以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例である電子写真方式のカラープリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の概略構成を示す図である。
図1において、プリンタ500は、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1(Y,M,C,K)と、転写装置としての転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給紙カセット100、レジストローラ対105等を備えている。
4つの画像形成ユニット1(Y,M,C,K)は、粉体である現像剤として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。つまり、四つの画像形成ユニット1(Y,M,C,K)は、画像形成装置本体としてのプリンタ本体500に対して着脱自在に設けられていて、交換可能とされている。
図2は、四つの画像形成ユニット1(Y,M,C,K)のうちの一つを拡大して示す概略構成図である。四つの画像形成ユニット1(Y,M,C,K)は、使用するトナーの色が異なる点以外は、同様の構成を備えているため、使用するトナーの色を示す添え字(Y,M,C,K)は省略している。
画像形成ユニット1は、像担持体たるドラム状の感光体2、ドラムクリーニング装置3、除電装置、帯電装置6、現像装置8等を備えている。画像形成ユニット1は、これらの複数の装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体500に対して一体的に脱着可能なプロセスカートリッジユニットを構成していて、ユニット単位で交換可能とされている。
感光体2は、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたドラム形状のものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6は、帯電バイアスが印加される帯電部材となる帯電ローラ7を感光体2に接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7と感光体2との間に放電を発生させることで、感光体2の表面を一様帯電させている。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2に接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャによる方式を採用してもよい。
帯電ローラ7で一様帯電された感光体2の表面は、光書込ユニット80から発せられるレーザー光などの露光光Lによって光走査されて各色用の静電潜像を担持する。この静電潜像は、図示しない各色トナーを用いる現像装置8によって現像されて各色のトナー像になる。感光体2のトナー像は、後述する無端状のベルト部材からなる中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3は、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2表面に付着している転写残トナーを除去するもので、回転駆動されるクリーニングブラシローラ4、片持ち支持された状態で自由端を感光体2に当接させるクリーニングブレード5などを有している。ドラムクリーニング装置3は、回転するクリーニングブラシローラ4で転写残トナーを感光体2の表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2表面から掻き落としてクリーニングする。
除電装置は、ドラムクリーニング装置3によってクリーニングされた後の感光体2の残留電荷を除電する。この除電により、感光体2の表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8は、現像剤担持体たる現像ロール9を内包する現像部12と、現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13とを有している。そして、現像剤搬送部13は、第1スクリュー部材10を収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11を収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10を収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11を収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10は、螺旋羽根内に保持している現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10と、後述する現像ロール9とは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときの現像剤の搬送方向は、現像ロール9の回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10は、現像ロール9の表面に対して現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10の図中手前側端部付近まで搬送された現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11の螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11の回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内の現像剤のトナー濃度を検知する。トナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤の透磁率は、トナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、トナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12内に収容されている現像ロール9は、第1スクリュー部材10に対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2にも対向している。また、現像ロール9は、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10から供給される現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2に対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2の静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2の一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2の静電潜像との間には、現像スリーブ上のトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2の地肌部との間には、現像スリーブ上のトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のトナーが感光体2の静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C,K用の画像形成ユニット1Y,M,C,Kにおいて、上記のように、感光体2上に各色トナー像が形成される。
図1に示すように、画像形成ユニット1(Y,M,C,K)の上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、感光体2(Y,M,C,K)を光走査する。この光走査により、感光体2(Y,M,C,K)上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。
なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1(Y,M,C,K)の下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめるベルトユニットであり転写装置である転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、複数の回転体としての駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34と、四つの一次転写ローラ35(Y,M,C,K)を有していて、プリンタ本体500に対してユニットごと着脱自在(交換可能)とされている。中間転写ベルト31のループ外側の周囲は、像担持体であり、二次転写部材としての二次転写ベルト36を備えた二次転写ユニット41と、ベルトクリーニング装置37と、検知手段としての電位センサ38などが配置されている。また、環境検知手段としての温湿度センサ106も配置されている。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び四つの一次転写ローラ35(Y,M,C,K)に巻き掛けられて支持され張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動して搬送される。すなわち、転写ユニット30は、複数の回転体でベルト部材を巻き掛けて支持して搬送するものである。
四つの一次転写ローラ35(Y,M,C,K)は、無端移動される中間転写ベルト31を感光体2(Y,M,C,K)との間に挟み込んでいて、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2(Y,M,C,K)とが当接するY,M,C,K用の転写部となる一次転写ニップを形成している。一次転写ローラ35(Y,M,C,K)には、転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2(Y,M,C,K)上のY,M,C,Kのトナー像と、一次転写ローラ35(Y,M,C,K)との間に転写電界が形成される。
イエロー用の感光体2Yの表面に形成されたYトナー像は、イエロー用の感光体2Yの回転に伴ってイエロー用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、イエロー用感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写された中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2(M,C,K)上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には四色重ね合わせトナー像が形成される。一次転写部材として、一次転写ローラ35(Y,M,C,K)に代えて、転写チャージャや転写ブラシなどを採用してもよい。
中間転写ベルト31のループ外側に配設された二次転写ユニット41は、ループ内側の二次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込み、中間転写ベルト31のおもて面と、二次転写ベルト36とが当接する転写部となる二次転写ニップNを形成している。二次転写ベルト36は、複数のローラ400,401,402,403に支持される。二次転写裏面ローラ33には、二次転写バイアス電源39によって二次転写バイアスが印加され、二次転写ベルト36は接地されている。具体的には、二次転写ベルト36を支持する二次転写ローラとしてのローラ400が接地されている。これにより、二次転写裏面ローラ33と二次転写ベルト36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側から二次転写ベルト36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
装置本体の下部には、用紙や樹脂シートなどの記録媒体Pを複数枚重ねた束の状態で収容している収容部となるカセット100が配設されている。このカセット100は、束の一番上の記録媒体Pにローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録媒体Pを搬送路に向けて送り出す。搬送路の末端付近には、レジストローラ対105が配設されている。このレジストローラ対105は、カセット100から送り出された記録媒体Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録媒体Pを二次転写ニップN内で中間転写ベルト31上の四色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録媒体Pを二次転写ニップに向けて送り出す。
すなわち、転写ユニット30は、像担持体が、画像となるトナー像が転写される無端状のベルト部材としての中間転写ベルト31であって、複数の回転体としての駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34で中間転写ベルト31を巻き掛けて支持し、中間転写ベルト31に転写されたトナー像を記録媒体Pとの転写部となる二次転写ニップNまで搬送するベルトユニットである。
二次転写ニップNで記録媒体Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の四色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録媒体P上に一括二次転写され、記録媒体Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。
なお、ニップ形成部材たる二次転写ベルト36を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成に代えて、次のような構成を採用してもよい。即ち、ニップ形成部材たるニップ形成ローラを中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップを形成する構成である。
二次転写ニップNを通過した後の中間転写ベルト31には、記録媒体Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
電位センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。電位センサ38は、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、間隙を介して対向配置されている。そして、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。
二次転写ニップの図中右側方には、周知の定着装置90が配設されている。定着装置90には、フルカラートナー像が転写された記録媒体Pが送り込まれる。送り込まれた記録媒体Pは、熱源を内部に備えた定着ローラ91と加圧ローラ92とが接触する定着ニップに挟まれ、加熱と加圧よって、フルカラートナー像中のトナーが軟化して定着される。定着後の記録媒体Pは、定着装置90内から排出され、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
実施形態のプリンタ500は、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している転写ユニット30の支持板を移動して、一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から離間する方向に遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から引き離して、中間転写ベルト31をブラック用感光体2Kだけに当接させる。この状態で、四つの画像形成ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用感光体2K上に形成する。
なお、中間転写ベルト31との間に二次転写ニップを形成する転写部材として、ローラ形状の二次転写ローラを用いてもよい。二次転写バイアスの印加位置は、中間転写ベルト31内側の二次転写裏面ローラ33ではなく、転写部材側(たとえば二次転写ローラ)であってもよい。また、カラー画像形成装置にかぎらず、モノクロの画像形成装置に本発明を適用してもよい。
図3は、中間転写ベルト31の層構成を示す模式図である。なお、ここでは、本発明に係る画像形成装置に好適に用いることのできる中間転写ベルトについて説明するが、この構成に限定されるものではない。
中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層101と、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層102とを具備している。弾性層102には、粒子103が分散せしめられていて、それらの粒子103が自らの一部を弾性層102の表面から突出させた状態で、図4に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子103により、複数の凹凸がベルト面に形成されている。
基層101の材料としては、樹脂中に電気抵抗を調整する充填材(又は、添加材)、いわゆる電気抵抗調整材を含有してなるものが挙げられる。このような樹脂としては、難燃性の観点から、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましく、機械強度(高弾性)や耐熱性の点から、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層101の前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層101に含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の150[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層101の厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層101の厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層101の厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層101の層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層101の厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層102は、上述したように、分散せしめられた複数の粒子103による凹凸形状を表面に有している。弾性層102を形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック(商品名)紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子103を分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層102を構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層102に用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130〜220℃であり、より好ましくは140℃〜200℃である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しは、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層102の抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。また、近年の電子写真方式の画像形成装置に求められるような、凹凸シートへの高いトナー転写性を得るために、弾性層102の23℃50%RH環境下でのマイクロゴム硬度値を35以下にするように柔軟性を調整することが好ましい。マルテンス硬度、ビッカース硬度など、いわゆる微小硬度での計測は、測定部位のバルク方向の浅い領域、すなわち表面近傍のごく限られた領域の硬度しか測定していなのでベルト全体としての変形性能は評価できない。このため、例えば中間転写ベルト31全体としての変形性能が低い構成のものに、最表面に柔軟な材料を用いた場合、微小硬度値を低くしてしまう。このような中間転写ベルト31は変形性能が低い、すなわち凹凸シートへの追従性が悪いので、結果として近年の画像形成装置に求められる凹凸シートへの転写性能を十分に発揮することができなくなってしまう。よって、中間転写ベルト31全体の変形性能を評価することが可能なマイクロゴム硬度を測定して中間転写ベルト31の柔軟性を評価することが好ましい。
弾性層102の層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。層厚が200μmよりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2mmよりも大きいと、弾性層102が自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層102の弾性材料に分散せしめる粒子103としては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子103の樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子103としては、体積平均粒径が1.0μm〜5.0μmであり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅の粒子である。粒子103の粒径が1.0μm未満であると、粒子103による転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0μmよりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子103は一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子103の電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子103としては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子103を弾性層102に直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子103同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子103の弾性層102の表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5μm)以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子103の粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子103だけを選択的に弾性層102表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子103を弾性層102表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層102の弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子103が分散せしめられた弾性層102の表面方向において、粒子103が存在している部分と、弾性層102の表面が露出している部分との投影面積比については、粒子103が存在している部分の投影面積率を60%以上にすることが望ましい。60%に満たない場合には、トナーと弾性層102の無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層102に粒子103を分散させていないものを用いることも可能である。
図5は、二次転写電源の電気回路の要部を示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、交流電源140、電源制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
本実施形態では、交流電圧用トランス143は、異なるデューティ(Duty)の交流電圧を出力する2つのトランスを含み、一方のトランスが出力する電圧のデューティ(Duty)が他方のトランスが出力する電圧のデューティ(Duty)よりも大きいものとする。なお、デューティ(Duty)については後述する。
例えば、交流電圧用トランス143のトランス1を低デューティの交流電圧を出力するトランス、トランス2を高デューティの交流電圧を出力するトランスとする(トランス1のデューティをD1,トランス2のデューティをD2とするとき、D1<D2)。より具体的には、一例として、トランス1はDuty50%以下の交流電圧を出力し、トランス2はDuty50%より大きい交流電圧を出力するものを用いる。
なお、2つのトランスを有するものを用いるのではなく、交流電圧用トランス及び回路を1つにして、デューティ比を切り替える信号を電源制御部200が出力する構成としても良い。
電源制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のデューティ比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のデューティを制御させるためである。本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、定電圧制御してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC(サービスマンコール)信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティ比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に出力(印加)する。二次転写裏面ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のデューティを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
二次転写バイアスの供給形態としては、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」とを切替えて供給可能としている。二次転写バイアス用の電源は、直流電圧だけからなるもの(直流転写バイアス)を出力する第一のモード(DC転写モード)と、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(重畳電圧)を出力する第二(低デューティAC転写モード)、第三(高デューティAC転写モード)のモードとに切替え可能な構成としている。なお、重畳電圧による転写を「AC転写」と称する。
たとえば、記録材Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなもの(表面凹凸が所定値よりも小さなもの)を用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、第一のモードにして、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加する。また、ザラ紙のような表面凹凸の大きなもの(表面凹凸が所定値以上のもの)を用いるときには、第2のモードにして、二次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力する。すなわち、使用する記録材Pの種類(記録材Pの表面凹凸の大きさ)に応じて、二次転写バイアスを第一のモードと第二のモードで切り替え可能としている。
低デューティAC転写モードにおいては、二次転写バイアスの交流成分における電圧の時間平均値(Vave)が、同じく交流成分の最大値と最小値の中心電圧値(電圧の最大値と最小値の中心値)Voffよりも転写側であることを必須としている。それを実現するためには、交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが小さい波形にする必要がある。時間平均値とは、電圧の時間平均値であり、これは電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。
これを達成するための一形態として、例えば図6に示すように、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくする台形状の波形の形態が考えられる。
また、波形の形態としては、台形状の波形に限定されるものではなく、三角形状となる波形、矩形状の波形、あるいはこれらを組み合わせた波形でもよく、波形の形状を限定するものではない。中心電圧値Voffと電圧の時間平均値Vaveとの関係を示す値として、交流波形全体に占める中心電圧値Voffよりも戻し方向側の面積の割合を、戻し時間[%]と設定した。すなわち、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める、中心電圧値(Voff)よりも戻し方向側の面積をA、中心電圧値(Voff)よりも転写方向側の面積をBとしたとき、A/(A+B)×100[%]を
デューティ(Duty)と規定する。
別な表現をすると、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める中心電圧値(Voff)よりも転写方向の電圧と逆極性側の電圧(トナーを戻す側の電圧)が出力される時間の割合をデューティ(Duty)と呼ぶこともできる。
低デューティAC転写バイアスは、交流成分のデューティ(Duty)を小さくすることで、トナーを往復移動させながら相対的にベルト側から記録材側に移動させる力が大きくなる。よって、記録材として凹凸が大きいものを用いる場合に、低デューティAC転写モードとすることで溝転写性が高まり、記録材表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、白点の発生を抑えることができ、良好な画像を得ることができる。
図7は、図1に示したプリンタの制御系の一部を示すブロック図である。同図において、制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit),不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory),一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等を有している。プリンタ全体の制御を司る制御部60には、様々な機器やセンサ類が接続されているが、図7においては、本プリンタの特徴的な構成に関連する構成機器だけを示している。本実施形態のプリンタでは、後述するように、様々な条件に応じて二次転写バイアスを補正するが、そのバイアス補正も制御部60が行う。
図7において、一次転写電源81(Y,M,C,K)は、一次転写ローラ35(Y,M,C,K)に印加するための一次転写バイアスを出力するものである。二次転写電源39は、二次転写ニップNに供給する二次転写バイアスを出力するものであり、制御部60とともに転写バイアス出力手段を構成している。オペレーションパネル50は、タッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受け付けたりする。
オペレーションパネル50には、記録材の種類を選択するための画面を表示することができる。操作者は、オペレーションパネル50を操作することにより、プリンタで用いる記録材(用紙)の種類を選択することができる。制御部60は、オペレーションパネル50で選択された記録材(用紙)の種類についての情報を記憶するための記憶部(メモリ)を備える。制御部60は、オペレーションパネル50で選択された記録材(用紙)の種類に応じて、二次転写電源39から出力される二次転写バイアスを制御する。制御部60は、電源制御部200を介して二次転写バイアスを制御する(図5参照)。制御部60は、オペレーションパネル50で選択された記録材(用紙)の種類に応じて、第一のモード、第二のモード、第三のモードに切り替え可能である。これらのモードの詳細は後述する。なお、オペレーションパネル50で記録材(用紙)の種類を選択する構成にかえて、給紙カセット100近傍の用紙搬送経路の近傍に、記録材の種類を検出する紙種検出センサを設けてもよい。
次に、二次転写制御について説明する。
二次転写制御において、上述した制御部60は二次転写電源39を制御することで電源からの出力電圧を制御する。なお、後述する制御例は、制御基準となるパラメータが異なっている以外は同一構成である。また、各制御例で使用した記録材を表1に記す。
表1において、記録材種類は、名称(商品名)とメートル坪量で表示している。記録材の凹凸度合いは、凹部深さで表示し、深いほど凹凸度合いが大きいことを意味している。
各制御例では、記録材Pの凹部の溝転写性と凹部の放電性についてランクをつけて評価している。
[溝転写性ランクの説明]
記録材Pの凹部の溝転写性については、次のようにして評価した。即ち、記録材Pの表面凹凸の凹部内に対して十分量のトナーを進入させていることから、凹部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5として評価した。
凹部内のごく僅かな領域を白く抜けた領域にしているか、あるいは、凹部の画像濃度が平滑部よりも僅かに低い状態になっている場合を、ランク4として評価した。
ランク4よりも、白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合を、ランク3として評価した。
ランク3に比べ、さらに白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合をランク2として評価した。
凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合や、さらに悪い場合をランク1として評価した。
[放電性ランクの説明]
二次転写バイアスによっては、二次転写ニップ内において、記録材Pの表面凹部と、中間転写ベルト31との間の微小空隙で放電が発生して、画像に白点を出現させることがある。そこで放電に起因する白点の出現性を、ここでは放電性のランクとして次のようにして評価した。
即ち、放電に起因するものと考えられる白点が認められない状態をランク5として評価した。
白点が僅かに認められるものの、認められる数が少なく且つ大きさも小さい状態をランク4として評価した。
ランク4に比べて白点が多く認められる状態をランク3として評価した。
ランク3に比べてさらに白点が多く認められる状態をランク2として評価した。
白点が画像全体に認められ、ランク2よりも更に悪い状態をランク1として評価した。
二次転写制御の第一実施形態は、環境条件に応じて二次転写バイアスを補正するものである。
本発明者らは、この画像形成装置において、記録シートとして、普通紙やコート紙のような表面平滑性の良いものを用いると、二次転写不良による画像濃度不足を引き起こし易くなってしまうことを見出した。そして、その原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことが解ってきた。即ち、二次転写ニップにおいては、中間転写ベルトを挟み込んでいる当接ローラと裏面ローラとの間で二次転写電流が流れる。中間転写ベルトとして、多層構造のものを用いると、その二次転写電流を層と層との間の界面でベルト周方向に回り込ませながらベルト厚み方向に流してしまう。これにより、二次転写ニップにおいて、ニップ圧が最も高くなるニップ中心位置だけでなく、ニップ入口付近や出口付近にまで二次転写電流を回り込ませて、二次転写ニップ内でベルト上のトナー像に対して長時間に渡って二次転写電流を流してしまう。すると、トナーに対してその帯電極性とは逆極性の電荷を多量に注入して正規極性でのトナー帯電量Q/Mを低下させてしまうことから、二次転写性を低下させて画像濃度不足を引き起こしてしまうことが解った。
本発明者らは、二次転写バイアスとして、デューティが50[%]を超えるものを出力することで、二次転写ニップでトナーに逆電荷を注入してしまうことによるトナー帯電量Q/Mの低下を抑えることができ、トナー像を良好に二次転写して画像濃度不足の発生を抑えることができることを見出した。
しかし、このような高デューティの転写バイアスを用いる場合、高温高湿であるほど交流電圧のピ−クツウピークを強くかけないと効果が出ない。一方,凹凸紙への転写性を高めることを目的とした低デューティの転写バイアスを用いる場合、高温高湿時は交流電圧のピ−クツウピークを弱くしないと放電が発生し白抜けが発生する。つまり、転写バイアスのデューティが高い場合と低い場合で補正の方向が異なるため、単一の補正ではなくそれぞれ別の補正をおこなわなければならないことがわかった。
なお、以上では、多層構造を有する像担持体を用いた場合の課題としてトナーへの電荷の注入を説明したが、これは一例にすぎない。多層構造を有さない像担持体を用いた場合であっても、二次転写ニップNの幅(用紙搬送方向における幅)が大きい場合、転写ニップ圧が高めの装置の場合、二次転写部において中間転写ベルトが二次転写部材(ベルトやローラ)に所定量巻き付いている場合、線速が遅い装置の場合、などにも、同様に画像濃度不足を引き起こすことがある。また、使用するトナーの種類や像担持体(ベルト)の材料などによっても同様に画像濃度不足を引き起こすことがある。
本形態において、低デューティの転写バイアスを用いる場合、環境検知手段からの温湿度(すなわち絶対湿度)が高いほど、二次転写時の電圧の最大値と最小値の差(Vpp)を小さくするように、電源を制御する。本形態と比較例における、溝転写性及び放電性の評価結果を次の表2に示す。表中で本形態は制御例1と記載している。
表2において、比較例は、温湿度に対してピークツウピーク電圧値(Vpp)と同一のデューティ(Duty)を設定した場合を示し、制御例1は、温湿度毎にVppを変更したものである。
温湿度が高いほど記録材Pの電気抵抗が低下するため、転写時に必要なピークツウピーク電圧値(Vpp)・電圧の時間平均値(Vave)は低下する。しかし比較例ではピークツウピーク電圧値(Vpp)を変えていないため、高温湿度環境で放電性のランクが低くなっている。
これに対し、制御例1では、温湿度が高いほどVppを小さくするように補正している。これにより、放電リスクを低下させることができるといえる。つまり、温度又は湿度が高くなるほど、Vppを小さくするように制御することで、比較例の結果に比べて溝転写性と放電性のランクが高くなった。このため、より転写率がアップし、記録材表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、白点の発生をより確実に抑えることができ、良好な画像を得ることができるといえる。
本形態では、温湿度に応じて二次転写バイアスのVppの大きさを10kV,8kV,6kVの3種類の間で変化させているが、これに限られない。Vppの大きさを2種類のみの間で変化させてもよいし、4種類以上の間で変化させてもよい。
環境条件に応じた補正は、具体的には装置本体に設けた環境検知手段としての温湿度センサ106(図1)にて温湿度を検知し、Vppを補正する。また、Vppは以下の式で与えられる。
Vpp=基準Vpp値×環境補正
ここで、「基準Vpp値」は、画像形成装置の線速(印刷速度)などによって予め決められた基準のVpp値である。「環境補正」は、温度、湿度等の環境の変化による補正係数である。本実施形態のプリンタで用いている温湿度センサ106は、サーミスタ出力から温度が検出でき、該温湿度センサの出力から湿度が検出できる。
温湿度の検知タイミングは、装置の電源ONより1分毎にサンプリングしている。また、環境補正を行うタイミングは、温湿度検知タイミングと同じような周期で行っている。なお、温湿度センサの設置場所は特に制限しないが、定着装置の熱源から離れたところが好ましく、実施形態(図1)では転写ユニット30の下方に配置しているが、給紙部の側方や下方などに設けても良い。
図8は、制御例を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、まず、温湿度センサ106内のサーミスタ出力を検知し、サーミスタ出力と温度との相関関係に基づいた、サーミスタ出力−温度変換テーブルから温度を決定する(S1)。次に、温湿度センサ106内の湿度センサ出力を検知し、S1で求めた温度と、湿度センサ出力−相対湿度変換テーブルとから、相対湿度を決定する(S2)。なお、このテーブルは、温度を横に湿度を縦にとって、相対湿度を求めるものである。
次に、S2で求めた相対湿度と、相対湿度−絶対湿度変換テーブルとから、絶対湿度を算出する(S3)。このテーブルは、相対湿度を横に温度を縦にとって、絶対湿度を求めるものである。なお、絶対湿度は、温度と相対湿度とから計算式により求めることもできる。
次に、S3で求めた絶対湿度と、絶対湿度−現在環境変換テーブルとから、現在環境を決定する(S4)。なお、現在環境は、例えば、L/L(19℃30%)、M/L(23℃30%)、M/M(23℃50%)、M/H(23℃80%)、H/H(27℃80%)などに区分しているが、温度や湿度の値および組み合わせなどは、これに限定されるものではない。表3に示す「現在環境」のうち、「LL」は絶対湿度が最も小さい環境に相当する。「HH」は絶対湿度が最も大きい環境に相当する。
そして最後に、S4で求めた現在環境に応じた補正量で、ピークツウピーク電圧値(Vpp)を補正する(S5)。
また、補正値は、例えば次の表3に示すような関係から決定する。なお、本実施形態においては、αを25%、βを13%とするが、現在環境と補正値との関係は、これに限定されるものではない。
温湿度センサによる検知は機械動作が必要ないので、常にモニタリングすることが可能であり、環境変動に対して逐次制御が可能である。
なお、温湿度センサの検知結果に基づく転写バイアスの補正制御と、前記した電圧閾値の補正制御とは、画像形成装置の制御部60(図7)で行っている。
本実施形態における温湿度センサ106は温度および相対湿度を検出するものだが、センサの種類はこれに限らない。温湿度センサ106にかえて、温度のみを検出可能な温度センサを用いてもよい。また、温湿度センサ106にかえて、相対湿度のみを検出可能な湿度センサを用いてもよい。
上記説明した制御例1及び後述する第二実施形態の制御例は低デューティAC転写モード(第二のモード)である。
次に、高デューティAC転写モードについて説明する。
高デューティAC転写モードにおいては、二次転写バイアスの交流成分における電圧の時間平均値(Vave)が、同じく交流成分の最大値と最小値の中心電圧値(電圧の最大値と最小値の中心値)Voffよりも戻し側であることを必須としている。それを実現するためには、交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが大きい波形にする必要がある。時間平均値とは、電圧の時間平均値であり、これは電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。
これを達成するための一形態として、例えば図9に示すように、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも大きくする台形状の波形の形態が考えられる。
また、波形の形態としては、台形状の波形に限定されるものではなく、三角形状となる波形、矩形状の波形、あるいはこれらを組み合わせた波形でもよく、波形の形状を限定するものではない。
デューティ(Duty)の規定は低デューティAC転写モードの場合と同じである。すなわち、中心電圧値Voffと電圧の時間平均値Vaveとの関係を示す値として、交流波形全体に占める中心電圧値Voffよりも戻し方向側の面積の割合を、戻し時間[%]と設定した。すなわち、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める、中心電圧値(Voff)よりも戻し方向側の面積をA、中心電圧値(Voff)よりも転写方向側の面積をBとしたとき、A/(A+B)×100[%]を
デューティ(Duty)と規定する。
別な表現をすると、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める中心電圧値(Voff)よりも転写方向の電圧と逆極性側の電圧が出力される時間の割合をデューティ(Duty)と呼ぶこともできる。
コート紙のような表面平滑性の良いものを用いると、二次転写不良による画像濃度不足を引き起こし易くなってしまうため、本実施形態では、コート紙など表面平滑性が所定値以上の記録材を用いるときは第三のモード(高デューティAC転写モード)で印刷する。
高デューティAC転写モードは、二次転写バイアスにおいて、プラス極性になっている(トナーを戻す側の)時間は周期Tの半分よりも大きくなっている、即ち、デューティが50[%]を超えている。このような二次転写バイアスを採用すると、周期T内において、トナーに対してその帯電極性とは逆のプラス極性の電荷を注入する可能性のある時間を短くすることから、二次転写ニップ内での電荷注入によるトナー帯電量Q/Mの低下を抑えることが可能になる。これにより、トナー帯電量Q/Mの低下に起因する二次転写性の低下による画像濃度不足の発生を抑えることができる。なお、デューティが50[%]を超えていても、次のようにすることで、トナー像の二次転写が可能になる。即ち、0[V]を基準にしたプラス側のグラフ箇所の面積を、マイナス側のグラフ箇所の面積よりも小さくすることで、平均電位をマイナス極性にして、トナーを相対的にベルト側から記録シート側に静電移動させることが可能になる。
図10は、本発明者らが図1と同様構成の実際の試作機の二次転写電源39から出力させた二次転写バイアスの波形を示すグラフである。同図において、転写側(トナーと同極)ピーク値Vtは−4.8[kV]である。また、戻し側(トナーと逆極)ピーク値Vrは1.2[kV]である。また、オフセット電圧Voffは−1.8[kV]である。また、平均電位Vaveは0.08[kV]である。また、ピークツウピーク値Vppは6.0[kV]である。また、転写側の時間b1は、0.10[ms]である。また、周期Tは0.66[ms]である。また、デューティは、85[%]である。
本発明者らは、且つ次のような条件のもとで、二次転写バイアスのデューティを様々に変化させながら、それぞれのデューティでテスト画像を印字してみた。
・環境:27℃/80%
・用紙:Mohawk Color Copy Gloss 270gsm(457mm×305mm) …いわゆるコート紙
・プロセス線速:630mm/s
・テスト画像:ブラックハーフトーン画像
・二次転写ニップ幅(ベルト移動方向の長さ):4mm
・同極ピーク値Vt:−4.8kV
・逆極ピーク値Vr:1.2kV
・オフセット電位Voff:−1.8kV
・平均電位Vave:0.08kV
・ピークツウピーク値Vpp:6.0kV
・転写側時間b1:0.10ms
・周期T:0.66ms
・デューティ:90%、70%、50%、30%、10%
図11は、上記各デューティに設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。図11(a)はデューティ90%、(b)はデューティ70%、(c)はデューティ50%、(d)はデューティ30%、(e)はデューティ10%の出力波形である。
また、各デューティに設定した二次転写バイアスによる、テスト画像の画像濃度の再現性を評価した結果を図11(f)の表に示す。評価のランクは、十分なハーフトーンの濃度が得られている状態をランク5と評価した。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている状態をランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い状態をランク2として評価した。また、全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い状態をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルは、ランク4以上である。
デューティを10%や30%に設定した条件では、周期T内において、トナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を比較的長くすることから、トナーへの逆電荷の注入によるトナー帯電量Q/Mの低下が顕著に認められた。このため、表(f)に示されるように、ランク1という著しい画像濃度不足を認める結果になった。
一方、デューティを70%や90%に設定した条件では、周期T内において、トナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を比較的短くすることから、トナーへの逆電荷の注入によるトナー帯電量Q/Mの低下が有効に抑えられた。このため、表(f)に示されるように、ランク4という適正画像濃度を認める結果になった。
なお、図示のように、二次転写バイアスとして、周期T内で極性を交互に反転させるものを採用すると、トナーへの逆電荷の注入をより確実に抑えることが可能になる。記録材Pが帯電している場合であっても、逆電荷の注入を抑える極性の電界を相対的に二次転写ニップ内で作用させることができるからである。
また、高デューティAC転写モードの出力波形は、トナーを戻す側に作用する時間が長くなる(転写側の時間が短くなる)ため、過転写を防げるという効果もある。
次に、第一実施形態における高デューティAC転写モードで環境条件に応じて二次転写バイアスを補正した制御例について説明する。
本実施形態は、環境条件に応じて二次転写バイアスを補正するものである。すなわち、本形態において、高デューティの転写バイアスを用いる場合、環境検知手段(温湿度センサ106)で検知された温湿度が高いほど(絶対湿度が大きいほど)、二次転写時の電圧の最大値と最小値の差(Vpp)を大きくするように、電源を制御する。本形態と比較例における、画像濃度(ハーフトーン画像の濃度)の評価結果を次の表4に示す。表中で本形態は制御例2と記載している。
表4において、比較例は、温湿度に対してピークツウピーク電圧値(Vpp)と同一のデューティ(Duty)を設定した場合を示し、制御例2は、温湿度毎にVppを変更したものである。
主要な実験条件は次の通りである。
・環境:15℃/10%、23℃/50%、27℃/80%
・用紙:Mohawk Color Copy Gloss 270gsm(457mm×305mm)…いわゆるコート紙
・プロセス線速:630mm/s
・テスト画像:ブラックハーフトーン画像
・二次転写ニップ幅(ベルト移動方向の長さ):4mm
・ピークツウピーク値Vpp:4〜8kV
・転写側時間b1:0.10ms
・周期T:0.66ms
・デューティ:85%
温湿度が高いほどトナーQ/Mが低下するため、転写時の逆電荷注入の影響を受けやすく、画像濃度は低下する。しかし比較例ではピークツウピーク電圧値(Vpp)を変えていないため、高温湿度環境でハーフトーン画像の濃度が低下している。
これに対し、制御例2では、温湿度が高いほどVppを大きくするように補正している。これにより、画像濃度低下リスクを減らせることができるといえる。つまり、温度又は湿度が高くなるほど、Vppを大きくするように制御することで、比較例の結果に比べてハーフトーン画像の濃度が高くなった。このため、より転写率がアップし、十分な画像濃度を得ることができるといえる。
本形態では、温湿度に応じて二次転写バイアスのVppの大きさを4kV,6kV,8kVの3種類の間で変化させているが、これに限られない。Vppの大きさを2種類のみの間で変化させてもよいし、4種類以上の間で変化させてもよい。
なお、低温低湿環境では、重畳バイアスを用いずに、直流成分のみを印加する(交流成分を含まない)直流バイアスとしても良い。その場合の制御を次の表5に変形例として示す。低温低湿環境では直流バイアスによっても十分なハーフトーン濃度が得られている。
変形例では、温湿度に応じて二次転写バイアスのVppの大きさを0kV,6kV,8kVの3種類の間で変化させているが、これに限られない。Vppの大きさをたとえば0kVと6kVの2種類の間で変化させてもよい。また、Vppの大きさを4種類以上の間で変化させてもよい。
高デューティAC転写モードにおいても、環境条件に応じた補正は、具体的には装置本体に設けた環境検知手段としての温湿度センサ106(図1)にて温湿度を検知し、Vppを補正する。
また、補正値は、例えば上述の低デューティAC転写モードの場合と同様に、次の表6に示すような関係から決定する。なお、本実施形態においては、αを33%、βを17%とするが、現在環境と補正値との関係は、これに限定されるものではない。
次に、二次転写制御の第二実施形態について説明する。
第二実施形態は、第一実施形態で説明したように二次転写バイアスを補正することに加えて、用紙(記録材)の凹凸に応じて二次転写バイアスをさらに補正するものである。
図6で説明したように、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める、中心電圧値(Voff)よりも戻し方向側の面積をA、中心電圧値(Voff)よりも転写方向側の面積をBとしたとき、Duty(デューティ)=A/(A+B)で示される。本形態では、使用する記録材P表面の凹凸が大きいほどデューティを小さくするように、二次転写電源39を制御部60で制御したものである。本形態と比較例における、溝転写性及び放電性の評価結果を次の表7に示す。表中で本形態は制御例3と記載している。
表7において、比較例は、記録材を変更し、各記録材に対するピークツウピーク電圧値(Vpp)とデューティ(Duty)を変更しないケースである。この場合、溝転写性は、記録材Pの溝部が深くなるとランクが低くなり、放電性は記録材Pの溝部の深さが浅くなるとランクが低くなる。
これに対し、制御例3では、記録材種類となる溝部の深さに対し、ピークツウピーク電圧値(Vpp)は同一とし、デューティ(Duty)だけを変更したところ、電圧の時間平均値(Vave)が変化した。つまり、溝部が深く凹凸が大きい場合にデューティ(Duty)を小さくすると、電圧の時間平均値(Vave)の絶対値が大きく、溝転写性のランクが高くなる。すなわち、転写率がアップし、記録材表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、白点の発生を抑えることができ、低デューティAC転写モードは良好な画像を得ることができるといえる。なお、本明細書では、上記したように、重畳電圧による転写を「AC転写」と称している。
ところで、中間転写ベルト31として、本プリンタのように、最上層(弾性層102)の素材に粒子103を分散せしめたものを用いると、二次転写ニップ内におけるベルト表面とトナーとの接触面積が低減する。これにより、ベルト表面からのトナー離型性を向上させて、二次転写効率を高めることができる。しかしながら、規則的に並ぶ絶縁性の粒子103の粒子間において、集中的に二次転写電流を流すことで、トナーに対して逆極性の電荷を注入し易くなる。このため、二次転写効率を高める狙いで粒子103を分散させているにもかかわらず、却って二次転写効率を悪くしてしまうことになり兼ねない。そこで、高デューティの二次転写バイアスを採用することで、粒子103による二次転写効率の向上効果を確実に得ることが可能になる。
粒子103としては、トナーの正規帯電極性とは逆極性の帯電性能を有するものを用いることができる。本プリンタでは、正帯電性のメラミン樹脂からなる粒子などである。かかる構成では、粒子103の電荷により、粒子間で二次転写電流が集中する現象の発生を抑えて、トナーへの逆電荷の注入量をより低減することができる。
また、粒子103として、トナーの正規帯電極性と同極性の帯電性能を有するものを用いてもよい。本プリンタでは、負帯電性のシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール)などである。
中間転写ベルト31として、最上層としてウレタンやテフロン(登録商標)などからなる表面層(コート層)を設けたものを用いてもよい。また、ポリイミドやポリアミドイミドなどの樹脂からなる層を複数積層したものを用いてもよい。何れのベルトを用いる場合であっても、高デューティの二次転写バイアスを採用することで、画像濃度不足の発生を抑えることができる。
ここまで説明したように、本発明の画像形成装置によれば、バイアスの交流成分のデューティ(Duty)が50%以下の場合には、温度又は/及び湿度が高いほどピークツウピーク電圧(Vpp)を小さくするように補正し、デューティ(Duty)が50%より大きい場合には、温度又は/及び湿度が高いほどピークツウピーク電圧(Vpp)を大きくするように補正することで、表面凹凸の大きな用紙に対するトナー像の転写性を高めつつ、表面凹凸が少ない用紙に対してもトナー像を良好に転写することができる。これにより、高温・高湿環境における、良好な凹凸紙転写性および良好なハーフトーン転写性を得ることができる。
また、バイアスを出力する電源が、異なるデューティの電圧を出力する2つのトランスを含み、一方のトランスが出力する電圧のデューティが他方のトランスが出力する電圧のデューティよりも大きいことで、低デューティおよび高デューティの電圧を出力可能な電源を実現でき、電源制御も簡単になる。
また、一方のトランスが出力する電圧のデューティが50%以下であり、前記他方のトランスが出力する電圧のデューティが50%より大きいことで、用紙特性と環境条件に応じた適切なデューティの電圧を容易に出力することができる。
また、用紙表面の凹凸が大きいほど、バイアスのデューティを小さくするように制御することで、凹凸紙の凹部に対しても確実にトナーを転写させることができる。
また、用紙表面の凹凸が大きいほどバイアスのデューティを小さくする際に、ピークツウピーク電圧(Vpp)を一定とすることで、バイアス電圧の時間平均値(Vave)が変化して用紙凹部に対する転写性が向上する。
また、バイアスのピークツウピーク電圧(Vpp)を変更する際、予め決められた基準値(基準Vpp値)に、所定の環境補正係数を乗じて前記ピークツウピーク電圧(Vpp)を算出することで、最適なピークツウピーク電圧を容易に決定することができる。
また、基準Vpp値が印刷速度に応じて決められていることで、印刷速度に応じた適切なピークツウピーク電圧を容易に決定することができる。
また、記録材の種類に応じて転写バイアスを第一のモード、第二のモード、第三のモードに切り替え可能なことで、記録材の種類に応じた適切なバイアスを印加して確実な転写を行うことができる。
また、記録材の表面凹凸が所定値よりも小さなものを用いる場合に第一のモード(直流転写モード)でトナー像を記録材へ転写することで、普通紙などの凹凸が少ない用紙に対して良好な転写を行うことができる。
また、記録材の表面凹凸が所定値以上のものを用いる場合に第二のモード(低デューティAC転写モード)でトナー像を記録材へ転写することで、表面凹凸が大きな用紙に対して良好な転写を行うことができる。
また、記録材の表面平滑性が所定値以上のものを用いる場合に第三のモード(高デューティAC転写モード)でトナー像を記録材へ転写することで、コート紙など表面が平滑な用紙に対して良好な転写を行うことができる。
また、基層と、該基層の上に積層された弾性層とを含む複数層からなる像担持体を用いることで、転写ニップ内で弾性層がその弾性によって柔軟に変形し、表面凹凸の大きな用紙と像担持体との密着性が向上し、表面凹凸の大きな用紙に対するトナー像の転写性を更に向上させることができる。
また、上記弾性層の表面に複数の微粒子が分散されていることで、弾性層の表面における微粒子の存在により、転写ニップ内で弾性層の表面とトナーとの接触面積を低減することで像担持体表面からのトナー離型性を高めて転写効率を向上させることができる。
また、上記粒子の帯電特性が、トナーの正規帯電極性とは逆極性であることで、粒子の電荷により、粒子間で転写電流が集中する現象の発生を抑えて、トナーへの逆電荷の注入量をより低減することができる。
また、上記弾性層の上にコート層が形成されていることで、表面層としてトナー離型性に優れた材料からなるものを用いることで、転写効率を更に高めることができる。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。転写部の構成は適宜な構成を採用可能であり、また、適宜な構成の電源を使用可能である。
画像形成装置各部の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの並び順などは任意である。また、4色機に限らず、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
二次転写バイアスとしては、その直流成分が定電流制御されたバイアスを用いてもよいし、定電圧制御されたバイアスを用いてもよい。同様に、二次転写バイアスとしては、その交流成分が定電流制御されたバイアスを用いてもよいし、定電圧制御されたバイアスを用いてもよい。
図示の実施形態では二次転写電源39が二次転写裏面ローラ33に二次転写バイアスを印加する構成としたが、二次転写ローラとしてのローラ400に二次転写バイアスを印加してもよい。