JP6828491B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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本発明は、画像形成装置に関する。
画像形成装置には、直流成分である直流電圧と交流成分である交流電圧との重畳による転写バイアスを出力して像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに転写電流を流しながら、像担持体の表面上のトナー像を転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写するものがある。このように転写バイアスを用いてトナー像を記録シートに転写する場合、記録シートの凹凸度合や要求画像濃度によっては、トナー像の転写不良が発生することから、トナー像を形成するトナーに与える転写電流を制御するために、転写バイアスの出力を制御することが知られている。
例えば、特許文献1に記載の画像形成装置には、記録シート表面の凹部と凸部とでそれぞれ十分な画像濃度を得ながら、白点の発生を抑えられて良好な画像を得るために、転写バイアスが、トナー像を像担持体側から記録シート側に転写させる転写方向の電圧と、転写方向の電圧と逆極性の電圧とが交互に切り替わるものであり、交互に切り替わる電圧波形の1周期の中に占める、電圧の最大値と最小値の中心値Voffよりも戻し方向側の面積をA、電圧の最大値と最小値の中心値Voffよりも転写方向側の面積をBとしたとき、A/(A+B)×100[%]の値であるデューティ比を、使用する記録シートの凹凸が大きいほど小さくするように変更すべく転写電源からの転写バイアスの出力を制御することが記載されている。
本発明は、記録シート上でのトナー像の転写不良を防止しつつ記録シート上へ十分な量のトナーを転写することができる画像形成装置を提供することをその目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、像担持体との間に転写ニップを形成するニップ形成部材と、転写ニップの幅を変更するニップ幅変更装置と、像担持体上のトナー像を転写ニップで記録シートに転写するために交流成分を含む転写バイアスを出力する電源と、転写バイアスのデューティ比は、第一デューティ比であって、転写バイアスの周期をTとし、周期Tのなかで転写バイアスが転写バイアスの時間平均値よりもトナー像を像担持体から記録シートへ移動させる転写側にある時間をTtとしたとき、(T−Tt)/T×100[%]であり、転写ニップの幅が第一の幅である第一モードと、転写バイアスのデューティ比が第一デューティ比よりも低い第二デューティ比であって転写ニップの幅が第一の幅より広い第二の幅である第二モードと、を所定条件に応じて切り替える制御手段とを備えることを特徴としている。
本発明によれば、記録シート上でのトナー像の転写不良を防止しつつ記録シート上へ十分な量のトナーを転写することができる画像形成装置を提供することをその目的とする。
本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるプリンタを示す概略構成図。 図1のプリンタにおける転写電源の電気回路の要部を、二次転写裏面ローラと二次転写ニップ裏打ちローラなどともに示すブロック図。 プリンタにおける制御系の要部構成を模式的に記載したブロック図。 図1のプリンタの像担持体である中間転写ベルトの横断面を部分的に示す拡大断面図。 中間転写ベルトを部分的に拡大して示す拡大平面図。 重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形(逆ピーク側デューティ比=50%)の第一例を示すグラフ。 重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形(逆ピーク側デューティ比=50%)の第二例を示すグラフ。 図6に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティ比を説明するためのグラフ。 図7に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティ比を説明するためのグラフ。 逆ピーク側デューティ比を35[%]にした二次転写バイアスの波形の一例を示すグラフ。 逆ピーク側デューティ比が30[%]である低デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 逆ピーク側デューティ比が10[%]である低デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 一周期内で極性が反転し、且つ逆ピーク側デューティ比が80[%]である高デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 極性が一定であり、逆ピーク側デューティ比が80[%]であり、平均電位が−4[kV]であり、且つピークツウピーク電位Vppが12[kV]である高デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 極性が一定であり、逆ピーク側デューティ比が80[%]であり、平均電位が−4[kV]であり、且つピークツウピーク電位Vppが10[kV]である高デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 極性が一定であり、逆ピーク側デューティ比が80[%]であり、平均電位が−4[kV]であり、且つピークツウピーク電位Vppが8[kV]である高デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 極性が一定であり、逆ピーク側デューティ比が80[%]であり、平均電位が−4[kV]であり、且つピークツウピーク電位Vppが6[kV]である高デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフ。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態1の構成と高デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態1の構成と低デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態1の変形例の構成と高デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態1の変形例の構成と低デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態2の構成と高デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態2の構成と低デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態3の構成と高デューティ比モード時の状態を説明する図。 同プリンタが備えるニップ幅可変装置の実施形態3の構成と低デューティ比モード時の状態を説明する図。 記録シート選択部を備えた入力操作部を有する制御系の構成を説明するブロック図。 第一実施形態の変形例1に係るプリンタの給紙路を示す構成図。 第一実施形態の変形例2の構成を説明するブロック図。 第二実施形態の構成を説明するブロック図。 第四実施形態の構成を説明するブロック図。
以下、本発明に係る実施形態と変形例及び実施例について図面を用いて順次説明する。実施形態、変形例、実施例において、同一の機能や構成を有するものには同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。図面は一部構成の理解を助けるために、部分的に省略又は模式的に示す場合もある。複数の実施形態間において共通する内容については適宜省略、又は、同時に説明する場合もある。なお、発明を実施するための形態において、デューティ比は、Dutyと記載する場合もある。
転写ニップで記録シートに与えられる転写電流量を変更する手法としては、転写ニップ幅を変更する以外に、記録シートの線速度を変更することでも対応できる。例えば、転写ニップ幅を広くすることは、線速度を落として記録シートのニップ通過時間を長くし、転写ニップ幅を狭くすることは、線速度を速くして記録シートのニップ通過時間を短くすることでも対応できる。しかし、線速度を落とす場合、画像品質は担保されるが、単位時間当たりのプリント枚数、すなわち生産性が低下する。生産性を考慮すると、本実施形態のように転写圧(転写ニップ幅)を変更する構成とすることが好ましい。ただし、記録シートの線速度は、一定の値に限定されるものではなく、所定の条件に応じて線速度を変更する構成としてもよい。
最初に画像形成装置の全体構成を説明し、次に転写電源による一般的な転写バイアスについて説明した後、各実施形態について順次説明する。
(全体構成)
図1は、本実施形態が適用された画像形成装置の一形態である電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)を示す概略構成図である。画像形成装置は、その適用分野がプリンタに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、複写機能及びFAX機能等を有する複合機などにも適用が可能である。
図1において、実施形態に係るプリンタは、イエロ(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。プリンタは、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給送カセット100、レジストローラ対101、制御手段として制御部200なども備えている。トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、プロセスカートリッジユニットを構成し、プリンタの筐体に着脱可能に支持されており、メンテナンス時の着脱やユニット交換を可能にしている。
四つのトナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、互いに異なる色のイエロ,マゼンタ,シアン,ブラックトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、電子写真プロセスでトナー像を形成するのに必要な構成を備えている。つまり、トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、潜像担持体たるドラム状の感光体2Y,2M,2C,2K、ドラムクリーニング装置3Y,3M,3C,3K、除電装置、帯電装置6Y,6M,6C,6K、現像装置8Y,8M,8C,8K等を備えている。
感光体2Y,2M,2C,2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成されたものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Y,6M,6C,6Kは、帯電工程において、帯電バイアスが印加される帯電部材である帯電ローラ7Y,7M,7C,7Kを感光体2Y,2M,2C,2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Y,7M,7C,7Kと感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Y,2M,2C,2Kの表面を一様帯電させている。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電させる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
光書込ユニット80は、書込み工程において、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいて光源の一例であるレーザーダイオードから発した色毎のレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kの表面を光走査する。一様帯電された感光体2Y,2M,2C,2Kの表面は、この光走査により各色に対応した静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット80は、光源から発した各色のレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して各感光体に照射するものである。光源としては、LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
これら各色の静電潜像は、イエロ(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の粉体であり現像剤であるトナーを用いる現像装置8Y,8M,8C,8Kによる現像工程で現像されて各色のトナー像になる。
このようにしてトナー像の現像工程が終了すると、プリンタは、現像工程の後に、感光体2Y,2M,2C,2Kに形成されたトナー像を、像担持体であり中間転写体でもある、後述する中間転写ベルト31上に一次転写する一次転写工程を行う。
ドラムクリーニング装置3Y,3M,3C,3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2Y,2M,2C,2K表面に付着している転写残トナーをクリーニングする周知のものである。除電装置は、ドラムクリーニング装置3Y,3M,3C,3Kによってクリーニングされた後の感光体2Y,2M,2C,2Kの残留電荷を除電する周知のものである。この除電により、感光体2Y,2M,2C,2K表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
トナー像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、複数の回転体となる駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。転写ユニット30は、ベルトクリーニング装置37、濃度センサ40等も有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。駆動ローラ32には、駆動源としての駆動モータMが接続されている。中間転写ベルト31は、駆動モータMによって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。駆動モータMは、制御部200に接続されている。制御部200は、駆動モータMを所定の速度で回転させることにより、中間転写ベルト31を所定の線速で回転駆動する。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、プリンタ内には、中間転写ベルト31のおもて面と感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するイエロ,マゼンタ,シアン,ブラック用の一次転写ニップがそれぞれ形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、一次転写電源によってそれぞれ一次転写バイアスが一次転写のタイミングで印加される。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のイエロ,マゼンタ,シアン,ブラックトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に一次転写用の転写電界が形成される。
例えばY用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、マゼンタ,シアン,ブラック用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のマゼンタ,シアン,ブラックトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この一次転写工程による重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の下方には、二次転写ニップ裏打ちローラ36、シート搬送ベルト(一般的には二次転写ベルトや転写部材などとも呼称される)41などを具備するシート搬送ユニット38が配設されている。ニップ形成部材である無端状のシート搬送ベルト41は、そのループ内側に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36、分離ローラ42などの複数の回転部材であるローラによって張架された状態で、二次転写ニップ裏打ちローラ36の回転駆動によって図中時計回り方向に回転せしめられるベルト部材である。中間転写ベルト31は、二次転写ニップ裏打ちローラ36により、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、二次転写裏面ローラ33に対する掛け回し領域に当接している。
転写ユニット30の二次転写裏面ローラ33と、シート搬送ユニット38の二次転写ニップ裏打ちローラ36とは、互いの間に中間転写ベルト31及びシート搬送ベルト41を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成部材たるシート搬送ベルト41のおもて面とが当接する転写ニップとしての二次転写ニップNが形成されている。
シート搬送ベルト41のループ内に配設された二次転写ニップ裏打ちローラ36は接地されているのに対し、中間転写ベルト31のループ内に配設された二次転写裏面ローラ33には、転写電源たる二次転写電源39によって転写バイアスとして二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ33と、二次転写ニップ裏打ちローラ36との間に転写電流が流れ、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側から二次転写ニップ裏打ちローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が二次転写ニップNで形成される。つまり、プリンタは、転写バイアスを転写電源から出力して、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに転写電流を流すように構成されている。
なお、ニップ形成部材として、シート搬送ベルト41の代わりに、二次転写ローラを用い、これを中間転写ベルト31に直接当接させてもよい。また、二次転写電源39によって二次転写ニップ裏打ちローラ36に二次転写バイアスを印加し、二次転写裏面ローラ33を接地してもよい。
転写ユニット30の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給送カセット100が配設されている。給送カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。レジストローラ対101は、給送カセット100から送り出された記録シートPを、二次転写ニップN内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動され、記録シートPを二次転写ニップNに向けて送り出す。
二次転写ニップNで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写バイアスによる二次転写電界(転写電流)やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括二次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして二次転写工程が行われ、表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPが二次転写ニップNを通過すると、中間転写ベルト31から曲率分離する。更に、転写後の記録シートPは、シート搬送ベルト41を掛け回している分離ローラ42の曲率によってシート搬送ベルト41から曲率分離する。
本実施形態において、ニップ形成部材としてシート搬送ベルト41を用い、中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップNを形成したが、このような構成に代えて、ニップ形成部材としてニップ形成ローラを用い、このローラ表面を中間転写ベルト31に当接させて二次転写ニップNを形成する構成であっても良い。
二次転写ニップNを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、クリーニング工程において、クリーニングバックアップローラ34と対向する部位で、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37でベルト表面からクリーニングされる。
プリンタは、トナー濃度検知手段として濃度センサ40を備えている。濃度センサ40は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されていて、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、所定の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を検知する。濃度センサ40の検知出力は、制御部200に送信され、ベタ画像かハーフトーン画像であるかを判定される。
二次転写ニップNよりも矢印Aで示すシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。定着装置90は、発熱源を内包する定着ローラ91と、これと所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とで定着ニップを形成していて、定着工程において、二次転写後の記録シートPを定着ニップに通過させることで、加熱と加圧の作用でトナー像中のトナーを軟化させてフルカラー画像を記録シートPに定着する。
定着ニップを通過した記録シートPは、定着装置90内から排出されて、定着後搬送路を経由した後、プリンタ外へと排出される。
実施形態に係るプリンタは、モノクロ画像を形成する場合に、転写ユニット30におけるイエロ,マゼンタ,シアン用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を支持している支持板の姿勢をソレノイド等の駆動によって変化させる。これにより、イエロ,マゼンタ,シアン用の一次転写ローラ35(Y,M,C)を、感光体2(Y,M,C)から遠ざけて、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2(Y,M,C)から離間させる。このようにして、中間転写ベルト31をブラック用の感光体2Kだけに当接させた状態で、4つのトナー像形成ユニット1(Y,M,C,K)のうち、ブラック用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像をブラック用の感光体2K上に形成する。なお、本発明は、カラー画像を形成する画像形成装置に限らず、モノクロ画像だけを単独で形成する画像形成装置にも適用が可能である。
(転写電源の構成)
図2は、二次転写電源39の電気回路の要部を、二次転写裏面ローラ33や二次転写ニップ裏打ちローラ36などとともに示すブロック図である。二次転写電源39は、直流電源110、着脱可能に構成された交流電源140を備えている。二次転写電源39は、制御手段としての制御部200によって制御される。この制御部200は、後述するニップ幅可変装置の作動も制御する。
直流電源110は、中間転写ベルト31の表面上のトナーに対して二次転写ニップN内でベルト側から記録シート側に向かう静電気力を付与するための直流成分である直流電圧を出力するための電源である。直流電源110は、直流出力制御部111、直流駆動部112、直流電圧用トランス113、直流出力検知部114、出力異常検知部115、電気接続部221などを有している。
交流電源140は、二次転写ニップN内に交番電界を形成するための交流成分である交流電圧を出力する電源である。交流電源140は、交流出力制御部141、交流駆動部142、交流電圧用トランス143、交流出力検知部144、除去部145、出力異常検知部146、電気接続部242と、電気接続部243などを有している。
制御部200は、直流電源110及び交流電源140を制御するものであり、CPU(CenAal Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを有する制御装置で構成されている。直流出力制御部111には、制御部200から、直流電圧の出力の大きさを制御するDC_PWM信号が入力される。直流出力制御部111には、更に、直流出力検知部114によって検知された直流電圧用トランス113の出力値も入力される。直流出力制御部111は、入力されたDC_PWM信号に含まれているデューティ比及び直流電圧用トランス113の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、直流電圧用トランス113の出力値をDC_PWM信号で指示された出力値にするように、直流駆動部112を介して直流電圧用トランス113の駆動を制御する。
直流駆動部112は、直流出力制御部111からの制御に従って、直流電圧用トランス113を駆動する。直流電圧用トランス113は、直流駆動部112によって駆動され、負極性の直流の高電圧出力を行う。なお、交流電源140が接続されていない場合には、電気接続部221と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に直流電圧を出力(印加)する。一方、交流電源140が接続されている場合、電気接続部221と電気接続部242とがハーネス302によって電気的に接続されるので、直流電圧用トランス113は、ハーネス302を介して交流電源140に直流電圧を出力する。
直流出力検知部114は、直流電圧用トランス113からの直流高電圧の出力値を検知し、直流出力制御部111に出力する。また、直流出力検知部114は、検知した出力値をFB_DC信号(フィードバック信号)として制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性が落ちないように、制御部200においてDC_PWM信号のデューティ比を制御させるためである。
本プリンタでは、二次転写電源39の本体に対して交流電源140が着脱可能であるため、交流電源140が接続されている場合と接続されていない場合とで、高電圧出力の出力経路のインピーダンスが変化する。このため、直流電源110が定電圧制御を行って直流電圧を出力した場合、交流電源140の有無に応じて出力経路中のインピーダンスが変化することにより分圧比が変化する。更に、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧が変化してしまうので、交流電源140の有無に応じて転写性が変化してしまう。
そこで、本プリンタでは、直流電源110が定電流制御を行って直流電圧を出力し、交流電源140の有無に応じて出力電圧を変化させるようになっている。これにより、出力経路中のインピーダンスが変化しても、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができ、交流電源140の有無によらず転写性を一定に保つことができる。更に、DC_PWM信号の値を変更せずに交流電源140を着脱することが可能になる。
このように本プリンタでは、直流電源110を定電流制御するようになっているが、次のような構成を採用してもよい。即ち、交流電源140の着脱時にDC_PWM信号の値を変更するなどして、二次転写裏面ローラ33に印加される高電圧を一定に保つことができれば、直流電源110を定電圧制御する構成を採用してもよい。
出力異常検知部115は、直流電源110の出力ライン上に配置されており、電線の地絡等によって出力異常が発生した際には、リークなどの出力異常を示すSC信号を制御部200に出力する。これにより、制御部200による直流電源110からの高圧出力を停止するための制御を実施することが可能になる。
交流出力制御部141には、制御部200から、交流電圧の出力の大きさを制御するAC_PWM信号や、交流出力検知部144によって検知された交流電圧用トランス143の出力値が入力される。交流出力制御部141は、入力されたAC_PWM信号のデューティ比、及び交流電圧用トランス143の出力値に基づいて、次のような制御を行う。即ち、交流電圧用トランス143の出力値がAC_PWM信号で指示された出力値となるように、交流駆動部142を介して交流電圧用トランス143の駆動を制御する。
交流駆動部142には、交流電圧の出力周波数を制御するAC_CLK信号が入力される。交流駆動部142は、交流出力制御部141からの制御及びAC_CLK信号に基づいて、交流電圧用トランス143を駆動する。交流駆動部142は、AC_CLK信号に基づいて交流電圧用トランス143を駆動することで、交流電圧用トランス143によって生成される出力波形を、AC_CLK信号で指示された任意の周波数に制御することができる。
交流電圧用トランス143は、交流駆動部142によって駆動されて交流電圧を生成し、生成した交流電圧と直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧とを重畳して重畳電圧を生成する。交流電源140が接続されている場合、即ち、電気接続部243と二次転写裏面ローラ33とがハーネス301で電気的に接続されている場合、交流電圧用トランス143は、生成した重畳電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に印加する。なお、交流電圧用トランス143は、交流電圧を生成しない場合には、直流電圧用トランス113から出力された直流の高電圧を、ハーネス301を介して二次転写裏面ローラ33に出力(印加)する。二次転写裏面ローラ33に出力された電圧(重畳電圧又は直流電圧)は、その後、二次転写ニップ裏打ちローラ36を介して直流電源110内に帰還する。
交流出力検知部144は、交流電圧用トランス143の交流電圧の出力値を検知して交流出力制御部141に出力する。また、検出した出力値をFB_AC信号(フィードバック信号)として制御部200に出力する。これは、環境や負荷によって転写性を低下させないように、制御部200においてAC_PWM信号のデューティ比を制御するためである。なお、交流電源140は、定電圧制御を行うものであるが、定電流制御を行うものを用いてもよい。また、交流電圧用トランス143(交流電源140)が生成する交流電圧の波形については、正弦波、矩形波、あるいは他の波形の何れであってもよいが、本プリンタでは、短パルス状矩形波を採用している。交流電圧の波形を短パルス状矩形波にすることで、より画像品質の向上を図ることが可能になるからである。
なお、二次転写電源39は、出力電流値を所定の目標電流値と一致させるように出力電圧値を調整する定電流制御方式で直流電圧を出力する。また、二次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク値Vpp(図6参照)を所定の目標値と一致させるように振幅を調整する定電圧制御方式で交流電圧を出力する。
特許文献1に記載のように、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いて二次転写ニップに交番電界を形成すれば、表面凹凸に富んだ記録シートの表面の凹部にトナーを良好に二次転写し得ることが既に知られている。その原理は、次のようなものであることも知られている。即ち、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いた場合、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト上のトナー像を構成するトナーのうち、ごく小数のトナー粒子だけしか、ベルト表面からシート表面凹部内に転移させることができない。重畳電圧からなる二次転写バイアスを用いても、二次転写ニップ内にトナー像が進入してから、二次転写バイアスの交流成分における始めの一周期が経過するまでの間は、同様にして、ごく少量のトナー粒子だけしかシート表面凹部内に転移させることができない。ところが、次の一周期が経過すると、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するトナー粒子の量が少し増加する。
具体的には、まず、次の一周期の前半において、シート表面凹部内のトナー粒子がベルト表面に戻る際に、それまでベルト表面に付着したままになっていたトナー粒子にぶつかってそのトナー粒子と他のトナー粒子やベルト表面との付着力を弱める。そして、後半において、前述のようにして付着力を弱めたトナー粒子が、ベルト表面に戻ったトナー粒子とともに、ベルト表面からシート表面凹部内に転移するのである。
更に次の一周期でも、同様の現象によってシート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が更に増加する。二次転写ニップ内において、トナー粒子がベルト表面とシート表面凹部内とを何度も往復移動する過程で、シート表面凹部内に転移するトナー粒子の数が徐々に増加していく。そして、最終的にトナー像が二次転写ニップを通過する頃には、シート表面凹部内に十分量のトナー粒子が転移しているのである。
制御部200は、プリンタ内の各種駆動体の駆動を制御したり、各種センサの検知結果を受信したり、演算処理を実行したりするものである。トナー像形成ユニット1Y、1M、1C、1K、光書込ユニット80、中間転写ベルト31の駆動モータMなどの駆動は、制御部200によって制御される。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図3は、プリンタの制御系の構成を模式的に示したブロック部であり、図2に記載した二次転写電源39を含めて機能的に記載したものである。
プリンタは制御部200を備えている。制御部200は、入力部に入力される各種情報に基づき、各種信号を出力して出力部につながる機器の作動を制御する。本実施形態では、先に説明した様に、二次転写電源39と、後述するニップ幅可変装置60と信号線を介して接続されていて、二次転写電源39から出力される転写バイアスの出力と、ニップ幅可変装置60の作動を制御するものである。
二次転写電源39は、中間転写ベルト31上のトナー像を記録シートPへ二次転写ニップNで転写するために、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を二次転写ニップNに印加する。二次転写電源39は、直流電源110で発生させた直流電圧に交流電源140で発生させた交流電圧を重畳した二次転写バイアスを出力可能であって、二次転写裏面ローラ33に印加する。
制御部200は、直流電源110と交流電源140とに信号線を介して接続されている。プリンタは、周波数設定部201、デューティ比設定部202、振幅設定部203、出力設定部204を備えている。周波数設定部201、デューティ比設定部202、振幅設定部203は交流電源140と信号線を介して接続されていて、出力設定部204は直流電源110と信号線を介して接続されている。
周波数設定部201は、交流電源140から出力される交流成分の周波数を変更するものである。デューティ比設定部202は、交流電圧の波形におけるトナーを記録シートPへ転写させる方向の電圧のデューティ比を0〜100%の範囲で変更して設定するものである。周波数設定部201とデューティ比設定部202は、図2に示したAC_CLKによって、周波数とてデューティ比とが制御される。
振幅設定部203は、交流電源140から出力される交流電圧の最大電圧差(ピークツーピーク値Vpp)を設定するものである。振幅設定部203は、図2に示したAC_PWM信号によって制御される。
出力設定部204は、直流電源110で発生させる直流電圧の定電圧を記録シートPの種類(平滑/凹凸)や画像濃度に応じて設定するものである。出力設定部204は、図2に示したDC_PWM信号によって制御される。
これら周波数設定部201、デューティ比設定部202、振幅設定部203、出力設定部204は、二次転写電源39が備える形態としてもよいし、二次転写電源39とは個別に設けて制御部200側が備える形態であっても良い。なお、制御部200による具体的な制御内容については、後段で説明する。
中間転写ベルトとしては、ポリイミドベルトなどの硬質素材のベルト基体だけからなるものを用いることが一般的であった。そして、特許文献1に記載の画像形成装置においては、一般ユーザー向けの画像形成速度で画像を形成するために、中間転写ベルトを280[mm/s]の線速度で駆動している。本発明者らは、硬質素材のベルト基体だけからなる中間転写ベルトと、重畳電圧からなる二次転写バイアスとの組み合わせを用いた構成により、事業ユーザー向けの超高速で画像を形成するために、次のような実験を実施した。即ち、中間転写ベルト31を630[mm/s]という極めて速い線速度で無端移動させながら、特殊東海製紙株式会社製の表面凹凸シート(商品名:レザック66)にテスト画像を二次転写する実験である。すると、二次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを採用しているにもかかわらず、表面凹凸シートの表面凹部にトナーを良好に二次転写することができず、表面凹凸にならった画像濃度ムラを引き起こしてしまった。つまり、硬質のベルト基体だけからなる中間転写ベルトでは、事業ユーザー向けの超高速で画像を形成しようとすると、重畳電圧からなる二次転写バイアスによって二次転写ニップに交番電界を形成しても、シート表面凹部でトナーの転写不良を引き起こしてしまう。
そこで、本発明者らは、中間転写ベルトとして弾性ベルトからなるものを搭載したプリンタ試験機を用意して、表面凹凸シート(レザック66)に画像を事業ユーザー向けの超高速(プロセス線速度=630mm/s)で二次転写する実験を行った。すると、表面凹凸シートの表面凹部にトナーを良好に二次転写して、シート表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を低減することができた。二次転写ニップN内で弾性ベルトからなる中間
転写ベルトの弾性層を柔軟に変化させることで、中間転写ベルト表面と表面凹凸シートの表面凹部との距離を低減したためだと考えられる。
したがって、中間転写ベルト31として弾性ベルトからなるものを用いるとより好ましい。本実施形態に係るプリンタにおいては弾性ベルトからなるものを用いている。
図4は、実施形態に係るプリンタに搭載された弾性ベルトからなる中間転写ベルト31の横断面を部分的に示す拡大断面図である。中間転写ベルト31は、ある程度の屈曲性を有し且つ剛性の高い材料からなる無端ベルト状の基層(硬質素材のベルト基体)31aと、これのおもて面上に積層された柔軟性に優れた弾性材料からなる弾性層31bとを具備している。弾性層31bは弾性表面層であって、粒子31cが分散せしめられていて、それらの粒子31cが自らの一部を弾性層31bの表面から突出させた状態で、図5に示されるように、ベルト面方向に密集して並んでいる。それら複数の粒子31cにより、複数の凸がベルト面に形成されている。即ち、中間転写ベルト31は、弾性層31bとして弾性表面層を有し、この弾性表面層は、その材料に分散した複数の粒子(微粒子)31cによる複数の微小突起を弾性表面層の表面(弾性層31bの表面)に設けられている。
基層31aの材料としては、樹脂中に、電気抵抗を調整するための充填材や添加材などからなる電気抵抗調整材を分散させたものを例示することができる。その樹脂としては、難燃性の観点からすると、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、EBE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の観点からすると、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。
樹脂中に分散せしめる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などを例示することができる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。分散性を向上させるために、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものを用いても良い。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラック等が挙げられる。また、イオン導電剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等でもよい。それらのイオン導電剤を二種類以上混合して使用してもよい。なお、本発明を適用可能な電気抵抗調整材は、これまで例示したものに限られるものではない。
基層31aの前駆体となる塗工液(硬化前の液体の樹脂中に電気抵抗調整材を分散せしめたもの)には、必要に応じて、分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などを添加してもよい。中間転写ベルト31として好適に装備されるシームレスベルトの基層31aに含有される電気抵抗調整材の添加量は、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]となる量とされる。
基層31aの厚みは、特に制限されるものではなく、状況に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。
中間転写ベルト31の弾性層31bは、上述したように、分散せしめられた複数の粒子31cによる複数の凸形状を表面に有している。弾性層31bを形成するための弾性材料としては、汎用の樹脂・エラストマー・ゴムなどを例示することができる。特に、柔軟性(弾性)に優れた弾性材料を用いることが好ましく、エラストマー材料やゴム材料が好適である。エラストマー材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系などを例示することができる。フッ素系共重合体系等の熱可塑性エラストマーなどでもよい。また、熱硬化性の樹脂としては、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系の樹脂等を例示することができる。また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を例示することができる。更には、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等を例示することもできる。これまで例示した材料の中から、所望の性能が得られる材料を適宜選択することが可能である。
弾性層31bを構成する弾性材料の中でも、耐オゾン性、柔軟性、粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性などの観点から、アクリルゴムが最も好ましい。アクリルゴムは一般的に市販されているものでよく、特定の製品に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系のものがゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性の点で優れているので、カルボキシル基架橋系のものを選択することが好ましい。カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いられる架橋剤としては、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などを例示することができる。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、上述した架橋剤の架橋反応を促進する狙いで、架橋促進剤を配合してもよい。架橋促進剤の種類は特に限定されるものではないが、前述した多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができるものであることが好ましい。
弾性層31bに用いるアクリルゴムには、電気抵抗調整材を添加することが好ましい。添加量については、弾性層31bの抵抗値を、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×106〜1×1012[Ω・cm]の範囲にするように、調整することが好ましい。弾性層31bの層厚は、200μm〜2mmが好ましく、400μm〜1000μmがより好ましい。
弾性層31bの弾性材料に分散せしめる粒子31cとしては、平均粒子径が100μm以下であり、真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶であり、且つ3%熱分解温度が200℃以上である樹脂粒子を用いる。粒子31cの樹脂材料に特に制限はないが、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴムなどを例示することができる。これらの樹脂材料からなる粒子の母体表面を異種材料で表面処理してもよい。ゴムからなる球状の母体粒子の表面に硬い樹脂をコートしてもよい。また、母体粒子として、中空のものや、多孔質のものを用いてもよい。なお、中間転写ベルト31として、弾性層31bに粒子31cを分散させていないものを用いることも可能である。
図5に示されるように、中間転写ベルト31の表面において、粒子31c同士の重なり合いは殆ど観測されない。粒子31cの弾性層31b表面における断面の径は、できるだけ均一であることが好ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5)μm以下の分布幅となることが好ましい。このような分布幅を実現するためには、粒径分布の狭い粒子粉末を用いることが好ましいが、特定の粒径の粒子31cを選択的に表面に局在させる方法を採用して弾性層31bを形成すれば、粒径分布の広い粒子粉末を使用してもよい。
記録シートPとして、和紙のような表面凹凸に富んだ種類のものを用いたとする。この場合に、記録シートPの表面における複数の凹部にそれぞれトナーを良好に二次転写して、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えるためには、弾性層31bをある程度の柔軟性(弾性)に優れたものを採用する必要がある。そして、そのような弾性層31bを採用すると、弾性層31bの単体だけでは、張架するとすぐに伸びてしまうことから、実使用に耐えられない。このため、弾性層31bよりも剛性のある基層31aを設け、その基層31aの剛性によってベルト全体の伸びを長期間に渡って抑えることが必須の条件になる。
以上のように、実施形態に係るプリンタでは、基層31aの上に弾性層31bを積層した弾性ベルトからなる中間転写ベルト31を用いる。これにより、ベルト線速(プロセス線速)=630[mm/s]という事業ユーザー向けの超高速で画像を形成しても、凹凸シートの表面凹部内へのトナーの転移を促進することができる。凹凸シートの表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えることができた。
図6は、二次転写電源39から出力される重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第一例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は正弦波になっている。オフセット電圧Voffは、重畳電圧からなる二次転写バイアスの直流成分(直流電圧)の値である。同図におけるオフセット電圧Voffは、その極性がマイナスになっている。二次転写バイアスの波形が図示のような正弦波である場合には、オフセット電圧Voffと、二次転写バイアスの一周期(T)あたりにおける平均電位である時間平均値Vaveとが同じ値になる。よって、同図において、転写バイアスの時間平均値Vaveはマイナス極性になっている。
実施形態のプリンタのように、二次転写裏面ローラ(図1の符号33)の芯金に二次転写バイアスを印加する構成では、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性と同じになったときに、二次転写ニップN内のトナーが転写方向に静電移動する。具体的には、中間転写ベルト31の表面側からニップ内の記録シート表面側に静電移動する。また、二次転写バイアスの極性がトナーの正規帯電極性とは逆極性になったときに、二次転写ニップ内のトナーが転写方向とは逆方向に静電移動する。具体的には、トナーが記録シート表面側から中間転写ベルト31の表面側に向けて静電移動する。時間平均値Vaveをトナーの正規帯電極性と同極であるマイナス極性にすることで、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側とシート表面側との間で往復移動させながら、相対的にはベルト表面側からシート表面側に向けて移動させる。これにより、中間転写ベルト31の表面上のトナー像を、記録シートPの表面上に二次転写することが可能になる。
図6において、転写ピーク値Vtは、二次転写バイアスの一周期T内で発生する二つのピーク値のうちの一方であり、二次転写ニップ内でトナーをベルト表面側からシート表面側に向けてより強く静電移動させる方のピーク値である。また、逆ピーク値Vrは、転写ピーク値Vtではない方のピーク値である。図6に示される二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrが転写ピーク値Vtとは逆極性(プラス極性)になっている。
転写ピーク値Vtは、時間平均値Vaveよりも転写側(マイナス極性側)にある。また、逆ピーク値Vrは、転写ピーク値Vtとは異なるピーク値であって、時間平均値Vaveからみて転写側とは逆側(+極性側)にある。
二次転写電源39から出力される二次転写バイアスの波形は、図6に示されるような正弦波に限られない。三角波や矩形波の二次転写バイアスを採用してもよい。図7は、重畳電圧からなる二次転写バイアスの波形の第二例を示すグラフである。同図に示される二次転写バイアスの波形は、矩形波である。図6に示される二次転写バイアスの正弦波や、図7に示される二次転写バイアスの矩形波は、何れも、後述する逆ピーク側デューティ比が50[%]である。このような特性を有する波形からなる二次転写バイアスでは、何れも、一周期(T)あたりにおける時間平均値Vaveがオフセット電圧Voffと同じ値になる。つまり、直流成分の値が時間平均値Vaveと同じになる。
図8は、図6に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティ比を説明するためのグラフである。同図において、中心電位Vcは、二次転写バイアスの交流成分(交流電圧)ピークツウピーク値Vppにおける中心の電位である。ピークツウピーク値Vppは、逆ピーク値Vrから転写ピーク値Vtまでの値である。
本実施形態において、重畳電圧からなる二次転写バイアスについて、一周期のうち、二次転写ニップ内において、中間転写ベルト31の表面上のトナーをベルト側からニップ内の記録シート表面側に向けて静電移動させることを主な目的とする時間を、転写側時間Ttと定義する。すなわち、二次転写バイアスの一周期Tのなかで、二次転写バイアスがその時間平均値Vave(=平均電位)よりもトナー像を中間転写ベルト31から記録シートへ移動させる転写側(本実施形態ではマイナス極性側)にある時間を転写側時間Ttと定義する。また、転写側時間Ttとは異なる時間(一周期内の残りの時間)を、逆転写側時間Trと定義する。すなわち、二次転写バイアスの一周期Tのなかで、二次転写バイアスがその時間平均値Vaveよりも逆転写側(転写側とは反対側。本実施形態ではプラス極性側)にある時間を逆転写側時間Trと定義する。図6、図7および図8に示されるように、逆転写側時間Trは、一周期のうち、時間平均値Vave(=平均電位。所定の基準値である。)を境にして、逆ピーク値Vrの側の値になっている時間である。また、一周期内における逆転写側時間Trの割合を重畳電圧からなる二次転写バイアスのデューティ比と定義する。すなわち、(T−Tt)/T×100[%]をデューティと定義する。
換言すると、デューティ比とは、転写バイアスの時間平均値Vaveよりもトナー像のトナーを記録シートPに対して転写する方向に印加されている時間をTr、その逆方向に印加されている時間をTtとした場合の、Tr/(Tr+Tt)×100[%]の値を示すものである。図6、図7および図8に示す波形の場合にはデューティ比は50[%]である。つまり、図示の波形における逆ピーク側デューティ比は50[%]である。
本実施形態では、このデューティ比が50[%]を超えているという特性を、高デューティ比と定義する。また、このデューティ比が50[%]未満であるという特性を、低デューティ比と定義する。
図8は、図6に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティ比を説明するためのグラフである。同図において、中心電位Vcは、二次転写バイアスの交流成分(交流電圧)ピークツウピーク値Vppにおける中心の電位である。ピークツウピーク値Vppは、逆ピーク値Vrから転写ピーク値Vtまでの値である。また、逆転写側時間Trは、交流成分の一周期(T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位Vcから逆ピーク値Vrに向けて立ち上がり始めた瞬間から、逆ピーク値Vrを経て中心電位Vcに戻るまでの時間である。
本実施形態において、デューティ比とは、転写バイアスの時間平均値Vaveよりもトナー像のトナーを記録シートPに対して転写する方向に印加されている時間をB、その逆方向に印加されている時間をAとした場合の、Tr/(Tr+Tt)×100[%]の値を示すものである。即ち、転写側時間Ttは、交流成分の一周期(T)内において、二次転写バイアスの値が中心電位Vcから転写ピーク値Vtに向けて立ち上がり始めた瞬間から、転写ピーク値Vtを経て中心電位Vcに戻るまでの時間である。また、逆ピーク側デューティ比は、周期T内で逆転写側時間Trが占める割合であり、図示の波形の場合には50[%]である。つまり、図示の波形における逆ピーク側デューティ比は50[%]である。
図9は、図7に示される二次転写バイアスにおける逆ピーク側デューティ比を説明するためのグラフである。図示の矩形波においても、一周期(T)内で逆転写側時間Trが占める割合としての逆ピーク側デューティ比は50[%]である。
逆ピーク側デューティ比=50[%]の二次転写バイアスを用いて、二次転写ニップN内でトナーを中間転写ベルト31の表面側から記録シート表面側に静電移動させるためには、転写ピーク値Vtの絶対値を、逆ピーク値Vrの絶対値よりも大きくする必要がある。そして、転写ピーク値Vtの絶対値が大きくなり過ぎると、二次転写ニップN内において、中間転写ベルト31表面と、記録シート(凹凸シート)Pとの間で放電を発生させてしまう。この放電は、トナー粒子を逆帯電させて、そのトナー粒子の二次転写を著しく阻害することから、画像中に多くの白点を発生させてしまい、画質を著しく損ねてしまう。よって、転写ピーク値Vtの絶対値をある程度の値に留める必要がある。
この一方で、逆ピーク値Vrの絶対値を小さくし過ぎると、記録シート(凹凸シート)Pの表面凹部に十分量のトナーを転写することができなくなる。具体的には、逆ピーク値Vrの絶対値を小さくし過ぎると、二次転写ニップN内でベルト表面から記録シート(凹凸シート)の表面凹部内に一旦転移させたトナー粒子を、ベルト表面に戻すことができなくなる。すると、中間転写ベルト表面上で他のトナー粒子やベルト表面に付着しているトナー粒子に対し、表面凹部内から戻したトナー粒子をぶつけてその付着力を弱めることができなくなる。単にトナー粒子を単純に振動させるだけで、その振動に伴って記録シート(凹凸シート)の表面凹部内に転移するトナー粒子の数を増加させることができないので、表面凹部内へのトナー転移量を不足させてしまうのである。
逆ピーク値Vrを大きくする方法の一つとして、交流成分のピークツウピーク値Vppを大きくすることが挙げられる。しかしながら、逆ピーク値Vrの不足を解消するためにピークツウピーク値Vppを大きくすると、同時に転写ピーク値Vtを大きくすることから、放電による白点を引き起こし易くなる。
逆ピーク値Vrを大きくする他の方法として、オフセット電圧Voffを小さくすることが挙げられる。しかしオフセット電圧Voffを小さくすると、それに伴って平均電位Vaveも小さくしてしまうことから、二次転写ニップN内でトナーをベルト表面側からシート表面側に良好に静電移動させることができずに、二次転写不良を引き起こすおそれがある。
(第一実施形態)
そこで、記録シートPとして凹凸シート(後述する平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シートである。)の表面凹部に十分量のトナーを転移させるためには、逆ピーク側デューティ比を50[%]以下にすることが望ましい。より望ましくは、50[%]未満にするのがよい。逆ピーク側デューティ比を50[%]よりも大きくすると、放電に起因する白点や、二次転写不良を発生させ易くなるからである。具体的には、逆ピーク側デューティ比を50[%]よりも大きくすると、その分だけ、平均電位(時間平均値)Vaveを逆ピーク側にシフトさせてその絶対値を小さくすることから、二次転写不良を引き起こし易くなる。そして、その二次転写不良の発生を回避するために、ピークツウピーク値Vppを大きくして平均電位Vaveの増大を図ると、それに伴って転写ピーク値Vtを大きくすることから、放電に起因する白点を発生させ易くなる。よって、逆ピーク側デューティ比を50[%]未満の値に設定することが望ましい。
図10は、逆ピーク側デューティ比を50[%]よりも小さな35[%]にした二次転写バイアスの波形の一例を示すグラフである。図10に示される二次転写バイアスの逆ピーク値Vrは、図7に示される二次転写バイアスの逆ピーク値Vrと同じである。また、図10に示される二次転写バイアスの転写ピーク値Vtは、図7に示される二次転写バイアスの転写ピーク値Vtと同じである。図10に示される二次転写バイアスと、図7に示される二次転写バイアスとで異なる点は、逆転写側時間Tr及び転写側時間Ttだけである。図7に示される二次転写バイアスでは、逆転写側時間Trと転写側時間Ttとが同じであるのに対し、図10に示される二次転写バイアスでは、逆転写側時間Trが転写側時間Ttよりも短くなっている。より詳しくは、図7に示される二次転写バイアスの逆転写側時間Trが周期Tの50[%]の長さであるのに対し、図10に示される二次転写バイアスの逆転写側時間Trは一周期(T)の35[%]である。つまり、図10に示される二次転写バイアスの逆ピーク側デューティ比は35[%]である。
なお、二次転写バイアスとしては、図10に示すような矩形波以外のものを用いることもできる。逆ピーク値Vrから転写ピーク値Vt、転写ピーク値Vtから逆ピーク値Vrへとそれぞれ電圧が移行するのに所定の時間を有するような台形形状の波形の二次転写バイアスを用いてもよい。また、波形の一部または全体が丸みを帯びたような二次転写バイアスを用いてもよい。以下で説明する二次転写バイアスについても、矩形波以外のものを用いてもよい。
図7に示される逆ピーク側デューティ比=50[%]の二次転写バイアスでは、上述したように、オフセット電圧Voffと平均電位Vaveとが同じ値になっている。これに対し、図10に示される逆ピーク側デューティ比35[%]の二次転写バイアスでは、平均電位Vaveがオフセット電圧Voffよりも大きくなっている。ピークツウピーク値Vppは、図7に示される二次転写バイアスと図10に示される二次転写バイアスとで同じである。即ち、逆ピーク側デューティ比を50[%]未満にすることで、逆ピーク側デューティ比50[%]にする場合に比べて、ピークツウピーク値Vpp、転写ピーク値Vt、及び逆ピーク値Vrを変化させることなく、平均電位Vaveを大きくすることが可能になる。よって、逆ピーク側デューティ比を50[%]以上にする場合に比べて、二次転写不良や白点の発生を抑えることができる。
そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、記録シート(凹凸シート)Pに対してトナー像を二次転写する場合には、二次転写バイアスとして、一周期(T)内で極性が反転し、且つ逆ピーク側デューティ比が50[%]未満であるものを用いるように構成している。このような構成では、逆ピーク側ディーティーが50[%]以上である二次転写バイアスを用いる構成に比べて、二次転写不良や、放電に起因する白点の発生を抑えることができる。以下、逆ピーク側デューティ比が50[%]未満であるという特性を低デューティ比(低デューティ比)という。これに対し、逆ピーク側デューティ比が50[%]を超えるという特性を高デューティ比(高デューティ比)いう。
なお、低デューティ比の二次転写バイアスでは、逆ピーク側デューティ比の値をかなり低く設定すると、逆ピーク値Vrの絶対値が転写ピーク値Vtの絶対値よりも大きくなる。例えば、図11は、逆ピーク側デューティ比が30[%]である低デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフである。また、図12は、逆ピーク側デューティ比が30[%]である低デューティ比の二次転写バイアスにおける波形の一例を示すグラフである。これらの二次転写バイアスにおいて、平均電位Vaveは互いに同じ−4[kV]であり、且つピークツウピーク値Vppは互いに同じ12[kV]である。そして、逆ピーク側デューティ比が30[%]である図11の二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrの絶対値(約4kV)が転写ピーク値Vtの絶対値(約8kV)よりも小さくなっている。これに対し、逆ピーク側デューティ比が10[%]である図12の二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrの絶対値(約7kV)が転写ピーク値Vtの絶対値(約5kV)よりも大きくなっている。
図11の二次転写バイアスでは、逆ピーク値Vrよりも転写ピーク値Vtの方が大きい(何れも絶対値)ので、二次転写バイアスの一周期(T)T内において、値を転写ピーク値Vtにしている転写側時間Ttのときに、二次転写ニップ内で放電を発生させて白点を引き起し易い。これに対し、図12の二次転写バイアスでは、転写ピーク値Vtよりも逆ピーク値の方が大きい(何れも絶対値)。よって、二次転写バイアスの一周期(T)内において、値を逆ピーク値Vrにしている逆転写側時間Trのときに二次転写ニップ内で放電を発生させて白点を引き起こし易い。
図11の二次転写バイアスにおける転写ピーク値Vtの絶対値(約8kV)と、図12の二次転写バイアスにおける逆ピーク値Vrの絶対値(約7kV)とを比較すると、後者の方が小さい。また、図12の二次転写バイアスにおける転写側時間Ttと、図12の二次転写バイアスにおける逆転写側時間Trとを比較すると、後者の方が短い。つまり、図12の二次転写バイアスの方が、図11の二次転写バイアスに比べて、白点を誘発する方のピーク値の絶対値が小さく、且つそのピーク値が持続する時間が短い。このため、図12の二次転写バイアスの方が、図11の二次転写バイアスに比べて、放電に起因する白点を引き起こし難い。よって、低デューティ比の二次転写バイアスを用いて凹凸シートにトナー画像を二次転写するときには、逆ピーク側デューティ比の値をかなり小さくすることが望ましい。
本発明者らの実験によれば、逆ピーク側デューティ比については、8[%]〜35[%]の範囲に設定するのが好ましく、8[%]〜17[%]の範囲に設定すると更によい結果(白点の発生を抑える)が得られた。但し、逆ピーク側デューティ比をかなり小さな値にすると、一周期(T)内における逆転写側時間Trの割合をかなり小さくしてしまう。すると、逆転写側時間Tr内で転写シートP(凹凸シート)の表面凹部内のトナー粒子をベルト表面に戻すことができなくなるおそれが生ずる。よって、この場合、交流成分の周波数を比較的低くして、一周期(T)を比較的長くすることで、十分な逆転写側時間Trを確保する必要がある。
次に、本発明者らは、低デューティ比の二次転写バイアスや、直流電圧だけからなる二次転写バイアスを用いる条件で、表面平滑性に優れたコート紙(平滑シート)からなる記録シートPに、濃度がベタ画像よりも薄い画像であるハーフトーンの画像を二次転写する実験を行った。すると、二次転写不良による著しい画像濃度不足をハーフトーン画像に引き起こしてしまった。
このような二次転写不良を引き起こしてしまう原因について鋭意研究を行ったところ、次のようなことが判明した。即ち、ハーフトーン画像は、画像部の全てがベタ画像のようにトナーによって覆われておらず、比較的少数のドット群を構成するトナー付着箇所と、トナーを全く付着させていない空白箇所とが画像部中に混在している。弾性層31bを設けた中間転写ベルト31を用い、且つ記録シートPとして表面平滑性に優れた平滑シートを用いると、二次転写ニップN内で弾性層31bをハーフトーン画像中の少数ドット群を構成している少数ドットトナー塊の形状にならわせて柔軟に変形させる。そして、この変形により、ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊の表面だけでなく、少数ドットトナー塊の側面までも弾性層31bで包み込んでしまう。すると、弾性層31bから少数ドットトナー塊の各トナー粒子に正規帯電極性とは逆極性の電荷を注入させて、トナーの帯電量(Q/M)を低下させたり、トナーを逆帯電させたりする。この結果、トナー像の二次転写不良を引き起こしていることがわかった。なお、記録シートPとして、凹凸シートを用いる場合には、弾性層31bをシート表面の凹凸に応じて不規則な形状に変形させることから、弾性層31bによって少数ドットトナー塊の側面を包んでしまうことが殆どなくなる。このため、記録シート(凹凸シート)Pの表面凸部上においても、二次転写不良を引き起こすことはすくない。
次に、本発明者らは、二次転写バイアスとして、低デューティ比のものや、直流電圧だけからなるものに代えて、図13に示される高デューティ比(逆ピーク側デューティ比=80%)のものを用いて、記録シートPである平滑シートに画像を二次転写する実験を行った。平滑シートとしては、王子製紙株式会社製のOKトップコート(128gsm)を用いた(いわゆるコート紙。平滑シートである。)。温度/相対湿度が27℃/80%の環境下、プロセス線速度=630[mm/s]の条件で、平滑シートにブラックハーフトーン画像(2by2)を二次転写したところ、二次転写不良を引き起こすことなく、平滑シートにブラックハーフトーン画像を良好に二次転写することができた。
高デューティ比の二次転写バイアスを用いることで、平滑シートに対するハーフトーン画像の二次転写性を向上させることができたのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、無端移動する中間転写ベルト31が二次転写ニップN内に進入すると、二次転写バイアスにより、二次転写ニップNに進入したベルト箇所に対する充電が始まる。そして、その充電量がある閾値を超えると、ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入が始まる。二次転写ニップN内に進入したベルト箇所に対する充電は、主に転写側時間Tt内で起こることから、この転写側時間Ttが長くなるほど、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量が増加する。高デューティ比の二次転写バイアスは、低デューティ比の二次転写バイアスに比べて、転写側時間Ttが短いことから、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を低減して、二次転写不良の発生を抑えることが可能になると考えられる。
本発明者らによって行われた別の実験により、次のようなことも判明した。即ち、図13のように、一周期(T)内で極性を反転させる高デューティ比の二次転写バイアスよりも、図14〜図17に示されるように、極性を反転させない高デューティ比の二次転写バイアスを用いる方が、平滑シートに対する二次転写性を向上させることができる。
図13に示される二次転写バイアスでは、逆転写側時間Tr内において、トナーをシート表面側からベルト表面側に逆戻りさせる方向に電界の向きを反転させるように、電圧の極性を転写側時間Ttにおける極性とは逆極性にする。このような二次転写バイアスと、図14〜図17のように極性を反転させない二次転写バイアスとで、逆ピーク側デューティ比を同じ値にし、且つ、一周期(T)内における二次転写電界の強度積分値でもある平均電位(Vave)を同じにして同様の二次転写性を得ようとする。すると、図13の二次転写バイアスにおける転写ピーク値Vtを、図14〜図17の二次転写バイアスにおける転写ピーク値Vtよりも大きくする必要がある。これにより、逆ピーク側デューティ比や平均電位Vaveを同じにしているにもかかわらず、図13の二次転写バイアスの方が、図14〜図17の二次転写バイアスよりもハーフトーン画像の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を増加させる。換言すると、図14〜図17の二次転写バイアスの方が、図13の二次転写バイアスに比べて転写ピーク値Vtを小さくして少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を低減することが可能なので、二次転写性をより向上させることができるのである。
図14〜図17の二次転写バイアスは何れも、逆ピーク側デューティ比が80[%]であり、且つ平均電位Vaveが−4[kV]である。但し、ピークツウピーク電位Vppが互いに異なっている。ピークツウピーク電位Vppを互いに異ならせて同じ逆ピーク側デューティ比及び平均電位Vaveを実現するために、オフセット電圧Voffの値を互いに異ならせている。図14、図15、図16、図17の二次転写バイアスのピークツウピーク電位Vppは、12[kV]、10[kV]、8[kV]、6[kV]である。このようなピークツウピーク電位Vppにしていることで、図14、図15、図16、図17という図番の順で、二次転写バイアスの転写ピーク値Vtを徐々に小さくしている。一方で、図14、図15、図16、図17という順で、二次転写バイアスの逆ピーク値Vrを徐々に大きくしている。それら逆ピーク値Vrの極性は転写ピーク値Vrの極性と同じであるので、極性だけに着目すれば、逆転写側時間Tr内においても、ハーフトーン画像の少数ドットトナー塊に対して逆電荷を注入させるおそれがある。しかしながら、図14〜図17の逆ピーク値Vrの何れにおいても、比較的低い値になっていることから、実際には、逆転写側時間Tr内における少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入は殆ど起こらない。よって、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入を主に引き起こす転写側時間Ttにおける転写ピーク値Vtが最も高い図17の二次転写バイアスを用いると、平滑シートに対する画像(特にハーフトーン画像)の二次転写性を最も向上させることができる。
なお、図14〜図17の平均電位Vaveと同じ−4[kV]の直流電圧だけからなる二次転写バイアスでは、その−4[kV]という値が中間転写ベルト31から少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入開始の閾値を上回る。このため、一周期(T)内で少数ドット塊に対する逆電荷の注入を常時引き起こすことから、著しい二次転写不良を引き起こしてしまう。
つまり、平滑シートへ画像を形成する場合では、二次転写バイアスにおける二つのピーク値のうち、二次転写ニップN内でトナー像を中間転写ベルト31側からニップ形成部材となる記録シートP側により強く静電移動させる方の転写ピーク値Vtとは逆のピーク値Vrの側におけるデューティ比である逆ピーク側デューティ比が50[%]を超える転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。一般に、ユーザーによってプリントされる画像には写真などがあり、薄いグレー色や淡色の画像が含まれることは多い。平滑シートへこうしたハーフトーン画像を転写する際、高デューティ比の二次転写バイアスを用いることにより、出力画像における二次転写不良の発生を抑えることができる。

画像形成装置(プリンタ)では、記録シートPとして、高平滑シートと、高平滑性シートよりも表面平滑性(表面平滑度)の低い低平滑シートとが用いられる。制御部200には、高平滑シートにトナー像を転写するための高平滑モード(第一モード)と、低平滑シートにトナー像を転写するための低平滑モード(第二モード)とが設定(記憶)されている。高平滑モードと低平滑モードはモード情報である。そして、制御部200は、高平滑モードでは、二次転写バイアスにおける二つのピーク値のうち、転写ニップ内でトナー像を像担持体側からニップ形成部材側により強く静電移動させる方の転写ピーク値(Vt)とは逆のピーク値(Vr)の側におけるデューティ比である逆ピーク側デューティ比が50[%]以上となる転写バイアスを出力し、平滑モードでは、前記逆ピーク側デューティ比が前記高平滑モードとは異なる値であり、且つ50[%]以下となる転写バイアスを出力させるように、転写電源を制御しつつ、高平滑モード(高デューティ比)と前記低平滑モード(低デューティ比)とで二次転写ニップ幅Wが切り替わるように、後段で説明するニップ幅可変装置の作動を制御するようにする。
具体的には、高平滑モード場合には、高デューティ比で小ニップ幅とし、低平滑モードの場合には低デューティ比で大ニップ幅とする。そして、制御部200は、逆ピーク側デューティ比が50[%]を超える転写バイアスを出力させ、低平滑モードでは、一周期(T)内で極性が反転し且つ逆ピーク側デューティ比が50[%]未満である転写バイアスを出力させるように、二次転写電源39を制御する様にすればよい。
また、本実施形態では、デューティ比の変更だけでなく、転写シートPの種類である平滑シートと凹凸シートに応じて後段で説明するニップ幅可変装置の作動も制御して二次転写ニップ幅Wを可変制御する。
制御部200は、低デューティ比モード時には、高デューティ比モード時に比べて、二次転写ニップ幅Wを増やすようにニップ幅可変装置を制御する。低デューティ比モード時に転写ニップ幅Wを増やすことにより、中間転写ベルト31と記録シートPが密着した状態で二次転写バイアスが印加されるため、放電による異常画像を防止することができる。また、二次転写ニップN内において中間転写ベルト31と記録シートPとの間でトナーを十分に往復させることができ、これにより、転写率を向上することができる。
一方、高デューティ比モード時は、二次転写ニップ幅Wを広げすぎると、二次転写ニップN内で中間転写ベルト31から記録シートPへ転写されたトナーが二時転写ニップNを通過する間に、中間転写ベルト側へ戻され(逆転写され)、転写率が低下することが懸念される。そこで、本実施形態では、高デューティ比モード時には、低デューティ比モード時に比べて転写ニップ幅Wを減らす。転写率の低下も最小限に抑えることができる。
二次転写ニップ幅Wを調整することにより、高デューティ比モード時は逆転写による転写率低下を防止する一方、低デューティ比モード時は放電による異常画像の発生を防止することができる。これにより、両モードでそれぞれ異常画像の発生を抑えることができる。
次に転写ニップ幅を変更するニップ幅可変装置の実施形態ついて順次説明する。
(ニップ幅可変装置の実施形態1)
図18に示すニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)60は、シート搬送ベルト41を張架している複数の回転部材のうちの少なくとも1つの回転部材である二次転写ニップ裏打ちローラ36を移動させることで、二次転写ニップ幅Wを変更するものである。画像形成装置は、二次転写ニップでシート搬送ベルト41を中間転写ベルト31へ向けて加圧する加圧部材としてのローラユニット保持体640や圧縮コイルバネ643を備え、ニップ幅変更装置60は、駆動モータ625や偏心カム674等を用いて二次転写ニップに加えられる圧力を変更することで、転写ニップ幅Wを変更する。
ニップ幅可変装置60は、第一モードと第二モードとで二次転写ニップNに加わる圧力を変更して二次転写ニップ幅Wを変更するものである。二次転写ニップ裏打ちローラ36と二次転写裏面ローラ33とはそれぞれ、芯金と芯金上に設けられた弾性層とを有する。二次転写ニップに加わる圧力が高いほど、二次転写ニップ裏打ちローラ36および二次転写裏面ローラ33の弾性層の潰れ量が大きくなり、二次転写ニップ幅Wが大きくなる(広がる)。二次転写ニップ幅Wとは、記録シートPの幅方向と直交するシート搬送方向Aへの長さであり、記録シートPの通過時間に相関するものである。二次転写ニップ幅Wは、狭義では、二次転写部で二次転写ニップ裏打ちローラ36と二次転写裏面ローラ33とが潰れあっている幅であるが、広義では中間転写ベルト31とシート搬送ベルト41とが接触しあっている幅であるプレニップを含むものである。
二次転写ニップ裏打ちローラ36は、二次転写裏面ローラ33に掛け回されている中間転写ベルト31に向けて押圧力を付与されている。即ち、二次転写ニップ裏打ちローラ36を回転自在に支持する軸20Aは、ローラユニット保持体640によって支持されている。ローラユニット保持体640は、長手方向の一端側が支持軸642によって装置固定部に揺動可能に支持されている。ローラユニット保持体640の長手方向の他端側と装置固定部との間には圧縮コイルバネ643が介装されている。ローラユニット保持体640は、この圧縮コイルバネ643の復元力によって、支持軸642の回りに図18において時計回り方向に回転させるように押圧されている。それによって、二次転写ニップ裏打ちローラ36が中間転写ベルト31に向けて押圧力されて二次転写ニップNに圧力を付与している。
実施形態に係るプリンタでは、このような構成において、低デューティ比モード時と高デューティ比モード時のときの二次転写ニップNに加わる二次転写ニップ裏打ちローラ36による圧力を変更するためのニップ幅可変装置60を備えている。ニップ幅可変装置60は、高デューティ比モード時よりも低デューティ比モード時に二次転写ニップNに加わる圧力が高くなるような構成であれば良く、大きくは2つの手法が想定できる。
第1の手法は、圧縮コイルバネ643のバネ力を、低デューティ比モード時に必要な二次転写ニップ幅Wを得られるバネ力とし、高デューティ比モード時には二次転写ニップNに加わる圧縮コイルバネ643のバネ力を抑制する手法である。この場合におけるニップ幅可変装置60は、図18、図19に示すように、ローラユニット保持体640の上部640aに接触してその位置を変位させる偏心カム674と、偏心カム674を回転駆動する駆動手段としての駆動モータ625とで構成された加圧力変更手段で構成することができる。偏心カム674は、駆動モータ625によって回転する駆動軸677と一体回転するように設けられている。偏心カム674は、その回転中心から上死点674aまでの距離が最大長となるカム面が外周面674bに形成されている。図3に示した制御部200に接続していて、制御部200によってその作動が制御されるのは、ニップ幅可変装置60においては駆動モータ625である。
実施形態において、駆動モータ625は制御部200に信号線を介して接続されていて、その駆動が制御されるように構成されている。具体的には、制御部200は、高デューティ比モード時になると、圧縮コイルバネ643のバネ力を抑制する方向に偏心カム674を回転させ、低デューティ比モード時になると、図19に示すように、圧縮コイルバネ643のバネ力の抑制を解除する方向に偏心カム674を回転させるように駆動モータ625の回転を制御する。制御部200のROMには、二次転写電源39からの転写バイアスの出力波形を、低デューティ比(50%未満)とする低デューティ比モードと、高デューティ比(50%以上)とする高デューティ比モードが設定されている。制御部200のROMには転写モードである低デューティ比モードと高デューティ比モードに関連付けて駆動モータ625の回転方向や回転量(回転時間)が予め設定されている。ここでは、高デューティ比モードの場合には二次転写ニップ幅Wを狭くし、低デューティ比モードの場合には二次転写ニップ幅Wを大きく広げる方向に、駆動モータ625の回転方向と回転量が設定されている。
図18、図19において、矢印a3は二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制方向を示し、矢印a4は二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制解除方向を示す。即ち、図18、図19において、二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制方向a3は、ローラユニット保持体640の他端側を押し下げる方向であり、二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制解除方向a4はローラユニット保持体640の他端側が持ち上げられる方向である。
本実施形態では、偏心カム674は図18に示す高デューティ比モード時に待機してバネ力を抑制する位置(押し下げられた位置)をホームポジションとしていて、低デューティ比モード時になると、その位相が上方に移動されて、図19に示すニップ幅増大位置を占めるように配置されている。
このため、本実施形態では、低デューティ比モード時になると、駆動モータ625が制御部200で制御されて偏心カム674が二次転写ニップNに加わる圧縮コイルバネ643のバネ力の抑制を解除する方向に回転されるので、二次転写ニップ裏打ちローラ36による二次転写ニップNにかかる圧力を、高デューティ比モード時よりも強くすることができ、低デューティ比モード時における、二次転写ニップ幅Wを広げられる(大きくできる)。また、高デューティ比モード時になると、偏心カム674が回転して、ローラユニット保持体640の他端側が押し下げられるので、二次転写ニップ裏打ちローラ36による二次転写ニップNにかかる圧力が低デューティ比転写モード時に比べて弱められる。
このように、低デューティ比モード時には二次転写ニップ幅Wを増やすことができるので、中間転写ベルト31と記録シートPが密着した状態で二次転写バイアスが印加されるため、放電による異常画像を防止することができる。また、二次転写ニップ幅Wを増やすことにより、二次転写ニップN内において中間転写ベルト31と記録シートPとの間でトナーを十分に往復させることができ、これにより、転写率を向上することができる。
一方、高デューティ比モード時は、二次転写ニップ幅Wを広げすぎると、二次転写ニップN内で中間転写ベルト31から記録シートPへ転写されたトナーが二時転写ニップNを通過する間に、中間転写ベルト側へ戻され(逆転写され)、転写率が低下することが懸念される。本実施形態では、二次転写ニップ幅Wを広げるのは、放電による異常画像が発生し易い低デューティ比モード時としているので、転写率の低下も最小限に抑えることができる。
高デューティ比モード時は逆転写による転写率低下がより顕著な一方、低デューティ比モード時は放電による異常画像がより顕著なため、各モードで顕著となる異常画像を避けるために二次転写ニップ幅Wを調整することが好ましい。
第2の手法は、第1の手法とは逆で、圧縮コイルバネ643のバネ力を高デューティ比モード時に必要な二次転写ニップ幅Wを得られるバネ力とし、低デューティ比モード時には二次転写ニップNに加わる圧力を増大する手法である。この場合におけるニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)60Aは、図20、図21に示すように、ローラユニット保持体640の下部640bに接触してその位置を変位させる偏心カム674と、偏心カム674を回転駆動する駆動手段としての駆動モータ625とで構成することができる。偏心カム674は、第1の手法と同様、駆動モータ625によって回転する駆動軸677と一体回転するように設けられている。偏心カム674は、その回転中心から上死点674aまでの距離が最大長となるカム面が外周面674bに形成されている。
本実施形態においても、駆動モータ625は制御部200に信号線を介して接続されていて、その駆動が制御されるように構成されている。具体的には、制御部200は、高デューティ比モード時になると、図20に示すように、圧縮コイルバネ643のバネ力が抑制されることなく、設定値で加わる方向に偏心カム664を回転させ、低デューティ比モード時になると、図21に示すように、圧縮コイルバネ643のバネ力に補助力を与える方向に偏心カム674を回転させるように駆動モータ625の回転を制御する。
図20、図21において、矢印a5は二次転写ニップNに加わる圧力の増大方向を示し、矢印a6は二次転写ニップNに加わる圧力の増大解除方向を示す。即ち、図20、図21において、二次転写ニップNに加わる圧力の増大方向a5は、ローラユニット保持体640の他端側を偏心カム674で押し上げる方向であり、二次転写ニップNに加わる圧力の増大解除方向a6は、ローラユニット保持体640の他端側が下げられる方向である。
本実施形態では、偏心カム674は図20に示す高デューティ比モード時に待機して二次転写ニップNに加わる圧力の増大しない位置(下げられた位置)をホームポジションとしていて、低デューティ比モード時になると上支点674aがローラユニット保持体640の下面640bに向かって移動されて、図21に示すニップ幅増大位置を占めるように配置されている。
このため、本実施形態では、低デューティ比になると、駆動モータ625によって偏心カム674が、ローラユニット保持体640を持ち上げて、二次転写ニップNに加わる圧力を増大する方向に回転される。
このような構成によると、二次転写ニップ裏打ちローラ36による二次転写ニップNにかかる圧力を、高デューティ比モード時よりも強くすることができ、低デューティ比モード時における、二次転写ニップ幅Wを広げられる。この結果、低デューティ比モード時には二次転写ニップ幅Wを増やすことができるので、二次転写ニップ内において中間転写ベルト31と記録シートPとの間でトナーを十分に往復させることができる。これにより、転写率を向上することができる。
(ニップ幅可変装置の実施形態2)
次にニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)の実施形態2について説明する。
図22に示すニップ幅可変装置の実施形態2は、第一モードと第二モードとで二次転写ニップNに加わる圧力を変更して二次転写ニップ幅Wを変更するものである。
本実施形態において、二次転写ニップ裏打ちローラ36は、図22に示すように、二次転写裏面ローラ33に掛け回されている中間転写ベルト31に向けて押圧力を付与されている。即ち、二次転写ニップ裏打ちローラ36を回転自在に支持する軸20Aはローラユニット保持体650によって支持されている。ローラユニット保持体650は、長手方向の一端側が支持軸652によって装置固定部に揺動可能に支持されている。ローラユニット保持体650の長手方向の他端側の下部650bと装置固定部との間には、圧縮コイルバネ653が介装されている。ローラユニット保持体650は、この圧縮コイルバネ653の復元力によって、支持軸652の回りに図22で反時計回りに回転させるように押圧されている。それによって、二次転写ニップ裏打ちローラ36が中間転写ベルト31に向けて押圧されて二次転写ニップNに圧力を付与している。
本実施形態では、このような構成において、低デューティ比モード時と高デューティ比モード時のときの二次転写ニップNに加わる二次転写ニップ裏打ちローラ36による圧力を変更するのに、ニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)60Bを備えている。
ニップ幅可変装置60Bは、二次転写ニップ裏打ちローラ36の軸線方向の両側に設けられた空転コロ685、685と、二次転写裏面ローラ33の軸線方向の両側に設けられたカム684、684と、各カム684を回転駆動する駆動手段としての駆動モータ635とで構成された加圧力変更手段で構成することができる。なお、図22、図23においてはシート搬送ベルト41を省略するとともに、カム684と空転コロ685の片側のみを示す。
各カム684は、その一部684aが二次転写裏面ローラ33の外周面33aよりも外径側に突出する外周面684bに形成されていて、それぞれ同一の位相となるように軸24Aに回転可能に支持されている。これらカム684は、同一位相を保ったまま、駆動モータ635によって回転駆動される。各空転コロ685は、二次転写ニップ裏打ちローラ36よりも大径であって、圧縮コイルバネ653のばね力によって常時、各カム684の外周面684aにそれぞれ圧接されている。
本実施形態において、駆動モータ635は制御部200に信号線を介して接続されていて、その駆動が制御されるように構成されている。具体的には、制御部200は、転写モードとして高デューティ比モードになると、圧縮コイルバネ653のバネ力を抑制する方向にカム684を回転させ、低デューティ比モードになると、図22に示すように、圧縮コイルバネ653のバネ力の抑制を解除する方向に偏心カム684を回転させるように駆動モータ635の回転を制御する。即ち、制御部200は、高デューティ比モード時の場合には、突出部684aが空転コロ685と対向する位置までカム684を回転させて、図22に示すように、二次転写ニップ裏打ちローラ36を押し下げて二次転写ニップ幅を狭め、低デューティ比モード時になると、突出部684aが空転コロ685から離間する位置へと移動するようにカム684を回転させ、二次転写ニップ裏打ちローラ36に係る圧縮コイルバネ653のバネ力により二次転写ニップ裏打ちローラ36を押し上げて二次転写ニップ幅Wを広げるように駆動モータ635を制御する。
図22、図23において、矢印a7は二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制方向を示し、矢印a8は二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制解除方向を示す。即ち、図22、図23において、二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制方向a7は、ローラユニット保持体650の他端側を押し下げる方向であり、二次転写ニップNに加わるバネ力の抑制解除方向a8はローラユニット保持体650の他端側が持ち上げられる方向である。
本実施形態では、カム684は図22に示す高デューティ比モードの位置に待機してバネ力を抑制する位置(押し下げられた位置)をホームポジションとしていて、低デューティ比モードになると、その位相が上方に移動されて、図23に示すニップ幅増大位置を占めるように配置されている。
このため、本実施形態では、低デューティ比モードになると、駆動モータ635によってカム684が二次転写ニップNに加わる圧縮コイルバネ653のバネ力の抑制を解除する方向に回転される。このため、二次転写ニップ裏打ちローラ36による二次転写ニップNにかかる圧力を、高デューティ比モード時よりも強くすることができ、低デューティ比モード時における、二次転写ニップ幅Wを広げられる。また、高デューティ比モード時になると、カム684が回転して、ローラユニット保持体650の他端側が押し下げられるので、二次転写ニップ裏打ちローラ36による二次転写ニップNにかかる圧力が低デューティ比モード時に比べて弱められる。
このように、低デューティ比モード時には二次転写ニップ幅Wを増やすことにより、二次転写ニップN内において中間転写ベルト31と記録シートPとの間でトナーを十分に往復させることができ、これにより、転写率を向上することができる。
一方、高デューティ比モード時は、二次転写ニップ幅Wを広げすぎると、二次転写ニップN内で中間転写ベルト31から記録シートPへ転写されたトナーが二次転写ニップNを通過する間に、中間転写ベルト側へ戻され(逆転写され)、転写率が低下することが懸念される。
しかし本実施形態では、高デューティ比モード時は、逆転写による転写率低下がより顕著な一方、低デューティ比モード時は放電による異常画像がより顕著なため、各モードで顕著となる異常画像を避けるために、二次転写ニップ幅Wを調整することは好ましい。本実施形態では、カム684を二次転写裏面ローラ33、空転コロ685を二次転写ニップ裏打ちローラ36側に配置したが、これらは、逆の配置であっても無論かまわない。
(ニップ幅可変装置の実施形態3)
ニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)の実施形態3は、第一モードと第二モードとで転写部材となる二次転写ニップ裏打ちローラ36の硬度を切り替え、二次転写ニップ幅Wを広げて変更するものである。二次転写ニップNは、二次転写裏面ローラ33と二次転写ニップ裏打ちローラ36とで挟み込まれる領域である。この領域には、プレニップも含まれている。
二次転写ニップ裏打ちローラ36の硬度の切替え手法としては、硬度の異なる二次転写ニップ裏打ちローラ36と二次転写ニップ裏打ちローラ36’を、1つの軸部20Aに対して着脱自在に構成し、転写モードである高デューティ比モード時と低デューティ比モード時に応じて手動により交換することが挙げられる。
あるいは、図24、図25に示すように、互いに硬度の異なる二次転写ニップ裏打ちローラ36と二次転写ニップ裏打ちローラ36’の2つの部材を、シート搬送ユニット38に配置し、これら二次転写ニップ裏打ちローラ36と二次転写ニップ裏打ちローラ36’とを切換え手段600を用いてその位置を切替るニップ幅可変装置60C(ニップ幅変更装置)で二次転写ニップ幅Wを変更するようにしても良い。本実施形態において、二次転写ニップ裏打ちローラ36’は、二次転写ニップ裏打ちローラ36よりも、その表面がつぶれ易いように、その硬度が二次転写ニップ裏打ちローラ36に用いる材質よりも低い材質で形成されている。なお、図24、図25においてはシート搬送ベルト41を省略している。
本実施形態におけるニップ幅可変装置60Cは、二次転写ニップ裏打ちローラ36と二次転写ニップ裏打ちローラ36を支持軸20A、20Bで回転自在に支持する支持フレーム601と、支持フレーム601を揺動する駆動手段としての駆動モータ605とで構成された切換え手段600を備えている。支持フレーム601は、回転支持軸602を中心に揺動可能に支持されている。符合606は二次転写ニップ裏打ちローラ36を図24に示すニップ形成位置に保持するために支持フレーム601の位置を規制するストッパである。
本実施形態において、駆動モータ605は制御部200に信号線を介して接続されていて、その駆動が制御されるように構成されている。具体的には、制御手段200は、高デューティ比モード時になると、図24に示すように二次転写ニップ裏打ちローラ36の表面30aが二次転写裏面ローラ33と対向する位置で中間転写ベルト31のおもて面21aに圧接する位置まで移動させ、低デューティ比モード時になると、図25に示すように、二次転写ニップ裏打ちローラ36’の表面30’aが二次転写裏面ローラ33と対向する位置で中間転写ベルト31のおもて面31aに圧接する位置まで移動させるように駆動モータ605の回転を制御するロジックが制御部200のROMに予め記憶されている。
本実施形態では、図24に示す高デューティ比モード時に二次転写ニップ裏打ちローラ36が待機するニップ形成位置をホームポジションとしていて、低デューティ比モード時になると図25に示すように、二次転写ニップ裏打ちローラ36よりも硬度の低い(柔らかい)二次転写ニップ裏打ちローラ36’がニップ形成位置へと移動する。
このため、本実施形態では、低デューティ比モード時になると、ニップ幅可変装置60Cによって、硬度の柔らかい二次転写ニップ裏打ちローラ36’がニップ形成位置へと移動され、二次転写ニップ裏打ちローラ36がニップ形成位置から退避するため、低デューティ比モード時にいて二次転写ニップ幅Wを広げられる。
つまり、硬度の異なる二次転写ニップ裏打ちローラ36、36’の位置を可変とすることで、二次転写ニップNにおける二次転写ニップNのシート搬送方向Aへの長さである二次転写ニップWを調整することが可能となる。この結果、低デューティ比モード時には二次転写ニップ幅Wを増やすことができるので、二次転写ニップN内において中間転写ベルト31と記録シートPとの間でトナーを十分に往復させることができる。これにより、転写率を向上することができる。
一方、高デューティ比モード時は、二次転写ニップ幅Wを広げすぎると、二次転写ニップN内で中間転写ベルト31から記録シートPへ転写されたトナーが転写ニップを通過する間に中間転写ベルト側へ戻され(逆転写され)、転写率が低下することが懸念される。本実施形態では、高デューティ比転写モード時は、逆転写による転写率低下がより顕著な一方、低デューティ比転写モード時は、放電による異常画像がより顕著なため、各モードで顕著となる異常画像を避けるために二次転写ニップ幅抜Wを調整することは好ましい。
次に制御部200による制御内容について説明する。
図26は、記録シート選択部を備えた入力操作部51を有する制御系の構成を説明するブロック図である。図26に示すように、入力操作部501は、記録シート選択部としての平滑紙ボタン501aと、凹凸紙ボタン501bとを有している。実施形態に係るプリンタにおいては、ユーザーに対して次のような操作を行ってもらうための説明を、取り扱い説明書に記載している。即ち、給紙カセット(図1の100)に対し、記録シートPとして、コート紙などの表面平滑性に優れた高平滑シート(平滑シート)をセットした場合には、平滑紙ボタン501aを押下する。これに対し、給紙カセットに対し、記録シートPとして、普通紙や和紙などの表面平滑性に劣る低平滑シート(凹凸シート)をセットした場合には、凹凸紙ボタン501bを押下する。つまり、入力操作部501は、次のような種類情報を取得することが可能な情報取得手段として機能している。即ち、トナー像の二次転写対象となる記録シートPについて、少なくとも、表面平滑性に優れた高平滑シートであるのか、あるいは高平滑シートよりも表面平滑性が劣る低平滑シートであるのかを把握することが可能な情報である。
入力操作部501は、記録シートPの種類として、高平滑シートまたは低平滑シートであるかを選択し、当該選択された種類情報を入力するものであり、制御部200の入力側に信号線を介して接続されている。入力操作部501には、高平滑シートを選択する平滑紙ボタン501aと低平滑シートである凹凸紙を選択する凹凸紙ボタン501bを備えている。平滑紙ボタン501aが操作されると種類情報として高平滑シートである種類情報が出力され、凹凸紙ボタン501bが操作されると種類情報として凹凸紙である種類情報が出力される。
制御部200は、入力操作部501で入力された種類情報に基づき、高平滑モード又は低平滑モードの何れかであるかを判定するモード判定部206を備えている。制御部200のROMには、高平滑シートにトナー像を転写するための高平滑モードと、低平滑シート(凹凸シート)にトナー像を転写するための低平滑モードとが予め設定されている。本実施形態において、高平滑モードは高デューティ比を印加するモードであり高デューティ比モードと同意である。低平滑シート(凹凸シート)は、低デューティ比を印加するモードであり、低デューティ比モードと同意である。
即ち、制御部200は、入力操作部501による情報の取得結果に基づいて、高平滑シートにトナー像を二次転写するための高平滑モードと、低平滑シートにトナー像を二次転写するための低平滑モードとで転写モードを切り替える。具体的には、平滑紙ボタン501aが押下された場合には、転写モードを高平滑モードに設定する。そして、高平滑モードでは、高平滑シートにハーフトーン画像を二次転写する際の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入を抑えるために、高デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。その二次転写バイアスは、極性がマイナス極性で一定(反転しない)であり、且つ逆ピーク側デューティ比が70[%]〜90[%]の範囲内であるという特性になっている。
一方、凹凸紙ボタン501bが押下された場合には、制御部200は、転写モードを低平滑モードに設定する。そして、低平滑モードでは、凹凸シートの表面凹部内に十分量のトナーを二次転写するために、低デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。その二次転写バイアスは、次のような特性になっている。即ち、一周期(T)内で極性が反転し、平均電位Vaveの極性や転写ピーク値Vtの極性が電界の向きを転写方向にするマイナス極性であり、逆ピーク値Vrの極性が電界の向きを転写方向とは逆横行にするプラス極性である。加えて、逆ピーク側デューティ比が8[%]〜17[%]の範囲内であるという特性である。
制御部200は、入力操作部501による情報の取得結果に基づいて、二次転写ニップ幅Wの切り替えを行う。凹凸紙ボタン501bが押下された場合には、上記何れかのニップ幅可変装置により、二次転写ニップ幅Wを狭くする。
二次転写ニップ幅Wの調整は、本実施形態では凹凸紙ボタン501bが押下された場合のみ行ったが、逆に、平滑紙ボタン501aが押下された場合に、二次転写ニップ幅Wが通常幅よりも狭くなるように制御してもよい。あるいは、上記の何れかのニップ幅可変装置が3段階あり、平滑紙ボタン501aが押下されると、通常ニップ幅よりも狭いニップ幅になるように構成されていても良い。
即ち、実施形態において、上述したニップ幅可変装置60,60A、60B、60Cは、デューティ比が高いほど、二次転写ニップ幅Wを小さく(狭く)し、デューティ比が低いほど、二次転写ニップ幅Wを大きく(広く)するように、制御部200によって、その作動が制御される。つまり、高デューティ比モード時には二次転写ニップ幅Wを小さく(狭く)し、低デューティ比モード時には二次転写ニップ幅Wを大きく(広く)するように、各ニップ幅可変装置の駆動モータ、625、635、605の作動を制御する。
制御部200は、高平滑モードでは、二次転写バイアスにおける二つのピーク値のうち、二次転写ニップ内でトナー像を中間転写ベルト31側からシート搬送ベルト41側により強く静電移動させる方の転写ピーク値Vtとは逆のピーク値Vrの側におけるデューティ比である逆ピーク側デューティ比が50[%]以上(高デューティ比モード時)となる二次転写バイアスを出力させ、低平滑モードでは、逆ピーク側デューティ比が高平滑モードとは異なる値であり、且つ50[%]以下(低デューティ比モード時)となる二次転写バイアスを出力させるように、二次転写電源39を制御する。また、本実施形態において、制御部200は、更に、高平滑モード(高デューティ比モード時)と低平滑モード(低デューティ比モード時)とで二次転写ニップ幅Wが切り替わるように、各ニップ幅可変装置の作動を制御する。
即ち、制御部200は、高平滑モード(高デューティ比モード時)では、低平滑モード(低デューティ比モード時)の場合よりも二次転写ニップ幅Wが小さく(狭く)なるように、前記のニップ幅可変装置60,60A、60B、60Cの作動を制御する。
かかる構成では、記録シートPとして普通紙や和紙のような低平滑シート(凹凸シート)が用いられる場合に、低デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力することで、次のような作用効果を奏する。即ち、二次転写ニップ内において、ベルト表面と記録シートPの表面凹部内との間でトナー粒子を良好に往復移動させることで、記録シートPの表面凹部内に十分量のトナーを転移させて、表面凹凸にならった画像濃度ムラの発生を抑えることができる。また、逆ピーク側デューティ比を低デューティ比にすることで、放電による白点の発生を抑えることができる。
一方、記録シートPとしてコート紙のような高平滑シート(平滑シート)が用いられる場合に、高デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力することで、次のような作用効果を奏する。即ち、逆ピーク側デューティ比を高デューティ比にすることで、ハーフトーン画像の少数ドットトナー群に対する逆電荷の注入を抑えて、平滑シートに対するハーフトーン画像の二次転写性を向上させる。これにより、ハーフトーン画像の画像濃度不足の発生を抑えることができ、出力画像における二次転写不良の発生を抑えることができる。
なお、高平滑モードで高デューティ比の二次転写バイアスを用いる一方で、低平滑モードで低デューティ比の二次転写バイアスを用いる例について説明したが、次のようにしてもよい。即ち、高平滑モードで逆ピーク側デューティ比が50[%]である二次転写バイアスを用いる一方で、低平滑モードで低デューティ比の二次転写バイアスを用いるようにしてもよい。また、高平滑モードで高デューティ比の二次転写バイアスを用いる一方で、低平滑モードで逆ピーク側デューティ比が50[%]である二次転写バイアスを用いるようにしてもよい。
[第一実施形態の変形例1]
第一実施形態の変形例1に係るプリンタは、入力操作部501に、平滑紙ボタン501aや凹凸紙ボタン501bを有していない。そして、ユーザーによって記録シートPの表面平滑性の情報が入力される仕様にはなっていない。その代わりに、記録シートPの表面平滑性(凹凸性)を検知する平滑性検知手段としてのシート種別検知センサ502を備えている。シート種別検知センサ502は、記録シートPに対して検知光を照射して、その反射率から記録シートPの種別(凹凸度合)を検知する周知の反射型光学センサを用いている。
図27は、変形例1に係るプリンタの給紙路を示す構成図である。給紙路は、第一案内板503と第二案内板504との間に挟み込んだ記録シートPを、レジストローラ対101のレジストニップに案内するようになっている。第一案内板503には貫通口が設けられており、この貫通口には平滑性検知センサ502が嵌め込まれている。平滑性検知センサ502は、発光素子から発した光を給紙路内の記録シートPに向けて照射し、記録シートPの表面で正反射した正反射光を受光素子によって受光する。コート紙等の平滑シートの表面で得られる正反射光量は、和紙等の凹凸シートの表面で得られる正反射光量よりも多くなる。
平滑性検知センサ502は、制御部200の入力側に信号線を介して電気的に接続されている。制御部200は、プリンタの主電源が投入された直後の装置起動時に、平滑性検知センサ502の校正を実施する。具体的には、発光素子を点灯させて発光素子からの光を白色の第二案内板504の表面で反射させる状態で、所定の正反射光量が得られるように発光素子の発光量(供給電圧)を調整する。このときの供給電圧値を記憶回路に記憶しておき、以降、平滑性検知センサ502によって記録シートPの表面における正反射光量を検知するときには、記憶回路に記憶してある供給電圧値と同じ値の電圧を発光素子に供給する。
プリントジョブが開始されると、所定のタイミングで給紙カセット100から送り出された記録シートPは、スキュー補正のために、駆動していないレジストローラ対101のレジストニップに突き当てられて搬送が一時停止される。このとき、給紙路内において、平滑性検知センサ502に対向する。この状態で、制御部200は、平滑性検知センサ502により、シート表面で得られる正反射光量を検知する。そして、その検知結果が所定の閾値を上回った場合に、記録シートPを平滑シートであるとモード判定部206で判定して、上述した高平滑モードを実施する。一方、正反射光量が所定の閾値を上回らなかった場合には、記録シートPを凹凸シートであるとモード判定部206で判定して、上述した低平滑モードを実施する。つまり、モード判定部206は、シート種別検知センサ502の検知結果に基づき、高平滑モード(高デューティ比モード時)又は低平滑モード(低デューティ比モード時)を判定する機能も備えている。
かかる構成においては、二次転写ニップNに搬送される記録シートPについて、平滑シート(高平滑シート)であるのか、あるいは凹凸シート(低平滑シート)であるのかを、ユーザーの操作によらずに自動で取得して、ユーザーの操作性を向上させることができ。
[第一実施形態の変形例2]
図28は、第一実施形態の変形例2に係るプリンタの入力操作部501の電気回路を示すブロック図である。この入力操作部501は、実施形態のものとは異なり、平滑紙ボタンや凹凸紙ボタンを有していない。その代わりに、メニューキー501c、上キー501d、下キー501e、決定キー501f、ディスプレイ501gなどを有している。
ユーザーによってメニューキー501cが押されると、制御部200は、ディスプレイ501gにメニュー画面を表示させる。ユーザーは、上キー501dや下キー501eの操作により、メニュー画面に表示されている複数のメニューのうち、所望のメニューにカーソルを合わせた状態で決定キー501fを押すことで、そのメニューを選択することができる。ユーザーのキー操作により、「シート種入力」メニューが選択されると、制御部200は、ディスプレイ501gにシート銘柄一覧を表示させる。ユーザーは、上キー501dや下キー501eの操作により、銘柄一覧に表示されている複数の銘柄のうち、給紙カセット100にセットした記録シートと同じ銘柄を選択することができる。銘柄と、その銘柄の記録シートPにおける表面平滑性とは、一対一の関係であるので、銘柄は表面平滑性を示す情報として機能し得る。メニューキー501c、上キー501d、下キー501e、決定キー501fは銘柄入力部を構成している。
制御部200は、銘柄と、逆ピーク側デューティ比の数値とを関連付けたデーターテーブルをデータ記憶回路として機能するROMに記憶している。その数値は、平滑シートの銘柄に対しては高デューティ比の値が設定されている一方で、凹凸シートの銘柄に対しては低デューティ比の値が設定されている。更に、凹凸シートの銘柄については、シート表面凹凸の度合いの大きな銘柄になるほど、逆ピーク側デューティ比の数値が小さくなっている。
制御部200は、ユーザーのメニュー操作によって銘柄が選択されると、その銘柄に対応する逆ピーク側デューティ比の数値をデーターテーブルから特定する。そして、その結果を制御部200に送信する。制御部200は、逆ピーク側デューティ比の数値が送られてくると、以降のプリントにおいて、その数値と同じ逆ピーク側デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。これにより、平滑シートの銘柄が選択された場合には高平滑モードを実施する一方で、凹凸シートの銘柄が選択された場合には低平滑モードを実施する。
つまり、制御部200に入力側には、記録シートPの銘柄情報を入力する銘柄入力部として上キー501dや下キー501e等が信号線を介して接続されている。そして制御部200は、上キー501dや下キー501eから入力される銘柄情報がシート表面凹凸の度合いの大きな銘柄になるほど、低平滑モードにおいて、逆ピーク側デューティ比の低い転写バイアスを出力させるように、二次転写電源39を制御する機能を備えている。
かかる構成では、低平滑モードにおいて、逆ピーク側デューティ比の値を一定にする場合に比べて、凹凸シートの表面凸部に対するハーフトーン画像の二次転写効率を向上させたり、表面凹部に対するトナーの転写量を増加させたりすることができる。具体的には、凹凸シートは、そのシート表面凹凸の度合いが小さくなるほど、表面凸部の面積が増加して、表面凸部においてハーフトーン画像の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入が起こり易くなる。この一方で、シート表面凹凸の度合いが大きくなるほど、表面凹部の大きさや深さが増加して、表面凹部へのトナーの転移不良が起こり易くなる。そこで、シート表面凹凸の度合いが大きくなるほど、逆ピーク側デューティ比の値を小さくする。これにより、シート表面凹凸の度合いが比較的大きな凹凸シートであっても表面凹部に十分量のトナーを転移させることができる。加えて、シート表面凹凸の度合いが比較的小さな凹凸シートであっても表面凸部に対してハーフトーン画像部を良好に二次転写することができる。
なお、シート表面凹凸の度合いを示す指標としては、最大凹凸落差を用いることが可能である。また、最大凹凸落差を測定することが可能な測定装置の市販機としては、東京精密社製の「SURFCOM 1400D」を例示することができる。この測定装置にて、記録シート表面を顕微鏡で撮影した映像に基づいて、表面全域の中から、被検領域とする箇所をアトランダムに5つ選定する。それぞれの箇所について、評価長さ20[mm]、基準長さ20[mm]という条件で、断面曲線の最大断面高さPt(JIS B 0601:2001)を測定する。そして、得られた5つの最大断面高さPtのうち、上位3つの平均値を求める。以上の処理を、記録シートPの先端部分、中央部分、後端部分のそれぞれで実施し、それぞれの平均値の更なる平均を最大凹凸落差として求める。この最大凹凸落差(=特定情報)が例えば50[μm]以上である記録シートPを、凹凸シート(低平滑シート)とし、50[μm]未満である記録シートPを平滑シート(高平滑シート)表面凹凸シートとすればよい。
以上説明したように、本実施形態の画像形成装置(プリンタ)は、中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31との間に二次転写ニップを形成する二次転写ベルト41と、二次転写ニップの幅Wを変更するニップ幅変更装置60と、中間転写ベルト31上のトナー像を二次転写ニップで記録シートPに転写するために交流成分を含む二次転写バイアスを出力する二次転写電源39とを備える。また、さらに、二次転写バイアスのデューティ比が第一デューティ比であって二次転写バイアスの幅が第一の幅である第一モードと、二次転写バイアスのデューティ比が第一デューティ比よりも低い第二デューティ比であって二次転写ニップの幅が第一の幅より広い第二の幅である第二モードと、を記録シートの種類に応じて切り替える制御手段200を備える。制御手段200は、記録シートPが平滑シートであるときは第一モードを実行し、記録シートPが平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シートであるときは第二モードを実行する。ここで、第一デューティ比は50[%]よりも高い高デューティ比で、且つ第二デューティ比は50[%]よりも低い低デューティ比である。本実施形態の画像形成装置によれば、凹凸シートへの転写率を向上することができ、かつ、平滑シート上で放電による異常画像の発生を抑えることができる。記録シートP上でのトナー像の転写不良を防止しつつ記録シートP上へ十分な量のトナーを転写することができる。
[第二実施形態]
本実施形態の画像形成装置は、図29に示すように、トナー像のなかに含まれる画像のなかでベタ画像の画質よりもハーフトーン画像の画質を優先するハーフトーン画像優先モードと、ハーフトーン画像の画質よりもベタ画像の画質を優先するベタ画像優先モードと、のうちからモードを選択するモード選択部507を備える。
制御部200は、モード選択部507で選択されたモードがハーフトーン画像優先モードである場合は第一モード(高デューティ比モード)を実行し、モード選択部507で選択されたモードがベタ画像優先モードである場合は第二モード(低デューティ比モード)を実行する。ここで、第一実施形態と同じく、第二モードにおけるデューティ比は第一モードにおけるデューティ比よりも低く、第二モードにおける二次転写ニップの幅Wは、第一モードにおける二次転写ニップの幅よりも広い。なお、デューティ比の制御方法および二次転写ニップ幅Wの変更方法は第一実施形態と同様である。
本実施形態では、モード選択部507で選択されたモードがハーフトーン画像優先モードかベタ画像優先モードに応じて、デューティ比と転写ニップ幅を変更する。
本発明者らは、普通紙(たとえばHammerMill color copy digital)へ画像を転写する実験を行った。その結果、ハーフトーン画像の部分では逆電荷の注入による転写不良が発生する一方、ベタ画像の部分ではボソツキという転写不良が発生することがわかった。ハーフトーン画像における転写不良の現象は、第一実施形態で説明したものと同様である。ベタ画像におけるボソツキとは、記録シート上の小さな凹凸にならって発生する画像の濃度ムラである。この濃度ムラは、記録シート表面の凹部と凸部とにおける転写電界の強度の差に起因して発生すると考えられる。これらの転写不良を抑制するため、本実施形態では以下のように第一モードと第二モードを切り替える。
制御部200の入力側には、モード選択部507が接続されている。モード選択部507は、トナー像のなかに含まれる画像のなかでベタ画像の画質よりもハーフトーン画像の画質を優先するハーフトーン画像優先モードと、ハーフトーン画像の画質よりもベタ画像の画質を優先するベタ画像優先モードと、のうちからユーザーがモードを選択するための操作部である。モード選択部507は、ハーフトーン画像の画質を優先するハーフトーン画像優先ボタン507aと、ベタ画像の画質を優先するベタ画像優先ボタン507bとを備えている。制御部200のモード判定部(判定部)206は、ユーザーによってモード選択部507で選択されたモードの種類が、ハーフトーン画像優先モード又はベタ画像優先モードの何れかであるかを判定する。
制御部200のROMには、ハーフトーン画像優先モードが選択された際の二次転写バイアスおよび転写ニップ幅の設定値、および、ベタ画像優先モードが選択された際の二次転写バイアスおよび転写ニップ幅の設定値が予め記憶(設定)されている。
制御部200は、ハーフトーン画像優先モードが選択された際は、デューティ比が50[%]を超える高デューティ比の二次転写バイアスを出力させ、ベタ画像優先モードが選択された際は、デューティ比が50[%]を超える低デューティ比の二次転写バイアスを出力させるように、二次転写電源39を制御する。
また、制御部200は、ハーフトーン画像優先モードが選択された場合は、ベタ画像優先モードが選択された場合よりも二次転写ニップ幅Wが小さくなるように、上述したニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)60、60A、60B、60Cの作動を制御する。
つまり、制御部200は、モード選択部507で選択されたモードを判定するとともに、選択されたモードに応じて、第一モードまたは第二モードのいずれかを実行する。
ハーフトーン画像の画質を優先する場合、制御部200は第一モードを実行し、転写ニップ幅Wを小さくし、二次転写バイアスとして図13から図17に示すような高デューティ比のバイアスを用いる。これにより、転写ニップでハーフトーン画像を構成する少数ドットトナー群に対する逆電荷の注入を抑えて、記録シートP上でのハーフトーン画像の二次転写性を向上させる。この結果、ハーフトーン画像の画像濃度不足、すなわち転写不良の発生を抑えることができる。
一方、ベタ画像の画質を優先する場合、制御部200は第二モードを実行し、転写ニップ幅Wを大きくし、二次転写バイアスとして図10から図12に示すような低デューティ比のバイアスを用いる。低デューティ比のバイアスを用いることにより、記録シートP(普通紙)の凹部においてトナー粒子が往復移動するとともに、その往復移動回数が増加する毎に中間転写ベルト31表面から記録シートPの凹部へ転移するトナー粒子の数が増加する。これにより、記録シートPの表面凹部内に十分量のトナーを転移させ、記録シートP上の小さな凹凸にならって発生する画像の濃度ムラ(ボソツキ)を抑制することができる。また、低デューティ比のバイアスを用いることで、低デューティ比ではないバイアスを用いる場合に比べて、放電による白点の発生を抑えることができる。また、転写ニップ幅Wを第一モード実行時よりも大きくすることで、二次転写ニップ内におけるトナー粒子の往復移動回数を多くすることができ、画像の濃度ムラすなわちボソツキの発生をより抑制することができる。
第二実施形態によれば、ユーザーは、モード選択部507でモードを選択するという簡易な方法で希望する品質の画像を得ることができる。すなわち、ベタ画像部分の画質をより優先する画像、または、ハーフトーン画像部分の画質をより優先する画像のうち、希望する品質の画像を簡易な方法により得ることができる。
なお、第一モードで高デューティ比の二次転写バイアスを用いる一方で、第二モードで低デューティ比の二次転写バイアスを用いる例について説明したが、次のようにしてもよい。即ち、第一モードで逆ピーク側デューティ比が50[%]である二次転写バイアスを用いる一方で、第二モードで低デューティ比の二次転写バイアスを用いるようにしてもよい。また、第一モードで高デューティ比の二次転写バイアスを用いる一方で、第二モードで逆ピーク側デューティ比が50[%]である二次転写バイアスを用いるようにしてもよい。
モード選択部507を用いて選択されたモードに応じて第一モードまたは第二モードのうちのいずれかを実行する構成にかえて、制御部200によって出力対象の画像の濃度を計算し、その濃度に応じて第一モードまたは第二モードのうちのいずれかを実行する構成としてもよい。制御部200は、トナー像の濃度に応じて、第一モードと第二モードとを切り替える。すなわち、制御部200は、画像の濃度(画像面積率、もしくは、画像に含まれるトナーの量である。)が所定値未満の場合は第一モードを実行し、画像の濃度が所定値以上の場合は第二モードを実行する。このような構成によれば、簡易な方法により転写不良の発生を抑えることができる。画像を転写する記録シートPごとにその画像の濃度を計算し、第一モードまたは第二モードのうちのいずれかを実行してもよい。この場合、二次転写電源39およびニップ幅可変装置60の制御が容易におこなえる。一方、一つの記録シートPをその搬送方向において複数の領域に分割し、各領域に転写される画像の濃度を計算し、領域毎に第一モードまたは第二モードのうちのいずれかを実行してもよい。この場合、転写不良の発生をより確実に抑えることができる。
[実験結果]
以下に示す表1−1〜表1−5は、本発明者によって行われたプリント実験の結果を示すものである。
以下に実施形態1および2の効果を示すために行った実験結果を示す。
・記録シートとしてHammerMill color copy digitalを用いた。
・作像速度(線速度)は、352.8mm/secを使用した。
・二次転写バイアスとして、高デューティ比はデューティ比=85%を、低duytは、デューティ比=12%としたものをそれぞれ使用した。
・転写ニップ幅として、高デューティ比は大:約4.5mm、小:約3mmとした。
表1−1は、HammerMill color copy digitalにおける二次転写バイアスの種類ごとの画像品質を示す。
Figure 0006828491
表1−1において使用したHammerMill color copy digitalは、一般的なコピー用紙であるが、それでもボソツキや平滑部のハーフトーン転写率の悪化は許容できないこともある。そのような記録シートであっても、高デューティ比を印加し、二次転写ニップ幅小の条件でハーフトーン転写性は著しく向上する。
一方でボソツキ(特にベタ画像のボソツキ)は、低デューティ比を印加する事で向上し、さらに二次転写ニップ幅大の条件で発生しにくくなる。
Figure 0006828491
表1−2〜表1−5において、レザック66は、特殊東海製紙株式会社製の凹凸シートであり、坪量が大きくなるほど、表面凹部の深さが大きくなっている。つまり、表面凹部の深さの大小関係は、260kg>215kg>175kgである。また、OKトップコート(128gsm)は、王子製紙株式会社製の表面コートシート(平滑シート)である。
このプリント実験では、凹凸シートに対しては、MとCとの重ね合わせによる青のベタ画像を二次転写する一方で、平滑シートに対しては、Kのハーフトーン画像(2by2)を二次転写した。なお、表1−3〜表1−5において、平滑紙の欄に記載の[%]の数値は、ハーフトーンの転写率を示すものである。
表1−2〜表1−5において、凹部転写性は、凹凸シートの表面凹部に対するトナーの転写性である。この凹部転写性については、凹凸シートの表面凹部における画質に基づいて評価した。ランク1からランク5までの5段階で評価し、ランク5が最も良い結果である。具体的には、表面凹部に十分量のトナーが転写されていて、表面凹部と表面凸部とで画質が殆ど変わらない場合をランク5とした。また、シート表面に存在する複数の凹部のうち、深さが最も大きい2〜3つの凹部において、Mトナー及びCトナーのうち、一方の転写量が他方に比べて僅かに少なくなったことによる僅かな色味不良が認められる場合をランク4とした。また、深さが最も大きい2〜3つの凹部において、白抜け部が認められる場合をランク3とした。また、複数の凹部において白抜け部が散見される場合をランク2とした(表1−1〜表1−4の実験結果では発生していない)。また、ほぼ全ての凹部において、白抜け部が認められる場合をランク1とした(表1−2〜表1−5の実験結果では発生していない)。
ハーフトーン転写率は、平滑シートに対するKのハーフトーン画像の転写率であり、次のようにして測定した。まず、中間転写ベルト31上にハーフトーン画像を一次転写した時点でテスト機を停止させ、中間転写ベルト31上のハーフトーン画像のKトナーをバキュームによって収拾し、その重量を全重量として測定した。次に、前回と全く同じ条件で中間転写ベルト31上にハーフトーン画像を一次転写した後、すぐに平滑シートに二次転写した。この直後にテスト機を停止させ、中間転写ベルト31上に付着している転写残トナーをバキュームによって収拾し、その重量を転写残量として測定した。そして、「(全重量−転写残量)/全重量×100」の解をハーフトーン転写率として求めた。
マイクロゴム硬度(マイクロ硬さ)は、中間転写ベルト31から切り取ったベルト片の硬度を、高分子計器株式会社製のマイクロゴム硬度計 MD−1によって測定した値である。23℃/50%の環境下において、押針をベルト片に所定の圧力で押し付けてベルト片を変形させながら、押針の押し込み深さに基づいて硬度を測定した。
実験番号1から5までの全てにおいて、凹凸シートにベタ画像を二次転写するときには、二次転写バイアスとして、低デューティ比の重畳電圧からなるものを用いた。また、実験番号1から4までにおいて、平滑シートにハーフトーン画像を二次転写するときには、二次転写バイアスとして、極性を反転させない高デューティ比の重畳電圧からなるものを用いた。これに対し、実験番号5において、平滑シートにハーフトーン画像を二次転写するときには、実施形態とは異なり、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いた。
実験番号1から4までの結果からわかるように、中間転写ベルト31の弾性を高めるほど(硬度を低くするほど)、凹凸シートにおける凹部転写性を向上させることができる。この一方で、弾性を高めるほど、HT転写率(ハーフトーン転写率)を低下させてしまう。凹部転写性とハーフトーン転写率とのバランスから、中間転写ベルト31のマイクロゴム硬度については、100未満にすることが望ましく、50〜80の範囲にすることがより望ましい。
なお、実験番号5からわかるように、平滑シートにハーフトーン画像を二次転写するときに、二次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いると、ハーフトーン転写率を著しく低下させてしまう(10%)。二次転写ニップ内で、ハーフトーン画像の少数ドットト
ナー塊に逆電荷を注入してしまうからである。
次に、二次転写ニップ幅を変更した条件で実験を行った。
表1−3に、実験番号1と8の結果を示す。実験番号8は実験番号1と同じ低デューティ比の二次転写バイアス(重畳電圧)を印加し、二次転写ニップ幅を広くしたものである。転写ニップ幅を広くすると、凹凸紙転写性のランクが向上し、平滑紙での転写率が低下した。
Figure 0006828491
表1−4に、実験番号2と9、10の結果を示す。実験番9、10は実験番号2と同じ低デューティ比の二次転写バイアス(重畳電圧)を印加し、二次転写ニップ幅を変化させたものである。
実験番号9では、二次転写ニップ幅を狭くすると、凹凸紙転写性のランクが低下し、平滑紙での転写性が向上した。
実験番号10では、二次転写ニップ幅を広くすると、凹凸紙転写性のランクが向上し、平滑紙での転写率が低下した。
Figure 0006828491
表1−5に、実験番号3と11の結果を示す。実験番11は実験番号3と同じ低デューティ比の二次転写バイアス(重畳電圧)を印加し、二次転写ニップを変化させたものである。実験番号11では、二次転写ニップ幅を狭くすると、凹凸紙転写性のランクが低下し、平滑紙での転写性が向上した。
Figure 0006828491
次に、実施形態に係るプリンタにおける一部の構成を他の構成に置き換えた変形例に係るプリンタや、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係るプリンタや、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
[第三実施形態]
次に、第三実施形態および当該実施形態に係る実験結果について説明する。本発明者らは、二次転写バイアスについて、周波数、ピークツウピーク値Vpp、及び直流電圧の値(定電流制御の電流目標値)を異ならせた条件でテスト画像をプリントする実験を行った。低平滑モードでは、凹凸シートであるレザック66にKベタ画像を二次転写した。また、高平滑モードでは、平滑シートであるOKトップコート(128gsm)に青のハーフトーン画像(2by2)を二次転写した。この実験の結果を次の表2に示す。
Figure 0006828491
表2に示されるように、実験番号6、実験番号7の両方において、中間転写ベルト31としてマイクロゴム硬度が80であるものを用いている。表1に示した実験番号1からわかるように、このような中間転写ベルト31では、良好な凹部転写性を発揮することが可能である。但し、二次転写バイアスの特性によっては、凹部転写性を低下させるおそれもある。
実験番号6、12の実験においては、ピークツウピーク値であるピークツウピーク電位Vpp=5[kV]、周波数=1.4[kHz]、直流成分の電流目標値=−80[μA]に設定した。逆ピーク側デューティ比については、低平滑モード(凹凸紙)では13[%]、高平滑モード(平滑紙)では80[%]に設定した。
実験番号12は実験番号6より二次転写ニップ幅を広く設定した。
実験番号7、13の実験においては、ピークツウピーク電位Vpp=12[kV]、周波数=0.8[kHz]、直流成分の電流目標値=−100[μA]に設定した。逆ピーク側デューティ比については、低平滑モード(凹凸紙)では13[%]、高平滑モード(平滑紙)では80[%]に設定した。
実験番号13は実験番号7より二次転写ニップ幅を狭く設定した。
低平滑モード(凹凸紙)に着目すると、凹部転写性は実験番号6よりも実験番号7の方が良好であった。これは次に説明する二つの理由によるものである。一つ目の理由は、周波数の違いである。低デューティ比の条件下では、逆転写側時間Trが転写側時間Ttよりも短いので、凹凸シートの表面凹部内からベルト表面に向けてのトナー粒子の戻し時間が不足しがちになる。周波数が高くなるほど、その傾向が顕著になる。実験番号6では、実験番号7に比べて周波数が高いので、逆ピーク側デューティ比が実験番号7と同じ13[%]であっても、逆転写側時間Trが実験番号7よりも短くなる。これにより、凹凸シートの表面凹部内からベルト表面に十分に戻れないトナー粒子が増加して、ベルト表面上のトナー粒子の付着力を弱める作用が低減したことから、表面凹部へのトナーの転写性が悪くなったのである。
二つ目の理由は、ピークツウピーク値Vppの違いである。低デューティ比の条件下では、ピークツウピーク値Vppをある程度大きな値にしないと、逆ピーク値Vrの値が不足して、凹凸シートの表面凹部内のトナー粒子をベルト表面に良好に戻せなくなる。実験番号6では、実験番号7に比べてピークツウピーク値Vppが小さくなっており、戻しピーク値Vrの値が不足気味になっているのである。
また、低平滑モードでは、実験6と12、7と13を比較するとわかるように、二次転写ニップ幅を大きくすると転写性がよくなり、小さくすると転写性が劣ることがわかる。
一方、高平滑モード(平滑紙)に着目すると、ハーフトーン転写性は実験番号7よりも実験番号6が良好であった。これは、次に説明する二つの理由による。一つ目の理由は、ピークツウピーク値Vpp、及び直流成分の電流目標値の違いである。実験番号6では、ピークツウピーク値Vppが実験番号7の半分未満になっている。加えて、直流成分の電流目標値が実験番号7よりも低くなっている。これらの結果、実験番号6では、実験番号7よりも転写ピーク値Vtが小さくなっていることから、トナーに対する逆電荷の注入が起こり難くなっている。加えて、実験番号6では実験番号7とは異なり、極性がマイナス極性のまま変わらないことから、逆電荷の注入が更に起こり難くなっている。
二つ目の理由は、周波数の違いである。高平滑モードにおけるトナーへの逆電荷の注入は、上述したように、転写側時間Tt内で起こる。転写側時間Ttにおいては、単位時間あたりにおけるトナーへの逆電荷の注入量が経時的に増加していき、ある程度の時間が経過するとその値が飽和に達する。このため、転写側時間Ttが比較的短くなると、比較的長い場合に比べて、二次転写ニップを通過する過程におけるトナーへの逆電荷の注入量が少なくなる。実験番号6では実験番号7に比べて周波数が高くなっていることから、逆ピーク側デューティ比が同じ80[%]であるにもかかわらず、転写側時間Ttが実験番号7よりも短くなっている。このため、実験番号7に比べてトナーへの逆電荷の注入量が少なくなっているのである。
以上の実験結果から、高平滑モードでは、低平滑モードに比べて周波数を高くすることが望ましい。これにより、高平滑モードにおいてハーフトーン転写性を向上させるとともに、低平滑モードにおいて凹部転写性を向上させることができる。
また、高平滑モードでは、低平滑モードに比べてピークツウピーク値Vppを低くすることが望ましい。これにより、高平滑モードにおいてハーフトーン転写性を向上させるとともに、低平滑モードにおいて凹部転写性を向上させることができる。
また、高平滑モードでは、実験6と12、7と13を比較するとわかるように、二次転写ニップ幅を小さくすると転写性がよくなり、小さくすると転写性が劣ることがわかる。
なお、転写ピーク値Vtや逆ピーク値Vrを大きくし過ぎると、二次転写ニップ内でベルト表面とシート表面との間で放電を発生させ、これに起因する多数の白点を引き起こしてしまう。しかしながら、低平滑モード(凹凸紙)では、二次転写ニップ内でトナー粒子をベルト表面と凹凸シートの表面凹部との間で良好に往復移動させる必要性から、転写ピーク値Vtや逆ピーク値Vrをある程度大きな値にする必要がある。それによって僅かな白点を発生させたとしても、良好な凹部転写性が得られないよりは画像品質が良くなる。これに対し、高平滑モード(平滑紙)では、二次転写バイアスの極性を反転させてトナーを往復移動させる必要がないことから、極性を反転させない高デューティ比の二次転写バイアスを用いることが可能である。これにより、ハーフトーン転写性をより向上させることに加えて、転写ピーク値Vt(極性反転しないので逆ピーク値Vrよりも大きい)をより低くして白点の発生を抑えることができる。極性を反転させないようにするためには、低デューティ比の二次転写バイアスに比べて、ピークツウピーク値Vpp、直流成分の電流目標値をそれぞれ小さくすればよい。
そこで、制御部200は、高平滑モードでは、低平滑モードに比べて周波数が高く、ピークツウピーク値Vpが低く、且つ直流電圧値(電流目標値)が大きな二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させるように構成している。
また、第一モードにおける高デューティ比の二次転写バイアスの逆ピーク値Vrは、第二モードにおける低デューティ比の二次転写バイアスの逆ピーク値Vrよりも転写側(本実施形態ではマイナス側)にあることが好ましい。これにより、第一モード(高平滑モード)においては白点の発生を抑え、ハーフトーン転写性を向上させることができる。また、第二モード(低平滑モード)においては、逆ピーク値Vrを転写側とは逆側(本実施形態ではプラス側)に大きくすることで、凹凸シートの表面凹部へ十分な量のトナーを転写でき、凹部転写性を向上することができる。あるいは、ボソツキの発生を抑えることができる。
上記の各実施形態および各実施例では、平滑シートの例としていわゆる普通紙や表面コート紙を挙げたが、平滑シートはこれに限られない。表面に凹凸を有するもののその凹凸の度合いが比較的小さなシートを平滑シートとして扱ってもよい。こうしたシートの例としては、CLASSIC Linen−Solar White(Neenah Paper社製)の坪量が90[gsm]または118[gsm]のもの、CLASSIC CREST−Solar White(Neenah Paper社製)の坪量が90[gsm]または104[gsm]のもの、レザック66(特種東海製紙社製)の坪量が118[gsm]のものなどがあげられる。上記の各実施形態および各実施例に代えて、画像形成装置を以下のように構成してもよい。すなわち、記録シートが、凹凸の度合いが比較的小さなシートのとき、第一の幅を有する転写ニップで、デューティ比が50[%]よりも高い前記転写バイアスによってトナー像を像担持体から記録シートへ転写する。一方、記録シートがレザック66 175kgなどの凹凸シート(上述したシートよりも凹凸の度合いが大きなシートである。)のとき、第一の幅よりも広い第二の幅を有する転写ニップで、デューティ比が50[%]よりも低い転写バイアスによってトナー像を像担持体から記録シートへ転写する。
また、以下のように構成してもよい。すなわち、記録シートが、凹凸の度合いが比較的小さなシートのとき、第一の圧力が加えられた転写ニップで、デューティ比が50[%]よりも高い転写バイアスによってトナー像を像担持体から記録シートへ転写する。一方、記録シートがレザック66 175kgなどの凹凸シート(上述したシートよりも凹凸の度合いが大きなシートである。)のとき、第一の圧力よりも大きな第二の圧力が加えられた転写ニップで、デューティ比が50[%]よりも低い転写バイアスによってトナー像を像担持体から記録シートへ転写する。
[第四実施形態]
第四実施形態の画像形成装置は、入力操作部501は、図30に示すように、高デューティ比モードと低デューティ比モード時とを任意に選択するモード選択部509を有し、制御部200と入力操作部501とは信号線を介して接続されている。先に説明した入力操作部501は、高平滑シート(平滑シート)と低平滑シート(凹凸シート)を選択するものであるが、本実施形態のモード選択部509は、高デューティ比モードと低デューティ比モードを機器操作者(ユーザ)が任意に選択する高デューティ比モード設定キー509a、低デューティ比モード設定キー509bを備えている。制御部200は、高デューティ比モード設定キー509aが選択操作されると第一モードを設定(実行)し、低デューティ比モード設定キー509bが選択操作されると、第二モードを設定(実行)する。制御部200のモード判定部206は、モード選択部509で選択されたモード情報に基づき、高デューティ比モード又は低デューティ比モードを判定する機能も備えている。制御部200は、第一モードでは高デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させ、第二モードは低デューティ比の二次転写バイアスを二次転写電源39から出力させる。また、制御部200は、第一モードでは、第二モードの場合よりも二次転写ニップ幅Wが小さく(狭く)なるように、ニップ幅可変装置60,60A、60B、60Cの作動を制御する。本実施形態によれば、画像形成装置のユーザーは、モード選択部509で高デューティ比モードと低デューティ比モードとのうちからモードを選択するという比較的簡単な操作により、希望する品質の画像を得ることかできる。
以上説明したように、各実施形態に係る画像形成装置は、記録シートの種類や転写される画像の濃度(トナー像の濃度)などに応じて転写バイアスのデューティ比と転写ニップ幅とを切り替える。これにより、生産性を維持しつつ画像の品質を向上することができる。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、直流電圧と交流電圧との重畳による重畳電圧からなる転写バイアス(例えば二次転写バイアス)を転写電源(例えば二次転写電源39)から出力して、像担持体(例えば中間転写ベルト31)とニップ形成部材(例えばシート搬送ベルト41)との当接による転写ニップ(例えば二次転写ニップ)に転写電流(例えば二次転写電流)を流しながら、前記像担持体の表面上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写する画像形成装置(例えばプリンタ)において、トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501や平滑性検知センサ502)と、前記情報取得手段による前記情報の取得結果に基づいて、表面平滑性に優れた高平滑シートにトナー像を転写するための高平滑モードと、前記高平滑性シートよりも表面平滑性に劣る低平滑シートにトナー像を転写するための低平滑モードとで転写モードを切り替え、前記高平滑モードでは、前記転写バイアスにおける二つのピーク値のうち、前記転写ニップ内でトナーを像担持体側からニップ形成部材側により強く静電移動させる方の転写ピーク値とは逆のピーク値の側におけるデューティ比である逆ピーク側デューティ比が50[%]以上である転写バイアスを前記転写電源から出力させる一方で、前記低平滑モードでは逆ピーク側デューティ比が前記高平滑モードとは異なる値であって且つ50[%]以下である転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御手段(例えば制御部200)とを設ける。
同時に、前記トナー像の転写対象となる記録シートの表面平滑性に関する情報を取得する情報取得手段(例えば入力操作部501や平滑性検知センサ502)と、前記情報取得手段による前記情報の取得結果に基づいて、表面平滑性に優れた高平滑シートにトナー像を転写するための高平滑モードと、前記高平滑性シートよりも表面平滑性に劣る低平滑シートにトナー像を転写するための低平滑モードとで二次転写ニップ幅を切り替えることを特徴とするものである。
高平滑モード時は通常のニップ幅のまま転写を実行し、低平滑モード時は二次転写ニップ裏打ちローラ36を上方に移動させ、ニップ幅を大きくすることで、ニップ幅中での交番電界の振動回数を増やし、トナーの往復回数を増やし、記録シートの凹部へのトナー転写性を向上させることができる。
かかる構成において、像担持体として柔軟性のあるものを用いれば、転写ニップ内における像担持体表面と低平滑シートの表面との密着性を高めて、像担持体表面と低平滑シートの表面凹部の底面との距離を小さくすることが可能になる。このように距離を小さくすることで、事業ユース向けの要望に応え得るほどの高速プリント化を図っても、低平滑シートの表面凹部に対してもトナーを良好に転写することが可能になる。但し、その良好な転写を実現するために、転写バイアスの交流電圧のピークツウピーク値Vppを高くし過ぎると、転写ニップ内で放電を多発させて、放電に起因する多数の白点を画像中に発生させてしまう。この一方で、記録シートとして、表面平滑性に優れた高平滑シートを用いると、転写ニップ内でトナーに対して逆電荷を注入してトナー像の転写不良を引き起こし易くなってしまう。
そこで、態様Aでは、低平滑シートに対しては、逆ピーク側デューティ比を高平滑シートが用いられる場合とは異なる値であって且つ50[%]以下にした転写バイアスを用いてトナー像を転写する。これにより、逆ピーク側デューティ比を50[%]よりも大きくする場合に比べて、より小さいピークツウピーク値の転写バイアスで表面凹部に十分量のトナーを転写することが可能になる。よって、低平滑シートにおける表面凹部へのトナーの転写不良や画像中の白点の発生を抑えることができる。一方、高平滑シートに対しては、逆ピーク側デューティ比を、低平滑シートが用いられる場合とは異なる値であって且つ50[%]以上にしたものを用いる。これにより、逆ピーク側デューティ比を50[%]未満にする場合に比べて、転写ニップ内のトナーに対する逆電荷の注入を抑えることで、高平滑シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
以上のように、態様Aにおいては、高速プリント化を図りつつ、低平滑シートにおける表面凹部へのトナーの転写不良や画像中の白点の発生を抑え、且つ高平滑シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記高平滑モードでは逆ピーク側デューティ比が50[%]を超える転写バイアスを前記転写電源から出力させる一方で、前記低平滑モードでは一周期内で極性が反転し且つ逆ピーク側デューティ比が50[%]未満である転写バイアスを前記転写電源から出力させ、かつ二次転写ニップ幅を広くするように二次転写ニップ裏打ちローラ36を上方の位置に移動させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成では、高平滑モード又は低平滑モードの何れか一方において、逆ピーク側デューティ比が50[%]であるものを用いる場合に比べて、次のような作用効果を奏することができる。即ち、低平滑シートの表面凹部に対するトナーの転移性を向上させたり、高平滑シートに対するトナー像の転写不良をより抑えたりすることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記高平滑モードでは、逆ピーク側デューティ比が70[%]〜90[%]の範囲である転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑シートに対するトナー像の転写不良の発生をより確実に抑えることができる。
[態様D]
態様Dは、態様B又はCにおいて、前記低平滑モードでは、逆ピーク側デューティ比が8[%]〜35[%]の範囲である転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低平滑シートの表面凹部に対して十分量のトナーを確実に転写することができる。
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、前記低平滑モードでは、逆ピーク側デューティ比が17[%]以下である転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低平滑シートの表面凹部に対するトナー転写性を更に向上させることができる。
[態様F]
態様Fは、態様B〜Eの何れかにおいて、前記高平滑モードでは、極性を変化させない転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、二次転写バイアスの極性を一周期内で反転させる場合に比べて、高平滑シートに対する二次転写不良の発生をより確実に抑えることができる。
[態様G]
態様Gは、態様A〜Fの何れかにおいて、前記像担持体として、前記基層(例えば基層31a)の上にこれよりも弾性に優れた弾性層(例えば弾性層31b)が積層された多層構造のものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ内で弾性層を柔軟に変形させることで、低平滑シートの表面凹部に対するトナーの転移性を高めて、事業ユース向けの要望に応え得るほどの高速プリント化を図ることができる。
[態様H]
態様Hは、態様Gにおいて、前記像担持体として、マイクロゴム硬度が50〜80であるものを用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ内で弾性層をトナー塊に形状にならわせて良好且つ柔軟に変形させることができる。
[態様I]
態様Iは、態様A〜Hの何れかにおいて、前記情報取得手段として、記録シートの表面平滑性を検知する平滑性検知手段(例えば平滑性検知センサ502)を用い、前記平滑性検知手段による検知結果に基づいて、転写モードを前記高平滑モードと前記低平滑モードとで切り替える制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、トナー像の転写対象となる記録シートについて、高平滑シートであるのか、あるいは低平滑シートであるのかを、ユーザーの操作によらずに自動で取得して、操作性を向上させることができる。
[態様J]
態様Jは、態様A〜Hの何れかにおいて、前記情報取得手段として、ユーザーによる前記情報の入力操作がなされる入力操作手段(例えば入力操作部501)を用いたことを特徴とするものである。かかる構成では、ユーザーの操作により、トナー像の転写対象となる記録シートについて、高平滑シートであるのか、あるいは低平滑シートであるのかを取得することができる。
[態様K]
態様Kは、態様Jにおいて、記録シートについて前記高平滑シートである旨の情報を入力するための専用の入力部(例えば平滑紙ボタン501a)と、前記低平滑シードである旨の情報を入力するための専用の入力部(例えば凹凸紙ボタン501b)とを前記入力操作手段に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、それぞれ専用の入力部を設けたことで、ユーザーの入力操作性を向上させることができる。
[態様L]
態様Lは、態様Jにおいて、記録シートの銘柄情報を入力することが可能な銘柄入力部を前記入力操作手段に設け、前記低平滑モードでは、前記銘柄入力部に入力される銘柄情報がシート表面凹凸の度合いの大きな銘柄になるほど、逆ピーク側デューティ比の低い転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、低平滑モードにおいて、シート表面凹凸の度合いが比較的大きな凹凸シートであっても表面凹部に十分量のトナーを転移させることができる。加えて、シート表面凹凸の度合いが比較的小さな凹凸シートであっても表面凸部に対してハーフトーン画像部を良好に転写することができる。
[態様M]
態様Mは、態様A〜Lの何れかにおいて、前記高平滑モードでは、前記低平滑モードに比べて周波数の高い転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑モードにおいてハーフトーン画像の転写性を向上させるとともに、低平滑モードにおいて低平滑シートの表面凹部に対するトナー転写性を向上させることができる。
[態様N]
態様Nは、態様A〜Mの何れかにおいて、前記高平滑モードでは、前記低平滑モードに比べてピークツウピーク値の低い前記重畳電圧からなる転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、かかる構成では、高平滑モードにおいてハーフトーン画像の転写性を向上させるとともに、低平滑モードにおいて低平滑シートの表面凹部に対するトナー転写性を向上させることができる。
[態様O]
態様Oは、態様A〜Nの何れかにおいて、前記高平滑モードでは、前記低平滑モードに比べて値の大きな前記直流電圧を重畳した前記重畳電圧からなる転写バイアスを前記転写電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、高平滑モードにおいてハーフトーン画像の転写性を向上させるとともに、低平滑モードにおいて低平滑シートの表面凹部に対するトナー転写性を向上させることができる。加えて、高平滑モードにおいて、白点の発生を抑えることができる。
[態様P]
態様Pは、態様G又はHにおいて、前記弾性層として弾性表面層を設け、前記弾性表面層の材料に分散した複数の微粒子による複数の微小突起を前記弾性表面層の表面に設けたことを特徴とするものである。かかる構成では、弾性層の表面における粒子の存在により、転写ニップ内で弾性層の表面とトナーとの接触面積を低減することで像担持体表面からのトナー離型性を高めて転写効率を向上させることができる。
[態様Q]
態様Qは、直流電圧と交流電圧との重畳による重畳電圧からなる転写バイアスを転写電源から出力して、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに転写電流を流しながら、前記像担持体の表面上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写する画像形成方法において、トナー像の転写対象となる記録シートについて、少なくとも、表面平滑性に優れた高平滑シートであるのか、あるいは前記高平滑シートよりも表面平滑性が劣る低平滑シートであるのかを把握することが可能な情報を取得する工程と、前記情報の取得結果に基づいて、前記高平滑シートにトナー像を転写するための高平滑モードと、前記低平滑シートにトナー像を転写するための低平滑モードとで転写モードを切り替える工程とを実施し、前記高平滑モードでは逆ピーク側デューティ比が50[%]以上である転写バイアスを前記転写電源から出力させる一方で、前記低平滑モードでは逆ピーク側デューティ比が前記高平滑モードとは異なる値であって且つ50[%]以下である転写バイアスを前記転写電源から出力させることを特徴とするものである。かかる構成では、態様Aと同様に、高速プリント化を図りつつ、表面平滑性に劣る低平滑シートの表面凹部に対して十分量のトナーを転写し、且つ表面平滑性に優れた高平滑シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
[態様R]
態様Rは、前記二次転写ニップ幅調整ローラの移動を、ユーザーが手動で行うものである。二次転写ニップ幅調整ローラに手動操作部としての手動レバーが取り付けられており、カムによってローラ位置が変更可能になっている。手動レバーの操作によりニップ幅調整ローラの位置を、ニップ幅を広くする方向に移動させることができる。表面平滑性に劣る低平滑シートをユーザーが用いる場合に、前記手動レバーを操作することによりニップ幅を変更することにより、高速プリント化を図りつつ、表面平滑性に劣る低平滑シートの表面凹部に対して十分量のトナーを転写し、且つ表面平滑性に優れた高平滑シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えることができる。
[態様S]
態様Sは、交流成分を含む転写バイアスを転写電源から出力して、像担持体とニップ形成部材との当接による転写ニップに転写電流を流しながら、前記像担持体の表面上のトナー像を前記転写ニップに挟み込んだ記録シートに転写して画像形成する画像形成装置において、前記転写電源は、転写バイアスの時間平均値よりも前記トナー像を前記記録シートに対して転写する方向に印加されている時間をB、その逆方向に印加されている時間をA(+)とした場合の、A/(A+B)×100[%]の値であるデューティ比を変更可能であり、前記転写ニップ幅を変更可能なニップ幅可変装置を備え、前記ニップ幅可変装置は、前記デューティ比が高いほど、前記転写ニップ幅を小さくし、前記デューティ比が低いほど、前記転写ニップ幅を大きくする構成を前提とし、
前記記録シートに転写されるトナー像の濃度に応じて、前記ニップ幅可変装置(例えば60〜60C)と、前記転写電源から出力される転写バイアスを制御して、前記転写ニップ幅と前記デューティ比を可変制御する制御手段を有するものである。
[態様T]
態様Tは、態様Sにおいて、前記トナー像の濃度は、ハーフトーン画像濃度と、前記ハーフトーン画像濃度に比べて単位面積あたりのトナー付着量が多くなるベタ画像濃度であり、前記記録シートに前記ハーフトーン画像濃度のトナー像を転写するためのハーフトーンモードと、前記記録シートに前記ベタ画像濃度のトナー像を転写するための全ベタモードを有し、前記制御手段は、前記ハーフトーンモードでは、前記転写バイアスにおける二つのピーク値のうち、前記転写ニップ内で前記トナー像を前記像担持体側からニップ形成部材側により強く静電移動させる方の転写ピーク値とは逆のピーク値の側におけるデューティ比である逆ピーク側デューティ比が50[%]以上となる転写バイアスを出力させ、前記全ベタモードでは、前記逆ピーク側デューティ比が前記高平滑モードとは異なる値であり、且つ50[%]以下となる転写バイアスを出力させるように、前記転写電源を制御し、前記ハーフトーンモードと前記全ベタモードとで前記転写ニップ幅(例えば二次転写ニップ幅W)が切り替わるように、前記ニップ幅可変装置の作動を制御することを特徴としている。
[態様U]
態様Uは、態様Sにおいて、前記制御手段は、前記ハーフトーンモードでは、前記全ベタモードの場合よりも前記転写ニップ幅が小さくなるように、前記ニップ幅可変装置の作動を制御することを特徴としている。
[態様V]
態様Vは、態様S又はTにおいて、前記制御手段は、前記ハーフトーンモードでは、逆ピーク側デューティ比が50[%]を超える転写バイアスを出力させ、前記全ベタモードでは、一周期内で極性が反転し且つ前記逆ピーク側デューティ比が50[%]未満である転写バイアスを出力させるように、前記転写電源を制御することを特徴としている。
像担持体である中間転写ベルト31に弾性ベルトを用いた、超高速の画像形成装置において、記録シートの凹凸条件および画像濃度(画像パターン)によって以下のような課題がある。
1.画像濃度:ハーフトーン画像時の転写不良
弾性層を設けた中間転写ベルト31で、二次転写バイアスとして低デューティ比のAC転写バイアスや、直流バイアスを印加して、ハーフトーン画像を転写させると、著しい画像濃度不足が生じることがある。特に、表面平滑性に優れた高平滑シートを用いるとその画像濃度不足が顕著である。ここで、デューティ比とは、AC波形のうち、転写ニップ内でトナーを像担持体側からニップ形成部材側により強く静電移動させる方の転写ピーク値とは逆のピーク値の側におけるデューティ比である逆ピーク側デューティ比、のことで、AC波形1周期中の逆ピーク側の印加時間の、[%]であらわされる割合のことである。
つまり、低デューティ比のACバイアスとは、逆ピーク側の印加時間が50%未満のACバイアスである。反対に、高デューティ比のACバイアスとは、逆ピーク側の印加時間が50%以上のACバイアスである。
2.記録シートの表面凹部の転写不良
普通紙といわれる記録シートにおいても、平滑な紙、平滑性に劣る紙がある。非平滑紙の凹部に対しては、凸部に比べて中間転写ベルト上のトナー層との空気ギャップがあり、転写電界強度が下がるため、このような記録シートには、トナーが転写されにくい。また、普通紙と異なりデザイン上凹凸を施した「レザック紙」のような凹凸が顕著な記録シートの場合、凹部での画像濃度不足が顕著である。
上記1と2を同じ画像形成装置の中で改善するには、最適なACバイアスの条件およびニップ幅条件を変更する必要がある。
トナー画像が、ハーフトーン画像では、比較的少数のドット群を構成するトナー付着箇所と、トナーをまったく付着させていない空白箇所とが画像部中に混在している。弾性層は変形しやすいため、二次転写ニップN内で弾性層が表面だけでなく側面からも上記少数ドット群のトナーを包み込み、トナーに正規帯電極性とは逆極性の電荷を注入させて、トナーの電荷量(Q/M)を低下させる。
このため、高デューティ比のAC・二次転写バイアスを印加することで、二次転写ニップ中には、まず二次転写バイアスにより中間転写ベルト31に対する充電が始まる。そして、その充電量がある閾値を超えると、ハーフトーン画像中の少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入が始まる。
二次転写ニップに進入したベルト箇所に対する充電は、主に転写側時間:Tt内で起こることから、この転写側時間Ttが長くなるほど、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量が増加する。
高デューティ比の二次転写バイアスは、低デューティ比の二次転写バイアスに比べて、転写側時間Ttが短いことから、少数ドットトナー塊に対する逆電荷の注入量を低減し
て、二次転写不良の発生を抑えていると考えられる。また、上記ハーフトーン転写不良は高平滑紙において、より顕著である。
このため、態様Sのように、転写ニップ幅を短くすることにより、ニップ通過時間が短くなり、転写側時間:Ttも短くなり、上記逆電荷の注入量を低減し、高デューティ比のACバイアスを印加しただけのときに比べて転写不良の発生をさらに抑えることができる。
表面凹凸に富んだ記録シートに対して中間転写ベルト上のトナー像を二次転写するときには、転写ニップ内で中間転写ベルト表面と記録シート表面の凹部との間でトナーを往復運動させる必要がある。トナーの往復回数が増えるに従って、中間転写ベルト表面から凹部方向に転写されるトナー量が増えるため、往復運動の回数はある一定以上の回数である必要がある。超高速の画像形成装置で、二次転写ニップ幅が狭いと、往復運動の回数を多くするには、ACの周波数を増加させる必要があるが、そもそも凹部までトナーを往復運動させるために、高いACピーク電圧を必要とするため、周波数を増加させると、波形がくずれ必要なピーク電圧を電源から出力できなくなる。波形がくずれないような転写電源に置き換えるためには、かなりの高価格の電源を必要とする。
このため、態様Sのように、必要に応じて転写ニップ幅を変更(長短)することにより、ニップ通過時間が長くなり、記録シートに凹凸がある場合の超高速の画像形成時でも上記トナーの往復回数を一定回数に維持でき、凹部の二次転写不良の発生を抑えることができる。
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態
に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記
載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
上記の各実施形態では、中間転写体を用いたいわゆる中間転写方式の画像形成装置について説明したが、感光体から記録シートPへ直接画像を転写するいわゆる直接転写方式の画像形成装置であってもよい。
上記の各実施形態では、像担持体(中間転写ベルト31)として弾性層を有するものを用いたが、弾性層を有しないものを用いてもよい。弾性層を有しないベルトを用いる場合であっても、二次転写ニップ部に加えられる圧力や、ベルトを支持するローラ(二次転写裏面ローラ33)の弾性変形等によって、ハーフトーン画像中に含まれるドットトナーをベルトが包み込むことがある。上記の実施形態によれば、高デューティ比の二次転写バイアスを元居ることで、ハーフトーン画像の転写不良を防止できる。また、弾性層を有しない中間転写ベルト31を用いる場合であっても、低デューティ比の二次転写バイアスを用いることで、凹凸シート上での二次転写性を確保することができる。あるいは、ベタ画像のボソツキを抑えることができる。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙した
に過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるもの
ではない。
31 中間転写ベルト(像担持体)
31a 基層
31b 弾性層
31c 粒子(微粒子)
39 二次転写電源(電源)
41 シート搬送ベルト(ニップ形成部材)
60 ニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)
60A〜60C ニップ幅可変装置(ニップ幅変更装置)
200 制御部(制御手段)
501 入力操作部(情報取得手段、入力操作手段)
501a 平滑紙ボタン(入力部)
501b 凹凸紙ボタン(入力部)
502 平滑性検知センサ(平滑性検知手段)
501c〜501f 銘柄入力部
206 モード判定部
509 モード選択部
N 転写ニップ
P 記録シート
Vpp 最大電圧差
Vave 時間平均値
Vt 転写ピーク値
Vr 逆のピーク値
W 二次転写ニップ幅(転写ニップ幅)
特開2014−77981号公報

Claims (28)

  1. 像担持体と、
    前記像担持体との間に転写ニップを形成するニップ形成部材と、
    前記転写ニップの幅を変更するニップ幅変更装置と、
    前記像担持体上のトナー像を前記転写ニップで記録シートに転写するために交流成分を含む転写バイアスを出力する電源と、
    転写バイアスの周期をTとし前記周期Tのなかで前記転写バイアスが前記転写バイアスの時間平均値よりもトナー像を像担持体から前記記録シートへ移動させる転写側にある時間をTtとしたときに(T−Tt)/T×100[%]で表される前記転写バイアスのデューティ比が第一デューティ比であって前記転写ニップの幅が第一の幅である第一モードと、前記転写バイアスの前記デューティ比が前記第一デューティ比よりも低い第二デューティ比であって前記転写ニップの幅が前記第一の幅より広い第二の幅である第二モードと、を所定条件に応じて切り替える制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
  2. 請求項1の画像形成装置において、
    前記第一デューティ比が50[%]よりも高く、且つ前記第二デューティ比が50[%]よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1の画像形成装置において、
    前記所定条件は前記記録シートの種類であることを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項3の画像形成装置において、
    前記制御手段は、前記記録シートが平滑シートであるときは前記第一モードを実行し、記録シートが平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シートであるときは前記第二モードを実行することを特徴とする画像形成装置。
  5. 請求項4の画像形成装置において、
    前記第一デューティ比が50[%]よりも高く、且つ前記第二デューティ比が50[%]よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項4または5の画像形成装置において、
    記録シートが凹凸シートであるときは、前記制御手段は、前記デューティ比が8[%]〜35[%]である前記転写バイアスを出力させるように前記電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
  7. 請求項6の画像形成装置において、
    記録シートが凹凸シートであるときは、前記制御手段は、前記デューティ比が17[%]以下である前記転写バイアスを出力させるように前記電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項4乃至7のいずれかの画像形成装置において、
    前記記録シートが平滑シートであるときは、前記制御手段は、前記デューティ比が70[%]〜90[%]である前記転写バイアスを出力するように前記電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
  9. 請求項4乃至8のいずれかの画像形成装置において、
    前記記録シートが凹凸シートであるときは、前記制御手段は、その極性が交互に切り替わる前記転写バイアスを出力するように前記電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
  10. 請求項4乃至9のいずれかの画像形成装置において、
    前記記録シートが平滑シートであるときは、前記制御手段は、その極性が一定の前記転写バイアスを出力するように前記電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
  11. 請求項4乃至10のいずれかの画像形成装置において、
    前記記録シートの種類が平滑シートであるか凹凸シートであるかの情報を入力する入力操作部と、
    前記入力操作部で入力された前記情報に基づき、記録シートが平滑シートであるか凹凸シートであるかを判定する判定部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
  12. 請求項4乃至10のいずれかの画像形成装置において、
    前記記録シートの表面平滑性を検知する平滑性検知手段と、
    前記平滑性検知手段の検知結果に基づき、記録シートが平滑シートであるか凹凸シートであるかを判定する判定部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
  13. 請求項4乃至10のいずれかの画像形成装置において、
    前記記録シートの銘柄の情報を入力する銘柄入力部と、
    前記銘柄の情報に基づきシート記録シートが平滑シートであるか凹凸シートであるかを判定する判定部とを備えることを特徴とする画像形成装置。
  14. 請求項13の画像形成装置において、
    前記制御手段は、前記記録シートが凹凸シートである場合、前記銘柄入力部に入力された前記銘柄が凹凸の度合いが大きな銘柄であるほど、前記デューティ比の低い前記転写バイアスを出力させるように前記電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
  15. 請求項1の画像形成装置において、
    ベタ画像の画質よりもハーフトーン画像の画質を優先するハーフトーン画像優先モードと、前記ハーフトーン画像の画質よりも前記ベタ画像の画質を優先するベタ画像優先モードと、のうちからモードを選択するモード選択部を備え、
    前記制御手段は、前記モード選択部で選択されたモードが前記ハーフトーン画像優先モードである場合は前記第一モードを実行し、前記モード選択部で選択されたモードが前記ベタ画像優先モードである場合は前記第二モードを実行することを特徴とする画像形成装置。
  16. 請求項15の画像形成装置において、
    前記第一デューティ比が50[%]よりも高く、且つ前記第二デューティ比が50[%]よりも低いことを特徴とする画像形成装置。
  17. 請求項1の画像形成装置において、
    前記制御手段は、前記記録シートに転写されるトナー像の濃度に応じて、前記第一モードと前記第二モードとを切り替えることを特徴とする画像形成装置。
  18. 請求項1または2の画像形成装置において、
    前記第一モードと前記第二モードとのうちのいずれかを選択するモード選択部を備え、
    前記制御手段は、前記モード選択部で選択されたモード情報に基づき、前記第一モードと前記第二モードとのうちのいずれかを実行することを特徴とする画像形成装置。
  19. 請求項1乃至18のいずれかの画像形成装置において、
    前記第一モードにおける前記転写バイアスの周波数は、前記第二モードの前記周波数よりも高いことを特徴とする画像形成装置。
  20. 請求項1乃至19のいずれかの画像形成装置において、
    前記第一モードにおける前記転写バイアスの前記交流成分のピークツウピーク値は、前記第二モードにおける前記ピークツウピーク値よりも小さいことを特徴とする画像形成装置。
  21. 請求項1乃至20のいずれかの画像形成装置において、
    前記転写バイアスは、前記交流成分に直流成分が重畳されたバイアスであって、
    前記第一モードにおける前記直流成分の絶対値は、前記第二モードにおける前記直流成分の絶対値よりも大きいことを特徴とする画像形成装置。
  22. 請求項1乃至21のいずれかの画像形成装置において、
    前記転写バイアスは、前記時間平均値よりも前記転写側にある転写ピーク値と、前記転写ピーク値とは異なる逆ピーク値と、を有し、
    前記第一モードにおける逆ピーク値は、前記第二モードにおける逆ピーク値よりも前記転写側にあることを特徴とする画像形成装置。
  23. 請求項1乃至22の何れかの画像形成装置において、
    前記転写ニップで前記ニップ形成部材を前記像担持体へ向けて加圧する加圧部材を備え、
    前記ニップ幅変更装置は、前記加圧部材によって前記転写ニップに加えられる圧力を変更することで、前記転写ニップ幅を変更すること特徴とする画像形成装置。
  24. 請求項1乃至22の何れかの画像形成装置において、
    前記ニップ形成部材は、複数の回転部材に張架されたベルト部材であって、
    前記ニップ幅変更装置は、前記複数の回転部材のうちの少なくとも1つの回転部材を移動させることで、前記転写ニップ幅を変更すること特徴とする画像形成装置。
  25. 請求項1乃至24の何れかの画像形成装置において、
    前記像担持体は、基層と、前記基層の上に当該基層よりも弾性を有する弾性層とが積層された多層構造であることを特徴とする画像形成装置。
  26. 請求項25画像形成装置において、
    前記像担持体は、前記弾性層として弾性表面層を有し、
    前記弾性表面層は、その材料に分散した複数の微粒子による複数の微小突起を前記弾性表面層の表面に設けたことを特徴とする画像形成装置。
  27. 記録シートが平滑シートのとき、第一の圧力が加えられた転写ニップで、転写バイアスの周期をTとし前記周期Tのなかで前記転写バイアスが前記転写バイアスの時間平均値よりもトナー像を像担持体から前記記録シートへ移動させる転写側にある時間をTtとしたときに(T−Tt)/T×100[%]で表されるデューティ比が50[%]よりも高い前記転写バイアスによってトナー像を前記像担持体から前記記録シートへ転写し、
    前記記録シートが平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シートのとき、前記第一の圧力よりも大きな第二の圧力が加えられた前記転写ニップで、前記デューティ比が50[%]よりも低い前記転写バイアスによってトナー像を前記像担持体から前記記録シートへ転写することを特徴とする転写方法。
  28. 記録シートが平滑シートのとき、第一の幅を有する転写ニップで、前記転写バイアスの周期をTとし前記周期Tのなかで転写バイアスが前記転写バイアスの時間平均値よりもトナー像を像担持体から前記記録シートへ移動させる転写側にある時間をTtとしたきに(T−Tt)/T×100[%]で表されるデューティ比が50[%]よりも高い前記転写バイアスによってトナー像を前記像担持体から前記記録シートへ転写し、
    前記記録シートが平滑シートよりも大きな凹凸を有する凹凸シートのとき、前記第一の幅よりも広い第二の幅を有する前記転写ニップで、前記デューティ比が50[%]よりも低い前記転写バイアスによってトナー像を前記像担持体から前記記録シートへ転写することを特徴とする転写方法。
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