以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという。)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。
本実施形態のプリンタには、オペレーションパネル50が備わっており、ユーザーはオペレーションパネル50に対して指示を入力したり、オペレーションパネル50に表示される画面を確認したりすることができる。オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによってユーザーによる入力操作を受け付けたりする。オペレーションパネル50は、本プリンタの制御部60に接続されており、制御部60から送られてくる制御信号に基づいてタッチパネルに画像を表示することができる。
本実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY、M、C、Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム状の基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本プリンタでは、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y、M、C、K用の現像装置の第2収容室内にY、M、C、Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY、M、C、Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部60は、RAMに、Y、M、C、Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY、M、C、K用のVtrefを記憶している。Y、M、C、Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y、M、C、K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY、M、C、Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y、M、C、K用の現像装置における第2搬送室内にY、M、C、Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、かつ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図1において、Y、M、C用の画像形成ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY、M、Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY、M、C、K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写対向ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35K、2次転写ローラ36、ベルトクリーニング装置37、トナー付着量検知手段としての濃度センサ38などを有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写対向ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
中間転写ベルト31としては、材料が例えばカーボン分散ポリイミド樹脂からなるものを用いることができる。中間転写ベルト31の厚みは、20[μm]以上200[μm]以下、好ましくは60[μm]程度のものを用いることができる。中間転写ベルト31の体積抵抗率は、106[Ω・cm]以上1012[Ω・cm]以下、好ましくは約109[Ω・cm]程度のものを用いることができる。なお、この体積抵抗率は、三菱化学製ハイレスタ−UPMCPHT45にて、印加電圧100Vの条件で測定したものである。
4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY、M、C、K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY、M、C、Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M、C、K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM、C、Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなる。本実施形態の1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kの外形は16[mm]であり、芯金の径は10[mm]であり、スポンジ層の電気抵抗値は約3×107[Ω]である。なお、スポンジ層の電気抵抗値Rは、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラの芯金に1000[V]の電圧Vを印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したものである。本実施形態では、このような1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30の2次転写ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写対向ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、2次転写ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ36は接地されているのに対し、2次転写対向ローラ33には、2次転写電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写対向ローラ33と2次転写ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写対向ローラ33側から2次転写ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
転写ユニット30の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写対向ローラ33は、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。本実施形態の2次転写対向ローラ33は、外径が約24[mm]であり、芯金の径が約16[mm]であり、NBR系ゴム層の抵抗が1×106[Ω]以上1×1012[Ω]以下、好ましくは約4×107[Ω]のものを用いることができる。このNBR系ゴム層の抵抗値は、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
また、2次転写ローラ36も、芯金と、これの表面に被覆された導電性のNBR系ゴム層とを具備するものである。本実施形態の2次転写ローラ36は、外径が約24[mm]であり、芯金の径が約14[mm]であり、NBR系ゴム層の抵抗が1×106[Ω]以下のものを用いることができる。このNBR系ゴム層の抵抗値は、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
転写バイアス印加手段としての2次転写電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧(直流成分)に交流電圧(交流成分)を重畳せしめた交番電圧を2次転写ニップに印加することができる。また、2次転写電源39は、定電流制御を行うことも可能である。2次転写電源39の出力端子は、2次転写対向ローラ33の芯金に接続されている。2次転写対向ローラ33の芯金の電位は、2次転写電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。
また、2次転写ローラ36の記録材搬送方向下流側には、用紙分離補助のための分離装置200が設置されている。本実施形態の分離装置200は鋸歯状の除電針で構成されている。
このような交番電圧からなる2次転写バイアスを2次転写対向ローラ33に印加し、かつ、2次転写ローラ36を接地するという構成に代えて、交番電圧からなる2次転写バイアスを2次転写ローラ36に印加し、かつ、2次転写対向ローラ33を接地するという構成を採用してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用いかつ2次転写ローラ36を接地した条件で、2次転写対向ローラ33に2次転写バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、2次転写バイアスの時間平均値をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写対向ローラ33を接地し、かつ2次転写バイアスを2次転写ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、2次転写バイアスの時間平均値をトナーとは逆のプラス極性にする。
また、このような交番電圧からなる2次転写バイアスを2次転写対向ローラ33や2次転写ローラ36のいずれか一方に印加する代わりに、直流電圧をいずれか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加するという構成を採用してもよい。
なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、2次転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、上述した交番電圧に切り替える必要がある。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側で、駆動ローラ32に巻き付いたベルト部分に対して、約4[mm]の間隙を介して対向配置されている。そして、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が当該対向位置に進入した際に、そのトナー像のトナー付着量を測定する。
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY、M、C用の1次転写ローラ35Y,35M,35Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,35M,35Cを、感光体2Y,2M,2Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,2M,2Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
図3は、2次転写電源39から出力される2次転写バイアスの一例を示す波形図である。
2次転写電源39は、転写バイアス印加手段として機能し、その出力電圧を2次転写対向ローラ33の芯金に印加することで、接地されている2次転写ローラ36の芯金と、2次転写対向ローラ33の芯金との間に2次転写バイアスが印加される。本実施形態の2次転写バイアスは、2次転写対向ローラ33の芯金の電位から2次転写ローラ36の芯金の電位を差し引いた値であり、2次転写ローラ36の芯金はゼロ[V]であることから、2次転写電源39の出力電圧にほぼ一致する。
2次転写バイアスは、上述したように、直流成分に交流成分を重畳させたものであり、その時間平均値は、本実施形態のように正規帯電極性がマイナス極性であるトナーを用いる場合には、マイナス極性に設定される。これは、2次転写ローラ36の電位を2次転写対向ローラ33の電位よりもトナーの正規帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることを意味する。中間転写ベルト31の外周面に付着したトナーを2次転写ローラ36側へ静電的に移動させることができる。
図3において、オフセット電圧Voffは2次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。本実施形態の交流成分は正弦波形を示すものであるので、オフセット電圧Voffは、交流成分の時間平均値と一致する。なお、オフセット電圧Voffは、交流成分の時間平均値とが一致しない非対称波形をもつ2次転写バイアスを用いてもよい。
本実施形態において、2次転写バイアスは、記録紙Pに対して中間転写ベルト31上のトナー像を2次転写する際に、当該トナー像を中間転写ベルト31側から記録紙P側に転写させる転写方向の極性(マイナス極性)をもった送り電圧と、当該送り電圧とは逆極性(プラス極性)の戻し電圧とが交互に切り替わる交番電圧である。この2次転写電圧の時間平均値は、トナー像を中間転写ベルト31側から記録紙P側に転写させる転写方向の極性(マイナス極性)に設定されている。本実施形態においては、このような2次転写バイアスが印加されることで、2次転写バイアスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているとき(すなわち送り電圧が印加されているとき)には、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写対向ローラ33側から2次転写ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、2次転写電圧の極性がトナーとは逆のプラス極性になっているとき(すなわち戻し電圧が印加されているとき)には、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写ローラ36側から2次転写対向ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。
次に、本発明者らが行った観測実験について説明する。
本発明者らは、2次転写ニップ内におけるトナーの挙動を観測するために、特殊な観測実験装置を製造した。
図4は、その観測実験装置を示す概略構成図である。
この観測実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin
Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属板215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板210の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュー部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上でかつ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写電圧が入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写電圧が印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写電圧を印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録紙214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極212の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
透明基板210上におけるトナーの挙動を、次のようにして撮影した。すなわち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写電圧を印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影した。
図4に示した観測実験装置と、実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録紙に転写する転写ニップの構造が異なるため、転写電圧が同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、観測実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写電圧条件を調べてみた。記録紙214としては、(株)NBSリコー社製のFC和紙タイプ「さざ波」と呼ばれるものを使用した。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。観測実験装置では、記録紙(さざ波)の裏面に転写電圧を印加する構成になっているため、トナーを記録紙に転写し得る転写電圧の極性が、実施形態に係るプリンタとは逆になっている(すなわち、プラス極性)。2次転写電圧の交流成分の周波数fを1000[Hz]、直流成分を200[V]、ピークツウピーク電圧Vppを1000[V]に設定し、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、「さざ波」の表面の凹部上で十分な画像濃度を得ることができた。
そのとき、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。すなわち、トナー層216中のトナー粒子は、転写電圧によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加した。具体的には、転写ニップにおいては、転写電圧の交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。
初めの1周期では、図5に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図6に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図7に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(観測実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙Pの凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
次に、本実施形態のプリンタの画像形成動作モードについて説明する。
本実施形態では、ユーザーの指示に応じて、上述した直流成分に交流成分を重畳させた上述の2次転写バイアスを印加して画像形成を実施する凹凸紙モード(第1動作モード)と、交流成分を含まない直流転写バイアスからなる2次転写バイアスを印加して画像形成を実施する普通紙モード(第2動作モード)とを備えている。
ユーザーは、プリントする記録紙Pが凹凸に富んだものである場合には、オペレーションパネル50を操作して凹凸紙モードを選択する操作を行う。これにより、直流成分に交流成分を重畳させた2次転写バイアスを用いて画像形成が実施され、凹凸に富んだ記録紙Pに対しても、その表面凹凸にならった濃淡パターンの発生が抑制された高品質な画像を形成することができる。
一方、プリントする記録紙Pが凹凸の少ない一般的な用紙等である場合、ユーザーは、図示しないオペレーションパネル50を操作して普通紙モードを選択する操作を行う。これにより、交流成分を含まない直流転写バイアスからなる2次転写バイアスを用いて画像形成が実施される。一般に、凹凸の少ない一般的な用紙に対しては、2次転写バイアスとして直流転写バイアスを用いた方が高画質な画像を形成しやすい。また、2次転写バイアスに交流成分が含まれていると、2次転写ニップを構成する部材(2次転写ローラ36、中間転写ベルト31、2次転写対向ローラ33等)が強い電気的なハザードを受ける。この点を考慮すると、2次転写ニップに対してはなるべく交流成分を印加するのを避けることが、これらの部材の寿命を延ばすことにつながる。
一般に、2次転写バイアスが大きいほど、2次転写効率が高まるので、高画質化につながる一方、トナー帯電量に対して2次転写バイアスが大きすぎると、2次転写ニップ内において放電が発生し、その放電箇所のトナーが散ってしまい、画像を乱す結果を招く。したがって、2次転写バイアスは、放電の発生を防止できる範囲内で、なるべく大きな値に設定される。他方、1次転写バイアスが大きいほど1次転写効率が高まるので、高画質化につながる一方、1次転写バイアスが大きいほど、中間転写ベルト31上に転写されたトナーの帯電量が増大する。そのため、1次転写バイアスは、中間転写ベルト31上のトナー帯電量が、2次転写バイアスが印加された2次転写ニップ内で放電を発生させるほど大きくならない範囲内で、なるべく大きな値に設定される。
普通紙モードでは、このようにして設定された1次転写バイアス及び2次転写バイアスを用いることで高画質化を実現しているが、凹凸紙モードにおいて普通紙モードと同じ大きさの1次転写バイアスを用いると、2次転写ニップ内で放電が発生する。これは、凹凸紙モードでは、直流成分に交流成分を重畳させた2次転写バイアスが用いられる関係で、直流成分のみからなる直流転写バイアスを用いる構成と比較して、2次転写ニップに印加される2次転写バイアスの絶対値の最大値が大きいものとなるためである。そのため、凹凸紙モードと同じ帯電量のトナーが2次転写ニップ中に進入すると、2次転写バイアスの絶対値が最大値を示す時期に、放電が発生してしまう。
そこで、本実施形態では、直流成分に交流成分を重畳させた2次転写バイアスを用いる凹凸紙モードにおいては、直流転写バイアスからなる2次転写バイアスを用いる普通紙モードの場合よりも1次転写バイアスの大きさを低くしている。これにより、2次転写ニップに進入するトナーの帯電量が普通紙モードの場合よりも低いものとなり、放電の発生が抑制される。
なお、ここでは、ユーザー操作により画像形成動作モードを切り替える場合について説明したが、例えば、記録紙Pの表面凹凸状態をセンサで検知し、その検知結果に応じて画像形成動作モードを切り替えるなどの他の構成を採用してもよい。
次に、本実施形態のプリンタが所定のタイミングで実行する画質調整制御(プロセスコントロール)について説明する。
本実施形態の画質調整制御の具体的な内容は、画像濃度階調の調整制御、トナー濃度補正制御、色ズレ補正制御など、多岐にわたる。
画像濃度階調の調整制御を実行する場合、まず、各色感光体2Y,2M,2C,2Kの表面に対し、トナー付着量が互いに異なるように互いに異なる画像形成条件(現像ポテンシャル)でテストトナー像である16個のトナーパッチ(以下、これらのトナーパッチの一群を階調テストパターンという。)を形成する。各色の階調テストパターンは、通常の画像形成動作と同様に中間転写ベルト31上に転写される。中間転写ベルト31に転写された各色の階調テストパターンは、中間転写ベルト31の表面移動に伴って濃度センサ38との対向位置まで搬送され、その対向位置で濃度センサ38により各トナーパッチのトナー付着量が検出される。具体的には、濃度センサ38として例えば光学センサを用いる場合、濃度センサ38によって各トナーパッチの光学濃度を検出し、その検出値と所定の付着量算出アルゴリズムとを用いて、各トナーパッチのトナー付着量を算出する。
図8は、中間転写ベルト31上に形成される階調テストパターンの一例を示す説明図である。
本実施形態の階調テストパターンは、図8に示すように、トナー付着量の異なる16個のトナーパッチが中間転写ベルト31の表面移動方向に沿って配置されており、各トナーパッチが濃度センサ38との対向位置を順次通過して、そのトナー付着量が検出されるように構成されている。
各色の階調テストパターンについて、各トナーパッチのトナー付着量が検出されたら、これらのトナー付着量と画像形成条件(現像ポテンシャル)との関係から、直線方程式y=ax+bを求めた後、現像能力を示す指標値である現像γ(現像ポテンシャルを横軸、トナー付着量を縦軸にした時の傾きa)及び現像開始電圧Vk(現像ポテンシャルを横軸、トナー付着量を縦軸にした時の切片b)を求める。その求めた現像γ、現像開始電圧Vkに基づいて、適正なトナー付着量となる現像ポテンシャルとなるように、各感光体2Y,2M,2C,2Kに対して照射する光書込ユニット80のレーザー光の強度、各帯電装置6Y,6M,6C,6Kの帯電バイアス、各現像装置8Y,8M,8C,8Kの現像バイアスなどの作像条件を調整する。
また、トナー濃度補正制御を実行する場合、例えば連続プリント中の画像間(非画像領域)に、通常の画像形成動作と同様の方法で、中間転写ベルト31の表面に一定面積のベタパッチ(テストトナー像)を形成する。そして、そのベタパッチのトナー付着量を濃度センサ38によって検出し、検出されたトナー付着量に応じて現像装置に対するトナー補給制御を補正する。
また、色ズレ補正制御は、例えば、電源投入時、ジョブ終了時などの所定の非画像形成動作時に実行される。色ズレ補正制御は、まず、図9に示すように、各色のトナーマーク(テストトナー像)を所定配列した色ズレ補正パターンを中間転写ベルト31上に形成する。そして、中間転写ベルト31上の色ズレ補正パターンを濃度センサ38で検知し、各色トナーマークの検知タイミングから、各色トナーマークの理想位置からのズレ量を計算し、必要な位置ズレ補正量を算出する。そして、この位置ズレ補正量に基づいて、例えば駆動モータの目標回転速度プロファイルを修正して、各色トナー像の相対位置ズレ(色ズレ)を補正する。なお、位置ズレ補正量は、光書込ユニットによる書込タイミングなど、他の転写位置を調整し得る他の制御にフィードバックしてもよい。
ここで、上述した、画像濃度階調の調整制御、トナー濃度補正制御、色ズレ補正制御などの画質調整制御を実行する場合、本実施形態では上述した各種テストトナー像を中間転写ベルト31上に形成し、これを濃度センサ38によって検知する。この一連の動作において、本実施形態では2次転写ニップに印加されるバイアスの影響はほとんどない。一方、凹凸紙モードの2次転写バイアスのように交流成分が含まれたバイアスを2次転写ニップに印加した状態で画質調整制御を実行すると、2次転写ニップに対して無駄に交流成分を印加する結果となる。2次転写ニップに交流成分が印加されると、上述したように2次転写ニップを形成する部材(2次転写ローラ36、中間転写ベルト31、2次転写対向ローラ33等)が強い電気的なハザードを受け、これらの部材の短寿命化につながる。更に、画質調整制御を凹凸紙モードで実行すると、一次転写バイアスの大きさが普通紙モードの場合よりも小さい設定で画質調整制御が行われる関係で、普通紙モード時の適切な画質調整ができなくなる。
そこで、本実施形態における画質調整制御は普通紙モードで実行することとし、その画質調整制御中は、普通紙モードの一次転写バイアス(凹凸紙モードよりも大きな一次転写バイアス)を用い、かつ、2次転写領域には交流成分を含まない直流バイアスを印加するようにしている。これにより、普通紙モード時の適切な画質調整が可能となるとともに、2次転写ニップを形成する部材の交流成分による電気的ハザードを抑制できる。
なお、本実施形態においては、画質調整制御時に、2次転写ニップに直流バイアスを印加する構成としている。これによれば、画質調整制御時には普通紙モードで動作すればよいので、画質調整制御専用の動作モードを用意する必要がなく、制御の簡素化を図ることができる。一方で、例えば、2次転写ニップへのバイアス印加をOFFにした状態で中間転写ベルト31上にテストトナー像を形成するという画質調整制御専用の動作モードを用意する場合には、画質調整制御時に、2次転写ニップへ印加するバイアスをOFFにしてもよい。
また、画質調整制御時に中間転写ベルト31上に形成されたテストトナー像は、濃度センサ38の対向位置でトナー付着量が検出された後、2次転写ニップを通過してベルトクリーニング装置37によりクリーニングされる。この2次転写ニップ通過時において、2次転写ニップにトナーを2次転写ローラ36側へ移動させるバイアスが印加されていると、テストトナー像のトナーが2次転写ローラ36の表面に大量に付着し、その後の画像形成動作時の記録紙Pの裏面にトナー汚れを生じさせる場合がある。このとき、2次転写ニップへのバイアス印加がOFFになっていても、トナーが2次転写ニップを通過するときに2次転写ローラ36側へ機械的な付着力等により移動してしまう場合があり、この場合も、記録紙Pの裏面にトナー汚れを生じさせる場合がある。
テストトナー像のトナーが2次転写ローラ36の表面に大量に付着しても、これを2次転写ローラ36の表面から除去するクリーニング装置を設けることで、記録紙裏面のトナー汚れを防止することも可能である。ただし、一般に、2次転写ローラ36用のクリーニング装置は、ベルトクリーニング装置37と比較してクリーニング性能に劣るものが採用されるため、大量のトナーが2次転写ローラ36の表面に付着すると、これを十分に除去しきれずに、記録紙裏面のトナー汚れを防止することが困難である。よって、テストトナー像のトナーを2次転写ローラ36に転写してこれを2次転写ローラ36のクリーニング装置で除去する場合には、通常よりも強力なクリーニング性能をもったクリーニング装置を採用することが好ましい。
また、このような記録紙裏面のトナー汚れを防止する方法としては、例えば、中間転写ベルト31の表面と2次転写ローラ36の表面とを接離させる接離機構を設け、画質調整制御時には中間転写ベルト31の表面と2次転写ローラ36の表面とを離間させる方法が挙げられる。ただし、この方法では接離機構を設ける必要がある関係で、装置の大型化やコストの高騰を招く点に留意が必要である。
また、このような記録紙裏面のトナー汚れを防止する方法としては、例えば、テストトナー像が2次転写ニップを通過する間、2次転写ニップに対し、トナーを2次転写対向ローラ33側へ移動させる直流バイアスを印加する方法が挙げられる。この方法によれば、画像形成動作時とは逆極性のバイアスを印加するという比較的簡易な構成を付加するだけで済むので、2次転写ローラ36のクリーニング装置としてクリーニング性能の高いものを用いたり、接離機構を追加したりする構成よりも、装置の大型化やコストの高騰を抑制できる。
本実施形態の2次転写電源39は、図10に示すような回路構成を採用することができる。この2次転写電源39の場合、普通紙モード時のように直流バイアスを2次転写ニップに印加する場合には、制御部60の制御により、スイッチ301をONにし、スイッチ302をOFFにする。一方、凹凸紙モードのように直流成分に交流成分を重畳させたバイアスを2次転写ニップに印加する場合には、制御部60の制御により、スイッチ301をONにし、スイッチ302をONとする。他方、2次転写ニップへのバイアス印加をOFFにする場合には、制御部60の制御により、スイッチ301をOFFにし、スイッチ302をOFFとする。
なお、2次転写電源39の構成は、これに限らず、例えば図11に示すようなものでもよい。図11に示す例では、普通紙モード時のように直流バイアスを2次転写ニップに印加する場合には、制御部60の制御により、スイッチ401をONにし、スイッチ402をOFFにする。一方、凹凸紙モードのように直流成分に交流成分を重畳させたバイアスを2次転写ニップに印加する場合には、制御部60の制御により、スイッチ401をOFFにし、スイッチ402をONとする。他方、2次転写ニップへのバイアス印加をOFFにする場合には、制御部60の制御により、スイッチ401をOFFにし、スイッチ402をOFFとする。
〔変形例〕
次に、本実施形態の一変形例について説明する。
図12は、本変形例におけるプリンタを示す概略構成図である。
本変形例におけるプリンタは、上述した実施形態における2次転写ローラ36に代えて、2次転写ベルト136を採用している。この2次転写ベルト136は、ニップ形成ローラ136Aと、2つの張架ローラ136B,136Cとに張架された状態で配設されている。
また、本変形例におけるプリンタは、上述した実施形態とは、濃度センサ38の配置が異なっている。具体的には、上述した実施形態では、テストトナー像のトナー付着量を中間転写ベルト31上で検知するように濃度センサ38を中間転写ベルト31の外周面に対向配置していた。これに対し、本変形例では、テストトナー像を中間転写ベルト31から更に2次転写ベルト136上に転写し、そのテストトナー像のトナー付着量を検知するように、濃度センサ38が2次転写ベルト136の外周面に対向配置している。
本変形例において、テストトナー像を中間転写ベルト31から2次転写ベルト136上へ転写するとき、2次転写ベルト136の表面は平滑な面であるため、凹凸に富んだ記録材への転写用の2次転写バイアス、すなわち、交流成分を含んだ2次転写バイアスを用いなくても、十分な転写効率を実現できる。むしろ、交流成分を含む2次転写バイアスを用いると、上述したように、2次転写ニップを形成する部材の寿命が電気的ハザードによって短くなるという不具合を引き起こす。
よって、本変形例においても、本実施形態と同様、画質調整制御を普通紙モードで実行することとし、その画質調整制御中は、普通紙モードの一次転写バイアス(凹凸紙モードよりも大きな一次転写バイアス)を用い、かつ、2次転写領域には交流成分を含まない直流バイアスを印加するようにしている。なお、本変形例のように、2次転写ニップで2次転写した後のテストトナー像のトナー付着量を検知する構成においては、テストトナー像の2次転写の際に用いる2次転写バイアスには、画像形成動作時と同じ直流転写バイアスを用いてもよいが、記録紙Pに転写するわけではないので、画像形成動作時よりも低い直流転写バイアスを用いるのが好ましい。
〔実験例1〕
次に、本発明者らが行った一実験例(以下、本実験例を「実験例1」という。)について説明する。
本実験例1では、上記実施形態のプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意し、そのプリント試験機を用いて、記録紙に対してFC画像の連続プリントを行うプリント試験を実施した。本実験例1においては、紙厚毎に線速を変えており、坪量が220[gsm]以下の記録紙に対しては線速352.8[mm/s]とし、それ以上の坪量である記録紙に対しては線速246.96[mm/s]でプリントした。連続プリントは100[P/J]で行い、1000枚プリントごとに、画像濃度階調の調整制御を実行した。画像濃度階調の調整制御の内容は、上述した実施形態で説明したとおりである。
本プリント試験機で用いた2次転写バイアスは、直流成分を定電流制御し、交流成分を定電圧制御し、その直流成分(直流電流)を−60[μA]とし、交流成分のピークツウピーク電圧Vppを7[kV]とし、その交流成分の周波数を500[Hz]とした。また、本実験例では、2次転写ニップ中に紙間領域が存在する時期には、2次転写バイアスに代えて、2次転写バイアスの直流成分とは逆極性の直流成分のみからなる紙間バイアス(+5[μA]で定電流制御された直流成分のみからなる直流バイアス)を印加するように、2次転写ニップに印加するバイアスを切り替えている。
本実験例1では、画像濃度階調調整制御時に、2次転写ニップに対して上記紙間バイアス(直流バイアス)を印加したものを実施例1とし、これに対し、2次転写ニップに対して2次転写バイアスの直流成分とは逆極性の直流成分と交流成分とからなるバイアス(2次転写バイアスの直流成分を逆極性にしたバイアス)を印加したものを比較例1とした。本実験例1では、機械異常が発生せずに正常に画像濃度階調調整制御が行われた場合に「○」と評価し、機械異常が発生した若しくは正常に画像濃度階調調整制御が終了しなかった場合に「×」と評価した。この実験結果を図13に示す。
図13に示すように、比較例1では、100k枚プリントした時点で2次転写バイアスにおいてリークが発生し、機械異常が発生した。一方、実施例1では、100k枚プリント時点でも正常に画像濃度階調調整制御が行われており、更に120k枚プリント時点でも正常に画像濃度階調調整制御が行われた。
〔実験例2〕
次に、本発明者らが行った他の実験例(以下、本実験例を「実験例2」という。)について説明する。
本実験例2では、上記実験例1と同様の構成のプリント試験機を用意し、そのプリント試験機を用いて、記録紙に対してFC画像の連続プリントを行うプリント試験を実施した。ただし、本実験例2においては、10枚プリントごとに、非画像領域に対してベタパッチを形成し、そのトナー付着量を2次転写ベルト136上で濃度センサ38により検知してトナー濃度補正制御を実行した。トナー濃度補正制御の内容は、上述した実施形態で説明したとおりである。
本実験例2では、トナー濃度補正制御時に、2次転写ニップに対して上記紙間バイアス(+5[μA]で定電流制御された直流バイアス)を印加したものを実施例2とし、2次転写ニップに対して上記紙間バイアスよりも大きな直流バイアス(+10[μA]で定電流制御された直流バイアス)を印加したものを実施例3とした。また、トナー濃度補正制御時に、2次転写ニップに対して2次転写バイアスの直流成分とは逆極性の直流成分と交流成分とからなるバイアス(2次転写バイアスの直流成分を逆極性にしたバイアス)を印加したものを比較例2とした。
本実験例2では、2次転写ローラ36上に転写されるトナーが記録紙の裏面に付着してしまう記録紙の裏汚れについて、5段階評価を行った。この評価では、裏汚れが全く無い場合を「5」とし、目視ではほぼ確認できないがわずかな裏汚れが発生している場合を「4」とし、目視でも確認できる裏汚れが発生している場合を「3」とし、目視での確認が容易な裏汚れが発生している場合を「2」とし、非常に汚れた裏汚れが発生している場合を「1」とした。この実験結果を図14に示す。
図14に示すように、比較例2では、プリント枚数が30k枚を超えた頃から裏汚れの評価が落ちていき、90k枚のプリント時点では評価ランクが「2」まで落ち込んだ。一方、実施例2及び3では、80k枚プリント時点でも裏汚れの評価が初期の評価「5」が維持された。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
表面移動する中間転写ベルト31等の像担持体と該像担持体の表面に対向配置される2次転写ローラ36や2次転写ベルト136等の転写部材との間の2次転写ニップ等の転写領域に直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを印加する2次転写電源39等の転写バイアス印加手段を有し、該転写領域を通過する記録紙P等の記録材に対し、該像担持体の表面に担持されるトナー像を該転写バイアスの作用によって転写する画像形成装置において、上記像担持体の表面移動中であって上記転写領域を記録材が通過していない非通紙期間中に、上記交流成分を印加しない又は該交流成分のピークツウピーク電圧を画像形成時よりも小さくする交流成分変更期間が存在するように、上記転写バイアス印加手段を制御する制御部60等のバイアス制御手段を有することを特徴とする。
これによれば、交流成分変更期間を非通紙期間中に設けていない構成と比較して、交流成分による転写部材等の劣化の促進を抑制できる。
(態様B)
上記態様Aにおいて、上記非通紙期間は、連続画像形成動作中における上記転写領域を記録材の後端が抜けてから次の記録材の先端が進入するまでの期間であることを特徴とする。
これによれば、連続画像形成動作中の非通紙期間に、交流成分による転写部材等の劣化が進むのを抑制できる。
(態様C)
上記態様A又はBにおいて、上記バイアス制御手段は、上記非通紙期間のうちトナーが付着した像担持体表面部分が上記転写領域を通過する期間中に、上記交流成分変更期間が存在するように上記転写バイアス印加手段を制御することを特徴とする。
これによれば、非通紙期間中にトナーが転写領域を通過するときに、交流成分によってトナーが飛散する事態を抑制できる。
(態様D)
上記態様Cにおいて、上記像担持体上に形成されるテストトナー像のトナー付着量を検知する濃度センサ38等のトナー付着量検知手段と、上記トナー付着量検知手段の検知結果に基づいて画質調整制御を実施する制御部60等の画質調整制御手段とを有し、上記バイアス制御手段は、上記非通紙期間のうち上記テストトナー像が付着した像担持体表面部分が上記転写領域を通過する期間中に、上記交流成分変更期間が存在するように上記転写バイアス印加手段を制御することを特徴とする。
これによれば、非通紙期間中にテストトナー像のトナーが転写領域を通過するときに、交流成分によってトナーが飛散する事態を抑制できる。
(態様E)
上記態様Dにおいて、上記トナー付着量検知手段は、上記像担持体上に形成されるテストトナー像を上記転写領域で上記転写部材上に転写した後の該転写部材上のテストトナー像のトナー付着量を検知するものであり、交流成分を含まない直流転写バイアスを上記転写領域に印加する直流転写バイアス印加手段を有し、上記バイアス制御手段は、上記交流成分変更期間には、上記転写バイアス印加手段による転写バイアスの印加を停止するとともに、上記直流転写バイアス印加手段により直流転写バイアスを上記転写領域に印加することを特徴とする。
これによれば、交流成分によってトナー付着量検知前のテストトナー像が乱されることがないので、適正なトナー付着量の検知が可能となる。
(態様F)
上記態様Eにおいて、上記転写バイアス印加手段により直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを上記転写領域に印加して画像形成を実施する凹凸紙モード等の第1動作モードと、上記直流転写バイアス印加手段により直流転写バイアスを上記転写領域に印加して画像形成を実施する普通紙モード等の第2動作モードとに切り替える制御を実行する動作モード切換手段とを有し、上記バイアス制御手段は、上記交流成分変更期間には、上記転写バイアス印加手段による転写バイアスの印加を停止するとともに、上記第2動作モード時の直流転写バイアスよりも弱い直流転写バイアスを上記転写領域に印加することを特徴とする。
交流成分変更期間には記録材が存在しない状態でテストトナー像を転写部材上に転写するので、記録材が存在する状態でトナー像を記録材へ転写するときの直流転写バイアスと同じものを用いると、過剰なバイアス印加となって放電が発生し、テストトナー像を乱すおそれがある。本態様によれば、このような放電の発生を抑制し、テストトナー像の乱れを抑制することができる。
(態様G)
上記態様A〜Dのいずれかの態様において、交流成分を含まない直流転写バイアスを上記転写領域に印加する直流転写バイアス印加手段と、上記転写バイアス印加手段により直流成分と交流成分とを含む転写バイアスを上記転写領域に印加して画像形成を実施する第1動作モードと、上記直流転写バイアス印加手段により直流転写バイアスを上記転写領域に印加して画像形成を実施する第2動作モードとに切り替える制御を実行する動作モード切換手段とを有し、上記バイアス制御手段は、上記交流成分変更期間には、上記転写バイアス印加手段による転写バイアスの印加を停止するとともに、上記直流転写バイアス印加手段により直流転写バイアスを上記転写領域に印加して画像形成を実施することを特徴とする画像形成装置。
これによれば、簡易な電源構成で、交流成分による転写部材等の劣化の促進を抑制できる。
(態様H)
上記態様C又はDにおいて、上記バイアス制御手段は、上記非通紙期間のうちトナーが付着した像担持体表面部分が上記転写領域を通過する期間中に、上記転写バイアスの直流成分とは逆極性の直流バイアスを上記転写領域に印加する直流バイアス印加手段を有することを特徴とする。
これによれば、非通紙期間中にトナーが転写領域を通過するときに当該トナーが転写部材側へ移動するのを抑制できるので、転写部材に付着するトナー量を少なく抑えることができ、記録材の裏汚れの発生が抑制される。