以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。なお、以下に記述する各種部材の電気抵抗値は、特筆しない限り、温度22[℃]、相対湿度50[%]の環境下における値である。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kを備えている。また、転写装置としての転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給紙カセット100、レジストローラ対101なども備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、濃度センサ38などを有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写バイアス電源39から2次転写裏面ローラ33に印加される電圧における交流電圧の周波数fなどの制御パラメータは、中間転写ベルト31上の画像面積率に応じて制御される。この制御については、後に詳述する。
転写ユニット31の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
ニップ形成ローラ36よりも紙搬送方向の下流側には、用紙分離補助のための分離装置150が配設されている。この分離装置150は、2次転写ニップから送り出されてくる記録紙Pに対して鋸歯状の除電針の先端を接触せながら、交流電圧に直流電圧を重畳した分離バイアスを印加することで、ニップ形成ローラ36からの記録紙Pの分離を促す。
2次転写バイアス電源39の出力端子は、ニップ形成ローラ36の芯金に接続されている。ニップ形成ローラ36の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、2次転写裏面ローラ33については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、後に図3を用いて説明するように、正弦波(サイン波)のものを採用しているが、後述するように、直流電圧に重畳する交流電圧の波形はサイン波でも矩形波でも、三角波でも、台形波でも構わない。また、Dutyが50%でない、波形を用いることも可能である。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
濃度センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。この状態で、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の単位面積あたりのトナー付着量(画像濃度)を測定する。
2次転写ニップよりも紙搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。その後、不図示のフィニッシャによって画像面が下向きになるような形で排紙トレイに排出される。フィニッシャによって画像面を下向きにするのは、セキュリティやプライバシに対する配慮である。
図3は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す波形図である。同図において、2次転写バイアスは、上述したように、2次転写裏面ローラの芯金に印加される。また、上述したように、2次転写裏面ローラの芯金に2次転写バイスが印加されると、第1部材たる2次転写裏面ローラの芯金と、第2部材たるニップ形成ローラの芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラの芯金の電位から、ニップ形成ローラの芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、実施形態のように、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラの電位を2次転写裏面ローラの電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写裏面ローラ側からニップ形成ローラ側に静電移動させることになる。
同図において、オフセット電圧Voffは、2次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、2次転写バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラの芯金に印加し、且つニップ形成ローラの芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラの芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分とから構成される。
同図に示されるように、実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。2次転写裏面ローラ33に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。2次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、戻り電位ピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
本プリンタでは、2次転写バイアスの交流電圧として、正弦波状の特性のものを採用しているが、交流電圧の波形は正弦波に限定されるものではない。矩形波、三角波、台形状波形など、正弦波とは異なる波形のものを採用してもよい。更に、デューティ比を変化させた波形を用いても良い。交流電圧によって所定周期で極性を反転させる交番電界からなる2次転写電界を2次転写ニップに形成することで、2次転写ニップ内でトナー粒子が中間転写ベルト31表面と記録紙P表面との間で往復移動する。
図4は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit)を有している。また、不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等も有している。装置全体の制御を司る制御部60には、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、主要な機器やセンサだけを示している。
1次転写電源81Y,M,C,Kは、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに印加するための1次転写バイアスを出力するものである。また、2次転写電源39は、2次転写裏面ローラ33に印加するための2次転写バイスを出力するものである。
制御部60は,RAM60cやROM60b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各手段の制御を行っている。そして、画像データに基づいて、各色(Y、C、M、K)のトナーの、LD露光の各副走査位置における、感光体上の画像面積率と、それらの和である、中間転写ベルト上の画像面積率を演算する。
また、制御部60は、演算した画像面積率に基づいて、2次転写バイアスの交流電圧について周波数fの適正値を求め、その周波数fを実現する2次転写バイアス波形にするように、2次転写電源39を制御する。
オペレーションパネル50は、図示しないタッチパネルや複数のキーボタンなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーボタンによって操作者による入力操作を受け付けたりする。制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示することができる。
2次転写電源39は、2次転写バイアスを定電流制御で出力するものである。具体的には、制御部60から出力される電流目標値と同じ電流を出力する。制御部60は、中間転写ベルト31における周方向の全領域のうち、2次転写ニップに進入する区画、の画像面積率を算出する。具体的には、中間転写ベルト31の表面は、副走査方向(感光体やベルトの表面移動方向)において、ページの先頭を基準にして、600dpiの50画素分(約7.5ms毎)ずつの領域毎に理論上の区分けがなされる。そして、その区分けによる各区画(以下、「50ライン区画」という)には、それぞれ主走査方向に一直線上に並ぶ画素の集合からなる画素ラインが50ラインずつ含まれている。それぞれの画素ラインについては、全画素数に対する画像部(重ね合わせトナー像)の画素数の割合が画像面積率として求められる。そして、50個の画素ラインの画像面積率の平均値が、「50ライン区画」における画像面積率として求められる。
より詳しくは、中間転写ベルト31の全領域のうち、2次転写ニップに進入する直前の領域であって、ベルト移動方向に50画素の大きさで区切った領域である「50ライン区画」の先端が、2次転写ニップの入口に所定の距離まで近づいたタイミング(以下、算出基準タイミングという)で、制御部60はその「50ライン区画」の画像面積率を算出する。例えば、前記算出基準タイミングに対し、所定の第1時間だけ遡ったタイミングから所定の第2時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってY用の感光体2Yに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のYの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第3時間だけ遡ったタイミングから所定の第4時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってM用の感光体2Mに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のMの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第5時間だけ遡ったタイミングから所定の第6時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってC用の感光体2Cに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のCの画像面積率を算出する。また、前記算出基準タイミングに対し、所定の第7時間だけ遡ったタイミングから所定の第8時間だけ遡ったタイミングの間で光書込ユニットの80によってK用の感光体2Kに対して書き込まれたドット数に基づいて、その「50ライン区画」のKの画像面積率を算出する。そして、Y,M,C,Kの4つの画像面積率を累積した値を、その「50ライン区画」の画像面積率とする。このようにして画像面積率が求められた「50ライン区画」のベルト移動方向下流側には、次の「50ライン区画」が隣接している。次の「50ライン区画」の画像面積率については、次の「50ライン区画」の先端が、2次転写ニップの入口に所定の距離まで近づいたタイミング、即ち、次の「50ライン区画」についての算出基準タイミングで、画像面積率の算出を開始する。
図5は、A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第1例とを示す模式図である。2次転写ニップにおいて、記録紙Pは、図中の矢印の方向に搬送される。実施形態に係るプリンタにおいて、中間転写ベルト31の幅方向のサイズは、A3サイズの記録紙Pの短手方向サイズ(297mm)よりも少し大きい。2次転写ニップは、中間転写ベルト31と、ニップ形成ローラ36とが当接している領域であり、ニップ形成ローラ36のローラ部の長さは、中間転写ベルト31の幅よりも大きくなっている。よって、2次転写ニップのベルト幅方向の長さは、中間転写ベルト31の幅と同じであり、これは上述したようにA3サイズの記録紙Pの短手方向サイズよりも少し大きい。但し、実施形態に係るプリンタの制御部60は、便宜的に、2次転写ニップのベルト幅方向の長さを、A3サイズの記録紙Pの短手方向サイズと同じであるとみなして、ベルト上の50ライン区画の画像面積率を演算するようになっている。なお、2次転写ニップのベルト移動方向の長さである2次転写ニップ幅は、3[mm]である。
同図の記録紙Pには、記録紙搬送方向に延在する短冊状のトナー像が形成されている。その記録紙搬送方向の長さは、220[mm]程度であり、図示のように、記録紙Pの長手方向の概ね半分くらいの領域に渡って延在している。トナー像は、Y,M,C,Kの4色のうち、何れか1色のトナーだけからなるベタ画像である。このトナー像の短手方向の長さは29.7[mm]であり、これは2次転写ニップのベルト幅方向の長さ(便宜上、297mmとみなしている)の1/10の値である。よって、記録紙搬送方向において、このトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は10[%]である。中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、図示のトナー像を担持している領域が2次転写ニップに進入する際には、50ライン区画の画像面積率が10[%]であると制御部60によって算出される。
図6は、A3サイズの記録紙Pと、これの上に形成されたトナー像の第2例とを示す模式図である。同図の記録紙Pには、記録紙搬送方向に延在する短冊状のトナー像が、搬送方向と直交する方向に所定の距離をおいて2つ形成されている。それらトナー像の記録紙搬送方向の長さは、それぞれ220[mm]程度であり、図示のように、互いに記録紙Pの長手方向の同じ領域内に延在している。2つのトナー像は、互いに異なる1色のトナーだけからなるベタ画像である。また、それらトナー像の短手方向の長さはそれぞれ29.7[mm]である。よって、記録紙搬送方向において、それらトナー像が延在している領域の50ライン区画の画像面積率は20[%]である。中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、図示のトナー像を担持している領域が2次転写ニップに進入する際には、50ライン区画の画像面積率が20[%]であると制御部60によって算出される。
なお、本プリンタにおいて、50ライン区画の画像面積率は、Y,M,C,Kの各色についてそれぞれ個別に算出したものの合計として求められる。よって、例えば、同図の2つのトナー像が、図示のように互いに独立しているものではなく、完全に重ね合わされた2色重ね合わせトナー像であったとしても、その2色重ね合わせトナー像についての50ライン区画の画像面積率は、10[%]ではなく、20[%]となる。
次に、トナー像のトナー付着量とトナー粒子の往復移動回数との関係について本発明者らが行った観測実験について説明する。
本発明者らは、2次転写ニップ内におけるトナーの挙動を観測するために、特殊な観測実験装置を製造した。
図7は、その観測実験装置を示す概略構成図である。この観測実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録用紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させ、記録用紙214とトナー層216との間に一定の空隙を設けるまで金属板215を接近させる。空隙幅を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。 観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録用紙214を透明基板210から離間させる。 すると、トナー層216の一部が記録用紙214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
透明基板210上におけるトナーの挙動を、次のようにして撮影した。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影した。
まず、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、直流電圧(本例ではオフセット電圧Voffに該当)を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧Vppを1000[V]にした条件にてトナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加する。
具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用してトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図8に示されるように、トナー層216のうち、層の表面に存在しているトナー粒子だけが層から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図9に示されるように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙216の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図10に示されるように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。
次に、トナー像の単位面積あたりのトナー付着量と、転写ニップ内で往復移動するトナー粒子の数との関係について、本発明者らが行った実験について説明する。
現像直後のトナー層216を構成しているトナーや、往復移動している最中のトナーの重さを測定することは困難であるため、往復移動している最中のトナーの割合を調べる指標として、観察領域内における透明電極212上のトナーの被覆平面積を採用した。まず、観察領域の面積を領域面積A0とし、透明電極212上に現像された直後のトナー層216の領域面積A0内におけるトナーの被覆面積を初期被覆面積Aiとして測定した。
透明電極212は、感光体におけるベタ静電潜像の役割を果たしているため、トナー層216はベタトナー像と同様のものであるが、初期被覆面積Aiは、領域面積A0よりもかなり小さくなる。つまり、ベタであるにもかかわらず、トナー粒子を付着させていない領域が存在している。実際のプリンタにおいても、ベタ静電潜像を現像して得られたベタトナー像を定着前に顕微鏡観察すると、トナー粒子を付着させていない領域(以下、トナー未着領域という)が存在する。通常のトナー付着量であれば、定着工程において、トナー粒子が潰されることで、トナー未着領域までトナー粒子の付着領域が広がる。これに対し、トナー付着量を少なくすると、定着工程を経ても、一部のトナー未着領域が残る。残ったトナー未着領域の面積に応じて、トナー像の画像濃度が変化する。
初期被覆面積Aiを測定したら、次に、金属板215に転写バイアスを印加してトナー層216の一部を記録用紙214上に転写した。なお、転写バイアスとしては、周波数f=500[Hz]、Vpp=1.2[kV]、Voff=0[V]のものを採用した。転写後、透明電極212上に残ったトナーによる領域面積A0における被覆面積を残留被覆面積Arとして測定した。その後、次に掲げる式に基づいて、現像直後のトナー層の初期被覆率θi[%]と、転写ニップ内で往復移動しているトナーの割合である活動トナー率Rm[%]とを算出した。
θi=(Ai/A0)×100
Rm=[(Ai−Ar)/Ai]×100
現像バイアスの調整によってトナー付着量を互いに異ならせた複数のトナー層216についてそれぞれ、このようにして活動トナー率R
mを調べた。この結果を次の表1に示す。
表1における初期被覆率θi[%]は、トナー像を構成している各ドットの1ドットあたりにおけるトナー付着量を反映している。つまり、ベタ画像は、1ドットあたりのトナー付着量が多くなるほど、初期被覆率θiが高くなる。表1に示されるように、初期被覆率θiが低くなるにつれて、活動トナー率Rmが低くなる。これは、記録紙P表面の凹部に同じ量のトナー粒子を転移させる場合、1ドットあたりのトナー付着量を少なくするにつれて、転写ニップ内で必要なトナー粒子の往復移動回数が多くなることを意味している。にもかかわらず、例えばトナーセーブモードなどの実施により、1ドットあたりのトナー付着量を通常よりも少なくした際に、通常と同じ回数だけしかトナー粒子を往復移動させないとする。すると、記録紙P表面の凹部に十分量のトナーを転移させることができずに、濃淡パターンを発生させてしまうおそれがある。
実際に、本発明者らが、プリンタ試験機により、1ドットあたりのトナー付着量を通常よりも少なくしたベタトナー像を和紙タイプの記録紙Pに2次転写してみると、通常のトナー付着量では発生しなかった濃淡パターンを発生させてしまった。
次に、本発明者らが行った「第1転写実験」について説明する。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成のプリント試験機を用意した。そして、このプリント試験機を用いて、種々のプリントテストを実施した。プリントテストでは、2次転写バイアスの交流電圧について、Voff=−0.8[kV]、Vpp=5.0[kV]に設定した。また、交流電圧の周波数f[Hz]や、プロセス線速(中間転写ベルト31や感光体2の線速)については、適宜変更した。互いに異なる周波数fやプロセス線速の条件下で、普通紙からなる記録紙P(紙表面の凹凸が殆どない)にテスト用の黒ベタ画像を出力した。そして、出力された黒ベタ画像を、目視によって2段階で評価した。具体的には、交流電圧の周波数fに同期する濃度ムラ(ピッチムラ)が視認されない場合を○、視認される場合を×として評価した。この結果を次の表2に示す。
表2に示されるように、プロセス線速vを282[mm/s]に設定した場合には、交流電圧の周波数fを400[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。また、プロセス線速vを141[mm/s]に設定した場合には、交流電圧の周波数fを200[Hz]以上に設定することで、ピッチムラの発生を回避することができた。つまり、プロセス線速v=282[mm/s]、141[mm/s]のときにおいて、それぞれピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]、200[Hz]である。このことから、周波数f[Hz]は、プロセス線速v[mm/s]の200/141≒1.42倍が必要となることがわかった。よって、ピッチムラのない良好な画像を得るためには、「f≧1.42×v」という式を満足させるように周波数fを設定する必要がある。以下、この式を「周波数条件式」という。
次に、本発明者らが行った「第2転写実験」について説明する。
記録紙Pとして、エンボス紙(特殊製紙株式会社製のレザック66 260kg)を用いた。2次転写バイアスを、Voff=−1.2[kV]、Vpp=7.2[kV]で2次転写電源39から出力させた(定電圧制御)。交流電圧の周波数fについては、適宜変更した。この条件で、K単色全ベタ画像をエンボス紙に形成し、得られた画像における紙表面凹部の画像濃度を1.0〜5.0の10段階のランク(数値が大きいほど画質が良い)付けで評価した。また、2次転写バイアスとして、重畳バイアスからなるものではなく、直流電圧だけからなるものを採用して同様の評価を行った。これらの結果を、次の表3に示す。
表3に示されるように、交流電圧の周波数fを高くするほど、紙表面の凹部における画像濃度を高くすることができた。これは、周波数fを高くするほど、2次転写ニップ内でベルト表面と紙表面凹部との間におけるトナー粒子の往復移動回数を増加させて、凹部内に転移するトナー粒子の数を増加させるためである。
次に、本発明者らが行った「第3転写実験」について説明する。
出力画像として、K単色全ベタ画像に代えて、面積階調率=25[%](対ベタ)、面積階調率=50[%]のハーフトーン画像を採用した点の他は、「第2転写実験」と同様にして「第3転写実験」を行った。紙表面凹部の画像濃度については、面積階調率=100%(ベタ画像)における最大濃度を5.0としてランク付けを行った。この結果を次の表4に示す。
表4に示されるように、同じ周波数fに着目すると、面積階調率が低くなるほど、紙表面凹部の画像濃度のランクが低くなる。これは、上述した観察実験におけるトナー粒子の被覆面積と往復移動回数との相関と同じ結果である。
表3、表4より、面積階調によるハーフトーン画像の場合は、紙表面凹部である程度の画像濃度を実現するためには、周波数fを比較的高くして、2次転写ニップ内でのトナー粒子の往復移動回数をより増加させる必要があることがわかった。但し、周波数fを増加させるにつれて、画像部の周囲に存在する非画像部にトナーを飛び散らせてしまう転写チリと呼ばれる現象を引き起こし易くなる。このため、周波数fを必要以上に高くすることは好ましくない。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図11は、実施形態に係るプリンタにおける交流電圧の周波数fと「50ライン区画」における画像面積率との関係を示すグラフである。図示のように、制御部60は、「50ライン区画」における画像面積率が低くなるほど、2次転写バイアスの交流電圧の周波数fを高くする処理を実施するようになっている。直流電圧の電流値や交流電圧のVppは、例えば「第3転写実験」と同様である。
かかる構成では、周波数fを比較的高くすることによる転写チリの発生を抑えつつ、ハーフトーン画像を形成するとき(画像面積率の比較的低いトナー像を形成するとき)における濃淡パターンの発生を抑えることができる。
なお、2次転写ニップ内におけるトナー粒子の往復移動回数を増加させる方法として、交流成分の周波数fを高くする方法を採用した例について説明したが、往復移動回数に影響を及ぼすパラメータとして、周波数fとは異なるものを採用してもよい。例えば、同じ周波数fであっても、プロセス線速vを低下させるほど、往復移動回数を増加させることが可能である。よって、トナー付着量を少なくするほど周波数fを高くする方法に代えて、トナー付着量を少なくするほどプロセス線速vを遅くする方法を採用してもよい。この場合、プロセス線速vを遅くすることに起因する画像形成時間の長期化を抑えつつ、ハーフトーン画像を形成するときにおける濃淡パターンの発生を抑えることができる。
つまり、往復移動回数に影響を与える制御パラメータの変更によって往復移動回数を増加させる移動回数調整処理を実施することで、次のような効果を奏することができる。即ち、往復移動回数を比較的高くするように制御パラメータを設定することによる不具合を抑えつつ、画像面積率の比較的低いトナー像を形成するときにおける濃淡パターンの発生を抑えることができる。
なお、制御部60は、ピッチムラの発生を回避する狙いから、交流電圧の周波数fの下限を400[Hz]にするようになっている。
図12は、本プリンタにおけるVppやVoffの電圧値と「50ライン区画」の画像面積率との関係を示すグラフである。制御部60は、画像面積率に応じて周波数fを変化させることに加えて、同グラフに示されるように、画像面積率に応じてVppやVoffを変化させるようになっている。
2次転写ニップ内に進入しているトナーの量が多くなるほど、それらのトナーをベルトから紙表面に転写するために必要なVppやVoffの値は高くなる。このため、基本的には、画像面積率が高くなるほど、VppやVoffを大きくすることで、紙表面の凹部や凸部において十分な画像濃度が得られるようにする。但し、先に述べたように、画像面積率が低くなる場合には、2次転写ニップ内でのトナー粒子の往復移動回数をより増やす必要がある。このため、図示のように、画像面積率が低くなるほど、Voffに対するVppの比率を大きくなるように、Voff及びVppをそれぞれ制御するようになっている。
なお、紙表面の凹部内に十分量のトナーを転移させるためには、図3に示される戻り電位ピーク値Vrをある程度大きくする必要がある。このため、制御部60は、次の式を満足させるように、Voff及びVppをそれぞれ制御するようになっている。
「Vpp>4×|Voff|」
図13は、2次転写バイアスの交流電圧の目標値を変更するタイミングと、直流電圧の目標値を変更するタイミングとを説明するための説明図である。それらの目標値も、周波数fと同じく、600dpi「50ライン区画」(約7.5ms毎)の画像面積率に基づいて変更される。画素情報に基づいて把握した「50ライン区画」が、2次転写ニップの出口部を通過する間には、その「50ライン区画」の画像面積率に応じたVoff、Vpp、周波数fの組み合わせを採用した2次転写バイアスが2次転写電源39から出力される。同図では画像面積率=0%になるタイミングでVoffやVppの出力をオフにしているが、直流電圧のみ出力したり、所定のVoff及びVppの組み合わせを出力したりしてもよい。
なお、本実施形態では、「50ライン区画」毎に画像面積率を算出しているが、画像面積率を算出する区画については、50ラインよりも多くしても少なくしてもよい。少なくする場合には、交流電圧の周波数fよりも大きな区画になるようにする。例えば、交流電圧の下限は400[Hz]であり、この場合の周期は0.0025[s]で、この間の紙移動距離は7.05E−4[m]である。これは、600[dpi]の16.7画素に相当するため、区画の大きさの下限は17画素となる。
画像面積率を算出する区画を50ラインよりも多くする場合いは、最大で1ページ分を区画としてもよい。
実施形態に係るプリンタでは、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加するとともに、ニップ形成ローラ36の芯金を接地している。かかる構成では、両ローラ間における電位差の時間平均値であるVaveが、2次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと同じ値になる。ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36の芯金に直流電圧を印加してもよい。この場合、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加する直流電圧と、ニップ形成ローラ36の芯金に印加する直流電圧との重畳値を、オフセット電圧Voffと同じにすればよい。このように、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36の芯金に直流電圧を印加する場合であっても、Vaveをオフセット電圧Voffと同じ値にすることができる。
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する。
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
交流電圧の波形がサイン波である場合には、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36における電位差の時間平均値であるVaveを、2次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと等しくすることができる(図3参照)。但し、トナー粒子の往復運動に必要なVrに対し、Vtが大きくなり過ぎると、特にトナーの付着量が多い場合や、紙の抵抗が高い場合に、放電による画像の白抜けが発生し易くなるため、Voffを小さくするなどの対策が必要である。
これに対し、図14〜図20に示されるように、Voffを挟んで、トナーを戻す側の波形の面積を、トナーを転写する側の波形の面積より小さくすることで、Vtを小さな値に抑えつつ、必要なVrを確保することができる。「転写時間」と「戻し時間」とを、それぞれ所望の値にする波形を実現させればよいのである。転写時間は、交流電圧の1周期において、2次転写バイアスが中心電圧(Voff)よりもトナーを記録紙側に転移させる側の値になる時間である。また、戻し時間は、交流電圧の1周期において、2次転写バイアスが中心電圧(Voff)よりもトナーをベルト側に戻す側の値になる時間である。戻し時間の比率を転写時間より小さくすることで、Vtを下げつつ、Vaveを大きくすることが可能になるので、サイン波に比べて、白抜けの発生を抑えることができるようになる。例えば、Vt=−3[kV]、Vr=+2.0[kV]、Duty=16%を実現する矩形波を採用すればよい。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、トナー像を担持する像担持体(例えば中間転写ベルト31)と、前記像担持体にトナー像を形成するトナー像形成手段(例えば画像形成ユニット1Y,M,C,K、及び光書込ユニット80)と、前記像担持体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えばニップ形成ローラ36)と、交番電界からなる転写電界を前記像担持体と前記ニップ形成部材との間に形成する転写電界形成手段(例えば2次転写バイアス電源39)とを備え、前記像担持体上のトナー像を前記転写ニップ(例えば2次転写ニップ)に挟み込んだ記録シート(例えば記録紙P)に転写する際に、トナー像中のトナーを記録シートの表面と像担持体の表面との間で往復移動させる画像形成装置において、前記トナー像形成手段によって形成されるトナー像の画像面積率が低くなるにつれて、前記転写ニップ内でのトナーの往復移動回数に影響を与える制御パラメータの変更によって前記往復移動回数を増加させる移動回数調整処理を実施する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
かかる構成においては、画像面積率の比較的低いトナー像を形成するときに、制御パラメータの変更によって転写ニップ内でのトナーの往復移動回数を増加させることで、転写ニップ内で記録シート表面の凹部内に転移するトナー粒子の数をより増加させる。これにより、画像面積率の比較的低いトナー像を形成するときにおける濃淡パターンの発生を抑えることができる。
なお、既に述べたように、転写ニップ内でのトナーの往復移動回数を比較的多くするように制御パラメータを変更した場合、それに伴って不具合を引き起こすことがある。例えば、往復移動回数に影響を及ぼす制御パラメータとして、転写バイアスの交流成分の周波数fを採用した場合、周波数fを高くするほど、転写チリを引き起こし易くなる。また、制御パラメータとして、プロセス線速vを採用した場合、プロセス線速vを遅くして往復移動回数を増加させるほど、画像形成時間を長期化させてしまう。そこで、本発明においては、往復移動回数を比較的高くする値で制御パラメータを固定するのではなく、トナー像のトナー付着量を少なくするにつれて往復移動回数を増加させるように制御パラメータを変更する。これにより、制御パラメータを前述のように固定することによる不具合を抑えつつ、画像面積率の比較的低いトナー像を形成するときにおける濃淡パターンの発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記画像面積率が低くなるにつれて、前記移動回数調整処理にて、前記制御パラメータとしての前記交番電界の周波数を高くすることで、前記往復移動回数を増加させる処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様C]
態様Cは、態様A又はBにおいて、前記転写電界形成手段として、前記転写ニップの周辺に存在する部材に印加するための直流バイアス及び交流バイアスを出力する電源を具備するものを用い、前記画像面積率に応じて、前記直流バイアスの電圧値、前記直流バイアスの電流値、前記交流バイアスの電圧値、及び交流バイアスの電流値のうち、少なくとも何れか1つを変化させるバイアス制御処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記バイアス制御処理にて、前記画像面積率が低くなるにつれて、前記直流バイアスに対して前記交流バイアスを重畳した重畳バイアスの時間平均値の絶対値に対する前記交流バイアスのピークツウピーク電圧の比率を大きくする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかにおいて、前記転写電界形成手段として、前記転写ニップの周辺に存在する部材に印加するための直流バイアス及び交流バイアスを出力する電源を具備するものを用い、前記直流バイアス及び交流バイアスの組み合わせとして、前記前記直流バイアスに対して前記交流バイアスを重畳した重畳バイアスの最大値と最小値との中心である中心値と、前記重畳バイアスの時間平均値とを同じにし、且つ前記交流バイアスのピークツウピーク電圧が前記中心値の4倍よりも大きくなるものを出力するように、前記電源を構成したことを特徴とするものである。
[態様F]
態様Fは、態様A〜Eの何れかにおいて、前記転写電界形成手段として、前記転写ニップの周辺に存在する部材に印加するための直流バイアス及び交流バイアスを出力する電源を具備するものを用い、前記直流バイアス及び交流バイアスの組み合わせとして、前記交番電界の極性について、正規極性に帯電しているトナーを前記転写ニップ内で前記像担持体側から前記記録シート側に移動させる極性にする時間を、逆の極性にする時間よりも長くするものを出力するように、前記電源を構成したことを特徴とするものである。