以下、本発明を画像形成装置としてのタンデム型の画像形成部によってカラー画像を形成するカラープリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図4は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,K、転写装置としての転写ユニット20、図示しない光書込ユニット、タンデム画像形成部10、転写ユニット20、紙搬送ユニット39、定着装置40、再送装置50などを備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図5に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置5K、除電装置(不図示)、帯電装置4K、現像装置4K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。帯電装置4Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、図示しない光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置3Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト21上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置5Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレードなどを有している。回転するクリーニングブラシローラで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置5Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置3Kは、感光体2Kに対向する現像ロール3aKを内包する現像部と、図示しないK現像剤を撹拌搬送するための第1スクリュウ部材3bK、及び第2スクリュウ部材3cKを内包する現像剤搬送部とを有している。そして、現像剤搬送部は、第1スクリュウ部材3bKを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材3cKを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材3bKを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材3cKを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材3bKは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材3bKと、現像ロール3aKとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール3aKの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材3bKは、現像ロール3aKの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材3bKの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材3cKの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材3cKの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、データ記憶手段としてのRAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
K用の現像装置1Kの現像部内に収容されている現像ロール3aKは、第1スクリュウ部材3bKに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール3aKは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材3bKから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図4において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる図示しない光書込ユニットが配設されている。この光書込ユニットは、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニットは、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト21を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット20が配設されている。転写ユニット21は、像担持体たる中間転写ベルト21の他に、駆動ローラ22、従動ローラ23、2次転写対向ローラ24、4つの1次転写ローラ25Y,M,C,K、ニップ形成部材たる2次転写ローラ26、図示しないベルトクリーニング装置などを有している。
中間転写ベルト21は、そのループ内側に配設された駆動ローラ22、従動ローラ23、2次転写対向ローラ24、及び4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ22の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
中間転写ベルト21としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
4つの1次転写ローラ25Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト21を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト21のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ25Y,M,C,Kには、1次転写電源81Y,M,C,Kにより、トナーの帯電極性とは逆極性の1次転写バイアスが印加される。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ25Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト21上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト21は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト21上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ25Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、概ね1〜2E7[Ω]である。この抵抗Rは、ローラが新品の状態のときの値であり、ローラが数十万枚の印刷に寄与して劣化した状態のときには、約6E7[Ω]になる。このような1次転写ローラ25Y,M,C,Kに対して、1次転写電源81Y,M,C,Kから定電流制御で出力した1次転写バイアスを印加する。
転写ユニット20の2次転写ローラ26は、中間転写ベルト21のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写対向ローラ24との間に中間転写ベルト21を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト21のおもて面と、ニップ形成部材たる2次転写ローラ26とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ26は接地されているのに対し、2次転写対向ローラ24には、2次転写電源82によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写対向ローラ24と2次転写ローラ26との間に、マイナス極性のトナーを2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ26側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
本プリンタは、図示しない給紙カセットを備えている。この給紙カセット内には、記録シートとしての記録シートが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されており、一番上の記録シートには、給紙ローラが当接している。給紙ローラが図示しない駆動手段によって回転駆動すると、給紙カセット内の一番上の記録シートが、給紙路に向けて送り出される。
給紙路の末端には、レジストローラ対32が配設されている。レジストローラ対32は、記録シートをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、記録シートを中間転写ベルト21上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト21上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写バイアスやニップ圧の作用により、2次転写ニップ内で記録シートPに一括して2次転写される。そして、記録シートの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ26や中間転写ベルト21から曲率分離する。
2次転写対向ローラ24は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6[Ω]〜1E12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
また、2次転写ローラ26は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
2次転写電源82は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写電源82の出力端子は、2次転写対向ローラ24の芯金に接続されている。2次転写対向ローラ24の芯金の電位は、2次転写電源82からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写ローラ26については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写対向ローラ26の芯金に印加しつつ、2次転写ローラ26の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスを2次転写ローラ26の芯金に印加しつつ、2次転写対向ローラ24の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。
具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つ2次転写ローラ26を接地した条件で、2次転写対向ローラ24に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写対向ローラ24を接地し、且つ重畳バイアスを2次転写ローラ26に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写対向ローラ24や2次転写ローラ26に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、正弦波状の波形のものを採用しているが、後述するような非正弦波を用いてもよい。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト21には、記録シートに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、図示しないベルトクリーニング装置によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニング装置は、クリーニングローラを中間転写ベルト21のおもて面に当接させており、ベルト上の転写残トナーをクリーニングローラに静電転移させて除去するものである。
2次転写ニップの出口の近くには、無端状の紙搬送ベルト39aを、駆動ローラ39bと従動ローラ39cとによって水平方向に延在する横長の姿勢で張架しながら、駆動ローラ39bの回転駆動に伴って図中反時計回り方向に無端移動させる紙搬送ユニット39が配設されている。2次転写ニップを通過した記録シートは、紙搬送ベルト39aの表面に吸着された状態で、ベルトの移動に伴って図中右側から左側に向けて搬送される。そして、駆動ローラ39bによるベルト掛け回し領域に到達すると、ローラ周面に沿って進むベルトに追従することなく、ベルトから分離されて、定着装置40に受け渡される。
定着装置40内では、記録シートが、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱定着ローラ41と、これに向けて押圧される加圧ローラ42との当接による定着ニップに挟み込まれる。そして、定着ニップ内で加圧や加熱によるトナー像の定着処理が施される。このとき、加熱定着ローラ41の表面温度である定着温度が概ね165[℃]で一定になるように、前記発熱源への電源供給がオンオフ制御される。定着装置40によってトナー像が定着せしめられた記録シートは、図示しない排出ローラ対を経由して機外へと排出される。
定着装置40から排出された記録シートについては、そのまま排紙ローラ対に送る場合と、排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る場合とがある。具体的には、記録シートの第1面だけに画像を形成する片面モードのプリントジョブを実施する際には、定着装置40から排出された記録シートを例外なく排紙ローラ対に送る。これに対し、記録シートの両面に画像を形成する両面モードのプリントジョブを実施する際において、定着装置40から排出された記録シートが第1面だけにトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送らずに、再送装置50に送る。但し、両面モードであっても、定着装置40から排出された記録シートが両面にトナー像を担持するものである場合には、それを排紙ローラ対に送る。定着装置40を通過した後の記録シートを排紙ローラ対に送るのか、再送装置50に送るのかの切り換えは、図示しない切り換え爪による記録シート搬送先の切り換えによって行われる。
再送装置50は、定着装置40から送られてくる記録シートをスイッチバック路51でスイッチバック搬送することで、その上下を反転させる。その後、記録シートをスイッチバック路52に送る。スイッチバック路52を通過した記録シートは、図示しない給紙カセットから2次転写ニップに搬送するための給紙路の途中に送り込まれる。これにより、記録シートは、上下を反転させた状態で、2次転写ニップに再送される。
なお、給紙路の後半領域では、記録シートは、後述する抵抗測定ローラ対31とレジストローラ対32とを順次通過する。再送装置50は、記録シートを給紙路における抵抗測定ローラ対31よりも上流側の位置に送り込む。記録シートは、給紙カセットから送り出された直後のものであるか、再送装置50によって再送されたものであるかにかかわらず、給紙路内において、抵抗測定ローラ対31とレジストローラ対32とを必ず経由することになる。
図6は、2次転写電源82から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形を示す波形図である。同図において、2次転写バイアスは、上述したように、2次転写対向ローラ(24)の芯金に印加される。上述したように、2次転写対向ローラの芯金に2次転写バイスが印加されると、2次転写対向ローラの芯金と、ニップ形成部材たる2次転写ローラ(26)の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写電源82は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写対向ローラ(24)の芯金の電位から、2次転写ローラ(26)の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、2次転写対向ローラの電位を2次転写ローラの電位よりもトナーの帯電極性側(本例ではマイナス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写対向ローラ側から2次転写ローラ側に静電移動させることになる。
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。実施形態に係るプリンタにおいて、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写対向ローラ(24)の芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分(Eoff)と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分(Epp)とから構成される。
同図に示されるように、実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。2次転写対向ローラ24に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ26側に相対的に押し出すことが可能になる。2次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ26側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト21上のトナーを記録シート上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写ローラ26側から2次転写対向ローラ24側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録シートに転移させたトナーを中間転写ベルト21側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写対向ローラ24側から2次転写ローラ26側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、戻り電位ピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
まず、本発明者らが行った実験について説明する。本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、種々のプリントテストを実施した。各種のプリントテストにおいては、現像剤としては、平均粒径が6.8[μm]であるポリエステル系の粉砕法によるトナーと、平均粒径が55[μm]である表面に樹脂層を被覆した磁性キャリアとからなるものを使用した。
[第1プリントテスト]
オフセット電圧Voffとして、−0.8[kV]を採用した。具体的には、プリントテストでは、2次転写ローラ26を接地しているので、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの直流成分を−0.8[kV]に設定した。また、交流成分として、ピークツウピーク電圧Vppが2.5[kV]であるものを採用した。交流成分の周波数f[Hz]や、プロセス線速(中間転写ベルトや感光体の線速)については、適宜変更した。互いに異なる周波数fやプロセス線速の条件下で、普通紙からなる記録シートPにテスト用の黒ベタ画像を出力した。そして、出力された黒ベタ画像の質を、目視によって2段階で評価した。交流成分の周波数に同期する濃度ムラ(ピッチムラ)が視認されない場合を○、視認される場合を×とした。この結果を次の表1に示す。
表1に示すように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを400[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。また、プロセス線速vを141[mm/s]に設定した場合には、交流成分の周波数fを200[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。プロセス線速vに応じて、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値が異なるのは、プロセス線速vに応じて、2次転写ニップ内でトナーに作用させる交番電界の回数が変化するからである。具体的には、以下、記録シートPを進入させていない状態における、中間転写ベルト21と2次転写ローラ26との直接当接による2次転写ニップのローラ表面移動方向の長さであるニップ幅をd[mm]と定義する。2次転写ニップ通過に要する時間であるニップ通過時間[s]は、「ニップ幅d/プロセス線速v」という式で表される。一方、周波数f[Hz]の条件下において、重畳バイアスの交流成分の周期[s]は、「1/周波数f」という式で表される。よって、ニップ通過時間においては、交流成分の1周期分の波形が、「d×f/v」回分だけ印加されることとなる。プリント試験機におけるニップ幅dは3[mm]である。表1に示したように、プロセス線速v=282[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×400/282)と計算することができる。これは、2次転写ニップ内において、約4.26回の交番電界をトナーに作用させることで、ピッチムラの発生を回避し得ることを示している。また、プロセス線速v=141[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は200[Hz]であることから、必要な波形数を約4.26回分(3×200/141)と計算することができる。400[Hz]のときと同じ値である。これらのことから、2次転写ニップ通過中に交番電界を約4回作用させることで、ピッチムラのない良好な画像を得ることができると言える。つまり、ピッチムラのない良好な画像を得るためには、「4<d×f/v」という条件が必要になるのである。なお、図1〜図3に示される現象を生起せしめるためには、転写ニップ内で最低でもトナー粒子を2往復させる必要がある。このため、ニップ通過時間については、交流成分の周期の2倍以上に設定する必要がある。望ましくは、既に述べたように、転写ニップ内で交番電界を4回以上作用させることが望ましい(f>(4/d)×v)。
[第2プリントテスト]
記録シートPとして、普通紙の代わりに、株式会社NBSリコー社製のFC和紙タイプ さざ波(商品名)を使用した。和紙のような表面凹凸を具備する紙である。このような紙を用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを発生させ易くなる。縦70[mm]、横55[mm]の大きさの黒ベタ画像を、出力するテスト画像として採用した。そして、記録シートPに出力されたテスト画像について、凹部の濃度再現性、凸部(平滑部)の濃度再現性、及び放電に起因する白点の出現性の3項目を評価した。なお、実験室の環境は、温度23[℃]、湿度50[%]にコントロールされている。
凹部の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、表面凹凸の凹部内に対して十分量のトナーを進入させていることから、凹部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5として評価した。また、凹部内のごく僅かな領域を白く抜けた領域にしているか、あるいは、凹部の画像濃度が平滑部よりも僅かに低い状態になっている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4よりも、白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合を、ランク3として評価した。また、ランク3に比べ、さらに白抜けの領域が大きい場合、あるいは濃度低下が目立つ場合をランク2として評価した。また、凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合や、さらに悪い場合をランク1として評価した。
凸部(平滑部)の濃度再現性については、次のようにして評価した。即ち、平滑部において十分な画像濃度を得られている場合をランク5とした。また、ランク5に比べてやや薄いが、問題のない濃さが得られている場合を、ランク4として評価した。また、ランク4に比べてさらに薄く、ユーザーに提供する画質としては問題となる場合をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに薄い場合をランク2とし、平滑部が全体的に白っぽい場合やそれよりも薄い場合をランク1として評価した。
2次転写バイアスによっては、2次転写ニップ内において、記録シートの表面凹部と、中間転写ベルト21との間の微小空隙で放電が発生して、画像に白点を出現させることがある。放電に起因する白点の出現性については、次のようにして評価した。即ち、放電に起因するものと考えられる白点が認められない状態をランク5として評価した。また、白点が僅かに認められるものの、認められる数が少なく且つ大きさも小さいことから、ユーザーに提供する画質として問題ないレベルをランク4として評価した。また、ランク4に比べて白点が多く認められ、問題あるほど目立つ状態をランク3として評価した。また、ランク3に比べてさらに白点が多く認められる場合をランク2として評価した。また、白点が画像全体に認められ、ランク2よりも更に悪い状態をランク1として評価した。なお、放電に起因する白点は点状に発生するのに対し、凹部の濃度が非常に薄い場合は凹部全体が白くなる。また、参考までに、各ランクの黒ベタ画像を図7に示す。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
第2プリントテストについては、次のようにして行った。即ち、まず、2次転写ニップで交番電界を全く作用させない場合を基準として評価するために、2次転写バイアスとして、直流成分だけからなるものを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力して上記3項目を評価した。この結果を次の表2に示す。
表2に示されるように、2次転写バイアスとして直流成分だけからなるものを採用した場合、直流電圧の増加に伴って凸部の画像濃度も増加していくが、凹部においては必要な画像濃度を得ることができない。直流電圧の値にかかわらず、凹部の濃度再現性はランク1である。また、直流電圧が増加するにつれて、放電に起因する白点の発生が目立ってくる。マイナス極性の直流電圧の絶対値を2[kV]よりも大きくすると、白点の出現性が許容レベルであるランク4を下回ってしまう。
次に、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用してテスト用の黒ベタ画像を出力した。重畳バイアスの交流成分の周波数fについては、500[Hz]に固定した。また、プロセス線速vについては、282[mm/s]に固定した。また、直流成分(オフセット電位Voff)については、−0.6[kV]〜−2.0[kV]の範囲内で適宜変更した。また、交流成分のピークツウピーク電圧Vppについては、1.0[kV]〜9.0[kV]の範囲内で適宜変更した。このような条件で出力した黒ベタ画像の凹部濃度再現性を評価した結果を、次の表3に示す。
表3に示されるように、2次転写バイアスとして、重畳バイアスを採用すると、バイアス条件によっては、凹部濃度再現性のランクを4以上にし得ることがわかる。凹部濃度再現性については、交流成分のピークツウピーク電圧Vppを大きくするほど、ランクを向上させ、且つ、オフセット電位Voffの絶対値を小さくするほど、ランクを向上させる傾向にある。
上記黒ベタ画像の凸部濃度再現性を評価した結果を、次の表4に示す。
オフセット電圧Voffの絶対値を大きくするほど、凸部(平滑部)の画像濃度を増加させる傾向にあることがわかる。オフセット電圧Voffの絶対値をある程度まで大きくすることで、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にすることができる。ここで注目すべき点は、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用した場合、直流成分だけからなるものを採用する場合に比べて(表2に比べて)、凸部濃度再現性を許容レベルのランク4以上にするオフセット電圧Voffの絶対値を小さくすることができている点である。
上記黒ベタ画像の白点出現性を評価した結果を、次の表5に示す。
交流成分のピークツウピーク電圧Vppを小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。これに対し、オフセット電圧Voffの絶対値を小さくするほど、放電に起因する白点の発生を抑える傾向にあることがわかる。
図7は、第2プリントテストの結果に基づいて作成されたオフセット電圧Voffと、ピークツウピーク電圧Vppと、凹部濃度再現性と、凸部濃度再現性と、白点出現性との関係を示すグラフである。このグラフは、図示のように、y軸にオフセット電圧Voffの値をとるとともに、x軸にピークツウピーク電圧Vppの値をとった2次元座標上に作成されたものである。2次元座標上には、実線で示される直線L1、点線で示される直線L2、及び一点鎖線で示される直線L3、という3つの直線が描かれている。図示の2次元座標において、直線L1の線上の領域や、直線L1に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、凹部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凹部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L2の線上の領域や、直線L2に比べて同じy座標が大きくなる領域では、凸部濃度再現性のランクが許容レベルの4を下回る3以下という結果になった(凸部の薄さが目立った)。このため、プロット点を×として示している。また、直線L3の線上の領域や、直線L3に比べて同じx座標でy座標が大きくなる領域では、白点出現性のランクが許容レベルを下回る3以下という結果になった(放電に起因する白点が目立った)。このため、プロット点を×として示している。なお、直線L1よりも図中上側で且つ直線L2よりも図中下側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、凸部濃度再現性のランクが4を下回った。また、直線L1よりも図中上側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凹部濃度再現性のランクが4を下回るとともに、白点出現性のランクが4を下回った。また、直線L2よりも図中下側で且つ直線L3よりも図中上側の領域では、凸部濃度再現性が4を下回るとともに、白点出現ランクが4を下回った。
同図では、凹部濃度再現性、凸部濃度再現性、及び白点出現性という3つの項目について、全て許容レベルのランク4以上になった実験結果のみ、プロット点を丸で示している。3つの項目ではなく、凹部濃度再現性だけに着目すると、直線L1よりも図中下側の座標となるオフセット電圧Voff及びピークツウピーク電圧の組合せを採用すればよいことになる。直線L1は、「Vpp=−4×Voff」という式で表される。よって、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を満たす2次転写バイアスを採用することで、紙表面の凹部で十分な画像濃度を得ることができる。
なお、既に説明しているように、プリンタ試験機においては、2次転写対向ローラ24の芯金に対して2次転写バイアスを印加するとともに、2次転写ローラ26の芯金を接地しているので、両ローラ間における電位差の時間平均値である直流成分電位差Eoffが、2次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと同じ値になる。2次転写ローラ26の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合、2次転写対向ローラ24の芯金に印加する直流電圧と、2次転写ローラ26の芯金に印加する直流電圧との重畳値を、オフセット電圧Voffとして取り扱うものとする。つまり、2次転写ローラ26の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ーラ36の芯金に直流電圧を印加した場合であっても、Eoffとオフセット電圧Voffとは同じ値になる。
また、プリントテストや実施形態に係るプリンタのように、交流バイアスとして正弦波からなるものを用いる場合には、オフセット電圧Voffが、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの単位時間あたりの平均電位Vaveと同じ値になる。
2次転写ローラ26等のニップ形成部材と、2次転写対向ローラ24等の電極部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、電極部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、電極部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、電極部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、電極部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、電極部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、電極部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
次に、本発明者らが行った転写実験について説明する。
本発明者らは、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件にすることで、凹部で十分な画像濃度を得て紙面凹凸にならった濃淡パターンを従来よりも目立たなくすることができた原因を明らかにするために、特殊な転写実験装置を作製した。
図8は、転写実験装置を示す概略構成図である。この転写実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録シート214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録シート214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録シート214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録シート214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
トナーの挙動については、次のようにして撮影する。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録シート214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影する。
図8に示される転写実験装置と、実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録シートに転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、転写実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録シート214としては、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名) 260kg紙(四六版連量)を使用した。レザック66は、「さざ波」よりも紙表面の凹凸の度合いが大きい紙である。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。転写実験装置では、記録シートの裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録シートに転写し得る転写バイアスの極性が、実施形態に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを500[Hz]、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを400[V]から2600[V]まで200[V]単位で変化させていきながら、記録シート214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、ピークツウピーク電圧Vppを800[V]以下に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4未満になったが、Vppを900〜2200[V]の範囲に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4以上になった。転写試験装置でも、プリンタ試験機と同様に、「1/4×Vpp>Voff」という条件で、凹部濃度再現性を許容レベルまで良好にすることができたのである。なお、ピークツウピーク電圧Vppを2400[V]に設定した条件では、凹部濃度再現性は許容レベルであるものの、許容レベルを超える白点が発生してしまった。
次に、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを1000[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件で、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録シート214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加する。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、先に図1に示したように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録シート214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図2に示されるように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録シート214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図3に示されるように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(転写実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録シート表面の凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
一方、直流電圧を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを800[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」を満足しない条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録シート表面の凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録シート表面の凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録シート表面の凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。
以上のように、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備することで、図1〜図3に示される現象を生起せしめて、記録シート表面の凹部内に十分量のトナーを転移させ得ることがわかった。
しかしながら、更なる実験により、前記条件を具備していても、記録シートが多湿環境下で吸湿して電気抵抗を低下させると、記録シート表面の凹部内へのトナー転移量を不足させてしまうことがわかった。これは次に説明する理由による。図9は、吸湿した記録シートを2次転写ニップ内に進入させてからの経過時間と、重畳バイアスからなる2次転写バイアスの印加によって形成される転写電界が記録シート上のトナーに及ぼす静電気力との関係を示すグラフである。この例では、トナーに働く静電気力がプラス極性側に大きくなるほど、トナー粒子を記録シート側からベルト側(像担持体側)に戻す力が弱くなる。吸湿した記録シートが2次転写ニップに進入すると、図示のように、記録シート上のトナーに対して交番電界からなる転写電界による静電気力が付与される。前記経過時間が長くなるにつれて、この静電気力はプラス側に徐々に大きくなっていく。これは、吸湿によって電気抵抗を低下させている記録シートが2次転写ニップに進入した後に急速に電荷を蓄えていき、電荷量の上昇に伴って凹部内のトナー粒子をベルト側に戻し難くなるからである。
吸湿していない記録シートでは、電気抵抗が比較的高いことから、転写ニップ内で電荷を蓄える速度が非常に遅い。このため、トナー粒子を記録シート表面の凹部と中間転写ベルトとの間で活発に往復移動させて、記録シート表面の凹部内に十分量のトナーを転移させることができる。しかし、吸湿した記録シートでは、図示のように、2次転写ニップに進入した直後に急速に電荷を蓄えてトナー粒子を往復移動させなくなってしまうため、記録シート表面の凹部に対するトナー転移量を不足させてしまうのである。
[第3プリントテスト]
次の表6、表7に示される条件で、第3プリントテストを実施した。なお、表6、表7に特に示されていない条件については、第2プリントテストと同じにした。
表6に示されるように、実験1においては、温度10[℃]、湿度15[%]という低温低湿環境下にてテストを行った。また、実験2においては、温度23[℃]、湿度50[%]という中温中湿環境下にてテストを行った。また、実験3においては、温度27[℃]、湿度80[%]という高温高湿環境下にてテストを行った。また、表7に示されるように、出力したテスト画像については、凹部濃度ランク、及び転写チリランクを評価した。転写チリランクは、転写チリの度合いを示すもので、値が大きいほど、転写チリが認められなくなることを表している。ランク3以上が許容レベルである。転写チリは、記録シートの非画像部にトナーがチリ状に付着してしまう現象である。転写バイアスの交流成分の周波数が高くなるほど、2次転写ニップにおけるベルトと紙面との間のトナーの往復移動回数が増加するため、転写チリが発生し易くなる。
温度10[℃]、湿度15[%]という低温低湿環境下で行った実験1では、ピークツウピーク電圧Vpp=10[kV]、オフセット電圧Voff=−2[kV]という条件にて、凹部濃度ランクを許容レベルの4以上にすることができる周波数帯域が、500〜1250[Hz]という広い帯域になった。また、転写チリランクを許容レベルの3以上にする周波数帯域が、500〜1000[Hz]という広い帯域になった。凹部濃度ランクを許容レベルの4にしつつ、転写チリランクを許容下限の3よりも大きな4にする周波数=500[Hz]が好適である。以下、ピークツウピーク電圧Vpp=10[kV]、オフセット電圧Voff=−2[kV]、周波数=500[Hz]という条件を具備する2次転写バイアスを、低湿用バイアスという。
温度23[℃]、湿度50[%]という中温中湿環境下で行った実験2では、ピークツウピーク電圧Vpp=7[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV]という条件にて、凹部濃度ランクを許容レベルの4以上にする周波数帯域が、750〜1250[Hz]になった。また、転写チリランクを許容レベルの3以上にする周波数帯域が、500〜1000[Hz]になった。凹部濃度ランクに着目してみると、実験1では、許容レベルにする周波数帯域の下限が500[Hz]であったのに対し、実験2では、下限が750[Hz]に上昇している。中温中湿環境下において、周波数が500[Hz]だと2次転写ニップ内のベルト表面と記録シートとの間におけるトナー粒子の往復移動回数が不足してしまうからである。
なお、実験2において、ピークツウピーク電圧Vppを実験2よりも小さくした理由は、次の通りである。即ち、シート表面の凹部で十分な画像濃度を得るためには、ピークツウピーク電圧Vppをできるだけ大きくすることが望ましいが、大きくし過ぎると、2次転写ニップ内におけるベルト表面と記録シートとの間で放電を発生させて、放電に起因する画像の白抜け(白点)を引き起こしてしまう。実験2のような中温中湿環境下では、実験1のような低温低湿環境下に比べて記録シートの電気抵抗が低下することから、2次転写ニップ内におけるベルト表面と記録シートとの間の放電が発生し易くなる。実験2では、白点を許容レベルに留めるために、ピークツウピーク電圧Vppを実験1よりも低くしているのである。
実験2において、転写チリランクに着目してみると、許容レベルにする周波数帯域は実験1と同様に500〜1000[Hz]になっている。中でも500[Hz]では、転写チリランク=4という好成績になるが、凹部濃度ランクが許容レベルの4を下回ってしまう。凹部濃度再現性は転写チリよりも優先されるべき事項であるので、凹部濃度ランクを許容レベルの4にしつつ、転写チリランクを許容レベルの3にする周波数=750〜1000[Hz]という条件が好適である。以下、ピークツウピーク電圧Vpp=7[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV]、周波数750[Hz]という条件を具備する2次転写バイアスを、中湿用バイアスという。
温度27[℃]、湿度80[%]という高温高湿環境下で行った実験3では、ピークツウピーク電圧Vpp=5[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV]という条件にて、凹部濃度ランクを許容レベルの4以上にする周波数帯域が、1000〜1250[Hz]になった。実験2では、凹部濃度ランクを許容レベルにする周波数帯域の下限が750[Hz]であったのに対し、実験3では、下限が1000[Hz]に上昇している。高温高湿環境下において、周波数が750[Hz]だと2次転写ニップ内のベルト表面と記録シートとの間におけるトナー粒子の往復移動回数が不足してしまうからである。なお、実験3において、ピークツウピーク電圧Vppを実験2よりも小さくした理由は、高温高湿環境下で白点を許容レベルに留めるためである。
実験3において、転写チリランクに着目してみると、許容レベルにする周波数帯域は実験1、2と同様に500〜1000[Hz]になっている。中でも500[Hz]では、転写チリランク=4という好成績になるが、凹部濃度ランクが許容レベルの4を下回ってしまう。凹部濃度再現性は転写チリよりも優先されるべき事項であるので、凹部濃度ランクを許容レベルの4にしつつ、転写チリランクを許容レベルの3にする周波数=1000[Hz]という条件が好適である。以下、ピークツウピーク電圧Vpp=5[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV]、周波数Vpp=1000[Hz]という条件を具備する2次転写バイアスを、高湿用バイアスという。
図10は、実施形態に係るプリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部200は,演算手段たるCPU200a(Central Processing Unit)、不揮発性メモリたるRAM200c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM200b(Read Only Memory)等を有している。制御部200は,装置全体の制御を司るものである。制御部200は、RAM200cやROM200b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各機器の駆動を制御する。また、2次転写電源82に対して2次転写バイアスを制御するための制御信号を出力する。2次転写電源82は、制御信号に応じた値の2次転写バイアスを出力する。
図11は、制御部200によって実施される制御の処理フローを示すフローチャートである。この処理フローにおいて、制御部200は、まず、プリントジョブ命令が発生するまで待機する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。プリントジョブ命令が発生すると(S1でY)、記録シートの種類について、和紙タイプであるか否かを判断する。この判断は、予めユーザーによる操作部に対する入力操作で記憶しておいた紙種情報、あるいは、和紙モードの設定の有無に基づいて判断される。紙種情報が和紙タイプの紙種を示す情報であるか、あるいは、和紙モードが設定されている場合に、和紙タイプの紙種であると判断される。
紙種が和紙タイプでない場合には、記録シートが表面凹部を有していないため、凹部画像濃度不足は発生しない。そこで、紙種が和紙タイプでない場合には(S2でN)、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなる通常用バイアスを選択した後(S3)、記録シートを2次転写ニップに送り込んで2次転写を行う(S4)。
一方、紙種が和紙タイプである場合には(S2でY)、紙表面の凹部画像濃度不足を発生させるおそれがある。そこで、まず、温湿度センサ85による湿度検知結果に基づいて、中湿環境であるか否かを判断する(S5)。具体的には、湿度の検知結果が所定の範囲内にある場合に、中湿環境であると判断する。この場合(S5でY)、2次転写バイアスとして、中湿用バイアスを選択した後(S6)、2次転写処理を実行する(S4)。
また、中湿環境でない場合には(S5でN)、高湿環境であるか否かを判断する(S7)。具体的には、湿度の検知結果が所定の閾値を超えている場合に、高湿環境であると判断する。この場合(S7でY)、2次転写バイアスとして、高湿用バイアスを選択した後(S8)、2次転写処理を実行する(S4)。
また、高湿環境でない場合には(S7でN)、低湿環境であるので、2次転写バイアスとして低湿用バイアスを選択した後(S9)、2次転写処理を実行する(S4)。
なお、中湿環境であるか否か、高湿環境であるか否か、低湿環境であるか否かの判断に、湿度検知結果を用いる代わりに、温度検知結果を用いてもよい。また、湿度環境を判断する代わりに、抵抗測定ローラ対31による記録シートの抵抗検知結果を判断して、2次転写バイアスを選択してもよい。この場合、比較的低い抵抗値である場合には高湿用バイアスを選択させ、中程度の抵抗値である場合には中湿用バイアスを選択させ、比較的高い抵抗値である場合には低湿用バイアスを選択させるようにすればよい。電気抵抗については、次のように測定する。即ち、抵抗測定ローラ対31の一方のローラから記録シートを介して他方のローラに流れる電流量に基づいて、抵抗を演算するのである。
制御部200は、2次転写バイアスとして、中湿用バイアスを選択する場合、その2次転写バイアスに次のような条件を具備させる。即ち、単位時間あたりの平均電位Vaveと、重畳バイアスの最大値と最小値との中心値であるオフセット電圧Voffとを等しくし、且つ前記交流電圧のピークツウピーク電圧を前記中心値の絶対値の4倍よりも大きくするという条件である。
また、制御部200は、2次転写バイアスとして、重畳バイアスからなるものを選択する場合、その2次転写バイアスに次のような条件を具備させる。即ち、交流電圧の周波数f[Hz]と、2次転写ニップにおけるベルト表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、ベルト表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(2/d)×v」という関係を具備させる条件である。
また、制御部200は、2次転写バイアスとして、低湿用バイアスや乾燥用バイアスを選択する場合には、その2次転写転写バイアスに次のような条件を具備させる。即ち、単位時間あたりの平均電位Vaveを、重畳バイアスの最大値と最小値との中心値であるオフセット電圧Voffよりもトナー転写極性側にシフトさせた値にするという条件である。本例では、トナー転写極性側はプラス極性側である。このようなバイアスとしては、図12〜図18に示される波形のものを例示することができる。
何れの波形も、0[V]を境にして、トナー転写極性側とは反対極性であるプラス極性になっている時間の1周期に対する比が50[%]よりも低くなっている。このような波形では、比が50[%]である波形に比べて、送り時間が長くなる。送り時間は、1周期内においてトナー転写極性になっている時間であり、1周期から戻し時間を減じた値である。また、戻し時間は、1周期内において、反対極性(本例ではプラス極性)になっている時間である。送り時間内には、上述した送りピーク値Vt(図6参照)が発生する。この送りピーク値Vtは、1周期内において0Vとの電位差が最大になる値であり、このときに、放電による白点が発生し易い。送りピーク値Vtを小さくするほど、白点の発生を抑えることが可能になる。上記比を50[%]よりも高くして送り時間を長くすると、より低い送りピーク値Vtで良好な凹部濃度再現性を実現できることから、白点の発生をより抑えることが可能になる。
[第4プリントテスト]
本発明者らは、図19に示した特殊波形の2次転写バイアスを採用し、且つ次の表8に示される条件で、第4プリントテストを実施した。なお、表8に特に示されていない条件については、第3プリントテストと同じにした。先に説明した第3プリントテストの実験1では、表6に示されるように、温度10[℃]、湿度15[%]の環境において、ピークツウピーク電圧Vpp=10[kV]、オフセット電圧Voff=−2[kV]という条件の2次転写バイアスを使用しているので、その戻しピーク値Vrは3[kV]であり、送りピーク値Vtは−7[kV]である。これに対し、第4プリントテストにおける実験4では、表8に示されるように、温度10[℃]、湿度15[%]の環境において、ピークツウピーク電圧Vpp=12[kV]、オフセット電圧Voff=0[kV]という条件の2次転写バイアスを使用しているので、その戻しピーク値Vrは6[kV]であり、送りピーク値Vtは−6[kV]である。図19に示される特殊波形の2次転写バイアスを採用したことで、正弦波の2次転写バイアスを採用する場合に比べて、戻しピーク値Vrを3[kV]大きくするとともに、送りピーク値Vtを絶対値で1[kV]小さくすることができている。戻しピーク値Vrを大きくしたことで、2次転写ニップ内でシート表面の凹部に進入したトナー粒子をより強い力でベルト表面上のトナー層に戻すことで、トナー層からのトナー粒子の離脱をより活発に促して、シート表面の凹部の画像濃度をより濃くすることができた。また、送りピーク値Vtを小さくしたことで、白点の発生をより抑えることができた。
また、第3プリントテストの実験2では、表6に示されるように、温度23[℃]、湿度50[%]の環境において、ピークツウピーク電圧Vpp=7[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV]という条件の2次転写バイアスを使用しているので、その戻しピーク値Vrは2.5[kV]であり、送りピーク値Vtは−4.5[kV]である。これに対し、第4プリントテストにおける実験5では、表8に示されるように、温度23[℃]、湿度50[%]の環境において、ピークツウピーク電圧Vpp=8[kV]、オフセット電圧Voff=0[kV]という条件の2次転写バイアスを使用しているので、その戻しピーク値Vrは4[kV]であり、送りピーク値Vtは−4[kV]である。図19に示される特殊波形の2次転写バイアスを採用したことで、正弦波の2次転写バイアスを採用する場合に比べて、戻しピーク値Vrを1.5[kV]大きくするとともに、送りピーク値Vtを0.5[kV]小さくすることができている。戻しピーク値Vrを大きくしたことで、2次転写ニップ内でシート表面の凹部に進入したトナー粒子をより強い力でベルト表面上のトナー層に戻すことで、トナー層からのトナー粒子の離脱をより活発に促して、シート表面の凹部の画像濃度をより濃くすることができた。また、送りピーク値Vtを小さくしたことで、白点の発生をより抑えることができた。
また、第3プリントテストの実験3では、表6に示されるように、温度27[℃]、湿度80[%]の環境において、ピークツウピーク電圧Vpp=5[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV]という条件の2次転写バイアスを使用しているので、その戻しピーク値Vrは1.5[kV]であり、送りピーク値Vtは−3.5[kV]である。これに対し、第4プリントテストにおける実験6では、表8に示されるように、温度27[℃]、湿度80[%]の環境において、ピークツウピーク電圧Vpp=6[kV]、オフセット電圧Voff=0[kV]という条件の2次転写バイアスを使用しているので、その戻しピーク値Vrは3[kV]であり、送りピーク値Vtは−3[kV]である。図19に示される特殊波形の2次転写バイアスを採用したことで、正弦波の2次転写バイアスを採用する場合に比べて、戻しピーク値Vrを1.5[kV]大きくするとともに、送りピーク値Vtを0.5[kV]小さくすることができている。戻しピーク値Vrを大きくしたことで、2次転写ニップ内でシート表面の凹部に進入したトナー粒子をより強い力でベルト表面上のトナー層に戻すことで、トナー層からのトナー粒子の離脱をより活発に促して、シート表面の凹部の画像濃度をより濃くすることができた。また、送りピーク値Vtを小さくしたことで、白点の発生をより抑えることができた。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、トナー像を担持する像担持体(例えば中間転写ベルト21)と、像担持体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えば2次転写ローラ26)と、像担持体とニップ形成部材との間に転写電界を形成するための転写バイアスとして交流電圧に直流電圧を重畳した重畳バイアスからなるものを出力する電源(例えば2次転写電源)とを備え、像担持体上のトナー像を転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写する画像形成装置において、温度又は湿度を検知する環境検知手段(例えば温湿度センサ85)、あるいは、トナー像を転写する前の記録シートの電気抵抗を検知する抵抗検知手段(例えば抵抗測定ローラ対31)を設けるとともに、環境検知手段によって比較的高湿又は高温が検知された場合における交流電圧の周波数を、比較的高湿又は高温が検知されない場合における周波数よりも高くするか、あるいは、抵抗検知手段によって比較的低抵抗が検知された場合における周波数を、比較的低抵抗が検知されない場合における周波数よりも高くする処理をする制御手段を設けたことを特徴とするものである。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、環境検知手段によって比較的高湿又は高温が検知された場合における交流電圧のピークツウピーク電圧を、比較的高湿又は高温が検知されない場合におけるピークツウピーク電圧よりも低くするか、あるいは、抵抗検知手段によって比較的低抵抗が検知された場合におけるピークツウピーク電圧を、比較的低抵抗が検知されない場合におけるピークツウピーク電圧よりも低くする処理を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、環境変動にかかわらず、白点を低減する適切な値にピークツウピーク電圧を制御することができる。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、、転写バイアスとして、単位時間あたりの平均電位を、前記重畳バイアスの最大値と最小値との中心値よりもトナー転写極性側にシフトさせた値にするものを電源から出力させる制御を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、平均電位を中心値と同じにする場合に比べて、交流電圧1周期内におけるトナー送り時間を長くして送りピーク値Vtをより低くすることが可能になるので、白点の発生をより抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、転写バイアスとして、交流電圧の1周期にて、トナー転写極性とは反対の極性になる時間の1周期に対する比を50[%]よりも低くしたものを電源から出力させる処理を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においては、平均電位を前記中心値よりもトナー転写極性側にシフトさせた値にするという条件を容易に具備することができる。
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかにおいて、転写バイアスとして、単位時間あたりの平均電位と、前記重畳バイアスの最大値と最小値との中心値とを等しくし、且つ前記交流電圧のピークツウピーク電圧を前記中心値の絶対値の4倍よりも大きくしたものを電源から出力させる制御を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、優れた凹部濃度再現性、凸部濃度再現性、及び白点抑制性を実現することができる。
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかにおいて転写バイアスとして、交流電圧の周波数f[Hz]と、転写ニップにおける像担持体の表面移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、像担持体の表面移動速度v[mm/s]とについて「f>(2/d)×v」という関係を具備するものを電源から出力させる制御を実施するように、制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、トナー像を転写ニップに通す際に、トナー像に対して交番電界を2回以上作用させることで、像担持体と記録シートの凹部との間を4回以上往復移動させて、像担持体側から凹部に転移するトナーの量を確実に増加させることができる。