体3Y,3M,3C,3K上にそれぞれ、互いにトナー付着量の異なる複数のベタテストトナー像からなるY,M,C,Kテストパターン像を形成する。なお、現像の際に、現像スリーブに印加する現像バイアスの絶対値を徐々に大きくしていく。現像バイアス、帯電バイアスは、何れも負極性のDCバイアスからなる。
Y,M,C,Kテストパターン像は、中間転写ベルト61上で重なり合わずに、ベルト移動方向に並ぶように一次転写された後、二次転写ベルト77に二次転写される。それらテストパターン像のベタテストトナー像が二次転写ベルト77の無端移動に伴ってトナー付着量センサー64の直下を通過する際、トナー付着量センサー64からそのベタテストトナー像のトナー付着量に応じた電圧が出力される。メイン制御部260は、トナー付着量センサー64から出力された後、デジタルデータに変換された電圧情報と、所定の変換アルゴリズムとに基づいて、ベタテストトナー像のトナー付着量を求めて結果をRAM260aに格納していく。
トナー付着量が検知された後のベタテストトナー像は、二次ベルトクリーニング装置76によって二次転写ベルト77から除去される。
メイン制御部260は、RAM260aに格納したトナー付着量の検知結果と、それぞれの検知結果に対応するベタテストトナー像の静電潜像の電位を検知した結果とに基づいて、近似直線式を最小二乗法によって算出する。トナー付着量と、現像ポテンシャル(静電潜像の電位と現像バイアスとの電位差)との関係を示す近似直線式(Y=a×Vb+b)である。次に、Y,M,C,Kのそれぞれについて算出した近似直線式に基づいて、Y,M,C,Kについて、目標のトナー付着量(ベタ付着量)が得られる帯電バイアス、現像バイアス、及び現像剤のトナー濃度目標値(トナー濃度センサーからの出力目標値)を求める。そして、以降のプリントジョブにおける帯電バイアス、現像バイアス、トナー濃度目標値を、求めた値に調整(設定する)。以上のような条件決定処理により、帯電バイアス、現像バイアス、トナー濃度目標値などのトナー像形成条件を、Y,M,C,Kの各色ついてそれぞれ個別に決定する。なお、トナー付着量の算出方法や条件の決定方法については、例えば、特開2006−139180号公報に詳しく開示されている。
複数の記録シートに対して画像を連続的に形成する連続プリントジョブ(連続画像形成動作)を実施するときには、Y,M,C,K用の現像装置4Y,4M,4C,4K内の現像剤のトナー帯電量Q/Mが変動し易くなる。具体的には、出力する画像の平均画像面積率が比較的高い場合には、Yトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーの消費量が比較的多くなって、現像装置4Y,4M,4C,4Kに対する単位駆動時間あたりのトナー補給量が比較的多くなる。すると、現像装置4Y,4M,4C,4K内におけるYトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーの滞留時間が比較的短くなって撹拌によるトナー摩擦帯電が活発に行われなくなることから、Yトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーの帯電量が比較的少なくなる。一方、出力する画像の平均画像面積率が比較的低い場合には、Yトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーの消費量が比較的少なくなって、現像装置4Y,4M,4C,4Kに対する単位駆動時間あたりのトナー補給量が比較的少なくなる。すると、現像装置4Y,4M,4C,4K内におけるYトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーの滞留時間が比較的長くなって撹拌によるトナー摩擦帯電が活発に行われることから、Yトナー,Mトナー,Cトナー,Kトナーの帯電量が比較的多くなる。
トナーの帯電量が変動すると、それに応じて画像濃度が変動してしまう。具体的には、トナーの帯電量が比較的多くなると、トナーと磁性キャリアとの静電付着力が比較的強くなって磁性キャリアから静電潜像にトナーが転移し難くなることから、画像濃度が低下する。これに対し、トナーの帯電量が比較的少なくなると、トナーと磁性キャリアとの静電付着力が比較的弱くなって磁性キャリアから静電潜像にトナーが転移し易くなることから、画像濃度が増加する。連続プリントジョブ中には、トナーの帯電量が変動すると、特に中間調(面積階調)の画像濃度の変動が目立ち易くなる。
そこで、メイン制御部260は、連続プリントジョブ中には、次のような条件一時変更処理を実施する。即ち、二次転写ベルト77の表面移動方向における全域のうち、先行する記録シートと後続の記録シートとの間の領域に対応するシート間対応領域に、中間調トナー像(面積階調で中間調になるトナー像)からなる中間調テストトナー像を形成する。そして、その中間調テストトナー像の光学特性をトナー付着量検知センサー64からの出力に基づいて算出したトナー付着量と所定の基準値とを比較する。このとき、トナー付着量が基準値よりも少ない場合には、両者の差分に相当する分だけ、トナー濃度センサーの出力目標値をより低い値に一時的に補正して、現像剤のトナー濃度を高めることで、中間調の画像濃度を目標濃度に近づける。これに対し、トナー付着量が基準値よりも多い場合には、両者の差分に相当する分だけ、トナー濃度センサーの出力目標値をより高い値に一時的に補正して、現像剤のトナー濃度を低下させることで、中間調の画像濃度を目標濃度に近づける。
なお、トナー飛散や、磁性キャリアに対するトナーのフィルミングの発生を抑える狙いで、トナー濃度センサーの出力目標値には下限値や上限値を設けている。メイン制御部260は、連続プリントジョブ中に、出力目標値を下限値まで低下させても中間調の画像濃度を目標濃度まで高めることができなかった場合には、更にトナー像形成条件として、現像ポテンシャルをより高い値に一時的に補正する。これにより、中間調の画像濃度を更に増加させて目標濃度に近づける。また、連続プリントジョブ中に、出力目標値を上限値まで低下させても中間調の画像濃度を目標濃度まで低下させることができなかった場合には、更にトナー像形成条件として、現像ポテンシャルをより低い値に一時的に補正する。これにより、中間調の画像濃度を更に低下させて目標濃度に近づける。以上のような条件一時補正処理を、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ実施する。
本プリンタのように、中間転写ベルト61として、弾性層からなる表面層を設けた多層構造のものを用いる構成では、環境によっては二次転写不良を引き起こしてしまうことが本発明者らの実験によって判明した。具体的には、低温や低湿の環境下で、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを二次転写バイアスローラ68に印加すると、二次転写不良による画像濃度不足を引き起こす。また、低温や低湿ではない環境下で、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを二次転写バイアスローラ68に印加しても、二次転写不良による画像濃度不足を引き起こしてしまう。
そこで、メイン制御部260は、環境センサー250による検知結果に基づいて、必要に応じて二次転写バイアスを直流電圧だけからなるものと重畳電圧からなるものとで切り替えるバイアス切替処理を行うようになっている。具体的には、プリントジョブ中には、環境センサー250による検知結果を定期的に監視して、バイアス切替処理の要否を判断する。そして、低温又は低湿であるにもかかわらず、二次転写バイアスが重畳電圧からなるものに設定されている場合に、バイアス切替処理について必要であると判定する。また、低温や低湿でないにもかかわらず、二次転写バイアスが直流電圧だけからなるものに設定されている場合にも、バイアス切替処理について必要であると判定する。また、前述した2つのケースの他は、バイアス切替処理について不要であると判定する。
かかる構成では、低温低湿の環境下で重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いたり、低温低湿とは異なる環境下で直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いたりすることを回避する。これにより、環境変動にかかわらず、環境に応じた二次転写バイアスを用いてトナー像の二次転写を行うことで、環境変動に起因する二次転写不良の発生を抑えることができる。
バイアス切替処理で二次転写バイアスを直流電圧と重畳電圧とで切り替えることで、画像濃度を目標濃度に近づけることが可能になるが、切り替えの前後で二次転写性の違いによって画像濃度を異ならせてしまうおそれがある。そこで、画像濃度をより目標濃度に近づけるためには、現像ポテンシャル等のトナー像形成条件を調整して二次転写バイアスの切り替前後における画像濃度変動を抑えることが望ましい。
かかる調整を実現させる方法の一例として、上述した条件決定処理を実施することが挙げられる。しかしながら、かかる構成では、プリントジョブの途中で二次転写バイアスを切り替える場合には、プリントジョブを一時中断して条件決定処理を実施することで、ユーザーの待ち時間を増やしてしまう。
そこで、メイン制御部260は、バイアス切替処理で二次転写バイアスを切り替えた場合には、条件決定処理ではなく、条件補正処理を実施する。この条件補正処理では、不揮発メモリー260dに記憶している所定のデータを用いて、トナー像形成条件(現像バイアス、帯電バイアス、及び出力目標値Vtref)を切り替え後の二次転写バイアスに適した値に補正する。かかる構成では、条件決定処理の実施によってユーザーの待ち時間を増やしてしまうという不具合を生ずることなく、二次転写バイアス切り替え後での画像濃度変動の発生を抑えて、画像濃度を安定化させることができる。
なお、メイン制御部260は、上述した所定のデータとして、直流用のトナー像形成条件と、重畳用のトナー像形成条件とを不揮発メモリー260dに記憶している。直流用のトナー像形成条件については、上述した条件決定処理において、直流電圧だけからなる二次転写バイアスの条件で二次転写ベルト77に二次転写したテストパターン像のベタテストトナー像のトナー付着量に基づいて決定している。また、重畳用のトナー像形成条件については、条件決定処理において、重畳電圧からなる二次転写バイアスの条件で二次転写ベルト77に二次転写したテストパターン像のベタテストトナー像のトナー付着量に基づいて決定している。このように、メイン制御部260は、条件決定処理において、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ、二通りの二次転写バイアスの条件でテストパターン像をそれぞれ形成して、直流用、重畳用の二通りのトナー像形成条件を決定するようになっている。
条件補正処理では、二次転写バイアスを直流電圧から重畳電圧に切り替えた場合には、トナー像形成条件を予め不揮発メモリーに記憶している直流用のものから重畳用のものに補正する。これに対し、二次転写バイアスを重畳電圧から直流電圧に切り替えた場合には、トナー像形成条件を予め不揮発メモリーに記憶している重畳用のものから直流用のものに補正する。このようにして補正したトナー像形成条件については、次に条件決定処理を実施するか、あるいは次に条件補正処理を実施するまで、その値を維持する。これに対し、上述した条件一時補正処理で一時的に補正したトナー像形成条件(出力目標値Vtrefや現像バイアス)については、連続プリントジョブを終了すると、もとの値(条件決定処理で決定した値)に戻す。
上述したように、条件一時補正処理を実施することで、連続プリントジョブ中において、トナー飛散や磁性キャリアへのトナーフィルミングの発生を抑えつつ、トナーの帯電量Q/Mの変動に起因する中間調の画像濃度変動を抑えることが可能になるはずである。ところが、本発明者らが実験を行ったところ、連続プリントジョブ中において、バイアス切替処理によって二次転写バイアスを切り替えると、中間調の画像濃度を不足させたり、逆に過多にしたりするケースが発生した。
そこで、その原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことが判明した。即ち、二次転写バイアスを切り替えると、たとえ二次転写ベルト77上に二次転写した中間調テストトナー像のトナー付着量が同じであっても、トナー付着量検知センサー64からの出力電圧が切り替え前と切り替え後とで異なってしまう。二次転写バイアスの特性の違いにより、二次転写ベルト77の表面に二次転写した中間調テストトナー像の表面形状が、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いたときと、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いたときとで異なるからである。条件決定処理の実施によって現像ポテンシャルなどのトナー像形成条件を適切な値に決定すると、その後、しばらくの間は、画像濃度をほぼ目標濃度に維持することができる。ところが、連続プリントジョブ中に二次転写バイアスを切り替えると、二次転写ベルト77のシート間対応領域に形成した中間調テストトナー像の画像濃度が目標濃度であっても、トナー付着量検知センサー64からの出力が異なってくる。二次転写性の違いにより、中間調テストトナー像の表面形状が異なった特性のものになるからである。かかる出力の違いにより、トナー付着量について目標の値が得られているにもかかわらず、目標からずれた値であると誤検知する。これにより、トナー濃度センサーの出力目標や現像ポテンシャルを過剰に一時補正してしまうことで、中間調の画像濃度を不足させたり、過多にしたりしていることが判明した。
そこで、メイン制御部260は、バイアス切替処理によって二次転写バイアスを切り替えた場合には、それに伴って、条件一時変更処理における中間調テストトナー像のトナー付着量の基準を示す基準値を変更する基準値変更処理を実施する。具体的には、不揮発メモリーには、直流用の基準値と、重畳用の基準値とを記憶している。バイアス切替処理で二次転写バイアスを直流電圧から重畳電圧に切り替えた場合には、基準値変更処理にて、基準値を直流用のものから重畳用のものに切り替える。これに対し、バイアス切替処理で二次転写バイアスを重畳電圧から直流電圧に切り替えた場合には、基準値変更処理にて、基準値を重畳用のものから直流用のものに切り替える。これにより、二次転写バイアスの切り替えによって中間調テストトナー像の表面形状を異ならせても、同一の目標濃度(画像濃度)の中間調テストトナー像であれば、切り替え前後で何れも目標濃度になっていると判断することが可能になる。よって、二次転写バイアスを切り替えたことに起因するトナー付着量の誤検知の発生を回避して、連続プリント中に前記誤検知を引き起こすことに起因する中間調の画像濃度不足や画像濃度過多を回避することができる。
メイン制御部260は、上述した直流用の基準値や重畳用の基準値を条件決定処理で決定して不揮発メモリー260dに記憶する。具体的には、条件決定処理において、直流用のトナー像形成条件と重畳用のトナー像形成条件とを決定したら、それぞれの条件で中間調テストトナー像を形成する。そして、トナー像形成条件を直流用のものに設定し且つ二次転写バイアスを直流電圧に設定した条件で形成した中間調テストトナー像のトナー付着量を検知し、直流用の基準値をその検知結果と同じ値に決定する。また、トナー像形成条件を重畳用のものに設定し且つ二次転写バイアスを重畳電圧に設定した条件で形成した中間調テストトナー像のトナー付着量を検知し、重畳用の基準値をその検知結果と同じ値に決定する。
図5は、条件決定処理における処理フローを示すフローチャートである。メイン制御部260は、条件決定処理を開始すると、まず、カウント値Ctを「1」にセットする(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。そして、カウント値Ctについて「1」であるか否かを判定した後(S2)、「1」である場合には(S2でY)、二次転写バイアスを直流電圧だけからなるものに設定する(S3)。これに対し、「1」でない場合には(S2でN)、二次転写バイアスを重畳電圧に設定する(S4)。その後、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、テストパターン像を形成してそれに含まれる複数のベタテストトナー像のトナー付着量を検知した後(S5、S6)、検知結果に基づいて上述した近似直線式を算出する(S7)。次いで、カウント値Ctについて「2」であるか否かを判定する(S8)。このとき、「2」でない場合(S8でN)には、直前のS7の工程で算出した近似直線式は、二次転写バイアスを直流電圧に設定した条件で形成したテストパターン像のベタテストトナー像のトナー付着量に基づいて算出されたものである。そこで、近似直線式に基づいて、直流用のトナー像形成条件(現像バイアス、帯電バイアス、トナー濃度センサーの出力目標など)を決定して、不揮発メモリー260dに記憶する(S9)。次いで、カウント値Ctを「2」に設定した後、処理フローを上述したS2の工程にループさせる。このループにより、二次転写バイアスを重畳電圧に設定した条件でテストパターン像が形成され、それに含まれる複数のベタテストトナー像のトナー付着量に基づいて近似直線式が算出される(S2→S4→S5〜S7)。
一方、上記S8の工程で、カウント値Ctが「2」であった場合(S8でY)には、直前のS7の工程で算出した近似直線式は、次のようにして算出されたものである。即ち、二次転写バイアスを重畳電圧に設定した条件で形成したテストパターン像のベタテストトナー像のトナー付着量に基づいて算出されたものである。そこで、近似直線式に基づいて、重畳用のトナー像形成条件を決定して、不揮発メモリー260dに記憶する(S11)。次いで、基準値決定処理(S12〜S20)を実施してから一連の処理フローを終了する。
基準値決定処理では、まず、開始時点で二次転写バイアスを重畳バイアスに設定していることから、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、トナー像形成条件を重畳用のものに設定する(S12)。そして、Y,M,C,Kの中間調テストトナー像を形成してそれぞれのトナー付着量を検知した後(S13、S14)、重畳用の基準値を検知結果と同じ値に決定する(S15)。次に、二次転写バイアスを重畳電圧から直流電圧に切り替えた後(S16)、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、トナー像形成条件を直流用のものに設定する(S17)。そして、Y,M,C,Kの中間調テストトナー像を形成してそれぞれのトナー付着量を検知した後(S18、S19)、直流用の基準値を検知結果と同じ値に決定する(S20)。
図6は、メイン制御部260によって電源ON中に行われる各種の処理の処理フローを示すフローチャートである。メイン制御部260は、電源がONされて図示の処理フローを開始すると、まず、現像装置内に収容されているトナーの帯電量の変動量と相関関係にある所定の帯電変動パラメータについて、閾値を超えているか否かを判定し(S1)、超えている場合(S1でY)には、条件決定処理を実施した後に(S2)、ユーザーによってなされるプリント命令を待機する(S3)。一方、閾値を超えていない場合(S1でN)には、条件決定処理を実施することなく、ユーザーによってなされるプリント命令を待機する(S3)。
その後、メイン制御部260は、プリント命令がなされると(S3でY)、プリントジョブを開始した後(S4)、環境センサー250によって温湿度を検知する(S5)。そして、検知結果に基づいて、二次転写バイアスについて切り替えが必要であるか否かを判定する(S6)。具体的には、次のような場合に、切り替えが必要であると判断する。即ち、検知結果が低温又は低湿であるにもかかわらず、二次転写バイアスが重畳電圧からなるものに設定されている場合、あるいは、検知結果が低温や低湿でないにもかかわらず、二次転写バイアスが直流電圧だけからなるものに設定されている場合である。
メイン制御部260は、二次転写バイアスについて切り替えの必要なしと判定した場合(S6でN)には、設定されている二次転写バイアスのままでプリントジョブを行いながら、後述するS14以降の処理フローを実行する。これに対し、切り替えが必要であると判定した場合(S6でY)には、二次転写バイアスを切り替える(S7)。具体的には、温湿度の検知結果が低温又は低湿であった場合には、二次転写バイアスを重畳電圧からなるものから、直流電圧だけからなるものに切り替える。また、温湿度の検知結果が低温、低湿の何れでもなかった場合には、二次転写バイアスを直流電圧だけからなるものから重畳電圧からなるものに切り替える。このように二次転写バイアスを環境に応じたものに切り替えて二次転写を行うことで、環境変動に起因する二次転写不良の発生を抑えることができる。なお、S5〜S7の工程がバイアス切替処理である。
メイン制御部260は、バイアス切替処理で二次転写バイアスを切り替えたら、次に、帯電変動パラメータについて閾値を超えているか否かを判定する(S8)。二次転写バイアスの切り替えが必要になったときには、現像剤中のトナー帯電量の変動量がかなり大きくなっている可能性が高いからである。帯電変動パラメータが閾値を超えている場合(S8でY)には、プリントジョブを一時中断して条件決定処理を実施した後(S11、S12)、プリントジョブを再開してから(S13)、条件補正処理と基準値変更処理とを実施する(S9、S10)。条件決定処理を実施することで、トナー像形成条件を目標の画像濃度が得られる値に変更することができる。また、条件補正処理を実施することで、直流用、重畳用という二通りのトナー形成条件(現像バイアス、帯電バイアス、出力目標値Vtrefのうち、切り替え後の二次転写バイアスに対応する方に設定することができる。また、基準値変更処理を実施することで、基準値を、直流用、重畳用という二通りの基準値(トナー付着量対比用)のうち、切り替え後の二次転写バイアスに対応する方に設定することができる。
一方、上記S8の工程で帯電変動パラメータが閾値を超えていない場合(S8でN)には、メイン制御部260は、条件決定処理を実施することなく、条件補正処理(S9)と基準値変更処理(S10)とを実施する。この場合、条件決定処理の実施によってユーザーの待ち時間を増やしてしまうといった不具合を引き起こすことなく、切り替え後の二次転写バイアスの条件で目標の画像濃度が得られる値にトナー形成条件を補正することができる。また、基準値変更処理を実施することで、二次転写バイアスの切り替えによってテストトナー像の表面形状を変化させてしまうことによる中間調の画像濃度不足や画像濃度過多の発生を回避することができる。
基準値変更処理を実施したメイン制御部260は、次に、実施中のプリントジョブについて、連続プリントジョブであるか否かを判定する(S14)。そして、連続プリントジョブでない場合には(S14でY)、条件一時補正処理を実施する必要がないので、そのための処理を実施することなく、処理フローを後述するS18に進める。これに対し、連続プリントジョブ中である場合には(S14でY)、条件一時補正処理(S15〜S17)を実施してから、処理フローを後述するS18に進める。
条件一時補正処理では、まず、Y,M,C,Kの各色のそれぞれについて、二次転写ベルト77のシート間対応領域に中間調テストトナー像を形成し(S15)、それぞれのトナー付着量を検知する(S16)。そして、Y,M,C,Kの中間調テストトナー像のトナー付着量と、Y,M,C,K用の基準値(直流用、重畳用のうち、そのときの二次転写バイアスに対応する方)との差分に応じて、トナー濃度センサーからの出力目標値や現像ポテンシャルを一時補正する(S17)。
S18の工程においては、次頁のプリントジョブの有無が判定される。そして、次頁のプリントジョブがある場合(S18でY)には、処理フローが上記S5の工程に戻される。これに対し、次頁のプリントジョブがない場合(S18でN)には、装置の立ち下げを行ってプリントジョブを終了することが可能であるが、その前に、帯電変動パラメータについて閾値を超えているか否かを判定する(S19)。そして、超えている場合には条件決定処理を実施してから、超えていない場合には直ちに、プリントジョブを終了して(S21)、処理フローを上記S1の工程に戻す。
帯電変動パラメータとしては、次に列記する4つを採用している。
(1)前回の条件決定処理を実施してからの経過時間
(2)前回の条件決定処理を実施してからの温度変動量
(3)前回の条件決定処理を実施してからの湿度変動量
(4)過去の100枚前のプリントから50枚前のプリントまでの平均画像面積率と、過去の50枚前のプリントから1枚前のプリントまでの平均画像面積率との差(平均画像面積率の変動量)
前回の条件決定処理を実施してからの経過時間が所定の閾値を超えた場合には、現像装置(4Y,4M,4C,4K)内のトナーの帯電量が前回の条件決定処理実施時から大きく変動して現像バイアス等が実状にそぐわなくなっている可能性がある(1)。また、前回の条件決定処理を実施してからの温度変動量が所定の閾値を超えた場合にも、現像装置内のトナーの帯電量が前回の条件決定処理実施時から大きく変動して現像バイアス等が実状にそぐわなくなっている可能性がある(2)。また、前回の条件決定処理を実施してからの湿度変動量が所定の閾値を超えた場合にも、現像装置内のトナーの帯電量が前回の条件決定処理実施時から大きく変動して現像バイアス等が実状にそぐわなくなっている可能性がある(3)。また、過去の100枚前のプリントから50枚前のプリントまでの平均画像面積率と、過去の50枚前のプリントから1枚前のプリントまでの平均画像面積率との差が所定の閾値を超えた場合にも、現像装置内のトナーの帯電量が前回の条件決定処理実施時から大きく変動して現像バイアス等が実状にそぐわなくなっている可能性がある(4)。そこで、それらの帯電変動パタメータがそれぞれに固有の閾値を超えた場合には、条件決定処理を実施するのである。
なお、直流用の基準値と、重畳用の基準値とを不揮発メモリー260dに記憶する構成について説明したが、それに代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、直流用の基準値と、重畳用の基準値とを算出した後、両者を相互に変換する変換アルゴリズムを算出し、二通りの基準値の代わりに、その変換アルゴリズムを不揮発メモリー260dに記憶させる。そして、基準値変更処理において、その時点で用いている基準値を、変換アルゴリズムによって切り替え後の転写バイアスに適した値に変換する構成である。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
像担持体(例えば中間転写ベルト61)の表面にトナー像を形成するトナー像形成手段(例えば作像ユニット2Y,2M,2C,2K、光書込ユニット1YM,1CK、一次転写ユニット60などからなるもの)と、前記像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに挟み込んだ記録シートに前記像担持体上のトナー像を転写するために、交流電圧に直流電圧を重畳した重畳電圧からなる転写バイアスを出力する転写電源(例えば二次転写電源210)と、前記転写電源からの出力を制御する制御手段(例えばメイン制御部260、電源制御部200などからなるもの)とを備える画像形成装置において、環境を検知する環境検知手段(例えば環境センサー250)と、前記像担持体から前記ニップ形成部材に転写されたトナー像のトナー付着量を検知するトナー付着量検知手段(例えばトナー付着量検知センサー64)とを設け、前記環境検知手段による検知結果に基づいて、前記転写電源から出力される前記転写バイアスを、重畳電圧からなるものと、直流電圧だけからなるものとで切り替えるバイアス切替処理と、所定のタイミングで、直流電圧だけからなる前記転写バイアスを用いる条件、及び重畳電圧からなる前記転写バイアスを用いる条件のそれぞれで前記ニップ形成部材上にテストパターン像を転写し、それぞれのテストパターン像のトナー付着量を検知した結果に基づいて、直流用の前記トナー像形成条件、及び重畳用の前記トナー像形成条件を決定する条件決定処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成においては、重畳電圧からなる転写バイアスを転写電源から出力しながら、多層構造の像担持ベルトから記録シートにトナー像を転写することで、表面凹凸に富んだ記録シートの表面の凹部にトナーを良好に転写することができる。
また、態様Aにおいては、環境検知手段による環境の検知結果に応じて二次転写バイアスを切り替えることで、低温低湿の環境下で重畳電圧からなる転写バイアスを用いたり、低温低湿とは異なる環境下で直流電圧だけからなる転写バイアスを用いたりすることを回避する。これにより、環境変動にかかわらず、環境に応じた転写バイアスを用いてトナー像の転写を行うことで、環境変動に起因する転写不良の発生を抑えることができる。
また、態様Aにおいては、所定のタイミングで条件決定処理を実施して、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いる場合における直流用のトナー像形成条件と、重畳電圧からなる転写バイアスを用いる場合における重畳用のトナー像形成条件とを決定しておく。かかる構成では、所定のタイミングとして、例えば電源ON直後、画像形成命令の待機中、画像形成動作の終了時など、ユーザーを待たせることのないタイミングを採用することが可能である。このようなタイミングで条件決定処理を実施することで、連続画像形成動作中に条件決定処理を実施することによるユーザーの待ち時間の増加を回避することができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、複数の記録シートに対して画像を連続的に形成する連続画像形成動作中(例えば連続プリントジョブ中)に、前記ニップ形成部材の表面移動方向における全域のうち、先行する記録シートと後続の記録シートとの間の領域に対応するシート間対応領域にテストトナー像を形成し、そのトナー付着量を検知した結果と所定の基準値との比較に基づいて前記トナー像形成手段によるトナー像形成条件を一時的に変更する条件一時変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、連続画像形成動作中における現像剤中のトナー帯電量の変動に起因する画像濃度の変動を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記バイアス切替処理によって転写バイアスを切り替えた場合には、前記条件一時変更処理で使用する前記基準値を切り替え後の前記転写バイアスに応じた値に変更する基準値変更処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、実施形態で説明したように、連続画像形成動作中に転写バイアスを切り替えて条件一時補正処理で形成するテストトナー像の表面形状を異ならせてしまうことに起因する画像濃度不足や画像濃度過多の発生を回避することができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記基準値変更処理にて、予め記憶している、直流用の基準値と、重畳用の基準値とのうち、切り替え後の前記転写バイアスに対応する方を採用するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、二通りの基準値のうち、それまで一方の基準値を採用していたのに対し、以降は他方の基準値を採用するという単純な処理により、基準値を切り替え後の転写バイアスに適した値に変更することができる。
[態様E]
態様Eは、態様Cにおいて、前記基準値変更処理にて、予め記憶している変換アルゴリズムを用いて、転写バイアス切り替え前の基準値を転写バイアス切り替え後の基準値に変換するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、直流用の基準値、及び重畳用の基準値の両方を記憶していなくても、基準値を切り替え後の転写バイアスに適した値に変更することができる。
[態様F]
態様Fは、態様C又はEにおいて、前記条件決定処理にて、前記直流用のトナー像形成条件でテストトナー像を形成してそのトナー付着量を検知した結果と、前記重畳用のトナー像形成条件でテストトナー像を形成してそのトナー付着量を検知した結果とに基づいて、前記直流用の基準値及び前記重畳用の基準値、又は前記変換アルゴリズムを決定する基準値決定処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、基準値決定処理により、直流用の基準値を、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いる条件における目標のトナー付着量に対応する値に決定することができる。更には、重畳用の基準値を、重畳電圧からなる転写バイアスを用いる条件における目標のトナー付着量に対応する値に決定することができる。
[態様G]
態様Gは、態様Fであって、前記所定のタイミングが、ユーザーの命令に基づく画像形成動作を行っていないタイミング、ユーザーの命令に基づく画像を形成した後、前記トナー像形成手段の駆動を停止させる前のタイミングであることを特徴とするものである。かかる構成では、ユーザーが自らの命令に基づいて画像がプリントされた記録シートの画像形成装置からの排出を待機していない時間を利用して、条件調整処理を実施して、ユーザーの待ち時間の増加を抑えることができる。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記所定のタイミングであっても、前記トナー像形成手段にセットされたトナーの帯電量の変動量と相関関係にある所定のパラメータが所定の閾値未満又は以下である場合には、前記条件決定処理の実施を省略し、且つ、前記所定のタイミングではない、複数の記録シートに対して画像を連続的に形成する連続画像形成動作中であっても、前記所定のパラメータが所定の上限値を超えるか又は以上になった場合には、連続画像形成動作を一時中断して前記条件決定処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、所定のタイミングが到来したときに、不要な条件決定処理を実施することによる無駄なトナー消費や装置の消耗を回避することができる。更には、連続画像形成動作を長時間に渡って実施しているにもかかわらず、その間、条件決定処理を全く行わないことによる画像濃度不足や画像濃度過多の発生を抑えることもできる。
[態様I]
態様Iは、態様Hであって、前記所定のパラメータが、前回の前記条件決定処理を実施してからの経過時間、前回の前記条件決定処理を実施してからの環境の変動量、又は直近の所定期間内における平均画像面積率の変動量であることを特徴とするものである。
[態様J]
態様Jは、像担持体の表面にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに挟み込んだ記録シートに前記像担持体上のトナー像を転写するために、交流電圧に直流電圧を重畳した重畳電圧からなる転写バイアスを出力する転写電源と、前記転写電源からの出力を制御する制御手段とを備える画像形成装置において、環境を検知する環境検知手段と、前記像担持体から前記ニップ形成部材に転写されたトナー像のトナー付着量を検知するトナー付着量検知手段とを設け、前記環境検知手段による検知結果に基づいて、前記転写電源から出力される前記転写バイアスを、重畳電圧からなるものと、直流電圧だけからなるものとで切り替えるバイアス切替処理と、前記ニップ形成部材の表面に転写した中間調テストトナー像のトナー付着量を検知した結果と所定の基準値との比較に基づいて前記トナー像形成手段のトナー像形成条件を補正する処理と、前記基準値を、前記転写バイアスを重畳電圧からなるものに設定しているときに使用する重畳用の基準値と、前記転写バイアスを直流電圧だけからなるものに設定しているときに使用する直流用の基準値とで切り替える処理とを実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成においては、態様Aと同様の理由により、表面凹凸に富んだ記録シートの表面の凹部にトナーを良好に転写することができる。また、環境変動に起因する転写不良の発生を抑えることもできる。
更に、態様Jにおいては、次の理由により、転写バイアスの切り替えに伴って中間調テストトナー像の表面形状を変化させてしまうことに起因する画像濃度不足や画像濃度過多の発生を抑えることができる。即ち、実施形態で説明したように、同じトナー付着量の中間調テストトナー像であっても、転写バイアスの切り替えによって中間調テストトナー像の表面形状を変化させると、光学センサーからなるトナー付着量検知手段の出力が異なってくる。このような出力の違いによって中間調テストトナー像のトナー付着量の誤検知を引き起こすと、トナー像形成条件を適正値から外れた値に補正して画像濃度不足や画像濃度過多を引き起こすおそれがある。そこで、トナー付着量検知手段からの出力に基づいて把握したトナー付着量と比較するための基準値として、次の二つを切り替えて用いる。即ち、転写バイアスを重畳電圧からなるものに設定しているときに使用する重畳用の基準値、及び、転写バイアスを直流電圧だけからなるものに設定しているときに使用する直流用の基準値である。これにより、転写バイアスの切り替えによって中間調テストトナー像の表面形状を異ならせても、同一の目標濃度(画像濃度)の中間調テストトナー像であれば、切り替え前後で何れも目標濃度になっていると判断することが可能になる。よって、転写バイアスを切り替えたことに起因する画像濃度不足や画像濃度過多の発生を抑えることができる。