JP2016152823A - ミシン - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒッチステッチを効果的に抑制する。
【解決手段】針棒12を回動させる針棒回動機構30と、被縫製物を任意に移動させる移動機構80と、縫製データに基づいて移動機構を制御する制御部90と、中押さえを上下動させると共にその下死点高さを変更調節する高さ調節モーター131を備える中押さえ上下動機構120とを備え、制御部が、縫製データに定められた被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの生じる角度範囲に属する場合に、針棒回動機構により針棒が往路と復路からなる往復回動動作を行うよう制御するミシン100において、制御部は、中押さえの下死点高さが予め設定された設定値となるように高さ調節モーター131を制御すると共に、中押さえの下死点高さの設定値から、針棒回動機構の駆動開始タイミングを算出し、縫い針11の先端部が布地に到達するまでに針棒の往路の回動が終了するように針棒回動機構を制御する。
【選択図】図21

Description

本発明は、中押さえを備えるミシンに関する。
ミシンにより形成される縫い目には、上糸と下糸とが互いに均整が採れた状態で絡められて形成されたパーフェクトステッチ(図27(A)参照)と、上糸のみが螺旋を描くように形成されたヒッチステッチ(図27(B)参照)とがある。パーフェクトステッチは、上糸の張力と下糸の張力とが互いにバランス良く生地に作用して良好な仕上がりとなり、縫い品質の高い縫製物を提供することができる。一方、ヒッチステッチは、上糸の張力が弱くなりやすく、下糸の張力のバランスが悪く、縫い目が緩くなる等の悪影響が出やすくなり、縫い品質の低下を招きやすい問題がある。
上記ヒッチステッチの発生原因の一つとして、針落ちの際に縫い針から布地に渡る上糸が縫い針に対して右回りとなるか左回りとなるかが挙げられる。
布押さえで布地の保持を行い、縫製パターンデータに従って任意の方向に布地を移動することにより所望の縫製パターンで縫製を行う電子サイクルミシンでは、縫い針を中心として360°の全方位に対して布地の移動を行うことから、布地の移動方向によってはヒッチステッチが発生し得るものであった。
そこで、従来の電子サイクルミシンは、針棒回動機構を備え、ヒッチステッチが発生し得る方向の角度範囲を予め記憶し、毎回の針落ちごとに、布地の移動方向がヒッチステッチの発生し得る角度範囲に属するかを判定し、当該角度範囲に属する場合には縫い針が布地に突き刺さる前に針棒を回動させることで、ヒッチステッチが生じ得る角度範囲から脱するように動作制御を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−213603号公報
上記従来の電子サイクルミシンは、針棒回動を行う場合に、縫い針の先端部が布地に到達する直前に針棒の回動が完了することが望ましく、その回動が早すぎれば布地の上糸との位置関係に崩れを生じ、遅すぎれば回動完了前に縫い針が布地に突き刺さってしまうためにヒッチステッチの発生を抑制する効果が低減するという性質があった。
しかしながら、針棒の回動は一定の動作タイミングで行われることから、布地の厚さが変わると、針棒の回動が適正なタイミングで行われなくなるという問題が生じていた。従って、ヒッチステッチの抑制を十分に行うことができないおそれがあった。
本発明は、ヒッチステッチの発生を効果的に抑制することをその目的とする。
請求項1記載の発明は、
縫い針を保持して上下動を行う針棒と、
回動動作により上糸を下糸に絡める釜と、
前記針棒の上下動の駆動源となるミシンモーターと、
前記針棒をその長手方向に沿った中心線回りに回動させる針棒回動機構と、
布保持部により被縫製物を水平面に沿って任意の移動方向に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる移動機構と、
所定の縫製パターンを形成するための一針ごとの針落ち位置又は一針ごとの前記被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動機構を制御する制御部と、
前記縫い針に併設され、前記布保持部に保持された被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえと、
前記中押さえを前記針棒に同期して上下動させると共に、中押さえの下死点高さを変更調節するアクチュエーターを備える中押さえ上下動機構とを備え、
前記制御部が、前記縫製データに定められた前記被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの生じる角度範囲に属する場合に、前記針棒回動機構により前記針棒が往路と復路からなる往復回動動作を行うよう制御するミシンにおいて、
前記制御部は、前記中押さえの下死点高さが予め設定された設定値となるように前記中押さえ上下動機構のアクチュエーターを制御すると共に、前記中押さえの下死点高さの設定値から、前記針棒回動機構の駆動開始タイミングを算出し、前記縫い針の先端部が布地に到達するまでに前記針棒の往路の回動が終了するように前記針棒回動機構を制御することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のミシンにおいて、
針板の下側で糸寄せ部材により下糸の糸寄せを行う糸寄せ機構を備え、
前記制御部は、
前記移動機構による各針落ちごとの前記被縫製物の移動方向が予め定められた第一の角度範囲である場合には前記糸寄せ機構による糸寄せを実行し、
前記移動方向が予め定められた第二の角度範囲である場合には前記針棒回動機構による針棒の回動を実行することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のミシンにおいて、
前記中押さえの下死点高さの設定値を設定する設定入力部を備えることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のミシンにおいて、
前記縫製データ中に一針ごとの前記中押さえの下死点高さの設定値が設定され、
前記制御部は、一針ごとに前記中押さえ上下動機構のアクチュエーター及び前記針棒回動機構を制御することを特徴とする。
本発明は、被縫製物の挙動を上から押さえる中押さえの下死点高さの設定値に縫い針の先端部が到達するタイミングで往路の回動が終了するように針棒回動機構が制御されるので、押さえられた被縫製物の上面に縫い針の下端部が到達するタイミングに合わせて針棒の往路の回動を終了させることができる。このため、縫い針が被縫製物の上方で離れた位置で往路の回動が終了したり、縫い針が被縫製物に突き刺さってから往路の回動が終了するなどの状況の発生を抑えることができ、適正なタイミングで針棒回動が行われることから、より効果的にヒッチステッチを抑制することが可能となる。
発明の実施形態のミシンの斜視図である。 ミシンアーム部の前端部の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。 針棒台の斜視図である。 針棒台の上端部の斜視図である。 針棒台の下端部の斜視図である。 クランクロッドと針棒との連結部の構造を示す斜視図である。 クランクロッドと針棒との連結部の構造を示す図6と方向の異なる斜視図である。 針棒回動機構の動作系統の斜視図である。 針棒回動機構の動作系統の平面図である。 図10(A)は針棒回動機構の針棒台上端部の拡大斜視図、図10(B)は分解斜視図である。 針棒回動機構の針棒カム部材の平面図である。 糸寄せ機構の平面図である。 糸寄せ機構の斜視図である。 糸調子装置の断面図である。 中押さえ上下動機構の概略構成図であり、図15(A)は中押さえを低位置とし、図15(B)は中押さえを高位置としている状態を示している。 ミシンの制御系を示したブロック図である。 図17(A)は縫い針が布に刺さるときに目孔を通った上糸が左巻き方向に絡んだ状態を示す断面図、図17(B)は上糸が右巻き方向に絡んだ状態を示す断面図である。 図18(A)は釜のボビンケースの角の部分から針板の針穴に下糸が渡っている状態を示す平面図、図18(B)はその正面図を示す。 半回転釜を用いるミシンにおいて布の移動方向とヒッチステッチの発生要因との関係を示す説明図である。 布送り方向の角度区分に応じて糸寄せと針棒回動のいずれを実行すべきかを記憶したテーブルデータを示す説明図である。 上軸角度と縫い針の高さとの関係を示す線図である。 ミシンにおける縫い針、釜、天秤のモーションダイヤグラムである。 糸寄せを実行していない状態における糸寄せ部材と針穴との位置関係を示す平面図である。 糸寄せを実行している状態における糸寄せ部材と針穴との位置関係を示す平面図である。 糸寄せの実行時の下糸の引き出し状況を示す説明図である。 ヒッチステッチ回避制御のフローチャートである。 図27(A)はパーフェクトステッチを示し、図27(B)はヒッチステッチを示す説明図である。
[発明の実施形態の概要]
本発明の実施の形態を図1〜図26に基づいて説明する。
本実施形態として以下に記載するミシン100は、いわゆる電子サイクルミシンであり、縫製を行う被縫製物である布地を保持する布保持部としての保持枠により布地を移動させて任意の位置に針落ちを行う移動機構を有し、保持枠に保持される布地に所定の縫製データに基づく縫製パターンを形成することを可能とする。
また、このミシン100では、保持枠による布地の移動方向に応じて適宜、下糸の糸寄せ又は針棒の回動を選択的に実施し、ヒッチステッチの発生を防止することを可能としている。
図1は本発明にかかるミシン100の斜視図である。
ここで、後述する縫い針11が上下動を行う方向をZ軸方向又は上下方向とし、これと直交する一の方向をX軸方向又は左右方向とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向又は前後方向と定義する。なお、以下の説明における「前」とはミシン100に対して縫製を行う作業者が位置する方向、「左」はミシン100の前側にいる作業者がミシン100と向き合った状態における左手側、「右」はミシン100の前側にいる作業者がミシン100と向き合った状態における右手側を示すものとする。
上記ミシン100は、縫い針11をその下端部に保持してZ軸方向に沿って上下動を行う針棒12と、ミシンモーター21を駆動源として縫い針を上下動させる針上下動機構20と、針棒12をZ軸方向に沿ったその中心線回りに回動させる針棒回動機構30と、下降動作により縫い針11に通された上糸に下糸を絡める釜13と、下糸の糸寄せを行う糸寄せ機構50と、上糸の糸張力の可変調節を行う糸調子装置70と、布地を保持してX−Y平面に沿って任意に移動位置決めを行う移動機構としての布移動機構80と、上記各構成の動作制御を行う制御部としての制御装置90と、布移動機構80の布保持部としての保持枠81に保持された布地の上方へのばたつきを押さえる中押さえ110と(図15参照)、中押さえ110を上下動させる中押さえ上下動機構120と(図15参照)、ミシン100の各構成を支持するミシンフレーム101とを主に備えている。
[ミシンフレーム]
図1に示すように、ミシン100は、外形がX軸方向から見て略コ字状を呈するミシンフレーム101を備えている。このミシンフレーム101は、ミシン100の上部をなしY軸方向に延びるミシンアーム部101aと、ミシン100の下部をなしY軸方向に延びるミシンベッド部101bと、ミシンアーム部101aとミシンベッド部101bとを連結する立胴部101cとを有している。
[針上下動機構]
図2はミシンアーム部101aの前端部の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、針上下動機構20は、上記ミシンアーム部101a内においてY軸方向に沿った状態で回転可能に支持された上軸22と、上軸22の一端部から回転力を付与する図16に示すミシンモーター21と、上軸22の他端部に設けられた針棒クランク23と、針棒クランク23の回転中心に対する偏心位置に一端部が連結されたクランクロッド24と、クランクロッド24の針棒12側の端部を上下方向に沿って往復するよう案内するガイド25とを備えている。
上軸22はミシンモーター21の出力軸に直結されて回転駆動が行われ、上軸22の回転は針棒クランク23とクランクロッド24とにより上下の往復動作に変換されて針棒12に伝達される。
クランクロッド24の針棒12側の端部にはY軸方向に沿った支軸26が貫通装備され、当該支軸26はその両端部でクランクロッド24を挟むようにして二つの角コマ27,28を回転可能に軸支している。
そして、クランクロッド24に対して針棒12側の面に設けられた角コマ27は、後述する針棒抱き331,332(図6参照)を介して針棒12と係合し、針棒12に上下動を伝達する。また、クランクロッド24に対して針棒12とは逆側の面に設けられた角コマ28はミシンアーム部101aの壁面にZ軸方向に沿って形成された溝状のガイド25に嵌合している。即ち、角コマ28は、溝状のガイド25に滑動可能な状態で嵌合しているため、クランクロッド24の針棒12側の端部をX軸方向の移動を規制しつつもZ軸方向に沿ってのみ往復可能としている。
これにより、針棒12には、ミシンモーター21の回転に同期した上下方向の往復動作が付与される。
[釜]
本実施形態たるミシン100では、釜として半回転釜を採用する場合を例示する。半回転釜は、大釜の内側で針棒12の上下動と同期して往復回動を行う中釜と、中釜の内側に収納されたボビン及びボビンケースと、中釜に往復回動を付与するドライバと、上軸22に形成されたクランク部に一端部が連結されたクランクロッドと、クランクロッドの他端部に連結されたアーム部を有する往復回動軸と、往復回動軸により増速されて往復回動を行う下軸とを備え、当該下軸はドライバを介して中釜を往復回動させるようになっている。また、前述したミシンモーター21は針棒12の上下動と釜13の回動動作の駆動源となり、中釜は上軸22の1/2の周期で往復回動を行い、縫い針11の上下動と釜13の回動により上糸を下糸に絡める。なお、半回転釜の構造・構成は周知であるため、詳細な説明は省略する。
[針棒回動機構]
針棒回動機構30は、ミシンアーム部101aの前端部においてZ軸周り(上下軸心周りとも称する)に回動可能に支持されると共に針棒12を上下動可能に支持する針棒台31と、針棒台31を通じて針棒12に対してZ軸周りの回動動作を付与する動作系統とを主な構成とする。
図3は針棒台31の斜視図であり、図4はその上端部、図5は下端部を示す斜視図である。
針棒台31は、その上端部311と下端部312とが同心となる円筒状に形成されており、それらの間は矩形状の枠部313により一体的に連結されている。そして、下端部312と枠部313の内側には筒状のメタル軸受け321,322が保持されており、これら二つのメタル軸受け321,322の内側に丸棒状の針棒12が挿入される。これにより、針棒12は、Z軸方向に沿った状態で上下動可能に支持された状態となる。
また、針棒台31の上端部311と下端部312の外周には、それぞれ軸受け323,324が装備され、当該各軸受け323,324の外周はミシンアーム部101aの壁面に保持される。これにより、針棒台31及び針棒台31に支持された針棒12は、ミシンアーム部101aに対してZ軸回りに回動可能となっている。
なお、符号325と326は、それぞれ座金であり、軸受け323,324の外輪と針棒台31側との滑動性を保持するためのものである。
また、針棒台31の枠部313は、Z軸方向に沿った矩形の平面部を備え、当該平面部の上部には、検出体328が固定装備されている。この検出体328は、ミシンアーム部101aの壁面に装備された近接センサである針棒角度センサ329により、その近接状態が検出される。つまり、針棒角度センサ329は、検出体328との距離に応じた検出信号を出力し、これにより、針棒角度センサ329に対する検出体328の近接状態或いは離間状態を識別することができ、例えば、上記最近接状態を針棒12の回動方向における原点位置と定めた場合に、針棒12が原点にいるか、原点より離れて回動を生じているかを識別することが可能となる。
また、針棒台31の枠部313の平面部には、長尺のガイド板330がネジ止めにより装備されている。かかるガイド板330は、Z軸方向に沿って表裏に貫通した状態でスリット330aが形成されている。枠部313の平面部は、図示されていないが、ガイド板330の背面側がガイド板330のスリット330aより大きく開口が形成されている。
そして、針棒12には後述する図6及び図7に示す針棒抱き331が固定装備されており、当該針棒抱き331には、針棒12を中心とする半径方向外側に向かって延出した矩形の突起部331aが形成されている。かかる突起部331aは、ガイド板330の背面側から外側に向かってスリット330aに挿入され、針棒12の上下動の際には、スリット330a内を突起部331aも上下動を行う。そして、突起部331aの横幅はスリット330aの幅とほぼ等しく設定されており、これにより、針棒台31がZ軸回りに回動動作を行うと、針棒12も供回りを行うようになっている。
図6はクランクロッド24と針棒12との連結部の構造を示す斜視図、図7はクランクロッド24と針棒12との連結部の構造を示す図6と方向の異なる斜視図である。
前述したように、クランクロッド24の下端部であって針棒12側の面には角コマ27がY軸回りに軸支されている。
そして、針棒12には、二つの針棒抱き331,332が上下に並んで所定の隙間をもって抱き締め固定されている。そして、上下に並んだ針棒抱き331と針棒抱き332との間には、座金333,334を介して角コマ27を介在させている。
各座金333,334は摺動性の良好な素材から形成されており、角コマ27の摺動面は滑動性に優れている。また、各座金333,334は、それぞれの針棒抱き331,332に突出装備されたピンが嵌合しており、針棒12の回動時には各針棒抱き331,332と共に回動動作を行うようになっている。
また、前述したように、上側の針棒抱き331には、Y軸方向前側に突起部331aが突設されており、ガイド板330に沿って針棒台31と共にZ軸回りに針棒12を回動させる。その際、針棒12と共に各針棒抱き331,332は回動を行うが、クランクロッド24に支持された角コマ27は、座金333,334を介して針棒抱き331,332の間に位置した状態を維持することができ、針棒回動時であっても、ミシンモーター21からの上下動の動力を針棒12に伝達することが可能となっている。
図8は針棒回動機構30の動作系統の斜視図、図9は平面図、図10は拡大斜視図である。
針棒回動機構30の動作系統は、駆動源となる針棒回動モーター34(図16参照)と、針棒回動モーター34により作動する針棒カム部材35と、針棒カム部材35から動作付与が行われる従動体としてのボス状部36と、ボス状部36から針棒12に回動動作を伝達する伝達部材とを主に備えている。この伝達部材は、カム腕361とアーム部材327から主に構成される。
上記針棒回動モーター34は、図8〜図10に示すように、ミシンアーム部101aの左側面に取り付けられたモーター取り付け台341により出力軸を垂直上方に向けた状態で支持されており、当該出力軸には主動スプロケット342が装備されている。モーター取り付け台341の上面には、主動スプロケット342に隣接して小径の従動スプロケット343が設けられており、相互のスプロケット342,343にはタイミングベルト344が掛け渡され、主動スプロケット342から従動スプロケット343へ増速回転が伝わるようになっている。
従動スプロケット343は、その回動軸345を介して針棒カム部材35と連結されており、従動スプロケット343の回動は針棒カム部材35に伝達される。
図11は針棒カム部材35の平面図である。針棒カム部材35は円板状の溝カムであり、その下面において、上下方向を深さ方向とする溝からなるカム溝351が形成されている。
このカム溝351は、針棒台31に一往復の回動動作を付与する動作区間352が五つ連なって無端環状に形成されている。つまり、この針棒カム部材35は、一つの動作区間352は角度72°の範囲に形成されている。
そして、一つの動作区間352は、その回転中心から距離が最も小さい最小変位位置を起点352aとして徐々に変位が大きくなり、当該区間の中間点352bで最大変位となり、そこから、次の動作区間352の起点352aに至るまで徐々に変位が小さくなる形状に形成されている。
また、上記起点352aの前後には、半径方向について距離が不変となる助走区間が設けられている。針棒回動モーター34は、駆動開始直後は低速で立ち上がり徐々に高速に達して再び速度を低速に落として停止するという動作特性がある。このため、高速性が要求される針棒回動動作を適正に行うために、針棒カム部材35のカム溝351には、針棒回動モーター34の低速となる立ち上がり(起点352aの直後)と停止直前(起点352aの直前)の区間に助走区間(半径方向に変位を生じない区間)を設け、針棒回動動作に寄与しないようになっている。なお、針棒回動動作のタイミングは厳格性を要するので、この助走区間分だけ針棒回動モーター34の駆動開始を早く開始させる必要がある。
この針棒カム部材35では、針棒12の非回動時には、カム腕361のボス状部36が起点352aに位置しており、そこから次の動作区間352の起点352aまでボス状部36が移動するように針棒カム部材35が回転駆動される事により、カム腕361を通じて針棒台31が往復回動を行う。
この時に、針棒カム部材35は、溝カムであることから、高速回転を行った場合でも、ボス状部36は遠心力で針棒カム部材35から逸脱を生じることが防止され、安定的な動作が維持される。
また、針棒カム部材35では、そのカム溝351が無端環状となる全周カムであるため、針棒台31が往復回動を行うために針棒回動モーター34は一定方向に回転駆動を行えば良く、例えば、針棒台31の往復回動の往路と復路とで針棒回動モーター34を正逆回転の切り替えを行う場合に比べて慣性力の影響を受けずに円滑な動作が可能となり、針棒台31をより高速に往復回動させることが可能である。
さらに、針棒カム部材35は、複数の動作区間352が切れ目なく連続形成されているので、連続する複数針について針棒回動動作を行う必要がある場合には、針棒カム部材35を動作区間352毎に間欠駆動させる必要がなく、連続的に回転させることで複数回の針棒回動を行うことが可能となっている。従って、連続回動時に、回転の停止が繰り返される間欠的な回転とは異なり、停止状態から高速状態まで急加速する必要がなく、安定的な連続回動が可能である。
また、このように、針棒カム部材35のカム溝351を全周カムとしたので、針棒回動モーター34から針棒カム部材35に回転動作を伝達するタイミングベルト344の耐久性を向上させることが可能である。
なお、タイミングベルトに限らず、ギヤにより針棒カム部材35を作動させることも可能である。その場合でも、同様にギヤの耐久性を向上させることが可能である。
また、この針棒回動機構30では、原点センサ355が針棒回動モーター34に併設されている。即ち、針棒回動モーター34の出力軸に検出子346が装備され、この検出子346の有無を原点センサ355が検出することにより針棒回動モーター34の原点位置が検出される。そして、制御装置90では、針棒回動モーター34の原点位置からのパルス数をカウントすることにより、針棒カム部材35の各動作区間352の起点352aを認識することが可能となっている。
従って、原点センサ355が、検出子346を検知して、ボス状部36を針棒カム部材35のカム溝351における基準の待機位置(ボス状部36は起点352aに位置する状態)に位置決めすることができる。つまり、この基準の待機位置にボス状部36が位置する状態から針棒カム部材35を回動させることにより、針棒回動モーター34が高速に達した状態で、最大変位となる中間点352bへ到達させることができ、針回動を高速で行うことが可能となっている。
上記ボス状部36は、ベルクランクである伝達部材としてのカム腕361の一方の腕部361aの回動端部の上面において上方に向かって突接されており、カム腕361のもう一方の腕部361bは、角コマ362を介してアーム部材327の回動端部に連結されている。
また、このカム腕361は、二本の腕部361a,361bの基端部側がミシンアーム部101aの壁面に固定されたモーター取付台341にZ軸方向に沿った支軸を介して回動可能に支持されている。
図10に示すように、カム腕361の針棒台31側の腕部361bは、支軸362aが角コマ362をZ軸回りに軸支している。この角コマ362は、平面視正方形の直方体であり、アーム部材327に形成された角コマ362の一辺の幅と等しい溝部としてのガイド溝327aに嵌合する。
なお、ボス状部36(従動体)から針棒台31を介して針棒12に回動動作を伝達するリンク機構は、カム腕(リンク体)361、支軸362a、角コマ(滑動部材)362、アーム部材327から構成される。
角コマ362(滑動部材)は、ガイド溝327aに沿って滑動可能であって、当該ガイド溝327aに対して上下方向に拘束されないように連結されている。また、角コマ362は、上下方向に沿った支軸362aに回動可能に軸支されているが、腕部361b下面に接触しないように、所定量の隙間が形成されている。
また、このガイド溝327aは、アーム部材327の回動端部側の水平平面に形成されている。なお、ガイド溝327aの中心線が、針棒台31の回動中心を通過するように、ガイド溝を形成すると、針棒台31の回転が円滑になる。即ち、ガイド溝327aは針棒12を中心とする半径方向に沿って形成されている。
アーム部材327は針棒台31の上端部311に抱き締め固定されており、これにより、カム腕361が回動動作を行うと、アーム部材327を通じて針棒台31に回動が伝達される。
その際、角コマ362はアーム部材327のガイド溝327aに沿って滑動することで、カム腕361とアーム部材327との連結状態を維持する。
また、これらの回動動作が高速で行われる場合、カム腕361とアーム部材327との間を上下方向について拘束すると、部材間の摺動により振動、異音、騒音等が生じ得るが、角コマ362がガイド溝327aに対して上下方向に拘束されていないので、その原因が解消され、静音化を図ることが可能となる。
また、アーム部材327のすぐ上側には、針棒台31の上端部311にスラスト受け335が固定装備されている。このスラスト受け335は、座金325を介して軸受け323に当接させて針棒台31の上端部311に抱き締め固定することで、座金325に対する針棒台31の上下動方向のガタつきを防止するものである。
このように、スラスト受け335とアーム部材327とを別部材としたので、これらが一体化している場合に比べて、アーム部材327をカム腕361に対して適正な高さに位置調節することができ、このことからも、異音の発生を防止している。
[糸寄せ機構]
図12は糸寄せ機構50の平面図、図13は斜視図である。
糸寄せ機構50は、ミシンベッド部101bの内部であって針板14よりも下側に設けられ、糸寄せ部材51により下糸の糸寄せを行う。この糸寄せ機構50は、ボビンケースから針板14の針穴15に渡る下糸を寄せてその経路を変更する糸寄せ部材51と、当該糸寄せ部材51の糸寄せ動作の駆動源となる糸寄せ用モーター52と、糸寄せ用モーター52により作動する糸寄せカム部材53と、糸寄せカム部材53から動作付与が行われる従動体としてのボス状部54と、ボス状部54から糸寄せ部材51に下糸の糸寄せ動作を伝達するリンク機構55とを主に備えている。リンク機構55は、主に、ボス腕541と支軸542から構成される。
上記糸寄せ用モーター52は、ミシンベッド部101bの内部に取り付けられたモーター取り付け台521により出力軸を垂直上方に向けた状態で支持されており、当該出力軸には主動歯車522が装備されている。モーター取り付け台521の上面には、主動歯車522に隣接して小径の従動歯車(図示略)が設けられており、これらは相互に噛合しており、主動歯車522から従動歯車へ増速回転が伝わるようになっている。
従動歯車は、その回動軸524を介して糸寄せカム部材53と連結されており、従動歯車の回動は糸寄せカム部材53に伝達される。
糸寄せカム部材53は、前述した針棒回動機構30の針棒カム部材35と同様に、円板状の溝カムであり、その下面において、上下方向を深さ方向とする溝からなるカム溝531が形成されている。
このカム溝531は、糸寄せ部材51に一往復の回動動作を付与する動作区間が五つ連なって無端環状に形成されている。個々の動作区間は、その回転中心から距離が最も小さい最小変位位置を起点としてから距離が最も大きい中間点(最大変位位置)を経て、次の動作区間の起点(最小変位位置)に至る形状であって、全体的に徐々に変位する形状に形成されている。
起点(最小変位位置)にボス状部54が位置する状態では糸寄せ部材51の先端部は針穴15の前方の待機位置にあり、中間点(最大変位位置)までボス状部54が移動すると糸寄せ部材51は針穴15の直下を通過して針穴15の後方の所定の停止位置まで移動する。そして、次の起点までボス状部54が移動すると糸寄せ部材51の先端部は針穴15の直下を通過して針穴15の前方の待機位置に復帰する。
また、糸寄せカム部材53のカム溝531には、起点に隣接してその中間点側に、半径方向について距離が不変となる助走区間が設けられている。また、中間点に隣接してその起点側にも半径方向について距離が不変となる助走区間が設けられている。
糸寄せ部材51は、下糸の糸寄せを行う場合、前述した待機位置から針穴直下を通過して停止位置まで移動し、一旦停止してから、待機位置に復帰する。
従って、起点から中間点までボス状部54が移動する場合と、中間点から起点までボス状部54が移動する場合のそれぞれついて助走区間を有するので、糸寄せ用モーター52の往路の回動と復路の回動の際に、いずれも糸寄せ用モーター52の高速域のみを利用することができる。
また、糸寄せカム部材53も、そのカム溝531が無端環状となる全周カムであるため、慣性力の影響を受けずに円滑且つ高速で糸寄せ部材51を回動させることができる。
なお、この糸寄せカム部材53については、前述した針棒カム部材35のように、原点センサを図示していないが、この糸寄せ機構50にも、ボス状部54がカム溝531の起点に位置する状態を検出する原点センサを設け、糸寄せカム部材53が待機位置にある状態から回動を開始させることにより糸寄せ用モーター52が丁度高速状態になる時に糸寄せカム部材53が回動動作を行うように構成しても良い。
糸寄せカム部材53のカム溝531に挿入されるボス状部54は、ベルクランクであるボス腕541の一方の腕部541aに軸支されており、ボス腕541のもう一方の腕部541bには糸寄せ部材51が保持されている。
また、このボス腕541は、二本の腕部541a,541bの基端部側がモーター取り付け台521に設けられた支軸542により回動可能に支持されている。
糸寄せ部材51は、その基端部がボス腕541の腕部541bの回動端部に保持されており、当該糸寄せ部材51の先端部は針板14の下側において針穴15の方向に延出されている。また、この糸寄せ部材51の先端部側が自由端となっており、また、先端部は尖鋭な形状に形成されている。そして、糸寄せ部材51は、通常は、その先端部が針穴15に対して前方に離れて待機位置に待避しており、糸寄せの際には、先端部が針穴15の真下を通過して規定の停止位置まで移動し、ボビンケースから針穴15に渡る下糸を引っ掛けて後方に寄せる動作を行う。
また、針板14の左側部には、上下二枚の板状体の隙間に板状の糸寄せ部材51を回動動作の前後に渡って介挿するように支えるガイド511が設けられており、糸寄せ部材51の回動動作時における上下方向の震えを抑止している。
上記の構成により、糸寄せ機構50では、ボス状部54が糸寄せカム部材53のカム溝531の起点に位置する状態から、糸寄せ用モーター52が一定方向(例えば、時計回り)に駆動を開始すると、助走区間を経て高速域で糸寄せカム部材53が停止位置まで回動する。これにより、糸寄せ部材51の先端部が針穴15の真下を通過して下糸を後方に寄せる動作を行う。
そして、糸寄せ部材51は停止位置で一旦停止した後に糸寄せ用モーター52が一定方向(例えば、時計回り)に駆動を再開すると、ボス状部54が糸寄せカム部材53のカム溝531の最大変位となる位置から、助走区間を経て高速域で次の動作区間の起点(最小変位位置)へ移動し、糸寄せ部材51が待機位置側へ回動する。これにより、糸寄せ部材51の先端部が針穴15の真下を通過して下糸から離れ、待機位置に退避する。
[布移動機構]
図1に示すように、布移動機構(移動機構)80は、ミシンベッド部101bの上面において布地を保持する保持枠(布保持部)81と、保持枠81を昇降可能に支持する支持アーム82と、支持アーム82を介して保持枠81をX軸方向に移動させる図16に示すX軸モーター83と、支持アーム82を介して保持枠81をY軸方向に移動させる図16に示すY軸モーター84とを備えている。布保持部とも称する保持枠81は、長方形状の枠体である図示省略の下板と布押え外枠から構成される。布地は位置決めして下板上に載置された後、上方より布押え外枠が下降して布地を保持する。
布移動機構80は、かかる構成により、保持枠81を介して布地をX−Y平面の任意の位置に移動位置決めすることができ、一針ごとに任意の位置に針落ちを行うことができ、自在な縫い目の形成が可能となっている。すなわち、移動機構とも称する布移動機構80は、布地を水平面に沿って任意の位置に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる。
[糸調子装置]
図14は糸調子装置70の断面図である。糸調子装置70は、上糸に糸張力を付与する糸調子器79と、糸調子器79による糸張力を可変調節する糸張力調節用アクチュエーターとしての糸調子ソレノイド71とから主に構成される。
上記糸調子器79は、ミシンアーム部101aの右側面に設けられ、糸供給源から天秤に至る経路の上糸を挟持して糸張力の付与を行うものである。この糸調子器79は、上糸を挟む二枚の糸調子皿72,72と、これらの糸調子皿72,72が互いに接離するX軸方向に沿って移動可能に支持する中空支軸73と、中空支軸73の内部を貫通して一方の糸調子皿72を他方の糸調子皿72に押圧することが可能な押圧軸74と、糸取りバネ75と、これらを格納保持する本体ケース76とを備えている。
一方、糸調子ソレノイド71は、糸調子器79の左方において、通電される電流値に応じて突出する方向に推力を生じる出力軸71aを備え、当該出力軸71aは、前述した押圧軸74と同一線上に並ぶように配置されている。
そして、出力軸71aは、コイルバネ77に挿通された伝達軸78と結合されており、この伝達軸78は、出力軸71aを押し戻す方向に押圧するコイルバネ77に挿通されている。
従って、糸調子ソレノイド71の非通電時には、出力軸71aはコイルバネ77に押し戻され、押圧軸74を糸調子皿72の方向に押圧する押圧力が得られないので、二枚の糸調子皿72,72はフリーとなり、糸張力の付与が行われない。
また、糸調子ソレノイド71に通電を行うと、その電流値に応じた推力で出力軸71aが突出し、コイルバネ77に抗して伝達軸78が押圧軸74を介して一方の糸調子皿72を押圧し、当該押圧力に応じて二枚の糸調子皿72,72の間に介挿された上糸に張力を付与することができる。
なお、糸調子ソレノイド71の通電量は制御装置90により制御され、糸調子装置70において、任意の糸張力を上糸に付与することが可能となっている。
また、制御部としての制御装置90は、糸寄せを実行する運針又は当該運針を含む複数針数の運針の際に、算出した縫い方向が、後述するA又はBの区分(図19参照)に属する場合、糸張力を低減調節するように糸張力調節用アクチュエーターとしての糸調子ソレノイド71を制御する。
[中押さえ上下動機構]
図15は中押さえ上下動機構120の概略構成図である。図示のように、中押さえ上下動機構120は、中押さえ110を下端部で保持すると共にミシンアーム部101a内において上下動可能に支持された中押さえ棒121と、中押さえ棒121を通じて中押さえ110を下方に押圧して挙動を安定させる押圧バネ134と、ミシンモーター21から動力を得て上軸22と同じ周期でY軸回りに往復回動を行う駆動軸122と、駆動軸122に軸支されてY軸回りに往復回動を行う駆動腕123と、駆動腕123の回動半径方向に延出された腕部123aに一端部が連結された駆動リンク124と、一端部がミシンアーム部101a内においてY軸回りに回動可能に支持されると共に長手方向中間部が駆動リンク124の他端部に連結された回動腕125と、回動腕125の他端部と中押さえ棒121に固定装備された棒抱き126とを連結する第一と第二の伝達リンク127,128と、第一の伝達リンク127の一端部と第二の伝達リンク128の一端部とがY軸回りに回動可能に連結されると共にこれらの連結部においてY軸回りに回動可能に装備された角コマ129と、角コマ129を滑動可能にガイドする直線状のガイド溝130aを有するガイド板130と、ガイド板130に回動動作を付与する高さ調節モーター131と、Y軸方向に沿った高さ調節モーター131の出力軸に軸支されると共に当該出力軸を中心とする回動半径方向外側に向かって延出された出力腕132と、出力腕132とガイド板130とを連結する連結リンク133とを主に備えている。
中押さえ110は、その上端部が中押さえ棒121の下端部に保持され、中押さえ110の下端部にはZ軸方向を中心とする円筒状の枠部を有しその中心に縫い針11が遊挿されている。また、中押さえ110の上下動の振幅は針棒12の上下動の振幅に比べて小さく、縫い針11が上死点に達した状態で当該縫い針11の下端部が中押さえ110の下端部よりも上方に配置される。これにより、縫い針11の上昇時に、当該縫い針11によって上方に引っ張られる布地を中押さえ110が押さえ、布地の端付きを押さえると共に、布地から縫い針11を完全に引き抜くことができるようになっている。
上記駆動軸122は、ミシンモーター21により回転駆動が行われる上軸22から例えばクランク機構を介して往復回動動作が付与されている。上軸22の回転周期と駆動軸122の往復回動周期は一致しており、これによって、縫い針11の上下動と中押さえ110の上下動とは同期が図られている。
駆動腕123は、その腕部123aに沿って長穴123bが形成されており、駆動リンク124の一端部は締結ボルト124aにより当該長穴123b内の任意の位置に連結可能となっている。長穴123bは、駆動腕123の回動半径に沿って形成されているので、その連結位置を変えることで駆動軸122からの距離に比例して駆動リンク124に付与する往復動作量を調節することができる。そして、駆動リンク124の往復動作量は、中押さえ110に伝達される上下動の振幅にほぼ比例するので、長穴123bに対する駆動リンク124の一端部の連結位置を変えることで中押さえ110に伝達される上下動の振幅を調節することが可能となっている。
つまり、長穴123bが形成された駆動腕123の腕部123aと長穴123bの任意の位置に駆動リンク124の一端部を連結可能とする締結ボルト124aとにより、中押さえ110の上下動の振幅を調節する振幅調節部を構成している。
なお、長穴123bは、駆動リンク124とほぼ同じ長さを半径とする円弧状に湾曲形成されており、駆動軸122が所定の軸角度であるときに長穴123bに対する駆動リンク124の一端部の連結位置を変えることにより、回動腕125から中押さえ110までに姿勢の変化を生じさせることなく中押さえ110の上下動振幅の調節を行うことが可能となっている。
また、長穴123bは、駆動軸122の中心と駆動リンク124の一端部の回動中心とが同心となる位置まで形成されており、駆動軸122の中心と駆動リンク124の一端部の回動中心とが同心となるように駆動リンク124の一端部の位置調節を行うことにより、駆動リンク124から中押さえ110までの各部材に全く動作を付与しない停止状態とすることができる。つまり、これにより、中押さえ110を上下動させないで縫製を行うことが可能である。
回動腕125は、駆動リンク124によりその他端部が往復回動動作を行う。
前述したように、第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128とは互いの一端部がY軸回りに回動可能に連結されており、第一の伝達リンク127の他端部がY軸回りに回動可能な状態で回動腕125の他端部に連結されている。また、第二の伝達リンク128の他端部はY軸回りに回動可能に棒抱き126に連結されている。
第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128とは、相互の連結部において中折れを生じ得る構造となっているので、そのままの状態では回動腕125から棒抱き126に対して往復上下動を伝達することができないが、各リンク127と128の連結部には角コマ129が装備され、当該角コマ129はその挙動がガイド板130に形成されたガイド溝130aにより一定の直進方向に動作が規制されている。このため、ガイド板130が回動しないで定位置を維持している状態では、第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128はほぼ一定の屈曲角度を維持することができ、回動腕125から棒抱き126に対して往復上下動を伝達可能となっている。
また、図15(A)及び図15(B)に示すように、ガイド板130が回動すると、ガイド溝130aの傾斜角度が変動し、これにより、第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128の屈曲角度を変化させることが可能である。これにより、回動腕125の他端部と棒抱き126との距離を変えることができ、中押さえ棒121を通じて中押さえ110の高さを変えることが可能となっている。この高さ調節により、中押さえ110は、その上下動を行う範囲全体の高さを任意に変えることができる。
また、ガイド板130と出力腕132と連結リンク133とは、いわゆる四節リンク機構を構成しており、その一節である出力腕132に出力軸が連結された高さ調節モーター131の駆動により、ガイド板130の回動角度を任意に変更可能となっている。つまり、高さ調節モーター131の動作量を制御することで、中押さえ110の上下動における下死点の高さを自在に制御可能となっている。
つまり、第一の伝達リンク127、第二の伝達リンク128、角コマ129、ガイド板130、出力腕132及び高さ調節モーター131は、中押さえ110の高さを調節する高さ調節部を構成している。また、高さ調節モーター131は、中押さえ110の下死点高さを変更調節するアクチュエーターとして機能する。
[ミシンの制御系:制御装置]
図16はミシン100の制御系を示したブロック図である。ミシン100は、上述した各部、各部材の動作を制御するための制御部としての制御装置90を備えている。そして、制御装置90は、縫製における動作制御を行うためのプログラムが格納されたROM92と、演算処理の作業領域地となるRAM93と、縫製データを記憶する記憶手段としての不揮発性のデータメモリ94と、ROM92内のプログラムを実行するCPU91とを備えている。
また、CPU91は、ミシンモーター駆動回路21a、X軸モーター駆動回路83a、Y軸モーター駆動回路84a、糸寄せ用モーター駆動回路52a、針棒回動モーター駆動回路34a、高さ調節モーター駆動回路131a、糸調子ソレノイド駆動回路71bを介して、ミシンモーター21、X軸モーター83、Y軸モーター84、糸寄せ用モーター52、針棒回動モーター34、高さ調節モーター131及び糸調子ソレノイド71のそれぞれに接続され、各モーター21,83,84,52,34,131及び糸調子ソレノイド71の駆動を制御する。
また、ミシンモーター21は、図示しないエンコーダを備えており、その検出角度がCPU91に出力される。また、上記各モーター83,84,52,34はステッピングモーターであり、これらの図示しない原点検索手段がCPU91に接続され、その出力からCPU91は各モーターの原点位置を認識することができる。
また、針棒回動機構30には針棒12の回動角度範囲における原点位置を検出するための針棒角度センサ329を備えており、CPU91はその出力から針棒12の原点となる角度を検出することができる。
データメモリ94に格納されている縫製データには、所定の縫製パターンを縫製するための一針ごとのX軸モーター83及びY軸モーター84の動作量が順番に記憶されており、CPU91は、縫製の際には、一針ごとにX軸モーター83及びY軸モーター84の動作量を読み込むと共に当該各動作量に応じてX軸モーター83及びY軸モーター84を駆動する動作制御を行う。すなわち、制御装置(制御部)90は、所定の縫製パターンを形成するための一針ごとの針落ち位置又は布地の移動量を定めた縫製データに基づいて布移動機構80を制御する。
また、縫製データには一針ごとの中押さえ110の下死点高さが順番に記憶されており、これに基づいて制御装置90は、高さ調節モーター131を制御して一針ごとに中押さえ110の下死点高さを変更調節している。
また、制御装置90には、各種の設定入力を行うための設定入力部としての入力装置95が併設されている。かかる入力装置95により、上記縫製パターンの設定入力や、中押さえ上下動機構120による中押さえ110の下死点の高さの設定入力を行うことも可能となっている。
[ヒッチステッチの発生要因]
上記CPU91は、上記縫製データに基づく縫製制御の実行に伴い、ヒッチステッチ回避制御を実行する。
布移動機構80により布を縫製データに応じて毎針ごとに任意の方向に移動する場合、その布送り方向、つまり縫目形成方向に応じて、縫い針11が布に刺さるときに縫い針11の目孔11aを通った上糸Uが縫い針11に絡む絡み方向が、図17(A)に示す左巻き方向となる場合と図17(B)に示す右巻き方向になる場合とがあり、これらの内のいずれになるかによって、パーフェクトステッチとなるかヒッチステッチとなるかが決定する。
また、図18(A)は釜13のボビンケースの角の部分から針板14の針穴15に下糸Dが渡っている状態を示す平面図であり、図18(B)はその正面図を示しているが、図示のように、下糸Dの経路に対し、縫い針11がL側とR側の何れに針落ちするかによっても、パーフェクトステッチになるかヒッチステッチになるかが決定する。
次に、本実施形態のミシン100のような半回転釜を用いる場合において、布の移動方向とヒッチステッチの発生要因との関係を図19により説明する。図19では針穴15を中心として布移動機構80が布を送る方向又は角度に応じていずれの範囲について、ヒッチステッチが生じるか、また、その要因は前述したいずれに該当するのかを示している。
まず、Aの送り方向の角度範囲は、その送り方向により、縫い針11に対する上糸の絡み方向は右方向で一定となっている。また、Aの送り方向の角度範囲は、下糸Dがボビンから針穴15に向かう方向にほぼ一致するため、針穴15を通る下糸に対し、縫い針11がR側に落ちるかL側に落ちるかが不確定となっている、従って、この領域は、パーフェクトステッチとヒッチステッチのいずれも発生し得る領域である。
次に、Bの送り方向の角度範囲は、送りの方向が下糸経路に対し、縫い針11が落ちる側が確実にL側となり、且つ、この領域はその送り方向により縫い針11に対する上糸の絡み方向は右側になるため、確実にヒッチステッチになる領域である。
次に、Cの送り方向の範囲は、送りの方向が下糸経路に対し、縫い針11が落ちる側が確実にL側となるが、縫い針11に対する上糸の絡み方向が不確定なため、パーフェクトステッチとヒッチステッチのいずれも発生し得る領域である。
残りのDの送り方向の範囲は、送りの方向が下糸経路に対し、縫い針11が落ちる側が確実にR側となり、縫い針11に対する上糸の絡み方向は左側になるため、確実にパーフェクトになる領域である。
[制御装置:ヒッチステッチ回避制御]
このように、ミシン100では、パーフェクトステッチとヒッチステッチのいずれになるかは、釜(ボビンケース)から針穴15に連なる下糸経路に対して縫い針11が落ちる位置と、縫い針11に対する上糸の絡み方向との二つの要因が絡んで決定され、また、それぞれの要因が不確定となる領域については縫い目の種類も不確定となる傾向を示す。
従って、ミシン100では、布移動機構80による送り方向の範囲を前述したA〜Dの四つに区分し、各区分の角度範囲をデータメモリ94に登録する。さらに、図20に示すように、A〜Dの各区分に応じて、糸寄せ機構50による糸寄せと針棒回動機構30による針棒回動のいずれを実行すべきかを記憶したテーブルデータをデータメモリに登録している。
そして、制御装置90は、縫製実行時において、以下のヒッチステッチ回避制御を実行する。即ち、所定の縫製パターンの縫製を行うために一針分のX軸モーター83及びY軸モーター84の動作量を縫製データから読み込むと、X軸方向とY軸方向の移動量から布の移動方向がA〜Dのいずれの区分に属するかを判定する。そして、判定した区分に応じてテーブルデータから、糸寄せと針棒回動のいずれを実行すべきかを特定し、それぞれの実行タイミングに応じた上軸角度で各々の動作を実行するように糸寄せ機構50の糸寄せ用モーター52又は針棒回動機構30の針棒回動モーター34を制御する。
制御部としての制御装置90は、縫製データに定められた針落ち位置又は布地の移動量から、布移動機構80による各針落の際の布地の移動方向を算出して、布の移動方向がA〜Dのいずれの区分に属するかを判定する。
そして、移動方向が予め定められた第一の角度範囲であるA又はBの場合には糸寄せ機構50による糸寄せを実行し、第二の角度範囲であるCの場合には針棒回動機構30による針棒の回動を実行し、第三の角度範囲であるDの場合には糸寄せ機構50による糸寄せと針棒回動機構30による針棒の回動を実行しない。 なお、制御部としての制御装置90は、縫製データに定められた針落ち位置又は布地の移動量から、布移動機構80による各針落の際の布地の移動方向を算出している。これに代えて、予め縫製データに第一の角度範囲A又はB、第二の角度範囲C、第三の角度範囲Dであるとの角度範囲データを設定し、それらのデータに基づいて、制御装置90が針棒の回動や糸寄せの実行の有無を制御することも容易に考えられる。
すなわち、制御部としての制御装置90は、布移動機構80による各針落ちごとの布地の移動方向が予め定められた第一の角度範囲であるA又はBの場合には糸寄せ機構50による糸寄せを実行し、移動方向が予め定められた第二の角度範囲であるCの場合には針棒回動機構30による針棒の回動を実行する。
[制御装置:針棒回動の実行タイミングについて]
次に、ヒッチステッチ回避制御における針棒回動を実行する場合の適正なタイミングについて説明する。図21は上軸角度と縫い針11の高さとの関係を示す線図である。
針棒12が往復回動を行う場合、針棒12の往路の回動は、縫い針11の下端部が針板14上の布地に到達するまでに完了していることが要求される。即ち、この縫い針11の下端部が針板14上の布地に到達する上軸角度を針刺さり角度αとする。なお、図21に示す針刺さり角度αは、布地の厚さを考慮しておらず、厚さが0の場合、即ち、針板14の上面に縫い針11の下端部が到達する上軸角度を示している。以下、この針刺さり角度αを基準針刺さり角度αとする。
布地の厚さを考慮した場合、縫い針11の到達は厚さ分だけ早くなるので、基準針刺さり角度αよりも早期に往路の針棒回動を完了させる必要がある。
また、布地の厚さは、上下動を行う中押さえ110の下死点高さと概ね一致する。
従って、針板14の上面高さh0からの中押さえ110の下死点高さの設定値をΔzとした場合、針棒12の往路の回動を完了すべき上軸角度は、以下の計算により求めることができる。
図21において縦軸は縫い針11の下端部の高さを示しており、縫い針11の上下動の中心を高さ0としている。縫い針11の下端部の高さZは、針棒12の振幅をH、上軸角度をθ、針棒の上死点の上軸角度を0°とした場合、次式(1)となる。
Z=(H/2)・cosθ …(1)
また、針板の上面高さh0は、次式(2)となる。
h0=(H/2)・cosα …(2)
中押さえ110の下死点高さの設定値をΔzとし、これを布地の厚さとみなす場合、針棒12の往路の回動を完了すべき上軸角度βは次式(3),(4)で表すことができる。
(H/2)・cosβ=(H/2)・cosα+Δz …(3)
β=cos-1(cosα+(2/H)・Δz) …(4)
従って、基準針刺さり角度αと布地の厚さを考慮した針棒12の往路の回動を完了すべき上軸角度βとの上軸角度差Δθは次式(5)となる。
Δθ=α−β
=α−cos-1(cosα+(2/H)・Δz) …(5)
制御装置90は、入力装置95から中押さえ110の下死点高さΔzが設定されると、当該設定値Δzから上式(4)により針棒12の往路の回動を完了すべき上軸角度βを算出する。次に、制御装置90は、算出した上軸角度βから針棒回動モーター34の駆動を開始する駆動開始上軸角度θsを算出する。
針棒回動モーター34が針棒カム部材35の起点352aにボス状部36が位置する状態から駆動を開始して中間点352b(図11参照)に到達するまでの所要時間をtm[s]とし、ミシンモーター21の設定回転数をmo[rpm]とした場合、駆動開始上軸角度θs[deg]は次式(6)により算出される。
θs=β−360・mo・(1/60)・tm
=cos-1(cosα+(2/H)・Δz)−(360/60)・mo・tm …(6)
制御装置90は、縫製時において、針棒回動を行う際には、駆動開始上軸角度θsを算出し、ミシンモーター21に設けられたエンコーダで検出される上軸角度が駆動開始上軸角度θsに達すると、針棒回動モーター34の駆動開始を実行する。また、縫製データにおいて、一針ごとに中押さえ110の下死点高さΔz又はミシンモーター21の回転数が設定されている場合には、毎針ごとにそれらの設定値から駆動開始上軸角度θsを算出して針棒回動モーター34の駆動開始を制御する。
そして、これにより、針棒12と共に縫い針11は、布地に到達する時に往路の回動が完了し、早過ぎず遅過ぎず適正なタイミングで針棒回動が行われ、効果的にヒッチステッチの発生を抑制することが可能となる。なお、針棒回動モーター34は、往路の回動が終わるとそのまま回動を続け、針棒12の復路の回動を終えてから駆動を停止する。その際、針棒12の復路の回動は、釜の剣先が上糸のループを捕捉する上軸角度に到達するまでに十分な余裕をもって完了する。
[制御装置:糸寄せの実行タイミングについて]
次に、ヒッチステッチ回避制御における糸寄せを実行する場合の適正なタイミングについて説明する。図22はミシン100における縫い針11、釜13、天秤16(図2参照)のモーションダイヤグラムである。図22における▲印の線は針棒曲線を示し、■印の線は釜曲線を示し、◆印の線は天秤曲線を示している。また、図23、図24は糸寄せ部材51と針穴15との位置関係を示す平面図であり、図23は糸寄せを実行していない状態を示し、図24は糸寄せを実行している状態を示す。
図23及び図24に示すように、糸寄せ部材51は、針落ち位置となる針穴15を横切ることから、糸寄せの実行において、糸寄せ部材51の往路の回動は、基準針刺さり角度αまでに糸寄せ部材51の往路の回動が完了していることが望ましい。なお、糸寄せは針板14の下側で行われるので、針回動のように布地の厚さを考慮する必要はない。
従って、糸寄せ機構50の糸寄せ用モーター52は、少なくとも、基準針刺さり角度α(113°)に到達するタイミングよりも、ボス状部54が糸寄せカム部材53の起点に位置する状態から中間点に到達するまでの所要時間分だけ前から駆動を開始するよう制御される。
また、糸寄せ部材51の復路の回動は、上糸が釜により縫い針11から最も遠ざかる上軸角度270°となる上糸開き角度で糸寄せ部材51の復路の回動が行われることが望ましい。従って、糸寄せ機構50の糸寄せ用モーター52は、上開き角度よりもボス状部54が糸寄せカム部材53の中間点に位置する状態から起点に到達するまでの所要時間分だけ前から駆動を再開するよう制御される。
糸寄せ部材51の回動動作は、往路復路共に高速な動作が要求されるが、糸寄せ用モーター52は、助走区間で助走してから高速状態で糸寄せの回動に寄与する区間に至るため、糸寄せ部材51を高速で回動させることができ、短いタイミングでの動作の要求に十分に対応することが可能である。
[糸寄せの実行時における糸張力調節制御]
図25に示すように、糸寄せを実行すると、下糸は糸寄せ部材51に寄せられて経路長が長くなり、ボビン側から引き出されることとなる。
従って、上糸張力は通常時より小さく設定しても、上下の糸の結節を布の上側に引き上げることができ、低張力で締りのよい縫い目を形成することができる。
従って、縫製時に糸寄せの実行と判定された針落ちの際には、糸張力を低減するよう糸調子ソレノイド71の制御が実行される。
この時、糸調子ソレノイド71の糸張力は、縫製データに設定されている糸張力の設定値を自動的に演算により所定量だけ減じたり、所定の比率で低減して自動的に求めても良いし、或いは、糸寄せの実行に適した糸張力値を事前に設定し、糸寄せの実行時に一律で糸寄せの実行に適した糸張力値となるように糸調子ソレノイド71の制御を行っても良い。
このように、糸寄せの際に糸張力を低減する制御を行うことにより、糸寄せを実行する縫い目と実行しない縫い目との糸締まりの均一化を図ることができる。
[ヒッチステッチ回避制御の動作説明]
図26はヒッチステッチ回避制御のフローチャートである。なお、ここでは、ミシンモーター21の回転数は一定であり、中押さえ110の下死点高さは一針ごとに縫製データ中に設定されている場合を例示する。
図示のように、ミシン100の制御装置90は、縫製データに基づく縫製の実行時において、上軸角度が予め定められたデータ読み込み角度になると、縫製データから次の運針のX軸方向及びY軸方向の移動量並びに中押さえ110の下死点高さの読み込みを実行する(ステップS1)。
そして、読み込んだ布押さえ100の下死点高さの設定値に基づいて高さ調節モーター131を制御して中押さえ110の下死点を設定値に変更する(ステップS3)。
さらに、制御装置90は、読み込んだX軸方向及びY軸方向の移動量から布移動方向、即ち、縫い方向を算出する(ステップS5)。
次いで、制御装置90は、前述した図26のテーブルを参照し、算出した縫い方向が、A又はBの区分に属するか否かを判定する(ステップS7)。
その結果、縫い方向が、A又はBの区分に属する場合には、糸調子ソレノイド71を制御して糸寄せに適した糸張力となるように低減する(ステップS9)。さらに、上軸角度を監視して、適正なタイミングで糸寄せ用モーター52の駆動を開始して糸寄せを実行する(ステップS11)。これにより、縫い方向がA又はBの区分に属する場合でも、下糸に対して右側に針落ちが行われ、パーフェクトステッチの縫いが実行される。
また、ステップS7において、縫い方向がA又はBのいずれの区分にも属さない場合には、Cの区分に属するかを判定する(ステップS13)。
これにより、縫い方向がCの区分である場合には、制御装置90は、前述した駆動開始上軸角度θsを算出する(ステップS15)。そして、上軸角度を監視して、駆動開始上軸角度θsに達すると、針棒回動モーター34の駆動を開始して針棒12の回動を実行する(ステップS17)。
これにより、縫い針11に対する上糸の回り込みを左側とすることができ、パーフェクトステッチの縫いが実行される。
また、ステップS13において、縫い方向がCの区分にも属さない場合には、縫い方向はDの区分となるので、糸寄せも針棒回動も行うことなく、通常の運針が実行される。
[実施形態の効果]
以上のように、ミシン100では、毎針の縫い方向を求め、縫い方向に応じて選択的に糸寄せ或いは針棒回動動作を実行する。このため、ヒッチステッチの発生原因が、下糸に対する針落ち位置を要因として発生するヒッチステッチのみならず、縫い針11に対する上糸の絡み方向によるヒッチステッチをも防止することができ、ヒッチステッチの発生をより効果的に低減することが可能となる。また、複数の要因に対処することから、垂直釜、水平釜、全回転釜、半回転釜など多種多様の釜を使用する場合でもヒッチステッチの発生防止することが可能となる。
また、制御装置90は、中押さえ110の下死点高さが予め設定された設定値となるように中押さえ上下動機構120の高さ調節モーター131を制御すると共に、中押さえ110の下死点高さの設定値に縫い針11の先端部が到達するタイミングで往路の回動が終了するように針棒回動機構30を制御する。このため、布地の上面に縫い針11の下端部が到達するタイミングで針棒12が往路の回動を終えることができ、回動を終了する前に縫い針11が布地に突き刺さることもなく、布地に到達タイミングに対して針棒回動の完了が早すぎることもなく、適正なタイミングで針棒回動を行うことが可能となる。これにより、ヒッチステッチの発生をより効果的に低減することが可能となる。
[その他]
針棒回動機構30及び糸寄せ機構50では、往復動作の発生のために溝カムを利用しているが、これに限定されない。例えば、端面カムや外周カム等往復動作を得られる他のカムを使用しても良い。
また、針棒回動機構30及び糸寄せ機構50のカム溝を無端環状として、溝カムを一定方向にのみ回転させているが、針棒12又は糸寄せ部材51の往復回動に対応して、カムも往復回動を行う構成としても良い。
また、針棒回動機構30及び糸寄せ機構50は、カムに限らず、クランク機構や四節カム機構等により往復回動を行っても良い。また、糸寄せ部材51による糸寄せの動作では、針穴15の下方から後方に下糸を寄せることができれば良く、糸寄せ部材51の先端部が往路と復路とで同じ軌跡を辿らなくともよい。例えば、糸寄せ部材51の先端部は楕円、長円、その他の円運動を行って糸寄せを実行してもよい。
上記実施形態では、縫製データに一針ごとに中押さえの下死点高さが設定されているので、一針ごとに駆動開始上軸角度θsの算出を行っているが、例えば、入力装置95から、中押さえの下死点高さとミシンモーター21の回転数とについて、縫製全体を通じて一定の値が設定された場合には、駆動開始上軸角度θsは一針ごとに算出せず、縫製開始前に算出した駆動開始上軸角度θsの固定値により毎回の針棒回動モーター34の駆動を開始させてもよい。
11 縫い針
12 針棒
13 釜
20 針上下動機構
21 ミシンモーター
22 上軸
30 針棒回動機構
34 針棒回動モーター
80 布移動機構(移動機構)
81 保持枠(布保持部)
90 制御装置(制御部)
95 入力装置(設定入力部)
100 ミシン
110 中押さえ
120 中押さえ上下動機構
131 中押さえ調節モーター(アクチュエーター)
D 下糸
U 上糸

Claims (4)

  1. 縫い針を保持して上下動を行う針棒と、
    回動動作により上糸を下糸に絡める釜と、
    前記針棒の上下動の駆動源となるミシンモーターと、
    前記針棒をその長手方向に沿った中心線回りに回動させる針棒回動機構と、
    布保持部により被縫製物を水平面に沿って任意の移動方向に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる移動機構と、
    所定の縫製パターンを形成するための一針ごとの針落ち位置又は一針ごとの前記被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動機構を制御する制御部と、
    前記縫い針に併設され、前記布保持部に保持された被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえと、
    前記中押さえを前記針棒に同期して上下動させると共に、中押さえの下死点高さを変更調節するアクチュエーターを備える中押さえ上下動機構とを備え、
    前記制御部が、前記縫製データに定められた前記被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの生じる角度範囲に属する場合に、前記針棒回動機構により前記針棒が往路と復路からなる往復回動動作を行うよう制御するミシンにおいて、
    前記制御部は、前記中押さえの下死点高さが予め設定された設定値となるように前記中押さえ上下動機構のアクチュエーターを制御すると共に、前記中押さえの下死点高さの設定値から、前記針棒回動機構の駆動開始タイミングを算出し、前記縫い針の先端部が布地に到達するまでに前記針棒の往路の回動が終了するように前記針棒回動機構を制御することを特徴とするミシン。
  2. 針板の下側で糸寄せ部材により下糸の糸寄せを行う糸寄せ機構を備え、
    前記制御部は、
    前記移動機構による各針落ちごとの前記被縫製物の移動方向が予め定められた第一の角度範囲である場合には前記糸寄せ機構による糸寄せを実行し、
    前記移動方向が予め定められた第二の角度範囲である場合には前記針棒回動機構による針棒の回動を実行することを特徴とする請求項1記載のミシン。
  3. 前記中押さえの下死点高さの設定値を設定する設定入力部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
  4. 前記縫製データ中に一針ごとの前記中押さえの下死点高さの設定値が設定され、
    前記制御部は、一針ごとに前記中押さえ上下動機構のアクチュエーター及び前記針棒回動機構を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。
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