[実施形態1]
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の第1の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット50、レジストローラ対52なども備えている。
4つのトナー像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するためのトナー像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体たる現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像の電位よりも絶対値が大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも絶対値が小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用のトナー像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用のトナー像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。トナー像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
トナー像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写対向ローラ33、従動ローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,M,C,Kや、ベルトクリーニング装置100なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写対向ローラ33、3つのクリーニング対向ローラ121,122,123、及び4つの一次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の下方には、二次転写ローラ36や二次転写ベルト41などを具備するシート搬送ユニット38が配設されている。無端状の二次転写ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ローラ36などの複数のローラによって張架された状態で、二次転写ローラ36の回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられる。そして、二次転写ローラ36により、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、二次転写対向ローラ33に対する掛け回し領域に当接して二次転写ニップを形成している。つまり、転写ユニット30の二次転写対向ローラ33と、シート搬送ユニット38の二次転写ローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト31及び二次転写ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たる二次転写ベルト41のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ベルト41のループ内に配設された二次転写ローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写対向ローラ33には、二次転写電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写対向ローラ33と、二次転写ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写対向ローラ33側から二次転写ローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給送カセット50が配設されている。この給送カセット50は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ51を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対52が配設されている。このレジストローラ対52は、給送カセット50から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、二次転写ニップを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、二次転写ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によって二次転写ベルト41から曲率分離する。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置100によってベルト表面からクリーニングされる。
本実施形態のベルトクリーニング装置100は、第一クリーニング部100aと、第二クリーニング部100bと、第三クリーニング部100cとを備えている。3つのクリーニング部のうち、中間転写ベルト31回転方向最上流に配置された第一クリーニング部100aは、トナーの正規帯電極性(負極性)とは逆極性(正極性)に帯電した逆帯電トナーを中間転写ベルト31から静電的に除去する。第二クリーニング部100b及び第三クリーニング部100cは、トナーの正規帯電極性に帯電した正規帯電極性(負極性)のトナーを中間転写ベルト31から静電的に除去する。
各クリーニング部100a,100b,100cは、それぞれクリーニングブラシローラ101,104,107、クリーニングブラシローラ101,104,107に付着したトナーを回収する回収ローラ102,105,108を有している。また、回収ローラ102,105,108に当接してローラ表面からトナーを掻き取る掻き取り部材としての掻き取りブレード103,106,109を有している。また、各クリーニングブラシローラ101,104,107は、中間転写ベルト31を挟んでそれぞれクリーニング対向ローラ121,122,123に対向配置されている。
第一クリーニング部100aの第一クリーニングブラシローラ101には、負極性の電圧が印加されている。第二クリーニング部100bの第二クリーニングブラシローラ104及び第三クリーニング部100cの第三クリーニングブラシローラ107には、負極性の電圧が印加されている。本実施形態において、第一クリーニングブラシローラ101に印加する電圧は−1[kV]〜−2[kV]である。第二クリーニングブラシローラ104に印加する電圧は+1[kV]〜+2[kV]である。第三クリーニングブラシローラ107に印加する電圧は+1[kV]〜+4[kV]である。
各クリーニングブラシローラ101,104,107は、回転自在に支持される金属製の回転軸部材と、これの周面に立設せしめられた複数の起毛からなるブラシ部とを具備している。起毛は、内部が導電性カーボンなどの導電性材料からなり、表面部がポリエステルなどの絶縁性材料からなる二層構造の芯鞘構造となっている。これにより、芯は、クリーニングブラシローラに印加された電圧とほぼ同じ電位になり、トナーを起毛表面に静電的に引き付けることができる。その結果、中間転写ベルト31上のトナーは、クリーニングブラシローラに印加された電圧の作用によって起毛に静電的に付着する。また、各クリーニングブラシローラの起毛を、導電性繊維のみで構成してもよい。また、回転軸部材の法線方向に対して傾斜した姿勢で植毛されたいわゆる斜毛にしてもよい。
各回収ローラ102,105,108は、クリーニングブラシローラに付着したトナーを起毛と回収ローラとの電位勾配によってブラシから回収ローラに転位させて、クリーニングブラシローラから静電的に回収する。各回収ローラ102,105,108にかける電圧は、各クリーニングブラシローラ101,104,107に対してクリーニングしたトナーが、静電的に回収ローラに付着するような電圧とする。
次に、ベルトクリーニング装置100のクリーニング動作について説明する。二次転写ニップを通過した転写残トナー及び未転写トナー像は、第一クリーニングブラシローラ101の位置に中間転写ベルト31の回転により移送される。第一クリーニングブラシローラ101には、トナーの正規帯電極性(負極性)と同極性の電圧が印加されている。そして、中間転写ベルト31と第一クリーニングブラシローラ101表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト31上の二次転写により正規帯電極性とは逆極性(正極性)に帯電した逆帯電トナーを静電的に吸着する。また、このとき、電荷注入や放電により、第一クリーニングブラシローラ101から負の電荷を受け取り正規極性に一部のトナーは帯電し中間転写ベルト31上に残る。
第一クリーニングブラシローラ101に移動した正極性の逆帯電トナーは、第一クリーニングブラシローラ101よりも値が大きな負極性の電圧が印加された第一回収ローラ102との当接位置まで移送される。そして、第一クリーニングブラシローラ101の表面電位と第一回収ローラ102の表面電位との電位差で形成される電界により、第一クリーニングブラシローラ101上のトナーを静電的に吸着して第一回収ローラ102上へ移動させる。第一回収ローラ102に移動した正極性のトナーは、第一掻き取りブレード103により第一回収ローラ表面から掻き落とされる。 第一掻き取りブレード103により掻き落とされたトナーは、搬送スクリュー120で装置外に排出される。
第一クリーニングブラシローラ101により除去できなかった中間転写ベルト31上のトナーは、第二クリーニングブラシローラ104の位置に移送される。第二クリーニングブラシローラ104には、トナーの正規帯電極性と逆極性(正極性)の電圧が印加されている。そして、中間転写ベルト31と第二クリーニングブラシローラ104表面電位との電位差で形成される電界により、中間転写ベルト31上の負極性に帯電した正規帯電トナーを静電的に吸着して第二クリーニングブラシローラ104へ移動させる。
第二クリーニングブラシローラ104に移動した正規帯電トナーは、第二クリーニングブラシローラ104よりも値が大きな正極性の電圧が印加された第二回収ローラ105との当接位置まで移送される。そして、第二クリーニングブラシローラ104の表面電位と第二回収ローラ105の表面電位との電位差で形成される電界により、第二クリーニングブラシローラ104上のトナーを静電的に吸着して第二回収ローラ105上へ移動させる。第二回収ローラ105に移動した正規帯電トナーは、第二掻き取りブレード106により第二回収ローラ表面から掻き落とされる。
次に、第一クリーニングブラシローラ101により負極性にシフトしたトナーや、第二クリーニングブラシローラ104により除去できたかった負極性の正規帯電トナーが、第三クリーニングブラシローラ107に移送される。第三クリーニングブラシローラ107へ移送されるトナーは、第一クリーニングブラシローラ101により負極性に極性制御されている。また、第一クリーニングブラシローラ101や第二クリーニングブラシローラ104によって中間転写ベルト31上のトナーは、ほとんど除去されている。このため、この第三クリーニングブラシローラ107へ移送されるトナーは、ごく少量であり、ほぼ全てのトナーが負極性に帯電した正規帯電トナーである。
この第三クリーニングブラシローラ107へ移送された負極性に揃えられたごく少量の中間転写ベルト31上のトナーは、トナーの正規帯電極性とは逆極性(正極性)の電圧が印加されている第三クリーニングブラシローラ107に静電的に付着する。そして、第三クリーニングブラシローラ107よりも値が大きな正極性の電圧が印加された第三回収ローラ108により静電的に回収される。第三回収ローラ108に回収されたトナーは、第三掻き取りブレード109により、第三回収ローラ108から掻き落とされる。
本実施形態に係るプリンタにおいては、二次転写ベルト41の表面に対向させて光学センサ20を設けており、光学センサ20よりも二次転写ベルト回転方向下流側に、二次転写ベルト41の表面をクリーニングするクリーニングブレード60を設けている。さらに、クリーニングブレード60よりも二次転写ベルト回転方向下流側には、二次転写ベルト41の表面に潤滑剤71を塗布する潤滑剤塗布ローラ70が配置されている。
感光体2の表面上に形成された画質調整用トナーパターンは、中間転写ベルト31上に一次転写され、記録シートPが二次転写部に存在しない紙間などのタイミングで、中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に転写される。そして、二次転写ベルト41上に転写されたトナーパターンの二次転写ベルト41の表面上における画像濃度(トナー付着量を)IDを、光学センサ20を用いて検出する。二次転写ベルト41の表面上の光学センサ20との対向部を通過した画質調整用トナーパターンは、クリーニングブレード60によって二次転写ベルト41上から除去される。そして、このようにクリーニングブレード60によって画質調整用トナーパターンが除去された後、潤滑剤塗布ローラ70によって二次転写ベルト41の表面に潤滑剤71が塗布される。
ここで、画像調整制御(プロセスコントロール)について説明する。画質調整制御では、テストパターンを作成して、このテストパターンの画像濃度や作像位置を検出した結果に基づいて、画像濃度制御と位置ズレ制御とを行う。画像濃度制御は、例えば、所定のパターン潜像を現像して得られる濃度制御用トナーパターン(画質調整用トナーパターンの一種)のトナー付着量(画像濃度)を検出する。そして、このトナー付着量の検出結果に応じて、現像装置8内の現像剤中のトナー濃度、光書込ユニット80の書き込み条件(露光パワー等)、帯電バイアスや現像バイアスなどの設定値を変更する。位置ズレ制御は、例えば、位置ズレ制御用トナーパターン(画質調整用トナーパターンの一種)の検出タイミングにより各色トナー像の潜像書き込みタイミングを調整する。
画質調整制御(プロセスコントロール)は、一般には、電源ON時、印刷ジョブ(画像形成動作)の開始前や終了後、所定枚数の画像形成ごとなどの画像形成動作期間以外の非画像形成動作期間で行われる。ただし、さらなる画質安定化のため、画像形成動作期間中においても、画像領域(一枚の記録シートへ転写される画像部)と画像領域との間の非画像領域である記録シート間に画質調整用パターンを作成して、これを検出して画質調整制御を実施してもよい。
濃度制御用トナーパターンについては、感光体2の径が小さい場合に、画像濃度検出センサの設置スペースの関係から感光体2上で検出することが困難となるが、二次転写ベルト41上では問題なく検出することができる。一方、位置ズレ制御用トナーパターンについては、感光体間距離のバラツキや、各色潜像の書き込みタイミングによる位置ずれなどに起因した各色トナー像間における位置ズレを観測する必要がある。本実施形態では、中間転写ベルト31上で位置ズレが生じたトナー像の転写を二次転写ベルト41上で受けるため、各色トナー像間における位置ズレを観測することができる。そのため、本実施形態では、濃度制御用トナーパターンと位置ズレ制御用トナーパターンとの両方を、光学センサ20により二次転写ベルト41上で検出可能にしている。
また、低画像面積の画像形成動作が続くと、現像装置8内に長時間とどまりつづける古いトナーが増えてくるため、トナー帯電特性等が劣化した劣化トナーの量が増えていき、現像能力低下、転写性低下等を引き起こし、画像品質の悪化につながる。このような劣化トナーが現像装置8内に滞留しないように、所定のタイミングで、現像装置8からトナーを感光体2上の画像間(紙間)に対応する非画像領域へ強制的に吐き出させるトナー強制消費制御であるリフレッシュモードを実行する。このトナーの強制吐き出しによってトナー濃度が低下した現像装置8には、新しいトナーが補給され、これにより、現像装置8内の劣化トナーが新しいトナーと入れ替えられる。
リフレッシュモードが実行されると、感光体2上の画像間(記録シート間)に対応する非画像領域にトナー消費パターンが作成され、そのトナー消費パターンを形成する際に現像装置8がトナーを消費する。このようにして形成されたトナー消費パターンは、感光体2から中間転写ベルト31に転写され、さらに中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に転写されて、クリーニングブレード60により二次転写ベルト41上から除去される。
二次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるY,M,C用の一次転写ローラ35Y,M,Cを支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、Y,M,C用の一次転写ローラ35Y,M,Cを、感光体2Y,M,Cから遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つのトナー像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、ブラック用のトナー像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。なお、本発明は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像だけを形成する画像形成装置にも適用が可能である。
図3は、中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bには、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図4に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凹凸がベルト面に形成されている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31の基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。但し、機械強度の観点から、成形膜が脆く割れやすくならない範囲の量を選択して添加することが必要である。つまり、樹脂成分(ポリイミド樹脂前駆体、ポリアミドイミド樹脂前駆体など)と電気抵抗調整材との配合率を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスがとれたシームレスベルトを製造して用いることが好ましい。電気抵抗調整材の含有量は、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]がよく、更に好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量は、塗工液中の全固形分の150[wt%]がよく、更に好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前述した範囲よりも少ないと十分な効果が得られず、また含有量が前述した範囲よりも多いと中間転写ベルト31(シームレスベルト)の機械強度が著しく低下するので、実使用上好ましくない。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30[μm]〜150[μm]が好ましく、40[μm]〜120[μm]がより好ましく、50[μm]〜80[μm]が特に好ましい。基層31aの厚みが、30[μm]未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150[μm]を超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層31aの厚みが前述した特に好ましい範囲であると、耐久性の点で有利になる。
ベルト走行安定性を高めるためには、基層31aの層厚ムラをできるだけ少なくすることが好ましい。基層31aの厚みを調整する方法は、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる凹凸形状を表面に有している。弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。特に、表面に凹凸のある記録シート、例えばレザック紙などの表面凹凸に追従させるためには、できるだけ柔らかい材料を選択することが好ましい。また、粒子31cを分散せしめることから、熱可塑性のものよりも熱硬化性のものの方が好ましい。熱硬化性のものの方が、その硬化反応に寄与する官能基の効果により樹脂粒子との密着性に優れ確実に固定化することが可能だからである。加硫ゴムも同様の理由により好ましい材料の1つである。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。更に、脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどを例示することができる。また、芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン等が挙げられる。4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等でもよい。更には、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等でもよい。
架橋剤の配合量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。これに対し、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎて、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。このような架橋促進剤としては、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ‐ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量の適正範囲は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。これに対し、架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法を採用することが可能である。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することによって架橋物とすることができる。好ましい加熱温度は、130[℃]〜220[℃]であり、より好ましくは140[℃]〜200[℃]である。また、好ましい架橋時間は、30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋の時間は、加熱方法、架橋温度、形状などによって異なるが、好ましくは1〜48時間である。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度については、適宜選択することが可能である。選択した材料に、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、架橋促進剤などの材料を適宜含有させてもよい。さらに、電気特性を調整するための電気抵抗調整剤として、すでに述べた各種材料を使用することができる。但し、カーボンブラックや金属酸化物などは柔軟性を損なうため、使用量を抑えることが好ましく、イオン導電剤や導電性高分子を用いることも有効である。また、それらを併用しても構わない。
ゴム100重量部に対しは、種々の過塩素酸塩やイオン性液体を0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下であると、抵抗率を下げる効果が得られない。また、添加量が3部以上であると、ベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。
電気抵抗調整材の添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように調整することが好ましい。また、近年の電子写真方式の画像形成装置に求められるような、凹凸シートへの高いトナー転写性を得るために、弾性層31bの23[℃]50[%]RH環境下でのマイクロゴム硬度値を35以下にするように柔軟性を調整することが好ましい。マルテンス硬度、ビッカース硬度など、いわゆる微小硬度での計測は、測定部位のバルク方向の浅い領域、すなわち表面近傍のごく限られた領域の硬度しか測定していなのでベルト全体としての変形性能は評価できない。このため、例えば中間転写ベルト31全体としての変形性能が低い構成のものに、最表面に柔軟な材料を用いた場合、微小硬度値を低くしてしまう。このような中間転写ベルト31は変形性能が低い、すなわち凹凸シートへの追従性が悪いので、結果として近年の画像形成装置に求められる凹凸シートへの転写性能を十分に発揮することができなくなってしまう。よって、中間転写ベルト31全体の変形性能を評価することが可能なマイクロゴム硬度を測定して中間転写ベルト31の柔軟性を評価することが好ましい。
弾性層31bの層厚は、200[μm]〜2[mm]が好ましく、400[μm]〜1000[μm]がより好ましい。層厚が200[μm]よりも小さいと、記録シートの表面凹凸への追従性や転写圧力の低減効果を低くしてしまうので好ましくない。また、層厚が2[mm]よりも大きいと、弾性層31bが自重によって撓み易くなって走行性を不安定にしたり、ベルトを張架しているローラへの掛け回しでベルトに亀裂を発生させ易くなったりするので好ましくない。なお、層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で観察することによって測定する方法を例示することができる。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100[μm]以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ、3[%]熱分解温度が200[℃]以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。
これまで例示した樹脂材料の中でも、滑性、トナーに対しての離型性、耐磨耗性などに優れているという観点から、シリコーン樹脂粒子が最も好ましい。樹脂材料を重合法などによって球状の形状に仕上げた粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。また、粒子31cとしては、体積平均粒径が1.0[μm]〜5.0[μm]であり、且つ単分散粒子であるものを用いることが望ましい。単分散粒子は、単一粒子径の粒子ではなく、粒度分布が極めてシャープな粒子である。具体的には、±(平均粒径×0.5[μm])以下の分布幅の粒子である。粒子31cの粒径が1.0[μm]未満であると、粒子31cによる転写性能の促進効果が十分に得られなくなる。これに対し、粒径が5.0[μm]よりも大きいと、粒子間の隙間が大きくなってベルト表面粗さを大きくしてしまうことから、トナーを良好に転写できなくなったり、中間転写ベルト31のクリーニング不良を発生させ易くなったりする。更には、樹脂材料からなる粒子31cは一般に絶縁性が高いことから、粒径が大きすぎると粒子31cの電荷により、連続プリント時にこの電荷の蓄積による画像乱れを引き起こし易くなる。
粒子31cとしては、特別に合成したものを用いても良いし、市販品を用いてもよい。粒子31cを弾性層31bに直接塗布して、ならすことにより容易に均一に整列させることができる。このようにすることで、粒子31c同士のベルト厚み方向の重なり合いをほぼなくすことができる。複数の粒子31cの弾性層31bの表面方向における断面の径は、できるだけ均一であることが望ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5[μm])以下の分布幅にすることが好ましい。このため、粒子31cの粉末として、粒径分布の小さなものを用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cだけを選択的に弾性層31b表面に塗布することを実現する方法を採用すれば、粒径分布の比較的大きな粉末を用いることも可能である。なお、粒子31cを弾性層31b表面に塗布するタイミングは特に限定されず、弾性層31bの弾性材料の架橋前、架橋後の何れであってもよい。
粒子31cが分散せしめられた弾性層31bの表面方向において、粒子31cが存在している部分と、弾性層31bの表面が露出している部分との投影面積比については、粒子31cが存在している部分の投影面積率を60[%]以上にすることが望ましい。60[%]に満たない場合には、トナーと弾性層31bの無垢の表面とを直接接触させる機会を増加させて良好なトナー転写性が得られなくなったり、ベルト表面からのトナークリーニング性を低下させたり、ベルト表面の耐フィルミング性を低下させたりする。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図5は、二次転写電源の電気回路の要部を、二次転写対向ローラ33や二次転写ローラ36などともに示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140、電源制御部200などを有している。直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップ内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流電圧を出力するための電源である。そして、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを具備している。
交流電源140は、二次転写ニップ内に交番電界を形成するための交流電圧を出力する電源である。そして、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを具備している。
電源制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置からなる。電源制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものである。直流出力制御部111には、電源制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。そして、直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号のDuty比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。また、直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写対向ローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写対向ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、電源制御部200においてDC_PWM信号のDutyを制御させるためである。本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写対向ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写対向ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写対向ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC信号を電源制御部200に出力する。これにより、電源制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、電源制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。そして、交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のDuty比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。そして、交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写対向ローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写対向ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写対向ローラ33に出力(印加)する。二次転写対向ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写ローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として電源制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、電源制御部200においてAC_PWM信号のDutyを制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
図6は、中間転写ベルト31として、本プリンタのものとは異なり、単層構造のものを用いた構成における二次転写ニップ及びその周囲を示す拡大構成図である。中間転写ベルト31として図示のような単層構造のものを用いた場合には、二次転写対向ローラ33と二次転写ローラ36との間において、二次転写電流が次のように流れる。即ち、図中矢印で示されるように、二次転写電流がニップ中心位置(ベルト移動方向の中心位置)に集中して一直線状に流れることから、ニップ入口付近やニップ出口付近では二次転写電流がそれほど流れない。二次転写電流がこのように流れることで、二次転写ニップにおいて、トナーに二次転写電流を作用させている時間は比較的短時間になる。このため、トナーに対して、二次転写電流によって正規極性とは逆極性の電荷を過剰に注入してしまうことは殆どなく、過充電を起こしにくい。
図7は、実施形態に係るプリンタにおける二次転写ニップ及びその周囲構成を示す拡大断面図である。実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、中間転写ベルト31として、多層構造のものを用いている。かかる構成では、二次転写対向ローラ33と二次転写ローラ36との間において、二次転写電流が次のように流れる。即ち、基層31aと弾性層31bとの界面で、二次転写電流がベルト周方向に広がりながら、ベルト厚み方向に流れる。これにより、二次転写電流がニップ中心位置だけでなく、ニップ入口やニップ出口の付近にまで回り込むようになることから、二次転写ニップにおいて、トナーに二次転写電流を作用させる時間が長時間になる。そして、トナーに対して、二次転写電流によって正規極性とは逆極性の電荷を過剰に注入してしまい易くなることで、過充電を起こしトナーが逆帯電して転写不良が生じてしまう。この結果、画像濃度不足を引き起こし易くなってしまうことが解った。なお、本プリンタで用いられているような二層構造のベルトに限らず、三層以上の多層構造のベルトにおいても、同様の二次転写電流の回り込みにより、過充電を起こすことでトナーが逆帯電し転写不良が生じてしまうことも解った。
図8は、実施形態に係るプリンタの二次転写電源39から出力される二次転写バイスの波形を示すグラフである。本プリンタのように、二次転写対向ローラ33に対して二次転写バイアスを印加する構成において、二次転写ニップで中間転写ベルト31上のトナー像を記録シートPに二次転写するためには、二次転写バイアスとして次のような特性のものを採用する必要がある。即ち、時間平均の極性がトナーの帯電極性と同極性になるバイアスである。具体的には、図示のように、二次転写バイアスは、直流電圧と交流電圧との重畳により、周期的に極性を反転させる交番電圧からなるものであるが、時間平均では、極性がトナーと同じマイナス極性になるバイアスになっている。このように、時間平均の極性がマイナス極性になる二次転写バイアスを採用することで、トナーを相対的に二次転写対向ローラ33に対して反発させてベルト側から記録シートP側に静電移動させることが可能になる。
なお、二次転写ローラ36に対して二次転写バイアスを印加する構成を採用した場合には、時間平均がトナーと逆極性になる二次転写バイアスを採用すればよい。かかる二次転写バイアスにより、トナーを相対的に二次転写ローラ36に向けて静電的に引き寄せることで、ベルト側から記録シートP側に移動させることが可能になるからである。
図8において、「T」は、周期的に極性を反転させる二次転写バイアスの一周期を示している。「Vr」は、トナーの帯電極性とは逆のプラス極性におけるピーク値としての正極性ピーク値を示している。二次転写バイアスが正極性ピーク値Vrになっているときには、ベルト側から記録シートP側へのトナーの静電移動が阻害される。「Vt」は、トナーの帯電極性と同じマイナス極性におけるピーク値としての負極性ピーク値Vtになっているときに、ベルト側から記録シートP側へのトナーの静電移動が促進される。「Voff」は、二次転写バイアスの直流成分の値としてのオフセット電圧を示しており、これは、「(Vr+Vt)/2」の解と同じ値である。「Vpp」は、ピークツウピーク値を示している。
二次転写バイスは、周期T内におけるDutyが50[%]を超える波形になっている。Dutyは、波形における第1時間及び第2時間のうち、二次転写ニップで中間転写ベルト31側から記録シートP側へのトナーの静電移動を阻害する方の時間としての阻害時間を基準にした時間比である。本プリンタの場合、波形の周期T内において、二次転写バイアスの値が基線としてのゼロの線よりもプラス極性側に向けて立ち上がり始めた時点から、ゼロの線まで立ち下がった後、ゼロの線からマイナス極性側に向けて立ち下がり始める直前までが第1時間である。また、ゼロの線からからマイナス極性側に向けて立ち下がり始めた時点から、ゼロの線まで立ち上がった後、更にゼロの線からプラス極性側に向けて立ち上がり始める直前までが第2時間である。そして、それら第1時間と第2時間とのうち、第1時間において、ベルト側から記録シートP側へのトナーの静電移動を阻害することになるので、第1時間が阻害時間に相当する。よって、第1時間(プラス極性になっている時間)を基準にした周期Tにおける時間比がDutyである。第2時間をAで表すと、本プリンタにおける二次転写バイアスのDutyは、「(T−A)/T×100(%)」という式によって求められる。
図8における「Vave」は、二次転写バイアスの平均電位を示しており、「Vr×Duty/100+Vt×(1−Duty)/100」の解と同じ値である。また、Aは、第2時間(本例では周期Tから阻害時間を減じた時間)を示している。また、Tは、二次転写バイアスの交流成分の周期を示している。
図示のように、二次転写バイアスにおいて、プラス極性になっている時間は周期Tの半分よりも大きくなっている、即ち、Dutyが50[%]を超えている。このような二次転写バイアスを採用すると、周期T内において、トナーに対してその帯電極性とは逆のプラス極性の電荷を注入する可能性のある時間を短くすることから、二次転写ニップ内での電荷注入によるトナー帯電量Q/Mの低下を抑えることが可能になる。これにより、トナー帯電量Q/Mの低下に起因する二次転写性の低下による画像濃度不足の発生を抑えることができる。なお、Dutyが50[%]を超えていても、次のようにすることで、トナー像の二次転写が可能になる。即ち、0[V]を基準にしたプラス側のグラフ箇所の面積を、マイナス側のグラフ箇所の面積よりも小さくすることで、平均電位をマイナス極性にして、トナーを相対的にベルト側から記録シートP側に静電移動させることが可能になる。
図9は、本発明者らが実際の試作機の二次転写電源39から出力させた二次転写バイアスの波形を示すグラフである。図9において、負極性ピーク値Vtは−4.8[kV]である。また、正極性ピーク値Vrは1.2[kV]である。また、オフセット電圧Voffは−1.8[kV]である。また、平均電位Vaveは0.08[kV]である。また、ピークツウピーク値Vppは、6.0[kV]である。また、第2時間Aは、0.10[ms]である。また、周期Tは0.66[ms]である。また、Dutyは、85[%]である。
本発明者らは、且つ次のような条件のもとで、二次転写バイアスのDutyを様々に変化させながら、それぞれのDutyでテスト画像を印字してみた。
・環境:27[℃]/80[%]
・記録シートPの種類:用紙:Mohawk Color Copy Gloss 270[gsm](457[mm]×305[mm])・・・いわゆるコート紙
・プロセス線速:630[mm/s]
・テスト画像:ブラックハーフトーン画像
・二次転写ニップ幅(ベルト移動方向の長さ):4[mm]
・負極性ピーク値Vt:−4.8[kV]
・正極性ピーク値Vr:1.2[kV]
・オフセット電位Voff:−1.8[kV]
・平均電位Vave:0.08[kV]
・ピークツウピーク値Vpp:6.0[kV]
・第2時間A:0.10[ms]
・周期T:0.66[ms]
・Duty:90[%]、70[%]、50[%]、30[%]、10[%]
図10は、Dutyを90[%]に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図11は、Dutyを70[%]に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図12は、Dutyを50[%]に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図13は、Dutyを30[%]に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。また、図14は、Dutyを10[%]に設定した二次転写バイアスの実際の出力波形を示すグラフである。
表1におけるランクは、テスト画像の画像濃度の再現性を評価した結果である。十分なハーフトーンの濃度が得られている状態をランク5と評価した。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている状態をランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い状態をランク2として評価した。また、全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い状態をランク1として評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルは、ランク4以上である。
Dutyを10[%]や30[%]に設定した条件では、周期T内において、トナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を比較的長くするとから、トナー像が過充電され転写性が悪くなった。このため、表1に示されるように、ランク1という著しい画像濃度不足を認める結果になった。
一方、Dutyを70[%]や90[%]に設定した条件では、周期T内において、トナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を比較的短くすることから、トナー像の過充電を抑えられ転写性が良くなった。このため、表1に示されるように、ランク5という適正画像濃度を認める結果になった。
なお、図示のように、二次転写バイアスとして、波形のVrとVtとで極性を反転させる、すなわち、周期T内で極性を交互に反転させるものを採用すると、トナーへの逆電荷の注入による過充電をより確実に抑えることが可能になる。その理由は、記録シートPが帯電している場合であっても、0[V]をまたぐことで、逆電荷の注入による充電を抑える極性の電界を相対的に二次転写ニップ内で作用させることができるからである。
記録シートPとして、前述したコート紙の代わりに、普通紙を用いて、同様の実験を行った。主要な実験条件は次の通りである。
・環境:27[℃]/80[%]
・記録シートPの種類:普通紙
・プロセス線速:630[mm/s]
・テスト画像:ブラックハーフトーン画像
・二次転写ニップ幅(ベルト移動方向の長さ):4[mm]
・負極性ピーク値Vt:−4.8[kV]
・正極性ピーク値Vr:1.2[kV]
・オフセット電位Voff:−1.8[kV]
・平均電位Vave:0.08[kV]
・ピークツウピーク値Vpp:6.0[kV]
・第2時間A:0.10[ms]
・周期T:0.66[ms]
・Duty:90[%]、70[%]、50[%]、30[%]、10[%]
その結果、Dutyと転写性のランクとの関係は、コート紙の場合と同様に、表1のようになった。
なお、通常、重畳バイアスからなる二次転写バイアスの波形は、図9〜図14に示されるように、綺麗な矩形波にはならない。綺麗な矩形波であれば、波形の立ち上がり部から立ち下がり部までの時間を一周期内におけるトナー転写阻害時間として容易に特定することが可能である。しかし、綺麗な矩形波でない場合には、そのような特定ができない。すなわち、一方のピーク値(例えば負極性ピーク値Vt)から他方のピーク値(例えば正極性ピーク値Vr)への立ち上がりや、他方のピーク値から一方のピーク値への立ち下がりに時間を要する(ゼロでない)場合には、前述のような特定ができない。
そこで、綺麗な矩形波でない場合には、本発明を適用するにあたって、Dutyを次のように定義するとよい。すなわち、二次転写バイアスの周期変動の波形で、ピークツウピークにおける一方のピーク値と他方のピーク値とのうち、二次転写ニップで中間転写ベルト側から記録シート側へのトナーの静電移動をより阻害する方を阻害ピーク値として定義する。本実施形態ではプラス側のピーク値が阻害ピーク値である。阻害ピーク値を他方のピーク値に向けてピークツウピーク値の30[%]の値だけシフトさせた位置を波形の基線とする。また、波形が帰省よりも阻害ピーク値側となる時間を阻害時間A’として定義する。より詳しくは、波形が基線から阻害ピーク値に向けて立ち上がり又は立ち下がり始めた時点から、基線まで立ち下がる又は立ち上がる直前までの時間を阻害時間A’として定義する。そして、阻害時間A’の周期Tにおける割合をDutyとすればよい。
具体的には、図15における「(阻害時間A’/周期T)×100[%]」の解をDutyとして求めればよい。なお、本実施形態では、マイナス極性のトナーを用い、且つ二次転写バイアスを二次転写対向ローラ33に印加する構成になっていることから、正極性ピーク値Vrが阻害ピーク値になる。そして、阻害時間A’は、基線から正極性ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた時点から、基線まで立ち下がった後、更に負極性ピーク値Vtに向けて立ち下がり始める直前までの時間になる。これに対し、マイナス極性のトナーを用い、且つ二次転写バイアスを二次転写ローラ36に印加する構成では、二次転写バイアスとして、0[V]の位置を基準にして図15の波形を反転させた波形のものを採用することになる。この場合、負極性ピーク値Vtが阻害ピーク値になる。そして、阻害時間A’は、基線から負極性ピーク値Vtに向けて立ち下がり始めた時点から、基線まで立ち上がった後、更に正極性ピーク値Vrに向けて立ち上がり始める直前までの時間になる。
図16は、二次転写率と二次転写電流との関係を示すグラフである。二次転写率は、二次転写ニップに進入する前の中間転写ベルト31上のトナー像におけるトナー付着量(単位面積あたり)に対する転写トナー量の割合を示すものである。また、転写トナー量は、二次転写ニップを通過した後の記録シートP上に二次転写されたトナー像におけるトナー付着量(単位面積あたり)である。
図示のように、二次転写率と二次転写電流との関係を示すグラフは正規分布のような放物線状の曲線形状になる。これは、二次転写電流が少なすぎても、多すぎても良好な二次転写性が得られず、最大の二次転写性を得るためにはそれに適した二次転写電流値が存在することを意味している。図示のように、単位面積あたりのトナー付着量が比較的少なくなるハーフトーン像では、トナー付着量が比較的多くなるベタ像に比べて、二次転写電流の適正値が低くなる。一般的なユーザーにおいては、ハーフトーン像よりもベタ像の出力頻度が高くなる。そこで、ベタ像に合わせて二次転写電流値を設定すると、ハーフトーン像の出力時には過転写となり最大の二次転写性が得られなくなる。これは、トナー付着量の少ないハーフトーン像では、二次転写電流量が過剰になってトナーに対して逆極性の電荷を注入するようになることから、トナー帯電量Q/Mの不足やトナーの逆帯電による二次転写不良が起こるからである。以上のことから、特にハーフトーン像において、画像濃度不足が生じ易くなる。そこで、本実施形態では、二次転写バイアスとして、50[%]を超えるDutyの重畳バイアスからなるものを用いる転写方式である高Duty重畳バイアス転写を用い、ベタ像とハーフトーン像との転写性を両立させる。
図17は、トナー帯電量Q/M[μC/g]と、転写方式との関係を示すグラフである。図17における直流バイアス転写は、二次転写バイアスとして、マイナス極性の直流電圧だけからなるものを用いる転写方式である。そのDutyは0[%]である。また、高Duty重畳バイアス転写は、実施形態に係るプリンタと同様に、二次転写バイアスとして、50[%]を超えるDutyの重畳バイアスからなるものを用いる転写方式である。そのDutyは85[%]である。
図示のように、Duty=0[%]の二次転写バイアスを採用している直流バイアス転写では、二次転写後のトナーがプラス極性に逆帯電している。これは、二次転写ニップ内で比較的長期間に渡ってトナーのベルト側からシート側への静電移動を促す極性の電流をトナーに作用させたことで、トナーに逆極性の電荷を多量に注入してしまい過充電されプラス極性に逆帯電されたからである。これに対し、図示のように、高Duty重畳バイアス転写では、二次転写後のトナーの極性を正規のマイナス極性に維持している。これは、Dutyを85[%]に設定して前述の時間をより短くしたことで、トナーへの逆極性の電荷注入量を低減し過充電が抑えられたからである。転写バイアスはマイナス極性のバイアスを印加するので、トナーがプラス極性に逆帯電している直流バイアス転写に比べ、トナーがマイナス極性に帯電している高Duty重畳バイアス転写の方が、転写性が良くなる。このように、高いDutyの二次転写バイアスを採用することで、トナーへの逆電荷の注入による二次転写不良の発生を抑え得ることを確認することができた。
中間転写ベルト31として、本プリンタのように、最上層(弾性層31b)の素材に粒子31cを分散せしめたものを用いと、二次転写ニップ内におけるベルト表面とトナーとの接触面積を低減する。これにより、ベルト表面からのトナー離型性を向上させて、二次転写効率を高めることができる。しかしながら、規則的に並ぶ絶縁性の粒子31cの粒子間において、集中的に二次転写電流を流すことで、トナーに対して逆極性の電荷を注入し易くなる。このため、二次転写効率を高める狙いで粒子31cを分散させているにもかかわらず、却って二次転写効率を悪くしてしまうことになり兼ねない。例えば、従来のような交流バイアス(Duty50[以下]やDC定電流)を用いると、ハーフトーン画像について転写不良が起きる。その原因は、粒子31cの粒子間から二次転写電流がもれてトナーが過充電されたためである。そこで、ベルト表面に粒子31cを分散させた場合に、高Dutyの二次転写バイアスを採用することで、粒子31cによる二次転写効率の向上効果を確実に得ることが可能になる。これにより、離型性の向上と転写不良の抑制とを両立させることができる。
粒子31cとしては、トナーの正規帯電極性とは逆極性の帯電性能を有するものを用いることができる。本プリンタでは、正帯電性のメラミン樹脂からなる粒子などである。かかる構成では、粒子31cの電荷により、マイナス要素の大きい転写バイアスと打ち消しあい、粒子間で二次転写電流が集中する現象の発生を抑えて、トナーへの逆電荷の注入量をより低減することができる。これと高Dutyの二次転写バイアスを組み合わせることで、より確実にトナー過充電による画像不良を抑制することができる。
また、粒子31cとして、トナーの正規帯電極性と同極性の帯電性能を有するものを用いてもよい。本プリンタでは、負帯電性のシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール)などである。この場合にも、高Dutyの二次転写バイアスを組み合わせることで、転写不良を抑制することができる。
中間転写ベルト31として、最上層としてウレタンやテフロン(登録商標)などからなる表面層を設けたものを用いてもよい。また、ポリイミドやポリアミドイミドなどの樹脂からなる層を複数積層したものを用いてもよい。何れのベルトを用いる場合であっても、高Dutyの二次転写バイアスを採用することで、転写不良を抑えて画像濃度不足の発生を抑制することができる。
図18は、二次転写部に、重畳バイアスと、第一直流バイアスと、第一直流バイアスよりも転写電流を小さくした第二直流バイアスとの3種類の二次転写バイアスをそれぞれ印加したときの画像パターンごとの転写後のトナー帯電量Q/Mを示したグラフである。なお、第二直流バイアスの電流値は6[μA]である。
重畳バイアス及び第一直流バイアスは、最も転写電流を大きく必要とする2色の全ベタ画像を転写できる値を設定している。転写電流が6[μA]である第二直流バイアスは、実験的に実施した条件で、2色の全ベタ画像はもちろん、単色のベタパッチも転写できないような条件である(2by2画像、及び、4by4画像は転写可能)。いずれも、転写前トナーは約−30[μC/g]の帯電量である。
図18から第一直流バイアスでは、低階調の画像である2by2画像においてトナーが二次転写部で過充電されてしまい、転写残トナーが正規帯電極性とは逆極性である正極性に帯電してしまっている。2by2画像であれば転写残トナー量も少ないため、トナー帯電量Q/Mが多少小さくなることは許容できるが、転写残トナーが逆帯電すると静電的にクリーニングできないため都合が悪い。また、画像パターンによらず、転写後のトナー帯電量Q/Mが転写前に比べて著しく小さくなっている。これは、全ベタの転写残トナーにおいてはクリーニング性が厳しい。
第二直流バイアスでは、2by2画像及び4by4画像とも転写後のトナー帯電量Q/Mは高い水準を維持している。なお、第二直流バイアスでは、転写電流不足により全ベタ画像を転写することができず、全ベタ画像の転写後のトナー帯電量Q/Mは、そもそも転写できていないため未測定である。
一方で、重畳バイアスにおいては、画像パターンに寄らず転写後のトナーの帯電極性は揃っている。また、トナー帯電量Q/Mとしても2by2画像以外は、比較的高い水準を保っている。2by2画像は前述の通り、多少帯電量が落ちても転写残トナーが逆帯電さえしなければクリーニングしきることができる。したがって、重畳バイアスを用いて二次転写を行うことで、静電クリーニング可能な転写残トナー状態にすることが可能となる。よって、従来のブレードクリーニングではクリーニングできなかった球形トナーのクリーニングは当然として、静電クリーニング+直流バイアス転写ではクリーニングできなかった低帯電トナー(過充電しやすいトナー)に対してもクリーニングできるようになる。
図19は、重畳バイアス転写+静電クリーニング、直流バイアス転写+静電クリーニング、ブレードクリーニングの三構成において、円形度0.96以上の球形トナーのクリーニング性を確認したデータを示すものである。図19の縦軸は、クリーニング不良の程度を表す指標である。すなわち、クリーニング部通過後の中間転写ベルト31に付着しているトナーをテープに転写して、そのテープのIDを測定し、その測定したIDからテープそのもののIDを引くことで、クリーニング不良したトナーの量を定量化している。なお、本実験機ではIDが0.04を超えると記録シートP上で視認されるようになっていたため、目安として、すべてのチャートでIDが0.04以下であれば十分なクリーニング性があると判断している。図20は、図19に示したクリーニング性の確認を行うために、中間転写ベルト31上に形成した各色のチャートの模式図である。なお、図19に示すグラフの色の並び順は、そのまま図20に示したチャートの並び順であり、図19中左側の「Y」が装置後方側端部に位置するものであり、図19中右側の「B」が装置前方側端部に位置するものである。
円形度0.96以上の球形トナーに対するクリーニングであるため、ブレードクリーニングでは非常に多くのトナーがブレードをすり抜ける。これに対して、直流バイアス転写+静電クリーニングでは、ブレードクリーニングよりもクリーニング性が向上しているが、色や画像面内位置によってはクリーニング不良を起こしている。これらに対して、重畳バイアス転写+静電クリーニングでは、色や画像面内位置によらず良好なクリーニング性が得られている。
[実施形態2]
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態に係るプリンタの基本的な構成は、実施形態1に係るプリンタと同様のため、その説明は省略する。 本実施形態に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト31の記録シート間領域が二次転写ニップを通過するときにも、少なくとも交流成分を含むバイアスを二次転写電源39から二次転写ニップに出力する。
図21は、複数枚の記録シートPが連続搬送される連続画像形成時における画像部と記録シート間とでの二次転写バイアスの切り替えの一例を示す図である。なお、図21では説明の便宜のため、正極性ピーク値同士を結んだ包絡線と、負極性ピーク値同士を結んだ包絡線とによって、出力される二次転写バイアスを示す。図21において、画像部における二次転写バイアスの交流成分のピーク値は、+1.2[kV]と−5.6[kV]とであり、ピークツウピーク値Vppが6.8[kV]である。また、後述する後端補正を行った際に、二次転写バイアスのピークツウピーク値Vppが最も小さくなったときの交流成分のピーク値は、+0.56[kV]と−3.92[kV]であり、そのときのピークツウピーク値Vppが4.48[kV]である。また、記録シート間における二次転写バイアスの交流成分のピーク値は、+2.1[kV]と−4.7[kV]であり、ピークツウピーク値Vppが6.8[kV]である。
なお、図21に示すように、画像部における二次転写バイアスのピークツウピーク値Vppと、記録シート間における二次転写バイアスのピークツウピーク値Vppとが同じ大きさであることが好ましい。この場合、画像部と記録シート間とで中間転写ベルト31の表面電位が変動しにくい。
表2に、直流バイアスからなる二次転写バイアスと、少なくとも交流成分を含む二次転写バイアスそれぞれを用いた場合における、二次転写ニップ通過後の中間転写ベルトのベルト電位の測定結果の一例を示す。なお、表2において、ベルトAは積層ベルトでありベルトBは単層ベルトであって、ベルトAのほうがベルトBよりも体積抵抗率が高くなっている。
通常、中間転写ベルト31は二次転写ニップ通過時の高圧印加により、二次転写ニップ通過後もベルト表面が帯電しており、ある電位を有している。その電位は中間転写ベルト31を張架している二次転写対向ローラ33とは異なる他の張架ローラ(アースローラ)への巻きつき部で放電したり、空気中に自然に放電されたりすることで落ちる。ところが、線速が早い装置やレイアウト、中間転写ベルト31の電位減衰特性(抵抗など)によっては、ベルト表面の電位が落ちきらずに、次の工程(クリーニング、一次転写、さらには次の二次転写)をはじめることがある。
したがって、ベルトクリーニング装置100との対向位置に到達する際には中間転写ベルト31のベルトおもて面は少なからず帯電している。本願発明者らによる実験で、二次転写バイアスとしてトナーの正規帯電極性であるマイナス極性の直流バイアスを二次転写対向ローラ33に印加して転写を行う斥力転写では、表2のように二次転写ニップ通過後のベルトおもて面がプラス極性に帯電していた。これは、ベルト裏面が二次転写対向ローラ33と同電位になりベルト厚み方向に抵抗分電圧降下して、二次転写通過後は中間転写ベルト31の表裏の関係から、ベルト裏面がマイナス極性にベルトおもて面がプラス極性に分極したと考えられる。そして、プラス極性に帯電したままベルトおもて面がベルトクリーニング装置100との対向位置に到達した場合、まずはベルトおもて面とクリーニングブラシローラとの電位差が、クリーニングブラシローラの電位とベルトおもて面の電位との差となる。その後、ベルト裏面の張架ローラ(アースローラ)へ電流が流れていくことで狙いの電位差になる。このとき、クリーニングブラシローラのブラシ内に抱えていたマイナス帯電トナーが、プラス極性に帯電したベルトおもて面にトナーがひきつけられて、ベルトおもて面に飛び出す(吐き出す)ことがある。そして、このようにして中間転写ベルト31上に飛び出したトナーが、再度クリーニングされずにトナー汚れとして次の画像に顕在化する。
これは本来、ベルトクリーニング装置100のクリーニングブラシローラに印加するバイアスを調整するか、二次転写後のベルト電位を調整することで抑えることは可能である。ところが、二次転写ニップで画像部に交流バイアス、記録シート間(非画像部)に直流バイアスとしている場合、クリーニングブラシローラに印加するバイアスを、それぞれに対向させてリアルタイムに調整することは非常に困難である。そこで、記録シート間であっても二次転写ニップに交流バイアスを印加することで、画像部と記録シート間(非画像部)ともに同じベルト表面電位となり、クリーニングブラシローラとベルトおもて面との電位差も狙い通り適性のものになる。そのため、前記電位差が狙いどおりにならず、クリーニングブラシローラからベルトおもて面にトナーが飛び出すという現象を抑制することができる。また、交流バイアスであれば、ベルトおもて面の帯電を打ち消す方向のバイアスも印加するため、表2に示すようにベルトおもて面の帯電電位も低く、そもそもこのような問題が起こりにくい。
ここで、一般に、紙厚や材質等が異なる多種多様な記録シートを安定して転写領域へ案内させるために、転写領域の記録シート搬送方向上流側に入口ガイド等の記録シート案内部材が配置されており、記録シートは記録シート案内部材に案内されて転写領域へ進入する。転写領域に先端が進入した記録シートは、その後端側では搬送ローラ対等の記録シート搬送部材や入口ガイド等の記録シート案内部材などによって規制を受けており、転写領域よりも記録シート後端側部分が反った姿勢をとる。そのため、記録シートが記録シート搬送部材や記録シート案内部材を抜けて記録シート後端側の姿勢規制が解除される時には、反っていた記録シートの復元力により記録シート後端側が跳ね上がる場合がある。
記録シート後端側が跳ね上がると、転写領域の記録シート搬送方向上流側において中間転写ベルトと記録シートとの距離が急激に変化し、放電が発生する。このような放電が発生すると、転写領域あるいは転写領域の中間転写ベルト回転方向上流側に存在するトナー画像部分(特定トナー画像部分)に対応する画像部分に、画像白抜けの画質劣化(後端白抜け)が生じる。特に、厚紙等のようにコシの強い記録シートである場合には、記録シート後端側が跳ね上がる勢いが強いため、放電が発生しやすく、後端白抜けが生じやすい。なお、このような後端白抜けが生じるのは、発生した放電の衝撃で当該トナー画像部分が乱されることが原因であると推察される。また、放電によって当該トナー画像部分を構成するトナーの帯電極性が反転して逆帯電トナーになり、当該トナー画像部分を構成する多くのトナーが中間転写ベルトから記録シートへ転写できなくなることも原因であると推察される。
このような後端白抜けを抑制する方法としては、まず、転写領域よりも記録シート後端側部分の反りが小さくなるように、記録シート搬送部材や記録シート案内部材などを含む記録シート搬送手段の構成を最適化する方法が挙げられる。しかしながら、反りを小さくすることと、多種多様な記録シートに対する安定した搬送品質を確保することとの間にはトレードオフの関係がある。そのため、安定した搬送品質を確保しつつ後端白抜けを抑制できるように記録シート搬送手段の構成を最適化することは困難である。
また、このような後端白抜けを抑制する方法としては、記録シート後端の姿勢規制が解除される時以後の転写バイアスを小さくする方法(後端補正をかける方法)が考えられる。転写バイアスが小さくなれば、転写領域の記録シート搬送方向上流側における中間転写ベルトと記録シートとの間の電位差を小さくでき、放電に対する余裕度を高め、放電の発生を抑制できるからである。したがって、この方法によれば、記録シート後端側の姿勢規制が解除された時以後に発生する放電を抑制でき、後端白抜けの抑制が可能である。
また、本実施形態においては記録シート間に画質調整用パターンを作成して行う画質調整制御で、中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に画質調整用トナーパターンを転写するときにも、少なくとも交流成分を含む二次転写バイアスを用いる。これにより、二次転写バイアスとして直流バイアスを用いる場合よりも、中間転写ベルト31から二次転写ベルト41への画質調整用トナーパターンの転写性を向上させて、適切な画質調整制御を実行することができる。なお、中間転写ベルト31から二次転写ベルト41に画質調整用パターンを転写するときの二次転写バイアスとして、通常の画像形成時と同様に直流成分と交流成分とを重畳した重畳バイアスを用いてもよい。
また、記録シート間にトナー消費パターンを作成して行うリフレッシュモードで、中間転写ベルト31から二次転写ベルト41にトナー消費パターンを転写するときにも、少なくとも交流成分を含む二次転写バイアスを用いる。これにより、二次転写バイアスとして直流バイアスを用いる場合よりも、中間転写ベルト31から二次転写ベルト41へのトナー消費パターンの転写性を向上させることができる。よって、その分、中間転写ベルト31上に残留する転写残トナーを低減でき、ベルトクリーニング装置100による中間転写ベルト31のクリーニング性を向上させることができる。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
回転可能な中間転写ベルト31などの像担持体と、前記像担持体にトナー像を形成するトナー像形成ユニット1などのトナー像形成手段と、前記像担持体の表面に当接して転写ニップを形成する二次転写ベルト41などのニップ形成部材と、前記転写ニップで前記トナー像を記録シートへ転写するために転写バイアスを出力する二次転写電源39などの電源と、前記転写ニップよりも像担持体回転方向下流側に設けられ、前記像担持体の表面に付着しているトナーを、自身の表面に静電的に移動させて除去するクリーニングブラシローラ101などのクリーニング手段とを備えた画像形成装置において、前記転写バイアスが少なくとも交流成分を含むバイアスである。
像担持体に残留する転写残トナーを、静電的な力によってクリーニング手段により除去する構成の画像形成装置で、クリーニング不良が発生する原因について本願発明者らが鋭意検討を行った結果、次のことがわかった。すなわち、転写バイアスとして直流バイアスを用いると、転写ニップで特定の極性の電荷だけがトナーに注入され続けることになる。例えば、転写バイアスとしてトナーの正規帯電極性とは逆極性の直流バイアスを前記転写部材に印加すると、転写ニップで前記逆極性の電荷がトナーに注入され続ける。そのため、転写残トナーの帯電極性が転写前のトナー帯電極性とは逆極性になってしまい、静電的な力によって転写残トナーをクリーニング手段に移動させることができず、クリーニング性が悪化してしまう。
(態様A)においては、少なくとも交流成分を含む転写バイアスを用いるので、転写ニップで特定の極性の電荷がトナーに注入され続けるのを抑えられ、転写残トナーの帯電極性が転写前のトナー帯電極性とは逆極性になるのを抑制することができる。よって、静電的な力によって転写残トナーをクリーニング手段に移動させて像担持体上から転写残トナーを適切に除去することができ、クリーニング不良が発生するのを抑制することができる。
(態様B)
(態様A)において、前記転写バイアスは、直流成分と交流成分とを重畳した重畳バイアスである。これによれば、上記実施形態について説明したように、転写性を向上させることができるとともに、転写残トナーが低減するためクリーニング手段によるクリーニング性を向上させることができる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、複数枚の記録シートを連続搬送して画像を形成する連続画像形成期間中に前記像担持体上に存在する記録シート間領域の少なくとも一つが前記転写ニップを通過するときに、当該転写ニップに少なくとも交流成分を含むバイアスを前記電源が出力する。これによれば、上記実施形態について説明したように、クリーニング手段に保持されたトナーが、像担持体上の記録シート間領域に静電的な力によって転移してしまうのを抑制できる。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、前記電源を制御する電源制御部200などの制御手段を有しており、前記像担持体上のトナー像を記録シートへ転写させる側のピーク電圧の持続時間をAとし、前記転写バイアスの交流成分の1周期の時間をBとしたとき、前記制御部は前記トナー像の記録シートへの転写時にDuty=(T−A)/T×100[%]が50[%]より大きなバイアスを出力するように、前記電源を前記制御手段で制御する。これによれば、上記実施形態について説明したように、50[%」よりも大きいDutyの転写バイアスを用いることで、交流電圧の重畳によって周期的に電位を変化させる転写バイアスの一周期内において、次のような時間配分を実現する。即ち、転写ニップでトナーに対して逆極性の電荷を注入するおそれのある時間を、注入のおそれのない時間よりも短くする。これにより、転写ニップでトナーに逆電荷を注入してしまうことによるトナー帯電量の低下を抑えることで、コート紙のような表面平滑シートに対してもトナー像を良好に転写して画像濃度不足の発生を抑えることができる。
(態様E)
(態様A)、(態様B)、(態様C)または(態様D)において、前記像担持体は複数層を具備する多層構造のベルト部材であり、前記複数層は、基層31aなどの基層と、当該基層の上に形成された弾性層31bなどの弾性層とを含む。これによれば、上記実施形態について説明したように、表面凹凸シートに対するトナー像の転写性を更に向上させることができる。
(態様F)
(態様E)において、前記弾性層の表面に複数の粒子31cなどの粒子を分散させた。これによれば、上記実施形態について説明したように、像担持体表面からのトナー離型性を高めて転写効率を向上させることができる。
(態様G)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)において、前記クリーニング手段を2つ以上備えており、各クリーニング手段がブラシローラである。これによれば、上記実施形態について説明したように、クリーニング性を向上させることができる。
(態様H)
(態様G)において、前記像担持体の回転方向に順に並べて前記クリーニング手段を三つ配置しており、前記像担持体回転方向最上流に配置された第一クリーニングブラシローラ101などのクリーニング手段の印加電圧の極性をトナーの正規帯電極性と同極性とし、第二クリーニングブラシローラ104及び第三クリーニングブラシローラ107などの残りの前記クリーニング手段の印加電圧の極性をトナーの正規帯電極性とは逆極性にした。これによれば、上記実施形態について説明したように、クリーニング性を向上させることができる。
(態様I)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)または(態様H)において、記転写部材は、複数の張架部材によって回転可能に設けられたベルト部材であり、前記像担持体上に形成され前記転写部材上に転写された画質調整用トナーパターンを光学センサ20などのトナーパターン検出手段により検出し、この検出結果に基づいて前記トナー像形成手段によるトナー像形成条件を決定する画質調整制御が実行可能であり、前記像担持体から前記転写部材への前記画質調整用トナーパターンの転写時に、少なくとも交流成分を含む前記転写バイアスを前記電源が出力する。これによれば、上記実施形態について説明したように、像担持体から転写部材への画質調整用トナーパターンの転写性を向上させて、適切な画質調整制御を実行することができる。
(態様J)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)、(態様H)または(態様I)において、作像立ち上げ時も前記電源から少なくとも交流成分を含む前記転写バイアスを出力する。これによれば、上記実施形態について説明したように、画像部と記録シート間とで像担持体の表面電位の変動を低減させることが可能となる。