以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の第一実施形態について説明する。なお、本発明は、その適用分野がプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能を有する複合機などにも、本発明の適用が可能である。
まず、第一実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、第一実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、第一実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのトナー像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。第一実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニット80から発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール9Kを収容する現像部12Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端部には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサーが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサーとしては、透磁率センサーからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサーは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタは、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段を備えている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサーからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給され、K現像剤のKトナー濃度が所定の範囲内に維持される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる地肌ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び地肌ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用のトナー像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用のトナー像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cトナー像が形成される。トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、ベルトクリーニング装置37、濃度センサー40なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の下方には、二次転写ニップ裏打ちローラ36、シート搬送ベルト(一般的には二次転写ベルトや転写部材などとも呼称される)41などを具備するシート搬送ユニット38が配設されている。無端状のシート搬送ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36などの複数のローラによって張架された状態で、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられる。そして、二次転写ニップ裏打ちローラ36により、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、二次転写裏面ローラ33に対する掛け回し領域に当接している。つまり、転写ユニット30の二次転写裏面ローラ33と、シート搬送ユニット38の二次転写ニップ裏打ちローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト31及びシート搬送ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。シート搬送ベルト41のループ内に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写裏面ローラ33には、二次転写電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ33と、二次転写ニップ裏打ちローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側から二次転写ニップ裏打ちローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。なお、ニップ形成部材として、シート搬送ベルト41の代わりに、二次転写ローラを用い、これを中間転写ベルト31に直接当接させてもよい。
転写ユニット31の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。この給送カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給送カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、シート搬送ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によってシート搬送ベルト41から曲率分離する。
なお、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、ニップ形成部材たるニップ形成ローラを中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成である。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサー40は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、所定の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を測定する。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
第一実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つのトナー像形成ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。なお、本発明は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像だけを形成する画像形成装置にも適用が可能である。
図3は、中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図4に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の1〜50[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層31aの厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層31aの厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層31aの層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層31aの厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる複数の凸形状を表面に有している。弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子31cを分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130〜220℃であり、より好ましくは140℃〜200℃である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しは、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。また、近年の電子写真方式の画像形成装置に求められるような、凹凸シートへの高いトナー転写性を得るために、弾性層31bの23℃50%RH環境下でのマイクロゴム硬度値を35以下にするように柔軟性を調整することが好ましい。マルテンス硬度、ビッカース硬度など、いわゆる微小硬度での計測は、測定部位のバルク方向の浅い領域、すなわち表面近傍のごく限られた領域の硬度しか測定していなのでベルト全体としての変形性能は評価できない。このため、例えば中間転写ベルト31全体としての変形性能が低い構成のものに、最表面に柔軟な材料を用いた場合、微小硬度値を低くしてしまう。このような中間転写ベルト31は変形性能が低い、すなわち凹凸シートへの追従性が悪いので、結果として近年の画像形成装置に求められる凹凸シートへの転写性能を十分に発揮することができなくなってしまう。よって、中間転写ベルト31全体の変形性能を評価することが可能なマイクロゴム硬度を測定して中間転写ベルト31の柔軟性を評価することが好ましい。
弾性層31bの層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層31bが自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子31cとしては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子31cの粒径が1.0μm未満であると、粒子31cによる転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子31cは一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子31cの電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子31cとしては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子31cを弾性層31bに直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子31c同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子31cの弾性層31bの表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子31cの粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cだけを選択的に弾性層31b表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子31cを弾性層31b表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層31bの弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子31cが分散せしめられた弾性層31bの表面方向において、粒子31が存在している部分と、弾性層31bの表面が露出している部分との投影面積比については、粒子31cが存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図4に示されるように、中間転写ベルト31の表面において、粒子31c同士の重なり合いは殆ど観測されない。粒子31cの弾性層31b表面における断面の径は、できるだけ均一であることが好ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5)μm以下の分布幅となることが好ましい。このような分布幅を実現するためには、粒径分布の狭い粒子粉末を用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cを選択的に表面に局在させる方法を採用して弾性層31bを形成すれば、粒径分布の広い粒子粉末を使用してもよい。
記録シートPとして、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いたとする。この場合に、記録シートPの表面における複数の凹部にそれぞれトナーを良好に二次転写して、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えるためには、弾性層31bをある程度の柔軟性(弾性)に優れたものを採用する必要がある。そして、そのような弾性層31bを採用すると、弾性層31bの単体だけでは、張架するとすぐに伸びてしまうことから、実使用に耐えられない。このため、弾性層31bよりも剛性のある基層31aを設け、その基層31aの剛性によってベルト全体の伸びを長期間に渡って抑えることが必須の条件になる。
図5は、二次転写電源の電気回路の要部を、二次転写裏面ローラ33や二次転写ニップ裏打ちローラ36などとともに示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140、電源制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
電源制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティ比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のデューティを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティ比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に出力(印加)する。二次転写裏面ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写ニップ裏打ちローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のデューティを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
図6は、中間転写ベルト31として、本プリンタのものとは異なり、単層構造のものを用いた構成における二次転写ニップ及びその周囲を示す拡大構成図である。中間転写ベルト31として図示のような単層構造のものを用いた場合には、二次転写裏面ローラ33と二次転写ニップ裏打ちローラ36との間において、二次転写電流が次のように流れる。即ち、図中矢印で示されるように、二次転写電流がニップ中心位置(ベルト移動方向の中心位置)に集中して一直線状に流れることから、ニップ入口付近やニップ出口付近では二次転写電流がそれほど流れない。二次転写電流がこのように流れることで、二次転写ニップにおいて、トナーに二次転写電流を作用させている時間は比較的短時間になる。このため、トナーに対して、二次転写電流によって正規極性とは逆極性の電荷を過剰に注入してしまうことは殆どない。
図7は、第一実施形態に係るプリンタにおける二次転写ニップ及びその周囲構成を示す拡大断面図である。第一実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、中間転写ベルト31として、多層構造のものを用いている。かかる構成では、二次転写裏面ローラ33と二次転写ニップ裏打ちローラ36との間において、二次転写電流が次のように流れる。即ち、基層31aと弾性層31bとの界面で、二次転写電流がベルト周方向に広がりながら、ベルト厚み方向に流れる。これにより、二次転写電流がニップ中心位置だけでなく、ニップ入口やニップ出口の付近にまで回り込むようになることから、二次転写ニップにおいて、トナーに二次転写電流を作用させる時間が長時間になる。そして、トナーに対して、二次転写電流によって正規極性とは逆極性の電荷を過剰に注入してしまい易くなることで、トナーの正規極性の帯電量を大きく低下させたり、トナーを逆帯電させてしまったりして、二次転写性を阻害してしまう。この結果、画像濃度不足を引き起こし易くなってしまうことが解った。なお、本プリンタで用いられているような二層構造のベルトに限らず、三層以上の多層構造のベルトにおいても、同様の二次転写電流の回り込みにより、二次転写電流を阻害してしまうことも解った。以上が第一実施形態に係るプリンタの基本的な構成である。
次に、第一実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。図8は、第一実施形態に係るプリンタの二次転写電源39から出力される二次転写バイスの波形を示すグラフである。本プリンタのように、二次転写裏面ローラ33に対して二次転写バイアスを印加する構成において、二次転写ニップで中間転写ベルト31上のトナー像を記録シートPに二次転写するためには、二次転写バイアスとして次のような特性のものを採用する必要がある。即ち、時間平均の極性がトナーの帯電極性と同極性になるバイアスである。具体的には、図示のように、二次転写バイアスは、直流電圧と交流電圧との重畳により、周期的に極性を反転させる交番電圧からなるものであるが、時間平均(平均電位Vave)では、極性がトナーと同じマイナス極性になるバイアスになっている。このように、時間平均の極性がマイナス極性になる二次転写バイアスを採用することで、トナーを相対的に二次転写裏面ローラ33に対して反発させてベルト側から記録シートP側に静電移動させることが可能になる。なお、二次転写ニップ裏打ちローラ36に対して二次転写バイアスを印加する構成を採用した場合には、時間平均がトナーと逆極性になる二次転写バイアスを採用すればよい。かかる二次転写バイアスにより、トナーを相対的に二次転写ニップ裏打ちローラ36に向けて静電的に引き寄せることで、ベルト側から記録シートP側に移動させることが可能になるからである。
同図において、Tは、周期的に極性を反転させる二次転写バイアスの一周期を示している。同図において、Vtは、転写ピーク値を示している。この転写ピーク値Vtは、二次転写バイアスのピークツウピークにおける二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーに対して中間転写ベルト31側からシート搬送ベルト41側に向かう転写方向の静電気力をより大きく付与する方のピーク値である。また、Vrは、もう一方のピーク値としての逆ピーク値である。二次転写バイアスがトナーの帯電極性とは逆のプラス極性になっているときには、ベルト側から記録シートP側へのトナーの静電移動が阻害される。これに対し、トナーの帯電極性と同極のマイナス極性になっているときには、ベルト側から記録シートP側へのトナーの静電移動が促進される。
同図におけるVoffは、二次転写バイアスの直流成分の値としてのオフセット電圧を示しており、これは、「(Vr+Vt)/2」の解と同じ値である。また、同図におけるVppは、ピークツウピーク値を示している。
二次転写バイスは、周期T内におけるデューティが50[%]を超える波形になっている。デューティは、波形における第1時間及び第2時間のうち、二次転写ニップで中間転写ベルト31側から記録シートP側へのトナーの静電移動を阻害する方の時間としての阻害時間を基準にした時間比である。本プリンタの場合、波形の周期T内において、二次転写バイアスの値が基線としてのゼロの線よりもプラス極性側に向けて立ち上がり始めた時点から、ゼロの線まで立ち下がった後、ゼロの線からマイナス極性側に向けて立ち下がり始める直前までが第1時間である。また、ゼロの線からからマイナス極性側に向けて立ち下がり始めた時点から、ゼロの線まで立ち上がった後、更にゼロの線からプラス極性側に向けて立ち上がり始める直前までが第2時間である。そして、それら第1時間と第2時間とのうち、第1時間において、ベルト側から記録シートP側へのトナーの静電移動を阻害することになるので、第1時間が阻害時間に相当する。よって、第1時間(プラス極性になっている時間)を基準にした周期Tにおける時間比がデューティである。第2時間をAで表すと、本プリンタにおける二次転写バイアスのデューティは、「(T−A)/T×100(%)」という式によって求められる。
同図におけるVaveは、二次転写バイアスの平均電位を示しており、「Vr×デューティ/100+Vt×(1−デューティ)/100」の解と同じ値である。また、Aは、第2時間(本例では周期Tから阻害時間を減じた時間)を示している。また、Tは、二次転写バイアスの交流成分の周期を示している。
図示のように、二次転写バイアスにおいて、プラス極性になっている時間は周期Tの半分よりも大きくなっている、即ち、デューティが50[%]を超えている。このような二次転写バイアスを採用すると、周期T内において、トナーに対してその帯電極性とは逆のプラス極性の電荷を注入する可能性のある時間を短くすることから、二次転写ニップ内での電荷注入によるトナー帯電量Q/Mの低下を抑えることが可能になる。これにより、トナー帯電量Q/Mの低下に起因する二次転写性の低下による画像濃度不足の発生を抑えることができる。なお、デューティが50[%]を超えていても、次のようにすることで、トナー像の二次転写が可能になる。即ち、0[V]を基準にしたプラス側のグラフ箇所の面積を、マイナス側のグラフ箇所の面積よりも小さくすることで、平均電位をマイナス極性にして、トナーを相対的にベルト側から記録シートP側に静電移動させることが可能になる。
図9は、本発明者らが実際の試作機の二次転写電源39から出力させた二次転写バイアスの波形を示すグラフである。同図において、転写ピーク値Vtは−4.8[kV]である。また、逆ピーク値Vrは1.2[kV]である。また、オフセット電圧Voffは−1.8[kV]である。また、平均電位Vaveは0.08[kV]である。また、ピークツウピーク値Vppは、6.0[kV]である。また、第2時間Aは、0.10[ms]である。また、周期Tは0.66[ms]である。また、デューティは、85[%]である。
本発明者らは、次のような条件のもとで、二次転写バイアスのデューティを様々に変化させながら、それぞれのデューティでテスト画像を印刷してみた。
・環境:27℃/80%
・記録シートPの種類:用紙:Mohawk Color Copy Gloss 270gsm(457mm×305mm)・・・いわゆるコート紙
・プロセス線速:630mm/s
・テスト画像:ブラックハーフトーン画像
・二次転写ニップ幅(ベルト移動方向の長さ):4mm
・転写ピーク値Vt:−4.8kV
・逆ピーク値Vr:1.2kV
・オフセット電位Voff:−1.8kV
・平均電位Vave:0.08kV
・ピークツウピーク値Vpp:6.0kV
・第2時間A:0.10ms
・周期T:0.66ms
・デューティ:90%、70%、50%、30%、10%
図10は、デューティを90%に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図11は、デューティを70%に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図12は、デューティを50%に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図13は、デューティを30%に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図14は、デューティを10%に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。
この第一実験の結果を次の表1に示す。
表1におけるランクは、テスト画像の画像濃度の再現性を評価した結果である。十分なハーフトーンの濃度が得られている状態をランク5と評価した。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている状態をランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い状態をランク2として評価した。また、全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い状態をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルは、ランク4以上である。
デューティを10%や30%に設定した条件では、周期T内において、トナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を比較的長くするとから、トナーへの逆電荷の注入によるトナー帯電量Q/Mの低下が顕著に求められた。このため、表1に示されるように、ランク1という著しい画像濃度不足を認める結果になった。
一方、デューティを70%や90%に設定した条件では、周期T内において、トナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を比較的短くすることから、トナーへの逆電荷の注入によるトナー帯電量Q/Mの低下が有効に抑えられた。このため、表1に示されるように、ランク5という適正画像濃度を認める結果になった。
なお、図示のように、二次転写バイアスとして、周期T内で極性を交互に反転させるものを採用すると、トナーへの逆電荷の注入をより確実に抑えることが可能になる。記録シートPが帯電している場合であっても、逆電荷の注入を抑える極性の電界を相対的に二次転写ニップ内で作用させることができるからである。
記録シートPとして、前述したコート紙の代わりに、普通紙を用いて、同様の実験を行った。主要な実験条件は次の通りである。
・環境:27℃/80%
・記録シートPの種類:普通紙
・プロセス線速:630mm/s
・テスト画像:ブラックハーフトーン画像
・二次転写ニップ幅(ベルト移動方向の長さ):4mm
・転写ピーク値Vt:−4.8kV
・逆ピーク値Vr:1.2kV
・オフセット電位Voff:−1.8kV
・平均電位Vave:0.08kV
・ピークツウピーク値Vpp:6.0kV
・第2時間A:0.10ms
・周期T:0.66ms
・デューティ:90%、70%、50%、30%、10%
その結果、デューティと転写性のランクとの関係は、コート紙の場合と同様に、表1のようになった。
なお、通常、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形は、図9〜図14に示されるように、綺麗な矩形波にはならない。綺麗な矩形波であれば、波形の立ち上がり部から立ち下がり部までの時間を一周期内におけるトナー転写阻害時間として容易に特定することが可能である。しかし、綺麗な矩形波でない場合には、そのような特定ができない。即ち、一方のピーク値(例えば転写ピーク値Vt)から他方のピーク値(例えば逆ピーク値Vr)への立ち上がりや、他方のピーク値から一方のピーク値への立ち下がりに時間を要する(ゼロでない)場合には、前述のような特定ができない。そこで、綺麗な矩形波でない場合には、本発明を適用するにあたって、ディーティを次のように定義するとよい。即ち、二次転写バイアスの周期変動の波形で、ピークツウピークにおける一方のピーク値と他方のピーク値とのうち、二次転写ニップでベルト側から記録シート側へのトナーの静電移動をより阻害する方を阻害ピーク値として定義する。第一実施形態ではプラス側のピーク値が阻害ピーク値である。阻害ピーク値を他方のピーク値に向けてピークツウピーク値の30%の値だけシフトさせた位置を波形の基線とする。また、波形が帰省よりも阻害ピーク値側となる時間を阻害時間A’として定義する。より詳しくは、波形が基線から阻害ピーク値に向けて立ち上がり又は立ち下がり始めた時点から、基線まで立ち下がる又は立ち上がる直前までの時間を阻害時間A’として定義する。そして、阻害時間A’の周期Tにおける割合をデューティとすればよい。
具体的には、図15における「(阻害時間A’/周期T)×100%」の解をデューティとして求めればよい。第一実施形態では、マイナス極性のトナーを用い、且つ二次転写バイアスを二次転写裏面ローラ33に印加する構成になっていることから、逆ピーク値Vrが阻害ピーク値になる。そして、阻害時間A’は、基線から逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた時点から、基線まで立ち下がった後、更に転写ピーク値Vtに向けて立ち下がり始める直前までの時間になる。これに対し、マイナス極性のトナーを用い、且つ二次転写バイアスを二次転写ニップ裏打ちローラ36に印加する構成では、二次転写バイアスとして、0[V]の位置を基準にして図15の波形を反転させた波形のものを採用することになる。この場合、転写ピーク値Vtが阻害ピーク値になる。そして、阻害時間A’は、基線から転写ピーク値Vtに向けて立ち下がり始めた時点から、基線まで立ち上がった後、更に逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始める直前までの時間になる。
中間転写ベルト31として、本プリンタのように、最上層(弾性層31b)の素材に粒子31cを分散せしめたものを用いと、二次転写ニップ内におけるベルト表面とトナーとの接触面積を低減する。これにより、ベルト表面からのトナー離型性を向上させて、二次転写効率を高めることができる。しかしながら、規則的に並ぶ絶縁性の粒子31cの粒子間において、集中的に二次転写電流を流すことで、トナーに対して逆極性の電荷を注入し易くなる。このため、二次転写効率を高める狙いで粒子31cを分散させているにもかかわらず、却って二次転写効率を悪くしてしまうことになり兼ねない。そこで、高デューティの二次転写バイアスを採用することで、粒子31cによる二次転写効率の向上効果を確実に得ることが可能になる。
粒子31cとしては、トナーの正規帯電極性とは逆極性の帯電性能を有するものを用いることができる。本プリンタでは、正帯電性のメラミン樹脂からなる粒子などである。かかる構成では、粒子31cの電荷により、粒子間で二次転写電流が集中する現象の発生を抑えて、トナーへの逆電荷の注入量をより低減することができる。
また、粒子31cとして、トナーの正規帯電極性と同極性の帯電性能を有するものを用いてもよい。本プリンタでは、負帯電性のシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール)などである。
中間転写ベルト31として、最上層としてウレタンやテフロン(登録商標)などからなる表面層を設けたものを用いてもよい。また、ポリイミドやポリアミドイミドなどの樹脂からなる層を複数積層したものを用いてもよい。何れのベルトを用いる場合であっても、高デューティの二次転写バイアスを採用することで、二次転写ニップでトナーに逆極性の電荷を注入してしまうことによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
既に述べたように、中間転写ベルト31として、基層31aの上に積層した弾性層31aを二次転写ニップで記録シートPの表面凹凸にならわせて柔軟に変形させるようにしたものを用いることで、理論的には、次のような効果を奏することができる。即ち、記録シートPとして、表面凹凸シートを用いた場合であっても、シート表面の凹部にもトナーを良好に二次転写して、凹部のトナー量を不足させることによる画像濃度ムラの発生を抑えることができる。更に、二次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを用いることで、二次転写ニップでトナーに逆極性の電荷を注入することによる画像濃度不足の発生を抑えることができる。
ところが、本発明者らは、基層31aの上に弾性層31aを積層した中間転写ベルト31を用いるプリンタ試験機を用いて、表面凹凸シートにテスト画像を印刷するテストプリントを行ったところ、意外な結果が認められた。表面凹凸シートの表面凹部では十分量のトナーの転位によって十分な画像濃度が得られたのに対し、表面凹凸シートの凸部ではトナー転位量を不足させて画像濃度不良を引き起こしてしまったのである。
なお、特許文献1に記載の画像形成装置では、特許文献1に記載されているように、カーボン分散ポリイミドからなる単層構造の中間転写ベルトを用いており、二次転写ニップでその表面を表面凹凸シートの表面凹凸にならわせて柔軟に変形させることができない。このため、二次転写ニップで、表面凹凸シートの表面凹部と中間転写ベルト表面との間に微小間隙を形成してしまうことから、表面凹部のトナー量を不足させ易くなる。そこで、表面凹部にも十分量のトナーを転写するために、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用い、ベルト表面と記録シートの表面凹部との間でトナーを往復移動させる。この往復移動の際に、ベルト表面に付着しているトナー粒子に対して表面凹凸シートの表面凹部内から転位してくるトナー粒子をぶつけることで、凹部内に転位するトナー量を往復移動に伴って徐々に増やしていき、最終的に十分量のトナーを表面凹部内に転位させている。
これに対し、第一実施形態に係るプリンタでは、ニップ内で弾性層31bを柔軟に変形させて表面凹凸シートの表面凹部に良好に密着させる。このため、二次転写バイアスとして、重畳電圧からなるものでなく、直流電圧だけからなるものを用いても、表面凹部内に十分量のトナーを転位させることが可能である。ところが、既に述べたように、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いると、コート紙や普通紙のような表面凹凸シートではない記録シートPを用いると、二次転写ニップでトナーに逆極性の電荷を注入することによる画像濃度不足が発生する。この画像濃度不足は、凹部、非凹部の違いにかかわらず、シート表面の全域でトナー量を不足させるものである。
このように、特許文献1に記載の画像形成装置が凹凸紙で良好な転写性を得るために重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いているのに対し、本プリンタは普通紙で良好な転写性を得るために重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いている。つまり、両者は、全く逆の特性の記録シートに対応するために、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いているのである。
図16は、第一実施形態に係るプリンタの二次転写ニップ内における表面凹凸シートP1の表面と中間転写ベルト31との密着状態を模式的に示す模式断面図である。表面凹凸シートP1は、シート表面方向において、表面凹部のある箇所の厚みが、表面凸部のある箇所の厚みよりも小さくなっていることから、前者の箇所の体積固有抵抗値が後者の箇所よりも小さくなっている。このような表面凹凸シートP1に対し、中間転写ベルト31は図示のように弾性層の柔軟な変形によって表面凸部だけでなく表面凹部にも良好に密着する。すると、二次転写電流は、図示の矢印で示されるように、シート表面の全域のうち、シートの体積固有抵抗値が比較的高くなっている表面凸部のある箇所よりも、体積固有抵抗値が比較的低くなっている表面凹部のある箇所に集中的に流れる。これにより、表面凸部上に存在するトナーに対して十分量の二次転写電流が流れなくなって、表面凸部で画像濃度不足が発生しているものと考えられる。
このような表面凸部での画像濃度不足の発生を抑える狙いで、本発明者らは、表面凹凸シートを用いる場合に、重畳電圧からなる二次転写バイアスの直流成分の値(絶対値)をより大きくして転写方向の電界強度をより大きくする第二実験を行ってみた。すると、表面凸部へのトナー転写量を増加させることができたものの、無数の点状の白抜けのある異常画像になってしまった。これは、直流成分の値を大きくしたことで、転写ピーク値Vtが中間転写ベルト31の表面と表面凹凸シートの表面凸部や表面凹部との間の放電開始よりも大きくなって、出力が転写ピーク値Vtになるタイミングにおいて両者間で放電を発生させる。この放電の箇所でトナーを一瞬で逆帯電させて白抜けを引き起こしていたのである。この点状の白抜け異常画像は、同じ二次転写バイアスの条件では、表面凹凸シートを用いる場合に限らず、表面凹凸シートではない記録シートPでも発生する。
このように、表面凹凸シートの表面凹部へのトナー転写性を向上させるために基層31aの上に弾性層31bを積層した中間転写ベルト31を用いる構成では、次のような現象が生じる。即ち、表面凹凸シートでない記録シートPを用いた場合に二次転写ニップ内でトナーに逆極性の電荷を注入することによるシート表面全体での画像濃度不良の発生を抑えるために、二次転写バイアスとして重畳電圧を用いるようにしたとする。すると、表面凹凸シートを用いる場合に、シート表面の全域のうち、表面凹部の箇所に二次転写電流を集中させて表面凸部で画像濃度不足を引き起こしてしまう。一方、表面凹凸シートを用いた場合における表面凸部での画像濃度不足の発生を抑えるために、重畳電圧からなる二次転写バイアスにおける直流成分の値をより大きくすると、表面凹凸シートやそれ以外の記録シートPで点状の白抜け異常画像を発生させてしまう。
本発明者らは、プリント試験機を用いて様々な条件でテストプリントする第三実験を行った。第三実験において、二次転写バイアスについては、直流電圧だけからなるものと、ディーティを50%よりも大きくした高デューティの重畳電圧からなるものと、デューティを50%以下にした低デューティの重畳電圧からなるものとで適宜切り替えた。また、中間転写ベルト31としては、第一実施形態に係るプリンタと同様の多層構造の多層ベルトからなるものと、基層だけからなる単層ベルトからなるものとを適宜入れ替えた。また、記録シートPとしては、表面凹凸紙(特種東海製紙株式会社製のレザック66)からなるものと、普通紙からなるものとで適宜切り替えた。それぞれの条件で、記録シートPにテスト画像をプリントして、トナーの転写性を良い(○)、普通(△)、悪い(×)の三段階で評価した。表面凹凸紙を用いた場合には、表面凹部へのトナー転写性と、表面凸部へのトナー転写性とをそれぞれ評価した。また、普通紙を用いた場合には、普通紙の平滑面部へのトナー転写性を評価した。
表2に示されるように、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用い(DC)、且つ、多層ベルトを用いる場合には、シートの表面凹部や表面凸部では良好なトナー転写性が得られるが、普通紙の平滑面部におけるトナー転写性が悪くなる。二次転写ニップでトナーに逆極性の電荷を注入してしまうからである。直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる場合であっても、単層ベルトを用いる場合には、結果が逆になって、普通紙の表面凹凸紙の表面凸部で良好なトナー転写性が得られるのに対し、表面凹凸紙の表面凹部でトナー転写性が悪くなる。変形し難い単層ベルト表面と表面凹凸紙の表面凹部との間にギャップが生じて、十分な強度の転写電界を形成することが困難になるからである。表面に弾性層を有するベルトであれば、前述のギャップが生じないことから、凹部に十分な強度の転写電界を形成してトナーを良好に二次転写することができる。
第一実施形態に係るプリンタのように、中間転写ベルト31として多層ベルトからなるものを用いるケースについて着目すると、次のようなことが解る。即ち、表面凹凸紙を用いる場合には、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるもの、重畳電圧からなるもの(AC/DC)の何れを用いても、表面凹部については良好なトナー転写性を得ることができる。但し、表面凸部については、デューティにかかわらず、重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いると、トナー転写性を悪化させてしまう。表面凸部で良好なトナー転写性を得るには、直流電圧からなる二次転写バイアスを用いる必要がある。
なお、表2に示した結果は、温度25[℃]、湿度50[%]の標準環境下で得られたものである。本発明者らは、実験室の環境を低温低湿にして多層ベルトからなる中間転写ベルト31を用いて同様の実験を行ったところ、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いると画像濃度不足を引き起こした。これは、転写ピーク値Vtが大きくなり過ぎて、放電に起因する無数の点状の白抜けが発生した結果、画像濃度が著しく低下したからである。重畳電圧からなる二次転写バイアスに代えて、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いたところ点状の白抜けのない良好な画像濃度を得ることができた。環境を様々に変化させて同様の実験を行ったところ、絶対湿度が6[g/m3]を下回った場合には、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる必要があるのに対し、絶対湿度が6[g/m3]以上の場合には重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いる必要があることを見出した。
図5に示されるように、電源制御部200には、環境センサー500が接続されている。この環境センサー500は、プリンタ内の温度を検知してその結果を電源制御部200に送信したり、相対湿度を検知したその結果を電源制御部200に送信したりする。電源制御部200は、環境センサー500から送られてくる信号に基づいて把握した温度と相対湿度とから、プリンタ内の絶対湿度を算出する。
電源制御部200には、入力操作部501も接続されている。電源制御部200は、タッチパネルやキーボードなどから構成される入力操作部に対してユーザーの入力操作が行われることにより、次のような特定情報を取得することができる。即ち、給紙カセット100内にセットされた記録シートについて、表面凹凸シートであるのか、その他のシートであるのかを特定することが可能な特定情報である。つまり、入力操作部501は、特定情報を取得する情報取得手段として機能している。電源制御部200は、入力操作部に入力された特定情報(例えばレザック66を使用するなどといった情報)と、絶対湿度の計算結果とに基づいて、二次転写電流を次の表3に示されるように制御する。
入力操作部501が特定情報を取得し、電源制御部200がその特定情報について表面凹凸シートに対応するものであるか否かを判断する具体的な形態として、たとえば次に例示する何れかの形態を採用することが可能である。
[形態1]電源制御部200には記憶部が接続されている。この記憶部には、用紙の銘柄と、それぞれの銘柄について表面凹凸シートであるか否かを示す凹凸情報とを関連付ける銘柄凹凸データテーブルが記憶されている。電源制御部200は、入力操作部のタッチパネルに複数の用紙の銘柄(たとえば、レザック66(特種東海製紙社製)、普通紙、Mohawk Color Copy Glossなど)を表示させる。ユーザーはそれらの銘柄の中から、使用する用紙の銘柄を選択する。電源制御部200は、その選択された銘柄に関連付けられている凹凸情報を銘柄凹凸データテーブルから特定し、その結果に基づいてトナー像の転写対象となる記録シートについて表面凹凸シートであるか否かを判断する。
[形態2]入力操作部501のタッチパネルに、用紙について表面凹凸シートであるか否かをユーザーに選択してもらうための選択画面を表示する。ユーザーは、使用する用紙を目視等で確認し、その用紙について表面凹凸シートであると判断した場合にはタッチパネル上で「表面凹凸シート」を選択する。また、表面凹凸シートでないと判断した場合はタッチパネル上で「表面凹凸シート以外のシート」を選択する。
[形態3]電源制御部200には記憶部が接続されている。この記憶部には、前述した銘柄凹凸データテーブルが記憶されている。また、プリンタの上部に用紙の銘柄を判別するための判別装置が設けられていて、電源制御部200に接続されている。判別装置は、スイッチと、光学センサー(反射型フォトセンサー)と、光学センサーに接続された判別部とを有する。ユーザーが使用する用紙を光学センサーとの対向位置に置いてスイッチを押すと、判別装置の光学センサーは用紙の表面に光を照射しながら、用紙の表面で得られる反射光を受光する。判別部は、光学センサーによって受光された反射光の情報に基づいて用紙の銘柄を判別する。電源制御部200は、判別部によって判別された銘柄に対応する凹凸情報を、記憶部に記憶されている銘柄凹凸データテーブルの中から特定する。そして、その特定結果に基づいて、判別装置によって銘柄が判別された用紙について表面凹凸シートであるか否かを判断する。なお、判別装置は、プリンタ本体と一体で設けられたものでなく、プリンタ本体とネットワーク接続されたものであってもよい。
表3に示されるように、電源制御部200は、絶対湿度xが6[g/m3]以上である場合には、記録シートPとして表面凹凸シートが用いられる場合にだけ、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いる。これにより、シート表面の表面凹部に二次転写電流を集中的に流してしまい易くなる表面凹凸シートであっても、必要量の二次転写電流を表面凸部にも流して、表面凸部での画像濃度不足の発生を抑えることができる。また、表面凹凸シートでない記録シートPが用いられる場合には、二次転写バイアスとして重畳バイアスからなるものを用いることで、二次転写ニップでトナーに逆極性の電荷を注入することによる平滑面部全体での画像濃度不足の発生を抑えることもできる。
また、電源制御部200は、絶対湿度xが6[g/m3]未満である場合には、記録シートPが表面凹凸シートであるか否かにかかわらず、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いる。表面凹凸のない普通紙、コート紙、その他紙を用いる場合に、ベルト表面とシート表面との間の電位差を放電開始電圧未満に維持して、無数の点状の白抜け異常画像の発生を抑えることができる。
なお、表面凹凸シートでない記録シートPが用いられる場合に、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを用いるのか、重畳電圧からなるものを用いるのかを絶対湿度に基づいて選択する態様について説明したが、次のようにしてもよい。即ち、温度のみ、相対湿度のみ、あるいは両方に基づいて、何れの二次転写バイアスにするのかを選択してもよい。
また、特定情報を取得する情報取得手段として、入力操作部501を用いた例について説明したが、記録シートPの表面凹凸の度合いを測定する測定手段を設け、これによる検知結果を特定情報として用いてもよい。
記録シートPの表面凹凸の度合いを測定する測定手段として、記録シートPの表面における最大凹凸落差を測定する測定装置を例示することができる。また、かかる測定装置の市販機としては、東京精密社製の「SURFCOM 1400D」を例示することができる。この測定装置にて、記録紙表面を顕微鏡で撮影した映像に基づいて、表面全域の中から、被検領域とする箇所をアトランダムに5つ選定する。それぞれの箇所について、評価長さ20[mm]、基準長さ20[mm]という条件で、断面曲線の最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)を測定する。そして、得られた5つの最大断面高さPtのうち、上位3つの平均値を求める。以上の処理を、記録シートPの先端部分、中央部分、後端部分のそれぞれで実施し、それぞれの平均値の更なる平均を最大凹凸落差として求める。この最大凹凸落差(=特定情報)が例えば50[μm]以上である記録シートPを、表面凹凸シートであると特定し、50[μm]未満である記録シートPを表面凹凸シートでないと特定すればよい。
プリンタの電源制御部200は、測定装置によって測定された記録シートPの最大凹凸落差が例えば50[μm]未満である場合には、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。これに対し、最大凹凸落差が例えば50[μm]以上である場合には、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを二次転写電源39から出力させる。
記録シートPの表面凹凸の度合いを測定する他の測定手段としては、記録シートPの表面における平滑度を測定する測定装置を例示することができる。この測定装置は、JIS P 8119「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に記載の方法に準拠して紙の平滑度を測定するものである。この測定装置にて、たとえば用紙上で被検領域をランダムに5つ選定し、それぞれについて平滑度を測定した結果の平均値を求めて平滑度とする。表面凹凸が少ない用紙になるほど、平滑度の値が大きくなる。この平滑度が例えば20秒より低い記録シートPを表面凹凸シートであると判定し、20秒以上の記録シートPを表面凹凸シートでないと判定すればよい。
前述の測定装置を用いる構成の場合、プリンタの電源制御部200は、測定装置によって測定された記録シートPの平滑度が例えば20秒以上であった場合には、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。これに対し、平滑度が例えば20秒より低い場合には、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを二次転写電源39から出力させる。つまり、電源制御部200は、最大凹凸落差や平滑度によって測定された記録シートPの表面凹凸が所定値未満である場合に、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。一方、表面凹凸が所定値以上である場合に、転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを二次転写電源39から出力させる。
次に、第一実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例について説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、第一実施形態と同様である。
図17は、実施例に係るプリンタのシート搬送ユニット38を示す斜視図である。図18は、シート搬送ユニット38を示す正面図である。図19は、中間転写ベルト31から離間した状態のシート搬送ユニット38を示す正面図である。図20は、加圧アーム246を退避状態にしたシート搬送ユニット38を示す正面図である。
これらの図において、シート搬送ユニット38は、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転軸両端部を回転自在に支持する加圧台46を備えている。この加圧台46は、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転軸に平行な加圧台回動軸43を中心にして回動可能に構成されている。
加圧台46は、加圧台回動軸43よりも二次転写ニップ裏打ちローラ36が配置されている側(図中右側)で、弾性部材としての引張バネ44及び圧縮バネ45の付勢力を受けて、加圧台回動軸43回りの回転力が与えられる構成になっている。この回転力により、シート搬送ベルト41における二次転写ニップ裏打ちローラ36に対する掛け回し箇所が中間転写ベルト31に当接し、シート搬送ベルト41と中間転写ベルト31との間に二次転写ニップ圧を生じさせる。
加圧手段である引張バネ44は、加圧台46を上方から引っ張るように配置されており、加圧台46に対して常時ほぼ一定の付勢力を作用させるものである。一方、加圧手段である圧縮バネ45は、加圧台46を下方から押し上げるように配置されており、圧縮バネ45の下端位置が、加圧アーム246の回動角度によって上下方向に変位可能に構成されている。この加圧アーム246は、回動駆動源248によって加圧アーム回動軸247を中心に回動駆動するものである。制御部が回動駆動源248を制御することで、加圧アーム246の停止回動角度を変更することができる。
シート搬送ユニット38は、二次転写ニップ裏打ちローラ36の軸方向の一端側に設けられた一組の引張バネ44及び圧縮バネ45の付勢力を利用して、その一端側の加圧力を30[N]と120[N]との間で切り替えることが可能である。引張バネ44はその付勢力によって30[N]の加圧力を常時付与する。圧縮バネ45の下端には、加圧ステー249が取り付けられており、加圧アーム246が加圧ステー249を上方に押し上げることで、圧縮バネ45による付勢力が加圧台46に作用する構成になっている。
加圧アーム246が図18に示されるような回動角度位置(第二回動角度)で停止した退避状態になると、圧縮バネ45の下端に取り付けられた加圧ステー249から離れて圧縮バネ45の圧縮量をゼロ(自然長)にする。すると、圧縮バネ45の付勢力が加圧台46に作用しなくなることから、上記一端側の加圧力が引張バネ44の付勢力だけによる30[N]になる。加圧アーム246が図18に示される第二回動角度で停止したときの上記一端側の加圧力は、単位圧縮量または単位引張量に対する復元力の変化率が圧縮バネ45よりも小さい引張バネ44による付勢力だけで実現される。このため、目標の二次転写ニップ圧を得やすいという利点がある。
一方、加圧アーム246が図20に示される回動角度位置(第一回動角度)で停止した圧縮バネ加圧状態になると、圧縮バネ45の下端に取り付けられた加圧ステー249を押し上げる。これにより、圧縮バネ45を圧縮して、圧縮バネ45の付勢力を加圧台46に作用させる。すると、圧縮バネ45の付勢力によって90[N]の加圧力が加圧台46に付与され、上記一端側の加圧力が引張バネ44の付勢力による30[N]と圧縮バネ45の付勢力による90[N]との合算値である120[N]になる。
上記一端側の加圧アーム246について説明したが、他端側の加圧アーム246も同様に、加圧力を30[N]と120[N]とで切り替える。2つの加圧アーム246がそれぞれ加圧力を切り替えることで、二次転写ニップ圧は60[N]と240[N]とで切り替わる。
引張バネ44としては、1.3[N/mm]のバネ定数をもつバネ部材を例示することができる。また、圧縮バネ45としては、2.6[N/mm]のバネ定数をもつバネ部材を例示することができる。
シート搬送ユニット38は、中間転写ベルト31のおもて面に対してシート搬送ベルト41を当接させる当接位置から、離間させる離間位置に移動させる移動手段として、離間アーム251を有している。この離間アーム251は、離間レバーの操作に連動して、離間アーム回動軸252を中心に回動するものである。離間レバーの操作により、離間アーム251の停止回動角度位置を切り替えることができる。
離間アーム251は、その自由端部側部分を加圧台46の上面側に位置させるように配置されている。画像形成動作時においては、図18に示されるように、加圧台46を押し下げない回動角度位置で離間アーム251が停止している。すると、二次転写ニップ裏打ちローラ36が中間転写ベルト31に当接する当接位置に拘束される。
一方、二次転写ユニット41の交換等のメンテナンス処理時やジャム処理時には、作業者が離間レバーを操作することで、離間アーム251を図19に示される回動角度位置に移動させる。すると、離間アーム251の自由端部側部分が加圧台46の上面に当接し、引張バネ44の付勢力に抗して加圧台46を押し下げる。これにより、加圧台46が加圧台回動軸43回りで回動して、図19に示されるように、二次転写ニップ裏打ちローラ36が中間転写ベルト31から離間する離間位置に移動する。この離間により、メンテナンス処理やジャム処理の作業を実施し易くする。
加圧アーム246は、上述した退避状態であるとき、離間レバーに連動した離間アーム251により加圧台回動軸43回りで回動する加圧台46の回動範囲(移動経路)外に位置している。加圧アーム246が加圧台46の回動範囲外に位置していることにより、加圧アーム246に邪魔されることなく、二次転写ニップ裏打ちローラ36が当接位置から離間位置に移動することができる。
無端状のシート搬送ベルト41は、二次転写ニップ裏打ちローラ36、分離ローラ46、二次転写第一張架ローラ362及び二次転写第二張架ローラ363の四つのローラによって張架されている。これら四つのローラは、上述した転写ユニット30に支持されており、転写ユニット30を加圧台46から取り外すことで、四つのローラとともにシート搬送ベルト41を加圧台46から取り外すことができる。
加圧台46は、二次転写ニップ裏打ちローラ36の軸方向(図17中Y軸方向)両端をそれぞれ支持し、二次転写ニップ裏打ちローラ36の加圧台46に対する位置を位置決めする前側板461と後側板462とを備えている。二つの側板(461、462)は、図17中のY軸方向に延在する規制手段としての回動軸側ステー部材464と、変位可能規制手段としての加圧側上ステー部材463との二つのステー部材を介して繋がっている。
加圧台46は、前側板461と、後側板462と、回動軸側ステー部材464と、加圧側上ステー部材463とにより、上方からの眺めが(図中のX−Y平面で)略長方形状となる構造体を構成している。前側板461は、前側板軸受部461aで二次転写ニップ裏打ちローラ36の軸方向の手前側端部を回転可能に支持している。また、後側板462は、後側板軸受部462aで二次転写ニップ裏打ちローラ36の軸方向の奥側端部を回転可能に支持している。
図17に示される回動軸側ステー部材464は板金からなり、軸方向(Y軸方向)両端付近が直角に折り曲げられて、それぞれ側板461、462に対向する対向面を形成している。これら対向面を、それぞれ側板461,462に固定することで、各側板の回転軸側が、回動軸側ステー部材464によって側板同士の軸方向(Y軸方向)の相対的な移動規制をなされる。また、回動軸側ステー部材464の軸方向両端部の側板461,462に対向する対向面が側板461,462に固定されていることで、各側板を補強している。このように、回動軸側ステー部材464の軸方向両端部の側板461,462に対向する対向面が、各側板461,462を補強する補強部として機能している。
第一実施形態のプリンタにおいては、既に説明したように、レザック66のような表面凹凸シートに画像を形成する場合には、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いる。これにより、先の表2における多層ベルト及びDCの組み合わせで示されるように、表面凹凸シートの凹部及び凸部でそれぞれ良好なトナー転写性を実現することができる。多層ベルト及びDCの組み合わせにおける表面凹部の「○」という評価結果は、「良い」というものであるが、表面凹部内をトナーが完全に埋め尽くした状態を示すものではない。表面凹部の内部のうち、かなり深い位置では、トナーが転写されていないところも存在している。表面凹部については、「良い」という評価結果よりも、内部の深い位置までトナーを転位させている「非常に良い=◎」という評価結果にすることが理想である。
本発明者らは、第二プリント試験機を用いて、二次転写ニップ圧とトナー転写性との関係を調べる第四実験を行った。この第二プリント試験機は、実施例に係るプリンタと同様に、加圧アームの回動停止位置の変化によって二次転写ニップ圧を60[N]と240[N]とで切り替えることが可能になっている。本発明者らは、それぞれの二次転写ニップ圧の条件で、テストプリントを実施した。記録シートとして普通紙を用いた場合には、二次転写バイアスとして、ディーティを50%よりも大きくした重畳電圧からなるものを採用した。また、表面凹凸シートであるレザック66を用いた場合には、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを採用した。中間転写ベルト31としては、第一実施形態に係るプリンタと同様の多層構造の多層ベルトからなるものを用いた。それぞれの条件で、記録シートPにテスト画像をプリントして、トナーの転写性を非常に良い(◎)、良い(○)、普通(△)、悪い(×)の四段階で評価した。記録シートPとして、レザック66を用いた場合には、表面凹部へのトナー転写性を評価した。また、普通紙を用いた場合には、普通紙の平滑面部へのトナー転写性を評価した。更に、ドット形状の乱れを、乱れなし(○)、乱れあり(×)の二段階で評価した。この第四実験の結果を次の表4に示す。
表4に示されるように、記録シートPとして表面凹凸紙を用い、且つ二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを採用した場合に、二次転写ニップ圧を60[N]にすると、表面凹部のトナー転写性は「良い(○)」という評価結果になった。これに対し、二次転写ニップ圧を60[N]から240[N]に引き上げると、表面凹部のトナー転写性を「非常に良い(◎)」という評価結果に改善することができた。ドット形状は、何れの二次転写ニップ圧の条件でも「乱れなし(○)」という評価結果になった。
一方、記録シートPとして表面凹凸紙を用い、且つ二次転写バイアスとして高デューティの重畳電圧からなるものを採用した場合には、何れの二次転写ニップ圧の条件でも、良好なトナー転写性を得ることができた(良い(○))。但し、二次転写ニップ圧を240[N]にした条件では、ドットの潰れによってドット形状が乱れてしまった(乱れあり(×))のに対し、60[N]にした条件ではドット形状の乱れはなかった(乱れなし(○))。
図21は、実施例に係るプリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、二次転写電源39からの二次転写バイアスの出力を制御する電源制御部200には、プリンタの各機器の駆動を制御するメイン制御部350が接続されている。このメイン制御部350は、第一実施形態に係るプリンタと同様に、入力操作部501に入力される特定情報に応じて、二次転写バイアスを先の表3に示されるように制御する。実施例に係るプリンタにおいては、メイン制御部350及び電源制御部200の組み合わせが制御手段として機能している。
一方、メイン制御部350は、入力操作部501に入力された特定情報が表面凹凸シートに対応するものであった場合には、ニップ圧変更手段としてのシート搬送ユニット38を制御して、二次転写ニップ圧を240[N]にする。これにより、表面凹凸シートの表面凹部内の深い位置まで、トナーを良好に転位させて表面凹部で非常に良いトナー転写性を得るようにする。これに対し、入力操作部501に入力された特定情報が表面凹凸シートに対応するものでなかった場合には、シート搬送ユニット38を制御して、二次転写ニップ圧を60[N]にする。これにより、表面凹凸シートではない普通紙などを用いた場合におけるドット形状の乱れを抑えることができる。
次に、本発明を適用した第二実施形態に係るプリンタについて説明する。なお、第二実施形態に係るプリンタの基本的な構成は、第一実施形態に係るプリンタの基本的な構成と同じである。
本発明者らは、上記プリント試験機を用いて様々な条件でテストプリントする第五実験を行った。二次転写バイアスについては、直流電圧だけからなるものと、ディーティを50%よりも大きくした重畳電圧からなるものと、デューティを50%以下にした重畳電圧からなるものとで適宜切り替えた。また、中間転写ベルト31としては、第一実施形態に係るプリンタと同様の多層構造の多層ベルトからなるものと、基層だけからなる単層ベルトからなるものとを適宜入れ替えた。また、記録シートPとしては、表面凹凸紙(特種東海製紙株式会社製のレザック66)からなるものを用いた。それぞれの条件で、記録シートPにテスト画像をプリントして、シート表面凹部へのトナーの転写性と、シート表面凸部へのトナーの転写性とを良い(○)、普通(△)、悪い(×)の三段階で評価した。
この結果は、表2における表面凹凸紙の結果と似ているが、多層ベルトと高デューティの二次転写バイアスとの組み合わせを用いた場合、及び単層ベルトと高デューティの二次転写バイアスとの組み合わせを用いた場合だけ、表2における結果と異なっている。何れの場合も、この第五実験の結果の方が、表2における結果(第三実験の結果)よりも少し悪くなっている。前者の場合における結果が△〜○になっているのは、シート表面凹部の最深部では若干のトナー量低下が認められたためである。表2の結果と異なってしまったのは、第五実験では、高デューティの二次転写バイアスとして、第三実験よりもピークツウピーク値の大きなものを用いたためであると思われた。そして、このことから、表面凹凸紙を用いる場合に、第一実施形態のように直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いずに、重畳電圧かrなある二次転写バイアスを用いても、そのピークツウピーク値によっては良い結果が得られる可能性が示唆された。
そこで、本発明者らは、重畳電圧からなる二次転写バイアスにおけるピークツウピーク値を変化させながら、それぞれのピークツウピーク値の条件で表面凹凸紙にテスト画像を二次転写してシート表面凸部に対するトナー転写性を調べる第六実験を実施した。テスト画像としては、ハーフトーン画像を採用した。そして、シート表面凸部に対するトナー転写性について、十分なハーフトーンの濃度が得られている状態をランク5と評価した。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている状態をランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い状態をランク2として評価した。また、全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い状態をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルは、ランク4以上である。
この第6実験の結果を次の表6に示す。なお、表6におけるVppは重畳電圧からなる二次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク値[kV]である。
表6に示されるように、ピークツウピーク値Vppを低くするほど、シート表面凸部に対するトナー転写性を向上させ得ることが解った。これは、ピークツウピーク値Vppを低くするほど、交流成分の一周期内において二次転写バイアスをその平均電位Vaveやそれに近い値にしている時間を増加させて、直流電圧に似た性質を強くもたせるからと考えられる。よって、ピークツウピーク値Vppがかなり低い重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いて表面凹凸紙にトナー像を二次転写すれば、シート表面凸部に対してトナーを良好に二次転写することが可能になる。ところが、ピークツウピーク値Vppがかなり低い重畳電圧を用いると、平滑紙に対してトナー像を良好に転写することができずに、点状の白抜けのある異常画像を引き起こしてしまう。
そこで、第二実施形態に係るプリンタは、次のような特徴的な構成を備えている。
第二実施形態に係るプリンタは、図5に示される構成と同様の二次転写電源39を備えている。この二次転写電源39には、図5と同様に、環境センサー500が接続されている。
二次転写電源39は、第一実施形態に係るプリンタのものと同様に、重畳電圧からなる二次転写バイアスとして、時間平均(平均電位Vave)の極性がトナーの帯電極性と同極性になるバイアスからなるものを出力する。具体的には、直流電圧と交流電圧との重畳により、周期的に極性を反転させる交番電圧からなるものであるが、時間平均(平均電位Vave)では、極性がトナーと同じマイナス極性になるバイアスになっている。電源制御部200は、環境センサー500から送られてくる信号に基づいて把握した温度と相対湿度とから、プリンタ内の絶対湿度を算出する。
電源制御部200には、入力操作部501も接続されている。電源制御部200は、タッチパネルやキーボードなどから構成される入力操作部に対してユーザーの入力操作が行われることにより、次のような特定情報を取得することができる。即ち、給紙カセット100内にセットされた記録シートについて、表面凹凸シートであるのか、その他のシートであるのかを特定することが可能な特定情報である。つまり、入力操作部501は、特定情報を取得する情報取得手段として機能している。電源制御部200は、入力操作部に入力された特定情報(例えばレザック66を使用するなどといった情報)と、絶対湿度の計算結果とに基づいて、二次転写電流を次の表7に示されるように制御する。
入力操作部501が特定情報を取得し、電源制御部200がその特定情報について表面凹凸シートに対応するものであるか否かを判断する具体的な形態としては、第一実施形態で説明した形態1、形態2、形態3の何れかを採用することが可能である。
表7において、第一の重畳電圧からなる二次転写バイアスは、第二の重畳電圧からなる二次転写バイアスに比べて、交流成分のピークツウピーク値Vppが高いが、その他の特性は第二の重畳電圧と同じである。但し、第一の重畳電圧と第二の重畳電圧とで、ピークツウピーク値Vppの他の特性を互いに異ならせてもよい。
表7に示されるように、電源制御部200は、記録シートPの種類にかかわらず、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。但し、その重畳電圧の種類を、記録シートPの種類に応じて変更する制御を実施する。具体的には、絶対湿度xが6[g/m3]以上である場合であって、且つ記録シートPとして表面凹凸シートとは異なるものを用いる場合には、二次転写バイアスとして第一の重畳電圧からなるものを用いる。一方、絶対湿度xが6[g/m3]以上である場合であって、且つ記録シートPとして表面凹凸シートからなるものを用いる場合には、二次転写バイアスとして第二の重畳電圧からなるものを用いる。これにより、シート表面の表面凹部に二次転写電流を集中的に流してしまい易くなる表面凹凸シートであっても、必要量の二次転写電流を表面凸部にも流して、表面凸部での画像濃度不足の発生を抑えることができる。一方、表面凹凸シートでない記録シートPが用いられる場合には、二次転写バイアスとして、第二の重畳電圧よりも交流成分のピークツウピーク値Vppが高い第一の重畳電圧からなるものを用いる。これにより、二次転写ニップでトナーに逆極性の電荷を注入することによる平滑面部全体での画像濃度不足の発生を抑えることもできる。
また、電源制御部200は、絶対湿度xが6[g/m3]未満である場合には、記録シートPが表面凹凸シートであるか否かにかかわらず、二次転写バイアスとして第二の重畳電圧からなるものを用いる。これにより、表面凹凸のない普通紙、コート紙、その他紙を用いる場合に、ベルト表面とシート表面との間の電位差を放電開始電圧未満に維持して、無数の点状の白抜け異常画像の発生を抑えることができる。
なお、表面凹凸シートでない記録シートPが用いられる場合に、二次転写バイアスとして、第一の重畳電圧からなるものを用いるのか、第二の重畳電圧からなるものを用いるのかを絶対湿度に基づいて選択する態様について説明したが、次のようにしてもよい。即ち、温度のみ、相対湿度のみ、あるいは両方に基づいて、何れの二次転写バイアスにするのかを選択してもよい。
また、特定情報を取得する情報取得手段として、入力操作部501を用いた例について説明したが、記録シートPの表面凹凸の度合いを測定する測定手段を設け、これによる検知結果を特定情報として用いてもよい。記録シートPの表面凹凸の度合いを測定する測定手段として、記録シートPの表面における最大凹凸落差を測定する測定装置を例示することができる。最大凹凸落差の測定法については、第一実施形態で説明した方法を用いることができる。
プリンタの電源制御部200は、測定装置によって測定された記録シートPの最大凹凸落差が例えば50[μm]未満である場合には、二次転写バイアスとして第一の重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。これに対し、最大凹凸落差が例えば50[μm]以上である場合には、二次転写バイアスとして第二の重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。
記録シートPの表面凹凸の度合いを測定する他の測定手段として、第一実施形態で説明したように、記録シートPの平滑度を測定する方法を採用してもよい。この方法を採用する場合、プリンタの電源制御部200は、記録シートPの平滑度が例えば20秒以上であった場合には、二次転写バイアスとして第一の重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。これに対し、平滑度が例えば20秒より低い場合には、二次転写バイアスとして第二の重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。つまり、電源制御部200は、最大凹凸落差や平滑度によって測定された記録シートPの表面凹凸が所定値未満である場合に、転写バイアスとして第一の重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。一方、表面凹凸が所定値以上である場合に、転写バイアスとして第二の重畳電圧からなるものを二次転写電源39から出力させる。
第一の重畳電圧としては、例えば、ピークツウピーク値が6.4[kV]であって、直流電圧が約−120[μA]に定電流制御されるものを例示することができる。また、第二の重畳電圧としては、ピークツウピーク値が0.5[kV]であって、直流電圧が約−120[μA]に定電流制御されるものを例示することができる。
第二実施形態に係るプリンタは、上述した実施例に係るプリンタと同様の構成のシート搬送ユニット38(図17〜図20)を備えている。また、実施例に係るプリンタと同様の構成の電気回路(図21)も備えている。そして、メイン制御部350は、入力操作部501に入力された特定情報が表面凹凸シートに対応するものであった場合には、ニップ圧変更手段としてのシート搬送ユニット38を制御して、二次転写ニップ圧を240[N]にする。これにより、表面凹凸シートの表面凹部内の深い位置まで、トナーを良好に転位させて表面凹部で非常に良いトナー転写性を得るようにする。これに対し、入力操作部501に入力された特定情報が表面凹凸シートに対応するものでなかった場合には、シート搬送ユニット38を制御して、二次転写ニップ圧を60[N]にする。これにより、表面凹凸シートではない普通紙などを用いた場合におけるドット形状の乱れを抑えることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、像担持体(例えば中間転写ベルト31)の移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段(例えばトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット80、転写ユニット30などからなるもの)と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)と、前記転写ニップに転写電流を流すための転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを出力する転写電源(例えば二次転写電源39)とを備え、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに前記像担持体上のトナー像を転写する画像形成装置(例えばプリンタ)において、トナー像の転写対象となる記録シートについて、表面凹凸に富んだ表面凹凸シートであるか否かを特定するための特定情報(例えば入力情報)を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501)を設けるとともに、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものでない場合に、前記転写バイアスとして重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させる一方で、前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものである場合に、前記転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを前記転写電源から出力させる制御手段(例えば電源制御部200)を設けたことを特徴とするものである。
かかる構成において、重畳電圧からなる転写バイアスは、ピークツウピークにおける一方のピーク値と他方のピーク値との間で値を周期的に変動させる。それら二つのピーク値のうち、転写ニップ内のトナーに対して像担持体側から記録シート側に向かう転写方向の静電気力をより強く付与する方の転写ピーク値が、表面凹凸シートにおける凸部での画像濃度不足や表面全体での点状の白抜け異常画像の発生に関与する。具体的には、表面凹凸シートは、シート表面方向において、表面に凹部のある箇所(凹部箇所)の体積固有抵抗値が表面に凸部のある箇所(凸部箇所)の体積固有抵抗値よりも小さくなる。このため、転写ニップに挟み込まれた表面凹凸シートでは、凸部箇所より凹部箇所に対して優先的に転写電流が流れるようになる。よって、重畳電圧からなる転写バイアスの転写ピーク値が比較的低い値であると、殆どの転写電流が凹部箇所に回り込む一方で、凸部箇所に流れる転写電流の量が不足する。これにより、凸部箇所に対して十分量のトナーが転写されなくなって凸部における画像濃度不足が発生する。この画像濃度不足の発生を抑えるために、凸部箇所に対して十分量の転写電流を流し得る値まで転写ピーク値を大きくすると、その値を像担持体とシート表面との間の放電開始電圧よりも大きくして、両者間で放電を発生させ易くなる。そして、その放電により、点状の白抜け異常画像を発生させてしまう。
一方、転写バイアスとして、重畳電圧からなるものに代えて、直流電圧だけからなるものを用いる場合には、重畳電圧からなるものを用いる場合とは異なり、転写ニップ内のトナーに対して転写方向への静電気力を付与し続ける。このため、重畳電圧からなる転写バイアスを用いた場合に凸部箇所に対して十分量の転写電流を流し得る転写ピーク値よりも低い値の直流電圧で、凸部箇所に対して十分量の転写電流を流すことが可能になる。これにより、凸部の画像濃度不足の発生と、点状の白抜け異常画像の発生とを抑えることができるようになる。
しかしながら、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いると、記録シートとして平滑シートを用いた場合に、転写ニップ内でトナーに対して逆電荷を多量に注入して、シート表面全体の画像濃度不足を発生させ易くなってしまう。
そこで、態様Aにおいては、平滑シートが用いられる場合には、重畳電圧からなる転写バイアスを用いてトナー像を像担持体から平滑シートに転写する。これにより、転写方向への静電気力を付与し続ける直流電圧だけからなる転写バイアスを用いる場合に比べて、転写ニップ内でのトナーへの逆電荷の注入を抑えて、シート表面全体の画像濃度不足の発生を抑えることができる。また、表面凹凸シートが用いられる場合には、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いて像担持体上のトナーを表面凹凸シートに転写する。これにより、表面凹凸シートにおける凸部の画像濃度不足の発生や、表面全体における点状の白抜け異常画像の発生を抑えることができる。
以上のように、態様Aにおいては、表面凹凸シートにおける表面凹部での画像濃度不足や表面全体での点状の白抜け異常画像の発生を抑え、且つ平滑シートにおける表面全体での画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記像担持体として、無端状のベルト基体のおもて面上に、前記ベルト基体よりも弾性に優れた弾性層を設けたものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、記録シートとして表面凹凸シートを用いる場合であっても、転写ニップで像担持体の弾性層をシート表面凹凸にならわせて柔軟に変化させてシート表面凹部に弾性層を良好に密着させる。これによりシート表面凹部に対しても像担持体上のトナーを良好に転写して、表面凹凸にならった濃度ムラの発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記弾性層として弾性表面層を設け、前記弾性表面層の材料に分散した複数の微粒子による複数の微小突起を前記弾性表面層の表面に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、弾性表面層の表面における複数の微小突起により、転写ニップ内で弾性表面層の表面とトナーとの接触面積を低減することで像担持体表面からのトナー離型性を高めて転写効率を向上させることができる。
[態様D]
態様Dは、態様A〜Cの何れかにおいて、温度及び湿度のうち、少なくとも何れか一方を検知する環境検知手段を設け、前記環境検知手段による温度検知結果、相対湿度検知結果、又は温度検知結果と相対湿度検知結果とに基づく絶対湿度が所定の閾値以上である場合、又は閾値を超える場合であって、且つ前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものでない場合には、前記転写バイアスとして重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高温や高湿の環境下で平滑シートを用いる場合に、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いることによるシート表面全体の画像濃度不足の発生を回避することができる。
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものでない場合であっても、前記温度検知結果、前記相対湿度検知結果、又は前記絶対湿度が前記閾値以上でない場合、又は前記閾値を超えない場合には、前記転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを前記転写電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低温や低湿の環境下で平滑シートを用いる場合に、重畳電圧からなる転写バイアスを用いることによるシート表面全体における点状の白抜け異常画像の発生を回避することができる。
[態様F]
態様Fは、態様D又はEにおいて、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものである場合には、前記温度検知結果、前記相対湿度検知結果、又は前記絶対湿度にかかわらず、前記転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを前記転写電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、環境にかかわらず、表面凹凸シートの凸部の画像濃度不足や、シート表面全体における点状の白抜け異常画像の発生を抑えることができる。
[態様G]
態様A〜Fの何れかにおいて、前記転写ニップの圧力を変更するニップ圧変更手段(例えばシート搬送ユニット38)を設け、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が表面凹凸シートに対応するものである場合には、表面凹凸シートに対応するものでない場合に比べて、前記圧力を高くする制御を前記ニップ圧変更手段に対して行うように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、表面凹凸シートの表面凹部における深い位置までトナーを良好に転写して、表面凹部で更に良好なトナー転写性を得ることができる。加えて、記録シートとして表面凹凸シートではないシートを用いる場合にニップ圧を高め過ぎることによるドット形状の乱れの発生を抑えることもできる。
[態様H]
態様Hは、像担持体(例えば中間転写ベルト31)の移動する表面にトナー像を形成するトナー像形成手段(例えばトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、光書込ユニット80、転写ユニット30などからなるもの)と、前記表面に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)と、前記転写ニップに転写電流を流すための転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものを出力する転写電源(例えば二次転写電源39)とを備え、前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに前記像担持体上のトナー像を転写する画像形成装置(例えばプリンタ)において、トナー像の転写対象となる記録シートについて、表面凹凸に富んだ表面凹凸シートであるか否かを特定するための特定情報(例えば入力情報)を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501)を設けるとともに、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものでない場合に、前記転写バイアスとして第一の重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させる一方で、前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものである場合に、前記転写バイアスとして前記第一の重畳電圧よりもピークツウピーク値の小さな第二の重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させる制御手段(例えば電源制御部200)を設けたことを特徴とするものである。
かかる構成において、第一の重畳電圧からなる転写バイアスは、ピークツウピークにおける一方のピーク値と他方のピーク値との間で値を周期的に変動させる。それら二つのピーク値のうち、転写ニップ内のトナーに対して像担持体側から記録シート側に向かう転写方向の静電気力をより強く付与する方の転写ピーク値が、表面凹凸シートにおける凸部での画像濃度不足や表面全体での点状の白抜け異常画像の発生に関与する。具体的には、表面凹凸シートは、シート表面方向において、表面に凹部のある箇所(凹部箇所)の体積固有抵抗値が表面に凸部のある箇所(凸部箇所)の体積固有抵抗値よりも小さくなる。このため、転写ニップに挟み込まれた表面凹凸シートでは、凸部箇所より凹部箇所に対して優先的に転写電流が流れるようになる。よって、第一の重畳電圧からなる転写バイアスの転写ピーク値が比較的低い値であると、殆どの転写電流が凹部箇所に回り込む一方で、凸部箇所に流れる転写電流の量が不足する。これにより、凸部箇所に対して十分量のトナーが転写されなくなって凸部における画像濃度不足が発生する。この画像濃度不足の発生を抑えるために、凸部箇所に対して十分量の転写電流を流し得る値まで転写ピーク値を大きくすると、その値を像担持体とシート表面との間の放電開始電圧よりも大きくして、両者間で放電を発生させ易くなる。そして、その放電により、点状の白抜け異常画像を発生させてしまう。
一方、転写バイアスとして、第一の重畳電圧からなるものに代えて、第一の重畳電圧よりもピークツウピーク値(厳密には交流成分のピークツウピーク値)が低い第二の重畳電圧からなるものを用いる場合には、次のような現象が生じる。即ち、第一の重畳電圧からなる転写バイアスを用いた場合に凸部箇所に対して十分量の転写電流を流し得る転写ピーク値よりも低い値の転写ピーク値で、凸部箇所に対して十分量の転写電流を流すことが可能になる。これにより、凸部の画像濃度不足の発生と、点状の白抜け異常画像の発生とを抑えることができるようになる。
しかしながら、第二重畳電圧からなる転写バイアスを用いると、記録シートとして平滑シートを用いた場合に、転写ニップ内でトナーに対して逆電荷を多量に注入して、シート表面全体の画像濃度不足を発生させ易くなってしまう。
そこで、態様Hにおいては、平滑シートが用いられる場合には、第一の重畳電圧からなる転写バイアスを用いてトナー像を像担持体から平滑シートに転写する。これにより、第二の重畳電圧からなる転写バイアスを用いる場合に比べて、転写ニップ内でのトナーへの逆電荷の注入を抑えて、シート表面全体の画像濃度不足の発生を抑えることができる。また、表面凹凸シートが用いられる場合には、第二の重畳電圧からなる転写バイアスを用いて像担持体上のトナーを表面凹凸シートに転写する。これにより、表面凹凸シートにおける凸部の画像濃度不足の発生や、表面全体における点状の白抜け異常画像の発生を抑えることができる。
以上のように、態様Hにおいては、表面凹凸シートにおける表面凹部での画像濃度不足や表面全体での点状の白抜け異常画像の発生を抑え、且つ平滑シートにおける表面全体での画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様I]
態様Iは、態様Hにおいて、前記像担持体として、無端状のベルト基体のおもて面上に、前記ベルト基体よりも弾性に優れた弾性層を設けたものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、記録シートとして表面凹凸シートを用いる場合であっても、転写ニップで像担持体の弾性層をシート表面凹凸にならわせて柔軟に変化させてシート表面凹部に弾性層を良好に密着させる。これによりシート表面凹部に対しても像担持体上のトナーを良好に転写して、表面凹凸にならった濃度ムラの発生を抑えることができる。
[態様J]
態様Jは、態様Iにおいて、前記弾性層として弾性表面層を設け、前記弾性表面層の材料に分散した複数の微粒子による複数の微小突起を前記弾性表面層の表面に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、弾性表面層の表面における複数の微小突起により、転写ニップ内で弾性表面層の表面とトナーとの接触面積を低減することで像担持体表面からのトナー離型性を高めて転写効率を向上させることができる。
[態様K]
態様Kは、態様H〜Jの何れかにおいて、温度及び湿度のうち、少なくとも何れか一方を検知する環境検知手段を設け、前記環境検知手段による温度検知結果、相対湿度検知結果、又は温度検知結果と相対湿度検知結果とに基づく絶対湿度が所定の閾値以上である場合、又は閾値を超える場合であって、且つ前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものでない場合に、前記転写バイアスとして前記第一の重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高温や高湿の環境下で平滑シートを用いる場合に、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いることによるシート表面全体の画像濃度不足の発生を回避することができる。
[態様L]
態様Lは、態様Kにおいて、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものでない場合であっても、前記温度検知結果、前記相対湿度検知結果、又は前記絶対湿度が前記閾値以上でない場合、又は前記閾値を超えない場合には、前記転写バイアスとして前記第二の重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低温や低湿の環境下で平滑シートを用いる場合に、重畳電圧からなる転写バイアスを用いることによるシート表面全体における点状の白抜け異常画像の発生を回避することができる。
[態様M]
態様Mは、態様K又はLにおいて、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が前記表面凹凸シートに対応するものである場合には、前記温度検知結果、前記相対湿度検知結果、又は前記絶対湿度にかかわらず、前記転写バイアスとして前記第二の重畳電圧からなるものを前記転写電源から出力させるように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、環境にかかわらず、表面凹凸シートの凸部の画像濃度不足や、シート表面全体における点状の白抜け異常画像の発生を抑えることができる。
[態様N]
態様Nは、態様H〜Mの何れかにおいて、前記転写ニップの圧力を変更するニップ圧変更手段(例えばシート搬送ユニット38)を設け、前記情報取得手段によって取得された前記特定情報が表面凹凸シートに対応するものである場合には、表面凹凸シートに対応するものでない場合に比べて、前記圧力を高くする制御を前記ニップ圧変更手段に対して行うように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、表面凹凸シートの表面凹部における深い位置までトナーを良好に転写して、表面凹部で更に良好なトナー転写性を得ることができる。加えて、記録シートとして表面凹凸シートではないシートを用いる場合にニップ圧を高め過ぎることによるドット形状の乱れの発生を抑えることもできる。