JP7253904B2 - ミシン - Google Patents
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Description
中押さえは、被縫製物を押さえ付け過ぎないように針板に届かない高さで支持され、縫い針よりも小さいストロークで上下動を行い、被縫製物のばたつきを押さえて、上昇する縫い針を被縫製物から円滑に引き抜くことができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
縫い針を上下動させる針上下動機構と、
中押さえを上下動させる中押さえ上下動機構と、
前記中押さえの上下動の動作範囲全体の高さを調節する中押さえ高さ調節機構とを備えるミシンにおいて、
縫製開始時の第一針目の針落ちにおいて前記縫い針が針板の針穴に突入を開始する前に、前記中押さえが前記針板上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降して上糸の縫い開始端部を保持し、
前記第一針目の針落ち後の縫い針がその上死点に達するまでは前記中押さえによる押さえ付け状態を維持するように前記中押さえ高さ調節機構を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
被縫製物を保持枠で保持して移動させる移動機構を備え、
前記制御装置は、第二針目の針落ち位置への前記保持枠の移動開始までに前記中押さえによる押さえ付け状態を解除するように前記中押さえ高さ調節機構を制御することを特徴とする。
縫い糸を切断する糸切り装置を備え、
前記制御装置が、前記糸切り装置の動メスが切断を実行するまでに、前記中押さえが針板上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降し、少なくとも前記糸切り装置が縫い糸の切断を完了するまでの間は前記中押さえによる押さえ付け状態を維持するように前記中押さえ高さ調節機構を制御することを特徴とする。
前記制御装置は、
前記糸切り装置の動メスが切断動作を開始する直前の針落ちを行う縫い針が下死点から上昇を開始する前に前記中押さえが針板上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降するように前記中押さえ高さ調節機構を制御することを特徴とする。
以下、図面を参照して、本発明に係るミシンの実施の形態について詳細に説明する。
なお、本実施形態では、ミシンとして電子サイクルミシンを例に説明する。
図1はミシン100の斜視図、図2は縫い針周辺の拡大斜視図である。
電子サイクルミシンは、複数枚重ねられた被縫製物を保持する保持枠を有し、その保持枠が縫い針に対し相対的に移動しながら縫製を行うことにより、保持枠に保持された複数の被縫製物に所定の縫製データに基づく縫い目を形成するミシンである。
ここで、後述する縫い針108が上下動を行う方向をZ軸方向(上下方向)とし、これと直交する所定の方向をX軸方向(左右方向)とし、Z軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をY軸方向(前後方向)と定義する。
図1、図2に示すように、ミシン本体101は、外形が側面視にて略コ字状を呈するミシンフレーム102を備えている。このミシンフレーム102は、ミシン本体101の上部をなし、Y軸方向に延びるミシンアーム部102aと、ミシン本体101の下部をなし、Y軸方向に延びるミシンベッド部102bと、ミシンアーム部102aとミシンベッド部102bとを連結する立胴部102cとを有している。
このミシン本体101は、ミシンフレーム102内に動力伝達機構が配置され、回動自在でY軸方向に延びる主軸及び下軸(いずれも図示略)を有している。主軸はミシンアーム部102aの内部において回転可能に支持され、下軸(図示省略)はミシンベッド部102bの内部において回転可能に支持されている。
釜装置は、下軸の前端部に固定装備された外釜と、外釜の内側でボビンを擁する内釜と、を備えている。釜装置の構成は周知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
ミシンアーム部102aの前端部には、縫い針108を下端部に保持した針棒108aが上下動可能に支持されている。ミシンアーム部102aの前端部内側において、主軸の前端に固定装備された針棒クランクと、針棒108aに固定装備された針棒抱きと、針棒クランクと針棒抱きと連結するクランクロッドとが設けられている。
即ち、上記ミシンモーター2a、主軸、針棒クランク、針棒抱き、クランクロッド、針棒108aは、縫い針108を上下動させる針上下動機構を構成している。
なお、針上下動機構は、周知の構成と同様のものなので、各構成についてはいずれも図示を省略している。
図1、図2に示すように、ミシンベッド部102b上には、針板110が配設されており、この針板110の上側に布保持部としての保持枠111が配置されている。
保持枠111は、ミシンアーム部102aの下側に配置された取付部材113に取り付けられており、その取付部材113にはミシンベッド部102b内に配置された図示しないベルト機構を介してX軸モーター76a及びY軸モーター77aが連結されている(図7参照)。
保持枠111は、被縫製物を挟持し、X軸モーター76a及びY軸モーター77aの駆動に伴い、保持した被縫製物を前後左右方向に移動させる。そして、保持枠111の移動と針落ちの動作が連動することにより、所定の縫製データに記録された複数の針落ち位置に基づく縫い目が被縫製物に形成される。
また、取付部材113は、保持枠111の布押さえを昇降可能に支持しており、ミシンアーム部102a内に配置された布押さえモーター79aの駆動により、布押さえに昇降動作を付与する。布押さえは、下降移動により、下板との間で被縫製物を挟持して保持するようになっている。
そして、これら保持枠111、取付部材113、ベルト機構、X軸モーター76a、Y軸モーター77a及び布押さえモーター79a等が、被縫製物をX軸方向及びY軸方向に沿って任意に移動位置決めする移動機構として機能する。
ペダルRは、ミシン100を駆動させ、針棒108a及び縫い針108を上下動させたり、保持枠111を動作させたりするための入力操作が行われる。
ペダルRには、ペダルRが踏み込まれたその踏み込み操作位置を検出するためのセンサーが組み込まれており、センサーからの出力信号がペダルRの操作信号として後述する制御装置120に入力される。
制御装置120は、その操作位置に応じた操作信号によって、ミシン100の駆動、その他の各動作を実行する制御を行う。
また、ミシン100には、ユーザによる操作入力を行うための操作パネル300が設けられており、操作パネル300に入力された各種データや操作信号は、後述する制御装置120に入力される。
なお、操作パネル300は、液晶表示パネルからなる表示部300bと当該表示部300bの表示画面上に設けられたタッチセンサー300cとを備えて構成されており、液晶表示パネルに表示される各種操作キー等をタッチ操作することにより、タッチパネルがタッチ操作された位置を検出し、検出した位置に応じた操作信号を後述する制御装置120に出力するようになっている。
図3及び図4はミシンアーム部102a内の中押さえ装置1の正面図、図5は中押さえ装置1の一部の構成を示す分解斜視図、図6は中押さえ装置1の残る一部の構成を示す分解斜視図である。
中押さえ装置1は、ミシンアーム部102aの前端部において、縫い針108の上下動による被縫製物の浮き上がりを防止するために、針棒108aの上下動と連動して上下動し、縫い針108の周囲の被縫製物の上方へのばたつきを押さえる中押さえ29を有している。なお、中押さえ装置1の本体はミシンアーム部102aの内部に配設され、中押さえ29は、ミシンアーム部102aの前端部の下方に配置されている。そして、中押さえ29は、円形枠を有し、縫い針108がその内側に遊挿されている。
中押さえ上下動機構M1は、針上下動機構の主軸の回転から中押さえ29の上下動の動力を得ている。
即ち、中押さえ上下動機構M1は、主軸に設けられた偏心カムと、当該偏心カムを一端部で回転可能に保持するコンロッドと、往復回動を行うY軸方向に沿った揺動軸6と、揺動軸6からZ軸方向に向かって延出された揺動アームとからなる往復動作機構を備えている。
上記コンロッドの他端部は、揺動アームの回動端部に対してY軸回りに回動可能に連結されている。これにより、主軸が全回転を行うと、偏心カムによってコンロッドの一端部がY軸回りに周回動作を行い、他端部はX軸方向に沿って往動する。そして、揺動アームの回動端部にもX軸方向に沿った往動が伝わり、当該揺動アームを軸支する揺動軸6は主軸の回転と同じ周期で往復回動を行う。
なお、偏心カムを用いた往復動作機構は、周知の機構なので、揺動軸6を除いた各構成については図示を省略している。
また、第2リンク11の右端部は、図6に示すように、第3リンク20の上端部に段ねじ21によりY軸回りに回動自在に連結されている。第3リンク20の下端部には、第4リンク22の上端部が段ねじ23によりY軸回りに回動自在に連結されている。
そして、中押さえ棒28の上側には、ボルト31、ナット32及びばね支軸301に支持された押圧バネ30が設けられ、当該押圧バネ30により、中押さえ棒28及び中押さえ29が常時下方に押圧されている。
この中押さえ高さ調節機構M4は、中押さえ29の下死点の高さを調節することにより、ミシンモーター2aによる中押さえ29の上下動の動作範囲全体の高さを調節する。
案内部材34の下端部近傍には、その長手方向に沿って長尺な長孔34aが形成されている。この長孔34aは、内側に角駒33がスライド可能に嵌めこまれている。このため、案内部材34は、角駒33を介して、第3リンク20と第4リンク22の連結部を長孔34aに沿って移動可能としている。
可変軸39は、Y軸方向に沿って配置され、図5に示すように、ベアリング40によってY軸回りに回転可能に支持されている。また、可変軸39の途中部分にはかさ歯車41、後端部には従動歯車391が固定装備されている。
中押さえモーター42は、正逆方向に回転駆動させることができ、その回動量及び駆動のタイミングが制御装置120により制御可能となっている。
また、中押さえモーター42には、その出力軸の軸角度を検出するエンコーダー81が併設されている。このエンコーダー81は、いわゆる、アブソリュート型であり、出力軸の軸角度の絶対的な位置を検出可能とし、原点センサーを必要としない。なお、エンコーダー81として、インクリメンタル型を使用して、原点センサー及びパルスカウンタを有する構成としてもよい。
そして、中押さえモーター42、主動歯車421、従動歯車391、可変軸39、偏心カム38、移動リンク36、案内部材34及び角駒33等が、ミシンモーター2aによる中押さえ29の上下動の動作範囲全体の高さを上下方向に推移させる中押さえ高さ調節機構M4として機能する。
前述した位置決めリンク13は、図6に示すように、その中央部近傍で段ねじ14によりミシン筐体としてのミシンフレーム102にY軸回りに回動自在に取り付けられている。そして、Y軸方向から見た段ねじ14の位置は、中押さえ29が下死点にあるときの段ねじ12の位置と一致して同心となっている。
つまり、引っ張りばね16、ばね掛け15、ストッパ17、位置決めリンク13、規制部材19等が、中押さえ29の下降動作阻害時に中押さえ上下動機構M1に対する過剰負荷回避用の逃げ動作を可能とする過剰負荷回避機構M2として機能する。
図5に示すように、前述した可変軸39に設けられたかさ歯車41には、かさ歯車43が歯合されており、中押さえモーター42の駆動を可変軸39の軸方向と直交する方向D4を中心とする回転方向に出力することができるようになっている。かさ歯車43の右方にはベアリング44、中押さえ昇降カム45等がX軸方向に沿った同軸上に連結されている。
この中押さえ昇降カム45は、中押さえ29を縫製終了後の退避位置に上昇させる中押さえ上げ部材46の一端部46aを上下に昇降させるものであり、当該中押さえ昇降カム45の外周には、中押さえ上げ部材46を回動させるZ軸方向に沿った梃子部材461の上端部に設けられた円筒状のコロ47が摺接する。
そして、梃子部材461の下端部は、Y軸方向に沿った伝達リンク463の後端部にX軸回りに回動可能に連結されている。
また、梃子部材461の下端部近傍には、前方に張力を付与する引っ張りばね464の後端部が連結されており、これによって、梃子部材461の上端部のコロ47が中押さえ昇降カム45の外周に圧接させられている。
リンク中継板25(図6参照)を下から係止して中押さえ29を上昇させる中押さえ上げ部材46の一端部46aは、屈曲部から前方に延出されている。また、屈曲部から上方に延出された中押さえ上げ部材46の他端部46bは、伝達リンク463の前端部にX軸回りに回動可能に連結されている。
つまり、かさ歯車41,43、中押さえ昇降カム45、コロ47、梃子部材461、伝達リンク463、引っ張りばね464及び中押さえ上げ部材46等により、中押さえ退避機構M3が構成されている。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ上下動機構M1の動作について説明する。
ミシンモーター2aの駆動により主軸が回転すると、往復動作機構により、揺動軸6は往復回動を行う。これにより、中押さえ調節腕7が上下に揺動し、第1リンク8を介して、第2リンク11の右端部は第3リンク20と第4リンク22の直列方向D2に揺動し、第3リンク20及び第4リンク22は、その直列方向(上下方向)D2に揺動する。これに伴い、中押さえ棒28は上下方向D1に沿って上下方向に移動するため、中押さえ29は縫い針108の上下動に同期して上下方向に往動する。
次に、上記構成を有する中押さえ装置1の中押さえ高さ調節機構M4による中押さえ29の高さの調節動作について説明する。
中押さえモーター42の駆動は、主動歯車421及び従動歯車391を介して可変軸39に伝達され、可変軸39及び偏心カム38が回動し、案内部材34は、概ねX軸方向に沿って揺動する。これにより、角駒33を介して第3リンク20と第4リンク22は、連結部において屈曲角度が変化して中押さえ29の高さが変動する。このとき、角駒33は、案内部材34の長孔34aに沿って上下動を行うので、中押さえ29は上下動を行いつつ、中押さえ29の上下動の動作範囲全体の高さが変動する。従って、中押さえ高さ調節機構M4により、中押さえ29の上下動における下死点の高さを調節することができる。即ち、中押さえ29の上下動の動作範囲全体の高さを調節することができる。
図7に糸切り装置90の底面図を示す。
この糸切り装置90は、Z軸回りに回動を行う動メス91と、動メス91と協働して縫い糸としての上糸及び下糸を切断する固定メス92と、動メス91の回動動作の駆動源となるアクチュエーターとしての糸切りモーター96(図8参照)と、糸切りモーター96から動メス91に往復回動を伝達する複数のリンク体93~95とを備えている。
即ち、動メス91は、非使用時にはポジションP1に待機しており、ポジションP1からポジションP2まで往路の回動を行った後に、ポジションP2からポジションP1まで復路の回動を行って、上糸及び下糸の縫い終わり端部の切断を行う。
糸切り装置90は、上糸の縫い針108側の部分と布地側の部分の内の布地側の部分のみと下糸とを切断する必要があるので、動メス91の往復の往路の回動時には、上糸の縫い針108側の部分(非切断部分)と、上糸の布地側の部分(切断部分)及び下糸とに選り分ける糸捌き作業を行い、往復の復路の回動時に上糸の布地側の部分及び下糸を切断する。
さらに、糸捌き部911と捕捉部913との間には、貫通孔914が形成され、当該貫通孔914の後側内縁部に刃部912が形成されている。
そして、動メス91の復路回動時において、捕捉部913が固定メスの刃先921を通過すると、動メス91の上面と固定メス92の下面との間に上糸の布地側の部分と下糸とが挟まれた状態となる。
そして、動メス91がさらに回動を続けると、動メス91の上面と固定メス92の下面とに挟まれた上糸の布地側の部分と下糸とが押し込まれるようにして貫通孔914に入り込み、刃部912と固定メス92の刃先とがすれ違う際に、上糸の布地側の部分と下糸とが切断される。
ミシンアーム部102aの前端部近傍には、縫い終わりの糸切断後の縫い針108側の上糸端部を被縫製物の下側から上側に引き出すワイパー機構を備えている。
ワイパー機構は周知の構成のため、図示は省略するが、上停止位置における縫い針108の下端部と中押さえ29との間で水平方向に上糸を払うワイパー部材と、ワイパー部材が上糸を払うための回動動作を付与する駆動源としてのワイパーソレノイド82(図8参照)とを備えている。
図8はミシン100の制御系を示すブロック図である。
ミシン100は、上述した各部の動作を制御するための動作制御手段としての制御装置120を備えている。そして、制御装置120は、各種の制御プログラム70aが格納されたプログラムメモリ70と、縫製データ71a及び各種の設定情報(図示略)を記憶した記憶手段としてのデータメモリ71と、プログラムメモリ70内の各プログラム70aを実行するCPU73とを備えている。
また、操作パネル300は、縫製データ71aの設定パラメータを任意に設定する機能や複数ある縫製データ71aの中から所望のデータを選択する機能も有している。
なお、ミシンモーター2aには、例えば、サーボモーターを適用することができる。
また、CPU73は、インターフェイス96cを介して、糸切りモーター96を駆動する糸切りモーター駆動回路96bが接続され、糸切り装置90の動作を制御する。
なお、X軸モーター76a及びY軸モーター77a、中押さえモーター42、布押さえモーター79a、糸切りモーター96には、例えば、ステッピングモーターを適用することができる。
また、CPU73は、インターフェイス82cを介して、ワイパー部材を回動させるワイパーソレノイド82を駆動するソレノイド駆動回路82bが接続され、ワイパー部材による糸払い動作を制御する。
データメモリ71には、縫製データ71aが格納されている。この縫製データ71aは、一連の縫製パターンに従って縫製を行うためのデータである。
即ち、縫製データ71aは、縫製パターンに沿った複数の針落ち位置の位置座標データ、中押さえの高さの設定値、糸切り等のコマンドなどが実行順に記録されている。
ミシン100の制御装置120のCPU73は、プログラムメモリ70内の制御プログラム70aに基づいて、縫製開始時の中押さえ高さ制御を実行する。
この縫製開始時の中押さえ高さ制御では、CPU73が、縫製開始時の第一針目の針落ちにおいて縫い針108が針穴112に突入を開始する前に、中押さえ29が針板110上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降し、少なくとも針穴112から縫い針108が抜けるまでは中押さえ29による押さえ付け状態を維持するように中押さえ高さ調節機構M4の中押さえモーター42を制御する。
これにより、縫製開始時において、縫い針108の上下動や釜の引き込み、天秤の引き上げ等によって生じる張力によって、上糸Uの端部が被縫製物Cにおける第一針目の針落ち位置から抜け落ちてしまうことを抑制する。
例えば、移動機構の保持枠111による第一針目の針落ち位置への移動が完了してから縫い針108の先端部が針穴112に突入を開始するまでの間であれば、中押さえ29による押さえ付けをいつ開始しても良い。
上糸Uの端部は、縫い針108の上昇、釜の引き込み、天秤の引き上げ等種々の要因で張力を受けるので、縫い針108の上昇が停止する上死点到達まで中押さえ29による押さえ付けを継続することが望ましい。
但し、移動機構を備えるミシン100の場合には、第二針目の針落ち位置への保持枠111の移動を開始する前に上記押さえ付けを解除することがより望ましい。
但し、被縫製物の厚さが不明である場合には、中押さえ29の底部が針板110の上面高さと一致又はそれよりも低い状態とすることが望ましい。
また、上記押さえ付けの開始から解除までの間は、ミシンモーター2aが駆動しているので、中押さえ上下動機構M1により、中押さえ29には上下動動作が付与されている。従って、中押さえ上下動機構M1の中押さえ調節腕7が中押さえ29を最も上方に引き上げた状態(中押さえ29の上死点)でも、中押さえ29の底部が針板110の上面高さ又は被縫製物の上面高さに届く高さまで中押さえ29を十分に下降させておくことが望ましい。
特に、中押さえ上下動機構M1の中押さえ調節腕7は、カム溝7aにより第1リンク8の上端部の連結位置を調節可能であり、中押さえ調節腕7の回動中心から最も遠方に第1リンク8の上端部を連結した場合に、中押さえ29は最も上死点位置が高くなる。従って、これを考慮して、中押さえ29の上死点位置が最も高くなる場合でも、中押さえ29の底部が針板110の上面高さ又は被縫製物の上面高さに届く高さまで中押さえ29を十分に下降させておくことがより望ましい。
そして、中押さえ29により押さえ付け状態を解除する際には、縫製データ71aに定められた中押さえの高さの設定値となるように中押さえモーター42を制御する。
上述した縫製開始時の中押さえ高さ制御を実行して縫製を行う場合には、その前の縫製の縫い終わりの縫い糸切断後には、ワイパー機構による糸払い動作を行わないように規制することが望ましい。
即ち、ワイパー機構は、縫い針108の下端部と中押さえ29との間で糸払いを行うので、上糸Uの縫い開始端部が中押さえ29の内側から引き出され、次回の縫製開始の際に、縫製開始時の中押さえ高さ制御を実行しても、中押さえ29が上糸Uの縫い開始端部を押さえ付けることができなくなってしまうからである。
但し、ワイパー機構による糸払いを行う際に、予め、中押さえ29を上昇により退避させて、ワイパー部材が中押さえ29の下側で糸払い動作を行うように制御するのであれば、上糸Uの縫い開始端部が中押さえ29の内側を通った状態を維持することができるので、ワイパー機構による糸払いを行ってもよい。
ミシン100の制御装置120のCPU73は、プログラムメモリ70内の制御プログラム70aに基づいて、糸切り実行時の中押さえ高さ制御を実行する。
この糸切り実行時の中押さえ高さ制御では、CPU73が、糸切り装置90の動メス91が切断を実行するまでに、中押さえ29が針板110上に被縫製物Cを押さえ付ける高さまで下降し、少なくとも糸切り装置90が縫い糸の切断を完了するまでの間は中押さえ29による押さえ付け状態を維持するように中押さえ高さ調節機構M4の中押さえモーター42を制御する。
そこで、予め、被縫製物Cを中押さえ29により針板110に押さえ付けておくことにより、図10(B)及び図11(B)に示すように、隙間Sのない状態で糸切りを実行することを可能とした。
これにより、図11(B)に示すように、糸切り実行時の中押さえ高さ制御を実行した被縫製物Cにおける縫い糸の残端の長さl2を、糸切り実行時の中押さえ高さ制御を実行しない場合の被縫製物Cにおける縫い糸の残端の長さl1よりも、隙間S分短くすることを可能とした。
具体的には、糸切り装置90の動メス91が切断動作を開始する直前の針落ち(最終針の針落ち)を行う縫い針108が下死点から上昇を開始する前に、中押さえ29が針板110上に被縫製物Cを押さえ付けることがより望ましい。
ミシン100の制御装置120のCPU73は、プログラムメモリ70内の制御プログラム70aに基づいて、一連の縫製動作制御を実行する。この一連の縫製動作制御を図12のフローチャートに基づいて説明する。
そして、縫い針108は被縫製物を介して針穴112に突入し、下死点を通過して釜による上糸Uが捕捉され、下糸との結節が形成される。
そして、縫い針108の上昇する過程で、CPU73は、主軸角度が中押さえ29の押さえ付けを解除する軸角度か否かをエンコーダー2bの出力から監視する(ステップS7)。
これにより、中押さえ29の押さえ付けを解除する軸角度が検出されると、CPU73は、縫製データ71aに設定された縫製中の中押さえ高さとなるように中押さえモーター42を駆動させる(ステップS9)。
そして、縫製データ71aに定める次の動作が糸切りか否かを判定し(ステップS15)、糸切りではない場合には、ステップS11に処理を戻して、次の針落ち位置への被縫製物の移動動作を実行する。
そして、CPU73は、糸切りを実行する規定の主軸の軸角度で糸切りモーター96を駆動させて、動メス91の往復回動により縫い糸の切断を実行する(ステップS19)。
これに続いて、CPU73は、中押さえ29が上昇する方向に中押さえモーター42を駆動し、そのまま中押さえ退避機構M3が作動するまで駆動を継続して、中押さえ29を退避位置まで引き上げる(ステップS21)。
なお、この縫製動作制御では、縫製開始時の中押さえ高さ制御を実行しているので、ワイパー機構による糸払い動作は実行されない。但し、中押さえ29をワイパーの通過する高さよりも上方まで引き上げた状態であれば、ワイパー機構による糸払い動作を実行しても良い。
以上のように、ミシン100では、制御装置120のCPU73が、縫製開始時の中押さえ高さ制御を実行するので、上糸Uの縫い開始端部が中押さえ29により保持され、被縫製物Cにおける第一針目の針落ち位置から抜け落ちることを抑制することが可能となる。
そして、中押さえ装置1が上記上糸Uの縫い開始端部の保持を行うので、従来、ミシンに搭載されていた、糸掴み機構を不要とすることができ、装置構成の簡略化、制御系の簡略化を実現することが可能となる。また、これに伴い、ミシンの部品点数の低減とこれに伴い製造コストの低減、装置の小型化等も実現可能となる。
即ち、第一針目の縫い針108が上死点まで戻ってくると、上糸Uの縫い開始端部に抜け落ちの原因となる張力を付与する縫い針108の上昇動作、釜による上糸のループ形成、天秤による引き上げ等の影響は概ね終わっているので、被縫製物Cにおける第一針目の針落ち位置から抜け落ちることをより効果的に抑制することが可能となる。
そして、中押さえ装置1が縫い糸の残端の短縮化を図るので、従来、ミシンに搭載されていた、残端処理機構を不要とすることができ、装置構成の簡略化、制御系の簡略化を実現することが可能となる。また、これに伴い、ミシンの部品点数の低減とこれに伴い製造コストの低減、装置の小型化等も実現可能となる。
即ち、縫い針108が上昇を開始する前に被縫製物Cを中押さえ29により上から押さえることができ、針板110上の被縫製物Cが縫い針108に引っ張られて上昇して一時的にでも隙間を生じることを抑止できる。つまり、一時的に被縫製物が隙間を生じてから中押さえ29が下降すると、縫い糸を針板と被縫製物Cとの間で挟み込むおそれがあるが、これを抑制することができるので、より効果的に糸切り後の縫い糸の残端を短くすることが可能となる。
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、ミシンを構成する各機構の細部構成及び各機構の細部動作に関しても、本発明の主旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、縫製開始時の中押さえ高さ制御と糸切り実行時の中押さえ高さ制御とを、いわゆる電子サイクル縫いミシンに適用した場合を例示したが、昇降動作を行う中押さえを備え、移動機構を有さない他のミシンにもこれらの制御を適用可能である。
また、中押えがミシンモーターとは分離して別駆動源を持ち、糸押え、布押えを分割して行うことも出来る。
2a ミシンモーター
70a 制御プログラム
71 データメモリ
71a 縫製データ
73 CPU
90 糸切り装置
91 動メス
92 固定メス
96 糸切りモーター
100 ミシン
108 縫い針
110 針板
111 保持枠
112 針穴
120 制御装置
C 被縫製物
M1 中押さえ上下動機構
M4 中押さえ高さ調節機構
S 隙間
U 上糸(縫い糸)
Claims (4)
- 縫い針を上下動させる針上下動機構と、
中押さえを上下動させる中押さえ上下動機構と、
前記中押さえの上下動の動作範囲全体の高さを調節する中押さえ高さ調節機構とを備えるミシンにおいて、
縫製開始時の第一針目の針落ちにおいて前記縫い針が針板の針穴に突入を開始する前に、前記中押さえが前記針板上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降して上糸の縫い開始端部を保持し、
前記第一針目の針落ち後の縫い針がその上死点に達するまでは前記中押さえによる押さえ付け状態を維持するように前記中押さえ高さ調節機構を制御する制御装置を備えることを特徴とするミシン。 - 被縫製物を保持枠で保持して移動させる移動機構を備え、
前記制御装置は、第二針目の針落ち位置への前記保持枠の移動開始までに前記中押さえによる押さえ付け状態を解除するように前記中押さえ高さ調節機構を制御することを特徴とする請求項1に記載のミシン。 - 縫い糸を切断する糸切り装置を備え、
前記制御装置が、前記糸切り装置の動メスが切断を実行するまでに、前記中押さえが針板上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降し、少なくとも前記糸切り装置が縫い糸の切断を完了するまでの間は前記中押さえによる押さえ付け状態を維持するように前記中押さえ高さ調節機構を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。 - 前記制御装置は、
前記糸切り装置の動メスが切断動作を開始する直前の針落ちを行う縫い針が下死点から上昇を開始する前に前記中押さえが針板上に被縫製物を押さえ付ける高さまで下降するように前記中押さえ高さ調節機構を制御することを特徴とする請求項3に記載のミシン。
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