以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図6は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kと、転写装置としての転写ユニット30と、光書込ユニット80と、定着装置90と、給紙カセット100と、レジストローラ対101とを備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図7に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査される。感光体2Kの表面のうち、レーザー光の照射を受けた部分は電位を減衰させることで、K用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、図示しないK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持している図示しないK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図6において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,M,Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,M,C上にY,M,Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,M,C,Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,M,C,Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット31は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,M,C,K、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37、電位センサ38などを有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは60[μm]である。また、体積抵抗率は1e9[Ωcm]である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
4つの1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,M,C,Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、1次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。このような1次転写ローラ35Y,M,C,Kに対して、1次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
転写ユニット31の下方には、記録シートPを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録シートPに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。このレジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括2次転写され、記録シートPの白色と相まってフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
また、ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]である。また、心金の径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
2次転写バイアス電源39は、2次転写バイアスとして、所定の周期で繰り返される複数のパルス波からなるものを出力することができる。2次転写バイアス電源39の出力端子は、2次転写裏面ローラ33の芯金に接続されている。2次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、ニップ形成ローラ36については、その芯金を接地(アース接続)している。
なお、2次転写バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33を接地してもよい。2次転写バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加する場合には、2次転写バイアスの波形の1周期における平均電位を、トナーの帯電極性と同じ極性(実施形態ではマイナス極性)にする。かかる極性の平均電位により、トナー粒子を2次転写裏面ローラ33に対して静電的に反発させて、2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に送る。これに対し、実施形態とは異なり、2次転写バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加する場合には、平均電位を、トナーの帯電極性とは逆極性にする。かかる極性の平均電位により、トナー粒子をニップ形成ローラ36に向けて引き寄せて、2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に送る。
記録シートPとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、繰り返しパルスからなるものに切り替える必要がある。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
2次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット30におけるY,M,C用の1次転写ローラ35Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、1次転写ローラ35Y,M,C,Kを、感光体2Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト31のおもて面を感光体2Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト31をK用の感光体2Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体2K上に形成する。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、実施形態にかかるプリンタと同様の構成のプリンタ試験機を用意した。このプリンタ試験機における2次転写電源39としては、直流電圧のみならず、様々な波形の繰り返しパルスも出力可能とするように、トレック社製交直両用アンプリファイア(10/40a)、とエヌエフ回路ブロック社製任意波形発生装置(WF1974)110Bとを組み合わせたものを用いた。
実験においては、現像剤として、平均粒径が6.8[μm]である一般的な不定形トナー粒子(ポリエステル系)からなるマイナス帯電性のトナーと、平均粒径が55[μm]であるキャリア粒子からなるキャリアとを混合したものを使用した。また、記録シートとしては、特殊製紙株式会社製の「レザック66」260kg紙(凹凸差の最大値が約150μm)を使用した。感光体2K,C,M,Yや、中間転写ベルト31の線速であるプロセス線速については、282[mm/s]に設定した。
[第1プリントテスト]
2次転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを2次転写裏面ローラ33に印加しながら、黒ベタ画像を出力した。直流電圧の値を徐々に大きくしていきながら、それぞれの電圧値の条件で出力した黒ベタ画像の画像濃度を測定した。すると、直流電圧を大きくしていくに従って画像濃度も増加したが、直流電圧を大きくし過ぎると、2次転写ニップ内で激しい放電が発生して画像が得られなくなった。また、得られた黒ベタ画像は、何れもシート表面の凸部は黒く視認できるものの、凹部には殆どトナーが付着していなかった。つまり、シート表面の凹部において著しい画像濃度不足が認められた。
[第2プリントテスト]
次に、2次転写バイアスとして、図2に示されるような正弦波状の波形が得られる重畳バイアスからなるものを2次転写バイアス電源39から出力しながら、黒ベタ画像を形成した。重畳バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffについては、−2000[V]に設定した。また、交流成分の周波数については、500[Hz]に設定した。また、ピークツウピーク電圧Vppについては、1000、2000、3000、4000[V]の4通りを採用した。何れの場合においても、オフセット電圧Voffが−2000[V]であることから、転写バイアスの1周期内において、極性がプラスになることはない。転写バイアスの値は、マイナス極性の値であるか、あるいは0になる。このような2次転写バイアスでは、2次転写ニップのトナー粒子に対して、ベルト側からシート表面側に向かう静電気力のみを付与し、シート表面側からベルト側に向かう静電気力を付与することはない。
それぞれのピークツウピーク電圧Vppの条件で黒ベタ画像を出力したが、何れにおいても、シート表面の凹部における画像濃度不足はほとんど改善されなかった。
[第3プリントテスト]
2次転写バイアスの波形や周波数については、第2プリントテストと同様に設定した。オフセット電圧Voffについては、第2プリントテストよりも小さい−1000[V]に設定した。また、ピークツウピーク電圧については、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000[V]の8通りを採用した。何れの場合においても、ピーク値の絶対値よりもオフセット電圧Voffの絶対値(1000)が小さいことから、1周期内において、2次転写バイアスの値がマイナス極性とプラス極性とで切り替わる。よって、1周期内において、2次転写ニップのトナー粒子に対して、ベルト側からシート表面側に向かう静電気力と、シート表面側からベルト側に向かう静電気力との両方を切り替えて付与することになる。1周期内における平均電位は、オフセット電圧Voffと同じ−1000になり、これはマイナス極性の値であることから、1周期全体としては、トナーに対して、ベルト側からシート表面側に向かう静電気力を付与する。これにより、トナー粒子がベルト表面からシート表面に転移する。
それぞれのピークツウピーク電圧の条件で黒ベタ画像を出力したところ、ピークツウピーク電圧Vppを5000[V]以下に設定した条件では、シート表面の凹部が画像濃度不足となった。これに対し、ピークツウピーク電圧Vppを6000、7000[V]に設定した条件では、シート表面の凹部において十分な画像濃度が得られた。但し、ピークツウピーク電圧Vppを8000、9000、10000[V]に設定した条件では、凹部内で十分な画像濃度が得られるものの、2次転写ニップ内で局所的な放電を発生させることに起因する白点(局所放電痕)を発生させてしまった。
シート表面の凹部で画像濃度不足を引き起こしたピークツウピーク電圧Vpp=5000[V]という条件では、戻しピーク値Vr=1500[V]、送りピーク値Vt=−3500[V]になる。そして、シート表面の凸部では十分な画像濃度が得られていることから、−3500[V]という送りピーク値Vtであっても、トナー粒子をベルト側からシート側に移動させる電界の強度は十分であることになる。
一方、シート表面の凹部で十分な画像濃度が得られたピークツウピーク電圧Vpp=6000[V]という条件では、戻しピーク値Vr=2000[V]、送りピーク値Vt=−4000[V]になる。Vpp=5000[V]の場合と比較すると、戻しピーク値Vrが500[V]だけプラス側にシフトし、且つ送りピーク値Vtが500[V]だけマイナス側にシフトしている。2つのシフトのうち、少なくとも何れか一方が、凹部濃度再現性に有利に働いたことになる。
先の第2プリントテストに着目すると、ピークツウピーク電圧Vppを4000[V]に設定した条件では、送りピーク値Vtを−4000[V]にしている。この条件でもシート表面の凹部で十分な画像濃度が得られなかったことから、第3プリントテストにおいて、戻しピーク値Vrが1500[V]から2000[V]に500[V]だけプラス側にシフトしたことが、凹部で十分な画像濃度が得られた原因になっていることになる。つまり、シート表面の凹部で十分な画像濃度を得るためには、戻しピーク値Vrをある程度大きくしなければならないことがわかった。
[転写実験]
本発明者らは、特殊な転写実験装置を作製した。図8は、この転写実験装置を示す概略構成図である。同図において、転写実験装置は、透明基板210、現像装置231、Zステージ220、照明241、顕微鏡242、高速度カメラ243、パーソナルコンピュータ244などを備えている。透明基板210は、ガラス板211と、これの下面に形成されたITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極212と、透明電極212の上に被覆された透明材料からなる透明絶縁層213とを具備している。この透明基板210は、図示しない基板支持手段によって所定の高さ位置で支持されている。この基板支持手段は、図示しない移動機構によって図中上下左右方向に移動することが可能である。図示の例では、透明基板210が金属版215を載置したZステージ220の上に位置しているが、基板支持手段の移動により、Zステージ220の側方に配設された現像装置231の真上に移動することも可能である。なお、透明基板212の透明電極212は、基板支持手段に固定された電極に接続され、この電極は接地されている。
現像装置231は、実施形態に係るプリンタの現像装置と同様の構成になっており、スクリュウ部材232、現像ロール233、ドクターブレード234などを有している。現像ロール233は、電源235によって現像バイアスが印加された状態で回転駆動される。
透明基板210が基板支持手段の移動により、現像装置231の真上で且つ現像ロール233に対して所定のギャップを介して対向する位置まで所定の速度で移動せしめられると、現像ロール233上のトナーが透明基板210の透明電極212上に転移する。これにより、透明基板210の透明電極212上には所定の厚みのトナー層216が形成される。トナー層216に対する単位面積あたりのトナー付着量は、現像剤のトナー濃度、トナーの帯電量、現像バイアス値、基板210と現像ロール233とのギャップ、透明基板210の移動速度、現像ロール233の回転速度などによって調整することができる。
トナー層216が形成された透明基板210は、平面状の金属板215上に導電性接着剤で貼り付された記録シート214との対向位置まで平行移動せしめられる。金属板215は、加重センサが設けられた基板221上に設置され、基板221はZステージ220上に設置されている。また、金属板215は、電圧増幅器217に接続されている。電圧増幅器217には、波形発生装置218によって直流電圧及び交番電圧からなる転写バイアスが入力され、金属板215には電圧増幅器217によって増幅された転写バイアスが印加される。Zステージ220を駆動制御して金属板215を上昇させると、記録シート214がトナー層216と接触し始める。金属板215を更に上昇させると、トナー層216に対する圧力が増加するが、加重センサからの出力が所定の値になるように金属板215の上昇を停止させる。圧力を所定値にした状態で、金属板215に転写バイアスを印加してトナーの挙動を観察する。観察後は、Zステージ220を駆動制御して金属板215を下降させて、記録シート214を透明基板210から離間させる。すると、トナー層216は記録シート214上に転写されている。
トナーの挙動の観察については、基板210の上方に配設されている顕微鏡242及び高速度カメラ243を用いて行う。基板210は、ガラス板211、透明電極212、及び透明絶縁層213という各層が全て透明材料からなるので、透明電極210の上方から、透明基板210を介して、透明基板210の下側にあるトナーの挙動を観察することができる。
顕微鏡242としては、キーエンス社製のズームレンズVH−Z75からなるものを用いた。また、高速度カメラ243としては、フォトロン社製のFASTCAM−MAX 120KCを用いた。フォトロン社FASTCAM−MAX 120KCは、パーソナルコンピュータ244によって駆動制御される。顕微鏡242及び高速度カメラ243は、図示しないカメラ支持手段によって支持されている。このカメラ支持手段は、顕微鏡242の焦点を調整できるように構成されている。
トナーの挙動については、次のようにして撮影する。即ち、まず、照明241によってトナーの挙動の観察位置に照明光を照射して、顕微鏡242の焦点を調整する。次に、金属板215に転写バイアスを印加して、透明基板210の下面に付着しているトナー層216のトナーを、記録シート214に向けて移動させる。このときのトナーの挙動を、高速度カメラ243で撮影する。
図8に示される転写実験装置と、実施形態に係るプリンタとでは、トナーを記録シートに転写する転写ニップの構造が異なるため、転写バイアスが同じであっても、トナーに作用する転写電界は異なる。適切な観察条件を調べるために、転写実験装置でも、シート表面の凹部で十分な画像濃度が得られる転写バイアス条件を調べてみた。トナーとしては、平均粒径6.8[μm]のYトナーで、Kトナーを少量混入したものを用いた。記録シート214としては、特殊製紙株式会社製のレザック66(商品名) 260kg紙(四六版連量)を使用した。
転写実験装置では、記録シート214の裏面に当接している金属板215に対して転写バイアスを印加しているため、トナー粒子をシート表面に転移させるバイアス極性が、実施形態に係るプリンタとは逆のプラス極性になる。
転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffを200[V]に設定した。また、正弦波状の波形の交流成分における周波数を500[Hz]に設定した。交流成分のピークツウピーク電圧Vppを、400〜2600[V]の範囲において、200[V]ずつシフトさせた。それぞれのピークツウピーク電圧Vppの条件で、トナー付着量=0.4〜0.5[mg/cm2]のベタ画像を記録シート214に転写した。すると、ピークツウピーク電圧Vppを1000[V]未満に設定した条件では、シート表面の凹部において画像濃度不足が生じた。これに対し、ピークツウピーク電圧Vppを1000〜2200[V]に設定した条件では、シート表面の凹部で十分な画像濃度が得られた。また、ピークツウピーク電圧を2400[V]以上に設定した条件では、局所放電による白点が発生してしまった。
シート表面の凹部で十分な画像濃度が得られ、且つ白点が発生しないピークツウピーク電圧Vpp=1600[V]の条件において、顕微鏡242の焦点をガラス基板210上のトナーに合わせ、記録シート214の表面の凹部におけるトナーの挙動を観察した。すると、図1に示したように、交流成分の1周期目において、交番電界がトナー粒子を透明基板210側から記録シート214側に静電移動させる向きになると、トナー層216からシート表面の凹部に少量のトナー粒子が転移した。
次に、交番電界がシート表面の凹部内のトナー粒子を透明基板210側に逆戻りさせる向きになると、図3に示されるように、凹部内のトナー粒子が透明基板210上のトナー層216にぶつかる。その後、交流成分の2周期目において、交番電界がトナー粒子を透明基板210側から記録シート214側に静電移動させる向きになると、図4に示されるように、1周目よりも多くのトナー粒子がトナー層216からシート表面の凹部内に転移する。同様にして、トナー粒子の往復移動が繰り返される毎にシート表面の凹部内に転移するトナー粒子の量が増加していく。
ピークツウピーク電圧Vppを1600[V]よりも大きな値に設定した条件についても、トナーの挙動を同様にして観察したところ、同様にして、トナー粒子がシート表面の凹部内とトナー層216との間で往復移動を繰り返す毎に、凹部内に転移するトナー粒子が増加していく現象が確認された。白点が発生するほどピークツウピーク電圧Vppを大きくした条件でも同様であった。これに対し、ピークツウピーク電圧Vppを1000[V]未満に設定した条件では、シート表面の凹部とトナー層216との間でのトナー粒子の往復移動が観察されなかった。
このことから、シート表面の凹部とトナー層216との間でトナー粒子を往復移動させることが、凹部で十分な画像濃度を得るための条件になっていることがわかった。往復移動を繰り返す毎に、凹部内に転移するトナー粒子の数が増加するのは、次に説明する理由によるものと考えられる。即ち、まず、トナー層216からシート表面の凹部に少量のトナー粒子が転移する。その後、交番電界の向きの反転により、凹部内のトナー粒子がトナー層216上に戻り、トナー層216中のトナー粒子に対して衝突やファンデルワールス力や静電気力を変化させる作用を及ぼし、これにより、そのトナー粒子をトナー層216中に拘束する力が弱まる。その後、交番電界の向きが更に反転したときに、拘束力の低下したトナーがトナー層216中から離脱してシート表面の凹部内に転移する。その後、交番電界の向きが更に反転すると、先の周期よりも多くのトナー粒子が凹部内からトナー層216に逆戻りして、それぞれがトナー層216中のトナー粒子に対してトナー層216中に拘束する力を弱めるため、その後に交番電界が更に反転すると、更に多くのトナー粒子がトナー層216中からシート表面の凹部に転移する。このように、シート表面の凹部とトナー層216との間をトナー粒子が往復移動する毎に、凹部内に転写するトナー粒子の数が増えていく。実機においても、同様の原理で、ベルト表面とシート表面の凹部との間でトナー粒子が往復移動する毎に、凹部内に転移するトナー粒子の数が増加していると考えられる。
このようにしてシート表面の凹部で十分な画像濃度を得るためには、シート表面の凹部内に転移したトナー粒子をトナー層216に戻す必要がある。そして、そのためには、戻しピーク値Vrをある程度大きな値にしなければならない。第3プリントテストにおいて、戻しピーク値Vrを1500[V]以下に設定した条件では、シート表面の凹部内のトナー粒子をベルト表面のトナー層に戻すことができていなかったのである。
これに対し、第3プリントテストにおいて、ピークツウピーク電圧Vppを8000[V]以上に設定した場合、即ち、送りピーク値Vtの絶対値を5000[V]以上に設定した場合には、シート表面の凹部内に十分量のトナー粒子を転移させる代わりに、次のような現象を発生させてしまったのである。即ち、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間で5000[V]以上という高い電位差を発生させたことで、シート表面とベルト表面との間で局所放電を引き起こして白点を発生させてしまったのである。
[第4プリントテスト]
2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを採用した第1プリントテストでは、マイナス極性の直流電圧の絶対値を徐々に大きくしていく過程で、絶対値を2000まで大きくした時点で(直流電圧=−2000V)、シート表面の凸部の画像濃度が許容レベルまで上昇した。即ち、シート表面の凸部で十分な画像濃度を得るためには、直流電圧の絶対値を2000[V]以上にする必要があった。これに対し、2次転写バイアスとして重畳バイアスを採用した第3プリントテストでは、直流成分であるオフセット電圧Voffの絶対値を2000[V]の半分である1000[V](Voff=−1000V)にした条件であっても、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られている。これは、シート表面の凸部においても、トナー粒子の往復移動に伴ってトナー層から凸部に転移するトナー粒子の数が増加していくからだと考えられる。
重畳バイアスを採用した場合に、凸部で十分な画像濃度が得られる最小限のオフセット電位Voffの値を調べるために、第4プリントテストでは、ピークツウピーク電圧Vppを一定にした条件で、オフセット電圧Voffを変化させた。具体的には、ピークツウピーク電圧Vppを7000[V]に設定した。また、オフセット電圧Voffを、0〜−2000[V]の範囲で−250[V]ずつ変化させた。それぞれのオフセット電圧Voffの条件で、黒ベタ画像を出力してシート表面の凸部の画像濃度を測定した。
すると、オフセット電圧Voffを0〜−750[V]に設定した条件では、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られなかった。また、オフセット電圧Voffを−1000〜−1500[V]に設定した条件では、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られた。また、オフセット電圧Voffを−1500〜−2000[V]に設定した条件でも、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られた。但し、シート表面の凹部では十分な画像濃度が得られなかった。戻しピーク値Vrが小さくなったことから、トナー粒子をシート表面の凹部とベルト上のトナー層との間で往復移動させることができなくなったせいだと考えられる。より詳しくは、ピークツウピーク電圧Vpp=7000[V]で、オフセット電圧Voffを−1500[V]から−2000[V]にすると、戻しピーク値Vrが2000[V]から1500[V]に減少する。これにより、トナー粒子の往復移動が発生しなくなったのである。
以上の実験から、シート表面の凸部及び凹部の両方で十分な画像濃度を得つつ、白点の発生を抑えるためには、次に列記する条件を具備させる必要があることがわかった。
(1)シート表面の凸部で十分な画像濃度を得るために、オフセット電圧Voffの絶対値をある程度大きくする。
(2)シート表面の凹部で十分な画像濃度を得るために、戻しピーク値Vrの絶対値をある程度大きくする。
(3)送りピーク値Vtの絶対値を、白点を発生させない程度の小さな値にする。
[第5プリントテスト]
これまで説明してきた第1プリントテスト〜第4プリントテストは、中温中湿環境(温度23℃、湿度50%)で行ったが、第5プリントテストは、低温低湿環境(温度10℃、湿度15%)で行った。第4プリントテストと同様に、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られるオフセット電圧Voffを調べた。具体的には、ピークツウピーク電圧Vppを7000Vに設定した。また、オフセット電圧Voffを、0〜−6000[V]の範囲で、−500[V]ずつ変化させ、それぞれの条件で黒ベタ画像を出力してその画像濃度を測定した。
すると、オフセット電圧Voffを0〜−4500[V]に設定した条件では、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られなかった。また、オフセット電圧Voffを−5000〜−7000[V]に設定した条件では、シート表面の凸部で十分な画像濃度が得られたが、シート表面の凹部の画像濃度が不足し、且つ白点が発生した。
次に、オフセット電圧Voffをシート表面の凸部で十分な画像濃度が得られた値のうちの最小値である−5000[V]に設定した。そして、ピークツウピーク電圧Vppを7000〜15000[V]の範囲で、1000[V]ずつ変化させ、それぞれの条件で黒ベタ画像を出力し、その画像濃度を調べた。すると、ピークツウピーク電圧Vppを14000[V]以上にした条件で、シート表面の凹部で十分な画像濃度が得られたが、白点が発生してしまった。つまり、低温低湿環境下では、図2に示されるような正弦波状の2次転写バイアスを採用しても、凹部濃度再現性と白点抑制性とを両立させることができないのである。これは、正弦波状の2次転写バイアスでは、低温低湿環境下において、シート表面の凸部や凹部でそれぞれ十分な画像濃度を得るために上記(1)及び(2)の条件を具備させると、上記(3)の条件を具備させることができなくなることを意味している。
[第6プリントテスト]
そこで、本発明者らは、2次転写バイアスとして、図5のような矩形波を採用してみた。この矩形波は、立ち上がり矩形パルスと、これの立ち上がり量と同じ立ち下がり量で立ち下がる立ち下がり矩形パルスとからなる交流成分に対して、直流成分であるオフセット電圧Voffを重畳することによって得られたものである。立ち上がり及び立ち下がりの組み合わせからなる1周期における立ち下がり矩形パルスのデューティ比が50[%]を超えていることから、50[%]の場合とは異なり、オフセット電圧Voffは、1周期における平均電位にはならない。平均電位Vaveは、オフセット電圧Voffよりも、マイナス極性側にシフトしている。デューティ比が50[%]を超える立ち下がり矩形パルスの極性がマイナス極性だからである。
トナー粒子をシート表面からベルト表面に戻す立ち上がり矩形パルスの出現時間である戻し時間Trが、1周期Tに対して占める割合(戻し比率[%])が小さくなるほど、平均電位Vaveの絶対値が大きくなる。このような矩形波では、戻しピーク値Vrや送りピーク値Vtを変化させることなく、送り時間Ttと戻し時間Trとの比率の調整により、ベルト表面からシート表面へのトナー粒子の転写性を変化させることができる。このような特性の波形としては、図5に示される矩形波に限らず、様々な波形がある。例えば、三角波や台形波などでも、送り時間Ttと戻し時間Trとの比率の調整により、ベルト表面からシート表面へのトナー粒子の転写性を変化させることができる。なお、同転写性は、厳密には、送り時間Ttと戻し時間Trとの比率よりも、0[V]を境にしたプラス側波形箇所の面積と、マイナス側波形箇所の面積との比率に対して良好な相関を示す。
低温低湿環境下(10℃15%)において、プリンタ試験機のプロセス線速を173[mm/s]に設定した。また、交流の周波数を500[Hz]に設定した。記録シートとしては、特殊製紙株式会社製の「レザック66」175Kg紙(凹凸差の最大値が約100μm)を使用した。マゼンタベタ画像とシアンベタ画像を重ね合わせた青ベタ画像を、オフセット電圧Voff、ピークツウピーク電圧Vpp、及び平均電位Vaveの組み合わせを様々に変化させながら、それぞれの条件でマゼンタベタ画像とシアンベタ画像を重ね合わせた青ベタ画像を出力した。そして、青ベタ画像の凸部の画像濃度、凹部の画像濃度、及び白点を、○:問題ない、△:やや問題がある、×:問題があるの3段階で評価した。
2次転写バイアスとして、正弦波からなるものを採用した場合と、図5に示される矩形波からなるものを採用した場合とで、前述のような評価をそれぞれ行った。正弦波を採用した場合の評価結果を、図9に示す。また、矩形波を採用した場合の評価結果を、図10に示す。なお、これらの図における電圧の単位は[kV]である。また、矩形波としては、戻し時間比を40[%]に設定したものを用いた。
図9に示されるように、低温低湿環境下において、正弦波からなる2次転写バイアスを採用した場合には、凸部及び凹部の両方で十分な画像濃度が得られ、且つ白点を許容範囲に留め得る、ピークツウピーク電圧Vppと平均電位Vaveとの組み合わせが、ごく僅かな組み合わせに限られてしまう。
これに対し、図5の矩形波からなる2次転写バイアスを採用した場合には、図10に示されるように、凸部及び凹部の両方で十分な画像濃度が得られ、且つ白点を許容範囲に留め得る、ピークツウピーク電圧Vppと平均電位Vaveとの組み合わせが、非常に多くなる。このように、低温低湿環境下であっても、図5の矩形波を用いれば、凸部及び凹部の両方で十分な画像濃度を得つつ、白点の発生を抑えることができる。
ところが、図5の矩形波からなる2次転写バイアスを採用していても、画像面積率(記録シートの面積に対する画像面積の割合)=5[%]という低画像面積率のテスト画像を連続出力したところ、シート表面の凹部の画像濃度が徐々に低下していき、やがて凹部の画像濃度不足を引き起こしてしまった。低画像面積率の画像を連続出力していると、現像に寄与することなく現像装置内で長期間に渡って滞留しながら撹拌されることによって劣化してしまうトナーの割合が増える。この劣化は、トナー粒子表面に添加された外添剤がトナー粒子内部に埋もれたり、トナー粒子表面から離脱したりすることによるものである。劣化したトナー粒子は、外添剤による表面微小突起が少なくなって、ベルト表面との接触面積を増大させることから、ベルト表面との付着力が大きくなってベルト表面から離脱し難くなる。このため、転写不良を起こし易くなる。但し、シート表面の凸部では十分な画像濃度が得られていたことから、凸部では転写不良を起こしておらず、且つ転写電界の強度不足も起こっていない。凹部の画像濃度だけ不足したのは、凹部とベルト表面との間のトナー粒子の往復移動が活発に行われなくなったからである。
ピークツウピーク電圧Vppや平均電位Vaveを様々な値に変更してみたが、どの電圧条件でも、凹部の画像濃度不足は改善されなかった。
[第7プリントテスト]
第7プリントテストでは、図11に示される波形の2次転写バイアスと似た特性の2次転写バイアスを採用した。図11に示される2次転写バイアスの一周期波形は、第1波形部Ps1と第2波形部Ps2とからなる。第1波形部Ps1は、送りピーク値Vtを送り時間Tt1だけ持続させる波形であり、2次転写ニップ内でトナー粒子をベルト側から記録シート側に向けて正方向に移動させ続けるためのものである。また、第2波形部Ps2は、周期T内において、第1波形部Ps1よりも短い時間で出現する。
図11に示される2次転写バイアスにおいて、第2波形部Ps2は、2次転写ニップ内でトナー粒子を記録シート側からベルト側に向けて逆方向に移動させるための第1逆方向部(値は戻しピーク値Vr)、これに続いて出現し、2次転写ニップ内でトナー粒子を正方向に移動させるための第1正方向部(値は送りピーク値Vt)、及びこれに続いて出現し、2次転写ニップ内のトナー粒子を逆方向に向けて移動させるための第2逆方向部(値は戻しピーク値Vr)を具備している。また、第2逆方向部に続いて出現し、2次転写ニップ内のトナー粒子を正方向に向けて移動させるための第2正方向部、及びこれに続いて出現し、2次転写ニップ内のトナー粒子を逆方向に向けて移動させるための第3正方向部も具備している。以下、図11に示される2次転写バイアスのように、第1波形部Ps1及び第2波形部Ps2の組み合わせを1周期とし、且つ、第2波形部Ps2に逆方向部を少なくとも2つ具備する波形を、「基本特殊波形」という。
低温低湿環境下(10℃15%)において、プリンタ試験機のプロセス線速を173[mm/s]に設定した。記録シートとしては、特殊製紙株式会社製の「レザック66」175Kg紙を使用した。2次転写バイアスとして、まず、図5の矩形波からなるものを採用した。この2次転写バイアスにおいて、周波数=500[Hz]、戻し比率=40[%]、ピークツウピークVpp=[12kV]、平均電位Vave=5[kV]に設定した。画像面積率=5%のテスト画像を連続出力したところ、凹部の画像濃度が徐々に低下していき、やがて凹部の画像濃度不足を引き起こしてしまった
次に、2次転写バイアスとして、第2波形部Ps2に逆方向部を2つだけ具備する「基本特殊波形」のものを採用した。かかる2次転写バイアスにおける第1波形部Ps1及び第2波形部Ps2からなる1周期波形の周期を、2[ms]に設定した。これは、周波数=500[Hz]に相当する。また、2次転写バイアスのピークツウピーク電圧Vpp=12[kV]、平均電位Vave=5[kV]に設定した。第2波形部Ps2の2つの逆方向部における戻し時間Trをそれぞれ0.4[ms]に設定した。これにより、1周期に対する戻し総時間(Tr×2)の比率である戻し比率を40[%]にした。
画像面積率=5%以下のテスト画像を連続出力したところ、多量の連続出力の過程で、シート表面の凹部における画像濃度低下は認められず、凹部において十分な画像濃度を長期に渡って安定して得ることができた。また、第2波形部Ps2に逆方向部を2つだけ具備する「基本特殊波形」の代わりに、第2波形部Ps2に逆方向部を4つだけ具備する「基本特殊波形」を採用して(戻し比率=40%)同様にテスト画像を連続出力したところ、凹部の画像濃度を更に濃くすることができた。また、第2波形部Ps2に逆方向部を8つだけ具備する「基本特殊波形」を採用して(個々の逆方向部の戻し時間Trを0.1[ms]ずつにして戻し比率を40[%]した)同様のテスト画像を連続出力したところ、逆方向部を4つ設けた「基本特殊波形」と同様の画像濃度をシート表面の凹部で得ることができた。
このように、低温低湿環境下で低画像面積率を連続出力する場合であっても、シート表面の凹部において十分な画像濃度が得られるようになったのは、次の理由による。即ち、「基本特殊波形」では、第1波形部Ps1、及びこれに続く第2波形部Ps2からなる1周期波形における周期Tが、第1波形部Ps1の出現時間と、第2波形部の出現時間とを合算した値になる。この周期Tにおいて、2次転写ニップ内でトナー粒子をベルト側から記録シート側に向けて正方向に移動させ続けるための第1波形部Ps1の出現時間は、第2波形部Ps2の出現時間よりも長くなっている。このような2次転写バイアスは、立ち下がり矩形パルスの送り時間Ttを、立ち上がり矩形パルスの戻し時間Trよりも長くした図5の矩形波からなる転写バイアスと同様に、2つの波形部の出現時間を等しくする場合に比べてより小さなピークツウピーク電圧Vppでトナーを転写することが可能になる。これにより、ピークツウピーク電圧Vppを比較的小さな値に留めて白点の発生を抑えつつ、有効な強度の2次転写電界を2次転写ニップ内に形成することで、シート表面の凸部で十分な画像濃度を得ることができる。
また、「基本特殊波形」の第2波形部Ps2は、少なくとも、第1逆方向部、第1正方向部、及び第2逆方向部を具備している。このような第2波形部Ps2が、2次転写ニップ内でシート表面の凹部内に転移しているトナー粒子を、第1逆方向部によってベルト表面上のトナー層に戻した後、第1正方向部によってシート表面の凹部内に再転移させてから、第2逆方向部によってベルト上のトナー層に再び戻す。これにより、シート表面の凹部内に転移しているトナー粒子を、ベルト表面上のトナー層に対して少なくとも2回ぶつける。よって、シート表面の凹部内に転移しているトナー粒子をベルト上のトナー層に対して1回しかぶつけることができない図5の立ち上がり矩形パルスに比べて、低画像面積率の画像を連続出力しても、シート表面の凹部において十分な画像濃度を得ることができる。
なお、図11に示される波形のように、逆方向部が矩形波になっている「基本特殊波形」を採用する代わりに、図12に示されるように、逆方向部が三角波になっている「基本特殊波形」を採用しても、同様の効果を得ることができる。
特許文献2には、2次転写バイアスとして、トナー粒子を、中間転写ベルトから記録シートに向けて正方向に静電移動させるパルス波と、逆方向に静電移動させるパルス波とを繰り返す交番電圧として、周期的に振幅を変動させるものを採用した画像形成装置が記載されている。かかる構成では、前者のパルス波の面積を増やして転写効率を高めるためにはオフセット電圧を大きくする必要があるため、放電による白点を発生させ易くなってしまう。よって、低温低湿環境下で低画像面積率の画像を連続出力する場合には、シート表面の凹部で画像不足を引き起こしたり、白点を引き起こしたりする。
[第8プリントテスト]
「基本特殊波形」の2次転写バイアスであってもにおいても、1周期内における平均電位Vaveについては、トナーをベルト側からシート側に移動させる極性(実験例ではマイナス極性)にする必要がある。オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとの組み合わせを変えることなく平均電位Vaveを大きくするためには、戻し比率を小さくする必要がある。そして、戻し比率は、第2波形部Ps2内における戻し時間Trの累積によって決まる。個々の逆方向部の戻し時間が互いに同じである場合には、第2波形部Ps2内の逆方向部の数をnと定義すると、戻し比率は「n×戻し時間Tr/周期T」という式で求められる。この式からわかるように、一定の送り時間Tt(Tt=T−戻し時間Tr)を確保しつつ、トナーの戻し回数nを増やすには、戻し時間Trを短くする必要がある。
「基本特殊波形」の2次転写バイアスにおいて、周波数を高くしていくと、第2波形部Ps2において、戻し時間Trの時間が、トナー粒子をシート表面の凹部内からベルト表面のトナー層に戻すのに必要な値よりも短くなって、トナー粒子をトナー層にぶつけることができなくなってしまう。すると、シート表面の凹部で画像濃度不足を引き起こしてしまう。
そこで、第8プリントテストでは、図13に示されるような波形の2次転写バイアスを採用した。この波形も、少なくとも2つの逆方向部を第2波形部Ps2に具備する「基本特殊波形」であるが、第7プリントテストで採用された「基本特殊波形」とは、次に説明する点が異なる。即ち、第2波形部Ps2における1つ目の逆方向部である第1逆方向部の出現時間(Tr1)が、他の逆方向部の出現時間よりも長くなっている。また、第1逆方向部のピークの絶対値が、他の逆方向部におけるピークの絶対値よりも大きくなっている。
低温低湿環境下(10℃15%)において、プリンタ試験機のプロセス線速を173[mm/s]に設定した。記録シートとしては特殊製紙株式会社製の「レザック66」175Kg紙を使用した。そして、まず、比較対象として、図5の波形の2次転写バイアスを採用した。周波数=500[Hz]、戻し比率=40[%]、ピークツウピーク電圧Vpp=12[kV]、平均電位Vave=5[kV]に設定した。そして、画像面積率=5%以下のテスト画像を連続出力したところ、シート表面の凹部の画像濃度が徐々に低下していき、やがて凹部の画像濃度不足を引き起こした。
次に、2次転写バイアスとして、図11の波形とは、次に説明する点だけが異なる波形のものを採用した。即ち、周期T=2[ms]、ピークツウピーク電圧Vpp=12[kV]、平均電位Vave=5[kV]、逆方向部の数であるnを4にし、それら逆方向部の戻し時間Trを0.02[ms]に設定した。これにより、戻し比率を40[%]にした。画像面積率=5%以下のテスト画像を連続出力したところ、シート表面の凹部の画像濃度が徐々に低下していき、やがて凹部の画像濃度不足を引き起こした。
次に、2次転写バイアスとして、図13の波形のものを採用した。Vt1=−10[kV]、Vt2=−1.8[kV]、Vr1=Vr2=2[kV]、周期T=2[ms]、Tr1=0.2[ms]、Tr2=0.01ms、n(第1逆方向部を除く逆方向部の数)=4に設定した。画像面積率=5%以下のテスト画像を連続出力したところ、長期間に渡ってシート表面の凹部で十分な画像濃度が得られた。
また、Vt2を−2.5[kV]に変更して、Vt2の絶対値をVr2の絶対値よりも大きくした条件で同様のテストを行ったところ、シート表面の凹部の画像濃度がやや低下した。凹部内のトナー粒子をベルト上のトナー層に戻す静電力が減少したためである。
図13の波形の2次転写バイアスを採用した場合、1周期における第2波形部Ps2の第1逆方向部が出現したタイミングでは、それまでシート表面の凹部内に転移していたトナー粒子がベルトに向けて逆戻りして、ベルト上のトナー層にぶつかる。そして、第2波形部Ps2の第1正方向部が出現したタイミングでは、図14に示されるように、トナー層から離脱したトナー粒子がシート表面の凹部に向けて移動するが、完全に凹部内に進入する前に、波形が第1正方向部から第2逆方向部に切り替わる。第1正方向部の持続時間が第1逆方向部の持続時間よりも大幅に短いことから、トナー粒子が完全に凹部内に移行する前に、第1正方向部の持続が終了しまうのである。
第1正方向部から第2逆方向部に切り替わると、シート表面の凹部の途中まで進入していたトナー粒子が、図15に示されるように、ベルトに向けて逆戻りしてベルト上のトナー層にぶつかる。このように、正方向に向けて静電移動したトナー粒子をシート表面の凹部内に完全に移行させる前に、電界の向きを正方向から逆方向に切り替えることで、ごく短時間のうちにトナー粒子をトナー層に繰り返しぶつけることができるようになる。
[第9プリントテスト]
低温低湿環境下(10℃15%)において、プリンタ試験機のプロセス線速を173[mm/s]に設定した。記録シートとしては、特殊製紙株式会社製の「レザック66」175Kg紙を使用した。2次転写バイアスとして、図11の波形とは、次に説明する点だけが異なるものを採用した。即ち、第2波形部Ps2に逆方向部を4つだけ具備する点である。この2次転写バイアスにおいて、ピークツウピーク電圧Vpp=12[kV]、平均電位Vave=5[kV]に設定した。そして、戻し比率=40[%]、且つn=4を満足させるという条件で、周期Tや戻し時間Trを様々に変化させて、テスト画像をテスト画像を出力した。すると、周期Tを5[ms]以上に設定した条件ではシート表面の凸部に周期的な濃度ムラが発生したが、周期Tを4[ms]以下に設定した条件ではシート表面の凸部に周期的な濃度ムラは発生しなかった。
中間転写ベルト31の線速をv(mm/s)、2次転写ニップのベルト移動方向の長さであるニップ幅をd(mm)で表すと、画像が2次転写ニップを通過する時間は「d/v(s)」である。また、画像が2次転写ニップを通過する間に、2次転写バイアスの周期は、「d/(v×T)」回だけ発生する(以下、周期回数Nという)。線速v=173[mm/s]、ニップ幅d=3mm、周期T=5[ms]という条件では、周期回数Nは3.5[回]になる。そして、上述したように、この条件ではシート表面の凸部に周期的な濃度ムラが発生した。これに対し、周期T=4[ms]という条件では、周期回数Nは4.3回となる。そして、この条件ではシート表面の凸部に周期的な濃度ムラが発生していない。よって、図11のような波形の2次転写バイアスを採用した場合、周期回数Nが4回以上となるように周期Tを設定する必要があることがわかった。
これまでのプリントテストに鑑みて、実施形態に係るプリンタにおいては、2次転写バイアスとして、図11に示される特殊矩形波のものを出力するように、2次転写バイアス電源39を構成している。
また、同プリンタに対してより特徴的な構成を付加した実施例に係るプリンタにおいては、2次転写バイアスとして、図13に示される特殊矩形波のものを出力するように、2次転写バイアス電源39を構成している。更には、2次転写バイアスとして、2次転写ニップに進入したシート箇所がニップ通過に要する時間であるニップ通過時間内で、第1波形部Ps1及び第2波形部Ps2の組み合わせを4回以上出現させるものを出力させるように、2次転写バイアス電源39を構成している。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
トナー像を担持する像担持体(例えば中間転写ベルト31)と、像担持体に当接して転写ニップを形成するニップ形成部材(例えばニップ形成ローラ36)と、像担持体とニップ形成部材との間に転写電界を形成するための転写バイアスとして、像担持体に担持されたトナー像中のトナー粒子を、転写ニップ内で像担持体とこれに密着している記録シートとの間で往復移動させつつ、相対的に像担持体側から記録シート側に移動させるように、出力値を周期的に変動させるものを出力する電源(例えば2次転写バイアス電源39)とを備え、転写ニップ内で像担持体上のトナー像を記録シートに転写する画像形成装置において、転写バイアスとして、電位を示す縦軸と時間を示す横軸との2次元平面に表される電位波形の1周期波形が、転写ニップ内でトナー粒子を像担持体側から記録シート側に向かう方向である正方向に移動させ続けるための第1波形部と、第1波形部よりも短い時間で出現する第2波形部とからなり、且つ、第2波形部が、少なくとも、転写ニップ内でトナー粒子を記録シート側から像担持体側に向けて逆方向に移動させるための第1逆方向部、これに続いて出現し、前記転写ニップ内でトナー粒子を前記正方向に移動させるための第1正方向部、及びこれに続いて出現し、転写ニップ内のトナー粒子を前記逆方向に向けて移動させるための第2逆方向部を具備するもの、を出力させるように、電源を構成したことを特徴とするものである。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、第1波形部及び第2波形部の組み合わせにおける平均電位が転写ニップ内でトナー粒子を正方向に向けて移動させる値になるバイアスを、転写バイアスとして出力させるように、電源を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、転写ニップ内でトナー粒子を像担持体とシート表面との間で往復移動させつつ、相対的に像担持体からシート表面に静電移動させることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、第2波形部の第1逆方向部として、第1正方向部よりも長時間に渡って出現するものを出力させるように、電源を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、図13を用いて説明したように、第1逆方向部でシート表面の凹部内から像担持体上のトナー層に確実に逆戻りさせたトナー粒子を、シート表面の凹部に完全に移行させずに細かく凹部とトナー層との間で往復移動させることで、ごく短い戻し時間trの設定であっても、トナー粒子を確実に繰り返しトナー層にぶつけることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいては、第2波形部として、第1逆方向部の絶対値が、他の逆方向部の絶対値や、正方向部の絶対値よりも大きいものを出力させるように、電源を構成したことを特徴とするものである。かかる構成においても、ごく短い戻し時間trの設定であっても、トナー粒子を確実に繰り返しトナー層にぶつけることができる。
[態様E]
態様Eは、態様A〜Dの何れかにおいて、転写バイアスとして、転写ニップに進入したシート箇所がニップ通過に要する時間であるニップ通過時間内で、第1波形部及び前記第2波形部の組み合わせを4回以上出現させるものを出力させるように、電源を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、既に説明したように、シート表面の凸部における周期的な濃度ムラの発生を抑えることができる。