JP2013162859A - ミシン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縫い針11を保持して上下動を行う針棒12と、回動動作により上糸Uを下糸Dに絡める釜13と、針棒の上下動と釜の回動動作の駆動源となるミシンモータ21と、布保持部81により被縫製物Cを水平面に沿って任意の移動方向に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる移動機構80と、縫製データに基づいて移動機構を制御する制御部90と縫い針を挿通する挿通部113を備えると共に布保持部に保持された被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえ110とを備え、中押さえは、布保持部が保持する被縫製物の直上位置で固定保持又は停止可能であって、挿通部の少なくとも下端部については下方に向かって広がる開口形状としたことを特徴とする。
【選択図】図21
Description
布地を上方から押さえることなく縫製を行うと、縫い針が布地を貫通して上昇する際に、布地も上方に引き上げられてしまう。この結果、布地の下側で上糸のループが十分に形成されないことにより釜の剣先が上糸ループを捕捉できずに目飛びを生じるという問題を生じる。
このため、上記移動機構を備えるミシンでは、図32に示すように、縫い針11が挿通される挿通穴201を有し、縫い針11に追従して上下動を行う布押さえとしての中押さえ200を備えている。この中押さえ200は、布地Cの上面付近で上下動を行うと共に縫い針11よりも短いストロークで若干遅れて上下動を行うため、縫い針11が上昇する際には、中押さえ200が布地Cを上方から押さえて布地Cの上昇を防ぎ、上糸ループを良好に形成することを可能としている(例えば、特許文献1参照)。
この問題の対策として、中押さえ200の下端部を布地Cの上面に近接させた状態で上下動しないように停止させて縫製を行うことも考えられる。これにより、上糸Uの引き上げの際にも布地Cが上方に引き上げられないために下糸Dの過剰な繰り出しは回避することができる。
しかしながら、この方法では、布地Dが送られると、中押さえ200の挿通穴201の下端部の角部201aにおいて、図34に示すように、上糸Uがほぼ直角に屈曲した状態となり、当該角部201aにおいて上糸Uに大きな抵抗が生じて天秤による引き上げが不十分となり、縫い目の糸締まりが低下して縫い品質の低下が生じるという新たな問題が生じる。
さらに、中押さえの挿通部の少なくとも下端部側を下方に広がる開口形状としたので、下端部の角部が鈍角となり、縫い針から被縫製物に渡る上糸が挿通部の下端の角部に接触した場合でも、上糸の引き上げに対する抵抗を低減することができ、良好な糸締まりを実現できる。
また、挿通部の下端部側を下方に広がる開口形状としたのでその下端部の内部半径を拡大することができ、当該内部半径よりも被縫製物の移動量が小さければ、挿通部の下端角部に対する上糸の接触を回避することができ、上糸の引き上げに対する抵抗のさらなる低減が可能である。
また、本発明は、前記挿通部の下端部の内径を前記縫い針の中心線から前記移動機構における一針での最大送り量以上とすることが好ましい。
また、3[mm]を超える送り量で移動した場合には挿通部の下端角部に上糸が接触するが、当該角部は鈍角であるため、上糸の引き上げに対する抵抗を低減することができ、良好な糸締まりを実現できる。
さらに、中押さえの挿通部の貫通穴の内部半径が全体的に一定であって縫い針の中心線から移動機構における一針での最大送り量以上としたので、縫い針から被縫製物に渡る上糸が挿通部の下端角部へ接触することを回避することができ、上糸の引き上げに対する抵抗の十分な低減が可能である。
さらに、中押さえの挿通部の内部半径が全体的に一定であって縫い針の中心線から3[mm]以上としたので、移動機構による被縫製物の送り量がそれ以下の場合には挿通部の下端角部に対する上糸の接触を回避することができ、上糸の引き上げに対する角部の接触抵抗を低減することが可能である。
また、3[mm]を超える送り量で移動した場合には挿通部の下端角部に上糸が接触するが、縫い針から被縫製物に渡る上糸の挿通部の下端角部における屈曲角が十分に鈍角となるので、上糸の引き上げに対する抵抗を低減することができ、良好な糸締まりを実現できる。
そして、上記効果に加えて、縫い針から被縫製物に渡る上糸の中押さえの挿通部の下端部の角部に対する接触を回避することを可能とし又は接触しても上糸の屈曲角度を十分に鈍角にすることができ、上糸の引き上げに対する抵抗を低減して、良好な糸締まりによる縫い品質の向上を図ることが可能である。
本発明の実施の形態を図1〜図27に基づいて説明する。
本実施形態として以下に記載するミシン100は、いわゆる電子サイクルミシンであり、縫製を行う被縫製物である布地を保持する布保持部としての保持枠により布地を移動させて任意の位置に針落ちを行う移動機構を有し、保持枠に保持される布地に所定の縫製データに基づく縫製パターンを形成することを可能とする。
また、このミシン100では、保持枠による布地の移動方向に応じて適宜、下糸の糸寄せ又は針棒の回動を選択的に実施し、ヒッチステッチの発生を防止することを可能としている。
ここで、後述する縫い針11が上下動を行う方向をZ軸方向又は上下方向とし、これと直交する一の方向をX軸方向又は左右方向とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向又は前後方向と定義する。なお、以下の説明における「前」とはミシン100に対して縫製を行う作業者が位置する方向、「左」はミシン100の前側にいる作業者がミシン100と向き合った状態における左手側、「右」はミシン100の前側にいる作業者がミシン100と向き合った状態における右手側を示すものとする。
図1に示すように、ミシン100は、外形がX軸方向から見て略コ字状を呈するミシンフレーム101を備えている。このミシンフレーム101は、ミシン100の上部をなしY軸方向に延びるミシンアーム部101aと、ミシン100の下部をなしY軸方向に延びるミシンベッド部101bと、ミシンアーム部101aとミシンベッド部101bとを連結する縦胴部101cとを有している。
図2はミシンアーム部101aの前端部の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、針上下動機構20は、上記ミシンアーム部101a内においてY軸方向に沿った状態で回転可能に支持された上軸22と、上軸22の一端部から回転力を付与する図23に示すミシンモータ21と、上軸22の他端部に設けられた針棒クランク23と、針棒クランク23の回転中心に対する偏心位置に一端部が連結されたクランクロッド24と、クランクロッド24の針棒12側の端部を上下方向に沿って往復するよう案内するガイド25とを備えている。
上軸22はミシンモータ21の出力軸に直結されて回転駆動が行われ、上軸22の回転は針棒クランク23とクランクロッド24とにより上下の往復動作に変換されて針棒12に伝達される。
そして、クランクロッド24に対して針棒12側の面に設けられた角コマ27は、後述する針棒抱き331,332を介して針棒12と係合し、針棒12に上下動を伝達する。また、クランクロッド24に対して針棒12とは逆側の面に設けられた角コマ28はミシンアーム部101aの壁面にZ軸方向に沿って形成された溝状のガイド25に嵌合している。即ち、角コマ28は、溝状のガイド25に滑動可能な状態で嵌合しているため、クランクロッド24の針棒12側の端部をX軸方向の移動を規制しつつもZ軸方向に沿ってのみ往復可能としている。
これにより、針棒12には、ミシンモータ21の回転に同期した上下方向の往復動作が付与される。
本実施形態たるミシン100では、釜として半回転釜を採用する場合を例示する。半回転釜は、大釜の内側で針棒12の上下動と同期して往復回動を行う中釜と、中釜の内側に収納されたボビン及びボビンケースと、中釜に往復回動を付与するドライバと、上軸22に形成されたクランク部に一端部が連結されたクランクロッドと、クランクロッドの他端部に連結されたアーム部を有する往復回動軸と、往復回動軸により増速されて往復回動を行う下軸とを備え、当該下軸はドライバを保持して当該ドライバを介して中釜を往復回動させるようになっている。また、前述したミシンモータ21は針棒12の上下動と釜13の回動動作の駆動源となり、縫い針11の上下動と釜13の回動により上糸を下糸に絡める。なお、半回転釜の構造・構成は周知であるため、詳細な説明は省略する。
針棒回動機構30は、ミシンアーム部101aの前端部においてZ軸周り(上下軸心周りとも称する)に回動可能に支持されると共に針棒12を上下動可能に支持する針棒台31と、針棒台31を通じて針棒12に対してZ軸周りの回動動作を付与する動作系統とを主な構成とする。
図3は針棒台31の斜視図であり、図4はその上端部、図5は下端部を示す斜視図である。
なお、符号325と326は、それぞれ座金であり、軸受け323,324の外輪と針棒台31側との滑動性を保持するためのものである。
そして、針棒12には後述する図6及び図7に示す針棒抱き331が固定装備されており、当該針棒抱き331には、針棒12を中心とする半径方向外側に向かって延出した矩形の突起部331aが形成されている。かかる突起部331aは、ガイド板330の背面側から外側に向かってスリット330aに挿入され、針棒12の上下動の際には、スリット330a内を突起部331aも上下動を行う。そして、突起部331aの横幅はスリット330aの幅とほぼ等しく設定されており、これにより、針棒台31がZ軸回りに回動動作を行うと、針棒12も供回りを行うようになっている。
前述したように、クランクロッド24の下端部であって針棒12側の面には角コマ27がY軸回りで回動可能に軸支されている。
そして、針棒12には、二つの針棒抱き331,332が上下に並んで所定の隙間をもって抱き締め固定されている。そして、上下に並んだ針棒抱き331と針棒抱き332との間には、座金333,334を介して角コマ27を介在させている。
各座金333,334は摺動性の良好な素材から形成されており、角コマ27の摺動面は滑動性に優れている。また、各座金333,334は、それぞれの針棒抱き331,332に突出装備されたピンが嵌合しており、針棒12の回動時には各針棒抱き331,332と共に回動動作を行うようになっている。
また、前述したように、上側の針棒抱き331には、Y軸方向前側に突起部331aが突設されており、ガイド板330により針棒台31と共にZ軸回りに針棒12を回動させる。その際、針棒12と共に各針棒抱き331,332は回動を行うが、クランクロッド24に支持された角コマ27は、座金333,334を介して針棒抱き331,332の間に位置した状態を維持することができ、針棒回動時であっても、ミシンモータ21からの上下動の動力を針棒12に伝達することが可能となっている。
針棒回動機構30の動作系統は、駆動源となる針棒回動モータ34と、針棒回動モータ34により作動する針棒カム部材35と、針棒カム部材35から動作付与が行われる従動体としてのコロ36と、コロ36から針棒12に回動動作を伝達する伝達部材とを主に備えている。この伝達部材は、コロ腕361とリンク体362とアーム部材327から構成される。
従動スプロケット343は、その回動軸345を介して針棒カム部材35と連結されており、従動スプロケット343の回動は針棒カム部材35に伝達される。
すなわち、針棒カム部材35は、針棒12に回動動作を付与しない不動区間352,353と針棒12に回動動作を付与する動作区間354とが連続して形成されたカム部を有している。
しかしながら、モータは一般に、図12に示すように、駆動開始直後は加速度が小さく、低速状態V1が一定期間継続し、その後、加速して高速状態V2に至るという速度特性を有している。従って、針棒回動モータ34によって針棒カム部材35に回動動作を付与すると、針棒回動モータ34の駆動開始時には低速で針棒カム部材35が回動を行うこととなり、針棒12の回動動作が間に合わなくなる場合がある。
従って、針棒カム部材35のカム部351に不動区間352又は353を設け、当該不動区間352又は353をコロ36の待機位置とし、針棒回動モータ34の駆動開始から高速状態に至るまでの間は、コロ36が不動区間352又は353に沿って相対移動し、針棒回動モータ34が十分に加速した時に、コロ36が動作区間354に沿って相対移動するように、針棒カム部材35は設計されている。これにより、針棒回動モータ34の高速域のみを利用して針棒12の回動動作を行うことが可能となり、高速で針棒12の回動動作を行うことが可能となっている。
そして、制御装置90は、針棒カム部材35の不動区間352又は353で駆動を開始すると共に十分に加速してから動作区間354で針棒に回動動作を付与するように針棒回動モータ34を制御する。
なお、針棒カム部材35には、原点センサ355が併設されている。原点センサ355が、回動軸345に固定された検出子346を検知して、コロ36を針棒カム部材35のカム部351における基準の待機位置に位置決めすることができる。つまり、この基準の待機位置にコロ36が位置する状態から針棒カム部材35を回動させることにより、針棒回動モータ34が高速に達した時に丁度、コロ36を動作区間354に到達させることができ、針回動を高速で行うことが可能となっている。
また、このコロ腕361は、二本の腕部361a,361bの基端部側がミシンアーム部101aの壁面に固定されたコロ腕台366に段ネジ363を支軸として回動可能に支持されている。
また、コロ腕361は、コロ36が常時、針棒カム部材35のカム部351に当接するようにねじりコイルバネ364により付勢されている。
また、コロ腕361には、針棒カム部材35が余分に回動してコロ36がカム部351から脱落した場合に、ねじりコイルバネ364により過剰に回動しないように、ストッパ365が併設されている。
そして、針棒回動モータ34の駆動開始時の低速状態では、コロ36は針棒カム部材35の不動区間352に沿って相対的に移動しているため、針棒12及び針棒台31には回動動作が付与されず、針棒回動モータ34が徐々に加速して高速に達すると、図10に示すように、コロ36は針棒カム部材35の動作区間354に到達して相対移動を行う。これにより、コロ腕361が回動し、リンク体362を介して針棒台31を回動させる。これにより、針棒12も回動を行う。
即ち、次回の針棒12の回動動作を行う際には、この停止位置S2が回動の開始位置としての待機位置なって逆方向に針棒カム部材35を回動させるため、動作区間354と不動区間353との境界位置K2から停止位置S2までの回動角度θ2をθ1と同じ角度とすることにより、コロ36が不動区間353から動作区間354に進入する時点で針棒回動モータ34が高速に達した状態とすることできる。
図14は糸寄せ機構50の平面図、図15は斜視図である。
糸寄せ機構50は、ミシンベッド部101bの内部であって針板14よりも下側に設けられ、糸寄せ部材51により下糸の糸寄せを行う。この糸寄せ機構50は、ボビンケースから針板14の針穴15に渡る下糸を寄せてその経路を変更する糸寄せ部材51と、当該糸寄せ部材51の糸寄せ動作の駆動源となる糸寄せ用モータ52と、糸寄せ用モータ52により作動する糸寄せカム部材53と、糸寄せカム部材53から動作付与が行われる従動体としてのコロ54と、コロ54から糸寄せ部材51に下糸の糸寄せ動作を伝達するリンク機構55とを主に備えている。リンク機構55は、コロ腕541と支軸542から構成される。
従動歯車523は、その回動軸524を介して糸寄せカム部材53と連結されており、従動歯車523の回動は糸寄せカム部材53に伝達される。
動作区間534は、一方の不動区間532との境界位置から徐々に拡径して他方の不動区間533との境界位置で当該不動区間533と同じ径に至るカム形状となっている。
すなわち、糸寄せカム部材53は、糸寄せ部材51に糸寄せ動作を付与しない不動区間532、533と、糸寄せ部材51に糸寄せ動作を付与する動作区間534とが連続して形成されたカム部531を有する。
従って、前述した針棒回動機構30と同様にして、糸寄せカム部材53のカム部531に不動区間532又は533を設け、当該不動区間532又は533をコロ54の待機位置とし、糸寄せ用モータ52が不動区間532又は533をコロ54が相対移動する期間を助走期間として十分に加速した後に、コロ54が動作区間534に沿って相対移動するように、糸寄せカム部材53は設計されている。これにより、糸寄せ用モータ52の高速域のみを利用して糸寄せ部材51の高速回動動作を行うことが可能となっている。
従って、一方の不動区間532は糸寄せカム部材53の往路の回動時における助走期間のために使用され、もう一方の不動区間533は糸寄せカム部材53の復路の回動時における助走期間のために使用される。
これにより、糸寄せ部材51の往路の回動と復路の回動のそれぞれを高速を行うことが可能となっている。
なお、この糸寄せカム部材53については、前述した針棒カム部材35のように、原点センサを図示していないが、この糸寄せ機構50にも、糸寄せカム部材53の基準の待機位置を検出する原点センサを設け、当該待機位置から糸寄せカム部材53の回動を開始させることにより糸寄せ用モータ52が丁度高速状態になる時に糸寄せカム部材53が回動動作を行うように構成しても良い。
また、このコロ腕541は、二本の腕部541a,541bの基端部側がモータ取り付け台521に設けられた支軸542により回動可能に支持されている。
また、コロ腕541は、コロ54が常時、糸寄せカム部材53のカム部531に当接するようにねじりコイルバネ543により付勢されている。
また、コロ腕541には、糸寄せカム部材53が余分に回動してコロ54がカム部531から脱落した場合に、ねじりコイルバネ543により過剰に回動しないように、ストッパ544が併設されている。
そして、糸寄せ用モータ52の駆動開始時の低速状態では、コロ54は糸寄せカム部材53の不動区間532に沿って相対的に移動しているため、糸寄せ部材51には回動動作が付与されず、糸寄せ用モータ52が徐々に加速して高速に達すると、コロ54は糸寄せカム部材53の動作区間534に到達して相対移動を行う。これにより、コロ腕541が回動し、糸寄せ部材51を回動させる。これにより、糸寄せ部材51往路の回動動作を行い、その先端部が針穴15の真下を通過して下糸を後方に寄せる動作を行う。
さらに、糸寄せ用モータ52は、コロ54が動作区間534を脱してもう一方の不動区間533内の所定の停止位置に到達するまで駆動を継続する。
さらに、糸寄せ用モータ52は、コロ54が動作区間534を脱して不動区間532内の当初の待避位置に到達するまで駆動を継続する。
すなわち、糸寄せカム部材53の不動区間532と533は、動作区間534を挟んでその両側にそれぞれ形成されている。そして、制御部としての制御装置90は、糸寄せカム部材53の不動区間532又は533で駆動を開始すると共に十分に加速してから動作区間534で糸寄せ部材51に糸寄せ動作を付与するように糸寄せ用モータ52を制御す
る。
また、糸寄せ部材51の往路の回動時の不動区間533におけるコロの停止位置S4は、糸寄せ部材51の復路の回動時の開始位置としての待機位置となるので、停止位置S4から不動区間533と動作区間534の境界位置K4までの回動角度θ4は上記回動角度θ3と同じ角度に設定することが望ましい。
図1に示すように、布移動機構(移動機構)80は、ミシンベッド部101bの上面において被縫製物を保持する保持枠(布保持部)81と、保持枠81を昇降可能に支持する支持アーム82と、支持アーム82を介して保持枠81をX軸方向に移動させる図23に示すX軸モータ83と、支持アーム82を介して保持枠81をY軸方向に移動させる図23に示すY軸モータ84とを備えている。布保持部とも称する保持枠81は、長方形状の枠体である図示省略の下板と布押え外枠から構成される。被縫製物(布)は位置決めして下板上に載置された後、上方より布押え外枠が下降して被縫製物を保持する。
布移動機構80は、かかる構成により、保持枠81を介して被縫製物をX−Y平面の任意の位置に移動位置決めすることができ、一針ごとに任意の位置に針落ちを行うことができ、自在な縫い目の形成が可能となっている。すなわち、移動機構とも称する布移動機構80は、被縫製物を水平面に沿って任意の位置に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる。
図18は糸調子装置70の断面図である。糸調子装置70は、上糸に糸張力を付与する糸調子器79と、糸調子器79による糸張力を可変調節する糸張力調節用アクチュエータとしての糸調子ソレノイド71とから主に構成される。
上記糸調子器79は、ミシンアーム部101aの右側面に設けられ、糸供給源から天秤に至る経路の上糸を挟持して糸張力の付与を行うものである。この糸調子器79は、上糸を挟む二枚の糸調子皿72,72と、これらの糸調子皿72,72が互いに接離するX軸方向にそって移動可能に支持する中空支軸73と、中空支軸73の内部を貫通して一方の糸調子皿72を他方の糸調子皿72に押圧することが可能な押圧軸74と、糸取りバネ75と、これらを格納保持する本体ケース76とを備えている。
そして、出力軸71aは、コイルバネ77に挿通された伝達軸78と結合されており、この伝達軸78は、出力軸71aを押し戻す方向に押圧するコイルバネ77に挿通されている。
従って、糸調子ソレノイド71の非通電時には、出力軸71aはコイルバネ77に押し戻され、押圧軸74を糸調子皿72の方向に押圧する押圧力が得られないので、二枚の糸調子皿72,72はフリーとなり、糸張力の付与が行われない。
また、糸調子ソレノイド71に通電を行うと、その電流値に応じた推力で出力軸71aが突出し、コイルバネ77に抗して伝達軸78が押圧軸74を介して一方の糸調子皿72を押圧し、当該押圧力に応じて二枚の糸調子皿72,72の間に介挿された上糸に張力を付与することができる。
なお、糸調子ソレノイド71の通電量は制御装置90により制御され、糸調子装置70において、任意の糸張力を上糸に付与することが可能となっている。
また、制御部としての制御装置90は、糸寄せを実行する運針又は当該運針を含む複数針数の運針の際に、算出した縫い方向が、A又はBの区分に属する場合、糸張力を低減調節するように糸張力調節用アクチュエータとしての糸調子ソレノイド71を制御する。
図19は中押さえ上下動機構120の概略構成図である。図示のように、中押さえ上下動機構120は、中押さえ110を下端部で保持すると共にミシンアーム部101a内において上下動可能に支持された中押さえ棒121と、中押さえ棒121を通じて中押さえ110を下方に押圧して挙動を安定させる押圧バネ134と、ミシンモータ21から動力を得て上軸22と同じ周期でY軸回りに往復回動を行う駆動軸122と、駆動軸122に軸支されてY軸回りに往復回動を行う駆動腕123と、駆動腕123の回動半径方向に延出された腕部123aに一端部が連結された駆動リンク124と、一端部がミシンアーム部101a内においてY軸回りに回動可能に支持されると共に長手方向中間部が駆動リンク124の他端部に連結された回動腕125と、回動腕125の他端部と中押さえ棒121に固定装備された棒抱き126とを連結する第一と第二の伝達リンク127,128と、第一の伝達リンク127の一端部と第二の伝達リンク128の一端部とがY軸回りに回動可能に連結されると共にこれらの連結部においてY軸回りに回動可能に装備された角コマ129と、角コマ129を滑動可能にガイドする直線状のガイド溝130aを有するガイド板130と、ガイド板130に回動動作を付与する高さ調節モータ131と、Y軸方向に沿った高さ調節モータ131の出力軸に軸支されると共に当該出力軸を中心とする回動半径方向外側に向かって延出された出力腕132と、出力腕132とガイド板130とを連結する連結リンク133とを主に備えている。
駆動腕123は、その腕部123aに沿って長穴123bが形成されており、駆動リンク124の一端部は締結ボルト124aにより当該長穴123bの任意の位置に連結可能となっている。長穴123bは、駆動腕123の回動半径にそって形成されているので、その連結位置を変えることで駆動軸122からの距離に比例して駆動リンク124に付与する往復動作量を調節することができる。そして、駆動リンク124の往復動作量は、中押さえ110に伝達される上下動の振幅にほぼ比例するので、長穴123bに対する駆動リンク124の一端部の連結位置を変えることで中押さえ110に伝達される上下動の振幅を調節することが可能となっている。
つまり、長穴123bが形成された駆動腕123の腕部123aと長穴123bの任意の位置に駆動リンク124の一端部を連結可能とする締結ボルト124aとにより、中押さえ110の上下動の振幅を調節する振幅調節部を構成している。
また、長穴123bは、駆動軸122の中心と駆動リンク124の一端部の回動中心とが同心となる位置まで形成されており、駆動軸122の中心と駆動リンク124の一端部の回動中心とが同心となるように駆動リンク124の一端部の位置調節を行うことにより、駆動リンク124から中押さえ110までの各部材に全く動作を付与しない停止状態とすることができる。つまり、これにより、中押さえ110を上下動させないで縫製を行うことが可能である。
前述したように、第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128とは互いの一端部がY軸回りに回動可能に連結されており、第一の伝達リンク127の他端部がY軸回りに回動可能な状態で回動腕125の他端部に連結されている。また、第二の伝達リンク128の他端部はY軸回りに回動可能に棒抱き126に連結されている。
第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128とは、相互の連結部において中折れを生じ得る構造となっているので、そのままの状態では回動腕125から棒抱き126に対して往復上下動を伝達することができないが、各リンク127と128の連結部には角コマ129が装備され、当該角コマ129はその挙動がガイド板130に形成されたガイド溝130aにより一定の直進方向に動作が規制されている。このため、ガイド板130が回動しないで定位置を維持している状態では、第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128はほぼ一定の屈曲角度を維持することができ、回動腕125から棒抱き126に対して往復上下動を伝達可能となっている。
また、図19(A)及び図19(B)に示すように、ガイド板130が回動すると、ガイド溝130aの傾斜角度が変動し、これにより、第一の伝達リンク127と第二の伝達リンク128の屈曲角度を変化させることが可能である。これにより、回動腕125の他端部と棒抱き126との距離を変えることができ、中押さえ棒121を通じて中押さえ110の高さを変えることが可能となっている。この高さ調節により、中押さえ110は、その上下動を行う範囲全体の高さを任意に変えることができる。
つまり、第一の伝達リンク127、第二の伝達リンク128、角コマ129、ガイド板130、出力腕132及び高さ調節モータ131は、中押さえ110の高さを調節する高さ調節部を構成している。
なお、被縫製物に対する中押さえ110の直上位置とは、図21に示すように、布保持部に保持された被縫製物(布)上面C1と、中押さえ110下端面(挿通部113の下端面113a)との間に、所定量の隙間Sがあることが望ましい。この隙間Sは、例えば0.1mm以上〜1.0mm以下でも好ましく、0.2mm以上〜0.8mm以下であればより好ましい。また、被縫製物に対する中押さえ110の直上位置とは、布保持部に保持された被縫製物(布)上面C1と、中押さえ110下端面(挿通部113の下端面113a)との間に隙間Sが無く、被縫製物上面C1と中押さえ110下端面とが接する程度でも良く、中押さえ110下端面が被縫製物上面C1を軽く押圧する状態でも良い。この軽く押圧する状態で、被縫製物の移動や、縫い目形成に問題が無ければよい。
図20は中押さえ110の斜視図、図21は一部を切り欠いた正面図である。図示のように、中押さえ110は、その上部に位置し、中押さえ棒121の下端部が嵌合する溝が形成された装着部111と、当該装着部111から針棒12側に屈曲した屈曲部112と、屈曲部112の下端部に設けられ、上下動を行う縫い針11が挿通される挿通部113とを備えている。
前述した中押さえ棒121は、針棒12よりも左方に位置しており、中押さえ110は、装着部111が中押さえ棒121の下端部に取り付けられ、屈曲部112が右方に延びている。これにより、挿通部113に対して縫い針11が挿入された状態となっている。
また、挿通部113は、針棒12に保持された縫い針11の中心線と同心となるように形成されている。すなわち、挿通部113は、縫い針の上下動を許容し、内径が一定の等径部115と、前記等径部に連続して形成され、下方に向かって広がる開口形状の拡径部116と、を有している。なお、「縫い針の上下動を許容」するとは、縫い針11をその周囲に隙間をもって挿入し、その上下動の妨げとならない状態を意味する。
中押さえ110の挿通部113において拡径部116の上端部から下端部まで拡径する形状としているので、中押さえ110を上下動させずにその下端部を布地Cに最近接した状態で縫製を行った場合でも、図22(A)に示すように、布移動機構80による布送りが行われた時に上糸Uが拡径部116の下端部における内側の縁の角部(以下、内側角部116aとする)に接触せず、天秤が上糸Uを引き上げる際に角部116aとの接触による抵抗が生じないことから良好な引き上げを可能とする。また、中押さえ110の下端部が布地Cに最近接しているので、布地Cが上糸Uに引き上げられることも防止され、下糸Dの過剰な繰り出しも防止され、上糸Uと下糸Dとが共に適宜な糸締まりで縫い目を形成して縫い品質の向上を図ることが可能となっている。なお、中押さえ110は、縫製時に縫い針の上昇や天秤による上糸の引き上げに伴う、(布保持部に保持された)被縫製物の浮き上がりを防止する。
また、布移動機構80において、X軸方向の最大送り量XmaxとY軸方向の最大送り量Ymaxとが別々に定められている場合には、それらを合成した送り量を布移動機構80の最大送り量とする。つまり、拡径部116の下端部の内部半径rは、次式のように、最大送り量XmaxとY軸方向の最大送り量Ymaxとを合成した値以上であって「合成した値+1mm」以下の大きさに設定することが望ましい。
r≧(Xmax2+Ymax2)1/2
図23はミシン100の制御系を示したブロック図である。ミシン100は、上述した各部、各部材の動作を制御するための制御部としての制御装置90を備えている。そして、制御装置90は、縫製における動作制御を行うためのプログラムが格納されたROM92と、演算処理の作業領域地となるRAM93と、縫製データを記憶する記憶手段としての不揮発性のデータメモリ94と、ROM92内のプログラムを実行するCPU91とを備えている。
また、ミシンモータ21は、図示しないエンコーダを備えており、その検出角度がCPU91に出力される。また、上記各モータ83,84,52,34はステッピングモータであり、これらの図示しない原点検索手段がCPU91に接続され、その出力からCPU91は各モータの原点位置を認識することができる。
上記CPU91は、上記縫製データに基づく縫製制御の実行に伴い、ヒッチステッチ回避制御を実行する。
布移動機構80により布を縫製データに応じて毎針ごとに任意の方向に移動する場合、その布送り方向、つまり縫目形成方向に応じて、縫い針11が布に刺さるときに縫い針11の目孔11aを通った上糸Uが縫い針11に絡む絡み方向が、図24(A)に示す左巻き方向となる場合と図24(B)に示す右巻き方向になる場合とがあり、これらの内のいずれになるかによって、パーフェクトステッチとなるかヒッチステッチとなるかが決定する。
また、図25(A)は釜13のボビンケースの角の部分から針板14の針穴15に下糸Dが渡っている状態を示す平面図であり、図25(B)はその正面図を示しているが、図示のように、下糸Dの経路に対し、縫い針11が左側Lと右側Rの何れに針落ちするかによっても、パーフェクトステッチになるかヒッチステッチになるかが決定する。
まず、Aの送り方向の角度範囲は、下糸Dがボビンから針穴15に向かう方向にほぼ一致するため、針穴15を通る下糸に対し、縫い針11が右側に落ちるか左側に落ちるかが不確定な領域で、パーフェクトステッチとヒッチステッチのいずれも発生し得る領域である。一方、この領域は、その送り方向により、縫い針11に対する上糸の絡み方向は一定なため、この要因には影響されない。
このように、ミシン100では、二つの要因が絡んでパーフェクトステッチとヒッチステッチのいずれになるかが決定し、また、それぞれの要因が不確定となる領域については縫い目の種類も不確定となる傾向を示す。
従って、ミシン100では、布移動機構80による送り方向の範囲を前述したA〜Dの四つに区分し、各区分の角度範囲をデータメモリ94に登録する。さらに、図27に示すように、A〜Dの各区分に応じて、糸寄せ機構50による糸寄せと針棒回動機構30による針棒回動のいずれを実行すべきかを記憶したテーブルデータをデータメモリに登録している。
制御部としての制御装置90は、縫製データに定められた針落ち位置又は被縫製物の移動量から、布移動機構80による各針落の際の被縫製物の移動方向を算出して、布の移動方向がA〜Dのいずれの区分に属するかを判定する。
そして、移動方向が予め定められた第一の角度範囲であるA又はBの場合には糸寄せ機構50による糸寄せを実行し、第二の角度範囲であるCの場合には針棒回動機構30による針棒の回動を実行し、第三の角度範囲であるDの場合には糸寄せ機構50による糸寄せと針棒回動機構30による針棒の回動を実行しない。
なお、制御部としての制御装置90は、縫製データに定められた針落ち位置又は被縫製物の移動量から、布移動機構80による各針落の際の被縫製物の移動方向を算出している。これに代えて、予め縫製データに第一の角度範囲、第二の角度範囲、第三の角度範囲であるとの角度範囲データを設定し、それらのデータに基づいて、制御装置90が針棒の回動や糸寄せの実行の有無を制御することも容易に考えられる。
すなわち、制御部としての制御装置90は、布移動機構80による各針落ちごとの被縫製物の移動方向が予め定められた第一の角度範囲であるA又はBの場合には糸寄せ機構50による糸寄せを実行し、移動方向が予め定められた第二の角度範囲であるCの場合には針棒回動機構30による針棒の回動を実行する。
なお、上軸角度は、ミシンモータ21に設けられたエンコーダの出力により得ることができる。
また、糸寄せ部材51の復路の回動は、上糸が釜により針心から最も遠ざかる上軸角度270°となる上糸開き角度で糸寄せ部材51の往路の回動が行われることが望ましい。従って、糸寄せ機構50の糸寄せ用モータ52は、糸寄せカム部材53の不動区間533から動作区間534に移行するタイミングと上糸開き角度とが一致するように駆動を開始するよう制御される。
糸寄せ部材51の回動動作は、往路復路共に短いタイミングでの動作が要求されるが、糸寄せ用モータ52は、不動区間532又は533で助走してから高速状態で動作区間534に至るため、糸寄せ部材51を高速で回動させることができ、短いタイミングでの動作の要求に十分に対応することが可能である。
中押さえ110は、通常、針棒12と同周期で上下動を行い、これにより、布地Cに刺さった縫い針11が上昇する際に布地Cを引き上げて上糸ループの捕捉ミスや下糸Dの締まりの悪化の発生を防止し、適正な縫いを可能とする。しかし、上糸U又は下糸Dの太さが被縫製物である布地Cの布質によっては、中押さえ110が上昇中であって天秤が上糸Uを引き上げたときに、布地Cを引っ張り上げてしまうことがあり、これにより糸締まりの悪化が生じる。
そのような場合には、中押さえ上下動機構120の駆動腕123の腕部123aに形成された長穴123bに沿って駆動リンク124の一端部の連結位置を駆動軸122の中心となるように位置調節を行い、締結ボルト124aにて固定する。これにより、まず、中押さえ110の上下動の振幅が0となり、縫製中でも中押さえ110は上下動を行わずに停止状態となる。
さらに、入力装置95から中押さえ110の高さの設定入力を行うと、制御部90は高さ調節モータ131を駆動して、中押さえ110の下端部が布地Cの上面に最近接する高さに設定する。
これらにより、中押さえ110はその下端部が、布地に最近接した状態で停止したまま縫製が行われる。
その結果、天秤による上糸Uの引き上げの際には布地Cの上昇が中押さえ110により抑えられる。また、上糸Uの引き上げの際に、中押さえ110の拡径部116の内側角部116aに上糸Uが接触しても鈍角であるために抵抗が低減されて良好に引き上げが行われ、上糸Uと下糸Dの双方が適度に締め付けられて糸締まりの良い縫製が行われる。
また、上糸Uの引き上げの際に、中押さえ110の拡径部116の内側角部116aに上糸Uが接触しない場合にはさらに上糸引き上げ時の抵抗が低減されて良好に引き上げが行われ、上糸Uと下糸Dの双方が適度に締め付けられて糸締まりの良い縫製が行われる。
以上のように、ミシン100では、毎針の縫い方向を求め、縫い方向に応じて選択的に糸寄せ或いは針棒回動動作を実行する。このため、ヒッチステッチの発生原因が、下糸に対する針落ち位置を要因として発生するヒッチステッチのみならず、縫い針11に対する上糸の絡み方向によるヒッチステッチをも防止することができ、ヒッチステッチの発生をより効果的に低減することが可能となる。また、複数の要因に対処することから、垂直釜、水平釜、全回転釜、半回転釜など多種多様の釜を使用する場合でもヒッチステッチの発生防止することが可能となる。
また、中押さえ110の挿通部113の拡径部116が下方に広がるすり鉢状であるため、内側角部116aが鈍角となり、縫い針11から布地Cに渡る上糸が内側角部116aに接触した場合でも、上糸Uの引き上げに対する抵抗を低減することができ、良好な糸締まりを実現できる。
また、挿通部113の下端部側、即ち、拡径部116を下方に広がるすり鉢状としたので拡径部116の下端部の内部半径rを拡大することができ、当該内部半径rよりも布地Cの移動量が小さければ、内側角部116aに対する上糸Uの接触を回避することができ、上糸の引き上げに対する抵抗のさらなる低減が可能である。
従って、これらにより、下糸Dの過剰な繰り出しも上糸Uの引き上げの際の抵抗も抑えることが可能となり、適切な糸締まりで縫い目を形成することができ、縫い品質の公報を図ることが可能となる。
図28に中押さえの他の例を示す。この中押さえ110Aは、中押さえ110と同様に装着部111と屈曲部112とを備え、屈曲部112の下部に縫い針11を挿通する挿通部113Aを備えている。
そして、挿通部113Aは、縫い針11の中心線に同心となる正円の円筒状に形成され、その内部には半径rが上下方向全長に渡って一定となる円形貫通穴が形成されている。
また、内部半径rは、布移動機構80に対して設定可能な最大の布送り量P以上「布送り量P+1mm」以下の大きさに設定されている。
また、中押さえ110Aの場合も、挿通部113Aの下端部の内部半径rを3[mm]以上13[mm]以下とすると良い。この数値設定の上限値は、通常の布移動量2[mm]に対応する数値であり、下限値は、ミシンの設定できる最大の布送り量Pである12.5[mm]に対応する数値である。これにより、縫い品質の向上を図ることが可能である。
また、この中押さえ110Aは、構造が中押さえ110よりも簡単であるため製造が容易であるため製造コストの低減図ることができるという利点がある。
図29において、中押さえ110Aの挿通部113Aを実線で表し、中押さえ110の挿通部113を二点差線で示す。ここに図示した挿通部113はその下端部の内径が挿通部113Aと等しいものとする。
図示のように、縫い針11から布地Cに渡る上糸Uは、中押さえ110Aの場合には縫い針11から布地Cに向かって挿通部113Aの内側に接触することなく、その場合の縫い針11の中心線に対する上糸Uの傾斜角度をα1とする。
一方、二点差線で図示した中押さえ110の挿通部113の場合には、その拡径部116の上端部が下端部より小径なので、縫い針11から下ろされた上糸Uは拡径部116の上端部に接触してから布地Cに至る経路を通る。従って、中押さえ110の場合の縫い針11に対する上糸Uの傾斜角度α2は中押さえ110Aの傾斜角度α1よりも小さくなる(α2>α1)。
このため、例えば、図30に示すように、縫い針11に対して上糸が例えば左巻きの状態にある場合、針棒12を右回転させて上糸Uを右巻きに変える動作が行われるが、上糸Uが左巻きから右巻きに変化する際には、矢印kに示すように、縫い針11から垂れる上糸Uが縫い針11の下端部を超えて移動させる必要がある。
その場合、縫い針11に対する上糸Uの傾斜角度αが大きいと、上糸Uが縫い針11の先端を通過することができず、ヒッチステッチを解消することができない場合が生じる。従って、縫い針11に対する上糸Uの傾斜角度αが小さくなる中押さえ110の方が中押さえ110Aよりも好適といえる。
従って、この中押さえ110Aは針棒回動を行わないミシンに搭載することが望ましい。
図31に中押さえのさらに他の例を示す。この中押さえ110Bは、中押さえ110と同様に、装着部111と屈曲部112とを備え、屈曲部112の下部に縫い針11を挿通する挿通部113Bを備えている。
そして、この挿通部113Aは、中押さえ110と同様に、面取り部114及び等径部115を備え、等径部115の下側には、金属ワイヤを螺旋状に巻いて略すり鉢状に形成した拡径部116Bが設けられている。このように、拡径部116Bは、金属その他の固形のブロックに貫通穴を形成することにより製造することに限られず、内部がすり鉢状となる線材を骨子として形成してもよい。
また、前述した中押さえ110Aのように全体に内径が等しい挿通部113Aについても、この中押さえ110Bの拡径部116Bのように、線材を骨子として形成してもよい。
かかる構造とした中押さえ110Bも、中押さえ110とほぼ同様に機能し、同等の効果を得ることが可能である。
なお、上記ミシン100の中押さえ上下動機構120を除去し、中押さえ110を上下動しないように固定支持する構造としても良い。その場合、中押さえ110の下端部が保持枠81の保持された布地Cの上面に最近接する高さに固定することが望ましい。
すなわち、中押さえは、布保持部が保持する被縫製物の直上位置で固定保持されている。
また、前述した他の中押さえ110A,110Bも同様に固定装備してもよい。
また、これら中押さえ110,110A,110Bは、いずれも針棒回動機構30及び糸寄せ機構40を搭載しないミシンにも適用可能である。
12 針棒
13 釜
20 針上下動機構
21 ミシンモータ
22 上軸
30 針棒回動機構
50 糸寄せ機構
52 糸寄せ用モータ
80 布移動機構(移動機構)
81 保持枠(布保持部)
90 制御装置
100 ミシン
110 中押さえ
113,113A,113B 挿通部
116,116B 拡径部
116a 内側角部
120 中押さえ上下動機構
123 駆動腕
123a 腕部
123b 長穴
124a 締結ボルト
127 第一の伝達リンク
128 第二の伝達リンク
129 角コマ
130 ガイド板
130a ガイド溝
131 高さ調節モータ
132 出力腕
133 連結リンク
C 布地
D 下糸
U 上糸
r 内部半径
Claims (8)
- 縫い針を保持して上下動を行う針棒と、
回動動作により上糸を下糸に絡める釜と、
前記針棒の上下動と前記釜の回動動作の駆動源となるミシンモータと、
布保持部により被縫製物を水平面に沿って任意の移動方向に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる移動機構と、
所定の縫製パターンを形成するための一針ごとの針落ち位置又は前記被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動機構を制御する制御部と、
前記縫い針を挿通する挿通部を備えると共に前記布保持部に保持された被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえとを備えるミシンにおいて、
前記中押さえは、前記布保持部が保持する被縫製物の直上位置で固定保持又は停止可能であって、前記挿通部の少なくとも下端部については下方に向かって広がる開口形状としたことを特徴とするミシン。 - 前記挿通部は、
縫い針の上下動を許容し、内径が一定の等径部と、
前記等径部に連続して形成され、下方に向かって広がる開口形状の拡径部と、を有することを特徴とする請求項1記載のミシン。 - 前記挿通部の下端部の内径が前記縫い針の中心線から前記移動機構における一針での最大送り量以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
- 前記挿通部の下端部の内部半径が前記縫い針の中心線から3[mm]以上13[mm]以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のミシン。
- 縫い針を保持して上下動を行う針棒と、
回動動作により上糸を下糸に絡める釜と、
前記針棒の上下動と前記釜の回動動作の駆動源となるミシンモータと、
布保持部により被縫製物を水平面に沿って任意の移動方向に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる移動機構と、
所定の縫製パターンを形成するための一針ごとの針落ち位置又は前記被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動機構を制御する制御部と、
前記縫い針を挿通する挿通穴を備えると共に前記布保持部に保持された被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえとを備えるミシンにおいて、
前記中押さえは、前記布保持部が保持する被縫製物の直上位置で固定保持又は停止可能であって、
前記挿通部は、前記縫い針の中心線からの内部半径が上下方向に沿って一定である貫通穴を有し、当該内部半径は前記移動機構における一針での最大送り量以上であることを特徴とするミシン。 - 縫い針を保持して上下動を行う針棒と、
回動動作により上糸を下糸に絡める釜と、
前記針棒の上下動の駆動源となるミシンモータと、
布保持部により被縫製物を水平面に沿って任意の移動方向に移動させて任意の位置に針落ちを行わせる移動機構と、
所定の縫製パターンを形成するための一針ごとの針落ち位置又は前記被縫製物の移動量を定めた縫製データに基づいて前記移動機構を制御する制御部と、
前記縫い針を挿通する挿通穴を備えると共に前記布保持部に保持された被縫製物の浮き上がりを防止する中押さえとを備えるミシンにおいて、
前記中押さえは、前記布保持部が保持する被縫製物の直上位置で固定保持又は停止可能であって、
前記挿通部は、前記縫い針の中心線からの内部半径が上下方向に沿って一定である貫通穴を有し、当該内部半径が3[mm]以上13[mm]以下であることを特徴とするミシン。 - 前記中押さえを前記針棒と同周期で上下動させる中押さえ上下動機構を備え、
前記中押さえ上下動機構は、前記中押さえの高さを調節する高さ調節部と上下動の振幅を調節する振幅調節部とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のミシン。 - 前記針棒を上下動軸心周りに回動させる針棒回動機構と、
針板の下側で糸寄せ部材により下糸の糸寄せを行う糸寄せ機構とを備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のミシン。
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