JP6086308B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
この種の画像形成装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この画像形成装置は、周知の電子写真プロセスにより、ドラム状の感光体の表面にトナー像を形成する。感光体には、像担持体としての無端状の中間転写ベルトを当接させて一次転写ニップを形成している。そして、一次転写ニップにおいて、感光体上のトナー像を中間転写ベルトに一次転写する。中間転写ベルトに対しては、ニップ形成部材としての二次転写ローラを当接させて二次転写ニップを形成している。また、中間転写ベルトのループ内には、二次転写対向ローラを配設しており、この二次転写対向ローラと、前述した二次転写ローラとの間に中間転写ベルトを挟み込んでいる。ループ内側の二次転写対向ローラに対してはアースを接続しているのに対し、ループ外の二次転写ローラに対しては二次転写バイアスを印加している。これにより、二次転写対向ローラと二次転写ローラとの間に、トナー像を二次転写対向ローラ側から二次転写ローラ側に静電移動させる二次転写電界を形成している。そして、中間転写ベルト上のトナー像に同期させるタイミングで二次転写ニップ内に送り込んだ記録紙に対して、二次転写電界やニップ圧の作用により、中間転写ベルト上のトナー像を二次転写する。
かかる構成において、記録紙として、和紙のような表面凹凸に富んだものを用いると、表面凹凸にならった濃淡パターンを画像中に発生させ易くなる。この濃淡パターンは、紙表面における凹部に対して十分量のトナーが転写されずに、凹部の画像濃度が凸部よりも薄くなることによって生じるものである。そこで、上記特許文献1に記載の画像形成装置においては、二次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものではなく、交流電圧に対して直流電圧を重畳した重畳バイアスを印加している。このような重畳バイアスを用いた重畳転写バイアス(交流転写バイアス)を印加することで、直流電圧だけからなる直流転写バイアスを印加する場合に比べて、濃淡パターンの発生を抑えることができる。
また、上記特許文献1に記載の画像形成装置においては、重畳転写バイアスの周波数f[Hz]と、転写ニップ幅(転写ニップの中間転写ベルト表面移動方向長さ)d[mm]と、中間転写ベルトの表面移動速度v[mm/s]との関係が、下記の式(1)を満たすようにしている。
f > (4/d)×v ・・・(1)
交流転写バイアスを用いて像担持体上のトナー像を記録シート上に転写する場合、濃淡パターンの発生が抑制された良好な転写性を得るためには、交流転写バイアスの周波数fをあまり高くすることができない。その理由は以下のとおりである。
交流転写バイアスを用いる場合、交流転写バイアスの1周期(1/f)が到来するたびに、転写ニップ内に生じる交番電界が1回作用して、トナー粒子が像担持体と記録シートとの間を1回往復移動する。初めの1周期では、図14に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や像担持体210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図15に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や像担持体210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図16に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。その結果、おおよそ4回よりも多くの往復移動が転写ニップ内で行われれば、転写ニップ通過後の記録紙Pの凹部内に十分量のトナー粒子を転移させることができる。
しかしながら、交流転写バイアスにおける交流成分の周波数fが高いほど、その交番電界に対するトナー追従性が低下し、トナー粒子を往復移動させることが難しくなる。交流転写バイアスのピークツウピーク電圧を大きくすれば、交番電界に対するトナー追従性を向上させることはできるが、ピークツウピーク電圧を上げ過ぎると、転写ニップ内又はその近傍に画像白抜けを生じさせる放電が発生するなどの種々の弊害が生じる。そのため、ピークツウピーク電圧を上げるにも現実的な上限が存在する。よって、ピークツウピーク電圧を上限値に設定しても交流転写バイアスによる交番電界の変化にトナー粒子が追従できないほど、交流転写バイアスの周波数fを高めることはできないのである。
このように交流転写バイアスの周波数fには上限があるため、上記式(1)の関係を満たすために、転写ニップ幅d[mm]を長くする必要が出てくる。特に像担持体の表面移動速度v[mm/s]が速い高速機においては、長い転写ニップ幅を確保する必要がある。しかしながら、交流転写バイアスを用いる従来の画像形成装置においては、表面凹凸に富んだ記録シートの凹部への転写率を高めるためには、直流転写バイアスの場合よりも高い転写ニップ圧、あるいは、少なくとも直流転写バイアスの場合に設定さえ得る転写ニップ圧範囲の中でも高圧側の範囲の転写ニップ圧が、必要であると考えられていた。これは、転写ニップ内において、像担持体表面を記録シートに強く押し付けることで記録シートの凹部を浅くし、トナーの往復移動距離を短くすることが、表面凹凸に富んだ記録シートの凹部への転写率を高めるのに有効であると考えられていたためである。
このように転写ニップ圧を得るため、交流転写バイアスを用いる従来の画像形成装置では、通常、転写ニップを形成する像担持体と転写部材の両方について、比較的高い硬度のものを用いていた。しかしながら、両者について高硬度のもの用いる場合、転写ニップにおける像担持体や転写部材の変形量が小さいため、転写ニップ幅dを長くとることができない。したがって、上記式(1)の関係を満たすような転写ニップ幅dを得られず、表面凹部に対して十分量のトナーを転写できないため、濃淡パターンを抑制することが困難であるという問題があった。
以上は、和紙のような表面凹凸に富んだ記録シートに対して交流転写バイアスを用いて転写する例について説明したが、表面凹凸の少ない普通紙等の記録シートに対して交流転写バイアスを用いて転写する場合も考えられる。例えば、トナーの劣化状態が進行すると、画像ボソツキなどの画質劣化を引き起こすが、記録シートへ交流転写バイアスを用いてトナー転写を行う場合には、直流転写バイアスを用いる場合よりも、画像ボソツキなどの画質劣化が抑制されることが判明している。そのため、トナーの劣化状態が進行しても画質劣化を抑制する目的で、表面凹凸の少ない普通紙等の記録シートに対して交流転写バイアスを用いて転写する場合が考えられる。
しかしながら、表面凹凸の少ない普通紙等の記録シートへ交流転写バイアスを用いてトナー転写を行う場合でも、高い転写率を得るためには、上記式(1)の関係を満たすことが要求される。この場合には、上述と同様、上記式(1)の関係を満たすような転写ニップ幅dを得られず、高い転写率が得られないという問題が生じる。
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、交流転写バイアスを用いて像担持体から記録シートにトナー転写を行う場合に、長い転写ニップ幅を確保することができる画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は、表面移動する像担持体と該像担持体の表面に当接配置される転写部材との間の転写ニップに、直流成分と交流成分とを含む交流転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を有し、該転写ニップを通過する記録シートに対し、該像担持体の表面に担持されるトナー像を該交流転写バイアスの作用によって転写する画像形成装置において、上記転写部材のJIS−A硬度が60以下であり、上記像担持体と上記転写部材との間の当接圧力を切り替える当接圧力切替手段を有し、上記転写バイアス印加手段は、上記転写ニップに対し、上記交流転写バイアスを印加する交流動作モードと、交流成分を含まない直流成分のみからなる直流転写バイアスを印加する直流動作モードとを備えており、上記当接圧力切替手段は、上記転写バイアス印加手段が上記交流動作モードで動作するときには、上記直流動作モードで動作するときよりも上記当接圧力が低くなるように、該当接圧力を切り替えることを特徴とする。
本発明においては、像担持体に当接する転写部材がJIS−A硬度で60以下であるという比較的柔らかいものである。このため、これよりもJIS−A硬度が高い転写部材を用いる場合と比べて、転写ニップの像担持体表面移動方向長さ(転写ニップ幅)を長くとることができる。これにより、上記式(1)の関係を満たすような転写ニップ幅dを得ることが容易になり、凹凸に富んだ記録シート上で表面凹凸にならった濃淡パターンの発生を抑制したり、凹凸の少ない記録シートに対して高い転写率を得たりすることが可能となる。
ここで、転写部材がこのように柔らかいものであると、従来必要であると考えられていた高い転写ニップ圧を得ることが難しい。そのため、従来の考え方に従えば、転写率が不足してしまい、目標の転写率を達成できないということになる。しかしながら、本発明者らの鋭意研究の結果、交流転写バイアスによる転写時には、むしろ、直流転写バイアスによる転写時と比べて、転写ニップ圧を低くしても、高い転写率が得られることを見出した。これは次の理由によるものと考えられる。
記録シートがいかに平滑なシートであったとしても、転写ニップ内において像担持体と記録シートとの間には相応のギャップが生じる。このギャップは転写ニップ圧が低くなるほど広がるので、転写ニップ圧が低くなるほど、転写ニップ内に発生する転写電界は小さいものとなる。よって、転写電界の大きさに対して転写率が強く依存する直流転写バイアスの場合には、トナー粒子の転写率が落ちるという結果を招く。
これに対し、交流転写バイアスは、そもそも、和紙のような表面凹凸に富んだ記録シートの凹部に対して十分量のトナーを転写させるために、像担持体表面上のトナー粒子を記録シートとの間(詳しくは記録シート上の凹部底面との間)で往復移動させ、その往復移動するトナー粒子を像担持体表面上に滞留するトナー粒子に衝突させることにより、往復移動するトナー粒子を徐々に増やして、最終的に記録シート上の凹部底面に十分量のトナー粒子を付着させる。このように、交流転写バイアスは、転写率が、主にトナー粒子の往復移動の回数に依存するものである。そのため、適切な交流転写バイアスを用いて、転写ニップ内における記録シート上の凹部底面と像担持体表面との間(ギャップ)をトナー粒子が必要回数以上往復移動させれば、十分量のトナー粒子を付着させ、高い転写率を得ることができる。よって、転写ニップ圧を低くして、転写ニップ内の像担持体と記録シートとのギャップが多少広くなっても、そのギャップ間をトナー粒子が必要回数以上往復移動できる適切な交流転写バイアスを設定することにより、高い転写率を得ることができる。
なお、以上の説明は、転写部材側がJIS−A硬度で60以下であるという柔らかい場合であるが、像担持体側がJIS−A硬度で60以下であるという柔らかい場合でも同様である。
以上より、本発明によれば、交流転写バイアスを用いて像担持体から記録シートにトナー転写を行う場合に、長い転写ニップ幅を確保することができ、例えば、凹凸に富んだ記録シート上で表面凹凸にならった濃淡パターンの発生を抑制したり、凹凸の少ない記録シートに対して高い転写率を得たりすることができるという優れた効果が得られる。
実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。 同プリンタにおけるK用の画像形成ユニットを拡大して示す拡大構成図である。 二次転写電源から出力される二次転写バイアスの一例を示す波形図である。 表面凹凸に富んだ用紙に対して、ピークツウピーク電圧Vppの異なる交流転写バイアスの周波数を変更してベタ画像をプリントしたときの凹部転写性を評価した結果を示すグラフである。 放電による白点出現性の評価が許容範囲内となる交流転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppの最大値と、そのときに凹部転写性の評価が許容範囲内となる最大周波数fmaxとの関係を示すグラフである。 交流転写バイアスの周波数fとプロセス線速vとを変化させて、凹凸に富んだ用紙にベタ画像を出力し、表面凹凸にならった濃淡パターンの評価を行った結果を示す表である。 ニップ通過時間中における交流転写バイアスの周期回数と凹部転写性との関係を示すグラフである。 二次転写ローラにおけるローラ層のJIS−A硬度と転写ニップ幅との関係を示すグラフである。 比較実験例1の結果を示す表である。 比較実験例2の結果を示す表である。 変形例1におけるプリンタを示す概略構成図である。 転写ニップ圧が高い高加圧状態における変形例2の二次転写部を示す概略構成図である。 転写ニップ圧が低い低加圧状態における変形例2の二次転写部を示す概略構成図である。 二次転写ニップにおける転写初期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図である。 二次転写ニップにおける転写中期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図である。 二次転写ニップにおける転写後期段階のトナーの挙動を示す拡大模式図である。
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという。)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
本実施形態のプリンタには、オペレーションパネル50が備わっており、ユーザーはオペレーションパネル50に対して指示を入力したり、オペレーションパネル50に表示される画面を確認したりすることができる。オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによってユーザーによる入力操作を受け付けたりする。オペレーションパネル50は、本プリンタの制御部60に接続されており、制御部60から送られてくる制御信号に基づいてタッチパネルに画像を表示することができる。
本実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY、M、C、Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム状の基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本プリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y、M、C、K用の現像装置の第2収容室内にY、M、C、Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY、M、C、Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部60は、RAMに、Y、M、C、Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY、M、C、K用のVtrefを記憶している。Y、M、C、Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y、M、C、K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY、M、C、Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y、M、C、K用の現像装置における第2搬送室内にY、M、C、Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、かつ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図1において、Y、M、C用の画像形成ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY、M、Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY、M、C、K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、二次転写対向ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35K、二次転写ローラ36、ベルトクリーニング装置37、トナー付着量検知手段としての濃度センサ38などを有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写対向ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
中間転写ベルト31としては、材料が例えばカーボン分散ポリイミド樹脂からなるものを用いることができる。中間転写ベルト31の厚みは、20[μm]以上200[μm]以下、好ましくは60[μm]程度のものを用いることができる。中間転写ベルト31の体積抵抗率は、106[Ω・cm]以上1012[Ω・cm]以下、好ましくは約109[Ω・cm]程度のものを用いることができる。なお、この体積抵抗率は、三菱化学製ハイレスタ−UPMCPHT45にて、印加電圧100Vの条件で測定したものである。
4つの一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY、M、C、K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY、M、C、Kトナー像と、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M、C、K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM、C、Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなる。本実施形態の一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kの外形は16[mm]であり、芯金の径は10[mm]であり、スポンジ層の電気抵抗値は約3×107[Ω]である。なお、スポンジ層の電気抵抗値Rは、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、一次転写ローラの芯金に1000[V]の電圧Vを印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したものである。本実施形態では、このような一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに対して、一次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、一次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の二次転写ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の二次転写対向ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、二次転写ローラ36とが当接する二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ36は接地されているのに対し、二次転写対向ローラ33には、二次転写電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写対向ローラ33と二次転写ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを二次転写対向ローラ33側から二次転写ローラ36側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録シートである記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括二次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップを通過すると、二次転写ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
二次転写対向ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。本実施形態の二次転写対向ローラ33は、外径が約24[mm]であり、芯金の径が約16[mm]であり、NBR系ゴム層の抵抗が1×106[Ω]以上1×1012[Ω]以下、好ましくは約4×107[Ω]のものを用いることができる。このNBR系ゴム層の抵抗値は、一次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
また、二次転写ローラ36も、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層(ローラ層)とを具備するものである。本実施形態の二次転写ローラ36は、外径が約24[mm]であり、芯金の径が約14[mm]であり、NBR系ゴム層の抵抗が1×106[Ω]以下のものを用いることができる。このNBR系ゴム層の抵抗値は、一次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
転写バイアス印加手段としての二次転写電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、二次転写バイアスとして、直流電圧(直流成分)に交流電圧(交流成分)を重畳せしめた交番電圧を二次転写ニップに印加することができる。また、二次転写電源39は、定電流制御を行うことも可能である。二次転写電源39の出力端子は、二次転写対向ローラ33の芯金に接続されている。二次転写対向ローラ33の芯金の電位は、二次転写電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。
また、二次転写ローラ36の記録シート搬送方向下流側には、用紙分離補助のための分離装置200が設置されている。本実施形態の分離装置200は鋸歯状の除電針で構成されている。
このような交番電圧からなる二次転写バイアスを二次転写対向ローラ33に印加し、かつ、二次転写ローラ36を接地するという構成に代えて、交番電圧からなる二次転写バイアスを二次転写ローラ36に印加し、かつ、二次転写対向ローラ33を接地するという構成を採用してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用いかつ二次転写ローラ36を接地した条件で、二次転写対向ローラ33に二次転写バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、二次転写バイアスの時間平均値をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、二次転写対向ローラ33を接地し、かつ二次転写バイアスを二次転写ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、二次転写バイアスの時間平均値をトナーとは逆のプラス極性にする。
また、このような交番電圧からなる二次転写バイアスを二次転写対向ローラ33や二次転写ローラ36のいずれか一方に印加する代わりに、直流電圧をいずれか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加するという構成を採用してもよい。
なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、二次転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、上述した交番電圧に切り替える必要がある。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側で、駆動ローラ32に巻き付いたベルト部分に対して、約4[mm]の間隙を介して対向配置されている。そして、中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー像が当該対向位置に進入した際に、そのトナー像のトナー付着量を測定する。
二次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY、M、C用の一次転写ローラ35Y,35M,35Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、一次転写ローラ35Y,35M,35Cを、感光体2Y,2M,2Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,2M,2Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
図3は、二次転写電源39から出力される二次転写バイアスの一例を示す波形図である。
二次転写電源39は、転写バイアス印加手段として機能し、その出力電圧を二次転写対向ローラ33の芯金に印加することで、接地されている二次転写ローラ36の芯金と、二次転写対向ローラ33の芯金との間に二次転写バイアスが印加される。本実施形態の二次転写バイアスは、二次転写対向ローラ33の芯金の電位から二次転写ローラ36の芯金の電位を差し引いた値であり、二次転写ローラ36の芯金はゼロ[V]であることから、二次転写電源39の出力電圧にほぼ一致する。
二次転写バイアスは、上述したように、直流成分に交流成分を重畳させたものであり、その時間平均値は、本実施形態のように正規帯電極性がマイナス極性であるトナーを用いる場合には、マイナス極性に設定される。これは、二次転写ローラ36の電位を二次転写対向ローラ33の電位よりもトナーの正規帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることを意味する。中間転写ベルト31の外周面に付着したトナーを二次転写ローラ36側へ静電的に移動させることができる。
図3において、オフセット電圧Voffは二次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、二次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。本実施形態の交流成分は正弦波形を示すものであるので、オフセット電圧Voffは、交流成分の時間平均値と一致する。なお、オフセット電圧Voffは、交流成分の時間平均値とが一致しない非対称波形をもつ二次転写バイアスを用いてもよい。
本実施形態において、二次転写バイアスは、記録紙Pに対して中間転写ベルト31上のトナー像を二次転写する際に、当該トナー像を中間転写ベルト31側から記録紙P側に転写させる転写方向の極性(マイナス極性)をもった送り電圧と、当該送り電圧とは逆極性(プラス極性)の戻し電圧とが交互に切り替わる交番電圧である。この二次転写電圧の時間平均値は、トナー像を中間転写ベルト31側から記録紙P側に転写させる転写方向の極性(マイナス極性)に設定されている。本実施形態においては、このような二次転写バイアスが印加されることで、二次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているとき(すなわち送り電圧が印加されているとき)には、二次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを二次転写対向ローラ33側から二次転写ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、二次転写電圧の極性がトナーとは逆のプラス極性になっているとき(すなわち戻し電圧が印加されているとき)には、二次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを二次転写ローラ36側から二次転写対向ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
次に、本実施形態のプリンタの画像形成動作モードについて説明する。
本実施形態では、ユーザーの指示に応じて、上述した直流成分に交流成分を重畳させた上述の二次転写バイアスを印加して画像形成を実施する交流転写モードと、交流成分を含まない直流転写バイアスからなる二次転写バイアスを印加して画像形成を実施する直流転写モードとを備えている。
ユーザーは、プリントする記録紙Pが凹凸に富んだものである場合には、オペレーションパネル50を操作して交流転写モードを選択する操作を行う。これにより、直流成分に交流成分を重畳させた二次転写バイアスを用いて画像形成が実施され、凹凸に富んだ記録紙Pに対しても、その表面凹凸にならった濃淡パターンの発生が抑制された高品質な画像を形成することができる。
一方、プリントする記録紙Pが凹凸の少ない一般的な用紙等である場合、ユーザーは、図示しないオペレーションパネル50を操作して直流転写モードを選択する操作を行う。これにより、交流成分を含まない直流転写バイアスからなる二次転写バイアスを用いて画像形成が実施される。凹凸の少ない一般的な用紙に対しても交流転写モードを選択してもよいが、直流転写モードよりもトナーチリが発生しやすい。したがって、トナーチリの観点からすれば、凹凸の少ない一般的な用紙については直流転写バイアスを用いた方が高画質な画像を形成しやすい。また、二次転写バイアスに交流成分が含まれていると、二次転写ニップを構成する部材(二次転写ローラ36、中間転写ベルト31、二次転写対向ローラ33等)が強い電気的なハザードを受ける。よって、この点を考慮すると、二次転写ニップに対してはなるべく交流成分を印加するのを避けることが、これらの部材の寿命を延ばすことにつながる。この点でも、凹凸の少ない一般的な用紙については直流転写バイアスを用いる方が好まれる。
なお、ここでは、ユーザー操作により画像形成動作モードを切り替える場合について説明したが、例えば、記録紙Pの表面凹凸状態をセンサで検知し、その検知結果に応じて画像形成動作モードを切り替えるなどの他の構成を採用してもよい。
次に、交流転写モード時の二次転写バイアス(交流転写バイアス)の周波数fについて説明する。
図4は、表面凹凸に富んだ用紙Aに対して、ピークツウピーク電圧Vppの異なる交流転写バイアスの周波数を変更してベタ画像をプリントしたときの凹部転写性を評価した結果を示すグラフである。
この評価に用いた用紙Aは、レザック紙175[kg](厚みが約220[μm]、凹凸差が最大で約100[μm]である用紙)である。
凹部の転写性については、表面凹凸の凹部内に対して十分量のトナーが進入し、凹部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5と評価した。また、凹部内のごく僅かな領域に白く抜けた領域が存在しているか、あるいは、凹部の画像濃度が凸部よりも僅かに低い状態になっている場合を、ランク4と評価した。また、ランク4よりも、凹部の白抜け領域が大きい場合、あるいは凸部に対する凹部の画像濃度低下が目立つ場合を、ランク3と評価した。また、ランク3に比べ、さらに凹部の白抜け領域が大きい場合、あるいは凸部に対する凹部の画像濃度低下が目立つ場合を、ランク2と評価した。また、凹部が全体的に白く、全体的に溝の状態がはっきりと認識できる場合をランク1と評価した。なお、凹部転写性の許容範囲はランク4以上である。
図4に示すように、二次転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppに関わらず、二次転写バイアスの周波数fが一定値以下である場合には、ランク1の評価となり、表面凹凸にならった濃淡パターンが生じる。したがって、二次転写バイアスの周波数fは、当該一定値以上に設定することが必要である。
また、図4に示すように、ピークツウピーク電圧Vppが小さい場合(Vpp=4[kV]の場合)、凹部へ十分量のトナーを転写するためには、より高い周波数が必要となる。逆に、ピークツウピーク電圧Vppが大きい場合(Vpp=8[kV]の場合)、低い周波数でも凹部へ十分量のトナーを転写することができる。これは、ピークツウピーク電圧Vppが大きい場合には、転写ニップ内にトナー粒子を往復移動させるための強い交番電界が形成され、転写ニップ内をトナー粒子が往復移動する回数が同じ場合には、より多くのトナー粒子を往復移動させることができるようになるからである。
図5は、放電による白点出現性の評価としてランク4が得られる交流転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppの最大値と、そのときに凹部転写性の評価としてランク4が得られる最大周波数fmaxとの関係を示すグラフである。
この評価にも上記用紙Aを用いた。二次転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppによっては、二次転写ニップ内において用紙Aの表面凹部と中間転写ベルト31の表面との間の微小ギャップで放電が発生し、画像上に白点(白抜け)を出現させることがある。放電に起因する白点の出現性については、放電に起因するものと考えられる白点が画像上に確認できない状態をランク5と評価した。また、画像上に白点が僅かながら確認できるものの、確認できた数が少なく且つ白点の大きさも小さいことから、ユーザーに提供する画質として問題ないレベルをランク4と評価した。また、ランク4に比べて白点の数が多く、白点の存在が問題あるほど目立つ状態をランク3と評価した。また、ランク3に比べてさらに白点の数が多い場合をランク2と評価した。また、白点が画像全体に分布しており、ランク2よりも更に悪い状態をランク1と評価した。なお、放電に起因する白点は点状に発生するので、凹部転写性の悪化により濃度が低下した凹部とは区別できる。また、白点出現性の許容範囲はランク4以上である。
本実施形態においては、ピークツウピーク電圧Vppの最大値[V]に対して設定可能な最大周波数fmax[Hz]は、下記の式(2)より算出することができる。
fmax = 2×10×Vpp−0.8675 ・・・(2)
図6は、二次転写バイアス(交流転写バイアス)の周波数fと、中間転写ベルト31の表面移動速度(プロセス線速)vとを変化させて、凹凸に富んだ用紙Aにベタ画像を出力し、表面凹凸にならった濃淡パターンの評価を行った結果を示す表である。
この評価では、転写ニップ幅を3[mm]、ピークツウピーク電圧Vppを6[kV]に設定して、二次転写バイアスのオフセット電圧Voffを−1[kV]に固定した。また、濃淡パターンの評価は、目視により画像評価を行い、濃淡パターンが確認されない場合を「○」と評価し、濃淡パターンが確認された場合を「×」と評価した。なお、「転写ニップ幅」とは、記録紙を進入させていない状態における、中間転写ベルト31と二次転写ローラ36との直接当接による二次転写ニップの中間転写ベルト表面移動方向の長さを意味する。
図6に示すように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、二次転写バイアスの周波数fを400[Hz]以上に設定しないと、濃淡パターンの発生を回避することができない。一方、プロセス線速vを141[mm/s]に設定した場合には、二次転写バイアスの周波数fを200[Hz]以上に設定すれば、濃淡パターンの発生を回避することができた。
このように、プロセス線速vに応じて濃淡パターンの発生を回避し得る周波数fの下限値が異なるのは、プロセス線速vに応じて、二次転写ニップ内でトナー粒子に作用させる交番電界の回数が変化するためである。詳しく説明すると、二次転写ニップの通過に要する時間であるニップ通過時間[s]は、d/vから求めることができる。一方、周波数f[Hz]の条件下において、二次転写バイアスの周期[s]は、1/fから求めることができる。よって、ニップ通過時間中に、二次転写バイアスの1周期分の波形が、(d×f/v)回分だけ印加されることとなる。
図6に示した評価において、転写ニップ幅dは3[mm]であり、プロセス線速vが282[mm/s]であるときに濃淡パターンの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]である。このことから、濃淡パターンの発生を回避するのに必要な波形数は、約4.26回分(3×400/282)と計算することができる。これは、二次転写ニップ内において、約4.26回の交番電界をトナー粒子に作用させることで、濃淡パターンの発生を回避し得ることを示している。
同様に、プロセス線速vが141[mm/s]のときには、濃淡パターンの発生を回避し得る周波数fの下限値が200[Hz]であるため、必要な波形数は約4.26回分(3×200/141)と計算することができる。この計算結果は、プロセス線速vが282[mm/s]である場合と同じである。よって、二次転写ニップ通過中のトナー粒子に対して交番電界を4回よりも多く作用させることで、濃淡パターンのない良好な画像を得ることができると言える。以上より、濃淡パターンのない良好な画像を得るためには、下記の式(1)の条件を満たすことが要求される。
f > (4/d)×v ・・・(1)
図7は、ニップ通過時間中における二次転写バイアスの周期回数と凹部転写性との関係を示すグラフである。
このグラフは、凹凸に富んだ2種類の用紙A、Bを、二次転写対向ローラ33に巻き付いた中間転写ベルト31と二次転写ローラ36との間に挟んで固定した状態で、二次転写バイアス(ピークツウピーク電圧Vpp=8[kV]、オフセット電圧Voff=−1[kV])の周波数を変化させて交番電界を一定回数作用させたときの、凹部転写性を評価した結果である。なお、用紙Bは、レザック紙260[kg](厚みが約320[μm]、凹凸差が最大で約160[μm]である用紙)である。図7に示すように、用紙の種類に関わらず、周期回数が増加するほど凹部転写性が向上し、周期回数が4回以上であれば凹部の転写性が良好になることがわかる。
ここで、二次転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppとの関係で、その周波数fを、図5に示した最大周波数fmax以下の周波数範囲内で設定した場合、上記式(1)の関係を満たすために、転写ニップ幅d[mm]を長くする必要が出てくる。特にプロセス線速v[mm/s]が速い高速機においては、長い転写ニップ幅を確保する必要がある。そのため、本実施形態においては、二次転写ローラ36のローラ層の硬度を低くし、長い転写ニップ幅を確保している。
図8は、二次転写ローラ36におけるJIS−A硬度と転写ニップ幅との関係を示すグラフである。
図8に示すように、二次転写ローラ36のローラ層の硬度を低いほど、転写ニップ幅を長くすることができる。ここで、二次転写ローラ36のJIS−A硬度は、二次転写ローラ36の全体を測定器にセットしてJIS−A硬度を測定したものである。
二次転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppの値は、通常、4[kV]以上8[kV]以下の範囲内で設定され、最大で約12[kV]程度に設定される。ピークツウピーク電圧Vppをこれ以上大きくすると、リークの発生等の問題が生ずるためである。一例として、ピークツウピーク電圧Vppが12[kV]であるときに必要な転写ニップ幅dを算出してみると、本実施形態の場合には3.04[mm]となる。3.04[mm]という長さの転写ニップ幅は、図8より、中間転写ベルト31との当接によって圧縮変形するローラ層を有し、JIS−A硬度が60度以下である二次転写ローラ36を用いることで、実現することができる。
また、二次転写ローラ36のローラ層の硬度が低くなると、二次転写ニップへの記録紙の突入時のショックジターが緩和されるというメリットもある。
また、二次転写バイアスとして交流転写バイアスを用いる場合、一般に、強い電気的なハザードを受けて二次転写ローラ36のローラ層にクラックが発生しやすい。本実施形態のように二次転写ローラ36のローラ層の硬度が低い場合には、耐クラック性が向上するので、クラックが発生しにくいというメリットがある。
より良好な凹部転写性を得るには、より長い転写ニップ幅を確保して、二次転写ニップ通過中にトナー粒子に作用する交番電界の回数(周期回数)を増加させることが望まれる。この観点から見れば、ローラ層の硬度は低いほど良いことになるが、ローラ層の硬度を下げ過ぎると、電気抵抗のばらつきが大きくなり、ローラ層の抵抗管理が厳しくなる。また、ローラ層の硬度を下げ過ぎると、二次転写ニップを通過した後の用紙の分離に問題が発生することもある。そのため、二次転写ローラ36の硬度が、少なくともJIS−A硬度で15以上、好ましくは20以上となるようなローラ層を有するのがよい。
なお、本実施形態では、二次転写ニップの転写ニップ幅を確保するために二次転写ローラ36のローラ層の硬度を下げたが、二次転写対向ローラ33のローラ層の硬度を下げても、同様に、転写ニップ幅を確保することができる。この場合における二次転写対向ローラ33のJIS−A硬度は、二次転写対向ローラ33の全体を測定器にセットしてJIS−A硬度を測定したものである。
〔比較実験例1〕
次に、本発明者らが実際に行った比較実験(以下「比較実験例1」という。)について説明する。
本発明者らは、上述した実施形態におけるプリンタと同様の構成をもったプリント試験機を用意し、このプリント試験機を用いて種々のプリントテストを実施した。
二次転写バイアスには、直流成分を定電流制御し、交流成分を定電圧制御したものを用い、プロセス線速は352[mm/s]に設定した。この比較実験例1では、用紙Aにフルカラー画像を連続出力して画像評価を行う。評価項目は、凹部転写性(凹部濃度再現性)、凸部の濃度再現性、放電による白点出現性、ショックジターによる異常画像の有無である。
凹部転写性及び放電による白点出現性の評価方法は上述したものと同様である。
凸部の濃度再現性については、凸部において十分な画像濃度が得られている場合をランク5と評価した。また、ランク5に比べてやや画像濃度が低いが、問題のない画像濃度が得られている場合を、ランク4と評価した。また、ランク4に比べてさらに画像濃度が低く、ユーザーに提供する画質としては問題となるレベルをランク3と評価した。また、ランク3に比べてさらに画像濃度が低い場合をランク2と評価した。また、凸部が全体的に画像濃度が低く、白っぽい場合をランク1と評価した。ユーザーに提供できる画質の許容レベルとしては、ランク4以上である。
また、ショックジターの評価は、目視で確認し、ショックジターによる異常画像が確認されなかった場合を「○」とし、異常画像が確認された場合を「×」と評価した。
比較例1は、二次転写バイアスとして、直流電流が−60[μA]、ピークツウピーク電圧Vppが8.0[kV]、周波数700[Hz]の交流転写バイアスを用い、二次転写ローラとして、JIS−A硬度が70であるものを用いたものである。このときの転写ニップ幅は、約2.0[mm]である。
一方、実施例1は、二次転写バイアスには上記比較例1と同じものを用いるが、二次転写ローラとして、JIS−A硬度が60であるものを用いたものである。
また、実施例2は、二次転写バイアスには上記比較例1と同じものを用いるが、二次転写ローラとして、JIS−A硬度が50であるものを用いたものである。
また、実施例3は、上記実施例2における二次転写ローラと二次転写対向ローラとの間でローラ硬度を入れ替えたものである。
実施例1における転写ニップ幅は約2.3[mm]であり、実施例2及び実施例3における転写ニップ幅は約2.7[mm]である。
図9は、本比較実験例1の結果を示す表である。
図9に示すように、比較例1では、二次転写バイアスの周波数fに対して転写ニップ幅dが不足し、上記式(1)を満たさない。そのため、凹部転写性の評価が低く、また凸部の転写性も悪い結果、凸部の濃度再現性の評価も低い。更には、ショックジターも発生している。これに対し、実施例1及び実施例2では、二次転写ローラ36の硬度が低いので、長い転写ニップ幅が確保でき、上記式(1)を満たすことができている。そのため、凹部転写性及び凸部の濃度再現性について許容範囲以上の評価が得られている。また、ショックジターの発生も抑制できている。また、実施例3のように二次転写対向ローラ33側の硬度を低くしても、同様の効果が得られることが確認された。
〔比較実験例2〕
次に、本発明者らが実際に行った別の比較実験(以下「比較実験例2」という。)について説明する。
この比較実験例2では、凹凸に富んだ用紙Aと凹凸の少ない用紙Cを用いて、それぞれに画像を出力する実験を行った。用紙Cは、マイペーパと呼ばれる坪量70[gsm]の標準紙である。本比較実験例2でも、上記比較実験例1のプリント試験機を用いて、用紙A及び用紙Cにフルカラー画像を連続出力して画像評価を行う。評価項目は、凹部転写性(用紙Aのみ)、凸部(用紙Bについては画像全体)の濃度再現性、放電による白点出現性、ショックジターによる異常画像の有無である。これらの評価項目についての評価方法は、上記比較実験例1の場合と同じである。
比較例2は、いずれの用紙A、Cに対しても、二次転写バイアスとして、直流電流が−70[μA]となるように定電流制御された直流転写バイアスを用い、二次転写ローラとして、JIS−A硬度が50であるものを用いたものである。転写ニップ圧は、総圧が150[N]となるように設定した。なお、圧測定については、面圧力分布測定システム(I−scan)を用いてFront、Center、Rearの3点を測定し、3点の平均値に(ローラ幅)/(測定幅)をかけて総圧とした。
一方、実施例4は、いずれの用紙A、Cに対しても、二次転写バイアスとして、直流電流が−60[μA]、ピークツウピーク電圧Vppが7.0[kV]、周波数900[Hz]の交流転写バイアスを用い、二次転写ローラとして、JIS−A硬度が50であるものを用いたものである。転写ニップ圧は、総圧が70[N]となるように設定した。
また、実施例5は、用紙Aに対しては、上記実施例4と同じ二次転写バイアス(交流転写バイアス)を用い、用紙Cに対しては、上記比較例2と同じ二次転写バイアス(直流転写バイアス)を用いたものである。二次転写ローラは上記実施例4と同じものであり、転写ニップ圧も上記実施例4と同じものである。
図10は、本比較実験例2の結果を示す表である。
図10に示すように、比較例2では、二次転写バイアスとして直流転写バイアスを用いているので、凹凸に富んだ用紙Aについては凹部へのトナー転写が行われず、凹部転写性の評価が低い結果となった。また、比較例2は、二次転写ローラがJIS−A硬度で50である比較的柔らかいものの、転写ニップ圧が高いため、転写ニップに用紙Aが突入するときのショックジターが発生している。なお、用紙Cについてはショックジターが発生していないが、これは、用紙Cが用紙Aと比べて薄くてコシの弱いものであり、高い転写ニップに用紙Cが突入しても、ショックジターを発生させるほどの衝撃が発生しないためであると考えられる。
一方、実施例4では、いずれの用紙A、Cに対しても交流転写バイアスを用いて二次転写を行ったものである。凹凸の富んだ用紙Aについては、凹部転写性及び凸部の濃度再現性について許容範囲以上の評価が得られている。また、凹凸の少ない用紙Cについても、転写ニップ圧が総圧70[N]と比較的低いにもかかわらず、凸部の濃度再現性(画像全体の濃度再現性)について許容範囲以上の評価が得られている。ただし、用紙Cについては、白点再現性が若干悪い評価となっている。
これに対し、実施例5では、凹凸の富んだ用紙Aについては、上記実施例4と同じ条件であるため、評価結果も上記実施例4と同じものとなっているが、凹凸の少ない用紙Cについては、直流転写バイアスを用いて二次転写を行っている。この場合、凹凸の少ない用紙Cについて交流転写バイアスを用いた上記実施例4と比較すると、白点再現性の改善が見られる。
〔変形例1〕
次に、本実施形態の一変形例(以下「変形例1」という。)について説明する。
図11は、本変形例1におけるプリンタを示す概略構成図である。
本変形例1におけるプリンタは、上述した実施形態における二次転写ローラ36に代えて、二次転写ベルト136を採用している。この二次転写ベルト136は、二次転写ローラ136Aと、2つの張架ローラ136B,136Cとに張架された状態で配設されている。この構成においても、二次転写ローラ136Aの硬度を、上述した実施形態における二次転写ローラ36の場合と同様に低く設定することで、同様の効果を得ることができる。
〔変形例2〕
次に、本実施形態の他の変形例(以下「変形例2」という。)について説明する。
図12は、転写ニップ圧が高い高加圧状態における本変形例2の二次転写部を示す概略構成図である。
図13は、転写ニップ圧が低い低加圧状態における本変形例2の二次転写部を示す概略構成図である。
本変形例2においては、二次転写ローラ36の回転軸36aを支持する支持ユニット61が回動軸61aを中心に回動自在に設けられている。この支持ユニット61は、二次転写ローラ36を中間転写ベルト31に押し付ける向き(押し上げる向き)に回動軸61aを中心に回動するように、付勢手段としての圧縮スプリング66によって付勢されている。
本変形例2においては、中間転写ベルト31と二次転写ローラ36との間の当接圧力を切り替える当接圧力切替手段を備えている。具体的に説明すると、図12に示すような高加圧状態にする場合には、図示のように、二次転写対向ローラ33の回転軸33aの両端に固定された2つの偏心カム62,63を、二次転写ローラ36の回転軸36aの両端に固定された空転コロ64,65に突き当てない位置で停止させる。つまり、高加圧状態の場合には、偏心カム62,63による二次転写ローラ36の押し下げを実施しない。したがって、中間転写ベルト31と二次転写ローラ36との間の転写ニップ内では、圧縮スプリング66による付勢力によって高い当接圧力(転写ニップ圧)が生じる。
一方、図13に示すような低加圧状態にする場合には、図示のように、二次転写対向ローラ33の回転軸33aの両端に固定された2つの偏心カム62,63を、二次転写ローラ36の回転軸36aの両端に固定された空転コロ64,65に突き当てる位置で停止させる。つまり、低加圧状態の場合には、偏心カム62,63による二次転写ローラ36の押し下げを実施する。これにより、圧縮スプリング66による付勢力が中間転写ベルト31と転写ローラ36との間の転写ニップ内に作用するのを規制し、転写ニップ内の当接圧力(転写ニップ圧)が低いものとなる。
転写ニップ圧が高いほど、二次転写ニップへの記録紙Pの進入時に中間転写ベルト31や二次転写ローラ36で発生する負荷変動が大きく、いわゆるショックジターなどの不具合が発生しやすい。したがって、ショックジター等の不具合を軽減する観点からすると、転写ニップ圧を低くすることが好ましい。一方、転写ニップ圧は転写率などにも影響を与えるパラメータであるが、上述したとおり、二次転写バイアスとして交流転写バイアスを用いた場合、直流転写バイアスの場合より低い転写ニップ圧でも高い転写率が得られる。したがって、二次転写バイアスとして交流転写バイアスを用いる場合には、目標の転写率を維持しつつ、直流転写バイアスの場合より転写ニップ圧を低くすることが可能である。
本変形例2においては、上述した当接圧力切替手段を備えているので、二次転写バイアスとして交流転写バイアスを用いる場合と、直流転写バイアスを用いる場合とで、転写ニップ圧を変更することができる。したがって、例えば、交流転写バイアスを用いる場合、直流転写バイアスを用いる場合よりも転写ニップ圧を低くし、目標の転写率を維持しつつ、ショックジター等の不具合を抑制することができる。
また、図12と図13とを比較すると、偏心カム62,63による二次転写ローラ36の押し下げを実施したときにおける転写ニップ幅d2は、押し下げを実施しないときの転写ニップ幅d1よりも短くなる。上述したとおり、転写ニップ幅dが長いほど、上記式(1)に基づいて設定される二次転写バイアスの周波数fの許容範囲や、二次転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppの許容範囲などが広がる。したがって、本変形例2によれば、例えば、記録紙Pの種類や画像形成モードなどの違いに応じて、二次転写バイアスの周波数fやピークツウピーク電圧Vppを変更する制御を行う場合に、その制御に合わせて、上述した当接圧力切替手段により転写ニップ幅dを変更するという制御が可能となる。
なお、本変形例2における当接圧力切替手段の利用態様は、本変形例2で説明したものに限られない。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
表面移動する中間転写ベルト31等の像担持体と該像担持体の表面に当接配置される二次転写ローラ36等の転写部材との間の転写ニップに、直流成分と交流成分とを含む交流転写バイアスを印加する二次転写電源39等の転写バイアス印加手段を有し、該転写ニップを通過する記録紙P等の記録シートに対し、該像担持体の表面に担持されるトナー像を該交流転写バイアスの作用によって転写する画像形成装置において、上記転写部材のJIS−A硬度が60以下であることを特徴とする。
これによれば、交流転写バイアスを用いて像担持体から記録シートにトナー転写を行う場合に、転写部材における圧縮変形層が像担持体との当接によって圧縮変形しやすく、長い転写ニップ幅dを確保することができる。その結果、像担持体の表面移動速度(プロセス線速v)が速い場合であっても、凹凸に富んだ記録シートに対しては凹部転写性が高まり、表面凹凸にならった濃淡パターンの発生が抑制される。また凹凸の少ない記録シートに対しては、像担持体の表面移動速度(プロセス線速v)が速い場合であっても、高い転写率が得られ、高い画像濃度再現性が得られる。
(態様B)
表面移動する中間転写ベルト31等のベルト状の像担持体と該像担持体を支持する二次転写対向ローラ33等の支持部材に該像担持体を介して対向配置される転写部材との間の転写ニップに、直流成分と交流成分とを含む交流転写バイアスを印加する二次転写電源39等の転写バイアス印加手段を有し、該転写ニップを通過する記録紙P等の記録シートに対し、該像担持体の表面に担持されるトナー像を該交流転写バイアスの作用によって転写する画像形成装置において、上記支持部材のJIS−A硬度が60以下であることを特徴とする。
これによれば、交流転写バイアスを用いて像担持体から記録シートにトナー転写を行う場合に、像担持体における圧縮変形層が転写部材との当接によって圧縮変形しやすく、長い転写ニップ幅dを確保することができる。その結果、像担持体の表面移動速度(プロセス線速v)が速い場合であっても、凹凸に富んだ記録シートに対しては凹部転写性が高まり、表面凹凸にならった濃淡パターンの発生が抑制される。また凹凸の少ない記録シートに対しては、像担持体の表面移動速度(プロセス線速v)が速い場合であっても、高い転写率が得られ、高い画像濃度再現性が得られる。
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、上記JIS−A硬度が15以上であることを特徴とする。
これによれば、転写部材や像担持体における圧縮変形層の硬度を下げ過ぎることにより当該層の電気抵抗管理が厳しくなったり転写ニップ通過後の用紙分離性が悪化したりするといった弊害を少なくできる。
(態様D)
上記態様Cにおいて、上記JIS−A硬度が20以上であることを特徴とする。
これによれば、転写部材や像担持体における圧縮変形層の硬度を下げ過ぎることにより当該層の電気抵抗管理が厳しくなったり転写ニップ通過後の用紙分離性が悪化したりするといった弊害を、より少なくすることができる。
(態様E)
上記態様A〜Dのいずれかの態様において、上記交流転写バイアスの周波数f[Hz]と、上記転写ニップの像担持体表面移動方向長さd[mm]と、上記像担持体の表面移動速度v[mm/s]との関係が、下記の式(1)を満たすことを特徴とする。
f > (4/d)×v ・・・(1)
これによれば、凹凸に富んだ記録シートに対しては凹部転写性が高まり、表面凹凸にならった濃淡パターンの発生を抑制できる。また凹凸の少ない記録シートに対しては高い転写率が得られ、高い画像濃度再現性を得ることができる。
(態様F)
上記態様Eにおいて、上記交流転写バイアスの周波数fは、上記転写ニップ内又はその近傍で白点等の画像白抜けを生じさせる放電が発生しない範囲で該交流転写バイアスのピークツウピーク電圧Vppを設定したときに目標の転写率が達成される周波数範囲に設定されていることを特徴とする。
これによれば、凹凸に富んだ記録シートに対しては、白点等の画像白抜けが抑制され、かつ、表面凹凸にならった濃淡パターンの発生が抑制された画像を形成することができる。また、凹凸の少ない記録シートに対しても、白点等の画像白抜けが抑制され、かつ、高い画像濃度再現性を得られた画像を形成することができる。
(態様G)
上記態様A〜Fのいずれかの態様において、上記像担持体と上記転写部材との間の当接圧力を切り替える当接圧力切替手段を有することを特徴とする。
これによれば、転写ニップ圧を変更したり、転写ニップ幅を変更したりすることが可能となり、上述した変形例2で説明したような種々の制御を実現することが可能となる。
(態様H)
上記態様Gにおいて、上記転写バイアス印加手段は、上記転写ニップに対し、上記交流転写バイアスを印加する交流動作モードと、交流成分を含まない直流成分のみからなる直流転写バイアスを印加する直流動作モードとを備えており、上記当接圧力切替手段は、上記転写バイアス印加手段が上記交流動作モードで動作するときには、上記直流動作モードで動作するときよりも上記当接圧力が低くなるように、該当接圧力を切り替えることを特徴とする。
これによれば、交流動作モード時に、直流動作モード時よりも転写ニップ圧を低くして、目標の転写率を維持しつつ、ショックジター等の不具合を抑制することができる。
1 画像形成ユニット
2 感光体
31 中間転写ベルト
33 二次転写対向ローラ
35 一次転写ローラ
36 二次転写ローラ
61 支持ユニット
62,63 偏心カム
64,65 空転コロ
66 圧縮スプリング
136 二次転写ベルト
136A 二次転写ローラ
特開2012−63746号公報

Claims (6)

  1. 表面移動する像担持体と該像担持体の表面に当接配置される転写部材との間の転写ニップに、直流成分と交流成分とを含む交流転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を有し、該転写ニップを通過する記録シートに対し、該像担持体の表面に担持されるトナー像を該交流転写バイアスの作用によって転写する画像形成装置において、
    上記転写部材のJIS−A硬度が60以下であり、
    上記像担持体と上記転写部材との間の当接圧力を切り替える当接圧力切替手段を有し、
    上記転写バイアス印加手段は、上記転写ニップに対し、上記交流転写バイアスを印加する交流動作モードと、交流成分を含まない直流成分のみからなる直流転写バイアスを印加する直流動作モードとを備えており、
    上記当接圧力切替手段は、上記転写バイアス印加手段が上記交流動作モードで動作するときには、上記直流動作モードで動作するときよりも上記当接圧力が低くなるように、該当接圧力を切り替えることを特徴とする画像形成装置。
  2. 表面移動するベルト状の像担持体と該像担持体を支持する支持部材に該像担持体を介して対向配置される転写部材との間の転写ニップに、直流成分と交流成分とを含む交流転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段を有し、該転写ニップを通過する記録シートに対し、該像担持体の表面に担持されるトナー像を該交流転写バイアスの作用によって転写する画像形成装置において、
    上記支持部材のJIS−A硬度が60以下であり、
    上記像担持体と上記転写部材との間の当接圧力を切り替える当接圧力切替手段を有し、
    上記転写バイアス印加手段は、上記転写ニップに対し、上記交流転写バイアスを印加する交流動作モードと、交流成分を含まない直流成分のみからなる直流転写バイアスを印加する直流動作モードとを備えており、
    上記当接圧力切替手段は、上記転写バイアス印加手段が上記交流動作モードで動作するときには、上記直流動作モードで動作するときよりも上記当接圧力が低くなるように、該当接圧力を切り替えることを特徴とする画像形成装置。
  3. 請求項1又は2の画像形成装置において、
    上記JIS−A硬度が15以上であることを特徴とする画像形成装置。
  4. 請求項3の画像形成装置において、
    上記JIS−A硬度が20以上であることを特徴とする画像形成装置。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
    上記交流転写バイアスの周波数f[Hz]と、上記転写ニップの像担持体表面移動方向長さd[mm]と、上記像担持体の表面移動速度v[mm/s]との関係が、下記の式(1)を満たすことを特徴とする画像形成装置。
    f > (4/d)×v ・・・(1)
  6. 請求項5の画像形成装置において、
    上記交流転写バイアスの周波数fは、上記転写ニップ内又はその近傍で画像白抜けを生じさせる放電が発生しない範囲で該交流転写バイアスのピークツウピーク電圧を設定したときに目標の転写率が達成される周波数範囲に設定されていることを特徴とする画像形成装置。
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