以下、図を参照して本発明の実施形態を説明する。最初に画像形成装置の全体構成と動作を説明し、そのあとに本発明の特徴部分について説明する。各実施の形態において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すに留め、先の説明との重複説明は省略する。
図1は、本発明を適用した画像形成装の一例である電子写真方式のプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)を示す。本実施形態において、以下に記述する部材の抵抗値は、特に限定しない限り、温度22℃、相対湿度50%の環境下の値を示すものとする。
図1に示すプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101と、制御部200を備えていて、両面印刷可能とされている。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、現像剤となるトナーの色が異なる以外は同一構成であるので、以下画像形成ユニット1Kを代表例として図2を用いて説明する。画像形成ユニット1Kは、像担持体となる感光体2Kを備えている。感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された例えば外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。
感光体2Kの周囲には、帯電ローラ7Kを備えた帯電装置6K、現像装置8K、ドラムクリーニング装置3Kが配置されている。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめるものである。図1に示す形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電装置6Kとしては、帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式ではなく、帯電チャージャーによる非接触帯電方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、図1に示す光書込ユニット80から発せられるレーザ光Lによって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、転写ユニット30が備える中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2Kの表面に付着している転写残トナーを除去するものである。ドラムクリーニング装置3Kは、図2に示すように回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端の先端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5K等を有している。ドラムクリーニング装置3Kは、回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2Kの表面から掻き取ったり、クリーニングブレード5Kで転写残トナーを感光体2Kの表面から掻き落とすものである。なお、クリーニングブレード5Kについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で、自由端の先端を感光体2Kに当接させている。
図示しない除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像剤担持体となる現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kを有している。現像剤搬送部13Kは、現像剤搬送部材となる第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、現像剤搬送部材となる第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。これらスクリュウ部材10K、11Kは、それぞれ軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1搬送室と第2搬送室とは仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内に位置する現像装置8Kのケーシングの下壁には、図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。このトナー濃度センサには、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有する二成分のK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサ(トナー濃度センサ)は、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の各第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。
プリンタの制御部200は、ROM、RAM、CPU等の構成を備えた周知のコンピュータで構成されている。この制御部200は、そのROMに、Y,M,C,K用の各トナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefが予め記憶されている。制御部200は、Y,M,C,K用のトナー濃度検知センサからの各出力電圧値と、Y,M,C,K用の各Vtrefとの差が所定値を超えた場合、その差に応じた時間だけY,M,C,K用のトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の各現像装置における各第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給されることになる。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部に現像スリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを備えた周知の構成である。現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、現像スリーブの回転に伴って感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブ(現像ロール9K)と感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ(現像ロール9K)上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様の構成とされていて、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cのトナー像がそれぞれ形成される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、プリンタにパーソナルコンピュータ等の外部機器が接続されている場合、これら外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザダイオードから発したレーザ光Lにより、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザ光Lが照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザ照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザ光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、トナー像が一端保持される無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体であり中間転写体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、対向部材となる2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35K、転写部材となるニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位検知センサ38などを有している。
無端状の中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。中間転写ベルト31は、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、図示しない1次転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kのトナー像と、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成されている。Y用の感光体2Yの表面に形成されたYトナー像は、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kの各トナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、芯金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラの芯金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。本実施形態では、このような構成の1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加している。なお、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30が有するニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されていて、ループ内側に位置する2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36との間には、両者が当接する2次転写ニップが形成されている。本実施形態において、ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33(中間転写ベルト31)側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
ニップ形成ローラ36には、ニップ形成ローラ36の回転に従動する、例えば直径10mm、ステンレス(SUS304)等で構成された金属製ローラ40が当接されている。この金属製ローラ40には電圧源と電流計を備えた抵抗検出手段となる抵抗測定装置41が接続されており、非作像動作時に直流電圧1000Vを印加した際に流れる電流から、オームの法則に基づいてニップ形成ローラ36の抵抗を算出する。なお、当然のことながら、非作像動作時に直流電圧の値は1000V以外でもよく、温度や湿度に応じて変更してもよい。また、電圧として交流電圧を用いることも可能である。
転写ユニット30の下方には、記録材となる記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容可能な給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。
2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
なお、記録紙Pが、例えば片面にエンボス加工を施され、表面に大きな凹凸を有するエンボス紙の場合は、記録紙Pはエンボス面が下向きになるように給紙カセット100にセットされる。また、記録紙Pは給紙トレイ102にセットすることも可能であり、この場合はエンボス面が上向きになるようにセットされる。
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は例えば約24[mm]である。また、芯金の径は例えば約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、上述の1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は例えば約24[mm]である。また、芯金の径は例えば約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、上述の1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力可能とされている。2次転写バイアス電源39は、両面印字時において、第一面(定着装置90を通過する前にトナーが転写される紙の表面)にトナーを二次転写する際は、直流電圧に交流電圧を重畳せしめた2次転写バイアスを出力し、第二面(一度定着装置90を通過した後にトナーが転写される紙の表面)にトナーを二次転写する際は単純な直流電圧からなる2次転写バイアスを出力するように、制御部200によって制御される。
2次転写バイアス電源39の出力端子は、2次転写裏面ローラ33の芯金に接続されている。2次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、ニップ形成ローラ36については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアス(2次転写バイアス)を2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアス(2次転写バイアス)をニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、2次転写裏面ローラ33に重畳バイアス(2次転写バイアス)を印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアス(2次転写バイアス)の時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、2次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアス(2次転写バイアス)をニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアス(2次転写バイアス)の時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアス(2次転写バイアス)を2次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加して2次転写バイアスとしてもよい。
本実施形態では、直流電圧に重畳する交流電圧の波形としてサイン波を用いていて、トナーを戻す側の時間(Duty)を50%としている。直流電圧に重畳する交流電圧の波形は、サイン波に限定されるものではなく、図12から図18に示すような台形波、矩形波、三角波でもよく、また、トナーを戻す側の時間(Duty)が50%でない、波形を用いることも可能である。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップするものである。
電位検知センサ38は、中間転写ベルト31のループ外側で、中間転写ベルト31の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ32に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向配置されている。そして中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、本実施形態において、電位検知センサ38としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
2次転写ニップよりも記録紙搬送方向下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とを備え、これら2つのローラによって定着ニップが形成されている。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像の担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の作用によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
定着装置90内から排出された記録紙Pは、片面印字の場合は搬送経路1に従ってプリンタ外へと排出され、通常は、図示されないフィニッシャによって画像面が下向きになるような形で図示しない排紙トレイに排出される。フィニッシャによって画像面を下向きにするのは、セキュリティやプライバシに対する配慮である。一方、両面印字の場合には搬送経路2へと案内され、搬送経路2の先端に配置された記録材反転機構14によって反転され給紙トレイ102へと搬送される。そして給紙トレイ102から再びレジストローラ対101を経て2次転写ニップへと搬送され、裏面側へとトナー像が一括転写され、定着装置90、搬送経路1を経てプリンタ外へと排出される。
図3は、2次転写バイアス電源39から出力されて2次転写裏面ローラ3に印加される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す図である。ここでは、サイン波として出力し、トナーを戻す側の時間(Duty)を50%としている。同図において、Vaveは時間平均電圧であり、2次転写バイアスの時間平均値を示している。図示のように、重畳バイアスからなる2次転写バイアスは、正弦波状の形状を示しており、戻し方向側のピーク値と、転写方向側のピーク値とを具備している。図3において、Vtとは、2次転写ニップ内でトナーをベルト側からニップ形成ローラ36側に移動させる方(転写方向側)のピーク値を指し、符号Vrは、トナーをニップ形成ローラ36側からベルト側に戻す方(戻し方向側)のピーク値を指す。Voffは電位差の最大値と最小値の中心電圧であり、ここでは2次転写バイアスの直流成分の値である。ピークツウピーク電圧(Vpp)は、2次転写バイアスの交流成分の電位差の最大値を示す。
2次転写バイアスは、上述したように、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加される。電圧出力手段となる2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段としても機能する。また、上述したように、2次転写裏面ローラ33の芯金に2次転写バイスが印加されると、第1部材であり対向部材となる2次転写裏面ローラ33の芯金と、第2部材であり、転写部材となるニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、2次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能することになる。
この2次転写裏面ローラ33の芯金とニップ形成ローラ36の芯金との間の電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本実施形態では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ36の電位を2次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電移動させることになる。
図1に示すプリンタにおいては、既に述べたように、2次転写バイアスは、オフセット電圧(Voff)とピークツウピーク電圧(Vpp)とを重畳したものであり、その時間平均値(Vave)はオフセット電圧(Voff)と同じ値になる。また、同プリンタにおいては、2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加し、且つニップ形成ローラ36の芯金を接地している(0V)。よって、2次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分Vaveと、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分とから構成される。
図3に示すように、本実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧(Voff)として、マイナス極性のものを採用している。2次転写裏面ローラ33に印加される2次転写バイアスのオフセット電圧(Voff)の極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。2次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(Vave)(本例ではオフセット電圧(Voff)と同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出されるのである。
次に、上記実施形態を用いて本発明者らが行った研究結果について添付図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態において使用する二成分現像剤は、粒径平均が6.8μmの、一般的な不定形トナー(ポリエステル系)と、平均粒径55μmの樹脂キャリアを使用している。
これまでの発明者らの検討で、凹凸のある記録材の凹部にトナーを十分に転写させるためには、波形がサイン波の場合は、オフセット電圧(Voff)とピークツウピーク電圧(Vpp)との関係が式(1)を満たす必要があることがわかっている。
Vpp > 4×|Voff|・・(1)
また、直流電圧に交流電圧を重畳した2次転写バイアスによって転写した場合、交流電圧による周期的な画像ムラを発生させないように配慮する必要がある。ここで、交流電圧の周波数をf[Hz]、中間転写ベルト31の線速をv[mm/s]、転写ニップ幅をd[mm]とすると、画像が転写ニップを通過する時間はニップ幅を線速で割った値d/v[s]で、交番電圧の周期は1/f[s]なので、ニップ通過時間中に印加される交番電圧の周期回数は、d×f/vとなる。周期的な画像ムラが発生しない条件は、この周期回数が4回以上となるように周波数を設定することで、交番電圧の周波数fの条件としては以下の式(2)のようになる。
f > (4/d)×v・・・(2)
本実施形態において、上記の条件を満たす具体的例を以下に示す。凹凸のある記録材として、(株)NBSリコー製のFC和紙タイプ「さざ波」と呼ばれる厚みが約130μm、凹凸差が最大で約70μm程度の記録紙Pに画像を転写する場合、例えば、温度22℃、相対湿度50%の環境下では、2次転写バイアスをVoff=−1.0kV、Vpp=5.0kVに設定すると、白抜け画像の無い良好な画像が得られた。また、中間転写ベルト31の線速vの設定値が282mm/sの場合、例えば周波数が400Hzで周期的な画像ムラは発生しなかった。
本実施形態においては、2次転写裏面ローラ33の芯金に対して2次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36の芯金を接地しているので、両ローラ間における電位差の時間平均値(Vave)が、2次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧(Voff)と同じ値になる。ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36の芯金に直流電圧を印加した場合、2次転写裏面ローラ33の芯金に印加する直流電圧と、ニップ形成ローラ36の芯金に印加する直流電圧との重畳値を、オフセット電圧(Voff)として取り扱うものとする。つまり、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36の芯金に直流電圧を印加した場合であっても、電位差の時間平均値(Vave)とオフセット電圧(Voff)とは同じ値になる。
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、2次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分とを含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる。
(1)ニップ形成部材(ニップ形成ローラ36)に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材(2次転写裏面ローラ33)をアース接続する。
(2)ニップ形成部材(ニップ形成ローラ36)に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材(2次転写裏面ローラ33)に直流バイアスを印加する。
(3)ニップ形成部材(ニップ形成ローラ36)に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材(2次転写裏面ローラ33)に直流バイアスを印加する。
(4)ニップ形成部材(ニップ形成ローラ36)をアース接続し、且つ、裏面当接部材(2次転写裏面ローラ33)に重畳バイアスを印加する。
(5)ニップ形成部材(ニップ形成ローラ36)に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材(2次転写裏面ローラ33)に重畳バイアスを印加する。
(6)ニップ形成部材(ニップ形成ローラ36)に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材(2次転写裏面ローラ33)に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
次に、本発明者らが行った転写実験について説明する。
本発明者らは、サイン波の電圧条件を「1/4×Vpp>|Voff|」という条件にすることで、凹部で十分な画像濃度を得てエンボス面の凹凸にならった濃淡パターンを従来よりも目立たなくすることができた原因を明らかにするために、特殊な転写実験装置を作製した。
図4は、その転写実験装置を示す概略構成図である。この転写実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属板215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板210の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、図1に示すプリンタの各現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、透明基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録紙214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録紙214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になると金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録紙214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録紙214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、透明基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。透明基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
トナーの挙動については、次のようにして撮影する。まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録紙214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影する。
図4に示した転写実験装置と、図1に示すプリンタとでは、トナーを記録紙Pに転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、転写実験装置でも、良好な凹部濃度再現性が得られる転写バイアス条件を調べてみた。記録紙214としては、レザック66 260kg紙を使用した。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーに、Kトナーを少量混入したものを用いた。図4の転写実験装置では、記録紙214の裏面に転写バイアスを印加する構成になっているため、トナーを記録紙214に転写し得る転写バイアスの極性が、図1に係るプリンタとは逆になっている(即ち、プラス極性)。重畳バイアスからなる転写バイアスの交流成分として、波形が正弦波であるものを採用した。交流成分の周波数fを500[Hz]、直流電圧(本例ではオフセット電圧(Voff)に該当)を200[V]、ピークツウピーク電圧(Vpp)を400[V]から2600[V]まで200[V]単位で変化させていきながら、記録紙214に対して0.4〜0.5[mg/cm2]のトナー付着量でトナー層216を転写した。その結果、ピークツウピーク電圧(Vpp)を800[V]以下に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4未満になったが、ピークツウピーク電圧(Vpp)を900〜2200[V]の範囲に設定した条件では、凹部濃度再現性がレベル4以上になった。転写試験装置でも、プリンタ試験機と同様に、「1/4×Vpp>Voff」という条件で、凹部濃度再現性を許容レベルまで良好にすることができたのである。なお、ピークツウピーク電圧(Vpp)を2400[V]に設定した条件では、凹部濃度再現性は許容レベルであるものの、許容レベルを超える白点が発生してしまった。ここでレベルとは、凹部濃度再現性の目視評価を示すもので、レベル1からレベル5までの範囲で評価した。レベル1は低くレベル4以上を許容レベルとした。
次に、顕微鏡242の焦点を透明基板210上のトナー層216に合わせ、直流電圧(本例ではオフセット電圧(Voff)に該当)を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧(Vpp)を1000[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件で、トナーの挙動を撮影した。すると、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子は、転写バイアスの交流成分によって形成される交番電界により、透明基板210と記録紙214との間を往復移動するが、その往復移動回数の増加とともに、往復移動するトナー粒子の量が増加する。具体的には、転写ニップにおいては、転写バイアスの交流成分の1周期(1/f)が到来する毎に、交番電界が1回作用して黒丸で示すトナー粒子が1回往復移動する。初めの1周期では、図5に示すように、トナー層216のうち、層の表面に存在している白丸で示すトナー粒子だけがトナー層216から離脱する。そして、記録紙214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216のトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、次の1周期には、図6に示すように、前の1周期よりも多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。そして、記録紙214の凹部に進入した後、再びトナー層216に戻ってくる。このとき、戻ったトナー粒子が、トナー層216中にまだ残っていたトナー粒子に衝突することで、後者のトナー粒子とトナー層216や透明基板210との付着力を弱める。これにより、更に次の1周期には、図7に示すように、前の1周期よりも更に多くのトナー粒子がトナー層216から離脱する。このように、トナー粒子は往復移動する毎に、その数を徐々に増やしていく。すると、ニップ通過時間が経過したときには(転写実験装置ではニップ通過時間に相当する時間が経過したとき)、記録紙214の凹部内に十分量のトナーが転移していることがわかった。
一方、直流電圧を200[V]に設定し、且つピークツウピーク電圧(Vpp)を800[V]にした条件、即ち、「1/4×Vpp>|Voff|」を満足しない条件で、トナーの挙動を撮影したところ、次のような現象が観察された。即ち、トナー層216中のトナー粒子のうち、層の表面に存在しているものが、初めの1周期で層から離脱して記録紙214の凹部内に進入する。ところが、進入したトナー粒子は、その後、トナー層216に向かうことなく、凹部内に留まった。次の1周期が到来したとき、トナー層216から新たに離脱して記録紙214の凹部内に進入したトナー粒子は、ごく僅かであった。よって、ニップ通過時間が経過した時点で、記録紙214の凹部内には少量のトナー粒子しか転移していない状態であった。
以上のように、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備することで図5〜図7に示したようなトナーの移動現象を生起せしめて、記録紙214の凹部内に十分量のトナーを転移させ得ることがわかった。
すなわち、「1/4×Vpp>|Voff|」を満たすオフセット電圧(Voff)とピークツウピーク電圧(Vpp)を有するサイン波で画像形成を行うことによって、エンボス紙(記録紙214)上で良好な画像を得ることが可能となる。ちなみに、凹部の濃度の観点からから言えば、オフセット電圧(Voff)とピークツウピーク電圧(Vpp)の関係は、より好ましくは、「1/5×Vpp>|Voff|」である。
なお図5〜図7に示したようなトナーの移動現象を生起せしめるためには、転写ニップ内で最低でもトナー粒子を2往復させる必要がある。このため、ニップ通過時間については、交流成分の周期の2倍以上に設定する必要がある。
一方、図1に示すプリンタでは、上述したように、プロセス線速v=282[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値が400[Hz]であることがわかっている。中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36との直接当接による2次転写ニップのローラ表面移動方向の長さであるニップ幅をd[mm]としたとき、本プリンタのニップ幅dは3mmであり、400Hzの条件で二次転写ニップをトナーが通過する過程での交流成分の波形数は約4.26回分(3×400/282)と計算することができる。すなわち、2次転写ニップ通過中に交番電界を約4回作用させることで、ピッチムラのない良好な画像を得ることができると言え、ピッチムラのない良好な画像を得るためには、「4<d×f/v」という条件が必要になるのである。
ところで、ニップ形成ローラ36や2次転写裏面ローラ33などのゴム層の抵抗は温度や湿度の影響によって変化するが、本発明者らが検討を進めた結果、これらの抵抗が変化すると、これらの部材や記録紙Pへの電荷の充電時間が変化し、結果的にトナーの往復運動回数が変化することが判った。特に、ニップ形成ローラ36や2次転写裏面ローラ33の抵抗が下がると、電荷の充電時間が短くなり、エンボス紙などの凹凸を有する記録紙Pの凹部の画像濃度が低くなることが、発明者らの検討で明らかになった。なお、図8は、交流バイアスの周期に対して、電荷の充電が速い場合にトナーが往復運動しないことを説明するための、2次転写ニップにおけるトナー粒子に働く静電力の時間変化を説明する模式図である。
記録紙Pの凹部の画像濃度はトナーの往復運動回数を増やせば高くなるため、交流電圧の周波数を高くすれば良いのだが、必要以上に高い周波数を用いるとトナーチリが増えるという、別の問題が発生してしまう。
そこで、本発明者らは、これらニップ形成ローラ36や2次転写裏面ローラ33の抵抗低下に従って交流電圧の周波数を高くすることによって、記録紙Pの凹部の濃度とチリを両立することを見出した。
表1はモノクロ画像に対して、直流電圧にサイン波の交流電圧を重畳して、記録紙Pとなる凹凸紙(レザック66 175kg)に転写を行う場合の、ニップ形成ローラ36の抵抗に対するオフセット電圧(Voff)とピークツウピーク電圧(Vpp)の設定値の例であり、表2は、各電圧条件で周波数を変えたときの、凹凸紙の凹部の画像濃度と、チリの目視評価の5段階評価結果である。表2の各セルの左側の値が大きくなる程、凹凸紙の凹部の画像濃度が高いことを意味し、右側の値が大きくなる程、チリが少ないことを意味する。一方、凹凸紙の画質ではチリよりも凹部の画像濃度の方が重要であるため、総合的な評価は、凹部の画像濃度のランクを2倍した値と、チリの値を足し合わせた値で最終評価を行い、表3のようにランク付けした。なお、単純な直流電圧の2次転写バイアスの場合は、どのような電圧条件でも、凹凸紙の凹部の画像濃度のランクは1であり、一方、チリについては5となる。
表3に示すように、ニップ形成ローラ36の抵抗に応じて2次転写バイアス電源39からの交流電圧の周波数を制御部200で制御して変えることによって、より高画質な画像の提供を実現した。
ところで、上述したように、凹凸紙の凹部の画像濃度を上げるためには、トナーの往復運動が重要であるが、往復運動が起これば良いので、波形は図3に示すサイン波に限定されるものではない。特にサイン波の場合は、ニップ形成ローラ36と2次転写裏面ローラ33間における電位差の時間平均値(Vave)が、2次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧(Voff)と等しくなるが、このような交流電圧では、往復運動に必要な戻り電位ピーク値Vrに対して、必然的に転写方向ピーク値Vtが大きくなり、特にトナーの付着量が多い場合や、凹凸紙の抵抗が高い場合に、図9のような放電痕が発生し易い問題があるため、オフセット電圧(Voff)を小さくするなどして調整する必要あった。
これに対し、本発明者らは、図12〜図18に示すような、交流成分のオフセット電圧(Voff)を挟んで、トナーを戻す側の波形の面積を、トナーを転写する側の波形の面積より小さくするように、2次転写バイアス電源39の出力を制御部200で制御することによって、必要以上に高い転写方向ピーク値Vtが印加されることがないようにした。ここで、「転写時間A」と「戻し時間B」という用語を導入し、これらを以下のように定義する。
転写時間A:交流バイアスの波形1周期において、電位差の最大値と最小値の中心電圧となるオフセット電圧(Voff)よりもトナーが記録紙に転写される側の電圧となる時間
戻し時間B:交流バイアスの波形1周期において、電位差の最大値と最小値の中心電圧となるオフセット電圧(Voff)よりもトナーが中間転写ベルト31へ戻される側の電圧となる時間
表4は、図16に示される波形を使って、戻し時間Bの比率(Duty)を16%としたときの、種々の温湿度環境におけるカラー画像に対するバイアス条件であり、表5、表6は各環境下での、画質のランクと周波数の関係を示す図である。
サイン波と同様に、ニップ形成ローラ36の抵抗に応じて2次転写バイアス電源39からの交流電圧の周波数を制御部200で変えることによって、高画質な画像の提供を実現している。さらに、制御部200で戻し時間Bの比率を転写時間より小さくし、転写方向ピーク値Vtを下げつつ、かつ、電位差の時間平均値(Vave)を大きくできる効果により、サイン波より良好な画像を実現した。
上述の図1に示すプリンタの形態では、ニップ形成ローラ36の抵抗をSUSローラ40と抵抗測定装置41で直接測定し、この測定結果に基づいて、制御部200で2次転写バイアスの周波数を制御しているが、抵抗の測定はニップ形成ローラ36に限らず、例えば、SUSローラ40と抵抗測定装置41を2次転写裏面ローラ33側に接続し、2次転写裏面ローラ33を接地した状態で測定した、2次転写裏面ローラ33の抵抗値に基づいて制御部200で制御しても構わない。
あるいは、図10に示す第2の実施形態のように、非作像時に、2次転写裏面ローラ33に直流電圧や交流電圧を印加した際に、ニップ形成ローラ36に流れる電流を抵抗検知手段として電流計141で計測し、その計測結果に基づいて作像時に印加する、交流電圧の周波数を制御部200で決定して制御するようにしてもよい。同様に、2次転写裏面ローラ33に2次転写バイアス電源39から印加した電圧と、その際に流れた電流の値から抵抗を算出しても良い。これらの構成は、図1の構成に比べて、抵抗検知用の電圧源が不要になるため、スペースやコストの点で優れることとなる。
ところで、中間転写ベルト31、2次転写裏面ローラ33、ニップ形成ローラ36の体積抵抗率や抵抗は、上記形態のものに限定されるものではない。但し、抵抗が高すぎると、放電等によって中間転写ベルト31、2次転写裏面ローラ33、ニップ形成ローラ36の表面に付与される電荷が蓄積し、電界が経時変化するため好ましくない。その電荷を除電する手段を設けない場合には、中間転写ベルト31、2次転写裏面ローラ33、ニップ形成ローラ36としては、体積抵抗率が1E12Ωcm以下であるものを用いることが望ましい。
上記形態では、中間転写ベルト31とニップ形成ローラ36の当接によって2次転写ニップを形成するものとしたが、図11に示すように、中間転写ベルト31と、転写部材として無端状のニップ形成ベルト136との当接によって2次転写ニップを形成してもよい。この場合、中間転写ベルト31のループ内側に配設された2次転写裏面ローラ33の芯金と、ニップ形成ベルト136のループ内側でニップ形成ベルト136を中間転写ベルト31に向けて押圧する押圧部材たる押圧ローラ137の芯金との間に印加される交流バイアスのオフセット電圧(Voff)が、電位差の時間平均値(Vave)と同じか、それより転写方向側になるようにし、特に図3に示したサイン波の場合は、「1/4×Vpp>|Voff|」という条件を具備し、且つ押圧ローラ137の芯金の電位を2次転写裏面ローラ33の芯金の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくした電位差を発生させればよい。
上述したような、凹凸状の記録紙P(エンボス紙)のエンボス面に対して、直流バイアスに非常に大きな交流電圧を重畳する手法は、引っ張り弾性率が高く、記録紙Pの凹凸に対する追従性が悪いベルトに対して特に有効である。特に引っ張り弾性率が2GPa以上あるような、ポリイミド製の無端ベルト状のベルト部材の場合は、耐久性の面で優れるが、従来の直流成分のみを2次転写バイアスとして用いた画像形成装置の場合は、エンボス面での濃度ムラが著しかった。本発明により、記録紙P(エンボス紙)での高画質と、ベルトの耐久性の両立が可能となる。
なお、上述した転写部材の抵抗の低下による、記録紙Pの凹部の転写率低下は、特に、トナーが劣化し、トナーの付着力が大きくなった場合に顕著になるため、トナーが劣化したと判断した場合にのみ、その抵抗に応じて2次転写バイアス電源39の出力を制御部200で制御して周波数を変えても良い。劣化の判断は、プリンタの出力枚数、出力した画像面積率、現像バイアス等の情報に基づいて判断することができる。
つまり、上述の形態によると、記録紙Pの抵抗が下がって電荷の充電速度が速くなると、交流成分による、転写ニップ通過時間内のトナーの往復運動の回数が減るため、周波数を図8に示すように、高くするが、湿度に関係なく必要以上に周波数を高くすると、チリが発生するため、トナーの往復運動回数の起こりやすさに応じて、周波数を高くすることによって最適な出力画質を提供することができる。
また、2次転写バイアスの交流バイアスを、正規の極性に帯電しているトナーを中間転写ベルト31(像担持体/中間転写体)側から記録紙P側に移動させる方向の時間(転写時間A)を、同じく記録紙P側から中間転写ベルト31(像担持体/中間転写体)側に戻す方向の時間(戻し時間B)よりも長くしたものを出力するようにしたので、戻し時間Bの比率(Duty)を低くすることによって、必要以上に転写方向ピーク値Vtが高くなることを防ぐとともに、高い電位差の時間平均値(Vave)を与えることによって、記録紙Pの凹部と凸部での高い画像濃度を実現することができる。
オフセット電圧(Voff)=電位差の時間平均値(Vave)で、且つ、交流成分の電位差の最大値であるピークツウピーク(Vpp)が、オフセット電圧(Voff)の絶対値の4倍よりも大きく設定したので、サイン波のようなトナーを戻す側の戻し時間Bの比率Dutyが50%の交流電圧を用いる場合は、ピークツウピーク(Vpp)がオフセット電圧(Voff)の絶対値の4倍より大きいような、大きな交番電界を形成し、トナーの往復運動を起すことによって、記録紙Pの凹部での高い画像濃度を実現することができる。
2次転写ニップの幅をw、プロセスの線速をvとするとき、交流成分の周波数f[Hz]がf>2/(w/v)・・・式1を満たすようにしたので、交流電圧成分に起因する画像上の濃度ムラをなくすことができる。さらに、中間転写ベルト31の引っ張り弾性率を2GPa以上としたので、弾性率の高いベルト部材を用いても凹凸状の記録紙P上で濃度ムラのない画質を提供することができる。