以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを備えている。また、転写装置としての転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給紙カセット100、レジストローラ対101等も備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流成分に交流成分を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34などを有している。また、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成部材(転写部材)としてのニップ形成ローラ(2次転写ローラ)36、ベルトクリーニング装置37、濃度センサ38なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、引っ張り弾性率は、2.6[GPa]である。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、次に説明される抵抗Rは、約3E7Ωである。即ち、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗である。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括2次転写され、記録シートPの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4e7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流成分に交流成分を重畳せしめたものを出力することができる。そして、直流電圧については、定電流制御によって出力する。
ニップ形成ローラ36よりも紙搬送方向の下流側には、用紙分離補助のための分離装置150が配設されている。この分離装置150は、2次転写ニップから送り出されてくる記録シートPに対して鋸歯状の除電針の先端を接触させながら、交流成分に直流成分を重畳した分離バイアスを印加することで、ニップ形成ローラ36からの記録シートPの分離を促す。
2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、次のようにする。即ち、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。
これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、かつ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。また、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、直流成分に交流成分を重畳した重畳バイアスを他方のローラに印加するようにしてもよい。
印加する転写バイアスの交流成分、または交流電圧としては、後に図3を用いて説明するように、矩形波状の波形のものを採用しているが、正弦波状や三角波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録シートPとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、2次転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を測定する。
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
本実施形態のおける2次転写バイアスの波形について説明する。
図3は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す波形図である。同図において、2次転写バイアスは、上述したように、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加される。電圧出力手段たる2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段として機能している。また、上述したように、2次転写裏面ローラ33の芯金に2次転写バイアスが印加されると、第1部材たる2次転写裏面ローラ33の芯金と、第2部材たるニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、実施形態のように、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、次のようになる。即ち、ニップ形成ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本実施形態ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電移動させることになる。
ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの最大値と最小値の幅である。また、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの最小値と最大値の中心値である。図3に示す2次転写バイアスの波形は、直流成分であるオフセット電圧Voffを中心としてピークツウピークに向かって反転する交流成分を重畳した形になっている。実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラの芯金に印加し、且つニップ形成ローラの芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラの芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。
図3に示されるように、実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。2次転写裏面ローラ33に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。
2次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録シートP上に転移させる。
一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録シートPに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
図3において、戻り電位ピーク値Vrは、2次転写バイアスにおけるトナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。また、送り電位ピーク値Vtは、2次転写バイアスにおけるトナーと同極性であるマイナス側のピーク値を示している。「転写時間」は、2次転写バイアスの波形1周期において、オフセット電圧Voffからトナーが記録シートに転写される方向(以下、「転写方向」という)側の時間を示している。「戻し時間」は、交流成分の1周期において、2次転写バイアスがオフセット電圧Voffよりもトナーを中間転写ベルト31(図1参照)側に戻す方向(以下、「戻し方向」という)側の値になる時間を示している。
トナーが転写方向に押し出される効果を高めるには、トナーの転写のために必要な電界を強くする必要がある。トナーの転写のために必要な電界を強くするには、2次転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向に大きくなるようにすればよい。時間平均値とは、電圧の時間平均値であり、これは電圧波形の1周期にわたる積分値を、1周期の長さで割った値である。2次転写バイアスの波形において、オフセット電圧値Voffを挟んで転写方向側の面積よりも、戻し方向側の面積のほうが小さい波形になるようにすれば、2次転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向に大きくなるようにすることができる。
図4は、プリンタにおける電気回路の一部を示すブロック図である。
制御手段である制御部200は、演算手段であるCPU200a、不揮発性メモリであるRAM200c、一時記憶手段であるROM200bなどから構成される。装置全体の制御を行う制御部200には、様々な機器やセンサ類が接続されているが、図4においては、簡単のため、主な機器やセンサ類のみ示している。
制御部200では、RAM200cやROM200b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各種の機器の駆動を制御したり、各種のデータ処理を行ったりする。データ処理の1つとして、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像データに基づいて、各色トナー像の画像面積率を演算し、これらの画像面積率の和として、中間転写ベルト31における2次転写ニップに進入する直前の領域の画像面積率を演算している。
制御部200では、この画像面積率の演算結果からデューティ比を演算し、さらにこの演算結果に基づいて、2次転写バイアスが所望の波形になるように2次転写電源39をフィードフォワード制御によって制御している。なお、演算の際に用いられる、画像面積率と2次転写バイアスの交流成分のデューティ比との関係については、後で詳説する。
直流成分に交流成分を重畳した2次転写バイアスによって転写を行う場合は、交流成分による周期的な画像ムラを発生させないように配慮する必要がある。画像ムラに対し交流成分の周波数がどのように影響しているかを確認するために、本発明者らが行った「第1転写実験」について、以下で説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、種々のプリントテストを実施した。プリントテストでは、2次転写バイアスの交流成分について、Voff=−0.8[kV]、Vpp=5.0[kV]に設定した。また、2次転写バイアスの交流成分の周波数f[Hz]や、プロセス線速vについては、適宜変更した。
表1は、「第1転写実験」の評価条件と結果を示したものである。
プロセス線速が282[mm/s]で、2次転写バイアスの交流成分を50〜700[Hz]の範囲で振った各条件について、普通紙からなる記録シートP(紙表面の凹凸が殆どない)にテスト用の黒ベタ画像を出力し、出力された画像について、それぞれ目視により2段階で評価を行った。具体的には、2次転写バイアスの交流成分のの周波数に同期する濃度ムラ(ピッチムラ)が視認されない場合を○、視認される場合を×として評価した。
表1に示されるように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、2次転写バイアスの交流成分の周波数fを400[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避できることが分かった。
ここで、画像面積率の定義について説明する。
中間転写ベルト31の表面は、副走査方向(感光体やベルトの表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、50画素分ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、その区分けされた各区画(以下、「50ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に、画素の集合からなる画素ラインが、50ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する画像部(重ね合わせトナー像)の画素数の割合が画像面積率として求められる。50個の画素ラインそれぞれの画像面積率について平均した値が、「50ライン区画」における画像面積率となる。なお、各区画は50画素分ずつに区分けするようにしたが、これに限らず、もっと細かくしても、粗くしてもよい。
図5(a)は、A3サイズの記録シートPと、これの上に形成されたトナー像の第1例とを示す模式図である。2次転写ニップにおいて、記録シートPは、図中の矢印Aの方向に搬送される。第1実施形態に係るプリンタにおいて、中間転写ベルト31の幅方向のサイズは、A3サイズの記録シートPの短手方向サイズ(297mm)よりも少し大きい。2次転写ニップは、中間転写ベルト31と、ニップ形成ローラ36とが当接している領域であり、ニップ形成ローラ36のローラ部の長さは、中間転写ベルト31の幅よりも大きくなっている。よって、2次転写ニップのベルト幅方向の長さは、中間転写ベルト31の幅と同じであり、これは上述したようにA3サイズの記録シートPの短手方向サイズよりも少し大きい。但し、第1実施形態に係るプリンタの制御部200は、便宜的に、2次転写ニップのベルト幅方向の長さを、A3サイズの記録シートPの短手方向サイズと同じであるとみなして、ベルト上の50ライン区画の画像面積率を演算するようになっている。なお、2次転写ニップの、中間転写ベルト31の移動方向(副走査方向)の長さである、2次転写ニップ幅は3[mm]である。
図5(a)の記録シートPには、記録シート搬送方向に延在する短冊状のトナー像が形成されている。その記録シート搬送方向の長さは、220[mm]程度であり、図示のように、記録シートPの長手方向の長さ(420[mm])の概ね半分くらいの領域に渡って延在している。トナー像は、Y,M,C,Kの4色のうち、何れか1色のトナーだけからなるベタ画像である。記録シートPの短手方向におけるトナー像の長さは29.7[mm]であり、これは2次転写ニップのベルト幅方向の長さ(便宜上、297mmとみなしている)の1/10の値である。よって、記録シート搬送方向において、このトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は10[%]である。
図5(b)は、A3サイズの記録シートPと、これの上に形成されたトナー像の第2例とを示す模式図である。同図の記録シートPには、記録シート搬送方向に延在する短冊状のトナー像が、搬送方向と直交する方向に所定の距離をおいて2つ形成されている。それらトナー像の記録シート搬送方向の長さは、それぞれ220[mm]程度であり、図示のように、互いに記録シートPの長手方向の同じ領域内に延在している。2つのトナー像は、互いに異なる1色のトナーだけからなるベタ画像である。また、それらトナー像の短手方向の長さはそれぞれ29.7[mm]である。よって、記録シート搬送方向において、それらトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は20[%]である。
なお、本プリンタにおいて、50ライン区画の画像面積率は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に算出したものの合計として求められる。よって、例えば、同図の2つのトナー像が、図示のように互いに独立しているものではなく、完全に重ね合わされた2色重ね合わせトナー像であったとしても、その2色重ね合わせトナー像についての50ライン区画の画像面積率は、10[%]ではなく、20[%]となる。
単位面積あたりのトナーの付着量が少ないものなど、画像面積率の低い画像の形成において、転写ニップ内をトナーが往復する回数を増やしても、記録シートの表面の凹部の画像濃度があまり向上しないこと確認するため、本発明者らが行った実験について説明する。
トナー像の単位面積あたりのトナー付着量と、転写ニップ内で往復移動するトナー粒子の数との関係について調べるため、特殊な実験装置を作成した。
図6は、その実験装置を示す概略構成図である。この実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成された酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板210の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録シート214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流成分及び交流成分からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録シート214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させ、記録シート214とトナー層216との間に一定の空隙を設けるまで金属板215を接近させる。空隙幅を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。 観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録シート214を透明基板210から離間させる。 すると、トナー層216の一部が記録シート214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、透明基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。透明基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明基板210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
透明基板210上におけるトナーの挙動を、次のようにして撮影した。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録シート214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影した。
現像直後のトナー層216を構成しているトナーや、往復移動している最中のトナーの重さを測定することは困難であるため、往復移動している最中のトナーの割合を調べる指標として、観察領域内における透明電極212上のトナーの被覆平面積を採用した。まず、観察領域の面積を領域面積A0とし、透明電極212上に現像された直後のトナー層216の領域面積A0内におけるトナーの被覆面積を初期被覆面積Aiとして測定した。
初期被覆面積Aiを測定したら、次に、金属板215に転写バイアスを印加してトナー層216の一部を記録シート214上に転写した。なお、転写バイアスとしては、周波数f=500[Hz]、Vpp=1.2[kV]、Voff=0[V]のものを採用した。転写後、透明電極212上に残ったトナーによる領域面積A0における被覆面積を残留被覆面積Arとして測定した。その後、次に掲げる式に基づいて、現像直後のトナー層の初期被覆率θi[%]と、転写ニップ内で往復移動しているトナーの割合である活動トナー率Rm[%]とを算出した。
θi=(Ai/A0)×100
Rm=[(Ai−Ar)/Ai]×100
現像バイアスの調整によってトナー付着量を互いに異ならせた複数のトナー層216についてそれぞれ、このようにして活動トナー率Rmを調べた。この結果を次の表2に示す。
表2に示した評価結果から、現像直後のトナー層の初期被覆率θiが低いと、トナー粒子の往復回数を5回から15回に増やしても、活動トナー率Rmはあまり増加していないことが分かった。この理由については以下のように考えられる。
転写ニップ内で往復運動していないトナー粒子(非活動トナー粒子)は付着力が強い。非活動トナー粒子を往復運動させるには、初めに往復運動している活動トナー粒子を非活動トナー粒子に衝突させるなどして、非活動トナー粒子に何らかのエネルギーを与える必要がある。しかし、現像直後のトナー層の初期被覆率θiが低いと、活動トナー粒子の往復運動中に活動トナー粒子同士の衝突が起きにくいので、活動トナー粒子が非活動トナー粒子に衝突するなどの、トナー粒子間での相互作用も起きにくい。このため、非活動トナーは付着した状態のままになっている。よって、表2に示した評価結果のように、現像直後のトナー層の初期被覆率θiが低い場合には、活動トナー粒子の往復回数を増やしても、活動トナー率Rmがあまり増加しないことになる。
単位面積あたりのトナーの付着量が少ないものなど、画像面積率の低い画像の形成において、2次転写バイアスとして交番電圧を用い、転写ニップ内におけるトナーの往復回数を増やすようにしても、活動トナー率Rmをあまり増加させることができないので、記録シートの表面の凹部の画像濃度を向上させることができないと考えられる。
画像面積率と2次転写バイアスの交流成分のデューティ比との関係について、以下で詳説する。
図3のような方形波の場合、「デューティ比」は、パルス幅をパルス周期で割ったもの、つまり、「1周期」に対する「戻し時間」の割合である。図3に示す波形では、交流波形全体の面積(オフセット電圧値Voffを挟んで、転写方向側の面積と、戻し方向側の面積との和)に占める、オフセット電圧Voffを挟んで戻し方向側の面積の割合が「デューティ比」に等しくなっている。したがって、2次転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方法に大きくなるようにするためには、デューティ比が50[%]よりも低くなるようにすればよい。
本発明者らは、ベタ画像、ハーフトーン画像と、画像面積率が異なる場合において、2次転写バイアスの交流成分のデューティ比を50%よりも下げたときの、記録シートの表面の凹部における画像濃度への影響を調べるために、「第2転写実験」を実施した。本実験はプリンタ試験機によって行い、2次転写バイアス電源39によって2次転写裏面ローラ33の芯金に印加される2次転写バイアスには、直流成分の電圧Voffが−1.2[kV]、交流成分の周波数fが500[Hz]、ピークツウピーク電圧Vppが7[kV]で、波形は矩形波のものを用いた。また、記録シートとして、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名)260kgを用いた。
表3は、「第2転写実験」の評価条件と結果を示したものである。
2次転写バイアスの交流成分のデューティ比が50[%]、30[%]、10[%]のそれぞれの場合において、K色の全面ベタ画像(画像面積率100[%])、K色の1by1の全面ハーフトーン画像(画像面積率25[%])、幅0.3mmのライン画像(画像面積率1[%])の各画像を、それぞれ記録シートに形成させたものを評価した。評価結果は、記録シート上の凹部の画像濃度の優劣(以下、「凹部濃度ランク」という)を、1.0〜5.0(0.5刻み)の10段階(数値が大きいほど画質が良い)で示した。
表3に示したように、全ベタ画像の場合は、デューティ比が50[%]のときに凹部濃度ランクが最も高くなっている。一方、ハーフトーン画像の場合は、画像面積率が40[%]、10[%]のいずれにおいても、全ベタ画像の場合に対し、デューティ比が50[%]のときに凹部濃度ランクは低くなっている。ハーフトーン画像の場合は、デューティ比を30[%]、10[%]と、50[%]よりも下げていくにしたがって、凹部濃度ランクは改善していくことが分かった。
表3の結果より、本実施形態のプリンタでは、図7に示すように、画像面積率が100[%]以下では、画像面積率が低くなるにしたがって、デューティ比が下がるように切り替えをする。図8は、2次転写バイアスのオフセット電圧Voffを−1.2KV、ピークツウピーク電圧Vppを7KVとして、図7に示すように画像面積率に応じてデューティ比を切り替えたときの、画像面積率と2次転写バイアスの時間平均値Vaveとの関係を示したものである。画像面積率が100[%]以下では、画像面積率が低くなるにしたがって、2次転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向に大きくなるようになっている。
デューティ比を50[%]よりも下げ、2次転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向に大きくなるようにすると、トナーの転写のために必要な電界を強くすることができる。よって、画像面積率の低い画像の形成では、デューティ比を50[%]よりも下げることでトナーの転写のために必要な電界を強くすることが、記録シートの表面の凹部の画像濃度を向上するために有効である。
また、画像面積率に応じて2次転写バイアスの交流成分のデューティ比を切り替えるだけでなく、画像面積率に応じて、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧Vppや、オフセット電圧Voffを切り替えるようにしても良い。一般的に、トナー付着量が多い画像ほど、ピークツウピーク電圧Vppやオフセット電圧Voffの絶対値|Voff|を大きくする必要がある。このため、画像面積率が高い場合には、ピークツウピーク電圧Vppや|Voff|が大きくなるようにする。また、上述したように、ライン画像など画像面積率が低い場合では、記録シートの凹部におけるトナーの転写性が悪くなるので、この場合にもピークツウピーク電圧Vppを大きくして、トナーの転写のために必要な電界を強くし、記録シートの表面の凹部におけるトナーの転写性を確保する。
例えば、図9(a)では、ある画像面積率(図9(a)では100[%])以下のときは画像面積率が低くなるほどピークツウピーク電圧Vppが大きくなるように設定し、ある画像面積率(図9(a)では100[%])以上では、画像面積率が大きくなるほどピークツウピーク電圧Vppが大きくなるように設定している。これにより、ハーフトーン画像でもベタ画像でも、記録シートの凹部における画像濃度を確保することができる。なお、図9(a)では、画像面積率が100[%]以下の領域において、|Voff|を一定にし、ピークツウピーク電圧Vppのみ切り替えるようにしているが、|Voff|について切り替えるようにしてもよい。
図9(b)は、図9(a)に示したように2次転写バイアスの直流成分の電圧Voff、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧Vppを切り替えたときの、画像面積率と、オフセット電圧Voffに対するピークツウピーク電圧Vppの比率との関係を示したグラフである。ある画像面積率(図9(b)では100[%])以下のときは画像面積率が低くなるほどVpp/|Voff|の値が大きくなるようにし、ある画像面積率(図9(b)では100[%])以上では、画像面積率が大きくなるほどVpp/|Voff|の値が大きくなるようにしている。これにより、ハーフトーン画像でもベタ画像でも、記録シートの凹部における画像濃度を確保することができる。
[変形例]
次に、本実施形態における2次転写バイアスの波形の変形例について説明する。
本実施形態における2次転写バイアスの波形は、図3に示した矩形波に限るものではなく、戻し時間が転写時間よりも短いもの、つまりデューティ比が50%以下になるものであれば、どのような波形であってもよい。図10〜15は、本実施形態における2次転写バイアスの波形の変形例を示したものである。
図10、10は台形波によるもの、図12〜13は台形波と三角波を組み合わせたもの、図15は、図13の波形を丸くしたものである。デューティ比は、図10では40[%]、図11では45[%]、図12では32[%]、図13では16[%]、図14では8[%]、図15では16[%]と、いずれも50[%]以下になるようにしている。
以上により説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記像担持体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材と、前記像担持体上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写するために、直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを出力する転写バイアス出力手段とを備えた画像形成装置において、画像面積率に応じて、転写バイアスの交流成分の最小値と最大値との中心値を挟んで、トナーを前記像担持体側に戻す方向側の交流波形の面積の、交流波形全体の面積に占める割合の切り替えを行う制御部を有し、前記制御部において、転写バイアスの交流成分の最小値と最大値との中心値を挟んで、トナーを前記像担持体側に戻す方向側の交流波形の面積の、交流波形全体の面積に占める割合が、画像面積率が低くなるほど小さくなるように、転写バイアスの波形を制御した。
転写バイアスの交流成分の最小値と最大値との中心値を挟んで、トナーを前記像担持体側に戻す方向側の交流波形の面積の、交流波形全体の面積に占める割合を小さくすると、転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向に大きくなり、トナーの転写のために必要な電界を強くすることができる。画像面積率が低くなるにしたがって、転写バイアスの交流成分の最小値と最大値との中心値を挟んで、トナーを前記像担持体側に戻す方向側の交流波形の面積の、交流波形全体の面積に占める割合が小さくなるようにすることで、記録シートの表面の凹部にトナーの転写がしにくい画像面積率の低い画像の形成においても、記録シートの表面の凹部上に十分なトナー濃度を確保することができる。
(態様B)
態様Aにおいて、画像面積率に応じて、前記ニップ形成部材に印加する前記転写バイアスにおける交流成分のピークツウピーク電圧Vpp、または、前記ニップ形成部材に印加する前記転写バイアスにおける交流成分のオフセット電圧Voffの切り替えを行う制御部を有するようにした。
一般的にトナー付着量が多い画像ほど、VppやVoffは大きくする必要があるため、画像面積率が高い場合はVppやVoffが大きくする。また、ライン画像など画像面積率が非常に低い場合には、記録シートの凹部におけるトナーの転写性が悪くなるので、Vppを大きくしトナーの往復運動のための転写電界を強くして、記録シートの凹部におけるトナーの転写性を確保する必要がある。画像面積率が低くなるにしたがって転写バイアスの時間平均値Vaveが転写方向に大きくなるように転写バイアスの波形を制御するとともに、画像面積率に応じて、VppやVoffの切り替えをすることにより、ハーフトーン画像でもベタ画像でも、記録シートの凹部におけるトナーの転写性をさらに良好にすることができる。
(態様C)
態様Bにおいて、画像面積率が、ベタ画像の画像面積率の値よりも低いある値以下の範囲にあるときに、画像面積率が低くなるほど、前記転写バイアスにおける交流成分のオフセット電圧Voffの絶対値に対する、前記転写バイアスにおける交流成分のピークツウピーク電圧Vppの比率が大きくなるように、ピークツウピーク電圧Vppとオフセット電圧Voffとの切り替えを行うようにした。
ライン画像など画像面積率が非常に低いときは、記録シートの凹部におけるトナーの転写性が悪くなるので、Voffの絶対値に対する、Vppの比率を大きくして、トナーを転写するために必要となる電界を強くする必要がある。これにより、記録シートの凹部におけるトナーの転写性を良好にすることができる。