JP6045318B2 - ミシン - Google Patents

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Description

本発明は、針棒の回動動作を行うミシンに関する。
X−Y送りミシンのように、布保持枠で布地を保持し、針棒の上下動に同期して水平面上の任意の位置に位置決めして任意の縫い目を形成するミシンの場合、縫い針の目穴は一定方向を向いたままの状態であるため、布地の移動方向によって、縫いの状態の良否に差異を生じる。
このため、従来のミシンでは、針棒を上下動可能に支持する針棒台に針棒回りに回動動作を付与する駆動装置を併設し、布地の移動方向に応じて針棒を回動させて縫いの状態の改善を図っていた(例えば、特許文献1参照)。
中国特許出願公開第101845718号明細書
しかしながら上記従来のミシンは、針棒台の重量が大きく、これにより針棒の回動の高速化が困難であり、これに伴い、縫い速度も高速化を図ることができないという問題があった。
本発明は、針棒回動の高速化を図ることをその目的とする。
請求項1記載の発明は、縫い針を保持する針棒と、前記針棒を上下動可能に支持すると共に、前記針棒と共に当該針棒の中心線回りに回動可能に支持された針棒回動台と、前記針棒に連結され、当該針棒に上下動動作を付与する針上下動機構と、前記針棒の回動動作の駆動源となる針回動モーターと、上糸の引き上げを行う天秤と、を備えるミシンにおいて、前記針棒回動台は、前記針棒の上部を上下動可能に支持すると共に、前記針上下動機構は、前記針棒回動台の下方で前記針棒に回動可能に連結されており、前記針棒は、当該針棒を中心とする直径方向の両外側に向かって突出した一対の凸部を有し、前記一対の凸部は前記針棒に固定されて当該針棒と共に回動し、前記針棒回動台は、それぞれの前記凸部が嵌合し滑動する上下方向に沿った二つのガイド穴又はガイド溝を備えることを特徴とする。
請求項2記載の発明は請求項1と同様の構成を備えると共に、上糸を捕捉し、回転動作により上糸を下糸に絡める釜と、前記釜を搭載し、ミシンフレームに対して前記針棒と同じ中心線回りに回動可能に支持された釜回動台と、前記釜回動台の回動動作の駆動源となる釜回動モーターとを備え、前記針棒回動台と前記釜回動台のそれぞれの回動角度が一致するように前記針回動モーターと釜回動モーターとを制御する同期制御部を備えることを特徴とする。
請求項3記載の発明は請求項1又は2と同様の構成を備えると共に、水平一平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構を備え、
前記移動機構による被縫製物の移動を行う場合に、前記針棒が前記被縫製物の移動方向に対応する向きで追従的に回動を行うように前記針回動モーターを制御する追従制御部を備えることを特徴とする。
請求項4記載の発明は請求項3と同様の構成を備えると共に、前記針棒の回動角度について一定の基準位置を定め、前記針棒の回動を行う際に、その目標位置が現在位置からの回動角度が少なくなるように正逆何れかの回動方向を選択する選択制御部と、複数回の回動動作を行う際に、その回動角度の累計が前記基準位置から予め定めた最大回動角度を超える場合には前記選択制御部による選択に拘わらず、最大回動角度を超えない正逆何れかの回動方向を選択する規制制御部とを備えることを特徴とする。
請求項1記載の発明は、針棒回動台が針棒の上部を支持し、針上下動機構が針棒回動台の下方で針棒に連結されているので、例えば、針棒回動台が針棒の上端部と下端部を回動可動に支持し、針棒回動台による支持位置の間で針棒と針上下動機構とが連結されている構造に比べて、針棒回動台を上下方向に小型化することができ、これによる軽量化を図ることができるので、高速回動動作が容易となり、縫製の高速化も可能となる。
さらに、針棒回動台が針棒の上部を支持し、針上下動機構が針棒回動台の下方で針棒に連結されているので、針棒回動台の上下方向の小型化に有利であり、軽量化及び回動の高速化を効果的に実現することができる。
さらに、請求項1記載の発明は、針棒が一対の凸部を有し、針棒回動台が二つのガイド穴又はガイド溝でそれぞれの凸部を支持する構造としているので、針棒回動台に対する針棒の回動動作の追従性を高めることができ、良好な回動動作を行うことが可能となる。
さらに、上記構造により、針棒回動台に対する針棒の上下動動作も良好に行うことが可能となり、高速な縫製を安定的に行うことが可能となる。
請求項2記載の発明は、釜の回動を可能とする構成とした場合には、針棒の回動時に釜も回動させることにより、釜が向きの変わった縫い針から円滑に上糸を捕捉することができ、縫製動作を確実且つ円滑に行うことが可能となる。
請求項3記載の発明は、針棒が被縫製物の移動方向に対応する向きで追従的に回動を行うように針回動モーターを制御するので、天秤による上糸の引き上げの際に、縫い針の目穴から引き出される上糸の撚り戻しの発生を低減することでき、糸のほつれ状態やほどけ状態を防止し、より良好な縫いを行うことが可能となる。
請求項4記載の発明は、選択制御部により少ない回動角度が選択されるので、回動動作の高速化を図ることができる。
その一方で、針棒の回動動作が繰り返された結果、基準位置からの針棒の回動角度が増加すると、供給される上糸が針棒に絡みつく可能性を生じるが、規制制御部が最大回動角度超えないよう制御するので、針棒に対する上糸の絡みつきの問題を解消し、良好な縫製動作を行うことが可能である。
第一の実施形態のミシンの斜視図である。 ミシンの機構構造を概略的に図示した構成図である。 ミシンアーム部の一部を切り欠いた断面図である。 針棒の周囲の構成の斜視図である。 針棒の周囲の構成の縦断面図である。 図5のW−W線に沿った断面図である。 釜機構及び差動伝達機構の斜視図である。 釜機構及び差動伝達機構の針棒の中心線及びY−Z平面に沿った断面図である。 釜回動台及び支持枠の回動により釜伝達部が釜を回動させる状態説明図であり、図9(A)は釜回動台及び支持枠の回動前の状態を示し、図9(B)は釜回動台及び支持枠の回動後の状態を示す。 釜機構の平面図である。 主に釜機構のオープナー作動部を示した斜視図である。 主に釜機構のメス機構を示した斜視図である。 図13(A)は給油機構の水平方向の断面図、図13(B)は給油機構の垂直方向の断面図である。 ミシンの制御系を示すブロック図である。 X−Y平面上において、針棒の中心線から釜に向かう方向を基準とした場合にヒッチステッチが発生する縫い方向を示した説明図である。 ヒッチステッチ回避制御のフローチャートである。 ミシンにおける上糸経路を示す説明図である。 上糸の縫い針の目穴に対する接触位置と撚り戻りの発生との関係を示す説明図であり、図18(A)は撚り戻りの発生する例を示し、図18(B)は撚り戻りの発生しない例を示す。 縫い針に対する撚り戻りが発生する縫い方向の関係を示す説明図である。 針棒回動制御を実行する場合の動作例の説明図である。 針棒回動制御のフローチャートである。 第二の実施形態のミシンにおける上糸経路を示す説明図である。 縫い針周辺の斜視図である。 図23と視線を変えて見た縫い針周辺の斜視図である。 図25(A)は基準位置にあるメス針の正面図、図25(B)は基準位置にあるメス針11Aの側面図である。 基準位置にあるメス針の平面図を示している。 長方形の被縫製物の外縁部に沿って長方形状の縫製パターンの説明図である。 メス針を装着した針棒回動機構を有するミシンによるサドルステッチ風縫製による縫い目を示す説明図である。 メス針回動を行わない、従来ミシンの布移動機構による縫い目を示す説明図である。 ミシンによる不適正なサドルステッチ風縫製による縫い目を示す説明図である。 縫製データに定められた具体的にサドルステッチ風縫いの縫製動作を示す説明図である。 平メス型のメス針の他の例を示す正面図である。 平メス型のメス針の他の例を示す平面図である。 平メス型のメス針の他の例を示す正面図である。 平メス型のメス針の他の例を示す平面図である。 平メス型のメス針の他の例を示す正面図である。 平メス型のメス針の他の例を示す平面図である。 縫製パターンの他の例である。 縫製パターンのさらに他の例である。 釜駆動モータを釜回動台に搭載した例の釜回動機構及び釜機構の中心線及びY−Z平面に沿った断面図である。 図40のミシンにスリップリングを装備した例を示す断面図である。
[第一の実施形態の概要]
本発明の第一の実施の形態を図1〜図21に基づいて説明する。
本実施形態として以下に記載するミシン100は、いわゆる電子サイクルミシンであり、縫製を行う被縫製物である布地を保持する布保持部としての保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動することにより、保持枠に保持される布地に所定の縫製データに基づく縫製パターンを形成する。
図1は本発明にかかるミシン100の斜視図、図2はミシン100の機構構造を概略的に図示した構成図である。
ここで、後述する縫い針11が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
上記ミシン100は、縫い針11をその下端部に保持してZ軸方向に沿って上下動を行う針棒12と、ミシンモーター21を駆動源として縫い針を上下動させる針上下動機構20と、針棒12をZ軸方向に沿ったその中心線回りに回動させる針棒回動機構30と、縫い針11に通された上糸に下糸を絡める釜801を備える釜機構800と、駆動手段としての釜駆動モーター401から釜機構800に釜回転の動力を伝達する入力軸411及び出力軸412を備えると共にこれら軸間の位相差を変更調節可能とする差動伝達機構400と、布地を保持してX−Y平面に沿って任意に移動位置決めを行う移動機構としての布移動機構102と、上記各構成の動作制御を行う動作制御手段としての制御装置110と、ミシン100の各構成を支持するミシンフレーム101と、中押さえ13と、天秤機構14とを主に備えている。
[ミシンフレーム]
図1に示すように、ミシン100は、外形がX軸方向から見て略コ字状を呈するミシンフレーム101を備えている。このミシンフレーム101は、ミシン100の上部をなしY軸方向に延びるミシンアーム部101aと、ミシン100の下部をなしY軸方向に延びるミシンベッド部101bと、ミシンアーム部101a及びミシンベッド部101bとを連結する縦胴部101cとを有している。
[布移動機構]
図1に示すように、布移動機構102は、ミシンベッド部101bの上面において被縫製物を保持する保持枠102aと、保持枠102aを昇降可能に支持する支持アーム102bと、支持アーム102bを介して保持枠102aをX軸方向に移動させるX軸モーター102c(図14参照)と、支持アーム102bを介して保持枠102aをY軸方向に移動させるY軸モーター102d(図14参照)とを備えている。
布移動機構102は、かかる構成により、保持枠102aを介して被縫製物をX−Y平面の任意の位置に移動位置決めすることができ、一針ごとに任意の位置に針落ちを行うことができ、自在な縫い目の形成が可能となっている。
[針上下動機構]
図3はミシンアーム部101aの一部を切り欠いた断面図、図4は針棒12の周囲の構成の斜視図、図5は針棒12の周囲の構成の縦断面図である。
図1乃至図5に示すように、針上下動機構20は、上記ミシンアーム部101a内においてY軸方向に沿った状態で回転可能に支持された上軸22と、上軸22の一端部から回転力を付与すミシンモーター21と、上軸22の他端部に設けられた針棒クランク23と、針棒クランク23の回転中心に対する偏心位置に一端部が連結されたクランクロッド24と、針棒12の周囲に係合し不図示のネジにより抱き締め固定された針棒抱き25と、針棒抱き25を介してクランクロッド24から針棒12に上下動を伝達する伝達部材26とを備えている。
上軸22はミシンモーター21の出力軸に直結されて回転駆動が行われ、上軸22の回転は針棒クランク23とクランクロッド24とにより上下の往復動作に変換されて伝達部材26及び針棒抱き25を介して針棒12に伝達される。
上記伝達部材26は、針棒抱き25を間に介在せしめる天板部261及び底板部262と、組付けの際に天板部261及び底板部262の間に針棒抱き25を介挿するための開口部263とを備えている。
天板部261及び底板部262は、いずれも平面視の中央部に針棒12を挿入可能な貫通穴が形成されており、当該各貫通穴に針棒12を挿通し、天板部261及び底板部262の間で針棒抱き25を抱き締め固定することで、伝達部材26と針棒12とを上下方向について連動し、なお且つ、針棒12の中心線C(図2参照)回りの回動を可能とする。
さらに、伝達部材26は、Y軸方向に沿った支軸264を備え、クランクロッド24の下端部は、メタル軸受けを介して支軸264を回動可能に支持する。また、この支軸264は、クランクロッド24を貫通しその背後において、角駒265に連結されている。
この角駒265は、長方形状であって、X軸方向の両側には、角駒265が回動せずに上下動を行うためのガイド溝101dがミシンアーム部101aの内壁に形成されている。
従って、クランクロッド24の下端部が上下動を行う際には、伝達部材26は、支軸264回りの揺動及びX軸方のぶれが防止され、針棒12に安定した上下動動作を伝達することを可能とする。
[針棒回動機構]
針棒12は、その下端部側が下針棒メタル(メタル軸受け)122により上下動及び中心線C回りの回動を可能な状態で支持され、上端部側は針棒回動機構30の針棒回動台31の下端部に設けられた上針棒メタル(メタル軸受け)121により上下動可能に支持されている。
さらに、針棒12の下端部は縫い針11を保持し、上端部には針棒回動台31に対する回り止めとなる矩形板123が装備されている。矩形板123は、針棒12の上部に形成された貫通溝12aに挿通されて、不図示のネジにより固定されている。このため、矩形板123は、針棒12に対して、当該針棒12を中心とする円の直径方向両側に突出しており、これら突出部が一対の凸部123a,123bを構成している。
なお、針棒12と矩形板123は別部品で構成したが、これに代えて、針棒に一対の凸部を一体的に形成することも容易に考えられる。
針棒回動機構30は、針棒12を内側で上下動可能に支持する円筒状の針棒回動台31と、針棒回動台31の中心線C回りの回動動作の駆動源となる針回動モーター32と、針回動モーター32から針棒回動台31に回動動作を伝達する伝達機構33とを備えている。
針棒回動台31は、その上端部及び下端部がメタル軸受け311、312により中心線C回りに回動可能に支持されている。上側のメタル軸受け311は、ミシンアーム部101aの上面近傍に固定装備されている。
また、下側のメタル軸受け312は、半径方向外側に延出された支持腕部312a(図4)を介してミシンアーム部101aの壁面に取り付けられた支持部材313により保持されている。
針棒回動台31は、これらにより上下二箇所が支持されているので、鉛直上下方向を向いた状態を強固に維持することができ、針棒12の円滑な上下動動作を可能とする。
また、針棒12も上下の針棒メタル121,122により支持されているので、針棒回動台31と共に鉛直上下方向を向いた状態を強固に維持することができる。
また、針棒回動台31は、Z軸方向に沿った長穴状の開口部が図5におけるY軸方向の両側面部に形成されており、当該開口部にはそれぞれ長尺なるガイド板314,314が上下2箇所でネジ止め固定されている。各ガイド板314,314は、Z軸方向に沿って長穴314aが貫通形成されており、それぞれの長穴314a,314aにはその内側から針棒12の凸部123a,123bが挿入されている。長穴314aの幅は凸部123a,123bの幅よりに僅かに広く形成されており、これにより、凸部123a,123bが長穴314aに沿って滑動することを可能としている。つまり、これらガイド板314,314と針棒12の凸部123a,123bの協働により、針棒12が上下動動作を妨げられることなく、針棒回動台31と共に中心線C回りに回動を行うことを可能としている。
伝達機構33は、針回動モーター32をその出力軸が下方に向いた状態で支持するモーターブラケット331と、針棒回動台31のミシンアーム部101aの上面からの突出端部を軸受け334により回動可能に支持する支持ブラケット333と、針回動モーター32の出力軸に固定装備された主動スプロケット332と、針棒回動台31の突出端部近傍に固定装備された従動スプロケット335と、主動スプロケット332及び従動スプロケット335に掛け渡されたタイミングベルト336とを備えている。
これにより、針回動モーター32が駆動すると、針棒回動台31に回動が付与され、針棒回動台31と共に針棒12を回動させることが可能となっている。
なお、針棒12の中心線と針棒回動台31の回動中心線と後述する釜回動台130の回動中心線はいずれも同一直線上にあり、これらを統一して中心線Cというものとする。
[中押さえ]
中押さえ13は、針棒12と同じくミシンモーター21を駆動源として図示しない周知の動作伝達機構により針棒12と同期して上下動を行う。
中押さえ13は、縫い針11を遊挿する円筒状の枠を布地のすぐ上側で針棒12よりも小さな振幅で上下動を行い、縫い針11の上方移動の際に、布地が引き上げられないように、当該布地を押さえるものである。
[天秤機構]
天秤機構14は、針棒クランク23に設けられたクランク軸24の上端部を支持する偏心軸により一端部が軸支されたリンク部材141と、天秤142を有するベルクランク部材143とから構成されている。
ベルクランク部材143は、ミシンアーム部101aの内部で軸支された基部と当該基部から延出された二本の腕部とを有し、一方の腕部がミシンアーム部101aの外部まで延出された天秤142となっている。また、もう一方の腕部143aは、リンク部材141の他端部に連結され、ベルクランク部材143に回動動作が入力される。
天秤142は、その先端部に上糸Uを挿通する貫通穴が形成されている。
かかる構成により、天秤機構14は、針棒12と同周期で天秤142が上下動を行う。但し、天秤142は針棒12よりも上軸角度で約60°程度遅れて上死点に到達するよう設計されている。
[釜回動台]
図7は釜回動台130、釜機構800及び差動伝達機構400の斜視図、図8は中心線C及びY−Z平面に沿った断面図である。図2、図7及び図8に基づいて釜回動台130について説明する。
釜回動台130は、X−Y平面に沿った上面に釜機構800を搭載する搭載板131と、搭載板131の下面に取り付けられた上部フレーム132と、上部フレーム132の下部に取り付けられた下部フレーム133とから構成され、これら搭載板131、上部フレーム132及び下部フレーム133がネジ止めにより一体化されている。
そして、釜回動台130は、その上部と下部とにおいて、ミシンフレーム101の一部をなす支持フレーム105により、軸受け134,135を介して中心線C回りに回動可能に支持されている。
[差動伝達機構]
差動伝達機構400は、釜回動台130の上面に搭載された釜機構800の釜801に対して釜駆動モーター401から回転力を付与する機能と、釜回動台130に対して釜回動モーター402から回動力を付与する機能と、当該釜801の回動による釜軸811回りの位相の変動を補正する機能を有している。
なお、上記釜801は、いわゆる全回転の水平釜であり、布載置板103の下側において中心線Cに平行な釜軸811に固定装備され、後述する釜土台804により釜軸811と共にZ軸回りに回転可能に支持されている。
差動伝達機構400は、釜機構800に対して回転力を伝達する回転力伝達部410と、釜回動台130を回動させて釜801を中心線C回りに旋回移動させる回動力伝達部420と、回動により釜801に生じる釜軸811回りの位相の変動を補正する差動機構部430と、従動スプロケット422から入力される回動力により、釜回動台130と後述する支持枠431とをミシンフレーム101の支持フレーム105から見て同方向に回動させると共に釜回動台130を支持枠431の二倍の回動量で回動させる回動連動機構としての回動連動部440とを備えている。
[差動伝達機構:回転力伝達部]
回転力伝達部410は、釜801の回転駆動源となる釜駆動モーター401と、釜駆動モーター401からのトルクが入力される入力軸411と、入力軸411から差動機構部430を介してトルクが伝達されると共に釜機構800に出力する出力軸412と、釜駆動モーター401の出力軸に装備された主動スプロケット413と、入力軸411の下端部に固定装備された従動スプロケット414と、これらのスプロケット413,414に掛け渡された内歯のタイミングベルト415と、出力軸412の上端部に固定装備された出力スプロケット416と、当該出力スプロケット416と釜機構800の入力スプロケット822との間に掛け渡された内歯のタイミングベルト417とを備えている。
釜駆動モーター401は、出力軸を下方に向けた状態で支持フレーム105に固定されており、当該出力軸には主動スプロケット413が装備されている。
上記入力軸411と出力軸412は、後述する差動機構部430の支持枠431の下部と上部とに回転可能に支持されており、これら入出力軸411,412は、いずれも中心線Cと同一線上に配置されている。
そして、入力軸411の下端部には従動スプロケット414が装備され、主動スプロケット413及びタイミングベルト415を介して釜駆動モーター401からトルクが入力される。
また、出力軸412の上端部には出力スプロケット416が装備され、タイミングベルト417を介して入力スプロケット822から釜機構800にトルクを入力する。
[差動伝達機構:回動力伝達部]
回動力伝達部420は、釜801の回動駆動源となる釜回動モーター402と、釜回動モーター402の出力軸に装備された主動スプロケット421と、釜回動台130の上部フレーム132の上部外周に固定装備された従動部材としての従動スプロケット422と、これらのスプロケット421,422に掛け渡された内歯のタイミングベルト423とを備えている。
これらの構成により、釜回動モーター402から各スプロケット421,422及びタイミングベルト423を介して、釜回動台130にトルクが入力され、釜回動台130の搭載板131の上面において、中心線Cから偏心した位置に設けられた釜801に対して、中心線C回りの回動動作が付与されるようになっている。
[差動伝達機構:差動機構部]
差動機構部430は、入力軸411の上端部と出力軸412の下端部とを対向させた状態でこれらを回転可能に支持する支持枠431と、入力軸411の上端部に固定装備された第一のかさ歯車432と、出力軸412の下端部に固定装備された第二のかさ歯車433と、互いに対向する第一と第二のかさ歯車432,433の双方に噛合する伝達かさ歯車435を備えた伝達体434とを備えている。
支持枠431は、釜回動台130により当該釜回動台130に対して中心線C回りに回動可能に支持されており、当該支持枠431と釜回動台130とは個々に中心線C回りに回動することを可能としている。
また、支持枠431の下部の中心には同心で入力軸411が軸受けを介して軸支されており、上部の中心には同心で出力軸412が軸受けを介して軸支されている。
さらに、支持枠431の上下方向における中間部が略四角形の枠状構造となっており、当該枠状部において伝達体434が回転可能に支持されている。
伝達体434は、入力軸411と出力軸412の対向端部の間を通って中心線Cに直交する線上に設けられた軸部436と、当該軸部436に固定装備された伝達かさ歯車435とからなり、軸部436は支持枠431に軸受けを介して回転可能に支持されている。
また、伝達かさ歯車435は、第一と第二のかさ歯車432,433の双方に噛合して、第一と第二のかさ歯車432,433を介して入力軸411と出力軸412との間で互いに逆回りの回転を伝達可能としている。
かかる構造により、差動機構部430はいわゆる差動歯車機構を構成している。
図9は差動機構部430の支持枠431の回動により入力軸411−出力軸412間の伝達回転量への影響を示す説明図である。
第一のかさ歯車432と第二のかさ歯車433とは、歯数が等しく、相互の回転方向は逆に伝達されるが、伝達速度比は1:1となっている。
例えば、入力軸411から出力軸412に回転が伝達されている時に、支持枠431が入力軸411及び出力軸412を中心に角度αだけ回動を行うと、伝達かさ歯車435は第一のかさ歯車432の角度αの歯数分の回転を生じ、さらに、伝達かさ歯車435は第二のかさ歯車433を角度α分だけ回転させる。さらに、支持枠431が角度αだけ回動を行っているので、第二のかさ歯車433には伝達かさ歯車435の回転分と支持枠431の回動分の合計である角度2α分の回転を生じることとなる。つまり、支持枠431の一定方向の回動により、入力軸411に対して出力軸412は支持枠431の回動方向に二倍の回動角度分の角度差が発生することとなる。
[差動伝達機構:回動連動部]
回動連動部(回動連動機構)440は、釜回動台130の回動時に支持枠431を同方向(作業者基準で見た場合における同方向、つまり、釜回動台130から見ると支持枠431は逆回転しているように見えるが、作業者の視点で見た場合には、支持枠431は釜回動台130の半分の動作量で同方向に回転する)に所定の比率で連動的に回動させるものである。
この回動連動部440は、支持フレーム105に回転不能状態で固定された固定歯車441と、釜回動台130に回動可能に支持された支軸442と、支軸442に固定され、固定歯車441に噛合う大歯車443(第1歯車)と、支軸442に固定され、従動歯車445に噛合う小歯車444(第2歯車)と、支持枠431に固定装備され、当該支持枠431と共に中心線C回りに回動を行う従動歯車445とを備えている。
固定歯車441は、中心線Cを中心とする配置で平歯車であり、大歯車443は、釜回動台130の回動時に、固定歯車441に噛合して回転しつつ当該固定歯車441の周囲を周回移動するようになっている。つまり、この回動連動部440では、固定歯車441が太陽歯車、大歯車443が遊星歯車となる遊星歯車機構を構成している。
ここで、固定歯車441と大歯車443とは、歯数が同一であり、伝達比が1:1に設定されている。また、小歯車444と従動歯車445とは、歯数が1:2であり、小歯車444の回転に対して従動歯車445には逆方向に半分の回転が伝達される。
上記大歯車443は、釜回動台130が一定方向に回動を行うと、釜回動台130と共に中心線Cを中心に周回移動することで釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じ、さらに、固定歯車441との噛合により釜回動台130に対して支軸442回りに釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じるので、合計で、釜回動台130と同じ方向に二倍の角度変化を生じる。
一方、小歯車444は、釜回動台130が一定方向に回動を行うと、釜回動台130と共に中心線Cを中心に周回移動することで釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じ、さらに、大歯車443に連動して釜回動台130に対して支軸442回りに釜回動台130の回動角度と等しい角度変化を生じるので、小歯車444も、釜回動台130と同じ方向に二倍の角度変化を生じる。
これに対して、従動歯車445は、小歯車444が釜回動台130の回動により周回移動を行うと、釜回動台130と同じ方向にその回動角度と等しい角度変化を生じる。しかし、大歯車443が固定歯車441に噛合することで生じる回転に伴い、小歯車444が支軸442回りに回転するので、釜回動台130と逆方向に伝達比に応じて釜回動台130の回動角度の半分の回転を生じる。その結果、従動歯車445には、合計で、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の回動角度の半分の回転を生じることとなる。
つまり、この回動連動部440により、釜回動台130が回動を行うと、支持枠431に対して、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の回動角度の半分の回動動作が連動して行われるようになっている。
差動伝達機構400は、上記の構成により、釜駆動モーター401の駆動により、入力軸411に対して一定の方向に一定の回転速度で回転が入力されると、差動機構部430を介して、出力軸412には逆方向に同じ回転速度で回転が伝達される。
さらに、釜回動モーター402により釜回動台130に対して、一定の方向に一定の回動角度で回動が入力されると、回動連動部440により、支持枠431は、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の半分の回動角度で回動動作が伝達される。
支持枠431が釜回動台130の半分の回動角度で回動を行うと、差動機構部430により、入力軸411に対して出力軸412には、支持枠431と同じ方向にその回動角度の二倍の回転角度変化を生じることとなる。
つまり、入力軸411に対して出力軸412には、釜回動台130と同じ方向に釜回動台130の回動角度と同じ回転角度変化を付与することができる。従って、釜回動台130の回動時に、出力軸412は釜回動台130に対して角度変化を生じないこととなる。
このため、釜回動台130の上で、釜機構800の釜801が回転駆動している状態において、釜回動台130の回動を行っても、出力軸412には釜機構800の回動と同じ角度変化が付与されるので、回動動作を行う釜回動台130上の釜機構800に対して、回動動作を行わない場所に釜駆動モーター401を設置しても、釜回動台130の回動時に釜回動台130上の釜機構800に入力される回転動作に位相差が発生しない構造となっている。
上記回動連動部440の動作を回動角度を具体的に定めた簡単な例によりに説明する。
釜回動台130が反時計方向に180度回転すると、支軸442に固定された大歯車443と小歯車444は、釜回動台130と共に中心線Cを中心に反時計方向に180度回転する。さらに、固定歯車441により、大歯車443と小歯車444は、支軸442回りに反時計方向に180度回転する。
そして、小歯車444が釜回動台130と共に中心線Cを中心に反時計方向に180度回転すると、小歯車444と噛み合っている従動歯車445は、中心線Cを中心に反時計方向に180度回転する。
また、小歯車444が支軸442回りに反時計方向に180度回転すると、小歯車444と従動歯車445とは歯数が1:2のため、従動歯車445は、中心線Cを中心に時計方向に90度回転する。
この結果、従動歯車445には、反時計方向に180度の回転と、時計方向に90度の回転を合計した、反時計方向に90度の回転が生じる。
従動歯車445は支持枠431に固定されており、支持枠431も反時計方向に90度回転する。支持枠431が反時計方向に90度回転すると、第二のかさ歯車433は、伝達かさ歯車435の回転分(自身の時計方向に90度)と支持枠431の回転分(反時計方向に90度)の合計である、反時計方向に180度回転する。第二のかさ歯車433は出力軸412に固定されているため、出力軸412も反時計方向に180度回転する。
図2に示すように、出力軸412に固定された出力スプロケット416と、釜機構800の入力スプロケット822とは、タイミングルト417で掛け渡されている。
しかし、釜回動台130が反時計方向に180度回転すると、出力軸412も反時計方向に180度回転する。このため、釜回動台130の回転に伴い、入力スプロケット822に回転が生じないので、釜機構に位相差が発生しない。
[釜機構]
図10は釜機構800の平面図、図11、図12はそれぞれ釜機構800の一部の構成を省略した図7と異なる方向から見た斜視図である。
図2、図7、図8、図10〜図12に示すように、釜機構800は、釜回動台130の搭載板131の上面に搭載されている。この釜機構800は、一定方向に連続的に回転を行う外釜802とボビンを格納する内釜803とからなる水平釜としての釜801と、差動伝達機構400からのトルクを外釜802に伝達するトルク伝達機構810と、釜軸811を介して外釜802を回転可能に支持する釜土台804と、当該釜土台804に設けられ、内釜803に設けられた凸部803aが嵌合して内釜803の回転を規制する回り止め805と、針棒12の上下動と同じ周期で内釜803に当接して回り止め805と内釜の凸部803aとに上糸の抜ける隙間を形成するオープナー806と、オープナー806を作動させるオープナー作動部820と、釜土台804に搭載され、下糸の切断を行うメス機構830と、釜土台804の内部に潤滑油を供給する給油機構840とを備えている。
[釜機構:釜]
釜801の内釜803は、上部が開放された有底の略筒状体であり、内底面の中心にはボビンをはめ込む軸部が立設されており、当該ボビンを格納する機能を有している。
外釜802も上部が開放された有底の略筒状体であり、その内部に内釜803を格納保持する。この外釜802は、内釜803を同心の状態を保持すると共に、当該内釜803に対して回転可能に結合されている。また、外釜802の底面の中心には、後述する釜軸811が垂下した状態で固定装備されている。そして、釜軸811は、Z軸方向に沿った状態で回転可能に釜土台804に支持され、釜土台804はネジ止めにより釜回動台130の搭載板131の上面に固定装備されている。
外釜802は、釜軸811から一定方向にトルクが入力され、針上下動の二倍の速度で回転が行われるようになっている。そして、外釜802に設けられた剣先が二回転に一回の割合で縫い針11から上糸を捕捉するようになっている。
外釜802は、内釜803の外周に取り付けられ、内釜803に摺接しつつ垂直な中心線回りに一定方向の連続的な全回転を行う。
一方、内釜803は、外釜802と供に回転を生じないように、外周上部に上方に突出した凸部803aを備え、当該凸部803aが回転方向の両側に迫る回り止め805に嵌合している。なお、嵌合部としては凸部803aのように突出する形状に限らず、例えば凹状とし、回り止め805を凸状にして嵌合させても良い。
[釜機構:オープナー作動部]
オープナー作動部820は、釜土台804を上下に貫通し、Z軸方向に並行な状態で回転可能に支持されたオープナー軸821と、オープナー軸821の下端部に固定装備された入力スプロケット822と、オープナー軸821の上端部において当該オープナー軸821の回転中心線から偏心した位置に設けられた偏心軸823と、偏心軸823に一端部が連結されたクランクロッド824と、オープナー806を保持すると共にクランクロッド824の他端部に連結された回動腕825とを備えている。
入力スプロケット822は、前述したように、差動伝達機構400の出力スプロケット416からタイミングベルト417を介してトルクが入力される。この入力スプロケット822は、出力スプロケット416よりも径が小さく、針棒12の上下動と同じ回転速度で入力スプロケット822が回転を行うように回転が増速されてトルクが入力される。
また、入力スプロケット822の近傍には図示しないテンションローラが併設されている。釜土台804は長穴を介してネジ止めにより釜回動台130の搭載板131の上面に固定装備されており、ネジを緩めることで位置調節を行い、釜801の位置調節を可能としている。この釜801の位置調節により、入力スプロケット822と出力スプロケット416との間に掛け渡されたタイミングベルト417が緩まぬよう、テンションローラがタイミングベルト417に常時押しつけられて、ベルトに張力を付与している。
回動腕825は、釜土台804の上部において、Z軸回りに回動可能に支持されており、その回動腕825の一端部がクランクロッド824の他端部に連結されている。クランクロッド824は前述したように、その一端部が偏心軸823に連結され、周回運動が付与されるので、その他端部では回動腕825をオープナー軸821の回転と同じ周期で回動させることができる。
従って、回動腕825に固定装備されたオープナー806もその先端部が回動腕825と共に往復回動を行うこととなる。オープナー806はその回動動作により、内釜803の外周上部からその半径方向外側に延出された係止突起803bに接触し、外釜802の回転時に内釜803の凸部803aと回り止め805とが密着する部位を引き離し、上糸の通過を可能としている。
[釜機構:トルク伝達機構]
トルク伝達機構810は、外釜802の底面中心に固定装備された釜回転軸としての釜軸811と、オープナー軸821の中間に固定装備された主動歯車812と、釜軸811に固定装備された従動歯車813とから構成されている。
主動歯車812と従動歯車813の歯数の比率は2:1であり、オープナー軸821から釜軸811には二倍速で回転が伝達される。つまり、釜801の外釜802は、縫い針の上下動の回数に対して二倍の速度で回転が行われる。
なお、このトルク伝達機構810では歯車機構を採用しているが、トルク伝達可能なあらゆる種類の伝達機構を用いることが可能である。例えば、ベルト機構を用いても良い。その場合、釜駆動モーター401を逆回転で駆動させるか、出力スプロケット416と入力スプロケット822との間のトルク伝達をタイミングベルト417に替えて歯車機構を用いることが望ましい。
[釜機構:給油機構]
図13(A)は給油機構840の水平方向の断面図、図13(B)は給油機構840の垂直方向の断面図である。
給油機構840は、釜土台804に設けられた潤滑油を貯留する図示しないオイルタンクと、オープナー軸821の中間位置に形成された回転部841と、釜土台804内周と回転部841の切り欠け部841aとにより形成された油供給空間としてのポンプ室844と、ポンプ室844の上部と下部に装着されるオイルシール845、846と、ポンプ室844に連通する潤滑油の導入口843と、ポンプ室844に連通する潤滑油の排出口842と、回転部841の外周に当接して往復運動を行うプランジャ847とを備えており、これらによりプランジャポンプ型の給油ポンプが構成されている。
回転部841の切り欠け部841aは、回転部841の片側が切り欠かれて楕円状に形成されている。また、導入口843はチューブを介してオイルタンクに接続されている。また、排出口842は、チューブを介して釜軸811や釜レース面に接続されている。
オープナー軸821は、上方から見ると反時計方向に回転し、導入口843に負圧が発生し、その負圧によって吸引力が発生し、オイルタンク内から潤滑油が吸引される。ポンプ室内に吸引された潤滑油は、オープナー軸821の回転とプランジャ847の作用によって、釜軸や釜レース面に潤滑油を供給する。
なお、この給油機構840では、プランジャポンプを例示したが、回転駆動源を用いることができるいずれの形式のポンプを使用しても良い。
[釜機構:メス機構]
メス機構830は、固定メス831を固定保持するメス土台832と、固定メス831との協働により上糸及び下糸を切断する動メス833と、動メス833を保持するメス保持腕834と、メス保持腕834をZ軸回りに回動可能とするメス支軸835と、メス保持腕834に回動の動力を付与するカムとしての外周カム836と、メス支軸835の下端部に設けられ、外周カム836から回動の動力が入力されるメス駆動腕837と、外周カム836からメス駆動腕837への動力の入力の接続と切断とを切り替えるメス駆動用のエアシリンダ838と、エアシリンダ838の切り替え動作を伝達する伝達腕839とを備えている。
メス保持腕834は、釜801の上方で往復の回動を行い、動メス833と固定メス831とで上糸及び下糸の切断を行う。
このメス保持腕834の往復回動の動力は、メス支軸835を介してメス駆動腕837から入力される。
メス駆動腕837は、その回動端部にコロ837aを保持しており、当該コロ837aを外周カム836の外周に当接させることで、外周カム836の外周形状に応じて回動動作が入力される。
外周カム836は、オープナー軸821の下部に固定装備され、オープナー軸821と共に回転を行う。そして、その外周の一部は、回転中心からの距離が大きくなっており、当該部位からコロ837aを介してメス駆動腕837に回動動作が付与される。
このように、メス機構830は、糸切り動作の動力をオープナー軸821から得ている。
一方、オープナー軸821は、縫製中は連続して一定方向に回転を行っているので、外周カム836も同様に連続的に回転を行う。従って、メス機構830では、縫製中は、メス駆動用のエアシリンダ838を制御して、伝達腕839を介してコロ837aが外周カム836に接触しない位置まで退避させておき、縫製終了時などの糸切り実行時にエアシリンダ838を作動させてコロ837aを外周カム836に当接させて、糸切りを実行している。
[ミシンの制御系:制御装置]
図14はミシン100の制御系を示したブロック図である。ミシン100は、上述した各部、各部材の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置110を備えている。そして、制御装置110は、縫製における動作制御を行うためのプログラムが格納されたROM112と、演算処理の作業領域地となるRAM113と、縫製データを記憶する記憶手段としての不揮発性のデータメモリ114と、ROM112内のプログラムを実行するCPU111とを備えている。
また、CPU111は、図示しないインターフェイスを介してミシンモーター駆動回路21a、X軸モーター駆動回路102e、Y軸モーター駆動回路102f、釜駆動モーター駆動回路401a、釜回動モーター駆動回路402a、針回動モーター駆動回路32aと接続され、これらを介して、さらに、ミシンモーター21、X軸モーター102c、Y軸モーター102d、釜駆動モーター401、釜回動モーター402、針回動モーター32のそれぞれに接続され、各モーター21,102c,102d,401,402,32の駆動を制御する。
また、ミシンモーター21は、図示しないエンコーダを備えており、その検出角度がCPU111に出力される。
また、上記各モーター102c,102d,401,402,32はステッピングモーターまたはサーボモータであり、これらの図示しない原点検索手段がCPU111に接続され、その出力からCPU111は各モーターの原点位置を認識することができる。
さらに、CPU111は、インターフェイスを介して、釜機構800のメス駆動用エアシリンダ838を作動させる電磁弁838aの開閉を切り替える駆動回路838bと接続され、当該駆動回路838bを介して電磁弁838aの制御を行う。
データメモリ114に格納されている縫製データには、所定の縫製パターンを縫製するための一針ごとのX軸モーター102c及びY軸モーター102dの動作量が順番に記憶されており、CPU111は、縫製の際には、一針ごとにX軸モーター102c及びY軸モーター102dを駆動する動作制御を行う。
また、制御装置110は、縫製時には、ミシンモーター21と釜駆動モーター401とが、針棒12の上下動周期と釜801の回転周期とが一致するよう同期制御を実施する。このため、ミシンモーター21と釜駆動モーター401とには、それぞれ図示を省略したエンコーダが併設されている。
[ヒッチステッチ回避制御]
また、CPU111は、上記縫製データに基づく縫製制御の実行に伴い、ヒッチステッチ回避制御を実行する。図15は、X−Y平面上において、針棒の中心線Cの位置から釜801の回転中心線の位置に向かう基準線P(図2参照)の方向を基準(270°)とした
場合に、ヒッチステッチが発生する縫い方向を斜線のエリアHで示した説明図である。即ち、図示のように、針棒中心線Cの位置から釜801に向かう方向に対してθ1からθ2の角度範囲内に向かって運針を行うと、ヒッチステッチが発生する。かかるヒッチステッチの発生する方向は、釜の種類やその他の諸条件により変動するので、ミシンごとに試し縫い等を行って得られた角度θ1、θ2の数値を特定しても良い。これらθ1、θ2の値は予めデータメモリ114内に登録されている。
そして、CPU111は、縫製時に縫製データの一針ごとのX軸モーター102c及びY軸モーター102dの動作量を読み込むと、当該各動作量から次の運針の縫い方向を算出し、現在の釜801の位置を基準に算出した縫い方向がθ1からθ2の角度範囲内か否かを判定する。そして、範囲内の時には、針落ちが行われる前に、θ1からθ2の角度範囲から外れる角度まで針回動モーター32及び釜回動モーター402を同期的に駆動し、針棒12及び釜土台804を中心線C回りに回動させる。また、縫い方向がθ1からθ2の角度範囲外の場合には、現在の針棒12及び釜土台804の回動位置を維持する。
上記ヒッチステッチ回避制御を縫製データの全針について実施することにより、縫製パターン全体においてヒッチステッチの発生を回避することが可能である。
即ち、この制御装置110は縫い制御手段として機能するものである。
図16は上記ヒッチステッチ回避制御のフローチャートである。これに基づいてヒッチステッチ回避制御を具体的に説明する。
まず、縫製時において、CPU111は、縫製データからX軸方向及びY軸方向の移動量の読み込みと現在の釜801の中心線Cを中心とする角度の記憶の読み込みを行う(ステップS1)。
そして、中心線Cの位置と釜801の中心位置とを結ぶ基準線Pに対する縫い方向の角度θ0を算出する(ステップS3)。
さらに、CPU111は、算出した縫い方向の角度θ0がθ1からθ2の角度範囲内か否かを判定する(ステップS5)。
そして、角度範囲外の場合にはそのまま処理を終了して針落ちを行い、角度範囲内の時には、正逆いずれの方向に釜801を回動させるべきかを判定する(ステップS7)。
即ち、θ1−θ0の絶対値がθ2−θ0の絶対値よりも小さいか否かを判定し、θ1−θ0の絶対値が小さい場合には、当該値にマージンとなる角度αを加算した角度で釜801及び針棒12の逆方向の回動を行う(ステップS9)。
また、θ2−θ0の絶対値が小さい場合には、当該値にマージンとなる角度αを加算した角度で釜801及び針棒12の正方向の回動を行う(ステップS11)。
なお、マージンとなる角度αは任意に設定可能とすることが望ましく、その設定値はデータメモリ114内に記憶される。なお、このαも絶対値である。
さらに、CPU111は、次回のヒッチステッチ角度領域判定のために、回動を行った後の釜801の中心線回りの角度を記憶する。
そして、ヒッチステッチ回避制御を終了する。なお、かかる制御は、毎針の針落ちの前に実施される。
なお、上記制御にあっては、釜回動モーター402の原点検索を行った後、制御動作量を逐次記憶することにより中心線C回りの釜801の角度を常に把握することが可能であるが、釜回動台130或いは針棒回動台31に角度センサを設け、その検出により釜801の角度を取得しても良い。
[針棒回動制御]
また、CPU111は、上記縫製データに基づく縫製制御の実行に伴い、針棒回動制御を実行する。なお、この針棒回動制御は、上記ヒッチステッチ回避制御と同時には行われず、予めいずれか一方を指定することにより選択的に実行されるものである。
図17は、ミシン100における上糸経路を示す説明図である。ミシン100は、糸調子器151から天秤142、第一糸案内152、第二糸案内153、針棒糸案内154を介して縫い針11の目穴111に挿通されている。
上糸UはZ撚り(糸の一端から他端側に向かって時計回りに螺旋を描くように撚られている糸)のものが広く普及しており、このZ撚りの上糸Uの場合、図18(A)に示すように、縫い針11の目穴111の右内壁に接した状態の場合には天秤142の上下動による撚り戻しが生じて縫い目に悪影響を与える。一方、図18(B)に示すように、縫い針11の目穴111の左内壁に接した状態の場合には天秤142の上下動による撚りの変化が小さく、撚り戻しが生じにくい。
従って、運針の際には、図18(B)の状態を維持することが望ましい。この状態変化は、布送りが行われる方向により決まるので、針棒回動制御では、次の運針の縫製データの一針ごとのX軸モーター102c及びY軸モーター102dの動作量を読み込んで、布地の移動方向を算出し、当該布地の移動方向に対応して図18(B)の状態となる向きに針棒を回動させる制御を行うものである。
図19に示すように、縫い針11に対して針棒糸案内154が右側に位置する場合に、針棒糸案内154から供給される上糸Uは目穴111の正面を向く方の端部側から挿入され、布地に至る。従って、この状態において、縫い方向が左側(布地の移動方向が右側)の場合には図18(A)の状態が発生し、縫い方向が右側(布地の移動方向が左側)の場合には図18(B)の状態とすることが可能である。なお、図19の矢印は布移動方向を示している。
つまり、制御装置110は、縫い針11に対して針棒糸案内154が、次の運針における縫い方向下流側(布移動方向上流側)に位置する向きとなるように針回動モーター32の制御を行う。換言すると、求められた次の針落ちの布移動方向の180°反対側に針棒糸
案内154が位置する向きに針棒12を回動させる。なお、針棒12は、天秤142の上死点である針棒角度約60°(針棒上死点を0°とする)よりも前に回動が完了するタイ
ミングで回動が行われる。
これにより、制御装置110は、「追従制御部」としての制御を実行する。
針棒回動動作は、正方向と逆方向(図15参照)のいずれでも行うことができるが、直前の針棒12の向きに対して次の針棒12の向きが少なくなる方向を選択して回動が行われる。つまり、制御装置110は、「選択制御部」としての制御を実行する。
また、釜801についても針棒12と同じ向きに回動させる必要があるので、針棒12の回動量と等しくなるように針回動モーター32と同じタイミングで釜回動モーター402を制御する。つまり、制御装置110は「同期制御部」としての制御を実行する。
なお、上糸Uは、図17に示すように、糸調子器151から第二糸案内153までは経路が一定であるため、針棒12の回動量が大きくなると、針棒12に巻付きを生じ、摩擦により糸張力が変化して縫い目の形成状態も変化してしまう。
従って、上記針棒回動制御を行う際に、繰り返される回動角度の累計が予め定められた基準位置から予め定めた最大回動角度を超える場合には、前述した選択制御部による正逆の回動方向の選択に拘わらず、最大回動角度を超えないように正逆何れかの回動方向を選択する制御を実行する。つまり、制御装置110は「規制制御部」としての制御を実行する。
ここで、基準位置は前述した図18における0°の方向に縫い目が形成される方向(180°の方向に針棒糸案内154が位置する向き)とする。
また、最大回動角度は例えば、270°の方向に縫い目が形成される方向(90°の方向に針棒糸案内154が位置する向き)とするが、上糸Uと針棒12との摩擦の関係によっては増減させても良い。
上記の例により、針棒回動制御を実行する場合の動作例を図20に示す。この図では、四角模様縫いを行う場合を例示しており、0°、90°、180°、270°の方向の順番で縫い目の形成が行われる。なお、この図において、実線矢印は縫い方向(縫い目の形成される方向)、破線矢印は布送り方向(布地の移動方向)を示しており、布地の送り方向は、縫い方向とは逆の方向となる。
制御装置110は、この四角模様縫いの縫製データを読み込んで、最初の縫い方向が0°と算出されると、布送り方向は180°となるので、針棒12に対して針棒糸案内154が180°の方向に位置する向き(基準位置)として縫製を開始する。なお、各辺について縫い方向は一定であるが、制御装置110は、毎針ごとに縫いの方向の算出を行い、針棒12の向きを決定している。
そして、角部にさしかかり、次の運針方向が90°である場合には、布送り方向は270°となるので、針棒12に対して針棒糸案内154が270°の方向に位置する向きとなるように回動が行われる。この時の回動方向は、正方向であれば90°、逆方向であれば270°なので、正方向が選択される。
そして、次の角部にさしかかり、次の運針方向が180°である場合には、布送り方向は0°となるので、針棒12に対して針棒糸案内154が0°の方向に位置する向きとなるように回動が行われる。この時の回動方向も、正方向であれば90°、逆方向であれば270°なので、正方向が選択される。
そして、次の角部にさしかかり、次の運針方向が270°である場合には、布送り方向は90°となるので、針棒12に対して針棒糸案内154が90°の方向に位置する向きとなるように回動が行われる。
この時の回動方向は、正方向であれば90°、逆方向であれば270°となるが、正方向に回動を行うと、基準位置からの累計の最大回動角度が270°に達するので、選択制御部としての制御に拘わらず、逆方向の回動が行われる。つまり、基準位置から逆方向に90°の位置目で回動が行われるので、上糸Uの針棒12に対する絡みの発生を防止することができる。
図21は上記針棒回動制御のフローチャートである。これに基づいて針棒回動制御を具体的に説明する。なお、以下の説明において、針棒12の向きとは、針棒12を中心とする針棒糸案内154の位置する方向を示すものとする。前述したように、この針棒の向きと縫い方向とが一致するように制御することを目的とする。
まず、縫製時において、CPU111は、縫製データからX軸方向及びY軸方向の移動量の読み込みと現在の針棒の向きである現在位置θn、これまでの針棒12の回動角度の合計である累計角度θaの読み込みを行う(ステップS21)。
そして、中心線Cの位置と釜801の中心位置とを結ぶ基準線Pに対する縫い方向θ0(目的位置)を算出する(ステップS23)。
さらに、CPU111は、回動直前の針棒12の向きである現在位置θnから縫い方向θ0への回動は逆方向の回動よりも正方向の回動の方が回動角度量が小さいか判定する(ステップS25)。
正方向の方が回動角度量が小さい場合には、これまでの累積角度θaに現在位置θnから縫い方向θ0へ正方向の回動角度を加えた場合に、最大値である270°以上となるか否かを判定する(ステップS27)。
超えない場合には、現在位置θnから縫い方向θ0に正方向の回動動作を行う(ステップS29)。
超える場合には、現在位置θnから縫い方向θ0に逆方向の回動動作を行う(ステップS31)。
また、ステップS25において、現在位置θnから縫い方向θ0への回動は逆方向の回動の方が正方向の回動よりも回動角度量が小さいと判定した場合には、CPU111は、さらに、これまでの累積角度θaに現在位置θnから縫い方向θ0への逆方向の回動角度を加えた場合に、最大値である-270°よりさらに逆方向側の角度となるか否かを判定する(ステップS33)。
-270°よりさらに逆方向側の角度とならない場合には、現在位置θnから縫い方向θ0に逆方向の回動動作を行う(ステップS35)。
-270°よりさらに逆方向側の角度となる場合には、現在位置θnから縫い方向θ0に正方向の回動動作を行う(ステップS37)。
上記それぞれの針棒12の回動動作が行われた後には、その動作量に加えて累積角度θaを更新する。また、現在位置θnを縫い方向θ0の角度に更新する(ステップS39)。
そして、一針分の処理を終了する。
[実施形態の作用効果]
ミシン100は、縫い針11を保持する針棒12と、針棒12を上下動可能に支持すると共にミシンフレーム101により針棒12と共に当該針棒12に平行な所定の中心線C回りに回動可能に支持され針棒回動台31と、針棒12に連結され、当該針棒12に上下動動作を付与する針上下動機構20と、針棒12の回動動作の駆動源となる針回動モーター32と、上糸Uの引き上げを行う天秤142と、を備え、針棒回動台31は、針棒12の上端部側の一部分を上下動可能に支持し、針上下動機構20は、針棒回動台31による針棒12の支持する一部分とは重合しないより下側の他の位置で回動可能に連結されている。
より具体的には、針棒回動台31は、針棒12の上部を上下動可能に支持すると共に、針上下動機構20は、針棒回動台31の下方で針棒12に回動可能に連結されている。
このように、針棒回動台31が針棒12の上端部側の一部分を支持し、針上下動機構20は針棒回動台31とは重合しない他の位置で針棒12に連結されているので、例えば、針棒回動台が針棒の上端部と下端部を回動可動に支持し、針棒回動台による支持位置の間で針棒と針上下動機構とが連結されている構造に比べて、針棒回動台を上下方向に小型化することができ、これによる軽量化を図ることができるので、高速回動動作が容易となり、縫製の高速化も可能となる。
これにより、ヒッチステッチ回避制御における針棒回動動作も高速で行うことができ、高速でヒッチステッチのない縫い品質の高い縫製を行うことが可能となる。
また、針棒回動制御における針棒回動動作も高速で行うことができ、高速で糸の撚り戻りの生じない縫い品質の高い縫製を行うことが可能となる。
また、針棒回動台31を上下方向に小型化した場合でも、その上端部と下端部の両方がミシンアーム部101aに固定装備されたメタル軸受け311,312により支持され、針棒12は針棒メタル軸受け121,122で上下二箇所が支持されているので、針棒12がZ軸方向に平行な状態を強固に維持することができ、良好な針上下動を行うことが可能である。
また、ミシン100は、針棒12が当該針棒12を中心とする直径方向の両外側に向かって突出した一対の凸部123a,123bを有し、針棒回動台31がそれぞれの凸部123a,123bが嵌合し滑動する上下方向に沿った二つのガイド穴314a,314aを備えている。
これにより、針棒回動台31に対する針棒12の回動動作の追従性を高めることができ、良好な回動動作を行うことが可能となる。さらに、上記構造により、針棒回動台31に対する針棒12の上下動動作も良好に行うことが可能となり、高速な縫製を安定的に行うことが可能となる。
また、ミシン100は、上糸Uを捕捉し、回転動作により上糸Uを下糸に絡める釜801と、釜801を搭載し、ミシンフレーム101に対して針棒12と同じ中心線C回りに回動可能に支持された釜回動台130と、釜回動台130の回動動作の駆動源となる釜回動モーター402とを備え、針棒回動台31と釜回動台130のそれぞれの回動角度が一致するように針回動モーター32と釜回動モーター402とを制御する同期制御部としての制御装置110を備えている。
このように、釜801の回動を可能とする構成とした場合には、針棒12の回動時に釜801も回動させることにより、釜801が向きの変わった縫い針12から円滑に上糸を捕捉することができ、縫製動作を確実且つ円滑に行うことが可能となる。
また、ミシン100は、回動中心線Cに垂直な平面上(X方向、Y方向に沿った水平一平面上)において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構としての布移動機構120を備え、布移動機構120による被縫製物の移動を行う場合に、針棒12が被縫製物の移動方向に対応する向きで追従的に回動を行うように針回動モーター32を制御する追従制御部としての制御装置110を備えている。
このような針棒12の追従回動制御を行うことで、天秤142による上糸Uの引き上げの際に、縫い針11の目穴111から引き出される上糸Uの摺動による撚り戻しの発生を低減することでき、糸のほつれ状態やほどけ状態を防止し、より良好な縫いを行うことが可能となる。
また、ミシン100は、制御装置110が、針棒12の回動角度について一定の基準位置(例えば0°)を定め、針棒12の回動を行う際に、布移動方向に対応する目標位置となる回動角度が現在位置となる回動角度からの回動角度量が少なくなるように正逆何れかの回動方向を選択する選択制御部としての制御と、複数回の回動動作を行う際に、その回動角度の累計が基準位置から予め定めた最大回動角度(例えば±270°)を超える場合には選択制御部としての制御に基づく正逆の回動方向の選択に拘わらず、最大回動角度を超えない正逆何れかの回動方向を選択する規制制御部としての制御とを行う構成としている。
なお、上記実施形態では最大回動角度を±270°としたが、±330°±200°等、±180°〜±360°の範囲等、上糸Uが針棒12に絡みつかない範囲で種々設定可能である。
上記選択制御部としての制御により、少ない回動角度が選択されるので、回動動作の高速化を図ることができる。
その一方で、針棒12の回動動作が繰り返された結果、基準位置からの針棒12の回動角度が増加すると、供給される上糸Uが針棒12に絡みつく可能性を生じるが、規制制御部としての制御により、最大回動角度超えないよう制御するので、絡みつきの問題を解消し、良好な縫製動作を行うことが可能となる。
また、制御装置110が、布移動機構102による被縫製物の移動を行う前に、当該被縫製物の移動方向が予め定められたヒッチステッチの発生する範囲に含まれる場合に当該範囲から外れるように、釜回動モーター402を駆動して、中心線C回りに釜土台804及び針棒12を回動させるヒッチステッチ回避制御を行うことにより、ヒッチステッチの発生を効果的に回避することができ、縫い全体に渡ってパーフェクトステッチを実現することで縫い品質を飛躍的に向上することが可能となる。
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施の形態として、固有形状の針落ち穴を形成するメス針を縫い針として使用するミシン100Aについて図22〜図31に基づいて説明する。
図22は、ミシン100Aにおける上糸経路を示す説明図である。このミシン100Aは、先端が扁平に形成されたメス針11Aとメス針用の針棒糸案内154Aとを針棒12の下端部に備える点が前述したミシン100と異なっている。また、ミシン100Aの制御装置110(図14参照)は後述するメス針11Aに固有の縫製動作制御を行うことを特徴としている。
そして、このミシン100Aの上記以外の構成についてはミシン100と同一である。以下の説明では、主にミシン100Aがミシン100と異なる点について説明するものとする。
上記ミシン100Aは、皮革等からなる被縫製物に対して、メス針11Aにより、いわゆるサドル(セリエ)ステッチ風縫いを行うことに好適なミシンである。
なお、サドルステッチは、メスで事前にメス穴を空けて、手縫いで2本の糸を交互に逆方向に縫う縫い方であり、上記ミシン100Aにより形成されるサドルステッチ風の縫いは、外観が本来のサドルステッチに近似した本縫いミシンの縫い目である。
このミシン100Aは、糸調子器151から天秤142、第一糸案内152、第二糸案内153、針棒糸案内154Aを介してメス針11Aの目穴111Aに至る上糸Uの糸経路を有している。
さらに、図23及び図24に示すように、針棒12の下端部には、針棒糸案内154Aが固定装備されており、針棒12の回動時には、メス針11Aと針棒糸案内154Aとが共に中心線C回りに回動を行う。
さらに、針棒糸案内154Aは中心線Cを中心とする半円弧状の上糸案内孔を備えており、針棒12の回動時にも針棒糸案内154Aからメス針11Aに渡る上糸Uを好適に案内することが出来るようになっている。
なお、針棒糸案内154Aの上糸案内孔が中心線Cに対して天秤14側に位置する場合のメス針11Aの向き(中心線C回りの回動角度)をメス針11Aの基準位置とする。即ち、上記図23及び図24はメス針11Aが基準位置にある状態を示している。
[メス針の構造]
図25(A)は基準位置にあるメス針11Aの正面図、図25(B)は基準位置にあるメス針11Aの側面図、図26は基準位置にあるメス針11Aの平面図を示している。
メス針11Aはその先端部112Aが扁平且つ尖鋭に形成された平メス型のメス針である。そして、図26に示すように、メス針11Aが基準位置にある状態で目穴111AがY軸方向に沿った状態となり、扁平な先端部112AはX軸方向に沿った状態となる。
このように先端部112Aが目穴111Aに直交するメス針11Aを横メスという。
また、メス針11Aは、基準位置にある状態で、目穴111Aの一端部が作業者側を向いており(作業者はミシン面部の正面に位置する)、目穴111Aの他端部は平坦にえぐられている。当該目穴111Aの一端部側を正面側113A、目穴111Aの他端部側をえぐり側114Aとすると、針棒糸案内154Aの上糸案内孔を通された上糸Uは、メス針11Aの目穴111Aの正面側113Aからえぐり側114Aに向かって挿入される。
なお、メス針11Aに対してえぐり側114Aに釜801が配置されており、メス針11Aのえぐり側114Aから釜801が上糸ループの捕捉を行う。
[サドルステッチ風縫いの縫製制御]
次に、図27に示す長方形の被縫製物の外縁部に沿って長方形状の縫製パターンに従ってサドルステッチ風縫いを行う場合に制御装置110が実施する縫製制御について説明する。
図27に示す被縫製物に対して、メス針11Aから天秤142側に向かう方向を0°とする場合、0°、90°、180°、270°、360°の方向の順番で縫い目の形成が行われる。なお、この図27において、実線矢印は縫い方向(縫い目の形成される方向)、破線矢印は布送り方向(布地の移動方向)を示しており、布地の送り方向は、縫い方向とは逆の方向となる。
[縫製パターン]
即ち、制御装置110のデータメモリ114内の縫製データには、布移動機構102が、被縫製物を次の(1)〜(5)の順番で移動させる為の一針ごとの移動量データが定められている。
(1)縫い開始位置Sから長方形状の縫製パターンの長辺の1/2の距離だけ180°の方向に被縫製物を移動
(2)長方形状の縫製パターンの短辺の距離だけ270°の方向に被縫製物を移動
(3)長方形状の縫製パターンの長辺の距離だけ0°の方向に被縫製物を移動
(4)長方形状の縫製パターンの短辺の距離だけ90°の方向に被縫製物を移動
(5)長方形状の縫製パターンの長辺の1/2の距離だけ180°の方向に被縫製物を移動
ここで、針棒回動機構と釜回動台等を有するミシン100Aに、メス針11Aを装着し、サドルステッチ風縫製による縫い目を形成した場合を図28、図31に示す。また、針棒回動機構と釜回動台等を備えない、従来のミシンにメス針11Aを装着して、同様な縫い目を形成したものを図29に、サドルステッチ風縫製による不適切な縫い目の例を図30に示す。
図28に示すサドルステッチ風縫製による縫い目は、縫い目形成方向Fに対するメス針11Aが形成する略長穴状の針落ち穴hの傾斜角度が一定状態を維持して形成され、上糸Uの結節Ukは、その縫い始め端部Uk1が針落ち穴hの前端部h1に、その縫い終わり端部Uk2が次の針落ち穴hの後端部h2に渡るように形成される。
また、図31に示すサドルステッチ風縫製による縫い目は、左側上部から縫製を開始し、縫い方向が直角に曲がる右側上部の最初の針落ち点で、メス針11Aを90°回動して、サドルステッチ風縫い目が形成される。
なお、図29に示すように、針棒回動機構と釜回動台等を備えない、従来ミシンの布移動機構によれば、メス針11Aが形成する針落ち穴hは、一定方向にのみ形成されるだけである。このため、針棒回動機構を備えない従来ミシンは、図31に示す、サドルステッチ風縫製による縫い目を形成することができない。
また、図30に示すように、サドルステッチ風縫製では、針落ち穴hに対して想定された縫い目が形成されない場合がある。この縫いにおける不適正な縫製時には、縫い目形成方向Fに対するメス針11Aが形成する略長穴状の針落ち穴hの傾斜角度が一定状態を維持して形成されるが、上糸Uの結節Ukは、その縫い始め端部Uk1が針落ち穴hの後端部h2に、その縫い終わり端部Uk2が次の針落ち穴hの前端部h1に渡るように形成される。
上記不適正な縫製の発生要因は、メス針11Aの回動角度、第二糸案内153から針棒糸案内154Aを介してメス針11Aの目穴111Aを抜けるまでの上糸Uの経路状態、縫い目形成方向などが関連しているものと考えられる。
これに対して、図31に示すように、メス針11Aの針落ち穴hは、中心線c1を中心に対称となる形状である。このため、縫い目形成方向Fに対する針落ち穴hの傾斜角度をα°とすると、中心線C回りの針棒回動角度はα°とα±180°の二通りを選択することができる(+:時計方向、−:反時計方向とする)。
従って、縫製データ中に定められた複数の縫い目形成方向について、当該各縫い目形成方向に対して針落ち穴hが一定の傾斜角度となる針棒回動角度α°とα±180°とについて試し縫い等を行うことにより、適正な縫製が行われるいずれか一方の針棒回動角度を事前に選択し、当該針棒回動角度を縫製データ中に記録する。
なお、α°とα±180°のいずれも適正な縫製が可能である場合には、いずれを縫製データ中に設定しても良いが、メス針11Aの基準位置から±180°の範囲内となる方を選択することが望ましい。
また、α±180°において適正な縫製が可能である場合には、α+180°とα-180°の内のメス針11Aの基準位置から±180°の範囲内となる方を選択することが望ましい。
また、縫製データに中心線C回りの針棒回動角を設定する場合には、一針ごとに中心線C回りの針棒回動角を定めても良いが、図31に示した縫製パターンのように(1)〜(5)の区間ごとに縫い目形成方向Fが一定となる場合には、(1)〜(5)の区間ごとに中心線C回りの針棒回動角を設定しても良い。
サドルステッチ縫いを行うための縫製データの具体的な設定について図31の例により説明する。
この縫製データでは、縫い目形成方向に対する針落ち穴hの傾斜角度を+45°とするサドルステッチ縫いを行うことを前提としている。
なお、メス針11Aに対する天秤14側の方向を0°とし、メス針11Aが基準位置にある場合(針棒糸案内154が天秤14側にある状態)を回動角度0°とする。
(1)及び(5)の区間では縫い目形成方向が0°、メス針11Aの回動角度は+45°(=α°)が選択されている。
(2)の区間では縫い目形成方向が+90°、メス針11Aの回動角度は-45°(=α-180°)が選択されている。
(3)の区間では縫い目形成方向が+180°、メス針11Aの回動角度は+45°(=α-180°)に設定されている。
(4)の区間では縫い目形成方向が+270°、メス針11Aの回動角度は-45°(=α°)に設定されている。
制御装置110は、上記縫製データにより、区間(1)では、針棒回動モーター32及び釜回動モーター402を制御してメス針11Aを+45°の回動角度とし、布移動機構102を制御して縫い開始位置Sから0°の方向に向かって縫い目形成を行わせる。
区間(2)では、針棒回動モーター32及び釜回動モーター402を制御してメス針11Aを-45°の回動角度とし、布移動機構102を制御して区間(1)の終端から+90°の方向に向かって縫い目形成を行わせる。
区間(3)では、針棒回動モーター32及び釜回動モーター402を制御してメス針11Aを+45°の回動角度とし、布移動機構102を制御して区間(2)の終端から+180°の方向に向かって縫い目形成を行わせる。
区間(4)では、針棒回動モーター32及び釜回動モーター402を制御してメス針11Aを-45°の回動角度とし、布移動機構102を制御して区間(3)の終端から+270°の方向に向かって縫い目形成を行わせる。
区間(5)では、針棒回動モーター32及び釜回動モーター402を制御してメス針11Aを+45°の回動角度とし、布移動機構102を制御して区間(4)の終端から縫い開始位置Sまで0°の方向に向かって縫い目形成を行わせる。
これにより、長方形状の縫製パターンの各辺に対して傾斜角+45°となる針落ち穴が一定のピッチで形成されると共に、図28と図31に示したサドルステッチ風縫いの適正な縫製が行われる。
[平メス型のメス針の他の例]
平メス型のメス針は、目穴111Aと先端部112Aとが直交する上記のメス針11Aに限られない。例えば、図32及び図33に示すメス針11Aaは、その目穴111Aaとえぐり部114Aaと針棒糸案内154Aの位置関係はメス針11Aと同一だが、扁平な先端部112Aaが目穴111Aaと平行に形成されている(いわゆる縦メス)。
また、図34及び図35に示すメス針11Abは、その目穴111Abとえぐり部114Abと針棒糸案内154Aの位置関係はメス針11Aと同一だが、扁平な先端部112Abが目穴111Abに対して+45°傾斜した方向に形成されている(いわゆる斜めメス)。
また、図36及び図37に示すメス針11Acは、その目穴111Acとえぐり部114Acと針棒糸案内154Aの位置関係はメス針11Aと同一だが、扁平な先端部112Acが目穴111Acに対して-45°傾斜した方向に形成されている(いわゆる斜めメス)。
これらのメス針11Aa〜11Acにより前述したサドルステッチ風縫いを行う場合も、メス針11Aと同様である。
例えば、図31の縫製パターンについてメス針11Aaでサドルステッチ風縫いを行う場合には、針棒糸案内154Aが天秤14側を向いた状態を基準位置とした場合、区間(1)及び(5)ではメス針11Aaの回動角度は-45°又は-45±180°が適宜選択され、区間(2)ではメス針11Aaの回動角度は+45°又は+45±180°が適宜選択され、区間(3)ではメス針11Aaの回動角度は-45°又は-45±180°が適宜選択され、区間(4)ではメス針11Aaの回動角度は+45°又は+45±180°が適宜選択される。
また、図31の縫製パターンについてメス針11Abでサドルステッチ風縫いを行う場合には、区間(1)及び(5)ではメス針11Abの回動角度は+90°又は+90±180°が適宜選択され、区間(2)ではメス針11Abの回動角度は0°又は±180°が適宜選択され、区間(3)ではメス針11Abの回動角度は+90°又は+90±180°が適宜選択され、区間(4)ではメス針11Abの回動角度は0°又は±180°が適宜選択される。
また、図31の縫製パターンについてメス針11Acでサドルステッチ風縫いを行う場合には、区間(1)及び(5)ではメス針11Acの回動角度は0°又は±180°が適宜選択され、区間(2)ではメス針11Acの回動角度は+90°又は+90±180°が適宜選択され、区間(3)ではメス針11Acの回動角度は0°又は±180°が適宜選択され、区間(4)ではメス針11Acの回動角度は+90°又は+90±180°が適宜選択される。
[平メス型以外のメス針の他の例]
メス針は先端部の形状が三角錐、四角錐などの他角錐型のものがあり、これらのメス針もミシン100Aと同様に使用することが可能である。
メス針の先端部の形状が正n角錐である場合、縫い方向に対して一定の傾斜角度となる針落ち穴を形成することが可能な針棒回動角度は、α°、(α+1×(n/360))°、(α+2×(n/360))°、…、(α+(n-1)×(n/360))°のn通りの中から最も適正な縫製を行うことが可能な角度を選択して縫製データに設定することが出来る。
[縫製パターンの他の例]
また、縫製パターンは図31に示すように、縫い目形成方向Fに対する針落ち穴の傾斜角度が異なるものであってもよいことは勿論である。
例えば、図38に示すように、針落ち穴hが縫い目形成方向Fに対して直交し、上糸Uの結節Ukは縫い目形成方向Fに平行に形成されるものや、図39に示すように、針落ち穴hが縫い目形成方向Fに対して平行に形成され、上糸Uの結節Ukも縫い目形成方向Fに平行に形成されるものであっても良い。
[第二の実施形態の技術的効果]
以上のように、ミシン100Aでは、ミシン100におけるヒッチステッチ回避制御及び針棒回動制御を除いてミシン100と同一の技術的効果を得ることが可能である。
さらに、ミシン100Aは、縫い針としてメス針を装備することにより、縫い方向が変化する縫製パターンにおいて、それぞれの縫い方向に対応した向きで針落ち穴を形成することができ、メス穴形成作業と縫い目形成作業とを分離せずに同時進行による効率的なサドルステッチ縫い作業を行うことが可能である。また、ミシン100Aは、メス針を少なくとも360°の範囲で回動させることが出来、メス針の交換を行うことなく、縫い目形成方向に対する針落ち穴の傾斜角度を任意の角度で形成することが可能である。
さらに、平メス型のメス針11A(又はメス針11Aa〜11Ac)を使用する場合には、ある針棒回動角度による針落ち穴の傾斜角度と±180°回動させたときの針落ち穴の傾斜角度とが等しくなるので、所定の縫い方向に対する針棒回動角度の設定を角度α°とα±180°とで選択することが出来、より適正な縫製を実現させることが可能となる。
[動力伝達機構の他の例]
なお、前述したミシン100では、動力伝達機構400の釜駆動モーター401を釜回動台130に搭載せずに支持フレーム105に固定装備した場合を例示したが、上記の例に限らず、釜駆動モーター401を釜回動台130に搭載しても良い。
このようなミシン100Cについて図40及び図41に基づいて説明する。この図40はミシン100Cの動力伝達機構400C及び釜機構800の中心線C及びY−Z平面に沿った断面図である。
以下の説明では、ミシン100Cについてミシン100と異なる点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略するものとする。
このミシン100Cはいわゆる一本針ミシンである。そして、ミシン100Cの動力伝達機構400Cは、前述した差動伝達機構400と異なり、支持枠431を含む差動機構部430と回動連動部440を有しておらず、釜駆動モーター401を釜回動台130に直接搭載している。即ち、この伝達機構400Cは、差動機構を有しておらず、単なる動力伝達機構である。
上記釜駆動モーター401は、その出力軸が中心線C上に配置されると共に上方に向けられた状態で釜回動台130に固定保持されている。
一方、動力伝達機構400Cの回転力伝達部410Cは、釜回動台130において中心線C上となる位置に回転可能に支持された出力軸412Cと、当該出力軸412Cに固定装備された出力スプロケット416と、当該出力スプロケット416と釜機構800の入力スプロケット822との間に掛け渡されたタイミングベルト417とから構成されており、回転力伝達部410Cの出力軸412Cと釜駆動モーター401の出力軸とはカップリング419Cで連結されている。
また、動力伝達機構400Cは差動伝達機構400と同じ回動力伝達部420を備えており、釜駆動モーター401と共に釜回動台130を中心線C回りに回動させる。
かかる回動時に、釜駆動モーター401はその出力軸回りに回動を行うので、釜駆動モーター401の回転駆動時において、出力スプロケット416から釜機構800の入力スプロケット822に伝達される回転の位相の変動は生じない。従って、釜801の回動時に、位相のズレが発生せず、安定的に上糸の捕捉を行うことができる。
また、釜回動台130の中心線C上に釜駆動モーター401を配置し、搭載板131上の釜機構800にトルクを入力する構成としたので、釜機構800の回動時に釜801に位相のずれが生じないことから、差動機構部430を不要とすることが可能となり、部品点数の低減、構造の簡易化を図ることが可能となる。
一方、釜回動台130に釜駆動モーター401を搭載するので、釜駆動台130全体の重量の増加を生じる可能性があるが、この動力伝達機構400Cでは、釜駆動台130の回動の中心線C上に釜駆動モーター401の出力軸が位置すると共に当該出力軸が中心線Cに沿うように配置しているので、モーターを横向きとする場合や中心線から外れて配置する場合に比べて、釜駆動台130の慣性モーメントを最小限とすることができ、釜回動モーター402に必要となる出力を低減し、モーターの小型化を図ることが可能となる。
また、慣性モーメントの低減により、回動動作の高速化、高精度化を図ることが可能となる。
なお、釜回動台130に釜駆動モーター401を搭載する場合、釜駆動モーター401の配線を釜回動台130の外部に引き出さねばならないが、配線の捻れなどが発生しないように、釜駆動台130の回動角度の範囲に制限を設ける必要がある。この場合、およそ360°の範囲以下とすることで大きな捻れの発生を回避できるが、当該範囲で回動可能で
あれば、いずれの方向にも縫いを進めることができ、多様な縫製が可能である。
また、釜駆動台130の回動角度の範囲に制限を設けないで、図40に示すように、スリップリング106Cを搭載しても良い。
スリップリング106Cは、内部に摺動接点を備え、回転運動を行う対象物と非回転の外部との電気的接続を維持するものであり、釜回動台130に搭載された釜駆動モータ401をこのスリップリング106Cを介して外部の電源と接続することにより、釜回動台130の回動範囲を無制限とすることができる。
なお、この図40では、回動力伝達部420の従動スプロケット422を釜回動台130の下部に取り付けて、釜回動台130の下部から回動力を付与しているが、図22の例と同様に、従動スプロケット422を釜回動台130の上部に取り付けても良い。
[その他]
なお、上記針棒回動機構30の針回動モーター32と差動伝達機構400の釜回動モーター402とは一つのモーターにより共通化を図っても良い。例えば、釜回動モーター402の動力を、ミシンフレーム101内に配設した軸、歯車機構、ベルト機構又はこれらの組み合わせからなる周知の動力伝達機構で針棒回動台31に伝達し、回動させる構成としても良い。また、逆に、針回動モーター32の動力で差動伝達機構400の釜回動台130側に周知の動力伝達機構で伝達する構成としても良い。具体的には、ミシンフレーム101に、ミシンアーム部101aからミシンベッド部101bに至るZ軸方向に沿った回転軸を設け、当該回転軸に単独のモーター(針回動モーター32又は釜回動モーター402)で回動動力を付与すると共に、当該回転軸に主動スプロケット33,421を装備する構成としても良いし、当該回転軸から主動スプロケット33,421にベルト機構や歯車機構を介して回動動作を伝達しても良い。
また、ミシンモーター21から周知の動力伝達機構を介して入力軸411にトルク伝達を行い、ミシンモーター21と釜駆動モーター401とを一つのモーターで共用する構成としても良い。
また、針棒回動台31では、外部に貫通するガイド穴314a,314aにより針棒12の凸部123,123をガイドする構成としてるが、外部に貫通しないガイド溝により針棒12の凸部123,123をガイドする構成としても良い。
また、上記のミシン100では、針棒の回動について、規制制御部としての制御を行い、釜801の回動角度は針棒12と等しくなるように制御しているが、釜801の回動動作については、釜801と縫い針12とが同じ位置になれば良く、累積の回動角度量について制限を設けず、選択制御部としての制御により、正逆の街道方向について、回動角度量が少なくなる方を選択するのみとしても良い。下糸は上糸のように絡みつきの問題を生じないからである。
また、追従制御部としての制御では、布移動方向に対して相対的な針棒12の向きが一定となるように維持する制御を行っているが、相互の対応関係は1:1出なくとも良い。
例えば、布移動方向0〜360°を複数の範囲に分けて、それぞれの範囲ごとに針棒12の向きを一定の角度とするようにしても良い。例えば、布移動方向を60°ごとの六つの範囲とし、次の運針の布移動方向が何れかの範囲に属する場合には、その範囲について定められた一定の向きに針棒12を回動させるように制御しても良い。
即ち、布移動方向に対して相対的にある程度の角度範囲内に針棒12が向いていれば、上糸Uの撚り戻りの発生を十分に防止することは可能である。
11 縫い針
11A,11Aa,11Ab,11Ac メス針(縫い針)
111 目穴
12 針棒
123 凸部
20 針上下動機構
21 ミシンモーター
30 針棒回動機構
31 針棒回動台
314 ガイド板
314a ガイド穴
32 針回動モーター
100,100A,100C ミシン
101 ミシンフレーム
101a ミシンアーム部
102 布移動機構(移動機構)
102a 保持枠
102c X軸モーター
102d Y軸モーター
103 布載置板(針板)
110 制御装置(同期制御部、追従制御部、選択制御部、規制制御部)
130 釜回動台
142 天秤
401 釜駆動モーター
402 釜回動モーター
800,800B 釜機構
801 釜
C 中心線

Claims (4)

  1. 縫い針を保持する針棒と、
    前記針棒を上下動可能に支持すると共に、前記針棒と共に当該針棒の中心線回りに回動可能に支持された針棒回動台と、
    前記針棒に連結され、当該針棒に上下動動作を付与する針上下動機構と、
    前記針棒の回動動作の駆動源となる針回動モーターと、
    上糸の引き上げを行う天秤と、
    を備えるミシンにおいて、
    前記針棒回動台は、前記針棒の上部を上下動可能に支持すると共に、
    前記針上下動機構は、前記針棒回動台の下方で前記針棒に回動可能に連結されており、
    前記針棒は、当該針棒を中心とする直径方向の両外側に向かって突出した一対の凸部を有し、
    前記一対の凸部は前記針棒に固定されて当該針棒と共に回動し、
    前記針棒回動台は、それぞれの前記凸部が嵌合し滑動する上下方向に沿った二つのガイド穴又はガイド溝を備えることを特徴とするミシン。
  2. 上糸を捕捉し、回転動作により上糸を下糸に絡める釜と、
    前記釜を搭載し、ミシンフレームに対して前記針棒と同じ中心線回りに回動可能に支持された釜回動台と、
    前記釜回動台の回動動作の駆動源となる釜回動モーターとを備え、
    前記針棒回動台と前記釜回動台のそれぞれの回動角度が一致するように前記針回動モーターと釜回動モーターとを制御する同期制御部を備えることを特徴とする請求項1記載のミシン。
  3. 水平一平面上において任意の方向に被縫製物を移動可能な移動機構を備え、
    前記移動機構による被縫製物の移動を行う場合に、前記針棒が前記被縫製物の移動方向に対応する向きで追従的に回動を行うように前記針回動モーターを制御する追従制御部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
  4. 前記針棒の回動角度について一定の基準位置を定め、
    前記針棒の回動を行う際に、その目標位置が現在位置からの回動角度が少なくなるように正逆何れかの回動方向を選択する選択制御部と、
    複数回の回動動作を行う際に、その回動角度の累計が前記基準位置から予め定めた最大回動角度を超える場合には前記選択制御部による選択に拘わらず、最大回動角度を超えない正逆何れかの回動方向を選択する規制制御部とを備えることを特徴とする請求項3記載のミシン。
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