以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明を適用した画像形成装置の第1実施形態として、中間転写方式を採用したカラー画像形成装置について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態であるカラー画像形成装置(以下、単にプリンタと呼ぶ)の概略を示す断面構成図である。この図に示すプリンタは、中間転写体としての無端状ベルト(中間転写ベルト51)を有しており、その中間転写ベルト51の上部走行辺に沿って、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色トナー画像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが並設され、タンデム作像部を構成している。
各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは扱うトナーの色が異なるのみで構成は同一であるため、図2を参照して一つの画像形成ユニットについてのみ説明する。図2に示すように、画像形成ユニットは、像担持体としての感光体ドラム11、感光体ドラム11の表面を帯電ローラによって帯電する帯電装置21、感光体ドラム11上の潜像を可視化する現像装置31、感光体ドラム11から中間転写ベルト51にトナー像を転写させる一次転写手段としての転写ローラ55、感光体ドラム11表面をクリーニングするクリーニング装置41等を備えている。本実施形態では、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、プリンタ本体に対して脱着可能に設けられている。
本例の感光体11は、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60mm程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される。帯電装置21は、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体ドラム11に接触あるいは近接させながら、帯電ローラと感光体11との間に放電を発生させることで、感光体表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラを用いる方式に変えて、帯電チャージャによる方式を採用しても良い。
現像装置31は、トナーとキャリアからなる2成分現像剤が収容される収容容器内に、現像剤担持体としての現像スリーブ31a及び現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌部材としての2本のスクリュー部材31b,31cを備えている。なお、1成分現像剤を用いる現像装置を採用することも可能である。
クリーニング装置41は、クリーニングブレード41aと、クリーニングブラシ41bを備えている。クリーニングブレード41aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向から感光体ドラム11と当接している状態で、クリーニングブラシ41bは感光体ドラム11と逆方向に回転しながら接触している状態で感光体ドラム11表面をクリーニングする。
図1に戻り、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体11Y,11M,11C,11Kを光走査する。この光走査により、感光体11Y,11M,11C,11K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体11の一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト51を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット50が配設されている。転写ユニット50は、像担持体たる中間転写ベルト51の他に、駆動ローラ52、二次転写裏面ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、4つの一次転写ローラ55、ニップ形成ローラ56、ベルトクリーニング装置57、電位センサ58などを有している。
中間転写ベルト51は、そのループ内側に配設された駆動ローラ52、二次転写裏面ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、及び4つの一次転写ローラ55によって張架されており、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ52の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト51としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e13[Ωcm]、好ましくは1e7.5[Ωcm]〜1e12.5[Ωcm]、より好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスター、UP MCP HT45、HRSプローブにて、印加電圧100V、10sec値の条件で測定)。また、材料は、PI(ポリイミド)、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層に構成したものを使用することも可能である。なお、必要に応じてベルトの表面に離型層をコートしても良い。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パ−フルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂が使用できるが、これに限定されるものではない。ベルト製造方法は注型法、遠心成形法等があり、必要に応じてその表面を研磨しても良い。また、ベース層、弾性層及びコート層の3層構造となっているベルト材(無端ベルト)を用いても良い。3層構造のベルトの場合、ベース層は、例えば伸びの少ないフッ素系樹脂や、伸びの大きなゴム材料に帆布などの伸びにくい材料を組み合わせた材料で構成されている。また、弾性層は、例えばフッ素系ゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムなどで構成され、ベース層の上に形成される。また、コート層は、弾性層の表面に、例えばフッ素系樹脂がコーティングされることで形成される。なお、抵抗率はカーボンブラック等の導電性材料を分散させて調整している。
4つの一次転写ローラ55は、無端移動せしめられる中間転写ベルト51を感光体11(Y,M,C,K)との間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、感光体11(Y,M,C,K)とが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ55には、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体11(Y,M,C,K)上の各色トナー像と、各色一次転写ローラ55との間に転写電界が形成され、転写電界やニップ圧の作用により、感光体11上から中間転写ベルト51上にトナー像が一次転写される。Yトナー像上にM,C,Kトナー像が、順次重ね合わせて一次転写されることにより、中間転写ベルト51上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット50におけるY,M,C用の一次転写ローラ55Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、一次転写ローラ55Y,M,Cを、感光体11Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト51のおもて面を感光体11Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト51をK用の感光体11Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体11K上に形成する。
一次転写ローラ55は、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、本例では次のような特性を有している。外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。ローラの体積抵抗は回転測定によるもので、5[N]/片側の加重を加え、転写ローラ軸に1[kV]のバイアスを印加し、1分の測定間にローラを回転(ローラ回転数は例えば30rpm)させながら抵抗値を測定し、その平均値を体積抵抗とした。オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、1e6Ω〜1e9Ω、好ましくは、約3E7Ωである。このような一次転写ローラ55に対して、一次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、転写ローラに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット50のニップ形成ローラ56は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されており、ループ内側の二次転写裏面ローラ53との間に中間転写ベルト51を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、ニップ形成ローラ56とが当接する二次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ56は接地されているのに対し、二次転写裏面ローラ53には、二次転写バイアス電源200によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ53とニップ形成ローラ56との間に、トナーを二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
転写ユニット50の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ101を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対102が配設されている。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを二次転写ニップ内で中間転写ベルト51上のトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト51上のトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像またはモノクロトナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ56や中間転写ベルト51から曲率分離する。
二次転写裏面ローラ53は、ステンレスやアルミニウム等からなる芯金に抵抗層を積層したものである。抵抗層は、ポリカーボネート,フッ素系ゴム,シリコン系ゴム等にカーボンや金属錯体等の導電粒子を分散させたもの、あるいはNBRやEPDM等のゴム、NBR/ECO共重合のゴム、ポリウレタンの半導電性ゴム等よりなる。その体積抵抗は106〜1012[Ω]、望ましくは107〜109[Ω]である。また、硬度20度〜50度の発泡タイプでも、ゴム硬度30度〜60度のゴムタイプでもよいが、中間転写ベルト51を介してニップ形成ローラ56と接触するので、小さな接触圧力でも非接触部分が生じないスポンジタイプが望ましい。中間転写ベルト51と二次転写裏面ローラ53の接触圧力が大きいほど、文字や細線の中抜けが生じ易いので、これを防止するためである。
また、ニップ形成ローラ56は、ステンレスやアルミニウム等からなる芯金上に導電性ゴム等からなる抵抗層と表層を積層して形成してある。本例では、ローラの外径は20[mm]、芯金は直径16[mm]のステンレスである。抵抗層はNBR/ECOの共重合体よりなる硬度40〜60度[JIS−A]のゴムである。表層は、含フッ素ウレタンエラストマーからなり、その厚みは8〜24[μm]が望ましい。その理由としては、ローラの表層は塗装工程により製造されることが多いので、表層の厚みが8μm以下では、塗布ムラによる抵抗ムラの影響が大きく、抵抗の低い箇所でリークが発生する可能性があり好ましくない。また、ローラ表面にシワが生じて、表層がひび割れるという問題も生じ易い。一方、表層の厚みが24μm以上に厚くなると抵抗が高くなり、体積抵抗率が高い場合には二次転写裏面ローラ53の芯金に定電流を印加したときの電圧が上昇することがあり、定電流電源の電圧可変範囲を超えるので目標の電流以下の電流になったり、電圧可変範囲が十分高い範囲の場合には定電流電源から二次転写裏面ローラ芯金までの高圧経路や二次転写裏面ローラ芯金が高電圧になることによるリークが発生し易くなる。また、ニップ形成ローラ56の表層の厚みが24μm以上に厚いと硬度が高くなり、記録媒体(紙等)や中間転写ベルトとの密着性が悪くなるという問題もある。ニップ形成ローラ56の表面抵抗は106.5[Ω]以上であり、ニップ形成ローラ56の表層の体積抵抗は1010[Ωcm]以上、より好ましくは、1012[Ωcm]以上である。
ニップ形成ローラ56は表層を積層しない発泡タイプのローラとすることも可能である。その場合のニップ形成ローラの体積抵抗は6.0logΩ〜8.0logΩ、好ましくは7.0logΩ〜8.0logΩとなる。このとき、二次転写裏面ローラ53は発泡タイプ、ゴムタイプ、もしくはSUSなどの金属ローラを使用することも可能であり、その体積抵抗はニップ形成ローラより低い、6.0logΩ以下とすることが好ましい。ニップ形成ローラ56、二次転写裏面ローラ53の体積抵抗測定方法は上記一次転写ローラ55の場合と同様に回転測定によるもので、5[N]/片側の加重を加え、転写ローラ軸に1[kV]のバイアスを印加し、1分の測定間にローラを回転(ローラ回転数は例えば30rpm)させながら抵抗値を測定し、その平均値を体積抵抗とした。
電位センサ58は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト51の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ52に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト51上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ58としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。また、電位センサは、トナー像検知センサとすることも可能である。トナー像検知センサは、1発光2受光タイプの光学センサであり、受光した出力を付着量に換算することで、中間転写ベルト上に一次転写されたトナー像の付着量検知を行う。
二次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
本実施形態のプリンタが備える二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源200は、直流成分を出力する直流電源と、直流成分に交流成分を重畳したものを出力する交流電源(重畳電源)とから構成されており、二次転写バイアスとして、直流電圧(以下、直流バイアスと称す)と、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(以下、重畳バイアスと称す)とを出力することができる。
図3は、直流バイアスと重畳バイアスとを切り替えて二次転写部(本例では二次転写裏面ローラ53)に印加する様子を示す模式図である。この図において、二次転写バイアス電源200は、直流電源201と交流電源(重畳電源)202とから構成されている。
さて、同図(a)では直流電源201から直流バイアスを印加し、同図(b)では交流電源202から重畳バイアスを印加する様子を示している。なお、図3では直流電源201と交流電源202の切り替えを概念的に示すためにスイッチで切り替えるように示しているが、図4に例示する具体的な構成例では、2つのリレーを用いて切り替えるように構成している。また、図5に例示するように、切替手段を設けない構成も可能である。
図4は、2つのリレーを用いて直流バイアスと重畳バイアスを切り替える構成例である。この図に示すように、直流電源201はリレー1を介して直流バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。また、交流電源202はリレー2を介して重畳バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。2つのリレー(リレー1、リレー2)は、リレー駆動手段205を介して制御手段300によって接続と遮断が制御され、二次転写バイアスとしての直流バイアス又は重畳バイアスが切り替えられる。直流電源201は電圧検知手段203を有しており、検知したフィードバック電圧を制御手段300に入力している。
図5は、リレーを設けずに直流バイアスと重畳バイアスを切り替える構成例である。この図に示すように、バイアス電源200は、直流電源201と交流電源(重畳電源)202を備えている。交流電源202は重畳バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。また、直流電源201は交流電源202を介して直流バイアスを二次転写裏面ローラ53に印加する。直流バイアスと重畳バイアスの切り替えは、制御手段300によって制御される。直流電源201は電圧検知手段203を有しており、検知したフィードバック電圧を制御手段300に入力している。
なお、転写用電源と電圧供給の形態(構成)はここに例示したものに限らず、様々な形態が可能である。それらについては後に例をあげて説明する。
次に、図6の波形図を参照して重畳バイアスの作用について説明する。
同図において、オフセット電圧Voffは、重畳バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、重畳バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。重畳バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。図示のように、重畳バイアスは正弦波状の形状をしており、プラス側のピーク値と、マイナス側のピーク値とを具備している。Vtで示されているのは、それら2つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナーをベルト側から記録紙側に移動させる方(本例ではマイナス側)のピーク値である。また、Vrで示されているのは、トナーを記録紙側からベルト側に戻す方(本例ではプラス側)ののピーク値である。直流成分を含む重畳バイアスを印加してその時間平均値であるオフセット電圧Voffをトナーと同じ極性(本例ではマイナス)にすることで、トナーを往復移動させながら、相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることが可能になる。交流電圧としては、正弦波形状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いても良い。
また、交流成分のトナーをベルト側から記録紙側に移動させる時間とトナーを記録紙側からベルト側に戻す時間を異なる時間とすることも可能である。
ここで、重畳バイアスにおける交流成分の各種バリエーションについて説明する。
[例1]
交流成分としては、戻し方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写方向側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくした。すなわち、中心電圧値Voffよりも転写方向寄りの値の電圧の出力時間となる転写方向側の時間をA、中心電圧値Voffよりも転写方向とは逆極性寄りの値の電圧の出力時間となる戻り時間をBとしたとき、A>Bとなるように設定した。このときの波形を図7に示す。戻し時間は40%とし、その効果は図8に示す。
このとき図8の
ピークツウピーク電圧値Vpp=12kV
電圧の時間平均値Vave=−5.4kVのとき
交流成分の中心電圧値Voff=−4.0kV
であった。
[例2]
交流成分として、戻し側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きを、転写側の電圧の立ち上がり及び立下りの傾きよりも小さくした。このとき出力電圧の波形は、電圧が転写方向の電圧のピーク値から中心電圧値Voffへと移行するまでの時間をt1、電圧が中心電圧値Voffから転写方向の電圧と逆極性の電圧のピーク値へと移行するまでの時間をt2としたとき、t2>t1である。このときの波形は図9に示す。戻し比率は40%とし、その効果は図8に示す。この方法によって、電圧の時間平均値Vaveを、電圧の最大値と最小値の中心電圧値Voffよりも転写方向寄りに設定できる。
[例3]
交流成分の中心電圧値Voffを挟んで転写方向側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが小さい波形にするもう別な手段としては、図10に示すように戻し方向側の時間Bを、転写方向側の時間Aよりも短くする手法がある。この方法によって、転写方向側の時間Aに対する戻し時間Bを小さくすることができる。
[例4]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図11に示す。戻し時間は45%とし、その効果は図12に示す。
[例5]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図13に示す。戻し時間は40%とし、その効果は図14に示す。
[例6]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図15に示す。戻し時間は32%とし、その効果を図16に示す。
[例7]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図17に示す。戻し時間は16%とし、その効果を図18に示す。
[例8]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図19に示す。戻し時間は8%とし、その効果を図20に示す。
[例9]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くした。このときの波形は図19と同様であるので省略する。戻し時間は4%とし、その効果を図21に示す。
[例10]
交流成分として、戻し時間Bを転写方向側の時間Aよりも短くし、波形を丸くしたもの。このときの波形は図22に示す。戻し時間は16%とし、その効果を図23に示す。
このとき図23において
ピークツウピーク電圧値Vpp=12kV
電圧の時間平均値Vave=−5.4kVのとき
中心電圧値Voff=−2.4kV
であった。
和紙調の用紙やエンボス加工が施された用紙など、表面の凹凸の大きい記録用紙を用いる場合には、重畳バイアスを印加することにより、上述のように、トナーを往復移動させながら相対的にはベルト側から記録紙側に移動させて記録紙上に転移させることで、用紙凹部への転写性を向上させ、転写率の向上や中抜けなどの異常画像を改善させることができる。一方、通常の転写紙など、凹凸の小さい記録用紙を用いる場合には、直流成分のみによる二次転写バイアスを印加することで、充分な転写性が得られる。なお、表面凹凸の大きい用紙とは、最大凹凸深さが60μm以上の用紙、例えば、レザック、エンボス、リネン等を含む。
本実施形態では、二次転写バイアスとして、直流バイアスを印加して画像転写を行なう直流転写モードと、直流に交流を重畳せしめた重畳バイアスを印加して画像転写を行なう重畳転写モードとを有しており、両者を切替可能に構成している。そして、通紙する用紙の種類に応じて、転写モードを直流転写モード又は重畳転写モードに切り替えることで、凹凸の小さい用紙および凹凸の大きい用紙のどちらにも良好な画像転写を行なうことができる。転写モードの切り替えは、用紙種類の設定により自動的にモードが切り替わるようにしても良い。あるいは、ユーザが転写モードを指定できるようにしても良い。これらの設定は、画像形成装置の操作パネル上から設定可能に設ける。
二次転写部の構成として、図1の形態では二次転写裏面ローラ53に直流成分に交流成分を重畳したもの(重畳バイアス)を印加する構成であるが、直流バイアスと交流バイアスのいずれか一方を二次転写裏面ローラ53に印加して他方をニップ形成ローラ56に印加する構成、あるいは、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスをニップ形成ローラ56に印加する構成でも良い。これらの場合、使用するトナー及び印加するバイアスの極性を、各構成に対応させる必要がある。なお、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、転写バイアスとして直流成分だけからなるもの(直流バイアス)を印加してもよい。ただし、表面凹凸の大きな用紙を用いるときには、転写バイアスを、直流成分だけのものから重畳バイアスに切り替える必要がある。
次に、二次転写バイアスについて詳しく説明する。なお、本実施例(実施例1)では、二次転写バイアスの直流成分(DC成分)は定電流制御、交流成分(AC成分)は定電圧(Peak to Peak)制御を行っている。
図24は、二次転写バイアスとしての重畳バイアス波形の一例を示す図である。本実施例では、二次転写バイアスを裏面ローラ53に印加する斥力転写(反発転写)の構成で、トナーの帯電極性(正規帯電極性)がマイナス(−)であるため、転写バイアスはトナー転写側の極性がマイナス側であり、重畳波形はトナー転写側極性と逆極性に交互に切り替わっている。
重畳バイアスは、DC成分、AC成分とも、各々の標準値に対してそれぞれ、装置環境に応じた補正(環境補正)、装置の印刷速度に応じた補正(線速補正)、用紙の主走査方向幅、用紙の厚み、二次転写部の合成抵抗それぞれに応じた補正(紙サイズ補正)を掛け合わせて出力値を計算している。
本実施例における、各補正の算出方法を以下に記載するが、これら算出方法は一例であり、なんら限定するものではない。
まず、環境補正は、温度又は/及び湿度に基づく環境区分が予め設定してあり、装置本体に設置された温湿度センサによって検知した相対温度又は/及び相対湿度より環境区分を判定し、判定された環境区分に応じて補正値を決定する。表1に、相対温度および相対湿度に基づいて設定した環境区分の一例を示す。あるいは、絶対湿度に基づく環境区分を設定しておき、温湿度センサによって検知した相対温度および相対湿度から絶対湿度を計算し、計算された絶対湿度により環境区分を判定して補正値を決定してもよい。表2に絶対湿度に基づく環境区分の一例を示す。表1,2における環境区分:MMは常温環境(常温常湿環境)、LLは低温環境(低温低湿度環境)、HHは高温環境(高温高湿度環境)である。
線速補正は装置の印刷速度に応じて決定される。本実施例では標準速、中速(標準速の70%)、低速(標準速の50%)の3線速を有している。
紙サイズ補正は、大きく分けて、用紙の主走査方向幅、用紙の厚み、二次転写部の合成抵抗の3つを判定項目とし、表3〜表5に示すように、いずれも3水準設けている。本実施例では、用紙の主走査方向幅および用紙の厚みは、給紙トレイ設定条件から求めている。
二次転写部の合成抵抗は、製造時あるいはサービスマンによる調整動作、あるいは印刷時などの自動調整動作において一定電流(本実施例では−50μA)をながしたときの出力電圧を計算し、その計算結果から抵抗区分を決定している。表5におけるR−Lは合成抵抗が低いこと、R−Mは合成抵抗が標準であること、R−Hは合成抵抗が高いことを示す。
続いて、本実施例における各補正値を以下に示すが、この補正値も一例であり、なんら限定するものではない。なお以下では、標準値に対するパーセント(%)で補正値を示すものとする。標準値の具体的な仕様(電圧、電流等の数値)は、装置構成に応じて適宜設定されるものである。
本実施例での環境補正値は、上記環境区分に応じて表6のようになる。
本実施例で使用しているトナーはマイナス帯電であり、低温環境になるほど帯電量は絶対値で大きくなる(例:−25μC/g→−40μC/g)ことからDC成分、AC成分ともに、常温環境(MM環境)に対して低温環境(LL環境)である場合には標準値より大きくなるように(プラス方向に)補正して、転写に必要なバイアスを確保する必要がある。逆に高温環境であるほど、トナー帯電量は絶対値で小さくなることから、DC成分、AC成分ともに、常温環境(MM環境)に対して高温環境(HH環境)である場合には標準値より小さくなるように(マイナス方向に)補正する必要がある。
表6を用いて具体的に説明する。
低温環境の場合、AC成分はDC成分より大きな補正(補正の割合:%を大きくすること)が必要となり、本実施例ではAC成分:120%、DC成分:110%となる。これはAC成分が凹部への転写性、DC成分が凸部への転写性とそれぞれ寄与する部位が異なるためである。AC成分とDC成分の補正を同じにして、仮にDC成分の補正値をAC成分に適用してしまうと、AC成分は補正不足になり凹部で白抜け画像が発生してしまう。
高温環境の場合も低温環境と同様に、AC成分をDC成分より大きく補正する(補正の割合:%を大きくする)必要があり、本実施例ではAC成分:80%、DC成分:90%となる。
AC成分とDC成分の補正を同じ(補正の割合を同じ)にして、仮にDC成分の補正値(補正割合=%)をAC成分に適用してしまうと、AC成分は過補正になり放電による白抜け画像が発生してしまう。いずれの環境においてもAC成分の補正が大きく(補正%が大きく)なるのは、AC成分の補正はピーク・ツー・ピーク(Peak-to-Peak)での補正であり、プラス、マイナスの両極性に補正する必要があるのに対し、DC成分が定電流制御であることから、MM環境と同等の転写電圧を与えるため補正する電流量が多く必要とはならないことと、片側極性(本実施例ではマイナス極性)のみの補正でよいからである。
図25は常温環境(MM環境)と低温環境(LL環境)の重畳バイアスにおけるAC成分、DC成分それぞれの波形の違いを表した図である。この図において、実線は常温環境の波形、破線は低温環境の波形である。
このように、AC成分とDC成分で異なる補正制御とすることで、環境に応じて用紙の凹部、凸部ともに良好な転写性を得ることができる。
本実施例での線速補正値は上記装置の印刷速度に応じて、表7のようになる。
DC成分は定電流制御であるため、標準速に対して印刷速度が遅くなる場合には標準バイアスより小さくなるように補正している。AC成分は定電圧制御であることから、印刷速度に応じた補正は必要なく、標準速と同じ設定となっている。
表7を用いて具体的に説明する。
DC成分、AC成分とも標準速を基準とするため補正を100%に設定する(標準速で印加するバイアス値を基準バイアスと同じに設定する)。DC成分は中速、低速と印刷速度が遅くなるにつれて、標準バイアスの70%、50%と小さくなるように補正している。これは、二次転写ニップ部を通過する際の、単位時間当たりの電流量を同じとするためである。これに対しAC成分はいずれの印刷速度でも標準速と同じ100%の補正としている。これは、AC成分は定電圧制御であるため、印刷速度が異なっていても二次転写ニップ部に必要な電圧は一定に供給されるからである。
印刷速度が遅い場合に、AC成分とDC成分の補正(補正%)を同じにして、仮にDC成分の補正値をAC成分に適用してしまうと、AC成分は補正不足になり凹部で白抜け画像が発生してしまう。しかし、上記の様にAC成分とDC成分を異なる補正設定とすることで、印刷速度に応じて用紙に凹部、凸部ともに良好な転写性を得ることができる。
本実施例での紙サイズ補正値は上記検出方法に応じて次の表8〜表10のようになる。
DC成分は、用紙の主走査方向幅が小さい場合、用紙の厚みが厚い場合、合成抵抗が低い場合、に補正を大きく(補正%を大きく)する。これは、DC成分が定電流制御であるため、上記いずれの条件においても用紙領域外に漏れてしまう電流が多くなることから、用紙への転写に必要な電流を確保するために各条件に応じて補正を大きくしている。
各補正の違いについて詳しく説明するため、表8〜表10の一部を抜粋して説明する。紙サイズについては表4を参照。
まず、用紙の主走査方向幅の補正について、表11に示す、抵抗区分:R−M,紙厚1の場合で説明する。
DC成分は主走査方向幅:Wが250mm<Wのサイズ1では補正が100%(基準値のまま)であるのに対し、W≦180mmのサイズ3では140%と大きく設定している。これは、用紙サイズが小さいほど、用紙領域外に漏れてしまう電流が多くなることから、用紙への転写に必要な電流を確保するために補正%を大きくしている。
AC成分は定電圧であるために、用紙領域外への漏れの影響はないことから、用紙サイズに関係なく同じ補正(100%)となる。
用紙の主走査方向幅の補正のAC成分とDC成分の補正を同じにして、仮にDC成分の補正をAC成分に適用してしまうと、AC成分は過補正になり放電による白抜け画像が発生してしまう。
次に用紙厚みの補正について表12に示す抵抗区分:R−M,紙サイズ3の場合で説明する。なお、用紙厚みについては表3を参照。
DC成分は用紙坪量が60〜120gsmの紙厚1では補正が140%であるのに対し、用紙坪量が200.1〜300gsmの紙厚3では180%と大きく設定している。これは、用紙厚みが大きいほど用紙抵抗も高くなり、用紙への転写に必要な電流が流れにくくなる。定電流制御であるため、用紙サイズが大きければ、用紙領域外への漏れがないため補正は必要にならないが(表9、抵抗区分:R−M,サイズ1では紙厚1〜3いずれも100%)、用紙サイズが小さい場合は、用紙領域外の抵抗が用紙領域に比べ相対的に低くなることから、用紙領域外に漏れてしまう電流が多くなる。そのため、用紙への転写に必要な電流を確保するために補正%を大きくしている。
AC成分は定電圧であるために、用紙領域外への漏れの影響はないことから、用紙厚みに関係なく同じ補正(100%)となる。
用紙厚みの補正のAC成分とDC成分の補正を同じにして、仮にDC成分の補正をAC成分に適用してしまうとAC成分は過補正になり、放電による白抜け画像が発生してしまう。
最後に抵抗区分の補正について表13に示す紙厚1,紙サイズ3の場合で説明する。
DC成分は合成抵抗が低い抵抗区分:R−Lでは190%であるのに対して、合成抵抗が高い抵抗区分:R−Hでは110%と小さく設定している。これは合成抵抗が低いほうが、用紙領域外に漏れてしまう電流が多くなることから、用紙への転写に必要な電流を確保するために補正%を小さくしている。
AC成分は、合成抵抗が低い場合は印加するバイアスが小さくなる(基準値より小さくなる)ように補正し、合成抵抗が高い場合は印加するバイアスが大きくなる(基準値より大きくなる)ように補正する。これは、トナーを用紙に転写する際の二次転写ニップで必要な電圧は合成抵抗にかかわらず同じとするため、合成抵抗(特に二次転写裏面ローラの抵抗)が高い場合には、電圧降下を考慮して高い電圧が必要となるためである。そのため、本例では、抵抗区分:R−Mの補正%を100%(標準バイアス)とし、抵抗区分:R−Lでは標準バイアスより小さくなるように90%の補正とし、抵抗区分:R−Hでは標準バイアスより大きくなるように110%の補正としている。
各抵抗区分におけるAC成分とDC成分の補正%を同じにして、仮にDC成分の補正%をAC成分に適用してしまうと、AC成分は過補正になり放電による白抜け画像が発生してしまう。しかし、上記のようにAC成分とDC成分を異なる補正設定とすることで、用紙サイズ、用紙厚み、合成抵抗それぞれに応じて凹部、凸部ともに良好な転写性を得ることができる。
ここまで説明したように、いずれの補正ともDC成分とAC成分で異なった設定とすることで、各条件に応じて最適なDC成分およびAC成分で画像転写を行なうことができる。
また、交流成分の補正は、記録媒体の厚みが小さい場合の転写部抵抗が大きくなるときの変化量より、記録媒体の厚みが大きい場合の転写部抵抗が大きくなるときの変化量の方が少ない、補正率とすると好適である。これにより、各記録媒体の厚み、抵抗に応じて最適なDC成分およびAC成分の出力を行なうことができる。
本発明と比較するため、転写バイアスにおけるDC成分とAC成分に同じ補正を適用した(DC成分とAC成分で同一の補正%とした)ものを比較例として以下に示す。なお、装置構成、各種補正の検出方法は実施例と同様であるため、記載は省略する。
[比較例1]
比較例1は環境補正係数のAC成分の補正値をDC成分の補正値と同一とした場合であり、その補正値を表14に示す。環境補正以外の設定は実施例1と同様(表7〜10)である。
実施例1と比較例1で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:標準速
二次転写合成抵抗区分:R−M
環境:10℃15%(環境区分:LL)、23℃50%(環境区分:MM)、27℃80%(環境区分:HH)
用紙の主走査方向幅:A4横(297mm:サイズ1)
用紙:レザック66、連量:100kg(坪量:116gsm)(紙厚1)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
各環境での制御値を表15〜17に、効果確認結果を表18に示す。表18での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
実施例1の場合(DC成分とAC成分を異なる補正とする)では、各環境において異常画像の発生はなかったが、比較例1の場合(AC成分の環境補正がDC成分と同じ補正)では、LL環境ではAC成分が不足するため、全面ベタ画像で凹部の転写不足による白抜けが発生した。HH環境ではAC成分が過多となり、全面ハーフトーン画像で転写ニップ内での放電による白抜けが発生した。これより、DC成分とAC成分の環境補正を異なる設定とする効果が確認できた。
[比較例2]
比較例2は線速補正係数のAC成分の補正値をDC成分の補正値と同一とした場合であり、その補正値を表19に示す。線速補正以外の設定は実施例1と同様(表6、表8〜10)である。
実施例1と比較例2で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:下記“用紙”項目参照
二次転写合成抵抗区分:R−M
環境:23℃50%(環境区分:MM)
用紙の主走査方向幅:A4横(297mm:サイズ1)
用紙1:レザック66、連量130kg(坪量151gsm)(紙厚2:中速印刷)
用紙2:Conqueror製、LAID Unwatermarked Hi White 300gsm(紙厚3:低速印刷)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
印刷速度:中速での制御値を表20、印刷速度低速での制御値を表21に、効果確認結果を表22に示す。表22での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
実施例1の場合(DC成分とAC成分を異なる補正とする)では、各印刷速度において異常画像の発生はなかったが、比較例2の場合(AC成分の線速補正がDC成分と同じ補正)では、印刷速度:中速、低速いずれの場合もAC成分が不足するため、全面ベタ画像で凹部の転写不足による白抜けが発生した。これより、DC成分とAC成分の線速補正を異なる設定とする効果が確認できた。
[比較例3]
比較例3は抵抗区分:R−M,紙厚1で紙サイズ補正の用紙主走査方向幅の補正において、AC成分の補正値をDC成分の補正値と同一とした場合であり、その補正値を表19(既出)に示す。紙サイズ補正以外の設定は実施例1と同様(表6〜9)である。
実施例1と比較例3で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:標準速
二次転写合成抵抗区分:R−M
環境:23℃50%(環境区分:MM)
用紙の主走査方向幅:A4横(297mm:サイズ1)、A5縦(148.5mm::サイズ3)
用紙:レザック66、連量:100kg(坪量:116gsm)(紙厚1)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
サイズ1での制御値を表23、サイズ3での制御値を表24に、効果確認結果を表25に示す。表25での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
実施例1の場合(DC成分とAC成分を異なる補正とする)では、いずれの紙サイズにおいても異常画像の発生はなかったが、比較例3の場合(AC成分の紙サイズ補正がDC成分と同じ補正)では、サイズ1では紙サイズ補正が100%であるため問題はなかったが、サイズ3ではAC成分が過多となり、全面ハーフトーン画像で転写ニップ内での放電による白抜けが発生した。これより、紙サイズ補正のうち用紙主走査方向幅の補正をDC成分とAC成分で異なる設定とする効果が確認できた。
[比較例4]
比較例4は抵抗区分:R−M、サイズ3で、紙サイズ補正の紙厚の補正において、AC成分の補正値をDC成分の補正値と同一とした場合であり、その補正値を表26に示す。紙サイズ補正以外の設定は実施例1と同様(表6〜9)である。
実施例1と比較例4で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:下記“用紙”項目参照
二次転写合成抵抗区分:R−M
環境:23℃50%(環境区分:MM)
用紙の主走査方向幅:A5縦(148.5mm:サイズ3)
用紙1:レザック66、連量:100kg(坪量:116gsm)(紙厚1:標準速印刷)
用紙2:レザック66、連量:130kg(坪量:151gsmm)(紙厚2:中速印刷)
用紙3:Conqueror製、LAID Unwatermarked Hi White 300gsm(紙厚3:低速印刷)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
紙厚1での制御値を表27、紙厚2での制御値を表28、紙厚3での制御値を表29に、効果確認結果を表30に示す。表30での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
実施例1の場合(DC成分とAC成分を異なる補正とする)では、いずれの紙厚においても異常画像の発生はなかったが、比較例4の場合(AC成分の紙サイズ補正がDC成分と同じ補正)では、紙厚1〜3いずれにおいてもAC成分が過多となり、全面ハーフトーン画像で転写ニップ内での放電による白抜けが発生した。これより、紙サイズ補正のうち紙厚の補正をDC成分とAC成分で異なる設定とする効果が確認できた。
[比較例5]
比較例5は紙厚1,サイズ3で、紙サイズ補正の抵抗区分の補正において、AC成分の補正値をDC成分の補正値と同一としたものであり、その補正値を表31に示す。紙サイズ補正以外の設定は実施例1と同様(表6〜9)である。なお、二次転写合成抵抗は、体積抵抗の異なる二次転写裏面ローラを使用して、検知電圧:0.8kV(抵抗区分:R−L),検知電圧:1.5kV(抵抗区分:R−M),検知電圧:3.5kV(抵抗区分:R−H)となるよう調整を行った。
実施例1と比較例5で、以下の条件で画像印刷を行い、効果確認を行った。
装置の印刷速度:標準速
二次転写合成抵抗区分:R−L,R−M,R−H
環境:23℃50%(環境区分:MM)
用紙の主走査方向幅:A5縦(148.5mm:サイズ3)
用紙:レザック66、連量:100kg(坪量:116gsm)(紙厚1)
チャート:全面ベタ画像(ブルー色)、全面ハーフトーン画像(シアン色)
抵抗区分R−Lでの制御値を表32、抵抗区分R−Mでの制御値を表33、抵抗区分R−Hでの制御値を表34に、効果確認結果を表35に示す。表35での「○」は異常画像なし、「×」は異常画像あり、である。
実施例1の場合(DC成分とAC成分を異なる補正とする)では、いずれの抵抗区分においても異常画像の発生はなかったが、比較例5の場合(AC成分の紙サイズ補正がDC成分と同じ補正)では、抵抗区分:R−Hでは異常画像の発生はないが、抵抗区分:R−L,R−MではAC成分が過多となり、全面ハーフトーン画像で転写ニップ内での放電による白抜けが発生した。これより、紙サイズ補正のうち抵抗区分の補正をDC成分とAC成分で異なる設定とする効果が確認できた。
次に、上記した実施例1に対して環境区分をより細分化し、環境補正も細分化した実施例(実施例2)について説明する。なお、環境区分および環境補正以外は実施例1と同様であるため、重複する説明は省略する。
[実施例2]
下記の表36は絶対湿度に基づく環境区分の一例であり、表37は、その環境区分に基づく環境補正値を示すものである。
環境区分の細分化を行っても、実施例1と同様に低温側では常温環境に対して標準値が大きくなる方向に、高温側では常温環境に対して標準値が小さくなる方向に設定している。また、DC成分の補正率よりAC成分の補正率を大きく設定する点についても実施例1と同様である。これより、実施例2の効果は実施例1同様に得ることができ、さらに、実施例1の3段階の環境区分に対し、実施例2の6段階の環境区分に細分化することで、僅かな環境変化に対してもDC成分、AC成分ともに、常に最適な設定とすることが可能となる。
次に、上記した実施例1に対して紙厚区分および二次転写部の合成抵抗区分を細分化し、紙サイズ補正も細分化した実施例(実施例3)について説明する。なお、紙厚区分、二次転写部の合成抵抗区分、紙サイズ補正以外は実施例1と同様であるため、重複する説明は省略する。
[実施例3]
表38は紙厚区分の一例、表39は二次転写部の合成抵抗区分の一例である。なお、二次転写部の合成抵抗の検知方法は実施例1の場合と同様であり、R−L2は合成抵抗が低いことを示し、R−Mで抵抗中心、また、R−H3へ行くにしたがって合成抵抗が高いことを示す。
表40は、上記細分化した紙厚区分および合成抵抗区分に応じて設定したAC成分の紙サイズ補正値を示すものである。
重畳バイアスのAC成分は、実施例1にて示したように定電圧制御であることから紙サイズ1〜3のいずれも同じ設定である。本実施例3では合成抵抗の中心であるR−Mでの補正が100%となるよう規格化している。実施例1で、AC成分は同じ抵抗区分であれば用紙厚みによらず一定であっても効果が得られているが、より高画像を求めるのであれば、用紙厚みに応じて補正を変化させたほうが良い。
この場合、用紙厚みが薄い場合は、抵抗変化による紙サイズ補正の変化量を大きくし、用紙厚みが厚い場合は、抵抗変化による紙サイズ補正の変化量を小さくすると良い。
これは、AC成分も少なからず合成抵抗、特に本実施例における、二次転写裏面ローラの抵抗変化の影響を受けているためである。つまり、用紙厚みが厚い場合には、用紙抵抗が高いために二次転写裏面ローラ抵抗の寄与が少なくなるので紙サイズ補正の変化量は少なくて良く、用紙厚みが薄い場合には用紙抵抗が低いことから二次転写裏面ローラ抵抗の寄与が大きくなるので、紙サイズ補正の変化量を大きくする必要がある。
表41〜表43は上記細分化した区分に応じて設定したDC成分の紙サイズ補正値である。
DC成分については実施例1の補正をより細分化しものであり、補正の方向は変わらないため、説明は省略する。実施例3の効果は実施例1同様に得ることができ、さらに、紙サイズ補正を細分化することで、僅かな用紙厚みの変化や合成抵抗の変化に対してもDC成分、AC成分ともに、常に最適な設定とすることが可能となる。
ここで、先に説明した図4,5とは異なる、転写バイアスの供給形態について説明する。ここでは、転写バイアス供給形態の変形例として図26〜図32の7例を説明する。
図26に示すように、電源39からの重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加しつつ、二次転写裏面ローラ33を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を図4の形態の場合とは異ならせる。すなわち、図26に示す形態のように、二次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。
図27及び図28の構成例は、二次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36の何れか一方に重畳バイアスを印加するのではなく、電源39から直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、電源39から交流電圧を他方のローラに印加するように構成したものである。
図29及び図30の構成例は、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」とを一方のローラに切替えて供給可能としたものである。図29の形態では、二次転写裏面ローラ33に電源39から「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を切替えて供給し、図30に示す形態では、ニップ形成ローラ36に電源39から「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を切替えて供給可能としている。
図31及び図32の構成例は、「直流電圧+交流電圧」を何れか一方のローラに供給可能とし、「直流電圧」を他方のローラに供給可能として、適宜電圧供給を切替えるようにしたものである。図31に示す形態では、二次転写裏面ローラ33に「直流電圧+交流電圧」を供給可能とし、ニップ形成ローラ36に直流電圧を供給可能としている。図32に示す形態では、二次転写裏面ローラ33に「直流電圧」を、ニップ形成ローラ36に「直流電圧+交流電圧」をそれぞれ供給可能としている。
このように二次転写ニップNに対する二次転写バイアスの供給形態としては様々あるが、この場合の電源としては、電源39のように「直流電圧+交流電圧」を供給できるものや、「直流電圧」と「交流電圧」とを個別に供給できるもの、「直流電圧+交流電圧」と「直流電圧」を1つの電源で切替えて供給できるものなど、その供給形態に対応させて適宜選択して用いればよい。二次転写バイアス用の電源39は、直流電圧だけからなるものを出力する第一のモードと、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(重畳電圧)を出力する第二のモードとに切替え可能な構成としている。また、図4、図26〜図28の形態では、交流電圧の出力をオン/オフすることでモード切替えが可能となる。図29〜図32に示す形態では、リレーなどからなる切替え手段を用いて使用する2つの電源とし、これら2つの電源を選択的に切替えることでモード切替えを行えるようにすれば良い。
最後に、装置構成の異なる他の実施形態について説明する。
本発明は、図1のような装置構成に限らず、例えば、図33〜図37に示すような構成にも適用可能である。
図33は、感光体上のトナー像を直接記録用紙に転写する直接転写方式の装置である。この直接転写方式のカラープリンタは、記録用紙が給紙ローラ32により搬送ベルト131へ送られ、各色の感光体ドラム2(2Y,2C,2M,2K)から記録用紙へ各色の画像が順次直接転写され、定着装置50により定着される。
搬送ベルト131を挟んで各色感光体ドラム2(2Y,2C,2M,2K)に対向するように転写手段としての転写ローラ25(25Y,25C,25M,25K)が配置され、それぞれ転写部を形成している。各転写ローラ25(25Y,25C,25M,25K)には電源81(81Y,81C,81M,81K)から転写バイアスが印加される。この電源81(81Y,81C,81M,81K)は、直流バイアスを印加する直流電源と交流バイアス(交流直流重畳バイアス)を印加する交流電源の2つの電源を備えており、直流バイアスと重畳バイアスを切り替えて印加可能に構成している。各転写バイアスにかかる補正は、先の実施形態で説明したのと同様、DC成分とAC成分を異なる設定とすることで、同様の効果を得ることができる。転写バイアスについての説明は先の実施形態と同様であり、説明が重複するので省略する。
図34は、直接転写方式のモノクロ装置の構成例を示すものである。この図に示す構成は、感光体401に中抵抗の転写ローラ402を接触させ、この転写ローラ402にバイアスを印加してトナーを記録媒体(転写紙P)に転写させ、且つ、記録媒体を搬送させる方式である。感光体はドラム状に限らず、ベルト状でも良い。また、転写ローラ402は、発泡層(弾性層)を有してもよいし、表層にコーティングを施しても良い。
図35に示す構成は、感光体501に中抵抗の転写搬送ベルト502を接触させ、このベルトにバイアスを印加してトナーを記録媒体に転写させ、且つ、記録媒体を搬送させる方式である。バイアス印加位置は、図における転写バイアスローラ503とバイアス印加ブラシ504である。転写バイアスローラ503及びバイアス印加ブラシ504は、図示しない高圧電源に連結されている。感光体はドラム状に限らず、ベルト状でも良い。また、バイアスローラ503は、発泡層(弾性層)を有してもよいし、表層にコーティングを施しても良い。
図35の例ではバイアス印加手段としてローラ及びブラシを用いた例であるが、両方ともローラあるいは両方ともブラシでも良い。また、バイアス印加手段の配置場所としては、転写ニップNの直下でも良い。また、バイアス印加手段を1つだけ備える構成も可能であり、その場合、バイアス印加手段はローラ又はブラシのどちらでも構わない。バイアス印加手段を1つだけ備える構成における配置場所は、図示例の場所でも良いし、転写ニップNの直下でも良い。さらに、バイアス印加手段としてチャージャを用いた非接触型も可能であり、転写搬送ベルト502の内部(ループ内)にチャージャを組み込む構成である。
図36に示す構成は、転写手段として非接触転写手段であるチャージャを用いたものである。図の構成例では、感光体601の近傍に転写チャージャ602を配置し、感光体上のトナー像を記録媒体(図示せず)に転写させる方式である。バイアス印加位置は、図における転写チャージャ602のワイヤである。記録媒体はレジストローラ対604から送出され、転写チャージャ602及び分離チャージャ603が配置された転写・分離部を通過した後、後段の定着装置へと搬送される。符号605は分離爪である。
図37に示す構成は、中間転写体(本例では中間転写ベルト)702に二次転写搬送ベルト703を接触させ、転写ニップにて記録媒体に画像を転写させた後、二次転写搬送ベルト703で搬送する方式である。記録媒体はレジストローラ706から送出後、中間転写ベルト702と二次転写搬送ベルト703が圧接される転写ニップを通過する際に記録媒体に画像が転写され、中間転写ベルト702から分離させた記録媒体Pを二次転写搬送ベルト703によって搬送し、図示しない定着装置へと送る。
転写ニップを構成する中間転写ベルト702側の裏面ローラ704をバイアス印加ローラとし、該ローラ704にトナー帯電極性(正規帯電極性)とは逆極性のバイアスを印加する、斥力転写方式、あるいは、転写ニップを構成する二次転写搬送ベルト703側の対向ローラ705をバイアス印加ローラとし、該ローラ705にトナー帯電極性(正規帯電極性)と同極性のバイアスを印加する、引力転写方式、のいずれも採用可能である。
さらに、二次転写搬送ベルト703の内部に、図35の構成例で説明したと同様に、転写バイアスローラ又は/及びバイアス印加ブラシを設け、これらの転写バイアスローラ又は/及びバイアス印加ブラシに転写バイアスを印加する構成も可能である。転写バイアスローラ又は/及びバイアス印加ブラシの配置場所としては、図35の構成例で説明した場合と同様である。転写ローラ(転写バイアスローラ)は発泡層(弾性層)を有してもよいし、表層にコーティングを施しても良い。また、転写チャージャを用いる構成も可能である。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。転写部及び電源の構成は適宜な構成を採用可能である。
また、画像形成装置の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの並び順などは任意である。また、4色機に限らず、5色以上のトナーもしくは3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。